韓国がCPTPP加盟検討を正式表明 次に何が起き、企業はどう備えるか


韓国政府がCPTPP加盟を正式に検討する姿勢を明確化し、2026年1月13日の日韓首脳会談でもこの議題が取り上げられる見通しです。今回のポイントは、韓国政府内の「検討段階」から、首脳・閣僚レベルの発言が重なり、対外的な論点として前面に出てきた点にあります。ビジネス実務に波及するのは中期戦になりやすいものの、サプライチェーン設計と競争条件に影響する動きとして、早期の情報収集と準備が求められます。nippon+1​

何が起きたのか

2025年12月17日、韓国の産業通商資源部が大統領への業務報告で、CPTPP加入を「積極的に検討する」と明らかにし、担当相は「来年の加入申請や内容について議論を始めた段階」「推進戦略をつくる」と述べました。加えて、日本産水産物の輸入停止問題が交渉の焦点になり得ることも示唆されています。yna

さらに2026年1月9日、韓国大統領府の国家安保室長は、1月13日の日韓首脳会談でCPTPPが議題になり得ること、韓国側も準備が整い次第追加措置を取る考えを示しました。李在明(イ・ジェミョン)大統領の政権は、米中への依存を低減し、多国間貿易を通じた経済基盤の多角化を目指す姿勢を鮮明にしています。euronews+1​

CPTPPの基本構造

CPTPPは、加盟国間で関税撤廃・削減だけでなく、投資、サービス、電子商取引、国有企業、政府調達など幅広いルールを持つ高水準の経済連携協定です。現在の加盟国は12か国で、英国は2024年12月15日に6か国との関係で正式に発効しました。donga+2​

実務面で重要な2つのポイントsice.oas+1​

寄託国はニュージーランド
加入要請や各種通知の受け皿はニュージーランドが務めます。

新規加入は全加盟国のコンセンサスが前提
加入プロセスでは、作業部会の設置や最終承認など、要所で全加盟国の合意が必要です。つまり、政治・外交論点がそのまま通商条件に直結しやすい枠組みです。apfccptppportal

韓国が今CPTPPを急ぐ背景

背景は複合的ですが、ビジネスに効く要因は大きく2つです。

米中依存を下げる「貿易の多角化」

韓国政府は、米中への過度な依存を低減し、多国間貿易の枠組みを通じた経済安全保障の確保を重視しています。CPTPPは、日本、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ベトナムなど多様な市場へのアクセスを一括して改善する手段として位置づけられています。nippon+1​

メキシコを中心とした「非FTA国への高関税」

2025年12月、メキシコは非FTA国からの輸入品に対して大幅な関税引上げを決定し、2026年1月1日から施行しました。対象は1,400品目以上で、完成車50%、自動車部品25-36%、家電25-30%など、韓国の主力輸出品が直撃を受けています。whitecase+3​

メキシコ政府は、この措置が中国、韓国、インド、ベトナム、タイ、ブラジル、インドネシア、台湾、UAE、南アフリカなど、FTA未締結国からの輸入を標的にしていることを明記しています。韓国側では「CPTPP加入も韓メキシコFTAも失敗すると、日本は無関税を維持できる一方、韓国は高関税で不利になる」といった懸念が報じられています。koreatimes+3​

ただし、韓国産業通商資源部は、メキシコの中間財関税減免プログラムを活用する韓国企業が多いため、実際の影響は限定的との見方も示しています。yna

申請から加入まで

CPTPPは「申請したらすぐ加入」ではありません。典型的な流れは次の通りです。sice.oas+1​

  1. 寄託国ニュージーランドへ加入要請を通報
  2. CPTPP委員会が作業部会(AWG)設置などを判断
  3. ルール適合と市場アクセス(関税・例外・サービス等)の交渉
  4. 委員会がコンセンサスで条件を承認
  5. 加入文書を寄託し、条件が整った後に発効

参考までに英国は、2021年2月に寄託国へ加入要請を通報し、2023年3月に交渉を実質妥結、2024年12月に議定書が発効しました。コスタリカは2025年3月に第1回作業部会が開催され、同年8月までに第3回が実施されましたが、まだ交渉継続中です。gov+1​

この時間軸を見ても、韓国が「来年申請」を語っても、企業実務に波及するのは中期戦になりやすい点が重要です。

交渉の焦点

日本産水産物の輸入停止問題

韓国政府自身が、これが交渉の焦点になり得ると認めています。韓国は2013年以降、福島第一原発事故を理由に日本の8県からの水産物輸入を禁止しており、2014年には日本政府がWTO提訴も検討しました。wtocenter+1​

また韓国メディアでも、日本が輸入規制の解除を加入承認と結び付ける可能性があるといった観測が報じられています。japannews.yomiuri

農畜産・水産分野の国内調整

CPTPPは高水準の市場アクセスが求められ、国内調整が最大のボトルネックになりがちです。2021年の文在寅(ムン・ジェイン)政権時にも加入意向が示されましたが、農業団体などの反発と日韓関係の悪化により議論が停止した経緯があります。japannews.yomiuri

