HS2022 第36類:火薬類、火工品、マッチ、発火性合金及び調製燃料(Explosives; pyrotechnic products; matches; pyrophoric alloys; certain combustible preparations)

用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 火薬(推進薬。銃用・ロケット用などの推進目的のもの):3601
    • 調製した爆薬(推進薬以外の爆薬。ダイナマイト等の「混合物」としての爆薬):3602
    • 導火線・導爆線・雷管等(爆破の附属品):3603(HS2022では用途別に6桁が細分化)
    • 花火、信号用フレア、霧中信号用品などの火工品:3604
    • マッチ(火工品を除く):3605
    • フェロセリウム(発火石)や、一定の「調製燃料」(固形燃料・小型ライター用燃料・付け木等):3606
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 化学的に単一の化合物(原則):第28類または第29類へ(例:未調製の硝酸塩類、単一化合物の爆発性物質など)。ただし類注2(a)(b)に該当する「燃料用途の成形品」等は例外で第36類に残る
    • ニトロセルロース(綿火薬などとして言及されがちでも、物としてはプラスチック系の見出しへ):39.12
    • 写真用のせん光材料:37.07
    • 化学ルミネセンス(いわゆるケミカルライト等):38.24
    • 爆薬入りの空包、銃砲弾用の信管・カートリッジケース等:93.06
    • ライター本体・ライター部品:96.13(3606.10は「補充燃料」側の話で、ライター本体ではありません)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 化学的に単一の化合物か、調製した混合物・成形品か(類注1・2が分岐点)
    • 3606.10に当たるか(ライター補充用の容器、かつ容量300立方センチメートル以下)
    • 3604.10(花火)か3604.90(信号用等のその他の火工品)か(用途・設計思想で分岐)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 火薬類は日本では輸入許可・承認等の法規制が絡みやすく、HSの誤りが許認可・危険品輸送・保険・保管要件に波及しやすいです(通関の遅延や差止め、返送・廃棄リスクも実務上は無視できません)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):第36類は「類注」が強い類です。特に、類注1(単一化合物の原則除外)と類注2(3606の範囲を限定)が、分類先を大きく左右します。
    • GIR6(6桁の決定):HS2022では3603が6桁で細分化されたため、3603を使うときはGIR6で確実に落とし込みが必要です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途:推進(3601)か、破壊・爆破(3602)か、信号・照明・娯楽(3604)か
    • 物の状態:単一化合物(28/29へ行きやすい)か、混合物・調製品(36に入りやすい)か
    • 形状・包装:固形燃料が「タブレット状」等に成形されているか、ライター補充用の小型容器か(3606の分岐)
    • 規制・危険物情報:SDS、UN番号、危険物クラスは、HSの根拠資料としても「説明の一貫性」を作るのに有効です(ただしUN分類とHSは別体系なので、そのまま自動一致はしません)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その物は「爆発・発火・燃焼効果」を目的とした製品か、またはそれに直接使われる附属品か
    • はい:Step2へ
    • いいえ:第36類以外(例:化学ルミネセンスは38.24、写真用フラッシュは37.07など)
  • Step2:化学的に単一の化合物として提示されているか(混合物ではないか)
    • はい:原則として第28類または第29類(ただし、類注2(a)(b)に当てはまる燃料用途の成形品・小型容器入り燃料は例外で3606)
    • いいえ(混合物・調製品・完成品):Step3へ
  • Step3:4桁(項)を当てる
    • 推進薬:3601
    • 調製爆薬:3602
    • 導火線・雷管等:3603
    • 火工品(花火・信号等):3604
    • マッチ:3605
    • フェロセリウム、固形燃料、ライター補充燃料、付け木等:3606
  • Step4:6桁(号)を当てる(分岐があるのは主に3603・3604・3606)
    • 3603:用途別(導火線、導爆線、火管、雷管、イグナイター、電気雷管)
    • 3604:花火(3604.10)か、その他の火工品(3604.90)
    • 3606:小型容器入りのライター補充燃料(3606.10)か、それ以外(3606.90)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第36類と第28/29類:単一化合物か、調製品か(類注1・2)
    • 第36類と第93類:弾薬・空包・信管等(93.06)との線引き
    • 第36類と第37類:写真用フラッシュ(37.07)
    • 第36類と第38類:化学ルミネセンス、使い捨てカイロ等(38.24)
    • 第36類と第96類:ライター本体・部品(96.13)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

原則:第36類の4桁見出しは少ないため全列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3601火薬(推進薬)黒色火薬、無煙火薬、ロケット推進薬など推進目的の火薬。単一化合物は原則28/29へ。ニトロセルロースは39.12に飛びやすい点に注意
3602爆薬(調製したもの、推進薬以外)ダイナマイト、ANFO等の「混合物」としての爆薬単一化合物の爆発性物質は28/29へ(例:単体の硝酸塩など)。「調製(混合・感度調整等)」が鍵
3603導火線・導爆線・火管・雷管・イグナイター・電気雷管導火線、導爆線、雷管(電気雷管含む)などHS2022で6桁細分化(3603.10〜3603.60)。弾薬の構成品は93.06に行き得る
3604花火、信号用フレア等の火工品花火、信号用ロケット、霧中信号、玩具用雷管(ロールキャップ等)3604.10(花火)と3604.90(その他)。写真用フラッシュは37.07、化学ルミネセンスは38.24
3605マッチ(3604の火工品を除く)木軸マッチ、紙軸マッチ等ベンガルマッチ等の火工品は3604。用途・構造で見極め
3606フェロセリウム等の発火性合金、及び類注2の可燃性材料の製品発火石、固形燃料タブレット、ライター補充燃料(小型缶)、付け木類注2で範囲が限定。3606.10は「ライター補充用」かつ「300cm3以下」。ライター本体・部品は96.13

