WCO第76回HS委員会、解説注と分類意見を改正

世界的なHS(Harmonized System)の運用ルールが一段とクリアになりつつあり、2026年の契約・調達プロセスに重大な影響を及ぼす可能性が高まっています。
これは2025年10月に開催されたWCO(世界税関機構)HS委員会第76回会期で、現行のHS2022版に関して解説注の改正、分類意見の追加・削除、分類決定の採択などが行われたためです。(World Customs Organization)

🔍 第76回会期で何が決まったのか

  • HS2022解説注の改正が2件承認 — 解説注(Explanatory Notes)は国際的に解釈・分類ルールの基準となる文書で、これが改正されると分類整合性に影響します。(World Customs Organization)
  • 新たに21件のClassification Opinionsが作成、既存2件が削除 — WCOの意見集(Compendium of Classification Opinions)が更新され、実務上の分類判断が変わる可能性があります。(World Customs Organization)
  • 40件の分類決定(Classification Decisions)を採択 — 国際的に共有される具体的な品目分類判断が追加されました。(World Customs Organization)
  • HS2022〜HS2028相関表の整備開始 — 今後のHSコード大改正(HS2028版)への移行準備が進み、新版との対応関係が整理されます。(CATTS)

📌 なぜこれが重要なのか

WCOのHS解説注や意見集・分類決定は、国際貿易における商品の統一的な分類・申告の基準です。これらが更新されると、EPA/FTA原産地判定、関税率適用、輸出入申告書類・ITシステムの設定などの実務ルールに直接影響します。 Classification OpinionsやClassification Decisionsは、各国税関の分類判断の基準としても使われます。(customs.go.jp)

2026年の契約・調達実務では、更新された解説注・分類ルールに基づいてHSコードの見直しと内部プロセスの整備を行わないと、誤申告やFTA誤適用リスクが増大する可能性があります。
こうした国際ルール改正は、日本国内の関税率表・統計品目表、通関システム、原産地管理などの見直しと歩調を合わせる必要があります。(customs.go.jp)


今回のWCO・HS分類関連改正内容の一覧

対象は世界税関機構(WCO)
HS委員会(Harmonized System Committee)で確定した内容です。

改正内容サマリー

区分件数内容実務的意味
HS2022 解説注(Explanatory Notes)改正2件既存品目の解釈明確化分類根拠の再構築が必要
分類意見(Classification Opinions)新設21件具体的商品の公式分類例同種品のHS再検証が必須
分類意見の削除2件過去の解釈を撤回従来分類の正当性消失
分類決定(Classification Decisions)40件争点品目の最終判断事前教示・訴訟で引用
HS2022→HS2028 相関作業進行中次期改正準備中長期の品目戦略に影響

特に注意すべき改正の性質

  • 条文は変わっていないが解釈が変わる
  • 「これまで問題なかったHS」が突然リスク化
  • FTA原産地規則(CTC)が成立しなくなる可能性

なぜWCOのHS・分類改訂が最重要なのか


1. すべての関税・FTA実務の「上流」に位置する

(WCO)が所管するHSは、
関税率、EPA/FTA原産地規則、貿易統計、制裁・輸出管理の共通基盤です。

HS解釈が変わると、

  • 適用関税率
  • FTA特恵の可否
  • 原産地判定(CTC・PSR)
  • 過去申告の適否(追徴・還付)

まで連鎖的に影響します。


2. HS改訂は「6年ごと」だが、解釈変更は毎年起きる

注目すべきは、HS2022や将来のHS2028だけではありません。

実務に直撃するのは以下です。

  • Explanatory Notes(解説注)の改正
  • Classification Opinions(分類意見)の追加・削除
  • Classification Decisions(分類決定)

これらは毎年のHS委員会で更新され、
条文は変わっていないのに、解釈だけが変わることが起きます。


3. 各国税関・裁判所がWCO判断を引用する

WCOの分類判断は、

  • 各国税関の事前教示
  • 税関事後調査
  • 関税訴訟

事実上の国際基準として使われます。

「日本では通っていたHSが、海外税関で否認される」
というケースの多くは、WCOレベルの解釈変更を見落としていることが原因です。


特に重点的に追うべきWCOの動き(実務優先度順)

最優先

  • HS委員会(HSC)の会期結果
    • 解説注改正
    • 分類意見の新設・削除
    • 分類決定の採択

次点

  • HS2028に向けた改訂議論
    • 新技術(EV、電池、半導体、環境品目)
    • デジタル・複合製品の扱い

中期的関心

  • HS相関表(HS2022→HS2028)
  • 新分類導入時の各国実装タイミング差

ビジネスマン視点での実務対応ポイント

  • HSコードは「固定資産」ではない
  • 原産地管理や契約書のHS前提は定期点検が必須
  • 分類根拠(EN、分類意見、決定)の文書化が重要
  • AIやツール導入時も、WCO改訂への追随体制が鍵

まとめ

国際機関の動向の中で、
WCOのHS・分類関連改訂は、最も早く、最も広く、最も深く実務に影響する分野です。

関税やFTAを扱うビジネスでは、
「WTOよりも、まずWCO」
という視点で継続的に追跡する価値があります。