メキシコが非FTA品目に最大50%関税へ:2026年1月1日発効、企業が押さえる実務ポイント

2025年12月29日、メキシコ政府は官報(DOF)で輸入関税(一般税率)を広範に引き上げる政令を公布し、2026年1月1日に発効しました。対象はTIGIE(メキシコ関税率表)上の1,463税番に及び、非FTA国由来の調達や、FTAを使わない輸入に対してコスト・調達戦略・通関実務を一段と厳しくします。

改正の概要

項目内容備考
関税率最大50%(多くは5~35%)2026年1月1日発効。対象は1,463税番(TIGIE 8桁)、20以上の分野にまたがる改正
対象国非FTA国(中国、韓国、インド、インドネシア、ブラジル等)メキシコと発効済みFTAを持たない国が対象
有効期限無期限過去の一時措置と異なり、恒久的な法改正
出所DOF、Reuters、White & Case米国商務省・KPMG・法律事務所等の解説に基づく

何が変わったのか:「一般税率(MFN)の底上げ」が核心

今回の改正は、メキシコの輸入関税(IGI)のうち、特定の税番に設定されている一般税率(MFN税率)を引き上げるものです。

実務上の重要ポイント:

  • 「輸入相手国が非FTAかどうか」だけでなく、「当該貨物がFTAの特恵税率を適用できるか(原産地証明・ルール充足・申告)」で負担が決まる
  • FTAが適用できれば、改正後でも特恵税率が優先され、税率引上げの影響を受けない
  • メキシコは現在52カ国とFTAを発効しており、これらの国からの原産品は従来の特恵税率が引き続き適用される

つまり、「非FTA国からの輸入」という表現は正確には「FTA特恵が適用されない輸入」を意味します。


どの品目が重いのか:最大50%は完成車と一部トラック、広い裾野は繊維・鋼材・消費財

全体像としては、関税引上げは多数品目に及びつつ、税率の山は概ね5~35%に集中し、特定の品目で50%が出ます。

最大50%対象品目

完成乗用車:

  • HS 8703.22.99、8703.23.99、8703.24.99
  • HS 8703.32.99、8703.33.99、8703.40.99
  • HS 8703.60.99、8703.80.01など

トラック・電気自動車:

  • HS 8704.21.99、8704.31.99、8704.41.99
  • HS 8704.51.99、8704.60.02など

これらは過去の暫定措置で既に50%が適用されていましたが、今回の改正で恒久化されました。

多くの品目:5~35%が中心

  • 自動車部品:HS 8708.x、8409.x、8511.x、8512.xなど、7~36%の範囲
  • 繊維・衣類:最大35%(繊維製品は20%→35%、繊維材料は10%→15%への引上げ事例あり)
  • その他産業材:プラスチック、鉄鋼、アルミニウム、履物、家具、玩具、家電、紙・段ボール、皮革製品、ガラス、オートバイ、トレーラーなど

なぜ今か:産業防衛と対外関係、そして歳入

政府側は、国内産業と雇用の保護を前面に出しています。Reuters報道では、敏感分野(特に繊維)の雇用を守る狙いと、追加歳入の見込みが言及されています。

背景データ:

  • メキシコの繊維産業は2024年に雇用が最低水準に落ち込んでおり、特に中国製品との価格競争が背景にある
  • 中国からメキシコへの電気自動車輸入は、2024年11月に前年比2,367%増の19,344台を記録
  • こうした急増が政策転換の引き金の一つとなったと見られる

一方で、市場では「米国との連携強化」や、USMCA(米墨加協定)見直しを見据えた対中姿勢の調整といった見方も出ています。


日本企業にとっての現実:メキシコ現法の調達網に直撃しやすい

日本企業(特に自動車・部品)は、メキシコ国内生産のためにアジアから部材を入れる構造が一般的です。タイ、中国、ベトナム、インドネシア等からの調達に触れつつ、メキシコとFTAを結んでいない国からの輸入は引上げの影響を受けます。

FTA締結状況による差異

同じアジア調達でも差が出ます:

  • 日本:CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)、日墨EPA経由で無税・低税率の道がある
  • 非締結国:中国、韓国、インド、インドネシア等からの調達は負担増になりやすい

自動車は「50%」という数字が与えるインパクトが大きい

完成車に最大50%がかかる設計は、単に輸入コストが上がるだけでなく、以下に波及します:

  • 在庫政策
  • 価格政策
  • 販売戦略

加えて部品でも税率7~36%(品目による)という設計がされており、BOM(部品表)全体で効いてきます。


IMMEX(マキラ)でも「完全に無関係」とは言い切れない

IMMEXは一時輸入の関税免除が前提になりがちですが、輸出先やUSMCAの関税繰延べ規律(いわゆる「Lesser of the Two」ルール)次第で、結果的にメキシコ側で関税負担が発生し得る点を押さえる必要があります。

USMCA「Lesser of the Two」ルール

USMCA第2.5条では、メキシコで免除・還付される関税額は、以下のいずれか低い方を上限とします:

  1. 第一USMCA国(メキシコ)への輸入時に支払った関税
  2. 第二USMCA国(米国・カナダ)への輸出・輸入時に課される関税

具体例:

非FTA国から25%の関税で部材をメキシコに輸入し、完成品を米国に輸出する際、完成品がUSMCA原産にならないケースを考えます。米国側の関税が0%(USMCA適格でない場合)の場合、メキシコ側で免除できる関税は0%となり、25%がコスト化します。

IMMEX運用の厳格化

2024年12月には302品目がIMMEXプログラムで輸入できない品目リストに追加されるなど、プログラム自体の運用も厳格化されています。


企業が取るべき実務アクション:最短で効く順に

1. 対象判定

自社品目のTIGIE 8桁を特定し、改正対象かを機械的に照合する。通関業者任せにせず社内でも持つことが重要です。

2. 原産地の再設計

FTA適用可否を棚卸しし、使えるものは確実に使う。

チェックポイント:

  • 原産地証明の取得
  • CTC(関税分類変更基準)/VA(付加価値基準)の充足
  • サプライヤー証憑の整備

メキシコはCPTPP、USMCA、日墨EPA、EU-メキシコFTAなど多数のFTAを持ち、適切に活用すれば特恵税率が維持できます。

3. 調達先の見直し

非FTA国依存の部材は、FTA圏内調達や加工工程の再配置で「特恵が取れる形」に寄せられないか検討する。

代替調達先の選択肢:

  • 日本・タイ:CPTPP経由
  • 欧州:EU-メキシコFTA
  • USMCA圏内:米国・カナダ

特に中国依存度が高い部材は、上記への代替が現実的な選択肢になります。

4. 価格・契約

関税増分の負担者(売手・買手)と価格改定条項、インコタームズ、長納期品の在庫方針を再確認。

特に注意: 2026年1月1日以前に契約したが納品が1月以降になる案件は、契約上の関税負担条項を精査すべきです。

5. 制度活用

PROSEC(分野別振興プログラム)の活用:

  • 輸出要件なし
  • 自動車、電子機器、鉄鋼、化学、繊維など特定セクターで原材料・部品・機械を減免税率(ゼロを含む)で輸入可能
  • 該当業種ほど効果が大きい

その他、メキシコ側の産業施策・許可スキームの適用余地を確認する。

6. 当局運用の監視

メキシコ政府は「競争的条件での投入材確保」のために関税調整の仕組みを設け得る、という示唆もあるため、続報を前提にしておく。

並行する執行環境の厳格化:

  • 2026年1月1日発効の税関法改正では、過少申告調査期間が6カ月→12カ月に延長
  • コンプライアンス強化が同時進行

まとめ:2026年は「メキシコ向けの関税コスト」を前提にサプライチェーンを作り直す年

今回の改正は、単発の引上げというより、メキシコが「非FTA調達のコスト」を明確に上げに来たシグナルです。

押さえるべき特徴:

  • 改正は無期限で、過去の暫定措置とは異なり法律として恒久化
  • 短期は通関コストの増加
  • 長期は調達先・原産地設計・対米輸出規律(USMCA)まで含めた再設計が論点に

最優先アクション:

  1. 対象税番の照合
  2. FTA適用の取りこぼしゼロ化

この2点から着手するのが最も費用対効果が高い一手です。


免責事項

本稿は一般情報であり、個別案件は貴社の通関実務・契約条件・原産地構成により結論が変わります。最終判断は通関士・現地専門家と一次資料でご確認ください。


出典

[1] U.S. International Trade Administration
[2] KPMG Mexico
[3] International Trade Compliance Update
[4] Opportimes
[5] White & Case
[6] FedEx International
[7] Clark Hill
[8] XPDEL
[9] Carscoops
[10] Foley & Lardner
[11] LinkedIn (Michael Tian)
[12] Tuttle Law
[13] U.S. International Trade Administration
[14] DLA Piper
[15] Stratego
[16] Mijares, Angoitia, Cortés y Fuentes

中大型車両向け232関税を実務目線で整理する


2025年11月1日以降、米国は通商拡大法232条にもとづき、中型・大型車両(Medium- and Heavy-Duty Vehicles, MHDV)、その部品(Medium- and Heavy-Duty Vehicle Parts, MHDVP)、バス等に追加関税を課しています。 現場が混乱しやすいのは、対象品目そのものよりも、Chapter 99(第99類)の番号が細かく分岐し、他の232関税や相互関税・IEEPA関税との優先関係を含めて申告ロジックを組む必要がある点です。whitehouse+3

本稿では、CBP(米国税関・国境警備局)がCSMS #66665333で示したエントリー処理指針を、日系企業が実務で使えるレベルまで落とし込んで整理します。govdelivery


1. 時系列と制度の骨格

  • 2025年10月17日付の大統領布告10984は、MHDVおよび特定MHDV部品に25%、バス等(HTS 8702の特定サブヘディング)に10%の追加関税を課す枠組みを定めています。whitehouse+1
  • 適用開始は、2025年11月1日0時1分(米東部時間)以降に「消費のために輸入」または「保税蔵置から消費のために引き出し」される貨物です。whitehouse+1

CBPはこの布告を受け、2025年10月28日付CSMS #66665333で輸入者・通関業者向けに、Chapter 99番号の使い分け、例外、申告上の留意点をまとめた「エントリー処理指針」を公表しました。buckland+1


2. 対象HTSの入口:どの品目が射程か

  • 車両(MHDV本体)は、主にHTS 8701、8704、8705、8706、8709のうち、USMCA用注記38(b)で列挙された特定10桁サブヘディング群が対象です。clarkhill+1
  • バス等は、同注記の(c)に列挙された8702の特定10桁サブヘディングが対象になります。whitehouse

代表例として、8701.21.00、8704.22.11、8705.40.00、8706.00.03、8709.11.00などのトラック・特殊車両用番号、バス側では8702.10.31、8702.40.61などが挙げられます(あくまで抜粋であり、権威あるリストはHTS本文および注記38の別紙とされています)。chrobinson+1