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(この類でよく効く軸)
    • 3603:機能(導火線か、導爆線か、雷管か等)
    • 3604:用途(娯楽用の「花火」か、信号・救難等の「その他」か)
    • 3606:包装・用途(ライター補充用の容器か、固形燃料の成形品か、付け木等か。特に300cm3要件)
  • 3603(HS2022)の6桁区分(業務での見分けポイント)
号(6桁)名称の要旨典型例判断に必要な情報(例)
3603.10導火線時間差で燃焼して火炎を伝える導火線構造(外被+心薬)、用途(雷管へ火炎を伝達)
3603.20導爆線爆発を伝えるコード(detonating cord)中心薬(爆薬)を持つか、爆発伝達用途か
3603.30火管打撃等で着火する小型点火具(percussion caps)製品の作動方式(打撃着火か等)
3603.40雷管(電気雷管除く)起爆用キャップ(detonating caps)電気式か否か、用途(起爆)
3603.50イグナイター点火具(igniters)何を点火する部品か、電気雷管との区別
3603.60電気雷管電気式の起爆具(electric detonators)電気点火・信号線等の仕様
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3603.10(導火線)と3603.20(導爆線)
      • どこで分かれるか:火炎伝達(燃焼)か、爆発伝達(起爆)か
      • 判断に必要な情報:用途、構造、SDS、製品仕様書(「爆発を伝える」記載の有無)
      • 典型的な誤り:ケーブル状だから導爆線と決め打ちする(実は導火線)
    2. 3603.40(雷管)と3603.60(電気雷管)
      • どこで分かれるか:電気式で起爆するか
      • 判断に必要な情報:電気点火の有無、リード線、点火方式の説明資料
      • 典型的な誤り:商品名に「雷管」とあるだけで電気式の判定をしない
    3. 3604.10(花火)と3604.90(その他の火工品)
      • どこで分かれるか:娯楽用の花火か、信号・救難・霧中信号等の用途か
      • 判断に必要な情報:用途(玩具・娯楽か、救難信号か)、取扱説明、認証情報、カタログ
      • 典型的な誤り:発光するから全部「花火」としてしまう(信号用フレア等が混在)
    4. 3606.10(ライター補充燃料)と3606.90(その他)
      • どこで分かれるか:容器が「ライターの充てんに使用する種類」かつ「300cm3以下」か
      • 判断に必要な情報:容器容量(仕様・表示)、用途表示(refill/for lighters 等)、販売形態
      • 典型的な誤り:小型ガス缶だから3606.10とする(用途がライター補充ではない/容量要件を満たさない)
    5. 3604(火工品)と38.24(化学ルミネセンス等)
      • どこで分かれるか:燃焼・爆発で光るか、化学反応(ルミネセンス)で光るか
      • 判断に必要な情報:発光原理、SDS、構造(火薬の有無)
      • 典型的な誤り:光る棒状製品を花火扱いにする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第36類は第6部(化学工業品等)の中にあり、部注には「セット」や「小売用包装」など、化学品でよく出る論点が整理されています。特に、複数の成分がセットで提示され混合して使うタイプは、一定条件のもと「混合後の製品」を基準に分類する考え方が示されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 火薬類そのものというより、化学品全般に共通する注意点ですが、同梱セット・小分け包装・用途表示が分類根拠になり得ます。第36類では、3606の「燃料用途の成形品」や「小型容器入り燃料」がまさに包装・形状で範囲が決まるため、部注の考え方(包装や提示方法が分類に影響し得る)を意識しておくと整理が楽になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第36類の外形に見えても、実質が写真用フラッシュ(37.07)や化学ルミネセンス(38.24)なら、その見出しへ行きます(除外の考え方の具体例として有用です)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:この類は、原則として「化学的に単一の化合物」を含みません(例外は類注2(a)(b)に該当するもの)。つまり、単体化学品は28/29へ行きやすく、36類は「混合物」や「完成品」に寄りやすい、という大原則です。
    • 類注2:3606の「可燃性材料の製品」を、(a)固形燃料等、(b)小型ライター用燃料(300cm3以下)、(c)付け木等に限定しています。3606に入るかどうかは、この限定に当たるかが全てです。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 3606の「可燃性材料の製品」は、類注2に列挙される範囲に限る、という定義運用になります(列挙外は「可燃性」でも原則対象外)。
    • 300立方センチメートル(300cm3)要件は、容器容量で客観的に判断します。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 写真用のせん光材料:37.07
    • 化学ルミネセンス製品:38.24
    • 弾薬関連(空包、信管、カートリッジケース等):93.06
    • ライター本体・部品:96.13
    • ニトロセルロース(綿火薬など):39.12

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:単一化合物か、調製品か(類注1)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 成分表(単一物質か混合か)
      • SDS(化学品名、組成、混合物区分)
      • 製造工程(混合・感度調整・成形の有無)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS、仕様書、COA(分析証明)、配合表、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • 爆発性があるという理由だけで3602へ入れてしまう(実際は単一化合物で28/29へ)
  • 影響ポイント2:3606の範囲限定(類注2)と「300cm3」要件
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 用途表示(ライター補充用か)
      • 容器容量(300cm3以下か)
      • 形状(固形燃料がタブレット等か)
    • 現場で集める証憑:
      • 容器仕様(寸法・容量)、ラベル、外箱表示、製品写真、SDS
    • 誤分類の典型:
      • 小型の燃料缶というだけで3606.10としてしまい、容量要件や用途要件を落とす
  • 影響ポイント3:3604の「花火」か「その他火工品」か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 使用目的(娯楽用か、救難・信号用か)
      • 取扱説明、販売先、法規・規格上の区分(可能な範囲で)
    • 現場で集める証憑:
      • カタログ、用途説明、製品写真、輸送・保管区分資料(危険品情報)
    • 誤分類の典型:
      • 「発光=花火」で3604.10に固定してしまい、信号用フレア等を混在させる

