電子CO時代の新常識。「証明書ライフサイクル」管理が、通関事故を防ぐ最強の防壁になる


電子原産地証明書(電子CO)の導入を、単に**「紙の証明書がPDFに変わるだけ」**と捉えていませんか?もしそう考えているなら、現場はいずれ大きなトラブルに直面することになります。

実務で真に重要になるのは、証明書を「静的な紙」ではなく、状態が変化し続ける「動的なデータ」として捉える視点です。いつ作成され、誰が承認し、現在どのようなステータスにあり、いつ無効化されたのか。この**「証明書ライフサイクル」**の管理こそが、デジタル時代の貿易業務設計の肝となります。

世界税関機構(WCO)のガイドラインにおいても、電子COは「申請・発給が電子的に完結し、真正性の担保(署名等)もデジタルで行われるもの」と定義されており、発行後の検証や無効化まで含めたシステム的な運用が前提とされています。


まず理解すべき2つのライフサイクル

電子COを安全に運用するためには、大きく2つの軸で管理を考える必要があります。

1. COそのもののライフサイクル

申請から発給、利用、そして保存に至るまでの業務プロセスの流れです。電子化により、各プロセスが「データのステータス(状態)」として記録されるため、追跡可能性(トレーサビリティ)が格段に向上します。

2. 電子署名・電子印章(トラスト)のライフサイクル

そのCOが「本物である」ことを技術的に保証する仕組みです。WCOやUN/CEFACTが指摘するように、電子COが拒否される主要因の一つは「署名の検証不能」です。署名の有効期限や、検証可能な環境が整っているかは、COの受理可否に直結する技術的なライフサイクルです。


COライフサイクルを7段階で設計する

ここからは、実務フローに沿って7つの段階ごとのリスクと対策を具体化します。

第1段階 申請:入力品質が全てを決める

電子申請の最大のメリットはスピードですが、それは**「入力ミスの拡散」**も早まることを意味します。WCOも指摘する通り、電子化は申請を容易にしますが、誤ったデータが即座に発給・送信されてしまうリスクと隣り合わせです。

✅ 実務の対策

  • 申請画面に入力する前の**「原票確定」プロセス**を厳格化する(品名、HSコード、原産性判定の事前ロック)。
  • 社内管理番号(インボイス番号等)と、発給システム上のIDを紐付ける管理簿を作成する。
  • 誰が申請し、誰が承認したかという「権限管理」と「ログ保存」を徹底する。

第2段階 審査:システムのロジックに合わせる

ICC(国際商業会議所)は、CO発給における透明性と説明責任を強調しています。電子発給システムでは、紙の時代のような「手書き修正」や「曖昧な記述」はシステムエラーとして弾かれます。発給機関のシステム仕様に合致したデータを準備する必要があります。

✅ 実務の対策

  • 発給機関が要求する裏付け資料(根拠資料)の電子フォーマットを社内で標準化する。
  • 原産地規則(CTC、VA、SPなど)ごとに、必要なデータ項目をテンプレート化しておく。

第3段階 発給:真正性の核(コア)が生成される

この時点で、CO番号、発給日時、電子署名といった、後工程で検証される重要データが確定します。一度発給されたデータは、一文字たりとも修正できません。**修正=再発給(別データの生成)**となるのが電子の鉄則です。

✅ 実務の対策

  • 発給されたPDFやデータは、個人のPCではなく、全社的なサーバーや文書管理システムに即時保管する。
  • 発給データと、申請時の社内データを自動突合し、差異がないか最終確認する。

第4段階 送付と共有:PDF送信か、データ連携か

ここが最大の分かれ道です。日本の一部のEPAのように「PDFファイルをメールで送る」ケースと、ASEANのe-Form Dのように「国同士のシステムでデータを直接送る(ASW)」ケースがあります。WCOも、EDIFACTやXMLなどのデータ交換方式が、自動検証やリスク管理に資すると整理しています。

✅ 実務の対策

  • 相手国や協定ごとに「提出方法(PDFメール添付、システム連携、紙出力して提出など)」をマニュアル化する。
  • 国同士のデータ連携の場合、輸出者は「参照番号」を輸入者に正確に伝えるフローを確立する。

第5段階 通関での利用:ステータスの追跡

輸入通関で使用されたかどうかの管理です。電子データの場合、理論上は「使用済み」「未申告」といったステータス管理が容易になります。特にデータ連携型の場合、輸入国側での受理状況がシステム上で確認できるケースもあります。