部品(MHDVP)はさらに広範囲で、ゴムホース、タイヤ、ガラス、ばね、ロック、エンジンおよびその部品、電装品、車体部品などが、40類・70類・73類・83類・84類・85類・87類・90類・94類といった複数章に散らばって列挙されています。htshub+1
ここが実務上の第一の落とし穴であり、日本側の感覚で「自動車部品」と一括りにしがちな品目でも、米国では「MHDV部品とみなすのか」「別用途としてMHDV関連の232関税の射程外とするのか」でChapter 99の選択が大きく分かれます。aacb+1


3. Chapter 99の全体像:どのコードを使うか

CBP指針の中心は、MHDV・バス・MHDV部品に関して、Chapter 99の9903.74.01〜9903.74.11を組み合わせて申告を構成する点にあります。govdelivery+1

3-1. 車両(MHDV)とバス

  • 9903.74.01:HTS 8701、8704、8705、8706、8709のうち注記38(b)に列挙されたMHDVに対して25%の追加関税。aacb+1
  • 9903.74.02:バス等(8702のうち注記38(c)に列挙されたサブヘディング)に対して10%の追加関税。chrobinson+1

整理用のコードとして、次のような例外枠も設けられています。

  • 9903.74.05:対象見出しに分類されるがMHDVに該当しないものは追加関税0%。whitehouse+1
  • 9903.74.07:輸入年の25年以上前に製造されたMHDV・バス・その他対象車両は追加関税0%。fedex+1

3-2. 部品(MHDVP)

  • 9903.74.08:U.S. Note 38(i)に列挙されるMHDV部品に対して25%の追加関税。htshub+1
  • 9903.74.11:見かけ上は注記38(i)の列挙HTSに当たるが、実態としてMHDV部品ではない場合に用いる0%の整理用コード。aacb+1

ここに、USMCAや用途証明(certification)に関連する特別なコードが加わります。govdelivery+1


4. USMCA絡み:車両と部品の扱いの違い

4-1. USMCA適格MHDV(車両本体)

布告10984は、USMCAの原産地要件を満たすMHDVについて、商務長官の承認を得た場合に「非米国コンテンツ部分」のみ25%を課す仕組み(9903.74.03と9903.74.06)を規定しています。whitehouse+1
一方で、CSMS #66665333は、非米国コンテンツ課税(9903.74.03)および米国コンテンツ側(9903.74.06)に関して、別途ガイダンスが出るまでは申告しないよう明確に指示しており、制度の枠は存在するものの実務運用はまだ開始されていない状態です。aacb+1

4-2. USMCA適格MHDV部品

部品については、USMCAの原産地要件を満たす「個別部品」について、原則として追加関税0%(9903.74.10)で申告できると整理されています(ただしノックダウンキット等の「部品詰め合わせ」は除外)。whitehouse+1
車両側は当面25%がフルにかかり得るのに対し、部品側はUSMCA適格であれば0%に落とせる可能性があるため、米国輸入者が原産地判定と証憑整備をどこまで行うかが、日系サプライヤーの価格・キャッシュフローに直接響きます。cassidylevy+1


5. 用途証明(certification)が求められる場面

CBP指針は、特に誤りが生じやすい部品領域について、輸入者が申告時点で「用途」を証明する仕組みを設けています。govdelivery+1

5-1. MHDV向け部品(9903.74.09)

  • 9903.74.09は、輸入者(Importer of Record)が「米国内のMHDV生産または修理用途に使用する」と証明した部品に適用される25%枠として定義されています。unisco+1
  • ただし、HTS72章・73章・76章(鉄鋼・アルミ等)に属する品目や、他の特定の部品枠に入る品目は対象外とされています。whitehouse

この用途証明は米国輸入者が行うものであり、日本側輸出者が単独で完結できません。輸出者としては、部品の仕様書、用途説明、投入される車種(MHDVか否か)など、MHDVへの投入実態を示す資料を事前に整備し、輸入者に提供できる状態にしておくことが重要です。aacb+1

5-2. 乗用車・ライトトラック部品の用途証明枠

今回のCSMSはMHDVだけでなく、乗用車・ライトトラック部品についても、米国内の生産・修理用途として使用する場合に適用されるChapter 99番号を示しています。govdelivery+1

  • 全世界一般の乗用車・ライトトラック部品で用途証明を行う場合は、9903.94.07で25%の追加関税を課す構造です。aacb

さらに、日本・EU・英国向けには差別化されたレート設計があります。

  • EUおよび日本については、通常税率(Column 1)が15%未満の場合、「通常税率+追加関税の合計が15%になる」よう設計されたコード(EU向け 9903.94.45、日本向け 9903.94.55)と、通常税率が15%以上の場合に追加関税0%とするコード(EU向け 9903.94.44、日本向け 9903.94.54)が用意されています。aacb
  • 英国については、合計10%になるよう設計された別枠(9903.94.33など)が設定されています。aacb

これらのコードでは、Chapter 99側に合計税率分の税額を計上し、通常のHTS行には価額のみを記載して税額0とする申告方式が明示されており、ACE上の記載癖として社内の通関チェックリストに反映しておく価値があります。govdelivery+1


6. ACE申告でのChapter 99の並び順

CBPは、Chapter 99を複数使用する際の「記載順序」について、CSMS #64018403で一般ルールを示しています。govdelivery+1

  • 原則:Chapter 98(該当があれば) → Chapter 99(追加関税等) → Chapter 1〜97(通常品目)という順序で記載すること。govdelivery
  • 貿易救済措置の並び順も明示されており、301条 → IEEPA → 232条・201条 → 割当、という優先順で積み上げるよう定められています。federalregister+1

今回のMHDV案件では、新設の232(9903.74)に加えて、相互関税(retaliatory tariffs)やIEEPA関連の追加税が絡む事案ほど、並び順の誤りによるACEリジェクトや誤課税が生じやすい構造になっています。govdelivery+1


7. 重複関税の扱い:累積させるものとさせないもの

7-1. AD/CVD等は原則上乗せ

CSMS #66665333は、反ダンピング(AD)・相殺関税(CVD)など、他法令にもとづく課税は、今回の232関税に加えて引き続き課されることを明示しています。govdelivery+1

7-2. 232系・相互関税等で「適用しない」もの

同CSMSは、MHDV・MHDVP・バス等について、銅・アルミ・鉄鋼およびその派生品に対する特定の追加関税(例:9903.01.77、9903.01.84など)が適用されないことを列挙し、一定の非累積ルールを示しています。aacb+1
これは、EO 14289(Addressing Certain Tariffs on Imported Articles)が定めた「複数の大統領措置が同一品目に重なる場合、不要なスタッキングを避ける優先順位付け」の枠組みとも整合しています。presidency.ucsb+2

7-3. 相互関税・IEEPAとMHDV 232の関係

CSMSは、特定の相互関税・IEEPA関連の追加税(9903.01.25など、9903.02.01〜9903.02.73の一部)が、MHDVおよびMHDV部品の一部(9903.74.01、.02、.03、.08、.09)には適用されないことを明示しています。govdelivery+1
さらに、MHDV・MHDVPにかかるChapter 99を申告する際に、相互関税やIEEPA関連追加税の免除を主張するためのコードとして、9903.01.33、9903.01.34、9903.01.83、9903.01.87等を使用する旨が示されており、実務上は輸入者と通関業者が「どのChapter 99をどの順に積むか」を個々の案件ごとに設計する必要があります。aacb+1


8. FTZ、ドローバック、Chapter 98のポイント

  • FTZ(外国貿易地域)に搬入する場合、2025年11月1日以降に搬入される対象品は、原則としてPrivileged Foreign Statusでの受け入れが求められ、後から有利な税率へ切り替える運用は取りにくくなっています。ghy+1
  • ドローバックについては、MHDV部品および特定の自動車部品に対する232関税に限って、Direct IdentificationとSubstitution Manufacturingの範囲で認めると整理され、その他のタイプは対象外とされています。govdelivery+1
  • Chapter 98の利用時も原則として232追加関税はかかり、9802.00.60については仕向け時のフルバリューに対して課税される点が明記されています。aacb+1

9. 日本企業が今すぐ取るべき実務アクション

9-1. 「HTS番号だけ」で該当性判定を終わらせない

注記38の別紙リストに含まれるHTSであっても、MHDVに該当しない車両やMHDV部品に該当しない部品については、整理用コード(9903.74.05、9903.74.11)を用いて0%に落とせる余地があります。whitehouse+1
そのため、輸出側は品名・用途・搭載先(MHDVか、乗用車か、汎用品か)を米側に説明できる状態にしておくことが必須です。buckland+1

9-2. 用途証明に備えた証跡パッケージの準備

9903.74.09や9903.94.07等は、米国輸入者による用途証明が前提条件です。whitehouse+1
輸出者側で、製品仕様書、適用車種、取引条件、組立・修理工程における投入方法などが分かる資料パッケージを整えておくことで、通関時のリジェクトや事後監査のリスクを大きく抑えられます。ghy+1

9-3. 申告の並び順と税額計上ルールを事前にすり合わせる

Chapter 99の積み方は、ACE上の記載順序がそのままエラー要因になります。govinfo+1
特に相互関税・IEEPAが絡む企業は、CSMS #64018403とEO 14289に基づく優先順位を前提に、通関業者と社内手順書をアップデートしておく必要があります。presidency.ucsb+1

9-4. USMCAは「車両」と「部品」で優先順位が違う

車両側の非米国コンテンツ課税枠(9903.74.03、9903.74.06)は制度として箱があるものの、CBPが「追って指示」としているため、短期的には25%のフル負担を前提にせざるを得ません。whitehouse+1
一方で、部品側はUSMCA適格であれば0%(9903.74.10)で申告できる枠が明確なため、原産地判定と証憑整備の優先順位を「部品」側から着手する戦略が現実的です。whitehouse+1


おわりに:日本側ができる最大の支援

中大型車両向け232関税は、税率(25%・10%)そのものよりも、Chapter 99の運用、他の追加関税との非累積ルール、相互関税・IEEPAとの関係整理が実務の中心になります。 CBPはCSMSを通じて、対象HTSリスト、申告コードの分岐、用途証明、ACEでの並び順、FTZやドローバックまで一通りの論点を提示しており、これをどこまで自社手順書に翻訳できるかが勝負です。govdelivery+3

日本側の輸出者ができる最大の支援は、米国輸入者が正しく申告できるだけの「用途と実体が分かる情報」を最初から揃えて渡すことです。 Chapter 99が複雑な局面ほど、最初の設計がそのままコンプライアンスとコストの差になるため、品目・用途・原産地情報を一体で設計する視点が求められます。govdelivery+3

