Back-to-Back CO拒否を避けるための一般的対策

Back-to-Back COの否認リスクは、案件設計・書類管理・事前確認・現地運用の四層で対策することで大幅に低減できます 。[global-scm]​


対策①:案件設計段階での事前確認

中継国・最終輸入国の受入可否を文書で取得する

最優先の対策は、中継国の発給当局と最終輸入国の税関の両方に「Back-to-Back COを受理するか」を書面(メール可)で確認し、肯定回答を保存することです 。特にATIGAとAJCEPの両方が使える案件では、どちらの協定のBack-to-Back COが最終輸入国で確実に受理されるかを先に確定させます。tarifflabo+1

通し船荷証券(Through B/L)との選択を検討する

协定上、第三国経由の特恵適用には「Back-to-Back CO」と「通し船荷証券(Through B/L)」の2つの選択肢があります 。Back-to-Back COの発給が困難な中継国を使う場合は、通し船荷証券で対応できないかを先に検討し、発給手続きを省略するルートを模索することも有効です 。[customslegaloffice]​


対策②:書類管理の徹底

元COの原本・認証コピーの多重保管

保管先保管物目的
中継国(輸出者・代理人)元CO原本またはCertified True Copy発給当局への提示・税関の検証要請への対応 [global-scm]​
最終輸入国(輸入者)Back-to-Back COのコピー事後検認(Verification)への対応 [meti.go]​
日本本社(荷主)全ドキュメントのスキャンデータ三国間の証跡統合管理 [global-scm]​

数量残高台帳の案件単位管理

元COに対して複数回Back-to-Back COを発行する場合、元COの数量・Back-to-Back CO累計発行数量・残数量を台帳で一元管理します 。数量超過は発給当局による再調査・特恵否認に直結するため、出荷確定ごとに台帳を更新するフローを社内で義務化することが重要です。[global-scm]​


対策③:期限管理の前倒し設計

元COの発給日

├─ 案件開始時点で「期限表」を作成
│ 元CO有効期限(12か月)
│ Back-to-Back CO発行の社内締切
│ シンガポール等発給処理日数(通常1〜3営業日)
│ 最終輸入国の輸入申告締切

└─ 各マイルストーンに「余裕バッファ(最低2週間)」を設定 [web:8]

期限切れはもっとも防ぎやすい失念ミスですが、複数の元COを使う案件では期限がバラバラになるため、案件単位ではなく元CO単位での期限管理が必要です 。[global-scm]​


対策④:Form Dの記載チェックリスト

発給前に以下を必ずチェックします 。aog-partners+1

  • 元COの参照番号・発給日が正確に転記されている
  • 原産国が中継国ではなく最初の輸出国になっている
  • HSコード・品名・数量がインボイスと完全一致している
  • Back-to-Back COのBox 13(または該当欄)に元COの参照番号が記載されている
  • FOB価格が元COの金額を超えていない(分割の場合は案分値)
  • 発給機関の署名・スタンプが揃っている
  • e-Form Dの場合、ASW上のステータスが「Accepted」になっていることを確認する

対策⑤:協定・中継国の選択によるリスク回避

状況推奨対策
インドネシアが最終輸入国でAJCEPのBack-to-Back COを拒否ATIGAのBack-to-Back COへ切り替えを検討 [jmcti]​
ベトナムが中継国で発給困難中継国をシンガポールに変更、またはThrough B/Lで代替 jetro+1
e-Form Dが不安定な国(ミャンマー等)が絡む紙COを原本取得しておき電子化前提の設計を避ける [miti.gov]​
初めて使う中継国パイロット出荷1件でスモールスタートし発給実績を作る [global-scm]​

対策⑥:社内手順書の整備

実務レベルの対策として最も効果が高いのは、ATIGAのAnnex 8(OCP)とAJCEPのAnnex 4・Implementing Regulationsを一度通読した上で、自社の三国間取引パターン別に社内手順書を作成することです 。手順書には「元CO保管ルール・数量台帳フォーマット・期限管理表・発給機関への事前確認テンプレート」の4点を含めると、担当者が変わっても品質が維持されます 。[global-scm]​

