HS2028改正:自動車電装品・センサー類の分類見直しに関する現状整理

AIを活用して、まとめてみました。


公式タイムラインと確定事項

HS2028改正パッケージは、2025年3月のHS委員会(HSC)第75会期で暫定採択され、2025年12月に正式採択、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効するスケジュールが世界関税機関(WCO)により公式に示されています。metalife

改正の規模は、第7次レビューサイクルにおいて105の改正提案、299の改正パッケージが取りまとめられた大規模なものです。EUの対外説明資料では、改正の重点領域として「半導体およびトランスデューサー(各種センサー)」が明記されており、センサー類の分類見直しが進んでいることは高い確度で示唆されています。forbesjapan+1

何が確定し、何が未確定か

確定している情報

改正規模と発効日は2028年1月1日、詳細条文(HS6桁レベルの新旧対照表)は2026年1月に公開予定です。センサーおよびトランスデューサー領域が見直し対象に含まれることもEU資料で確認されています。metalife+1

未確定(未公表)の情報

具体的にどの品目が第85類から第90類(測定・検査機器)または第87類(自動車部品)へ移動するのかという条文レベルの詳細は、2025年11月7日現在まだ公開されていません。特に第87類への「移籍」については、現行の第17部注2(e)~(h)により、第84類・第85類・第90類・第91類に特掲される物品は原則として8708号の「部分品」に含めない取扱いとなっているため、条文改正を伴わない限り広範な第87類編入が一挙に進む可能性は限定的です。detail.chiebukuro.yahoo+1

なぜ「85類→90類/87類」移動の観測が出ているのか

現行のHS2022では、シリコン基板上のMEMS等を含む「シリコンベース・センサー」を8542号(MCO:多部品集積回路)として扱う注記が整備され、電装品(第85類)と測定機器(第90類)の境界が実務上やや複雑化しました。HS2028ではこの境界の明確化や再編が図られると予想されています。roronto

EUの説明文書では「semiconductors and transducers(半導体とセンサー)」と明記され、当該分野の分類見直し(細分化・整序)が含まれることが読み取れます。これが車載センサー(ADAS/電動化関連)への波及観測につながっています。また、WCOがASEAN向けに実施したワークショップでも、HS2028の主要改正領域に「電気機器」「車両」分野が含まれる旨の言及があり、自動車電装とセンサーの交差領域での改正可能性が意識されています。examplesentencemail+1

日本企業への実務インパクト

関税・価格への影響

第85類から第90類への移動については、日本のMFN税率ではいずれも無税品目が多いものの、貿易統計やFTA原産地規則、内外価格差分析への影響は大きい可能性があります。特に第90類への分類変更は測定機器としての性格明確化につながり、品目別規則(PSR)のCTC(関税分類変更基準)やVA(付加価値基準)が変わるケースが想定されます。ds-b

第87類の8708号等へ移動する場合は、現行の第17部注により第84類・第85類・第90類・第91類に特掲される物品は「部分品」に含まれないため、条文・注の改変を伴うか解説書の運用整理に留まるかで影響度が大きく変わります。detail.chiebukuro.yahoo

FTA原産地規則への影響

HS6桁の変更は、PSRの再マッピングを意味します。CPTPP、日EU・EPA、USMCA等のPSRはHS6桁コードに紐付けられているため、自己申告書式やサプライヤ宣誓書のロジック更新が必要となり、2027年中の準備が現実的なタイムラインです。word-dictionary

マスタ・ERPシステムへの影響

HS改正は6桁変更が各国の8~10桁の国内細分へ波及します。品番—HSコード—PSR—税率—特恵判定の一連の連鎖で整合性を保った更新が必要です。EU資料でもHS6桁変更が各域内コードへ波及する旨が説明されています。word-dictionary

税関監査対応

事後調査や税関質問において、「なぜ第85類ではなく第90類か(またはその逆)」といった技術的理由付け(主機能・検出原理・測定の有無・MCO該当性)がより厳密に求められる可能性があります。HS2022で導入されたMCO定義(8542号)は引き続き重要な論点となります。roronto

今すぐ取るべき実務アクション

対象品目の棚卸し

センサー、トランスデューサー、MEMS、車載カメラ、レーダー、LiDAR、電装ユニットなどについて、BOMから機能、現在のHSコード(第85類/第90類/その他)までを一覧化します。ds-b

境界品目の技術メモ標準化

測定・検査の主機能の有無、センサーの検出原理、単体機能かMCOか、車両専用品か否かを定型シートで可視化します。現行の第90類の類解説(測定・検査の定義)と第17部注の適用ロジックを踏まえた記述が重要です。marke-media

PSR影響の先行試算

主要FTAについて、CTC(分類変更前後の区分)と付加価値率の両面で「改正あり/なし」の2シナリオによる原産地判定を試算します。word-dictionary

2026年1月公表後のシステム更改計画

正式条文が公開され次第、HS6桁新旧対照表の確認、社内コード更新、取引先への通知、FTA書類テンプレート更新を2027年内に完了させる体制を整えます。metalife

監査・係争に備えた社内Q&A整備

特に第85類と第90類の境界については、技術書証(設計仕様書、センサー原理、測定の定義への適合性)の整備が対応力を大きく左右します。marke-media

どの品目が移動しそうか(現時点の観測)

以下は未公表情報を補う業界観測であり、最終判断は2026年1月公開の条文で確認する必要があります。metalife

MEMS/CMOS系のシリコンベース・センサーは、HS2022で8542号(MCO)に「センサー/アクチュエータ/レゾネータ/オシレータ」を含む旨が整備済みです。HS2028では第90類との住み分け明確化(解釈の整序や細分化)が想定論点となっています。roronto

車載計測・表示系(速度計/回転計/走行データ等)については、9029号や9031号などの見直しや細分追加の可能性は合理的ですが、8708号への包括的編入は第17部注2の原則に抵触しやすいため、条文変更がない限り限定的とみるのが保守的です。detail.chiebukuro.yahoo

レーダー、LiDAR、カメラ等の認識系は、現在8526号や8525号などに分類されていますが、測定目的の有無で第90類に寄せられるかは条文次第です。EU説明にある「transducers見直し」の射程に入る可能性はありますが、公表待ちの状況です。forbesjapan

主要情報ソース

WCOからはHS2028改正の暫定採択、公表・発効の公式タイムラインが示されています。EUの対外説明資料(EUR-Lex)ではHS2028改正の柱に「semiconductors and transducers」を含む旨が明記されています。WCOの2024年戦略レビュー報告書ではHS構造の見直し必要性が指摘されており、HS2022解説書(8542号MCO)ではシリコンベース・センサー等の定義が整備されています。reibuncnt+3

日本税関の類解説(第90類/第87類)では測定機器の定義や第17部の「部分品」原則が確認できます。WCOのASEAN向けワークショップでもHS2028の主要改正領域(車両・電気機器含む)の概観が示されています。examplesentencemail+1

まとめ

「第85類から第90類/第87類へ一斉移籍」という断定的な一次資料は現時点では未公開です。ただし、センサーおよびトランスデューサー領域が見直し対象に含まれていることから、車載センサーや電装ユニットの境界整理(細分追加・注記整備)は高い確度で発生すると予想されます。forbesjapan+1

2026年1月の正式条文公開をトリガーとして、2027年内に社内マスタ、PSR、書類書式の全面更新を完了する前提で計画を立てておくことが安全です。word-dictionary+1

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ソースを確認

  1. https://metalife.co.jp/business-words/1924/
  2. https://forbesjapan.com/articles/detail/76838
  3. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1419074004
  4. https://roronto.jp/business-efficiency/additions-and-corrections/
  5. https://examplesentencemail.com/if-you-have-any-corrections-please/
  6. https://ds-b.jp/dsmagazine/pages/410/
  7. https://word-dictionary.jp/posts/2929/
  8. https://www.marke-media.net/whitepaper/chatgpt-proofreading/
  9. https://reibuncnt.jp/36506

関税訴訟敗訴に備えた米国政権の考えられる代替策:制度と実務上の選択肢

AIによる選択肢の整理:あくまで推察です

2025年11月5日に米連邦最高裁で口頭弁論が行われた相互関税訴訟では、トランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づき100か国以上に課した広範な関税の合法性が争点となっています。共同通信の報道は、敗訴の場合には「代わりの関税措置を検討する」としつつも具体策には言及せず、「現行措置より発動に時間がかかる」方向性を示唆しています。本稿では、公開情報に基づき、米国内法で実務的に取り得る代替策を整理します。

訴訟の背景と争点

トランプ政権は2025年にIEEPAを根拠として、貿易赤字が「国家および経済安全保障への異例かつ重大な脅威」に該当するとして相互関税を発動しました。しかし、ニューヨークの国際貿易裁判所(CIT)は5月に「大統領には権限がない」と判断し、8月には連邦巡回控訴裁判所もこれを支持しました。最高裁での口頭弁論では、保守派・リベラル派双方の裁判官が政権の主張に懐疑的な姿勢を示し、エイミー・コニー・バレット判事(トランプ任命)は「スペインやフランスまで国防上の脅威なのか」と疑問を呈しました。既に約900億ドルの関税収入が徴収されており、敗訴すれば返還義務が生じる可能性があります。

