HS2028改正の全体像

HS2028とは何か

WCO(世界税関機構)が運営する国際共通の商品分類体系「HS」の第8版に相当する改正です。通常は5年ごとに改正されますが、新型コロナ等の影響で今回のサイクルは6年に延長され、次の版は2028年1月1日発効とされています。現在はHS2022が稼働中で、その次の版がHS2028です。

どこまで決まっているのか

2025年3月(HSC第75会期)にWCOのHS委員会(HSC)が、約6年にわたる審議の最終回として以下を暫定採択しました。

  • 299セットのHS2028改正案
  • 105件の改正提案
  • 解説注の改正5件

これらを含む「HS2028向けArticle 16勧告案」により、HS2028の中身(6桁レベル)は技術交渉として決着した段階です。

どんな分野が大きく動きそうか

現時点で公表されている情報や専門ベンダーの分析から、特に影響が大きいと見られている分野は以下の通りです。

エレクトロニクス・IT関連

半導体・電子部品・スマート基板・マルチコンポーネントICなど、デジタル化・高度化した製品群の細分化と再編が進む見込みです。

医薬品・ワクチン関連

WHOのINNリスト(医薬品一般名)と連動した分類見直しが行われ、441品目の医薬物質の扱いが整理されるなど、医薬品セクターでの改正が大きくなります。

グリーン技術・環境関連品目

再生可能エネルギー関連設備、電動化・省エネ機器、環境配慮型製品など、「グリーン商品」の見える化を意識したコード整理が進む見込みです。

デュアルユース・先端技術製品

軍民両用となり得る先端技術製品について、輸出管理・安全保障貿易との連携を意識した分類の明確化が図られるとみられます。

HS2028は「過渡期」版

2025年のWCO会合では、HS全体の構造そのものを見直す「HS2033モダナイゼーション・プロジェクト」の立ち上げも決定しました。HS2028は、現行HS枠組みの中での「テーマ別アップデート」であり、その先のHS2033でのより抜本的な再設計に向けた橋渡しという位置づけです。

採択プロセスとスケジュール

WCOレベルでの流れ

技術交渉の終了(完了済み)

2025年3月(HSC第75会期)にHS委員会がHS2028向けArticle 16勧告案を暫定採択し、6桁レベルの技術交渉は終了しました。

WCO理事会での正式採択(2025年末予定)

上記の勧告案は、2025年中にWCO理事会に付議され、Article 16勧告として正式採択される予定です。WCO・AEOなどの説明では、2025年12月末に正式採択、2026年1月に勧告が公表されるというタイムラインが示されています。

締約国による異議申立期間(概ね6か月)

HS条約(Article 16)では、WCO理事会から各締約国に勧告が通知されてから6か月間、各国が異議を申し立てることができ、異議がなければ勧告は「全会一致で採択されたもの」とみなされる仕組みです。企業実務から見ると、2026年の前半に国際的な法的確定が進むという理解で十分です。

HS2028テキストの公表

WCO・AEOなどの情報によると、2026年1月にHS2028の最終テキスト(6桁レベル)が公表される見込みです。

発効日

HS2028(新しい版)は、2028年1月1日に全世界で発効することが明示されています。

各国関税表・FTAへの落とし込みスケジュール

HSはあくまで「6桁までの国際条約」です。実務に影響するのは、各国がこれを自国の関税・統計・FTAにどう落とし込むかというフェーズです。

2026年から2027年前半:各国の作業フェーズ

日本は関税率表、実行関税率表、輸出入統計品目表、原産地規則付属書などをHS2028ベースに改正します。EU・米国・ASEANなども、自ブロックや自国の関税表や実行関税(TARIC、HTSUS、AHTN等)をHS2028に合わせて整備します。同時に、FTAの品目表・リストルール(ROO)を新HSに合わせて改正する作業が進みます(例:RCEP、日EU EPA、CPTPP等)。

2027年から2028年:並行稼働期・移行期

多くの国が2028年1月1日からHS2028に移行する一方で、一部の途上国等は移行に時間がかかる可能性があります(過去のHS2017、2022と同様)。企業から見ると、国によって「まだHS2022」「もうHS2028」という期間が数年発生することになります。

相関表の活用

WCOは、HS2022とHS2028を結び付ける「相関表(Correlation Tables)」を作成・公表することになっており、これが各国・各企業の「コード変換作業」の基礎になります。

企業にとっての押さえるべきポイント

マスターデータ・ITシステムへのインパクト

HSコードの6桁が変わると、以下のすべてを更新する必要があります。

  • 自社の品目マスター
  • ERP・輸出入管理システム
  • FTA原産地判定エンジン
  • 税率マスタ・統計コード

専門ベンダー(例:欧州のAEB等)は、HS2028への移行が「通関プロセス・マスターデータ・ITシステムに広範な影響を与える」として、早期の影響分析を推奨しています。

関税コスト・原産地(FTA)への影響

HS改正は単なる番号変更ではなく、「どのHSに入るか」が変わることで、MFN関税率が変わる可能性や、原産地規則(CTCルール)の前提となるHSが変わることを意味します。

特に、電動化・グリーンテック・医薬品・先端半導体などは、関税政策・産業政策と連動した細分化が予想されるため、「関税コスト+FTAメリット」の再試算が必要になります。

グローバルで「複数HS年版」が同時に走るリスク

2028年前後数年間は、米国はHS2028を取り込んだHTS(2028版)、EUはCN/TARIC 2028、ASEANはAHTN 2028(採用タイミングは国により差)、他の国はHS2022のままや独自の移行スケジュールといった形で、「国によりHSの版が違う」状態が避けられません。

その結果、同じ商品でも国Aでは旧HS、国Bでは新HSということが起こり得ます。FTAの原産地証明(特にForm・電子原産地証明)で、相手国税関が想定するHS版と、輸出側が使うHS版が食い違うリスクなどが増えます。

HS2033を見据えた中期視点

HS2028の直後には、2028年から2033年の次サイクルで、HS全体をより抜本的に見直すHS2033改正が控えています。よって、HS2028対応の仕組み(コード変換ロジック・ツール・BPO活用など)は、2033年以降も繰り返し使える「仕組み」として設計しておくことが重要です。

企業が今から準備すべきこと

自社品目の棚卸し(HS2022ベース)

現在使用しているHS2022コード・統計品目番号を、品目マスターとして整理・整合させておく(輸出入・販売会社間でのズレを解消)ことが重要です。

HS2028情報のウォッチ体制の構築

WCO・国税庁・税関、ならびに専門ベンダー(TariffTel、AEB等)の情報更新を定期的にチェックする担当者や仕組みを決めましょう。

IT・システム部門との事前連携

2026年から2027年にシステム改修が集中することを想定し、以下について情報システム部門やベンダーと早期に議論を開始します。

  • HSコード桁数・版管理の仕様
  • 相関表をインポートする仕組み
  • FTA原産地判定ロジックのバージョン管理

FTA・原産地業務への影響の洗い出し

主要FTA(RCEP、日EU、CPTPP、日メキシコ、日タイ等)の原産地リストルールがHS2028に改正されるタイミングと内容をウォッチし、自社のサプライチェーン別に「有利・不利」の試算を行います。

社内教育とサプライヤーコミュニケーション

営業・物流・調達向けに「HS2028とは何か・いつから影響するか」の簡易資料を用意します。主要サプライヤー向けにも、将来的に「HS2028版の部品HSコード+原産地情報」を求めることを先に伝えておきましょう。

全体のまとめ

HS2028は、2028年1月1日発効予定の次期HS改正であり、2025年3月時点で技術的な中身(299セットの改正)はほぼ確定済みです。2025年末にWCO理事会がArticle 16勧告を正式採択し、2026年1月にHS2028テキストが公表され、各国が自国制度への落とし込みを開始します。

改正の焦点は、エレクトロニクス・医薬品・グリーンテック・デュアルユース製品など、近年の通商・安全保障政策のホットスポットに集中しています。

日本企業にとっては、関税コスト・FTA原産地ルール・社内マスターデータ・ITシステムの全面的な見直しが不可避であり、2026年から2027年を「移行準備の勝負どころ」と捉える必要があります。

さらに、すでにHS2033に向けた抜本的なモダナイゼーション・プロジェクトが動き始めており、HS2028対応は「一度きりの対応」ではなく、継続的なHS改正マネジメント体制を作る第一歩と位置付けるのが現実的です。

このあたりを押さえておくと、今後の「HS2028センサー改正」「特定品目のコード変更」のような個別論点も、全体戦略の中に位置づけて検討しやすくなります。


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WCOデータモデル4.2.0が示す「原産地情報の世界標準化」


エグゼクティブサマリー

**WCOデータモデル4.2.0(2025年7月公表)**は、原産地証明書(CO)および自己申告に関するデータ項目・フォーマットを”世界標準”として明示した初の本格バージョンです。このアップデートにより、今後の「電子原産地証明・自己申告・税関間データ連携」の”型”がほぼ確定したといえます。aduananews+2

2025年7月に公表されたバージョン4.2.0では、「Customs Bonds(通関担保)」と「Certificates of Origin(原産地証明書)」という2つの新しい標準データセットが追加されました。特に原産地証明書データセットは、WCO原産地規則技術委員会(TCRO)が作成した原産地データ集をベースに標準化されており、各国が電子原産地証明(eCO)を発行・交換するための”共通フォーマット”を提供します。customstrade+2

さらに2025年10月、WCOは**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**を公表し、税関同士がeCOデータをやり取りする際の法的枠組み・ビジネスプロセス・技術仕様を整理しました。フレームワークでは、「交換されるデータ要素・構造・メッセージ形式の標準として最新のWCOデータモデルを使用する」ことが明記されています。ddcustomslaw+1

要するに、「原産地情報(CO/自己申告)の”中身のデータ”を、WCOデータモデルという共通ルールで統一する」という流れが、公式に動き出したということです。企業サイドには、今後、原産地証明書・原産地申告のデータ項目の”共通化”と、ERP/通関システム/FTA管理システムとの”シームレス連携”を前提とした見直しが求められます。wcoomd+1

WCOデータモデルとは

概要

WCOデータモデル(WCO Data Model, WCO DM)は、通関や関連手続きでやり取りされるデータ要素を標準化した「共通辞書+設計図」です。対象は、輸出入申告、トランジット、許認可、電子インボイス、原産地証明など、”国境をまたぐ手続きのデータ”ほぼ一式をカバーします。バージョン4系列では、JSONやOpen APIなど最新の電子メッセージ形式との親和性が高められており、シングルウィンドウや各種プラットフォームと連携しやすい構造になっています。etradeforall+1

原産地情報に焦点を当てた背景

WCOは2023年に**「原産地証明書のデジタル化に関する研究(Study on the Digitalization of the Certificate of Origin)」**を公表しました。この研究は、84税関を対象とした調査から、紙と電子が混在し、eCOやデータ交換の仕組みも国ごとにバラバラという現状を明らかにしました。そこで、原産地証明プロセス自体をデジタル化し、国ごとにバラバラなデータ構造を共通化することを、デジタル通商・貿易円滑化の重点テーマに据えています。wcoomd+1