ベトナム以外のASEANにおけるBack-to-Back CO拒否・問題事例

ベトナム以外でも、インドネシアや複数のASEAN加盟国で実態として否認・拒否が発生しており、その多くが協定間の解釈の相違や運用細則の不整備に起因しています 。[jmcti]​


インドネシア:シンガポール発行のAJCEP Back-to-Back COを不受理

最も重大な実例として、インドネシア税関がシンガポール税関発行のAJCEP(日・ASEAN EPA)のBack-to-Back COを認めないという事例が、日本機械輸出組合経由で日本政府へ要望として提出されています 。[jmcti]​

「AJCEPのBACK TO BACK COの適用について各国税関の見解が異なっている。(インドネシア税関ではシンガポール税関発行のBack to Back C/Oを認めないと現地から情報共有があった)」
― 貿易・投資円滑化ビジネス協議会 2023年版報告書[jmcti]​

この問題は「継続」案件として複数年にわたり要望が上がり続けており、ASEAN域内での統一・明確化が求められています 。実務上、日本→インドネシア委託工場→シンガポール経由→ベトナム得意先という三国間貿易でAJCEP Back-to-Back COを使う設計が破綻するリスクがあります。[jmcti]​


ATIGAとAJCEPで生じる二重問題

ATIGAのBack-to-Back COとAJCEPのBack-to-Back COは別の協定の証明書であり、最終輸入国でどちらを受け入れるかも各国の解釈に委ねられています 。インドネシアの件はAJCEPでの否認ですが、協定選択の段階でトラブルが発生する典型例です。tarifflabo+1


国別の主な問題事例

問題の内容対象協定情報源
インドネシアシンガポール発行のBack-to-Back COを不受理AJCEP[jmcti]​
タイサードカントリー・インボイス(三国間インボイス)の否認が頻発ATIGA・AJCEP共通[jmcti]​
マレーシアForm Dの署名者が管理省庁に登録されていない場合、3か月間は新担当者の署名で発行されたForm Dを不受理ATIGA[fta.miti.gov]​
ラオス・カンボジアe-ATIGAが未整備のため、電子Form Dが受理されず書面の提出を追加要求ATIGA[jmcti]​
ミャンマーe-ATIGAのシステム障害で電子Form Dが無効扱いとなり、紙COへの切り替えを強制ATIGA[miti.gov]​
複数国Form DへのFOB価格記載義務撤廃に対応しておらず(インドネシア・ラオス・カンボジア)、Back-to-Back CO申請で追加記載を要求ATIGA[jmcti]​

拒否に共通する根本原因

① 協定間の解釈統一がなされていない

AJCEP規定では各国発給当局が発給するか否かについて「明示的な規定がない」とされており 、ATIGAとAJCEPの双方でBack-to-Back COを認めるかどうかは各国の国内運用に依存しています。日本政府も複数年にわたり「ASEAN域内での統一・明確化」を要望しているものの 、未解決のままです。tarifflabo+1

② e-ATIGAの運用不安定

シンガポール税関の通達によれば、e-Form Dをやり取りする際、①システムダウンによる再申請要求、②電子署名の不認識、③HSコード解釈の不統一、という3つの技術的問題が複数国で継続報告されています 。これがBack-to-Back e-Form Dの場合、元のe-Form Dと新たなBack-to-Back e-Form Dの双方でエラーが発生しうるという二重リスクになります 。global-scm+1

③ 発給当局の原本確認慣行の差

シンガポールはTradeNet経由でほぼ全プロセスを電子化していますが 、インドネシア・タイ・マレーシアの一部では発給当局が書面原本の目視確認を求める慣行が根強く残っています 。Back-to-Back案件では元COの原本管理が特に重要で、これが揃わないと申請が受け付けられないケースがあります 。fta.miti+2


実務上の対応原則

拒否リスクを最小化するためには、中継国・最終輸入国の両方の発給当局および税関へ事前に「Back-to-Back COを受理するか」を文書で確認し、肯定回答を記録に残しておくことが必須です 。特にAJCEP案件ではインドネシアのような否認実例があるため、ATIGAへの協定切り替えが可能かどうかも含めた選択肢の検討が重要です 。tarifflabo+1