  1. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3f93b75
  2. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/10/adjusting-imports-of-medium-and-heavy-duty-vehicles-medium-and-heavy-duty-vehicle-parts-and-buses-into-the-united-states/
  3. https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/10/2025MediumandHeavyDutyVehicles.Parts_.Buses_.section232.prc_.rel-ANNEX.pdf
  4. https://www.aacb.com/trade-tariff-news/section-232-duties-on-medium–and-heavy-duty-vehicles-mhdvs-medium–and-heavy-duty-vehicle-parts-mhdvps
  5. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e0a63e
  6. https://www.buckland.com/news/entry-filing-guidance-for-new-u-s-tariffs-on-medium-and-heavy-duty-vehicles-parts-buses/
  7. https://www.clarkhill.com/news-events/news/section-232-tariffs-expand-to-medium-and-heavy-duty-vehicles-parts-and-buses/
  8. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/10-20-2025-client-advisory-section-232-tariffs-on-imports-trucks-truck-parts-and-buses/
  9. https://www.htshub.com/us-hs/detail/99037408
  10. https://www.fedex.com/content/dam/fedex/us-united-states/International/Implementation_of_Section_232_tariffs_on_medium_and_heavy_duty_vehicles_parts_and_buses.pdf
  11. https://www.cassidylevy.com/news/section-232-tariff-regimes-introduced-revised-on-trucks-autos/
  12. https://www.unisco.com/hts/99037409
  13. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-05-02/html/2025-07835.htm
  14. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/20/2025-09066/notice-of-implementation-of-addressing-certain-tariffs-on-imported-articles-pursuant-to-the
  15. https://www.presidency.ucsb.edu/documents/executive-order-14289-addressing-certain-tariffs-imported-articles
  16. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/02/2025-07835/addressing-certain-tariffs-on-imported-articles
  17. https://www.ghy.com/trade-compliance/section-232-tariffs-on-heavy-medium-duty-trucks-and-buses-effective-nov-1/
  18. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-05-02/pdf/2025-07835.pdf
  19. https://hts.usitc.gov/search?query=duties
  20. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-04/html/2025-21940.htm

アフリカ:AfCFTA 2026年段階引下げを施行 企業実務で何が変わるか


何が起きたのか

AfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)は、2021年1月に優遇関税の適用が始まっており、その後、各国・各関税同盟が自国の関税率表に段階的な引下げスケジュールを落とし込む作業を続けています。thedtic+1
2026年1月1日は、その中でも一部の国・関税同盟で「次の段階」の引下げが発動する節目として位置づけられており、とくに南アフリカでは、SARS(南ア歳入庁)がAfCFTAに基づく2026年以降の段階引下げを、関税率表の改正として実装するための告示を2025年に公表しています。amcham+2

南アフリカについては、2026年1月1日発効予定の改正案により、Part 1 of Schedule No.1の各サブヘディングの差替え等を通じて、AfCFTAの関税引下げスケジュールに沿った税率変更が行われる予定です。sars+1
同時に、AfCFTA全体の制度設計としては、関税自由化を「Category A(非敏感品)」「Category B(敏感品)」「Category C(除外品)」の3つに区分し、各カテゴリごとに年次で関税を引き下げることが合意されています。macmap+2

AfCFTAの「段階引下げ」をビジネス目線で整理

AfCFTAは、域内関税を一気にゼロにするのではなく、関税ラインの少なくとも90%を原則自由化対象とし、敏感品や除外品を別枠として扱う設計です。au+2
制度説明として、よく使われる整理は次の通りです。macmap+2

区分典型的な位置づけ2026年との関係のイメージ
Category A原則の自由化対象(少なくとも90%の関税ライン)macmap+1多くの国で既に段階引下げの途中(2021年基準で5〜10年)thedtic+1
Category B敏感品目(全体の7%まで。長めのスケジュール)macmap+2多くの国で、中盤以降(6年目以降)に本格的な引下げが始まる設計。2026年頃に「相当部分が動き始める」国が出てくる。[*注1]
Category C除外品目(最大3%。原則、関税引下げ対象外)macmap+22026年時点でも、原則として自由化対象外のまま

[*注1] AfCFTAの交渉モダリティでは、敏感品(Category B)は、非LDCで10年、LDCで13年のスパンをかけて引き下げること、かつ「6年目以降」に段階引下げを開始し得ることが示されています。oefse+2
そのため、実務上は「2026年から一律にCategory Bが始まる」というより、「各国のオファーと基準年(2021年)を踏まえ、2026年前後から敏感品の本格的な削減ステップに入る国・品目が増える」イメージで捉えるのが正確です。macmap+2

AU(アフリカ連合)や各種ガイドでも、関税自由化は「90%を基本、7%を敏感品、3%を除外」とする枠組みが説明されています。africatradefoundation+3
ポイントは、同じAfCFTAでも「どの国が、どの品目を、どのスケジュールで引下げているか」が実務の結論を左右することであり、2026年前後は、各国の関税率表改正や税関システム対応が企業実務に具体的な形で現れやすいタイミングだという点です。freelegaladvice+2


2026年前後に企業が注目すべき3つの変化

1. 敏感品目の段階引下げが本格化する

敏感品目(Category B)は、政治的に影響が大きく、自由化スケジュールも長期かつ後ろ倒しに設定されるため、実際の関税削減が動き出すタイミングが企業コストを大きく左右します。thedtic+3
AfCFTAのモダリティ上は、「少なくとも90%の関税ラインを5〜10年で削減し、敏感品7%は10〜13年のスパンで削減、除外3%は削減なし」という設計であり、2021年を起点としたスケジュールの中で、2026年前後から敏感品の削減ステップに入る国・品目が増えることが想定されています。oefse+3

そのため、特にCategory Bに入る品目を扱う業種では、「2026年前後に関税率がどの幅で、何年に一度、どれだけ下がるのか」を自国・相手国ごとの関税表で具体的に確認することが、価格・調達戦略に直結します。amcham+3

2. 関税率表だけでなく「統計コード」「税関運用」も動く

南アフリカの例では、AfCFTAの段階引下げを実装する一環として、2026年1月1日発効を念頭に、Part 1 of Schedule No.1のサブヘディングの差替えなど「技術的改正(technical amendments)」が行われる旨が案内されています。engineeringnews+3
これには、新しい8桁サブヘディング等の導入や、関税分類の細分化・整理が含まれ、企業側の品目マスタ(HS、統計番号、品目コード)にも直接影響します。sctsolutions+2

またSARSは、AfCFTAの税関手続についても、Customs & Exciseクライアント向けにRLAシステム等を通じた自動化・オンライン化を進めており、2025年11月17日の発表では、AfCFTAに係る輸出者・承認輸出者・生産者の登録申請を電子的に受け付ける仕組みが導入されています。sars+2
制度が「紙の条文」から「システムに実装された運用」へと移るほど、優遇適用可否の判定や証憑の求め方が具体化し、企業間・国間で実務の差が出やすくなります。sars+2

3. 原産地規則の未決着分が、業界によっては最大のボトルネック

AfCFTAでは、原産地規則(Rules of Origin)が確定していない品目については、関税を引き下げても優遇は実務上使えません。uneca+2
2024〜2025年時点で、RoOは全体の約92〜92.4%の関税ラインについて合意済みである一方、繊維・衣類や自動車関連などの分野については交渉が長く続いており、「残る7〜8%」の交渉対象として位置づけられてきました。kohantextilejournal+3

南アフリカ政府資料でも、衣類・繊維および自動車関連の原産地規則が未決着の交渉事項として列挙されており、「残る10%(Category Bの7%とCategory Cの3%)の関税ラインと、当該分野のRoOを2026年2月頃までに詰める」という方向性が示されています。thedtic+1
部材比率が複雑な業界ほど「関税削減よりも先に、原産地規則と証憑のハードル」がボトルネックになりやすく、サプライチェーン全体を見た設計が必要になります。tradeunionsinafcfta+3


日本企業にとっての実務インパクト

AfCFTAは、日本からアフリカへの輸出関税を直接下げる枠組みではなく、アフリカ諸国間の域内貿易を自由化するFTAです。swp-berlin+2
一方で、日本企業にとっては、アフリカ市場での収益構造・投資戦略に次のような形で影響します。

  • アフリカ域内での調達と販売がしやすくなる
    各国のカテゴリ別スケジュールに沿って関税が下がることで、一定の原産地要件を満たした「域内産品」については、複数国での販売を前提にした生産・調達設計が取りやすくなります(ただし、優遇の使い勝手は国ごとのスケジュールとRoOの整備状況に依存)。africatradefoundation+3
  • 「アフリカで作る企業」との競争条件が変わる
    域内で関税が下がるほど、現地・域内生産品のコスト競争力が高まり、域外からの完成品輸出との比較で、現地生産の有利性が増す局面が出てきます。documents1.worldbank+3
  • 投資判断が関税より「原産地設計」と「サプライヤー管理」に寄る
    優遇関税を活用するには、AfCFTAのRoOに基づく原産地証明や、サプライヤーからの原産地証明資料の取得が要件となるため、調達先の国だけでなく「部材の原産性をどこまで立証できるか」が投資回収の前提になります。wcoomd+3

いま社内でやるべきチェックリスト

AfCFTAの2026年前後の段階引下げをビジネスに取り込むには、「自社の対象国・対象品目」に引き直した確認が必要です。macmap+2

  • 対象国ごとに、関税引下げスケジュールが反映された最新の関税率表を入手する
    各国・各関税同盟のオファーおよび改正タイミング(例:SACU/南アフリカの2026年1月1日発効改正)を確認する。freelegaladvice+2
  • 自社の主要品目について、Category A/B/Cの扱いを確認する
    同じHSコードでも、国ごとにCategory A・B・Cの扱いが異なり得るため、相手国別に「どの割合・どの年限で関税がゼロになるか、あるいは除外されるか」を確認する。macmap+2
  • 原産地規則の要件と、サプライヤー証憑の取得可否を先に確認する
    既にRoOが合意済みの品目か、繊維・衣類・自動車など未決着または直近まで交渉されている品目かを整理し、現状の部材構成で原産資格が取れるか、証憑をどこまで集められるかを評価する。tradeunionsinafcfta+3
  • HSや統計コードの細分変更がないかを確認し、品目マスタと通関指示書を更新する
    南アフリカなどで2026年1月発効の技術的改正により、サブヘディングの差替えや新設が予定されているため、自社マスタ(品目コード、関税分類)と社内システム(通関指示書、請求書コード等)を同期させる。sars+3
  • 現地拠点やフォワーダーに、税関システム側の運用変更(電子化、適用判定の自動化など)を確認する
    SARSのように、AfCFTA関連登録・手続をRLAなどのオンラインシステムに集約する動きが出ているため、現地側での登録要件・運用ルール(承認輸出者制度など)を把握し、実務に落とし込む。freightnews+2

まとめ

AfCFTAの2026年前後の段階引下げは、「関税が少し下がる」という表面的な話にとどまらず、実務では次の三点が本質です。thedtic+3

  • 敏感品目(Category B)の本格的な引下げ入りで、品目によってコスト構造が大きく変わる可能性がある。
  • 各国の関税率表改正に伴い、コード体系や税関システム運用が変わり、品目マスタや通関プロセスの更新が必要になる。
  • 優遇活用の成否は、原産地規則と証憑整備(特に繊維・衣類、自動車など複雑なサプライチェーンを持つ分野)に左右される。