代替策として実務的に取り得る主な関税措置

通商法122条(一時的輸入サーチャージ)
1974年通商法122条は、貿易不均衡への対処として、大統領が最大15%の関税または数量制限を最長150日間課すことを認めています。全ての国、または米国商業に不当な制限を課す特定国に対して適用可能です。150日を超える延長には議会の承認が必要です。過去に実際の適用例はなく、法的安定性に課題がありますが、事前調査を要さず迅速に発動できるため、判決直後の「つなぎ策」として検討されています。

通商拡張法232条(国家安全保障)
1962年通商拡張法232条は、輸入が国家安全保障を損なうおそれがあると認定された品目に対し、関税や数量制限を課す権限を与えています。2018年の鉄鋼25%・アルミニウム10%関税が代表例です。商務省による調査は最長270日を要し、報告後に大統領が判断します。「発動まで時間がかかる」という報道の指摘に合致し、分野別・品目別の積み上げ方式として実務的に有力な選択肢です。

通商法301条(不公正貿易慣行への対抗)
通商法301条は、USTR(米国通商代表部)が他国の「不当・差別的」慣行を調査し、関税等を発動する権限を付与します。対中追加関税で広く使用されており、税率上限の明文制限はありません。ただし、調査・公聴会等を経るため数か月を要し、多国への横断的適用には労力がかかります。

通商法201条(セーフガード)
通商法201条は、輸入急増により重大な損害を受けた産業を一時的に保護するため、USITC(国際貿易委員会)の認定に基づき関税やクオータを課します。太陽光パネル等で過去に適用例がありますが、傷害認定が必要で迅速性は低いです。

1930年関税法338条(外国による対米差別への是正)
1930年関税法338条は、米国商業に対する外国の差別や不当負担を大統領が認定した場合、最大50%の追加関税や輸入禁止まで可能とし、大統領布告の30日後に発効します。トランプ政権は2025年に「プランB」として検討したと報じられていますが、1930年代以降の適用実績はほぼ皆無で、法的・外交的リスクが極めて高いとされます。

アンチダンピング(AD)/相殺関税(CVD)の強化
個別品目・企業・国に対し、ダンピングや補助金を是正する高率関税を課す制度です。商務省・USITCの二段階審査を経て案件ごとに数か月を要するため、横断的な相互関税の代替というより品目別の積み上げ策として位置づけられます。

代替策の優先順位と想定シナリオ

複数の報道や専門家の分析を総合すると、以下のような段階的アプローチが想定されます。

短期(判決直後): 122条による最大15%・150日間のサーチャージで空白期間を埋める緊急措置。ただし、議会承認なしでは延長不可。

中期(本格的代替策): 232条(国家安保)や301条(不公正貿易)を用いた分野別・国別の積み上げ。自動車・部品、半導体、金属素材など、貿易赤字と「国家安全保障」が重なる領域が対象となる可能性が高いです。

並走措置: AD/CVDの個別案件増加や、TRQ(関税割当)の活用により実効税率を底上げ。

最終手段: 338条による最大50%関税。法的前例がほぼなく、訴訟・外交リスクが極大のため、実際の発動ハードルは高いです。

企業・投資家への実務的インプリケーション

タイムライン管理: 232条・301条・201条は調査から発動まで数か月~最大約9か月を要します。122条が発動された場合、150日以内に次の代替策への移行を警戒すべきです。

対象領域: 自動車・部品、半導体・電子部品、鉄鋼・アルミニウム・銅などの金属、木材・家具など、貿易赤字が大きく「国家安全保障」と関連付けやすい品目が232条・301条の俎上に載りやすいです。

返還リスク: 最高裁が政権側に不利な判断を下した場合、既に徴収された約900億ドルの返還手続が複雑化し、輸入業者にとって「混乱」となる可能性があります。

最高裁判決の見通しと影響

口頭弁論では、ジョン・ロバーツ首席判事が「関税は米国民への課税であり、常に議会の中核的権限だった」と指摘し、「重要問題の法理(major questions doctrine)」の適用可能性に言及しました。この法理は、議会の明示的授権なしに行政府が重大政策を実施することを制限するものです。保守派6名・リベラル派3名の最高裁は通常、判決まで数か月を要しますが、本件では迅速な判断が期待されています。敗訴の場合、トランプ政権は他の関税権限への移行を迅速に図ると見られ、国際貿易および大統領権限の範囲に関する重要な先例となります。


主要ソース

  • 共同通信配信(神戸新聞掲載):関税敗訴に備えた代替策検討報道
  • Al Jazeera、BBC、CNN:最高裁口頭弁論の詳細報道
  • RILA(小売業界団体):122条の制度解説
  • Reuters:338条の歴史的背景と検討状況
  • Supply Chain Dive、Skadden:各条項の実務的解説
  • EY、NBC News:最高裁審理と代替策の分析

※上記は公開情報に基づく制度論的整理であり、法的助言ではありません。実際の適用は政治判断・調査結果・訴訟見通し等により変動します。

「HSコードの違いで税関と争いになった場合の反論設計」

HSコードの違いで税関と争いになった場合の反論設計:実務報告書

国・地域ごとに手続や証拠法則は異なりますが、HSの一般通則(GRI)、部・類注、WCO解釈資料に基づく国際的に通用する骨格で整理しています(各国の国内法的位置づけは異なるものの、WCOの一般通則(GRI)・解説書(Explanatory Notes)・分類意見(Compendium of Classification Opinions)は世界的に参照されます)。

エグゼクティブ・サマリー

勝敗を分けるのは「事実の特定」と「GRI→法的注→解説書→先例」の適用順序です。

反論は、①製品の客観的特性(材質・機能・構造・用途・状態)、②適用すべきHS版(例:HS2022)、③GRIと部・類注の文言解釈、④WCO解説書・分類意見、⑤国内外の事前教示・裁判例の整合性、のピラミッドで構築します。

実務では、「分類根拠ドシエ」を作り、試験成績・図面・BOM・写真・使用実態を一体で提示することが有効です。

裁判・審査前に輸入国の事前教示(Advance Ruling/BTI/CROSS等)の探索・取得で論点を先詰めし、可能なら和解(再分類・追徴縮減)も選択肢に。

1. 反論する場合に用意すべき情報・資料(チェックリスト)

A. 製品実体を示す一次資料(”何ででき、何をし、どのように使うか”)

  • 仕様書・カタログ・取扱説明書(機能・用途・原理・主たる機能)
  • BOM(部品表)・材質構成比(質量%・体積%・繊維混率・化学濃度、CAS番号)
  • 設計図・断面図・回路図・CAD(構造・作動機構・組立状態)
  • 物理的数値(寸法・重量・密度・繊度・糸番手・gsm・目付・電圧電流・ワット数・容量・メッシュ等)
  • 写真・動画・実物サンプル(未組立/組立後/使用状態/包装形態:セット品の全体像)
  • 製造工程・加工内容(編む/織る/鋳造/射出/機械加工/化学反応の有無 等)
  • 使用実態・顧客層・販売チャネル(「用途による分類」が争点のときの補助)

B. 客観性を担保する第三者エビデンス

  • 公的・公認試験成績(JIS/ISO準拠の化学分析、繊維試験、電気安全、材料特性)
  • 学術的・工学的意見書(化学・機械・電気・繊維などの専門家鑑定)
  • WCO資料:
    • 一般通則(GRI)(解釈の順序・複合品/未完成品/セット・本質的特性など)
    • 解説書(Explanatory Notes)(各見出しの包含/除外例)
    • 分類意見(Compendium of Classification Opinions)(難事例の先例)
  • 輸入国の事前教示・公開データベース(日本の事前教示回答、米国CROSS、EU BTI など。自社品や類似品の先例を検索)

C. 手続・バージョン管理

  • 適用HS版(HS2017/2022/2027…)と輸入(又は輸出)日。解釈資料も同版に合致させる。
  • 対象国の関税表(国内サフィックス)と部・類注の国内解釈告示(必要に応じて)
  • 過去の通関実績(同一/類似品の税番・通関地・時期・数量・相違理由)

実務TIP:案件ごとに「分類根拠ドシエ」を1冊化(目次例は付録A参照)。

2. 反論の設計:論点マップ(優先度順)

2.1 適用ルールの順序(GRIの階段)

  • GRI 1:見出しの文言+部・類注(Legal Notes)で判断できるか
  • GRI 2(a)/(b):未完成品・混合物・材料別商品の扱い
  • GRI 3(a)-(c):複合品・セット品の優先順位(より具体的/本質的特性/最後の順序)
  • GRI 4:類似品への準用(稀)
  • GRI 5:容器・容れ物の扱い
  • GRI 6:小見出し(6桁)以下の決定

2.2 部・類注(Legal Notes)の効力

章・部の注解は見出し文言に優先しうる”法規範”です。「部品」「部分品」「アクセサリー」「セット」「医療用」「食品の調製品」「繊維の加工段階」「電気機械の部品」等の定義条項が多く、ここで勝負が決まることが多い。

2.3 WCO解説書・分類意見の位置づけ

  • 解説書は各見出しの包含・除外例や技術的説明を与える補助資料
  • 分類意見は難事例の具体的結論集。直接の法拘束力は法域により異なるが、説得的根拠として用いられる(引用・類推適用)

2.4 製品事実の特定:よく争点化するポイント

  • 本質的特性(essential character):複合品・セット品で「主たる性質」を与える構成要素は何か(GRI 3(b))
  • 用途基準 vs 物理的特性:用途が見出し文言に組み込まれているか否か
  • 未完成品/組立て前の完成品みなし(GRI 2(a))
  • 混合物/溶液の支配的成分・機能(GRI 2(b), 3(b))
  • 部分品/アクセサリーの定義該当性(部・類注、特に機械類・輸送用機器関連)
  • キット販売・販売形態(セット該当性・包装の通常性:GRI 3・5)