シンガポール以外でのBack-to-Back CO申請方法

各国の発給当局・書類・電子化状況がそれぞれ異なるため、中継国ごとの手続きを個別に押さえることが必須です 。[jetro.go]​


国別の発給機関と手続き

マレーシア

**発給機関:通商産業省(MITI)が担当します 。2020年3月18日以降、ATIGAのForm Dは完全電子化(e-Form D)**され、紙COは発行していません 。システム障害時のみ例外的に紙COが認められます。申請はMITIのオンラインポータルへ、元COの参照番号・HSコード・インボイス等を添付して提出します 。declarators+1

タイ

発給機関:商工会議所(Chamber of Commerce)または商務省が担当します 。タイはe-Form Dを導入済みで、ASEAN Single Window(ASW)経由での電子送付が可能です 。ただし紙COも継続発行しており、発給機関窓口への持参申請も受け付けています 。customs+1

インドネシア

発給機関:商業省(Ministry of Trade)地域局が担当します 。申請時は元COの原本または認証コピーの提示が義務で、原産地証明書類の整備が特に厳格とされています 。電子化は進んでいますが、地域局によって対応速度に差があるため、主要港(タンジュンプリオク等)に近い地域局への申請が推奨されます。[declarators.com]​

タイ・マレーシア・インドネシアの共通手順

① 元のForm D(Original / e-Form D)を準備
② 商業省/商工会議所窓口またはオンラインポータルにログイン
③ バックトゥバック専用の申請フォームに記載
(元COの参照番号・発給日・原産国・数量を明記)
④ 輸出インボイス・パッキングリスト・運送状を添付
⑤ 当局の審査(現場確認を含む場合あり)→ Form D発行
⑥ e-Form DはASWで最終輸入国へ電子送付

国別の比較

発給機関電子化状況申請の難易度主な注意点
シンガポールSingapore CustomsTradeNet完全電子化 [customs.gov]​★☆☆(容易)Certificate Type 17選択が必要 [customs.gov]​
マレーシアMITIe-Form D完全移行 [miti.gov]​★★☆(標準)輸出者・品目の詳細情報が多く求められる [declarators.com]​
タイ商工会議所・商務省e-Form D対応・紙も並行 [customs.go]​★★☆(標準)商工会議所経由で申請するケースが多い [declarators.com]​
インドネシア商業省地域局電子化進行中★★★(やや難)原産地証明書類の現物確認あり [declarators.com]​
ベトナム商工省地域機関e-Form D導入済みだが不安定 [jetro.go]​★★★(難)運用細則未整備・年間発給数件程度 [jetro.go]​
カンボジア商工会議所紙中心★★★(やや難)追加書類が必要 [declarators.com]​
ラオス商業省紙中心★★★(難)追加書類必須・処理に時間要 [declarators.com]​
ミャンマー商業省e-Form D技術的問題あり [miti.gov]​★★★(難)ASW接続不安定・紙COで代替 [miti.gov]​

ASEAN Single Window(ASW)の活用

マレーシア・タイ・インドネシア・シンガポール等の主要国はASEAN Single Window(ASW)に接続済みで、e-Form D参照番号を電子交換できます 。Back-to-Back COの元COがこれら国のe-Form Dであれば、中継国はe-Form Dの参照番号を入力するだけで原本確認の大半を完結させられます 。一方でミャンマー・ラオス・カンボジアはASW接続が不安定なため、今でも紙COの原本送付が実質的に必要となるケースが残ります 。miti+2


実務上の共通注意点

協定上Back-to-Back COの発行が認められていても、国内法で発行しないと定めている国も存在し得るため、中継国の税関または発給機関に事前打診することが大前提です 。申請前に「対応可否・必要書類・所要日数」の3点を文書で確認し、特に初めての中継国を使う場合はパイロット出荷で実績を作ることを強く推奨します 。global-scm+1

ベトナムでのBack-to-Back CO実務

ベトナムはASEAN最大級の製造拠点でありながら、Back-to-Back COの発給実績が年数件程度と極めて少なく、運用細則が整備されていないことが実務上の大きな課題となっています 。[jetro.go]​