4.2.0における原産地情報標準化の進展

原産地証明書情報パッケージの追加

WCO DM 4.2.0の最大トピックの一つが、**原産地証明書データセット(Certificate of Origin Information Package)**の組み込みです。このパッケージは、原産地規則技術委員会(TCRO)が整理したCO用データセットを基礎としています。各国当局が発行する電子原産地証明(eCO)について、証明書番号、発給機関、発給日、輸出者・輸入者情報、品目情報(HS、品名、数量、価格など)、原産地国、原産地基準(CTC/RVC/WO等)、FTA名・適用条項などを共通のデータ項目&コード体系で表現できるように設計されています。aduananews+2

これにより、「国Aが発行したeCOデータを、国Bの税関がそのままシステムに取り込める」という”機械可読な世界標準”を目指しています。ddcustomslaw+1

相互接続フレームワークとの連動

2025年10月の**「原産地証明相互接続フレームワーク(Interconnectivity Framework for Certificates of Origin)」**が、このデータモデルを”実戦投入”するための設計図になっています。mag.wcoomd+1

主な内容は以下の通りです:mag.wcoomd+1

法的枠組み:税関間でCOデータをやり取りするための合意・法的根拠を整備します。ddcustomslaw

ビジネスプロセスモデル:多くの国が既に採用している「Pushモデル」を標準と位置付けています。Pushモデルでは、輸出国でCO発給後、そのデータを輸出当局が輸入国税関に”先送り”し、輸入国は輸入申告時に即座に真偽確認・照合が可能になります。mag.wcoomd

データセットと技術仕様:COデータ交換のためのデータ要素セットとして、WCOデータモデルに基づく「Derived Information Package(DIP)」を策定しました。交換されるデータ要素・データ構造・電子メッセージ形式の標準として、最新バージョンのWCOデータモデルを用いることが明記されています。ddcustomslaw+1

自己申告への拡張:付属書では、半自動Pullモデルおよび原産地自己申告(Self-Declaration of Origin)にも適用できるビジネスモデルを提示しており、将来的には自己申告データも同じWCO DMベースで標準化される方向が示されています。wcoomd+1

企業への具体的インパクト

「様式」から「データ」へのシフト

これまでは、FTAごとに異なるCO様式(紙/PDF)や、各国・各商社が独自フォーマットの原産地申告書を使用するといった”フォーマットの多様性”が前提でした。今後は、**「どの様式か」よりも「どんなデータ要素を、どのコード体系で持っているか」**が問われます。mag.wcoomd+3

例えば、OriginCriterion=”WO” / “CTH” / “RVC40″などのコード化、FTAや協定番号をコードで表現、原産地国コード(ISOコード)とHS Version(2002/2007/2012/2017/2022…)の明示などが求められます。企業は、ERPの品目マスタ、FTA原産地管理システム、通関システムの間で、同じ”原産地データ要素”を一貫して管理する体制が必要になります。wcoomd+2

税関向けと取引先向けデータの統合

WCO DMはもともと通関・当局向けのデータ標準ですが、今回CO・自己申告データがそこに乗ることで、税関に送る原産地データと取引先(顧客・サプライヤー)とやり取りする原産地証明・自己申告データのギャップが小さくなります。結果として、サプライヤー原産地証明のフォーマットも、将来的にはWCO DMにかなり似通ったデータ項目構成になる可能性が高くなります。wcoomd+1

システム統合・API連携の容易化

WCO DM v4系列は、JSONやOpen APIを前提とした実装を意識して設計されており、複数国税関・複数プラットフォームとのAPI連携をしやすくする構造になっています。通関業者やプラットフォームが「WCO DM 4.2.0準拠のeCO API」を提供すれば、それを前提にシステムを組むことでマルチ国対応の”共通インターフェース”になり得ます。FTA管理ツール・社内HS/原産地判定ツールも、WCO DMのCO/原産地関連要素を内部データモデルに取り込んでおけば、将来の当局連携やプラットフォーム接続がスムーズになります。wiki-datamodel.wcoomd+2

コンプライアンス・監査の高度化

Pushモデル+標準データにより、輸出時点のCO情報がそのまま輸入国税関システムに記録されるため、紙ベースに比べ、事後検認・監査での照合・追跡が格段に容易になります。企業にとっては、「税関に提出した情報」と「社内原産地管理台帳」の不一致が、データレベルですぐ露呈する可能性が高まります。逆に言えば、最初から同じデータモデルで一貫管理しておけば、監査時に非常に有利です。mag.wcoomd+1

日本企業が今からできる準備

短期(〜1年):情報収集とギャップ把握

自社の原産地データ項目を棚卸しし、COフォーム、サプライヤー原産地証明、自己申告書、ERPマスタ項目を一覧化します。WCO DM 4.2.0のCO関連項目とのマッピングを行い、「どの項目が足りないか/表現の仕方が違うか」を把握しておくことが重要です。また、RCEP、日EU EPA、CPTPP、ATIGA e-Form Dなど、主要FTAの電子CO/自己申告の動向をチェックし、既に電子プラットフォームがある枠組みでは、今後WCO DMとの整合がテーマになり得ることを認識しておきます。wcoomd+2

中期(1〜3年):システムと業務プロセスの整備

ERP・原産地管理システムの”原産地データモデル”を再設計し、最低限、HSコード+バージョン(HS2022など)、原産地国コード(ISO)、原産地基準(CTH/RVC/WO等)のコード化、適用FTA・条文番号、関連CO番号・発給機関などを構造化データとして管理する方向へ移行します。通関業者/ソフトウェアベンダーに、「今後WCO DM 4.2.0(特にCOパッケージ)に対応する予定はあるか」をヒアリングし、サプライヤーへの要求仕様も見直します。サプライヤー原産地証明を、将来的にWCO DM準拠のデータ要素に近づけることを想定し、フォーマットや入力項目の”将来像”を共有しておくことが望ましいです。ddcustomslaw+2

長期(3年〜):税関・国際プラットフォームとの直接連携

各国税関・地域プラットフォームが、WCO Interconnectivity Frameworkに沿ってeCOデータ交換を進めると、民間企業にも、原産地情報をAPI経由で送受信し、当局側のCOデータを自社システムに自動取込みするといったビジネスモデルが現実味を帯びてきます。その際、社内データがWCO DMベースで整理されている企業ほど、連携コストが低く有利です。mag.wcoomd+1

留意点

採用は各国の判断であり、スピードは国ごとに異なります。WCO DM 4.2.0はあくまで「標準」の提供であり、実際にいつ・どこまで採用するかは各税関の判断です。既に運用中の国・地域のeCOシステム(例:ASEAN ASW、EUの各種システムなど)が、どのタイミングでWCO DM 4.2.0と整合を取るかは今後の議論となります。wcoomd+3

自己申告の標準化はこれから本格化します。フレームワークにはSelf-Declaration of Originも含まれていますが、各FTAの法制度側の変更(様式改訂や条文修正)が伴うため、時間を要する可能性があります。wcoomd+1

企業にとっては「早く動きすぎるリスク」と「出遅れリスク」のバランスが重要ですが、“データとしての原産地情報を構造化・一貫管理する”という方向性は確実なので、社内のマスタ整備・項目の標準化だけ先行して進めておくのは合理的です。wcoomd+1

まとめ

WCO DM 4.2.0は、「原産地情報の世界共通のデータ仕様書」を提示したアップデートです。これにより、原産地証明・自己申告・税関間情報交換の”デジタル土台”が統一方向に動き始めたといえます。日本企業としては、原産地情報を「紙フォーム」ではなく「標準データ項目」として設計し直し、ERP・原産地管理・通関システムを”同じ原産地データモデル”でつなぐという中長期のデータ戦略が重要になります。customstrade+4

  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july/world-customs-organization-releases-data-mode.aspx?p=1
  2. https://aduananews.com/en/la-oma-lanza-la-version-4-2-0-de-su-modelo-de-datos-y-avanza-en-la-digitalizacion-de-los-procesos-aduaneros/
  3. http://www.ddcustomslaw.com/index.php?option=com_content&view=article&id=1050%3Awco-unveils-digital-framework-for-sharing-certificates-of-origin&catid=1%3Aultime&Itemid=50&lang=en
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/december/embracing-digital-evolution-wco-unveils-a-study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin.aspx
  5. https://mag.wcoomd.org/magazine/wco-news-105-issue-3-2024/interconnectivity-framework-co/
  6. https://customstrade.asia/wco-releases-updated-data-model-for-more-harmonized-customs-procedures/
  7. https://etradeforall.org/news/release-version-4-wco-data-model
  8. https://wiki-datamodel.wcoomd.org/electronic-message/open-api-guidelines
  9. https://mag.wcoomd.org/magazine/wco-news-103/lomd-publie-une-etude-sur-la-numerisation-du-certificat-dorigine/
  10. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/facilitation/ressources/permanent-technical-committee/243-244/pc0749eae1.pdf
  11. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july.aspx
  12. https://www.facebook.com/WCOOMD/posts/-advancing-the-digitalization-of-customs-processes-wco-releases-data-model-versi/1167321625436238/
  13. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/july/world-customs-organization-releases-data-mode.aspx?stf=1
  14. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/october.aspx
  15. https://www.wcoomd.org/en/wco-working-bodies/tarif_and_trade/technical_committee_on_rules_of_origin.aspx
  16. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/origin/instruments-and-tools/origin-certification/study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin-en.pdf
  17. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/facilitation/ressources/permanent-technical-committee/243-244/pc0750eae1.pdf
  18. https://www.vatupdate.com/2023/12/14/embracing-digital-evolution-wco-unveils-study-on-the-digitalization-of-the-certificate-of-origin/
  19. https://customsbridge.ai/the-digital-revolution-of-customs-certificate-of-origin/

メキシコ政府による「中国およびその他FTA非締約国からの完成車に対する最大50%関税」方針

エグゼクティブ・サマリー

メキシコ政府は2025年9月9日、中国などメキシコとFTAのない国から輸入される完成車の関税を、現行約20%から最大50%に引き上げる方針を議会に提出しました。これは2026年経済パッケージに含まれる大規模な関税改定案の一部です。whitecase+1

対象国は中国だけでなく、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、メキシコとFTAを結んでいない主要自動車輸出国全般に及びます。reuters

対象品目は完成車(乗用車・貨物車)が最大50%、自動車部品や鉄鋼・繊維なども10〜50%の幅で関税引上げが提案されており、対象品目は1,463〜1,500超のHSコード、輸入額ベースで約520億ドル(全輸入の約8.6%)に及びます。mex.news.o-abroad+2

