SP(特定加工基準)証明書の実務ガイド:必要書類から記入例まで

SP基準(特定加工基準)を利用した原産地証明は、化学品や繊維製品の輸出において重要な手続きです。しかし、単に「証明書を作成すれば終わり」ではありません。税関の検証に耐えうる「エビデンス(根拠資料)」の整備が不可欠です。

この記事では、SP基準の証明書作成に必要な添付書類、すぐに使えるテンプレート、そして間違いやすい記入例までを一挙に解説します。


1. SP証明書の「必要添付書類」一覧

証明書を発行する前に、まず手元に揃えるべきエビデンスを確認しましょう。これらは、万が一の税関調査(検認)の際に提出を求められる重要な書類です。

全品目共通で必要な書類

どの製品カテゴリーでも、以下の書類は必須です。

書類名役割・チェックポイント
BOM(部品表)全材料のHSコード、数量、供給者情報を網羅したリスト。非原産材料を特定する基礎資料です。
製造工程フロー図原料から製品までの全工程を図示したもの。「どの段階で特定加工が行われたか」を可視化します。
製造指図書・仕様書「化学反応の温度設定」や「繊維の織り方」など、特定工程が定義通りに行われたことを裏付ける仕様書です。
生産実績記録担当者、製造日、使用設備が記録された日報やログ。トレーサビリティ(追跡可能性)を確保します。
インボイス・納品書材料の調達元や製品の納入先を証明する商業書類です。

【業種別】さらに必要な専門書類

SP基準が多用される「化学品」と「繊維製品」では、より専門的な記録が求められます。

化学品(HS28-40類)の場合

化学反応、蒸留、精製などの工程を証明する必要があります。

  • 反応記録(バッチレコード): 温度・圧力チャート、触媒の投入記録、反応前後の化学構造式など。
  • 分析データ(試験成績書): 反応生成物の純度(HPLC/GCデータ)、不純物除去率、粒度分布データなど。
  • 化学反応式: 単なる「混合」ではなく、「化学変化」が起きていることを証明する反応式。

繊維・衣類(HS50-63類)の場合

紡績、製織、縫製などの工程を証明します。

  • 工程別作業日報: 紡績機や織機の稼働ログ、染色温度の記録など。
  • 裁断伝票(マーカー): 生地からパーツを裁断した際の記録(型紙配置図)。
  • 外注加工証明: 縫製などを外注した場合の受発注書や請求書。

2. すぐに使える!SP証明書&テンプレート

実務で使用できる標準的なテンプレートの構成案です。WordやExcelで自社用にカスタマイズしてご使用ください。

① 原産地に関する申告(Statement on Origin)テンプレート

用途: 日EU EPAやRCEPなどで自己申告を行う際、インボイス等に記載します。

Statement on Origin

The exporter of the products covered by this document (Exporter Reference No [法人番号など]) declares that, except where otherwise clearly indicated, these products are of [Japan] preferential origin.

Origin Criteria: Specific Process (SP): The following processes were conducted in Japan:

  1. [Specific Process Name] (e.g., Chemical Reaction, Spinning)
  2. [Detailed description if necessary]

Place and Date: [Tokyo, Japan], [11 Feb 2026]

Signature: _____________________________
[Name], [Title], [Company Name]

② サプライヤー証明書(SP基準用)テンプレート

用途: 部材メーカーから「特定加工が行われたこと」の証明を入手する際に使用します。

項目記入内容の例
品名 (Product)Polyester Yarn
HSコード5402.33
実施された特定加工Spinning & Texturing (Extrusion of man-made fibres combined with spinning)
加工実施場所Osaka, Japan
宣誓文「上記情報は真実であり、特定加工工程は上記の場所で実施されたことを宣誓します。また、検証時には証拠を[4-5]年間保存し提供することに同意します。」

3. その記入で大丈夫?よくあるミスと対策

せっかく書類を準備しても、記入ミスで無効になっては意味がありません。特に多いミスをまとめました。

❌ ミス1:基準記号(Origin Criterion)の間違い

  • NG: SP基準なのに「CTC(関税分類変更基準)」や「VA(付加価値基準)」の記号を書いてしまう。
  • 対策: 協定ごとに定められた記号(SP, PS, Cなど)を必ず確認し、正確に記載してください。

❌ ミス2:工程記述が曖昧

  • NG: 単に「Processed in Japan」と書く。
  • 対策: 具体的に!「Spinning and Knitting」や「Distillation(蒸留)」など、協定の規則(PSR)で定義されている用語を使ってください。

❌ ミス3:サプライヤー証明との不整合

  • NG: 最終製品では「化学反応」としているが、材料メーカーの証明書には「混合(Mixing)」としか書かれていない。
  • 対策: 「混合」はSPと認められないケースが大半です。サプライヤーからの証明書が、協定の要件(化学変化など)を満たしているか精査が必要です。

まとめ:保存期間も忘れずに!

SP基準の証明は、技術的な裏付けが必要なため難易度が高めです。しかし、一度しっかりとエビデンスを整備すれば、継続的な輸出の強力な武器になります。

最後に重要なのが「保存義務」です。これらの書類は、協定ごとに3年〜5年間の保存が義務付けられています。税関から「明日の朝までに提出してください」と言われても慌てないよう、ロット番号などで紐付けて整理しておきましょう。