ベトナムを「中継国」として使う場合

典型的な取引例:タイ→ホーチミン→インドネシア

[タイ工場]
↓ ATIGA Form D を取得して輸出
[ホーチミン市の倉庫(一時保管)]
↓ 加工なし・仕分けのみ
↓ ベトナム発給当局がBack-to-Back Form D発行
[インドネシア通関] ← ATIGA特恵関税を適用

近年、サイゴン港やカイメップ・チーバイ港は東南アジア向けの運賃が他国比で安いため、ベトナム南部の倉庫に東南アジア各国向け在庫をプールしてBack-to-Back COで輸出することを検討する日系企業が増えています 。[jetro.go]​


ベトナム固有の実務上の壁

① 未加工証明書の取得が困難

中継国として最も重要な「貨物が加工されていない証明」について、ベトナムではどの機関が未加工証明書を発行するのかが法規上規定されていません 。現状では発給当局のスタッフが実際に倉庫へ出向き、Form Dに記載されたHS品番・ロット番号・原産地規則を目視で確認してから発給の可否を判断するという属人的な運用になっています 。[jetro.go]​

② ハノイとホーチミンで対応が異なる

ベトナムの発給機関は商工省(MOIT)管轄の地域機関ですが、ハノイとホーチミン市では担当者の経験値・解釈・処理速度が異なります 。ハノイ市当局への確認では年間数件程度の発給実績が報告されており、申請が持ち込まれるたびに担当者が個別判断する状況が続いています 。[jetro.go]​

③ 自己申告制(REX)の未成熟

ATIGAでは認定輸出者がBack-to-Back Origin Declarationを自己作成できる枠組みがありますが、ベトナムでは自己証明制度の整備がまだ途上にあり 、発給機関経由のForm D申請に依存せざるを得ない状況が続いています。[tapchi.hlu.edu]​


ベトナムを「最終輸入国」として使う場合

シンガポール等からBack-to-Back Form Dを持参してベトナムへ輸入する場合は、ベトナム税関総局(GDC)がATIGAの規定に基づきBack-to-Back COを適用可能と公式に認めており 、輸入通関での適用は可能です。ただしベトナムは出荷ごとに政府承認のCOが必要な原則を維持しており、書類審査が厳格な点に注意が必要です 。blog.naver+1

なお、タイ税関は2021年に「ベトナム発行のATIGA電子原産地証明書(e-Form D)に関するトラブル回避ガイドライン」を周知するほど、ベトナムのe-Form D運用の安定性に懸念が示されています 。[jetro.go]​


実務対応チェックリスト(ベトナム中継の場合)

確認事項内容
発給機関の事前打診ホーチミン・ハノイの担当者に申請受付可否と所要日数を事前確認 [jetro.go]​
倉庫の種類輸出加工企業(EPE)以外の倉庫を使う場合、未加工確認の現地訪問を想定 [jetro.go]​
元COの原本管理ベトナム発給当局が現物確認するため、原本または認証コピーを手元に保管 [global-scm]​
協定の選択ATIGAのほか AKFTA・AIFTA・AANZFTA も対象だが、JVEPAではBack-to-Back CO不可 [jetro.go]​
期限管理元COの有効期限内に倉庫入庫・Back-to-Back CO発行・最終輸出まで完了させる計画を立てる [global-scm]​

ベトナムをBack-to-Back COの中継国として使うスキームはコスト面では魅力的ですが、発給機関の属人的対応リスクが高いため、パイロット案件でスモールスタートし、発給当局との関係構築を先行させることが実務上の定石です 。global-scm+1

Back-to-Back COの注意点と拒否事例

Back-to-Back COは通常のCOより管理ポイントが多く、記載ミスや手続き不備が原因で最終輸入国に特恵税率を否認されるリスクがあります 。主要なリスクを以下に整理します。[global-scm]​


よくある拒否・否認事例

① 元COの原本が提示できない

最終輸入国の税関が迂回(tariff circumvention)の疑いを持った場合、元のOriginal COの提示を求められます 。中継国でのBack-to-Back CO発行後に元COを廃棄・紛失していると、特恵適用が否認されます。中継国(シンガポール等)での原本保管体制の構築が必須です 。[global-scm]​

