HS2028採択と相関表作業の公式スケジュール


企業が「いつ何を準備すべきか」を条約手続と公表情報から整理する

HS2028対応は、単にHSコード表が書き換わるだけではなく、通関申告、関税率表、原産地規則、統計分類、社内マスタ、契約書の品目定義などに連鎖して波及する、典型的な全社案件になり得るテーマである。wcoomd+1​
一方で現場がつまずきやすいのが「いつ何が正式に確定するのか」であり、HS条約の手続きとWCOの公表スケジュールを押さえないと、準備開始のタイミングを読み違えやすい。unstats.un+1​
本稿では、HS条約Article 16とWCO・USITC・EU等の公表情報に基づき、企業目線で2025〜2028年のタイムラインと、相関表作業の位置づけを再整理する。strtrade+2​


1. HS2028の「採択」は少なくとも3段階ある

ビジネス現場で混乱しやすいポイントは、「HS2028の採択」という言葉が単一の出来事ではなく、条約手続き上は少なくとも次の3段階に分かれることである。strtrade+1​

  • HS委員会(HSC)による改正パッケージの暫定採択
    • WCOのHarmonized System Committee(HSC)は、HS改正案を技術的に審議し、Article 16勧告案(改正パッケージ)を暫定採択する役割を持つ。wcoomd
  • WCO理事会(Council)による勧告の採択
    • HSCで取りまとめられたArticle 16勧告案は、WCO Councilに付託され、HS条約Article 16に基づく正式な勧告として採択される。strtrade+1​
  • 締約国による「みなし受諾」と発効日の確定
    • HS条約によれば、事務総長による通知から6か月以内に反対(objection)が出されない限り、その勧告は締約国により受諾されたものとみなされる仕組みになっている。unstats.un+1​

この構造により、「理事会で採択された時点=企業準備が完了しているべき時点」ではなく、「理事会採択〜正式採択〜発効までの間にどこまで前倒しするか」が企業の戦略論点になる。wcoomd+1​


2. なぜ施行が2028年1月1日なのか(Article 16のタイムルール)

HS改正の発効日は、HS条約Article 16のカレンダー規定にしたがって機械的に決まる。unstats.un+1​

  • 受諾(みなし受諾)のルール
    • Article 16に基づき、WCO事務総長が締約国に勧告通知を行った日から6か月間に反対が残っていなければ、その改正は締約国により受諾されたものとみなされる。wcoomd+1​
  • 発効日のルール
    • 通知日が4月1日より前の場合は翌々年1月1日、4月1日以降の場合は3年後の1月1日に発効する、という時期ルールがArticle 16で定められている。unstats.un+1​

HS2028について、WCOや各種解説では、2025年中頃にCouncilで勧告が採択され、Article 16に基づく正式採択を経て2028年1月1日に発効するという前提で整理されており、EUや民間の解説資料でも同様の前提が示されている。aeb+3​


3. HS2028採択の公式マイルストーン(2025〜2028年)

ここでは、WCO等で明示されている事実ベースのマイルストーンだけを抽出する。

  • 2025年3月:HSC第75回会合でArticle 16勧告案を暫定採択
    • WCOのニュースリリースによれば、2025年3月10〜21日のHSC第75回会合で、HS2028改正に関するArticle 16勧告が暫定採択され、299セットの改正パッケージが取りまとめられたとされている。wcoesarpsg+2​
  • 2025年6月:WCO理事会でArticle 16勧告を採択(予定)
    • EUや各種解説によると、2025年6月末のWCO Council会期でHS2028に関するArticle 16勧告が採択される見込みであり、その後6か月間の異議申立期間が続く旨が説明されている。tarifftel+2​
  • 2025年7月〜12月:6か月の異議期間
    • WCOの説明では、Councilで勧告が採択された後、締約国は6か月間、留保や反対を表明できるとされており、この期間を経てみなし受諾に至る。wcoomd+1​
  • 2025年12月末:正式採択(みなし受諾)のタイミング
    • HSC第75回会合のニュースリリースでは、改正勧告は2025年12月末に正式採択され、2026年1月に公表され、2028年1月1日に発効すると明記されている。aeb+2​
  • 2026年1月:WCOによる勧告の公表
    • 同リリース等では、正式採択後に2026年1月にArticle 16勧告と改正HS表が公表される予定であるとされており、民間解説でも2026年1月の公表が前提として扱われている。bex+3​
  • 2028年1月1日:HS2028発効
    • WCOリリースおよび各種解説はいずれも、HS2028改正は2028年1月1日に発効する予定であるとし、各締約国はこの日までに関税・統計分類を改正HSに整合させる必要があると整理している。strtrade+2​

