HS2022 第92類:楽器並びにその部分品及び附属品(Musical instruments; parts and accessories of such articles)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • アコースティックピアノ(アップライト/グランド)・自動ピアノ等:9201
    • ギター、バイオリン、ハープなどの弦楽器:9202
    • 管楽器(クラリネット、トランペット、バグパイプ、アコーディオン、教会用パイプオルガン等):9205
    • 打楽器(ドラム、シンバル、マラカス等):9206
    • 音が電気的に生成される/又は電気的増幅が必須の楽器(例:電子オルガン、電子ピアノ、共鳴箱のないエレキギター等):9207
    • 部分品・付属品(弦、メトロノーム、音叉、機械式楽器用カード/ディスク/ロール等):9209
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • マイク、アンプ、スピーカー、ヘッドホン、スイッチ、ストロボスコープ等で、楽器に取り付けられていない同一キャビネットに組み込まれていないもの:第85類または第90類(例:8518等)
    • 楽器の形をしていても、材質・作り・音質等から玩具と明らかなもの9503
    • 楽器清掃用ブラシ:9603/一脚・二脚・三脚等:9620
    • 卑金属製の「はん用性の部分品(parts of general use)」や、プラスチック製の類似品:第15部または第39類(例:ねじ・ボルト等)
    • 収集品・こっとう(例:歴史的価値のある楽器、製作後100年超のアンティーク等):9705/9706
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「楽器」か「音響機器(第85/90類)」か:取り付け有無・同一キャビネット内かが鍵
    2. 電気式/電子式でないと演奏できないか(→9207)/電気装置がなくても通常の楽器として演奏できるか(→9201/9202等)
    3. 完成品か、部分品・付属品か(→9209、ただし部品でも「parts of general use」は除外)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 電子楽器・無線機能付き機器:HS分類ミス+国内規制(PSE/電波法等)対応漏れの同時発生
    • CITES対象素材(象牙・べっ甲等や対象樹種等)が含まれる楽器:通関差止・許可書不足のリスク

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+部注/類注で決める):第92類は類注の除外(第85/90類、玩具、三脚等、parts of general use等)が強く効きます。まず類注(Note 1, 2)を読み、品名よりも「実体(構造・機能)」で当てに行きます。
    • GIR6(6桁は号の文言で):例:9207.10(鍵盤でアコーディオン以外)か9207.90(その他)など、6桁は「同一レベルの号同士」で比較します。
    • GIR5(a)(ケース類の扱い):楽器用ケースは、条件を満たすと楽器と同一分類になります(「特定品用に成形/適合」「長期使用」「本体と同時提示」「通常同時販売」など)。ケースを別コードで申告しないよう要注意です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 音の生成/増幅の仕組み:電気式/電子式の機構がないと演奏できないなら9207寄り。電気装置がなくても通常の楽器として使えるなら9201/9202等の「本来の楽器」寄り。
    • 取り付け・組込みの有無:アンプやマイク等が別体なら第85/90類へ飛びやすい(同一キャビネット内かも重要)。
    • 完成品か、部分品/付属品か:弦・リード・マウスピース・メトロノーム等は9209の典型。ただし金具類は「parts of general use」該当で第15部へ行くことがあります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「楽器そのもの」?
    • YES → Step2へ
    • NO(部分品・付属品)→ 原則9209だが、**除外(parts of general use/第85/90類機器/三脚等)**に該当しないか先に確認
  • Step2:電気がないと演奏できない(音が生成される/増幅が必須)?
    • YES → 9207候補(鍵盤か否かで9207.10/9207.90
    • NO → Step3へ(9201/9202/9205/9206/9208
  • Step3:楽器のタイプで4桁(項)を決める
    • 鍵盤弦(ピアノ等)→ 9201
    • 弦楽器(ギター、バイオリン等)→ 9202
    • 管楽器→ 9205(ただし見世物オルガン等は9208側)
    • 打楽器→ 9206
    • 上記のどれにも当てにくい/機械式楽器・鳥型自動歌唱・笛など → 9208
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第92類 vs 第85類:楽器に使うアンプ・スピーカー等でも、別体なら第85類(多くは8518等)
    • 9202(弦楽器) vs 9207(電気式/電子式楽器):ピックアップ付きでも共鳴箱があり通常の弦楽器として演奏できるなら9202に残る一方、共鳴箱のないギターのような電子楽器は9207
    • 9205(管楽器) vs 9208(笛/信号用口吹き等)9208には「whistles, call horns…」等も入るため、用途・形状で要確認。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9201ピアノ(自動ピアノ含む)、ハープシコード等の鍵盤弦楽器アップライト/グランドピアノ、自動ピアノ、クラビコード等電子ピアノは9207。ピアノに電子効果装置を付ける用途でも、電子式楽器は9207とされる旨に注意。
9202その他の弦楽器ギター、バイオリン、ハープ、ウクレレ等ギター等で音が電子的に増幅されても、通常の弦楽器として演奏可能なら除外されない。一方、共鳴箱のないギター等は9207
[9203]欠番(現行HSでは使用なし)HS条文上ブラケットで表示される欠番。実務上は使用しません。
[9204]欠番(現行HSでは使用なし)同上。
9205吹奏(管)楽器(例:鍵盤付パイプオルガン、アコーディオン等を含む)、ただし見世物オルガン等を除くトランペット、クラリネット、教会用オルガン、アコーディオン、バグパイプ等見世物オルガン・機械式街頭オルガンは9208へ。9205.10の「金管」は材質より音質/構造概念(サックス等は材質が真鍮でも“金管”扱いにならないことが多い)。
9206打楽器ドラム、木琴、シンバル、カスタネット、マラカス等4桁内での6桁分岐なし(9206.00のみ)。ばち等は提示態様により注2で楽器本体に付随。
9207音が電気的に生成される、又は電気的増幅が必須の楽器電子ピアノ、電子オルガン、シンセ、共鳴箱のないエレキギター等外付けアンプ等は第85/90類(取り付けなし・同一キャビネット外)。電子/電気機構がないと演奏できない楽器が中心。
9208オルゴール、見世物オルガン/機械式街頭オルガン、機械式歌唱鳥、のこぎり琴、その他他項に入らない楽器/狩猟用デコイコール/笛・角笛など口吹き信号用オルゴール、機械式オルガン、ホイッスル、ホーン等9205の除外対象(見世物/機械式オルガン)がこちらに入る。玩具の笛は9503の可能性。
9209楽器の部分品・付属品(例:オルゴール機構、カード/ディスク/ロール)、メトロノーム、音叉、ピッチパイプ等弦、リード、マウスピース、メトロノーム、音叉、パンチカード等注2:カード/ディスク/ロールは楽器と一緒でも別扱い。また金具類は「parts of general use」除外に注意。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第92類で実際に効く軸)
    • 鍵盤か否か9207.10 vs 9207.90
    • 弓で弾くか否か9202.10 vs 9202.90
    • 金管か否か9205.10 vs 9205.90)※「金管」は材質ではなく“概念”に近い点を要注意
    • 部分品の対象楽器9209.91/92/94/99)+ 弦は独立で9209.30
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9201.xx(ピアノ等) vs 9207.xx(電気式/電子式楽器)
      • どこで分かれるか:電子ピアノは9207。一方、(アコースティック)ピアノは9201で、電気式音声変換装置や増幅装置の有無のみで直ちに9207へは行かない整理が示されています。
      • 判断に必要な情報:
        • 音源が弦打弦の機械式か(=アコースティック)/電子音源か
        • 電気機構がないと演奏できるか(電源必須か)
        • 製品仕様書(音源方式、内部構造、消音機構の有無 等)
      • 典型的な誤り:商品名が「デジタルピアノ」でも「ピアノだから9201」と短絡する
    2. 9202.90(ギター等) vs 9207.90(電気式楽器・その他)
      • どこで分かれるか:ギター等で電子的増幅があっても9202から除外されない場合がある一方、**共鳴箱を有しないギターのような電子楽器は9207**とされています。
      • 判断に必要な情報:
        • 共鳴箱(ボディ)の有無・構造(アコースティックとして成立するか)
        • アンプが必須か(仕様・カタログ記載、設計思想)
      • 典型的な誤り:ピックアップ付き=即9207と決める
    3. 9205(吹奏楽器) vs 9208(笛・口吹き信号用等/見世物オルガン等)
      • どこで分かれるか:9205は吹奏楽器全般だが、**見世物オルガン/機械式街頭オルガンは9208**に回り、9208にはホイッスル等の「口吹き信号用」も含まれます。
      • 判断に必要な情報:
        • 用途(演奏用か信号用か)
        • 構造(機械式オルガンか、通常の楽器か)
      • 典型的な誤り:ホイッスルを「管楽器」として9205に寄せる/玩具ホイッスルを9208で申告してしまう
    4. 9209(部分品・付属品)の中の 9209.94(9207用) vs 第85類(電子部品・音響機器)
      • どこで分かれるか:類注1(b)で**第85/90類のアクセサリー機器(別体)**は除外されます。例として「電子音楽モジュール(8543)」が除外例に挙げられています。
      • 判断に必要な情報:
        • “楽器用の部品/付属品”なのか、“一般の電子機器/モジュール”なのか
        • 接続方式・機能(音源モジュール、エフェクター、アンプ等)
      • 典型的な誤り:楽器用途だから電子モジュールを9209に入れてしまう

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第92類類注1(a)で出てくる「parts of general use(はん用性の部分品)」は、第15部注2で定義される“ねじ類・ばね・金具類等”を指し、楽器専用品っぽく見えても“はん用品”なら第92類から除外されます。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ギター用の金属ねじ・ボルト・ワッシャー・蝶番などが、形状・規格的に「はん用品(parts of general use)」の範囲に入る場合、9209ではなく第15部(例:7318等)に分類され得ます。
    • 逆に、“明確に楽器の機能を構成する”専用部品(例:特定機種専用の鍵盤アクション部品、特定モデル用の特殊機構部品など)は9209側で検討します(ただし電子機能部は第85類になり得る)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 9209と思った金具が、parts of general use扱いで第15部へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(類注1):
    • 第92類には含めないものとして、
      • parts of general use(第15部注2の定義)
      • 第85/90類のマイク・アンプ等(ただし「取り付けなし/同一キャビネットに組込みなし」に限る)
      • 玩具(9503)、清掃ブラシ(9603)、一脚/三脚等(9620)、収集品・こっとう(9705/9706
        が列挙されています。
  • ポイント要約(類注2):
    • 弦楽器(9202)・打楽器(9206)の演奏用の弓・ばち等は、本体と一緒に提示され、通常数量で明らかに当該楽器用なら、本体と同じ項に分類します(9209にしない)。
    • ただし、9209のカード・ディスク・ロールは、楽器と一緒でも別個の物品として扱います。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 法文レベルの厳密定義は少ないため、実務は「機能・構造・提示態様」で詰めます(例:弓/ばちの“通常数量”、電気機構が“ないと演奏できない”か等)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第85/90類の音響・測定機器(別体):第85類/第90類
    • 玩具:9503
    • ブラシ:9603/三脚等:9620
    • 収集品・こっとう:9705/9706

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:外付けのマイク/アンプ等を楽器の一部と誤認しない(類注1(b))
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 機器が楽器に取り付けられているか
      • 同一キャビネットに組み込まれているか(例:同じ筐体内か)
    • 現場で集める証憑:
      • 外観写真(取り付け状態が分かるもの)
      • 配線図、筐体構造図、製品仕様書(内蔵か別体か)
      • セット梱包の明細(同梱でも“別体”なら別分類になり得る)
    • 誤分類の典型:
      • ギター+外付けアンプを、まとめて9207で申告(アンプ側は第85類へ)
  • 影響ポイント2:弓・ばち等が「本体と同じ項」になる(類注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 本体と同時提示
      • 通常数量か(例:バイオリンに弓1本、ドラムにスティック2本など、商慣習上の妥当性)
    • 現場で集める証憑:
      • セット内容表、梱包写真、販売形態(通常同梱か)
      • カタログ(標準付属品の記載)
    • 誤分類の典型:
      • バイオリン(本体)を9202、弓を9209として分けて申告(同時提示・通常数量なら同一項扱い)
  • 影響ポイント3:「parts of general use」該当で第92類から飛ぶ(類注1(a)→第15部注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 物品がねじ・金具・ばね等の“はん用品”に当たるか(規格品か、汎用か)
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(寸法・規格)、材質表
      • 他用途に転用可能かの説明(汎用性)
    • 誤分類の典型:
      • 「楽器用だから」と、汎用ねじを9209に入れてしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:電子ピアノ(デジタルピアノ)を9201にしてしまう
    • なぜ起きる:商品名が「ピアノ」なので、鍵盤弦楽器と短絡しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):電子ピアノは9207に属する旨が明記されています。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 音源方式(打弦弦振動か、電子音源か)
      • 電源がないと演奏できるか
      • メーカー仕様書・回路/構造説明書を入手
  2. 間違い:ピックアップ付きアコギ/セミアコを9207にしてしまう
    • なぜ起きる:「電気を使う=電気楽器」と思い込みやすい
    • 正しい考え方:ギター等は電子的増幅があっても9202から除外されない場合があり、共鳴箱のないギター等が9207の例として示されています。
    • 予防策:
      • 共鳴箱の有無、アンプ必須性
      • 音が生楽器として成立するか(仕様・構造)
  3. 間違い:外付けアンプ・マイク等を楽器本体(第92類)に含めてしまう
    • なぜ起きる:「楽器セット」=同一分類と誤解
    • 正しい考え方:類注1(b)で、取り付けなし/同一キャビネット内でない音響機器等は第85/90類へ除外されます。
    • 予防策:
      • 梱包状態よりも「取り付け・組込み」を確認
      • セット明細で“別体機器”を分解して分類
  4. 間違い:バイオリン+弓(同梱)を、本体9202・弓9209に分けて申告
    • なぜ起きる:弓は「部品/付属品」と思いがち
    • 正しい考え方:類注2により、弓・ばち等は条件を満たすと本体と同じ項に分類されます。
    • 予防策:
      • 同時提示か、通常数量かを確認
      • カタログの「標準付属品」記載を保存
  5. 間違い:楽器用ケースを別HSで申告してしまう(または逆に、条件未充足なのに本体に含める)
    • なぜ起きる:ケースは“包装”と思う/または“付属品だから必ず同一”と思う
    • 正しい考え方:GIR5(a)で、特定品用に成形・長期使用・同時提示・通常同時販売などの条件を満たすと本体と同じ分類。一方で「全体の重要な特性を与える容器」等は例外があります。
    • 予防策:
      • ケース形状(汎用バッグか、専用成形か)
      • “通常同時販売”か(販売形態・梱包)
  6. 間違い:三脚(譜面台/マイクスタンド等)を9209にしてしまう
    • なぜ起きる:「楽器周辺機器=92類」と誤解
    • 正しい考え方:類注1(d)で、一脚・二脚・三脚等は9620に除外されています。
    • 予防策:
      • “楽器の一部”か、“汎用スタンド類”かを用途・構造で確認
  7. 間違い:電子音源モジュール等を9209(楽器部品)として申告
    • なぜ起きる:「楽器用」=9209と思いがち
    • 正しい考え方:除外例として「電子音楽モジュール(8543)」が挙げられています。機能が“電子機器そのもの”なら第85類を検討。
    • 予防策:
      • 機能説明(音源生成・信号処理・増幅の別)
      • 接続I/F(MIDI、USB等)と単体機器性

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。例えば「楽器(92類)」なのか「音響機器(85類)」なのかで、適用する品目別規則(PSR)の条文・要件が変わり得ます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品は92類だが、非原産材料が85類(アンプ・電子モジュール等)に分かれる、など「材料HSの取り違え」でCTH/CTSH判定が崩れる
    • セット品で「セット全体のHS」を誤り、PSR選択がズレる(GIR3/5の見落とし)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によって採用HS版が異なり、**原産地証明書に記載すべきHSが「協定が参照する版」**である点に注意が必要です(輸入申告は最新HSで行うため、両者がズレる場面があります)。
  • 例(一次情報で確認できる範囲):
    • RCEP:PSRがHS2022に置換された版が示され、2023年1月1日から実施とされています。
    • 日EU・EPA/日英EPA等:HS2017ベースで運用される旨が整理されています(少なくとも日英EPAについてはHS2017採用が明記)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 「協定PSRのHS(旧版)」→「輸入申告のHS(新版)」へ変換が必要な場合、税関や協定当局が提供する対照表・運用文書を根拠に対応します(社内で勝手に読み替えない)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ(例):
    • BOM(材料表)、各材料の原産国、非原産材料のHS(可能なら6桁)、工程フロー、原価(RVC計算がある場合)
    • セット品の場合:セット構成、各構成品の価額・役割(重要な特性)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定ごとに保存期間や必要書類が異なるため、最新版の税関マニュアル・協定本文・運用手続を確認(疑義があれば税関相談/事前教示の活用)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(HS6桁の移動・分割等の改正セットが確認できない)Chapter 92(92019209WCOのHS2022↔HS2017相関資料上、92xxの移動・新設・削除が見当たらないため、HS6桁レベルの体系変更はないと整理できます。協定参照HS版の違いは別問題として残る(原産地証明・譲許表で要注意)。国内細分は国ごとに更新され得る。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • WCO HS2022の第92類(条文・見出し・類注)
    • WCOのHS2022↔HS2017相関資料(変更・移動が生じたコード群の対応を示す資料)
  • 上記に基づく説明:
    • HS2022の第92類の見出しは92019209で構成され、欠番[92.03][92.04]を含む点も含めて示されています。
    • 一方、HS2022↔HS2017相関資料において、第92類(92xx)に関する分割・統合・移動等の記載が確認できないため、HS2017→HS2022で第92類のHS6桁体系が変更されたとは読み取れません(=変更なし整理)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第92類は、HS2022時点での見出し(92019209)自体は大きくは変わっていない一方、類注の除外範囲見出し文言が過去改正で調整されています(実務上はここが効きます)。

版の流れ主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(または扱い)実務メモ
HS2007→HS201292.05見出し文言が「Other wind…」から、例示追加+「見世物オルガン/機械式街頭オルガン除外」を含む形へ調整コード自体(9205)は維持、見出し解釈が明確化92059208の境界(見世物/機械式オルガン)がより明確に
HS2012→HS2017以降(注:ここではHS2022条文との差分で確認)類注1(d)の除外に「一脚、二脚、三脚…(96.20)」が追加(除外先)9620への言及追加譜面台/スタンド類の誤分類が起きやすいので注意
HS2017→HS2022変更なし(上記7章参照)HS版差(協定・国内細分)は残る

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):外付けアンプを楽器(92類)に含めて申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注1(b)(取り付けなし/同一キャビネット外の音響機器は第85/90類)
    • 起きやすい状況:ギター+アンプの「初心者セット」で、インボイス品名がまとめ書き
    • 典型的な影響:修正申告、税番更正、必要に応じ追加納税、検査強化・遅延(一般論)
    • 予防策:セット明細を分解し、取り付け有無・筐体内蔵有無を写真/仕様書で説明
  • 事例名:バイオリン同梱の弓を9209として別申告
    • 誤りの内容:類注2(同時提示・通常数量の弓等は本体と同一項)
    • 起きやすい状況:物流でSKUが分かれており、システム上別行で申告
    • 影響:税番の整合性指摘、補正資料要求(一般論)
    • 予防策:標準付属品であることをカタログ・梱包写真で提示
  • 事例名:譜面台/マイクスタンドを9209で申告
    • 誤りの内容:類注1(d)(一脚/三脚等は9620
    • 起きやすい状況:楽器販売店が「付属品」として一括出荷
    • 影響:分類更正、関税・統計のやり直し(一般論)
    • 予防策:スタンド類はまず9620を当て、楽器との関連は二次的に扱う
  • 事例名:楽器用の汎用ねじを9209で申告
    • 誤りの内容:類注1(a)+第15部注2(parts of general use の除外)
    • 起きやすい状況:部品表が「楽器用ねじ」としか書かれていない
    • 影響:税番更正、説明不足による通関遅延(一般論)
    • 予防策:規格・寸法・汎用性(他用途に使えるか)を図面で説明

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 楽器そのものは一般にSPSの中心ではありませんが、動植物由来素材(例:皮革、木材、骨等)を含む場合は、別法令(動物検疫・植物防疫など)が関係する可能性があります。個別素材で確認が必要です(一般論)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • CITES対象素材を使用した楽器(部品・付属品含む)の輸出入は、原則として輸出国当局のCITES許可書等が必要で、種によっては日本側での輸入承認/事前確認が必要とされています。
    • 海外公演等で携帯して持ち出し・持ち帰りする場合は、条件を満たすと「楽器証明書制度」を使える旨が案内されています(非商業目的で、販売・譲渡目的でない等)。
    • 実務メモ:商流(販売・譲渡を伴う商業輸出入)と、演奏家の携帯(非商業)では手続が変わるため、目的を明確にして制度を選びます。
  • 電気用品安全法(PSE)等(電気/電子楽器に関係)
    • METIの「特定電気用品以外の電気用品(341品目)」の一覧に**「電子楽器」**が掲げられており、電子楽器は仕様によって電安法の対象となり得ます。
    • 電安法は改正・運用更新があり得るため、METIの電安法ポータルや手引書で最新の手続・対象範囲(型式区分等)を確認してください。
  • 電波法(無線機能付き機器:Bluetooth、無線送受信等)
    • 楽器に無線機能(例:Bluetooth MIDI、無線送信機内蔵等)がある場合、電波法上の適合(技適等)の確認が必要になり得ます(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • CITES(経済産業省):楽器証明書制度、輸出入手続、FAQ
    • 電安法(経済産業省):電気用品安全法ポータル/手引書
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(電源・無線・材質)、構成部材の材質証明、写真、回路/構造説明、CITES関連書類(該当時)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何の楽器か(弦/管/打/鍵盤/機械式/信号用等)
    • 音の生成方式:電気がないと演奏できるか
    • 取り付け・内蔵:アンプ/マイク/スピーカー等が別体か同一キャビネット内か
    • 部品の場合:汎用金具(parts of general use)該当性、電子機能部の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外に当たらないか(85/90類、玩具、三脚、収集品等)
    • 類注2(弓/ばち等同梱)や、カード/ディスク/ロール別扱いを踏んでいないか
    • ケースがGIR5(a)で本体同一分類になるか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • セット内容を分解して品名・型番・数量を明記
    • 写真、仕様書、カタログ、構造説明(内蔵/別体)を準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版を確認(原産地証明書のHS)
    • BOM(非原産材料のHS含む)、工程、原価データを保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • CITES対象素材がないか(該当時は許可書・承認手続)
    • 電子楽器はPSE対象となり得る(製品仕様で判断)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO, HS Nomenclature 2022, Chapter 92(1892_2022e) (参照日:2026-03-01)
    • WCO, General Rules for the Interpretation of the Harmonized System(0001_2022e-gir) (参照日:2026-03-01)
    • WCO, HS Nomenclature 2022, Section XV Notes(parts of general use 定義) (参照日:2026-03-01)
    • WCO/Customs, HS2022↔HS2017 相関資料(HS2022-HS2017) (参照日:2026-03-01)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第92類(92r.pdf)」 (参照日:2026-03-01)
    • 税関「関税率表の解釈に関する通則(tuusoku.pdf)」 (参照日:2026-03-01)
    • 税関「EPA原産地規則マニュアル(epa.pdf)」 (参照日:2026-03-01)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関(RCEP)Product-Specific Rules(HS2022版、実施日記載あり) (参照日:2026-03-01)
    • JETRO「経済連携協定の利用」(協定ごとのHS年版差の注意) (参照日:2026-03-01)
    • JETRO「日英EPA」資料(HS2017採用の明記) (参照日:2026-03-01)
  • 規制(日本)
    • 経済産業省:ワシントン条約(CITES)手続・楽器証明書制度 (参照日:2026-03-01)
    • 経済産業省:電気用品安全法(電安法)ポータル/非特定電気用品リスト(「電子楽器」含む) (参照日:2026-03-01)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第91類:時計及びその部分品(Clocks and watches and parts thereof)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 腕時計・懐中時計・ストップウォッチ(ケース材質で 9101 / 9102 を分けます)。
    • 置時計(ウォッチムーブメント入りの置時計は 9103、それ以外の一般の時計は 9105 が中心)。
    • 車両・航空機等の計器盤用時計9104)。
    • タイムレコーダー等の時刻記録/時間間隔の測定・表示機器(条件付きで 9106)。
    • タイムスイッチ(条件付きで 9107)。
    • ムーブメント(完成品 9108/9109、未完成・セット等 9110)や、ケース・バンド・部品(91119114)。
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • スマートウォッチ(通信機能中心のウェアラブル):日本税関の分類例では 8517.62(第85類)に分類される例があります(腕時計に見えても第91類とは限りません)。
    • 歩数計9029(第90類)として除外例が明記されています。
    • 原子時計(一次基準源として同期信号生成用)8543(第85類)として除外例が明記されています。
    • 時計用ガラス・おもり:材質により他章(第91類注で除外)
    • 携帯用時計の鎖7113 または 7117(第71類)
    • はん用性の部分品(例:多くのねじ等):第15部注2の「はん用性の部分品」側へ(ただし“時計用ばね”の扱いは注意)。
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 完成品の種類:携帯用時計(9101/9102)か、置時計等(9103/9104/9105)か、記録機・スイッチ(9106/9107)か、部品(91089114)か。
    2. ケース材質9101 は「ケース全体が貴金属/貴金属張り」等に限定(類注2)。
    3. “ウォッチムーブメント”該当性(類注3のサイズ定義):9103(ウォッチムーブメント入りの時計)・9108(ウォッチムーブメント完成品)などで決定的。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • “見た目が時計”でも、通信・計測が主機能のウェアラブルは第85類/第90類側になり得る(関税率だけでなく、電波法・PSE・CITES等の周辺コンプライアンスも連鎖します)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • GIR1:見出し(項)文言と、関連する部注・類注でまず決めます。第91類は類注1〜4が強く効きます。
    • GIR6:6桁(号)は、同一レベルの号の文言・関連注で決めます。
    • GIR2(a):未完成・未組立で提示される「ムーブメントセット」等は、GIR2(a)が絡みやすく、結果として 9110 を検討する場面が多いです。
    • GIR3(b):複合機能品(典型:スマートウォッチ)は「本質的特性」で判断する枠組みが現実に使われています(日本税関分類例でもGIR1・3(b)・6の適用が示されています)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途(時間表示なのか、通信・計測が主なのか)
    • 構造(ムーブメントの種類・サイズ、同期電動機の有無)
    • 材質(特に 9101 のケース材質)
    • 状態(完成品/未完成・セット/部品単体)
    • 提示形態(時計本体とバンドが“同梱だが未装着”など)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:「時間の測定・表示・記録・切替」に関係する品か?
    • まず第91類の射程かを確認(ただし、スマートウォッチや歩数計のように他類に明確に飛ぶ例もあります)。
  • Step2:完成品か/ムーブメントか/ケース・バンドか/その他部品か
    • 完成品→91019107
    • ムーブメント→91089110
    • ケース→9111/9112、バンド→9113、その他部品→9114
  • Step3:完成品の場合の枝分かれ
    • 携帯用時計(腕時計・懐中時計等)→9101/9102(ケース材質で分岐)
    • 置時計等でウォッチムーブメント入り→9103(ただし車載等は 9104
    • 車両・航空機・宇宙機・船舶向けの計器盤用等→9104
    • その他の時計→9105(原子時計は除外例あり)
    • 時刻記録/時間間隔の測定・表示(ムーブメント又は同期電動機が要件)→9106/9107
  • Step4:類注1の除外に当たらないか最終チェック
    • 時計用ガラス・おもり/携帯用時計の鎖/はん用性の部分品/軸受関連/第85類品の扱い等。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第91類 vs 第85類:スマートウォッチ等(通信主機能なら第85類の例)。
    • 第91類 vs 第90類:歩数計のように第90類へ飛ぶ例が明記。
    • 第91類内9103(ウォッチムーブメント入りの時計)と 9105(その他の時計)の境界=類注3のサイズ定義。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