2.5 国内・域内の先例との整合

日本の事前教示回答(公開)、米国CROSSの拘束的事前裁定、EUのBTIなど、公表先例の提示は強力です。完全一致商品の先例がなくても、技術的・機能的に実質同等の比較を行います。

3. 反論メモの構成(テンプレート)

第1 争点の整理

  • 税関主張の税番(根拠文言・注解・先例)
  • 当方主張の候補税番(優先順位・差異)

第2 適用ルール

適用HS版・GRIステップの特定

第3 事実(Fact)

材質・構造・機能・用途・包装・セット性・完成度など、係争に関係ある属性のみを測定値と試験成績で列挙

第4 法規範(Rule)

見出し文言、部・類注(条番号付)、WCO解説書の該当箇所、分類意見(番号・年版)

第5 当てはめ(Application)

  • A見出し:除外理由(注解×、解説書×)
  • B見出し:包含理由(注解○、解説書○、先例整合)
  • 複合・セット:本質的特性の論証(質量・価格・機能寄与・消費行動)

第6 結論(Conclusion)

  • 最終税番・根拠の簡明な要約
  • 代替案(主位/予備の位置付け)と、関税・規制影響

4. 品目別:資料の要点(抜粋)

  • 化学品・調製品:有効成分・不揮発分・溶媒/安定剤・pH・粒径、CAS、MSDS、混合割合、反応有無
  • 繊維・衣類:混率(wt%)、糸番手、織/編、目付、漂白/染色/整理加工の有無、付属品の重量比
  • 機械・電気機器:主たる機能、演算/制御の有無、電源仕様、出力、部品と完成品の関係(部・類注該当性)
  • 雑貨・セット品:セット性(通常の小売包装か)、本質的特性の所在(価格・重量・機能寄与)

5. 裁判・審査での主張例(ひな型フレーズ)

  • 「GRI 1および当該章注Xにより、本件商品は見出しYYYYに包含される」
  • 「税関主張の見出しZZZZは、部・類注Yで明示的に除外される構成要素Aを前提としており、本件には適合しない」
  • 「複合品である本件は、機能寄与・価格構成・重量比の全てで部品Bが支配的であり、GRI 3(b)に従い見出しYYYYが妥当」
  • 「WCO解説書(該当見出し)と分類意見No.___は、同質の技術的特徴を備えた品目をYYYYに分類しており、整合的」

6. 先例・裁定の活用

  • 日本の事前教示(公開データベース):類似品の税番・根拠を検索
  • 米国CROSS(拘束的裁定の検索・比較)。裁判所(CIT/CAFC)判決も論理の参照に有用
  • EUのBTI:EU域内で3年有効の拘束的情報。公開BTIデータベースで比較

注意:他国の裁定は自国での法的拘束力は通常なし。ただし、説得的資料として引用価値は高い(比較論法)。

7. プロセス設計(時系列)

  • ファクト収集:上記チェックリストを埋め、測定値と写真で「見える化」
  • ルール適用:HS版を確定し、GRI→部・類注→解説書→分類意見の順で候補を絞る
  • 先例探索:日本の事前教示、米国CROSS、EU BTIを横断比較
  • 事前的な当局対話:可能なら事前教示の取得・照会(輸入国)。紛争予防に最良
  • 審査・不服手続 → 訴訟:記録化した分類根拠ドシエと鑑定書で立証
  • 経済影響の算定:関税差額、SPS/技術規制・貿易救済の有無も併せ評価

8. 裁判の際に支援を依頼すべき専門家

  • 関税・通関に強い弁護士(行政訴訟・関税法・通関実務の経験者)
  • HS分類スペシャリスト/通関士(GRI運用・先例調査・ドシエ作成)
  • 技術系鑑定人(化学、材料、電気、機械、繊維 等の学位+実務のある専門家)
  • 第三者試験機関(JIS/ISO準拠試験を迅速実施できる国内外のラボ)
  • 公認翻訳者(技術文書・裁判向け宣誓翻訳)
  • データ・経済分析専門家(関税差額や供給網影響の定量化)

9. 税関側主張への代表的な”切り返し”

税関側の典型主張反論の考え方(資料の当て方)
「用途ベースの見出し」適用見出し文言に用途要素が含まれているかを検証。含まれない場合は物理的特性を優先(GRI 1)
「部分品(parts)」扱い部・類注の定義に合致するかを条文で照合。他の見出しにより具体的に記載されていれば、部品ではなく当該見出し
未完成・組立前GRI 2(a)により完成品みなしの要件(主要特性の保持)を満たすかを構造・写真で論証
複合品・セット本質的特性の所在を重量・価格・機能寄与など定量で示す(GRI 3(b))
混合物・調製品有効成分・濃度・機能と解説書の包含/除外で当てはめ。必要に応じ成分分析

10. リスク低減のプリエンプティブ策

  • 輸入国の事前教示制度の活用(日本・米国・EUほか)
  • WCOトレードツール/出版物で最新版HSの確認(HS2022、HS2027など)
  • 社内標準:「新製品=HSレビュー」「セット化=GRI 3(b)判定表」「化学品=分析票」
  • 相手国差異の把握:HS6桁は共通でも、国内サフィックス(8–10桁)は各国で異なる。関税率・規制影響を事前に洗い出し

付録A:分類根拠ドシエ(提出パッケージ)構成例

  • カバーメモ(1–2頁):争点・結論・候補税番(主位/予備)
  • 製品カード:技術要約(材質・機能・用途・寸法・写真)
  • 試験成績・鑑定書(JIS/ISO)
  • GRI・部/類注の引用と当てはめ表(版・条番号明記)
  • WCO解説書・分類意見の該当箇所(該当見出しを特定)
  • 輸入国の先例(事前教示・BTI・CROSS)抜粋(類似点/相違点の表)
  • 経済影響の試算(関税差・納税/還付影響)

付録B:主要リソース(実務で参照頻度が高い公的情報)

  • WCO:一般通則(GRI)(公式PDF)
  • WCO:解説書(Explanatory Notes)(購入または購読が必要/概要ページ)
  • WCO:分類意見(Compendium of Classification Opinions)(購入・閲覧)
  • WCO Trade Tools(HS法的注・解説・分類意見のオンラインビュー)
  • 日本税関:事前教示制度/公開事例
  • 米国CBP:CROSS(拘束的裁定データベース)
  • EU:BTI(域内拘束的関税情報)

最後に(重要な留意点)

  • 本書は一般的情報であり、特定の法域での法的助言ではありません。案件ごとに輸入国の手続法・証拠法則をご確認ください。
  • HSの改正(版の違い)や各国の通達改正は適時アップデートされます。反論時は適用時点の版と告示を必ず特定してください。
  • タイムラインの重要性:不服申立て・訴訟には期限があります。税関の決定通知受領後、速やかに専門家と協議し、期限管理を徹底してください。

「米最高裁・トランプ関税(IEEPA関税)口頭弁論」サマリー

AIによるサマリーです。

エグゼクティブ・サマリー

争点: 大統領が1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に関税を課すことは合憲か。関税は本来「課税・通商」に関する議会権限であり、IEEPAの「輸入の規制(regulate … importation)」が関税まで含むのかが最大の論点。

裁判官の反応: 保守・リベラル双方から懐疑的な質問が相次ぎ、「関税は実質的に税(Tax)で、議会の権能ではないか」「大統領権限が一方的に拡張される危険」を指摘。

政府側(トランプ政権)の主張: IEEPAの文言は広く、「輸入の規制」は関税を含む。外交は大統領の固有権限で、**重大問題原則(Major Questions Doctrine)**は当てはまらない。

原告側(中小企業・州)の主張: IEEPAは本来資産凍結・禁輸等の制裁法で、関税を授権した立法史は皆無。「関税」という巨大な権限をIEEPAが黙示授権したとは読めない。

全体ムード: 多数の判事が政府見解に厳しい視線。重大問題原則や非委任原則(権限の白紙委任は不可)が審理の軸に。判決は**2026年夏(米最高裁の今期末)**までに見込まれる公算。

事件名: Learning Resources, Inc., et al. v. Trump(併合審理:Trump v. V.O.S. Selections, Inc.)/口頭弁論:2025年11月5日。

口頭弁論で出た主要論点

1) 法律構成(IEEPAの射程)

政府:「IEEPAの『輸入の規制』は関税を含む。最も伝統的な輸入規制手段が関税だ」との位置づけ。

原告:「IEEPAの文言・立法史は**資産凍結や数量規制(クオータ)**を想定。関税への言及は皆無」と強調。

2) 憲法論点

課税権・通商規制権は議会: Kagan判事は「関税の本質は税で、憲法上は議会権限」と繰り返し指摘。

重大問題原則: 規制当局や大統領が経済秩序を一変させる類の大権限を行使するには、明確な議会授権が必要との見地が審理を覆う。

非委任原則: Gorsuch判事は、広すぎる読解は「行政府への一方通行の権限累積」を招くと警鐘。

3) 事実関係の整理(何が対象か)

争点の関税は、IEEPAに基づく**広範な「相互主義(reciprocal)」関税(ほぼ全輸入に一律10%)**と、対薬物取引を名目に特定国品目を狙う関税に大別して審理。背景として、対中を含む複数国が名指しで俎上に。