このため、企業にとっての国際的な節目は「2025年末の正式採択」「2026年1月のWCO公表」「2028年1月1日の発効」の3点に収れんする。aeb+2​


4. 相関表とは何か:公式資料での位置づけと法的ステータス

相関表(Correlation Tables)は、旧版HSコードと新版HSコードの対応関係を示す表であり、企業の品目マスタやシステム移行に直結する実務上の要となるツールである。wcoomd+1​
WCOはHS2017/HS2022相関表の公表時に、「相関表は法的文書ではなく、HSCが審査したものの分類決定そのものではないが、新版導入準備のために不可欠なツールとなっている」と明確に述べており、国際的には「非拘束だが実務上必須の参照資料」という位置づけが定着している。wcoomd+2​

この構造はHS2028でも変わらないと見込まれ、HSC第76回会合(2025年秋)において、HS2022とHS2028間の相関表作成に向けた作業開始と、相関表のフォーマット改善が決定されたことが公表されている。customsmanager
したがって、HS2028対応では「法的拘束力を持つ改正HS条文」と「実装を支える非拘束ツールとしての相関表・解説書等」を組み合わせて運用する前提で計画を組む必要がある。wcoomd+1​


5. 相関表作業の進み方:WCO側で何が起き、いつ企業に効いてくるか

5-1. 既に確定していること:相関表作業はHSCで開始済み

2025年10月前後に開催されたHSC第76回会合についての解説では、次の点が明示されている。customsmanager

  • HS2022とHS2028の相関表開発に向けた作業が正式に開始されたこと
  • 相関表の形式(フォーマット)を改善する方針が採択されたこと

つまり、HS2028の相関表は2026年以降に突然登場するのではなく、HSCの議題として段階的に検討が進んでいるフェーズに既に入っており、HSC報告採択後に順次公表されるという流れが想定される。wcoomd+1​

5-2. Council採択から発効までの間に集中する作業

国連統計委員会の会合で共有されたWCO資料では、CouncilによるHS改正勧告の採択から発効までの準備期間に、次のような作業が走ると整理されている。unstats.un

  • Secretariat・HSCによる相関表の作成
  • 解説書(Explanatory Notes)など関連刊行物の改訂・公表
  • データベースや教材・研修資料の整備
  • 各国レベルでの関税表改正、システム更新、関係者教育

このため、企業としては「相関表だけ先に見る」のではなく、解説書の改訂や新たなClassification Opinionsの整備タイミングも視野に入れて、分類判断の最終確定時期を段階的に設計することが重要になる。wcoomd+1​

5-3. HS2022における実績:発効約14か月前に相関表が公表

HS2022の際、WCOは2020年11月にHS2017/HS2022相関表を公表しており、2022年1月1日の発効から逆算すると約14か月前に国際相関表が利用可能になったことになる。wcoomd
WCOリリースでは、HSC第66回会合(2020年10月)で相関表案の審査を終え、同年11月13日のHSC報告採択をもって相関表の公表が承認された、と手順が詳述されている。wcoomd+1​

HS2028でも同一タイミングでの公開が保証されているわけではないが、少なくとも「理事会採択後〜発効前の期間に相関表がHSC報告採択を経て公表される」という運用パターンは維持されると考えるのが自然である。customsmanager+1​


6. 実務上の落とし穴:WCO相関表と各国相関表は別物になりうる

企業実務で特に誤解が起きやすいのは、次の三点である。ddcustomslaw+1​

  • WCO相関表は原則6桁レベル(国際共通部分)の対応を示すツールであること
  • 多くの国は、輸入申告や統計で7桁以降の独自細分(国別サブヘディング)を用いていること
  • そのため、国内税番の移行は6桁レベルのシンプルな1対1変換にとどまらず、1対多・多対1・多対多の組み合わせが生じやすいこと

また、WCOリリースや各種ガイドラインでも、「相関表自体は法的地位を持たず、最終的な分類は各国の法令・関税表に依拠する」という点が繰り返し示されている。brussels.customs+1​
結果として、企業が本当に必要とするのは、WCO相関表だけでなく、主要取引国の「国内相関表」「関税表改正の官報・告示」「実務通達」の組み合わせであり、WCOと各国の両輪を継続的に追う体制である。ddcustomslaw+1​


7. 各国の国内対応はいつ動き出すか:米国の公式スケジュール例

国際スケジュールと並行して、各国は自国の関税表・統計表をHS2028に合わせて改正する必要があり、そのタイミングは国によってかなり異なる。usitc+1​
米国は相対的に早くプロセスを公表しており、企業にとってHS2028対応スケジュールの「具体例」として有用である。

