遡及対策は契約書の「日付明記」が鍵

輸出入ビジネスで怖いのは、コストが後から増えることです。関税は「輸入した時点で確定」と思われがちですが、実務では事後調査や制度上の仕組みにより、後日に追加で請求されたり、逆に還付されたりします。日本でも、輸入後の申告ミスなどに対して修正や更正の手続が用意されており、一定期間さかのぼって是正が起こり得ます。(税関総合情報)

このときに社内外の揉め事を最小化する鍵が、契約書に「日付」を明確に書き切ることです。単に契約書の右上に日付がある、という話ではありません。どの日付を基準に、誰が、どの範囲の関税増減を負担するのかを、争点になる前に決めておく、という意味です。


そもそも「遡及」で起きること

遡及リスクは大きく2つに分かれます。

1つ目は公的な遡及です。税関の事後調査でHSコードや原産地、課税価格の判断が変わり、追加納税や追徴が発生するケースです。日本の輸入手続でも、輸入許可後に申告内容の訂正や更正が問題になる場面は珍しくありません。(税関総合情報)

2つ目は貿易契約上の遡及です。追加関税が発生したとき、当局に対して法的に支払義務を負うのは通常「輸入者」ですが、その費用を売主と買主のどちらが負担するかは契約次第です。契約が曖昧だと、結局「どちらが悪いか」「見積に入っていたか」で長期化します。


なぜ「日付」が重要なのか

関税や税関手続は、日付で動く場面が多いからです。代表例だけでも、次のように基準日が複数あります。

・契約締結日、発効日(いつ成立し、いつ効力が出たか)
・個別発注日(PO発行日、受諾日)
・船積日、B/L日付、到着日
・輸入申告の受理日、輸入許可日
・当局の措置の発効日、調査開始日、暫定税率の適用開始日

さらに、反ダンピングなどの貿易救済では、一定条件下で暫定措置の適用開始より前の輸入にさかのぼって最終税を課す枠組みが、国際ルール上も想定されています。最大90日前までの遡及が論点になり得る、というのが典型です。(wto.org)

つまり、契約書に日付が曖昧だと、社内で「この取引はいつの前提で値決めしたのか」を説明できず、社外では「どの時点以降の関税増減を相手に請求できるのか」が争点化します。


実務で効く「日付明記」3点セット

契約書では、次の3つをセットで明記するのが実務的です。

1. 契約成立日と発効日を分けて書く

署名日と効力発生日がズレる契約は多いです。だからこそ分けて書きます。
例:契約成立日、発効日、適用開始日

電子署名でも紙でも構いませんが、後で説明可能なタイムスタンプになる形を推奨します。

2. 価格の前提日を定義する

関税増減を価格に反映する基準日を契約で固定します。ここが曖昧だと、相手は「見積時点で織り込めたはず」と主張しがちです。
例:本価格は「発効日」または「個別発注受諾日」時点の関税・税制を前提とする

3. 個別取引の「日付の鎖」を残す

基本契約だけ日付があっても、個別取引がメールや口頭で流れると証拠が弱くなります。POと受諾、出荷書類、インボイスの各日付がつながるように、契約で「個別取引は書面または電子記録で確定する」と決めておくと強いです。


追加関税が来たときに揉めない条文の考え方

日付明記とセットで入れたいのが「誰が負担するか」を決める条文です。ポイントは、当局に対する法的責任と、取引当事者間の負担を切り分けることです。

1. 変更法令条項

関税率や課税ルールの変更が、基準日以降に発効した場合の精算ルールを決めます。
・基準日
・増減額の算定方法
・通知期限
・証憑(当局通知、計算書、通関書類)の提示義務

2. 事後調査・追徴条項

事後調査で追加納税が発生したときの負担を決めます。ここは原因別に分けると運用しやすいです。
・売主が提供した情報(原産地情報、品目情報、価格構成)の誤りに起因する追徴は売主負担
・買主側の申告や運用ミスに起因する追徴は買主負担
・共同で防御・不服申立を行う場合の費用負担と主導権

日本でも輸入後の訂正や更正の枠組みがあり、一定期間内に追加納税や還付が起こり得るため、契約上の整理が効きます。(税関総合情報)

3. インコタームズの穴埋め

インコタームズは通関や税の責任分担に影響します。例えばDDPは売主が輸入通関や輸入税の負担側に寄る設計です。(academy.iccwbo.org)
ただし、インコタームズだけでは「事後に追徴された分」まで自動的に整理できないことがあるため、契約で上書き・補足するのが安全です。


図で押さえる、日付と遡及の関係

取引の時間軸はだいたい次の順で進みます。

契約成立日 → 発効日 → 個別発注受諾日 → 出荷日 → 輸入申告受理日 → 輸入許可日 → 事後調査 → 追徴または還付

このうち、税関手続の基準日は「申告受理日」や「輸入許可日」など制度ごとに異なります。EUでも、申告受理日が基準になる考え方が整理されています。(Taxation and Customs Union)
だからこそ契約では、当事者間での精算基準日を明確にし、証拠として残る日付を鎖のようにつなげるのが有効です。


すぐ使える社内チェック項目

最後に、契約レビュー時の最小チェック項目をまとめます。

・契約成立日、発効日が明記されているか
・価格の前提日が定義されているか
・関税等の変更が起きた場合の精算ルールがあるか
・事後調査や追徴が起きた場合の負担区分が原因別に書かれているか
・POと受諾、出荷書類、インボイスの記録を保存する運用になっているか
・DDPなど輸入側責任が重い条件では、事後追徴まで含めた補足条項があるか(academy.iccwbo.org)


まとめ

遡及は「税関が悪い」「制度が難しい」だけで片付けられません。実務では、遡及が起きた瞬間に問題になるのは、誰が負担するか、どの時点の前提で値決めしたか、という契約の論点です。

契約書の「日付明記」は、単なる形式ではなく、遡及リスクを取引コストに変えて管理するための装置です。契約成立日と発効日、価格の前提日、個別取引の日付の鎖。この3点を揃えるだけで、いざという時の交渉力と社内説明力が大きく変わります。

注記:本記事は一般的な情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。実際の契約条項や紛争対応は、貴社の取引形態と相手国制度に即して専門家に確認してください。

MFN税率が15%以上なら追加関税ゼロの仕組み 米国の相互関税で実装された「15%調整弁」を実務で使いこなす

はじめに
2025年夏以降、米国の相互関税(いわゆるReciprocal Tariff、Chapter 99で実装)をめぐって「MFNが15%以上なら追加関税はゼロ」という言い方が現場で定着しました。これはスローガンではなく、CBP(米国税関・国境警備局)の公式ガイダンスで、EU向けにも日本向けにも明確に書かれているロジックです。(GovDelivery)

ただし、日付の理解を誤ると、適用漏れや過大納付、修正期限の取り逃しに直結します。本稿では、制度の考え方、申告コード、適用開始日と経過措置、そして落とし穴をビジネス目線で整理します。

1 ここで言うMFNは「HTSUSのColumn 1(General)」
米国実務でのMFNは、HTSUS(米国関税率表)の通常税率であるColumn 1(General)を指します。今回の「15%ルール」は、原則としてこのColumn 1(General)の税率が、15%以上か未満かで追加相互関税の扱いが切り替わります。EU向けのCBPガイダンスは、まさにこの判定軸で9903.02.19と9903.02.20を使い分けると説明しています。(GovDelivery)

注意点として、FTAなどの特恵税率(Special欄)が実務上の納税額に影響しても、「15%判定の基準」が常にそれと同一とは限りません。対象制度の条文・CBPガイダンスに合わせて、判定基準を固定してください(本稿では、CBPが明示したEU・日本の運用を中心に説明します)。(GovDelivery)

2 結論:追加関税は「上乗せ」ではなく「15%までの差額調整」
EU向け・日本向けのCBPガイダンスで共通する骨格は次のとおりです。

・Column 1(General)が15%以上
 追加の相互関税は0%(ゼロ)

・Column 1(General)が15%未満
 Column 1(General)と相互関税の合計が15%になるよう、差額分の相互関税を課す

EU向けは、15%以上なら9903.02.19、15%未満なら9903.02.20で申告すると明記されています。(GovDelivery)
日本向けも同様に、15%以上なら9903.02.72、15%未満なら9903.02.73を用いると明記されています。(GovDelivery)

実務で誤解されやすい点はここです。
15%以上の品目は、合計税率が15%に下がるわけではありません。追加相互関税がゼロになるだけで、Column 1(General)が20%なら合計も20%です。制度は「下限を15%にそろえる」設計であり、「上限を15%にする」設計ではありません(少なくとも、ここで扱う相互関税部分はそうです)。(GovDelivery)

3 申告でどう動くのか:Chapter 99コードがスイッチになる
この制度の実装は、Chapter 99の該当見出しを申告することで行われます。

EU向け(CBPガイダンス)
・Column 1(General)15%以上:9903.02.19(相互関税0)
・Column 1(General)15%未満:9903.02.20(合計15%になるよう調整)(GovDelivery)

日本向け(CBPガイダンス)
・Column 1(General)15%以上:9903.02.72(相互関税0)
・Column 1(General)15%未満:9903.02.73(合計15%になるよう調整)(GovDelivery)

日本向けについては、さらに重要な運用説明があります。9903.02.73で「15%を適用したい」場合、9903.02.73に続けてChapter 1〜97の本来の分類を申告し、ACE(自動通関システム)が税率計算を15%に置き換えると明記されています。(GovDelivery)
この一文があるため、実務者にとっては「コードを正しく選べばシステムが計算を整える」世界になりますが、逆に言えば、コード選択を誤ると過大納付や修正作業が発生しやすくなります。

4 日付の正しい整理:7月31日は発効日ではなく署名日、適用開始は8月7日
ご質問の核心である日付を、一次情報に基づいて整理します。

4-1 EU向けの適用開始は2025年8月7日(米国東部夏時間 0時01分)
CBPは「2025年8月7日 0時01分(EDT)以降に、消費向けに輸入申告または保税から引き出しされた貨物」が、EOのAnnex IIで追加された相互関税(9903.02.02〜9903.02.71等)の対象になると説明しています。(GovDelivery)
つまり、2025年7月31日は大統領令の署名日であり、「発効日」と同義ではありません。大統領令のAnnex IIには「署名日を除外して7日後の0時01分(EDT)以降」と書かれており、結果として適用開始が8月7日になります。

日本時間に換算すると、8月7日13時01分が目安です(米国東部夏時間と日本時間の時差は13時間)。

4-2 「輸送中(in-transit)」の経過措置は10月5日まで
CBPガイダンスでは、8月7日0時01分(EDT)より前に最終輸送手段で積載され輸送中で、かつ10月5日0時01分(EDT)より前に輸入申告された貨物は、原則10%の相互関税(9903.01.25)として扱うと明示されています。(GovDelivery)
この経過措置の期限(2025年10月5日)や「積載済みで輸送中」という要件は、大統領令のAnnex II側にも同様の趣旨で書かれています。

