AJCEPなどでBack-to-Back COの適用が難しい理由

Back-to-Back COは制度として存在していても、協定の構造・各国の国内整備・書類管理の複雑さという三層の障壁が重なることで実務上の難易度が高くなります 。jetro+1


理由①:「任意規定」であるため各国の国内法に委ねられる

AJCEPのOCP Rule 3(4)は「中継国の発給当局が発行できる(may issue)」という任意規定です 。これは「発行しなくてもよい」ことを意味するため、各国が国内法や運用手続きを整備していなければ事実上発行されません 。シンガポールはTradeNetで電子化済みのため対応できますが、ベトナムは年間数件程度しか発給実績がなく具体的な運用細則が存在しません 。jaftas+1


理由②:日本商工会議所はAJCEPのBack-to-Back COを発給しない

日本がASEAN国からの貨物を中継して別のASEAN国へ再輸出する場合、日本側の発給機関である日本商工会議所はAJCEPのBack-to-Back COを発給していません 。同じ日本商工会議所がRCEPのBack-to-Back COは発給しているため、協定によって対応が分かれています 。さらに日本とASEAN国間の二国間EPA(JVEPA等)ではBack-to-Back CO制度そのものが規定されていないため利用不可です 。jetro+1


理由③:「非加工証明書」の取得が構造的に難しい

中継国での加工が行われていないことを証明する**非加工証明書(Proof of Non-Manipulation)**は、Back-to-Back CO申請の核心書類ですが、発行機関・様式・取得手続きが協定や国ごとにバラバラです 。[jetro.go]​

非加工証明書の現状
シンガポールTradeNetで手続き完結。発給当局が電子的に確認 [mofa.go]​
タイ税関管轄下にある貨物なら発行可。実質加工なければ認める [mofa.go]​
ベトナム発行機関が明確でなく、担当者が現地倉庫へ出向いて目視確認 [jetro.go]​
インドネシア書類審査が厳格。提示できない場合は拒否 [jmcti]​

理由④:複数の協定・条文を同時に管理しなければならない

Back-to-Back COは「元CO」「中継国でのBack-to-Back CO」「最終輸入国での受理」という三段階が異なる協定・異なる国の法令に基づくため、1つの取引で最低3つの法的根拠を並行管理する必要があります 。[global-scm]​

① 最初の輸出国(例:日本)
↓ AJCEP OCP Rule 2 に基づくForm AJ発行
② 中継国(例:シンガポール)
↓ AJCEP OCP Rule 3(4)・IR Rule 9に基づくBack-to-Back Form AJ発行
↓ + シンガポール国内のCustoms Act・TradeNet規則
③ 最終輸入国(例:ベトナム)
↓ ベトナム国内規則による受理・特恵適用の可否判断

これに対してATIGAは10か国のASEAN内だけで完結し、共通のOCPが機能しているため、相対的に管理が容易です 。[mofa.go]​


理由⑤:書類の「紐付け」が弱いと検証リスクが急増する

Back-to-Back COには元COの参照番号・発給日・発給機関が正確に記載されていなければならず、最終輸入国の税関から検証(Verification)が来た際には中継国の発給当局にまで調査が及びます 。コンソリ出荷(複数の元COを束ねる場合)では照合ポイントが倍増し、1つの番号の誤りで全ロットのFTA特恵が否定されるリスクがあります 。[global-scm]​


理由⑥:各国税関の「解釈の相違」が解消されていない

ATIGAとAJCEPの条文はほぼ同じ内容ですが、「どの協定のBack-to-Back COを受け入れるか」は最終的に各国税関の運用次第であり、ASEAN全体での統一解釈がありません 。インドネシアがシンガポール発行のAJCEP Back-to-Back COを拒否した事例はその典型であり、日本機械輸出組合が複数年にわたり「ASEAN域内での統一・明確化」を要望しているにもかかわらず未解決のままです 。[jmcti]​


制度的な抜け道:RCEPへの切り替え

こうした困難を回避する手段として、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)のBack-to-Back COへの切り替えが選択肢となります 。RCEPは日本・ASEAN・中国・韓国・豪州・ニュージーランドをカバーする広域FTAであり、日本商工会議所もRCEPのBack-to-Back CO発給に対応しています 。AJCEPで壁にぶつかった案件でも、RCEP経由で同等の特恵税率が得られるか確認することが有効な実務的対応です 。tarifflabo+1

 

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