② 分割出荷の累計数量が元COの数量を超過

複数回に分けてBack-to-Back COを発行する際に、合計数量の管理が曖昧なまま発給が続くと元COの数量を超えてしまいます 。これは発給当局・税関ともに重大な違反と判断されます。Excel等で出荷数量の残高管理を行うことが推奨されます 。global-scm+1

③ 有効期限の失念・期限切れ

元COとBack-to-Back COの二重の期限が絡むため、以下のような失念が起きやすいです 。[global-scm]​

  • 元COの有効期限(12か月)を考慮せずにBack-to-Back COを発行してしまい、最終輸入国で「元COが期限切れ」と判断される
  • 複数の元COを束ねた場合、最も期限の短い元COに全体の期限が引きずられることを見落とす(ATIGA)

④ Form Dの記載事項の不備・不一致

以下のような形式的な不備は、それだけで特恵税率の否認につながります 。[aog-partners]​

  • 元COの参照番号・発給日の記載漏れ
  • 原産国の記載が誤っている(中継国を原産国と記載してしまう)
  • Back-to-Back COとインボイスのHSコード・品名・数量の不一致
  • 日付欄・署名欄の記載漏れ

⑤ 中継国での加工行為(実質変更の疑い)

中継国での保管・仕分け・コンソリは許容されますが、包装変更・マーキング・ラベル貼付でさえ「加工」とみなされる国があります 。最終輸入国の税関が「実質的な変更が行われた」と判断すれば否認されます。どこまでの作業が許容されるかは協定・国により異なるため事前確認が必要です 。jetro.go+1

⑥ 中継国での細則不整備による運用拒否

ベトナムなど一部のASEAN諸国では年間数件しか発給実績がなく、発給当局にBack-to-Back COの具体的な運用細則が存在しないケースがあります 。結果として発給機関が申請を受け付けない、または時間がかかりすぎて出荷に間に合わないというトラブルが発生しています。[jetro.go]​


リスクと対応策のまとめ

リスク具体的な問題対応策
元COの紛失税関の疑義照会に応答できない原本を中継国で保管・スキャン保存 [global-scm]​
数量超過累計出荷が元COを超える残高管理台帳をExcelで維持 [global-scm]​
期限切れ元CO・B2B COの期限失念案件開始時に期限表を作成 [global-scm]​
記載不備参照番号・原産国の記載ミス発給前チェックリストを使用 [aog-partners]​
中継国での加工疑義保管作業が「実質変更」とみなされる許容作業の範囲を協定文で事前確認 [tarifflabo]​
発給当局の運用未整備中継国が発給を拒否・遅延中継国当局への事前打診を必須化 [jetro.go]​

特に重要な実務原則

Back-to-Back CO案件は、中継国の発給当局・最終輸入国の税関・最初の輸出者の三者間でのドキュメント管理が核心です 。検証(Verification)が入った場合、Back-to-Back COを発行した中継国にも検証手続きが及ぶことがATIGA規定上明記されており 、輸出者・輸入者の両方が証跡を保全しておく必要があります。[global-scm]​

AFTA(ATIGA)Back-to-Back Form Dの発給手順

ATIGA規定のBack-to-Back Form Dは、中継国の発給当局が輸出者の申請に基づいて発行します 。ここでは中継国をシンガポールとした場合の手順を解説します。[global-scm]​


① 発給の前提条件確認

申請前に以下の全条件を満たしているかを確認します 。customs+1

  • 3カ国(最初の輸出国・シンガポール・最終輸入国)がすべてATIGA締約国(ASEAN加盟国)であること
  • 最初の輸出国が発行した有効なProof of Origin(Form Dまたはe-Form D)が存在すること
  • シンガポールへの輸入が、その元のCOに対応していること
  • シンガポールでの実質的な加工・製造が行われていないこと
  • 再輸出数量が元のCOの数量を超えないこと

