HS2022 第58類:特殊織物、タフテッド織物類、レース、つづれ織物、トリミング及びししゆう布(Special woven fabrics; tufted textile fabrics; lace; tapestries; trimmings; embroidery)

用語の統一(本記事内)

  • 類=Chapter 項=Heading(4桁)号=Subheading(6桁)部=Section注=Notes(部注/類注)

本記事は日本の実務(輸入・輸出の双方を想定)で、HS2022の第58類を「誤解が起きにくい形」で整理したものです。HS6桁(国際共通)と、日本の国内コード(9桁等)は別物です。実務ではまずHS6桁の当たりを付け、その後に国内コードで細分を確認する流れが安全です。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個)
    • ベルベット、コール天などのパイル織物、シェニール織物(5801)
    • タオル地のようなテリー織物、タフテッド織物(ただし床用のものを除く)(5802)
    • レース、チュール、ネット状の布(条件あり)(5804)
    • リボン、テープ、ゴム入り細幅織物、ボルデュック(5806)
    • ブランドラベル、サイズラベル等(刺しゅうでないもの)(5807)
    • 組ひも、装飾用トリミング、タッセル、ポンポン(5808)
    • 刺しゅうワッペン、刺しゅう生地、スパンコール等のアプリケ刺しゅう(5810)
    • 中綿入りのキルティング生地(反物状態)(5811)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記)
    • 第59類注1の対象となる「紡織用繊維の織物類」で、染み込ませ・塗布・被覆・積層したもの(第59類、または第39類・第40類へ)
    • 結び目で作った網地(結び網地)(5608)
    • タフテッドのうち「床用繊維製床用敷物」(5703)
    • メリヤス編みやクロセ編みのレース・ネット等(第60類)
    • すでに衣類・スカーフ等の形に製品化(made up)されたもの(多くは第61類〜第63類、例:刺しゅう入りスカーフは6214方向)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個)
    • 反物か、すでに製品化(made up)されているか(第11部注7が鍵)
    • 細幅織物か(幅30cm以下、両側に耳などの条件)(5806かどうか)
    • 刺しゅうか、刺しゅうでないラベルか(5807か5810か、または製品化されて別類か)
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面
    • リボンやテープが「細幅織物(5806)」なのか「装飾用トリミング(5808)」なのか、または「被覆等で第59類」なのかが曖昧なまま輸入してしまうケース
    • ラベルが刺しゅう入り(5810)なのに、刺しゅうなし(5807)で申告してしまうケース

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くのはGIR1とGIR6です。まず「見出しの文言」と「部注・類注」で範囲を確定し、その後に6桁(号)の条件で詰めます。特に第58類は、類注が定義と除外を強く決めています(細幅織物の定義、刺しゅうの含意、結び網地の除外など)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 形状:反物か、ストリップか、モチーフか、単体部品か
    • 製法:織物か、メリヤス編みか、結び網か、刺しゅうか、タフテッドか
    • 寸法:特に幅(細幅30cm以下の判定)
    • 加工:染み込ませ、塗布、被覆、積層の有無(第59類に飛ぶかどうか)
    • 用途:床用か(5703に飛ぶ)、衣類として製品化済みか(61〜63に飛ぶ)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:製品化(made up)されていないか確認
    • 例:単に裁断しただけか、縁縫い・縁かがり・房付け・縫製でつなぎ合わせ等があるか
    • made upの定義は第11部注7で確認します
  • Step2:染み込ませ、塗布、被覆、積層(コーティング等)の有無を確認
    • 第58類注1は「第59類注1の紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの」と「第59類のその他の物品」を除外します
    • 特に58.03(もじり織物)、58.06(細幅織物)、58.08(組ひも・装飾用トリミング)は、コーティング等があると第58類から外れる扱いが強調されています
  • Step3:第58類のどの「タイプ」かを判定
    • パイル織物・シェニール織物:5801(ただし5802と5806を除外)
    • テリー織物(タオル地)またはタフテッド織物:5802(床用は5703へ)
    • もじり織物(leno、ガーゼ状の織り):5803(細幅は5806へ)
    • レース、チュール、ネット:5804(結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ)
    • つづれ織物(手織り、手針のもの):5805
    • リボン・テープ等の細幅織物:5806(ただしラベルは5807へ)
    • ラベル・バッジ(刺しゅうでない):5807(刺しゅうなら5810へ)
    • 組ひも・装飾用トリミング・タッセル等:5808
    • 金属糸・金属を交えた糸の織物:5809(用途や性状で他類の可能性もあるので慎重に)
    • 刺しゅう:5810(基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含む)
    • キルティング生地(反物):5811(第59.03の除外に5811が明記される点も実務上重要)
  • よく迷う境界(例)
    • 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング):装飾目的の構成や房・装飾の付け方で分岐しやすい
    • 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル):刺しゅうの有無が決定的
    • 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物):床用かどうか、基材や剛性などで分岐
    • 5804(レース)と5810(レース風のアプリケ刺しゅう):レースの作り方(基布の上で作るか、網目と柄を同時に作るか)で分岐

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

次の表は第58類の項(4桁)を実務目線で要約したものです(見出し文言と注の趣旨に基づく整理)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5801パイル織物・シェニール織物(ただし5802と5806を除外)ベルベット、コール天、シェニール織物テリーや細幅パイルは除外(5802/5806へ)
5802テリー織物、タフテッド織物(床用除外)タオル地、タフテッドの椅子張り生地タフテッド床用敷物は5703へ。細幅は5806へ
5803もじり織物(ガーゼ状の織り)もじり織ガーゼ、レノ織細幅は5806へ。医療用途の一定形態は3005方向もあり得る
5804チュール・ネット状の布、レース(反物・ストリップ・モチーフ)チュールレース、レースモチーフ結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ
5805つづれ織物(手織り、手針)タペストリー、手針つづれ風の壁掛け刺しゅう(5810)との混同に注意
5806細幅織物(ラベル除外)とボルデュックリボン、テープ、ゴム織物、バイアステープ幅30cm以下と耳の要件が鍵。房付きは5808へ。ラベルは5807へ
5807ラベル、バッジ等(刺しゅうでない)織ネーム、サイズラベル、ワッペン風の織ラベル刺しゅう入りは5810へ。切断以外に製品化すると61.17/62.17/63.07方向
5808組ひも、装飾用トリミング、タッセル等組ひも、フリンジ、タッセル、ポンポン60類(編物)の装飾トリミングは除外。ロゼット等で製品化すると62.17/63.07方向
5809金属糸・金属を交えた糸の織物(用途限定)ラメ織物、舞台衣装用メタリック生地用途や他見出し該当性の確認が必要
5810刺しゅう(反物・ストリップ・モチーフ)刺しゅう生地、刺しゅうワッペン、スパンコール刺しゅうレース風でも作り方次第で5810。製品化済み(スカーフ等)は他類へ
5811キルティング生地(反物)中綿入りキルト生地、縫い合わせ生地5811は59.03から除外される点が実務上重要。製品化すると61〜63へ

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効くもの)
    • 5806(細幅織物):幅30cm以下か、両側に耳があるか、袋織で平らにした幅か、バイアステープを広げた幅か
    • 5806(弾性):ゴム糸又は弾性糸(エラストマー糸等)が重量で5%以上含まれるか
    • 5807(ラベル):刺しゅうでないこと、反物・ストリップ・切断ユニットの範囲に留まること
    • 5802(タフテッド):床用敷物(5703)に該当しないか
    • 5810(刺しゅう):基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含むという定義
    • 5811(キルティング):反物であること、詰物を挟んで縫い合わせ等で一体化していること
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
    1. 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング)
      • どこで分かれるか:単なる細幅の織物か、装飾用として構成・加工されたトリミングか。細幅織物でも「織物自体の糸で房を付けたもの」は5808に寄ります
      • 判断に必要な情報:幅、耳、房の作り方(別付けか、織物自身の糸か)、装飾のための縫製や組み合わせの有無
      • 典型的な誤り:見た目がリボンだから5806と決め打ち
    2. 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル)
      • どこで分かれるか:刺しゅうの有無
      • 判断に必要な情報:製法(織り出し、印刷、刺しゅう、アプリケ)、製品見本写真
      • 典型的な誤り:ブランドロゴが糸で表現されているだけで「刺しゅう」と誤認、または逆に刺しゅうを見落とす
    3. 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物)
      • どこで分かれるか:床用敷物かどうか(用途と物性)
      • 判断に必要な情報:用途、裏面構造(バッキング)、厚み・剛性、製品仕様書
      • 典型的な誤り:タフテッドという言葉だけで5703に寄せる、または逆
    4. 5810(刺しゅう反物等)と「製品化された衣類付属品等」
      • どこで分かれるか:反物・ストリップ・モチーフの範囲か、スカーフ等として使用可能な完成品(made up)か
      • 判断に必要な情報:寸法、縁処理、完成品としてそのまま使えるか

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約
    • 第11部注7は「製品にしたもの(made up)」の定義を置いており、第58類の「反物・ストリップ・モチーフ」との境界、58.07の除外(切断以外に製品化したもの)などに直結します
    • 第11部注8は「第50類〜第55類や第60類等には、注7で定義する製品にしたものを含まない」など、部内の相互排他を整理します(最終製品か素材かの整理に効く)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 例1:刺しゅう入りの布が、単なる反物なら5810寄りですが、縁縫い済みでスカーフとして使用できる形態なら、衣類付属品側(例:6214方向)になる可能性があります
    • 例2:ラベルが「切断しただけ」のユニットなら5807の射程に入りますが、縫い付け済み・裏当て済み等で製品化されると別項に飛ぶ可能性が高くなります
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン
    • made up判定で第61類〜第63類に移る(衣類、衣類付属品、その他の繊維製品)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第58類注1〜7)
    • 注1:第59類注1の対象となる紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの、及び第59類のその他の物品は第58類に含めない
    • 注2:5801には、よこパイル織物で浮糸を切っていないものも含む(加工途中でも5801に残ることがある)
    • 注3:5803の「もじり織物」の定義(もじりたて糸が絡み目を作る織物)
    • 注4:5804には、5608の結び網地を含めない
    • 注5:5806の「細幅織物」の定義(幅30cm以下、耳、袋織、バイアス等の具体的定義)。加えて「織物自体の糸で房を付けた細幅織物」は5808へ
    • 注6:5810の「刺しゅう布」には、金属糸やガラス繊維の糸による刺しゅう(基布が見えるもの)や、薄片・ビーズ等を縫い付けたアプリケを含み、手針つづれ風(5805)は含まない
    • 注7:5809以外にも、衣類等に使用する種類の金属糸製の製品をこの類に含む
  • 用語定義(定義がある場合)
    • 細幅織物(5806):幅と耳の要件で定義
    • もじり織物(5803):注3で定義
    • 製品にしたもの(made up):第11部注7で定義
  • 除外規定(除外先の類・項も明記)
    • コーティング等で第59類へ(または性状により第39類・第40類へ)
    • 結び網地(5608)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:細幅織物(5806)の定義で、幅30cmが一気に効く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • 幅(袋織は平らにした幅、バイアスは広げた幅)
      • 両側に耳があるか(織込み、のり付け等による耳を含む)
    • 現場で集める証憑
      • 図面(幅の定義が分かるもの)、製品仕様書、写真、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 幅の測り方を誤り、5806と通常幅織物(50〜55類や58類他項)を取り違える
      • 房付きでも5806にしてしまう(注5で5808へ)
  • 影響ポイント2:コーティング等で第58類から第59類へ飛ぶ(ただし飛び方に癖がある)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • コーティング等があるか
      • その対象が「第59類注1の紡織用繊維の織物類」に該当するか(第50〜55類、58.03、58.06、58.08、60.02〜60.06等)
      • 肉眼で判別できるか、両面完全被覆か等(第59.03の除外条件)
    • 現場で集める証憑
      • 断面写真、コーティング仕様、MSDS、工程図、試験結果
    • 誤分類の典型
      • 58.06のリボンを、PVCコーティングの有無を見ずに5806のまま申告
      • 一方で、5811(キルティング生地)は第59.03から除外されるため、コーティングの有無だけで5903へ飛ばすのも危険
  • 影響ポイント3:ラベル(5807)か刺しゅう(5810)かは「刺しゅうの定義」で決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • ロゴ等が織り出し・印刷か、刺しゅうか
      • スパンコール、ビーズ等を縫い付けたアプリケがあるか(注6で刺しゅうに含める)
    • 現場で集める証憑
      • 拡大写真、加工仕様(刺しゅう機工程)、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 刺しゅう入りなのに5807
      • 反対に、織り出しを刺しゅうと誤認して5810

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:リボン・テープを全部5806(細幅織物)にしてしまう
    • なぜ起きる:品名が「リボン」「テープ」だと幅や耳、装飾性を確認しない
    • 正しい考え方:5806は注5で細かく定義。さらに、織物自身の糸で房を付けた細幅織物は5808に属する
    • 予防策:幅の測り方(袋織、バイアス)と耳の有無、房の作り方を仕様書で確認
  2. 間違い:装飾フリンジを5806にしてしまう
    • なぜ起きる:幅30cm以下だからといって即5806に寄せる
    • 正しい考え方:装飾用トリミングやタッセル等は5808。5806のうち装飾性が強いものは区分を再確認する
    • 予防策:装飾目的の加工(縁取り、ループ、タッセル等)の有無を写真で確認
  3. 間違い:刺しゅうラベルを5807で申告
    • なぜ起きる:ラベルだから5807、という思い込み
    • 正しい考え方:5807は「刺しゅうでない」ことが条件。刺しゅうなら5810へ
    • 予防策:製法(刺しゅう機工程の有無)をサプライヤーに確認し、拡大写真を保管
  4. 間違い:切断済みのラベルユニットを「製品化済み」と誤認し、61.17等へ飛ばしてしまう
    • なぜ起きる:切り離されているだけで「完成品」と判断してしまう
    • 正しい考え方:5807は切断ユニットでも、切断以外の方法で製品にしていない範囲なら含み得る。逆に、切断以外に製品化しているなら除外
    • 予防策:縫い付け、裏当て、接着、台紙固定など追加加工の有無を確認
  5. 間違い:タフテッド素材を全部5703(床用)にする、または全部5802.30にする
    • なぜ起きる:タフテッドの言葉だけで決める
    • 正しい考え方:5802は床用敷物(5703)を除外。床用かどうか、物性や裏面構造、取引実態で確認が必要
    • 予防策:用途、製品仕様(床材用のバッキングの有無)、サンプル評価をセットで収集
  6. 間違い:レース風のものを全部5804(レース)とする
    • なぜ起きる:見た目がレースなら5804と判断
    • 正しい考え方:レースは網目と柄を同時に作るタイプが中心。基布に縫い付けるアプリケ等は刺しゅう(5810)側の発想が必要
    • 予防策:製法(レース機、刺しゅう機、アプリケ工程)を工程図で確認
  7. 間違い:コーティングした細幅織物を5806のまま
    • なぜ起きる:素材名のまま分類し、加工(被覆等)を見落とす
    • 正しい考え方:第58類注1と第59類注1の関係で、58.06等のコーティング品は第58類から外れる方向がある。さらに第59.03の判定条件(肉眼判別など)も絡む
    • 予防策:MSDS、断面写真、目視判別の可否、屈曲試験条件などの情報を事前入手
  8. 間違い:刺しゅう反物(5810)と、刺しゅう入りスカーフ等(made up)を混同
    • なぜ起きる:刺しゅうがあると全部5810と思い込む
    • 正しい考え方:第11部注7のmade up判定が効く。分類例でも、刺しゅう入りの布片とスカーフ形態は分かれて示される
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品として使用可能かをチェックリスト化

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。58類は「素材(反物)」と「副資材(ラベル、トリミング)」が混在し、材料側のHSと最終製品側のHSがずれやすい分野です。
  • よくある落とし穴
    • ラベルや刺しゅうワッペンを材料として使う場合、材料HSを誤るとCTC判定の前提が崩れます
    • コーティング等で第59類に飛ぶ材料を58類として扱ってしまい、工程評価がずれる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定により採用しているHS年版が異なるため、協定年版でのコード確認が必要です(協定のPSR検索において、HS年版の注意喚起がされています)。
  • 実務では、通関申告は最新HS(HS2022)で、原産地証明は協定が採用するHS年版で、という二重管理が発生し得ます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件は協定ごとに確認(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

第58類に関して、税関が公表するHS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく)では、5802の6桁の整理が示されています。

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設と削除(号の整理)新:5802.10、旧:5802.11・5802.195802.11及び5802.19の削除に伴い、5802.10を新設(取引量が少ないこと等を理由とする整理)マスタ更新、過去コード参照(契約書、PSR、社内品番、原産地判定)でトランスポジションが必要になる可能性

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、HS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく資料)において、5802.11と5802.19の削除、5802.10の新設が明示されています。これに基づき「HS2017の5802.11/5802.19はHS2022では5802.10に整理された」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 可能な範囲で整理します。現時点で一次資料として確認できたのは、HS2017→HS2022における5802の号整理です(前章参照)。
  • HS2012→HS2017、HS2007→HS2012の詳細なトランスポジションは、WCO相関表(税関サイト経由で公開)で個別確認してください。
改正区分主要な動き(確認できた範囲)旧コード→新コードの方向性
HS2017→HS20225802の号整理(5802.11/5802.19削除、5802.10新設)5802.11/5802.19 → 5802.10
HS2012→HS2017今回は第58類に関する個別の改正点を一次資料で精査していません(相関表で要確認)相関表で要確認
HS2007→HS2012同上(相関表で要確認)相関表で要確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング済みリボンを5806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第58類注1と第59類注1の関係を見落とし、被覆等の加工品を第58類で申告
    • 起きやすい状況:購買が「リボン」としか把握していない、MSDSや断面写真がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料提出、検査強化、納期遅延
    • 予防策:加工有無の申告前チェック(仕様書、MSDS、写真)、必要なら事前教示
  • 事例名:刺しゅう入りブランドラベルを5807で申告
    • 誤りの内容:5807の条件(刺しゅうでない)を満たさない
    • 起きやすい状況:織り出しと刺しゅうの区別が曖昧
    • 影響:品目更正、関税率差、原産地規則への波及
    • 予防策:製法確認(刺しゅう工程の有無)、拡大写真の保存
  • 事例名:タフテッド素材を床用(5703)として扱うべきかの判断不足
    • 誤りの内容:5802が5703を除外する点を見落とし
    • 起きやすい状況:用途が未確定のまま輸入、商流で用途が変わる
    • 影響:分類差で税率差、統計差、検査
    • 予防策:用途証明(仕様、販促資料、取付方法)、サンプル確認
  • 事例名:刺しゅう反物と刺しゅう入りスカーフ(made up)の混同
    • 誤りの内容:第11部注7のmade up判定をしないまま5810で一括申告
    • 起きやすい状況:サイズと縁処理の情報がない
    • 影響:他類更正、追加資料、遅延
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品性を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

日本前提で、第58類に関連しやすい論点を「該当がある場合のみ」整理します。関税分類そのものの規制というより、最終製品として国内販売する段階の表示・安全規制が中心になりやすい分野です。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 原反や副資材そのものに一律の検疫が付くというより、用途(乳幼児用、肌着用等)や含有化学物質で別法令が絡む場合があります(販売時規制の整理例としてJETROが解説)。
  • その他の許認可・届出
    • 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示(最終製品として販売する場合):繊維組成や取扱い表示などを定める規程があり、直近でも改正情報が公開されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 消費者庁(家庭用品品質表示法・繊維製品品質表示)
    • JETRO(輸入・販売時規制の整理)
  • 実務での準備物(一般論)
    • 組成証明(混用率)、取扱い表示情報、対象年齢や用途の情報、必要に応じて化学物質試験結果

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 反物か、製品化済みか(縁処理、縫製、房付け等)
    • 製法(織物、刺しゅう、タフテッド、レース、結び網)
    • 寸法(特に幅30cm、袋織は平ら幅、バイアスは広げ幅)
    • 加工(コーティング等)と、目視判別性
    • 素材(繊維種、金属糸の有無等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 5806と5808、5807と5810、5802と5703など境界再確認
    • 58.03/58.06/58.08のコーティング品が第58類に残るか(第59類注1との関係)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「lace」「embroidered」「coated」「narrow woven」「tufted」など誤解を生む語がある場合、補足資料で裏取り
    • 写真、仕様書、工程図、MSDSをセットで準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS年版を確認し、必要ならトランスポジションで整合を取る
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 国内販売する場合は、品質表示や安全規制の対象を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022 edition(章立てとChapter 58の英語タイトル確認)参照日:2026-02-24
    • Correlation Tables HS 2017–2022(相関表の位置付け)参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関
    • 第58類 注(税関 実行関税率表 2022年1月1日版 データ)参照日:2026-02-24
    • 第58類 関税率表解説(総説、各項解説)参照日:2026-02-24
    • 国内分類例規(第58類、例示)参照日:2026-02-24
    • 第59類 注(第59類注1など、コーティング品の範囲判断)参照日:2026-02-24
    • 第11部 注(made upの定義など)参照日:2026-02-24
  • 規制・表示(日本)
    • 消費者庁 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程)参照日:2026-02-24
    • JETRO 貿易・投資相談Q&A(衣料品の輸入手続き、日本の販売時規制の整理)参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第57類:じゅうたんその他の紡織用繊維の床用敷物(Carpets and other textile floor coverings)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第57類は、じゅうたんやラグ、マット、人工芝など、紡織用繊維が表面に見える床用敷物をまとめた章です。ポイントは「使うときに露出する面が紡織用繊維かどうか」と「製法が結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他のどれか」です。ここを外すと、第59類(床材)や第39類(プラスチック床材)へ移りやすく、関税・原産地規則・社内商品マスタの整合性に波及します。