日本企業へのビジネス・インパクト(想定シナリオ別)

シナリオA:IEEPA関税が違憲・越権で全面(または大部分)無効

影響:一律10%等のグローバル加算が外れる可能性。価格前提・契約の見直しが急務。既払分の**救済(返金)**は、個別の手続・救済範囲の判断に左右される見通し(自動返還が約されるわけではない)。

実務:米輸入拠点(現地法人・代理店)でHSコードごとの負担構造を棚卸し。**価格調整条項(tariff clause)**の発動可否・再交渉余地を検討。

シナリオB:限定合憲/差戻し(要件や適用範囲を厳格化)

影響:対象国・対象品目の縮小、行政手続のやり直しにより不確実性が続く。

実務:最悪・中立・最良の3本立てで販売価格・粗利シミュレーション、在庫・受発注の柔軟化を準備。

シナリオC:政府側勝訴(IEEPA関税が維持)

影響:緊急事態宣言→関税という手段が前例化。対象国・品目の追加リスクが常在化。

実務:重要部材はデュアルソース化、米国内調達やメキシコ等への組立移管も含めたサプライチェーンの再設計を加速。

**なお、対中の”既存”追加関税(通称:301関税)**は、連邦巡回区控訴裁(CAFC)が別途有効と判断しており、今回のIEEPA訴訟の結論にかかわらず、301関税は別枠で当面存続する前提で計画を。

口頭弁論での主なやり取り(ビジネス的に重要な示唆)

関税=税か規制か」:政府は「規制目的」と強調、Sotomayor判事らは「税収を生む以上は税」として議会権限に回帰。価格・原価・粗利に直結する財源性が焦点に。

立法史の空白」:原告はIEEPAに関税授権の痕跡がないと主張。事後の政権交代でも巨大な関税裁量が残り得る点に裁判所が敏感。

行政府の権限累積」:議会が取り消そうとしても大統領拒否権で戻せない「一方通行」の懸念をGorsuch判事が提示。ポリシーの**可逆性(撤回容易性)**が企業の投資意思決定に影響。

いま取るべき実務アクション(チェックリスト)

影響マッピング: 対米出荷・米国側輸入(現法・代理店)をHSコード×国別で棚卸し(IEEPA関税/301関税/232関税の切り分け)。

契約対応: 販売・購買契約の関税パススルー条項や価格調整条項の実効性を確認。

価格戦略: 3シナリオ(撤廃・縮小・継続)で販売価格/利益の感応度分析。

在庫・調達: 短期は在庫の弾力運用、中期はソーシング多角化・工程移転のオプションを具体化。

通関記録: 将来の救済・返金対応に備え、輸入申告書・関税納付記録を整備。

レギュラトリー・モニタリング: 最高裁判決までの審理動向と、USTR・商務省の行政対応を定点観測。

今後の見通し

手続のステータス: 事件名・口頭弁論日・当事者は上記のとおり。下級審は大統領側に否定的で、最高裁が審理を決定し迅速進行。

判決時期: 今期末(概ね2026年6月~7月)までの言い渡しが通例。ビジネス計画は四半期ベースで柔軟に更新を。

論点のカギ: 重大問題原則/非委任原則の適用の仕方が帰趨を左右。複数の判事が政府側主張に懸念を示したとの報道・分析が相次ぐ。

用語ミニ解説

IEEPA: 対外的な「異常かつ特異な脅威」に対処するため、大統領に経済的制限(資産凍結・輸出入規制など)を授権する法律。

重大問題原則: 経済・政治的に重大な事項は、明確な議会授権がなければ行政権が決定できないとする最高裁の近時の判断枠組み。

非委任原則: 議会が白紙委任で権限移譲することを禁じ、明確な「統制原理」(intelligible principle)を求める憲法理論。

【要点解説】HS2028改正:主要産業への影響と実務対応ロードマップ

2028年1月1日に発効が予定されているHS条約(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)の改正(HS2028)が、各産業に与える影響と、今から着手すべき実務対応について、経営層や実務担当者の意思決定に役立つ形で解説します。

エグゼクティブサマリー

  • 改正規模: HS2028は299項目の改正を含む大規模なもので、特にWHO(世界保健機関)が定める医薬品一般名称(INN)に関連する441品目の分類整理が確定しています。
  • 主要テーマ: 改正の柱は、環境関連(グリーン関税)、医薬品・バイオ新興技術(ドローンなど)の3分野です。これらは国際的な政策課題を反映したものであり、関連する産業は大きな影響を受ける可能性があります。
  • 公表時期: 改正内容をまとめた改正勧告は2026年1月頃にWCOから正式公表され、2028年1月1日に全世界で一斉に発効します。
  • 実務上の鍵: WCOは、現行のHS2022と新しいHS2028のHSコード対応関係を示す**相関表(Correlation Table)**の作成に着手しています。この相関表が、自社製品のHSコードを新体系へ移行させる際の最も重要な資料となります。
  • 今やるべきこと: 最終的なHSコード6桁が確定するのは2026年ですが、既に公表されている方針から影響を受ける品目を洗い出し、自社の製品マスターや管理体制の見直し準備を開始すべき段階にあります。

主要産業別の影響と確度

現時点で判明している情報に基づき、特に影響が大きいと見られる産業と、その改正内容の確度は以下の通りです。

産業分野影響のポイント改正の確度
医薬品・バイオWHOのINNリストに基づき441品目の医薬品有効成分(API)や製剤の分類が見直されます。製品マスターの成分情報とHSコードの再マッピングが必須となります。確定
EV・蓄電池・電池資源WCOが推進する「グリーン関税」の一環として、リチウムイオン電池、廃電池、およびそのリサイクル資源に関する分類が、トレーサビリティ強化のために細分化・明確化される見通しです。
再生可能・省エネ機器HS2022改正での太陽光パネルやLEDの細分化に続き、ヒートポンプなどの省エネ機器や、関連部材のHSコードが新設・整理される可能性が高いです。
ドローン(UAS)無人航空機システム(UAS)の分類見直しが提案されています。機体、制御装置、ペイロード(カメラ、センサー等)の分類が明確化され、部品の扱いやセットとしての解釈が変わる可能性があります。
農水産品初期検討段階で、甲殻類などの細分化案が議論されていました。最終的にどう反映されるかは2026年の公表を待つ必要がありますが、関税率やFTAの原産地規則に影響する可能性があります。

(注)「確定」以外は、WCOの方針や公開情報に基づく確度の高い推定です。最終的な6桁のHSコードは2026年1月の改正勧告をもって確定します。


実務対応ロードマップ(2025年~2027年)

HS2028改正への対応は、以下の4つのフェーズで計画的に進めることを推奨します。

フェーズ1:影響範囲のスクリーニング(2025年 Q4 ~ 2026年 Q1)

  1. 対象品目の抽出: 自社の売上上位品目や、影響が確実視される「医薬品、電池、再エネ機器、ドローン」関連製品をリストアップします。
  2. 影響度評価: 抽出した品目について、HSコード変更の可能性を「大・中・小」で仮評価し、優先順位をつけます。
  3. 情報基盤の整備: 製品の成分、素材、用途といった情報をHSコードと紐づけて管理できるよう、社内の「用語辞書」やデータベースを整備します。

フェーズ2:差分分析と移行準備(2026年 Q1 ~)

  1. 新旧HSコードの突合: 2026年1月に公表される相関表を入手し、自社製品リストと一括で照合します。これにより、新しいHSコード6桁の候補を特定します。
  2. FTA影響分析: HSコードの変更が、利用しているFTA/EPAの原産地規則(PSR)に与える影響を分析します。特に、関税分類変更基準(CTC)を用いる品目は注意が必要です。

フェーズ3:システム改修と各国対応(2026年 ~ 2027年)

  1. マスターデータ更新: ERPや販売管理、貿易管理システム(GTM)の製品マスターを、新しいHSコード体系に合わせて更新する準備を進めます。
  2. 各国動向の監視: 米国(USITC)、EU、日本、その他主要な輸出入国における国内法(8~10桁レベル)への反映スケジュールを監視します。例えば米国は2026年2月に予備案、同年9月に勧告報告を予定しています。

フェーズ4:テストと社内展開(2027年下期)

  1. パイロット通関: 新しいHSコードを用いて、主要な輸出入国で通関業者と連携したテスト申告(ドライラン)を実施し、問題を洗い出します。
  2. 原産性再判定と社内教育: 新しいHSコード体系に基づき、FTA原産性を再判定します。必要に応じてサプライヤーから新たな原産地証明書を取得し、営業・ロジスティクス部門など関係者への社内教育を行います。

FTA・原産地規則への影響

HSコードの変更は、FTAの根幹である**品目別原産地規則(PSR)**に直接的な影響を与えます。多くの協定では、PSRが特定のHSバージョン(例:HS2017)に紐づけられているため、HS2028への移行(トランスポジション)作業が各国で行われます。この移行作業の結果、これまで原産性を満たせていた製品が、基準を満たせなくなるリスクがあります。相関表の公開を機に、自社の原産判定ロジックの見直しとサプライヤー証明の更新計画を立てることが不可欠です。

日墨間におけるCPTPPと日メキシコEPAの使い分けガイド

日墨間で事業を行う上で、包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)と日・メキシコ経済連携協定(日メキシコEPA)のどちらを利用すべきか、実務的な判断基準と早見表を解説します。