アフリカ市場を単国で見るのではなく、複数国を束ねた供給と販売の設計に切り替える企業ほど、2026年以降の変化を「追い風」に変えやすくなると言えます。africarenewal.un+2

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  10. https://www.oefse.at/fileadmin/content/Downloads/Publikationen/Briefingpaper/BP31-African-Continental-Free-Trade-Area.pdf
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  14. https://sctsolutions.co.za/newsflash/tariff-amendments-schedule-1-and-schedule-2/
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  44. https://www.wcoomd.org/en/topics/origin/instrument-and-tools/afcfta-rules-of-origin.aspx

2026年版 実行関税率表・統計コード適用開始:年明け通関のトラブルを防ぐ実務ポイント

2026年1月1日より、最新の実行関税率表および統計品目番号が適用されました。年明けの通関実務で最も多いトラブルは、旧コードの使用によるNACCSのエラーや申告の差し戻しです。

本記事では、2026年度版の変更点と、物流・貿易担当者が今すぐ確認すべき実務上の留意点を整理します。


1. 2026年適用の主な改正内容

今回の更新は、2025年10月31日付の財務省告示第283号等に基づいています。主なポイントは以下の3点です。

  1. 「2026年1月1日版 実行関税率表」の適用輸入時の税率および統計細分を決定する「Japan’s Tariff Schedule」が更新されました。
  2. 統計品目番号の改正(輸出入)統計上の必要性から、品目番号の統合・分割が行われています。2026年1月1日以降に統計計上される貨物は、すべて新コードでの申告が必要です。
  3. NACCS用品目コードの同期法令改正に合わせ、通関システム(NACCS)で受理される品目コードも更新されています。

2. 実務上の注意点:日本の「統計コード」は輸出入で桁数が異なる

現場で最も間違いやすいのが「桁数」の認識です。ここを正確に理解しておく必要があります。

区分構成合計桁数
輸入統計品目番号HS6桁 + 国内細分3桁9桁
輸出統計品目番号HS6桁 + 国内細分3桁 + チェックデジット1桁10桁

【重要】

「HSコードの6桁までは世界共通」ですが、それ以降の枝番は各国独自です。さらに、日本国内においても**「輸出用」と「輸入用」で下位桁の構成が異なる**場合があります。「HS6桁が同じだから」と輸出入で同じマスタを参照するのは、申告エラーの大きな原因となります。


3. なぜ「コードの更新」でトラブルが頻発するのか

単なる「番号の変更」と侮れない理由が3つあります。

(1) 適用タイミングの「ズレ」

統計コードの適用は、原則として**「2026年1月1日以降の申告(または統計計上日)」**が基準です。年末に船積みされ、年始に輸入申告を行う「年跨ぎ貨物」の場合、インボイスに旧コードが記載されていても、申告は新コードで行わなければなりません。

(2) 統計単位(QTY)の変更

コードの変更に伴い、数量単位(KG、MT、NOなど)が変更される場合があります。単位が変わると、計算ロジックや端数処理でエラーが発生し、通関業者から「数量が合いません」と差し戻される原因になります。

(3) NACCS特有の「枝番(細分)」

NACCSでは、関税率表の9桁(または10桁)の後に、さらに特定の要件(成分や用途など)を識別するための**「NACCS用細分コード」**の入力が求められる場合があります。一覧表だけでなく、NACCS掲示板の最新資料を確認する必要があります。


4. 今すぐ実施すべき「最短ルート」チェックリスト

現場の混乱を最小限にするため、以下の3点を優先して確認してください。

  • [ ] 社内マスタの緊急更新
    • 自社の主要取扱品目について、2026年度版の新旧対照表を照合。
    • 輸出10桁・輸入9桁がそれぞれ正しく設定されているか確認。
  • [ ] 通関業者との情報共有
    • 特に「2025年末に船積みした年始到着分」について、新コードでの申告準備ができているか担当者と連携。
  • [ ] 原産地証明書(EPA/FTA)の整合性確認
    • EPAを利用する場合、協定上のHSバージョンと現在の統計コードを紐付ける必要があります。コード変更によって判定に疑義が生じないか再点検してください。

5. まとめ:通関遅延は「税率」よりも「整合性」で起きる

2026年版の更新において、税率そのものの大きな変動がない品目であっても、統計コードの不一致はシステム(NACCS)で即座に弾かれます。

「昨年と同じコードだから大丈夫」という思い込みを捨て、最新の実行関税率表に基づいたマスタ管理を徹底しましょう。

※個別品目の分類(HSコードの決定)について判断が難しい場合は、税関の「事前教示制度」の活用、または契約している通関業者への専門的な相談を推奨します。

米日「相互関税」運用ガイド:現行エントリー処理の実務ポイント

米国の相互関税制度において、税率そのものより「エントリーで何をどう申告するか」が実務上の成否を分けます。

特に日本は、日米合意の実装により「合計15%」ロジックとChapter 99コード体系が段階的に切り替わり、過去の手順のままでは過払い・申告エラー・還付遅延が発生しやすい状況です。

CBPはCSMS等でエントリー方法のガイダンスを段階的に更新しており、本稿では「現行ルール」をビジネス実務視点で整理します。


制度の流れ:更新タイムライン

2025年4月5日 0:01 (ET)

相互関税の基本運用が開始。Chapter 99による申告が実務ルール化され、エントリーにはChapter 99の二次分類が必須に。

2025年7月22日

トランプ大統領が日米間の枠組み合意を発表。日本からの輸入品に対する相互関税率を15%とすることで合意。

2025年8月7日 0:01 (ET)

国別税率(Annex I)へ移行。日本を含む国別の9903.01.xx体系から9903.02.xx体系に切替。輸送中貨物向けの経過措置(10%扱い・9903.01.25等)も提示。

2025年9月4日

日米合意を実装する大統領令(EO 14345)により、日本向け税率ロジックが「MFN(Column 1)を含めて合計15%」に変更され、8月7日以降のエントリーに遡及適用。

2025年9月16日 0:01 (ET)

日本向けの新コード9903.02.72/9903.02.73がACEに展開。旧コードからの切替と遡及修正の手順が明確化。自動車・自動車部品向けの9903.94.40〜9903.94.43も同日実装。

2025年9月23日

Replacement dutyの申告方法が更新(CSMS #66319804)。9903.02.73や9903.94.41/.43について「Column 1分と差分を分けてChapter 99側に載せる」現行手順が明示。


まず押さえる税率ロジック

日本品の基本ロジック

日本原産品の相互関税は、HTSUS Column 1(一般税率)が15%以上なら追加ゼロ、15%未満なら合計が15%になるよう調整されます。

簡潔に言えば、「実効税率はColumn 1と15%の高い方」です。

従量税・複合税の扱い

Column 1が従量税や複合税の場合、CBPはColumn 1税額を通関価格で割って従価換算し、その換算税率が15%以上かどうかでロジックを判定する方針を明示しています。

例:1kgあたり50セントの従量税で、通関価格が10ドルの場合、従価換算税率は5%(50セント÷10ドル)となります。


現行エントリー処理:判断ステップ

1. 原産地「Japan」の確定

相互関税は原産地ベースで適用されるため、原産地判定が曖昧なままHSだけを先に固めるとChapter 99との整合が崩れます。

日本原産であることを、インボイス記載、製造工程、原産地証明などで説明可能な状態にしておくことが前提です。

2. 相互関税の対象外かを先に確認

日本原産でも、Section 232対象など相互関税の適用外とされる領域があります。

鉄鋼、アルミニウム、銅に関するSection 232関税の対象品は、相互関税から除外されます(ただし、後述の自動車・自動車部品は別枠で15%ロジックが適用)。

3. 一般品(自動車等以外)のChapter 99選定

日本原産の一般品に対する相互関税は、Column 1が15%以上の場合は9903.02.72(追加ゼロ)、15%未満の場合は9903.02.73(合計15%に調整)の2択です。

このロジックは、2025年8月7日 0:01以降の輸入に遡及して適用されるため、それ以前の申告分を含めた棚卸しと修正が必要です。

4. 自動車・自動車部品の特則

日本原産の自動車・自動車部品については、Section 232側で「合計15%ロジック」が組まれ、専用のHTSUS 9903.94.40〜.43を使用します。

自動車(乗用車・ライトトラック):

  • Column 1が15%以上:9903.94.40
  • 15%未満(合計15%):9903.94.41

自動車部品:

  • Column 1が15%以上:9903.94.42
  • 15%未満(合計15%):9903.94.43

5. 輸送中例外(8月7日前船積み・10月5日まで通関)

8月7日の国別税率切替時、すでに輸送中の貨物向けに、10月5日までの経過措置が設定されています。

要件を満たす貨物については、相互関税率ではなく10%扱いとし、9903.01.25を用いる整理が示されています。


「現行ルール」の肝:税額をどこに載せるか

1. Chapter 99の申告は必須

相互関税の実装以降、対象貨物であれば必ずChapter 99の二次分類を少なくとも1つ申告することが求められます。

適用対象なら対象コード、例外なら例外コード(9903.01.25等)を申告する設計で、Chapter 1〜97だけでは不完全と見なされます。

2. Replacement dutyの申告方法(2025年9月23日更新)

日本向けでReplacement dutyとされるのは、以下のコードです:

  • 9903.02.73(一般品で合計15%)
  • 9903.94.41/.43(自動車・部品で合計15%)

CSMS #66319804では、これらReplacement dutyの申告方法が更新され、Column 1分と15%との差分をChapter 99側に計上し、Column 1分はChapter 1〜97側で計上する方式が明示されました。

9903.02.73の申告方法:

  • Column 1分の税額をChapter 1〜97で計上
  • 差分(15%到達分)をChapter 99側に計上

9903.94.41/.43の申告方法: 自動車・部品についても同様に、Column 1分を車両・部品側(Chapter 87等)に、差分をChapter 99側に載せる

例: HTSUS 8703.22.01(Column 1税率2.5%)の日本製自動車の場合

  • 8703.22.01で2.5%分の税額を計上
  • 9903.94.41で12.5%(15% – 2.5%)分の税額を計上

3. ドローバックを狙う場合の設計

Section 232部分はドローバック対象外という前提のもと、Column 1部分のみドローバックを確保したい場合、税額の載せ方を意図的に分ける必要があります。

CBPは日本車の例として、Column 1分を車両側に、差分(15%到達分)をChapter 99側に計上する方法を示しており、ドローバック運用企業はこの設計を事前に通関フローへ織り込む必要があります。


ACEエラーと紐づけ崩れを防ぐポイント

1. HTSの並べ順(Sequencing)

複数のChapter 98/99コードを併用する場合、CBPはHTSの並べ順を明示しています。

基本順序:

  1. Chapter 98
  2. Chapter 99の追加関税(301 → フェンタニル関連 → 相互関税 → 232などの順)

順番が違うだけでACEがエラーとなったり、税額紐づけが崩れる典型例があるため、ブローカー指示書に順番を明記しておくことが重要です。

2. 税額の紐づけ(同一行で混ぜない)