本稿は日本の実務(輸入・輸出の双方)を想定し、ビジネスマンが社内で初期判断できるよう、どこでコードが変わるか、どんな資料が必要かを整理します。


1. まず結論:第57類に入るものと入らないもの

1-1. 第57類に入りやすい代表例

  • 手結びのペルシャじゅうたん、手織りの段通など(結びパイル)
  • 手織りキリムなどの平織りラグ(織物で、タフトやフロックではないもの)
  • タフトカーペット、タフトのラグ、タフト人工芝
  • フェルト製の床用敷物、フェルトのカーペットタイル
  • 上記に該当しないその他の紡織用繊維の床用敷物(例:特殊構造の床用マット等)

これらはいずれも、使用時の露出面が紡織用繊維である床用敷物という第57類注の定義に沿います。

1-2. 第57類から除外されやすい代表例

  • 床用敷物の下敷き(カーペットパッド、アンダーレイなど)
    第57類注2で除外され、構成材料に応じて別分類になります。
  • 表面が塗布・被覆材で、紡織用繊維が基布に過ぎない床材
    日本税関の解説では、リノリウム等、紡織用繊維の基布に塗布・被覆した床用敷物は59.04で検討すると整理されています。
  • 表面がプラスチックの床材(例:ビニル床材)
    「露出面が紡織用繊維」という定義を満たさないため、第57類ではなく第39類や第59類側で検討が必要になります。

1-3. 実務での最重要分岐

  • 使用時の露出面は何か(紡織用繊維か、プラスチックか、別素材か)
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか

2. 第57類に到達するための考え方

2-1. 分類でまず効くルール

  • 通則1(GIR1):見出しの文言と、部注・類注で決めます。第57類は注が短い代わりに強いです。
  • 通則6(GIR6):6桁の細分は、同一階層の比較で決めます。第57類は製法と材料で6桁が動きます。

品名が「ラグ」「マット」「カーペット」でも、露出面と製法が違えばコードが変わるので、名称だけで決めないのが鉄則です。

2-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:使用時の露出面は紡織用繊維ですか
    いいえの場合、第57類ではなく第39類や第59類などで検討します。
  • Step2:床用敷物の下敷き(アンダーレイ)ですか
    はいの場合、第57類注2で除外され、構成材料により分類します。
  • Step3:製法はどれですか
    結びパイルなら5701、織物なら5702、タフトなら5703、フェルトなら5704、その他は5705の方向です。

3. 主な項(4桁)とその内容

3-1. 4桁(項)の一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件や注意点
5701結びパイルのじゅうたん等手結びじゅうたん、手結びラグ結び目でパイルを形成しているかが核
5702織物製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)ウィルトン、平織りキリム、こいやし繊維マットパイルの有無、製品にしたかどうかで6桁が動く
5703タフトしたじゅうたん等(人工芝を含む)タフトカーペット、タフト人工芝HS2022で人工芝の細分が新設
5704フェルト製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)フェルトカーペット、フェルトタイルタイルは面積区分がある
5705その他のじゅうたん等その他の床用マット類他の5701から5704に当たらない場合の受け皿

出所はWCOのHS2022第57章の見出し体系です。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5703(タフト)で最重要:人工芝(turf)を別掲するか

HS2022の5703では、人工芝(turf)が明示され、さらにナイロン等とその他の人造繊維材料の区分の中で、人工芝が独立した6桁として設けられています。

  • ナイロン又はその他のポリアミド製
    5703.21(人工芝)と5703.29(その他)
  • その他の人造繊維材料製
    5703.31(人工芝)と5703.39(その他)

実務の注意点は、商品名が「人工芝マット」でも、タフトなのか、別の構造なのかを仕様書で確定することです。人工芝はスポーツ用途でも、床用敷物としての性格が強い場合に第57類で検討する筋になります。

判断に必要な情報

  • 製造方法(タフティングかどうか)
  • 表面パイル糸の材質(ナイロン系か、その他の合成繊維か)
  • 露出面の材質が紡織用繊維かどうか

4-2. 5702(織物)でよく動くポイント:パイル有無と製品化

5702は、織物で、タフトやフロックではない床用敷物が対象で、パイル構造か否か、製品にしたか否かで下位区分が分かれます。

  • 例:手織りキリム等は5702.10に含まれます。
  • 例:こいやし繊維(コイヤ)製の床用敷物は5702.20として別掲です。

日本税関の分類例規では、たて糸が紡織用繊維で、よこ糸にプラスチックのストリップを使う織りマットを、5702.50から5702.99の範囲で判断する事例が示されています。露出面と見かけ幅など、構造の説明が必要になります。

判断に必要な情報

  • 織物かどうか、タフトかどうか
  • パイルの有無
  • 製品にしたか(縁かがり、裏打ち、房付け、所定寸法での仕上げなど)

4-3. 5704(フェルト)はタイル面積で号が変わる

5704はフェルト製の床用敷物ですが、タイルについては最大面積で区分されています。

  • 5704.10:タイルで最大面積が0.3m2以下
  • 5704.20:タイルで最大面積が0.3m2超1m2以下
  • 5704.90:その他

日本税関の分類例規では、ポリエステルのニードルルームフェルトを用いた電気カーペットが5704.90とされた例があります。電気機能があっても、露出面が紡織用繊維の床用敷物という性格が強い場合、57類の中で検討され得ます。

判断に必要な情報

  • 表面がフェルトか、タフトか、別構造か
  • タイルなら最大面積
  • 電気部品などがある場合でも、使用実態と物品の本質

5. 第57類の注を実務的に読み替える

5-1. 注1:露出面基準が第57類の入口

第57類注1は、床用敷物として使用するときに露出する面が紡織用繊維であることを求め、さらに床用敷物としての特性を持つ物品で他用途に供するものも含むとしています。

実務的な意味

  • 裏面がゴムやプラスチックで裏打ちされていても、表面が紡織用繊維なら第57類に残り得ます。日本税関の解説でも、ラテックスの含浸や裏打ちの例が触れられています。
  • 一方で、表面が塗布材で紡織用繊維が露出しない床材は第57類ではありません。

5-2. 注2:下敷き(アンダーレイ)は除外

床用敷物の下敷きは第57類に含まれません。日本税関の解説では、床とじゅうたんの間に敷く粗い織物やフェルトを例に挙げ、構成材料により分類すると説明しています。


6. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:表面がビニルの床材を「裏が布だから」と第57類に入れる
  • なぜ起きる:基布に繊維があると紡織品に見えるためです。
  • 正しい考え方:露出面が紡織用繊維であることが第57類の定義です。
  • 予防策:断面写真と、使用時に露出する表面材を仕様書で固定します。
  1. 間違い:カーペット下敷きを57類で申告する
  • なぜ起きる:用途が床関連で、見た目もフェルトや不織布に似ているためです。
  • 正しい考え方:下敷きは第57類注2で除外です。
  • 予防策:用途が「下敷き」か「床用敷物」かを分け、構成材料(フェルト、不織布、ゴム等)で別分類する前提で資料を揃えます。
  1. 間違い:人工芝を5703の中で「その他」として処理し、HS2022の人工芝細分を見落とす
  • なぜ起きる:人工芝をカーペットではなく屋外資材と認識しがちなためです。
  • 正しい考え方:5703は人工芝を含み、HS2022では人工芝が6桁で別掲されています。
  • 予防策:タフト構造かどうかと、パイル糸の材質(ナイロン系か否か)を必ず確認します。
  1. 間違い:織りカーペットとタフトカーペットを品名だけで判定する
  • なぜ起きる:市場名が混在し、見た目だけでは判断しづらいためです。
  • 正しい考え方:5702は織物、5703はタフトと製法で分かれます。
  • 予防策:製造工程説明(織機か、タフティング機か)と断面写真を入手します。
  1. 間違い:フェルト床材を5704ではなく5705にしてしまう
  • なぜ起きる:フェルトでも構造が複合的で、その他に見えるためです。
  • 正しい考え方:フェルト製の床用敷物は5704が優先で、タイルは面積区分があります。
  • 予防策:表面材がフェルトである根拠(仕様書、写真)とタイル面積を確認します。
  1. 間違い:電気カーペットを電気機器として一律に第85類で検討する
  • なぜ起きる:機能で分類が決まると思い込みやすいためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、構造により57類内で整理される例があります。
  • 予防策:露出面、床上で使用する設計、構造(フェルトか、その他床用敷物か)を整理し、必要なら事前教示を検討します。
  1. 間違い:織りマットでプラスチックストリップを使うものを第39類のプラスチック製品と決め打ちする
  • なぜ起きる:見た目がプラスチック主体に見えるためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、織物構造の床用敷物として5702の範囲で判断する例があります。
  • 予防策:たて糸、よこ糸の材質、ストリップの見かけ幅など、構造を数値で説明できるようにします。
  1. 間違い:裏打ちがあるから第59類59.04と早合点する
  • なぜ起きる:裏打ちの存在だけで「塗布品」と誤認するためです。
  • 正しい考え方:第57類は裏打ちやラテックス含浸があっても、露出面が繊維なら対象になり得ます。一方で、塗布面が露出する床材は59.04で検討という整理もあります。
  • 予防策:使用時の露出面がどちらか、表面が塗布材で覆われているかを断面で確認します。

7. FTAやEPAで原産地証明をする際の注意点

7-1. HSコードとPSRは連動する

床用敷物は材料が多様で、同じ見た目でも製法でHSが変わります。HSが変わると、品目別規則(PSR)の選択や、原産材料・非原産材料の扱いが変わり、原産性判断が崩れることがあります。

7-2. 協定が参照するHS版の違いに注意する

日本税関のPSR検索では、協定ごとに採用するHS版が異なり、別の版のHSコードで検索すると結果が不正確になり得る旨が案内されています。
HS2022のコードで通関しつつ、協定はHS2012やHS2017でPSRを規定する場合があるため、相関表で突合する運用が必要です。


8. HS2017からHS2022での主な違い

8-1. 変更点サマリー(表)

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
5703(タフトじゅうたん等)分割・新設5703.21、5703.31(新設) 5703.29、5703.39(再整理)人工芝(turf)を別掲するため、従来の5703.20、5703.30の一部が人工芝向け6桁へ分かれた人工芝を扱う企業はHS2017とHS2022で6桁が変わる可能性がある。通関コードとPSR参照コードのズレに注意

この改正はWCOの相関表(Table I)に明示されています。

8-2. 変更の根拠の説明

根拠資料として、WCOが公表する相関表(HS2022版とHS2017版の対応表)では、5703について人工芝(turf)を別掲する目的で、5703.21と5703.31を新設する旨が記載されています。
また、HS2022第57章の条文上も、5703の内訳として人工芝が6桁で区別されていることが確認できます。


9. 日本での表示・安全面の論点

分類そのものとは別ですが、床用敷物は日本での販売時に表示や安全面の要求が絡みやすい分野です。

9-1. 繊維製品の品質表示(床敷物)

消費者庁のガイドでは、床敷物について、組成繊維(繊維の名称と混用率)と、表示者名等(名称や連絡先)を表示する考え方が示されています。

実務の準備物

  • 表面パイル、基布、裏材を含めた材料構成表
  • 混用率の根拠資料(試験成績書、メーカー仕様書)

9-2. 有害物質規制(家庭用品)

厚生労働省の資料では、アゾ染料に関する規制対象として繊維製品の床敷物が含まれ、特定芳香族アミンの検出量の上限が示されています。床敷物は一部の難燃剤等の規制対象としても挙げられています。

実務の準備物

  • 染料や仕上げ剤の情報(サプライヤー証明、試験結果)
  • 必要に応じた第三者試験の計画

9-3. 防炎規制への目配り

消防法令に基づく防炎制度では、じゅうたん等が対象になり得ます。東京消防庁の案内では、じゅうたんの例として織りカーペット、フェルトカーペット、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、ござ、人工芝などが挙げられています。

実務の準備物

  • 防炎性能の要否が分かる用途情報(施設向けか、一般家庭向けか)
  • 必要に応じた試験成績やラベル運用体制

10. 実務チェックリスト(社内でこの順に確認すると早い)

  • 露出面は紡織用繊維か(写真と断面で確認)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 5703の場合、人工芝か否か、パイル糸材質はナイロン系か否か
  • 5704のタイルなら最大面積(0.3m2、1m2の境界)
  • 57類ではない疑いがあれば、59.04や39類などの候補も同時に立てる
  • 仕入先に必ず依頼する資料
    • 仕様書(材質、混用率、製法、寸法、タイル面積、用途)
    • 表裏と断面の写真
    • 可能なら工程概要(織り、タフティング等)

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 57(見出し、注、6桁体系)
  • 日本税関:実行関税率表 第57類 類注(第57類注1、注2)
  • 日本税関:関税率表解説 第57類(総説、除外、各項の解説)
  • 日本税関:分類例規 第57類(織りマット、電気カーペット等の事例)
  • WCO:Correlation Tables HS2017–HS2022 Table I(5703の人工芝細分新設)
  • 消費者庁:繊維製品の表示ガイド(床敷物)
  • 厚生労働省:有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要(床敷物に関係する規制の一覧)
  • 東京消防庁:防炎対象物品の案内(じゅうたん等の例示)
  • 日本税関:品目別原産地規則(PSR)検索の注意(協定ごとのHS版)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第56類:ウォッディング、フェルト、不織布及び特殊糸並びにひも、綱及びケーブル並びにこれらの製品(Wadding, felt and nonwovens; special yarns; twine, cordage, ropes and cables and articles thereof)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第56類は、ウォッディング(詰物材)、フェルト、不織布といったシート状素材に加えて、特殊糸、ひも・綱・ロープ・ケーブル、網、そしてそれらの製品までを扱います。材料・構造・加工(塗布、被覆、積層)によって第39類(プラスチック)や第40類(ゴム)、さらに第96類(衛生用品)に飛ぶため、見た目や品名だけで決めると誤分類が起きやすい類です。

この記事は、ビジネスマンが社内で分類の初期判断をするために、どこでコードが変わるか、何の資料が必要かを実務目線で整理したものです。最終判断は税関に委ねられるため、重要案件は事前教示や専門家相談も前提にしてください。


1. まず全体像:第56類の9つの項(4桁)で地図を作る

第56類は、5601から5609までの9項で構成されています。まずは製品がどのグループに属するか(詰物材か、フェルトか、不織布か、糸か、ロープか、網か、製品か)を決めると、分類が一気に安定します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(現場での呼び名)最初に確認する分岐ポイント
5601ウォッディング及びその製品、フロック、繊維ダスト等詰綿、キルト用綿、フィルター用ロッド、フロック繊維長(フロックは5mm以下)、製品が衛生用品か
5602フェルトニードルフェルト、工業用フェルトフェルト定義(ニードル、ステッチボンディング含む)、プラやゴムでの処理状態
5603不織布スパンボンド、メルトブローン、湿式不織布、フィルター材目付(25/70/150g/㎡境界)、片面か両面かのプラ・ゴム被覆
5604ゴム糸等、ゴムやプラを被覆した糸・ストリップ等ゴム糸の被覆糸、被覆糸、被覆ストリップ被覆が肉眼で判別できるか(見えない場合は他章)
5605金属を交えた糸メタリックヤーン金属の形態(糸・ストリップ・粉)、装飾用か補強用か
5606ジンプヤーン、シェニールヤーン、ループウェールヤーンファンシーヤーン、シェニール糸糸の構造(毛羽立ち、房状、ループ構造)
5607ひも、綱、ロープ、ケーブル農業用ひも、PPロープ、係船ロープ部注の定義(デシテックス閾値)、組物かどうか
5608結び網地、漁網等の網漁網、安全ネット、虫よけネット結び網地か、製品化された網か、編み網か
5609糸・ひも・綱等の製品(他に該当しない)靴ひも、衣類用ひも、なわばしご等他の見出しに特掲がないか、除外例(42.01、59.11等)

上表の根拠は、WCOのHS2022第56章条文と、日本税関の第56類注・解説です。


2. 最重要:第56類の注(Notes)で必ず飛び先をチェックする

第56類は「注」を外すと別の類に移る代表例が多いです。実務では、見出しの前に注を読む方が早いケースが多々あります。

2-1. 注1:第56類に入らない代表例

次のようなものは第56類から除外されます。品名が不織布やフェルトに見えても、分類先が変わります。

  • 香料・化粧品、石けん・洗浄剤、磨き料、織物柔軟剤などを含浸・塗布等したウォッディング、フェルト、不織布で、繊維が単なる媒体になっているもの
    例:洗浄成分を含んだシート等は、第33類、第34.01項、第34.05項、第38.09項など側で検討が必要です。
  • 第58.11項の紡織用繊維の物品(いわゆるキルティング品など)
  • 研磨材の粉や粒をフェルトや不織布に付着させたもの(68.05)
  • 雲母をフェルトや不織布で裏張りしたもの(68.14)
  • 金属はくをフェルトや不織布で裏張りしたもの(主に第14部・第15部)
  • 生理用ナプキン、タンポン、おむつ、おむつ中敷き等(96.19)
    不織布や吸収体が主材料でも、衛生用品としての完成品は第96類に移るのが典型です。

2-2. 注3:フェルトと不織布は、プラやゴムでの処理があっても第56類に残る場合がある

56.02(フェルト)と56.03(不織布)は、プラスチック又はゴムで含浸・塗布・被覆・積層したものも含みます。さらに、56.03はプラやゴムが結合剤になっている不織布も含みます。

ただし、次の条件に当たると第39類や第40類へ移ります。ここが誤分類の最大ポイントです。

  • フェルトで、繊維重量が全重量の50%以下、またはプラ・ゴムの中に完全に埋め込まれている
  • 不織布で、プラ・ゴムの中に完全に埋め込まれている、または両面が完全にプラ・ゴムで塗布・被覆され、肉眼で判別できる
  • 多泡性プラやセルラーラバーの板・シート等にフェルトや不織布を結合し、繊維が補強目的だけで使われている

このルールは第56類注で明示されています。

2-3. 注4:56.04は、被覆が肉眼で見えないなら対象外

56.04はゴムやプラスチックで被覆した糸等を扱いますが、被覆が肉眼で判別できないものは56.04に入らず、通常は第50類から第55類や第54.04・54.05へ戻ります。色の変化だけでは被覆の有無を判断しません。


3. 5601から5603の勝負どころ:詰物材、フェルト、不織布の境界を整理する

3-1. 5601(ウォッディング、フロック等)でよくある実務用途

ウォッディングは詰物として肩当て、衣類の内張り、家具、包装材、衛生用途などに幅広く使われます。反物状や一定寸法に切ったもの、ほかに特掲のないウォッディング製品も含まれます。

5601はウォッディングだけでなく、次も含みます。

  • 長さ5mm以下の繊維(フロック)
  • 紡織用繊維のダスト、ミルネップ

実務で確認すべき資料は、繊維長(最大値を含む分布)と、製造工程(切断、粉砕、回収くずなど)です。

3-2. ウォッディングと不織布が混同される理由と見分け方

日本税関の解説では、ウォッディングの内部層は不織布より分離しやすい傾向がある一方、粘着材処理が内部層まで浸透している場合は、内部層が分離できても56.03の不織布に属し得る点が注意事項として示されています。

社内での質問例

  • 接合は何で行っていますか(熱、針、接着剤、ラテックス等)
  • 接着剤は表面だけですか、内部層まで浸透していますか
  • 目付(g/㎡)と厚みはどれくらいですか
  • 層構造(片面被覆、両面被覆、積層順序)はどうなっていますか

3-3. 5602(フェルト)と5603(不織布)の境界でつまずきやすい点

第56類注では、フェルトの定義にニードルルームフェルトと、ウェブ自体の繊維を使うステッチボンディングによる織物類を含むとされています。

日本税関の解説では、ニードルルームの製法や用途(断熱、防音など)に触れつつ、ニードリングが補助的である場合や、短繊維ウェブと長繊維ウェブをニードルした物品は不織布とみなす旨が示されています。フェルトと不織布は製法と構造の説明が必要になる典型です。

3-4. 5603(不織布)は目付で号が動く

HS6桁では、不織布は大きく次のように分かれます。

  • 人造繊維の長繊維製のもの:5603.11から5603.14(目付が25、70、150g/㎡境界)
  • その他:5603.91から5603.94(同じく目付境界)

このため、仕入先仕様書に必ず「目付(g/㎡)」を入れることが重要です。

3-5. 実務に役立つ分類例(日本税関の分類例規から)

分類の考え方が具体的に分かる例として、次が公開されています。

  • 5601.22:シガレットフィルター用のロッド(アセチルセルロース繊維を処理し紙で包んだもの)
  • 5601.30:ナイロン糸の破片(約2から6mmに切断しタイヤ補強材に使用)
  • 5603.12又は5603.13:湿式集積で製造、セルロース繊維を混合し結合剤を含浸した不織布(60から80g/㎡)
  • 5603.14:PVCシートにPP不織布の裏張りを結合したテーブルクロス(第56類注3を踏まえた整理)