基本的な使い分け方針

まず品目ごとに、以下の4つの要素を総合的に比較し、より有利な協定を選択することが基本方針となります。

  • 関税率(どちらがより低いか、または早期に撤廃されるか)
  • 原産地規則(PSR)の達成しやすさ
  • 原産地証明手続きのコストと時間
  • サプライチェーン全体でのメリット(特に累積規定の活用)

CPTPPを優先すべきケース

  • ベトナムやカナダといった他のCPTPP加盟国を原産とする材料を多く使用しており、締約国の原産材料や生産工程を自国のものと見なせる完全累積のメリットを最大限に活用したい場合。
  • 手続きの負担を軽減するため、特定の様式が不要な自己申告制度を利用したい場合。この制度では、輸入者、輸出者、または生産者のいずれもが原産地証明書類を作成できます。

日メキシコEPAを優先すべきケース

  • メキシコの輸入者や税関の商慣行上、所定の様式による第三者機関発行の原産地証明書(CO)または認定輸出者による原産地申告が求められる場合。
  • 輸出産品が特恵品目(協定附属書5に掲載)に該当し、認定輸出者であっても第三者機関発行のCOが必須となる場合。
  • (注)2023年9月1日から、日本では電子原産地証明書(e-CO)システムが導入されており、紙媒体での申請に比べると実務的な負担は軽減されています。

5つの比較判断軸

1. 原産地証明の方式

CPTPP日メキシコEPA
証明制度自己申告制度第三者証明制度 または 認定輸出者制度
作成者輸入者、輸出者、生産者日本商工会議所など、または認定輸出者
様式定型様式なし(Annex 3-Bの最小記載事項を満たす必要あり)定型様式あり
特記事項柔軟性が高い特恵品目は第三者証明が必須

2. 累積規定(サプライチェーン設計)

CPTPP日メキシコEPA
規定完全累積二国間累積
内容全てのCPTPP締約国の原産材料や加工工程を自国のものと見なして合算可能。多国間サプライチェーンの構築に有利。日本とメキシコ間でのみ累積が可能。第三国の材料や工程は原則として累積の対象外。

3. デミニミス(僅少の非原産材料)

CPTPP日メキシコEPA
一般品目産品の価額の**10%**以内産品のFOB価額の**10%**以内
繊維製品HS第50類〜第63類は品目ごとに複雑な除外規定あり。適用の可否は慎重な確認が必要。HS第50類〜第63類は、産品の総重量の**10%**以内。

4. 輸送および第三国インボイス

CPTPP日メキシコEPA
輸送非締約国を経由しても、税関の管理下にあるなど輸送要件を満たせば特恵待遇を維持可能。積送基準(Transshipment)があり、同様に非締約国経由が可能。
第三国インボイス非締約国の事業者が発行したインボイス(第三者インボイス)も利用可能。原産地証明書の様式内に、第三者インボイスの情報を記載する欄がある。

5. 少額貨物の免除規定

CPTPP日メキシコEPA
証明書免除の閾値原則として、総額が1,000米ドル相当以下の場合。原則として、総額が1,000米ドル相当以下の場合。

クイック早見表:どちらの協定を選ぶか

典型的なシナリオ推奨協定理由の要点
ベトナム/カナダなどCPTPP域内からの材料を多用CPTPP完全累積により、域内他国の原産材料や加工工程を合算できるため。
メキシコ側がCO原本を要求/社内監査で必要日メキシコEPA第三者機関発行のCOは信頼性が高く、メキシコの商慣行に適しているため。特恵品目はCOが必須。
証明書発行のリードタイムを最小化したいCPTPP自己申告制度のため、証明書発行の待ち時間がなく迅速。
サンプルなど少額・多頻度の出荷両方検討どちらの協定も1,000米ドル相当以下は原則として証明書が免除されるため。
繊維・衣類(PSRの要件が厳しい)個別のPSRを要比較CPTPPは価額基準、日メキシコEPAは重量基準のデミニミス特則があり、どちらが有利か品目ごとに確認が必要。
物流で第三国を経由/第三者インボイスが常態化CPTPP(やや優位)日メキシコEPAはCO様式への記載が必要な一方、CPTPPはより柔軟な書類作成が可能なため。

実務上の確認フロー(5ステップ)

  1. HSコードの確定: 輸出入する産品のHSコード(6桁)を正確に特定します。
  2. 関税率の比較: 両協定における品目ごとの関税率と、その譲許スケジュール(段階的な関税撤廃の年次)を確認します。(※品目や年次によって有利な協定が逆転することがあります)
  3. 原産地規則(PSR)の比較: 部品表(BOM)などに基づき、CPTPP(Annex 3-D)と日メキシコEPA(Annex 4)の品目別規則(関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準など)のいずれを達成できるか検討します。
  4. 累積・証明方式の決定: サプライチェーンを考慮し、CPTPPの「完全累積」と日メキシコEPAの「二国間累積」のどちらが有利か判断します。また、手続き負担や相手先の要求に応じて証明方式を選択します。
  5. 輸送・書類要件の確認: 第三国経由での輸送や第三者インボイスを利用する場合の根拠規定(CPTPP第3.18条、日メキシコEPA第35条など)を確認し、必要な書類を準備します。

自動車部品の特有の留意点

自動車産業はサプライチェーンが国際的に張り巡らされているため、累積規定の使い勝手が協定選択の重要な決め手となります。

原産地規則(PSR)の比較

自動車部品のPSRは、主に**付加価値基準(RVC)**が用いられます。CPTPPと日メキシコEPAでは、この計算方法や求められる付加価値の割合が異なります。

  • CPTPP: 自動車分野では、他のCPTPP加盟国(例:ベトナム、マレーシア、カナダ)で生産された原産材料や、そこで行われた加工を自国のものと見なせる完全累積が最大のメリットです。これにより、北米やASEANにまたがるサプライチェーンでも原産性を満たしやすくなります。また、協定の附属書には自動車関連品目に特化した詳細な規定があります。
  • 日メキシコEPA二国間累積に限定されるため、日本とメキシコ以外の国で生産された部品は、原則として非原産材料として扱われます。サプライチェーンが両国内で完結している場合は問題ありませんが、第三国が関わる場合はCPTPPより不利になることが多くあります。

実務上の推奨

多くの日系自動車メーカーおよび部品メーカーは、サプライチェーンの柔軟性を重視し、CPTPPを優先的に活用しています。特に、ASEANや北米(カナダ)にも製造拠点を持つ企業にとっては、完全累積のメリットが非常に大きいためです。

日メキシコEPAが選択肢となるのは、サプライチェーンが完全に日墨二国間で完結しており、かつ日メキシコEPAで定められたRVC基準の方がCPTPPよりも達成しやすい、という限定的なケースになります。

繊維製品の特有の留意点

繊維製品は、原産地規則が非常に厳格かつ複雑であり、「どの工程を協定国で行ったか」が問われる加工工程基準が中心となります。

原産地規則(PSR)の比較

一般的に「ヤーンフォワード(Yarn Forward)ルール」と呼ばれる厳しい基準が採用されています。これは、製品に使用される糸の生産(紡績)以降の全ての工程(製織・編立、染色、裁断、縫製)を協定域内で行うことを求めるものです。

  • CPTPP: ヤーンフォワードが基本ですが、大きな例外規定として「供給不足リスト(Short Supply List)」が存在します。このリストに掲載されている特定の繊維や生地は、協定域外(例:中国、台湾、韓国)から調達しても、原産材料として扱うことが認められます。これにより、域内で調達が難しい特殊な素材を使いながらでも特恵関税の適用を目指せます。
  • 日メキシコEPA: こちらも厳格な加工工程基準を採用していますが、CPTPPのような大規模な供給不足リストはありません。そのため、原料の調達先が限定され、PSRをクリアする難易度が高くなる傾向があります。

デ・ミニミス(僅少の非原産材料)の特則

  • CPTPP: 原則として価額ベースで10%のデ・ミニミスが適用されますが、品目ごとに多くの除外・例外規定があり、非常に複雑です。
  • 日メキシコEPA: 繊維製品(HS50〜63類)に対して、**重量基準で10%**という非常に分かりやすく実用的なデ・ミニミス規定があります。例えば、製品全体に占める価額は大きいものの重量は軽い非原産の付属品(レースや特殊なボタンなど)を使用する場合に、この規定が役立つことがあります。

実務上の推奨

繊維製品における協定の選択は、ケースバイケースの判断が強く求められます。

  • 使用したい糸や生地がCPTPPの供給不足リストに掲載されている場合は、CPTPPが圧倒的に有利です。
  • ヤーンフォワードを満たせないものの、非原産材料の使用が製品全体の**重量の10%**に収まる場合は、日メキシコEPAのデ・ミニミス規定を活用できる可能性があります。

最終的には、製品の設計、BOM(部品表)、製造工程を詳細に分析し、両協定の品目別規則を丹念に比較して、どちらが有利かを判断する必要があります。

明日(米国時間 11月5日)に米連邦最高裁が口頭弁論を予定

明日(米国時間 11月5日)に米連邦最高裁が口頭弁論を予定しており、案件は Learning Resources, Inc. v. TrumpTrump v. V.O.S. Selections の2件を併合して審理されます。主要争点は「IEEPA(国際緊急経済権限法)が関税賦課を認めるか」「仮に認めるなら違憲な白紙委任に当たらないか」の2点です。SCOTUSblog


