スイス連邦におけるHSコード事前教示制度

スイス連邦におけるHSコード事前教示制度の実務まとめ

スイス(Swiss Confederation)でのHSコード事前教示制度—同国では一般に**「(拘束的)関税分類照会/Verbindliche Zolltarifauskunft(vZTA)」**と呼ばれる—の実務向けまとめです(最終確認日:2025年10月18日)。

主管当局と公式情報源

主管当局:連邦税関・国境警備庁(FOCBS/BAZG/OFDF)

公式ページ:関税分類照会(Zolltarifauskünfte)ページに、申請窓口・必要情報・処理目安・法的基礎が整理されています。

公式URL:https://www.bazg.admin.ch/bazg/de/home/services/services-firmen/services-firmen_einfuhr-ausfuhr-durchfuhr/zolltarif-tares/zolltarifauskuenfte.html

オンライン関税表(検索ツール):Tares(スイス関税表・注解・先例へのリンクを収載)。

申請窓口:メールのみ(tarifauskunft@bazg.admin.ch)で受付。所定の質問票**「40.10 Tarifanfrage」**(Word様式)を添付します。

様式ダウンロード:https://www.bazg.admin.ch/…/40_10_tarifanfrage.docx

各ページの言語切替(DE/FR/IT/EN)も利用可能です。

事前教示(vZTA)のプロセス

申請時期・対象:原則として輸入前に、個別の具体品目について照会します。BAZGは商品群全体に対する包括的な回答は行わない旨を明記しています。

提出方法:所定の質問票40.10に記入し、メール(tarifauskunft@bazg.admin.ch)で提出。必要添付書類(写真・図面・仕様等)はPDF等で同封します。

受理・補正:記載内容が不十分な場合、BAZGが追完(補正)を求めます。なお、サンプルは原則送付不要です(必要時にBAZGから要請)。

審査・回答:必要情報が出そろってから起算で、最長40日以内に回答します(通常はおおむね40日)。処理は到着順です。回答は書面(PDF)で通知されます。

法的位置づけ:書面の関税分類照会は「行政処分(Verfügung)」ではないため、その文書自体に対する不服申立ては不可です。ただし、その照会に基づく具体の賦課決定に対しては通常の不服申立て手段で争うことができます。

申請に必要な情報(最小パック)

BAZGは申請に必須の情報を明示しています。40.10の質問票に沿って、次を英独仏伊いずれかで具体的に記載・添付します:

  • 商品の詳細説明:種類・性状、包装形態、用途
  • 組成(複合材/化学品等):各成分の重量%(100%基準)
  • 参考情報:専門文献・ウェブリンク
  • 高解像度の写真、カタログ/取説抜粋、図面、製造工程情報など分類に有用な資料
  • サンプル:送付不要(BAZGが必要と判断した場合のみ依頼)

実務のヒント:出願前にTaresで候補見出しを確認し、GIR(一般解釈規則)・部注・類注の当てはめと「候補の比較→棄却理由→主張見出し」の論理を資料内で明示しておくと審査が速やかです。Tares内には「貨物分類の決定(先例)」へのリンクもあります。

処理期間

法定上限:完全な資料の到達後、最長40日で回答(Zollverordnung〔関税施行令〕Art. 73)。

運用目安:通常は約40日。到着順で処理されます。

有効期間(拘束力・失効)

有効期間:6年。または、適用法令や解釈が改正・撤回された時点で失効します。

補足:関税分類の照会は6年、原産地の照会は3年とする旨が法体系の解説箇所にも示されています。

法的性質:書面照会は「行政処分」ではないため直接の不服申立ては不可。ただし、その照会に依拠した具体の賦課(課税)処分に対しては通常の審査ルートで争えます。

必要な費用

手数料:FOCBS/BAZGは、通常業務としての処理について原則手数料を徴収しません(Verordnung über die Gebühren der Zollverwaltung〔SR 631.035〕Art. 1)。したがって分類照会(vZTA)自体は無料です。