今回も、韓国側では「国民的共感が先行すべき」との指摘が出ています。japannews.yomiuri

高水準ルールへの制度適合

加入希望国は、既存ルールへの全面適合と、高水準の市場アクセス提示が求められます。ここは企業にとって、国内法改正や規制運用変更のリスクが出やすい領域です。apfccptppportal

日本企業へのインパクト

論点は関税に見えますが、企業実務で効くのは次の3つです。

サプライチェーン再設計の余地

韓国が加盟すれば、CPTPP域内の調達・生産・輸出で「域内扱い」になり得ます。原産地規則の組み立てが変わり、BOMやサプライヤー戦略を見直す局面が出ます。

メキシコなどでの競争条件

現状、メキシコは非FTA国を不利に扱う動きがあり、これが韓国企業の痛点になっています。韓国がCPTPPへ進めば、この非対称が縮む可能性があります。english.news+2​

日韓協業のテーマが増える

日韓首脳会談でCPTPPが議題になり得るとされ、経済案件として動きやすい環境が整い始めています。donga+2​

企業の実務チェックリスト

CPTPPで優遇税率を使っている品目を棚卸し
自社がCPTPP利用中の輸出入品目、適用している原産地判定ロジックを一覧化します。

韓国由来部材の比率を見える化
現時点では「非原産」として扱っている韓国部材が、将来「域内」となる可能性を仮置きし、原産地判定がどう変わるか試算します。

取引契約の関税条項を点検
関税変動時の価格調整、原産地証明の責任分界、遡及対応などを再確認します。

交渉イベントの監視ポイントを固定
韓国が寄託国ニュージーランドへ正式な加入要請を出したか、作業部会が立ち上がったかが最初の実務シグナルになります。

今後の見通し

直近の山は、2026年1月13日の日韓首脳会談です。ここでCPTPPがどの程度踏み込んで語られるかが、次の動きの温度感を決めます。tradingview+2​

一方で、韓国側報道でも「加入申請書をまだ提出できていない」とされており、少なくとも現時点は準備・調整フェーズと見るのが安全です。英国やコスタリカの事例を踏まえると、申請から発効まで2-3年以上を要する可能性が高く、企業は中長期の視点で準備を進めるべき局面です。japannews.yomiuri


注: 本稿は2026年1月10日時点の公表情報に基づく一般情報です。実際の交渉進展や発効時期は、政治・外交情勢と国内調整の進捗に依存するため、最終判断は一次情報と専門家確認で行ってください。

  1. https://www.nippon.com/en/news/yjj2026010901026/lee-takaichi-may-discuss-s-korea’s-cptpp-entry-at-upcoming-summit.html
  2. https://www.donga.com/en/article/all/20260110/6051484/1
  3. https://en.yna.co.kr/view/AEN20251217003500320
  4. https://www.euronews.com/my-europe/2026/01/09/eu-member-states-back-mercosur-deal-french-meps-vow-fight-in-parliament
  5. https://www.gov.uk/government/news/uk-to-join-cptpp-by-15-december
  6. https://www.ctpa.org.uk/news/the-uk-to-join-cptpp-by-15-december-2024-7910
  7. http://www.sice.oas.org/tpd/tpp/tpp_e.asp
  8. https://apfccptppportal.ca/accessions/process
  9. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
  10. https://www.koreatimes.co.kr/foreignaffairs/20251219/seoul-urges-mexico-to-mitigate-impact-of-planned-tariff-hikes-on-korean-firms
  11. https://mohawkglobal.com/trade-translation/mexico-approves-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  12. https://english.news.cn/20260110/680b56baf17e4b1983c0d2c9c5126a02/c.html
  13. https://en.yna.co.kr/view/AEN20251212003000320
  14. https://wtocenter.vn/chuyen-de/3943-japan-threatens-south-korea-with-wto-complaint-on-import-ban
  15. https://japannews.yomiuri.co.jp/editorial/yomiuri-editorial/20250916-281193/
  16. https://es.tradingview.com/news/reuters.com,2026:newsml_P8N3XW050:0-south-korea-s-president-lee-to-visit-japan-january-13-14-for-summit-newsis-reports/
  17. https://www.marketscreener.com/news/south-korea-to-explore-possibility-of-joining-cptpp-finance-ministry-ce7e59d2d98ff720
  18. https://www.eria.org/news-and-views/south-korea-president-moon-jae-in-shows-interest-in-joining-cptpp-mega-trade-deal
  19. https://behorizon.org/trilateral-momentum-u-s-japan-south-korea-forge-deeper-strategic-alignment/
  20. https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
  21. https://www.foley.com/zh/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/

 

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