重要な点として、本措置はMFN(最恵国)関税のみが対象であり、USMCA(米国・カナダ)、日墨EPA、EU–メキシコ協定などFTA/EPA経由の輸入には適用されません。whitecase

現状(2025年11月時点)では、本提案は議会審議中であり、承認が遅れる可能性も指摘されています。ただし与党連合が上下両院で多数を握っているため、可決される可能性は高く、承認されれば2026年初に発効し、2026年12月31日までの「時限措置」として実施される見込みです。insightplus.bakermckenzie+2

日本企業への影響は、中国など非FTA国からメキシコ向けに輸出している完成車・部品ビジネスには強い逆風となる一方、日本・EU・米加産の車両・部品の相対的競争力向上、およびメキシコ現地生産・調達の追い風という、攻守両面のインパクトが想定されます。blogs.tradlinx+1


政策の概要

法的枠組みと位置づけ

2025年9月9日、メキシコ政府は「2026年経済パッケージ」を議会(下院)に提出し、その中で「一般輸入税・輸出税法(LIGIE)」改正のための立法措置を提案しました。insightplus.bakermckenzie+1

この提案は、メキシコのWTO約束税率(バウンドレート)の範囲内で、MFN輸入関税を最大50%まで大幅引上げする内容であり、主な対象産業に自動車・鉄鋼・繊維・プラスチック・玩具等が含まれます。whitecase

従来の措置との違いとして、2024年に実施された関税引上げは大統領令(政令)による時限的なものでしたが、今回は議会承認を経ることで法的安定性を高め、訴訟リスクを低減する意図があります。whitecase

完成車に対する最大50%関税

複数の報道と法務解説によれば、完成車に関するポイントは以下の通りです。

対象品目(例示)

  • HS第87類のうち、乗用車・レーシングカー(8703)、貨物用自動車(8704)などの完成車が、新たに「50%」のMFN税率に引き上げられるカテゴリーに含まれます。blogs.tradlinx+1

現行との比較

  • 中国など非FTA国からの完成車:現行 約20% → 最大50% に引上げ。reuters

対象国(代表例)

  • 中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、いずれもメキシコとFTA/EPAを締結していないため、MFN税率が適用される国です。reuters

適用期間とスケジュール

議会審議状況: 2025年11月時点では、承認が遅れる可能性も指摘されています。一部報道では、2025年12月15日の通常会期終了前に採決される可能性があるとされていますが、確定していません。mex.news.o-abroad+1

発効時期: 議会承認・官報(DOF)公布後、早ければ2026年1月1日に発効する見込みです。insightplus.bakermckenzie+1

適用期間: 提案では2026年12月31日までの時限措置とされていますが、延長の可能性も排除されていません。whitecase

政治的背景: 与党連合が議会で多数を占めていることから、基本方針は維持されたまま可決される可能性が高いと見られています。insightplus.bakermckenzie+1


背景:なぜメキシコは「50%」という高関税に踏み切るのか

中国製自動車の急増と価格懸念

中国は近年、メキシコ向け自動車輸出で最大の供給国となっており、2024年には約44.5万台を輸出したとされています。メキシコ市場における中国ブランドのシェアは、統計により9.5%~30%と幅がありますが、廉価EV・低価格車を中心に短期間で急伸していることは共通しています。reuters

メキシコ経済相マルセロ・エブラルド氏は、「中国車などが参照価格を下回る水準で流入しており、個別のアンチダンピング調査では追いつかないため、関税そのものを引き上げる」と説明し、国内産業を守るための「防御策」であると強調しています。wsws+1

また、メキシコの対中貿易赤字は2024年に1,200億ドルに達し、過去10年で倍増しており、2025年前半だけで570億ドルを超えています。wsws+1

米国の圧力とUSMCA 2026年見直し

米国は、中国製EVや完成車が「メキシコ経由で米国市場に流入すること」を強く警戒しています。reuters

米シンクタンクCSISのマリアナ・カンペロ氏は、「米国は、中国がメキシコを経由してUSMCAを”裏口”として使うことを認めないだろう」とコメントしており、メキシコの今回の措置は「USMCA 2026年レビューを前に、米国との関係を良好に保つための『対米配慮』」と分析されています。reuters

USMCA見直しの時期: メキシコ経済省によれば、USMCAの正式な見直しは2025年10月に開始され、2026年7月1日に完了予定とされています。wyche

同時に、トランプ前大統領は2025年7月にメキシコ産品に対して30%の関税を課す可能性を示唆しており、メキシコとしては「米側の追加関税を避けつつ、国内自動車産業と雇用を守る」という難しいバランスを取ろうとしていると言えます。wyche

Plan Méxicoと国内産業保護

メキシコ政府は2025年初から、「Plan México」の下で、既に約500品目(主に鉄鋼・アルミ・一部自動車部品)に5〜25%の追加関税を導入済みであり、2026年パッケージはその延長線上に位置付けられています。whitecase

政府説明では、過度な輸入依存により「国内の重要な生産部門が失われ、外部ショックへの脆弱性が高まった」こと、近年の「ニアショアリング」潮流を踏まえ、国内付加価値とローカルコンテンツを引き上げたいという意図が明記されています。whitecase

エブラルド経済相は、今回の措置により約32.5万人の産業・製造業雇用を保護できると試算しています。reuters


関税の具体像:どの国の、どの車に効いてくるのか

対象となる完成車・部品のイメージ(HSベース)

完成車(CBU)

  • HS 8703:乗用車・ステーションワゴン・レーシングカー
  • HS 8704:貨物用自動車
  • → MFN税率:50%blogs.tradlinx+1

自動車部品(例示)

  • HS 8708:車両の部分品・付属品
  • 一部のプラスチック部品(HS39類)、アルミ部品(HS76類)など
  • → 10〜50%のレンジで個別に設定whitecase

その他主要産業

  • 鉄鋼・アルミ:約35%
  • 繊維・衣類:10〜50%
  • 玩具・二輪車:約35%reuters+1

注意点: 最終的な税率は、政令の条文(HS6〜8桁レベル)で確定するため、各社は自社製品のHSコードベースで個別確認が必須です。whitecase

対象国:FTAあり/なしで明確に線引き

関税引上げの対象

  • 中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、メキシコとFTAを締結していない国。reuters

関税引上げの対象外(FTA/EPAにより優遇)

  • 米国・カナダ:USMCA
  • 日本:日墨EPA
  • EU諸国:EU–メキシコ・グローバル協定whitecase

重要な注意点: これらの国からの輸出であっても、原産地規則(RoO)を満たさない車両・部品は「非原産品」とみなされ、50%関税の対象になり得ます。whitecase


影響分析:誰が損をし、誰が得をするのか

メキシコ自動車市場・価格への影響

政府試算では、今回の関税引上げパッケージ全体で、対象輸入は520億ドル(全輸入の約8.6%)、平均MFN税率は16.1% → 33.8%に上昇する可能性が指摘されています。reuters

短期的には、中国車などの値上がり前の「駆け込み輸入・販売」が起こり、一時的にシェアがさらに伸びる可能性があります。blogs.tradlinx

中長期的には、低価格帯を中心に値上がりし、メキシコ国内生産車(メキシコ・米・日・欧ブランド)の価格競争力が相対的に高まると見込まれています。blogs.tradlinx

中国・その他非FTA国OEM/サプライヤーへの影響

中国側は本措置に強く反発し、「外部からの圧力や様々な口実による制限に断固反対する」と表明し、必要に応じて「対抗措置も検討」としています。reuters

自動車セクターでは、車両:20% → 50%、部品:現行 → 最大50%への関税引上げが想定されており、中国製完成車・部品をメキシコ向けに輸出するビジネスモデルは大きな見直しを迫られます。blogs.tradlinx+1

BYD・Cheryなど既にメキシコ工場計画を発表していた企業は、「メキシコで現地生産し、USMCAを通じて北米市場にアクセスする」戦略を加速するか、逆に計画を見直すかの分岐点に立たされています。blogs.tradlinx

日本・EU・米加の完成車メーカーへの影響

FTA/EPAを持つ日本・EU・米加の完成車メーカーは、関税面で直接のマイナス影響を受けない一方、中国など非FTA国の車両が50%関税を負うことで、相対的な価格競争力が大きく改善します。blogs.tradlinx+1

ただし、以下のようなケースは注意が必要です:

  • 日本メーカーが中国工場からメキシコへ完成車を輸出している場合 → その車両は中国原産扱いとなり、50%関税の対象になるリスクwhitecase
  • 日墨EPAを利用しているが、原産地基準をギリギリで満たしているモデル → 中国・韓国等非FTA国の部品比率が高い場合、将来の原産地検証でリスクが高まるwhitecase
  • EUメーカーが中国製EVを自社ブランドで輸入・販売している場合 → 影響を受ける可能性whitecase

北米サプライチェーン全体への波及

メキシコはUSMCAの下で米国向け自動車輸出の重要生産拠点であり、今回の措置は、「中国製車両・部品 → メキシコ → 米国」の回廊を抑制する方向に働きます。blogs.tradlinx+1

結果として、北米3カ国の間で「より閉じたブロック経済圏」が強まり、非FTA国からの参入ハードルが上がる一方、日本・EUなど既存FTAパートナーは、北米サプライチェーンへの組み込みを深める好機ともなり得ます。blogs.tradlinx+1


日本企業へのインプリケーションとチェックポイント

日本の完成車メーカー

日本→メキシコ向け輸出/メキシコ現地生産ともに、大枠では「プラス要素」が多いものの、以下の点を要チェックです。

輸出ルート別の影響整理

  • 日本工場 → メキシコ(原産地要件を満たし日墨EPA利用) → 関税引上げの直接影響なしwhitecase
  • 中国工場 → メキシコ(日本ブランドだが中国製) → 中国原産として50%関税の対象となる可能性whitecase
  • メキシコ工場 → 米国・カナダ(USMCA利用) → 中国製部品・バッテリー比率が高いと、将来の原産地検証や米国側の追加措置のリスクwhitecase

価格・商品ポートフォリオ戦略

  • 中国・韓国ブランドが撤退・値上げした価格帯を、メキシコ現地生産の小型車・コンパクトSUV・エントリーEVで取りに行く余地blogs.tradlinx
  • 逆に、自社が中国生産に依存しているエントリーモデルは、生産拠点の移管(日本/メキシコ/他FTA国)を検討する必要whitecase

日本の自動車部品・素材メーカー

中国や非FTA国からメキシコへ輸出している案件

  • 日系企業であっても、輸出国が中国・インド・ASEAN(非FTA)であれば50%関税の対象になり得ますwhitecase
  • まずは「HSコード × 原産国 × メキシコ向け売上」一覧を作成し、影響額を試算することが重要ですwhitecase

メキシコ現地生産・調達の機会

  • 中国など非FTA国製の部品が高関税となることで、メキシコ現地生産、あるいは日本・米・EUからのFTAベース調達へのシフトが起こる可能性が高いblogs.tradlinx+1
  • 日本のTier1・Tier2にとって、メキシコ増産・新規拠点設立の投資案件が増える可能性がありますblogs.tradlinx