✅ 実務の対策

  • 輸入者および通関業者と、CO番号の伝達・確認ルールを取り決める。
  • 社内台帳に「通関使用済み」のチェック欄を設け、二重使用や使い忘れを防止する。

第6段階 検証:オンライン確認が標準に

ICC認定の商工会議所などが運営する検証サイトでは、CO番号やセキュリティコードを入力することで、そのCOが真正なものであるか即座に確認できます。輸入国税関も、紙の偽造を見抜くよりも、システム上のデータ照合(検証)を重視する傾向にあります。

✅ 実務の対策

  • 輸入者任せにせず、輸出者側でも出荷前に検証サイト等で「正しく表示されるか」を確認する手順を組む。
  • 事後調査(検認)の連絡が来た際、即座に原産性の根拠データを取り出せるフォルダ構成にしておく。

第7段階 訂正・再発給・取消:上書きではなく「置換」

ここが紙との最大の違いです。電子COにおいて訂正とは、**「古いCOをシステム上で無効化(取消)し、新しい番号のCOを発行する」**作業を指します。ASEANの運用規定でも、再発給時は旧証明書の取消処理が必須とされています。

✅ 実務の対策

  • 再発給が発生した場合、輸入者と通関業者に対し「古いCO番号は無効になった」ことを確実に伝える緊急連絡ルートを確保する。
  • 社内台帳において、古いCOを「無効(Void)」としてマークし、誤って使用されないよう管理する。

保存と監査対応:保存すべきは「ファイル」だけではない

電子COの保存において、「PDFファイルさえあればいい」という考えは危険です。事後調査(検認)や監査に耐えるためには、以下の情報セットが必要です。

  1. 申請時の入力データおよび添付した根拠資料
  2. 発給された電子COデータ(PDF含む)
  3. 承認や訂正、取消に関するシステム上の履歴(ログ)

ASEAN等の協定や国内法では、数年単位(例:日本では原則5年または7年)の保存義務が課されています。電子データは紙と異なり、保存期間中の「可読性(いつでも読める状態)」を維持することも重要です。

  • 対策①: 保存単位を「COファイル単体」から、インボイスや根拠資料を含めた「案件フォルダ」単位へ拡張する。
  • 対策②: 法定保存期間を満たすバックアップ体制を構築する。

電子CO導入で陥りやすい3つの失敗

1. 紙を出せばなんとかなるという思い込み

シンガポール税関などの案内にもある通り、電子化が全面的に進んだ協定では、正当な理由なく紙の証明書を提出しても拒否される場合があります。

👉 対策:協定および相手国の最新の運用ルール(e-CO必須か、紙も可か)を常時確認する。

2. 再発給時の伝達ミス

修正版(新しいCO)を送ったつもりでも、現場に伝わっておらず、無効化された古いCO番号で申告してしまい、通関が止まるケースです。

👉 対策:再発給時は「新旧番号の対照表」を付けて連絡するルールにする。

3. 検証(事後調査)への準備不足

電子化により発給は早くなりますが、原産性の根拠が不要になったわけではありません。日本税関も警告している通り、根拠が確認できなければ特恵税率は否認されます。

👉 対策:発給スピードに甘えず、根拠資料の整備(ドシエ化)を申請とセットで行う。


まとめ:電子COの本質は「状態管理」への移行

電子COの価値は、単なるペーパーレス化やコスト削減にとどまりません。その本質は、証明書が「物理的な紙」から、検証可能で追跡可能な「データ」へと進化することにあります。

WCOやICCが推進するこの流れに対応するためには、単にシステムを導入するだけでなく、申請から保存、そして万が一の取消に至るまでのライフサイクル全体を、業務フローとして再設計することが求められます。

「データとしての証明書」を正しく管理できる企業こそが、通関トラブルを未然に防ぎ、グローバルなサプライチェーンを安定させることができるのです。

何が起きたのか:新設されたHTS先端半導体などに対して追加関税の骨格

米国は2026年1月15日から、特定仕様の先端半導体などに対して、HTS(米国関税分類)上の新しい追加関税枠を立ち上げました。ポイントは、半導体という広い括りではなく、HTSコードと性能指標で絞り込んだうえで、用途によって課税か非課税かを分ける、という設計になっている点です。(The White House)