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:単一化合物の爆発性物質を3602(爆薬)に入れる
    • なぜ起きる:名称が「爆薬」っぽい、危険物だから36類だと思い込む
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注1により、単一化合物は原則として36類に入らず、28/29へ行きます(例外は3606の一部)。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • SDSで「単一物質」か「混合物」かを確認
      • 社内質問例:配合して感度調整していますか。成形して燃料用途ですか。
  2. 間違い:綿火薬(ニトロセルロース)を3601(火薬)に入れる
    • なぜ起きる:「火薬」という用途イメージで分類してしまう
    • 正しい考え方:ニトロセルロースは36類から除外され、39.12が示されています。
    • 予防策:
      • 製品が「ニトロセルロース樹脂」なのか「推進薬として調製済み」なのかを分けて資料化
  3. 間違い:弾薬・空包・信管などを3603/3602に入れる
    • なぜ起きる:中に火薬が入っているので同じと考える
    • 正しい考え方:弾薬等は93.06へ除外され得ます(日本の解説でも明示)。
    • 予防策:
      • 社内質問例:最終用途は弾薬(カートリッジ)ですか。薬室・ケースを伴いますか。
  4. 間違い:玩具用の雷管(ロールキャップ等)を3605(マッチ)に入れる
    • なぜ起きる:「点火」「小型」で近いと感じる
    • 正しい考え方:玩具用雷管は火工品として3604に含まれる例が示されています。
    • 予防策:
      • 製品がマッチか火工品か(燃焼の効果・構造)を写真付きで整理
  5. 間違い:写真用フラッシュ材料を3604に入れる
    • なぜ起きる:「せん光=火工品」と短絡する
    • 正しい考え方:写真用のせん光材料は37.07へ除外されます。
    • 予防策:
      • 社内質問例:写真撮影・撮影機材向けの消耗材ですか。
  6. 間違い:ケミカルライト(化学ルミネセンス)を3604に入れる
    • なぜ起きる:「光る=火工品」と思い込む
    • 正しい考え方:化学ルミネセンス現象で光る製品は38.24へ除外されます。
    • 予防策:
      • 発光原理(燃焼か化学反応か)を仕様書で確認
  7. 間違い:使い捨てカイロを3606(調製燃料)に入れる
    • なぜ起きる:「熱を出す=燃料」と捉える
    • 正しい考え方:光や炎を出さない発熱反応で熱を生じる使い捨てカイロは38.24へ除外されます。
    • 予防策:
      • 「燃焼」か「酸化等の発熱反応」かを確認
  8. 間違い:ライター補充燃料のつもりで、容量要件を見ずに3606.10に入れる
    • なぜ起きる:商品カテゴリ名だけで分類してしまう
    • 正しい考え方:3606.10は容器容量300cm3以下に限定されています。
    • 予防策:
      • 容器容量(ml・cm3)を必ず取得し、資料に残す
      • 社内質問例:容器容量は何mlですか。用途はライター補充に限定ですか。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HSがずれると、適用すべきPSR(CTH/CTSH、RVC、工程基準など)の特定自体がずれ、原産性判断が崩れます。
  • この類は3603がHS2022で細分化されたため、協定が旧版HSを参照している場合、PSR側のコード体系に戻して評価する必要が出やすい類です。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本税関の公表資料では、協定ごとに参照HS版が異なることが明示されています(例):
    • CPTPP:HS2012
    • 日EU・EPA、日英協定、日米貿易協定:HS2017
    • RCEP:2022年12月31日まではHS2012、2023年1月1日以降はHS2022
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 日本の輸入申告では最新の国内コード(基礎はHS2022)を使う一方、PSRや譲許表は協定の参照HS版で書かれているため、同じ「製品」でもコードの見え方が変わります。
    • 第36類では、3603が典型で、HS2017では3603.00だったものがHS2022では3603.10〜3603.60に分かれています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • まず協定が参照するHS版でPSRを確認
    • 次に、WCOの相関表(correlation table)等で新旧コードの対応を把握
    • 社内のBOM・原価計算・工程記録の「品目番号」は、協定版HSと申告用HSの両方の管理ができるようにしておくと、監査・事後確認に強くなります。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 第36類は規制産品になりやすいので、原産地資料に加えて、許認可・SDS・危険物情報もセットで整備すると通関が安定します(分類根拠の説明にもなります)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(6桁細分化)3603.00 → 3603.10/20/30/40/50/603603が用途別に細分化協定参照HS版とのズレが発生しやすい。PSR調査・統計・輸出管理での粒度が上がる

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCO HS2017のChapter 36では、3603は3603.00の単一号でした。
    • WCO HS2022のChapter 36では、3603が3603.10〜3603.60に細分化されています。
    • WCOのHS2022↔HS2017相関表(Table I)でも、3603.10〜3603.60が「ex 3603.00」からの細分化であること、及び細分化の趣旨(監視・統制の目的)が示されています。
  • “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”
    • 上記WCO一次資料(HS2017章別表、HS2022章別表、相関表)を突合し、3601/3602/3604/3605/3606の構造が同一である一方、3603のみ6桁が新設された点を変更点と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第36類は、HS2007→HS2012→HS2017→HS2022の流れで見ると、見出し構造の大枠は維持され、HS2022で3603が6桁細分化されたのが目立つ変更です。