※ご指定どおり、第91類の4桁見出しは全て掲載します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9101貴金属/貴金属張りケースの携帯用時計(ストップウォッチ含む)金無垢ケース腕時計、貴金属張りケースの高級腕時計類注2で範囲が限定。「ケース全体」が要件。象眼は9102側へ。
91029101以外の携帯用時計(ストップウォッチ含む)ステンレスケース腕時計、樹脂ケース腕時計、一般のストップウォッチ9101該当しない携帯用時計は基本こちら。歩数計は除外例。
9103ウォッチムーブメントを有する時計(携帯用時計・9104除く)小型ムーブメント入り目覚まし時計、小型置時計“ウォッチムーブメント”の定義(厚さ≤12mm・幅/長さ/直径≤50mm等)で判定。
9104車両・航空機・宇宙機・船舶用等の計器盤用時計自動車ダッシュボードクロック、航空機計器時計用途・装着先が決定要素。
9105その他の時計(携帯用時計除く)掛時計、置時計、振り子時計、船舶用クロノメーター等原子時計は除外例(8543)。
9106時刻記録機・時間間隔測定/表示機(ムーブメント又は同期電動機付き)タイムレコーダー、タイムスタンプ、ピジョンタイマー等“ムーブメント又は同期電動機”が要件。
9107タイムスイッチ(ムーブメント又は同期電動機付き)タイマー付きスイッチ、時間でON/OFFするスイッチ“ムーブメント又は同期電動機”の有無を仕様で確認。
9108ウォッチムーブメント(完成品)クォーツ腕時計ムーブメント、機械式腕時計ムーブメント類注3のサイズ定義+“完成品”要件。デジタル表示部が不可分の場合の注意あり。
9109その他の時計用ムーブメント(完成品)壁掛時計のムーブメント、同期モーター時計用ムーブメントウォッチムーブメント定義に外れるもの。
9110ムーブメントセット等(未組立/一部組立/未完成/ラフ)ムーブメントセット、未完成ムーブメントGIR2(a)が絡みやすい領域。完成品 9108/9109 と混同注意。
9111携帯用時計のケース及び部分品腕時計ケース、裏ぶた、ガラス縁等ケース単体。バンドは9113。ケース用の“はん用性の部分品”(例:ケース用ばね等)は除外に注意。
9112携帯用時計以外の時計のケース等及び部分品掛時計ケース、タイムレコーダー筐体等“時計のケースに類するか”の判断が必要(計測器の筐体様式なら他類の可能性)。
9113携帯用時計のバンド・ブレスレット等及び部分品レザーバンド、金属ブレス、シリコンバンドバックル等は材質により除外(例:7115/8308)。時計と同梱でも未装着だと扱いが変わり得る点に注意。
9114その他の時計部品文字板、地板・受け、針、ぜんまい等類注1の除外(ガラス・おもり・はん用性部分品等)を落としやすい。ぜんまい等はここ(HS2022は9114.90側で処理)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • ケース材質(9101 vs 9102)
      • 9101は「貴金属/貴金属張りケース」に限定(類注2)。
      • “貴金属張り(metal clad)”は、第71類注7で「はんだ付け・ろう付け・溶接・熱間圧延等の機械的方法で貴金属被覆を付したもの」と定義されています。
      • ただし、第91類類注2が「象眼ケースは9102」と明示しており、ここは“文脈により別”の典型です。
    • “ウォッチムーブメント”該当性(9103/9108/9109等)
      • 厚さ ≤12mm、幅/長さ/直径 ≤50mm 等の寸法要件。
      • 日本税関解説では、寸法の測り方(突起部の扱い等)の実務注意が示されています。
    • 表示方式(機械式表示のみ/光電式表示のみ 等)
      • 9102.12(光電式表示のみ)等、デジタル表示の時計で効きやすい枝。
    • 完成品か未完成・セットか(9108/9109 vs 9110)
      • “完成品”の要件を満たさない場合は 9110 側へ寄ります。
    • 9114の中の重要枝
      • 9114.30(文字板)、9114.40(地板・受け)、9114.90(その他)。
      • HS2017にあった「ぜんまい等(9114.10)」はHS2022では廃止され、ぜんまい等は 9114.90 で扱うのが実務上の要点です。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9101 vs 9102
      • どこで分かれるか:ケース材質が類注2の条件を満たすか
      • 判断に必要な情報:ケースの材質構成、張り(clad)か、象眼か、裏ぶた等を含め“ケース全体”の材質。
      • 典型的な誤り:「金色=9101」と早合点(めっき・装飾は別概念になり得ます)。
    2. 9103 vs 9105
      • どこで分かれるか:置時計等がウォッチムーブメント(類注3の寸法)かどうか。
      • 判断に必要な情報:ムーブメント寸法、構造(調速機構等)、仕様書/図面。
      • 典型的な誤り:「小さい置時計=9103」と決めつけ(寸法と機構の確認不足)。
    3. 9108/9109 vs 9110
      • どこで分かれるか:完成品(complete and assembled)か、未組立/一部組立/未完成/ラフか。
      • 判断に必要な情報:部品構成、組立状態、表示部の有無(デジタル表示が不可分の場合の注意)。
      • 典型的な誤り:部材一式を「完成ムーブメント」と扱い 9108/9109 に寄せてしまう。
    4. 9113 vs 9114
      • どこで分かれるか:それがバンド/ブレスレットか(9113)、それ以外の部品か(9114)。
      • 判断に必要な情報:装着用途、形状(バンドとしての特性)、バックル等付属の材質。
      • 典型的な誤り:金属ブレスを「部品」として 9114 にしてしまう。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第91類注1(c)が参照するのが、**第15部注2(はん用性の部分品)**です。多くのねじ・ばね等は「時計っぽい用途」でも第91類に入らない可能性があります。
    • 第15部注2(b)では、ばね類のうち**“clock or watch springs”は例外的に第91.14項**とされる一方、ケース用のばね等は別扱いになり得るため、用途・部位の確認が重要です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:腕時計のムーブメント用ぜんまい/ひげぜんまい → 9114(HS2022では通常 9114.90)。
    • 例:時計ケース周りで使う“はん用性”のばね(ケース用ばね等)→ 第15部注2の対象として除外され得る(日本税関解説に注意書きあり)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • ねじ・ピン・バックル等が、はん用性の部分品(第15部)や他章の構成品として整理される。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:時計用ガラス・おもり、時計鎖、はん用性の部分品、軸受、未組立の第85類品などを除外。
    • 類注29101 はケース材質により範囲限定。象眼等は 9102
    • 類注3:ウォッチムーブメントの定義(調速機構+寸法条件)。
    • 類注4:時計用にも他用途にも使えるムーブメント・部品でも、除外(類注1)に当たらなければ第91類に分類。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「ウォッチムーブメント」=類注3の定義(厚さ・外形寸法が鍵)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 時計用ガラス・おもり(材質別)、携帯用時計の鎖(7113/7117)、軸受関連(7326/8482)、原子時計(8543 例)等。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:類注2(9101の限定)で 91019102 が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ケースの材質構成(裏ぶた等を含む)
      • “貴金属張り(clad)”か、単なる装飾・象眼か
    • 現場で集める証憑:
      • 材料証明(ミルシート/材質証明)、図面、断面構造(張り構造かどうか)、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • ケースが一部卑金属(例:裏ぶたが鋼)なのに 9101 としてしまう(税関解説で 9102 と示例)。
  • 影響ポイント2:類注3(ウォッチムーブメント定義)で 9103/91089105/9109 側が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 厚さ・幅/長さ/直径の寸法、調速機構(てん輪・水晶等)
    • 現場で集める証憑:
      • ムーブメント仕様書、寸法図、部品表、写真
      • (日本税関解説で示される)測り方の注意に沿った測定結果
    • 誤分類の典型:
      • 小型時計のつもりで 9103 に入れたが、寸法が >50mm9105/9109 側だった。
  • 影響ポイント3:類注1(c)×第15部注2(はん用性の部分品)で、部品が第91類から外れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が「はん用性の部分品」に該当するか(ねじ・ピン等)、素材(卑金属/プラ/貴金属)
      • “時計用ばね”か(ぜんまい等)/ケース用のばね等か
    • 現場で集める証憑:
      • 部品図、用途(ムーブメント内か/ケース・バンド周辺か)、材質表
    • 誤分類の典型:
      • ねじ・バックル等を「時計部品」として 9114 に寄せる(除外明記)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:スマートウォッチを 9102(腕時計)で申告してしまう
    • なぜ起きる:外観が腕時計で、時刻表示機能もあるため。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):通信機能中心のウェアラブルが **8517.62(第85類)**となる分類例が示されており、機能・構造により第91類から外れ得ます。
    • 予防策:仕様書で「無線トランシーバーの有無」「接続形態」「主要機能(通知・通話・データ送受信等)」「搭載センサー」を確認し、必要に応じて分類例や事前教示を参照。
  2. 間違い:歩数計を 91029105 に入れてしまう
    • なぜ起きる:時間表示機能が付いている/腕に装着する等、時計に近い形状のため。
    • 正しい考え方:日本税関解説で「歩数計は 9029」として除外例が明記。
    • 予防策:「時間表示=時計」と短絡しない。主目的(歩数の計測)と該当章の除外例を確認。
  3. 間違い:時計用ガラス(風防)を 9114 にしてしまう
    • なぜ起きる:「時計部品」だから第91類と思い込み。
    • 正しい考え方:類注1(a)で時計用ガラスは第91類から除外され、材質で分類。
    • 予防策:部品でも、類注の除外(ガラス・おもり・鎖等)を必ずチェック。
  4. 間違い:バンド・ブレスレットを 9114 にしてしまう
    • なぜ起きる:時計部品の一種と考える。
    • 正しい考え方:バンド・ブレスは 9113。バックル等は材質により 7115/8308 等へ外れることも明記。
    • 予防策:バンド単体か、時計本体とセットか(同梱・未装着の扱い)まで確認。
  5. 間違い:“金色のケース”を理由に 9101 にしてしまう
    • なぜ起きる:「金っぽい=貴金属」と誤認。
    • 正しい考え方:9101 は類注2で限定。さらに“貴金属張り(clad)”の定義(第71類注7)と、象眼は 9102 とする類注2の特則がある。
    • 予防策:材質証明・断面構造で「貴金属張り」か、めっき・象眼かを確認。裏ぶた材質も含め“ケース全体”で判断。
  6. 間違い:置時計を 9105 と決め打ちし、9103 を見ない
    • なぜ起きる:置時計=9105 の思い込み。
    • 正しい考え方:ウォッチムーブメント入りの時計は 9103。定義(類注3)で判定。
    • 予防策:ムーブメント寸法(≤12mm・≤50mm)と構造を確認し、9103 を必ず検討。
  7. 間違い:原子時計を 9105 としてしまう
    • なぜ起きる:名称に「時計」が入っているため。
    • 正しい考え方:日本税関解説で、一次基準源としての原子時計は 8543 として除外例が明記。
    • 予防策:用途(一次標準か、一般の時計か)と仕様(同期信号生成等)を確認。
  8. 間違い:ムーブメントセットを完成ムーブメント(9108/9109)として申告
    • なぜ起きる:部材が揃っている=完成品と誤認。
    • 正しい考え方:未組立・一部組立・未完成・ラフは 9110。GIR2(a)の考え方も絡む。
    • 予防策:組立状態、表示部の有無(不可分の表示部が欠けると完成とみなされない等)を確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(最終製品のHSが違うと、適用PSR自体が変わります)。
  • よくある落とし穴:
    • “見た目時計”で第91類と思い込み→実は第85類(スマートウォッチ例)で、PSRが全く別になる。
    • 部品のHS(例:バンド・ケース・ムーブメント)と完成品HSを取り違える。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HS版が異なり、別版で検索すると誤りがあり得る旨が明示されています。また輸入申告では最新HSを使う旨も注意書きがあります。
  • 例:CPTPPの手引きでは、掲載の関税分類番号がHS2012に従う旨の記載があります(協定運用上のHS版確認が必須)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定の採用HS版と、通関申告の最新HS(HS2022)がズレる場合、相関表・税関ガイダンスで対応関係を確認してからPSRを当てに行くのが安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ(一般論):
    • BOM(材料表)、材料ごとの原産国、非原産材料のHS、工程フロー、原価(RVC計算の場合)
  • 書類・保存(一般論):
    • 仕入書類、仕様書、製造記録、原産品申告や証明に用いた根拠資料一式(保存年限は協定・制度で異なるため要確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除(統合)9114.10HS2017で独立していた「ぜんまい等(Springs, including hair-springs)」がHS2022では独立号としては存在しないぜんまい等はHS2022では 9114.90 側で扱う運用になり、旧コード参照の社内マスタ・PSR検討でズレが出る

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017版 第91類の号一覧に 9114.10(Springs, including hair-springs)が存在。
    • WCOのHS2022版 第91類の号一覧では 9114 の内訳が 9114.30 / 9114.40 / 9114.90 で、9114.10 が存在しない。
  • 以上より、HS2017→HS2022で 9114.10 が削除され、該当物品(ぜんまい等)は 9114.90 の範囲で扱う必要があると判断しました(第91類注1(c)の“時計用ばねは第91.14項”という枠自体は維持)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(HS2007→2012→2017→2022の流れ)を、第91類の条文(号一覧)比較にもとづき整理します。

期間主要な変更旧コード → 新コード(代表)コメント
HS2007→HS20129109 の細分見直し9109.11/9109.199109.10HS2007はアラーム等の区分があり、HS2012以降は「電気式 9109.10」に整理。
HS2007→HS20129114 の細分見直し9114.20(Jewels)→(後続では 9114.90 等に包含され得る)HS2012以降の 9114 には 9114.20 が存在しない(専用号が消滅)。
HS2017→HS20229114.10 の削除9114.10 →(HS2022では 9114.90HS2022は 9114.10 がなく、9114.90 側で扱う実務。

注:上表の「旧→新」の“行き先”は、HS6桁体系で見た一般的な包含関係の整理です。個別品目は仕様により別の号・他章となり得るため、相関表や税関の運用資料で個別確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):スマートウォッチを時計(第91類)で申告して差し戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注以前に、実態が第85類(通信機器)として整理され得るのに第91類として申告。
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “watch” だけ、仕様書未添付。
    • 典型的な影響:HS更正、税額差、追加資料提出、検査・保留による遅延。
    • 予防策:無線機能・主要機能・接続形態を明記した仕様書を準備し、必要なら事前教示で確定。
  • 事例名:金色ケースを 9101 と誤認(実際は 9102
    • 誤りの内容:類注2の「ケース全体が貴金属/貴金属張り」要件の見落とし(象眼や一部卑金属ケース等)。
    • 起きやすい状況:表面処理(めっき)と“貴金属張り”の混同。
    • 影響:税番更正、原産地規則(PSR)の取り違い、社内マスタ修正。
    • 予防策:材質証明・断面構造・裏ぶた材質まで取得。
  • 事例名:ねじ等の“はん用性部分品”を 9114 で申告
    • 誤りの内容:類注1(c)および第15部注2により除外され得る物を、時計部品として申告。
    • 起きやすい状況:部品名が「時計用」とだけ書かれ、規格(一般規格品か専用品か)が不明。
    • 影響:差し戻し、分類再検討、追加資料要求。
    • 予防策:図面・用途(ムーブメント内か外か)・一般規格の有無を整理して提出。
  • 事例名:ムーブメントセットを完成ムーブメントで申告
    • 誤りの内容:9110(ムーブメントセット等)に該当する可能性があるのに 9108/9109 とした。
    • 起きやすい状況:輸送形態が「分解・未組立」、部品表が不十分。
    • 影響:税番更正、輸入許可の遅れ。
    • 予防策:組立状態の説明書、完成状態の写真、欠けている部材の有無を整理。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 時計そのものは通常SPSの中心ではありませんが、**動植物由来素材(皮革・木材等)**を使う場合は別途、輸入規制・表示・検疫の有無を確認してください(本稿では一般論に留めます)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 腕時計バンド(革・皮)や装飾に、ワニ・トカゲ等の規制対象種が含まれる場合があります。
    • METIは「規制対象か調べるには、まず学術名(ラテン語)を特定し、附属書I〜IIIの掲載状況を確認する」旨を案内しています。
    • 税関でも、絶滅のおそれのある野生動植物の輸出入規制を水際で扱う旨が案内されています。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 一般の時計は典型的には該当しにくいですが、衛星通信・暗号・高精度計測など別分野機能を持つ場合は個別確認が必要です(ここでは一般論)。
  • その他の許認可・届出
    • PSE(電気用品安全法):タイムスイッチ等が日本国内でPSE対象となる可能性があります(製品区分の一覧に「タイムスイッチ」が含まれる)。
    • 電波法(技適等):無線機能を備える機器(典型:スマートウォッチ等)は、電波法令の技術基準適合の枠組みが関係し得ます(登録証明機関による制度である旨の説明)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • CITES:経済産業省(ワシントン条約)
    • PSE:経済産業省(電気用品安全法)
    • 技適等:総務省/登録証明機関(例:TELECの案内)
    • HS分類:日本税関(関税率表解説・分類例・事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(機能・通信の有無・電源・構造)、材質証明、写真、カタログ、BOM、必要に応じCITESの種情報(学術名)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 完成品か部品か(ムーブメント/ケース/バンド/その他部品)
    • 主要機能(時間表示が主か、通信・計測が主か)
    • 材質(特にケース:貴金属/貴金属張り/卑金属/象眼/めっき)
    • ムーブメント寸法(類注3)と測り方
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(ガラス・おもり、鎖、はん用性部分品、軸受、第85類品など)
    • 9103/9105 など境界は類注3で再確認
    • 9114 は“部品なら何でも”ではない(除外多い)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「watch」「parts」だけでなく、表示方式・材質・機能・用途を追記
    • 必要に応じ仕様書・写真・材質証明を添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の採用HS版(HS2012等)と、申告HS(最新HS)のズレを確認
    • BOM、原産国、工程、原価の裏付け資料を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • CITES(バンド等の素材)
    • PSE(タイムスイッチ等)
    • 技適(無線機能品)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS Nomenclature 2017 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS Nomenclature 2012 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS Nomenclature 2007 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO「HS通則(GIR)」〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 – Section XV Notes(第15部注2:はん用性の部分品)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 – Chapter 71 Notes(注7:metal clad with precious metal の定義)〔参照日:2026-03-01〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第91類(91r)」〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関「関税率表解説・分類例(85類)」(スマートウォッチの分類例を含む)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関「品目別原産地規則(PSR)検索画面」(協定ごとのHS版注意)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関「事前教示回答(品目分類)」検索・制度案内〔参照日:2026-03-01〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関「自己申告制度」利用の手引き ~CPTPP~(HS2012参照の注意)〔参照日:2026-03-01〕
  • その他(規制)
    • 経済産業省:ワシントン条約 規制対象種の調べ方(学術名→附属書確認)〔参照日:2026-03-01〕
    • 経済産業省:電気用品安全法(特定電気用品一覧:タイムスイッチ)〔参照日:2026-03-01〕
    • TELEC:技術基準適合証明・工事設計認証(電波法令適合の証明)〔参照日:2026-03-01〕

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第90類:光学機器、写真用機器、映画用機器、測定機器、検査機器、精密機器及び医療用機器並びにこれらの部分品及び附属品(Optical, photographic, cinematographic, measuring, checking, precision, medical or surgical instruments and apparatus; parts and accessories thereof)