商社・物流・金融機関

商社・物流

  • 2025年末〜2026年初にかけて、中国・韓国・インドなどからの「駆け込み輸出」対応(在庫・港湾・通関キャパ)が必要blogs.tradlinx
  • その後は、物流量の減少と貨物構成の変化(CBU→CKD/SKD・部品)に備えたネットワーク再設計が課題blogs.tradlinx

金融機関

  • 中国企業・メキシコ企業向けの既存融資のリスク評価(事業計画の前提価格・数量の見直し)whitecase
  • 日本企業によるメキシコでのM&A・JV案件(部品・物流・販売網)の増加に備えたサポート体制構築blogs.tradlinx

今後のシナリオと実務上のアクション

シナリオ(2025〜2027年)

ベースラインシナリオ

  • 2025年末までに議会承認 → 2026年初に発効 → 2026年末まで50%関税を含む高関税が継続insightplus.bakermckenzie+1

延長・強化シナリオ

  • 2026年末の段階で、メキシコ政府が関税の延長(2027年以降)あるいはより選択的な制度(特定国・特定品目に継続)を導入する可能性whitecase

遅延・緩和シナリオ

  • 議会承認が遅れ、2026年の発効が遅れる可能性mex.news.o-abroad
  • 中国との関係悪化やWTOでの問題化を避けるため、政治的なディールにより税率引下げや適用除外が検討される可能性もゼロではありませんreuters

日本企業が今取るべき具体的アクション(チェックリスト)

自社影響の定量把握

  • 「製品別HSコード × 原産国 × メキシコ向け売上」を一覧化
  • 現行20% vs 50%での粗利・販売価格へのインパクト試算whitecase

原産地戦略の見直し

  • 日墨EPA・USMCA・EU–メキシコ協定などを活用した原産地基準(RoO)の再確認・構成変更
  • 中国・非FTA国からの調達比率が高い場合、サプライチェーンの再設計を検討whitecase

価格・契約条件の見直し

  • メキシコ向け長期契約について、関税変動条項(tax/tariff adjustment clause)の有無と、価格改定の交渉余地を確認whitecase

現地情報の継続的モニタリング

  • メキシコ官報(DOF)、経済省・財務省の発表、業界団体(AMIA、AMDA など)のコメントを継続フォローmex.news.o-abroad+1

メキシコ現地パートナーとの連携強化

  • 通関業者・現地法律事務所と連携し、実際のHSコード・適用税率・通関実務への影響を早期にキャッチアップwhitecase

まとめ

今回のメキシコの50%関税方針は、単なる「中国たたき」にとどまらず、以下を意味します:wsws+2

  • 非FTA国に対するMFN関税の大幅引上げ
  • USMCAを軸にした北米ブロック化の加速
  • ニアショアリング/ローカルコンテンツ重視への明確なシフト
  • メキシコの対中貿易赤字削減と国内雇用保護

日本企業にとっては、中国・非FTA国拠点からのメキシコ向け輸出ビジネスには大きな再設計が必要である一方、日本・メキシコ・米国・EUとのFTAネットワークを活かした「良いポジション」を取るチャンスでもあります。blogs.tradlinx+1

まずは、自社のメキシコ向けビジネスをHSコード・原産国単位で棚卸しし、「どこで50%関税リスクを負っているのか」「どこで相対的優位を取れるのか」を可視化することが、実務的な第一歩と言えます。whitecase

  1. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-proposes-significant-customs-and-tariff-reforms-part-2026-economic-package
  2. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-raise-tariffs-cars-china-50-major-overhaul-2025-09-10/
  3. https://mex.news.o-abroad.com/~/economy/178543-en-mexico-doubts-over-tariff-reform-approval-70-billion-peso-revenue-expected.html
  4. https://insightplus.bakermckenzie.com/bm/international-commercial-trade/mexico-initiative-to-reform-the-customs-law-and-the-tariff-of-the-general-import-and-export-tariffs-law
  5. https://blogs.tradlinx.com/mexico-eyes-50-auto-tariffs-on-china-what-it-means-for-lsps-shippers/
  6. https://www.wsws.org/en/articles/2025/09/22/oyqn-s22.html
  7. https://wyche.com/the-evolving-tariff-landscape/
  8. https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/5926/text/ih?overview=closed&format=xml
  9. https://www.csis.org/analysis/usmca-review-2026
  10. https://mexicobusiness.news/trade-and-investment/news/mexico-prepares-2026-tariff-reform-amid-global-uncertainty

関税政策の中心に「相互関税(reciprocal tariffs)」を据え直し、制度として一気に拡大させつつあります

2025年の米国は、関税政策の中心に「相互関税(reciprocal tariffs)」を据え直し、制度として一気に拡大させつつあります。以下では、日本のビジネスパーソン向けに「何が起きているのか」「どこまで広がりそうか」「日本企業は何を準備すべきか」を整理します。

「相互関税」の基本概念

相互関税(reciprocal tariffs)とは、簡単に言えば「相手国が米国製品にかけている関税・非関税障壁の重さに応じて、米国もその国に対して同程度の負担をかける」という発想です。

2025年1月に下院で提出された「United States Reciprocal Trade Act(米国相互貿易法案)」では、次のような考え方が明文化されています。

  • ある国が米国からの特定品目に高い関税や非関税障壁を課している場合、大統領はその国からの同じ品目に対し交渉を行う
  • 交渉で関税・非関税障壁を下げられなければ、同程度の関税を上乗せする

つまりWTOの「最恵国待遇(MFN)」に基づく一律の関税ではなく、二国間の損得勘定に基づいてレートを変える発想です。

2025年に起きた3つの転換点

「解放の日」:10%一律+国別上乗せ

2025年2月13日、トランプ大統領は「Fair and Reciprocal Plan」というメモランダムに署名し、「非互恵的な通商関係を是正する包括的計画」を作るよう政府に指示しました。

そして4月2日(本人いわく”解放の日”)に、次のような枠組みを発表します。

10%の一律「相互」関税(ベースライン)として、ほぼすべての輸入品に追加で10%の関税を課します。既に別制度で課税されている鉄鋼・アルミ・自動車などは除外されます。

国別の「相互」上乗せ関税(11〜50%)では、貿易赤字が大きく米国製品に高関税を課している国ほど高いレートが設定されました。例えばEUには20%(全輸入品に追加)、ベトナムには46%、バングラデシュには37%など、高リスク国も多数含まれます。

当初は4月9日から国別レートを本格発動する予定でしたが、株価急落などを受けて一部を90日間停止し、交渉の材料として使う形に変更しています。

中国向け:フェンタニル・レアアースと結びついた超高関税

中国については、2025年初頭から別枠のIEEPA(国際緊急経済権限法)制裁関税が重なっています。

2月1日にカナダ・メキシコに25%、中国に10%の「フェンタニル関税」が発動され、3月4日には中国向けフェンタニル関税を20%に引き上げました。4月2日以降は、これに加えて「相互関税」の枠組みで中国向けに最大125%のレートを設定し、一時的には合計145%という水準に達したと報じられています。

その後、中国側も農産品・エネルギー・レアアース輸出規制で報復し、5月以降は交渉の結果、中国向け追加関税は概ね20〜30%程度に抑えられました。レアアース輸出規制の凍結と引き換えに、高率「相互関税」の適用停止が2026年11月まで延長されています。

少額免税(de minimis)の撤廃

もう一つの大きな拡大が、少額輸入の免税枠(de minimis:800ドル以下免税)を潰しに行っている点です。

2025年4月2日に中国・香港向けのde minimis免税を撤廃する大統領令が発出され、7月30日にはすべての国を対象にde minimis免税を停止する大統領令が署名されました。8月29日以降、800ドル以下のほぼ全ての輸入が関税対象になっています。

これにより、これまで「小口直送なら関税がかからない」とされてきた越境EC・サンプル出荷・少量スペアパーツなども、相互関税の網に引っかかる構造になっています。

日本への影響:15%で折り合った意味

日米の「15%合意」

日本は当初、他の先進国と同様に「10%ベース+20%前後の相互上乗せ(合計30%近辺)」の候補とされていましたが、集中的な交渉の結果、「15%で固定する日米協定」が2025年7月23日に発表されました。

日本から米国への大半の輸出品に対し15%の相互関税が課される代わりに、日本は米国への5,500億ドル規模の投資コミットメントと一部輸入関税の削減・規制緩和等を約束しました。

その後、9月4日の大統領令と連邦官報告示を通じて、「15%はほかの相互関税と二重に乗らない(スタックしない)」「自動車・自動車部品を含む多くの品目で最終レートは最大15%に制限」と明確化されました。

日本企業への実務インパクト

ポイントを整理すると以下の通りです。

「最悪のシナリオ」は回避したものの、15%は常設に近い形です。EUなど一部の国は20%水準で日本より重い国も多い中、日本は15%で中程度の位置付けとなりました。ただし恒久的な「対米輸出税」として組み込まれた可能性が高いと言えます。

品目別では、従来のMFN+その他の関税と合算される形になります。HSごとに、通常のMFN税率、既存のセクション232(鉄鋼50%、自動車25%など)、そこに相互関税(日本は最大15%)がどう重なるか、HTSUSの特別番号を使って評価する必要があります。

値決め・コスト転嫁の前提を見直す必要があります。15%を「長期的な追加コスト」と見て、価格設定、サプライチェーンの組み換え(メキシコ・カナダ・東南アジア経由など)、ローカル生産化を再検討する企業が増えています。

恒久制度化と司法リスク

議会側:本則化への動き

H.R.735「United States Reciprocal Trade Act」は、大統領に以下の権限を正式に与える法案です。

  • 相手国の関税レートと非関税障壁(認可制度・補助金・規制など)を「関税に換算した負担」として評価し、米国向け輸入品に同等の関税を課す
  • 交渉により、相手国の関税・非関税障壁を下げさせる

同法案はまだ成立していませんが、成立すれば「相互関税」がトランプ政権固有の政策ではなく、超党派の法制度として残る可能性があります。

司法側:IEEPAの合憲性をめぐる攻防

一方で、現在の相互関税の多くはIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく緊急権限として発動されています。

これに対し、輸入企業などが訴えた「Learning Resources v. Trump」事件では、連邦巡回控訴裁判所がIEEPAはここまで広い関税設定権限は与えていないとし、大統領の「ほぼ全世界への一律関税」は違法と判断しました。ただし判決の効力は停止され、関税自体は継続中です。

2025年11月5日に米連邦最高裁が口頭弁論を実施し、IEEPAに基づく関税権限の合憲性・委任立法の限界が審理されています。

最高裁が違憲・権限外と判断すれば、Liberation Day関税や一部の相互関税が無効となり、既に納付した関税の返還請求が大規模に発生する可能性があります。合憲と判断されれば、IEEPAを使った相互関税は「大統領がいつでも使えるツール」として今後の政権にも引き継がれ、H.R.735と組み合わさることで相互関税の恒久制度化の可能性が高まります。