② 必要書類の準備

シンガポール税関(Singapore Customs)への申請に必要な書類は以下のとおりです 。customs+1

書類備考
元のForm D(Original CO)原本またはCertified True Copy。ブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ミャンマー・タイ・ベトナムはe-Form Dの参照番号でも可(ASEAN Single Window経由)
輸出許可証(Export Permit)TradeNet経由で申請・添付
輸入許可証(Import Permit)証明書タイプ20・28・32の場合のみ必要
輸出者インボイスシンガポールから最終輸入国向けのもの
Declaration Letter証明書タイプ34の場合のみ必要

③ TradeNetへの申請と証明書タイプの選択

シンガポール税関の電子申告システム「TradeNet」から申請します 。ATIGAのBack-to-Back Form DはCertificate Type 17を選択します 。申請時に輸出許可証と元COの情報を紐付けて添付します。customs+1


④ Back-to-Back Form Dへの記載事項

発行されるBack-to-Back Form Dには、通常のForm Dの記載に加えて、以下を明記する必要があります 。jetro+1

  • 元のCOの参照コード(Reference Number)
  • 元のCOの発給日
  • 原産国(最初の輸出国)
  • 元のCOが原産地申告方式(自己申告)の場合は、認定輸出者(CE)のコード
  • 分割出荷の場合は、各出荷の価額と数量を個別に表示

⑤ 期限管理

Back-to-Back COの発給・活用には二重の期限管理が必要です 。[global-scm]​

元のForm D発給日

├── +12か月以内 ─→ シンガポールからの再輸出(最終輸入国への輸出)

└── Back-to-Back CO発給日

└── +1年以内 ─→ 最終輸入国の税関へCO提出

**有効期限は「元のCOと新たなBack-to-Back COのうち短い方」**が実質的な期限となるため、案件開始時点で期限表を作成して管理することが重要です 。[global-scm]​


⑥ 最終輸入国での特恵申告

Back-to-Back Form Dを受け取った最終輸入国の輸入者が、輸入通関時にForm Dを提示してATIGA特恵関税を申告します 。最終輸入国の税関から疑義が生じた場合、元のOriginal Form Dの提示を求められる場合があるため、中継国(シンガポール)で元COを保管しておくことが推奨されます 。jetro+1

なお、ATIGAのBack-to-Back COは輸出元の国へ再輸出するケース(例:インドネシア→シンガポール→インドネシア)には対応していないため、その場合は輸入国税関への事前確認が必要です 。[ask.gov]​

AFTAにおけるシンガポール経由のBack to Back CO取引例

シンガポールは**ASEAN最大の中継貿易港(トランジットハブ)**として機能しており、AFTA(ATIGA)のBack to Back CO発給件数が突出して多い国です 。以下に代表的な取引例を示します。[jetro.go]​


基本取引例①:インドネシア→シンガポール→ベトナム

[インドネシア工場]
↓ 輸出(ATIGAのForm D 原産品)
[シンガポール倉庫] ← 一時保管のみ・加工なし
↓ Back to Back CO発行(Singapore発給機関)
[ベトナム輸入通関] ← ATIGA特恵関税を適用

ATIGAの典型例です 。インドネシアが発行したOriginal Form Dをシンガポールの発給機関に提示し、シンガポールから**新たなForm D(Back to Back CO)**を発行してもらいます。シンガポールの倉庫内では加工を一切行わず、インドネシアで取得した原産資格がそのまま維持されることが条件です 。tarifflabo+1


基本取引例②:マレーシア→シンガポール(仕分け・分割)→インドネシア・フィリピン

[マレーシア工場]
↓ まとめて輸出(ATIGA Form D)
[シンガポール物流センター]
↓ 仕分け・コンソリ出荷
┌───────────────┐
[インドネシア] [フィリピン]
Back to Back CO Back to Back CO

Original COの数量の範囲内で分割出荷に対応したBack to Back COを複数枚発行できるのが、この制度の実務上の最大のメリットです 。在庫をシンガポールに置いてオーダーに応じて各国へ出荷するスタイルで広く利用されています。[jastpro]​


実務ケース③:日系企業の三国間取引(インドネシア委託工場→シンガポール→ベトナム得意先)