用語は以下で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

また、本稿は**HS(6桁)を中心に説明します。日本の輸入申告等では国内コード(9桁等)**が使われますが、国内細分は別途「国内コード」と明記します。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 眼鏡・ゴーグル・サングラス(9004)、眼鏡フレーム(9003)
    • 双眼鏡・望遠鏡(9005)※暗視鏡がここに来る例もあります(後述)
    • 顕微鏡(光学顕微鏡:9011、電子顕微鏡等:9012)
    • 医療用診断・治療機器(MRI 9018.13、超音波 9018.12、X線/CT 9022 など)
    • 流量計・圧力計・温度計などの各種計測機器(9025〜9026)
    • 自動調整器(温度調節器・圧力調整器など)(9032)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • テレビカメラ/デジタルカメラ/ビデオカメラ → 第85類 8525(類注で明示除外)
    • ビデオプロジェクター(映像信号を投影する一般の映像用)→ 第85類 8528(90.08から除外される旨が税関解説で明確)
    • フラットパネルディスプレイモジュール → 第85類 8524(HS2022で新設・定義、優先分類ルールあり)
    • 光ファイバーケーブル(8544)やコネクタ(8536)→ 第85類(類注で除外)
    • 汎用部品(ねじ、ばね等)=「parts of general use」→ 第15部(第90類注1で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 完成品か、部分品・附属品か(第90類注2で分類ルールが強制されます)
    2. 第90類に見えても、第85類(8524/8525/8528等)に“飛ぶ”除外があるか(第90類注1、及び第85類注7等)
    3. 「光学の測定・検査」系は 9013 と 9031 の境界に要注意(第90類注5で9031へ寄せるルール)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 医療機器(9018/9022等):税番誤りが、税率だけでなく薬機法対応や輸出入手続の整理にも連鎖しやすいです。
    • 分析機器(9027、とくに質量分析計9027.81):HS2022で細分が新設され、統計・管理面での取扱いが変わっています。
    • 制御機器(9032):単なる“計測”か“自動制御”かで税番が変わり、誤りが起きやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • **GIR1(見出し+注)**が最重要です。第90類は、注(Notes)による除外・優先ルール・部分品ルールが非常に強い章です(例:デジタルカメラは85.25へ、光学測定器は注5で9031へ、部分品は注2で整理)。
    • **GIR6(号レベルの決定)**も重要です。特にHS2022では、**9027.81(質量分析計)**のように6桁で新設・再編があり、旧版慣れのまま申告するとズレます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 機能(何を測る/何をするか):測定・分析・制御・医療・光学など
    • 方式(X線/超音波/MRI/レーザー等):9018/9022/9013/9030の境界に効きます。
    • 構造(装置か部品か、マウント有無、交換フィルタ等の有無)
    • 電気機器要素の強さ:第85類へ移る典型(8524/8525/8528等)があります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第90類“に見えるが除外”のチェック
    • デジタルカメラ・ビデオカメラ(8525)、ビデオプロジェクター(8528)、フラットパネルディスプレイモジュール(8524)などに該当しないか確認します。
  • Step2:完成品か/部分品・附属品か
    • 部分品の場合は第90類注2の3段階ルール((a)(b)(c))に従います。
  • Step3:4桁(項)を機能で特定
    • 光学部品(9001〜9002)、眼鏡(9003〜9004)、写真・映画(9006〜9010)、顕微鏡(9011〜9012)、レーザー等(9013)、医療(9018〜9022)、計測/分析/制御(9024〜9032)…のように“用途・機能”で当たりを付けます。
  • Step4:6桁(号)の分岐条件を確認
    • 例:質量分析計は9027.81、MRIは9018.13、CTは9022.12など、方式・種類で号が決まるものがあります。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第90類 vs 第85類(カメラ・プロジェクター・表示モジュール・光ファイバー関連)
    • 9013 vs 9031(光学の“測定・検査”をする機器)※注5の強制ルールあり
    • 9026/9025(測定) vs 9032(自動制御) ※注7の定義が効く

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

ご指定どおり、第90類の4桁(項)を全て表にしています(HS2022の条文構成上、90.09は「[90.09]」として空番扱いです)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9001光ファイバー束・偏光板・未装着光学素子偏光フィルム、コンタクトレンズ、未装着レンズ/プリズム「未装着」が要点。光ファイバーケーブルは8544等へ(注1)
9002装着光学素子(器具の部品/取付具)カメラ用レンズユニット、光学フィルタ取付済(mounted)。未装着は9001側。
9003眼鏡等のフレーム・マウント、部品眼鏡フレーム、ゴーグル枠、テンプル完成眼鏡(9004)と混同注意。
9004眼鏡・ゴーグル等(矯正/保護/その他)メガネ、保護メガネ、サングラス9004.10(サングラス)/9004.90(その他)
9005双眼鏡・単眼鏡・望遠鏡、天体観測機器等双眼鏡、天体望遠鏡、暗視鏡(例あり)銃用照準望遠鏡等は注4で9013へ。暗視鏡が9005.80に来る例あり。
9006写真機(映画用以外)・フラッシュ等フィルムカメラ、インスタントカメラ(写真)デジタルカメラは8525へ(注1)。フィルム幅等で6桁分岐。
9007映画用カメラ・プロジェクター16mm映画撮影機、映画映写機9008(静止像投影)と混同注意。
9008静止像用投影機・写真引伸機/縮小機スライドプロジェクター、引伸機ビデオプロジェクターは8528(税関解説で除外明確)。
9009[90.09]空番(HS上の予約)HS2022でも条文上は空番表示。
9010写真(映画含む)ラボ機器、ネガ観察器、投影スクリーン自動現像機、ネガトスコープ、スクリーンデジタル化された機器でも“写真ラボ用途”か要確認。
9011光学顕微鏡(複式)実体顕微鏡、研究用顕微鏡9012(非光学顕微鏡)と区別。
9012非光学顕微鏡、回折装置電子顕微鏡、回折装置9012.10/9012.90(部品)
9013レーザー(LD除く)等の光学機器(他にないもの)レーザー発振器(LD除く)、潜望鏡等HS2017までの“液晶デバイス”文言はHS2022で外れた(重要)。光学測定器は注5で9031へ。
9014方位測定コンパス、その他航法機器方向探知コンパス、航空/宇宙航法機器レーダ等は8526へ(注1)。
9015測量・気象・地球物理など(コンパス除く)、距離計トータルステーション、レベル、距離計9014(コンパス)と区別。
90165cg感度以上の天びん分析天びん9016.00の構成(HS6)。
9017製図・計算器具、手持ち長さ測定器ノギス、マイクロメータ、巻尺他章に特掲がないか確認。
9018医療・外科・歯科・獣医用器具(診断含む)超音波、MRI、注射器、カテーテル方式/用途で細分多い。MRI 9018.13の分類例あり。
9019機械療法・マッサージ等、酸素療法/人工呼吸等マッサージ器、酸素吸入装置9020(ガスマスク等)と混同注意。
9020その他の呼吸用器具・ガスマスク(一定の簡易マスク除外)交換フィルタ式防毒マスク等“機械部品も交換フィルタもない保護マスク”は除外(注の文言に沿って判断)。
9021整形外科用等、義肢、補聴器、体内植込み機器等人工関節、ペースメーカー、補聴器注6で「整形外科用」の定義あり(特殊インソール等)。
9022X線・その他電離放射線利用装置(医療用含む)X線撮影装置、CT(9022.12)、放射線治療装置HS2022で「その他の電離放射線」まで含む方向に拡大(相関表に影響記載)。
9023教育/展示用モデル等(他用途不可)解剖模型、教育用デモ装置“他用途に適する”と外れる可能性。
9024材料の機械特性試験機引張試験機、硬さ試験機90.24の範囲か、機械(84類)か要確認。
9025温度計・気圧計・湿度計等温度計、バロメータ、湿度計9032(自動制御)と混同注意。
9026流量・液位・圧力等(液体/気体)測定器流量計、圧力計、液位計“自動制御”機能が本質なら9032へ(注7)。
9027物理/化学分析機器、光・音・熱量測定、ミクロトーム等分光計、ガスクロ、pH計、ミクロトームHS2022で質量分析計9027.81新設。
9028ガス・液体・電気の供給/生産メータガスメーター、水道メーター、電力量計日本では計量法の対象となり得る(取引・証明用途等)。
9029回転数計・速度計・歩数計等、ストロボスコープタコメータ、歩数計9014/9015該当なら除外(見出しに明記)。
9030電気量測定器(9028除く)、放射線検出/測定器等オシロスコープ、スペアナ、線量計9022(放射線“利用装置”)と区別。
9031他項にない測定・検査機器、投影検査器等三次元測定機、光学投影機(検査用)注5で9013に行きそうでも“光学の測定・検査”は9031へ。
9032自動調整/制御機器サーモスタット、圧力調整器注7の定義(測って目標値維持)が核心。
9033他に特掲のない部分品・附属品汎用化していない専用品の部品等部分品は注2でまず(a)(b)判定。最後に残るものが9033。

(出典:WCO HS2022 第90類条文、および日本税関「関税率表解説・分類例規」第90類等)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

ここでは“実務で迷いやすい”分岐に絞って整理します(全号の網羅ではありません)。

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 第90類は「方式(何をどう測る/写す/投影するか)」「構造(装着/未装着、交換フィルタ有無等)」「完成品/部品」が効きます。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 9001(未装着光学素子) vs 9002(装着光学素子)
    • どこで分かれるか:
      • ざっくり「**mounted(装着/取付済)**かどうか」。
    • 判断に必要な情報:
      • 図面・写真(枠/ハウジング/マウントの有無)
      • “部品として器具に取り付ける状態か”の説明
    • 典型的な誤り:
      • フィルタ枠付きなのに9001(未装着)で申告してしまう
  2. 9003(フレーム) vs 9004(完成眼鏡)
    • どこで分かれるか:
      • レンズ等を含みそのまま着用できるか(9004)/枠のみ(9003)。
    • 判断に必要な情報:
      • セット内容(レンズ有無)、インボイス明細、写真
    • 典型的な誤り:
      • “フレーム付きレンズ”(完成品)をフレームとして9003申告
  3. 9008(静止像投影) vs 8528(映像用プロジェクター)
    • どこで分かれるか:
      • 90.08は「静止像投影」が中心(スライド等)。一方、一般のビデオプロジェクターは85.28に除外される旨が明確です。
    • 判断に必要な情報:
      • 入力信号(HDMI等の映像信号か、写真/スライド投影か)
      • 用途(会議用、映画/映像用、写真引伸用途など)
    • 典型的な誤り:
      • 「プロジェクター」という品名だけで9008に入れてしまう(映像用は8528の可能性が高い)
  4. 9013 vs 9031(光学“測定・検査”機器)
    • どこで分かれるか:
      • 注5により、光学の測定/検査機器で9013にも9031にも読めるなら9031に寄せます。
    • 判断に必要な情報:
      • “測定・検査”の有無(数値表示・検査判定・測定原理)
      • カタログ(測定精度、測定対象、検査機能)
    • 典型的な誤り:
      • “レーザーを使う検査装置”を、レーザー機器だから9013と短絡する(測定/検査なら9031寄り)
  5. 9027.81(質量分析計) vs 9027.89(その他)
    • どこで分かれるか:
      • HS2022で質量分析計が9027.81として独立しました。
    • 判断に必要な情報:
      • 方式(MSであるか)、メーカー仕様、型式
    • 典型的な誤り:
      • 旧来の感覚(“9027.80その他”)で9027.89等にしてしまう

(補足)**9032(自動制御) vs 9025/9026(測定)**も頻出です。注7の要件(測って目標値に維持する閉ループ)を満たすかで変わります。


3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第90類注3で、第16部(Section XVI)の注3・注4が第90類にも適用されるとされています。つまり、複合機能機械/システム(機能ユニット等)の考え方が第90類でも重要になります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:MRI装置は巨大電磁石+無線周波装置+ADP装置等で構成されることがある、と税関資料に例示があります。システムとしての提示形態・構成次第で判断が変わり得るので、**「セットで輸入か」「一体として特定機能を果たすか」**を整理します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第90類“部分品”でも、部品それ自体が第84/85類の見出しに入るなら、注2(a)でそちらに行く、という形で「他章に飛ぶ」ことがあります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:除外規定(デジタルカメラ等の85類、光ファイバー関連、ねじ等の汎用部品などが除外)
    • 注2:部分品・附属品の分類ルール(最重要)
    • 注4:銃用照準望遠鏡等は9005でなく9013
    • 注5:光学の測定・検査は9031へ寄せる
    • 注6:9021の「整形外科用」の定義(特殊インソール等の条件)
    • 注7:9032の定義(自動制御の範囲限定)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「orthopaedic appliances(整形外科用)」の定義は注6にあり、矯正/支持目的や、靴・インソールの条件(オーダーメイド又は大量生産でも単品提示等)が書かれています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • デジタルカメラ等→85.25、ビデオプロジェクター→85.28、光ファイバーケーブル→85.44、コネクタ→85.36、数値制御装置→85.37…など、注1(h)は“飛び先”が具体的に列挙されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:注1(除外)で第85類へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 仕様書で「デジタルカメラ機能」「映像投影」「表示モジュール」などの有無
    • 現場で集める証憑:
      • メーカー仕様書、入出力仕様(HDMI等)、構成部品表、製品写真
    • 誤分類の典型:
      • “光学っぽい”から第90類に入れてしまう(例:ビデオプロジェクター→8528)
  • 影響ポイント2:注2(部分品ルール)で9033に“落とす前”の判定が必須
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が単体で84/85/90/91の見出しに入るか(注2(a))
      • 専用品・主用性の有無(注2(b))
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、用途説明、装着対象機種一覧、部品番号、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “部品だから”と機械的に9033へ(注2の(a)(b)を見ていない)
  • 影響ポイント3:注5で9013→9031に寄せる
    • 何を見れば判断できるか:
      • 測定・検査の機能(数値化、判定、精度保証など)
    • 現場で集める証憑:
      • 測定仕様(精度・分解能)、測定原理、検査工程図
    • 誤分類の典型:
      • “レーザー装置だから9013”としてしまう(測定・検査なら9031に寄る可能性)
  • 影響ポイント4:注7で9032(自動制御)か、単なる計測(9025/9026等)かが分かれる
    • 何を見れば判断できるか:
      • センサーで測定→制御演算→アクチュエータで目標値維持、の“閉ループ”要件
    • 現場で集める証憑:
      • 制御ブロック図、I/O仕様、制御方式説明
    • 誤分類の典型:
      • “温度を測る機器”を全部温度計(9025)にする/逆に全部制御器(9032)にする

(補足:HS2022ではフラットパネルディスプレイモジュール(8524)が新設され、90.13等に分類されていたものの整理が進んだ、という改正背景が税関資料でも説明されています。)


5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:デジタルカメラを9006(写真機)にする
    • なぜ起きる:品名が「カメラ」だから
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注1(h)でデジタルカメラは8525へ除外。
    • 予防策:
      • 仕様書で撮像素子、記録方式、デジタル出力の有無を確認
      • インボイス品名に「digital camera / video camera recorder」等を明記
  2. 間違い:会議用ビデオプロジェクターを9008にする
    • なぜ起きる:「プロジェクター=9008」と短絡
    • 正しい考え方:税関解説で、90.08は静止像投影中心で、ビデオプロジェクターは85.28へ除外される整理。
    • 予防策:
      • 入力信号・用途(映像投影/静止像投影)を仕様で確定
  3. 間違い:液晶/有機ELの表示モジュールを9013にする
    • なぜ起きる:旧版(HS2017以前)の「液晶デバイス」文言の記憶
    • 正しい考え方:
      • HS2017の9013は液晶デバイスを含む文言があるが、HS2022の9013にはその文言がない。
      • HS2022で**8524(フラットパネルディスプレイモジュール)**が新設され、注7で8524優先のルール。
    • 予防策:
      • HS版(2017/2022)を混同しない
      • モジュール構造(ドライバ/制御回路の有無等)を図面で確認
  4. 間違い:光学フィルタを9001にする(実は9002)
    • なぜ起きる:「フィルタ=光学素子」の一括り
    • 正しい考え方:9001は未装着、9002は装着済で器具の部品・取付具。
    • 予防策:マウント有無、装着状態の写真を入手
  5. 間違い:眼鏡フレーム(9003)と完成眼鏡(9004)の混同
    • なぜ起きる:取引上「眼鏡」と呼ぶ
    • 正しい考え方:見出しでフレーム(9003)と完成品(9004)が分かれる。
    • 予防策:レンズ有無・セット内容を明細化
  6. 間違い:部分品は全部9033
    • なぜ起きる:部品分類が難しく“最後の受け皿”に逃げる
    • 正しい考え方:注2で(a)(b)(c)の順に判定し、最後に残るものだけが9033。
    • 予防策:部品が単体で別見出し(84/85/90/91)に入らないかチェック表を作る
  7. 間違い:放射線“利用装置”(9022)と放射線“検出/測定”(9030)の混同
    • なぜ起きる:どちらも放射線関連で紛らわしい
    • 正しい考え方:
      • 9022=X線等を利用する装置(撮影/治療など)
      • 9030=電気量測定器+放射線検出/測定器等(線量計など)
    • 予防策:装置が「発生・照射」側か「検出・計測」側かを仕様で整理
  8. 間違い:流量計/圧力計(9026)を9032(自動制御)にしてしまう/逆
    • なぜ起きる:どちらも“センサー付き”に見える
    • 正しい考え方:注7により9032は閉ループ自動制御に限定。
    • 予防策:制御ループの有無(設定値維持・制御出力)を確認
  9. 間違い:質量分析計を9027.89(その他)で申告
    • なぜ起きる:旧HSで“9027.80その他”に慣れている
    • 正しい考え方:HS2022で9027.81(質量分析計)新設
    • 予防策:HS版を確認し、改正差分表・相関表を社内で更新

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること
    • 最終製品のHS(6桁)が誤ると、PSR(CTH/RVC等)も誤り、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 「材料HS」と「完成品HS」の取り違え
    • 部品(注2の扱い)を誤って“別章”に置いてしまい、CTH判定が狂う(例:本来は完成品9018だが、部品を84/85に置くべきもの/置かないものが混ざる)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書(PSR)が参照するHS版は協定ごとに異なり得ます。HS2022の税番をそのまま当てはめず、協定の参照HS版を必ず確認してください。
  • 参考:RCEPについては、税関がHS2022への転置PSRを公表し、適用開始(2023年)を案内しています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定の参照HS版でPSR確認 → ②相関表でHS2022へ対応付け → ③“範囲変更”がある品目(例:9013/8524、9027.81新設など)は個別に検証、が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定・運用で求められる保存年限、サプライヤ証明、工程記録を整理

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除/範囲変更9006.51, 9006.52(削除)→9006.53/9006.59(範囲拡大)貿易量が小さい等の理由で9006.51/52を削除し、9006.53/59の範囲が調整された旨が相関表で説明“フィルム幅”に基づく細分運用の見直しが必要。社内マスタ更新必須。
HS2017→HS2022文言修正/範囲変更(他章新設と連動)9013(見出し文言)/8524(新設)HS2017の9013は液晶デバイス文言あり→HS2022では外れ、HS2022で8524(フラットパネルディスプレイモジュール)が新設・定義され優先ルール旧慣習で9013とする誤りが増えやすい。表示モジュールは8524/8528/8529等も含め再判定が必要。
HS2017→HS2022範囲変更9022.21 / 9022.29(拡大)+影響:9018.90(一部)9022.21/29の範囲が「X線/αβγ以外の放射線」もカバーする方向に拡大し、相関表では一部が9018.90から影響を受ける旨を記載放射線系医療装置の税番見直しが必要(特に“その他電離放射線”利用装置)。
HS2017→HS2022新設/分割9027.81(新設)/9027.89(その他)質量分析計を独立の号にし、統計把握等を容易にする目的が相関表に記載MSを扱う企業はHS6桁更新必須。輸出管理・統計・原産地判定にも影響。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、以下を突合しました:
    • WCOのHS条文(HS2017/HS2022)の見出し文言差(例:9013の液晶デバイス文言の有無)
    • 日本税関が公開するHS2022改正資料(8524新設と、90類側への影響説明)
    • HS2017→HS2022相関表(9006.51/52削除理由、9022.21/29拡大、9027.81新設の趣旨)
  • これらの資料に基づき、「コードの新設/削除」「見出し文言の変更」「範囲拡大」の有無を判断し、上表(7-1)に反映しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(可能な範囲)を、HS2007→2012→2017→2022で整理します。

時系列主要トピック旧コード → 新コード(または行き先)要点(簡潔)根拠
HS2007/2012/2017 → HS20229013の“液晶デバイス”文言の削除(他章新設と連動)9013(液晶デバイス部分)→ 主として8524等へ(要個別判定)HS2017/2012/2007では9013見出しに液晶デバイス文言があるが、HS2022の9013では外れている。HS2022で8524が新設・定義。HS2007/2012/2017条文、HS2022条文、85類注7、税関改正資料
HS2007/2012/2017 → HS20229006.51/9006.52の削除9006.51/9006.52 →(削除)→ 9006.53/9006.59へ実務的に吸収HS2007/2012/2017には9006.51/52があるがHS2022では無い。相関表で削除理由と範囲調整が説明されている。HS2007条文、HS2012条文、相関表、HS2022条文
HS2007/2012/2017 → HS2022質量分析計の号新設9027.80(その他)→ 9027.81(MS)+9027.89(その他)HS2007では9027.80に含まれていたが、HS2022で9027.81が新設。HS2007条文、HS2022条文、相関表
HS2017 → HS20229022の範囲拡大と影響9018.90(一部)→ 9022.21/29側へ影響相関表で、9022.21/29の範囲拡大(他の電離放射線)と、それに伴う影響が示されている。相関表、HS2022条文

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ビデオプロジェクターを9008で輸入申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):90.08に当てはめたが、税関解説ではビデオプロジェクターは85.28へ除外される整理
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「PROJECTOR」だけ、用途説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、分類根拠の追加提出、納期遅延(一般論)
    • 予防策:用途(静止像/映像)、入力仕様を添付し、85.28/90.08を事前に比較検討
  • 事例名:表示モジュールを9013で申告(HS2022で8524新設後も旧運用のまま)
    • 誤りの内容:HS2022で8524が新設・優先ルールがあるのに、9013(旧“液晶デバイス”感覚)にしてしまう
    • 起きやすい状況:社内HSマスタがHS2017のまま
    • 典型的な影響:税番更正、FTA原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:HS版更新、8524定義(ドライバ/制御回路等)に沿って仕様確認
  • 事例名:質量分析計を9027.89で申告
    • 誤りの内容:HS2022の9027.81新設を見落とし
    • 起きやすい状況:旧HSで“9027.80その他”のまま運用
    • 典型的な影響:統計品目の修正、輸出管理/社内審査プロセスの再確認(一般論)
    • 予防策:型式仕様でMSを確定し、9027.81を優先検討
  • 事例名:部品を一括で9033にまとめ申告
    • 誤りの内容:注2(a)(b)を見ずに“部品=9033”
    • 起きやすい状況:部品点数が多く、機能説明が不足
    • 典型的な影響:追加資料要求、分類修正、審査長期化(一般論)
    • 予防策:部品ごとに「単体で別見出しに入るか」「主用性」を整理し、注2に沿って判定

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第90類そのものは食品等ではありませんが、**医療機器(9018〜9022等)**は国内流通の前提として薬機法の枠組み(承認・認証・届出等)が絡み得ます。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 第90類では一般に中心論点になりにくいですが、素材(象牙等)を使った装飾がある場合は別途検討が必要です(一般論)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 分析機器・計測機器は安全保障貿易管理で論点になり得ます。制度自体はリスト規制+キャッチオール規制の枠組みで運用され、METIがQ&A等を公開しています。
    • ※HSコードだけで該当/非該当が決まるわけではなく、性能仕様・用途・需要者を含めて判断します(一般論)。
  • その他の許認可・届出
    • 計量法(特定計量器):取引・証明用途で使用する電力量計・水道メーター・ガスメーター等は、検定証印等が求められ、有効期限の考え方もあります。輸入・販売・使用の各段階で留意事項が整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 医療機器:厚生労働省、PMDA(審査・区分等)
    • 計量法:経済産業省(特定計量器の制度・注意喚起)
    • 安全保障貿易管理:経済産業省(Q&A等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(性能、方式、入出力)
    • 写真・図面
    • 医療機器なら承認/認証/届出状況、製造販売業の体制(当事者の役割整理)
    • 計量器なら検定・型式承認等の関連情報(該当する場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何をする機器か(測定/分析/制御/診断/治療/投影)
    • 方式(X線/超音波/MRI/レーザー等)
    • 構造(装着/未装着、交換フィルタ、表示モジュールの構成)
    • 完成品か部品か(注2を意識)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1(除外)で85類に飛ばないか(8524/8525/8528等)
    • 注5(9013↔9031)・注7(9032)に抵触していないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “projector” “sensor” “module”など曖昧語は避け、機能・方式を明記
    • カタログ/写真を添付(必要時)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版確認、相関表で転置
    • BOM・工程・原価の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 医療機器(薬機法)・計量器(計量法)・輸出管理(該当時)を並行確認

(推奨)迷う場合は税関の**事前教示制度(品目分類)**を活用し、照会に必要な情報(仕様・写真等)を揃えます。


12. 参考資料(出典)