主要論点旧コード→新コード(または行き先)
HS20073603は3603.003603.00(継続)
HS20123603は3603.003603.00(継続)
HS20173603は3603.003603.00(継続)
HS20223603を用途別に細分化3603.00 → 3603.10/20/30/40/50/60

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ライター補充燃料の容量要件見落とし
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):3606.10の「300cm3以下」要件を確認せず申告(類注2(b))
    • 起きやすい状況:仕入先が複数サイズを扱っており、社内マスターが一括で3606.10になっている
    • 典型的な影響:コード修正、税率差・規制照合のやり直し、輸入許可手続きの遅延
    • 予防策:容器容量(仕様・写真)を品番ごとに保存し、マスターで条件管理する
  • 事例名:化学ルミネセンス製品を火工品として申告
    • 誤りの内容:3604に入れたが、除外(38.24)に該当
    • 起きやすい状況:商品名が「light stick」「glow stick」で発光するため花火扱いした
    • 典型的な影響:規制照合の誤り、危険品区分の誤前提、検査・補足資料要求
    • 予防策:発光原理と火薬の有無をSDSで確認
  • 事例名:単一化合物の爆発性物質を3602に入れてしまう
    • 誤りの内容:類注1の原則(単一化合物は除外)を見落とし
    • 起きやすい状況:危険物ラベルだけで分類を決める
    • 典型的な影響:税番差替え、規制・許認可の前提が崩れる
    • 予防策:混合物か単一物質かを必ず書面で確定
  • 事例名:玩具用雷管をマッチとして申告
    • 誤りの内容:3605ではなく3604側の火工品
    • 起きやすい状況:小売商品で外観が似ている
    • 典型的な影響:分類補正、危険品取り扱いの再確認
    • 予防策:構造(火工剤の有無)と用途(玩具の効果)で整理

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 火薬類取締法:火薬類の輸入には許可が必要となる場合があります(法令上の規定・運用の確認が必須)。
    • 経済産業省(貿易管理)側の手続:火薬類の輸入に関する承認・申請手続の案内が公表されています。
    • 税関で確認する他法令:火薬類取締法が輸入関係他法令として整理されています(税関での確認対象になり得る)。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く)
    • その他の許認可・届出:
      • 火薬類:用途(産業用・玩具用等)や品目により、所管官庁・都道府県等で手続が分かれ得るため、輸入前に必ず行政窓口・通関業者と手続確認が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(火薬類の輸入手続案内)
    • e-Gov法令検索(火薬類取締法、施行規則)
    • 税関(輸入関係他法令の案内)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類根拠:仕様書、SDS、製品写真、用途説明、包装仕様(容量含む)
    • 規制対応:許可申請に必要な書類、輸送危険物情報(UN番号等)、保管・輸送計画

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品の機能(推進・爆破・信号・娯楽・点火・燃料)
    • 組成(単一物質か混合物か)、SDS入手
    • 形状・包装(固形燃料の形、ライター燃料の容器容量、ラベル表示)
    • 製品写真(外観、ラベル、危険表示)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1・2を満たすか(単一化合物、3606の限定範囲)
    • 93.06、37.07、38.24、96.13等の除外に該当しないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名を用途が分かる表現に(例:signal flare / fireworks / lighter refill fuel 等)
    • 数量単位(個数・重量など)を実態に合わせる
    • 税関照会に備えて、SDS・仕様書・写真を即時提出できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版を確認(CPTPP=HS2012等)
    • HS2022申告コードと協定HSコードの対応(3603は特に注意)
    • 原産資料(BOM、工程、原価、保存)を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 火薬類取締法等の許可要否を、品目・用途・数量で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Chapter 36(0636_2022E)参照日:2026-02-21
    • WCO HS Nomenclature 2017 Chapter 36(0636_2017E)参照日:2026-02-21
    • WCO HS Nomenclature 2012 Chapter 36(0636-2012E)参照日:2026-02-21
    • WCO HS Nomenclature 2007 Chapter 36(0636_2007E)参照日:2026-02-21
    • WCO Correlation Table(HS2022↔HS2017、Table I)参照日:2026-02-21
    • WCO HS2022 Section VI Notes(0600_2022E)参照日:2026-02-21
  • 日本(税関・公的機関)のガイド
    • 税関:関税率表解説 第36類(36r.pdf)参照日:2026-02-21
    • 税関:EPA原産地規則マニュアル(協定参照HS版の一覧を含む)参照日:2026-02-21
    • 税関:税関で確認する輸入関係他法令の概要(火薬類取締法の整理)参照日:2026-02-21
  • 日本(所管省庁・法令)
    • 経済産業省:火薬類の輸入(手続案内)参照日:2026-02-21
    • e-Gov法令検索:火薬類取締法 参照日:2026-02-21
    • e-Gov法令検索:火薬類取締法施行規則 参照日:2026-02-21

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第35類:たんぱく系物質、変性でん粉、膠着剤及び酵素(Albuminoidal substances; modified starches; glues; enzymes)