日本時間換算では、10月5日13時01分が目安です。

4-3 日本向けは二段階に見えるが、ポイントは「適用対象日」と「ACE展開日」
日本向けは、現場で混乱しやすい構造です。CBPはまず、対象行為(相互関税の調整)自体は「2025年8月7日0時01分(EDT)以降の輸入申告分に適用される」と説明しています。(GovDelivery)
その一方で、新しい見出し(9903.02.72と9903.02.73)は、2025年9月16日0時01分(EDT)にACEへ展開される、とも明記しています。(GovDelivery)

さらに、CBPは「9月16日にコードが展開された後、8月7日以降に申告したエントリーについて、必要に応じて修正して新コードを適用できる」こと、返金は未清算ならPSC、清算済みなら抗議申立(protest)で対応することまで説明しています。(GovDelivery)
連邦官報の告示(2025年9月16日付)でも、9903.02.72と9903.02.73の新設と、9月16日0時01分(東部時間)以降の修正条項などが確認できます。

このため、文章として安全なのは次の書き分けです。
・適用対象の開始:2025年8月7日0時01分(EDT)以降の輸入申告分
・新コードのACE展開:2025年9月16日0時01分(EDT)
・実務上の更正:9月16日以降に、8月7日以降分を新コードへ修正して整合させる

5 落とし穴その1:従量税や複合税は「従価税換算」で15%判定が動く
Column 1(General)が従価税(ad valorem)ではなく、従量税(例:kgあたり何セント)や複合税の場合、15%判定は「従価税換算(ad valorem equivalent)」で行う必要があります。

CBPは日本向けガイダンスで、従価税換算は「Column 1で支払うべき関税額を税関評価額で割る」と明記し、50セントの従量税を10ドルの評価額で割って5%になる例まで示しています。(GovDelivery)

ここで重要なのは、評価額が変わると従価税換算も変わり、15%以上か未満かの判定が揺れることです。移転価格、値引き条件、ロイヤルティ、アシストなど、評価論点が追加関税の有無にまで波及する可能性があります。

6 落とし穴その2:自動車・自動車部品はSection 232側にも15%ロジックが入る
日本向けガイダンスは、相互関税だけでなく、Section 232(自動車・自動車部品)についても「Column 1が15%以上なら追加232はゼロ、15%未満なら合計15%」というロジックを明示しています。(GovDelivery)
具体的には、乗用車・ライトトラックは9903.94.40(追加232ゼロ)または9903.94.41(合計15%)、部品は9903.94.42または9903.94.43という形で分岐します。(GovDelivery)

相互関税(IEEPA系)と232は根拠法も体系も異なるため、どちらの追加税が対象になるのか、Chapter 99の該当見出しを混同しないことが肝になります。

7 ビジネス実務での使い方:何を先に固めるべきか
この制度は、単に税率を読むだけでは不十分です。社内での意思決定やサプライチェーン設計に落とすなら、次の順番が現実的です。

1 品目別にColumn 1(General)を棚卸しする
15%以上の品目は追加相互関税がゼロになる可能性があるため、品目ミックスによっては着地コストが大きく変わります。(GovDelivery)

2 HS分類の精度を上げる
15%の境界線をまたぐ分類誤りは、追加税の有無を逆転させます。監査・事後調査で最も説明が苦しい類型なので、分類根拠(比較品、注解、機能説明、仕様書)を揃える投資対効果は高い領域です。

3 原産地の確からしさを上げる
Chapter 99は原産国別の運用です。原産地の揺れは、そのまま適用制度の揺れになります。

4 輸送中の経過措置に該当する貨物を抽出する
8月7日前後の積載・到着・申告タイミングで、10%扱いになるか、15%調整ルールの扱いになるかが変わります。(GovDelivery)

5 日本向けは8月7日以降分の修正要否を点検する
CBPは、9月16日のコード展開後に、8月7日以降分を新コードに修正できると説明しています。過大納付が疑われる場合は、PSCや抗議申立まで含めて社内の手順を整備しておくと、実務が止まりません。(GovDelivery)

主要ポイント早見表(研究結果フォーマットに準拠)

国名関税率出所備考
EU相互関税はColumn 1が15%以上なら0%、15%未満なら合計15%になるよう調整CBP CSMS 65829726申告:15%以上は9903.02.19、15%未満は9903.02.20。適用開始は2025年8月7日0時01分EDT。輸送中は条件付きで2025年10月5日まで10%(9903.01.25)。(GovDelivery)
日本相互関税はColumn 1が15%以上なら0%、15%未満なら合計15%になるよう調整CBP CSMS 66242844、連邦官報告示申告:15%以上は9903.02.72、15%未満は9903.02.73。対象開始は2025年8月7日0時01分EDT、コードは2025年9月16日0時01分EDTにACEへ展開。ACEが15%計算に置換する運用説明あり。(GovDelivery)

おわりに
「MFN15%以上なら追加関税ゼロ」は、言い換えると「追加関税は15%までの差額調整として設計され、境界線はColumn 1(General)15%に置かれている」ということです。EU向け・日本向けともに、CBPが申告コードまで指定して運用を明示しているため、制度の理解はここから逆算するのが最短です。(GovDelivery)

一方で、輸送中の経過措置、8月7日と9月16日の二段階(日本向け)、従価税換算が必要な品目、232との重なりなど、実務の落とし穴も増えています。
結局は、分類、原産地、評価の三点セットを固め、申告コードを正しく選び、必要なら修正・返金まで見据える。これが「15%調整弁」を利益に変えるための現実解です。

米連邦最高裁が金曜のオピニオン公表日を設定  IEEPA関税判決が出る可能性と、日本企業が備えるべき実務


1. 何が起きたのか:金曜「オピニオン公表日」の意味

米連邦最高裁は、自身のウェブサイト上で「金曜の公判開廷時に審理済み事件のオピニオン(判決文)を公表し得る」と告知しました。yahoo+1
このなかには、トランプ政権の国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とした広範な関税スキームの適法性を争う事件群も含まれる可能性があるため、市場・企業実務の双方で「金曜が最初の判決チャンスになる」との見方が広がっています。reuters+2

もっとも、最高裁は「どの事件の判断をその日に公表するか」を事前に明らかにしません。reuters+1
したがって、金曜設定はあくまで「IEEPA関税判決がその日に出ることもあり得る」という意味にとどまり、「その日に必ず出る」という性質のものではありません。yahoo+1

実務的なポイントは次の通りです。

  • 金曜に開廷されても、IEEPA関税事件の判断が出るとは限らない。reuters+1
  • 逆に判断が出た場合も、結論だけでなく「救済範囲(還付・差止め等)」「執行時期」「差戻しかどうか」が企業影響を左右する。piie+1
  • 日本企業にとっては、米東部時間午前10時前後(日本では通常、翌日未明)の動きが重要な判断ポイントとなる。yahoo+1

2. どの事件か:IEEPA関税を巡る争点

現在、IEEPAを根拠とするトランプ政権の追加関税の適法性が、連邦最高裁で審理対象となっています。wikipedia+2
争点は、大きく整理すると次の二つです。wikipedia+1

  • IEEPAは、そもそも輸入関税(tariffs)を課す権限を大統領に与えているのか。
  • 仮にIEEPAが関税を認めるとしても、委任が広すぎて立法権限の違憲な委任(nondelegation)に当たらないか。

この枠組みで審理されている代表例が、Learning Resources, Inc. v. Trump です。closeup+1
オーラルアーギュメント(口頭弁論)は2025年11月5日に行われ、保守派・リベラル派双方の判事から、IEEPAによる広範な関税スキームに懐疑的な質問が相次いだと報じられています。piie+1

また、Trump v. V.O.S. Selections, Inc. では、IEEPAに基づく「相互関税(reciprocal tariffs)」を含む複数の関税措置の権限根拠と、IEEPAの解釈・合憲性が詳細に論じられています。reuters+1
連邦巡回区控訴裁判所(Federal Circuit)は、2025年8月のエンバンク判決でトランプ政権側のIEEPA関税の一部を違法と判断しており、その是非が今回最高裁で問われています。reuters+2


3. 企業インパクトが大きい理由:還付リスクとキャッシュフロー

IEEPA関税に関する最大の実務論点は、「違法判断となった場合、どこまで・どのように還付されるのか」です。cnbc+1
ロイターは、CBP(米税関・国境警備局)のデータに基づき、IEEPA関税について2025年12月時点で1,335億ドル超が裁判所命令による還付リスクにさらされ得ると報じています。wixx+1

もっとも、最高裁がIEEPA関税を違法と判断したとしても、

  • 既徴収分の還付を一律に命じるのか、
  • あるいは還付の可否・範囲を下級審や行政府の手続設計に委ねるのか、

については不透明とされています。reuters+2

この不確実性は、以下の三部門に同時に波及します。

  • 経理・財務:還付債権の認識、貸倒リスク、キャッシュフロー見込みの再評価。cnbc+1
  • 税務:関税コストの損金算入時期、還付時の所得税・州税等の取り扱い。jdsupra+1
  • 通関・ロジスティクス:還付請求の実務負担、追加監査や事後調査のリスク管理。reuters+1

関税は「支払ったら終わり」ではなく、判決次第で資産(還付債権)にも、費用確定の見直しにも、追加コスト(新たな代替関税・サーチャージ等)にもなり得る点が重要です。cato+2


4. どんな判決パターンがあり得るか

現在の報道・分析を踏まえると、最高裁の結論は大きく次の三類型に整理し得ます(あくまで可能性の分類です)。jdsupra+1

想定される最高裁判断企業実務への含意直後に起こりやすいこと
IEEPA関税を適法とする現行IEEPA関税スキームが維持されやすいが、合憲性判断の書きぶりによっては今後の大統領権限行使に影響し得る。piie+1既存の価格・調達戦略を前提にしつつ、今後の追加関税・交渉戦略に注意してモニタリング。
IEEPA関税を違法とする既徴収分の還付方法・範囲と、清算(liquidation)済エントリーの扱いが最大論点となる。reuters+1自動還付ではなく、訴訟・行政手続を通じた還付請求が必要になる可能性が高く、案件単位の証憑とタイムライン設計が重要。
差戻しや限定判断特定のカテゴリーのみ違法/特定の適用場面のみ違憲(nondelegation)のような限定的判断や、事案を連邦巡回区控訴裁へ差戻す可能性がある。piie+1不確実性が長引き、価格転嫁・契約条項・通関戦略の暫定対応を継続しながら、追加訴訟・規則改正を追う必要がある。