日本企業が取るべき5つの実務アクション

対米輸出品の「関税総額マップ」作成

自社の主要対米輸出品について、HTSUSベースの基本関税(MFN)、セクション232・その他の特別関税、日米合意に基づく最大15%の相互関税を品目別に一覧化し、「関税込みFOB/CIF価格」を再計算します。

中国・メキシコ・EU経由の間接輸出がある場合は、原産地ルール・ルーティングも整理しましょう。

価格戦略・契約条件の見直し

既存の長期契約が想定していない関税増加分(例:+15%)について、価格改定条項(tariff pass-through clause)の有無と再交渉・見直しタイミングを法務・営業と連携してチェックします。

特にBtoC向けオンライン販売(越境EC)は、de minimis廃止で小額注文ほど関税負担の比重が高くなるため、送料・最低注文額・現地在庫化の是非を検討すべきです。

サプライチェーンの再構成シナリオ

「対米15%」を前提に、米国内生産・現地調達へのシフト、カナダ・メキシコ・CPTPP加盟国経由の組立・加工など、総関税負担とロジスティクスコストを合わせた「トータル最適」を検証します。

同時に、対中・対EUの相互関税エスカレーションも念頭に、原材料・部品調達の多元化を進めておきましょう。

HSコード・原産地の精緻化

相互関税レートは品目・国別にきめ細かく設計されているため、HSコードの誤分類や原産地表示・原産地規則の誤適用があると、想定外の高率相互関税を適用されるリスクが高まります。

自社主要品目について、最新HS(2022/次期2028案)と米国HTSUSの整合、FTA/EPAの利用可否、税関事前教示・過去通関実績をまとめた「関税リスク・ドシエ」を作成しておくと、米国税関とのトラブルや将来の係争への備えにもなります。

新常態としての相互関税

EU・インド・ブラジルなども、米国の相互関税に対抗して自国版の相互的な報復関税を検討・実施しています。

WTOの紛争処理機能が弱体化している中、「二国間・多国間の相互関税合戦」が今後10年の新常態になる可能性は高いと言えます。したがって日本企業としては、「関税がゼロに戻る」ことを前提にせず、関税・輸出管理・サプライチェーン再構成をセットで考えるという発想への転換が求められます。

総括:政治イベントから制度リスクへ

2025年の米国は、10%一律+国別相互関税、de minimis廃止による小口輸出への課税拡大、日米15%合意による「相互関税の2国間組み込み」、そしてIEEPA・Reciprocal Trade Actをめぐる司法・立法の攻防を通じて、相互関税を単発の政治パフォーマンスから「半恒久的な制度リスク」に変えつつあると言えます。

日本のビジネスとしては、関税総額の見える化、価格・契約の見直し、サプライチェーンの再設計、HSコード・原産地の精緻管理を、通常のコスト削減プロジェクトと同じレベルで「経営アジェンダ」に載せていくことが、今後ますます重要になります。

HS 2028改正:自動車部品サプライチェーンへのインパクト分析

エグゼクティブサマリー

HS 2028(商品の名称及び分類についての統一システム 2028年版)は、2028年1月1日に発効予定です。改正パッケージは2025年3月のHSC(HS委員会)第75会期で暫定採択済みであり、2025年12月末の正式採択後、2026年1月に条文および新旧対照表(相関表)が公表される見込みです。

今回の改正(299パッケージ)では、**半導体やセンサー(トランスデューサ)**が重点テーマに含まれています。これにより、電装部品や測定機器の領域(第85類・第90類)で分類境界の整理(品目細分の追加、注記の整備)が行われる可能性が非常に高いです。

特に自動車のADAS(先進運転支援システム)や電動化関連コンポーネントにおいてHSコードの再編が予想され、サプライチェーン実務(原産地証明、関税分類、コンプライアンス)への影響は広範囲に及ぶと考えられます。ただし、具体的な品目移動に関する条文レベルの詳細は、2025年11月時点で未公表です。

HSコード(6桁)の変更は、FTA(自由貿易協定)の品目別規則(PSR)の再マッピングを必須とします。これにより、CPTPP、日EU・EPA、USMCAなどで使用する自己申告様式やサプライヤー宣誓書の更新が必要となります。相関表が公表される2026年から発効までの約2年間で、計画的に移行準備を進めることが現実的なアプローチです。


自動車部品サプライチェーンへの主なインパクト

1. 車載センサー・ECU・電装ユニット

センサー類(温度、圧力、加速度センサー、LiDAR/Radar関連)やMEMSデバイスの分類において、第85類(電気機器)と第90類(測定機器)の境界が再整理されると想定されます。

細分の新設や注記の変更が行われた場合、HSコードの変更がPSR(品目別規則)のCTC(関税分類変更基準)やVA(付加価値基準)の条件変更に直結するため、FTA原産判定のロジックに大きな影響を及ぼします。

現時点で「第85類から第90類へ一斉に移籍する」と断定できる一次資料は未公開ですが、ADAS市場の急成長と技術革新を背景に、センサー分類の精緻化が進む見通しです(例:位置センサー、画像センサー、慣性センサーなど)。

2. EV系コンポーネント

HS 2028はグリーン分野(環境関連)や電子分野にも重点を置いており、電池、充電器、電力制御部材の細分化が進む見込みです。

将来的な海外規制(例:EU電池規則など)との整合性強化や、統計把握の精緻化が進むと、これまで参照していた関税率、統計コード、規制適合のための参照コードが変わる可能性があります。

リチウムイオン電池、駆動用電動機、パワーエレクトロニクスといった電動化コンポーネントは、各国の関税政策や補助金制度の対象としても注目されており、正確な分類が一層重要になります。

3. 第87類「部分品」との関係

現行のHS第17部注の規定により、第84類、第85類、第90類、第91類に分類される品目(特掲品)は、原則として第87.08項(自動車の部分品)には分類されません。

したがって、これらの電装部品やセンサーが広範囲に**第87類へ編入(移籍)**されるには、条文または注記の大幅な修正が前提となります。最終的な判断には、2026年に公表される相関表と最終条文の確認が不可欠です。

4. 価格・税率・取引条件への影響

日本のMFN税率(最恵国待遇税率)では無税の品目も多いですが、仕向国によってはHSコードの変更が関税率の変動に直結します。

また、各国の国内法制化(8~10桁レベル)のタイムラグや、特恵関税の適否が変わる可能性を考慮すると、「品番—HSコード—PSR—税率—原産証明」というデータ連鎖全体の再整合が必要になります。


タイムラインと対応の考え方

移行スケジュール(想定)

  • 2025年12月末: WCO(世界税関機構)理事会による正式採択(予定)
  • 2026年 1月: 条文・相関表の公表 → 移行設計の正式スタート
  • 2026年~2027年: 以下の対応を実施
    • 各国の国内細分(8~10桁)改定、FTAのPSR改訂の動向を注視
    • 社内マスタ更新、PSR再判定、各種様式(自己申告書等)の改版
    • サプライヤー(ベンダ)への説明・教育
  • 2028年 1月 1日: HS 2028 発効(※国により適用開始日に若干の差異が生じる可能性あり)

部門別チェックリスト(推奨)

領域やること(要点)成果物/到達点
品番・マスタHS 2022→HS 2028の影響度スクリーニング(特にセンサー、ECU、EV系を優先)6桁影響リスト、再審査対象キュー
原産地/FTAPSRの再マッピング(CTC/VAへの影響確認)、自己申告様式・宣誓書の改版案作成改版テンプレート、取引先配布用ガイダンス
調達・価格税率/特恵の差分試算(主要仕向地×主要品番)コスト影響試算表、見積条件の更新指針
倉庫・通関国内8–10桁への波及を国別に確認し、優先国から運用手順を更新通関SOP(標準作業手順書)改訂、ベンダ教育資料
IT/ERP相関表をコードブックとして取り込み、移行期間中の処理(新旧コード併記)を設計データ移行計画、システム改修要件定義
法務/契約インコタームズや価格条項など、HSコードに依存する契約文言の見直し取引基本契約の付属書改定案

リスクと機会

想定されるリスク

  • 原産不適合リスク: PSR変更(特にCTC)により、従来は満たしていた特恵適格の基準から外れる。
  • 税番相違による遅延・監査: 輸出入申告時のコード不一致による通関遅延や、事後調査での指摘。
  • 多拠点でのコード不一致: 国別の切替時期の差異による、グローバルでのマスタ不整合。
  • 取引条件の再交渉: 顧客図番に紐づく契約や見積(関税条件等)の再提示が必要になる。

移行に伴う機会

  • 特恵最適化: 新設される細分を活用し、より有利なPSRや関税率を適用できる可能性。
  • 正確な統計把握: EV・ADAS関連部品の分類が精緻化され、市場分析や政策対話の根拠データが強化される。
  • 業務プロセスの標準化: マスタ、宣誓書、自己申告書の見直しを機に、業務の標準化や自動化を進め、監査耐性を向上させる。

推奨される初期対応(アクションプラン例)

相関表の公表(2026年1月予定)を待つ間にも、以下の準備に着手することを推奨します。

  1. 影響懸念在庫の特定:センサー、ECU、EV電装部品を中心に、現行のHSコード(6桁)ごとに在庫や取引量をリストアップし、変更の可能性がある「優先監視リスト」を作成する。
  2. PSR影響マップ(草案)の作成:主要FTA(CPTPP, 日EU EPA等)の対象品番について、現行6桁から「想定される新6桁」へ移った場合のPSRへの影響(CTC等)を仮試算する。(※相関表の公開後に確定版を作成)
  3. 書式雛形の改版準備:自己申告書やサプライヤー宣誓書、BOM(部品表)聴取票について、**HS欄を新旧併記(2022年版 / 2028年版)**で管理できるよう、様式のドラフト(案)を用意する。
  4. IT要件定義:ERP等の基幹システムにおいて、HSコードのテーブルを「有効開始日」付きで管理できるよう改修要件を整理する。ラベル、送り状、原産証明書への出力ロジック変更の要否も確認する。

不確定情報の取り扱い(2025年11月時点)

本分析は、2025年11月時点で入手可能な情報に基づいています。「第85類から第90類、あるいは第87類への具体的な品目移動」を示す最終的な条文・相関表は未公表です。

WCOによる2026年1月(予定)の公式発表を正式なトリガーとし、それまではリスク分析と準備作業を進め、公表後に本格的な移行作業へ移行することが推奨されます。

ASEAN e-Form D 完全電子化の実務対応(2025年版)

以下は、ご提供いただいた文章を加筆修正し、正確性を確認した上で読みやすく整理した「ASEAN e-Form D 完全電子化の実務対応(2025年版)」です。customs+2