実費等:サンプル送付費や特別の出張・時間外対応等を要する場合は、別表の実費・時間料が適用され得ます(同規則の別表)。

その他重要な実務上の注意点

申請単位:1申請=1品目が原則。製品群一括の判断は行いません。

提出形式:メールに40.10様式を添付(Word)。資料はPDF等で明瞭に。サンプルは原則送付不要です。

Tares活用:関税表・注解・先例をTaresで事前確認。分類根拠の提示(GIR、部注・類注の該当)を明確化します。

照会文書の法的地位:不服申立て不可ですが、具体の課税決定に対する不服申立てで間接的に争うことは可能です。

HS改訂への注意:HS改正(例:2028年改正)など制度改訂で有効期間内でも失効があり得ます。

産業品関税の撤廃(2024年1月1日~):工業品の輸入関税は撤廃されましたが、分類(HSコード)は依然必須です(農産品関税・VAT・各種規制・統計・FTA原産地判定等で利用)。

申請準備チェックリスト

☐ 40.10質問票を作成(DE/FR/IT/ENのいずれか)。tarifauskunft@bazg.admin.ch宛にメール提出

☐ 用途・機能・構造・作動原理・組成(重量%=合計100%)・寸法重量・包装を写真・図面・仕様で裏付け

☐ 候補見出しの比較→棄却理由→主張見出し(GIR・部注・類注の当てはめ)を明記

☐ サンプル不要(要請時のみ提出)

☐ 処理目安:完全資料受領後40日以内(到着順)

☐ 有効6年(法改正等で失効あり)。更新時期を逆算

☐ 手数料:原則無料(通常業務の範囲)。特別対応は規則の定める実費があり得る

法令・一次情報(抜粋)

  • BAZG公式:関税分類照会(Zolltarifauskünfte)—必要情報、提出方法、40日の運用目安、サンプル不要、処分性なし
  • Zollverordnung(関税施行令)Art. 73—完全資料受領後40日以内に回答、補正要求の規定
  • BAZG指針R-10-00—有効6年、法改正等で失効、不服は具体賦課で間接的に
  • Tares(関税表)—関税表・注解・分類決定(先例)へのリンク
  • 手数料規則(SR 631.035)Art. 1—通常業務の処理は手数料を徴収しない旨
  • SECO:工業品関税の撤廃(2024年1月1日)—分類自体は引き続き必要

スイスへの「相互関税」:ビジネス実務への影響と対応策

2025年8月28日時点

要点

国名追加関税率根拠法規備考
スイス 🇨🇭39% (相互関税)HTSUS 9903.02.582025年8月7日 0:01 a.m. EDT 発効・通常関税 (Column 1) に上乗せで賦課・経過措置: 8/7前に最終船積みし、10/5前に輸入申告した貨物は +10% (HTSUS 9903.01.25) を適用


最初に押さえるべき3つのポイント

  1. 39%の追加関税: スイス原産品に対し、39%の従価税 (ad valorem) が「相互関税」として課されます。申告にはHTSUSコード 9903.02.58 を使用し、通常関税やその他手数料に上乗せとなります。
  2. 適用開始日: 2025年8月7日 (EDT) から適用されています。ただし、8月7日より前に最終仕向地へ船積みされ、10月5日より前に輸入申告された貨物には、+10% の税率 (9903.01.25) が適用される経過措置があります。
  3. 関連国の扱い: EUに適用される「合計15%ルール」はスイスには適用されません。また、中国 (+10%) とは異なる税率枠が設定されています。迂回輸出 (トランスシップメント) と認定された場合は、+40% のペナルティ関税 (9903.02.01) が課されるため注意が必要です。

1. 制度の概要

  • 法的根拠: 大統領令 EO 14257 (2025/4/2) で「相互関税」の枠組みが創設され、EO (2025/7/31) で国別税率が改定されました。この改定でスイスに 39% の税率 (Annex I) と、国別のHTSUSコード 9903.02.58 (Annex II) が新設され、8月7日に発効しました。
  • 適用範囲: 一部の例外を除き、原則として全てのスイス原産品が対象です。本関税は、通常のHTS税率や、AD/CVD、232条関税など他の全ての関税・手数料と併せて課されます

2. 申告実務と例外規定

申告コード

  • スイス原産品: 9903.02.58 (+39%)
  • 経過措置対象: 9903.01.25 (+10%) (8/7前船積み、かつ10/5前輸入)
  • 迂回輸出と認定された場合: 9903.02.01 (+40%)