※参照日はいずれも 2026-03-01

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 90(条文・類注)
    • HS2017 Chapter 90(9013文言比較等)
    • HS2012 Chapter 90(旧版比較)
    • HS2007 Chapter 90(旧版比較)
    • HS2022 Chapter 85(注7:8524優先等)
  • 日本税関・公的機関(分類・改正・手続)
    • 関税率表解説(第90類)
    • 分類例規(第90類:暗視鏡9005.80、MRI 9018.13等の例)
    • HS2022改正資料(8524新設と90類側への影響説明等)
    • HS2017→HS2022 相関表(9006.51/52削除、9027.81新設、9022範囲拡大等)
    • 事前教示制度(品目分類)案内・カスタムスアンサー
  • 日本:規制(計量法・薬機法・輸出管理)
    • 経済産業省:計量法(特定計量器の規制概要、検定証印等、有効期間注意)
    • 厚生労働省:医薬品・医療機器(薬機法の枠組み概要)
    • PMDA:医療機器の審査・区分(承認/認証/届出の考え方等)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理Q&A、キャッチオール関連資料
  • FTA/EPA(参考)
    • 日本税関:RCEPのHS2022転置PSR(案内)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第89類:船舶及び浮き構造物(Ships, boats and floating structures)

用語(本稿内の呼び方を統一します)

  • =Chapter、=Heading(4桁)、=Subheading(6桁)、=Section、=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 人員/貨物の輸送用の船舶(客船、フェリー、貨物船、はしけ等)→ 89.01
    • 漁船・工船(漁獲物の加工・保存用) → 89.02
    • ヨット・プレジャーボート、カヌー、櫓櫂船(膨張式ボート含む)→ 89.03
    • タグボート・プッシャー → 89.04
    • しゅんせつ船、クレーン船、浮きドック、浮遊式/潜水式の掘削・生産プラットホーム → 89.05
    • 船舶としての特性が弱い浮き構造物(浮き桟橋、ブイ、コファダム、いかだ等)→ 89.07
    • 解体目的で提示される船舶等 → 89.08
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 船舶の部分品・附属品(船体を除く):この類に入らず、構成や機能に応じ他類へ(例:プロペラは84.87、帆は63.06、いかりは73.16 等)
    • 水陸両用自動車(車両としての水陸両用)→ 第87類(部注で明記)
    • 水上機・飛行ボート → 88.02
    • 玩具のボート → 95.03、遊園地/ウォーターパークの娯楽設備用の小舟 → 95.08(部注で除外)
    • 装飾用の模型船 → 44.20、83.06 等(材質・品目により)
    • 固定式(浮遊式でも潜水式でもない)海洋掘削/生産プラットホーム → 84.30(89.05から除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「完成船」か「部分品(船体以外)」か(第89類は“部分品が原則入らない”のが最大の落とし穴)
    2. 輸送船(89.01)か、航行が従の作業船(89.05)か、停止して使う浮き構造物(89.07)か
    3. 未完成/船体/分解提示:特定の船舶の“重要な特性(essential character)”があるか(なければ89.06)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • RCEP等のPSR(品目別規則)選択が崩れる(HS違い・トランスポジション含む)
    • 輸出規制:漁船は外為法に基づく承認が必要(輸出)
    • 解体用船舶(89.08):シップ・リサイクル法や、輸出入形態によってはバーゼル法等の確認が必要

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):船舶は用途(輸送/漁業/娯楽/作業)で項が分かれるため、まず見出し文言と第89類注(注1)第17部注で枠を確定します。
    • GIR2(a)(未完成・未組立/分解提示)+類注1の組合せ:未完成船舶や分解提示が多い業界なので、「重要な特性(essential character)」の有無を中心に判断します。
    • GIR6(6桁の選択):HS2022では特に**89.03(プレジャーボート等)**が重量/長さで細分され、6桁で差が出やすいです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 主たる用途(輸送用か、作業用か、娯楽用か)
    • 航行の位置づけ(航行が主=輸送船等 / 航行が従=作業船89.05 / 停止して使用=浮き構造物89.07)
    • 状態(完成・未完成、組立済み/未組立、解体目的の提示か)
    • “部分品”か“船体/船舶そのもの”か(第89類はここが最重要)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「船舶/ボート/浮き構造物」か?
    • いいえ → 第89類以外(例:玩具ボート95.03、模型船44.20等)
  • Step2:単体で提示される「部分品・附属品(船体以外)」か?
    • はい → 原則として第89類ではなく、材質・機能により他類(例:プロペラ84.87、帆63.06等)
  • Step3:「船体」または「未完成/分解提示の船舶」か?
    • はい → 特定の船舶の重要な特性(essential character)があるかを評価
      • 重要な特性なし → 89.06
      • 重要な特性あり → その特定船舶(例:輸送船なら89.01 等)
  • Step4:完成船(または重要特性あり)なら、主用途で項(4桁)へ
    • 輸送 → 89.01/漁業・加工 → 89.02/娯楽・スポーツ → 89.03
    • タグ・プッシャー → 89.04/作業船・浮きドック・浮遊式プラットホーム → 89.05
    • その他(軍艦・救命艇・海底電線敷設船など)→ 89.06
    • 停止して使う浮き構造物 → 89.07/解体目的 → 89.08
  • Step5:号(6桁)の分岐条件(長さ・重量・モーター有無等)で確定(特に89.03)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 89.01(輸送) vs 89.05(作業船) vs 89.07(浮き構造物):航行の位置づけと設計目的で分岐
    • 第89類 vs 第87類(車両):水陸両用“自動車”は87類、ホバークラフトは設計により89類もあり得る
    • 89.05(浮遊式/潜水式プラットホーム) vs 84.30(固定式プラットホーム)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第89類の項(4桁)は全8項です。以下、全てを一覧化します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8901人員または貨物の輸送用の船舶(客船・貨物船・はしけ等)フェリー、コンテナ船、ばら積み船、はしけ、RO-RO船娯楽用(8903)や救命艇・軍隊輸送船・病院船(8906)等は除外になり得る
8902漁船、工船、漁獲物の加工・保存用の船舶トロール船、まぐろ漁船、加工工船スポーツフィッシング用は8903。漁業用でも“櫓櫂船”は8903
8903ヨット等の娯楽/スポーツ用の船舶、櫓櫂船、カヌープレジャーボート、ヨット、カヤック、膨張式ボート(RHIB含む)HS2022で号(6桁)が大きく細分(重量・長さ・モーター等)
8904タグボート、プッシャー港湾タグ、押船主用途が曳航・押航であること(一般の輸送船は8901等)
8905照明船、消防船、しゅんせつ船、クレーン船等(航行が従)、浮きドック、浮遊式/潜水式プラットホームしゅんせつ船、クレーン船、浮きドック、半潜水式掘削プラットホーム“航行以外の機能が主”が核。固定式プラットホームは84.30へ
8906その他の船舶(軍艦・救命艇等。櫓櫂船は除外)軍艦、救命艇(非櫓櫂)、海底電線敷設船、気象観測船類注1:船体/未完成/分解提示で、特定船の重要特性がなければここへ
8907その他の浮き構造物(いかだ、タンク、コファダム、浮き桟橋、ブイ等)浮き桟橋、係留ブイ、水路浮標、浮きタンク一般に使用時は停止。輸送用ポンツーンは8901、クレーン台床は8905などに分岐
8908解体用の船舶その他の浮き構造物解撤(ship breaking)向けの廃船「解体目的で提示」されることが前提。装備品が事前に撤去されていても該当し得る

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第89類で“数字条件”が効く代表)
    • 89.03(娯楽・スポーツ用等)
      • 膨張式ボート:モーター用か/重量(100kg)
      • セールボート/モーターボート/その他:長さ(7.5m、24m)
      • 「モーターボート(膨張式以外)」は船外機艇を含まない(=船外機艇は“Other”側へ行きやすい)
    • 89.05:しゅんせつ船(8905.10)/浮遊式・潜水式プラットホーム(8905.20)/その他(8905.90)
    • 89.07:膨張式いかだ(8907.10)/その他(8907.90)
  • 89.03(プレジャーボート等)HS2022の6桁構造(実務メモ)
    • 8903.11:モーター付き/装着設計、(モーター除く)正味重量100kg以下
    • 8903.12:モーター用に設計されず、正味重量100kg以下
    • 8903.19:上記以外の膨張式(RHIB含む)
    • 8903.21/22/23:膨張式以外のセールボート(補助モーター可)、長さで3区分(≤7.5m、7.5–24m、>24m)
    • 8903.31/32/33:膨張式以外のモーターボート(船外機艇を除く)、長さで3区分(≤7.5m、7.5–24m、>24m)
    • 8903.93/99:その他(例:船外機艇などがここに来やすい)、長さで2区分(≤7.5m、それ以外)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8903.11 vs 8903.12 vs 8903.19(膨張式ボート)
      • どこで分かれるか:モーター用設計か/重量100kg条件の当てはまり
      • 判断に必要な情報:メーカー仕様(想定エンジン搭載可否)、正味重量(モーター除外の扱い含む)
      • 典型的な誤り:「電動モーター別売」の商品を“モーター用設計”と見落とす、重量の定義を取り違える
    2. 8903.31/32/33(モーターボート・船外機艇除く) vs 8903.93/99(その他)
      • どこで分かれるか:「船外機艇を含まない」という除外の読み落とし
      • 判断に必要な情報:推進方式(船外機/船内機/ウォータージェット等)、全長
      • 典型的な誤り:船外機艇を“モーターボート”側に入れてしまう
    3. 8907.10(膨張式いかだ) vs 8903.1(膨張式ボート)
      • どこで分かれるか:「いかだ(浮き構造物)」か「ボート(船舶)」か、設計目的(救難・漂流/停止使用 vs 航走)
      • 判断に必要な情報:救命設備としての仕様(自動膨張・定員・装備)、推進/操舵の設計、使用態様
      • 典型的な誤り:救難用の膨張式を“プレジャーボート”と誤認
    4. 8905.20(浮遊式/潜水式プラットホーム) vs 84.30(固定式プラットホーム)
      • どこで分かれるか:浮遊/潜水式か(曳航・自航・バラスト等)/固定式か
      • 判断に必要な情報:構造図、係留方式、バラストタンク、脚の有無、運用方法
      • 典型的な誤り:海洋掘削=すべて8905.20と決め打ち

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17部は、玩具(95.03/95.08)等を除外します(=船っぽく見えても“玩具/娯楽設備”なら第89類に来ない)。
    • 「parts / parts and accessories」に当たるからといって第17部に来るとは限らず、部注で**部品の除外(機械類・電気品・工具等)**が列挙されています。
    • 水陸両用自動車は87類
    • エアクッションビークル(ホバークラフト等)は設計類似で分類(水上走行設計なら89類へ)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • “船外機”や“レーダー”を単体で輸出入する場合、船に使うからといって第89類にせず、機械/電気の章で検討します(第17部注2の発想)。
    • ホバークラフトは、水上を走る設計なら第89類になり得ますが、陸上/水陸両用寄りなら第87類の可能性が高い、という“設計思想”で分岐します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 玩具・娯楽設備 → 第95類
    • 船舶の部品(船体以外)→ 第84類/第73類/第63類など(例:プロペラ84.87)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1):
    • 船体未完成・未組立/分解提示の船舶完成船の未組立/分解提示は、
      • その時点で「特定の船舶の重要な特性(essential character)」がなければ 89.06 に分類する、というルールです。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 条文は定義語を多く置かず「essential character」の判断を要求します(実務では、構造・主要機器の搭載状況・完成度などで総合判断)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • **船舶/浮き構造物の部分品(船体を除く)**は第89類に属さない(例:プロペラ84.87、帆63.06、いかり73.16、玩具ボート95.03等)。
    • 水陸両用自動車は87類、水上機は88.02。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:未完成/分解提示の扱い(注1+GIR2(a))
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • どの種類の船として設計されているか(輸送/作業/娯楽 等)
      • 組立状況(船体完成度、推進・操舵・航行装置の有無、搭載機器の状況)
    • 現場で集める証憑:
      • 造船仕様書、GA(General Arrangement)図、工程表、写真、インボイス明細(同梱部材リスト)
    • 誤分類の典型:
      • “鋼構造物”や“部品一式”として他類に逃がす(注1により89.06または本来の船の項へ)
  • 影響ポイント2:ホバークラフト等(第17部注5)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 走行設計(ガイドトラック/陸上/水上)、運用仕様(海上航行が主か)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様(メーカー)、用途説明、航行・揚陸・氷上走行の可否
    • 誤分類の典型:
      • “水陸両用”の語感だけで87類に固定、または逆に89類に固定(注5の設計基準に沿って再判定)
  • 影響ポイント3:「部分品(船体以外)は第89類に入らない」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 提示形態が「船舶そのもの」か「部品」か(単体提示か、船の未組立一式か)
    • 現場で集める証憑:
      • 梱包明細、構成部材の用途、材質、機能(プロペラ/舵/マスト/帆/いかり等)
    • 誤分類の典型:
      • 890xでまとめて申告(→部品は84/73/63等に分解して検討)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:船舶用のプロペラいかりを「船の部品だから第89類」とする
    • なぜ起きる:第89類は“船の類”なので、部品も同じ類と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第89類は船体以外の部分品・附属品を原則含まない。例としてプロペラは84.87(HS6で8487.10)と示されています
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「提示形態は船そのもの?部品単体?」を必ず確認
      • 部品なら“機能”で章を当てる(機械/鉄鋼製品/繊維等)
  2. 間違い:未完成の船体(ハル)を「鉄鋼構造物(例:73類)」として処理
    • なぜ起きる:見た目が構造物で、船の完成度が低いと判断が揺れる
    • 正しい考え方:第89類注1により、船体・未完成船は「特定の船舶の重要な特性がなければ89.06」
    • 予防策:
      • 造船仕様書・工程表で「どの船のハルか」「どこまで出来ているか」を裏付ける
  3. 間違い:漁船(89.02)とスポーツフィッシング用ボート(89.03)を混同
    • なぜ起きる:どちらも“釣り”に使えるため用途認定が曖昧
    • 正しい考え方:漁業用に設計された漁船は89.02。スポーツフィッシング用は89.03と明示されています
    • 予防策:
      • 「商業漁業のための設計か(漁労設備、積載・保存設備等)」「遊漁・レジャー主体か」を確認
  4. 間違い:船外機艇を「モーターボート(8903.31等)」に入れる
    • なぜ起きる:一般用語の“モーターボート”=船外機艇、と思いがち
    • 正しい考え方:HS2022の89.03では、**モーターボート区分が“船外機艇を含まない”**と明記
    • 予防策:
      • 推進方式(船外機/船内機/ウォータージェット等)を仕様書で確認
  5. 間違い:膨張式の救難用いかだを「膨張式ボート(89.03)」にする
    • なぜ起きる:“膨張式=ボート”と連想
    • 正しい考え方:89.07には膨張式いかだ(8907.10)があり、救難者運搬用の円形の浮き船等も例示されています
    • 予防策:
      • 目的(救難・漂流用か、航走用か)、装備(自動膨張・定員等)を確認
  6. 間違い:浮きクレーン/しゅんせつ船を「貨物船(89.01)」とする(または逆)
    • なぜ起きる:大型で航行するため“船”として一括認識
    • 正しい考え方:89.05は「航行が主でなく、主機能が作業」の船舶。しゅんせつ船・クレーン船等が該当
    • 予防策:
      • 主機能(作業内容)と航行の位置づけをカタログ/運用実態で確認
  7. 間違い:ポンツーン(平底船)を一律に89.07へ
    • なぜ起きる:“浮いてる=浮き構造物”と短絡
    • 正しい考え方:ポンツーンでも、輸送用は89.01、クレーン等の台床は89.05、仮橋支持等の中空筒型やいかだ類は89.07…のように分岐が明記されています
    • 予防策:
      • 「輸送用か」「作業船の台床か」「停止して支持・係留に使うか」を確認
  8. 間違い:海洋プラットホームをすべて8905.20にする
    • なぜ起きる:石油・ガス関連=“プラットホーム”で一括しがち
    • 正しい考え方:89.05は浮遊式/潜水式が対象。固定式は89.05に含まれず84.30へ、という整理が示されています
    • 予防策:
      • 係留・脚・バラストなど構造情報を入手して分類
  9. 間違い:ホバークラフト等を“水陸両用”という理由だけで87類に固定(または89類に固定)
    • なぜ起きる:製品名だけで判断しがち
    • 正しい考え方:第17部注5により、エアクッションビークルは「最も類似するビークル」に分類し、水上走行設計なら89類へ
    • 予防策:
      • 設計仕様(主にどこを走るか)を確認し、部注5に当てはめる
  10. 間違い:解体目的の廃船を“金属スクラップ”として別章で申告
  • なぜ起きる:解体前でも「廃船=スクラップ」と思いがち
  • 正しい考え方:89.08は「89.01〜89.07の船舶等で、解体目的で提示されるもの」に限定して規定
  • 予防策:
    • 契約書・用途(breaking up)・引渡し条件等で「解体目的での提示」を立証できるよう整理
    • 併せて規制(シップ・リサイクル法、バーゼル法等)も確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。船舶(第89類)は高額品が多く、HSを誤ると原産性判断(CTC/RVC等)の前提が崩れ、遡及否認リスクがあります(一般論)。
  • よくある落とし穴:
    • 「最終製品(船舶)」のHSと「主要構成品(エンジン等)」のHSを混同する
    • 未組立/分解提示の扱い(GIR2(a))により、完成品HSとしてPSRを見るべきなのに部品HSで見てしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 代表例(一般論):
    • RCEP:HS2012ベースのPSRをHS2022へ置換したPSRが採択され、2023-01-01から運用と案内されています(日本税関/外務省発表)。
    • 日英EPA:日EU EPAと同様にHS2017採用、と説明する資料があります。
    • CPTPP:HS2012基準とする政府ガイドがある一方で、委員会でPSRのHS2017/HS2022へのトランスポジションが議題となっています(=運用確認が必要)。
    • 協定ごとのHS版は、日本税関の協定関連ページでも確認できます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定が参照するHS版がHS2022と異なる場合:
      1. 協定で指定されたHS版のPSRを確認
      2. 必要に応じて相関表(correlation)で旧新コード対応を当てる
      3. 最終的に、輸入国税関の運用(ガイダンス/照会)に合わせて証明書の記載を整合

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須になりやすい社内データ(一般論)
    • BOM(材料表)、主要部材の原産国、非原産材料のHS、原価(RVC必要時)、工程表(CTC/工程要件必要時)
    • 船舶はサプライチェーンが広いので、主要ユニット(エンジン、推進器、航海機器等)の非原産性の扱いがボトルネックになりやすい点に注意(一般論)。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定本文・運用ガイドライン、税関の手引きを確認(協定ごとに異なる)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分化)8903(号レベル)旧:8903.10/91/92/99 → 新:8903.11/12/19/21/22/23/31/32/33/93/99(膨張式・セール・モーター・その他をより細かく識別)プレジャーボート等の6桁が変わりやすく、PSR参照・統計・許認可の前提が変わる
HS2017→HS2022変更なし8901, 8902, 8904〜8908(項・号レベル)第89類の他の項・号は、条文上は同一の構成に見える旧版からの移行影響は相対的に小さい(ただし国内コードは別途確認)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料の列挙と、何が変わったかの説明:
    • **相関表(HS2022↔HS2017)**では、89.03について「膨張式ボート、セールボート、モーターボートを区分するために新しい号が設定された」旨が示されています。
    • HS2017の89.03は、膨張式(8903.10)と、その他(セールボート8903.91、モーターボート8903.92、その他8903.99)という比較的粗い構造です。
    • HS2022の89.03では、膨張式ボートがモーター可否・重量(100kg)で区分され、セールボート/モーターボート/その他が長さ(7.5m、24m)で区分されています。
    • 以上から、HS2022改正で第89類全体が大きく変わったというより、89.03の統計・管理ニーズに合わせて号が細分化されたと判断できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第89類は、項(4桁)構成自体はHS2007→2012→2017→2022で同一に見えます。主な再編は**89.03の号(6桁)**です。

主要論点HS2007HS2012HS2017HS2022実務メモ(旧→新の当て方)
89.03 膨張式8903.108903.108903.108903.11/12/19旧8903.10は、モーター用設計・重量100kg条件等で新号へ分岐(条件確認が必須)
89.03 セールボート8903.918903.918903.918903.21/22/23旧8903.91は、長さ(≤7.5m、7.5–24m、>24m)で新号へ分岐
89.03 モーターボート8903.928903.928903.928903.31/32/33旧8903.92は、長さで分岐。ただし「船外機艇は含まない」点に注意
89.03 その他8903.998903.998903.998903.93/99旧“その他”も、長さ≤7.5mか否かで分岐

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ノックダウン船の「部品」申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):未組立/分解提示でも、重要な特性があれば当該船として分類すべきところ、部品としてバラバラに申告(類注1・GIR2(a)の趣旨に反する)
    • 起きやすい状況:船体+機器一式を複数コンテナで分割輸送、インボイスが“parts”表記
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:梱包明細と図面で「一体としての船舶提示」であることを整理、事前教示の活用
  • 事例名:ポンツーン(平底船)の誤分類
    • 誤りの内容:輸送用ポンツーンを89.07にしてしまう(実際は89.01)等、用途別の分岐を無視
    • 起きやすい状況:用途をインボイス品名に書かない(“pontoon”のみ)
    • 典型的な影響:税率差・統計差、説明資料要求
    • 予防策:用途・構造(甲板構造、推進の有無、使用時停止か)を資料化
  • 事例名:ホバークラフトの分類不一致(輸出入国で相違)
    • 誤りの内容:設計基準(第17部注5)を確認せず、呼称だけで87/89を決める
    • 起きやすい状況:水上も陸上も走れる製品で、販売資料が用途を幅広く記載
    • 典型的な影響:相手国側のHS差し戻し、通関遅延
    • 予防策:設計仕様書を整備し、必要なら税関相談
  • 事例名:解体目的の廃船(89.08)輸出入での追加コンプラ対応漏れ
    • 誤りの内容:89.08の分類自体は正しいが、解体・廃棄物規制やシップ・リサイクル法の確認をせずに手配
    • 起きやすい状況:中古船売買契約で“for demolition”が付く案件
    • 典型的な影響:追加書類要求、手続遅延、場合により差止め(一般論)
    • 予防策:船の状態(有害物質の有無等)と輸出入形態を整理し、関係官庁ガイドを確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 船舶そのもの(特に軍艦等)や搭載機器(レーダー等)によって、外為法・輸出貿易管理令の枠組みで個別判断が必要になり得ます(一般論)。確認窓口は経済産業省の安全保障貿易管理情報です。
  • その他の許認可・届出
    • 漁船の輸出:経済産業大臣の承認が必要で、水産庁長官の事前確認証が必要と案内されています(輸出案件で要注意)。
    • シップ・リサイクル(解体)関連:香港条約の発効(2025-06-26)に伴い、担保法である「シップ・リサイクル法(船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律)」が同日施行、総トン数500トン以上等を対象とする旨が国交省から案内されています。
    • バーゼル法(特定有害廃棄物等):輸出入する“もの”が規制対象に該当するかの判断が必要で、制度概要は経産省が整理しています(解体材・廃棄物性のある貨物は要注意)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省(漁船輸出、安全保障貿易管理、バーゼル法)
    • 国交省(シップ・リサイクル法)
    • 税関(品目分類・事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 船舶:仕様書、用途説明、全長/重量、推進方式、写真、契約書(中古/解体目的含む)
    • 解体:有害物質関係資料(IHM等、該当する場合)、輸出入先の手続要件整理

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 船種(輸送/漁業/娯楽/作業/軍用等)、運用実態
    • 仕様:全長、重量、推進方式(船外機/船内機等)、膨張式か
    • 提示形態:完成/未完成、組立/未組立、分解の範囲、同梱品リスト
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 部注(玩具除外、ホバークラフト、水陸両用)
    • 類注1(船体/未完成の扱い)
    • 「部分品(船体以外)ではないか」再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “boat/ship/pontoon/platform”だけでなく、用途・仕様(長さ/重量)を品名欄に補足
    • 図面・仕様書を添付可能な状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版の確認(RCEPはHS2022置換PSRなど)
    • BOM・原価・工程の整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 漁船輸出承認の要否(該当時)
    • 解体関連(シップ・リサイクル法、バーゼル法等)の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 89(条文・6桁構造)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 Section XVII Notes(第17部注:玩具除外、ホバークラフト、水陸両用等)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2007/2012/2017 Chapter 89(旧版比較用)〔参照日:2026-03-01〕
    • HS2022↔HS2017 相関表(第89類の改正点確認)〔参照日:2026-03-01〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説(第89類)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:EPA/原産地関連(協定ごとのHS版の情報等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:事前教示(品目分類)・検索〔参照日:2026-03-01〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 外務省:RCEP HS2022置換PSRの採択(運用開始等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:RCEP HS2022版PSRに関する案内〔参照日:2026-03-01〕
    • (参考)CPTPPのHS版・トランスポジション関連情報〔参照日:2026-03-01〕
    • (参考)日英EPAのHS版に関する説明資料〔参照日:2026-03-01〕
  • 規制(日本)
    • 経産省:漁船の輸出(外為法に基づく承認等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 国交省:シップ・リサイクル法(香港条約発効・国内法施行)〔参照日:2026-03-01〕
    • 経産省:バーゼル条約・バーゼル法の制度概要〔参照日:2026-03-01〕

