RCEPの電子原産地証明書:段階的なデータ交換の進展


2026年2月現在、アジア太平洋地域の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定において、電子原産地証明書(e-CO)のデータ交換が二国間ベースで段階的に進められています。RCEP協定は2022年1月1日に日本を含む10カ国で発効し、その後韓国、マレーシアが加わり、現在12カ国が締約国となっています。[jetro.go]​[youtube]​

データ交換の現状

シンガポール・中国間の先行実施

シンガポールと中国の間では、RCEP協定に基づく特恵原産地証明書のデータ交換システム(EODES)が2025年12月11日から利用可能になりました。このシステムは2019年11月から運用されており、中国・ASEAN自由貿易協定(ACFTA)などで既に活用されていたものをRCEP協定にも拡張したものです。[jetro.go]​

マレーシア・中国間の取り組み

マレーシアと中国は、RCEP協定とASEAN中国FTA(ACFTA)に基づく原産地証明書の電子データ交換を2026年1月から開始しました。第1フェーズでは、マレーシアから中国への一方向のデータ送信が対象となっており、マレーシアのナショナルシングルウィンドウと中国税関のEODESが接続されています。[global-scm]​

重要な留意点:現時点では、RCEP加盟15カ国すべての間で完全なデータ交換が実現したという公式発表は確認できていません。データ交換は二国間ベースで段階的に導入されている状況です。[jetro.go]​

電子データ交換がもたらす実務上の変化

システム間連携の意義

従来のe-CO運用では、PDF化された証明書をメール送付する「紙の代替」に近い形式が多く見られました。今回進められているのは、輸出国の発給サーバーから輸入国の税関システムへ直接データを伝送するシステム間連携です。[global-scm]​

これにより、輸出国で証明書が発給された瞬間に、輸入国の税関システムでその情報が認識可能になります。貨物が港に到着する前に書類審査を完了させる予備審査制度が、物理的な書類の到着を待つことなく実行できるようになります。[global-scm]​

日本企業が得られる実務的メリット

国際宅配便コストの削減

原産地証明書の原本を海外の輸入者や通関業者へ輸送するための国際宅配便費用が不要になります。1件あたり数千円のコストでも、年間数百~数千件の取引を行う企業にとっては、数百万円単位の直接的なコスト削減につながります。[global-scm]​

リードタイムの短縮

原本の到着待ちによる通関の停滞が解消されます。特に日本から東南アジアや中国への輸出において、貨物は到着しているのに書類が届かないために保税倉庫に留め置かれる「書類待ちリスク」が消滅します。[global-scm]​

証明書の紛失・偽造リスクの解消

税関当局同士が暗号化されたチャンネルで直接データをやり取りするため、証明書の改ざんや紛失、第三者による不正利用のリスクが大幅に低減されます。[global-scm]​

実務担当者が意識すべき留意点

段階的な導入への対応

データ交換は全加盟国で一斉に開始されるわけではなく、二国間ベースで段階的に実施されています。マレーシアと中国間でも初期段階ではマレーシアから中国への一方向のデータ送信が対象であり、完全な双方向交換や他国との相互接続は今後の課題となっています。[global-scm]​

システム対応の準備

社内の貿易管理システムをデータ連携に対応させる、または委託先の通関業者とのデータ共有をシームレスに行うためのIT投資が重要になります。データが即時に税関へ届くため、申告内容に誤りがあった場合の修正対応も迅速性が求められます。[global-scm]​

原産地情報の正確性

一度送られた電子データに誤りがあると、訂正手続きも電子的に行うことになります。不正確なHSコードや原産地判定がそのまま税関側システムに届いてしまうため、アナログな「書き換え」や現物差し替えでごまかす余地はありません。[global-scm]​

各国の運用状況の確認

RCEP加盟国の中には、依然として特定の品目や状況において紙の併用を求める国が残る可能性があります。各国の最新の運用状況を常にアップデートしておく体制が不可欠です。[global-scm]​

日本の原産地証明制度

日本では、RCEP原産地証明の取得は商工会議所のオンライン申請が基本となっており、HSコードや製品別規則の確認が前提となっています。マレーシアや中国間の電子交換は、この流れをさらに一歩進めたものと位置付けられます。jcci+1

免責事項

本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。実際の申告・契約・規制適合は、対象国の法令と最新の当局公表、必要に応じて専門家見解に基づき判断してください。