用語の統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • カゼイン/カゼイナート(乳由来たんぱく質・塩)や、(条件により)カゼイングルー(3501)
    • 卵白アルブミンミルクアルブミン、(条件により)ホエイたんぱく濃縮物(WPC)(3502)
    • ゼラチン(長方形/正方形シートを含む)、アイシングラス等(3503)
    • ペプトン、その他のたんぱく質系物質(他に該当しないもの)や皮粉(3504)
    • デキストリン/変性でん粉、およびでん粉系の膠着剤(3505)
    • 調製接着剤(工業用接着剤・小売用接着剤1kg以下を含む)(3506)、酵素・調製酵素(3507)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 酵母 → 第21類(21.02)
    • (治療用・予防用に調製した)血液分画物や医薬品 → 第30類(※血液アルブミンでも用途・調製状態で分岐)
    • 洗浄用途の酵素系調製品(酵素入り洗剤など) → 第34類(例:洗浄・浸せき用)
    • なめし前処理用の酵素系調製品 → 第32類(32.02)
    • 硬化たんぱく質(硬化カゼイン/硬化ゼラチン等) → 第39類(39.13)
    • (定義を超える)でん粉分解物:還元糖が乾燥状態で10%超 → 第17類(17.02)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「ホエイたんぱく濃縮物」:乾燥基準で80%超かどうか(3502か、別章か)
    2. 「デキストリン」:還元糖(乾燥基準)が10%以下かどうか(3505か17.02か)
    3. 接着剤:小売用(1kg以下)か/2液セットか/用途が“接着”か(3506に寄るか、他章か)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 食品原料(WPC、ゼラチン、酵素、変性でん粉)は、関税だけでなく、**輸入手続(食品衛生・動物検疫)**や、**EPAのPSR(品目別規則)**にも連鎖しやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):第35類は「類注(除外規定・定義)」が強いです。例えば、酵母は21.02、洗浄用途の酵素系調製品は第34類に飛びます。
    • GIR6(号=6桁の比較):3502(卵白の乾燥/その他)や3506(小売用1kg以下/その他)など、6桁で要件が明確なものがあります。
    • (重要)Section VI 注2・注3の使いどころ
      • 注2:小売用・計量単位で販売などの理由で35.06に該当する場合、他の見出しではなく35.06に固定する趣旨です。
      • 注3:2液型接着剤(樹脂+硬化剤)のように、混合して製品(Section VI/VIIの物品)を得るセットは、条件を満たすと得られる製品の見出しで分類します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 成分(由来:乳/卵/魚/植物、たんぱく含量、糖含量、添加物)
    • 状態(乾燥/液状/シート/成形品、硬化の有無)
    • 用途(食品原料、培地、洗浄、なめし、接着、写真等)
    • 販売形態(小売包装、セット品、正味重量)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:物品が「たんぱく系物質/変性でん粉/接着剤/酵素(または調製品)」かを確認
  • Step2:第35類注の除外に当たらないか確認(酵母、医薬品、洗浄用途の酵素系調製品、硬化たんぱく質 等)
  • Step3:該当しそうな**項(3501〜3507)**を当てる
    • 乳たんぱく(カゼイン)→3501
    • アルブミン(卵白、血清、ミルク、WPC80%超)→3502
    • ゼラチン/動物にかわ→3503
    • ペプトン/その他たんぱく系物質/皮粉→3504
    • 変性でん粉/デキストリン/でん粉系のり→3505
    • 調製接着剤/小売用1kg以下接着剤→3506
    • 酵素/調製酵素→3507
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 3502(WPC80%超)↔ 04.04(WPC80%以下)
    • 3505(デキストリン)↔ 17.02(還元糖10%超)
    • 3507(酵素)↔ 第34類(酵素系洗浄調製品)/32.02(なめし前処理用酵素調製品)
    • 3503(ゼラチンシート)↔ 96.02(切抜き・成形品)/49類(印刷物)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第35類は4桁見出しが少ないため全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3501カゼイン、カゼイナート、カゼイン誘導体、カゼイングルー酸カゼイン、ナトリウムカゼイナート、工業用カゼイン糊小売用1kg以下の「接着剤」としての包装なら3506へ寄りやすい/硬化カゼインは39.13へ
3502アルブミン類(WPC80%超を含む)、アルブミナート等乾燥卵白、血清アルブミン(非治療用)、WPC(乾燥基準80%超)WPC80%超がポイント(計算方法も)/治療・予防用に調製した血液アルブミンは30類へ
3503ゼラチン、ゼラチン誘導体、アイシングラス、動物性にかわ(カゼイン糊除く)食品用ゼラチン、写真用ゼラチン、魚膠シート形状(長方形/正方形)/切抜き・成形品は96.02へ、印刷業のゼラチン製品は49類へ
3504ペプトン等、その他たんぱく質系物質(他に該当しないもの)、皮粉ペプトン(培地用)、コラーゲンペプチド原料、皮粉(タンニン定量用)食品添加目的の「調製食料品」扱いになると21.06へ行き得る/酵素は3507へ
3505デキストリン・変性でん粉、でん粉/デキストリン系の膠着剤マルトデキストリン、糊化済でん粉、アセチル化でん粉、でん粉糊デキストリン定義:還元糖10%以下/アセチル化でん粉はDS値で実務基準あり(日本)
3506調製膠着剤・調製接着剤、小売用1kg以下接着剤瞬間接着剤、エポキシ接着剤(工業用/小売用)、接着剤粉末小売用1kg以下が独立要件(3506.10)/マスチック等(32.14)や“接着性が主目的でない”調製品(38.09等)は除外
3507酵素、他に該当しない調製酵素レンネット、アミラーゼ、プロテアーゼ、酵素ブレンド洗浄用途の酵素系調製品は34類、なめし前処理用は32.02へ除外