主な例外規定

  • 人道物資・情報資料: Chap. 99 の 9903.01.30–.33 に規定される品目は対象外です。
  • 米国原産品: 米国原産部材の価値が全体の20%以上を占める場合、その米国原産価値分は非課税となります (コード 9903.01.34)。非米国価値分のみが課税対象となり、申告は2行に分割する必要があります。
  • Chapter 98 (特別分類): 原則として適用可能ですが、9802 (修理・加工後の再輸入) など一部の規定では、米国外での加工価額等に対して相互関税が課されます。
  • FTZ (保税地域): 2025年4月9日以降に対象貨物をFTZに入庫させる場合、Privileged Foreign Status (PFS)での申請が必須です。

HTSコードの記載順序 (ACE申告時)

CBPは以下の順序を指示しています。

  1. Chapter 98 (該当する場合)
  2. Chapter 99 (各種追加関税)
    • 301条関税 → IEEPA関連 (フェンタニル等) → IEEPA (相互関税) → 232条/201条関税…
  3. Chapter 1-97 (通常の関税分類)

3. コスト計算例

相互関税は、通常関税などと複利計算ではなく、それぞれ加算されます。

  • 申告価額: $10,000
  • 通常関税: 5% → $500
  • 相互関税 (スイス): 39% → $3,900
  • 合計関税額: $500 + $3,900 = $4,400 (その他、税・手数料・AD/CVD等は別途)

4. 企業が取るべきアクションリスト

48時間以内 (即時対応)

  • 対象品目の特定: スイス原産の全輸入品リストを作成し、9903.02.58 の適用要否を判定します。特に、経過措置 (+10%) の対象となる貨物がないか出荷日と到着予定日を確認します。
  • 価格・見積の緊急改定: +39% のコスト増を前提に、販売価格や利益率を再計算します。必要に応じて取引先への通知と、Incotermsの見直しを開始します。

2週間以内

  • 通関プロセスの更新: 通関業者と連携し、HTSコードの記載順序や、Chapter 98/9903.01.34 (米国原産分) の適用可否、TIB (一時輸入)、ドローバック等の運用を確定させます。
  • 契約の見直し: サプライヤーや顧客との契約に、関税サーチャージ条項など価格調整に関する条項の追加・修正を交渉します。

90日以内

  • サプライチェーンの監査: 迂回輸出と見なされるリスクを避けるため、輸送ルートや第三国での加工実態に関する証拠書類を整備します。迂回認定は+40%の重いペナルティとなるため、コンプライアンス監査が不可欠です。
  • 動向監視とシナリオプランニング: スイス政府の対米交渉の進捗を注視し、関税率が変動する可能性に備えます。社内の価格体系や供給網計画を、情勢に応じて更新できる体制を構築します。

5. よくある質問 (FAQ)

  • Q1. 「39%」は、今までの関税が39%に変わるのですか?
    • A. いいえ、「置き換え」ではなく**「上乗せ」**です。通常関税が5%の場合、支払う関税は「5% + 39%」となります。
  • Q2. どのHTSコードで申告すれば良いですか?
    • A. 原則として 9903.02.58 (+39%) です。経過措置の対象となる貨物のみ 9903.01.25 (+10%) を使用します。
  • Q3. 米国製の部品を20%以上使っていれば、関税はかかりませんか?
    • A. 全額免除にはなりません。米国原産価値に相当する部分のみが非課税となり、残りの非米国価値部分には39%が課税されます。申告も2行に分ける必要があります。
  • Q4. EU向けの「合計15%ルール」はスイスにも適用されますか?
    • A. されません。スイスには国別に設定された 39% の税率が直接適用されます。

主な根拠資料

  • White House (2025/7/31): 大統領令。Annex Iでスイスの税率を39%と規定し、Annex IIで 9903.02.58 等を新設。
  • CBP CSMS #65829726 (2025/8/4): 経過措置 (+10%)、EU特則、中国の扱いに関する運用通達。
  • CBP CSMS #64649265 (2025/4/4): Chapter 98の扱い、20%米国原産価値の例外、ACE申告順序に関する通達。
  • Reuters (2025/8/25): スイス政府による関税緩和交渉に関する報道。

免責事項: この文書は一般的な情報提供を目的としており、法務または通関に関する専門的な助言ではありません。実際の申告にあたっては、必ず最新の連邦官報、CBPからの通達、および貴社指定の通関業者の指示に従ってください。