日系企業がインドネシアの委託先工場で生産した製品を、ベトナムの得意先へ三国間貿易で輸出する際、シンガポールでBack to Back COを発行し、ベトナムでATIGA特恵関税を適用するケースが実際に報告されています 。この場合、AJCEPのBack to Back COとATIGAのどちらを使うかの協定選択も重要な実務判断となります。[jmcti]​


シンガポールが選ばれる理由

要因内容
発給実績中継ぎ貿易港として発給件数が突出して多く、当局の経験値が高い [jetro.go]​
手続き効率Singapore Customs(シンガポール税関)が電子申請(TradeNet)でBack to Back CO発行に対応 [customs.gov]​
積送要件税関管理下での保管・仕分けが明確にルール化されている [global-scm]​
協定網ATIGA・AJCEP・RCEP・CPTPP・日シンガポールEPAなど多数の協定に参加しており、柔軟な協定選択が可能 [jastpro]​

手続き上の主な注意点

  • 元のOriginal Form D(またはe-Form D)の**有効期限(発給日から12か月)**内にシンガポールから最終国へ輸出・輸入申告を終える必要があります[global-scm]​
  • シンガポール発行のBack to Back CO自体も新たな有効期限が設定されるため、二段階の期限管理が必要です[global-scm]​
  • 最終輸入国(例:ベトナム)の税関が疑義を持った場合、元のOriginal COの提示を求められることがあるため、原本または認証コピーを保管しておくことが推奨されます[global-scm]​

FTAにおけるBack to Back COとは

Back to Back CO(バック・トゥ・バック原産地証明書)とは、「連続する原産地証明書」のことで、英語では “Movement Certificate” とも呼ばれます 。ある締約国から輸出された原産品が中継国を経由してさらに別の締約国に輸入される場合に、中継国の発給機関が元のCOを根拠として新たに発行するCOのことです 。jetro+1


基本的な仕組み

物流の流れは以下のようになります :customslegaloffice+1

  1. 輸出国Aが原産品に対してCOを発行し、中継国Cへ輸出
  2. 中継国Cで貨物を一時保管・分割・コンソリ等(加工なし)
  3. 中継国Cの発給機関が、元のCO(Original CO)を根拠にBack to Back COを新規発行
  4. 最終輸入国BがそのBack to Back COを受理し、FTA特恵関税を適用

重要なのは、中継国での加工が行われず原産資格が変更しないことが前提条件である点です 。単純な積み替えだけでなく、在庫保管・分割出荷・コンソリデーションなど、商流と物流が動く際に活用される制度です 。tarifflabo+1


発給の主な条件

  • 元のOriginal COが有効であること[global-scm]​
  • 中継国の輸出者または代理人からの申請があること[global-scm]​
  • 中継国で実質的な加工・変形が行われていないこと[tarifflabo]​
  • 再輸出数量が元のCOの数量を超過しないこと[global-scm]​

日本のEPAでの適用範囲

日本が締結しているEPAでは、日・ASEAN EPA(AJCEP)とRCEP協定においてBack to Back COが規定されています 。[jaftas]​

協定Back to Back COの可否備考
ATIGA(ASEAN域内)ASEAN加盟国間で利用可 [jetro.go]​
AJCEP(日・ASEAN EPA)日本→A国→B国の再輸出時に適用 [jaftas]​
RCEP韓国DCからの再輸出事例など [jetro.go]​
ASEAN・韓国FTA中継国の発給機関が発行 [bk.mufg]​
ASEAN・インドFTA同上 [bk.mufg]​
ASEAN・中国FTAASEAN・中国域外では不可と解釈される [bk.mufg]​
JVEPA(日・ベトナムEPA)利用不可 [jetro.go]​

実務上のポイント

Back to Back COの発行には、元COの有効期限・再輸出スケジュール・輸入申告の締め切りが絡むため、案件開始時点で期限表を作成して管理することが推奨されます 。また、ATIGAでは認定輸出者(Approved Exporter)がBack to Back Origin Declarationを自己作成できる枠組みも整備されています 。[global-scm]​

条件や手続きは協定の種類・中継国の国内法によって異なるため、各国税関等への確認が必要です 。[jetro.go]​