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類でよく出る軸)
    • 含有率(乾燥基準):WPCの「ホエイたんぱく80%超」
    • 糖(還元糖)の割合(乾燥基準):デキストリン定義「10%以下」
    • 包装形態・正味重量:小売用接着剤「1kg以下」
    • 形状(シート形状/成形品):ゼラチンシート(長方形/正方形)か
    • 用途(洗浄・なめし等):酵素が“洗浄調製品”なら第34類へ
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3502(アルブミン類) vs 0404(ホエイ等)
      • どこで分かれるか:ホエイたんぱく濃縮物が「乾燥基準で80%超」かどうか。超えると3502側に入る整理です。
      • 判断に必要な情報:
        • 乾燥基準のホエイたんぱく含有率(COA/分析表)
        • 計算根拠(窒素量×換算係数など:日本の解説では計算方法の言及あり)
      • 典型的な誤り:「乳由来=第4類」と短絡して04.04へ固定する。
    2. 3505(デキストリン/変性でん粉) vs 1702(糖類)
      • どこで分かれるか:でん粉分解物のうち、還元糖(ぶどう糖換算)が乾燥基準で10%以下なら「デキストリン」扱い(3505)になり得ます。10%を超えると17.02へ。
      • 判断に必要な情報:還元糖の分析(乾燥基準、換算方法)
      • 典型的な誤り:「マルトデキストリン=必ず3505」または「糖っぽい=必ず17.02」。
    3. 3505(変性でん粉) vs 1108(でん粉)(日本で特に実務的)
      • どこで分かれるか:一般論として、変性したでん粉は3505寄りですが、アセチル化でん粉は「DS値が非常に低いと区別困難」なため、日本の分類例規ではDS値0.01以上を変性でん粉として扱う整理が示されています。
      • 判断に必要な情報:DS(Degree of Substitution)の試験成績、製造方法、用途(増粘・糊化特性など)
      • 典型的な誤り:DSや変性内容を確認せず、品名だけで3505に決めてしまう。
    4. 3506(調製接着剤) vs 39類/32.08/32.14/38.09 等
      • どこで分かれるか:
        • 「接着剤として調製されたもの」か(用途・配合・形態)
        • 小売用で1kg以下なら3506.10がまず候補
        • マスチック・充てん料的性格が強いものは32.14へ除外され得ます(税関解説で言及)。
      • 判断に必要な情報:SDS、配合(樹脂・溶剤・充填材)、用途説明(接着か、充填/シールか)、包装仕様(正味重量)
      • 典型的な誤り:「樹脂が主成分だから39類」として、調製接着剤の要件や小売条件を見落とす。
    5. 3507(酵素/調製酵素) vs 34類(洗浄調製品)/32.02(なめし前処理)
      • どこで分かれるか:第35類注で、洗浄・浸せき用途の酵素系調製品は第34類なめし前処理用の酵素系調製品は32.02へ除外されます。
      • 判断に必要な情報:用途(洗浄/工業触媒/食品加工)、添加成分(界面活性剤の有無)、商品形態(洗剤として販売か)
      • 典型的な誤り:「酵素が入っている=3507」と決め打ちする。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section VI 注2:一定の品目(例:35.06)について、小売用・計量形態等の条件で当該見出しに該当するなら、他の見出しに移さないという整理です。
    • Section VI 注3:複数構成要素を「混合して」製品を得るセットは、条件を満たすとその製品の見出しで分類します(2液接着剤などが典型)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「エポキシ樹脂+硬化剤」が同梱された2液接着剤キット:単なる樹脂や硬化剤単品ではなく、セットとして“接着剤”の性格が明確なら注3の考え方で扱います(最終的には見出し要件で3506に寄ることが多いです)。
    • 小売用チューブ入り瞬間接着剤(正味20gなど):注2の趣旨も踏まえ、小売用・1kg以下の要件を満たすなら3506.10が強い候補になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 35.06に該当する「小売用」形態の判断を落とすと、39類等に誤って寄せてしまいがちです(注2の発想でブレーキをかけるのが実務的)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第35類注1は、酵母、医薬品(血液分画物等)、なめし前処理用酵素調製品、洗浄用途の酵素調製品、硬化たんぱく質、印刷業のゼラチン製品などを除外します。
    • 第35類注2は、35.05の「デキストリン」の定義を置き、還元糖(ぶどう糖換算)が乾燥基準で10%以下とする線引きを明確化しています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「デキストリン」:でん粉分解物のうち、還元糖(ぶどう糖換算)が乾燥状態で10%以下のもの。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 酵母 → 21.02
    • 洗浄用途の酵素系調製品 → 第34類
    • なめし前処理用の酵素系調製品 → 32.02
    • 硬化たんぱく質 → 39.13
    • 印刷業のゼラチン製品 → 第49類