CBPは、複数HTSUSを同一エントリー行で申告する場合、税額を正しいHTSUSに紐づけ、別HTSUSと合算しないことを求めています。

Replacement dutyでColumn 1分と差分を分けて計上する考え方も、この「税額を正しいHTSUSに紐づける」という思想を徹底するための運用です。

3. 米国原産コンテンツ20%以上の扱い(該当時)

相互関税では、20%以上の米国原産コンテンツを含む場合、その部分を除外するために行分割を求める設計があり、該当時は2行に分けて申告(HTSUS 9903.01.34を使用)する必要があります。

インボイスの書き方からブローカー指示書まで一体で設計しないと、実務上の行分割が崩れやすいため注意が必要です。


遡及適用と過払い回収:PSC・Protestの整理

日米合意の実装により、2025年8月7日以降の輸入について、新ロジックでの遡及適用が発生します。

その結果、「正しいHTSUS見出しと税率ロジック」でエントリーを再設計し、過払い分を回収する局面が避けられません。

CBPは、修正と還付の導線を次のように整理しています:

未清算(Unliquidated)で既に見積税額を納付済み: Post Summary Correction(PSC)で税率・Chapter 99コード等を更新し、還付を得る。

清算済み(Liquidated): 19 U.S.C. 1514に基づくProtestで還付を求める。

Replacement dutyの載せ方を誤った可能性: CSMSでは、PSCでエントリー情報を更新するよう促されており、誤った行設計を放置しないことが推奨されています。

キャッシュフローへの影響が大きいため、「どのエントリーが、どのロジックで、どのコードに載っているか」を早期に棚卸しできるかが勝負です。


企業向けチェックリスト(最低限)

☑ 日本原産判定の根拠を、品目単位で説明できる状態か

☑ 当該品目が相互関税適用除外(鉄鋼・アルミ・銅のSection 232品など)に該当しないか先に判定しているか

☑ Column 1が従量税・複合税の品目で、従価換算による15%判定を落としていないか

☑ 9903.02.72/.73、9903.94.40〜.43など、日本向けの現行コードを正しく使い分けているか

☑ 9903.02.73や9903.94.41/.43で、Column 1分と差分を分けた「現行の載せ方」になっているか(PSC対象エントリーが残っていないか)

☑ HTS並べ順(98→99、301→フェンタニル→相互→232…)を、ブローカー指示書に明記しているか

☑ 8月7日前船積み・10月5日まで通関の輸送中例外貨物(9903.01.25等)を取りこぼしていないか

☑ 遡及対象エントリーについて、清算状況に応じてPSCとProtestのどちらで回収するかを仕分け済みか


おわりに

相互関税の実務は、「税率はいくらか」よりも、Chapter 99を軸にしたエントリー設計と遡及対応の設計が主戦場です。

2025年9月23日のガイダンス更新では、特に9903.02.73等のReplacement dutyについて、税額をどの行・どのコードに載せるかまで踏み込んで整理されました。

まずは、自社の対米輸出品を「一般品」「自動車・部品」「Section 232対象(相互関税除外)」「輸送中例外」に棚卸しし、ブローカーの申告ロジックと社内マスタを最新CSMS準拠で統一することが、最短で効果が出る一手となります。


参考資料:

  • Executive Order 14345 (September 4, 2025)
  • Federal Register Notice (September 16, 2025)
  • CSMS #66319804 (September 23, 2025)
  • CSMS #66242844
  • 19 U.S.C. 1514

最高裁で無効でも終わらない関税:米政府の「代替関税ルート」と企業の備え

米国の広範なIEEPA関税(1977年国際緊急経済権限法に基づく関税)が、米連邦最高裁の判断で違法とされる可能性があります。

多くの企業は「関税がなくなれば負担が軽くなる」と期待しますが、現実はそう単純ではありません。焦点は「IEEPA関税が止まるかどうか」以上に、**「止まっても別ルートで再課税され得る」**点に移っています。

米通商代表部(USTR)のグリアー代表は、最高裁がIEEPA関税を違法と判断した場合でも、約2,000億ドル規模の関税収入を他の法的手段を使って再現することは可能だとの見方を示しています。

以下では、いま何が争点なのか、米政府が準備している「代替関税ルート」は何か、そして日本企業が実務で何を整えるべきかを整理します。

米国最高裁によるIEEPA関税の無効化判断が迫る中、企業は関税撤廃を期待するだけでなく、複雑な法的再編への備えを急ぐ必要があります。米政府は、たとえ現在の法的根拠が否定されても、232条や301条といった別の法律を活用して関税を再構築する「代替ルート」を既に検討しています。既払金の還付手続きは極めて不透明であり、企業には証憑の徹底管理と、新たな課税シナリオを前提とした契約の見直しが求められます。単なる税率の変動以上に、根拠法が次々と切り替わる不確実性のリスクを直視し、実務基盤を強固にすることが不可欠です。この動向は、将来的な調達戦略や財務計画の抜本的な再考を迫る重要な局面となっています。

1. 争点:IEEPA関税は「大統領権限の範囲内」か

争点は、1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に、大統領が広範な関税を課す権限を持つのかという一点に集約されています。

具体的な論点は以下の2つです。

  • IEEPAが今回のような大規模・包括的な関税を授権しているのか
  • 仮に授権しているとしても、「重大な経済・政治的影響」を伴う措置について立法権を過度に委任しており違憲ではないか(メジャー・クエスチョン・ドクトリンの観点)

連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、IEEPAは今回のような広範な関税権限までは認めていないとして、大統領権限の逸脱だと判断しました。

政府は最高裁へ上告し、最高裁は2025年11月に口頭弁論を実施。判断は2025年末から2026年初にかけて見込まれています。

2. 重要なのは「無効になった後」:返金と再課税が同時に起こり得る

最高裁がIEEPA関税を違法と判断すれば、将来に向けた同種の関税賦課は止まる可能性が高まります。

しかし、すでに支払った関税が自動的に全額返金されるかどうかは不透明です。返金のスキームが行政手続なのか司法手続なのかも、現時点では明確ではありません。

ナショナル・ロー・レビューや各種法律事務所の分析では、返金には以下のプロセスが必要になる可能性が指摘されています。

  • 行政的なリファンド・プロセス
  • 個別輸入者による訴訟を通じた申立て

USTRのグリアー代表も、関税返金の時期は財務省および税関・国境警備局(CBP)の判断次第であり、具体的なスケジュールは「分からない」と述べています。

つまり企業は、二正面作戦を迫られています。

  • 返金可能性に備えて書類・証憑を整える
  • IEEPAとは別の法的根拠による新たな関税発動にも備える

3. 米政府の「代替関税ルート」:主な候補4つ

各種報道やシンクタンク・法律家の分析で、代替ルートとして繰り返し挙がるのは、主に次の4つの枠組みです。

代替関税ルートの全体像

ルート法律・条文ねらい・特徴企業にとっての意味
232条通商拡大法1962年232条国家安全保障を理由に品目・セクター別に輸入制限や追加関税を課す対象品目は絞られるが、自動車・半導体・医薬品など戦略分野は直撃し得る
301条通商法1974年301条不公正貿易慣行への対抗措置としての追加関税などを発動調査に時間はかかるが、一度発動されると長期化・制度化しやすい
122条通商法1974年122条大きな貿易・国際収支不均衡への短期的な一律関税・数量制限期間は最長150日だが、広く最大15%までの一律課税が可能で「つなぎ措置」になり得る
338条1930年関税法338条差別的・不合理な対米措置への報復関税最大50%まで追加関税を課し得るうえ、手続要件が比較的軽く、迅速な報復カードになりやすい

各ルートの詳細

232条(国家安全保障)

商務省の調査(国家安全保障への影響評価)を経て発動されるため、IEEPAのような即時・包括的な課税ツールではありません。

現政権は232条をテコに、自動車・鉄鋼・アルミ、今後は半導体・医薬品・重要鉱物などの戦略分野への関税・輸入制限を拡大しており、「狭く深く」積み増すシナリオが現実味を帯びています。

301条(不公正貿易慣行)

不公正な貿易慣行を対象に、USTRの調査と報告を経て、追加関税・数量制限等を講じる伝統的なツールです。

問題認定と調査ロジックが必要な分、IEEPAほどの即応性はありませんが、一度発動されると恒常的な対中追加関税のように長期化しやすい特徴があります。

122条(短期一律)

通商法1974年122条は、大きく深刻な国際収支赤字や貿易不均衡に対して、大統領が最大15%の一律関税または輸入制限を、最長150日間課す権限を与えています。

150日を超える延長には議会の同意が必要とされるため長期ツールとしては制約がありますが、最高裁判断直後の「つなぎ措置」として広範な課税を一時的に復元するカードになり得ると分析されています。

338条(報復)

1930年関税法338条は、特定国が米国商業に対して「差別的」「不合理」な扱いを行っている場合、追加関税を最大50%まで引き上げることを認める規定です。

国際貿易委員会(ITC)等の手続を経るパターンもありますが、IEEPAに比べると迅速で、政治的にも「報復」カードとして使いやすいと評価されています。

各ルートの性格の違い

  • IEEPA:「広く薄く」
  • 232条:「狭く深く」
  • 301条:「調査ベースで長期化」
  • 122条・338条:「短期あるいは即応のつなぎ・報復」

4. 企業実務で今起きている課題:「関税コスト」より「不確実性コスト」

最高裁判断が近づくほど、企業は次の三重苦に直面します。

  1. IEEPA関税が維持されるのか、将来に向けて止まるのかが読みにくい
  2. 止まった場合でも、すでに払った関税の返金スキームとタイミングが見えない
  3. IEEPA関税が止まっても、232条・301条・122条・338条など別根拠で再課税される可能性がある

この不確実性は、単なる税率水準の問題ではなく、調達戦略、価格転嫁、在庫ポリシー、契約条件、キャッシュフロー管理に直接影響します。

米国内でも、関税還付が財政収支・市場に与える影響や、代替関税の立ち上げに伴う混乱リスクが繰り返し指摘されています。

5. 日本企業が今すぐ整えるべきチェック項目

「勝ち筋が見えにくい局面で損失を最小化する」ための実務的な備えを紹介します。

(1) 契約を「関税が揺れる前提」に見直す

  • 関税発生・変更時の価格改定条項(自動改定か協議か)の明確化
  • 関税率や根拠法(IEEPA・232・301・122・338等)の変更をトリガーとする再交渉条項の設定
  • インコタームズと輸入者(Importer of Record)の責任分担を改めて契約上明示

こうした条項があるかどうかで、急な再課税時の価格交渉余地と紛争リスクが大きく変わります。

(2) 返金に備え、申立て可能性を潰さない

最高裁の判断内容と、その後の行政通知・CBPガイダンスによっては、自動返金ではなく、行政的クレームや訴訟を通じた返金申立てが必要になるシナリオが想定されています。