エグゼクティブサマリー

  • 背景:2025年初頭以降の大統領令に基づく一連の「IEEPA関税」(メキシコ・カナダ・中国向けの“Trafficking Tariffs”や全世界一律10%の“Reciprocal Tariffs”等)が争われています。下級審はいずれも違法と判断。控訴審(連邦巡回区控訴裁)も7対4で違法と結論づけましたが、最高裁審理の間は一時的に効力維持の扱いです。cit.uscourts.gov+2cafc.uscourts.gov+2
  • いま:最高裁は迅速審理を許可し、11月5日に口頭弁論。結論次第で、IEEPAの使途(制裁中心か、関税も可か)と大統領の通商裁量の射程が大きく変わります。SCOTUSblog
  • 実務影響
    • (A)違法確定なら、IEEPA関税は無効化へ。もっとも、鉄鋼・アルミの232関税や301関税等の別根拠の関税は対象外で残り得ます。The Washington Post
    • (B)IEEPAで関税OKとなると、大統領が「緊急事態」宣言で広範・即時の関税発動が可能に。価格・契約・在庫政策に高い不確実性。
    • **(C)IEEPA自体が違憲(非委任)**とされると、制裁法体系全体に波及するリスク(もっとも、最高裁は回避的解釈でIEEPAの範囲を狭く読む可能性が高いとの見方も)。Brennan Center for Justice+1

タイムライン(確定事実)

  • 2025/5/28:米国際貿易裁判所(CIT)、IEEPA関税を全面無効・差止(世界一律10%を含む)。cit.uscourts.gov
  • 2025/8/29:連邦巡回区控訴裁(7対4)がCITを支持。同日、**最高裁への上訴準備中は執行停止(mandate保留)**を命令。cafc.uscourts.gov+1
  • 2025/9/9:最高裁が迅速審理を許可・併合11/5に口頭弁論を指定。SCOTUSblog

何が争われているのか(法的論点の整理)

  1. IEEPAの文言解釈
    IEEPA §1702(a)(1)(B) は大統領に「輸入・輸出の規制」等を認めます。下級審は「関税(課税)まで含むとは読めない」と判断。控訴審多数意見も「IEEPAは今回の関税賦課を許容しない」と明確に結論づけました。cit.uscourts.gov+1
  2. IEEPAの発動要件(“異常かつ並外れた脅威”)
    CITは、麻薬・人身取引対策を名目とする“Trafficking Tariffs”の一部についてIEEPAの脅威認定要件を満たさないとも判示。cit.uscourts.gov
  3. 非委任(Nondelegation)/メジャー・クエスチョン論
    最高裁は、仮にIEEPAが関税賦課を許すと読む場合、議会からの白紙委任に当たらないかも審理対象。広範・重大な政策変更には明確な授権を要するという近時の流れ(いわゆるメジャー・クエスチョン)も背景論点です。Supreme Court+1

対象となった大統領令と関税の中身(2025年)

  • “Trafficking Tariffs”:メキシコ・カナダ 25%、中国 当初10%→20%(一部品目軽減・免税枠などの変動あり)。cit.uscourts.gov
  • “Reciprocal(相互主義)Tariffs”全世界に一律10%、加えて**国別上乗せ(最大50%)**を予定——のちに一部実施延期・対中報復調整等の改定。cit.uscourts.gov+1

※ これらの枠組みは**IEEPA(1977年法)**に基づくもので、232条(国家安全保障)や301条(不公正貿易是正)といった他法根拠の関税とは別枠です。The Washington Post


最高裁の結論別:日本企業への実務影響シナリオ

A)IEEPA関税が違法確定(下級審維持)

  • 関税撤廃・徴収停止の方向。CITは判決で差止と命令の無効化に踏み込みました(上訴中は保留措置)。最終的に無効確定なら納付済み関税の還付が論点に。輸入者側のプロテスト手続や時効管理は通関顧問・弁護士と即協議cit.uscourts.gov+1
  • ただし、232/301等の他法根拠の関税は残存し得るため、完全なコスト安には直結しない点に注意。The Washington Post

B)IEEPAで関税賦課が可能(非委任は否定)

  • 大統領が**「緊急事態」宣言→即時・広範囲の関税を発動可能に。価格転嫁・契約調整・在庫最適化など機動的なオペレーション**が必要。
  • 国・品目を横断した一律発動も理論上可能となり、為替・原材料価格と並ぶ政策リスクとして恒常的なモニタリングが不可欠。

C)IEEPAは関税も許すが違憲(非委任)

  • IEEPA自体の委任が広すぎると裁されれば、OFAC制裁等、IEEPA依拠の制裁レジームにも波及しかねない——との懸念が法学者・シンクタンクから指摘されています(もっとも、最高裁は違憲回避的解釈で関税のみを除外する可能性も)。Brennan Center for Justice+1

直ちに着手すべき実務チェックリスト

  1. 関税エクスポージャーの棚卸し:対象HS、仕向国、サプライヤー別にIEEPA関税負担(10%一律+上乗せ)と他法根拠(232/301等)を分けて可視化。cit.uscourts.gov+1
  2. 契約条項の見直し:価格調整・関税スナップバック・不可抗力条項の明確化(短期で上げ下げがあり得る前提)。
  3. 価格・在庫・納期の再設計:判決前後の変動を見越し、段階的プライシング在庫回転の再設計。
  4. 通関・還付オプション:無効確定時の還付請求の要件(証憑・期限)を確認。必要であればプロテスト申立など法的保存策。
  5. 物流ハブと制度活用:米国内FTZ(保税区)やボンデッド倉庫の活用で関税の繰延・回避余地を検討。
  6. 調達地・設計の多様化:国別上乗せの再発に備え、マルチソース設計代替をロードマップ化。
  7. 社内ガバナンス:法務・調達・営業・経理の横断タスクフォース週次レビュー
  8. ステークホルダー・コミュニケーション:重要顧客には価格条項の透明化切替基準を事前共有。
  9. 数値インパクトの即時試算:例)米国向け輸入CIFベース1,000万ドルの場合、10%関税撤廃=100万ドル粗利改善(ただし他関税は別途)。
  10. 政策ウォッチ11/5 口頭弁論の主張・判事の問いかけ(非委任/メジャー・クエスチョン)を中心にモニター。SCOTUSblog

裁判記録・下級審のポイント(実務に効く要旨)

  • CIT(2025/5/28):IEEPAは今回のような包括的・無期限の関税を権限付与していない。世界一律10%や対中・北米向け“Trafficking Tariffs”は無効・差止。一部は**IEEPAの発動要件(脅威の性質)**も満たさない。cit.uscourts.gov
  • 連邦巡回区控訴裁(2025/8/29)7対4でCIT支持。ただし少数意見は「IEEPAの『規制』には関税も含み得る」と反論。最高裁での文理解釈が主戦場。cafc.uscourts.gov
  • 実務注記:政府側の要請でmandate(正式送達)保留のため、最終判断までは現行オペに揺り戻しが生じ得る体制。cafc.uscourts.gov

よくある質問(FAQ)

Q1:判決が出てもすべての追加関税が消えるの?
A:IEEPAベースの関税が対象です。232/301等の他法による関税は本件と別で、残りますThe Washington Post

Q2:日本向けはどうなる?
A:今回の「世界一律10%」は国を問わず適用される設計でした。最高裁がIEEPA関税を容認する場合、日本発製品にも同様の政策リスクが継続します。cit.uscourts.gov

Q3:いつ結論が出る?
A:口頭弁論は11月5日。判決は今期中(OT 2025)に示される見通しです。SCOTUSblog


主要情報源(実務で押さえるべき公的文書・一次情報)

  • 最高裁事件ページ(口頭弁論指定・併合・争点)Trump v. V.O.S. SelectionsLearning Resources, Inc. v. TrumpSCOTUSblog+1
  • CIT判決(2025/5/28、差止・無効):関税はIEEPAの権限外、要件も未充足の部分。cit.uscourts.gov
  • 連邦巡回区控訴裁(2025/8/29)意見書(7対4でCIT支持)とmandate保留命令cafc.uscourts.gov+1
  • 政府側上告申立(Petition):IEEPAの「規制」に関税が含まれるとの主張、非委任論点の提示。Supreme Court
  • シンクタンクの論考(法経済影響・非委任/メジャー・クエスチョン)Brookings+1

補足:今回の審理は「IEEPAの用途」を決定づける可能性

IEEPAはこれまで資産凍結・取引禁止等の制裁で中核的に使われてきました。最高裁が「関税も可」と広く認めれば、通商政策の迅速展開が可能になる一方、企業側には恒常的な政策リスク管理が求められます。逆に狭く解釈すれば、関税は貿易法(232/301等)や議会立法に回帰し、政策の予見可能性は相対的に高まります。Brennan Center for Justice+1


免責:本レポートは一般的情報の提供を目的とし、法的助言ではありません。具体的案件は、米通関・通商法に通じた専門家へご相談ください。

HS2028改正 実践ガイド:計画・影響評価・実行ロードマップ

2028年1月1日に発効が予定されているHS条約の改正(HS2028)は、すべての輸出入者にとって避けては通れない重要課題です。このガイドでは、HS2028改正への準備を円滑に進めるため、「いつまでに、誰が、何をすべきか」を体系的に解説します。

