韓国:「品目分類変更告示」(2026年1月22日)の実務ポイント

2026年1月22日、韓国関税庁(Korea Customs Service)は、2025年12月16日に開催された「第8回 品目分類委員会」の審議結果(9件)を反映した「輸出入物品等に対する品目分類変更告示」の改正内容を官報に掲載したと公表しました。
この種の告示は、韓国向け輸出入に関わる企業にとって、関税率だけでなく、FTA適用や申告実務(品目マスタ、通関指示、事後修正の要否)に直接影響します。


1. 今回の改正で何が起きたか

今回のポイントは、韓国での品目分類の取り扱いについて、品目分類委員会の決定を通じて解釈が明確化され、その内容が告示改正という形で公式ルールに組み込まれた、という位置付けです。
同じ製品であっても、分類の変更や整理が行われると、次のような要素が連鎖的に変わり得ます。

  • 適用関税率(基本税率、WTO譲許税率、協定税率など)
  • FTAの原産地規則における判定起点(HSベースのCTC基準など)
  • 輸入側での審査観点(補足資料要求、差し止め、事後調査リスクなど)

公表された9件のうち、実務的に象徴性が高い事例として、冷凍水産品と情報機器関連品の分類が説明されています(以下では代表的な論点として整理)。


2. 注目すべき分類事例

事例A:冷凍「チュクミ(주꾸미)」の扱い

争点は、「国際的な学名(属名)の変更が、HS上の分類変更を当然に意味するのか」という点です。
HS2017・HS2022体系では、タコ類は一般に「0307.52 Octopus (Octopus spp.), frozen」に分類されており、コードの構造自体は属の学名変更に直接連動しない形で設計されています。

韓国税関は、学名の変更は生物分類学上の名称変更にとどまり、HS体系の構造やコードの範囲が自動的に変わるものではない、という考え方に立ち、タコ類としての取扱いを維持する判断を示しています(具体の10桁分類「0307.52-3000」自体は韓国の細分コードであり、国際HSでは6桁までである点に注意が必要です)。
実務的には、韓国・ASEANはじめ各FTAで、同じHSコードに属するか否かにより関税率(0%か、そうでないか)が分かれる場合があり、この判断は輸入者・輸出者双方にとって影響が大きいテーマです。

また、韓国関税庁はこのような学名変更とHS分類の関係について、世界税関機構(WCO)の場で整理を進める姿勢を示しており、将来的な国際的ガイダンス整備につながる可能性があります。

事例B:CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)の扱い

CPU冷却用の装置(ラジエーター、ポンプ、チューブ、冷却ヘッド、ファン等で構成された液冷クーラーなど)について、「単なるファン(HS第84.14項)」や「一般的な冷却機器(HS第84.19項)」としてではなく、「自動データ処理機器用の部品(HS第84.73項)」として整理した点が重要です。

理由としては、次のような事情が総合的に評価されたと説明されています。

  • 複数の構成要素が一体となってCPU冷却という単一の機能を果たしている点(複合品としての一体性)
  • コンピュータ(自動データ処理機器)に専用、または主として使用される点(用途の専用性)

このような判断は、WCO解釈通則の「機能の一体性」や「特定用途向け部品」の考え方とも整合的であり、韓国としてコンピュータ関連部品の分類を整理していく流れの一端と位置付けられます。


2事例をビジネス視点で整理

実務上の示唆を、争点・結論・企業側の着眼点という切り口で整理すると、次のようになります(以下の表のコメント部分は筆者による実務的解釈です)。

対象争点韓国側の結論・方向性(要約)企業への示唆(実務的な解釈)
冷凍チュクミ(タコ類)学名(属名)の変更がHS分類を動かすか学名の変更それ自体ではHSの分類範囲は自動的には変わらない。タコ類としての分類を維持する方向。商品説明を生物分類上の名称だけに頼り過ぎず、実際の形態・用途・通関上の既存取扱いとの整合を確認する。FTA税率差の有無も含め、韓国側の分類と社内マスタを合わせる必要。
CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)ファン(8414)か、冷却機器(8419)か、それともコンピュータ部品(8473)か複数部材が一体となってCPU冷却という単一機能を果たし、かつコンピュータに専用または主として使用されることから、コンピュータ部品側(8473)に整理。構成部材の「寄せ集め説明」ではなく、用途の専用性と機能の統合性を文書で示す。写真・構成図・取付先機器等を整理し、「一般用ファン」や「汎用冷却装置」とは異なることを根拠立てる。

3. 日本企業が取るべき実務アクション

ここからは、日本企業が自社の業務フローにどう落とし込むかという視点で整理します。

アクション1:該当可能性のある品目の棚卸し

  • 韓国向け出荷品のうち、食品(水産物)、PC部材、冷却・電装周辺品など、今回の事例に類似性が高い分野を優先的に抽出する。
  • インボイス記載HS(6桁)と、韓国側申告コード(10桁)の間でズレが生じやすい品目(生物名ベースの品目、複合機能品など)を重点的に確認する。

アクション2:品目マスタと通関指示書の更新

  • 社内の輸出用HSマスタ(6桁・必要に応じて9桁)と、韓国輸入者側で使用される10桁コード体系を、定期的に照合しながら管理する。
  • 過去に韓国向け輸出実績がある品目については、分類根拠を1枚の説明資料(根拠シート)に整理しておくと有効です(例:
    製品概要、構成要素、主要用途、写真・図面、カタログ抜粋、取付先機器、比較候補コード(なぜ他の号ではないか)など)。

アクション3:不確実な品目は事前照会ルートを活用

韓国税関は、品目分類の不確実性を減らすための事前審査制度を運用しており、UNIPASS(韓国の通関電子申告システム)上で申請が可能と案内しています。
また、2026年1月2日施行の制度改正では、一定条件下で不足税額に対する加算税(不誠実申告加算税)の減免が認められるケースにも言及されており、輸入後に修正が生じ得る業種ほど、社内での修正手順と期限管理のルールをあらかじめ設計しておく価値があります。


4. 実務上の意味合いと今後の活用

今回の「品目分類変更告示(2026年1月22日)」は、単なる個別事例の紹介にとどまらず、韓国が品目分類の予測可能性を高めつつ、WCOとの整合も意識して運用をアップデートしているシグナルといえます。
日本企業としては、影響が出やすい品目から優先度を付け、韓国側の分類ロジックに沿った形で根拠書類の整備と品目マスタ更新を進めることが、最も効率的な対応策となります。