さらに重要なのは、「今回の事件で直接争われていない関税が多数ある」点です。
ロイターは、今回の最高裁審理の対象は主としてIEEPAを根拠とする新しい関税スキームであり、通商拡大法232条(安全保障)、通商法201条(セーフガード)、通商法301条(不公正貿易慣行)など、他の法律に基づく既存の関税は形式上は別枠で、今回の事件の射程外にあると整理しています。reuters

したがって、仮にIEEPA関税が違法となっても、232条・301条等に基づく関税が自動的に失効するわけではありません。reuters


5. 違法判断でも関税ゼロとは限らない:代替スキームの現実

IEEPA関税が違法と判断されたとしても、政権側が他の法的根拠を用いて類似の関税スキームを再構成する可能性は高いと指摘されています。cato+1
USTRや政権当局者は、IEEPA関税が否定された場合でも、他の法律によって歳入や交渉レバレッジを再現し得るとの趣旨を示唆していると報じられています。cato

具体的な候補として、通商法122条(為替不均衡等に対する最大15%の一時的関税)などの手段が取り沙汰されており、適用期間・上限税率といった制度上の制約がネックとなる点が指摘されています。reuters+1
AP通信等も、最高裁判断いかんにかかわらず、政権が他の法的ツールを模索している状況を伝えています。reuters+1

企業側の現実的な前提は「勝っても負けても制度が動く」であり、

  • IEEPA
  • 通商法122条
  • 通商拡大法232条
  • 通商法301条

など条文ごとに影響範囲・発動条件・税率上限を分解してモニタリングすることが求められます。jdsupra+2


6. 日本企業が今すぐ行うべき実務チェック

日本企業が直ちに着手すべきは、「自社の米国向け輸入に関する関税負担を、法的根拠ごとに棚卸しし、権利保全と資金影響を見える化する」ことです。cnbc+2

(1) 影響把握:IEEPA関税エントリーの特定

  • 自社および米国現地法人の輸入データから、どのエントリーがIEEPAに基づく追加関税の対象となっているかを抽出。
  • 通関業者・ブローカーと連携し、エントリサマリー・課税通知・税率コード(特恵・追加税率コード)を確認して、IEEPA該当分を切り分ける。reuters+2

(2) 還付を見据えた証憑整備

  • 還付請求や訴訟提起が必要となる場合を想定し、各案件ごとに以下を整理・保管。
    • インボイス・パッキングリスト
    • HSコードと原産地証明
    • 課税計算明細(通常関税・IEEPA追加関税の内訳)
    • 契約書・価格調整条項(サーチャージ、リベート等)
  • 一部報道では、還付請求権を第三者に売却する取引も出ており、権利の所在を明確にしておくことも重要とされています。reuters+1

(3) 精算と訴訟の「交通整理」

IEEPA関税を巡る訴訟について、米国国際貿易裁判所(CIT)は2025年12月23日付の事務手続き命令で、新たに提起されるIEEPA関税関連の救済訴訟について、原則として手続を停止し、最高裁判断後に「適切な次の措置」を示す方針を明らかにしました。reuters
また、同年12月15日の裁定では、トランプ政権がIEEPA関税の還付意向を示していること等を理由に、IEEPA関税の清算停止を求める訴訟を棄却しており、「訴えた企業だけが還付対象になるのではないか」との懸念も引き続き指摘されています。reuters

  • 最高裁判断の内容によっては、「訴訟を提起している企業のみ還付対象」「行政的な一括還付」など、還付スキームが大きく分かれ得る。
  • 既に提訴済みか、これから提訴するか、あるいは行政的な救済を待つかといった戦略とタイミングは、米国側通関専門家・弁護士と個別案件ごとに検討すべきです。cnbc+1

(4) 契約・価格の再点検

  • 判決によってコストが戻る可能性があっても、短期的には資金繰りと価格転嫁を継続する必要があります。
  • 販売契約の関税条項(tax clause)、サーチャージ、価格改定ルール、リベート条項などについて、IEEPA関税がゼロになった場合の調整メカニズムや、代替関税が導入された際の対応ルールを棚卸ししておく必要があります。jdsupra+1

7. 金曜当日に何を見るべきか:情報ルート

金曜の動向を追ううえで、一次情報と速報分析それぞれで押さえるべきポイントは次の通りです。

  • 最高裁のスリップオピニオン(Slip Opinions)
    • 当日公表される判決文の公式版で、最も信頼できる一次情報源です。reuters
    • 最高裁公式サイトの「Slip Opinions」ページで公開されます。reuters
  • SCOTUSblog
    • 最高裁のオピニオン公表日にあわせて、どの事件の判決が出たか、概要と初期的な分析をライブで更新する予定が告知されています。reuters+1
  • 報道機関(ロイター等)
    • ロイターは、IEEPA関税の合法性判断と還付リスク(1,335億ドル超)や、判決内容が企業の清算・還付に与える影響を継続的に報じています。wixx+2
    • 速報段階では、「結論(合法・違法・差戻し)」だけでなく、「救済(remedy)」「執行停止(stay)」「差戻し(remand)」の書きぶりを必ず確認することが重要です。piie+2

企業実務は、「判決の結論」と「救済・執行に関する部分」の組み合わせで大きく分岐するため、この両方を初動で押さえる必要があります。piie+2


8. まとめとディスクレーマー

  • 金曜のオピニオン公表日設定は、IEEPA関税事件の判決日を「確約」するものではなく、「最初の可能性が開く日」と理解すべき動きです。yahoo+1
  • IEEPA関税の適法性は、トランプ政権が導入した「相互関税」を含む広範な関税運用の法的基盤に直結し、還付規模(1,335億ドル超のリスク)や代替関税導入の可能性を通じて、企業のキャッシュフローと価格戦略を大きく揺さぶるポテンシャルがあります。wixx+2
  • 本稿は一般的情報提供であり、個別案件についての法的助言ではありません。具体的な対応は、米国側の通関専門家・弁護士と連携のうえ、個別事案ごとに判断してください。jdsupra+1

  1. https://www.reuters.com/legal/government/with-trumps-tariffs-line-us-supreme-court-plans-rulings-friday-2026-01-06/
  2. https://www.yahoo.com/news/articles/trumps-tariffs-line-us-supreme-172732216.html
  3. https://www.reuters.com/world/us/us-tariffs-that-are-risk-court-ordered-refunds-exceed-1335-billion-2026-01-06/
  4. https://www.piie.com/blogs/realtime-economics/2025/will-supreme-court-determine-fate-trump-tariffs
  5. https://en.wikipedia.org/wiki/Learning_Resources_v._Trump
  6. https://www.closeup.org/president-trumps-tariffs-go-to-court/
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  8. https://www.cnbc.com/2025/09/08/trump-tariff-refund-trade-treasury-bessent-supreme-court.html
  9. https://wixx.com/2026/01/06/factbox-us-tariffs-that-are-at-risk-of-court-ordered-refunds-exceed-133-5-billion/
  10. https://www.reuters.com/business/companies-collecting-pennies-dollar-market-recoup-some-tariff-costs-2025-12-23/
  11. https://www.jdsupra.com/legalnews/what-every-multinational-should-know-9757797/
  12. https://www.cato.org/commentary/trump-has-many-options-supreme-court-strikes-down-tariffs
  13. https://www.reuters.com/legal/government/which-trumps-tariffs-could-us-supreme-court-strike-down-2025-11-03/
  14. https://www.reuters.com/legal/us-supreme-court/
  15. https://www.facebook.com/Reuters/posts/with-trumps-tariffs-on-the-line-us-supreme-court-plans-rulings-for-fridayclick-t/1432924435364951/
  16. https://x.com/ReutersChina/status/2008735501868499139
  17. https://x.com/aogarza/status/2008662282864366069
  18. https://www.tradingview.com/news/reuters.com,2026:newsml_L1N3Y70JU:0-with-trump-s-tariffs-on-the-line-us-supreme-court-plans-rulings-for-friday/
  19. https://www.tradingview.com/news/reuters.com,2026:newsml_L6N3Y00OD:0-us-tariffs-that-are-at-risk-of-court-ordered-refunds-exceed-133-5-billion/
  20. https://www.reuters.com/legal/government/billions-balance-us-companies-fighting-class-action-appeals-2026-2026-01-06/

日米「15%相互関税」枠組みの適用範囲と時期


輸出側(日本企業)にとっては見積もりと契約条件、輸入側(米国側の輸入者)にとっては申告実務に直撃するのが、この「15%」です。ポイントは、15%が一律上乗せではなく、原則として米国の通常税率(Column 1=MFN)を含めた合算で15%になる設計だという点です。japan.kantei+1

1. 今回の「15%」は何を意味するのか

日米合意の実装として、米国は日本原産品について、原則「ベースライン15%」の関税枠組みを適用しました(ほぼ全品目が対象)。一方で、自動車・同部品、航空宇宙(民間航空機)などは別扱いのルールが設定されています。whitehouse+1

ここで誤解が多いのが、15%が「追加で15%」だと思われやすい点です。実務上のコアは次のロジックです。

2. 適用ロジック:MFN込みで合算15%

CBP(米国税関・国境警備局)のガイダンスでは、日本原産品の相互関税は、品目ごとのColumn 1税率(従価税、または従価税相当)に応じて決まります。whitehouse

基本ルール(一般品目)

Column 1税率が15%以上の場合
追加の相互関税は0%(実務上は専用のChapter 99番号9903.02.72を申告)whitehouse

Column 1税率が15%未満の場合
Column 1と相互関税の合算が15%になるように調整(いわば「15%までの上乗せ」、HTSUS番号9903.02.73を使用)whitehouse

特定税率(従量税など)の扱い

Column 1が従量税や複合税率の場合は、税額を課税価格で割って従価税相当に換算し、その換算率が15%未満かどうかで判定します。whitehouse

実務上の要点

ACE(米国の電子申告システム)は、所定のChapter 99番号を組み合わせて申告すると、結果として15%になるよう計算を置き換える運用が示されています。whitehouse

3. 適用範囲:対象と例外をどう切り分けるか

対象の基本

対象は「日本原産品」です。出荷地が日本かどうかではなく、米国の原産地判定(実質的変更など)で日本原産と扱われるかが起点になります。実務では、サプライチェーン上の加工地が絡む製品ほど、原産地の取り違えがコスト差に直結します。

例外1:民間航空機(Civil Aircraft Agreement)

民間航空機協定(WTOの民間航空機協定)に該当する日本原産の民間航空機(軍用機と無人機を除く)および関連部品等は、相互関税に加えて、アルミ・鉄鋼・銅など一部の232条追加関税から外れる扱いが明示されています(専用のChapter 99番号9903.96.02で申告)。whitehouse