HS2028改正の概要とスケジュール

HS2028改正は、2028年1月1日の発効に向けて以下のスケジュールで進められています。企業の対応計画もこの公式スケジュールに準拠する必要があります。

  • 暫定採択: 2025年4月、世界税関機構(WCO)のHS委員会(HSC)第75回会合にて、改正勧告案が暫定的に採択されました。
  • 正式採択: 2025年12月末にWCO理事会で正式に採択される見込みです。
  • 内容公表: 2026年1月頃に改正内容の詳細が公開される予定です。
  • 発効: 2028年1月1日に全世界で一斉に発効します。

今回の改正には、299セットの改正案や、世界保健機関(WHO)の国際一般名(INN)リストに基づく医薬品441品目の分類見直しなどが含まれており、広範囲な品目が影響を受ける可能性があります。

また、WCOは2025年10月のHSC第76回会合で、現行コード(HS2022)と新コード(HS2028)の相関表(Correlation Tables)の整備を開始しました。この相関表は、コード移行作業における最も重要な参照資料となります。

企業への主な影響範囲

HSコードの変更は、関税率だけでなく、企業のサプライチェーン全体に多岐にわたる影響を及ぼします。

  • コスト・財務: 品目分類の変更により関税率やFTA特恵税率が変動し、関税・消費税などの税負担額が変わる可能性があります。これは見積もりや販売価格、原価計算に直接影響します。
  • 通関・規制: 輸出入申告で参照するHSコードが変わると、他法令(例:化学物質規制、食品衛生法)に基づく許認可や証明書の紐付けを再設計する必要があります。
  • 原産地管理: FTA/EPAの原産地規則(品目別規則:PSR)はHSコードの版に準拠しているため、コード変更に伴い原産資格の再判定や、サプライヤーからの原産性証明の再取得が必要になります。
  • ITシステム: ERP、商品マスター、貿易コンプライアンスシステム(GTM)などの改修が必須です。特に日本では、HS6桁に国内細分(3桁)を加えた9桁の統計品目番号やNACCS用の10桁コードが使用されるため、これらの桁数も考慮したシステム更新が求められます。

対応プロジェクトのロードマップ

フェーズ1:調査・計画(現在〜2026年上半期)

  • プロジェクト体制の構築: 貿易コンプライアンスやサプライチェーン部門を主幹とし、通関、調達、営業、財務、ITなど関連部署を横断する専門チームを設置します。
  • データ棚卸し: 過去24ヶ月分の輸出入実績(品目、現行HSコード、仕向国・原産国、FTA適用有無、関税額)を一覧化し、分析の土台を整えます。
  • 情報収集の開始: WCOや各国税関の公式発表、特にHS2022とHS2028の相関表の公開を継続的に監視します。

フェーズ2:影響評価・分析(2026年下半期〜2027年上半期)

  • 新旧コードの突合: 公表された相関表を基に、自社品目の新旧HSコードの対応関係(1対1、1対多、多対1など)を洗い出します。
  • 優先順位付け: 「取引金額 × 関税率の変動幅」や「FTA依存度」「規制への影響度」などを基に対応の優先順位を決定し、影響の大きい品目から重点的に分析します。
  • 財務影響の試算: 品目や取引先ごとに、関税負担額の増減シナリオをシミュレーションし、価格戦略や収益計画への影響を数値化します。

フェーズ3:導入準備・実行(2027年下半期〜2028年1月)

  • 分類の確定: 分類が難しい境界品目については、日本の事前教示制度や、主要国のBTI(Binding Tariff Information)などを活用して、税関の公式見解を取得します。
  • システム改修: 品目マスターに新旧HSコードを併記する期間を設け、2028年1月1日以降は新コードが自動で適用されるようシステムを改修します。
  • 対外コミュニケーション: 取引先へのHSコード変更通知、価格条件の見直し、サプライヤーへの原産性証明の再依頼などを計画的に進めます。
  • 本番切替とモニタリング: 2028年1月の発効後、申告実績を監査し、誤分類や追加納税などのリスクを早期に検知します。

よくある失敗例と対策

  • 国内細分コードの更新漏れ: HS6桁のみを更新し、日本の9桁/10桁コードの確認を怠ると、申告エラーの原因となります。
  • FTA原産地規則の版ズレ: HSコードの版が変わったことに気づかず、古いPSRに基づいて特恵税率を適用し続け、追徴課税を招くケースです。
  • 影響評価の非効率: 影響度を考慮せずに全品目を一律に対応しようとすると、リソースが分散し、重要な品目の対応が遅れます。
  • 事前教示の未取得: 分類に迷う品目を社内判断のみで処理し、後日、税関との見解の相違から修正申告や追徴に至るリスクです。

米国の相互関税に関するアップデート(2025年11月4日時点)

注記: 本資料で扱う「相互関税」は、米国が2025年に発動した “Reciprocal Tariff”(相互主義に基づく追加関税)を指します。記載されている各国の関税率は、米国への輸入時に既存の関税(MFN税率、232条/301条措置など)に加えて課される、あるいは調整される追加関税率です。


1. 策定の進め方(計画)

  • 範囲定義: 米国の相互関税(Reciprocal Tariff)と、カナダ、メキシコ、中国に適用される別枠のIEEPA関税および一時停止措置を対象とする。
  • 一次ソース: ホワイトハウス(WH)発表の大統領令(EO)・ファクトシート(FS)、連邦官報(Federal Register)の告示、米国税関・国境警備局(CBP)のCSMS通知、およびJETROの対外公表資料。
  • 国別情報の抽出: ユーザー指定順に整理。7月31日の大統領令(Annex I)で税率が明示された国はその値を採用。EU、日本、中国、カナダ、メキシコについては、個別の命令や合意に基づき情報を上書き。
  • 前日差の確認: 11月3日から4日にかけて、連邦官報、CSMS、ホワイトハウスの更新情報を調査。変更点があった場合は「前日差」の欄に明記。
  • 検証: 各数値の根拠となる条文、Annex、告示番号を可能な限り付記し、注記にて実務上の留意点(例:積替えと見なされた迂回輸入には**40%**の追加関税)を併記。

2. 前日(11月3日)からの主な差分

  • 全体: 連邦官報・CSMS共に新規発表はなく、主要な変更はありません。
  • 中国: 11月2日付のホワイトハウス発表によると、2つの主要な変更が予定されています。
    1. フェンタニル関連措置の緩和: 11月10日以降、別枠で課されている「対中フェンタニル関連追加関税」を10%ポイント削減(現行20% → 10%)する予定です。
    2. 相互関税の停止延長: 現在「相互関税の高率部分」に適用されている一時停止措置が、2026年11月10日まで延長されることが案内されました。
      これにより、本日時点での相互関税率(10%)に変更はありません。

3. 相互関税:最新一覧(米国への輸入に対する追加関税)

凡例:

  • EU/日本(15%上限方式): MFN税率(最恵国待遇税率)が15%未満の品目は、合計が15%になるよう差額が追加関税として課されます。MFN税率が15%以上の品目は追加関税0%となります。
  • 中国: 相互関税の高率部分が一時停止されており、2026年11月10日まで一律10%の追加関税が適用されます(8月11日の大統領令で延長)。
  • カナダ/メキシコ(IEEPA関税): 相互関税の適用対象外。代わりに国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく別枠の関税が課されます。カナダは35%(エネルギー関連品目は10%)、メキシコは25%です。
  • 積替え(迂回輸入): 第三国を経由した迂回輸入と認定された場合、原産国に関わらず**40%**の特別関税が適用されます(8月7日発効)。
  • 出所の原則: 下表で特に注記がない国の税率は、7月31日の大統領令 Annex Iに基づきます。
国名関税率(追加)前日差出所備考
Algeria30%なしWH EO Annex I
Angola15%なし同左
Bangladesh20%なし同左
Bosnia & Herzegovina30%なし同左
Botswana15%なし同左
Brazil10%なし同左
Brunei25%なし同左
Cambodia19%なし同左
Cameroon15%なし同左
Canada*35%(エネルギー10%)なしWH FS / FR通知IEEPA関税。USMCA原産品も対象。詳細はFR参照。
Chad15%なしWH EO Annex I
China*10%なしFR (EO 14298/14334)相互関税の高率分は2026/11/10まで停止中。11/10以降、別枠のフェンタニル関連関税は10%へ縮小予定だが、相互関税10%は継続。
Côte d’Ivoire15%なしWH EO Annex I
DR Congo15%なし同左
EU*15%上限方式なしWH EO / FR通知MFN<15%は差額加算、MFN≥15%は追加0%。航空機・医薬品等に免除あり。
Falkland Islands10%なしWH EO Annex I
Fiji15%なし同左
Guyana15%なし同左
India25%なし同左
Indonesia*19%なし同左
Iraq35%なし同左
Israel15%なし同左
Japan*15%上限方式なしFR通知日米合意に基づく。多くの品目は合計税率が15%に調整される。航空宇宙・自動車等は別途規定。
Jordan15%なしWH EO Annex I
Kazakhstan25%なし同左
Laos40%なし同左
Lesotho15%なし同左
Libya30%なし同左
Liechtenstein15%なし同左
Madagascar15%なし同左
Malawi15%なし同左
Malaysia19%なし同左
Mauritius15%なし同左
Mexico*25%なしFR通知IEEPA関税。USMCA原産品も対象。詳細はFR参照。
Moldova25%なしWH EO Annex I
Mozambique15%なし同左
Myanmar40%なし同左
Namibia15%なし同左
Nauru15%なし同左
Nicaragua18%なし同左
Nigeria15%なし同左
North Macedonia15%なし同左
Norway15%なし同左
Pakistan19%なし同左
Philippines19%なし同左
Serbia35%なし同左
South Africa30%なし同左
South Korea15%なし同左
Sri Lanka20%なし同左
Switzerland39%なし同左
Syria41%なし同左
Taiwan20%なし同左
Thailand19%なし同左
Tunisia25%なし同左
Vanuatu15%なし同左
Venezuela15%なし同左
Vietnam20%なし同左
Zambia15%なし同左
Zimbabwe15%なし同左