分類例の読み方としては、品名よりも「構造」「工程」「数値(長さ、目付、含浸)」に着目すると、社内判断で再現しやすくなります。


4. 5604から5606:特殊糸の実務ポイント

4-1. 5604(ゴム糸等)で最初に見るべきこと

56.04は、ゴム糸やゴムコード(繊維で被覆したもの)、さらに繊維糸や54.04・54.05のストリップ等でゴム・プラスチックを含浸・塗布・被覆・シースしたものを扱います。

ただし、被覆が肉眼で判別できない場合は56.04ではなく、通常は糸として第50類から第55類、または54.04・54.05へ戻ります。ここは第56類注4で明示されています。

社内での質問例

  • 被覆は目視で分かりますか(断面写真も含む)
  • 被覆材はゴムですか、プラスチックですか
  • 被覆の範囲は全面ですか、部分ですか
  • ベースは糸ですか、ストリップですか

4-2. 5605(金属を交えた糸)は、装飾用のメタリックヤーンが典型

56.05は、繊維糸または54.04・54.05のストリップ等に、金属を糸・ストリップ・粉の形で組み合わせたものや、金属で被覆したものを扱います。

誤りが起きやすいポイント

  • 補強目的の金属線入りロープは、部注の定義により56.07扱いになる場合があります(下の5607参照)。

4-3. 5606(ジンプ、シェニール、ループウェール)は構造説明が必要

56.06は、ジンプヤーン、シェニールヤーン、ループウェールヤーンなど、構造が特殊な糸を扱います。

日本税関の解説では、シェニールヤーンの構造や、フロックを付着して得るタイプなども説明されています。外観の毛羽立ちだけでなく、製造方法や糸構造の説明があると分類が安定します。

分類例規には、手芸用の毛羽立った糸が5606.00に分類された事例があります。


5. 5607(ひも、綱、ロープ、ケーブル)の最大の落とし穴は部注の定義

5-1. 糸なのか、ひも・綱なのかはデシテックスで決まる場合がある

第11部注3では、一定の条件を満たす糸を「ひも、綱、ロープ、ケーブル」とみなす定義が置かれています。特に人造繊維は10,000デシテックスを超えると対象になります。

主な閾値(要約)

  • 絹または絹くず:20,000デシテックス超
  • 人造繊維:10,000デシテックス超(第54章の複数モノフィラメント糸なども含む)
  • 麻や亜麻:研磨や光沢加工の有無で閾値が異なる
  • コイヤ:3プライ以上
  • その他植物繊維:20,000デシテックス超
  • 金属糸で補強されたもの

ただし例外も多く、毛糸や紙糸は原則としてこの定義から外れる、56.05や56.06は除外される、などの整理が同じ部注にあります。

社内での質問例

  • 総繊度(デシテックス、テックス)はいくつですか
  • 単糸か、双糸か、ケーブルか
  • ねん糸数(m当たりのより数)はいくつですか
  • 金属補強はありますか(装飾か補強か)

5-2. 5607の対象は、よったものだけでなく組んだものも含む

56.07は、よることや組むことによって製造されるひも、綱、ケーブルを扱い、組んだものは単位長さ当たりの重量にかかわらず対象になり得ます。58.08の組ひもとの違いは、用途に適するようにち密で硬く組まれている点などで説明されています。

5-3. 5607.21と5607.41(結束用・包装用ひも)は強度要件が実務で効く

HS6桁では、サイザル等の結束用・包装用ひも(5607.21)と、ポリエチレン又はポリプロピレンの結束用・包装用ひも(5607.41)が別掲されています。

日本税関の解説では、これらが一定の切断力の最少値を満たすことを前提に説明され、サイザル等では長さ当たりの仕様から切断力を求める式、ポリエチレン・ポリプロピレンでは切断力と結び目強度の考え方が示されています。実務では、強度試験成績書や仕様(kg当たり長さなど)を確実に取るのが安全です。

5-4. 実務に役立つ分類例

分類例規では、パラフィンワックスを薄く含浸させたポリエステル糸を密に編組し、機械用のコードとして使うものが5607.50に整理された事例があります。


6. 5608(網)と5609(その他の製品)は、似たもの排除が重要

6-1. 5608は「結び網地」と「製品にした網」

56.08は、ひも・綱から作った結び網地と、製品にした漁網その他の網を扱います。結び網地は56.07のひも等から作られ、58.04のチュール等とは区別されます。

製品にした網は、漁網、安全ネット、運搬用ネット、ハンモック、虫よけ網などが例示され、リングやおもり、浮き等の付属品があっても分類に影響しない旨が説明されています。

除外として、反物状の編み網(第60類)、ヘアネット(65.05)、運動用ネット(第95類)などが挙げられています。

6-2. 5609は「糸やひも等の製品」だが、他項や他類へ逃げるものが多い

56.09は、糸、54.04・54.05のストリップ等、56.07のひも・綱・ケーブルなどの製品で、他の項に該当しないものを扱います。靴ひも、衣類用ひも、引き綱、船のフェンダー、なわばしご、皿ふき等の例が挙げられています。

一方で、手綱など(42.01)、特定機械用の一定寸法コード(59.11)、組みひもから製造された靴ひもが63.07になる例、ロープソール(64.06)など、除外も具体的に示されています。56.09は最後の受け皿なので、除外を先に潰す方が安全です。


7. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:おむつや生理用品を不織布(5603)で申告する
  • なぜ起きる:材料が不織布で、見た目がシートだからです。
  • 正しい考え方:衛生用品の完成品は第96.19項として第56類から除外されます。
  • 予防策:用途と完成品かどうかを確認し、製品仕様で「衛生用品用途」「吸収体の有無」「形状」を固定します。
  1. 間違い:薬剤や洗浄成分を含浸したシートを5601や5603にしてしまう
  • なぜ起きる:基材が不織布であるためです。
  • 正しい考え方:繊維が単なる媒体となる場合は、第33類、第34類、第38類などへ移る可能性があります。
  • 予防策:含浸物の成分と機能、製品の本質(基材か薬剤か)を仕様書で確認します。
  1. 間違い:片面PVCラミネート不織布を第39類のプラスチックシートとして処理する
  • なぜ起きる:表面がプラスチックに見えるためです。
  • 正しい考え方:不織布がプラで被覆・積層されても、条件次第で56.03に残ります。両面被覆で肉眼判別できる等の条件で第39類へ移ります。
  • 予防策:両面被覆か、埋め込みか、繊維重量割合、補強目的かを確認し、断面写真と構成比を回収します。
  1. 間違い:ウォッディング(5601)と不織布(5603)を外観だけで決める
  • なぜ起きる:どちらもふわっとしたシートに見えるためです。
  • 正しい考え方:接着剤が内部層まで浸透するなど、工程や構造で5603扱いになり得ると解説されています。
  • 予防策:製造工程(熱、針、接着剤)と層構造を聞き、試験成績書や工程図を取得します。
  1. 間違い:フェルト(5602)と不織布(5603)の境界で、ニードルパンチ品を全部フェルト扱いにする
  • なぜ起きる:ニードル=フェルトという思い込みです。
  • 正しい考え方:フェルト定義と、不織布とみなすケースが説明されています。
  • 予防策:基材の有無、接合方法、最終物性、用途説明をセットで集めます。
  1. 間違い:被覆糸を56.04に入れたが、被覆が肉眼で判別できない
  • なぜ起きる:色が変わっているだけで被覆と誤認するためです。
  • 正しい考え方:肉眼で判別できない被覆は56.04の対象外です。
  • 予防策:断面観察、被覆厚、写真、被覆材のMSDSを確認します。
  1. 間違い:太い人造繊維糸を第54類や第55類の糸として扱い続ける
  • なぜ起きる:糸の延長として理解してしまうためです。
  • 正しい考え方:第11部注3で、人造繊維が10,000デシテックス超などの条件でひも・綱扱いになります(例外もあり)。
  • 予防策:デシテックス、より数、構造、例外該当の有無を確認します。
  1. 間違い:網を5608に入れたが、実は編み網やスポーツ用ネットだった
  • なぜ起きる:網という言葉で一括りにするためです。
  • 正しい考え方:反物状の編み網は第60類、スポーツ用ネットは第95類など、除外が明記されています。
  • 予防策:製造方法(結び網か編みか)、用途(スポーツ用か)を明確にします。

8. 現場で揃えると分類が強くなる資料

第56類は構造と数値が命です。インボイス品名より、次の資料が最重要です。

  • 構成表(層構造、材料名、重量割合、繊維重量割合)
  • 仕様書(目付g/㎡、厚み、繊維種、繊維長、デシテックス、より数)
  • 加工情報(含浸・塗布・被覆・積層の有無、両面か片面か、結合剤の種類)
  • 物性資料(切断力、結び目強度、耐候性など。特に5607.21、5607.41を狙う場合)
  • 写真(表裏、断面、巻姿、梱包、用途が分かる状態)
  • 用途説明(衛生用品か、工業用フィルターか、包装用か、漁網か等)

9. まとめ:第56類の最短チェックリスト

  • Step1:製品の形は何か(ウォッディング、フェルト、不織布、糸、ひも、網、製品)
  • Step2:第56類注1の除外に当たらないか(特に96.19、58.11、研磨材付きなど)
  • Step3:フェルト・不織布のプラ・ゴム被覆は、注3で第39類・第40類へ飛ばないか(両面被覆、埋め込み、50%以下など)
  • Step4:56.04は被覆が肉眼で見えるか(見えないなら他章)
  • Step5:5603は目付(25/70/150g/㎡)を確定したか
  • Step6:5607は第11部注3のデシテックス閾値と例外を確認したか
  • Step7:5608と5609は除外先(第60類、第95類、59.11等)を最後に確認したか

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 56(見出し、章注、号体系)
  • 日本税関:第56類 注(類注)
  • 日本税関:関税率表解説 第56類(総説、各項解説、境界・除外の実務説明)
  • WCO:HS2022 Section XI Notes(第11部注3など、ひも・綱の定義、made upの考え方)
  • 日本税関:分類例規(第56類の具体事例)
  • 日本税関:関税率表解説 新旧対照表(HS2022改正時の記載変更の確認用)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第55類:人造繊維の短繊維及びその織物(Man-made staple fibres)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第55類は、人造繊維の短繊維(ステープル)を中心に、一定条件を満たす長繊維のトウ(tow)、人造繊維のくず、紡績糸、織物までを扱う類です。実務では、品名の印象だけで決めると外しやすく、特に「トウの数値要件」「縫糸かどうか」「小売用かどうか」「混用比率と織物の目付」でコードが動きます。


1. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

1-1. 第55類に入る代表例

  • 合成繊維の長繊維のトウ(一定要件を満たすもの):ポリエステルトウ、ナイロン系トウなど(55.01)
  • 再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウ:アセテートトウなど(55.02)
  • 合成短繊維(紡績準備の処理をしていない):ポリエステル短繊維(ベール梱包)など(55.03)
  • 再生繊維又は半合成繊維の短繊維(紡績準備の処理をしていない):ビスコース短繊維など(55.04)
  • 人造繊維のくず:ノイル、糸くず、反毛した繊維など(55.05)
  • 紡績準備後の短繊維:カード、コーム等を経た短繊維や処理済みくず(55.06、55.07)
  • 縫糸:人造繊維短繊維の縫糸(55.08)
  • 紡績糸(縫糸を除く):小売用でない糸(55.09、55.10)/小売用の糸(55.11)
  • 織物:合成短繊維の織物(55.12〜55.15)/再生・半合成短繊維の織物(55.16)

1-2. 第55類から除外されやすい代表例(除外先の目安)

  • 長繊維の糸や織物など、第54類(人造繊維の長繊維)で扱うもの(例:フィラメント糸、長繊維織物など)
  • 長さが5ミリメートル以下の紡織用繊維(フロック)、繊維ダスト、ミルネップ:56.01
  • 炭素繊維及びその製品:68.15
  • ガラス繊維及びその製品:70.19
  • 石綿および石綿製品(該当する場合):25.24、68.12、68.13

2. 最重要ポイント:トウ(tow)の数値要件で55.01/55.02に入るかが決まる

第55類の類注(注1)は、55.01と55.02に入る「トウ」を数値条件で限定しています。条件を満たさないと、55.03/55.04や、第54類など別の行先になり得ます。

2-1. 55.01/55.02に入るトウの要件(5条件)

判定項目基準実務メモ
長さ2メートルを超える2メートル以下なら55.03または55.04に回る可能性が高いです
より数1メートルにつき5未満仕様書で撚りの有無と撚り数を確認します
単糸繊度構成する1本の長繊維が67デシテックス未満67デシテックス以上の長繊維が混じると別分類リスクが上がります
延伸合成繊維のトウは延伸済みで、長さの2倍を超えて伸びない延伸の有無は分類トラブルの典型ポイントです
総繊度1束につき20,000デシテックス超20,000以下だと55.01から外れる可能性があります

上の要件は、第55類の類注(注1)として明示されています。

2-2. トウが55.01/55.02から外れる典型パターン

  • 長さが2メートル以下のトウは、55.03または55.04に属します(要件を満たしていても「長さ」で落ちます)。
  • 55.01の説明では、総繊度が20,000デシテックス以下のものや、延伸していない長繊維(状況により)は54.02側へ行く例が示されています。トウとフィラメント糸の境界では、総繊度と延伸が特に効きます。
  • 構成する1本の長繊維が67デシテックス以上など、単糸繊度が大きい場合は、54.04や39類になることがある旨が示されています(素材が「繊維」扱いか、プラスチックのストリップ等扱いかまで波及します)。

3. 第55類の地図:項(4桁)の全体像

まずは「何の形状か(短繊維/トウ/くず/糸/織物)」で項が決まります。次に、合成か再生・半合成か、紡績準備の有無、小売用かどうか、混用・目付などで号(6桁)へ落とします。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5501合成繊維の長繊維のトウポリエステルトウ、ナイロン系トウ類注1の5条件を満たすトウだけ
5502再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウアセテートトウ55.01の考え方を準用(合成の延伸条件を除く考え方)
5503合成短繊維(カード・コーム等の処理前)PSFベール(未カード)長さ2m以下のトウがここへ入る場合あり
5504再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理前)ビスコース短繊維(未カード)5503と同様の考え方
5505人造繊維のくず(ノイル、糸くず、反毛など)スピニングくず、反毛繊維フロック(56.01)と混同しやすい
5506合成短繊維(カード・コーム等の処理後)カード済みPSF、トップ等紡績準備の有無が分岐
5507再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理後)カード済みビスコース短繊維5506と同様
5508人造繊維短繊維の縫糸縫製用のミシン糸部注の「縫糸」定義で判定
5509合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く)工業用コーン糸小売用かどうかで5511に動く
5510再生・半合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く)ビスコース糸(工業用)5509と同様
5511人造繊維短繊維の紡績糸(小売用、縫糸除く)小巻の手芸糸小売用の定義は部注で数値条件あり
5512合成短繊維の織物(合成短繊維が85パーセント以上)ポリエステル短繊維主体の服地85パーセント判定が重要
5513合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡以下)T/C薄地(目付軽め)85パーセント未満、綿が主、目付170以下
5514合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡超)T/C厚地(目付重め)目付170超で5514へ
5515その他の合成短繊維の織物混用の多い合繊短繊維織物「綿が主」条件に当てはまらない等
5516再生・半合成短繊維の織物レーヨン短繊維織物再生・半合成側の織物

項の範囲はHSの見出し(WCO)と、日本税関の解説で確認できます。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5508(縫糸)か、5509〜5511(縫糸以外の糸)か

縫糸は「複数(合糸)またはケーブル糸であること」「支持体に巻かれた状態で重量が1,000g以下」「縫糸としての仕上げ」「最終撚りがZ撚り」という部注の定義で判定します。単に品名がミシン糸でも、定義に当てはまらないと縫糸として扱えないことがあります。

4-2. 5511(小売用)か、5509/5510(小売用でない)か

「小売用にしたもの」は、支持体に巻いた糸の重量や、玉巻・かせの重量、また工業用形態(コップ、管、ピルン等)などの例外で定義されています。実務では、包装形態と重量、用途(手芸用か工業用か)の証拠が必要です。

4-3. 5512〜5514で頻出する「85パーセント」と「170g/㎡」

織物側の頻出分岐は次の2つです。

  • 合成短繊維が全重量の85パーセント以上なら、基本的に5512(合成短繊維の織物)側の枠になります。
  • 合成短繊維が85パーセント未満で、混用繊維の全部又は大部分が綿で、目付が170g/㎡以下なら5513、170g/㎡を超えるなら5514です。

ここでの「綿が主」「85パーセント判定」「目付」は、インボイスの品名だけでは確定できません。試験成績書、混用率表、織物仕様(g/㎡)が必要になります。

4-4. 55.05(くず)と56.01(フロック等)の境界

第55類の解説では、56.01の「長さ5ミリメートル以下の繊維(フロック)」や「フロック、ダスト、ミルネップ」は第55類に入らないと明示されています。くずの形状や粒度が細かいと、55.05ではなく56.01へ行く可能性があるため、繊維長の情報が重要です。

4-5. 混用繊維の基本ルール(第11部注2)

第50類〜第55類の混用繊維は、原則として「重量が最も大きい繊維」で分類します。どれも優勢でない場合は「後ろに出てくる見出し(最後に記載された繊維側)」で分類するルールです。混用率の算定根拠(製品全体の重量比)を確実に取るのが安全です。


5. 判定フロー(迷ったときの順番)

社内の一次判定は、次の順番にすると手戻りが減ります。

  1. 材質の確定
  • そもそも「人造繊維」に該当するかを確認します。定義は第54類の注で示され、合成繊維と再生・半合成繊維の区分もここで整理されます。
  1. 形状の確定(ここで項がほぼ決まります)
  • トウか(55.01/55.02の候補)
  • 短繊維か(55.03/55.04/55.06/55.07の候補)
  • くずか(55.05の候補)
  • 糸か(55.08〜55.11の候補)
  • 織物か(55.12〜55.16の候補)
  1. トウの場合は、類注1の数値条件をチェック
  • 5条件を満たせば55.01/55.02
  • 長さ2メートル以下など条件外なら55.03/55.04等に回り得る
  • 総繊度や延伸などで第54類へ動く可能性もあるため注意
  1. 短繊維の場合は「紡績準備の処理」の有無をチェック
  • カード、コーム等の処理前:55.03/55.04
  • 処理後:55.06/55.07
  1. 糸の場合は「縫糸」か「小売用」かを先に確定
  • 縫糸(55.08)は部注の定義で判定
  • それ以外は、小売用(5511)か小売用でない(5509/5510)かを部注の定義で判定
  1. 織物の場合は「85パーセント」「綿が主」「目付170g/㎡」をチェック
  • 5512〜5514の分岐が頻出です。混用の扱い(部注2)も同時に確認します。

6. よくある誤分類と、社内での防ぎ方

  1. 間違い:トウを55.01/55.02に入れたが、実は類注1の要件を満たしていない
  • なぜ起きる:品名がtowで、数値条件(長さ、総繊度、延伸など)を取らずに決めてしまうためです。
  • 正しい考え方:55.01/55.02は類注1の5条件を全て満たすトウに限定されます。
  • 予防策:供給者仕様書で「長さ」「撚り」「単糸繊度」「延伸」「総繊度」を必ず回収します。
  1. 間違い:長さ2メートル以下のトウを55.01にした
  • なぜ起きる:トウはトウ、という思い込みで長さ条件を見落とします。
  • 正しい考え方:2メートル以下は55.03または55.04へ回る旨が明記されています。
  • 予防策:梱包状態だけでなく、トウの実測値または製造仕様の長さ情報を取得します。
  1. 間違い:55.05(くず)と56.01(フロック等)を取り違えた
  • なぜ起きる:どちらも「繊維の細片」に見え、見た目で判断してしまうためです。
  • 正しい考え方:フロックは長さ5ミリメートル以下として56.01側で整理され、55類から除外されます。
  • 予防策:繊維長(分布)と製造由来(切断か、粉砕か、紡績くずか)を確認します。
  1. 間違い:縫糸(55.08)を、単に小巻だから5511にした
  • なぜ起きる:小巻=小売用糸、という見た目判断になりがちです。
  • 正しい考え方:縫糸は部注で定義され、Z撚り、仕上げ、支持体重量などの要件で判定します。
  • 予防策:糸の撚り方向、仕上げ(縫糸用の処理)、支持体込み重量を確認します。
  1. 間違い:5511(小売用)か5509/5510(小売用でない)かを包装形態だけで決めた
  • なぜ起きる:ラベルや箱の有無で判断してしまうためです。
  • 正しい考え方:「小売用」は重量条件や工業用形態の例外を含む定義で決まります。
  • 予防策:支持体込み重量、玉巻・かせ重量、工業用形態(コップ等)かどうかを仕様書と現物写真で確認します。
  1. 間違い:織物で「85パーセント」判定を、糸番手や混率表示だけで推定した
  • なぜ起きる:混率ラベルと実重量比が一致している前提で進めてしまうためです。
  • 正しい考え方:見出し条件は重量比です。部注2の混用ルールも含め、製品全体の重量比で判定します。
  • 予防策:混用率の試験成績書、BOM、製造ロットの混率管理記録を取得します。
  1. 間違い:5513と5514を取り違えた(目付170g/㎡の見落とし)
  • なぜ起きる:混用条件だけ見て、目付を確認しないためです。
  • 正しい考え方:5513は170g/㎡以下、5514は170g/㎡超で明確に分かれます。
  • 予防策:検査成績書または製品仕様でg/㎡を取得し、対象生地がどちらに該当するかを記録します。
  1. 間違い:第55類のつもりで進めたが、実は炭素繊維やガラス繊維だった
  • なぜ起きる:用途や外観が似ており、材料定義を飛ばしてしまうためです。
  • 正しい考え方:炭素繊維(68.15)やガラス繊維(70.19)は第55類から除外されます。
  • 予防策:材質証明(MSDS、材料証明書)で繊維種を確定してから分類に入ります。