※Web参照は「参照日(2026-03-01)」を記載しました。


付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 品名(一般名称+用途)、材質、構造、寸法(全長)、重量(正味重量)、推進方式、写真、カタログ、図面、梱包明細
    • 未完成/分解提示の場合:工程表・同梱一覧・完成時の仕様(重要特性の判断材料)
  • 探し方(日本税関の公開情報)
    • **事前教示回答(品目分類)**は、税関サイトでキーワード検索が可能です(公開可能な範囲の回答)。
    • 英語ページ(Advance Rulings on Tariff Classification)も用意されています。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第88類:航空機及び宇宙船並びにこれらの部分品(Aircraft, spacecraft, and parts thereof)

  • 用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 無人航空機(ドローン):無操縦者で飛行する機体(HS2022で新設の項:88.06)
    • 有人の航空機:ヘリコプター、飛行機等(ただし無人航空機は除く)
    • 宇宙機:衛星、サブオービタル機、宇宙機打上げ機など
    • 気球・滑空機等(動力のない航空機):グライダー、ハンググライダー等
    • パラシュート類:パラグライダー、ロトシュートを含む
    • 航空機/無人航空機の部分品:プロペラ、降着装置、その他の部品(HS2022で88.07に整理)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 飛行玩具(“遊び専用”のトイドローン等)第95類 95.03(類注で「無人航空機」の定義から除外)
    • 航空機に使う“汎用部品”(ねじ・ボルト等の「一般用部分品」など)→ 材質/汎用品の章(例:第15部、39類等)(部注で除外)
    • 機械類・電気機器として独立して性格を持つもの(例:多くの電気機器)→ 第84類/第85類(部注で「parts」扱いから除外)
    • 測定機器・光学機器など第90類(部注で除外)
    • 武器第93類(部注で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. “無人航空機”か“飛行玩具(遊び専用)”か(88.06 ↔ 95.03)
    2. 無人航空機の6桁分岐:遠隔操作のみか/それ以外(自律等)か(8806.21〜.29 ↔ 8806.91〜.99)
    3. 部品の扱い:本当に88.07の「部分品」か/汎用品・他章の機器か(第17部注で大きく左右)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • ドローンの新設項(88.06)絡み:旧HS(HS2017等)や社内マスターのコードが残っていると、関税・統計・原産地規則(PSR)・輸出管理の社内判定が連鎖的に崩れやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など):
    • **GIR1(品名+部注/類注で決める)**が最重要です。第88類では、
      • 類注(第88類注)が**「無人航空機」の範囲を定義し、さらに飛行玩具(95.03)を除外**します。
      • 部注(第17部注)が、“parts(部分品)”と言えても除外される物(汎用品、電気機器、計測機器等)を定めます。
        → つまり「品名が“drone parts”だから88.07」といった決め方が危険です。
    • **GIR6(6桁の選択)**も実務で必須です。特に無人航空機(88.06)は、
      • 「遠隔操作のみ」かどうか
      • **最大離陸重量(maximum take-off weight)**の区分
        で6桁が分かれます。最大離陸重量の定義自体が類注(サブヘディング注)にあります。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 用途/機能:遊び専用か(玩具)、業務用途(撮影・測量・散布・運搬等)か。
    • “飛ぶもの”の状態:完成機、未完成機、分解して輸送しているか(キット)。
    • 部品の性格:航空機専用品か、汎用品か、他章の機器(電気/光学等)か。
    • 重量:88.06は最大離陸重量、88.02は空荷重量(unladen weight)が分岐軸です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「機体(飛ぶもの)」か、「部分品」か、「地上設備/訓練装置」か?
    • 機体 → Step2へ
    • 部品 → Step4へ
    • 地上設備/訓練装置 → 8805の可能性を確認
  • Step2:機体の場合、「無人航空機」か?
    • 人(操縦者)が搭乗しない設計 → 原則「無人航空機」候補
    • ただし、遊び専用の飛行玩具(95.03)は除外
  • Step3:無人航空機なら 88.06(8806)
    • 6桁は「旅客輸送用」か、その他(遠隔操作のみ/その他)+重量で分岐
      無人航空機でない機体なら、主に以下:
    • 動力のない航空機 → 88.01(8801)
    • 有人の航空機・宇宙機 → 88.02(8802)
    • パラシュート類 → 88.04(8804)
  • Step4:部品の場合、88.07(8807)に行けるかを部注でチェック
    • 8807は「88.01/88.02/88.06の部分品」
    • ただし部注により、汎用品・電気機器・計測機器などは“parts扱い”から外れます。
    • また、部品が複数章の見出しに該当する場合は**“主たる用途”**で決める考え方が示されています。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 88.06(無人航空機) vs 95.03(飛行玩具):設計目的が「遊び専用」かが争点
    • 88.07(部分品) vs 他章(84/85/90等):部注2の除外リストに当たるか、専用品かが争点

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第88類は4桁見出しが少ないため、HS2022に基づき全列挙します(※削除された[88.03]も、誤読防止のため注記付きで掲載)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8801気球・飛行船、グライダー、ハンググライダー等(動力なし)係留気球、グライダー、ハンググライダー「動力なし」が鍵。パラグライダーは8804側に明記あり(混同注意)。
8802その他の航空機(ヘリ、飛行機等)+宇宙機(衛星等)※無人航空機除く有人ヘリ、有翼機、衛星、打上げ機**「無人航空機(8806)を除く」**がHS2022で明確化。6桁は空荷重量(unladen weight)で分岐。
8803(参考)HS2017まで:88.01/88.02の部分品旧:プロペラ、降着装置等HS2022では削除([88.03])。現在は8807へ再整理。
8804パラシュート(パラグライダー含む)、ロトシュート、その部品・附属品パラシュート、パラグライダー翼、予備傘、ハーネス等“パラグライダー”は8804に明示。8801(ハンググライダー)との混同注意。
8805航空機発進装置、デッキアレスター、地上飛行訓練器等とその部分品カタパルト、着艦制動装置、フライトシミュレータ(地上飛行訓練器)6桁で「エアコンバットシミュレータ」等に分岐。単なるPC用ゲーム機器等は別章の可能性。
8806無人航空機産業用ドローン、測量ドローン、物流ドローン、(例)旅客輸送用eVTOL(無操縦者)飛行玩具(95.03)は除外。6桁は「旅客輸送用」or「遠隔操作のみ/それ以外」+最大離陸重量。
880788.01/88.02/88.06の部分品プロペラ、降着装置、機体構造部材、ドローン用ロータ等部注で“parts扱いから除外される物”が多い(電気機器・計測機器・汎用品等)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理

A) 8806(無人航空機)の6桁分岐:ここが最大の実務ポイント

  • まず 8806.10:旅客輸送用(Designed for the carriage of passengers)
    • 例:操縦者が搭乗しない旅客輸送用eVTOL(自動運航想定のエアタクシー機体など)
  • それ以外は、次の二段階で分岐します:
    1. **遠隔操作のみ(remote-controlled flight only)**か
    2. **最大離陸重量(maximum take-off weight)**がどのレンジか
  • 最大離陸重量は、類注(サブヘディング注)で「通常飛行状態での離陸時最大重量(ペイロード・装備・燃料を含む)」と定義されています。
    • 実務では、メーカー仕様の「MTOW」「最大離陸重量」「最大離陸時重量」が、ペイロードを含む定義かを確認します(仕様書に根拠を残す)。

B) 8802(有人航空機・宇宙機)の6桁分岐:重量の定義が独特

  • 8802.11/12:ヘリコプター(空荷重量≦2,000kg/>2,000kg)
  • 8802.20/30/40:飛行機等(空荷重量のレンジ)
  • 「空荷重量(unladen weight)」も類注(サブヘディング注)で定義されています(乗員・燃料等を除外)。
    • 例:機体メーカーの「Empty weight」「Operating empty weight」等のどれを使っているか要注意。

C) 8807(部分品)の6桁分岐

  • 8807.10:プロペラ/ロータ等
  • 8807.20:降着装置等
  • 8807.30:飛行機・ヘリ・無人航空機のその他部品
  • 8807.90:その他(例:宇宙機(8802.60)の部品などは、文言上ここに寄ることがあります)
    • ただし、部注で電気機器・計測機器等は除外され得ます。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8806.21〜.29(遠隔操作のみ) vs 8806.91〜.99(それ以外)
      • どこで分かれるか:機体が**「遠隔操作“のみ”」**かどうか(自律飛行・自動航行等の機能の有無が論点になりやすい)
      • 判断に必要な情報:取説(自律飛行モードの有無)、仕様書(オートパイロット/ウェイポイント機能)、販売資料
      • 典型的な誤り:「手で操作できる=遠隔操作のみ」と早合点(“only”の解釈が争点になり得る)
    2. **8806.21(≤250g) vs 8806.22(>250g〜7kg)**等(重量レンジの取り違え)
      • どこで分かれるか:最大離陸重量の閾値
      • 判断に必要な情報:MTOW(ペイロード含む)を裏づける仕様書、バッテリー含む重量定義
      • 典型的な誤り:本体重量(機体のみ)や梱包重量で判断
    3. 8807(部分品) vs 第85類/第90類(電気・計測機器としての性格)
      • どこで分かれるか:部注2の除外(電気機器・計測機器等)に該当するか
      • 判断に必要な情報:当該品の機能説明、単体販売実態、型式・仕様、他用途への転用可能性
      • 典型的な誤り:「機体に付けるから全部8807」

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17部注は、「車両・航空機・船舶」分野でよくある誤りである**“何でも parts 扱い”を防ぐ**ために、除外品目を列挙しています。
    • 特に重要なのは次の2つ:
      • 部注2:汎用品(一般用部分品)や電気機器・計測機器等は、たとえ当該部の物品として識別できても「parts」等の表現を適用しない
      • 部注3:86〜88章の「parts/ accessories」は、“その章の物品専用(solely or principally)”でないものには適用されない。複数見出しに該当するなら主たる用途で分類
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例1:ドローン用のねじ・ワッシャ → “parts”として8807ではなく、汎用品として材質章(第15部等)に寄りやすい(部注2)。
    • 例2:ドローンに搭載するカメラモジュール → 電気/光学機器としての性格が強い場合、部注2により第85類/第90類へ行きやすい(“機体に付ける=8807”は危険)。
    • 例3:「ドローン専用バッテリー」等 → 電気機器(第85類)に寄りやすく、部注2の観点で8807にしない整理が必要(個別判断)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • **電気機器(第85類)・計測(第90類)・工具(第82類)・武器(第93類)**などが、部注2で明示的に除外される。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第88類注は、HS2022で新設された**「無人航空機」概念**を示し、
      • 88.01(動力のない航空機)以外の、搭乗者なしで飛行する航空機
      • ペイロード搭載や、飛行中に実用機能を果たせるように統合されたカメラ等を備え得る
        といった特徴を踏まえて整理します。
    • ただし、遊び専用の飛行玩具(95.03)は“無人航空機”に含めない点が明記されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 最大離陸重量(maximum take-off weight):離陸時の最大重量(ペイロード・装備・燃料を含む)
    • 空荷重量(unladen weight):通常飛行状態の機体重量(乗員・燃料等を除外)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 飛行玩具(遊び専用) → 95.03(第88類注で明示)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:“無人航空機”か“飛行玩具(95.03)”か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 設計目的(遊び専用か、撮影・測量・運搬等の実用か)
      • 機能(ペイロード搭載、統合カメラ、実用機能の説明)
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
      • メーカー仕様書(用途・機能・ペイロード・飛行モード)
      • 販売カタログ/商品ページ(“toy”表示の有無、対象年齢、遊び目的の強調)
      • 取扱説明書(飛行モード・安全機能)
      • 外観写真(玩具的意匠か、業務機器的か)
    • 誤分類の典型:
      • 小型ドローンをすべて8806に寄せてしまい、“遊び専用”と判断され95.03に修正される
  • 影響ポイント2:88.06(無人航空機)の重量定義が、そのまま6桁を決める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 最大離陸重量(MTOW)=ペイロード等込みの定義か(類注で定義)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書の重量定義(MTOW/最大離陸重量、最大搭載量)
      • 申告時の説明資料(重量の算定根拠)
    • 誤分類の典型:
      • “機体のみ重量”で判定してしまい、閾値(250g/7kg/25kg/150kg)を跨いでしまう
  • 影響ポイント3:「部分品」扱い(8807)か、部注で他章へ飛ぶか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その品が汎用品か、電気機器/計測機器等か(部注2の除外リスト)
      • 88.01/88.02/88.06向けに**専用(solely or principally)**と言えるか(部注3)
    • 現場で集める証憑:
      • 図面・品番体系(航空機専用であること)
      • 他用途転用の可否が分かる技術資料
      • 取引実態(単体販売の市場、汎用流通しているか)
    • 誤分類の典型:
      • “ドローンに付く”だけで8807にして、部注2該当(電気機器等)で修正される

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ドローンを旧来の8802(航空機)や、カメラ側(例:8525)に寄せ続ける
    • なぜ起きる:社内マスターがHS2017以前のロジックのまま/「カメラ付きだからカメラ」と短絡
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
      • HS2022では無人航空機が88.06として独立し、旧分類の一部が8802やex8525.80から移されたことが相関表で示されています。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「HS2022対応済みのマスターですか?」
      • 「機体として輸入? カメラ等の部品単体? セット?」(品目の同一性を確認)
  2. 間違い:“トイドローン”を8806(無人航空機)で申告
    • なぜ起きる:外観がドローンで、飛ぶ=航空機と考える
    • 正しい考え方:
      • 第88類注で、遊び専用の飛行玩具は95.03と明示されています。
    • 予防策:
      • 商品の対象年齢、玩具表示、遊び目的の強調、機能(実用機能の有無)を確認
      • カタログ・外箱写真・取説を必ず保管
  3. 間違い:8806の重量分岐を「機体重量」「梱包重量」で判定
    • なぜ起きる:重量の定義を読まず、手元の重量データで決めてしまう
    • 正しい考え方:
      • 8806の閾値は「最大離陸重量」であり、ペイロード・装備・燃料を含むと注で定義されています。
    • 予防策:
      • 仕様書に「最大離陸重量(定義)」が明記されているか確認
      • 不明ならメーカーに「MTOWにペイロード含みますか?」を照会
  4. 間違い:“遠隔操作のみ”と“それ以外”の区分を見落とす(8806.2xと8806.9xの取り違え)
    • なぜ起きる:無人航空機=全部同じ、と思い込む
    • 正しい考え方:
      • 8806は「遠隔操作のみ」グループと「その他」グループに分かれています。
    • 予防策:
      • 取説で自律飛行(自動航行/ウェイポイント等)の可否を確認
      • 商品企画/技術部に「遠隔のみ?自律あり?」を質問
  5. 間違い:8807(部分品)に“何でも”入れる
    • なぜ起きる:「航空機に使う=航空機部品」とラベルで判断
    • 正しい考え方:
      • 第17部注2で、電気機器・計測機器・汎用品などは「parts」扱いにしない、と明記されています。
    • 予防策:
      • 部品の機能が「電気機器/計測機器/工具/汎用品」に該当しないかチェック
      • 他用途に流通するか(汎用性)を購買・技術に確認
  6. 間違い:パラグライダーを8801(グライダー等)にしてしまう
    • なぜ起きる:「グライダー」という日本語イメージで分類
    • 正しい考え方:
      • HS上、**パラグライダーは8804(パラシュート類)**に明記されています。
    • 予防策:
      • 製品が“パラシュート構造(翼)”か、“剛翼の滑空機”かを写真・構造図で確認
  7. 間違い:フライトシミュレータを“ゲーム機/PC周辺機器”として別章で処理
    • なぜ起きる:外観が電子機器で、航空訓練器に見えない
    • 正しい考え方:
      • 8805には「地上飛行訓練器」や「エアコンバットシミュレータ」が明記されています。
    • 予防策:
      • 用途が訓練(ground flying trainers)なのか、娯楽用途かを契約・仕様・販売先で確認
  8. 間違い:部品・付属品の“主たる用途”を整理せずに複数見出しのうち適当なものを選ぶ
    • なぜ起きる:複合品(例:センサー付き部品)で迷い、慣例で決める
    • 正しい考え方:
      • 部注3は、複数見出しに該当する場合、主たる用途に対応する見出しで分類する考え方を示しています。
    • 予防策:
      • 「単体で何をする物か」「他用途に転用できるか」「どの機種に専用か」を技術部に確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • PSRは原則、**最終製品のHS(多くは6桁)**に紐づくため、HSがズレると適用すべき規則自体が変わります。
    • 第88類はHS2022で構造が変わっているため(88.06/88.07新設、88.03削除)、旧HS前提でPSRを読むと事故が起きやすいです。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • ドローン本体(8806)と、カメラ等の電気部品(別章)を混ぜてBOM分類してしまう
    • 旧コード(8803)で部材HSを管理し続け、PSRの章立てと齟齬が出る

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • 本件は協定が未指定のため、例示します(実務では必ず対象協定の附属書冒頭でHS版の明記を確認してください)。
      • 日EU・EPA:品目別規則(PSR)がHS2017改正体系に基づく旨が附属書で示されています。
      • CPTPP:PSRはHS2012体系で整理されている旨が各国当局の案内にあります。
      • RCEP:PSR(Annex 3A)はHS2012改正体系に基づく旨が明示されています。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • HS2022で確定した6桁を、そのままPSR表に当てはめられない場合があります(表がHS2012/2017で組まれているため)。
    • 特に第88類は、HS2022でドローン(8806)とその部品(8807)が新設されたため、協定側が旧版HSのままだと“読む場所”が変わります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ① まず輸出入申告は(多くの国で)現行HSで行う
    • ② 原産地(PSR)は協定参照HS版に合わせる必要がある場合、相関表で旧新版対応を取る
    • ③ 対応が一対一でない場合(分割/統合)は、品目の範囲説明や当局ガイドも参照し、必要なら事前照会も検討
      ※第88類のHS2017→HS2022は、相関表で移行の方向性(8806/8807新設、8803削除)が明確に示されています。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 完成品(例:ドローン=8806)と主要材料(モーター、制御基板、カメラ等)のHS付番を分けて管理
    • 主要工程(組立、制御ソフト書込み、キャリブレーション等)を工程表に落とす
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定により異なるため、自己申告/原産地証明書の要件、保存年限を協定本文・運用指針で確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設88.06(8806)無人航空機(ドローン)を独立項として新設。旧版では一部が8802やex8525.80側に存在。社内マスター更新必須。PSR参照HS版とのズレが出やすい。
HS2017→HS2022範囲変更8802.11〜8802.408802の一部範囲が、無人航空機(88.06)へ移管され、8802の範囲が狭まった。“有人/無人”の峻別がより重要に。
HS2017→HS2022新設88.07(8807)88.01/88.02に加えて、88.06(無人航空機)の部分品を整理するため新設。「部品」の見直しが必要。旧8803の置換。
HS2017→HS2022削除88.03(8803)旧88.03(88.01/88.02の部分品)は削除され、HS2022では88.07へ。旧8803管理の部品は移行が必要(特にデータ連携)。
HS2017→HS2022注の追加/整備第88類注・サブヘディング注“無人航空機”定義+「飛行玩具(95.03)除外」、8806の最大離陸重量定義を明記。申告根拠(仕様書)整備が重要に。重量算定の説明が必要。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)を列挙し、
    “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”を文章で説明します。
    • **WCOのHS2022条文(第88類)で、88.06(無人航空機)と88.07(部分品)が見出しとして掲載され、旧88.03が[88.03]**として表示されていることから、HS2022で新設/削除が起きたと判断しました。
    • **WCOのHS2017条文(第88類)**では88.03(部分品)が存在し、88.06/88.07が存在しないため、2017→2022で構成が変わったことが確認できます。
    • **HS2022-HS2017相関表(WCO)**において、
      • 88.06新設により8802の範囲が狭まったこと、
      • 88.07新設により88.06の部分品をカバーし、旧88.03が削除されたこと、
      • 8806がex8802・ex8525.80等から移管されたこと
        が明記されているため、移管・整理の方向性を裏づけました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第88類の範囲)
期間主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(代表)補足
HS2007→HS2012大枠の4桁構成(8801〜8805、8803含む)に目立った変更なし両版とも88.03(8803)が存在。
HS2012→HS2017大枠の4桁構成に目立った変更なし88.03(8803)が引き続き存在。
HS2017→HS202288.06新設、88.07新設、88.03削除、8802範囲変更8803.* → 8807.10/20/30/90(部品)無人航空機が独立したことで、旧来の社内コード運用に改修が必要。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):トイドローンを8806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第88類注の「飛行玩具(95.03)除外」
    • 起きやすい状況:品名が“mini drone”、安価で玩具用途だが説明資料が薄い
    • 典型的な影響:修正申告、分類根拠資料の追加提出、通関遅延
    • 予防策:外箱・対象年齢・用途説明の保存、玩具該当性の事前整理
  • 事例名:ドローンの6桁で“遠隔操作のみ”の選択ミス
    • 誤りの内容:8806.2x(遠隔操作のみ)と8806.9x(その他)の取り違え
    • 起きやすい状況:自律飛行機能の有無を営業資料だけで判断
    • 典型的な影響:修正申告、仕様書提出要請
    • 予防策:取説・仕様書で自律飛行機能を確認し、分類メモに残す
  • 事例名:“ドローン部品”として8807に入れたが、実態は電気機器
    • 誤りの内容:部注2(電気機器等はparts扱いしない)に抵触
    • 起きやすい状況:カメラ、通信モジュール等を「機体用部品」として一括申告
    • 典型的な影響:別章へ更正、評価・原産地判定のやり直し
    • 予防策:部品を「機械/電気/計測/汎用品」に分解し、各章で当てる
  • 事例名:航空機用のボルトを8807で申告
    • 誤りの内容:部注2(一般用部分品)に抵触
    • 起きやすい状況:航空機専用と言い切れない標準規格品
    • 典型的な影響:材質章へ更正、課税・統計の修正
    • 予防策:専用設計(図面・専用品番)か、汎用品かを区別

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 通常、第88類自体でSPS(食品・動植物検疫)要件が前面に出るケースは多くありません(搭載物や材質で別途発生することはあります)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • ドローンは軍事転用の観点から、**外為法に基づく輸出管理(リスト規制/キャッチオール規制)**の対象になり得ます。
    • 経産省の資料では、無人機(ドローン)の管理でキャッチオール規制の確認フロー等が示されています。
    • 実務では「性能(航続距離、ペイロード等)」「需要者/用途」「仕向地」等で判断が変わるため、社内の該非判定・取引審査フローに落とすのが重要です。
  • その他の許認可・届出
    • (日本国内で飛行させる場合)無人航空機の登録・Remote ID等
      • MLIT(国交省)情報として、屋外で飛行する100g以上のドローン/模型航空機は登録対象で、未登録の飛行は禁止、罰則(罰金・拘禁刑)リスクが示されています。
      • また、登録ID表示やRemote ID機能装備などの要件も案内されています。
        ※これは「飛行規制」であり、HS分類とは別枠ですが、輸入後の使用計画に直結するため、取引条件に織り込む必要があります。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 飛行・登録:国交省(MLIT)無人航空機関連ポータル
    • 輸出管理:経産省(METI)安全保障貿易管理(ドローン輸出資料等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 輸出:仕様書(性能)、BOM、用途・需要者情報、仕向地、該非判定書(社内/外部)
    • 国内運用:機体重量(100g基準)、登録ID、Remote IDの要否、飛行許可/承認要否