以下、ビジネス実務で誤りやすい順に整理します。


1. 何が起きたのか:新設されたHTS追加関税の骨格

2026年1月14日付の大統領布告(通商拡大法232条)により、付属書(Annex)で定義される「Covered Products」に25%の追加関税を課す仕組みが導入されました。適用開始は米東部時間で2026年1月15日午前0時1分以降の輸入申告です。(The White House)

この措置はHTSのChapter 99(いわゆる追加関税などの臨時枠)に新設された見出し番号で実装されています。中心は9903.79.01で、これが今回の「HTS追加関税」の主戦場です。


2. 対象は「半導体一般」ではない:HTSコードと性能で極小化

今回の「半導体(semiconductor articles)」は、まずHTSコードが限定されています。

対象になり得るHTSコード(米国側の定義上の入口)
・8471.50
・8471.80
・8473.30

次に、輸入品が「ロジックIC」または「ロジックICを含む物品」で、かつ性能指標(TPPと総DRAM帯域幅)が次のいずれかを満たす場合に、追加関税の議論に入ります。

性能条件(いずれか)
・TPPが14,000超17,500未満 かつ 総DRAM帯域幅が4,500GB/s超5,000GB/s未満
・TPPが20,800超21,100未満 かつ 総DRAM帯域幅が5,800GB/s超6,200GB/s未満

TPPの計算やDRAM帯域幅の定義も米国側が細かく文章で定義しており、メーカー公表値の扱い方まで書かれています。ここを押さえずに「該当しないはず」と判断すると、通関で止まる典型パターンになります。


3. 新設されたChapter 99見出し番号:課税と非課税は用途で分岐

今回のChapter 99は、ざっくり言うと次のロジックです。

9903.79.01:25%追加関税(本丸)

性能条件を満たす「semiconductor articles」の基本形として、通常税率に加えて25%が上乗せされます。

9903.79.02:同じHTSコード帯だが性能条件を満たさない場合

8471.50/8471.80/8473.30に分類されるが、性能条件を満たさない品目は9903.79.02側で整理されます。実務的には、対象HTSコード帯の貨物は「条件を満たすかどうか」を申告上も切り分ける設計です。

9903.79.03〜9903.79.09:性能条件は満たすが、用途要件で除外

大統領布告は、米国内データセンター用途、修理交換、研究開発、スタートアップ用途、非データセンターの民生用途、非データセンターの民間産業用途、公共部門用途などは関税対象外としています。HTS上はそれぞれ9903.79.03〜9903.79.09に振り分ける設計です。(The White House)

ここで重要なのは、除外用途の定義が一部すでに文章で置かれている点です。例えば「U.S. data center」はAI向けの新規負荷が100MW超などの条件が入っています。研究開発の定義や、スタートアップの定義(米国法上のemerging growth company参照)も明記されています。


4. 関税の重複と優先順位:足し算にならない領域がある

この232条半導体関税は、同じく232条の他品目(鉄鋼・アルミ・自動車等)と重複する場合は、原則として本件が優先され、他の232条は適用しない、という構造になっています。さらに、相互関税など一部のIEEPA系の関税も適用除外と整理されています。(The White House)

一方で、反ダンピング・相殺関税など、別建ての貿易救済関税は引き続き課され得る、というのがChapter 99側の基本姿勢です。


5. 通関実務で効くポイント:CBPガイダンスが示す落とし穴

CBP(米税関)は、エントリー上のHTS番号の並び順と、複数のChapter 99番号を併記する場合のルールを明示しています。複数の追加関税を1つの番号にまとめて計上することは不可で、どのHTS番号にどの税額が紐づくかを分けて報告する必要があります。(GovDelivery)

さらに実務的に効くのが、相互関税の免除申告との関係です。CBPは、8473.30で9903.79.01が適用されるケースでは、相互関税免除のために9903.01.33を使うべき、といった細かい指示を出しています。ここを誤ると、免除の取り回しが崩れます。(GovDelivery)

加えて、次の2点は資金繰りに直撃します。
・ドローバック(関税還付)の対象外
・FTZ(外国貿易地域)に入れる場合、原則としてprivileged foreign扱いが必要 (The White House)


6. 日本企業が今すぐやるべき実務整理

日本側の輸出企業にとって、関税を納めるのは米国の輸入者ですが、契約条件次第で負担は売価に跳ね返ります。特にDDPや価格調整条項が弱い取引では、実害が顕在化します。