以下の資料を「将来の返金請求にも耐える粒度」で保全しておくことが不可欠です。

  • 通関申告書
  • 支払関税の記録
  • HSコード(品目分類)
  • 原産地
  • 評価の根拠資料

USTRは返金時期について、財務省とCBP次第であり見通せないと明言しており、「返金は来るが、いつか分からない」前提で備える必要があります。

(3) 代替ルート別に「当たりやすい品目」を想定する

232条:自動車、鉄鋼・アルミ、半導体、医薬品、重要鉱物など国家安全保障関連セクターが中心

301条:過去の対中追加関税のように、特定国の不公正慣行(補助金、知財侵害など)に紐づいた品目群

122条:貿易不均衡や国際収支問題を口実に、最大15%・150日の一律関税が想定され、幅広い品目に「薄く広く」効く可能性

338条:自国への差別的措置を理由とした報復で、対象国・品目を選んで最大50%までの追加関税が課され得る

自社の品目群ごとに、「どの条文で狙われやすいか」を棚卸しし、想定税率・対象範囲・期間をシナリオとして整理しておくことが重要です。

(4) 財務は「返金が来ない・遅れる」ケースも織り込む

返金スキームや時期が不透明な以上、「全額返金前提」で会計処理や価格政策を組むのはリスクが高いと指摘されています。

会計上の見積り、引当、資金計画、販売価格・調達先の見直しは、「返金なし/大幅遅延」シナリオでも事業が持ちこたえられる設計になっているか、ストレステストが必要です。

結び:最高裁は通過点、「根拠法が変わっても回る業務設計」へ

最高裁がIEEPA関税を止めるかどうかは大きな分岐点ですが、それ自体は通過点にすぎません。

IEEPAが違法とされても、政権が232条・301条・122条・338条などの別の法的根拠を組み合わせて関税を再構成するシナリオは、米国内の専門家の間でも現実的なオプションとして議論されています。

企業にとっての最適解は、「IEEPA関税が終わる期待」に賭けることではなく、「根拠法が変わっても回る業務設計」に移行することです。

通関実務、契約、調達、価格、在庫・財務を、不確実性を前提とした二段構え(返金対応+再課税対応)で組み替える局面に入っています。


免責事項:本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別案件については、米国の通商弁護士、通関士、税務専門家と連携のうえでご判断ください。

中国が2026年に935品目で輸入関税を引下げへ


中国が2026年に935品目で輸入関税を引き下げ

2025年12月29日、中国国務院関税税則委員会は「2026年関税調整方案」を公表し、2026年1月1日から一部品目の輸入関税率と税目を調整することを発表しました 。柱となるのは、935品目に対してWTO最恵国税率(MFN)より低い「暫定輸入税率」を設定することです 。binance+2

この発表は、中国向けに「先端部材・グリーン関連素材・医療関連製品」を輸出する日本企業にとって、年明け直後の価格競争力と販売機会を左右する重要なイベントとなります 。cna+1

何が変わるのか:制度面の要点

935品目で暫定税率を設定

対象は、重要部材や先端材料、グリーントランスフォーメーション関連の資源性商品、医療製品などで、MFNより低い税率が適用されます 。binance+1

税目自体も見直し

本国子目を増設し、税則税目総数は8,972に拡大します 。例として、インテリジェント生体模倣ロボット(智能仿生机器人)、バイオ航空燃料(生物航空煤油)、林下山参などが挙げられています 。news.cnyes+1

一部は暫定税率を取りやめ、MFNへ戻す

国内産業の供給需給などを踏まえ、小型モーター(微型電机)、捺染機(印花机)、硫酸などは暫定税率を取り消し、MFNを適用する方向が示されています 。cna+1

どの領域が狙い撃ちか:3つの政策軸

先端産業の基盤づくり(科技自立自強)

中国は、現代化産業体系の構築に資する「重要部品・先進材料」の輸入コストを下げる狙いを明示しています 。完成品ではなく、ボトルネックになりやすい部材・材料の調達コストを軽くし、国内の高度化を進める設計です 。news.cnyes+2

日本企業にとっては、半導体製造装置周辺、精密部材、先端材料など、仕様が厳しい領域ほど商機になりやすい一方、型番単位での該当確認が重要になります。

グリーン転換(電池・資源循環)

象徴例として挙がったのが、リチウムイオン電池向けの再生黒粉(ブラックマス)です 。これは単発の優遇ではなく、「資源性商品の暫定税率引下げ」という政策軸の一部として位置づけられています 。binance+2

EVや蓄電池のサプライチェーンでは、原料や中間材の関税が数ポイント動くだけで、調達先やリサイクル工程の採算が変わります。中国市場向けの素材・化学・装置企業は、販売だけでなく、現地拠点の調達コスト見直しにも直結します。

医療・民生(ヘルスケアの高度化)

人工血管や感染症関連の診断キットなど、医療の高度化とアクセス改善につながる品目も対象に含まれます 。cna+1

医療分野は、規制承認や販売チャネルの壁が高い一方、関税引下げは現地病院・代理店との価格交渉を動かす材料になり得ます。

具体例:公表資料で確認できる暫定税率(代表例)

下表は、財政部サイトに添付された「附1 进口商品暂定税率表」に記載のある代表例です。実務上は、品目の該当可否と、表中のex(号列の一部条件適用)に注意して確認してください。

品目例(中文表記)税則号列2026年MFN2026年暫定税率ビジネス上の見立て
锂离子电池用再生黑粉ex 382499996.5%3%電池リサイクル、正極材周辺のコストに影響 cna+1
未焙烧的黄铁矿250200003%0%資源性原料の調達コスト低下を後押し binance
診断用試薬(マラリア)382211003%0%医療検査領域で価格競争力が改善 binance
感染症の診断试剂盒(肝炎A/B/C、HIV、梅毒等)ex 382219003%0%検査キット分野で輸入コストが軽くなる binance
人造血管ex 902139004%2%医療機器・インプラントで採算改善余地 cna+1

日本企業の実務アクション:年明け前後にやるべきこと

自社品の中国側号列での突合

日本のHS6桁だけでは不十分です。中国側の税則号列(細分)で該当判定し、暫定税率の適用対象か確認します。ex指定品目は、仕様や用途で分かれることがあります。

価格交渉の材料化

暫定税率が下がる品目は、インコタームズと関税負担者を再確認した上で、見積の更新と顧客への説明資料を準備します。中国側買主が通関する取引でも、値引き圧力として返ってくるため、先回りが有効です。

協定税率との二重チェック

中国は2026年も、24のFTA等(34の貿易パートナー)に基づく協定税率を継続し、最不発達国43か国には100%税目で無税待遇を維持するとしています 。暫定税率だけでなく、原産地要件を満たすなら協定税率の方が有利なケースもあり得ます。news.cnyes+1

品目改編リスクの点検

税目や本国子目の見直しは、分類ミスや申告差異の火種になります 。中国向けに輸出入が多い企業ほど、マスタと通関委託先のコード体系を年初に一斉点検した方が安全です。binance

まとめ

今回の935品目の引下げは、単なる景気刺激というより、先端産業の部材調達、グリーン転換の原料確保、医療高度化を同時に進める「ターゲット型の関税設計」といえます 。cna+2

対中ビジネスでは、該当品目の突合と価格戦略の更新を、2026年1月1日の適用開始に間に合わせることが最大の実務ポイントとなります 。binance


  1. https://www.binance.com/ja/square/post/34358904320226
  2. https://www.cna.com.tw/news/acn/202512290209.aspx
  3. https://news.cnyes.com/news/id/6291766
  4. https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/us_tariff/pdf/04_1118.pdf
  5. https://www.etnet.com.hk/www/tc/ashares/news_detail.php?newsid=ETN351229774&page=1&category=%E5%85%A8%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E
  6. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/32996371811ccb00.html
  7. https://kuno-cpa.co.jp/china_blog/china-value-added-tax-law/
  8. https://tw.stock.yahoo.com/news/%E5%A4%A7%E9%99%B82026%E5%B9%B4%E9%97%9C%E7%A8%85%E8%AA%BF%E6%95%B4%E6%96%B9%E6%A1%88%E5%87%BA%E7%88%90-ecfa%E7%B9%BC%E7%BA%8C%E6%8C%89%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E5%AF%A6%E6%96%BD-093333166.html
  9. https://www.recordchina.co.jp/b944805-s12-c20-d0189.html
  10. https://www.tmi.gr.jp/uploads/2025/01/31/TMI_China_News_January_2025.pdf

台湾のCPTPP加入は今どこまで進んでいるか


2025年末時点の検討状況と、企業が押さえるべき論点

台湾は2021年9月22日、CPTPP(TPP11)への加入を寄託国ニュージーランドに正式要請しました。ds-b
しかし2025年末時点で、台湾向けの「加入作業部会(Accession Working Group:AWG)」を設置するとの公式決定は確認できておらず、加入プロセスは“申請受理後の静止状態”にとどまっています。liskul+1

2025年11月21日にオーストラリア・メルボルンで開催されたCPTPP委員会の共同声明でも、今後の優先対象として挙げられたのはウルグアイ、アラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、インドネシアの4か国であり、台湾(および中国)への直接言及はありませんでした。liskul
台湾外交部は、この点について「台湾の申請が公正に処理されていない」として遺憾の意を表明しています。liskul

以下では、台湾加入の「検討が進みにくい構造」を、CPTPPの手続と直近の公式文書・報道から整理します。ds-b+1


1. 前提:CPTPP加入は「申請=交渉開始」ではない

CPTPPは新規加入を受け入れる枠組みを持ちますが、申請が受理された時点で自動的に交渉が始まるわけではなく、加盟国が委員会で合意しない限り、AWGは設置されません。ds-b
加盟国が採択した「Accession Process(加入プロセス)」では、少なくとも次のようなポイントが明確化されています。ds-b

  • 申請(Accession Request)を受理した後、加盟国は合理的な期間内に交渉開始の可否を協議する。
  • 交渉開始で合意すれば、AWG(加入作業部会)を設置し、加入条件やスケジュールを交渉する。
  • 合意に至らない場合でも、申請国は加盟国との協議(consultations)を継続でき、委員会は後日あらためてAWG設置を判断し得る。

このため、申請後にAWGが設置されない状態は「正式な拒否」ではなく、「コンセンサス不足により入口で止まっている状態」と理解するのが実務的です。ds-b


2. 台湾加入の現在地:公式タイムラインと2025年共同声明

2021年9月:台湾が正式申請

カナダ政府が公表するCPTPP関連タイムラインによれば、台湾(正式名称:Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu)は2021年9月22日、ニュージーランドに対しCPTPPへの加入要請を提出しています。liskul+1

2024年11月:コスタリカは前進、台湾はAWG設置に至らず

2024年11月28日にカナダ・バンクーバーで開かれたCPTPP委員会の共同声明では、コスタリカについてAWGを設置し、加入交渉に入ることが合意されました。ds-b
この判断は、加盟国が新規加入の基本原則として共有する「オークランド三原則(Auckland Principles)」に基づくと説明されています。ds-b