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品の正体:完成機/部品/セット(同梱品一覧)
    • 用途:遊び専用か、実用(撮影・測量・運搬等)か
    • 機能:自律飛行の有無、ペイロード、統合カメラ等
    • 重量:8806なら最大離陸重量(定義込み)、8802なら空荷重量
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • トイドローン除外(95.03)に当たらないか
    • 部品は第17部注2/3で除外されないか
    • 6桁の分岐条件(遠隔操作のみ/その他、重量レンジ)を根拠資料で裏取り
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「drone」「parts」だけでなく、用途/機能(例:unmanned aircraft for aerial survey)を補足
    • 仕様書、写真、カタログをセットで用意(特に88.06/88.07は説明が効く)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版(HS2012/2017等)を確認し、必要なら相関表で読み替え
    • BOMの材料HS・工程・原価(RVC等)を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 輸出:METIの輸出管理(リスト/キャッチオール)に該当し得るか
    • 国内飛行:MLITの登録・Remote ID・許可/承認等の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO:HS Nomenclature 2022(Chapter 88、Section XVII Notes) (参照日:2026-03-01)
    • WCO:HS Nomenclature 2017/2012/2007(Chapter 88) (参照日:2026-03-01)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:HS2022-HS2017相関表(WCO相関情報を含む) (参照日:2026-03-01)
    • 税関:品目分類とHSの解説ページ (参照日:2026-03-01)
    • 税関:品目分類の事前教示制度(Advance Ruling on Classification) (参照日:2026-03-01)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 日本外務省:日EU・EPA 品目別規則(附属書:HS2017に基づく旨の記載) (参照日:2026-03-01)
    • Australian Border Force:RCEP Annex 3A(PSRがHS2012に基づく旨の記載) (参照日:2026-03-01)
    • Australian Border Force:CPTPP(PSRがHS2012体系である旨の案内) (参照日:2026-03-01)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • 国交省(MLIT):無人航空機登録・飛行ルール(100g以上の登録、Remote ID等) (参照日:2026-03-01)
    • 経産省(METI):ドローン輸出と安全保障貿易管理(外為法・輸出管理、キャッチオール確認フロー等) (参照日:2026-03-01)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品(Vehicles other than railway or tramway rolling-stock, and parts and accessories thereof)

用語(本文中で統一して使います)

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • トラクター(農業用・林業用、セミトレーラ用ロードトラクター等):8701
    • 10人以上(運転者含む)の輸送用自動車(バス等):8702
    • 乗用車(ステーションワゴン、レーシングカー、雪上走行車、ゴルフカー等を含む):8703
    • 貨物自動車(ダンプカーを含む):8704
    • 車両部品・付属品(バンパー、シートベルト、エアバッグ、ラジエーター等):8708
    • 二輪車・自転車・車いす・乳母車・トレーラー等:8711〜8716
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉄道用・軌道用でレール走行のみを目的とする車両:第86類(類注で除外)
    • 航空機:第88類、船舶:第89類(「車両」でも輸送モードが違う)
    • 建設機械等の自走式作業機械(ブルドーザー、エキスカベータ等):第84類(例:8429 等。走行部が8701に似ても、作業機械としての性格が強いと84類になりやすい)
    • 玩具・遊戯用の車両(子供用三輪車などの「その他の子供用車輪付き玩具」):9503(類注で明記)
    • 「車両用」と言い張りたくなるが、部注で“車両部品扱いにならない”もの(例:汎用ボルト/ナット等、一般機械(84類)、電気機器(85類)など):部注で除外
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 完成品(車両)か、部分品・附属品か(車両なら8701〜8705/8709〜8716、部品なら8706〜8708/8714/8716.90等)
    2. 「人の輸送」か「貨物の輸送」か「特殊用途」か(8702/8703/8704/8705の分岐)
    3. 動力(内燃のみ/ハイブリッド/外部充電可/電動)・重量・排気量が6桁の分岐を直撃(8701/8702/8703/8704で特に重要)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 8703(乗用車)と8704(貨物車)の境界、またはハイブリッド/電動の6桁差(関税率・統計・EPAのPSRが変わりやすい)。
    • 8708(車両部品)に入れたつもりが、部注で84類/85類/一般用部品に飛ぶ(追徴・修正申告になりやすい)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1:見出し(Heading)の文言と、部注・類注でまず決めます(車両は品名や用途説明で迷いがちなので、まず条文ベース)。
    • GIR6:6桁(号)は、同じ見出し内で「動力」「排気量」「車両総重量(g.v.w.)」「外部充電可否」などの条件で細分されます。
    • GIR2(a):CKD/SKDのように「未完成・未組立」で入ってくる車両は、条件を満たすと完成品として扱われ得ます(輸送形態だけで部品扱いにしない)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要)
    • 主たる設計目的(人の輸送/貨物の輸送/特殊作業)
    • 構造・仕様(座席数、荷室構造、けん引装置、作業装置が恒久的か等)
    • 動力構成(内燃のみ/内燃+電動(ハイブリッド)/外部充電可(プラグイン)/電動のみ)
    • 重量・排気量(g.v.w.区分、cc区分)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:レール走行のみの車両か?
    • Yes → 第86類(第87類は類注で除外)
    • No → Step2へ
  • Step2:完成車両か?部分品・附属品か?
    • 完成車両 → Step3へ
    • 部分品・附属品 → Step4へ(8706〜8708/8714/8716.90等 + 部注の除外確認)
  • Step3(完成車両):用途で4桁を決める
    • トラクター → 8701(ただし8709型トラクターは除外)
    • 10人以上の輸送 → 8702
    • 乗用(8702以外) → 8703
    • 貨物 → 8704
    • 特殊用途(クレーン車・消防車等) → 8705
    • 工場・倉庫等の近距離運搬用(リフター等“取扱装置なし”) → 8709
    • 戦車等 → 8710
    • 二輪車 → 8711、自転車 → 8712、車いす → 8713、乳母車 → 8715、トレーラー等 → 8716
  • Step4(部分品・附属品):まず「どの車両用か」を確認
    • 8701〜8705用のシャシ・車体・部品:8706〜8708(ただし部注の除外あり)
    • 8711〜8713用の部品:8714
    • トレーラー等の部品:8716.90
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第84類(自走式作業機械) vs 第87類(トラクター/車両):作業装置の恒久性・取外し易さ等で分かれることがある(税関解説で例示)。
    • 8709(取扱装置なしの構内運搬車) vs 84類の荷役機械:車両にリフト等の取扱装置が付くと87類に残れない可能性が高い(8709の見出し文言に注意)。
    • 9503(玩具) vs 8712(自転車):子供用でも「自転車」は8712に含むが、それ以外の子供用車輪付き玩具は9503(類注で明記)。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8701トラクター(8709のトラクターを除く)農業用トラクター、セミトレーラ用ロードトラクター、履帯式トラクター「牽引/押す」が本旨。作業機械(84類)との境界に注意。
870210人以上輸送用自動車(運転者含む)路線バス、観光バス座席定員(運転者含む)で8703と分岐。
8703乗用自動車(8702以外)乗用車、SUV、ワゴン、レーシングカー、雪上車、ゴルフカー等「主として人の輸送」。貨物車(8704)との境界が高頻度。
8704貨物自動車トラック、バン、(不整地用)ダンプカーg.v.w.区分・動力区分で6桁が細かい。
8705特殊用途自動車(人/貨物輸送が主でない)レッカー車、クレーン車、消防車、コンクリートミキサー車、路面清掃車、移動作業車“輸送が主目的”だと8704へ。装備が恒久的か等を確認。
87068701〜8705用の原動機付きシャシキャブなしシャシ(エンジン搭載)キャブ付きシャシは8702〜8704に入る(類注)。
87078701〜8705用の車体(キャブ含む)車体シェル、キャブ車体単体。部注で別章に飛ぶ部品(汎用品等)に注意。
87088701〜8705用の部分品・附属品バンパー、ブレーキ、変速機部品、車輪、ラジエータ、マフラー、ステアリング、エアバッグ等部注で84類/85類/汎用品に除外される部品が多い。窓は8708.22の号注に注意。
8709構内等の近距離運搬用自走車(取扱装置なし)・駅プラットホーム用トラクター・それらの部分品工場内運搬車、空港用牽引車“取扱装置なし”がキーワード。
8710戦車その他の装甲戦闘車両(自走式)と部分品装甲車両安全保障貿易管理(輸出)など別途規制面も要確認。
8711モーターサイクル等(モペット含む)・補助原動機付き自転車・サイドカーオートバイ、原付、電動二輪、サイドカー排気量/電動で6桁分岐。
8712自転車等(配達用三輪車含む、非電動)自転車、配達用三輪車子供用でも「自転車」はここ(類注)。
8713身体障害者用の車いす(動力付き含む)手動車いす、電動車いす非動力/その他で分岐。
87148711〜8713用の部分品・附属品二輪部品(ブレーキ、サドル等)、車いす部品車両用部品でも8708ではなく8714になるケースが多い。
8715乳母車及び部分品ベビーカー乳母車はこの項。
8716トレーラー・セミトレーラー、その他の非自走車両、部分品キャンピングトレーラー、農業用自走積卸しトレーラー、荷物用トレーラー、手押し台車“非自走”がポイント。部品は8716.90。

※表の4桁見出しはHS2022第87類(WCO条文)に基づき全列挙しています。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(この類で頻出)
    • 動力の種類(内燃のみ/内燃+電動/外部充電可否/電動のみ)
      • 例:8703.40(ハイブリッド:外部充電不可) vs 8703.60(プラグイン:外部充電可)
    • 排気量(cc):8703、8711で頻出
    • 車両総重量(g.v.w.):8704で頻出(メーカー公表の最大設計重量として扱う旨の解説あり)
    • 用途要件:8709(取扱装置なし、工場等の近距離運搬)
    • 号注(Subheading Note):8708.22(窓の範囲が号注で限定)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8703.40 / 8703.60(いずれも「内燃+電動」だが、外部充電可否で分岐)
      • どこで分かれるか:外部電源に接続して充電できる(プラグイン)かどうか
      • 判断に必要な情報:車両仕様書(充電ポート有無、充電方式)、型式情報、カタログ記載
      • 典型的な誤り:「ハイブリッド」とだけ聞いて8703.40に固定(PHEVを見落とす)
    2. 8704.21〜8704.23(内燃のみ) vs 8704.41〜8704.43(ディーゼル+電動)
      • どこで分かれるか:電動モーターが推進用モーターとして搭載されているか
      • 判断に必要な情報:パワートレイン構成(シリーズ/パラレル等の方式は問わず、推進用電動モーターの有無が重要)、メーカー仕様書
      • 典型的な誤り:GVWだけ見て8704.21等に入れてしまう(HS2022ではハイブリッド用の別号がある)
    3. 8708.22 / 8708.29(車体部品のうち「窓」)
      • どこで分かれるか:8708.22に入る窓は、(a)枠付き、または **(b)加熱装置等の電気・電子装置を内蔵(枠の有無は問わない)**で、かつ8701〜8705用として専ら/主として使用に適するもの、という枠組み
      • 判断に必要な情報:枠の有無、ヒーター線・センサー等の内蔵、適用車種(8701〜8705向け専用性)、部品番号の互換表
      • 典型的な誤り:自動車用窓を一律に8708.22として申告(無枠・無電装の安全ガラス等は別章(例:第70類)に寄る可能性)
    4. 8709.11 / 8709.19(構内運搬車:電動か否か)
      • どこで分かれるか:車両が電動(8709.11)か、その他(8709.19)か
      • 判断に必要な情報:駆動方式、電源(バッテリー)仕様
      • 典型的な誤り:「工場で使う車=8709」と短絡(実際には取扱装置付きや公道仕様などで別章/別項に寄る)
    5. 8711.60(電動二輪)/ 8711.10〜8711.50(内燃二輪)
      • どこで分かれるか:推進が電動のみかどうか
      • 判断に必要な情報:原動機の種類、排気量(内燃ならcc)、モーター仕様
      • 典型的な誤り:補助原動機付き自転車との呼称だけで決める(実態が電動二輪か、内燃か)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注1:この部(第XVII部)は、玩具・遊戯用品等(例:9503、9508)を含みません。
    • 部注2:「部分品・附属品」という言葉が条文にあっても、汎用部品(例:ボルト等)、84類の機械類、85類の電気機器などは車両部品として扱わない建付けがあります。
    • 部注3:部品・附属品は、原則として「専ら/主として」特定の車両に用いられるかで、該当章に分類します(複数に同程度に使えるものは一般の見出しへ)。
    • 部注4・5:水陸両用車などの扱い、エアクッション車の分類の考え方が示されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例1:車両用の「ねじ・ボルト」を8708で申告したくなる → 典型的に部注2の枠組みで“汎用部品”扱いになりやすい(材質章/汎用品へ)。
    • 例2:車載用の電装品(例:電気機器そのもの) → 部注2により85類側に寄る可能性が高い(「車用」という用途名だけでは8708にできない)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 8708(車両部品)だと思ったものが、84類(機械/原動機/伝動)や85類(電気機器)、または汎用品扱いで別章へ(部注2・3を常に確認)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:第87類は、レール走行のみを目的とする鉄道/軌道用車両を扱いません(第86類へ)。
    • 類注2:本類の「トラクター」の定義(牽引・押すことが本質)。また、トラクターに装着する作業機械は、トラクターと一緒に提示されても原則として各見出しに残る、という整理があります。
    • 類注3キャブ付きのモーターシャシは8706ではなく8702〜8704に入ります。
    • 類注4:8712には子供用自転車を含むが、それ以外の子供用車輪付き玩具は9503。
    • 号注(Subheading Note):8708.22に入る窓の範囲を限定。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「トラクター」=基本的に牽引/押す用途の車両(付随的に工具・種子等を運ぶ設備があってもよい)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • レール走行のみの鉄道用車両 → 第86類
    • 子供用でも「自転車以外」の車輪付き玩具 → 9503

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:キャブ付きシャシ(8706か?8702〜8704か?)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):キャブ(運転室)の有無、当該シャシがバス/乗用/貨物のどれに該当する設計か
    • 現場で集める証憑:シャシ仕様書、外観写真(キャブ含む)、製造者の構成図
    • 誤分類の典型:エンジン付きシャシ=全部8706、と短絡(類注3で否定)。
  • 影響ポイント2:トラクター+作業機械(セット提示時の扱い)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):作業機械が「トラクター用の交換式装置」か、トラクター本体と一体不可分か
    • 現場で集める証憑:カタログ(交換式アタッチメントである旨)、取付構造、梱包明細(別梱か同梱か)
    • 誤分類の典型:トラクターと一緒に入ってきた作業機械を、まとめて8701として申告(類注2の考え方に反することがある)。
  • 影響ポイント3:子供用の“自転車”と“その他の子供用車輪付き玩具”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):「自転車」と言える構造・機能か(ペダル駆動等)、玩具的な簡易品か
    • 現場で集める証憑:製品写真、対象年齢表示、仕様書(駆動方式)
    • 誤分類の典型:子供用=全部9503(類注4で「子供用自転車は8712」とされる)。
  • 影響ポイント4:8708.22(窓)の号注
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):枠の有無、電気・電子装置(ヒーター等)の内蔵、8701〜8705向けの専用性
    • 現場で集める証憑:部品図、部品番号(適用車種表)、電装仕様(ヒーター線、アンテナ等)
    • 誤分類の典型:自動車用ガラスを一律に8708(または逆に一律に第70類)としてしまう(号注の要件で分岐)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:建設機械の走行ベースがトラクターに似ているので8701にしてしまう
    • なぜ起きる:見た目(走行部)だけで判断しがち
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):自走式作業機械は84類に分類されることがあり、税関解説では「作業装置が容易に取り外せるか」等で走行部と作業部を分ける例が示されています。
    • 予防策:
      • 確認資料:作業装置の着脱構造図、工具なしでの着脱可否、カタログの用途説明
      • 社内質問例:「作業装置(排土板・アーム等)は“容易に”外せますか?外した状態で別用途に使いますか?」
  2. 間違い:キャブ付きシャシを8706(シャシ)で申告
    • なぜ起きる:「シャシ」という言葉に引っ張られる
    • 正しい考え方:類注3により、キャブ付きモーターシャシは8702〜8704に入ります。
    • 予防策:写真(キャブ有無)を必ず添付し、車両の用途(人/貨物)も同時に確認
  3. 間違い:ロードトラクター(セミトレーラ牽引用)を8704(貨物車)にしてしまう
    • なぜ起きる:牽引車=トラック、という思い込み
    • 正しい考え方:セミトレーラ用ロードトラクターは8701の系列(HS2022では動力別に細分)です。
    • 予防策:第五輪カプラの有無、設計上の牽引目的、車両分類(メーカー資料)を確認
  4. 間違い:HV/PHEVの区別をせず、8703.40等に固定
    • なぜ起きる:営業資料や品名が「ハイブリッド」だけで終わる
    • 正しい考え方:外部電源にプラグ接続して充電できるかで、8703.40/8703.50と8703.60/8703.70が分かれます。
    • 予防策:充電口・車載充電器仕様の有無を仕様書で確認(「外部充電可」を定義して社内共有)
  5. 間違い:ハイブリッド貨物車を8704.21等(内燃のみ)で申告してしまう(HS2022)
    • なぜ起きる:HS2017の感覚で「ディーゼル車=8704.21」などと固定
    • 正しい考え方:HS2022では内燃のみ(8704.21等)と、内燃+電動(8704.41等)が分かれています。
    • 予防策:パワートレイン構成(推進用電動モーターの有無)を輸入前に確認
  6. 間違い:車両部品は何でも8708に入ると思い、電装品や汎用部品まで8708で申告
    • なぜ起きる:「車両に付く=車両部品」という用途ベースの判断
    • 正しい考え方:部注2で、汎用部品・84類・85類などは“部分品・附属品”の対象外となる整理があり、8708は万能箱ではありません。
    • 予防策:部注2チェックを社内手順化(「84/85/汎用品に該当しないか」を必ず確認)
  7. 間違い:自動車用窓を一律に8708.22(または一律に8708.29)
    • なぜ起きる:号注の要件(枠付き/電装内蔵/専用性)を見落とす
    • 正しい考え方:8708.22に入るのは号注で限定された窓です(枠付き、または電装内蔵等、かつ8701〜8705用として専ら/主として適する)。
    • 予防策:部品図・電装仕様・適用車種表をセットで取得
  8. 間違い:8705(特殊用途)に寄せすぎる/逆に8704(貨物車)に寄せすぎる
    • なぜ起きる:見た目の装備(例:作業架装)だけで決める
    • 正しい考え方:8705は「人/貨物輸送が主目的ではない」特殊用途車。輸送が主なら8704になり得ます。
    • 予防策:装備が恒久的か、輸送機能が主かを仕様書と用途説明で整理(写真だけで決めない)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤分類すると、PSRの前提(CTCの判定階層やRVC計算対象)が崩れ、原産性判断全体が誤るリスクがあります(一般論)。
  • よくある落とし穴(自動車で特に起きやすい一般形):
    • 最終製品(例:8703/8704)と材料(例:8708/84類/85類)のHSを取り違える
    • HS2022で新設された電動・ハイブリッドの号(例:8704.60等)に移ったのに、旧版PSRの見出しで見続けてしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 参照協定が未指定のため一般論ですが、多くの協定は“特定のHS版”に基づくPSR表を持ちます。HS2022(現行HS)での社内コードと、協定PSRの参照HS版がズレる場合は、**トランスポジション(旧→新対応)**が必要です。
  • トランスポジションの実務的な扱い方(一般論):
    • ①協定PSR表の参照HS版を確認
    • ②WCOの相関表(Correlation Tables)で旧コード→新コード対応を確認
    • ③社内の品目マスターに「協定HS版」「現行HS」「対応根拠」を残す
    • 例:HS2017の8701.20が、HS2022では8701.21〜8701.29に分割されているため、協定がHS2017参照の場合は“どの新号に当たるか”の整理が必要

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定ごとの保管期間・証憑(仕入書、製造記録、工程表、原産地資料)を整備

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割/新設8701.20 → 8701.21〜8701.29セミトレーラ用ロードトラクターが、動力(内燃/ハイブリッド/電動等)別に細分化EV/HEVのロードトラクターで6桁が変わる。協定PSRや統計にも影響。
HS2017→HS2022範囲変更+新設8704.21〜8704.32、8704.41〜8704.52、8704.60、8704.908704で「内燃のみ(with only)」の号が明確化され、ハイブリッド(内燃+電動)・電動(電動のみ)を新設号で整理HS2017感覚で8704.21等に入れていた車両が、HS2022では8704.41等/8704.60に移る可能性。
HS2017→HS2022分割/新設(号注追加)8708.29 → 8708.22/8708.29車体部品のうち、一定の窓(枠付き、または電装内蔵等)が8708.22として分離。号注で範囲を定義自動車窓の分類が変わり得る。部品番号・仕様で要件確認が必須。
HS2017→HS2022文言修正(用語簡素化)8702/8703/8711等の「reciprocating」の削除一部のエンジン表現が簡素化(用語の整合)通常は範囲変更ではないことが多いが、旧文言を引用した社内資料は更新推奨。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、WCOのHS条文(HS2017/HS2022の第87類)およびWCO相関表(HS2017↔HS2022)を参照しました。
  • **8701(ロードトラクター)**について、相関表(Table II)においてHS2017の8701.20がHS2022の8701.21〜8701.29へ対応付けられており、HS2022条文でも8701.21〜の細分が確認できます。
  • **8704(貨物車)**について、HS2017条文ではハイブリッド/電動の専用号がなく、その他(8704.90)に収容される余地がありましたが、HS2022条文ではハイブリッド(8704.41〜8704.52)と電動(8704.60)が明示され、相関表でも8704.90から新号群へ対応が示されています。
  • **8708(窓)**について、HS2017では8708.22がなく8708.29に集約されていたのに対し、HS2022で8708.22が新設され、さらに号注で範囲が定義されています。相関表(Table II)でも8708.29→8708.22/8708.29の対応が確認できます。
  • 上記以外については、少なくとも第87類の見出し構成(4桁レベル)はHS2017とHS2022で大枠は維持されていることを、条文上で確認しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

「可能な範囲」で、HS2007→2012→2017→2022の流れで“第87類内で目立つ再編”を整理します(網羅ではなく、実務上インパクトが大きいもの中心)。

変遷主な追加・削除・再編(要旨)旧コード→新コード(例)備考(確認根拠)
HS2007→HS20128714(オートバイ用部分品等)の一部コード体系が整理(例:オートバイ用が8714.10に)8714.11/8714.19 → 8714.10(例)HS2007条文に8714.11/19、HS2012条文に8714.10が確認できる
HS2012→HS20178702(バス等)にハイブリッド/電動の区分が追加8702.10/8702.90 → 8702.10/20/30/40/90HS2012には8702.20等なし、HS2017で追加
HS2012→HS20178703(乗用車)にハイブリッド/プラグイン/電動の区分が追加8703.90中心 → 8703.40〜8703.80等を追加HS2012には8703.40等なし、HS2017で追加
HS2012→HS20178711(二輪)に電動(8711.60)が追加8711.90等 → 8711.60追加HS2012に8711.60なし、HS2017で追加
HS2017→HS20228701(ロードトラクター)が動力別に分割8701.20 → 8701.21〜8701.29相関表で対応、HS2022条文で細分確認
HS2017→HS20228704(貨物車)にハイブリッド/電動を明示(範囲整理)8704.90等 → 8704.41〜8704.60等HS2022条文+相関表で確認
HS2017→HS20228708(窓)を新設号+号注で範囲定義8708.29 → 8708.22/8708.29HS2022条文+号注+相関表で確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):キャブ付きシャシを8706で申告して差し戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注3(キャブ付きシャシは8702〜8704)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「chassis」だけ、写真なし
    • 典型的な影響:修正申告、追加書類要求、検査・通関遅延
    • 予防策:キャブ有無の写真と仕様書を必ず提出、税関相談(事前教示)を検討
  • 事例名:トラクターと交換式作業機械を一括で8701申告
    • 誤りの内容:類注2(作業機械は原則各見出しに残る)
    • 起きやすい状況:セット輸入(同梱)、現場が「一式」で処理
    • 典型的な影響:税番修正、関税/統計の是正、原産地規則の再評価
    • 予防策:梱包明細で品目分け、作業機械の見出しを別途検討
  • 事例名:建設機械(自走式作業機械)を8701扱い
    • 誤りの内容:第84類と第87類の境界(税関解説で例示)
    • 起きやすい状況:「走行部がトラクターと同じ」だけで判断
    • 典型的な影響:税番修正、追加納税、輸入許可後の調査対応
    • 予防策:作業装置の恒久性・着脱性、機能の主従を仕様書で整理
  • 事例名:自動車用窓を8708.22で申告したが要件不足
    • 誤りの内容:8708.22の号注要件(枠付き/電装内蔵等、専用性)
    • 起きやすい状況:ガラス=「車体部品」だから8708、という短絡
    • 典型的な影響:他章への振替、課税価格・税率の再計算、遅延
    • 予防策:枠/電装/適用車種を示す資料を事前に揃える