最短で効く対応は次の通りです。

  1. 自社品が該当HTS帯(8471.50/8471.80/8473.30)に入っているか、米国側の申告実績で棚卸し
  2. 仕様確認に必要なメーカー資料を、TPPと総DRAM帯域幅の観点で再整理(資料が弱いと通関遅延リスクが上がる)
  3. 用途の確認と証跡設計(どの9903.79.03〜.09で申告するか、輸入者・ブローカーと事前に合意)(The White House)
  4. 申告フローの点検(Chapter 99の順序、相互関税免除番号の使い分け、税額の紐づけ)(GovDelivery)
  5. ドローバック不可を前提に、価格・在庫・FTZ運用の再設計 (The White House)

7. 今後の焦点:Phase 1で終わらない可能性

大統領布告は、今回を二段階の第一段階と位置づけ、交渉の進捗報告(90日)や、より広範な関税・関税相殺プログラムの検討余地を明記しています。2026年7月1日までにデータセンター向け市場のアップデートを行い、措置の見直しを判断する流れも書かれています。(The White House)


米国USMCAの事後請求と還付手続


輸入時にUSMCA優遇を申告し忘れた、またはサプライヤーから原産性の確証が遅れて届いた――こうした場面でも、米国では一定の要件を満たせば、事後にUSMCA優遇を請求し、関税などの還付を受けられます。
実務上のポイントは、「輸入日から原則1年以内」という期限管理と、事後請求に用いる書類の作り込みです。law.cornell+1

本記事では、ビジネス現場で迷いやすい「どの手段を使い」「何を揃え」「どう進めるか」を、USMCA実施規則(19 CFR Part 182)をベースに、整理していきます。govinfo+1


1. USMCA優遇申告は2つのルート

USMCA優遇を享受する方法は、大きく2つのルートに分かれます。


1-1. 輸入時に申告するルート

米国側でUSMCA優遇を輸入時に申告する場合、エントリーサマリー上でHTSUS品目番号に特別プログラム表示の「S」または「S+」を付すことが基本です。[worldtradelaw]​
この輸入時申告は、輸入者・輸出者・生産者のいずれかが作成したUSMCA原産地証明(Certification of Origin)に基づいて行われます。customsmobile+1

USMCAでは、Merchandise Processing Fee(MPF)の免除も、「USMCA優遇の申告がなされていること」を前提として整理されており、輸入時に正しく申告を行うことが最もシンプルな運用です。butzel+1


1-2. 事後に請求して還付を受けるルート

輸入時点でUSMCA申告をしていなかった場合でも、その貨物が「輸入時点でUSMCA原産品となり得た」のであれば、輸入者は輸入日から1年以内に事後請求を行い、過納関税の還付を求めることができます。old.govregs+1
この事後請求は、19 CFR Part 182のSubpart D(Post-importation duty refund claims)に規定されており、いわゆる「1520(d)クレーム」として整理されています。law.cornell+1


2. 期限は「輸入日から1年」

USMCA事後請求の核心は、「輸入日から1年以内」という明確な期限です。govinfo+1
エントリーサマリー作成日や清算日ではなく、「輸入日(date of importation)」を基準として社内管理するのが安全です。
システム上はこの日付に紐づけてリマインドを設けると、期限管理の漏れを防ぎやすくなります。[law.cornell]​


3. 事後請求で求められる「4点セット」

USMCAの事後請求は、港での紙提出・電子提出のいずれでも認められ、次の4点を出す構成になります。[govinfo]​

  1. 当該貨物が輸入時点でUSMCA原産品であった旨の宣言と、対象エントリー番号およびその輸入日
  2. 19 CFR 182.12に準拠したUSMCA原産地証明(Certification of Origin)の写しlaw.cornell+1
  3. エントリーサマリーなどの控えを他者へ提供したか、その有無と提供先に関する情報
  4. 抗議申立て・請願・再清算要請など他の救済手続を既に行っているかどうか、行っている場合はその番号と日付[govinfo]​

実務的につまずきやすいのは、

  • 2)の証明書そのものの要件充足
  • 3)4)の「周辺ステータス確認」

です。
輸入者・通関業者だけで完結しないことも多く、輸出者や生産者まで巻き込んだ情報連携設計をあらかじめ決めておくと、事後請求の処理がスムーズになります。customsmobile+1