例外2:232条対象品目は原則「相互関税の対象外」

日本原産品でも、232条措置(鉄鋼、アルミ、銅、自動車・同部品など)対象は、相互関税の上にさらに重ねるのではなく、232条側の枠組みで扱う整理が示されています。jetro+1

例外3:特定の医薬品や天然資源など(ゼロ化の可能性)

大統領令では、米国内で入手困難な天然資源やジェネリック医薬品などについて、相互関税率を0%に修正できる枠組みが置かれています。該当性の判断と運用は、今後の当局通知とHTS改正の具体化を前提に、個社での品目当て込みが必要です。whitehouse

4. 時期:いつから何が変わったのか(実務の時系列)

今回の論点は「発効日が1回ではない」ことです。大枠は次の理解が安全です。

重要日程

2025年8月7日(米国東部時間00:01以降)
日本原産品に対する相互関税の適用が開始されました。初期運用では専用のHTS番号9903.02.30で申告する扱いが示されました。japantimes+2

2025年9月4日
日米合意を実装する大統領令が公表され、15%ベースラインと、セクター別扱いの枠組みが明示されました。govinfo+1

2025年9月16日(米国東部時間00:01以降)
申告用のChapter 99番号が更新され、従来番号9903.02.30がACE上で使用不可となり、新番号9903.02.72と9903.02.73へ移行しました。加えて、自動車・同部品と民間航空機の取り扱いがこの日から明確に運用開始となっています。whitehouse

遡及と修正の実務

大統領令には、2025年8月7日以降の輸入に遡って適用する旨が置かれ、CBPが返金や修正の手順を案内する形になりました。特に2025年8月7日から9月15日の間に輸入実績がある企業は、当時の申告内容が新ルール下で適切か、輸入者と通関業者と一体で棚卸しする価値があります。federalregister+2

5. 自動車・同部品:別建てで「MFN込み15%」へ

自動車・同部品は232条の枠で再設計され、2025年9月16日以降に輸入される日本原産の自動車・同部品について、Column 1税率に応じて「合算15%」となるよう調整する運用が示されています。whitehouse

  • 自動車でColumn 1税率が15%以上:HTSUS 9903.94.40(追加関税0%)
  • 自動車でColumn 1税率が15%未満:HTSUS 9903.94.41(合算15%)
  • 自動車部品でColumn 1税率が15%以上:HTSUS 9903.94.42(追加関税0%)
  • 自動車部品でColumn 1税率が15%未満:HTSUS 9903.94.43(合算15%)whitehouse

6. ビジネスマン向け:現場が最初に確認すべき3点

自社品目のColumn 1税率が15%未満か
未満なら、原則として15%まで引き上げられるため、価格と利益への影響が大きくなります。whitehouse

232条対象に該当しないか(鉄鋼、アルミ、銅、自動車など)
相互関税で処理するのか、232条側で処理するのかで、申告番号も請求書の説明も変わります。jetro+1

申告の「番号」と「順番」
Chapter 99番号は付ければよいのではなく、複数の追加関税や救済関税が重なる場合に、CBPが示すシーケンスに沿って並べる必要があります。現場では、輸入者側の通関ルールとテンプレート改修が先行課題になります。whitehouse

まとめ

米日15%相互関税枠組みは、単純な一律上乗せではなく、MFN込みで合算15%に調整する設計です。発効は2025年8月7日、申告番号の更新と自動車・民間航空機の具体運用は2025年9月16日が節目となりました。まずは自社品目が「15%未満か」「232条か」「例外(民間航空機等)か」を切り分け、輸入者・通関業者と一緒に申告ルールと過去実績の点検まで進めるのが、最短で損失を止める動きになります。japan.kantei+2


免責事項
本稿は公開情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法的助言ではありません。実際の適用は、最新のHTS改正、CBPのCSMS、通関実務(ACE設定)に従って確認してください。


    1. https://japan.kantei.go.jp/103/statement/202508/07kaiken.html
    2. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/4599e222a3e3b82d.html
    3. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/
    4. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/09/implementing-the-united-states-japan-agreement/
    5. https://www.japantimes.co.jp/business/2025/08/07/economy/reciprocal-tariff-effective/
    6. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-09-09/html/2025-17389.htm
    7. https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/16/2025-17908/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-united-states-japan-agreement
    8. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/09/df5c001da8c7a39e.html
    9. https://www.congress.gov/crs-product/IN12608
    10. https://www.youtube.com/watch?v=JRLUQvYLK1w
    11. https://www.thompsoncoburn.com/insights/u-s-japan-trade-agreement/
    12. https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250708.html
    13. https://www.chrobinson.com/it-it/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-17-2025-client-advisory-us-japan-agreement-implementation-trade-agreement-tariff-modifications/
    14. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/df401b87949acc2a.html
    15. https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/us_tariff/pdf/00_20250822.pdf
    16. https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2025/4692b7c6204944b6/gaiyo20250925.pdf
    17. https://www.pref.toyama.jp/documents/49618/2_jetro0827.pdf
    18. https://www.meti.go.jp/tariff_measures/pdf/2025_0901_02.pdf

    中国が日本向けデュアルユース輸出を「禁止」へ


    企業が直面する実務リスクと、いま取るべき対応

    2026年1月6日、中国商務部は「商務部公告2026年第1号」を公表し、日本向けの両用物項(デュアルユース品目)について輸出管制を大幅に強化しました。 公告の要点は、特定の最終ユーザー・最終用途向け輸出を全面的に禁止し、さらに第三国を経由した移転や提供まで規制の射程に含めた点であり、サプライチェーン全体への影響が大きい措置になっていることです。mofcom+2

    本記事では、中国商務部の公告(一次資料)と報道官コメントをベースに、ビジネス現場で誤解されやすいポイントを整理しつつ、調達・輸出入・コンプライアンスの観点から「今日からできる実務対応」を具体的に解説します。nikkei+2


    1. 何が起きたのか:公布日から即時適用

    中国商務部は2026年1月6日付の「商務部公告2026年第1号」で、「日本向けの両用物項に対する輸出管制を強化する」とし、同公告を公布した日から正式に実施すると明記しました。 公告では、輸出管制強化の法的根拠として「中華人民共和国輸出管制法」など関連法令が引用されています。npc+1

    同日付で公表された報道官の記者問答では、日本の指導者による台湾をめぐる最近の発言が「武力による台湾海峡への関与を示唆し、中国の内政に粗暴に干渉するもの」と位置付けられ、こうした動きに対する対応措置として今回の輸出管制が決定されたと説明されています。scmp+1


    2. 規制の核心:品目リストではなく「最終用途・需要者」起点の禁止

    公告の核心部分は、次の3点の禁止規定です。aa+1

    • 日本の軍事ユーザー向けの両用物項輸出を禁止すること。
    • 日本の軍事用途向けの両用物項輸出を禁止すること。
    • 日本の軍事力向上に資するその他の最終ユーザー・最終用途向け両用物項輸出を禁止すること。

    ここで重要なのは、公告本文が個別品目リストやHSコードを列挙していない点です。禁止対象は「すべての両用物項」でありながら、その判断は最終ユーザー・最終用途(日本の軍事ユーザー/軍事用途/軍事力向上に資する用途)を軸に行うよう設計されているため、単純な品目名ベースの線引きでは対応しきれない構造になっています。mofcom+2

    企業実務上、さらに重いインパクトを持つのが次の一文です。mofcom+2

    「いかなる国家と地域の組織および個人であっても、上記規定に違反して、原産地が中華人民共和国である関連両用物項を日本の組織または個人に転移または提供した場合、法律に基づき法的責任を追及する。」

    この規定は、中国原産の両用物項を第三国経由で日本に移転・転売・横流ししたり、グループ会社間移転や修理返送などの形で日本側に提供したりする行為も対象に含める趣旨と解釈されます。 結果として、一次調達ルートだけでなく、第三国の販売会社や海外グループ会社を経由するサプライチェーン全体が、規制リスクの影響下に置かれることになります。mofcom+5


    3. 「デュアルユース」とは何か:貨物だけでなく技術・サービスにも拡張

    中国の輸出管理法制において「両用物項(デュアルユース品目)」は、「民生用途にも軍事用途にも利用可能、または軍事能力の増強に資する」物品を意味し、貨物に加えて技術およびサービスも含む広い概念として定義されています。 輸出管理法は、特に兵器や大量破壊兵器などの設計・開発・製造・使用に関連し得る物品・技術・サービスを重点対象としていると説明されています。chinalawtranslate+1

    また、輸出管理法上の「管理対象」には、関連物品に関する技術情報やデータも含まれ得ることが明示されており、管理対象行為も「国外への移転」(輸出)だけでなく、「外国の組織・個人への提供」という形態まで含めると規定されています。 そのため、企業側としては「部品の輸入」だけの問題と捉えるのではなく、契約・設計図・ソフトウェア・技術支援・リモートサポート等の提供行為まで影響が及び得る、という前提でリスク評価を行う必要があります。mofo+4


    4. どんな企業が影響を受けやすいか:鍵は「用途」と「顧客構造」

    今回の措置は、「最終用途」と「最終ユーザー」による禁止対象の判断が中心となるため、業種区分以上に、顧客構造や用途説明の仕組みの強さが影響の大きさを左右します。scmp+2

    影響が出やすい典型例は次の通りです。

    • 防衛関連企業、または防衛関連企業向けのサプライヤー全般。
    • 航空宇宙、通信機器、レーダー・センサー、測位システム、先端材料、精密工作機械、半導体製造装置・材料など、軍事転用懸念が想定されやすい分野。
    • トレーダー経由・汎用品の反復取引・最終顧客が見えにくい販売モデルなど、用途説明が弱い商流。

    一部報道では、レアアースなどの重要素材や、ドローン・半導体関連を含むハイテク分野が影響例として取り上げられていますが、公告自体は具体的な品目リストを示していません。 このため、現場レベルでは「軍事転用の可能性が少しでも疑われる取引は、念のため保留・停止する」といった保守的な運用が広がるリスクが大きいと言えます。bloomberg+4


    5. 日本企業が今日から取るべき対応:調達・物流・法務の実務チェック

    A. 最初の48時間でやること(緊急対応)

    • 中国原産の部材・材料・装置・ソフトウェア・図面提供が関わる取引を棚卸しし、一覧化する。
    • 取引単位で「最終顧客」「最終用途」「軍事転用の可能性」を、社外説明用に1枚で示せる状態に整理する。
    • 中国側サプライヤーに対し、当該品目が両用物項として輸出管理対象となり得るか、出荷条件および要求される書類(用途証明書など)を確認する。
    • 第三国経由の調達についても原産国情報を再確認し、「実質的に中国原産の両用物項を取得していないか」をチェックする。商社経由や海外グループ会社経由の取引ほど慎重な確認が必要です。

    B. 次の30日でやること(再発防止・制度化)

    • 用途証明(End Use Statement)および需要者情報(End User)の取得・保存方法を社内標準として整備し、テンプレート化する。
    • 調達・販売契約に「輸出管理法令により出荷が停止し得る」こと、「停止時の通知義務」およびリードタイム等への影響の取り扱いを明記する。
    • グループ会社間の部品移転や修理返送、貸出機材など、社内物流も含めた移転フローを棚卸しし、中国原産の両用物項が日本に戻るパターンを洗い出す。
    • 代替サプライヤー・代替材料・在庫戦略(安全在庫の積み増しや調達先分散)を検討し、「停止した場合のバックアップ」を事前に設計する。

    6. そのまま使える用途証明のたたき台(例)

    日本企業が中国側サプライヤーから求められることが多いのは、用途の透明性と、軍事転用防止に関するコミットメントです。 以下は、社内でドラフトを用意する際の例文です(実際の運用にあたっては、必ず自社の法務・輸出管理担当と協議してください)。orrick+1

    日本語例(たたき台)
    本製品は民生用途のみに使用され、軍事用途には使用しません。本製品の最終需要者は〇〇であり、第三者への転売、用途変更、または日本国内外の軍事目的への転用は行いません。

    英語例(たたき台)
    The item will be used solely for civilian end use and will not be used for military purposes.
    The final end user is [Name]. We will not resell, retransfer, or change the end use in any way that could support military purposes.