本ガイドは、現場でそのまま使える実務対応マニュアルとして作成しています。customs+1

結論(何が変わったか)

2024年1月1日以降、ATIGA(ASEAN物品貿易協定)の原産地証明書Form Dは、電子形式(e-Form D)のみでの発給・受理が原則となりました。 紙のForm Dは関税特恵申請に使用できなくなり、各国税関とASEAN公式声明でこの方針が明確化されています。 ただし、ASW(ASEAN Single Window)システム障害時などの例外的状況においてのみ、紙Form Dの発給・受理が臨時措置として認められています。customs+1

用語解説

  • ATIGA:ASEAN Trade in Goods Agreement(ASEAN物品貿易協定)customs
  • ASW:ASEAN Single Window(各国NSWを接続する政府間ネットワーク)miti+1
  • e-Form D:ATIGAの電子原産地証明書(税関間でASW経由で送受信)customs+1

仕組みの全体像

電子化された原産地証明書のフローは以下のとおりです。customs

  1. 輸出者が各国のNSW(National Single Window)または原産地証明システムでForm Dを申請・承認取得customs
  2. ASW経由で輸入国税関へ電子送信(e-Form D)miti+1
  3. 輸入申告時にe-Form Dのリファレンス番号等を申告すると、輸入国税関がASWから原本データを自動取得し、特恵審査を実施customs

シンガポールではTradeNet/NTP(Networked Trade Platform)から送信し、相手国へのe-Form D送受信の具体的手順が公式ハンドブックで提供されています。customs

輸出側の現場フロー

事前準備(国別システムの入口)

各国で以下のシステムを使用します。miti+2

  • シンガポール:NTP(Networked Trade Platform)でe-Form Dを送信。ICSガイドに沿って申請後、電子送信を実行customs
  • マレーシア:MITIのePCOで申請。2020年3月18日以降、紙Form Dの発給を停止し、すべてASW経由で送信(通常・B2B・第三国インボイスを含む)miti
  • インドネシア:商業省e-SKAで申請後、ASW送信。電子Form Dは紙と同等の法的効力を持つmiti
  • フィリピン:BOC/DTIのe-COポータルで電子発給・受理を実施customs
  • タイ:商務省/税関の電子COおよび検証システム(TCOIS)を運用miti

送信の実務手順

Form D承認後、送信画面で輸入国・リファレンス番号等を確認し、電子送信を実行します。 シンガポールNTPの操作手順は、ICS手順書に画面付きで詳細に記載されています。customs

取引先(輸入者/通関業者)へは以下の情報を通知してください。customs

  • e-Form Dのリファレンス番号
  • 発給日
  • 数量・品番等のキー項目
  • 念のためPDF出力(表示用)も共有(税関照会時の参照用)

自国システム上で送信成功/受領状況を監視し、問題発生時の問い合わせ窓口も明示しておきます。customs

輸入側の現場フロー

輸入申告書にe-Form Dのリファレンス番号等を入力すると、輸入国税関がASWからe-Form D原本データを自動照会します。 到着時点でデータが未着の場合、後日ASW到着データで紐付けられることがあります。 相手国での入庫検索機能(例:シンガポールのInbound Enquiry)も活用可能です。customs

照合エラーや番号不一致時は、輸入者側で各国の検証サイト(例:タイTCOIS)を参照し、通関へ照会してください。customs

典型的なユースケース

Back-to-Back(B2B)e-Form D

中継国での再輸出に伴うBack-to-Back(B2B)はe-Form Dでも可能です。 原本のリファレンス番号/発給日をBox 7等へ記載し、部分積での数量管理などOCP(運用規程)の規定に従います。 シンガポールの実務では、B2B申請時に先行貨物のe-Form Dリファレンス番号を参照することが認められています。customs+1

第三国(第三者)インボイス

ATIGAでは第三国インボイスが認められています。 Form D上のチェック欄または備考欄で表示します(様式のBox 13に該当するチェックボックスがあります)。fta.miti+1

有効期間

Form Dの有効期間は原則12か月です。 遡及発給・紛失再発行(Certified True Copy)等の条件もOCPに規定されています。fta.miti

障害時のコンティンジェンシー

ASW障害など技術的理由がある場合のみ、紙Form Dの発給・受理が認められます。 輸出者はPDF出力を輸入者に送付し、輸入者が税関に照会するという暫定対応が案内されています。customs

保存期間・監査対応

各国の保存期間は以下のとおりです。customs

  • シンガポール:通関関連記録は5年保存(電子可)customs
  • マレーシア:一般に7年保存(会社法・税関実務)miti

実務のポイント

  • e-Form Dリファレンス番号 ↔ 輸出入申告番号 ↔ 貿易書類(Invoice/BL)の突合リストを定期作成customs
  • HSコード/原産地基準(WO/CTC/RVC)の根拠資料(BOM、コスト表、工程表、ベンダー宣誓書等)を案件単位で監査トレーサビリティ可能にするcustoms

30日で完全電子化に移行するチェックリスト

Week 1:ポリシー&体制

  • 取引先別に協定・品目別PSRとForm D利用有無を棚卸しcustoms
  • 各国アカウント(NTP/ePCO/e-SKA等)と通関委任の権限管理を確認(送信権限の付与/見直し)customs

Week 2:データ整備

  • HSコード・原産地判定ロジックのマスタ化(PSR・RVC計算式・第三国インボイスの表示方針)customs
  • e-Form D項目(リファレンス番号/輸送情報/原産地基準コード等)をERP・申請システムに必須化customs

Week 3:UAT(ユーザ受入テスト)

  • 小口案件で送信→相手国受領→輸入側通関の通番紐付けをテスト(Inbound検索含む)customs
  • 障害時手順(PDF共有・税関照会テンプレート)をドライランcustoms

Week 4:本番&定着

  • すべてe-Form D送信へ切替(紙は保険用途のみ)customs+1
  • 月次の突合・未着/照合不一致のKPIを可視化(未着率、差戻し率、B2B案件の二重控除防止など)customs

国別システム入口(抜粋)

  • シンガポール:Singapore Customs – ASW(電子送受信の総合ページ)とICS手順書customs
  • マレーシア:MITI ePCO/お知らせ(紙発給停止・ASW送信)miti
  • インドネシア:商業省e-SKA(電子Form D説明)miti
  • タイ:TCOIS(CO検証)miti
  • フィリピン:DTI/BOC e-COポータル(2024年1月からフル電子発給・受理)customs

e-Form DとAWSC(自己証明)の使い分け

AWSC(ASEAN-Wide Self-Certification)は、認定輸出者(CE)がインボイス上の原産地宣言で特恵申請できる制度です。 e-Form Dとは代替関係になり得るため、品目・相手国体制・社内統制で選択します。 Back-to-Back宣言(AWSC版)もOCPに規定があります。customs

よくある質問(FAQ)

Q1. e-Form Dの有効期間は?
原則として発給日から12か月です。 遡及発給・再発行の条件もOCPに定めがあります。fta.miti

Q2. 第三国インボイスは使える?
使用可能です。 Form D様式の該当欄に表示します。customslegaloffice+1

Q3. B2B(中継輸出)は電子でもOK?
可能です。 原本のリファレンス番号/発給日を明示し、数量合算管理等のOCPルールを遵守してください。customs+1

Q4. 送信成功なのに相手国で見つからないと言われた
PDFを輸入者へ送り、税関に照会してもらいます。 ASW障害・ゲートウェイ遅延等の切り分けが必要です。customs

Q5. 書類の保存は何年?
国により異なります(例:シンガポールは5年、マレーシアは7年)。 自社ポリシーは最長基準で統一することを推奨します。miti+1

実務テンプレート

対取引先(輸入者)連絡テンプレート

text件名:ATIGA e-Form D 送信完了のご連絡(Ref No.: XXXX)

・発給国/発給機関:[国名/機関名]
・e-Form D Ref No.:[XXXX](発給日:[YYYY-MM-DD])
・対象Invoice/HSコード/数量:[…]
・第三国インボイス:有/無
・B2B:有(元Ref No.[XXXX])/無

参考:e-Form DのPDF表示版を添付(税関照会用)

障害時(ASW不達)一次対応フロー

  1. 自国ポータルで送信ステータス再確認customs
  2. 表示用PDFを輸入者へ送付customs
  3. 輸入者が現地税関へ照会(リファレンス番号提示)customs
  4. 相互に再送または手動照合で復旧customs

本ガイドは、2024年1月以降の完全電子化に対応した最新の実務内容を反映しています。 各国システムや社内体制に応じて、カスタマイズしてご活用ください。customs+1

  1. https://www.customs.gov.sg/files/news-and-media/Circular_22_2023_amended__29_Jan_2024_.pdf
  2. https://www.miti.gov.my/index.php/pages/view/3911
  3. https://customs.gov.sg/businesses/rules-of-origin/asw/
  4. https://customs.gov.sg/businesses/certificates-of-origin/how-to-apply-for-b2b/
  5. https://fta.miti.gov.my/index.php/pages/view/17
  6. https://www.customslegaloffice.com/global/what-is-third-country-invoicing-tci/
  7. https://customs.gov.ph/wp-content/uploads/2025/10/2025-204-AOCG-MEMO.pdf
  8. https://www.facebook.com/BureauOfCustomsPH/posts/bocadvisory-effective-january-1-2024-eligible-goods-destined-for-asean-member-st/699796075660078/
  9. https://miffi.com.ph/assets/pdf/Advisory_Files/MIFFI_OPERATIONS%20Notice_Jan%2016%202024.pdf
  10. https://www.jiffa.or.jp/en/news/entry-5026.html
  11. https://www.miti.gov.my/miti/resources/Preferential%20Certificate%20of%20Origin/Announcement/Slide_ASW.pdf
  12. https://global-scm.com/blog/?p=3107
  13. https://ask.gov.sg/customs/questions/clz9bs3x2020gf966c1pxojey
  14. https://www.laotradeportal.gov.la/en-gb/site/display/2068
  15. https://www.eabc-thailand.org/eabc-asean-wide-self-certification-survey/
  16. https://www.jmcti.org/mondai/database/report/2024/ASEAN
  17. https://www.instagram.com/p/DPftmF9DAG2/
  18. https://x.com/ASEAN/status/1975425994270834752
  19. https://www.v-servelogistics.com/media/vserve2017/file_pdf/20092350214_152-2563%20%E0%B9%80%E0%B8%AD%E0%B8%81%E0%B8%AA%E0%B8%B2%E0%B8%A3%E0%B9%81%E0%B8%99%E0%B8%9A%20e-ATIGA%20Form%20D%20Electronic%20Process%20Specification%20V0.04.pdf
  20. https://www.facebook.com/InternationalTradeCentre/posts/are-you-an-asean-exporterwere-working-with-the-asean-secretariat-to-strengthen-t/1129378019384893/