4. USMCA原産地証明書(Certification of Origin)の要件

USMCAでは定型フォームは要求されていませんが、記載要件は場合によってはNAFTA時代より煩雑で、証明書の出来が還付可否に直結します。law.cornell+1


4-1. 形式と保有タイミング

USMCA原産地証明は、所定フォームである必要はなく、書面またはCBPが認める電子手段により作成できます。customsmobile+1
USMCA優遇を主張する場合には、請求時点で輸入者が当該証明書を保有していることが前提となり、CBPへの提示義務があります。law.cornell+1

また、証明内容をインボイスなどの他書類に記載することは可能ですが、「USMCA域外で発行された商業書類に載せた証明」は枠外とされています。[customsmobile]​
たとえば日本本社発行インボイスにUSMCA証明文言を載せる運用は、要件不充足のリスクが高く、業務マニュアルで禁止・回避することが望ましいです。[customsmobile]​


4-2. 言語

原産地証明は、英語・フランス語・スペイン語で作成できます。[law.cornell]​
英語以外で作成する場合、CBPが必要と認めれば英訳の提示を求められるため、審査スピード重視なら北米グループで英語ベースに統一しておく方が無難です。[law.cornell]​


4-3. 必須データ要素

USMCA原産地証明には、少なくとも次のような情報を含める必要があります。customsmobile+1

  • 証明者が輸入者・輸出者・生産者のいずれであるか
  • 証明者の氏名・住所および署名者の情報
  • 貨物を特定できる十分な品名記述と、少なくともHS6桁レベルの分類番号
  • USMCA General Note 11に基づく適用原産地規則(例:CTSH、RVCルール等)の明示[govinfo]​
  • 単発(単一出荷)か、複数出荷にまたがるブランケット証明かの区別(ブランケット期間は最長12か月)old.govregs+1
  • 規則で定められた宣誓文言と署名・日付law.cornell+1

特に、HS6桁以上と適用原産地規則の明確な記載は、検証や事後請求時の説得力に直接結びつくため、社内チェックリストに組み込むとよいでしょう。govinfo+1


4-4. 有効期間

適切に作成・署名された原産地証明は、作成日から4年間有効として取り扱われます。old.govregs+2
ただし、USMCA事後請求の期限自体は「輸入日から1年」であり、証明書の有効期間が長くても、事後請求の期限が拡張されることはありません。law.cornell+1


5. どの手段で進めるべきか(PSC/USMCA事後請求/Protest)

USMCA優遇に関連して、現場では複数の手段が並びがちです。以下の表をベースに、用途を整理すると混乱しにくいです。pcbusa+1

5-1. 手段の整理表(わかりやすいフォント・スタイルで運用想定)

目的使う手段主な期限条件向いている局面
まだ清算前のエントリーで、輸入時申告を訂正してUSMCA優遇を反映したいPost Summary Correction(PSC)輸入日から300日以内 かつ 実行清算日(liquidated)の15日前まで(早い方)ship4wd+1未清算エントリーに対し、比較的早くUSMCA未申告に気づいた場合
輸入時にUSMCA申告し忘れた優遇を後から取り戻したいUSMCA事後請求(1520(d)クレーム)輸入日から1年以内law.cornell+1清算済み、またはPSC期間を過ぎたが、当初輸入時点で原産性があった場合
清算結果などCBPの判断そのものを争いたいProtest(抗議申立て)実行清算日から原則180日以内[pcbusa]​分類や評価等で争点があり、CBP判断の是正を求めたい場合

USMCA事後請求は、ほかの救済手段と並行して利用できる独立の「1年内還付請求権」として整理されており、清算済みエントリーについても再清算(reliquidation)を通じて還付を実現し得ます。govinfo+2

一方で、同一エントリーに対して Protest など他の手続が係争中の場合、CBPがUSMCA事後請求の審査を保留する運用もあり得るため、手段とタイミングの組み合わせは慎重に設計すべきです。ecfr+1


6. MPFは事後請求でも還付可能なのか

この点は、社内ルールが古いまま残るケースが多く注意が必要です。

USMCA発効当初、CBPのFAQなどで「1520(d)クレームではMPFの還付は認めない」という案内がされていました(所得再調整法520(d)に基づく返金との整理違いから生じたとも説明されています)。ghy+1
しかし、その後の技術修正(Technical Amendment)により、USMCA事後請求においてもMPFの還付を認める方向で法改正が行われ、その改正はUSMCA発効日である2020年7月1日に遡及適用されました。govinfo+1