7. HS2017からHS2022で変わった点(第55類で実務に効きやすいところ)

第55類では、少なくともHS2017からHS2022への変更として、55.01(合成繊維の長繊維のトウ)の一部で細分が入っています。

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017の5501.10(ナイロンその他のポリアミドのトウ)→ HS2022で分割分割5501.11(アラミド)/5501.19(その他)アラミドのトウを別掲して識別性を上げるマスタの旧コード踏襲に注意。アラミド関係の取引は統計・管理面で誤りが見つかりやすい

この分割の趣旨として、相関表の備考では「二重用途品目の監視・管理を容易にするため」と記載されています。


8. 参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • 日本税関:第55類(人造繊維の短繊維及びその織物)類注
  • 日本税関:関税率表解説 第55類(総説、各項解説、除外例、数値条件)
  • WCO:HS2022 Chapter 55(Man-made staple fibres)
  • WCO:HS2022 Section XI Notes(混用ルール、小売用、縫糸の定義など)
  • WCO:HS2022 Chapter 54(人造繊維の定義、Chapter 55のトウとの関係)
  • 日本税関:第54類注(人造繊維の定義、日本語)
  • 日本税関:関税率表解説 第56類(56.01 フロック等の説明)
  • WCO:HS2022 Chapter 56(56.01でフロックを5mm以下とする見出し)
  • WCO相関表(HS2017–HS2022):5501.10の細分理由(dual use監視等)
  • WCO:HS2017 Chapter 55(旧コード体系の確認)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第54類:人造繊維の長繊維並びに人造繊維の織物及びストリップその他これに類する人造繊維製品(Manmade filaments; strip and the like of manmade textile materials)

冒頭で用語を統一します。**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

第54類は「合成繊維・再生繊維(レーヨン等)の“長繊維(フィラメント)”」と、その織物/モノフィラメント/ストリップを扱います。まずは**“長繊維か短繊維か”、次に“縫糸か否か”、さらに“小売用(小巻)か工業用(コーン等)か”、最後にモノフィラメントやコーティング有無**を詰めると迷いが激減します。 (世界税関機構)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この類に入る代表例

  • 合成フィラメント縫糸(ポリエステル縫糸・ナイロン縫糸の小巻)→ 5401 (世界税関機構)
  • 工業用の合成フィラメント糸(コーン巻のポリエステル/ナイロン糸、POY含む)→ 5402 (世界税関機構)
  • 再生繊維フィラメント糸(レーヨン糸等、縫糸でない)→ 5403 (世界税関機構)
  • 合成モノフィラメント(67dtex以上、断面寸法≦1mm)や合成ストリップ(見掛け幅≦5mm) → 5404 (世界税関機構)
  • 合成長繊維の織物(コーティング等のない一般織物/産業資材織物の一部)→ 5407 (世界税関機構)
  • 再生繊維長繊維の織物(アセテート含む) → 5408 (世界税関機構)

この類から除外されやすい代表例

  • 人造繊維のトウ(tow):第55類へ(例:合成長繊維トウ 5501 等) (世界税関機構)
  • 太物の“ひも・ロープ”扱い:一定条件を満たす糸は「twine/cordage/ropes/cables」として第56類(5607等)になり得る (世界税関機構)
  • タイヤコード織物:第59類 5902(“tyre cord fabric”として別建て) (世界税関機構)
  • プラスチックで目視できるコーティング等のある織物:第59類 5903 等へ移り得る (世界税関機構)
  • 断面寸法が1mm超のプラスチックモノフィラメント幅5mm超のプラスチックストリップ:第11部(繊維)から外れ、第39類側になり得る (世界税関機構)
  • デンタルフロス:第11部から除外(3306) (世界税関機構)

実務での最重要分岐

  • 縫糸(5401)か、縫糸以外の糸か:定義(重量・仕上げ・撚り方向)で決まります (世界税関機構)
  • 小売用(5406)か、非小売用(5402/5403)か:小売用の定義は包装形態・重量・例外で決まります (世界税関機構)
  • モノフィラメント/ストリップ(5404/5405)か、フィラメント糸(5402/5403)か:67dtex、断面寸法1mm、見掛け幅5mmが効きます (世界税関機構)

この類で誤分類が高コストになりやすい場面

  • EPA/FTAでPSR(品目別規則)が変わる場面:HSの付番を誤ると原産性判断が崩れます (税関総合情報)
  • 工業用高強力糸・産業資材(ロープ扱い/59類扱いとの境界):関税率・規制・統計が変わりやすい領域です (世界税関機構)

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール

この類はGIR1(見出しと注の文言)が最重要です。特に「部注(Section XI Notes)」の定義が、項(5401〜5408)をまたいで効きます。次に、6桁の切り分けはGIR6で「同じレベルの号の文言+該当する注」で詰めます。 (世界税関機構)

「品名だけで決めない」ための観点は次の通りです。

  • 繊維の種類:合成(polyester/nylon等)か、再生(viscose rayon/acetate等)か (世界税関機構)
  • 形状:マルチフィラメント糸か、モノフィラメントか、ストリップか (世界税関機構)
  • 状態:縫糸として仕上げ済みか、工業用巻き(コーン/コップ等)か、小巻(小売用)か (世界税関機構)
  • 性能:高強力(high tenacity)該当か(cN/texの閾値) (世界税関機構)
  • 織物の場合:高強力糸由来、ストリップ由来、Note 9の「平行糸層の布」該当、コーティング等の有無 (世界税関機構)

1-2. 判定フロー

  • Step1:繊維の部(第11部)に残るか(プラスチック形状物、デンタルフロス等の除外を先に確認) (世界税関機構)
  • Step2:短繊維(第55類)ではなく、長繊維(フィラメント)か(トウは第55類へ) (世界税関機構)
  • Step3:縫糸か(5401の定義:重量・仕上げ・Z撚り) (世界税関機構)
  • Step4:縫糸でなければ、小売用の糸か(5406)/非小売用か(5402/5403) (世界税関機構)
  • Step5:合成(synthetic)か再生(artificial)かで 5402 と 5403、織物なら 5407 と 5408 を分ける (世界税関機構)
  • Step6:糸ではなくモノフィラメント/ストリップなら 5404(合成)/5405(再生)へ(67dtex・断面寸法・幅を確認) (世界税関機構)
  • Step7:織物なら 5407/5408 の中で「高強力」「ストリップ由来」「Note 9布」等の号を確認 (世界税関機構)
  • Step8:**タイヤコード織物(5902)目視できるコーティング(5903等)**など、59類に飛ばないか最終チェック (世界税関機構)

よく迷う境界例

  • 第54類(織物)↔ 第59類(産業用・コーティング布):タイヤコード織物(5902)、プラスチック含浸・被覆(5903)等 (世界税関機構)
  • 第54類(糸)↔ 第56類(ひも・ロープ):太さ(dtex)条件で“twine/cordage”扱いになり得る (世界税関機構)
  • 第54類(長繊維)↔ 第55類(短繊維・トウ):トウは54.02/54.03に含まれません (世界税関機構)

2. 主な項とその内容

2-1. 4桁の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5401合成フィラメント縫糸ポリエステル縫糸、ナイロン縫糸(小巻)縫糸の定義(重量・仕上げ・Z撚り)を満たすか
5402合成フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)工業用ナイロン糸、ポリエステル糸、POY小売用なら5406。高強力/伸縮糸等で号が分かれる
5403再生フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)レーヨン糸、キュプラ糸小売用なら5406。高強力の定義に注意
5404合成モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/合成ストリップ(幅≦5mm)ブラシ用モノフィラ、人工ストロー材断面寸法>1mmや幅>5mmは繊維から外れる可能性
5405再生モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/再生ストリップ(幅≦5mm)レーヨン系のストリップ等54.05材料の織物は5408側に含み得る(見出しに明記)
5406人造繊維フィラメント糸(縫糸除く、小売用)手芸糸(小巻・玉巻)小売用の定義(包装形態・重量・例外)で決まる
5407合成フィラメント織物(54.04材料の織物含む)裏地、産業資材織物の一部5902(タイヤコード)・5903(コーティング)との境界。Note 9布は別号
5408再生フィラメント織物(54.05材料の織物含む)レーヨン織物、アセテート織物日本側備考でアセテート等の扱いに注意

出典:WCO HS2022 第54章(見出し)および日本の第54類注記。 (世界税関機構)

2-2. 6桁で実務上重要な分岐

重要な「定義・閾値」早見表

論点実務で効く基準どこに書いてあるか
縫糸(5401)複糸/ケーブル糸で、支持体込み重量≦1,000g、縫糸用に仕上げ、最終Z撚り部注(Section XI Note 5)
小売用(5406)包装形態(リール/玉/かせ等)+重量基準(例:人造長繊維糸は85g基準が頻出)+例外(工業用ボビン等は除外)部注(Section XI Note 4)
高強力(high tenacity)ナイロン/ポリエステル:単糸>60 cN/tex、複糸/ケーブル>53 cN/tex。ビスコース:>27 cN/tex部注(Section XI Note 6)
“ひも・ロープ扱い”人造繊維糸で 10,000dtex超 などは“twine/cordage”扱い(ただし例外あり)部注(Section XI Note 3)
elastomeric yarn合成繊維フィラメント(テクスチャード除く)で、3倍伸長で切れず、2倍伸長後5分以内に1.5倍以下まで戻る部注(Section XI Note 13)
ポリアミドの範囲polyamides に aramids を含む部注(Section XI Note 12)

出典:WCO HS2022 Section XI Notes(第11部注)。 (世界税関機構)

間違えやすい6桁ペア/グループ

  1. 5401(縫糸) vs 5402/5403(糸)
  • どこで分かれるか:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り)を満たすか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:撚り方向(S/Z)、仕上げ(ワックス/樹脂等)、巻き重量(支持体込み)
  • 典型的な誤り:「縫製に使う予定」だけで縫糸扱いにしてしまう(実物の“縫糸仕様”が必要)
  1. 5406(小売用) vs 5402/5403(非小売用)
  • どこで分かれるか:包装形態と重量が定義内か、かつ例外(工業用支持体)に当たらないか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:支持体込み重量、包装形態(リール/玉/かせ/分割かせ)、工業用ボビン形状の有無
  • 典型的な誤り:85g/125gだけ見て即断(「工業用形態なら除外」など例外条件を落とす)
  1. 5402/5403(糸) vs 5404/5405(モノフィラメント/ストリップ)
  • どこで分かれるか:モノフィラメントが 67dtex以上か、断面寸法が 1mm以下か。ストリップは見掛け幅 5mm以下か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、断面寸法、見掛け幅、材質(合成/再生)
  1. 5402(太糸) vs 5607(ひも・ロープ)
  • どこで分かれるか:人造繊維糸が 10,000dtex超等で“twine/cordage”扱いになるか(例外あり) (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、単糸/複糸/ケーブル、モノフィラの束か、撚り(特に例外の有無)
  1. 5407(織物) vs 5902/5903(第59類)
  • どこで分かれるか:**タイヤコード織物(5902)**か/**プラスチック含浸・被覆が目視できる(5903)**等か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:用途(タイヤ補強)、織物仕様、コーティングの種類・目視可否、積層構造

3. 部注と類注の詳細解釈

3-1. 関連する部注

  • ポイント要約
    • 部注3:一定条件の太い糸は“twine/cordage/ropes/cables”扱いにし、56類側へ寄せるルール(ただし例外あり) (世界税関機構)
    • 部注4:小売用の定義(包装・重量)と例外(工業用形態など) (世界税関機構)
    • 部注5:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り) (世界税関機構)
    • 部注6:高強力(high tenacity)判定のcN/tex閾値 (世界税関機構)
    • 部注9:平行糸層を接着・熱で結合した“織物”も織物として扱う(5407.30等) (世界税関機構)
    • 部注12:ポリアミドにアラミドを含む(= 5402.11等に効く) (世界税関機構)
    • 部注13:elastomeric yarn(伸縮糸)定義 (世界税関機構)
    • 部注8:Note 7の「made up(製品化)」に該当すると、原則として54章の織物・糸ではなく56〜63章側へ行く、という大枠 (世界税関機構)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 小巻で販売されていても、工業用コップ/コーン等“工業用途を示す形態”なら「小売用」から外れる可能性があります(5406に寄せない) (世界税関機構)
    • 高強力は「商品名」ではなく**tenacity(cN/tex)**で確定します。仕様書に“high tenacity”と書かれていても、閾値未達なら該当しません (世界税関機構)
    • 平行糸層の接着布(Note 9)は、見た目が“織り”っぽくなくても、定義に当てはまれば織物として扱われます (世界税関機構)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン

3-2. この類の類注

  • ポイント要約
    • 類注1:人造繊維(man-made fibres)の定義。合成(synthetic)と再生(artificial)の区別を明示し、**54.04/54.05のストリップ類は“人造繊維とみなさない”**旨も書かれています (世界税関機構)
    • 類注2:54.02/54.03にトウ(第55類)を含まない (世界税関機構)
  • 用語定義
    • 合成繊維=有機単量体の重合等で得るもの(例:ポリエステル、ポリアミド等)/再生繊維=セルロース等を溶解・化学処理して得るもの(例:ビスコース、キュプラ、アセテート等) (世界税関機構)
  • 除外規定

4. 類注が分類に与える影響

この章の目的は「類注・部注があるからこそ起きる分岐」を見える化することです。

  • 影響ポイント1:縫糸か否かで 5401 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:支持体込み重量≦1,000g、縫糸用仕上げ、最終Z撚り (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:撚り方向写真、仕様書(仕上げ)、包装重量の実測、製品カタログ
    • 誤分類の典型:「縫製に使うから縫糸」→ 実物が工業糸(未仕上げ/撚り条件不一致)で5402が正しい
  • 影響ポイント2:小売用定義で 5406 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:包装形態(リール/玉/かせ等)と重量、例外(工業用形態) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:包装写真、支持体込み重量、巻き取り形状(コップ/コーン/ピルン等)、販売形態(一般消費者向けか工業向けか)
    • 誤分類の典型:重量だけで5406扱い→ 工業用途を示す支持体で例外に該当し、5402/5403に戻る
  • 影響ポイント3:高強力判定で 5402/5403 の号が変わる
    • 何を見れば判断できるか:cN/texの閾値(単糸・複糸で閾値が違う) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:試験成績書、メーカー仕様(denier→tex換算根拠含む)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)
    • 誤分類の典型:「強い=高強力」→ 閾値未達/単糸・複糸の区別漏れ
  • 影響ポイント4:モノフィラ/ストリップの閾値で 5404/5405 へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか:67dtex、断面寸法≦1mm、見掛け幅≦5mm (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:図面、ノギス測定、dtexデータ、サンプル写真
    • 誤分類の典型:モノフィラを“糸”として5402へ → 67dtex以上なら5404側の可能性
  • 影響ポイント5:Note 9布の定義で 5407.30 等に割れる
    • 何を見れば判断できるか:平行糸層を接着/熱で結合しているか (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:製造工程図、断面観察、接着剤の有無(MSDS等)
    • 誤分類の典型:見た目が織物っぽくない→ Note 9該当を見落とす

5. 分類でよくある間違い

  1. 間違い:縫糸を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:インボイス品名が “polyester filament yarn” 等で縫糸用途が書かれない
    • 正しい考え方:縫糸は定義(Note 5)で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:撚り方向(Z)・仕上げ有無・支持体込み重量を仕様書に明記
  2. 間違い:小巻(小売用)を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:小売用の定義を「小さい巻き=小売用」と誤解
    • 正しい考え方:包装形態と重量、例外まで含めてNote 4で判定 (世界税関機構)
    • 予防策:包装写真、支持体込み重量、巻き形状(コーン/コップ等)を提出資料化
  3. 間違い:工業用コーン巻きを5406(小売用)にしてしまう
    • なぜ起きる:重量基準だけ満たしているように見える
    • 正しい考え方:工業用途を示す支持体・形態は例外になり得る (世界税関機構)
    • 予防策:包装形態の説明(cops, cones等)をインボイスに追記、カタログ添付
  4. 間違い:太番手糸を5402のままにする(実は56類相当)
    • なぜ起きる:dtexを確認せず、糸=54章と決め打ち
    • 正しい考え方:一定条件でtwine/cordage扱い(Note 3)。ただし例外も必ず確認 (世界税関機構)
    • 予防策:dtex、撚り、構成(単糸/複糸/ケーブル)を社内で標準取得
  5. 間違い:モノフィラメントを5402で申告
    • なぜ起きる:“monofilament yarn”という呼び方に引きずられる
    • 正しい考え方:67dtex以上・断面寸法≦1mmなら5404/5405側が基本 (世界税関機構)
    • 予防策:断面寸法・dtexの数値を仕様書に必須項目化
  6. 間違い:コーティング織物を5407/5408で申告
    • なぜ起きる:基材が54章織物なので、そのまま申告しがち
    • 正しい考え方:5902(タイヤコード)や5903(プラスチック含浸・被覆等)など、59類が別建て (世界税関機構)
    • 予防策:コーティングの種類、目視可否、用途(タイヤ補強等)をヒアリング
  7. 間違い:レーヨンを合成繊維として扱い5402へ
    • なぜ起きる:“人工=合成”の誤解
    • 正しい考え方:合成(synthetic)と再生(artificial)の区分は類注で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:原料ポリマー(セルロース系か)をMSDS/原料証明で確認
  8. 間違い:アラミドをポリアミド扱いから外してしまう
    • なぜ起きる:商品名(aramid)で別素材と誤認
    • 正しい考え方:部注12でpolyamidesにaramidsを含む (世界税関機構)
    • 予防策:材質表記に「aramid=polyamideの一種」注記、メーカー資料添付

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSRの関係

  • HSの付番(少なくとも6桁)が、PSR(品目別規則)の検索キーになります。誤分類すると、材料側HS・工程評価・RVC計算が全部ずれます。 (税関総合情報)
  • 典型的な落とし穴
    • 原料(ポリマー/チップ)と糸・織物のHSを混同
    • 小売用(5406)と非小売用(5402/5403)を取り違え、PSRが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い

実務では「自社の申告HS(通常は最新運用)」と「協定附属書が参照するHS版」がズレることがあります。

  • 日EU・EPA:PSR表の列見出しに「Harmonized System classification (2017)」と明記されています
  • CPTPP(TPP11):PSRの見出しに「HS Classification (HS2012)」と明記されています (内閣官房)
  • RCEP:HS2022に置換されたPSRが2022年6月30日に採択され、2023年1月1日から実施と明記されています (税関総合情報)

ズレる場合の注意(一般論)

  • 協定が旧HS版参照の場合、**相関表(トランスポジション)**で旧→新の対応付けをしてからPSR適用を検討します。
  • HS2012→HS2017では54.02の一部に新設号(例:5402.53、5402.63)があり、旧版の“その他”から分岐したことが示されています。 (税関総合情報)

6-3. 実務チェック

  • そろえるデータ
    • BOM(材料表)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS、糸/織物の仕様(dtex、tenacity、包装形態)
  • 書類(一般論)
    • 原産地証明書類・自己申告の根拠資料、保存要件に沿った保管(協定・国で異なるため最新確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー

比較変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし第54類(5401〜5408)見出し・注に実質的な改正は確認されませんHS6桁運用は原則同様。国内コードや協定参照HS版のズレには別途注意

根拠:WCO HS2017とHS2022の第54章本文(見出し・注)を突合すると同一であることを確認。 (世界税関機構)

7-2. 違うことになった根拠

  • 第54章について、WCOのHS2017版とHS2022版の章本文(NotesとHeadings)を比較し、見出し構造(5401〜5408)および章注が一致することから「HS2017→HS2022での変更なし」と整理しています。 (世界税関機構)
  • ただし、**国内コード(8桁/9桁等)**は国ごとに改正があり得るため、日本の統計番号・税率等は別途最新表で確認してください(HS6桁と混同しない)。 (税関総合情報)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第54類は、HS2007→2012→2017→2022の流れで「章立ての大枠」は安定していますが、HS2012→HS2017で54.02の一部に新設号が確認できます。

期間主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例
HS2007→HS2012第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)
HS2012→HS20175402.53(単糸・PP)と5402.63(複糸・PP)を新設旧:ex5402.59 → 新:5402.53(一定範囲)/旧:ex5402.69 → 新:5402.63(一定範囲) (税関総合情報)
HS2017→HS2022第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)

補足:ここでの“ex”は「旧号の一部が新号へ移る」ことを示す一般的な表現です(相関表の書き方)。 (税関総合情報)