「中国、レアアース輸出規制を1年間停止へ」

一文サマリー

中国は2025年11月7日付で、レアアース等に関する一連の輸出管理強化(10月9日発表分)を約1年間停止。停止期間は2026年11月10日まで。撤廃ではなく一時停止(商務部・税関総署「公告2025年第70号」)。日本を含む全世界向けに適用。nikkei+3

何が「停止」されたのか(公式根拠)

中国商務部・税関総署の公告2025年第70号は、以下6つの告示の効力を即日~2026年11月10日まで停止すると明記(=10月9日発表分が丸ごと一時停止)。mofcom

  • 第55号:超硬材料(人工ダイヤモンド粉、砥石等)や関連装置を輸出管理対象化 → 停止
  • 第56号:レアアース生産設備(遠心抽出機、焼結炉、加工設備等)と原料・薬剤(鉱石・抽出剤)を管理 → 停止
  • 第57号:中・重希土5元素(Ho, Er, Tm, Eu, Yb)の金属/合金/靶材/酸化物/化合物等 → 停止
  • 第58号:リチウム電池(高性能セル等)・人工黒鉛負極・関連設備/技術 → 停止
  • 第61号:レアアースを中国国外で輸出する場合でも、中国原産分が0.1%以上含まれる製品や中国の抽出/分離/磁性材製造技術を使って製造した製品に中国の許可を要求する域外適用 → 停止
  • 第62号:レアアース関連技術(採掘~分離~磁石製造~リサイクル~ライン組立/保守含む)の輸出管理 → 停止

※停止は実施見合わせであって、法令自体の廃止ではありません。今後の情勢で再開され得ます。yomiuri+1

「停止」されていないもの(要注意)

2025年4月4日付の別枠規制(Announcement No.18/2025):中・重希土7元素(Sm, Gd, Tb, Dy, Lu, Sc, Y)とその合金/磁石/酸化物/化合物などに対する輸出管理は今回の停止対象に含まれていません。=原則継続と解釈されます。jetro+2

米政府は「一般許可(General License)の導入で4月分も事実上緩む」との説明を示していますが、中国側の公式確認は現時点でなく、日本メディアも「4月分は停止措置に含まれない」と報じています。業務上は継続前提の在庫・調達計画が安全です。yomiuri+1

時系列(直近3か月)

  • 10月9日:超硬材・レアアース設備/原料・中重希土追加・リチウム電池/黒鉛負極・域外適用・技術輸出の一斉強化を発表news.yahoo+1
  • 10月30日:韓国・釜山で米中首脳会談が開催され、レアアース輸出規制の1年間停止で合意mainichi+2
  • 11月7日:第70号で上記(10月9日発表分)を1年間停止mofcom+1
  • 11月9日:関連動きとして、中国はガリウム/ゲルマニウム/アンチモン等の対米輸出承認停止の解除も公表(2026年11月27日まで)

市場・相場の初期反応

米中の関税・輸出規制の一時休戦報道と停止決定を受け、米上場のレアアース関連株は一時下落(供給不安の緩和観測)。

日本企業への実務インパクト(業界別の着眼点)

1) 自動車/EV・モータ/風力

NdFeB(ネオジム磁石)向けDy/Tbの添加やSmCo系、焼結/拡散設備(PVD等)、抽出剤(P204/P507等)の越境調達・技術支援が動きやすくなります。ただし4月4日規制分は継続。jetro

2) 電子・HDD/センサー/FA

Sm, Dy, Tb等のスパッタリングターゲット、磁性部品の域外適用(0.1%ルール)停止により、日本/東南アジア製品の出荷手続きが簡素化される可能性。

3) 電池・素材

高性能リチウム電池/人工黒鉛負極/製造装置・技術の新規出荷・据付・技術サポートは停止期間中に前進しやすい一方、停止は期限付き。代替調達・内製化の取り組みは継続必須。

4) 防衛関連用途

今後示される**一般許可(GL)**が導入されても、防衛関連は除外の可能性が示唆されています。該当顧客を抱える企業は要慎重。

いますぐできる実務チェックリスト(”月曜朝のTo‑Do”)

  1. 仕掛中の出荷/通関案件を棚卸:10月9日告示由来の差し止め・審査待ちがないか、中国側サプライヤー/代理店経由で停止適用の再確認news.yahoo+1
  2. BOM/原産性の再評価:中国原産レアアースの含有率や**製造工程(抽出/分離/磁性材工程の技術使用)**の有無を台帳化。第61号の域外適用が停止中でも、将来再開に備えて可視化
  3. 契約条項(不可抗力/規制変更)の見直し:一時停止→再開リスクを見越して価格・納期条項に柔軟な調整メカニズムを挿入
  4. 在庫・価格戦略:停止を理由に在庫を過度に薄くしない。延期コールオプション(納期オプション)や段階発注で価格変動に備える
  5. 代替ソース/プロセス検討の継続:停止はタイムバイ。日本/豪/米/東南アジアの精製・磁石・材料サプライヤーとの二重化を止めない
  6. 用途・エンドユーザー確認:防衛・デュアルユース案件は適用外/審査厳格の可能性を常時確認
  7. 対欧州/対米の要件差の把握:EUは安定ライセンス制度整備へ協議中、米側はGL観測あり。輸出先別の運用差に留意

リスクシナリオ(12か月)

  • ベース:10月9日告示分の停止が継続。4月4日分は存続。個別審査・書類要求は残り、現場フリクションは段階的に軽減nikkei+1
  • 強気:一般許可(GL)が実装され、適法用途には包括的許可が普及。欧州向けの定常フローが回復
  • 弱気:地政学再燃で停止撤回、10月9日告示が即時復活。4月4日分も厳格化。域外適用が再稼働。→在庫逼迫・価格上振れ

関連ファクト(根拠とコンテクスト)

  • 停止の法的根拠と期間:公告2025年第70号(即日~2026年11月10日)mofcom
  • 停止された”10月9日パッケージ”の中身:超硬材(第55号)、レアアース設備/原料(第56号)、中重希土5種(第57号)、電池/黒鉛負極(第58号)、域外適用(第61号)、技術輸出(第62号)news.yahoo+1
  • 4月4日の別枠(No.18/2025)は継続:中重希土7種の管理。停止告示の対象外yomiuri+2
  • 米中首脳会談の背景:2025年10月30日、韓国・釜山で開催された米中首脳会談での合意を受けた措置newsdig.tbs+2
  • 適用範囲:米国のみならず日本を含む全世界に適用される停止措置kab

まとめ(経営判断への示唆)

今回は**”10月9日発表分の停止”が中核**。4月4日分は残るため、完全な正常化ではない。停止は時間限定。この12か月を”サプライ複線化”と”原産性の見える化”の猶予と捉えるのが実務的。用途・エンドユーザー、原産性/技術起源、工程可視化が審査の肝。停止中も書類準備の型を整えることが、将来の再強化時の保険になります。nikkei+3

※本まとめは一般的情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。輸出入実務は最新の公告・通関実務を現地パートナーと必ずご確認ください。


主な修正点

  1. https://news.yahoo.co.jp/articles/ac123d929f0a301a1ba3d05307bdd53b9d1bbebc
  2. https://www.yomiuri.co.jp/economy/20251108-OYT1T50153/
  3. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM07B930X01C25A1000000/
  4. https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/zc/art/2025/art_dfb2fa8cb9d848d78eb63c666c8c605e.html
  5. https://mainichi.jp/articles/20251029/k00/00m/020/316000c
  6. https://www.kab.co.jp/news/article/16143950
  7. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/04/65f0a59e26095ae7.html
  8. https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2276536
  9. https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/916748
  10. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-11-07/china-formalizes-rare-earth-curbs-suspension-after-trade-truce
  11. https://rareresearch.co.jp/%EF%BC%88%E5%85%AC%E5%91%8A70%E5%8F%B7%EF%BC%89%E5%95%86%E5%8B%99%E9%83%A8%E3%83%BB%E7%A8%8E%E9%96%A2%E7%B7%8F%E7%BD%B2%E5%85%AC%E5%91%8A2025%E5%B9%B4%E7%AC%AC55%E5%8F%B7%E3%80%8156%E5%8F%B7%E3%80%815/
  12. https://english.aawsat.com/business/5206147-china-announces-1-year-suspension-expanded-rare-earth-export-controls
  13. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/10/4b63295e5cd63cac.html
  14. https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20251009.pdf
  15. https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins5_pdf/251016.pdf
  16. https://attoinfo.com/wp/wp-content/uploads/2025/04/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%92%B0%E5%A2%83%E6%83%85%E5%A0%B120250410.pdf
  17. https://discoveryalert.com.au/china-rare-earth-export-controls-2025-impact/
  18. https://www.spf.org/spf-china-observer/document-detail071.html
  19. https://www.ccmagnetics.com/blog/a-deep-dive-into-chinas-rare-earth-controls-civilian-and-military-applications.html
  20. https://www.cistec.or.jp/service/keizai_anzenhosho/china/data/20251031.pdf

「欧州連合と中国が、レアアース資源の流れを守るために「特別チャネル」を設け、欧州企業による申請を優先処理することで合意」について

30秒で要点

EUと中国が、レアアース関連の輸出管理手続きを円滑化する「特別チャネル」を新設しました。中国側の輸出許可審査において、EU企業からの申請を優先的に共同レビューし、迅速化を図る枠組みです。約2,000件の申請のうち半数以上が既に承認済みとEU側は説明しています。自動車用モーターや風力発電向けのレアアース磁石など、製造工程のボトルネック解消が狙いです。

背景: 2025年に中国がレアアース関連の輸出管理を導入・拡大し、許可待ちが深刻化。10月には対象元素や関連技術の管理範囲がさらに拡大されました。

直近動向: 追加の新規規制は最長12か月の延期と報じられている一方、既存の管理体制は継続中です。EUは「一般ライセンス」(包括許可)の導入も中国側と協議中。全面解除ではなく、手続きと運用を緩和する方向で進んでいます。


何がどう変わるのか(仕組み)

特別チャネルの中身

EU欧州委員会(通商・経済安全保障担当)と中国商務省などの関係当局間に、個別案件の優先審査・進捗管理・滞留解消のための専用窓口が設置されました。EU企業からの申請を優先処理し、共同で許可の迅速化を図る仕組みです。

限界と留意点

これは規制の撤廃ではありません。最終的には中国側の輸出管理制度の要件(用途・最終需要者・軍民転用リスクなど)を満たす必要があります。用途が明確な民生向けは比較的承認されやすいとの説明もありますが、審査そのものは継続されます。


どの業界に影響するか

自動車(駆動モーター)・風力発電

Nd、Pr、Dy、Tb等を含むNdFeB磁石の安定調達が鍵となります。

産業機械・ロボット・家電・IT機器

高性能磁石や合金、分離・精製材料に影響します。

化学・触媒・研磨材

La、Ce等の酸化物・塩類が対象となります。

(具体的な該非判定は品目・加工度・用途によって異なります)


