初心者向け:FTA、EPAの原産地証明の原産地基準

1. 対象品のHSコードの見つけ方

基礎(拠り所)

  • HS分類は「関税率表の解釈に関する通則(GIR)」で決めます(通則1〜6)。まずこれを踏まえ、章・部注、項目注を読み、品目の技術実態と照合します。税関総合情報
  • HSの6桁構造(2桁=類、4桁=項、6桁=号)を理解して進めます。ジェトロ

実務の進め方(現場フロー)

  1. 製品仕様の把握:用途・機能・主要材質・構造・動力・加工有無を整理(カタログ/図面/材料表)。
  2. 類→章→項→号を候補探索:関税率表や解説資料(税関「関税率表解説・分類例規」、WCO Explanatory Notes)で比較します。税関総合情報wcoomd.org
  3. 通則/GIR章注・部注除外規定で候補を絞る(「まず該当する定義、次に除外」)。税関総合情報
  4. 迷うときは 事前教示(Advance Ruling) を検討:輸入前に税関へ文書照会し、分類の公式回答を得る制度です(公開データベースも有)。税関総合情報+3税関総合情報+3税関総合情報+3

補足:輸出用書類のHSは相手国の6桁が求められる場面があります。最終的には輸入国税関での受理が基準なので、相手側と整合確認を。トムソン・ロイター


2. 原産地規則の見つけ方:日本税関サイトを使う

使うサイト:日本税関「品目別原産地規則 検索画面」
(トップの「EPA・原産地規則ポータル」から到達可)

操作手順

  1. サイトにアクセスし、**協定(国名/Country)**を選択。
  2. HSコード4桁または6桁を入力(ドットなし)。
  3. 検索すると、該当品目の**品目別原産地規則(PSR)**が表示されます。
  4. 表示は関税譲許の有無に関わらずPSRが出る仕様のため、後述の関税譲許表も要確認。税関総合情報

重要な注意(サイト記載の要旨)

  • HSコード版の違いに注意:協定ごとにHS2002/2007/2012/2017/2022など採用版が異なるため、協定が採用する版で検索・読み替えが必要。WCOの相関表リンクも掲載されています。輸入申告は最新版HSを使用。税関総合情報
  • 関税譲許の確認:PSRが満たせても、対象品が関税撤廃・削減の譲許対象かは別問題。サイトから日本の実行関税率表相手国譲許表への案内があります。税関総合情報

3. 原産地基準の読み方

(A) CTC(関税分類変更)系

  • CC/CTC=類変更(2桁)、CTH=項変更(4桁)、CTSH=号変更(6桁)。非原産材料のHSが、最終製品の規定桁で別番号になることが条件。
  • 除外書きに注意:例「CTH(ただし○○からの変更を除く)」=その番号の非原産材料を使うと変更達成と認めない。日EU・EPAの同軸ケーブル等の例が公開資料にあります。ジェトロ

(B) RVC(域内原産割合)系

  • 控除方式RVC:RVC(%)=(FOB−VNM)/FOB×100(VNM=非原産材料価額)。
  • MaxNOM(非原産材料最大割合):MaxNOM(%)=VNM/EXW×100。
  • 日EU・EPA資料では、RVCはFOB基準MaxNOMはEXW基準で示され、計算例が図表つきで整理されています。ジェトロ

(C) 加工工程基準(Specific Process, SP)

  • 例:**化学反応(CR)**の実施を要件とするなど、特定工程の実施が条件。RCEPの公表資料に定義・例示があります。税関総合情報

(D) 併用・選択

  • 多くのPSRは「CTC 又は RVC」の選択ですが、品目・協定によっては両方必要(AND)や工程基準の追加もあります(例示:日印EPAなどの解説)。ジェトロ

4. 気をつけること

  • HS版ズレ:協定採用版(HS2012/2017/2022 等)でPSRを読む。必要に応じてWCO相関表で対応関係を確認。税関総合情報
  • 関税譲許の有無:PSR表示は譲許と無関係。実行関税率表/相手国譲許表優遇が存在するかも必ず確認。税関総合情報
  • 除外書き・脚注:PSRの括弧書きの除外材料注記は落とし穴。日EU・EPAの具体例(同軸ケーブル等)を参考に、材料毎のHSを棚卸して該当有無を精査。ジェトロ
  • AND/ORの読み取り:選択制か併用要件かで求める証拠が激変。協定文・注釈まで確認。ジェトロ
  • 最小限作業の不原産(Insufficient Working):単純な包装・選別等は原産性を与えない扱い。EUの公式解説でも強調されています(日EU・EPAの理解に有用)。trade.ec.europa.eu
  • デミニミスや累積の活用:わずかな非原産材料の許容(デミニミス)や累積規定で救済できる場合あり。RCEP資料の図解が実務に有用。税関総合情報
  • 価格基準の取り違い:RVCはFOB、MaxNOMはEXWなど、計算の価格基準を誤らない(協定・注記で要確認)。ジェトロ
  • 証憑の整備:自己申告・証明書に加え、計算根拠や裏付け資料(原材料の原産性、購買・製造・在庫記録等)を保持。税関ガイドラインも証拠書類の必要性を明示。税関総合情報
  • 協定選択の視点:同一相手に複数協定が使えるとき、単に税率だけでなくPSRの難易度や手続負担も比較すると実務最適。Business Growth Service
  • 相手国HSの整合:輸入国で受理される6桁かを事前に確認(輸入者・現地税関と照合)。トムソン・ロイター
  • 迷う場合:**事前教示(分類/原産地)**を活用し、将来紛争を未然防止。税関総合情報+1

5. 日本税関サイトでの「読み方」

  • 画面入力:国名(協定)HS4または6桁→検索。
  • 結果の典型表示:
    • CTH/CTSH/CC=関税分類変更(変更レベルに注意)
    • RVC◯◯%MaxNOM◯◯%=付加価値系(計算基礎FOB/EXWに注意)
    • **CR(Chemical Reaction)**等=工程基準
    • (○○からの変更を除く)等=除外(その材料は原産であることが前提)
    • 注記や脚注は必ず確認(AND/OR関係、例外、定義)
    • (注意)関税譲許の有無は別途確認税関総合情報ジェトロ

6. 1ページ・ワークフロー

  1. HS確定:通則→注解→候補比較→(必要なら)事前教示。税関総合情報+1
  2. PSR検索:税関サイトで協定×HS検索→PSR・注記を読み込む。税関総合情報
  3. 判定設計:CTCかRVCかSPか、AND/ORか、除外・デミニミス・累積の有無。税関総合情報ジェトロ
  4. 証憑整備:BOM・購買証跡、工程記録、RVC計算書、供給者原産声明等。税関総合情報
  5. 譲許確認:実行関税率表/相手国譲許表で対象か確認。税関総合情報

7. 用語解説

  • GIR(通則):HS分類の大原則。税関総合情報
  • PSR:品目別原産地規則。CTC/RVC/SPなどで原産性を判定。ジェトロ
  • CTC(CC/CTH/CTSH):非原産材料のHSが最終製品に対し規定桁で別番号へ変更。ジェトロ
  • RVC/MaxNOM:域内原産割合または非原産材料割合の基準(計算基礎に注意)。ジェトロ
  • SP(加工工程):化学反応など特定工程の実施が要件。税関総合情報
  • デミニミス/累積:わずかな不適合材料の許容、域内材料の相互みなし。税関総合情報

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