9. 類注違反による通関トラブル

  • 事例名:縫糸要件未確認で5401申告
    • 誤りの内容:Note 5(縫糸定義)を満たさない糸を縫糸扱い (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“sewing yarn”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:撚り方向・仕上げ・重量の根拠資料を事前に揃える
  • 事例名:小売用の例外を落として5406申告
    • 誤りの内容:Note 4(小売用定義)の例外(工業用形態)を無視 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:重量基準だけで判断、写真なし
    • 典型的な影響:差戻し・補正、到着後の用途確認要求(一般論)
    • 予防策:包装写真・支持体形状をインボイス/明細に明記
  • 事例名:太糸のロープ扱い(56類)を見落として54類申告
    • 誤りの内容:Note 3(twine/cordage定義)未確認 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:dtexデータが社内にない、単糸/複糸不明
    • 典型的な影響:統計誤り、規制・原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:dtex・構成・撚りの標準取得
  • 事例名:コーティング織物を5407のまま申告
    • 誤りの内容:第59類 5903等の対象(含浸・被覆)を見落とし (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:基材が54類なので思考停止
    • 典型的な影響:差戻し、サンプル提出、通関遅延(一般論)
    • 予防策:コーティング仕様(目視可否)を仕様書で提示

10. 輸出入規制事項

日本前提で、第54類に関係しやすい「実務上の注意点」を挙げます(該当する場合のみ確認してください)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第54類自体は食品・動植物ではないため、一般にSPSの中心領域ではありません(ただし最終製品用途によって別途あり得ます)。
  • その他の許認可・届出
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制:家庭用繊維製品等について、アゾ化合物(特定芳香族アミン生成)などの基準が整理されています。対象品目・試験法・基準値はMHLW資料で確認が必要です。 (e-Gov 法令検索)
    • 家庭用品品質表示(繊維製品の表示):国内販売向けでは、繊維組成・取扱い方法等の表示ルールが規程・ガイドで示されています。 (e-Gov 法令検索)
    • 安全保障貿易管理(輸出):高性能繊維等は、HSではなく仕様(性能・用途等)で該当性を確認する必要があるため、METIの最新リスト・解釈資料で確認してください。 (e-Gov 法令検索)
  • 確認先
  • 実務での準備物(一般論)
    • 繊維:組成証明、染料/加工剤情報、試験成績書(必要時)
    • 糸/モノフィラ:dtex、tenacity、断面寸法、包装形態資料
    • 織物:コーティング仕様、用途説明、工程フロー

11. 実務チェックリスト

  • 分類前チェック
    • 材質(合成/再生)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)、dtex、tenacity、撚り方向、モノフィラ寸法、ストリップ幅
    • 包装形態(リール/玉/かせ/コーン/コップ)、支持体込み重量
  • 分類後チェック
    • 部注3/4/5/6/9/12/13の該当性(twine、小売用、縫糸、高強力、Note 9布、アラミド、伸縮糸) (世界税関機構)
    • 59類(5902/5903等)への飛びを再確認 (世界税関機構)
  • 申告前チェック
    • インボイス品名に「材質+形状+用途+規格(dtex/tenacity/寸法/包装)」を入れる
    • 補足資料(仕様書・写真・工程図)を同梱できる体制
  • FTA/EPAチェック
    • 協定が参照するHS版を確認し、必要なら相関表で照合
    • BOM、原価、工程、原産国、非原産材料HS、RVC計算根拠
  • 規制チェック

12. 参考資料

  • WCO(HS2022条文)
  • 日本税関・公的機関
  • FTA/EPA本文・付属書
    • 日EU・EPA:Annex 3-A/PSR表(HS classification (2017) 表記)
    • CPTPP:Annex 3-D(HS Classification (HS2012) 表記) (内閣官房)
    • RCEP:Transposed PSR in HS2022(採択日・実施日明記) (税関総合情報)
  • 規制(日本)
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(e-Gov) (e-Gov 法令検索)
    • 規制基準概要(MHLW) (厚生労働省)
    • 家庭用品品質表示法(e-Gov)および繊維製品品質表示規程・ガイド(消費者庁) (e-Gov 法令検索)
    • 参照日:2026-02-23

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

センサー・計測機器のHSコード分類を国際裁定で読み解く



EU・米国・日本を横串で比較する実務ガイド

センサーや計測機器は、製造業の競争力を左右する中核部品である一方で、HSコードの解釈が揺れやすい分野でもあります。誤った分類は、関税コストの想定違いにとどまらず、FTAの原産地判定、輸入規制の該当性、顧客への価格提示、契約条件に連鎖して影響します。

本記事では、ビジネスマンが意思決定に使える形で、センサー・計測機器の分類を国際裁定比較の視点で深掘りします。EUのBTI(Binding Tariff Information)、米国CBPのルーリング、日本税関の事前教示を中心に、制度の差と読み解き方、社内判断への落とし込みまでを整理します。


1. 国際裁定比較とは何か

1-1. 裁定や事前教示は、どこまで頼れるのか

関税分類の裁定や事前教示は、税関当局が特定の貨物について輸入前に文書で取扱いを示す制度です。申請者が提出した事実関係を前提に、一定条件の下で当局側の取扱いを拘束または強く拘束的に運用する仕組みとして位置づけられています。

ただし、最も重要な前提はこれです。

裁定や事前教示は、他社品の結論を自社品へ機械的に当てはめるための道具ではありません。自社品の仕様、輸入形態、同梱物、機能範囲が一致して初めて参考になります。

加えて、米国CBPのルーリングは、申請した当事者との関係においてのみCBPを拘束します 。他の輸入者が類似製品を輸入する場合に自動的に適用されるわけではありませんが、公開先例として分類の根拠を支える有力な参照材料となります。[cbsa-asfc.gc]​

1-2. なぜ国際裁定比較がビジネスで効くのか

国際裁定比較が効く理由は、結論そのものよりも、結論に至る論点を抽出できるからです。

1つの国の判断だけを見ていると、分類が揺れる要因が見えにくいことがあります。複数国の判断を並べると、どの機能や構造が分岐点になるのか、どの説明が弱点になり得るのかが浮き彫りになります。結果として、事前教示を取るべき国、必要資料の優先順位、契約や価格に織り込むべき不確実性を整理しやすくなります。


2. センサー・計測機器で分類が揺れやすい理由

センサーと計測機器が難しいのは、「測る」「変換する」「記録する」「通信する」「制御する」機能が一体化しやすいからです。特に次の論点が、国や担当官によって判断が割れやすいポイントです。

  • 測定か、制御か
  • 何を測っているか(流体・気体の変量か、電気量か、物理・化学分析か)
  • 電気量の測定か、非電気量の測定か
  • 単体製品か、部品か
  • 複合機能品の主要機能は何か

現場でよく起きるのは、設計側の意図は測定であっても、製品としては制御ロジックを内蔵し、設定値と比較して自動で出力を変える領域に踏み込んでいるケースです。この瞬間に、分類の候補が大きく変わります。

2-1. センサー・計測機器に関連する主要HS見出し

分類判断を始める前に、候補見出しの全体像を押さえることが実務の基本です。以下は、センサー・計測機器の検討において頻出するHS見出しです 。tsukanshi+1

HS見出し品目内容(概要)
9025液体用温度計、気圧計、湿度計など
9026流量、液位、圧力その他の変量の測定用または検査用の機器(例:流量計、マノメーター、熱流量計)
9027物理分析用または化学分析用の機器(例:分光計、ガス分析器)、粘度・多孔度等の測定機器
9028ガスメーター、液体メーター、電力量計等(供給量・消費量の計量用メーター)
9030電気量(電圧・電流・周波数等)の測定または検査用の機器(例:電圧計、電流計、オシロスコープ)
9031他のいずれの見出しにも含まれない測定または検査用の機器(例:座標測定機、非接触センサーを使った長さ・角度測定機器)
9032自動調整用または自動制御用の機器(例:温度調節器、自動制御弁、PIDコントローラー)
8542電子集積回路(センサー機能内蔵ICを含む)
8543電気機器(他の見出しに含まれないもの。例:電気式変換器、トランスデューサー)

第90類の注3では、電気量を測定する機器は原則として第9030項に分類されると明記されています 。また、センサー機能を内蔵した集積回路(IC)については、WCO(世界関税機構)が2024年3月の第73回HS委員会において、測定機器(第90類)ではなく電子集積回路(第8542項)として分類する意見を採択しています 。設計上はセンサーでも、ICとして製造・輸入される場合は第85類が優先されます(後述 5-4 参照)。jaftas+1


3. 主要国の裁定制度を、拘束力と使いどころで整理する

制度を並べる前に、押さえるべき実務観点は2つです。

1つ目は、どこまで拘束力があるか。
2つ目は、公開情報としてどれだけ参照できるか。

以下は、代表的制度の比較です。

国・地域制度名ビジネス上の使いどころ有効期間公開性
EUBTI(Binding Tariff Information)EU域内のすべての税関で一貫した分類が可能。域内複数国に輸出入がある企業に効く。3年間(2016年5月のUCC施行以降。以前は6年間) taxation-customs.ec.europa+1EBTIデータベース(公開)で参照可能 [taxation-customs.ec.europa]​
米国CBPルーリング申請者との関係でCBPを拘束。第三者への直接拘束力はないが、CROSS(公開検索システム)で膨大な先例を参照できる [cbsa-asfc.gc]​。固定期限なし(改廃まで有効)CROSSで多数参照可能
日本事前教示(文書回答)通関審査において文書内容が尊重され、全国で扱いを揃えやすい [customs.go]​。発出日から原則3年間 [customs.go]​税関ウェブサイトで公開検索が可能
カナダAdvance Ruling(CBSA)条件を満たせば申請者に対して拘束的。北米サプライチェーンで有効。固定期限なし(重要事実・適用法令が変わらず、かつ改廃されない限り有効) cbsa-asfc+1公開の扱いあり
英国Advance Tariff Ruling(ATaR、HMRC)Brexit後、2021年1月1日から新設(EU BTIに代わる制度)[barbournebrook.co]​。コモディティコードを事前確定し、見積や契約に使いやすい。3年間(HMRCが30〜120日以内に回答) gov+1HMRC制度案内が明確
豪州Tariff Advice(ABF)特定品目の事前分類確定として活用しやすい。5年間(申請日から) abf.gov+1ABF制度案内が明確

EUのBTIは、UCC(Union Customs Code)の実体規定が2016年5月1日に施行されたことで有効期間が6年から3年に短縮されています 。カナダのAdvance Rulingは有効期限が設定されておらず、「重要事実・法令の変化がない限り継続有効」という仕組みです 。英国のATaRはEU離脱に伴い2021年1月1日から導入された独自制度です 。目的と市場に応じた使い分けが重要です。taxation-customs.ec.europa+3


4. 国際裁定比較を、再現性ある社内プロセスにする

国際裁定比較で一番ありがちな失敗は、似た案件を見つけた時点で結論に飛びつくことです。分類は、仕様差が1つあるだけで結論が変わります。比較を意思決定に耐える形へ落とすには、次の順で進めるのが安全です。

4-1. ステップ1 分類仕様書を作る

エンジニア資料をそのまま税関言語に翻訳すると抜け漏れが出ます。分類専用の仕様書で、最低限次を固定します。

  • 測定対象
  • 測定原理
  • 出力形式
  • 機能範囲(測定のみ、記録、表示、演算、判定、制御信号出力、アクチュエータ駆動)
  • 同梱物
  • 輸入形態(IC単体、センサーモジュール、制御ユニット組込品、セット、基板、ユニット)

4-2. ステップ2 候補見出しを争点別に並べる

候補を単に羅列するのではなく、争点に紐づけます。

  • 流体や気体の特定変数の測定が中心か(→第9026項候補)[tsukanshi]​
  • 電気量の測定・検査が中心か(→第9030項候補)[jaftas]​
  • 他に当てはまらない一般の測定・検査か(→第9031項候補)[jaftas]​
  • 自動で調整・制御する機能が主要か(→第9032項候補)
  • センサー機能を内蔵したICとして製造されているか(→第8542項候補)[global-scm]​

この整理は、製品説明資料の書き方にも直結します。説明が曖昧だと、分類だけでなく通関審査の照会や追加資料要求も増えます。

4-3. ステップ3 裁定の比較可能性をチェックする

国際裁定比較では、次のチェックに合格して初めて参考にできます。

  • 同一性:機能、構造、輸入形態が実質的に同じか
  • 時点:解釈変更や改正(HS改正・法令改正・WCO分類意見の採択)の前後ではないか
  • 拘束範囲:どこまで拘束される決定か(申請者限定か、第三者参照か)[cbsa-asfc.gc]​
  • 条件:前提条件や限定事項が付いていないか
  • 改廃:無効化、撤回、修正がないか[taxation-customs.ec.europa]​

4-4. ステップ4 結論は事前教示取得の要否に落とす

比較の目的は、机上で最適解を当てることではありません。目的は、追加課税、通関遅延、契約トラブルを避けるために、どの国で事前教示を取るべきかを決めることです。

取引規模が大きい、輸入者責任が重い、顧客契約が厳しい、FTA適用を確実にしたい。こうした条件がある場合、文書で固める価値が上がります。


5. 境界論点を、裁定比較の視点で深掘りする

5-1. 測定か制御か センサーが制御側へ寄る瞬間

測定値を出すだけのセンサーと、設定値と比較して自動で出力を変える機能を持つ製品では、分類の候補が変わります(第9026項等の測定機器から、第9032項の自動調整・制御機器へ)。特に次の要素があると、制御機能と評価される可能性が上がります。

  • 設定値を保持し、測定値と比較する機能
  • 制御信号を生成し、外部機器へ出力する機能
  • アクチュエータを直接駆動する構成
  • 制御の主要機能が本体で完結している

社内では、仕様書に制御の役割分担を明記し、製品の主要機能が測定なのか制御なのかを言語化することが重要です。

5-2. 電気量の測定か データ解析か

高度化した計測機器は、信号処理やデータ解析を伴います。ここで重要なのは、何を測っているのかを明確にすることです。

  • 電圧、電流、抵抗、周波数などの電気量を測る機器なのか(→第9030項)[jaftas]​
  • 電気信号を入力として、対象物の状態や品質を検査する機器なのか(→第9026項、第9027項、第9031項等)tsukanshi+1
  • ネットワークデータやログを分析して、運用状態を可視化する機器なのか(→第8471項等も視野)

同じように見える機器でも、説明の焦点が変わると候補見出しの順番が変わります。裁定比較では、結論の番号以上に、当局が何を測定対象と捉えたのかを読み取ることが肝になります。

5-3. 部品か機器か 単体センサーと組込み品の扱い

センサー単体、センサーモジュール、制御ユニットに組み込まれた状態では、同じ技術でも分類が変わり得ます。裁定を引用する場合は、輸入形態が一致しているかを必ず確認します。

特に部品扱いでは、専用性が鍵になります。汎用品として他用途にも広く使えるのか、特定機器に専用に使うことが前提なのかで、説明と根拠資料の作り方が変わります。

5-4. センサー機能内蔵ICの新たな分類基準

WCOは2024年3月の第73回HS委員会において、「Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)」をHS 8542.39(電子集積回路:その他)に分類する分類意見を採択しました 。第85類注12(b)(iii)とGIR1・GIR6を根拠として、以下の構造条件を満たすものが8542.39に分類されると示されています 。[global-scm]​

  • 1パッケージ内に2つのセンサーを内蔵した冗長構成であること
  • 各センサーが電気的に非接続であること
  • 追加の能動素子・受動素子等が組み付けられていないこと

この判断が実務に与えるインパクトは、製品の「階層」によって変わります 。[global-scm]​

  • ICとして完結している段階:第8542項(電子集積回路)が優先
  • 基板実装・他素子と一体化したモジュール段階:第8543項(トランスデューサー等)や第90類が候補
  • 機器・ユニットとして組み込まれた段階:機器全体の主機能・章注・部分品規定が判断軸になる

なお、WCO分類意見は各国の実装状況によってタイムラグや例外が生じる場合があります 。主要仕向地ごとに当局の公表資料や事前教示で運用を確認することが、リスクを閉じる最終手段です。[global-scm]​


6. 経営判断に落とすための実務ポイント

6-1. 価格と契約に効く分類の不確実性の扱い

分類が揺れている段階で価格を固定すると、利益が後から削れます。裁定比較で論点が見えたら、次のどれで扱うかを決めます。

  • 主要市場で事前教示を取得し、分類を固定してから長期価格を出す
  • 分類が確定するまで、契約条項に関税差分の扱いを織り込む
  • DDPなど関税負担者が自社側になる取引は、分類確定を先行条件にする

6-2. 変更管理を製品ライフサイクルに組み込む

通信方式の変更、ファームウェア更新、同梱物の追加で、主要機能の説明は変わり得ます。分類は、設計変更管理と同じテーブルで回すべき領域です。

  • どの変更が分類へ影響するかの判定基準
  • 変更時に更新すべき資料(仕様書、BOM、レイアウト図)
  • 事前教示を取得している国での再検討条件

これらを運用ルールとして定めると、現場の手戻りが大きく減ります。


7. まとめ

センサー・計測機器のHS分類は、技術の複合化で難易度が上がり続けています。国際裁定比較は、結論を真似るためではなく、論点を可視化し、必要資料と事前教示取得の優先順位を決め、社内の分類決定を再現性ある形にするための武器になります。

おすすめの進め方は次の通りです。分類仕様書で事実を固定し、争点別に候補HS見出しを整理し、裁定の比較可能性をチェックした上で、重要市場では事前教示で固める。これが、コスト、リードタイム、コンプライアンスの三方を同時に守る近道です。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定取引に対する法的助言、税務助言、通関判断を代替するものではありません。HSコードの最終判断は、貨物の仕様、輸入形態、適用法令、最新の通達や裁定の有無により変わり得ます。個別案件については、必ず当該国の税関当局への事前教示申請や、通関士・貿易実務の専門家への相談を通じて確認してください。



センサー・計測機器のHSコード分類を国際裁定で読み解く:EU・米国・日本を横串で比較する実務ガイド

センサーや計測機器は、製造業の競争力を左右する中核部品である一方、HSコードの解釈が揺れやすい分野でもあります。誤った分類は、関税コストの想定違いだけでなく、FTAの原産地判定、輸入規制の該当性、顧客への価格提示、契約条件に連鎖して影響します。

本記事では、ビジネスマンが意思決定に使える形で、センサー・計測機器の分類を「国際裁定比較」で深掘りします。EUのBTI、米国CBPのルーリング、日本税関の事前教示を中心に、カナダ、英国、豪州の制度も併記し、実務でどう読み解き、どう社内判断に落とすかを解説します。

1. 国際裁定比較とは何か

1-1. そもそも「裁定」「事前教示」は、どこまで信頼できるのか

関税分類の「裁定」や「事前教示」は、税関当局が特定の貨物について、輸入前に文書で分類の取扱いを示す制度です。WTO貿易円滑化協定(TFA)でも、加盟国が合理的な期間内に事前教示を出すこと、事前教示が発給国に対して申請者に関して拘束力を持ち得ること、必要事項の公表などが規定されています。つまり、事前教示は単なる慣行ではなく、国際的にも予見可能性と透明性を高める仕組みとして位置付けられています。 :contentReference[oaicite:0]{index=0}

1-2. なぜ「国際裁定比較」がビジネスで効くのか

HSは国際共通の品目分類体系であり、原則として6桁レベルまでは各国共通です。そのため、複数国の裁定を比較すると、分類理由のどこが争点になりやすいか、どの機能や構造が分類を決める決定打になるかが見えてきます。さらに、輸出先が複数ある場合は、輸入国ごとに分類の揺れ幅を先に把握し、コストとスケジュールの手当てができます。

ただし、重要な前提があります。国際裁定比較は「自社の分類を自動的に正当化する道具」ではなく、「論点を特定し、追加資料や事前教示の要否を判断するための診断装置」です。ここを取り違えると、参考情報のつもりが過信になり、リスクが増えます。

2. センサー・計測機器で分類が揺れやすい理由

センサーと計測機器の分類が難しい理由は、技術進化により、測る・変換する・記録する・通信する・制御する、が一体化しやすいからです。特に次の論点が、国や担当官によって判断が割れやすいポイントです。

  1. 測定か、制御か(自動制御まで行うか)
  2. 何を測っているか(流量・圧力など特定変数か、その他一般か)
  3. 電気量の測定か、非電気量の測定か(信号解析をどう捉えるか)
  4. 単体製品か、部品か(部品の扱い、専用性の評価)
  5. 複合機能品の主要機能は何か(通信や演算が主になる瞬間がある)

たとえば、代表的な見出しとして、見出し9026は「液体・気体の流量、液面、圧力などの変数を測定・検査する機器(ただし9032などを除く)」、見出し9031は「90類の他の見出しに該当しない測定・検査機器」、見出し9032は「自動式の調整・制御機器」です。センサーや計測機器は、これらの境界線上に立つことが多いのが実情です。 :contentReference[oaicite:1]{index=1}

3. 主要国・地域の「分類裁定」を比較する

まずは、ビジネスで使いやすい主要制度を、拘束力と運用の観点から整理します。

国・地域制度名(通称)特徴(ビジネス上の使いどころ)代表的な有効期間公開性
EUBTI(Binding Tariff Information)EU全域で通用する「法的決定」。EU税関と保有者を拘束し、EU内で分類の一貫性を作りやすい。原則3年有効・無効を含め公開DBに収載
米国CBPのルーリング(ruling letter)特定取引・事実関係に基づく公式見解。事実一致が条件で、改廃もあり得る。明確な年限よりも改廃管理が重要検索DBで多数公開
日本関税分類の事前教示(文書回答)輸入通関審査で原則尊重。全国税関で扱いを揃えやすい。公開検索も可能。原則3年公開検索システムあり
カナダAdvance Ruling(tariff classification)条件を満たせば当局を拘束。効力発生日以降の輸入に適用。条件維持が前提(改廃あり)公開の扱いあり
英国Advance Tariff Ruling合法的に拘束力のある決定として、事前に関税等を見積もる用途に向く。概ね3年制度案内が明確
豪州Tariff Advice(Advance Ruling)特定品目・特定メーカーの分類に対する拘束力ある判断。ビジネス判断に直結させやすい。5年制度案内が明確