    この種の文書は、サプライヤー側の出荷可否判断の材料として重視される一方、内容に虚偽や管理不備があれば、後の調査・監査において自社の説明責任に直接跳ね返ります。 形式だけを整えるのではなく、契約書・仕様書・顧客情報・用途説明資料などの裏付けと、保存ルールまで一体で設計することが安全です。allbrightlaw+4


    7. まとめ:今回の措置を「調達の話」で終わらせない

    今回の中国の措置は、単に「日本向けの輸出が難しくなる」というレベルの話ではなく、最終用途・最終ユーザーの説明力が弱い企業ほど、突然サプライチェーンが止まりやすくなるタイプのリスクです。 さらに、中国原産の両用物項を第三国経由で日本に移転・提供する行為についても法的責任追及の対象になり得る旨が明記されており、商流やグループ構造が複雑な企業ほど影響を受けやすくなります。mofcom+4

    最優先で取り組むべき実務は、次の2点です。

    • 中国原産品が関与する取引を見える化し、用途と需要者を第三者に説明できる状態にすること。
    • 供給が止まった場合の代替調達・在庫戦略と、契約上の手当て(不可抗力・出荷停止条項・通知義務など)を先に作っておくこと。

    公告文そのものは短くても、サプライチェーンとコンプライアンスの影響は中長期的に尾を引きます。 公告が出た直後のタイミングだからこそ、社内の棚卸しと標準書式・ルールの整備に一気に着手できるかどうかが、数カ月後の混乱度合いを大きく左右します。mofo+4

    1. https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2026/art_8990fedae8fa462eb02cc9bae5034e91.html
    2. https://www.mofcom.gov.cn/xwfb/xwfyrth/art/2026/art_1f25cb39adfa4561b34b4ea46d2bcee7.html
    3. https://www.chinalawtranslate.com/en/export-control/
    4. http://www.npc.gov.cn/englishnpc/c2759/c23934/202112/t20211209_384804.html
    5. https://asia.nikkei.com/politics/international-relations/japan-china-tensions/china-bans-exports-of-dual-use-items-for-military-purposes-to-japan
    6. https://www.aa.com.tr/en/asia-pacific/china-bans-sale-of-dual-use-items-to-japanese-end-users-for-military-purposes/3791611
    7. https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3338907/china-bans-exports-military-related-goods-japan-dispute-intensifies
    8. https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/dwmygl/art/2025/art_65480a162cd745c2b0863d67553a4b05.html
    9. https://www.mofo.com/resources/insights/241216-china-s-new-export-control-framework-key-changes
    10. https://www.orrick.com/en/Insights/2024/11/China-Issues-Regulation-on-Export-Control-of-Dual-Use-Items
    11. https://www.allbrightlaw.com/EN/10475/c5ca6770ad261d5d.aspx
    12. https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-01-06/china-bans-exports-of-dual-use-items-to-japan-military-users
    13. https://www.japantimes.co.jp/news/2026/01/06/asia-pacific/china-dual-use-export-ban/
    14. https://sms.mofcom.gov.cn/cms_files/filemanager/676898164/attach/20249/7e465a3c4b3c4f11be09a3a4f6d09916.pdf
    15. http://wzs.mofcom.gov.cn/api-gateway/jpaas-web-server/front/document/download?fileUrl=YW5UzzlvCwcM%2FNHHX%2FtT6JV7pJDyrvTvKb1f3uS6fJXqmWZcN8LioM60YFZjuMLTHKpbESMgqZ0JCMOFxV9%2FJeOMI%2FgV3L4AdDIgOv3UlubfFQWCFgR4969NwUd2gyxHt1%2FWiuInMXIyFqwnbHXyC38LGlNx9uttfBTIn%2FKoRt0%3D&fileName=%E5%A4%96%E5%95%86%E6%8A%95%E8%B5%84%E6%8C%87%E5%BC%952025_%E8%8B%B1%E6%96%87.pdf
    16. https://fdi.mofcom.gov.cn/resource/pdf/wx2024/2024EN.pdf
    17. https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_7fc9bff0fb4546ecb02f66ee77d0e5f6.html
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    19. https://data.mofcom.gov.cn/report/%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%8A%95%E8%B5%84%E6%8A%A5%E5%91%8A2023-%E8%8B%B1%E6%96%87%E7%89%88.pdf
    20. http://cys.mofcom.gov.cn/article/glml/

    米国相互関税の最新運用まとめ(2026年第1週):申告実務で事故を起こさないための要点

    2026年1月上旬時点で、米国の相互関税は「税率そのもの」よりも「エントリー(申告)で正しく表現できるか」が勝負どころです。枠組みは大統領令(IEEPA)とHTSUS(Chapter 99)改定で動き、CBPはCSMSで申告手順を更新してきました。(連邦官報)

    本稿は、2026年1月6日(日本時間)時点で確認できる一次情報(CBP CSMS、大統領令、Federal Register相当の公開情報)をベースに、現場でミスが出やすい論点だけに絞って整理します。(content.govdelivery.com)

    まず押さえるべき結論

    ・国別の「一律上乗せ」ではなく、EU、日本、韓国、スイス、リヒテンシュタインなどは「Column 1関税率が15%未満なら合計15%になるよう上乗せ、15%以上なら上乗せゼロ」という置換型(キャップ型)に寄っています。(The White House)
    ・申告では、Chapter 99を複数付ける場面が多く、並び順と「どの税番に何%のDutyを紐付けるか」を誤ると、税率が合っていてもACEでエラーや過不足が起きます。(content.govdelivery.com)
    ・農産品の追加免除(2025年11月13日以降)など、免除の拡張が続き、免除を「税番で宣言」できないと過払いになります。(content.govdelivery.com)
    ・遡及適用や見直しがあるため、すでに出したエントリーもPSCやプロテストで是正する運用が前提です。(content.govdelivery.com)
    ・回避目的の積み替え(transshipment)認定では、追加40%の枠が用意され、事後の訂正や清算時徴収もあり得ます。(content.govdelivery.com)

    2026年第1週に効く「直近アップデート」整理(主に2025年11月以降)

    運用を変えた更新だけ、日付順に並べます。

    1) 農産品の免除拡大(2025年11月13日以降に適用)

    2025年11月14日のCSMSは、農産品237分類と追加11カテゴリを相互関税の対象外に追加し、免除の申告に9903.01.32(原則)または9903.02.78(特定カテゴリ)を使うよう示しました。(content.govdelivery.com)

    実務の要点は、同じ商品でも「免除対象のHTSUSに正しく分類できるか」で課税・非課税が分かれる点です。免除対象を掴んでいても、税番で宣言できなければ過払いになります。(content.govdelivery.com)

    2) 日本:基準15%(一般品)+自動車・航空は別建て(2025年9月の実装)

    日本品は「ほぼ全品に基準15%」を適用しつつ、自動車・部品、航空宇宙は別の扱いという設計がCSMSで明確化されています。(content.govdelivery.com)

    一般品の相互関税は、Column 1の税率が15%以上なら追加ゼロ(9903.02.72)、15%未満なら合計15%になるよう調整(9903.02.73)です。(content.govdelivery.com)
    さらに、民間航空機(WTO民間航空機協定の対象、無人機は除外)は追加関税の対象外として9903.96.02を使う整理です。(content.govdelivery.com)
    また、日本の自動車・部品はSection 232側の枠で、Column 1に応じて合計15%にする見せ方(9903.94.40〜.43)が示されています。(content.govdelivery.com)

    3) EU・日本・英国:置換税のDutyの載せ方(2025年9月の補足)

    CSMSは、EU(9903.02.20)と日本(9903.02.73)の「合計15%」系について、DutyをChapter 99側に15%として載せ、Chapter 1〜97側はDuty 0でラインバリューを載せる、といった申告の作法を明確にしました。(content.govdelivery.com)

    英国についても、自動車部品のSection 232枠で「合計10%」(Column 1が10%未満の場合に調整)という扱いと、申告税番(9903.94.32)が示されています。(content.govdelivery.com)

    4) 韓国:Column 1のGeneral/SpecialとSPIが鍵(2025年12月)

    韓国品は、Column 1(GeneralまたはSpecialの適用側)に基づき、15%以上なら追加ゼロ、15%未満なら合計15%という形です。(content.govdelivery.com)
    ここで重要なのは、KORUSのSpecialを使うためのSPI「KR」の存在がDuty判定に影響する、と明記されている点です。(content.govdelivery.com)

    5) スイス・リヒテンシュタイン:合計15%、しかも遡及(2025年12月)

    スイス・リヒテンシュタインも、Column 1が15%以上なら追加ゼロ、15%未満なら合計15%で、税番(スイス:9903.02.82/83、リヒテン:9903.02.87/88)が提示されました。(content.govdelivery.com)
    しかも適用開始は2025年11月14日以降に遡及する整理で、過去のエントリー是正が実務課題になります。(content.govdelivery.com)

    6) 中国(香港・マカオ含む):追加10%が継続(2025年11月)

    中国品は、相互関税として10%の追加(例:9903.01.25)が継続する旨がCSMSで再確認されています。(content.govdelivery.com)
    また、相互関税と別のIEEPA関税(いわゆるFentanyl関連)など、複数の追加関税が同時に掛かり得る点も注意喚起されています。(content.govdelivery.com)