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:でん粉分解物が「35.05(デキストリン)」か「17.02」か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):還元糖(ぶどう糖換算)の含有率(乾燥基準)
    • 現場で集める証憑:成分表、試験成績書(糖組成・還元糖)、製造工程(酸/酵素分解の程度)
    • 誤分類の典型:「デキストリン」という商流名だけで3505にする/逆に甘いから17.02にする
    • 根拠:類注2で10%基準が示されます。
  • 影響ポイント2:WPC(ホエイたんぱく濃縮物)が「3502」か「0404」か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):乾燥基準のホエイたんぱく含有率(80%超か)
    • 現場で集める証憑:COA、窒素量からの計算根拠(換算)、製品仕様書(WPC80/WPC90等)
    • 誤分類の典型:乳由来なので第4類に固定する
    • 根拠:3502の見出しにWPCの要件が含まれ、日本の解説でも80%超/以下の分岐と計算方法の考え方が整理されています。
  • 影響ポイント3:酵素が「3507」か、用途で「32.02/34類」へ飛ぶか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):用途(なめし前処理か、洗浄用途か、その他の工業用途か)/界面活性剤の有無
    • 現場で集める証憑:SDS、用途資料、ラベル表示、販売形態(洗剤としての表示)
    • 誤分類の典型:酵素入り洗剤を3507にしてしまう
    • 根拠:類注1で用途別の除外が明確です。
  • 影響ポイント4:ゼラチンが「3503」か「96.02/49類」へ飛ぶか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):形状(長方形/正方形シートか、その他形状か)/印刷物か
    • 現場で集める証憑:写真(寸法が分かる)、製品図面、用途、加工内容(印刷、成形)
    • 誤分類の典型:円形に打ち抜いたゼラチンを3503のまま申告
    • 根拠:見出し要旨・解説で、シート形状や他類(96.02、49類)への分岐が示されています。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:WPC(高たんぱく)を0404で申告
    • なぜ起きる:乳由来=第4類という思い込み、仕様書に「WPC」としか書かれない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):3502はWPC(乾燥基準80%超)を包含する趣旨が見出しに明記されています。
    • 予防策:COAで乾燥基準たんぱく%を確認し、計算根拠(窒素換算等)も保存
  2. 間違い:マルトデキストリンを一律3505(または一律1702)にする
    • なぜ起きる:商品名が紛らわしい(糖っぽい/でん粉っぽい)
    • 正しい考え方:類注2の「還元糖10%」で線引き。超えると17.02に行き得ます。
    • 予防策:還元糖(乾燥基準)の分析結果を入手し、ロット差の有無も確認
  3. 間違い:アセチル化でん粉を“変性だから”と無条件で3505
    • なぜ起きる:変性の程度(DS値)を確認していない
    • 正しい考え方:日本の分類例規では、アセチル化でん粉はDS値0.01以上を変性でん粉として扱う整理が示されています。
    • 予防策:DS値の試験成績を必須資料化(仕様書のテンプレに組み込む)
  4. 間違い:小売用(1kg以下)の接着剤を、原料樹脂(39類)として申告
    • なぜ起きる:成分(樹脂)だけ見て用途・包装を見ない
    • 正しい考え方:35.06は「小売用で1kg以下」の接着剤を明確に含み、Section VI 注2の趣旨も踏まえます。
    • 予防策:包装形態(小売用表示、NET重量)をインボイス・仕様書に明記
  5. 間違い:2液接着剤キットを、樹脂と硬化剤で別々の品目として分類
    • なぜ起きる:出荷形態(セット)を見落とす
    • 正しい考え方:Section VI 注3は、混合して製品を得るセットの分類方針を示します。
    • 予防策:セット梱包の写真、同梱構成、混合比、用途(接着)を資料化
  6. 間違い:酵素入り洗剤を3507(酵素)で申告
    • なぜ起きる:主成分が酵素だと思い込む/洗剤としての販売実態を軽視
    • 正しい考え方:類注1で「洗浄用途の酵素系調製品」は第34類へ除外されます。
    • 予防策:界面活性剤の有無、洗浄用途表示、SDS・ラベルで用途を確認
  7. 間違い:円形に切り抜いたゼラチンシートを3503のまま申告
    • なぜ起きる:原料がゼラチンなので見出しを固定してしまう
    • 正しい考え方:3503で扱うシートは形状要件があり、切抜き・成形品は別項へ行き得ます。
    • 予防策:形状(寸法・図面)、加工内容(打ち抜き・成形)を提出資料に入れる
  8. 間違い:たんぱく質加水分解物(食品用途)を3504と決め打ち
    • なぜ起きる:「たんぱく質=第35類」という単純化
    • 正しい考え方:税関解説では、成分・用途により21.06へ除外され得る例が示されています(調製食料品の添加物として使用するもの等)。
    • 予防策:用途(食品原料か工業原料か)、食塩等の混合状況、最終製品としての提示形態を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(誤ると原産性判断が崩れます)。
  • よくある落とし穴:
    • 「最終製品HS」と「材料HS」を取り違える
    • 同じ“酵素”でも、洗剤(34類)側に落ちるとPSRが全く変わる
    • WPCの80%基準など、閾値でHSが変わるとPSRも変わります

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HS版が異なること、輸入申告は最新HSを使うことが注意書きされています。
  • 例:RCEPは譲許表がHS2012ベースで、申告時は最新HSへ読み替える必要がある旨が税関資料で説明されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①まず輸入国(日本)の最新HS(HS2022)でHS6桁を確定
    • ②協定が参照するHS版(HS2012/2017等)へ、相関表(Correlation Table)で対応付け
    • ③対応付けたコードでPSRを確認し、必要な工程・原価情報を当てはめる
    • 相関表の入手先として、WCOおよび税関の案内があります。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):工程フロー、歩留まり、外注工程、分析成績書(含有率閾値品目は特に)
  • 分類が揺れやすい品目(WPC、でん粉分解物、酵素系調製品、接着剤キット)は、分類根拠(閾値・用途・包装)もセットで保存がおすすめです。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくとも第35類のHS6桁体系)3501〜3507見出し構成・号(6桁)が同一第35類内の6桁付番は基本的に継続利用(ただし各国の国内コード改正は別途確認)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、WCO公表のHS2017版・HS2022版の第35類(Chapter 35)の見出し・号を比較すると、3501〜3507の構成は同一です。
  • また、WCOの相関表(Table I)は「HS2022で範囲が変わった、または新設されたサブヘディング」を列挙する趣旨ですが、第35類の主要コード(3501、3507等)は当該表に現れないことを確認できます(=変更対象として挙げられていない)。
  • したがって、HS2017→HS2022で第35類(HS6桁)に実務上のコード変更はないと整理できます(※国内コードは国ごとに改正あり得るため別確認)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、少なくとも公開されているWCOの各版の第35類を見る限り、3501〜3507の見出し・号の枠組みは一貫しています。
版(例)主要コードの追加・削除・再編旧コード→新コード(対応)コメント
HS2007→HS2012大きな再編なし(3501〜3507の枠組み維持)3501→3501 … 3507→3507第35類の基本体系は安定
HS2012→HS2017大きな再編なし同上見出し・号の構成が同一
HS2017→HS2022大きな再編なし同上相関表でも変更対象として現れない整理