EUのBTIは、加盟国税関が発給する関税分類の法的決定で、原則3年間有効であり、EUの全税関当局と決定保有者を拘束します。また、有効・無効を含むBTIが公開データベース(EBTI)で参照できることが明記されています。 :contentReference[oaicite:2]{index=2}

米国のルーリングは、規則上、当該取引や論点に関する税関の公式見解であり、原則として改廃されるまで税関職員を拘束します。一方で、提出情報が正確であること、実際の取引がルーリング記載の事実と同一であることなどが適用条件で、現場は事実確認のうえで適用します。公開ルーリングは検索システム(CROSS)で検索できます。 :contentReference[oaicite:3]{index=3}

日本の関税分類の事前教示は、文書による回答であれば、輸入通関審査で原則3年間尊重され、全国どこの税関でも有効であることが周知されています。加えて、日本税関には事前教示回答事例を検索できる公開システムが用意されています。 :contentReference[oaicite:4]{index=4}

カナダでは、関税分類のアドバンスルーリングが、効力発生日以降に輸入される当該貨物に適用され、一定の条件下で当局(Minister)を拘束する旨が法令上規定されています。CBSAも、アドバンスルーリングが当局と受領者の間で拘束力を持つ決定になる点を説明しています。 :contentReference[oaicite:5]{index=5}

英国は、コモディティコードの合法的拘束力ある決定として、一般に3年間有効であることを制度案内で明示しています。豪州は、Tariff Adviceが特定品目に対する拘束力ある私的ルーリングであり、分類の事前確定として活用でき、原則5年適用されることを説明しています。 :contentReference[oaicite:6]{index=6}

4. 国際裁定比較を「再現性ある社内プロセス」にする

裁定比較で一番ありがちな失敗は、検索して似た案件を見つけた時点で結論に飛びつくことです。分類は、仕様差が1つあるだけで結論が変わります。比較を意思決定に耐える形へ落とすには、次の順で進めるのが安全です。

4-1. ステップ1 分類仕様書を作る

エンジニア資料をそのまま税関言語に翻訳すると抜け漏れが出ます。分類専用の「分類仕様書」を作り、最低限次を固定します。

  • 測定対象(温度、圧力、流量、位置、加速度、ガス成分など)
  • 測定原理(抵抗式、容量式、MEMS、光学式など)
  • 出力(アナログ、デジタル、無線、有線プロトコル)
  • 機能範囲(測定のみ、記録、表示、演算、判定、制御信号出力、アクチュエータ駆動)
  • 同梱物(表示器、ゲートウェイ、電源、ソフトウェア媒体、ケーブル)
  • 輸入形態(単体、セット、ユニット、基板、モジュール、組込済み)

4-2. ステップ2 候補見出しを「争点別」に並べる

候補を機械的に羅列するのではなく、争点に紐づけます。例として、流体・気体の圧力や流量の測定なら9026、汎用の測定・検査で他に当てはまらないなら9031、自動式の調整・制御まで担うなら9032が中心線になります。ここで重要なのは、9026の見出し自体が9032を除外している点です。つまり、制御機能の有無は分類の分岐点になり得ます。 :contentReference[oaicite:7]{index=7}

4-3. ステップ3 裁定の「比較可能性」をチェックする

国際裁定比較では、次のチェックが合格して初めて「参考にできる裁定」になります。

  • 同一性:機能、構造、輸入形態が実質的に同じか
  • 時点:HS改正や解釈変更の前後ではないか
  • 拘束範囲:当局がどこまで拘束される決定か
  • 条件:前提条件や限定事項が付いていないか
  • 改廃:無効化、撤回、修正がないか

EUではBTIが原則3年有効である一方、申請情報の不備による取消し、CN改正、欧州委員会の分類措置などにより失効し得ます。また、HS注釈の改正、EU司法判断、WCOの分類決定や分類意見が原因でBTIが撤回され得ることも制度上明示されています。過去のBTIを引用する場合は、発給日と現在の有効性を必ず確認してください。 :contentReference[oaicite:8]{index=8}

4-4. ステップ4 結論は「事前教示取得の要否」に落とす

比較の目的は、机上で最適解を当てることではありません。目的は、追加課税・通関遅延・契約トラブルを避けるために、どの国で事前教示を取るべきかを決めることです。

日本でも、口頭やメールでの照会は参考情報に留まり、文書による事前教示は通関審査で尊重されると整理されています。大きな商流ほど、文書で固める方が期待損失を下げやすい構造です。 :contentReference[oaicite:9]{index=9}

5. よくある境界論点を「裁定比較の視点」で深掘りする

5-1. 測定か、制御か センサーが9032へ寄る瞬間

制御要素を持つ製品は、分類が急に難しくなります。現場で多いのは、センサーが「測定値を出すだけ」のつもりでも、製品としては制御ロジックを実装し、設定値との比較、制御信号の生成、アクチュエータの駆動まで内蔵しているケースです。

見出し9032は自動式の調整・制御機器であり、サブヘディングにはサーモスタット、マノスタットなどの例も含まれます。測ること自体が目的なのか、目標値に合わせて自動で制御することが目的なのかを、仕様書で明確に言語化する必要があります。 :contentReference[oaicite:10]{index=10}

5-2. 9030と9031の境界 信号解析を「電気量測定」と見るか

高度化した計測機器は、電気信号やデジタルデータの解析を伴います。ここで、見出し9030(電気量の測定・検査)と見出し9031(他に該当しない測定・検査)の境界が争点になり得ます。

WCOのHS委員会関連文書では、ネットワークアナライザの分類をめぐり、EU側が9031、米国側が9030を主張した経緯が示されています。議論の核心は、ネットワークトラフィック解析が「電気量の測定」なのか、それとも「データを用いた運用分析」なのか、という解釈の違いです。つまり、同じ機器でも、何を測っていると捉えるかで見出しが変わるということです。 :contentReference[oaicite:11]{index=11}

5-3. 部品か、機器か センサー単体と組込み品の扱い

センサー単体と、機械に組み込まれた状態(モジュールやユニット)では、同一技術でも分類が変わり得ます。国際裁定比較では、裁定が前提とする輸入形態が「単体」「セット」「部品」「完成品」のどれなのかを必ず見抜く必要があります。

例えば9026や9031には部品・付属品のサブヘディングがありますが、当局は「その部品が本当にその見出しの部品として適切か」も見ます。比較のときは、見出しだけでなく、部品扱いの論理と、専用性の評価軸を読み取ることが重要です。 :contentReference[oaicite:12]{index=12}

5-4. 公開DBの使い分け 情報の粒度が違う

公開DBの価値は、国によって性格が異なります。

  • EUのEBTIは、EU全域に効く法的決定が公開され、分類理由の整理に向く
  • 米国のCROSSは、案件数が多く、類似製品の言語表現を学ぶのに向く
  • 日本税関は、事前教示回答事例の検索機能があり、日本語で社内展開しやすい

ただし、公開されているからといって自社品にそのまま当てはまるとは限りません。特に米国は、規則上も「記載事実と実取引が同一であること」が適用の条件として強調されています。検索は入口であり、最終判断は同一性の検証と、必要に応じた事前教示取得で固めるべきです。 :contentReference[oaicite:13]{index=13}

6. 経営判断に落とすための実務ポイント

6-1. 価格と契約に効く「分類の不確実性」を見積もる

分類が揺れている段階で価格提示を固定すると、利益が後から削れます。国際裁定比較で論点が見えたら、次のどれで扱うかを決めるのが実務的です。

  • 主要市場で事前教示を取得し、分類を固定してから長期価格を出す
  • 分類が確定するまで、価格条項に関税差分の扱いを織り込む
  • インコタームズや関税負担者が複雑な取引は、分類確定を先行条件にする

6-2. 変更管理を製品ライフサイクルに組み込む

センサー製品は、通信方式の変更、ファームウェア更新、同梱物の追加で、主要機能の説明が変わり得ます。分類は、設計変更管理と同じテーブルで回すべき領域です。EUのBTIも、解釈変更やWCOの分類意見などで撤回され得ることが明記されている以上、社内でも「分類は固定資産ではなく、条件付きの決定」と扱う方が安全です。 :contentReference[oaicite:14]{index=14}

7. まとめ

センサー・計測機器のHS分類は、技術の複合化で難易度が上がり続けています。その中で、国際裁定比較は、単なる調査ではなく、論点を可視化し、事前教示取得の投資対効果を判断し、社内の分類決定を再現性ある形にするための武器になります。

おすすめの進め方は、公開DBで類似裁定を拾って結論を急ぐのではなく、分類仕様書で事実を固定し、候補見出しの争点を整理し、比較可能性のチェックを通した上で、必要な国で事前教示を取りに行くことです。これが、コストとリードタイム、そしてコンプライアンスの三方を同時に守る最短ルートになります。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定取引に対する法的助言、税務助言、通関判断を代替するものではありません。HSコードの最終判断は、貨物の仕様、輸入形態、適用法令、最新の通達や裁定の有無により変わり得ます。個別案件については、必ず当該国の税関当局への事前教示申請や、通関士・貿易実務の専門家への相談を通じて確認してください。

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WCOが公表したHS2028改正と解説改訂・分類決定を、ビジネスの視点で読み解く

更新日:2026年2月22日

本稿の要点

  1. HS2028は、WCO(世界税関機構)により改正が受理され、2028年1月1日に発効します。企業の関税、規制対応、需給計画、データ分析に直結する改正です。(世界関税機関)
  2. WCOはHS委員会の最新の分類決定を公表し、あわせてHS解説(Explanatory Notes)改訂も示しています。これらは現行版運用の精度を上げると同時に、将来のHS改正を読むための重要な手掛かりになります。(世界関税機関)
  3. 実務のポイントは、単にコードを置き換えることではありません。品目分類ガバナンス、マスタデータ、契約、社内統制、事前教示などを一体で整備し、移行リスクを管理することが成果を左右します。(世界関税機関)

いまWCOが公表している「3つのレイヤー」を整理する

レイヤー1:HS2028改正(法的な品目表の更新)

WCOは、HS2028改正が受理されたことを公表しており、改正は299セットの変更からなります。HS2022と比べ、新設の見出し(Heading)や細分(Subheading)が増える一方、削除も行われています。改正は2028年1月1日に発効し、各国が国内関税率表へ落とし込むための実装期間が設けられています。(世界関税機関)

ここで重要なのは、HSは関税率表だけでなく、統計、輸出入規制、各種ライセンスや証明手続にも広く使われる「共通言語」だという点です。WCO自身も、HSが多くの国・地域で税関関税と国際貿易統計の基礎になっていることを説明しています。(世界関税機関)

レイヤー2:HS解説(Explanatory Notes)の改訂(公式解釈のアップデート)

HS解説は、WCOが公表する公式解釈であり、条文(見出しや注)だけでは読み切れない範囲や判断基準を補います。WCOは、HS解説が公式解釈であること、2022年版は複数巻で構成されること、そして改訂が順次反映されることを明示しています。(世界関税機関)

今回WCOが「HS委員会第76回会合の決定」として公表している解説改訂は、2026年1月1日から適用される改訂として位置付けられています。つまり、HS2028の話とは別に、現行版運用の精度を引き上げるための改訂が並走している、という理解が必要です。(世界関税機関)

レイヤー3:分類決定(Classification Decisions)(具体的商品の「判例集」に近い役割)

WCOが公表する分類決定は、HS委員会が個別商品について下した分類判断の一覧です。今回公表されている文書では、特定の商品ごとの分類番号に加え、場合により分類根拠(適用した一般解釈規則など)が示されています。(世界関税機関)

注意点として、WCOは分類決定や改訂に関して、輸入国・輸出国での実装状況を確認するよう明確に注意喚起しています。実務的には「国際的に強い説得力を持つが、そのまま自動的に各国で拘束力を持つとは限らない」資料です。(世界関税機関)

HS2028改正は、どこが「ビジネスに効く」のか

公衆衛生と緊急対応が、統計と通関を変える

HS2028は、公衆衛生と健康危機対応を重要テーマとして掲げ、緊急時に必要となる物資の可視性向上を狙っています。WCOは、救急車、個人用防護具、人工呼吸器、診断機器などに関する細分化を示しています。(世界関税機関)

この方向性は、単なる統計用途ではありません。緊急時の簡素化手続や迅速通関、政策的な優遇措置を設計するために、コードの粒度が重要になるという発想です。これは、医療機器メーカーや商社だけでなく、グローバルに医療関連品を扱う物流・調達部門にも影響します。(世界関税機関)

ワクチン分類の再設計は、規制と需給計画の前提を変える

WCOは、HS2028でワクチン分類を大きく組み替え、ヒト用ワクチンを中心に新たな見出し・細分を設ける方針を示しています。ヒト用ワクチンは見出し30.07に整理され、細分は38の6桁コードに分かれる、と説明されています。(世界関税機関)

WHOも、WTOおよびWCOとの連携の下で、ヒト用ワクチン等について新たなコード体系が2028年1月1日に導入されることを発信しています。国際機関が同じ方向を示している点は、企業にとって「この改正が各国実装へ進む確度が高い」ことを読み取る材料になります。(世界保健機関)

サプリメント新設見出しは、係争リスクと統制コストを下げ得る

HS2028では、サプリメントのための新見出し21.07が創設され、区分や定義を法的注で整える方針が示されています。WCOは、HS2022ではサプリメントの包括的定義がなく、国ごとに裁判例などを通じて分類が分かれ、係争や統計上の把握困難につながっていた、と背景を説明しています。(世界関税機関)

ビジネス上の本質はここです。サプリメントの分類が安定すれば、関税コストのブレだけでなく、許認可や表示規制など周辺規制との整合が取りやすくなり、結果としてサプライチェーン全体の統制コストが下がる余地があります。(世界関税機関)

プラスチック廃棄物と単回使用製品は、コンプライアンスの地雷原になりやすい

WCOは、バーゼル条約に整合する形でプラスチック廃棄物の区分を再構築し、有害な廃プラ、PIC手続対象、その他といった区分の可視化を進める方針を示しています。これは、廃棄物輸出入、リサイクル原料取引、包装材ビジネスにとって、コードの変更が許認可要件や通関手続に波及し得る領域です。(世界関税機関)

「分類決定」と「解説改訂」を、企業がどう使うべきか

1つ目の使い方:自社の品目分類の根拠を、説明可能にする

WCOの分類決定文書は、個別商品についてどのHSコードが妥当とされたか、場合によりどの一般解釈規則が使われたかを示します。たとえば、第76回会合の分類決定リストでは、食品、プラスチックフィルム、通信機器部品、電気用接続品など多分野の具体例が並びます。(世界関税機関)

これを自社に当てはめる際は、同一商品かどうかよりも、争点が似ているかを見ます。構造、機能、用途、形状、成分、提示形態などの判断軸が似ていれば、税関説明資料としての説得力が増します。(世界関税機関)

2つ目の使い方:各国実装の差を前提に、リスク管理をする

WCOは、HS委員会決定について、各国が適用できない場合に通知する仕組みを整え、通知一覧を更新する運用も示しています。2001年6月30日の勧告は、適用できない場合の通知や理由提示などを求め、透明性を高める狙いがあるとされています。(世界関税機関)

実際にWCOは、特定のHS委員会決定を適用できない国・地域があることを一覧で公表しており、2025年12月5日付の一覧も公開されています。企業側は「WCO資料で整理できたから終わり」ではなく、自社の主要仕向地で同様に運用されるかを確認する設計が不可欠です。(世界関税機関)

3つ目の使い方:HS2028移行の「先行指標」として読む

HS2028そのものは2028年に発効しますが、移行準備は既に始まっています。WCOは、発効までの期間に、HS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)作成、HS解説などツールの更新、加盟国支援を行う方針を示しています。(世界関税機関)

分類決定や解説改訂は、現行版の解釈統一に資するだけでなく、どの分野に分類の摩擦や抜けがあるかを示すシグナルにもなります。HS改正は多くの場合、こうした摩擦を制度側で解消する方向に動きます。ここを読むのが、ビジネスマンの「深掘り」です。(世界関税機関)

企業が今から着手すべきHS2028対応ロードマップ

2026年:棚卸しと、ガバナンスの再設計

  1. 重点SKUを絞る
    売上上位、関税率が高い、規制が絡む、過去に税関照会や修正申告があった、これらに該当するSKUを優先対象にします。
  2. 品目分類の根拠管理を標準化する
    品番ごとに、製品仕様書、用途、構造、成分、写真、カタログ、設計図などの証拠をそろえ、分類根拠の説明資料をテンプレート化します。分類決定や解説改訂は、根拠の「外部参照」として組み込みます。(世界関税機関)
  3. 国別差分を可視化する
    主要仕向地について、同一品番でもコードが異なる運用があり得る前提を置き、どこに差分があるかを一覧化します。WCO自身が「適用可否の通知制度」を設けていることは、差分が現実に起きることを示しています。(世界関税機関)

2027年:マッピングと、外部確度の獲得

  1. 相関表と国内実装案に合わせてマッピングを更新する
    WCOは相関表整備を進める方針を示しています。相関表が出た段階で、旧コードから新コードへ「機械的に置換できない品目」を抽出し、分類判断が必要な品目を前倒しで潰します。(世界関税機関)
  2. 事前教示(Advance Ruling)で、拘束力のある確度を取りに行く
    WCOは、事前教示制度が、輸出入前に分類等の判断を得て予見可能性を高める目的である、と説明しています。日本税関も、輸入前の照会で関税率適用の確実性が高まり、取引の予見可能性が上がる旨を案内しています。重要品目ほど、制度を使って確度を確保するのが合理的です。(世界関税機関)

2028年:切替えと、監査対応

  1. システム切替えと取引先連携
    ERP、PIM、通関システム、原産地管理、輸出管理、受発注システムなど、HSコードを持つ箇所は多岐にわたります。切替え日は通関実務に直結するため、取引先や通関業者との連携計画を前提に進めます。(世界関税機関)
  2. 税関監査と統制設計
    切替え直後は誤分類が増えやすい局面です。分類根拠の説明可能性、事前教示の取得状況、国別差分管理の整備が、監査対応力になります。(世界関税機関)

見落としがちな論点:医薬品成分(INN)と分類の実務

医薬品・原薬領域では、INN(国際一般名)に関する分類参照情報が実務で重要になります。WCOは、HS委員会で決定されたINNの分類を整理した参照用の表(Excel)を提供していますが、同時に「法的・公式な地位はない」こと、改正により過去の決定が影響を受け得ることも明示しています。扱う商品領域によっては、便利な参照である一方、依存し過ぎない運用設計が必要です。(世界関税機関)

まとめ:HS2028は「通関の話」ではなく「経営の話」になっている

HS2028は、単に分類表が新しくなるイベントではありません。公衆衛生、サプリメント、プラスチック廃棄物など、政策と規制の要請が品目分類の構造に入り込む度合いが強まっています。(世界関税機関)

一方で、日々の実務を動かすのは、分類決定と解説改訂という「運用のエンジン」です。ここを読み解き、社内の分類ガバナンスとデータ基盤を先に整えた企業ほど、2028年の切替えをコストではなく競争力に変えられます。(世界関税機関)

参考資料

  1. WCOニュースリリース:HS 2028 Amendments(2026年1月21日)(世界関税機関)
  2. WCO解説:Amendments effective from 1 January 2028(HS2028発効・レビューサイクル等)(世界関税機関)
  3. WCOニュースリリース:ワクチン等の分類更新(2026年1月21日)(世界関税機関)
  4. WHOニュース:ワクチン等の新コード導入(2026年2月2日)(世界保健機関)
  5. WCOニュースリリース:サプリメント分類の改正背景(2026年1月23日)(世界関税機関)
  6. WCOページ:Latest Classification Decisions(第76回会合の関連資料ダウンロード)(世界関税機関)
  7. WCO資料:Classification Decisions – HS Committee 76th Session(分類決定一覧)(世界関税機関)
  8. WCO資料:Amendments to the HS Explanatory Notes – HS Committee 76th Session(HS解説改訂)(世界関税機関)
  9. WCO資料:Amendments to the Compendium of Classification Opinions – HS Committee 76th Session(分類意見集の改訂)(世界関税機関)
  10. WCOページ:Application of HS Committee decisions(適用できない場合の通知制度)(世界関税機関)
  11. WCO資料:List of HS Committee decisions which cannot be applied(2025年12月5日版)(世界関税機関)
  12. WCOページ:INN Table(参照用、法的地位なしの明示)(世界関税機関)
  13. WCOページ:Advance rulings for Classification(事前教示の目的)(世界関税機関)
  14. 日本税関:Advance ruling on tariff classification(事前照会の説明)(税関総合情報)

免責事項

本記事は、公開情報に基づき一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引、品目、国・地域に対する法的助言、税務助言、通関判断を提供するものではありません。品目分類は個別商品の仕様・用途・提示形態、各国の法令・運用、行政解釈等により結論が変わり得ます。実務適用にあたっては、最新の一次資料および関係当局の公表情報を確認し、必要に応じて通関専門家や当局への事前照会等を行ってください。