(注)上表の「Canada/Mexico/China/EU/Japan」の扱いは、Annexの一般則を個別の大統領令や通知で上書きしているため、実務上の判断は必ず該当の告示本文で確認してください。


4. 実務上の追加メモ

  • 他制度との関係: 232条(鉄鋼・アルミ等)や301条(対中)措置は相互関税と併存します。ただし、EUや日本に適用される「15%上限方式」のように、相互関税側で上限設定や免除が規定される場合があります。
  • USMCA原産品: カナダ・メキシコ向けのIEEPA関税は、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に基づく原産品であっても追加で課税されます。
  • 法的リスク: 一部の関税措置は司法審査が係争中です。ただし、その効力は連邦官報の告示とCBPの実務運用に従うため、常に最新のCSMS/FR情報を確認することが最も安全です。
  • 日本語参考資料: 全体像を把握するため、JETROが発行する「相互関税」に関するまとめ資料などを併読することを推奨します。

5. 主な根拠ソース

  • 7/31 大統領令: “Further Modifying the Reciprocal Tariff Rates”
    • Annex Iにて各国税率、EUの15%上限方式、迂回輸入への40%関税を規定。
  • 中国関連:
    • 5/12 EO 14298: 対中関税を10%へ一時移行。
    • 8/11 EO 14334: 上記措置を2025年11月10日まで延長。
    • 11/02 WH発表: 停止措置を2026年11月10日まで再延長。
  • 日本関連:
    • 9/16 FR通知: 「米日合意の関税関連要素の実装」にて15%上限方式の適用方法を規定。
  • EU関連:
    • 9/25 FR通知: 「米EUフレームワークの実装」にて航空機、医薬品等の品目免除を規定。
  • カナダ関連:
    • 3/6 FR通知: IEEPA関税の適用細目を規定。
    • 7/31 WH FS: 税率を35%(エネルギー10%)へ増額。
  • メキシコ関連:
    • 3/6 FR通知: 25%のIEEPA関税の適用細目を規定。

FTA原産地証明:USMCA・CPTPP 自己証明制度の実務ガイド

近年主流となっている自由貿易協定(FTA)では、輸入者、輸出者、または生産者が自らの責任で産品が協定上の原産品であることを証明する「自己証明制度」が採用されています。

本稿では、特に重要な二つのメガFTA、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)とCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)における自己証明制度の要件を比較し、日本企業の輸出実務担当者が押さえるべきポイントを解説します。

1. 自己証明制度の基本概念

まず、制度を理解するための3つの重要な概念を解説します。

  • 自己証明 (Self-Certification)
    輸入者、輸出者、または生産者のいずれかが、協定で定められた記載事項を満たした書類を作成し、産品が協定上の「原産品である」と宣言する仕組みです。特定の様式は定められておらず、商業インボイスやその他の商業書類、あるいは別紙への記載が認められます。
  • 品目別原産地規則 (PSR – Product-Specific Rules of Origin)
    産品が原産品と認められるための具体的な基準です。主に以下の3つの柱で構成されます。
    • 関税分類変更基準 (CTC – Change in Tariff Classification): 非原産材料のHSコード(関税分類番号)が、完成品のHSコードから指定されたレベル(例:2桁、4桁、6桁の変更)で変更されていることを求める基準。
    • 付加価値基準 (RVC – Regional Value Content): 協定域内での付加価値が、協定で定められた計算方法に基づき、一定の割合(例:40%以上)に達していることを求める基準。
    • 特定工程基準 (SP – Specific Process): 特定の製造工程(例:化学反応、紡織、溶融など)が協定域内で行われていることを求める基準。
  • 事後検認 (Verification)
    輸入国の税関が、輸入申告後、提出された原産地証明やその根拠資料に基づき、産品の原産資格を検証する手続きです。検証は、書面による照会や、生産者(輸出者)の施設への実地調査によって行われます。

2. 要件比較:USMCA vs. CPTPP(日本輸出者の実務視点)

両協定の自己証明における具体的な要件を、実務上のポイントと共に比較します。

項目USMCACPTPP実務メモ(日本輸出者)
対象協定米国・メキシコ・カナダ協定環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(日本、豪州、カナダ、メキシコ、英国など12カ国)英国は2024年12月15日に発効済み。対象国の確認が常に必要。
証明作成者輸入者・輸出者・生産者輸入者・輸出者・生産者どちらも同じ。輸入者主導で証明を求められるケースを想定し、自社(輸出者)版と輸入者版の様式を準備するとスムーズ。
様式自由書式(協定附属書5-Aの9要素を満たす)自由書式(協定附属書3-Bの9要素を満たす)必須9要素はほぼ共通。社内共通テンプレート化が効率的。
必須要素9要素(証明者、輸出者、生産者、輸入者、品名・HS6桁、原産基準、包括期間、署名+宣言文など)9要素(構成はUSMCAとほぼ同等)項目名の呼称差(例:Certifier)を吸収すれば、単一のフォームで両協定に対応可能。
包括証明最長12か月の複数出荷を単一の証明書でカバー可能(Blanket証明)。同様に最長12か月。年次更新が基本。更新漏れを防ぐ管理システムの構築が重要。
使用言語英語、フランス語、スペイン語(輸入国税関が翻訳を要求可能)英語での提出を各国が受理英語で作成したテンプレートで運用を統一するのが最も効率的。
記録保持義務5年間(輸入者・輸出者・生産者)5年間(同上)社内規程やサプライヤーからの根拠資料(宣誓書など)の保持期間も5年に統一することが望ましい。
第三国インボイス非加盟国発行のインボイス上には記載不可。別紙で提出が必要。第三国発行インボイスの場合、別紙提出が求められる(例:カナダ税関)。【重要】 インボイス発行国が協定加盟国かをチェックし、非加盟国なら自動で別紙扱いにするロジックが必須。
原産地基準の表記HSコード6桁+PSR(CTC/RVC/SPなど)を明記。同様に明記が必要。根拠の追跡可能性のため、「PSR条番号+基準コード(例: CTH, RVC40)+計算式」まで定型化して記載するのが望ましい。
僅少の原則(デミニミス)原則10%(非繊維中心/一部例外あり)原則10%(附属書3-Cの例外に注意)例外品目(例:HSコード第50~63類の繊維品)は要注意。テンプレートに**「例外チェック欄」**を設けると安全。
自動車等の特例RVC、労働付加価値基準(LVC)、鉄鋼・アルミ使用比率など、極めて厳格かつ特殊な要件あり。PSRの差はあるが、USMCAほど特殊な規定は少ない。USMCAの自動車・部品は、専用の計算根拠(ワークシート)を用いた厳格な管理が必須。
事後検認書類要求・現場検査(工場実査)が可能(第5.9条)。同様に検認手続きあり(第3.27条)。税関からの照会に対し、「48時間以内に受領返信→10営業日以内に本回答」など、社内での対応基準(SLA)を標準化しておくことが有効。
デジタル対応電子提出・電子署名を受理。電子形式での提出を協定条文で許容。原本スキャン(PDF)+検索可能なメタデータ管理で、監査(検認)時の即時対応性を確保する。
証明の有効期間税関は、証明書作成日から4年間は特恵関税の要求を受理可能(事後請求)。原則、証明書発行日から1年間有効。【注意】 CPTPPは「1年」で管理するのが安全。更新カレンダーと自動リマインドが必須。

3. 実務Tips:共通テンプレートによる一元管理

USMCAとCPTPPは類似点が多いため、日本本社が主導して証明プロセスを共通化するのに適しています。以下に具体的な運用方法を提案します。

  1. 共通原産地証明書(COO)テンプレートの設計
    • ヘッダーに**協定名(USMCA/CPTPP)**を選択するプルダウンメニューを設置します。
    • 両協定の9つの必須要素を網羅する共通フィールドを設計します。
    • 原産基準(PSR)の記載方法を「基準コード(例:CTH)+ 該当条番号 + (RVCの場合)計算式」の形式で統一します。
  2. 「裏付け資料パッケージ」の標準化
    全ての証明書に対し、その根拠となる資料一式を紐づけて管理し、監査対応力を高めます。
    • 資料例: サプライヤー宣誓書、部品表(BOM)、RVC計算ワークシート(Excel等)、品番・工程・原産地の変更履歴ログ。
  3. 更新・監査プロセスの確立
    • 12か月の包括期間が満了する前に、更新を促す自動リマインダーが担当者に通知される仕組みを構築します。
    • 高リスク品目(自動車関連、電子機器など)は、年2回程度の抜き取り内部監査を実施し、コンプライアンスを維持します。
  4. インボイス発行国に応じた自動分岐ロジック
    共通テンプレートに、「インボイス発行国が協定非加盟国か?」というチェック項目を組み込みます。Yesの場合、インボイス上への記載をロックし、自動的に**「別紙提出」**のフォーマットに切り替わるように設定します。これは、両協定の要件を満たす上で極めて重要な機能です。