実務としては、

  • 対象となる輸入期間
  • 適切な申請経路(1520(d)クレームとして適切に組み込むか)
  • CBPシステム側の処理前提

が絡むため、古いプロジェクトから続くマニュアルや税関業者指示書が「USMCAの事後請求ではMPFは還付されない」と書かれている場合は、最新法令・規則を根拠に見直す価値があります。butzel+1


7. CBP側の処理フロー

CBPがUSMCA事後請求を受領すると、まず対象エントリーの清算ステータスを確認します。

  • 未清算
  • 清算済み
  • 清算が最終確定済み

のいずれであるかを確認の上、判断が進められます。govinfo+1

  • 未清算エントリー:請求が認められれば、清算時にUSMCA優遇を反映させる
  • 清算済みエントリー:請求が認められれば、再清算(reliquidation)によって還付措置を実施するgovinfo+1

事後請求が否認されやすいのは、

  • 1年期限(輸入日から)の徒過
  • 4点セットや他の提出要件の不充足
  • 検証で原産性が否定された場合(例:原産地証明に虚偽または不正確な情報があった場合)ecfr+1

といったケースです。


8. 2026年2月以降、還付は原則電子化へ

「請求はできても、還付が滞る」というリスクを減らすために、還付受領の側を押さえておく必要があります。

CBPは、2026年2月6日以降、原則すべての還付を日本の通関文化でいう「電信送金」に近いAutomated Clearing House(ACH)による電子送金で行う制度へ移行する旨、連邦官報(2025-24171号)で暫定最終規則として公表しました。federalregister+1
これにより、紙の小切手による還付は例外的な場合を除き廃止となり、ほとんどの還付が銀行口座への直接入金として処理されることになります。livingstonintl+1

具体的には

  • ACEポータルでのACH Refund口座の登録
  • 米国外の輸入者を対象に、米国口座の開設、もしくはCBP Form 4811による第三者受領スキームの検討

が論点となります。fedex+2

USMCA事後請求で還付額が大きくなる可能性のある企業ほど、「CBPへの請求手続き」と同等の重要度で、受領側の口座設計と社内承認・統制を、2026年2月6日より前に整えておくことが推奨されます。govdelivery+1


9. 監査・検証に耐えるための最低ライン

USMCA優遇の主張を行う輸入者は、規則上、輸入日から少なくとも5年間、その根拠となる記録と文書を保持する義務があります。worldtradelaw+1
ここに含まれる資料には、単に原産地証明だけでなく、輸送・積み替えに関するトラックレコーディングなどの管理記録も含まれます。ecfr+1

また、USMCA域外を経由した場合など、CBPが条件充足の証拠を求めた際に、それらを提示できないとUSMCA優遇そのものが否認される可能性があります。[ecfr]​
さらに、輸入者は自らの主張の真実性に責任を負うとされ、証明書が不正確または無効と合理的に疑われる事情があれば、即座に申告を訂正し、追徴があれば納付する義務があります。ecfr+1

こうした訂正を自発的に行った場合のペナルティ軽減枠組み(Prior Disclosure 等に相当する整理)も、USMCA規則と一般通関規則の枠組みのなかに盛り込まれています。worldtradelaw+1


10. よくある失敗と具体的な回避策

この章は、現場レベルで実務担当者が「チェックリストやマニュアルに貼り付ける」イメージで書いています。

  • 原産地証明にHS6桁以上の記載がない、または適用原産地規則の記載が曖昧
    → 19 CFR 182.12の必須要素をチェックリスト化し、サプライヤー作成証明フォーマットに組み込む。customsmobile+1
  • ブランケット証明の期間が12か月を超えて設定されている
    → 証明書テンプレートで「最大12か月」と制限を明記し、開始日・終了日の妥当性をシステム/Excelなどでの検証ロジックで補う。govinfo+1
  • 日本本社発行インボイスにUSMCA証明を載せ、USMCA域外発行書類として認められないリスク
    → 専門フォーマットとしての独立証明書を使い、USMCA域内の当事者が作成することを運用で明確に指示する。[customsmobile]​
  • 事後請求で「エントリー控えの提供有無」「抗議・再清算の係属状況」の確認が抜け、CBP側で