HS2022 第53類:その他の植物性紡織用繊維及びその織物並びに紙糸及びその織物★(Other vegetable textile fibres; paper yarn and woven fabrics of paper yarn)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 亜麻(フラックス)繊維(生・レッティング済・破砕/スカッチ/ハックル等の「精紡前」まで)と、そのトウ・くず(5301)
    • 大麻(True hemp / Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)と、そのトウ・くず(5302)
    • ジュート等の靭皮繊維(亜麻・大麻・ラミー以外)と、そのトウ・くず(5303)
    • ココやし(コイヤ)、アバカ、ラミー、サイザル等の「その他の植物性紡織用繊維」(精紡前)と、そのトウ/ノイル/くず(5305)
    • 紙のストリップを撚って作る「紙糸」(5308、通常は5308.90側で扱われます)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 綿(コットン)・綿織物:第52類(第53類ではありません)
    • 「ひも・綱・ロープ」として扱うべき太い糸(線密度や構成で判定):第56類 5607(“twine, cordage, ropes and cables”)
    • 紙を単に折り重ねたストリップ(撚っていない):第48類(紙製品側)
    • 紙のストリップを交錯(組物・編組的)させた「組物状」のもの:46.01(第46類)
    • 織物が「裁断・縫製済み=製品(made up)」になっているもの:第63類など(部注の“made up”定義で移動)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形状・段階:**繊維(精紡前)**か、か、織物か(5301〜5305/5306〜5308/5309〜5311)
    2. 糸の太さ・構成:**糸(Ch.53)**か、**ひも・綱(5607)**か(線密度/仕上げ/撚り本数等)
    3. 紙系:**紙糸(撚って糸)**か、単なる紙ストリップ/紙製品か、**紙ストリップの組物(46.01)**か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 大麻(ヘンプ)関連:HS分類(5302/5308など)とは別に、日本の薬物規制・取扱規制の確認が必須で、誤認すると通関差止・行政対応につながり得ます。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言(例:Flax yarn / paper yarn / woven fabrics)と部注(第11部注)でまず決めます。第53類は「素材(植物繊維/紙)」と「形状(繊維・糸・織物)」が軸です。
    • GIR6:号(6桁)では、特に
      • 5301/5302/5303の「生・レッティング」vs「その他」、
      • 5306/5307の「単糸」vs「マルチプル/ケーブル」、
      • 5309の「亜麻85%」閾値、
      • 5310の「漂白してない」
        が実務分岐になります。
    • 混紡・混用が出たら、まず第11部注(混合繊維の取扱い=重量優先など)を当ててから該当章・項を決めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 植物名(可能なら学名)と繊維の種類(亜麻/ジュート/ラミー/コイヤ/サイザル等)
    • 加工状態(生、レッティング、破砕・スカッチ・ハックル、精紡済み/未)
    • 糸なら:線密度(decitex)、仕上げ(polished/glazedの有無)、撚り本数(ply)・編組の有無(braidedかどうか)
    • 織物なら:繊維混率(重量%)、漂白/染色/プリントの状態

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「繊維素材」か「糸」か「織物」か「出来上がり製品(袋など)」か?
    • 繊維(精紡前)→ Step2
    • 糸 → Step3
    • 織物 → Step4
    • 裁断・縫製済み(made up)→ 第63類等を優先検討
  • Step2(繊維):亜麻(5301)/大麻(5302)/ジュート等靭皮(5303)/その他植物繊維(5305)へ
    • サイザル等は5305側で扱うのが現行(HS2022に5304は欠番)。
  • Step3(糸):亜麻糸(5306)/ジュート糸(5307)/その他植物繊維の糸+紙糸(5308)
    • ただし、線密度等の条件で“twine/rope”に当たると56.07へ移動します(例:亜麻/大麻の太糸、3本撚り以上のコイヤ等)。
  • Step4(織物):亜麻織物(5309)/ジュート等の織物(5310)/その他植物繊維・紙糸の織物(5311)
    • 紙ストリップを交錯させた「組物状(plaiting)」は46.01へ(5311ではない)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第53類(紙糸) vs 第48類(折り重ねただけの紙ストリップ)
    • 第53類(糸) vs 第56類(ひも・綱・ロープ:線密度/構成で判定)
    • 第53類(織物) vs 第63類(出来上がり品:made up)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5301亜麻(精紡前)+トウ/くず亜麻の生繊維、レッティング済亜麻、亜麻トウ「精紡前」まで。糸になれば5306。
5302大麻(True hemp, Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)+トウ/くずヘンプ繊維(生/レッティング)規制(大麻関連)はHSと別軸で必確認。
5303ジュート等の靭皮繊維(亜麻/大麻/ラミー除く)ジュート、ケナフ等の繊維(精紡前)「麻」名称が紛らわしい(ケナフ等は5303側の例が多い)。
5304(欠番)HS2022では使用しない([53.04])(該当なし:旧版でサイザル等に使われた時期あり)古い資料で5304が出ることがありますが、HS2022では欠番。履歴は後述(§8)。
5305コイヤ/アバカ/ラミー等+その他植物繊維(精紡前)コイヤ繊維、アバカ、ラミー、サイザル、アロエ繊維など第14類に行く未加工葉(アルファ等)は除外(加工度が鍵)。
5306亜麻糸リネン糸(単糸/双糸/ケーブル)太さ等で56.07に飛ぶ場合あり(部注)。
5307ジュート等(5303)の糸ジュート糸、ケナフ糸同上(56.07判定に注意)。
5308その他植物繊維の糸/紙糸コイヤヤーン、ヘンプヤーン、紙糸紙糸は「紙ストリップを撚ったもの」。単に折っただけは48類。
5309亜麻織物リネン生地(衣料・寝具・テーブルリネン等)亜麻重量比85%が号分岐。漂白/染色区分あり。
5310ジュート等(5303)の織物麻袋用ジュート生地、基布漂白してない/その他。出来上がり袋は63類検討。
5311その他植物繊維の織物/紙糸織物ラミー織物、紙糸織物、包装用生地紙ストリップの組物(46.01)は除外。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 原料状態:生/レッティング(5301.10、5302.10、5303.10) vs その他加工済(5301.21/29、5302.90、5303.90)
    • トウ・くず:5301.30 など(用途が充填/製紙でも含む)
    • 糸の形態:単糸 vs マルチプル/ケーブル(5306.10/20、5307.10/20)
    • 織物の組成閾値:亜麻織物は「亜麻85%以上」かどうか(5309)
    • 漂白区分:5309や5310の「unbleached/bleached/other」は第11部の定義で判断(“unbleached/bleached woven fabric”等)
    • 糸 vs 綱(56.07):線密度・仕上げ・撚り本数等で“twine/rope”扱いになると章が変わる
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5301.10(生/レッティング亜麻) vs 5301.21/29(破砕・スカッチ等) vs 5301.30(トウ/くず)
      • どこで分かれるか:加工工程(retted / broken / scutched / hackled)と、トウ/くずかどうか
      • 判断に必要な情報:工程フロー、写真(繊維束/トウ)、品名に「tow」「waste」表記の有無
      • 典型的な誤り:「トウ」を単に“未加工繊維”として5301.10側に寄せてしまう
    2. 5308(紙糸) vs 第48類(紙ストリップ)
      • どこで分かれるか:紙を“撚って糸にしているか”。単に折り重ねただけは紙製品扱い
      • 判断に必要な情報:製造方法(twist/rollingの有無)、サンプル写真、用途(織物用糸か)
      • 典型的な誤り:紙バンド(折り畳み)を「紙糸」と呼んで5308に入れる
    3. 5308(糸) vs 5607(ひも・綱)
      • どこで分かれるか:第11部注で“twine/rope”に該当する線密度等か(例:亜麻/大麻の閾値、3本撚り以上のコイヤ等)
      • 判断に必要な情報:線密度(decitex)、polished/glazedの有無、ply数、金属補強の有無
      • 典型的な誤り:太いヘンプ糸を5308のまま申告(実は5607)
    4. 5309(亜麻85%以上) vs 5309(85%未満)
      • どこで分かれるか:重量比85%
      • 判断に必要な情報:混率表(重量%)、試験成績書、仕様書(gsm/組成)
      • 典型的な誤り:「見た目リネン」で85%超と決め打ち
    5. 5311(紙糸織物) vs 46.01(紙ストリップの交錯品)
      • どこで分かれるか:素材が“紙糸(yarn)”として織られた織物か、紙ストリップを交錯させた組物か
      • 判断に必要な情報:原糸が「紙糸」か(撚り有無)、組織(織物/組物)、製法資料
      • 典型的な誤り:紙ストリップの組物マットを5311で申告

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 混用繊維(2種以上):第11部注2により、基本は「重量が最も多い繊維」で分類。優劣がつかない場合は、該当見出しのうち番号が後ろのもの。
    • 糸が“ひも・綱”になる基準(部注3):亜麻/大麻/コイヤ/その他植物繊維は、線密度・仕上げ・ply数等で“twine/rope”扱いになり、5607へ。例:
      • 亜麻または大麻:polished/glazedで1,429 decitex以上、または未仕上げで20,000 decitex超
      • コイヤ:3本撚り以上
      • その他植物繊維:20,000 decitex超
      • 金属糸で補強したもの 等
    • made up(部注7・8):裁断・縫製済み等は、Ch.50〜55(=繊維・糸・織物)から外れ、Ch.56〜63側で扱うのが原則。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ヘンプ糸でも、線密度が大きく“綱”判定になると、5308ではなく5607(税率・規制・原産地規則の前提が変わる)
    • 例:ジュート生地(5310)を裁断して縫製した「袋」なら、織物ではなく出来上がり製品側(第63類)を検討
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 太糸・多本撚り → 5607(twine/rope)
    • 裁断・縫製済み → 56〜63(made up)
    • 紙ストリップ(撚りなし/折り重ね) → 第48類

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第53類は、類注(Chapter Notes)そのものは置かれておらず、実務上は見出し文言と第11部注で分岐する作りです(条文構造上)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「unbleached/bleached/printed」等は第11部の定義を使用します(織物区分の根拠)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 紙糸の除外(折り重ね紙=48類、紙糸の組綱=56.07 等)は、第53類の解説上も明示されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第53類は類注自体が薄いので、第11部注(Section Notes)起因の分岐を中心に整理します。

  • 影響ポイント1:混紡・混用(第11部注2)で“素材章”がズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維混率(重量%)、複合素材の内訳(例:亜麻80%+綿20%)
    • 現場で集める証憑:仕様書、混率証明、試験成績書(繊維鑑別)、BOM
    • 誤分類の典型:外観だけで「リネン(5309の85%以上)」と判断し、実際は85%未満だった
  • 影響ポイント2:“糸”が“綱(5607)”に飛ぶ(第11部注3:線密度等)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):decitex(線密度)、polished/glazedの有無、ply数(特にコイヤ)、金属補強の有無
    • 現場で集める証憑:メーカー仕様(線密度/番手換算表)、試験データ、サンプル写真、加工工程
    • 誤分類の典型:「ヘンプヤーン」と呼ばれているため5308で申告したが、実測線密度で5607判定
  • 影響ポイント3:織物が“made up”扱いでCh.53から外れる(第11部注7・8)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):裁断形状(四角形以外)、縫製/ヘム処理、完成品としての使用可能性
    • 現場で集める証憑:製品写真、寸法図、縫製仕様、出荷形態(ロールか完成品か)
    • 誤分類の典型:ジュート布を「袋完成品」なのに5310で申告
  • 影響ポイント4:紙系(紙糸/紙ストリップ/紙の組物)で章が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):撚って糸にしているか、単なる折り重ねか、紙ストリップ交錯品か
    • 現場で集める証憑:製造方法説明、原材料(紙ストリップ幅・撚り工程)、サンプル
    • 誤分類の典型:紙ストリップ交錯品を「紙糸織物」と誤認し5311へ

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:日本語の「麻」表記だけで、5302(大麻)/5303(ジュート等)/5305(ラミー等)を取り違える
    • なぜ起きる:商習慣名(○○hemp、○○flax)が多く、植物学的な区別が曖昧
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは「True hemp(Cannabis sativa L.)」など植物を特定しています。
    • 予防策:
      • 確認資料:学名/原料植物、繊維採取部位(靭皮/葉など)、工程図
      • 社内質問例:「この“hemp”はCannabis sativa L.ですか?Kenaf/Agave系では?」
  2. 間違い:サイザル等を「5304」として扱う(古いコード参照)
    • なぜ起きる:旧版のHSや民間サイト情報が残っている
    • 正しい考え方:HS2022の条文では[53.04]が欠番で、サイザル等は5305の説明例として扱われます。
    • 予防策:HS版(HS2022)を明示した一次資料でコード表を引く/旧コードの履歴は相関表で確認
  3. 間違い:紙ストリップ(折り重ね)を紙糸(5308)に入れる
    • なぜ起きる:「紙糸」「紙紐」の呼称が製法を反映しないことがある
    • 正しい考え方:紙糸は紙ストリップを“撚る/ローリング”して糸化したもの。折り重ねは48類扱い。
    • 予防策:製造工程の有無(twist/rolling)をサプライヤーに確認し、写真/動画/工程図を保存
  4. 間違い:太いヘンプ/亜麻糸を5306/5308のまま申告(実は5607)
    • なぜ起きる:線密度(decitex)での“綱判定”を見落とす
    • 正しい考え方:第11部注3にある線密度・仕上げ・ply数で“twine/rope”扱いに変わります。
    • 予防策:仕様書にdecitex/番手/ply/仕上げ(polished/glazed)を必須項目として入れる
  5. 間違い:紙糸を編んだ綱(braided)を5308に入れる
    • なぜ起きる:「紙糸だから第53類」と決め打ち
    • 正しい考え方:紙糸自体は5308でも、**組んだ綱(braided cordage)**は除外され得ます(56.07等)。
    • 予防策:編組(braided)か単なる撚り合わせかを図面・現物で判定
  6. 間違い:亜麻織物(5309)で「85%閾値」を見ずに号を決める
    • なぜ起きる:混率が外観で分からない/BOMがない
    • 正しい考え方:5309は亜麻含有量85%で号が分かれます。
    • 予防策:混率証明/試験成績書をインボイス・仕様書と紐づけて保管
  7. 間違い:ジュート織物(5310)を「袋(完成品)」と同列に扱う
    • なぜ起きる:ロール生地と縫製済み袋の区別が曖昧
    • 正しい考え方:裁断・縫製済み等は“made up”でCh.53から外れる可能性。
    • 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名・仕様書に明記
  8. 間違い:アルファ/エスパルト等の「未加工葉」を5305に入れる
    • なぜ起きる:「繊維っぽい」見た目で判断
    • 正しい考え方:紡織用途を示す加工(ロール、破砕、コーム等)をした場合のみ5305側に来る趣旨(未加工は第14類側)。
    • 予防策:加工状態の証憑(工程、写真)を入手し、用途(紡績/ブラシ/詰物等)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第53類は「繊維→糸→織物」ステージが明確で、HSの取り違いがそのままPSRの条文適用違いになります。
  • よくある落とし穴:
    • 材料側のHS(例:植物繊維=5305)と、最終製品側(例:織物=5311、袋完成品=Ch.63)の取り違い
    • “糸”と“綱(5607)”の境界(線密度)でPSRの見出しが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 例(代表例として):
    • **CPTPP(TPP11)**の繊維・衣類のPSR(Annex 4-A)は「HS2012分類」で提示されています。
    • RCEPのPSR(Annex 3A)は「HS2012版に基づく」旨が明記されています。
  • 日本税関のPSR検索画面でも、EPAごとに採用HS版(HS2002/2007/2012/2017…)が異なるため、協定が採用するHS版で検索するよう注意喚起されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定本文のHS版と、輸入申告で使う最新HS(HS2022)がズレる場合、**協定側PSRをHS2022へ読み替え(transposed PSR)**して運用することがあります。例えばRCEPについて、日本の外務省は「原産地証明に記載するHSコード等はHS2022へ転置したPSRに基づく」旨を注記しています(適用開始日も明記)。
    • 転置の考え方(一般論)はWCOのガイダンスも参照すると安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ:
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 「糸/綱」境界の根拠データ(decitex、ply、仕上げ)
    • 織物の混率(重量%)と仕上げ状態(漂白/染色等)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定・運用により異なるため、税関・商工会議所等のガイドに沿って、根拠資料(仕様書・試験成績・工程)を保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(第53類のHS6桁レベル)5301〜5311([53.04]欠番含む構造も同様)見出し/号の体系は同一HS付番自体の見直し対応は基本不要(ただし国内コードや協定側HS版には注意)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2022第53類(項・号一覧)と、WCOのHS2017第53類(項・号一覧)を突合し、5301〜5311の見出し・号構造が一致することを確認しました。
  • したがって、**HS2017→HS2022の第53類は「変更なし」**と整理します(HS6桁ベース)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第53類はHS2017→HS2022では安定していますが、**古い版(HS2002→HS2007)で大きな整理(5304の消滅)**があります。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(または行き先)実務メモ
HS2002→HS20075304(サイザル等)を含む複数の細分が整理され、5305.00へ統合(低取引量を理由とする削除・統合の趣旨が相関資料で説明)(例)HS2002の5304.10/5304.90 等 → HS2007の5305.00 に統合旧資料で「5304」を見た場合は、HS版を確認して読み替えが必要
HS2007→HS2012大きな再編なし(5305.00のまま)HS2012でも[53.04]は欠番構造
HS2012→HS2017大きな再編なし
HS2017→HS2022大きな再編なし

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):紙糸と紙ストリップの取り違い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):紙を折っただけのストリップを「紙糸」として5308申告(実際は48類側)
    • 起きやすい状況:品名が“paper yarn”“paper cord”で統一されていない
    • 典型的な影響:分類更正、必要書類追加、検査・遅延
    • 予防策:製法(撚り/折り)を仕様書に明記し、写真を添付
  • 事例名:太いヘンプ糸を“糸(5308)”で申告
    • 誤りの内容:第11部注3の“twine/rope”条件に該当するのに5607へ移していない
    • 起きやすい状況:線密度データが無い/番手換算の誤り
    • 典型的な影響:追加納税、原産地規則の再計算、分類照会対応
    • 予防策:decitex/ply/仕上げ情報を仕入先から取得し、申告資料に添付
  • 事例名:紙ストリップ交錯品(46.01)を紙糸織物(5311)で申告
    • 誤りの内容:53.11の除外(紙ストリップの交錯品は46.01)を見落とし
    • 起きやすい状況:マット/帽体/バッグ材料など「織物っぽい」製品
    • 典型的な影響:分類更正、取引先の関税コスト見直し
    • 予防策:原糸が紙糸(撚りあり)か、紙ストリップの組物かを製法で判定
  • 事例名:ジュート織物ロールと袋完成品の混同
    • 誤りの内容:縫製済み袋を5310(織物)として申告(made upでCh.63側の可能性)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“jute bag cloth”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、納期遅延
    • 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名欄に必ず入れる

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫は、原則「病害虫が付着する可能性のある植物は検査対象」という考え方で運用され、高度加工品等は対象外となる整理があります(ただし個別判断)。
    • 例えば、中古の植物由来包装材などは別途「検疫指定物品」として扱われ得るため、ジュート袋などの用途・中古/新品・汚れ(土壌付着)には注意が必要です。
    • 確認先:植物防疫所(MAFF)/輸入港での検査手続(必要に応じて輸出国の植物検疫証明書)
    • 実務での準備物(一般論):成分/原料植物、加工工程、用途、梱包状態、汚れ・土壌付着の有無、必要なら輸出国側証明
  • その他の許認可・届出(大麻関連:該当する場合)
    • 第53類には「True hemp(Cannabis sativa L.)」の繊維・糸が含まれますが、HS分類と国内規制(薬物規制・栽培規制)は別物です。
    • 2024年12月12日に、いわゆる大麻取締法等の改正法が施行され、法体系・定義(例:大麻草=Cannabis sativa L.、大麻の定義等)が整理されています。
    • “種子や成熟した茎”およびその製品の扱い(除外規定等)も条文・通知で細かく整理されているため、ヘンプ繊維製品の輸入は、成分・部位・形状・含有成分等を含めて所管官庁の最新情報で確認してください。
    • 確認先:厚生労働省(医薬局等の通知・Q&A)、税関の他法令確認窓口(必要に応じて専門家・事前相談)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第53類の一般的な繊維・織物は該当しにくい一方、用途・特殊加工(軍用資材等)で別途規制対象となり得るため、用途と仕様を確認してください(一般論)。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原料植物(可能なら学名)/繊維種(亜麻・ジュート・ラミー・コイヤ・紙等)
    • 加工状態(精紡前/糸/織物/完成品)、工程図、写真
    • 糸の場合:decitex、ply、polished/glazed、金属補強の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • “糸→綱(5607)”の判定(第11部注3)
    • “made up”でCh.53から外れないか(第11部注7・8)
    • 紙系は48類・46.01との境界を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「roll生地」か「縫製済み」かを品名に明記
    • 混率(重量%)・漂白/染色状態の記載
    • 必要に応じてサンプル写真・仕様書添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の採用HS版でPSR確認(税関の注意喚起に従う)
    • トランスポジション(HS2022読み替え)の要否(例:RCEP)
    • BOM、原価、工程、材料HS、証憑保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:加工度・中古/新品・土壌付着等で要否判断(植物防疫所へ)
    • ヘンプ関連:成分・部位・形状等の規制適合性を所管官庁情報で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 53(参照日:2026-02-22)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Section XI Notes(参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説」第53類(参照日:2026-02-22)
    • 税関「品目別原産地規則」検索画面(HS版注意喚起)(参照日:2026-02-22)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • CPTPP(TPP)Annex 4-A(Textiles and Apparel PSR:HS2012表記)(参照日:2026-02-22)
    • RCEP Annex 3A(PSR:HS2012に基づく旨の記載)(参照日:2026-02-22)
    • 外務省:PSRのHS2022転置に関する注記(参照日:2026-02-22)
    • WCO:Preferential ROOのTechnical Updateガイド(参照日:2026-02-22)
  • 規制・検疫(日本)
    • 農林水産省 植物防疫所:輸入植物検疫の考え方(対象外の考え方含む)(参照日:2026-02-22)
    • 税関通達(輸入植物等の通関取扱い・検疫指定物品の考え方等)(参照日:2026-02-22)
    • 厚生労働省:大麻関係法改正の施行通知(参照日:2026-02-22)
    • 警察庁:改正内容の説明資料(施行日・除外規定等)(参照日:2026-02-22)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第52類:綿及び綿織物(Cotton)