  • USITCによるHTS改正プロセスの開始(2025年8月)
    • 米国国際貿易委員会(USITC)は、HS改正を反映するHTS改正作業についての調査を2025年8月に開始し、2028年版HTSに向けた変更を検討することを公表している。usitc
  • 2026年2月:予備的改正案の公表と意見募集予定
    • 同リリースでは、USITCが2026年2月にHTS改正の予備的案を公表し、一般から意見募集を行う予定であることが示されている。usitc+1​
  • 2026年9月:大統領への報告書提出予定
    • USITCは、パブリックコメントを踏まえて2026年9月に最終的な必要改正案を取りまとめ、大統領に報告書を提出する見通しであるとしている。usitc

さらに、民間の通商専門メディアでも「WCOが2026年1月にHS2028勧告を公表し、それを受けてUSITCが2月にHTS案を示す」という前提でタイムラインが整理されている。strtrade
この例から、主要国の国内税番具体化は「WCOによる2026年1月の公表直後から本格的に動き始める可能性が高い」という点を、企業の計画にも組み込むべきだといえる。strtrade+2​


8. 企業実務における2026〜2028年の現実的な段取り

ここでは、上述の公式マイルストーンを前提に、企業が「堅めに」取り得る進め方を年次ごとに整理する。

2026年:分類影響の棚卸しとマッピング設計

  • 自社品目マスタを6桁HSベースで一覧化し、輸出入・三国間・返品・保税等の取引形態を紐付ける。
  • HS2028で改正が集中するセクター(例:電子機器、環境関連、医療・化学等)を洗い出し、変更リスクの高い領域から詳細分析する。
  • 1対1・1対多・多対1・多対多のマッピングルール、属性追加の方針、社内の最終判定責任者を定義する。

このフェーズは、WCOによる勧告公表や相関表の整備が進むほど後工程が楽になる一方、全て出そろってから着手すると、主要国の国内改正スケジュールとバッティングしやすい領域である。wcoomd+1​

2027年:主要国の国内税番への落とし込み

  • 主要仕向け国・仕入国ごとに、国内相関表、関税表改正の官報・通達、HS2028対応ガイダンスを継続的にモニタリングする。
  • 税番変更が関税率、EPA/FTA上の特恵税率、原産地規則・積送要件、セーフガード・ADD等に与える影響を洗い出す。
  • 通関システム、ERP、商品データベース、帳票テンプレート、取引先マスタ等の更新と検証を順次進める。

2028年に向けた移行期運用の設計

  • 2027年末〜2028年初の出荷・到着・保税・返品・インコタームス条件など、「旧HSと新HSがまたがるケース」の社内処理基準を文書化する。
  • 社内教育(通関・調達・営業・経理)と、主要取引先への事前説明・通知を前倒しで実施する。

これらの作業は各社の事業ポートフォリオに依存するが、「2026年:影響把握と設計」「2027年:主要国マッピングとシステム実装」「2028年:移行運用と定着」という3段階で組むと、HS条約・WCOスケジュールと無理なく整合させやすい。usitc+2​


9. まとめ:公式スケジュールを押さえることで、準備の着手点が明確になる

  • HS2028は、HSCでのArticle 16勧告案の暫定採択、WCO理事会での勧告採択、6か月の異議期間を経たみなし受諾という段階を踏む構造になっている。wcoomd+1​
  • WCOは、2025年12月末の正式採択、2026年1月の勧告・改正HS表公表、2028年1月1日の発効というタイムラインを示しており、多数の国・民間解説もこれを前提としている。bex+3​
  • 相関表は国際法上の拘束力は持たないが、新版HS実装のための不可欠なツールと位置づけられており、HS2022/HS2017間の相関表は発効約14か月前の2020年11月に公表された実績がある。wcoomd+1​
  • HSC第76回会合時点でHS2022/HS2028相関表作業が開始されたことが公表されており、Council採択から発効までの期間に相関表・解説書・国内関税表改正が集中的に進むことが、国連統計関係資料等でも整理されている。customsmanager+1​
  • 国内税番の具体化時期は国ごとに異なり、米国では2026年2月にHTS改正案公表・意見募集、2026年9月に大統領への報告書提出といったスケジュールが示されているため、企業はWCO相関表だけでなく、主要国の国内相関表・官報・通達を並行して追う体制を構築する必要がある。strtrade+1​
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  30. https://mpoverello.com/2020/11/13/wco-publishes-hs-2022-correlation-tables/

投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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