同時期の報道では、台湾についてはAWG設置が見送られ、台湾側が「政治的圧力に屈した」との不満を示したことが伝えられています。liskul

2025年11月:優先順位が明文化され、台湾は対象外のまま

2025年11月21日にメルボルンで開催されたCPTPP委員会の共同声明は、今後の加入拡大について次の点を明確にしました。liskul

  • コスタリカのAWGに対し、2025年12月の会合で進捗報告を行うよう指示し、早期決着を目指す。
  • オークランド三原則に沿う将来の加入候補として、ウルグアイ、UAE、フィリピン、インドネシアの4か国を特定。
  • まずウルグアイとの加入プロセスを開始し、残り3か国については2026年に「適切であれば」プロセスを開始すると明記。
  • これらの決定は「他の申請の検討を妨げるものではない」としつつ、2026年前半にも会合を開いて必要な追加決定を行う意向を示す。

ただし、共同声明本文は台湾と中国に一切触れておらず、台湾外交部は「台湾の申請が再び取り上げられなかった」ことに強い不満と遺憾を表明しています。liskul
結果として、台湾は申請国でありながら、「優先して交渉を進める4か国」には含まれていない、という位置付けが公式文書上も明確になりました。liskul


3. なぜ台湾は進まないのか:検討が止まる3つの構造要因

ここからは、CPTPPの公式文書に「理由」が明示されているわけではありませんが、公開情報と各国発言から見える構造要因を3点に整理します。ds-b+1

要因1 コンセンサス要件の重さ(政治的要素)

オークランド三原則の一つは、新規加入の判断が、加盟国全員のコンセンサスに依存する点です。ds-b
台湾の案件については、中国との関係も含めて各国の立場が分かれやすく、加盟国が足並みをそろえにくいことが、台湾側の発言や国際報道から繰り返し指摘されています。liskul

台湾外交部も「政治的圧力に左右されず、台湾の実績と高水準を評価すべきだ」と訴えており、政治要因がCPTPP委員会での合意形成のハードルを押し上げている構図がうかがえます。liskul

要因2 申請国の増加と“順番付け”の制度化

2024年以降、CPTPPは協定自体の「一般見直し(General Review)」と並行して、複数の加入申請をどのような順番と基準で扱うかを制度的に整理してきました。ds-b
2024年5月の共同声明では、将来の加入を公正かつ効率的に議論するため、加盟国間で情報共有や意見交換を行う常設的な非公式フォーラム(informal standing forum)の設置が記載されています。ds-b

その延長線上で、2025年11月の共同声明は「オークランド三原則に合致する4申請国」を特定し、ウルグアイからプロセスを開始、残り3か国は2026年に検討するという工程表を示しました。liskul
台湾はこの“優先レーン”に入っておらず、「申請済みだが、いつプロセスに乗るかが未定の国」として扱われているのが現状です。liskul

要因3 “高水準”確保に向けた実務・コンプライアンス面の厳格化

CPTPP加盟国は、新規加入国に対し「高水準の自由化」とともに、実務面での信頼性も重視しており、2025年11月声明でも、違法な迂回輸出(transhipment)や関税回避を防ぎ、継続的なコンプライアンス監視を行う重要性が強調されています。liskul
台湾政府は、関税や投資、デジタル貿易などでCPTPP水準に整合する法制整備を進めていると繰り返し発信していますが、加盟国が「いつ、どの場で、それをどう検証するか(AWGの場を含めて)」については、まだ政治的合意に至っていません。liskul

このため、技術的・法的な準備だけでは解決しきれない「政治・安全保障と通商ルールが交差する領域」で、合意形成が滞っていると整理できます。liskul


4. 日本企業への実務インパクト:現在と将来で切り分ける

今起きないこと:CPTPP特恵を前提にできない

2025年末時点で台湾はCPTPPに未加入であり、日本と台湾の取引にCPTPP特恵(関税削減、域内累積原産など)を前提とすることはできません。ds-b+1
当然ながら、原産地規則の累積も台湾は対象外であり、日本企業は日台二国間あるいは他協定(例:日台の投資協定等)を前提にサプライチェーンを設計する必要があります。ds-b

将来起こり得ること:加入後の設計余地

仮に台湾が将来CPTPPに加入すれば、日本企業にとっては次のような変化が生じます。ds-b+1

  • 台湾向け輸出でCPTPP特恵税率が利用可能になることによる価格競争力の変化。
  • 電機・精密機器・電子部品など、台湾を主要な調達拠点とする産業で、CPTPPの原産地規則に基づいた「域内累積」を再設計できる余地。
  • 台湾企業をサプライチェーンの中核に据えつつ、CPTPP域内の第三国向け輸出における原産地証明戦略を最適化できる可能性。

もっとも、現時点の公式工程表には台湾向けAWG設置のタイムラインは明記されておらず、企業としては「加入前提の投資や組替え」を先行させることはリスクが大きい状況です。liskul

したがって当面の実務としては、「台湾は未加入」を前提に制度設計を行いつつ、台湾の扱いが変化する兆候をウォッチし、シナリオ別の原産地戦略をあらかじめ検討しておく、というスタンスが合理的です。liskul


5. 2026年前半が最初の山場:企業が見るべきチェックポイント

2025年11月の共同声明は、2025年12月の会合に加え、2026年前半にもCPTPP委員会の会合を開き、必要に応じて追加決定を行う意向を示しています。liskul
台湾にとっては、このタイミングが「議題に取り上げられるかどうか」を確認する最初の明確な観測点となります。liskul

企業が注視すべきポイントは次の通りです。liskul

  • 2026年前半の会合後に公表される公式文書で、台湾に関する言及や位置づけに変化があるか(例:協議の進展、AWG設置の検討に言及があるか)。
  • 新たなAWGが立ち上がる場合、その対象国の組み合わせと説明ロジック(オークランド三原則との関係や、経済・安全保障面の言及など)。
  • 加入審査において、違法な迂回輸出や関税回避防止、継続的な履行監視といったコンプライアンス論点がどの分野で強調されるか(特に電機・機械・デジタル分野)。

これらを経営・調達・通商部門の共通KPIとしてモニタリングし、台湾がCPTPPプロセスに乗った場合に備えて、原産地戦略・工場配置・調達方針の複数シナリオをあらかじめ描いておくことが、2025年末時点で企業が取り得る現実的なアクションと言えます。

地域別に見るFTAの累積ルール進化

サプライチェーン設計と関税最適化の新しい常識

サプライチェーンが多国間にまたがるほど、FTAの原産地規則は「使えるのに使えない」状態に陥りがちです 。そこで重要になるのが累積(cumulation, accumulation)です。累積は、複数国に分散した調達や加工を「ひとつの経済圏のもの」として扱えるようにし、原産性を満たしやすくします 。近年は、この累積が各地域でアップデートされています。mag.wcoomd

ポイントは、単に累積があるかどうかではなく、どの範囲まで足せるのか、どの国同士で使えるのか、いつから適用か、証明実務はどう変わるか、です。

累積とは何か

累積は一言で言えば「原産性の合算ルール」です。ただし、中身は複数の型があります。ビジネスでは、次の違いがコストに直結します。

双方累積(Bilateral Cumulation)
協定当事国同士で、相手国産の原産材料を自国産として扱える基本的な累積です 。mag.wcoomd

対角累積(Diagonal Cumulation)
同一の原産地ルールが連結する複数のFTAネットワーク内で、第三国の原産材料も合算できます。代表例が欧州周辺のPEM(Pan-Euro-Mediterranean)です 。taxation-customs.europa

全累積(Full Cumulation)
最も踏み込んだ形態で、最終的に原産材料になり切っていない中間材でも、域内で行った加工や付加価値の一部を積み上げて原産性に寄与させます 。WCOも、累積が貿易やバリューチェーンに影響する重要要素であると整理しています。aanzfta.asean

この「どこまで足せるか」が、地域別の実務差になります。

アジア太平洋

RCEP:域内原産材料の横断利用と将来の拡張検討

RCEPは双方累積規定を持ち、ある締約国で原産と認められる材料を別の締約国の生産に使った場合、最終加工国の原産として扱える設計です 。mag.wcoomd

加えて、重要なのは将来の拡張レビュー条項です。RCEPは、全署名国に発効した日から累積の適用範囲を「域内で行われた生産や付加価値全体」まで広げること(全累積)を検討するレビューを開始し、開始から5年以内に結論を出すと定めています 。RCEPは2022年1月に発効しているため、このレビューは既に進行中です 。aric.adb+1

実務上の示唆は明確です。部材調達をRCEP域内に寄せ、加工工程を分散しても、将来的には原産判定を一本の枠組みで整理できる余地が広がります 。mag.wcoomd

ASEAN域内(ATIGA):部分累積を明文化

ATIGAは「域内原産材料の合算」に加え、材料のRVCが40%に満たない場合でも、20%以上の実質域内価値があれば比例配分で累積できる仕組み(部分累積、Partial Cumulation)を置いています 。wtocenter

これは、サプライヤーが完全な原産材料を作れない場合でも、一定の域内加工があるなら原産判定に寄与させられる、という実務救済策です 。wtocenter

AANZFTA:全累積を制度として拡張、参加国の扱いに注意

AANZFTAの第2改正議定書は2025年4月21日に発効し、全累積(Full Cumulation)の運用ガイドラインが整備されました 。全累積では、参加国(Participating Party)間で、非原産材料に対する域内の加工や付加価値までRVC計算に取り込む考え方が明確化されています 。aanzfta.asean

重要なのは運用の複雑性です。全累積規定は発効から180日後(2025年10月頃)に適用開始となりますが、当事国は参加国(PP)と非参加国(NPP)に分かれます 。デフォルトでは全当事国が参加国ですが、発効後120日以内にオプトアウト(不参加通知)が可能で、後日オプトイン(参加通知後180日で適用)もできる設計です 。aanzfta.asean

さらに、第2議定書自体は批准した当事国間でのみ適用され、未批准国とは旧枠組みが残る、という並走期間が生じます 。ここを取り違えると、同じAANZFTAでも取引相手国によって累積の効き方が変わり、原産判定が崩れます。mfat

CPTPP:加入拡大で累積の地理が広がるが、発効相手の見極めが必須

英国は2024年12月15日にCPTPPに加入しました 。英国の加入は、累積できる供給網の地理を拡大させる材料です。ただし、英国と各締約国の間で協定が発効して初めて、累積を含む協定効果が使えます 。gov

2025年12月末時点で、英国はカナダとメキシコがまだ批准していないため、この2国との間ではCPTPPを使えません 。各国との発効は批准通知の寄託から60日後に適用、という枠組みです 。business+1

欧州・地中海

PEM:対角累積の本丸が、2025年にルール刷新と移行措置

PEMは、EUやEFTA、トルコ、地中海沿岸諸国などが、同一ルールのFTAネットワークを通じて対角累積を適用できる仕組みです 。taxation-customs.europa