本文での用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 実綿・繰綿(カード/コーム前の原綿)(5201)
    • 綿のくず(糸くず・反毛(ガーネット)を含む)(5202)
    • カード綿・コーム綿(5203)
    • 綿の縫糸(5204)
    • 綿糸(縫糸以外)(5205〜5207:小売用か否か、綿比率で分岐)
    • 綿織物(平織・綾織など、デニム含む)(5208〜5212)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • コットンリンター(綿実の短繊維)第14類(例:1404)
    • 脱脂綿・ウォッディング:3005 または 5601 へ(用途・形態で)
    • 不織布・フェルト:第56類(例:5603 不織布)
    • メリヤス(ニット)生地:第60類
    • タオル地(テリー):5802 など(織物でも特掲が優先)
    • 樹脂・ゴムで含浸/被覆/積層したもの:第39類/40類または第59類へ飛ぶ可能性(状態次第)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形態が「繊維」か「糸」か「織物」か(5201/5203/5204〜5207/5208〜5212で大きく分岐)
    2. (織物)綿の重量比率(85%閾値)と、混用繊維が主に人造繊維か(5208/5209 vs 5210/5211/5212)
    3. (糸)縫糸か/小売用にした糸か(5204 vs 5205-5207)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則)適用:HSを誤ると原産性判断が崩れ、追徴・否認のリスク
    • デニム(“商業名デニム”)の思い込み:HS上の「デニム」定義に合わず、5209.42/5211.42を外すことがある

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注):まず「繊維・糸・織物」のどれか、そして**部注(第11部注)で除外・定義を確認します。特に混用繊維(綿+化繊など)では第11部注2(混用の考え方)**が強く効きます。
    • GIR6(6桁の決定):織物は「漂白してない/漂白/浸染/異色糸/なせん」など加工状態、さらに「平織・綾織」「重量g/㎡」等で6桁が分かれます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(綿%、他繊維%)
    • 状態(原綿・カード綿・糸・織物)
    • 加工状態(漂白・染色・プリント等)
    • 規格(糸番手/デシテックス、織物重量g/㎡、織組織)
    • 包装形態(糸が“小売用”か)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:これは「綿」関連か?
    • 綿が主素材でも、コットンリンターは第14類(第11部注で除外)に飛びます。
  • Step2:形態で分岐
    • 繊維:カード/コーム前=5201、カード/コーム後=5203、くず=5202
    • :縫糸=5204、それ以外=5205〜5207(綿比率・小売用で分岐)
    • 織物:5208〜5212(綿比率85%、混用繊維、重量200g/㎡、加工状態で分岐)
  • Step3:6桁で最終分岐
    • 糸:単糸/双糸、コームの有無、太さ(デシテックス)
    • 織物:平織/綾織、重量、加工状態(漂白・染色・プリント等)、デニム定義
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第52類(綿織物) vs 第60類(ニット):編んでいるか、織っているか
    • 第52類 vs 第56類(不織布・わた等):織物構造か、繊維を結合したシートか
    • 第52類 vs 第59類/第39類(樹脂被覆等):被覆の有無・程度で飛ぶ

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5201実綿・繰綿(カード/コーム除く)原綿ベール、繰綿リンターは第14類。カード/コーム後は5203へ。
5202綿のくず(糸くず・反毛含む)紡績くず、糸くず、反毛製造工程で出る“くず”や反毛。
5203カード綿・コーム綿スライバー、コーム綿5201との違いは「カード/コーム工程の有無」。
5204綿の縫糸(小売用含む)ミシン糸、縫製用糸**縫糸の定義(仕上げ・Zより等)**を注で確認。
5205綿糸(縫糸以外)綿85%以上・小売用でない工業用綿糸、織布用糸綿比率≥85%&小売用でない。太さ(デシテックス)等で細分。
5206綿糸(縫糸以外)綿85%未満・小売用でない綿/ポリエステル混紡糸(業務用巻)綿<85%&小売用でない。
5207綿糸(縫糸以外)小売用にしたもの手芸用糸、毛糸玉(綿混)「小売用にしたもの」定義は第11部注4で判定。
5208綿織物(綿85%以上、≤200g/㎡)ブロード/ローン系、薄手綿平織重量200g/㎡が閾値。加工状態(漂白等)で細分。
5209綿織物(綿85%以上、>200g/㎡)厚手ツイル、デニム生地**5209.42「デニム」**は定義あり。
5210綿織物(綿<85%、主に化繊混、≤200g/㎡)綿/ポリ混の先染め平織など第11部注2で“綿織物扱い”になった上で条件充足が必要。
5211綿織物(綿<85%、主に化繊混、>200g/㎡)綿/ポリ混の厚地ツイル等5210の>200g/㎡版。デニム(5211.42)定義あり。
5212その他の綿織物綿混で5210/5211に当てはまらない織物他項に特掲されない混用織物の受け皿。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 綿重量比率:85%閾値(糸:5205/5206、織物:5208/5209/5210/5211)
    • 織物重量:200g/㎡閾値(5208 vs 5209、5210 vs 5211、5212も≤200/>200で分岐)
    • 織組織:平織 vs 3枚/4枚綾(ツイル)(織物の6桁で分岐)
    • 加工状態:漂白してない/漂白/浸染/異なる色糸/なせん(プリント)
      ※これらの用語定義は第11部の号注(糸の状態定義等)も参照すると安全です。
    • (糸)小売用にしたもの:コーン・ボール・かせ等の形態と重量閾値で判断
    • デニム定義:5209.42/5211.42は“商業名”でなく定義で判定
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5204(縫糸) vs 5205〜5207(縫糸以外の糸)
      • どこで分かれるか:縫糸は「縫糸用の仕上げ」「最後のZより」「糸巻重量1kg以下」など注の定義で判定
      • 判断に必要な情報:用途表示だけでなく、撚り方向・仕上加工・糸の構成(双糸等)・包装重量
      • 典型的な誤り:「ミシン糸っぽい」だけで5204に寄せる
    2. 5205/5206(小売用でない糸) vs 5207(小売用)
      • どこで分かれるか:「小売用にした糸」の定義(巻き形態+重量閾値)
      • 判断に必要な情報:糸の形態(コーン/ボール/かせ等)、1個当たり重量(芯含む)
      • 典型的な誤り:EC向け小分けでも重量が基準を超えており“小売用”扱いにならないケース
    3. 5208(≤200g/㎡) vs 5209(>200g/㎡)(綿85%以上の織物)
      • どこで分かれるか:面積重量(g/㎡)
      • 判断に必要な情報:試験成績書(g/㎡)、規格表、サンプル計量
      • 典型的な誤り:ロットによりg/㎡が境界付近で変動しているのに、固定コードで申告
    4. 5209.42 / 5211.42(デニム) vs “その他のツイル”
      • どこで分かれるか:デニムは「異なる色の糸」「3枚/4枚綾」「たて糸は同一色」「よこ糸は未漂白/漂白/灰色浸染/淡色」等の要件
      • 判断に必要な情報:組織図、たて/よこ糸の色・染色条件、現物(表裏)
      • 典型的な誤り:「ジーンズ用=デニム」と決め打ち(黒デニム風、ストレッチ混などで外れることがある)
    5. (日本の国内コードの注意)“ポプリン/ギンガム”の扱い
      • 6桁は同じでも、国内コードで「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。国内例規で定義・規格(糸番手、密度等)が示されています。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第11部注1(c):コットンリンター(第14類)は第11部(=第50〜63類の大枠)から除外
    • 第11部注2:混用繊維(第50〜55類の対象)を、原則「最大重量の繊維」基準で扱う(同率なら番号が後の項へ)
    • 第11部注4:「糸の“小売用にしたもの”」の判定基準(巻き形態・重量閾値)
    • 第11部注5:「縫糸」の定義(仕上加工・Zより等)
    • 第11部注7:「製品にしたもの(made up)」の定義(裁断形状・縁処理等)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)**綿90%/ポリエステル10%の先染め格子柄平織(170g/㎡)**は、混用でも綿が優位なら第52類側に来ます(この“第52類側に来る”判断に第11部注2が効きます)。
    • 例)同じ綿糸でも、小分けのボール巻で重量が閾値以下なら「小売用」で5207に寄る、など。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • コットンリンター(第14類へ)
    • 樹脂/ゴムの含浸・被覆等(第39類/第40類の物品として扱われる場合がある)
    • 製品にしたもの(made up)(反物ではなく第63類等へ)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第52類は、実質的に**「号注(Subheading Note)」として“デニム”定義**が置かれているのが重要点です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • デニム(5209.42 / 5211.42):3枚または4枚綾(破れ斜文含む)、たて糸=同一色、よこ糸=未漂白/漂白/灰色浸染/淡色等、などの要件で判定
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注としての明確な“除外条文”は多くありませんが、実務上は第11部注1・注7等で他章へ飛ぶケースが典型です(例:リンター→第14類、製品にしたもの→第63類等)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:コットンリンターを第52類に入れない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):原料が「原綿」か「リンター」か、繊維長の目安、製造工程(綿実由来の短繊維か)
    • 現場で集める証憑:原料仕様書、工程説明(綿繰り工程の有無)、分析・写真
    • 誤分類の典型:5201(原綿)に入れてしまう
    • 根拠:第11部注でリンター除外、解説でもリンターは14.04と整理
  • 影響ポイント2:混用繊維の“章またぎ”を第11部注2で決める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):混用率(重量比)、他繊維が何か(人造繊維か等)
    • 現場で集める証憑:混用率表示(仕様書/BOM)、試験成績書、糸/織物の組成証明
    • 誤分類の典型:
      • 綿30%/ポリエステル70%なのに「綿製品だから第52類」としてしまう(実務上は第11部注2で“最大重量の繊維”側に寄る)
      • 逆に、綿優位(例:綿60%/ポリ40%)なのに化繊側へ寄せてしまう
    • 根拠:第11部注2(最大重量の繊維基準)+ 52.10/52.11の解説が「注2適用により綿織物に属し…」と明示
  • 影響ポイント3:糸の“小売用”判定で5207に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):巻き形態(コーン/ボール/かせ等)、1個重量(芯含む)、糸のデシテックス帯
    • 現場で集める証憑:包装仕様、重量(実測)、商品カタログ
    • 誤分類の典型:工業用巻(重い)なのに小売用5207にしてしまう/逆
    • 根拠:第11部注4
  • 影響ポイント4:“デニム”は定義で判定(商業名は参考)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):組織(3/4枚綾、warp-faced)、たて/よこの色条件
    • 現場で集める証憑:織物規格書、組織図、現物確認(表裏)
    • 誤分類の典型:「デニム風」をすべて5209.42/5211.42にする
    • 根拠:第52類号注(デニム定義)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:コットンリンターを5201(原綿)にしてしまう
    • なぜ起きる:取引書類の品名が「cotton」としか書かれていない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):リンターは第11部から除外され第14類扱い。解説でもリンターは14.04と整理
    • 予防策:仕様書に「リンターか否か」「繊維長の目安」「原料工程」を追記する
  2. 間違い:縫糸(5204)と、一般の綿糸(5205〜5207)を混同
    • なぜ起きる:「糸=縫糸」と思い込み、用途表示だけで判断
    • 正しい考え方:縫糸は注で要件(仕上げ、Zより、糸巻重量等)が定義される
    • 予防策:撚り方向、仕上加工、糸構成(双糸等)、糸巻重量を確認する
  3. 間違い:5207(小売用糸)かどうかを“販売チャネル”で決める
    • なぜ起きる:「小売用=店で売るもの」という誤解
    • 正しい考え方:小売用は“巻き形態+重量”等の定義で判定
    • 予防策:包装仕様(巻き形態、個装重量)を通関資料に添付する
  4. 間違い:混用織物を“綿が入っている”だけで第52類にする
    • なぜ起きる:混用率(重量)を確認していない
    • 正しい考え方:第11部注2で最大重量の繊維により所属決定。52.10/52.11も注2を前提に条件整理される
    • 予防策:混用率(重量比)を必ず取得(試験成績書や規格書)
  5. 間違い:織物の200g/㎡境界(5208↔5209、5210↔5211)を軽視
    • なぜ起きる:重量がインボイス・仕様書にない/ロット差を考慮しない
    • 正しい考え方:見出し自体が重量で分岐しているため、実測・証明が重要
    • 予防策:g/㎡の試験成績書、または社内測定記録を保管(境界品は特に)
  6. 間違い:“デニム”の商業名で5209.42/5211.42に決め打ち
    • なぜ起きる:アパレル業界用語とHS定義のズレ
    • 正しい考え方:デニムは号注で織組織・色条件が定義される
    • 予防策:組織図、たて/よこ糸の色条件を確認(“デニム風”は要注意)
  7. 間違い:裁断済み生地(手芸用)を“製品にしたもの”として第63類にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:裁断・縁処理の程度を確認していない
    • 正しい考え方:「製品にしたもの」は第11部注7の要件で判断
    • 予防策:裁断形状、縁処理(熱溶着・縁縫い等)の有無を写真で残す

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤分類すると、適用すべきPSRが変わり、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(糸)のHS最終製品(織物)のHSが混在したまま検討してしまう
    • 繊維分野は「紡績→織布→縫製」など工程要件が出やすく、工程実態の説明資料が不足しがち(協定ごとのガイド確認が必要)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の輸出入申告(国内法上)はHS2022で運用される一方、協定ごとにPSRが参照するHS版が異なる点が重要です。
  • 例(代表的なもの):
    • CPTPP:HS2012参照
    • 日EU・EPA:HS2017参照
    • RCEP:HS2022参照(HS2012から置換されたPSRが採択され、2023/1/1から実施)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定PSRが旧版HS参照の場合、PSR側のHSに合わせて最終品・材料のコードを対比(相関表・税関の案内等を利用)してから判定する

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 生産工程フロー(紡績・織布・染色/プリント等)、加工委託先情報
    • 混用率・g/㎡・糸番手など“分類にも原産性にも効く”仕様項目をセットで保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(本章に関する4桁/6桁体系・デニム号注に実質変更が見当たらない)5201〜5212コード体系・主要文言が同一版ズレ起因の“コード変更”対応は原則不要(ただし協定HS版は別問題)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017 Chapter 52(Cotton)と、HS2022 Chapter 52(Cotton)を突合すると、見出し構成(5201〜5212)および“デニム”号注を含め、内容が同一に見えます。
  • したがって、本資料では 「HS2017→HS2022で第52類の大きな改正はなし」 と整理します。
    ※ただし、実務では“国内コード(8桁/9桁)”や、FTA/EPAが参照するHS版の違いが別途影響します(第6章参照)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第52類は、少なくともHS2007→HS2012→HS2017→HS2022の各版で、主要な見出し体系(5201〜5212)に大きな再編が見当たりません(WCO各版の章条文比較ベース)。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS2012目立った再編なし該当なし6桁の枠組みは概ね維持
HS2012→HS2017目立った再編なし該当なし同上
HS2017→HS2022目立った再編なし該当なし同上

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):リンターを原綿として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第11部注1(c)で除外されるリンターを第52類に入れてしまう
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“cotton”のみ、原料工程説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、説明資料の追加要求
    • 予防策:原料の定義(リンター/原綿)と工程を事前に確認
  • 事例名:混用織物の章決定ミス(綿が少ないのに第52類)
    • 誤りの内容:第11部注2の最大重量ルールを無視
    • 起きやすい状況:混用率の根拠資料がなく、営業資料だけで申告
    • 典型的な影響:税番変更、統計訂正、FTAでの否認
    • 予防策:混用率試験成績書、BOM、材料証明の確保
  • 事例名:“小売用糸”判定誤りで5207と5205/5206を取り違え
    • 誤りの内容:第11部注4の判定(重量・形態)未確認
    • 起きやすい状況:小分け出荷・リパックが複数国で行われ、形態が混在
    • 典型的な影響:通関時の照会、申告差戻し
    • 予防策:包装仕様(重量・形態)を固定化し、梱包仕様書を添付
  • 事例名:“デニム”の定義未確認で5209.42/5211.42を誤用
    • 誤りの内容:第52類号注(デニム定義)を満たさない
    • 起きやすい状況:黒デニム風、ストレッチ混、特殊染色
    • 典型的な影響:税番更正、追加説明要求
    • 予防策:組織図とたて/よこ色条件を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫(輸入):一般論として植物は検疫対象になり得ますが、植物防疫所の案内では、**麻袋・綿・綿布等の繊維製品や粗繊維(原綿含む)で「植物の包装材料として使用されたことのないもの」**は、輸入植物検疫の対象とならない旨が示されています。
    • 注意:同じ「綿」でも、汚染状況や用途(包装材として使われた等)で扱いが変わり得るため、貨物実態と書類を揃えて確認が安全です。
  • その他の許認可・届出(国内流通も含めた実務観点)
    • 繊維製品の表示(家庭用品品質表示法関連):国内販売では繊維製品の品質表示規程に基づく表示が論点になり得ます(混用率など)。
    • 有害物質規制(家庭用品規制法関連):ホルムアルデヒド等の規制・通知があり、対象品目(乳幼児用など)で注意が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 植物防疫所(輸入植物検疫の要否)
    • 消費者庁(繊維製品の品質表示)
    • 厚生労働省(家庭用品の有害物質規制)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 原料・混用率の根拠(試験成績書、仕様書)
    • 染色/プリント工程情報(規制・表示・原産性に波及)
    • 製品用途(乳幼児用など)と販売形態(国内表示義務の有無)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 形態:繊維/糸/織物/裁断品(製品にしたものか)
    • 組成:綿%、他繊維%(重量比)
    • 規格:糸番手(またはデシテックス)、織組織、g/㎡
    • 加工:漂白・染色・先染め・プリント、コーティング有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • リンター除外(第11部注1)確認
    • 混用は第11部注2で章決定
    • “小売用糸”“縫糸”“製品にしたもの”定義を注で再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「cotton fabric」だけでなく、composition / weight / weave / finish を明記
    • g/㎡や混用率の根拠資料を添付(境界品は特に)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012/2017/2022)を確認してPSRを見る
    • 材料HS(糸・繊維)と最終品HS(織物)を分けて管理
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:対象外条件(包装材使用歴等)を確認
    • 国内販売:表示・有害物質(対象品目)確認

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-22

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 52 “Cotton”(見出し・6桁・デニム定義)
    • HS2017 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2012 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2007 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
  • 日本の税関・公的機関ガイド
    • 税関:関税率表解説(第52類:綿及び綿織物、デニム定義・各項解説)
    • 税関:第11部注(混用繊維、縫糸/小売用糸/製品にしたものの定義 等)
    • 税関:国内分類例規(ポプリン/ギンガム定義・規格)
    • 税関:分類事例(ギンガムの国内細分例)
  • FTA/EPA本文・運用ガイダンス(HS版の違い)
    • 経済産業省:原産地証明書におけるHS版の注意(協定ごとのHS版一覧)
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの採択・実施(2023/1/1〜)
    • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR採択(案内)
  • 規制(国内)
    • 植物防疫所:輸入植物検疫の対象外となる植物(綿・綿布等の扱い)
    • 消費者庁:繊維製品品質表示規程
    • 厚生労働省:家庭用品(有害物質を含有する家庭用品の規制関連)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • HS6桁(例:5208.42)でも、国内コードでは「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。
    • 国内例規では、ギンガムやポプリンの定義・規格(糸番手、密度など)が示されています。
  • 具体例(国内分類事例):
    • 綿90%/ポリエステル10%、先染め格子柄平織、170g/㎡が **5208.42(異色糸の平織)**となり、国内細分でギンガム扱いになった例が示されています(国内コードの例示あり)。
  • 実務メモ:
    • 社内のマスタは「HS6桁」と「国内コード」を分けて管理し、統計・関税率・規制・EPAの申告欄で取り違えない運用にするのが安全です。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 事前教示を早くするために揃えるとよい情報(一般論):
    • ①現物写真(表裏、耳、組織が見える拡大)
    • ②組成(重量比)と根拠(試験成績書)
    • ③g/㎡、糸番手/デシテックス、組織図
    • ④加工工程(漂白・染色・プリント・コーティング)
    • ⑤用途・販売形態(糸なら小売用か等)
  • “国内分類例規・分類事例”も併用すると、国内細分(ギンガム等)の整理が速くなります。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。