現場が今すぐ取るべきアクション(90日プラン)

案件の可視化

取引先(中国側輸出者)に、申請の進捗状況(未申請・受理・追加資料待ち・許可番号・有効期限)を品目・用途別に一覧化してもらいます。EU企業案件である旨(EU域内工場向け・EU企業発注)を明記してもらいましょう。

用途・最終需要者の明確化

エンドユーザー宣誓書(End-Use/End-User Statement)を整備します。民生用途を具体的に記載すると審査が通りやすくなります。

優先ルートの活用

重要案件は、EU側窓口(欧州委員会)と中国側当局の特別チャネルでの優先照会対象となるよう、業界団体や在中欧州商工会議所も活用し、案件IDを付けてエスカレーションします。

代替策の同時推進

EUはエストニア等でレアアース・磁石の域内生産拡充を進めています。欧州内および第三国のサプライヤーを品質・供給量・コストの3軸で同時評価します。

契約の見直し

以下の条項を整備・更新します。

  • 輸出管理条項(規制変更時の責任分担・協力義務)
  • 価格調整条項(許可遅延・調達ルート変更に伴う費用転嫁)
  • フォースマジュール・納期条項(許可遅延の定義)

在庫と資金の手当て

許可サイクルのばらつきに備え、安全在庫水準の再設定と運転資金計画を見直します。

一般ライセンス(包括許可)への準備

EUが協議中の一般ライセンス制度が導入された際、速やかに申請できるよう、案件を用途クラス別に整理しておきます。


価格・リードタイムの見通し

短期(数か月)

申請滞留の解消途上にあり、優先処理による改善は見込めますが、既存の管理体制は継続されるため、遅延や価格プレミアムのリスクは残ります。

中期(12か月)

新規強化分の一部が延期されれば混乱は緩和されます。ただし制度自体は存続し、政治・安全保障要因による再強化の可能性もあります。中国への過度な一極依存の解消は引き続き経営課題です。

当局の見解

EU側は短期的な抜本的解決は難しいとの慎重な見通しを示しており、手続き改善と供給多角化の両面作戦が現実的とされています。


よくある質問(FAQ)

対象は原料だけですか?

いいえ。元素・化合物だけでなく、精製・加工技術や設備も管理対象に含まれます。したがって磁石・合金・半製品も該当する可能性があります。

EU企業以外でもメリットはありますか?

合意の主眼はEU企業案件の優先審査です。EU域内の拠点・生産向け案件は恩恵を受けやすいですが、他地域向けは基本的に直接の対象外となります。

具体的な申請は誰が行いますか?

中国側の輸出者が所管当局へ申請します。買い手(EU側)は用途・最終需要者情報や契約書類を整備し、特別チャネルでの優先照会に必要な情報を提供するのが実務となります。


サプライヤーへの依頼テンプレート(簡易版)

We understand that the EU–China "special channel" prioritizes EU cases.

Please confirm the license status for the following items (by use-case and end-user).

If additional documents are required (contract, end-use statement), please advise us so we can escalate via the EU channel.

HS2028改正:自動車電装品・センサー類の分類見直しに関する現状整理

AIを活用して、まとめてみました。


公式タイムラインと確定事項

HS2028改正パッケージは、2025年3月のHS委員会(HSC)第75会期で暫定採択され、2025年12月に正式採択、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効するスケジュールが世界関税機関(WCO)により公式に示されています。metalife

改正の規模は、第7次レビューサイクルにおいて105の改正提案、299の改正パッケージが取りまとめられた大規模なものです。EUの対外説明資料では、改正の重点領域として「半導体およびトランスデューサー(各種センサー)」が明記されており、センサー類の分類見直しが進んでいることは高い確度で示唆されています。forbesjapan+1

何が確定し、何が未確定か

確定している情報

改正規模と発効日は2028年1月1日、詳細条文(HS6桁レベルの新旧対照表)は2026年1月に公開予定です。センサーおよびトランスデューサー領域が見直し対象に含まれることもEU資料で確認されています。metalife+1

未確定(未公表)の情報

具体的にどの品目が第85類から第90類(測定・検査機器)または第87類(自動車部品)へ移動するのかという条文レベルの詳細は、2025年11月7日現在まだ公開されていません。特に第87類への「移籍」については、現行の第17部注2(e)~(h)により、第84類・第85類・第90類・第91類に特掲される物品は原則として8708号の「部分品」に含めない取扱いとなっているため、条文改正を伴わない限り広範な第87類編入が一挙に進む可能性は限定的です。detail.chiebukuro.yahoo+1

なぜ「85類→90類/87類」移動の観測が出ているのか

現行のHS2022では、シリコン基板上のMEMS等を含む「シリコンベース・センサー」を8542号(MCO:多部品集積回路)として扱う注記が整備され、電装品(第85類)と測定機器(第90類)の境界が実務上やや複雑化しました。HS2028ではこの境界の明確化や再編が図られると予想されています。roronto

EUの説明文書では「semiconductors and transducers(半導体とセンサー)」と明記され、当該分野の分類見直し(細分化・整序)が含まれることが読み取れます。これが車載センサー(ADAS/電動化関連)への波及観測につながっています。また、WCOがASEAN向けに実施したワークショップでも、HS2028の主要改正領域に「電気機器」「車両」分野が含まれる旨の言及があり、自動車電装とセンサーの交差領域での改正可能性が意識されています。examplesentencemail+1

日本企業への実務インパクト

関税・価格への影響

第85類から第90類への移動については、日本のMFN税率ではいずれも無税品目が多いものの、貿易統計やFTA原産地規則、内外価格差分析への影響は大きい可能性があります。特に第90類への分類変更は測定機器としての性格明確化につながり、品目別規則(PSR)のCTC(関税分類変更基準)やVA(付加価値基準)が変わるケースが想定されます。ds-b

第87類の8708号等へ移動する場合は、現行の第17部注により第84類・第85類・第90類・第91類に特掲される物品は「部分品」に含まれないため、条文・注の改変を伴うか解説書の運用整理に留まるかで影響度が大きく変わります。detail.chiebukuro.yahoo

FTA原産地規則への影響

HS6桁の変更は、PSRの再マッピングを意味します。CPTPP、日EU・EPA、USMCA等のPSRはHS6桁コードに紐付けられているため、自己申告書式やサプライヤ宣誓書のロジック更新が必要となり、2027年中の準備が現実的なタイムラインです。word-dictionary

マスタ・ERPシステムへの影響

HS改正は6桁変更が各国の8~10桁の国内細分へ波及します。品番—HSコード—PSR—税率—特恵判定の一連の連鎖で整合性を保った更新が必要です。EU資料でもHS6桁変更が各域内コードへ波及する旨が説明されています。word-dictionary

税関監査対応

事後調査や税関質問において、「なぜ第85類ではなく第90類か(またはその逆)」といった技術的理由付け(主機能・検出原理・測定の有無・MCO該当性)がより厳密に求められる可能性があります。HS2022で導入されたMCO定義(8542号)は引き続き重要な論点となります。roronto

今すぐ取るべき実務アクション

対象品目の棚卸し

センサー、トランスデューサー、MEMS、車載カメラ、レーダー、LiDAR、電装ユニットなどについて、BOMから機能、現在のHSコード(第85類/第90類/その他)までを一覧化します。ds-b

境界品目の技術メモ標準化

測定・検査の主機能の有無、センサーの検出原理、単体機能かMCOか、車両専用品か否かを定型シートで可視化します。現行の第90類の類解説(測定・検査の定義)と第17部注の適用ロジックを踏まえた記述が重要です。marke-media

PSR影響の先行試算

主要FTAについて、CTC(分類変更前後の区分)と付加価値率の両面で「改正あり/なし」の2シナリオによる原産地判定を試算します。word-dictionary

2026年1月公表後のシステム更改計画

正式条文が公開され次第、HS6桁新旧対照表の確認、社内コード更新、取引先への通知、FTA書類テンプレート更新を2027年内に完了させる体制を整えます。metalife

監査・係争に備えた社内Q&A整備

特に第85類と第90類の境界については、技術書証(設計仕様書、センサー原理、測定の定義への適合性)の整備が対応力を大きく左右します。marke-media

どの品目が移動しそうか(現時点の観測)

以下は未公表情報を補う業界観測であり、最終判断は2026年1月公開の条文で確認する必要があります。metalife

MEMS/CMOS系のシリコンベース・センサーは、HS2022で8542号(MCO)に「センサー/アクチュエータ/レゾネータ/オシレータ」を含む旨が整備済みです。HS2028では第90類との住み分け明確化(解釈の整序や細分化)が想定論点となっています。roronto

車載計測・表示系(速度計/回転計/走行データ等)については、9029号や9031号などの見直しや細分追加の可能性は合理的ですが、8708号への包括的編入は第17部注2の原則に抵触しやすいため、条文変更がない限り限定的とみるのが保守的です。detail.chiebukuro.yahoo

レーダー、LiDAR、カメラ等の認識系は、現在8526号や8525号などに分類されていますが、測定目的の有無で第90類に寄せられるかは条文次第です。EU説明にある「transducers見直し」の射程に入る可能性はありますが、公表待ちの状況です。forbesjapan

主要情報ソース

WCOからはHS2028改正の暫定採択、公表・発効の公式タイムラインが示されています。EUの対外説明資料(EUR-Lex)ではHS2028改正の柱に「semiconductors and transducers」を含む旨が明記されています。WCOの2024年戦略レビュー報告書ではHS構造の見直し必要性が指摘されており、HS2022解説書(8542号MCO)ではシリコンベース・センサー等の定義が整備されています。reibuncnt+3

日本税関の類解説(第90類/第87類)では測定機器の定義や第17部の「部分品」原則が確認できます。WCOのASEAN向けワークショップでもHS2028の主要改正領域(車両・電気機器含む)の概観が示されています。examplesentencemail+1

まとめ

「第85類から第90類/第87類へ一斉移籍」という断定的な一次資料は現時点では未公開です。ただし、センサーおよびトランスデューサー領域が見直し対象に含まれていることから、車載センサーや電装ユニットの境界整理(細分追加・注記整備)は高い確度で発生すると予想されます。forbesjapan+1

2026年1月の正式条文公開をトリガーとして、2027年内に社内マスタ、PSR、書類書式の全面更新を完了する前提で計画を立てておくことが安全です。word-dictionary+1

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ソースを確認

  1. https://metalife.co.jp/business-words/1924/
  2. https://forbesjapan.com/articles/detail/76838
  3. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1419074004
  4. https://roronto.jp/business-efficiency/additions-and-corrections/
  5. https://examplesentencemail.com/if-you-have-any-corrections-please/
  6. https://ds-b.jp/dsmagazine/pages/410/
  7. https://word-dictionary.jp/posts/2929/
  8. https://www.marke-media.net/whitepaper/chatgpt-proofreading/
  9. https://reibuncnt.jp/36506