    「置換型(合計15%)」を前提に、社内の見方を変える

    相互関税は「一律で何%上乗せ」と思い込むと事故ります。少なくともEUについては、大統領令本文で「Column 1が15%未満なら合計15%、15%以上なら追加ゼロ」というロジックが明記されています。(The White House)

    同じ発想が、日本・韓国・スイス・リヒテンシュタインのCSMSでも繰り返されており、実務的には次の2分岐を常に確認する運用が必要です。(content.govdelivery.com)

    ・Column 1(GeneralまたはSpecial)が15%以上か
    ・15%未満なら、申告上は「合計15%」としてChapter 99に載せるのか、「差分(15%−Column 1)」として載せるのか(Drawback絡みで変わる)

    ここで落とし穴が、Column 1が従量税や複合税の場合です。CSMSは、課税額を通関価格で割って従価換算し、15%との比較を行う方法まで例示しています。(content.govdelivery.com)

    エントリー実務:Chapter 99の並び順とDutyの紐付けが本丸

    CBPのCSMSは、複数HTSUSを同一ラインで申告する際の並び順と、Dutyを正しい税番に紐付けることを強く求めています。異なる税番のDutyを合算してどれか1つに寄せる申告は不可、と明確に書かれています。(content.govdelivery.com)

    基本の並び順(代表例)は次の通りです。(content.govdelivery.com)
    ・Chapter 98(該当時)
    ・Chapter 99(追加関税)
    ・Trade remediesの並び:Section 301 → IEEPA Fentanyl → IEEPA Reciprocal → Section 232/201 → 232/201のクォータ
    ・置換税やMTBなどの別用途Chapter 99
    ・クォータ
    ・Chapter 1〜97(本来の品目)

    さらに、US原産コンテンツが20%以上ある場合(9903.01.34)は、US部分と非US部分を2行に分けて申告し、相互関税は非US部分に対してのみ課す、という手順まで示されています。(content.govdelivery.com)

    免除は「知っている」だけでは足りない。税番で宣言する

    代表的な免除の考え方は、次のように整理されます(詳細は常に最新CSMS優先)。(content.govdelivery.com)

    ・Annex II(対象品目の免除):9903.01.32を使うのが基本。農産品の一部カテゴリは9903.02.78。(content.govdelivery.com)
    ・Section 232対象(鉄鋼、アルミ、自動車・部品、銅など):相互関税の免除として9903.01.33を継続使用。(content.govdelivery.com)
    ・カナダ・メキシコ:一定の条件下で免除のための二次分類(9903.01.26/27)を付す整理。(content.govdelivery.com)
    ・民間航空機:日本は9903.96.02で追加関税から外す整理。韓国やスイス等でも航空関連の免除見せ方が用意されています。(content.govdelivery.com)

    遡及と修正は「例外」ではなく通常運転。PSCとプロテストを前提にする

    韓国やスイス・リヒテンシュタインのように、取決めやFRNにより遡及で税番・税率の見せ方が変わり、ACEにデプロイされるケースがあります。(content.govdelivery.com)

    その場合、未清算ならPSCで返金を狙う、清算済みなら清算後180日以内のプロテストで争う、といった道筋がCSMS内で明示されています。(content.govdelivery.com)
    日本向けの更新では、貨物リリース後10日以内かつ見積税額をデポジットする前に訂正することで、返金手続きを避けやすいという実務的な助言まで入っています。(content.govdelivery.com)

    日本企業向け:米国輸入者が詰まらないための「提供パッケージ」

    相互関税局面で、輸出者側ができる最大の支援は「米国側がChapter 99を正しく選べる材料」を最初から渡すことです。以下は最低限のセットです。

    ・HTS分類の前提情報(用途、材質、機能、型番、仕様書の要点)
    ・原産国判断の根拠(製造工程の要約、主要部材の原産)
    ・取引価格の構成(従価税なので、インボイス値の妥当性が重要)(content.govdelivery.com)
    ・免除対象の可能性がある場合は、その根拠となるHTSUS分類や、該当し得るChapter 99(例:民間航空機、農産品カテゴリ、Section 232対象)(content.govdelivery.com)
    ・USコンテンツ20%ルールに該当し得る場合は、US原産部分と非US部分の値の根拠(行分割申告が必要)(content.govdelivery.com)

    加えて、米国側のブローカーが「置換税(合計15%)」の取り扱いか、「Drawbackを見据えて差分申告」かを選べるよう、社内で方針を決めて共有するのが現実的です。実際、CBPはDrawbackの例外的な載せ方を明示しています。(content.govdelivery.com)

    主要国・枠組みの早見表(2026年第1週時点)

    国名関税率出所備考
    日本原則:合計15%(Column 1が15%未満の場合に調整、15%以上は追加0)CBP CSMS #66242844 (content.govdelivery.com)一般品は9903.02.72/73。自動車・部品はSection 232で9903.94.40〜.43。民間航空機は9903.96.02 (content.govdelivery.com)
    欧州連合(EU)原則:合計15%(15%未満は9903.02.20、15%以上は9903.02.19で追加0)CBP CSMS #65829726 (content.govdelivery.com)大統領令上もColumn 1に応じて合計15%ロジック (The White House)
    韓国原則:合計15%(Column 1 General/Specialに応じて調整)CBP CSMS #66987366 / #67045953 (content.govdelivery.com)KORUSのSPI「KR」がSpecial適用の鍵 (content.govdelivery.com)
    スイス原則:合計15%(15%未満は9903.02.83、15%以上は9903.02.82で追加0)CBP CSMS #67133044 (content.govdelivery.com)2025年11月14日以降に遡及 (Reuters)
    リヒテンシュタイン原則:合計15%(15%未満は9903.02.88、15%以上は9903.02.87で追加0)CBP CSMS #67133044 (content.govdelivery.com)2025年11月14日以降に遡及 (Reuters)
    中国(香港・マカオ含む)追加10%(例:9903.01.25)CBP CSMS #66749380 (content.govdelivery.com)他のIEEPA追加関税等と重複し得る (content.govdelivery.com)
    複数国共通(農産品など)追加相互関税の免除(例:9903.01.32、農産品カテゴリは9903.02.78)CBP CSMS #66814923 / CSMS #65829726 (content.govdelivery.com)2025年11月13日以降に免除拡大 (content.govdelivery.com)

    おわりに:週次で見るべき一次情報の順番

    相互関税は「更新を取り逃さない仕組み」を作った企業が最後に勝ちます。おすすめの確認順は次の通りです。

    ・CBP CSMS(申告実務の手順が最速で更新される)(content.govdelivery.com)
    ・ホワイトハウス大統領令(Annexや適用開始・遡及の根拠がここ)(The White House)
    ・USTRの「Presidential Tariff Actions」整理ページ(関連資料への入口として便利)(United States Trade Representative)

    2026年1月前後に節目を迎える主なFTA/EPA

    2026年1月(実務上は多くが2026年1月1日)に、協定税率が更新・引下げ(または撤廃段階に到達)したことが一次情報で確認できるFTA/EPAは、少なくとも下表のとおりです。

    なお、FTA/EPAの関税は「毎年1月1日に段階的に動く」タイプが多く、品目ベースで網羅すると対象が非常に広くなります。ここでは、協定として税率が動くこと自体が明示されているものを中心に整理します。

    協定名当事国・地域2026年1月の関税率変更(概要)実施日一次情報(根拠)
    CPTPPCPTPP当事国日本を除く当事国は、その後の関税削減(staging)が毎年1月1日に実施されるため、2026年1月1日に協定税率が次段階へ更新。日本は毎年4月1日更新。2026年1月1日(日本は4月1日)(international.gc.ca)
    RCEPASEAN10+日中韓豪NZ(計15)ブルネイ、カンボジア、中国、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、NZ、シンガポール、タイ、ベトナムは毎年1月1日に段階引下げ。インドネシア、日本、フィリピンは毎年4月1日更新。2026年1月1日(国により4月1日)
    豪印ECTAオーストラリア、インド豪州側の関税表で段階区分B5の品目は、年5(2026年1月1日)から無税化に到達(豪州の対印輸入が広く無税化)。2026年1月1日(オーストラリア外務貿易省)
    ChAFTAオーストラリア、中国乳製品などで、中国側の対豪関税(最大20%)が2026年1月1日までに撤廃段階に到達(最終段階の節目)。2026年1月1日までに(オーストラリア外務貿易省)
    KAFTAオーストラリア、韓国一部の高関税(例:乳児用調製粉乳など)で、2026年1月1日までに撤廃段階に到達する旨が明示。2026年1月1日までに(オーストラリア外務貿易省)
    A-UKFTAオーストラリア、英国水産物で、残存関税が2026年1月1日までに段階的に撤廃される旨が明示。2026年1月1日までに(農業省)
    AfCFTA(南ア実装)アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)南アフリカ歳入庁(SARS)が、AfCFTAの関税段階引下げ(phase down)実装のため、2026年1月1日効力で関税率表改正を告知。2026年1月1日(South African Revenue Service)

    補足(日本企業の実務観点)

    • CPTPPとRCEPは、協定そのものとして「毎年の更新日」が明示されているため、2026年1月1日に多くの国で協定税率が動きます(品目数は膨大)。(international.gc.ca)
    • 一方で、日本側の更新日はCPTPPが4月1日、RCEPも(少なくとも日本・インドネシア・フィリピンは)4月1日運用と整理されています。したがって、2026年1月の影響は「日本から輸出する際の相手国側の税率更新」が中心になりがちです。(international.gc.ca)
    • 日本の関税率表自体は、税関サイトに「2026年1月1日現在」が公開されています(参照用)。協定税率の確認導線としては使えます。(日本の税関)

    米国「相互関税」最新指針を確実に確認する方法

    税率より先に、エントリー実務が崩れる。これが相互関税の怖さです。

    米国の相互関税(Reciprocal Tariffs)は、大統領令とHTSUS改定で枠組みが動き、CBP(米国税関・国境警備局)がCSMS(Cargo Systems Messaging Service)で「申告のやり方」をアップデートしていきます。実務上の事故は、だいたい次の形で起きます。foley+1

    • 自社は正しい税率を把握していたが、Chapter 99(二次税番)の付け方や、課税額の載せ方が古いままだった
    • 遡及適用の更新を取り逃し、過払いか、逆に追徴リスクを抱えた
    • 例外(USMCA、輸送中例外、232条対象除外など)を「申告で表現」できずに詰まった

    以下、2026年1月5日時点で確認できる一次情報をもとに、最新指針の確認ルートと、現場が押さえるべき要点をまとめます。


    1. 最新指針を最短で確認するルート

    相互関税は「どこを見るか」を固定すると強いです。おすすめは次の順番です。

    USTRの整理ページを索引として使う

    USTRの「Presidential Tariff Actions」は、相互関税関連の大統領令と付属書への導線がまとまっています。ここを起点にすると、取りこぼしが減ります。foley