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):WPCの80%判定を示せず通関が止まる
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):3502に入る根拠(乾燥基準80%超)を提出できず、04.04側との境界が不明確
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「Whey protein concentrate」のみ、COAなし
    • 典型的な影響:分類保留、追加資料要請、検査・分析、通関遅延
    • 予防策:COA(乾燥基準たんぱく%)と計算根拠を事前に準備・保存
  • 事例名(短く):“デキストリン”表示だが還元糖10%超で更正
    • 誤りの内容:類注2の10%基準に照らすと17.02相当だった
    • 起きやすい状況:サプライヤー名義で「dextrin」と表記されているだけ
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、以後の検査強化
    • 予防策:還元糖分析(乾燥基準)の提出、ロットばらつき確認
  • 事例名(短く):酵素入り洗剤を3507で申告し、34類へ振替
    • 誤りの内容:類注1で洗浄用途の酵素系調製品は第34類へ除外
    • 起きやすい状況:主成分が酵素で、担当者が“酵素=3507”と誤認
    • 典型的な影響:再分類、SDS確認の追加、通関遅延
    • 予防策:用途表示・界面活性剤の有無・SDSで「洗浄調製品」該当性を先に潰す
  • 事例名(短く):小売用接着剤(1kg以下)を39類で申告し差戻し
    • 誤りの内容:35.06(小売用1kg以下)を見落とし
    • 起きやすい状況:成分(樹脂)だけで分類、包装仕様書がない
    • 典型的な影響:修正申告、資料再提出、遅延
    • 予防策:包装形態(小売用、NET重量)をインボイス・Packing Listに明記

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 食品・食品添加物(ゼラチン、変性でん粉、酵素、たんぱく原料等)として輸入する場合、食品衛生法に基づく輸入届出などの手続が必要です(検疫所で受付・審査)。
    • 酵素が食品添加物(加工助剤等)として扱われる場合、関連の基準・評価の枠組みが存在します(製品の位置づけ確認が重要)。
  • 動物由来(動物検疫等)
    • ゼラチン等の動物由来原料は、品目・由来・加工度によって、動物検疫所での手続や輸入条件の確認が必要になる場合があります。
  • 化学物質管理(SDS/ラベル等)
    • 接着剤(3506)は配合化学品であることが多く、成分によっては化管法SDS制度の対象(指定化学物質を一定含有率以上含む製品など)となり、他事業者への譲渡・提供時にSDS情報提供が求められます。
    • 溶剤系接着剤は引火性等の危険有害性の観点から、輸送・保管・表示で別途要件が出ることがあります(製品SDSで確認が実務的です)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 食品等:厚生労働省(食品等輸入手続/検疫所)
    • 動物由来:農林水産省 動物検疫所
    • SDS等:経済産業省(化管法SDS制度)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 食品系:原材料表、製造方法、添加物の使用状況、成分規格、COA
    • 動物由来:原料部位・由来国、加工工程、必要に応じ輸出国証明書
    • 接着剤・化学品:SDS、成分表(秘密情報は要相談)、用途、危険有害性情報、包装仕様

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何由来の製品か(乳/卵/魚/植物/微生物)
    • 乾燥基準の含有率(WPC80%など閾値)
    • 還元糖(デキストリン10%)、DS値(アセチル化でん粉0.01)
    • 用途(食品、洗浄、なめし、接着、培地、印刷等)
    • 形状(シート/成形品/粉/液)・硬化の有無
    • 包装(小売用か、正味重量、セット品か)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第35類注の除外に当たらないか(酵母、洗浄用途酵素調製品、硬化たんぱく質等)
    • 3502↔0404、3505↔1702、3507↔34類の境界を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「WPC」「maltodextrin」「enzyme preparation」「adhesive」など曖昧品名の補足(成分・用途・閾値根拠)
    • 写真、SDS、COA、工程図(特に境界品)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定のHS版(HS2012/2017等)と最新HSのズレを確認
    • 相関表で読み替え、PSR適用コードを確定
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品用途:食品衛生法の輸入届出
    • 動物由来:動物検疫手続の要否
    • 接着剤:SDS/ラベルの義務対象確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • HS2017 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • HS2012 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • HS2007 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • Section VI Notes(注2・注3) (参照日:2026-02-20)
    • Correlation Tables HS2017–HS2022(Table Iの位置づけ説明) (参照日:2026-02-20)
    • Table I(検索上、3501/3507が現れない確認) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第35類) (参照日:2026-02-20)
    • 分類例規:アセチル化でん粉(DS値0.01) (参照日:2026-02-20)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索(HS版注意) (参照日:2026-02-20)
    • HS2022改正(税関案内) (参照日:2026-02-20)
    • RCEPとHS版の読み替え注意(税関資料) (参照日:2026-02-20)
  • 規制(食品・動物検疫・化学物質)
    • 食品等輸入手続(厚労省) (参照日:2026-02-20)
    • 動物検疫所:輸入畜産物の検査手続 (参照日:2026-02-20)
    • 動物性加工たん白質等の輸入検疫(ゼラチン等に触れる資料) (参照日:2026-02-20)
    • 化管法SDS制度(対象物質/対象事業者/Q&A) (参照日:2026-02-20)
  • その他(実務に有用)
    • 税関:事前教示回答(品目分類) (参照日:2026-02-20)
    • 税関:輸入貨物の品目分類事例 (参照日:2026-02-20)
    • 税関:関税率表解説・分類例規の案内 (参照日:2026-02-20)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。