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 第87類自体は農水産物の検疫とは直接関係しにくい一方、**車両に付随する梱包材(木材)**など別論点が出ることがあります(案件別に確認)。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • 第87類では一般に頻度は高くありません(革/装飾などが絡む場合は別途確認)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 8710(戦車・装甲戦闘車両)や、軍事転用が問題となり得る貨物は、**外為法に基づく輸出管理(リスト規制/キャッチオール等)**の観点で事前確認が必要です。
    • その他の許認可・届出
      • 自動車の輸入通関:税関の案内(カスタムスアンサーPDF)では、通関手続の流れや必要書類、引越貨物としての免税要件などが整理されています。
      • 自動車登録:輸入車を日本で走らせるには登録等が必要で、税関手続とは別に登録用の証明書(例:通関証明書)等が論点になります(税関の英語版案内で言及)。
      • 中古自動車の輸出:輸出抹消仮登録等、国交省での手続を要する旨が税関案内で整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(カスタムスアンサー、事前教示、品目分類事例)
    • 経済産業省(安全保障貿易管理)
    • 国土交通省(輸入車の手続・制度:例としてPHP制度概要)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(動力、排気量、GVW、定員、用途)
    • 写真(全体、車台番号、主要装備)
    • 部品の場合:部品図・適用車種表・材質/機能説明
    • 規制該当性:該非判定資料(必要な場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 車両:用途(人/貨物/特殊)、定員、GVW、排気量、動力構成(HV/PHEV/EV)
    • 部品:どの車両(8701〜8705 or 8711〜8713等)向けか、専用性、電装・機械要素の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 部注2で除外される“汎用品/84類/85類”に該当しないか
    • 類注3(キャブ付きシャシ)や号注(8708.22)などの“地雷”を踏んでいないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名:用途が誤解されない英語/日本語表現(例:road tractor for semi-trailer 等)
    • 補足:型式、スペック表、写真
    • 車両通関:税関案内に沿って必要書類を揃える(輸入車通関、通関証明書申請など)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版を確認し、HS2022との対応を相関表で整理
    • BOM(材料HS)・工程・原価の整合性を点検
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 8710等は輸出管理(METI)を確認
    • 中古車輸出は輸出抹消等の事前手続を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022, Chapter 87(1787_2022e.pdf)[参照日:2026-03-01]
    • WCO HS Nomenclature 2017, Chapter 87(1787_2017e.pdf)[参照日:2026-03-01]
    • WCO HS Nomenclature 2012, Chapter 87(1787_2012e.pdf)[参照日:2026-03-01]
    • WCO HS Nomenclature 2007, Chapter 87(1787_2007e.pdf)[参照日:2026-03-01]
    • WCO Section XVII Notes(1700_2022e.pdf)[参照日:2026-03-01]
    • WCO General Rules for the Interpretation(GIR)(0001_2012e_gir.pdf)[参照日:2026-03-01]
    • WCO HS2017/HS2022 Correlation Tables(Table I, Table II)[参照日:2026-03-01]
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第87類(87r.pdf)」[参照日:2026-03-01]
    • 税関「84類・87類 自走式作業機械の取扱いについて(84rd.pdf)」[参照日:2026-03-01]
    • 税関(カスタムスアンサーPDF)「1109 自動車の輸入通関手続(FAX1109.pdf)」[参照日:2026-03-01]
    • 税関(英語版案内)「Import Clearance Procedures for Vehicles(FAX1109e.pdf)」[参照日:2026-03-01]
    • 税関(カスタムスアンサーPDF)「5502 中古自動車の輸出通関手続(FAX5502.pdf)」[参照日:2026-03-01]
    • 税関「輸入貨物の品目分類事例」[参照日:2026-03-01]
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • (本回答では協定未指定のため一般論。実務では該当協定のPSR表の参照HS版を確認してください)
  • その他
    • 経済産業省「安全保障貿易管理(リスト規制)」[参照日:2026-03-01]
    • 国土交通省(参考)「輸入自動車特別取扱制度(PHP)の概要」[参照日:2026-03-01]

※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記


付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品仕様書(用途、構造、材質、動力、排気量、GVW、定員)
    • 写真(全体・銘板・主要装備)
    • 部品は「適用車種(どの8701〜8705/8711〜8713に専用か)」が分かる資料(部品番号と互換表が強い)
    • 既存の分類実績(他国税関のBTI等があれば添付。ただし最終判断は日本税関)
  • 探し方の導線(日本)
    • 税関サイトには「輸入貨物の品目分類事例」が類別に掲載されています(まず既存事例を検索)。
    • 事前教示制度(品目分類)もカスタムスアンサー等で案内されています(手続や必要資料の目安を確認)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第86類:鉄道用又は軌道用の機関車及び車両並びにこれらの部分品、鉄道又は軌道の線路用装備品及びその部分品並びに機械式交通信号用機器(電気機械式のものを含む。)

(Railway or tramway locomotives, rolling-stock and parts thereof; railway or tramway track fixtures and fittings and parts thereof; mechanical (including electro-mechanical) traffic signalling equipment of all kinds)実務向け整理

※用語統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 電気機関車(外部電源・蓄電池駆動)=8601
    • ディーゼル電気機関車、蒸気機関車等の「その他の機関車」=8602
    • 自走式の鉄道用・軌道用の客車/貨車(電車・気動車等)=8603
    • 線路保守・作業用車両(自走式か否かを問わない)=8604
    • 貨車(非自走)=8606、台車・ブレーキ等の部分品=8607
    • 転車台・積載限界ゲージ・機械式(電気機械式含む)の信号・交通管制機器=8608、インターモーダルコンテナ=8609
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 木製・コンクリート製のまくら木、空気浮上式鉄道用のコンクリート製案内軌道走行路:第44.06項/第68.10項
    • 鉄鋼製レール等の線路用建設資材:第73.02項
    • 信号用・安全用・交通管制用の電気機器第85.30項
    • 「ただのケース・木箱」など、多方式輸送用に特に設計・装備されていない容器:構成材料で分類(例:木製・金属製の該当項)
    • 道路用トレーラー(主として道路トレーラーとして使用):87.16
    • 玩具の列車:95.03(参考:税関解説で除外例として挙示)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 「信号・管制」が“機械式(電気機械式含む)”か、“電気機器(電子機器)”か:8608 ↔ 8530の境界が最大の地雷です。
    • 「部分品」かどうか:Section XVIIの部注(汎用部品・汎用品の除外、専ら/主としての使用)で、8607に行けないケースが多発します。
    • 道路・鉄道の両用車両:原則、Chapter 87側に寄る規定があるため要注意です。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 8608(機械式)で申告したが、実物はPLC・電子制御主体で85.30相当だった、など(税番差+規制・原産地ルールにも波及)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • GIR1(見出し文言+注で決める)
    第86類は、類注(Chapter Notes)で「この類に含めないもの(=除外)」と「8607/8608に含むもの」が明確です。まず注を読み、除外(44.06/68.10、73.02、85.30)に当たらないか確認します。
  • GIR2(a)(未完成・未組立でも“完成品の重要な特性”があれば完成品扱い)
    鉄道車両は、未完成でも「車両としての重要な特性」を備える場合があり得ます。日本税関解説でも未完成車両の考え方と例示が整理されています。
  • GIR6(6桁の号レベルは、同じ“号”同士で比較)
    例:貨車(8606)内で「タンク貨車(8606.10)」か「自動荷卸し(8606.30)」か等は、号の文言と条件(形状・機能)で詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 自走式か否か(8601〜8603 vs 8605〜8606)
    • 用途(保守・作業用か、輸送用か)(8604 vs 8603/8605/8606)
    • 信号装置の方式(機械式/電気機械式 vs 電気式)(8608 vs 8530)
    • 部分品の性格(汎用部品/一般機械/電気品を除外)(Section XVII部注)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物は「鉄道用又は軌道用」か?(車両・線路装備・信号・コンテナ)
    • “鉄道・軌道”は、通常のレールだけでなく、磁気浮揚式走行路やコンクリート軌道等の誘導システムも含む扱いがあります(税関解説上の整理)。
  • Step2:それは「完成車両(自走/非自走)」か?「部分品」か?
    • 自走:8601〜8603へ(ただし8604除外)
    • 非自走の客車等:8605、貨車:8606
    • 部分品:原則8607だが、Section XVII部注で弾かれないか確認
  • Step3:線路用装備・信号装置か?
    • 機械式(電気機械式含む)の信号・安全・交通管制、または線路用装備品:8608へ
    • ただし、電気式の信号・安全・交通管制機器は85.30(第86類注で明確に除外)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第86類 ↔ 第73.02項(線路用建設資材:レール・分岐器用の一部資材等)
    • 第86類 ↔ 第85.30項(信号・安全・交通管制の“電気機器”)
    • 第86類 ↔ 第87類(道路・鉄道両用車両)
    • 8609(コンテナ) ↔ “単なる包装容器”(材料で分類)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第86類は4桁見出しが多くないため全列挙します(8601〜8609)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8601外部電源または蓄電池により走行する鉄道用機関車架線集電の電気機関車、蓄電池機関車“電気機関車”でも、ディーゼル等は8602へ。外部電源か蓄電池かで6桁分岐。
8602その他の鉄道用機関車および炭水車蒸気機関車、ディーゼル機関車、炭水車8602.10は“ディーゼル電気”。油圧式・機械式ディーゼル等は8602.90側になり得る。
8603自走式の鉄道用・軌道用客車/貨車(8604除外)電車(EMU)、気動車(DMU)、自走式路面電車8604(保守・作業用車両)を除外。動力が外部電源か否かで6桁分岐。
8604鉄道/軌道の保守用・作業用車両(自走式か否か問わず)バラストタンパ、軌道検測車、軌道作業車、クレーン車例示が見出しに明記。道路・鉄道両用車両は部注で第87類へ寄る規定に注意。
8605非自走の客車等(旅客車・手荷物車・郵便車・特殊用途車)客車、郵便車、荷物車自走式なら8603へ。8604(作業用)を除外。
8606非自走の貨車タンク貨車、ホッパー貨車、無蓋貨車、有蓋貨車8606.92は「無蓋で側板固定・側板高>60cm」。条件確認が必須。
8607機関車/車両の部分品台車、輪軸、ブレーキ装置、連結器、車体部材類注で8607に含む範囲が例示。Section XVII部注で“汎用部品/電気品”等を除外。
8608線路用装備品+機械式(電気機械式含む)信号・交通管制機器+部分品転車台、積載限界ゲージ、機械式信号機、踏切用制御機等類注で含有例示。電気式信号機器は85.30に除外。税関解説で除外例(信号用ランプ等)も整理。
8609コンテナ(多方式輸送用に特に設計・装備/液体用含む)ISOコンテナ、タンクコンテナ、断熱コンテナ等“フック・吊り輪・キャスター・支持具”等の装備が典型。単なるケース等は材料で分類。道路用トレーラーは87.16除外。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    第86類は“材質割合”よりも、**機能(動力方式、用途、構造、装備)**が分岐条件になりやすい類です。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8601.10 / 8601.20(電気機関車:外部電源 vs 蓄電池)
      • どこで分かれるか:走行用電力の主供給源が、架線・第三軌条等の外部電源か、車上の蓄電池か。
      • 判断に必要な情報:主電源方式、集電装置の有無(パンタグラフ等)、バッテリー容量・用途。
      • 典型的な誤り:ハイブリッド/補助電源の有無だけで“蓄電池”と誤解する(主たる走行電源で判断)。
    2. 8602.10 / 8602.90(その他の機関車:ディーゼル電気 vs その他)
      • どこで分かれるか:“ディーゼル電気”=ディーゼルエンジン直結発電機→電流で牽引電動機を駆動、という駆動方式(税関解説に説明あり)。
      • 判断に必要な情報:動力伝達方式(電気式/油圧式/機械式/蒸気/ガスタービン等)、主構成(発電機・牽引電動機の有無)。
      • 典型的な誤り:ディーゼル機関車=全部8602.10と短絡(油圧式・機械式ディーゼルは8602.90側になり得る)。
    3. 8603.10 / 8603.90(自走式車両:外部電源 vs その他)
      • どこで分かれるか:外部電源で走る電車等(8603.10)か、それ以外(ディーゼル、蓄電池等=8603.90)か。
      • 判断に必要な情報:電源方式、主機関仕様。
      • 典型的な誤り:車両が電動機を持つ=8603.10と誤解(車上発電のディーゼル電気方式等は“外部電源”ではない)。
    4. 8606.91 / 8606.92 / 8606.99(貨車:有蓋・無蓋(側板固定・側板高>60cm)・その他)
      • どこで分かれるか:
        • 8606.91:Covered and closed(有蓋・密閉)
        • 8606.92:Open(無蓋)かつ 側板が取り外せない、さらに 側板の高さが60cmを超える
        • 8606.99:その他
      • 判断に必要な情報:屋根・側壁の有無、側板が固定か可動か、側板高さ(>60cmか)。
      • 典型的な誤り:「無蓋=全部8606.92」と誤解(側板固定・高さ条件を満たさないと8606.99側)。
    5. 8607.21 / 8607.29(ブレーキ:空気ブレーキ vs その他)
      • どこで分かれるか:ブレーキ装置が空気式(air brakes)か、その他方式か。
      • 判断に必要な情報:ブレーキ方式(空気・油圧・電磁等)、構成部品の仕様書。
      • 典型的な誤り:車両側の“空気配管がある”だけで空気ブレーキと断定(部品単体の方式で判断)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section XVII 注2:「部分品」「部分品及び付属品」として扱わないもの(汎用性の部分品、機械(84類)、電気品(85類)等)が列挙されています。
    • Section XVII 注3:“専ら又は主として”第86〜88類の物品に使用されることが、部分品・付属品として分類されるための重要条件です。
    • Section XVII 注4:道路・鉄道の両用車両は原則第87類の該当見出しへ、という規定があります。
    • Section XVII 注5:空気クッション車両(hovertrains等)の分類ルールがあり、ガイドトラック上を走るhovertrainsは第86類側に寄ります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:鉄道車両用に設計された台車でも、そこに使う「汎用のボルト・ナット」は“部分品”扱いされず、材質により分類されます(Section XVII注2の考え方)。
    • 例:道路と線路の両方を走る保守車両は、見た目が“鉄道用”でも、部注により第87類で検討が必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • **電気機器(Chapter 85)**に飛ぶ(例:電気式信号・管制機器)
    • 84類の機械・装置に飛ぶ(例:車両に搭載される一般機械で、Section注2(e)の除外に該当)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第86類は、(a)木/コンクリ製まくら木等、(b)73.02の線路用鉄鋼建設資材、(c)85.30の電気式信号・安全・交通管制機器を含まない
    • 注2:8607(部分品)に含まれる代表例(輪軸、台車、ブレーキ装置、連結器、車体等)を列挙。
    • 注3:注1の物品を除き、8608に含まれる代表例(組立線路、転車台、積載限界ゲージ、腕木信号機等の機械式信号装置)を列挙。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 条文上の定義文は限定的ですが、日本税関解説では「鉄道・軌道」の範囲を広く捉える説明(磁気浮揚式・コンクリート軌道等の誘導システムも含む)が示されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 44.06/68.10(まくら木・案内軌道走行路)、73.02(線路用鉄鋼資材)、85.30(電気式信号・管制)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:信号・交通管制機器:8608(機械式/電気機械式)↔ 85.30(電気式)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 駆動方式(機械連動、電気機械式=モーター+機械連結、電子回路主体 等)
      • 電気部品の有無ではなく、**“機器として電気式か”**が争点になりやすいです。
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(制御方式・ブロック図)、配線図、写真、設置図、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • 踏切制御装置を「鉄道の信号だから8608」としたが、実態が電気式信号・制御(85.30)だった。
  • 影響ポイント2:8607(部分品)に行けるか:Section XVII 注2・注3で弾かれる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が“専ら又は主として”鉄道車両に使われる設計か(共用品か)
      • 汎用部品(ねじ・ボルト・ワッシャー等)や電気品(85類)に当たらないか
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(取付穴位置等)、適合車種リスト、メーカーの用途説明、販売実態(カタログ)、部品表(BOM)
    • 誤分類の典型:
      • 形鋼・板材を「車両用フレーム部材」と称して8607申告したが、加工が不十分で汎用品扱いになった。
  • 影響ポイント3:道路・鉄道両用車両の章跨ぎ(第87類へ)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 走行機構(道路走行装置の有無・主要性)、車両設計コンセプト(“両用”として特に設計されているか)
    • 現場で集める証憑:
      • 型式仕様、走行モード説明、写真(タイヤ/レール輪の構成)、取扱説明書
    • 誤分類の典型:
      • 軌道保守車両を8604で固定してしまい、部注4の検討が漏れる。
  • 影響ポイント4:8609(コンテナ)↔ “単なる容器”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 多方式輸送(道路・鉄道・海上・航空等)を想定し、荷役・固定のための取付具を装備しているか
    • 現場で集める証憑:
      • 外観写真(コーナーフィッティング等)、仕様書、ISO規格適合情報、用途説明
    • 誤分類の典型:
      • 大型の箱=コンテナとして8609申告したが、吊り具等の装備がなく材料分類だった。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:レール・分岐器周りの鉄鋼材を8608(線路用装備品)にしてしまう
    • なぜ起きる:現場では「線路部材=8608」と一括で呼びがち。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注1で73.02の線路用鉄鋼建設資材は除外。税関解説でも、転轍棒などが73.02になり得る旨の注意があります。
    • 予防策:
      • 図面で“レール/継目板/ポイント部材”か、“転車台等の装置”かを切り分ける
      • 社内質問例:「その部材は73.02でいう“線路用建設資材”の範囲ですか?(レール、継目板、分岐器の構成材等)」
  2. 間違い:踏切・信号システムを8608に固定し、電気式(85.30)を見落とす
    • なぜ起きる:「鉄道信号」という用途名に引っ張られる。
    • 正しい考え方:類注1(c)で電気式の信号・安全・交通管制機器(85.30)は第86類から除外
    • 予防策:
      • 仕様書で「機械式(連動棒・レバー)」「電気機械式(モーター+機械)」か、「電気/電子(センサー+電子制御)」かを確認
      • 社内質問例:「制御の主体は機械連動ですか?それとも電気/電子制御ですか?」
  3. 間違い:道路・鉄道両用車両を第86類(8604等)で申告する
    • なぜ起きる:実使用が鉄道現場中心だと“鉄道用”に見える。
    • 正しい考え方:Section XVII 注4により、道路・鉄道両用として特に構築された車両は第87類での検討が必要。
    • 予防策:
      • 道路走行装置(タイヤ等)の仕様と役割の確認
      • 社内質問例:「道路走行は補助ですか?両モード走行を前提に設計されていますか?」
  4. 間違い:台車に取り付けていない車体(客車・貨車の車体)を、完成車(8605/8606)として申告する
    • なぜ起きる:“車体=車両”と思いがち。
    • 正しい考え方:税関解説では、台車に取り付けていない車体は、車両の部分品(8607)として扱う趣旨が明記されています。
    • 予防策:
      • 出荷形態(台車付き/なし、走行装置の有無)を写真で確認
      • 社内質問例:「出荷時点で走行装置(台車・輪軸)は付いていますか?」
  5. 間違い:ディーゼル機関車を一律8602.10(ディーゼル電気)にする
    • なぜ起きる:ディーゼル=ディーゼル電気と誤解。
    • 正しい考え方:税関解説でディーゼル機関車の方式(電気式/油圧式/機械式)が整理されており、“電気式”であることが8602.10のポイント
    • 予防策:
      • 動力伝達方式(発電機→牽引電動機か)を仕様書で確認
  6. 間違い:貨車の無蓋タイプを条件確認なしで8606.92にする
    • なぜ起きる:無蓋貨車=8606.92と覚えてしまう。
    • 正しい考え方:8606.92は「側板固定」かつ「側板高>60cm」という条件付き。
    • 予防策:
      • 側板の固定/可動、側板高さを採寸・図面で確認
  7. 間違い:8607(部分品)と、Section XVII 注2の除外(汎用部品・電気品等)を混同する
    • なぜ起きる:“車両に使う=全部8607”と短絡。
    • 正しい考え方:Section XVII 注2で、電気機器(85類)等は“部分品”扱いしない、と整理。
    • 予防策:
      • 材質・機能・汎用性の確認(“ボルトはボルト”)
  8. 間違い:8609(コンテナ)に、単なる大型箱・保管箱を入れてしまう
    • なぜ起きる:物流現場で“コンテナ”と呼ぶ範囲が広い。
    • 正しい考え方:多方式輸送のために**特に設計・装備(吊り具等)**した容器が8609。単なるケース等は材料で分類。
    • 予防策:
      • コーナーフィッティング等の装備有無、繰返し使用前提、荷役容易性の設計を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。
    例:完成車両(8603/8605/8606)と部分品(8607)でPSRが全く変わることがあり、誤分類すると原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • **材料側HS(部材・電子機器)**が、Section XVII注2の除外で別章になるのに、BOM上は“鉄道部品”としてまとめてしまう
    • **未完成品(GIR2(a)相当)**の扱いを誤り、完成品HSで見るべきところを部品HSで評価してしまう(または逆)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 参照するFTA/EPA:未指定(取引の協定本文・付属書で要確認)
  • 一般論:
    • 多くの協定は、特定のHS版(例:HS2012等)を参照してPSRを記載します。自社の申告HS(HS2022)と協定HS版がズレる場合、**トランスポジション(旧→新対応)**が必要です。
    • 第86類は、WCO相関表上、HS2007→2012→2017→2022の各版で8601〜8609の変更が示されていません(変更がある場合に掲載される相関表に該当が見当たらない)。
      ただし、個別協定の運用(各国の国内コード・解釈)まで同一とは限らないため、協定本文・税関ガイダンス確認が前提です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • “部分品”の判定に効く資料(用途・適合・図面)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定ごとの自己申告/第三者証明、保存期間、サプライヤー証明の形式を確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(WCO条文・相関表上、該当変更の表示なし)8601〜8609見出し・類注・号の構造に変更なし過去版からの移行コストは小さい(ただし国内細分・運用差は別途)
HS2012→HS2017変更なし(相関表に該当表示なし)8601〜8609同上同上
HS2007→HS2012変更なし(相関表に該当表示なし)8601〜8609同上同上

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断:
    • WCOのHS2017 Chapter 86とHS2022 Chapter 86を比較すると、**類名、類注1〜3、見出し(8601〜8609)、号(例:8606.92 “Open, with non-removable sides of a height exceeding 60 cm” 等)**が同一です。
    • WCOのHS2017→HS2022相関表(Table I/II)は、変更・新設された号を列挙する性格ですが、表中に「860…」が見当たりません。
      以上から、HS2017→HS2022で第86類(HS6桁レベル)の変更はないと整理しました。
  • 変更がない場合も「変更なし」と明示:上記の通りです。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第86類)
版間主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(6桁)補足
HS2007→HS2012変更なし(相関表に該当表示なし)該当なし相関表は“変更がある号”を中心に掲示されるため、860…が出ない=変更なしの整理
HS2012→HS2017変更なし(相関表に該当表示なし)該当なし同上
HS2017→HS2022変更なし(WCO相関表に該当表示なし)該当なし同上

※注意:各国の「国内コード」(8桁/9桁等)の新設・改廃は、HS6桁とは別に起こり得ます。国内コードに触れる場合は、必ず各国関税率表で確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):踏切制御装置を8608で申告したが、電気式と判断された
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第86類注1(c)(85.30除外)に抵触
    • 起きやすい状況:品名が「踏切信号装置」「鉄道用信号」など用途名中心で、方式(機械式/電気式)の説明がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延
    • 予防策:方式が分かる仕様書(制御ブロック図・配線図)を添付、必要なら税関の事前相談
  • 事例名:転轍棒(ポイントロッド)を8608の部分品として申告
    • 誤りの内容:税関解説で、線路下を通って連結する転轍棒等は73.02に属し得る旨の注意(結果として第86類外)
    • 起きやすい状況:線路装置一式の一部として、部材レベルの分類が雑になる
    • 典型的な影響:税番差・関税差、仕入原価計算やPSRに波及
    • 予防策:装置(8608)と建設資材(73.02)を部材表で分離、図面で位置・機能を明確化
  • 事例名:台車なしの車体を完成貨車(8606)として申告
    • 誤りの内容:税関解説で「台車に取り付けていない車体」は8607(部分品)側で扱う趣旨
    • 起きやすい状況:出荷単位が“車体のみ”なのに、社内名称が「貨車」
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、追加資料要求
    • 予防策:出荷形態(台車有無)を写真・仕様で説明、インボイス品名に“car body (without bogies)”等の補足
  • 事例名:道路・鉄道両用保守車両を8604で申告
    • 誤りの内容:Section XVII 注4(両用車両はChapter 87)を見落とし
    • 起きやすい状況:現場用途が鉄道中心で、道路走行機能を軽視
    • 典型的な影響:税番変更、規制・統計の再整理
    • 予防策:走行モード仕様・写真提出、事前教示の活用
  • 事例名:大型保管箱を8609(コンテナ)で申告
    • 誤りの内容:8609は多方式輸送向けに特に設計・装備した容器。単なるケース等は材料分類(税関解説に除外例)。
    • 起きやすい状況:物流用語の“コンテナ”をそのままHSに当てはめる
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税
    • 予防策:吊り具・支持具等の有無、繰返し使用設計の説明を準備