    White House(大統領令)とFederal Register(官報)で法令と発効日を確定

    例えば2025年7月31日付の大統領令は、HTSUS改定の発効タイミングや輸送中例外の考え方を明記しています。Federal Registerでは、関税率変更の正式な公告と発効日が確認できます。jdsupra+1

    CBPのCSMSで「エントリーの正解」を確定

    CBPは、Chapter 99の付け方、課税額の載せ方、FTZ(外国貿易地域)・ドローバック・修正手続までCSMSで具体的に指示します。ここが実務の決定版です。natlawreview+1


    2. 2026年1月時点で「最新」と言えるCBP指針はどれか

    相互関税のCSMSは国別・合意別に増えています。2026年1月5日時点で、相互関税の更新として特に新しいものの一つが、**2025年12月17日付のCSMS(スイス・リヒテンシュタインの枠組み実装)**です。ここでは、15%上限ロジック、使用すべきChapter 99、過去エントリーの修正(PSCやProtest)まで踏み込んでいます。jdsupra

    また、2025年12月18日付のFederal Registerでは、米国・スイス間の関税合意の正式な実施要領が公告されています。jdsupra


    3. まず押さえるべき「申告の地雷」5つ

    1) Chapter 99(二次税番)の付与が必須

    相互関税は「通常の1-97類の税番」だけでは申告が完結しません。少なくとも1つのChapter 99二次税番を申告するよう求められています。natlawreview

    2) 課税額を別税番に合算しない

    CBPは「相互関税の税額を、正しいHTSUS(Chapter 99側)に紐づけて載せる」ことを強く要求しています。合算すると後工程(還付、監査、照会)で破綻します。natlawreview

    3) 輸送中例外は期間と条件が命

    例外は「条件を満たす」だけでは足りず、適用期間が明確に区切られます。例:2025年8月7日基準の輸送中例外は2025年10月5日までのウィンドウが設定されています。linkedin

    4) 迂回(Transshipment)認定は40%に置換され得る

    CBPが「相互関税回避のための迂回」と判断すると、相互関税に代えて40%の追加関税(指定税番への置換)を課す運用が示されています。linkedin

    5) 遡及更新がある。後追い修正の手順も指針に含まれる

    スイス等の事例では、過去分のエントリー修正として、未清算はPSC(Post Summary Correction)、清算済は180日以内のProtestという実務導線まで書かれています。jdsupra


    4. ベースライン指針(2025年4月5日開始)を「実務言語」に翻訳すると

    相互関税の初期ガイダンスでは、次がコアでした。natlawreview

    • 原則:追加10%(指定Chapter 99)
    • 例外:カナダ、メキシコ、Column 2国、寄贈品、情報媒体、Annex II列挙品目、232条対象などは、例外用のChapter 99で表現
    • FTZ:一定条件ではPrivileged Foreign扱いを要求
    • Drawback:相互関税も対象になり得る
    • 申告設計:U.S. content 20%ルール等では、行を分割して申告させる

    これらが「相互関税は税率より申告設計」という現実を作りました。natlawreview


    5. 2025年8月7日以降の更新で、何が変わったか

    2025年8月7日以降は、国別の相互関税(Chapter 99体系)が本格稼働し、対象国はAnnex Iに基づく体系へ移っています。CBPは、対象国の申告に9903.02.02~9903.02.71系を使う旨を明示し、EUについては「Column 1(MFN)税率が15%未満なら合計15%、15%以上なら追加0」というロジックを例示しています。linkedin

    加えて、輸送中例外のウィンドウ、迂回判定時の40%置換など、実務上の事故ポイントがこのフェーズでより明確化しました。linkedin


    6. 合意で「ルールが書き換わる」典型例

    相互関税は、合意が出ると次の流れで運用が上書きされます。

    1. 大統領令で枠組みと改定権限を提示
    2. Commerce/USTRがFederal RegisterでHTSUS改定を公告jdsupra
    3. CBPがCSMSで申告手順を確定し、ACEへデプロイjdsupra+1

    EU枠組みの実装ガイダンスは、この構造をそのまま示しています。craneww

    スイス・リヒテンシュタインの最新ガイダンスでは、15%上限ロジックに合わせ、使用すべき税番(例:9903.02.82/83、9903.02.87/88)まで明確です。jdsupra+1


    7. 社内で回す「最新指針取り込み」チェックリスト

    現場に落とすなら、次の6点を定例化するのが効きます。

    1. 自社品目を棚卸し

    一般品、232条対象、例外対象、合意国の特別ロジック対象、輸送中ウィンドウ対象に分類する

    2. COO(原産国)と根拠書類を固める

    迂回認定のリスクは関税率だけでなく、罰則や追加措置の呼び水になりますlinkedin

    3. Chapter 99マッピングを最新版へ

    CSMSの更新ごとに、ブローカー指示書と社内マスタの整合を取り直すjdsupra+1

    4. エントリー行設計の監査

    税額をどのHTSUSに載せるか、合算していないか、行分割が必要かをチェックするnatlawreview

    5. 遡及適用の有無を必ず確認

    発効日と遡及範囲を、Federal RegisterとCSMSで確定するjdsupra+1

    6. 過去分の手当て

    未清算はPSC、清算済はProtest期限を意識して、過払い・誤りを回収するjdsupra


    8. 相互関税の調査結果(主要例、2026年1月5日時点で確認できる範囲)

    国名関税率出所備考
    日本MFN込みで15%となるよう調整(MFNが15%以上は追加0)trade日本政府整理。適用や対象は品目別に要確認
    欧州連合(EU)Column1が15%以上は追加0、15%未満は合計15%linkedin申告税番(例:9903.02.19/20)と運用更新に注意
    スイスColumn1が15%以上は追加0、15%未満は合計15%jdsupra+12025年11月14日以降の取り扱いとして明示(税番も指定)
    リヒテンシュタインColumn1が15%以上は追加0、15%未満は合計15%jdsupra+1スイスと同一枠組み
    中国相互関税部分は10%(別枠関税は別途)news.globalialogisticsnetwork相互関税以外の追加関税と積み上がる可能性に留意

    注意:台湾・インドなどの情報は2026年1月5日時点で最新のCSMSでは未確認のため、記載を保留しています。最新情報は必ずCSMSとFederal Registerで確認してください。jdsupra+1


    9. まとめ

    相互関税で勝負を分けるのは「税率の暗記」ではなく、次の3つです。

    1. 一次情報の取り方(USTR索引 → 大統領令 → Federal Register → CSMS)foley+2
    2. Chapter 99を軸にした申告設計(税額の載せ方、順序、行分割)natlawreview
    3. 遡及更新と修正手続(PSCとProtestの使い分け)jdsupra

    注意事項

    本稿は2026年1月5日時点で公開されている情報に基づく一般的な解説であり、個別案件の法務・通関判断を代替するものではありません。最終判断は必ず最新のCBP公表資料、Federal Register、専門家確認で行ってください。


    1. https://www.foley.com/ko/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/
    2. https://natlawreview.com/article/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune
    3. https://www.jdsupra.com/legalnews/mexico-proposes-significant-customs-and-3809818/
    4. https://www.jdsupra.com/legalnews/mexico-approves-significant-tariff-5879289/
    5. https://www.linkedin.com/pulse/mexicos-january-2026-tariff-shift-what-means-imports-supply-tian-16cfc
    6. https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
    7. https://www.trade.gov/market-intelligence/mexico-customs-law-reform
    8. https://news.globalialogisticsnetwork.com/2025/11/07/interview-with-globalia-monterrey-a-look-at-mexicos-2026-trade-reforms/

    メキシコ関税引上げとUSMCA適用の盲点

    メキシコ調達と北米輸出のコストが想定外に膨らむ理由

    2026年1月1日、メキシコは一般最恵国税率(MFN)を広範囲に引き上げました。対象はHS8桁で1,463品目、税率は5%から最大50%まで引き上げられ、繊維・履物、鉄鋼、自動車・自動車部品、プラスチック製品など、サプライチェーンの裾野が広い分野が含まれます。natlawreview+1

    このニュースを見て「うちはUSMCAで北米向け輸出だから大丈夫」と判断すると、原価とキャッシュフローで痛い目を見ることがあります。盲点は一言で言えば、完成品の無税と部材の関税コストは別物という点です。

    まず結論:今回の関税引上げで起きること

    次の3点が、実務インパクトの核心です。

    1つ目:メキシコとFTAがない国からの輸入コストが上がる
    中国、インド、韓国、タイ、インドネシアなど、メキシコとFTAを持たない国からの輸入が主な影響対象になります。linkedin

    2つ目:FTA締結国でも、特恵を使わなければMFNが適用される
    日本は日墨EPAやCPTPPにより多くの品目で特恵税率が見込めますが、特恵申告をせずに輸出するとMFNが適用される点が重要です。vemaps

    3つ目:USMCA輸出でも、メキシコ側の部材関税がコストとして残り得る
    特にIMMEXなど関税繰延べスキームを使う企業ほど、USMCA第2.5条の規律が効いてきます。tuttlelaw+1

    何が変わったのか:メキシコ関税引上げの整理

    メキシコ上院は2025年12月10日、輸出入関税法(LIGIE)の改正を可決し、2026年1月1日から新税率を適用する流れになりました。対象の品目数1,463は維持されましたが、途中で115品目が入れ替わっているため、過去のリストで判断するのは危険です。trade+1

    また、旅客車の一部は50%への引上げが維持されるなど、分野によってはインパクトが極端に大きくなり得ます。vemaps+1

    盲点1 非FTA国だけの話ではない

    日本企業の現場で起きやすい誤解は「日本は対象外だから無関係」というものです。実務の実態は次の通りです。

    • 日本原産であっても、日墨EPAやCPTPPの特恵申告をしなければMFNが適用されるvemaps
    • サプライヤーから原産情報が得られず、特恵が使えない輸入が増えると、関税コストが一気に顕在化する

    JETROも、特恵税率の適用には原産地証明書の取得など所定手続きが必要で、手続きをしない場合はMFN税率になる点を明示しています。vemaps

    盲点2 USMCAがあっても、メキシコ側の部材関税は消えない

    USMCAは北米域内の完成品取引を無税化しやすくする仕組みですが、メキシコが域外から輸入する部材にかかる関税まで自動でゼロにするものではありません。ここで効いてくるのが、**USMCA第2.5条(Drawback and Duty Deferral Programs)**です。prodensa+1

    ポイントは2つあります

    1. 関税繰延べは、輸出時に精算が起き得る
    USMCA第2.5条は、一定の条件下で関税還付や関税繰延べを利用して実質的に関税負担を回避することを制限します。条文上、関税繰延べ制度で輸入した物品を他の締約国へ輸出する場合、輸出側は国内消費向けに引き出したかのように関税を賦課し、その上で限定的に免除・減額できる、という構造です。cbsa-asfc+1

