2026年1月1日から、メキシコは輸入関税率表(TIGIE)上の1,463タリフラインについて、一般税率(MFN)を引き上げる制度改正を施行しました。官報(DOF)に掲載された改正法令は、2025年12月29日に公布され、2026年1月1日に発効しています。whitecase+4

ニュース見出しでは「非FTA品目」と表現されがちですが、実務上の理解はもう一段丁寧にする必要があります。改正はあくまでMFNを上げる仕組みであり、FTAの特恵(原産品としての優遇税率)は、原産地規則を満たし適切に申告できる限り、引き続き適用余地があります。craneww+2
まず押さえる要点
今回の改正を、ビジネスの意思決定に必要な粒度で整理すると次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正の本質 | MFN関税率の引上げ(対象は特定の関税番号) |
| 対象規模 | 1,463タリフラインwhitecase+2 |
| 施行日 | 2026年1月1日mexiconewsdaily+2 |
| 対象外の考え方 | FTA優遇を適用できる原産品は原則影響なし(原産地証明と適切な申告が前提)whitecase+1 |
| 有効期限 | 無期限(恒久化)whitecase |
対象規模(1,463タリフライン)やFTA適用時の取り扱い、対象業界の全体像は、複数の専門機関・法律事務所・当局解説で一致しています。clarkhill+3
どんな品目が影響を受けるのか
対象は20以上の章にまたがり、自動車・部品、繊維・アパレル、プラスチック、鉄鋼、家電、アルミ、履物、紙・板紙、皮革製品、家具、ガラス、玩具、二輪、トレーラーなど幅広い業界に及びます。trade+3
税率水準は品目ごとに異なり、引上げ後の関税率は5%、7%、10%、14%、15%、18%、20%、22%、25%、30%、35%、36%、45%、50%のレンジに分布します。完成乗用車の特定の関税番号(8703.22.99、8703.23.99、8703.24.99、8703.32.99、8703.33.99、8703.40.99、8703.60.99、8703.80.01)では50%が適用されます。自動車部品は25%から36%の範囲が中心です。mexiconewsdaily+4
また、今回の動きは従来の大統領令ベースの措置を、法律改正により恒久化・拡大する性格があると解説されています。具体的には、1,463タリフラインのうち約41%は2024年の大統領令で既に引上げ済みの内容を制度化し、残り59%が新規に追加された品目です。繊維・履物・アパレルは既存措置の「恒久化」、それ以外の分野は「新規にカバー拡大」という見方が示されています。jdsupra+1
さらに、316タリフラインは以前は無税(duty-free)だったものが、今回初めて関税が課されることになりました。whitecase
「非FTA品目」とは実務で何を意味するか
ここが誤解ポイントです。影響を受けるかどうかは「仕向地に着いたときの原産性」と「申告の正しさ」で決まります。
FTA相手国からの出荷でも、原産地規則を満たさなければMFNが適用され得る
たとえば日本からメキシコに輸出しても、商品が日本原産として認められない場合(第三国原産のまま、工程不足、証憑不備など)は、FTA特恵が使えずMFN(引上げ後)のコストになります。trade
「出荷国」と「原産国」は別物
中国原産の部品や完成品を日本経由でメキシコへ流しても、原産地が中国のままなら、非FTA原産として引上げ後の税率が問題になります。報道や解説でも、非FTA国(中国、インド、韓国、インドネシア、タイ、ロシア、トルコ、台湾、ブラジルなど)を念頭に置いた制度設計と整理されています。mohawkglobal+2
書類不備は、税率の取りこぼしに直結する
当局解説では、通関での分類・価格・書類整合性に対する目線が強まり、輸出者側もインボイス、仕様書、原産地証明などの精度が重要になると示されています。2026年の一般対外貿易規則(GFTR)では、通関業者向けの新たな書類要件、通関手続きの裏付け書類、バーチャル輸入申告の記録保管など、より多くの書類を作成・保管する義務が追加されています。kpmg+1
日本企業にとっての影響シナリオ
影響は「メキシコ向けの輸出」だけでなく、「メキシコの顧客が非FTA原産品を調達しているか」によっても変わります。
シナリオA:メキシコ向け部材の中に非FTA原産が多い
自社が日本から輸出していても、実態は第三国原産のままというケースでは、顧客側の輸入コストが上がります。結果として、価格交渉、発注数量、調達先見直しの圧力が出やすくなります。mohawkglobal+1
シナリオB:完成車・主要部材など、税率の上振れが大きい領域に該当
完成車の特定関税番号では50%水準が適用され、部材でも複数レンジ(7%、10%、25%、36%など)が混在します。どこに該当するかで採算は別物になるため、HS分類の確定が最優先です。forvismazars+1
シナリオC:FTA適用の社内運用が弱く、取りこぼしが発生しやすい
今回のようにMFNが上がる局面では、これまで「面倒なのでMFNで払っていた」取引が急に高コストになります。原産性の棚卸しと証憑整備は、守りではなく利益改善の打ち手になります。forvismazars
すぐにやるべき実務チェックリスト
以下の順番で手当てすると、短期間で影響可視化まで到達できます。
影響品目の棚卸し
- メキシコの関税番号(フラクシオン)まで落として、該当有無を判定
- 該当の場合、引上げ後の税率レンジ(5~50%)で着地コストを試算strtrade+1
原産地の再判定
- 日墨EPA、CPTPPなどで原産性を確保できるか
- 部材原産地の収集、サプライヤー証明の更新、証憑の監査耐性を強化whitecase+1
通関実務の点検
- インボイス品名、技術仕様、分類根拠、価格根拠が一貫しているか
- メキシコ側ブローカーと、申告データの突合ルールを先に決めておくkpmg+1
- 2026年のGFTRで追加された書類要件(通関業者向け文書、裏付け書類、記録保管)への対応を確認kpmg
IMMEX制度利用者向けの追加確認