2025年において最も重要なのは、ルール改正に伴う移行措置です。2025年1月から改正ルール(2023年版)が動く一方、2025年12月末まで旧ルール(2012年版)と新ルール(2023年版)が並行適用され、事業者が供給網に応じて選択できる移行措置が用意されています 。carina.gov+1

つまり、同じPEM圏でも、相手国やプロトコル改正状況によって「使える累積の組み合わせ」が変動し得ます 。PEMは従来から「変動幾何(Variable Geometry)」(全当事者間にFTAと同一ルールが揃うことが条件)という前提があるため、適用可否は必ずマトリクスで確認する運用が現実的です 。carina.gov+1

北米

USMCA:累積を「材料」だけでなく「工程」にも広げる発想

USMCAの累積規定は、締約国域内の生産であれば、複数国にまたがる生産でも原産になり得ることを前提にしています 。ghy

さらに重要なのは、非原産材料に対して締約国内で行った生産が、その材料自体を原産化するほど十分でなくても、最終製品の原産性に寄与し得る、という規定です 。米国CBPは、複数階層のサプライヤーにおける域内付加価値を累積的に取り込むことを明確に認めています 。customsmobile+1

自動車などの厳しいPSRがある分野では、累積は「設計と調達の自由度」を作る一方、証憑とトレーサビリティの要求も強くなります 。ghy

アフリカ

AfCFTA:大陸単一市場を前提に、累積を制度の中核へ

AfCFTAの原産地実務では、締約国を単一領域として扱うことが累積の基本要件とされ、累積が地域バリューチェーン形成の核として位置づけられています。

一方で、タリフライン全体のうち原産地規則交渉がどこまで合意済みかは実務に影響します。2025年5月時点で原産地規則は約92%のタリフラインで合意済みとされ、残り8%は自動車と繊維分野です 。最終的な完了は2026年2月が見込まれています 。thedtic+1

運用面では、WCOがAfCFTA事務局やCOMESAと連携し、累積適用の能力構築を目的とするワークショップを実施しています。制度だけでなく、税関と企業の運用力を揃えにいくフェーズに入っている、という見方ができます。

企業が今すぐやるべき実務チェックリスト

累積は使えば得ですが、間違えると否認リスクを増幅させます。着地は次の5点です。

1. 対象ルートの累積タイプを特定する
双方累積か、部分累積か、対角累積か、全累積か。協定本文と運用ガイダンスで言葉を合わせる 。wtocenter+1

2. 適用バージョンと適用相手を確定する
PEMは移行期間で旧新が並走します 。AANZFTAは第1議定書と第2議定書が並走し得ます 。CPTPPは英国との発効相手が限定されます 。gov+2

3. 原産判定ロジックをサプライチェーン図に落とす
RVCで行くかCTCで行くか。累積で足せる要素は何か。PSRとコスト情報の粒度を先に決める 。aanzfta.asean

4. サプライヤー情報の取り方を累積仕様に変える
部分累積や全累積では、単なる原産宣言だけでなく、域内価値や工程情報が必要になる局面が増えます 。wtocenter+1

5. 税関検認に耐える証憑設計にする
証明書、自己申告、サプライヤー申告、計算根拠、工程記録を、協定の記録保存要件に合わせて束ねる 。ghy

まとめ

累積の進展は、「どの国で最終組立するか」だけの話ではありません。どこで何を加工し、どの情報をサプライチェーン全体から集めるか、という経営テーマに直結します 。mag.wcoomd

地域別に見ると、RCEPは域内調達を後押しし将来の全累積レビューが進行中 、ATIGAは部分累積で域内加工を促進 、AANZFTAは全累積で域内付加価値の取り込みを広げ 、PEMはルール刷新と移行措置で運用が複雑化し 、USMCAは工程寄与まで視野に入れ 、AfCFTAは制度と運用力の両輪で整備が進んでいます 。kohantextilejournal+7


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  4. https://aric.adb.org/pdf/rcipod/episode_33/RCI-POD%20presentation.pdf
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  8. https://www.gov.uk/government/collections/the-uk-and-the-comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnershipcptpp
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  10. https://carina.gov.hr/UserDocsImages/dokumenti/CTVP/PEM-transitional%20provisions-Guidance.pdf
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【2025年版】米国相互関税の新方針と実務対応:税率「合計15%」ルールと遡及還付の現場論点

2025年から本格運用が始まった米国の「相互関税(Reciprocal Tariffs)」。
この制度で企業の明暗を分けるのは、税率の高さそのものよりも、「どの申告コード(Chapter 99)を使い、どの例外を適用し、いつの貨物まで遡れるか」という実務精度の差です。

相互関税はHTSUS第99章の追加コードで実装されますが、交渉結果や大統領令によって矢継ぎ早にルールが上書きされています。現場がこのスピードに追随できないと、過払いによるキャッシュフロー悪化、申告誤りによるペナルティ、そして数年後の事後調査(Audit)という「三重のリスク」を抱え込むことになります。

本稿では、最新の大統領令とCBPガイダンスに基づき、見落としがちな実務リスクを整理します。


1. 何が「新方針」なのか:一律課税から「トップアップ方式」へ

制度開始当初(2025年4月5日)は、原則として「一律10%の追加(9903.01.25)」という単純な構造でした。しかし、その後の交渉と7月31日の大統領令により、現在はより複雑かつ精緻な「国別調整モデル」へと移行しています。

「新方針」の核心は以下の3点です。

  1. 国別レートへの移行
    交渉状況や安全保障上の整合性を踏まえ、国ごとに調整された相互関税率(9903.01.43〜など)が適用されます。
  2. 「合計15%」の上限設計(トップアップ方式)
    EUや日本など特定のパートナー国に対し、「一般税率+相互関税=上限15%」となるよう追加税率を調整するルールが明文化されました。
  3. 迂回輸出への厳格な罰則
    第三国を経由した迂回(Transshipment)が認定された場合、通常の相互関税ではなく一律40%の懲罰的追加関税が課される仕組みが導入されました。

CBPはこれに伴い、2025年8月7日以降の輸入に対し、新しい国別コード体系(9903.02シリーズ)を適用する運用を開始しています。


2. 日本向けルールの深層:「合計15%」と遡及還付の罠

日本企業にとって最も重要なのは、9月4日の大統領令で確定した「合計15%(Top-up to 15%)」ルールです。

  • 一般税率(Col.1)が15%未満の場合:不足分のみを相互関税として上乗せし、合計で15%にする。
  • 一般税率が15%以上の場合:相互関税の追加はゼロ(免除)。

このルールは2025年8月7日の輸入分まで遡及適用(Retroactive Application)されますが、ここで実務上の「揉め事」が多発しています。

最大の論点は「還付金(Refund)の帰属」です。
過払い分の関税は、CBPから輸入者(Importer of Record)に対して還付されます。しかし、DDP取引などで輸出者が関税負担をしていた場合、あるいは事後精算条項がある場合、その還付金をサプライヤーや顧客にどう配分するか。ここが契約で曖昧なままだと、経理処理も含めて多大な調整コストが発生します。


3. 通関現場が変わる:Chapter 99コードが「主役」に

相互関税の導入により、通関申告は「第99章(Chapter 99)のコード選定」が最重要タスクとなりました。対象品目には課税コードを、対象外品目には除外コードを正確に付番する必要があります。

現場でミスが起きやすい4つのポイントを解説します。

3-1. 「例外」の適用ミスは致命傷

カナダ・メキシコ産品の除外コード(9903.01.26等)や、Annex IIリストに基づく特定品目除外(9903.01.32)は、「自動適用」ではありません。申告時に正しい除外コードを入力し忘れると、システム上で関税が計算されてしまいます。

3-2. 「日付管理」が関税額を決定する

制度変更の端境期にある貨物は、インボイス日付ではなく「輸出港の出港日」「米国港への到着日」で適用税率が決まります。特に「8月7日以前に積載され、10月5日までに輸入された貨物」への救済措置など、日付要件は極めて細かいため、B/L(船荷証券)の日付管理がそのままコストに直結します。

3-3. エントリー分割(Split Lines)の要請

製品価格の20%以上が米国原産である場合、その「米国原産部分」を相互関税の対象外にできるルールがあります。ただし、これを適用するには1つの製品を「米国原産分」と「それ以外」の2行(Two lines)に分割して申告する必要があり、インボイスの書き方から変えなければなりません。

3-4. 「チャプター99」の優先順位

セクション301、232条関税、そして今回の相互関税。複数の追加関税が重なる場合、CBPは「どの順番でコードを並べるか」を指定しています。ブローカー任せにしているとエラーの原因になるため、指示書での明確化が必要です。


4. 見落としがちな実務論点:FTZとコンプラ

4-1. FTZ(対外貿易地域)の「入域時」固定
相互関税対象品をFTZに入れる場合、”Privileged Foreign Status”(特権的外国貨物)としての登録が求められるケースがあります。これにより、税率やHS分類が入域時点で固定されるため、「出すタイミングで税率が変わるかも」という期待が通じない可能性があります。

4-2. 迂回輸出(Transshipment)のリスク管理
7月31日の大統領令以降、CBPは原産地偽装の取り締まりを強化しています。単に第三国を経由しただけでなく、「実質的な変更を伴わない加工」を経て米国へ入った貨物が迂回と認定されると、40%の追加関税(9903.02.01)が課されます。調達部門は、サプライヤーの製造工程が「原産地規則を満たす実質的変更」に該当するかどうかを、従来以上に厳格に確認する必要があります。


5. ビジネス向け実務チェックリスト

過払いとコンプラ違反を防ぐため、以下の項目を社内タスクとして定着させましょう。

  1. 影響額の試算
    輸出品目ごとに、米国HTSUSの一般税率を確認し、「合計15%」ルール適用後の最終コストを算出する。
  2. 判定ロジックの確立
    相互関税の対象か、例外(Annex IIや232条対象)か、米国原産比率は20%を超えるか等の判定フローを作成する。
  3. 通関指示書の更新
    ブローカーに対し、適用すべきChapter 99コードと、複数の追加関税がある場合の申告順序を明確に指示する。
  4. 物流証憑の保全
    救済期間の適用可否を即断できるよう、「積載日」「出港日」「到着日」が分かる書類をセットで保管する。
  5. 契約条項の点検
    遡及適用による関税還付が発生した場合、その金銭を誰に帰属させるかを売買契約や覚書で明確にする。
  6. 2026年シナリオの準備
    相互関税の法的根拠を巡る訴訟リスクも含め、制度が変更・撤廃された場合の対応(Protestによる権利保全など)を準備しておく。

まとめ

2025年の相互関税は、単なるコストアップの問題ではなく、「複雑なルールの海をどう泳ぎ切るか」というコンプライアンス能力のテストでもあります。

特に「合計15%」の遡及適用と還付実務は、企業の利益に直接影響します。足元の通関を確実に回しつつ、2026年以降の法的変動も見据えた「堅い」実務体制を構築してください。