    メキシコのMFNが上がると、この精算額の上限(実務的にはLesser of the Twoと呼ばれる差額)が大きくなり、キャッシュフローと原価に直撃します。natlawreview+1

    具体例(自動車部品)linkedin+1

    • メキシコ輸入時の非FTA部材関税(2026年):25%
    • 米国輸出時の完成品関税(USMCA不適合):10%
    • → IMMEX企業は米国側10%のみ相殺可能で、残り15%はメキシコで納付義務が発生

    2. 60日ルールが資金繰りを揺らす
    USMCA第2.5条には、輸出先で支払った関税額の証憑を一定期間内に提示できない場合、輸出側がいったん関税を徴収する建付けがあります。米国・カナダでは、関連する規定として60日という期限が条文運用上の重要な目安になります。tuttlelaw+1

    書類が遅れるだけで、想定外の納付が先に発生し、後追いで調整する形になり得ます。cbsa-asfc

    盲点3 USMCAの適用は「原産性の主張と証明」が前提

    もう一つの落とし穴は、USMCAでの特恵申告は証明の運用が整っていないと簡単に崩れることです。

    USMCAでは特定の様式の原産地証明書は要求されません。その代わり、Annex 5-Aに定められた最低限のデータ要素を含む認証(Certification)を、任意の形式で提示できることが求められます。preferredship+1

    実務で効くのはここです

    • 形式自由という言葉を、証憑管理が不要と誤解する
    • HS6桁を含む要素が必要なのに、分類とBOMの紐付けが曖昧ustr
    • 輸出者・生産者・輸入者の誰が認証するかが社内で決まっていないpreferredship

    結果として、米国側でUSMCA特恵が崩れ米国関税が発生するだけでなく、メキシコ側の関税繰延べ精算も別問題として残り、二重にダメージを受ける構図になります。natlawreview

    企業が今すぐやるべき実務チェック

    最後に、ビジネスマン向けに優先順位順で整理します。

    1 影響品目の特定

    • 自社の輸入品目(TIGIE 8桁)を洗い出し、1,463品目の対象に入っているか確認trade
    • 途中で品目の入れ替えがあるため、最新版のリストで確認するvemaps

    2 調達国とFTA利用有無の棚卸し

    • FTA締結国原産でも、特恵を使っているかを取引単位で確認
    • 特恵未利用の取引を優先して是正するvemaps

    3 IMMEXなど関税繰延べの前提更新

    • 「輸入時は無税」ではなく「輸出時に精算が起き得る」前提で原価を組み直すprodensa+1
    • USMCA第2.5条に基づく差額精算(Lesser of the Two)、証憑の提出期限(60日)を、社内KPIとして管理するtuttlelaw+1

    4 USMCA認証と証憑の整備

    • 認証は様式自由だが、最低限のデータ要素(HS6桁含む)が必要ustr+1
    • 誰が認証するか、どこに保管するか、更新頻度を決めるpreferredship

    まとめ

    メキシコの関税引上げは、単なる対外政策ではなく、北米サプライチェーンの原価構造を変えるイベントです。特に、IMMEXを使って域外部材を投入し、USMCAで北米に輸出するモデルほど影響が出やすい構造にあります。trade+2

    対策の第一歩はシンプルです。品目、原産地、FTA利用、関税繰延べ、USMCA認証。この5点を一本の台帳でつなぐこと。ここがつながると、コスト試算、取引条件の見直し、調達転換の優先順位が一気に明確になります。


    注意事項

    本稿は一般的な情報提供であり、個別案件の法務・通関判断を代替するものではありません。最終判断は当局公表資料や専門家確認で行ってください。


    1. https://natlawreview.com/article/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune
    2. https://www.trade.gov/market-intelligence/mexico-customs-law-reform
    3. https://www.linkedin.com/pulse/mexicos-january-2026-tariff-shift-what-means-imports-supply-tian-16cfc
    4. https://vemaps.com/mexico/mx-06
    5. https://www.tuttlelaw.com/newsletters/2020/7-28-20_usmca_drawback.html
    6. https://www.prodensa.com/insights/blog/the-immex-framework
    7. https://www.cbsa-asfc.gc.ca/publications/dm-md/pdf/d7-4-3-eng.pdf
    8. https://preferredship.com/wp-content/uploads/2020/06/USMCA_CoO_US.pdf
    9. https://ustr.gov/sites/default/files/files/agreements/FTA/USMCA/Text/05_Origin_Procedures.pdf
    10. https://www.foley.com/ko/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/
    11. https://www.jdsupra.com/legalnews/mexico-approves-significant-tariff-5879289/
    12. https://news.globalialogisticsnetwork.com/2025/11/07/interview-with-globalia-monterrey-a-look-at-mexicos-2026-trade-reforms/
    13. https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
    14. https://www.jdsupra.com/legalnews/mexico-proposes-significant-customs-and-3809818/
    15. https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/orb-200701/doc1.pdf
    16. https://www.trade.gov/sites/default/files/2023-09/fulltext.pdf
    17. https://www.afslaw.com/perspectives/alerts/who-can-make-usmca-certification
    18. https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/11e020.pdf
    19. https://www.pcbusa.com/post/how-to-fill-out-certification-of-origin-under-cusma-usmca-t-mec
    20. https://www.customs.go.jp/roo/english/procedure/index.htm
    21. https://biblioteca.cejamericas.org/bitstream/handle/2015/2837/Mexican_government_changes_IMMEX_regime.pdf?sequence=1&isAllowed=y

    韓国のCPTPP参加の現状まとめ―2026年1月3日時点の公開情報にもとづく―


    はじめに

    CPTPP(包括的・先進的環太平洋パートナーシップ協定)は、関税撤廃だけでなく、デジタル取引、投資、国有企業、競争政策、補助金、政府調達など、企業活動を支える経済ルールを高水準で統一する枠組みです。
    韓国がこの枠組みに加わるかどうかは、実質的な日韓FTA発効に相当し、サプライチェーン設計や販売戦略の前提条件を大きく変える可能性があります。

    現在の進捗状況

    結論から言うと、韓国政府は2025年後半からCPTPP参加の検討を再び加速させていますが、2026年1月時点でニュージーランド(CPTPP寄託国)に正式な加盟申請を提出したという政府発表やニュージーランド政府側の通知は確認されていません。
    つまり現在は、国内調整および加盟国への事前協議段階とみられます。
    (出典: Invest Korea

    2025年12月17日、韓国産業通商資源部は大統領報告を通じて、対中サービス分野のFTA推進と並行してCPTPP参加の再検討方針を明確化しました。これは部門レベルの検討から政府方針への格上げと見られます。
    (出典: Korea Times, 2025年12月17日

    また2025年9月時点でも、韓国政府がCPTPP加入検討を正式に再開する見通しが報じられており、過去に農水産業界の反発や日韓関係の冷え込みを背景に正式申請に至らなかったことが再び指摘されています。
    (出典: Invest Korea

    外交面でも、2025年10月の外務長官寄稿では「CPTPP参加を積極的に検討すべき」と明言され、地政学・経済安全保障の観点でも参加意義が強調されています。
    (出典: 韓国外務省寄稿文

    CPTPP加入プロセスの概要

    CPTPPへの加盟は明確な手続きを経る必要があります。公表情報による一般的な流れは以下の通りです。

    1. 希望国が寄託国ニュージーランドに正式な加盟要請を提出する。
    2. CPTPP委員会(全加盟国で構成)が**全会一致の合意(コンセンサス)**で加盟交渉の開始可否を決定する。
    3. 承認されると**作業部会(アクセスション・ワーキンググループ)**が設置され、協定遵守能力や市場アクセス譲許内容を審査する。
    4. 全加盟国が最終的にコンセンサスで承認すると加盟が認められ、議定書署名・批准を経て正式加盟となる。

    日本の内閣官房も、CPTPP加盟判断の基準として「オークランド三原則」(高水準ルール受容、約束履行の実績、全会一致原則)を明記しています。
    (出典: 内閣官房資料

    韓国が直面する主なハードル

    1. 国内調整の難航
       農水産業界の反発が最大の障壁とされ、正式申請を見送った過去があります。補償策や競争力強化策を含む政治的パッケージが必要不可欠です。
       (出典: Invest Korea)
    2. 加盟国間の合意形成(特に日本との関係)
       CPTPPでは全加盟国の同意が前提。日韓間の懸案事項(例:日本産水産物輸入制限)は交渉上の焦点になると見られます。
       (出典: Korea Joongang Daily, 2025年9月10日
    3. 加盟審査の順番と混雑
       CPTPP委員会は2025年11月の共同声明で、ウルグアイ、UAE、フィリピン、インドネシアを「オークランド三原則に沿う新規候補」と評価し、ウルグアイのプロセス開始を承認しました。他3カ国については、2026年に交渉開始の可能性があるとしています。韓国はこの時点の候補リストには含まれていません。
       日本政府の整理資料でも、正式な要請国として中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナ、インドネシア、フィリピン、UAE、カンボジアを挙げており、韓国は未掲載です。
       (出典: 内閣官房資料同上)

    日本企業への実務的示唆

    韓国がCPTPP参加に近づくほど、企業は二方向の変化に備える必要があります。

    • 競争条件の変化
       韓国企業がCPTPPルール下で域内アクセスを得れば、関税撤廃だけでなく投資・デジタル・サービスルールの整合性により競争条件が変わります。特に第三国市場での「原産地累積」活用を通じた競争力強化が想定されます。
    • サプライチェーン設計の再編余地
       加盟後は累積原産地範囲が拡大し、日本企業も韓国部材を含むサプライチェーンをCPTPP特恵適用設計に組み込みやすくなります。
       このため、BOM構成の再検討、調達先多角化、原産地証明書管理の標準化などが有効な先行対応になります。

    2026年に注視すべきチェックポイント

    次の4点が事実上の注目イベントです。

    1. 韓国が寄託国ニュージーランドへ正式加盟要請を提出する発表があるか。
    2. CPTPP委員会が加盟審査開始を決議し、作業部会が設立されるか。
    3. 日韓間の懸案(特に水産物輸入問題など)が整理されるか。
    4. 農水産分野の国内対策パッケージの具体化が進むか。
      (出典: Invest Korea)

    おわりに

    韓国のCPTPP参加方針は2025年末を契機に再び政治アジェンダとして浮上しました。ただし、2026年1月時点で正式申請はまだ行われておらず、国内・外交の調整局面にあります。
    企業としては、正式要請提出と作業部会設立を分岐点とし、原産地設計・市場戦略の2シナリオを並行検討しておくのが実務上もっとも合理的です。
    (出典: Korea Times, 2025年12月17日)