2026年のGFTRでは、IMMEX(マキラドーラ)プログラム下での繊維・アパレル製品の輸入に新たな制限が設けられています。該当する企業は、プログラム適用要件の変更を確認する必要があります。kpmg
制度の背景と政策意図
メキシコ政府は、この改正を単なる歳入確保措置ではなく、「戦略的な政策ツール」として位置づけています。背景には次の狙いがあります。tbaglobal+1
- 国内製造業の保護と雇用確保trade+1
- アジア諸国、特に中国からの輸入への依存低減mexiconewsdaily+1
- グローバルバリューチェーンへの統合が期待された技術移転や国内付加価値向上につながっていない現状への対応whitecase
- 国家開発計画との整合whitecase
メキシコ経済大臣のマルセロ・エブラード氏は、この措置がメキシコの総輸入の約8.6%に影響を与えると述べています。中国からの輸入はメキシコ総輸入の約19.96%を占め、中国製車両はメキシコ市場の18.1%のシェアを持っており、特に自動車セクターへの影響が大きいとみられています。tbaglobal
まとめ
メキシコの関税引上げは、1,463タリフライン規模でMFNが上がる政策転換です。最大の論点は、非FTA原産品と、FTA原産でも運用不備で特恵を取りこぼす取引がコスト増になり得ること。逆に言えば、HS分類と原産地証憑を固め、FTA適用の確度を上げられる企業ほど、影響を吸収しやすい局面です。clarkhill+3
改正は2026年1月1日に発効し、有効期限は無期限です。早期の対応準備が、コスト管理と競争優位の確保に直結します。mexiconewsdaily+2
免責事項: 本稿は2026年1月時点の公表情報に基づく一般情報であり、個別案件の法令判断や通関助言を目的とするものではありません。実際の適用は、品目の分類、原産地事実、申告実務、当局運用により左右されます。個別案件は現地通関業者・専門家と一次情報で確認してください。
- https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-formalizes-and-expands-import-tariffs-more-1400-products-key-impacts
- https://mexiconewsdaily.com/news/mexico-tariffs-go-into-effect-china/
- https://www.forvismazars.com/mx/en/insights/forvis-mazars-in-mexico-thought-leadership/foreign-trade-customs-alert/changes-in-foreign-trade-for-2026-in-mexico
- https://www.tid.gov.hk/en/tradecircular/2025/ci11102025.html?categoryId=18
- https://www.opportimes.com/en/tariff-increases-in-mexico-on-countries-without-trade-agreements-come-into-effect-on-january-1/
- https://www.craneww.com/knowledge-center/trade-advisory-notices/mexicos-2026-tariff-reform/
- https://www.clarkhill.com/news-events/news/mexico-approves-significant-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
- https://kpmg.com/us/en/taxnewsflash/news/2026/01/mexico-general-foreign-trade-rules-2026-import-export-duties-law.html
- https://www.trade.gov/market-intelligence/mexico-customs-law-reform
- https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/december/mexico-to-significantly-increase-import-duties-as-of-jan-1
- https://mohawkglobal.com/trade-translation/mexico-approves-tariff-increases-on-imports-from-non-fta-countries/
- https://www.jdsupra.com/legalnews/mexico-proposes-significant-customs-and-3809818/
- https://tbaglobal.com/mexico-set-to-introduce-tariffs-of-up-to-50/
- https://www.foley.com/zh/insights/publications/2025/12/mexican-january-2026-tariff-tsunami-maquilas-arent-immune/
- https://www.internationaltradecomplianceupdate.com/category/customsimports/
- https://globaltradealert.org/state-act/95864-mexico-import-duty-increase-on-1462-products-december-2025
- https://cuestacampos.com/en/new-energy-regulation-in-mexico/
- https://www.estrategiaaduanera.mx/cambios-a-la-ligie-en-mexico/
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