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 鉄道車両・部品・信号機器は、仕様(スペック)や用途、需要者によっては外為法のリスト規制またはキャッチオール規制の検討対象になり得ます。
    • キャッチオール規制は、(要約すると)輸出貨物・技術が大量破壊兵器等や通常兵器に用いられるおそれがあると知った場合、または当局からインフォーム通知を受けた場合に許可が必要となる制度です。
    • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
      • 経済産業省「安全保障貿易管理(概要)」、リスト規制・キャッチオール規制のページ
    • 実務での準備物(一般論):
      • 該非判定資料(仕様書・カタログ)、用途・需要者情報、輸出管理の社内記録(取引審査)
  • その他の許認可・届出(該当がある場合のみ)
    • 信号・通信機器が無線を含む等、別法令が関与する可能性はあります(ただし、無線装置は通常Chapter 85側での分類・規制検討が中心になります)。
    • 具体的な該当性は品目仕様に依存するため、個別確認が前提です。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 完成品か部分品か、出荷形態(未完成/未組立含む)
    • 自走式/非自走、動力方式(外部電源/蓄電池/ディーゼル電気/その他)
    • 信号・管制は方式(機械式/電気機械式/電気式)
    • コンテナは装備(吊り具・支持具等)と多方式輸送設計の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(44.06/68.10、73.02、85.30)に触れていないか
    • 8607の“部分品”がSection XVII部注で弾かれないか(汎用部品・電気品等)
    • 道路・鉄道両用車両は部注4の再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「self-propelled / not self-propelled」「car body without bogies」等、判断に効く語を入れる
    • 図面・写真・仕様書を添付できるよう整理
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終製品HSと材料HSの整合、協定参照HS版の確認、トランスポジションの要否
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • METIのリスト規制/キャッチオール規制の該当性確認(用途・需要者含む)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 86(条文・見出し) (参照日:2026-02-28)
    • WCO HS Nomenclature 2017:Chapter 86(比較用) (参照日:2026-02-28)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022:Table I / Table II (参照日:2026-02-28)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第86類(86r)」 (参照日:2026-02-28)
    • 税関「事前教示回答(品目分類)」検索・案内 (参照日:2026-02-28)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • (本回答では協定を特定していないため、個別協定の条文引用は省略。取引協定の附属書PSR・運用指針で参照HS版を確認してください。)
  • その他(規制)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(制度概要) (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:補完的輸出規制(キャッチオール規制) (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:リスト規制の説明 (参照日:2026-02-28)

【訂正箇所(前回回答からの主な修正・追記)】

  • WCOのHS2017/HS2022 Chapter 86本文を直接突合し、「見出し・類注・号が同一」である根拠を明確化しました(引用ではなく要約)。
  • HS改正差分(7章・8章)について、WCO相関表(HS2017–2022)に第86類(860…)の掲載がない事実を根拠として明示し、論拠の書き方を強化しました。
  • 8608と85.30の境界(機械式/電気機械式 vs 電気式)を、第86類注1(c)・注3の位置付けに沿って整理し、誤分類パターンと必要資料を追記しました。
  • 8607(部分品)の扱いを、**Section XVII部注(汎用部品・電気品等の除外、専ら/主として使用)**と結びつけて説明を増補しました。
  • 8609(コンテナ)について、税関解説の説明(装備要件・除外例:ケース、道路用トレーラー、モジュール式建築ユニット等)を反映し、記述を精緻化しました。
  • 規制(安全保障貿易管理)は、民間二次資料中心の説明を改め、経済産業省の公式ページを主参照にして校正しました。
  • 文章全体を、見出しごとに冗長箇所を削りつつ「判断に必要な情報」「社内質問例」が読み取りやすいように再配置しました(体裁・用語統一)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第85類:電気機械器具及びその部分品並びに録音機、録音再生機及びテレビジョンの画像及び音声の記録機又は再生機並びにこれらの部分品及び附属品(Electrical machinery and equipment and parts thereof; sound recorders and reproducers, television image and sound recorders and reproducers, and parts and accessories of such articles)

用語:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 電動機・発電機・変圧器・整流器(8501〜8504)
    • 一次電池・蓄電池(8506、8507)※蓄電池は注で範囲拡張あり
    • 通信機器(電話、基地局、ルーター等:8517)※スマホ定義あり
    • フラットパネル・ディスプレイモジュール(8524)※優先規定あり
    • 半導体・IC(8541、8542)
    • 電気・電子機器の廃棄物・スクラップ(8549)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 半導体製造装置等(8486)→ 第84類(第85類注1(c)で除外)
    • 医療用の真空装置(9018)→ 第90類(第85類注1(d)で除外)
    • 電気毛布・電熱衣類等(第85類注1(a)で除外)→ 別見出し(製品実態で確認)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 8524(ディスプレイモジュール)か、8528(モニタ/TV)か:注7で8524が優先とされ、ただし“信号変換等の機能を持つと別見出しの性格”になります。
    • スマホ(8517.13)か、その他電話/端末か:注5でスマホ定義が明確化されています。
    • 廃棄物(8549)か、中古品(再使用)か:Section XVIのe-waste定義+日本のバーゼル法運用が絡み、高リスク領域です。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第85類は“電気的機能”で枝が細かいため、まず注(特に注5・注7・注12)で用語の定義と優先規定を確認します。
  • 部注(Section XVI Note 2)の部分品ルールにより、同じ「部品」でも「どの機器の部品か(主用性)」が分類を左右します。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第85類注1の除外をチェック(例:8486、9018等)
  • Step2:完成品か、部分品か(Section XVI Note 2で“主用性”を確認)
  • Step3:ディスプレイ関連なら注7で8524を優先検討
  • Step4:通信機器なら注5(スマホ定義)を確認し8517へ
  • Step5:廃棄物・スクラップならSection XVI Note 6と8549を検討
  • よく迷う境界:
    • 8524(モジュール) vs 8528(モニタ/TV)
    • 8517(通信) vs 8525(送信/カメラ) vs 8526(レーダー等)
    • 8541(半導体素子) vs 8542(IC) vs 8534(印刷回路)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第85類の4桁見出しを全列挙(HS2022の見出し・注に基づく)
  • 注記:HS2022では 8520(85.20)は欠番(角括弧表示)です。

表(1/2):8501〜8529

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8501電動機・発電機(発電セット除く)サーボモータ、発電機8502(発電セット)と区別
8502発電セット、ロータリーコンバータ発電機セットエンジン一体のセット構成を確認
85038501/8502の部分品モータ用部品部品の専用性(主用性)を説明
8504変圧器、静止型変換器、インダクタ変圧器、インバータ、UPS等UPSは8504になりやすい(構成確認)
8505電磁石、永久磁石、電磁クラッチ等電磁チャック、磁石用途と構造確認
8506一次電池(非充電)乾電池8507(蓄電池)と区別
8507蓄電池(充電式)リチウムイオン電池注3で“補助部品付き”も蓄電池に含み得る
8508掃除機家庭用掃除機84類注で84類から除外される位置づけ
8509家庭用の電動機器(モータ内蔵)ミキサー、フードプロセッサ注4:原則20kg以下等/除外例も明記
8510電気かみそり等(モータ内蔵)シェーバー家庭用器具として特掲
8511内燃機関用の点火・始動装置等スタータモータ等8501〜8504の一般機器とは別体系
8512車両等の照明・信号装置等車載ライト、ワイパー等8513(携帯灯)と別
8513携帯電灯(自蔵電源)懐中電灯電源方式確認
8514電気炉・誘導加熱等電気炉、誘導加熱装置8417(非電気炉)と境界
8515電気/レーザー等の溶接・切断機アーク溶接機、レーザー溶接8468(8515以外)と境界
8516家庭用電熱器具等電気ケトル、ヘアドライヤ8509注4で8516は除外扱い
8517電話・データ送受信装置等スマホ、ルーター、基地局注5でスマホ定義/部品の優先規定も絡む
8518音響機器(マイク/スピーカ等)ヘッドホン、アンプ8519〜との区別
8519録音・再生装置(音声)オーディオプレーヤー8521(映像)と区別
8521映像の記録・再生装置レコーダー8522(部品)と連動
85228519〜8521の部品・付属品交換針等専用性資料
8523記録媒体、SSD、スマートカード等SSD、メモリカード注6で定義あり
8524フラットパネル・ディスプレイモジュールLCD/OLEDモジュール注7:定義+“8524優先”/信号変換機能等で別見出し化
8525送信機器、TVカメラ/デジカメ等放送送信機、デジカメ8517/8526との機能境界。注・細分注意
8526レーダー、無線航法、無線遠隔制御レーダー装置用途で明確
8527ラジオ受信機ラジオ8528(TV受信)と区別
8528モニタ/プロジェクタ、TV受信機PC用モニタ、TV8524(モジュール)と混同注意
85298524〜8528用部分品チューナ部品等Section XVI Note 2(b)で“8524用部品は8529”など整理

表(2/2):8530〜8549

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8530鉄道・道路等の電気信号装置踏切制御等8531との違い(用途)
8531電気の音響/視覚信号装置警報器、表示盤車両用は8512等も検討
8532コンデンサ電解コンデンサ8542(IC)等と別
8533抵抗器(加熱抵抗除く)可変抵抗8516等の加熱抵抗は別
8534印刷回路プリント基板(裸)注8:印刷工程で形成された回路が範囲
85351000V超の開閉・保護装置等高圧遮断器8536との電圧境界
85361000V以下の開閉・保護装置等低圧スイッチ、コネクタ光ファイバ用コネクタ定義あり
8537配電盤等制御盤、分電盤注10で除外あり(赤外線リモコン等は8543)
85388535〜8537の部分品配電盤部品専用性立証
8539ランプ類LEDランプ等LEDの定義(注11)でモジュール/ランプ区別
8540真空管等ブラウン管等技術的に古いが項は残存
8541半導体デバイス等太陽電池セル、LED素子注12で定義
8542電子集積回路CPU、メモリIC注12で定義(MCO含む)
8543他に特掲のない電気機器各種電気機器8537注10除外の赤外線リモコン等が来得る
8544絶縁電線・ケーブル等(光ファイバケーブル含む)USBケーブル、電力ケーブル端子付でも基本は8544になり得る(要確認)
8545炭素電極等カーボンブラシ用途確認
8546電気用がいし磁器がいし材質問わず
8547絶縁物のみから成る絶縁用部品絶縁スペーサ“絶縁物のみ”要件に注意
8548他に特掲のない電気機械部品電気機器の部品まず特掲(8538/8529等)に入らないか確認
8549電気・電子機器の廃棄物・スクラップ廃基板、e-wasteSection XVI Note 6の定義+バーゼル法運用が重要

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理
    • OS・アプリ実行能力(スマホ定義)
    • 表示装置が“モジュール”段階か、完成品(モニタ等)か(8524の優先と例外)
    • 充電式か否か、BMS等の付帯部品の有無(8507注3)
    • 半導体/ICの定義(8541/8542の境界)
    • 廃棄物の状態・混合・破砕・選別の程度(8549)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 8517.13(スマートフォン)周り
  • どこで分かれるか:
    • 注5で「携帯網用電話で、モバイルOSを搭載し、ADP的機能(複数アプリの同時実行、第三者アプリのDL/実行等)を行えるもの」がスマホと定義されています。
  • 判断に必要な情報:
    • OS種別、アプリ実行、通信方式、製品仕様書(SoC/OS/アプリ)
  • 典型的な誤り:
    • “小型PC”として8471に寄せる(8471注・8517注の整理が優先)。
  1. 8524(フラットパネル・ディスプレイモジュール) vs 8528(モニタ/TV)
  • どこで分かれるか:
    • 注7で8524は「他の物品に組み込まれることを前提とした表示モジュール」を定義し、8524が他の見出しに優先。ただし、スケーラIC等の“信号変換”などを備え、他見出しの性格を帯びるものは8524から外れる整理です。
  • 判断に必要な情報:
    • 構成部品(スケーラ/デコーダ/アプリプロセッサの有無)、入出力、単体使用可否
  • 典型的な誤り:
    • “液晶パネル”を一律8528(モニタ)扱いしてしまう(モジュール段階なら8524が優先になり得る)。
  1. 8507(蓄電池)—BMS付き電池パック
  • どこで分かれるか:
    • 注3で、蓄電池は「コネクタ、温度制御、回路保護等の補助部品付き」や「使用機器の保護ハウジングの一部を含む」形態も含み得ます。
  • 判断に必要な情報:
    • 充電式の有無、BMS構成、ハウジング範囲、機器本体と一体か
  • 典型的な誤り:
    • BMS付き=8504(コンバータ)と短絡(実体が蓄電池であれば8507検討)。
  1. 8541(半導体デバイス) vs 8542(IC)
  • どこで分かれるか:
    • 注12で、半導体デバイス/ICの定義が整理されています(MCOの概念も含む)。
  • 判断に必要な情報:
    • デバイス構造(単体素子か、集積回路か)、パッケージ、データシート
  • 典型的な誤り:
    • “電子部品だからIC”と決め打ちし、8541/8542の定義確認を省略。
  1. 8549(e-waste) vs 通常の部品/スクラップ
  • どこで分かれるか:
    • Section XVI Note 6の“電気・電子廃棄物・スクラップ”の定義に合うかどうか。
  • 判断に必要な情報:
    • 廃棄目的か、再使用(リユース)目的か、選別・破砕状況、混合物の内容
  • 典型的な誤り:
    • “中古品輸出”と称して実質廃棄物を輸出し、バーゼル法上の問題を起こす。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section XVI Note 2(部分品):第85類でも「どの機器の部品か」が分類に直結します。
    • Section XVI Note 2(b)の“部品の優先”:通信機器(8517)と放送/カメラ等(8525〜8528)の部品の扱いなど、優先規定が効きます(HS2022でフラットパネル関連の改正も反映)。
    • Section XVI Note 6(e-waste):8549の適用判断の基礎。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ディスプレイモジュール(8524)用の専用部品は8529側の整理が絡み得る(注・部注の優先を確認)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:8486(半導体製造装置等)、9018(医療用真空装置)等の除外。
    • 注3:8507(蓄電池)の範囲(補助部品・ハウジング一部を含み得る)。
    • 注4:8509(家庭用電動機器)の範囲(重量要件、除外機器の列挙)。
    • 注5:8517(スマホ定義)。
    • 注7:8524(フラットパネル・ディスプレイモジュール定義、優先規定、例外)。
    • 注12:8541/8542(半導体・IC定義、MCO含む)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 8486(第84類)へ:第85類注1(c)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:8524(ディスプレイモジュール)の優先規定
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 組込み前提のモジュールか、完成表示装置(モニタ等)か
      • スケーラIC/デコーダIC/アプリプロセッサ等の“信号変換・処理”の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 回路構成図、BOM、データシート、I/O仕様、写真
    • 誤分類の典型:
      • パネル=8528(モニタ)と短絡して8524の優先規定を見落とす。
  • 影響ポイント2:8517(スマホ定義)
    • 何を見れば判断できるか:
      • モバイルOS、アプリの同時実行、第三者アプリのDL/実行等
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様書(OS/SoC/機能)、ユーザーマニュアル
    • 誤分類の典型:
      • スマホを“携帯端末一般”として雑に扱い、細分(スマホ)を落とす。
  • 影響ポイント3:8549(e-waste)とバーゼル法
    • 何を見れば判断できるか:
      • 再使用か廃棄か、破損/欠損状況、混合物の内容、処理目的
    • 現場で集める証憑:
      • 動作確認記録、梱包写真、検品結果、契約書(再使用目的の裏付け)
    • 誤分類の典型:
      • HSだけ整えて“中古”として輸出→実務上はバーゼル法判断で止まる。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:スマホを8471(ADP)にする
    • なぜ起きる:アプリ実行=コンピュータと見てしまう
    • 正しい考え方:8517注5でスマホ定義があり、通信機器として8517で整理
    • 予防策:OS/アプリ仕様、通信方式、製品カテゴリを資料化
  2. 間違い:液晶/OLED“モジュール”を8528(モニタ)とする
    • なぜ起きる:画面=モニタという連想
    • 正しい考え方:注7で8524の定義・優先規定。信号変換機能等がある場合は例外。
    • 予防策:回路構成(スケーラ等)、“組込み前提”の記載、I/O仕様を確認
  3. 間違い:BMS付き電池パックを別見出しへ
    • なぜ起きる:電子回路が付いている=変換器/制御装置と誤認
    • 正しい考え方:8507注3で“補助部品付き蓄電池”を含み得る
    • 予防策:BMSが蓄電池の保護・供給機能に留まるか(機能の範囲)を確認
  4. 間違い:プリント基板(PCB)を一律8534にする
    • なぜ起きる:“基板=printed circuit”の思い込み
    • 正しい考え方:注8で「印刷工程で形成された回路」等を定義。能動素子等を組み込むと別扱いになり得る。
    • 予防策:実装の有無、能動素子の有無、製造工程資料
  5. 間違い:e-wasteを“金属スクラップ”として他章へ
    • なぜ起きる:見た目がスクラップで金属に見える
    • 正しい考え方:Section XVI Note 6と8549新設を前提に判断
    • 予防策:再使用目的・廃棄目的、選別・破砕状況、混合物の内容を文書化
  6. 間違い:無線機器の通関だけで安心して販売
    • なぜ起きる:HS分類=法規制クリアと誤解
    • 正しい考え方:日本では電波法(技適等)やPSE等、HSと別軸の適合が必要になることがある
    • 予防策:販売国の規制チェックを分類と並行して実施

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • 第85類は“部品(8529、8538等)”が多く、最終品と部品のHS取り違えがPSR誤適用につながりやすいです。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • HS2022で**8524(フラットパネルディスプレイモジュール)8549(e-waste)**などが新設され、旧版でPSRを運用している場合は読み替えが必要になり得ます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • BOM(部材HS含む)、原価(RVC)、工程、非原産材料の比率、IC/モジュールの原産国情報
  • 保存要件:サプライヤー証憑、試験成績、工程説明、価格根拠

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

(主に HS2017→HS2022 の差分。相関表に記載のある第85類関連を中心に整理)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設8524フラットパネル・ディスプレイモジュール新設(注7追加、優先規定)パネル/モジュール輸出入で分類再点検が必要
HS2017→HS2022新設8549電気・電子廃棄物・スクラップ新設廃基板/中古機器の取引でHSと規制(バーゼル)整理が必須
HS2017→HS2022新設8517.13スマートフォン新設(注5で定義)通信端末の枝番見直しが必要
HS2017→HS2022新設8517.71通信用アンテナの新設アンテナ類の整理が変わり得る
HS2017→HS2022再編8501太陽エネルギー関連等の観点で電動機・発電機の細分再編(相関表記載)製品ラインによって枝番が変わる
HS2017→HS2022再編8525特定のカメラ等で細分再編(相関表記載)監視カメラ等の分類が変わり得る

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCO HS2022 第85類注(スマホ定義、8524定義と優先、半導体/IC定義等)
    • HS2022↔HS2017 相関表(8524/8549/8517.13等の新設理由が記載)
  • どの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 相関表で8524と8549の新設が明示され、かつ第85類注7・Section XVI Note 6が適用の枠組み(定義・優先/概念)を与えているため、HS2022で分類実務が変わったと判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

(第85類に関係が深い“主要”な追加・削除・再編を、相関表ベースで抜粋)

改正サイクル変更タイプ旧コード→新コード(例)概要実務メモ
HS2007→HS2012新設8507.50/8507.60 等NiMH/Li-ion蓄電池の細分新設(相関表に理由記載)電池種類の情報が必須に
HS2012→HS2017再編8528(モニタ/プロジェクタ)細分再編ADP接続可能性等を踏まえた再編(相関表に理由記載)PC用モニタ等で枝番影響
HS2012→HS2017新設8539.50 等LEDランプの細分新設(相関表)LED“モジュール/ランプ”区別が重要に
HS2012→HS2017範囲拡大8542MCO(複合IC)の概念追加(注の追加)センサ内蔵IC等の整理に影響
HS2017→HS2022新設8524/8549ディスプレイモジュール、e-waste新設パネル/廃基板等の分類再点検

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:「液晶モジュールを8528で申告→修正」
    • 誤りの内容:第85類注7(8524優先)を未確認
    • 起きやすい状況:部品表がなく、パネルが“モニタ用”とだけ記載
    • 影響:修正申告、追加資料要求、通関遅延
    • 予防策:構成図・スケーラ等の有無を証憑化(BOM、回路図)
  • 事例名:「中古スマホの輸出がe-waste扱い」
    • 誤りの内容:HSだけで“中古品”と判断し、バーゼル法の該非判断を省略
    • 起きやすい状況:動作確認なし・破損品混在
    • 影響:貨物差止め、行政照会、契約不履行リスク
    • 予防策:中古品(リユース)としての証明資料、検品記録整備
  • 事例名:「無線機器の技適未対応で販売停止」
    • 誤りの内容:通関後の国内販売段階で電波法適合(技適等)を満たさない
    • 起きやすい状況:海外仕様のWi-Fi/Bluetooth機器をそのまま輸入
    • 影響:回収・販売停止・ブランド毀損
    • 予防策:技適の取得/確認、検索ポータルでの照合、ラベリング確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等):通常は該当が限定的(医療機器は90類へ行くことが多い)
    • 安全保障貿易管理(該当する場合):
      • 半導体・電子部品、通信機器は、仕様により外為法上の管理対象となる可能性があります。
    • その他の許認可・届出:
      • 電気用品安全法(PSE):対象品目は政令の別表で決まり、輸入者に届出・適合性確認・表示等の義務が発生します。
      • 電波法(技適等):無線設備は技術基準適合証明/工事設計認証等の制度があり、対象機器は認証・表示の確認が必要です。
      • バーゼル法(e-wasteの輸出入):2025年1月以降のe-waste判断基準等、運用が具体化されています(取引前に該非判断が重要)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省:PSE/安全保障貿易管理
    • TELEC等(登録証明機関)・電波利用ポータル(技適検索の案内)
    • 環境省:バーゼル法・中古品判断基準等
  • 実務での準備物(一般論):
    • 技術仕様(無線方式、周波数等)、適合証明書、表示方法
    • e-waste/中古品:検品記録、動作確認、梱包・写真、契約書(再使用目的の裏付け)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 機能(通信/表示/電源/制御)、無線の有無、回路構成、BOM、写真
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第85類注5(スマホ)、注7(8524)、注12(半導体/IC)
    • Section XVI Note 2(部分品)、Note 6(e-waste)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “flat panel display module / monitor / smartphone / router”等、機能が一目で分かる品名へ
    • 回路図・データシート添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • HS2022の新設(8524/8549等)でPSR参照HS版とのズレを要確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • PSE対象、技適対象、バーゼル法対象(e-waste/中古品)を並行で判定

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文・注)
    • WCO HS2022 Chapter 85(Notes含む) (参照日:2026-02-28)
    • WCO HS2022 Section XVI Notes(e-waste定義等) (参照日:2026-02-28)
  • 相関表(改正根拠)
    • HS2022↔HS2017 Correlation Table (参照日:2026-02-28)
    • HS2017↔HS2012 Correlation Table (参照日:2026-02-28)
    • HS2012↔HS2007 Correlation Table (参照日:2026-02-28)
  • 日本:規制・制度
    • 経済産業省:電気用品安全法(PSE)概要・対象品目 (参照日:2026-02-28)
    • TELEC:技術基準適合証明・工事設計認証の概要/技適検索案内 (参照日:2026-02-28)
    • 環境省:バーゼル法(e-waste該非判断基準、改正附属書発効後の運用、中古品判断基準) (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(説明資料・改正説明等) (参照日:2026-02-28)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。