日本税関が2026年版の輸入統計品目表を英語で公開しました

日本税関が2026年版の輸入統計品目表を英語で公開しました。海外拠点や海外サプライヤーと品目番号や税率の話をするたびに、和文資料の翻訳や用語のすり合わせに時間を取られてきた担当者にとって、地味ですが実務インパクトの大きい更新です。 (税関庁)

何が公開されたのか

税関の英語サイトにある Japan’s Tariff Schedule (Statistical Code for Import) に、January 1, 2026 版が追加されました。英語ページ上で、セクションとチャプター(第1類から第97類まで)を辿って、各章の Tariff rate に進める構成になっています。 (税関庁)

この英語版は、次の用途で特に効きます。

・海外の調達先や本社に、統計品目番号と英語品名をそのまま渡して齟齬を減らす
・輸入コスト試算(関税を含むランディングコスト)の議論を英語で進める
・社内の品目マスター整備を、日英で同じ番号体系の前提で進める

一方で、税関自身が英語ページに「参照用であり、公式用途ではない。確認は日本語の法令刊行物で行うこと」という注意書きを明示しています。英語版は便利ですが、最終判断の拠り所は日本語の根拠資料に置く、という運用が安全です。 (税関庁)

そもそも輸入統計品目表は何を決めるのか

ポイントは、輸入の申告や統計の世界では、6桁のHSだけでなく9桁の統計コードで品目を管理することです。財務省の貿易統計の解説では、日本の輸出入申告において9桁の統計コードが品目分類に使われ、9桁は6桁HSと3桁の国内コードで構成される、と整理されています。さらに輸出用と輸入用で国内3桁が同じとは限らない点も重要です。 (税関庁)

実務上は、次のような連鎖が起きます。

・品目番号が揺れる
→ 申告内容、統計計上、社内マスター、仕入先への指示が連鎖して揺れる

・税率や単位が揺れる
→ 原価、見積、価格転嫁、利益計画に直撃する

このため、年初の版替えタイミングで、統計コードと税率表を確実に更新することが、通関の手戻り防止とコスト管理の基本になります。

英語版公開で実務がどう変わるか

1. 海外とのコミュニケーションコストが下がる

これまで、日本側が和文の品目表を読み解き、英訳し、さらに海外側が自国のHS理解と突き合わせる、という二重翻訳が発生しがちでした。英語版が公式サイトに載ることで、参照元を一本化しやすくなります。 (税関庁)

2. 品目マスターの統制がしやすくなる

9桁統計コードは、単なる分類番号ではなく、申告と統計の共通キーです。英語で番号体系を説明できると、海外拠点を含むマスター管理ルールの統一が進みます。 (税関庁)

3. 単位の誤解が減る

輸入実務では、重量、数量、セット、千本単位など、統計単位が絡んで数量管理が崩れやすい場面があります。税関は英語ページで単位略号(例:KG、MT、NO、DZなど)を一覧にしており、社内教育や海外向け説明にそのまま使えます。 (税関庁)

使うときの注意点

参照用であることを前提に、最終確認は日本語根拠で

英語ページは便利ですが、税関が参照用であることを明示しています。社内の判断メモや監査証跡を残す際は、和文の根拠資料や社内決裁資料とセットで管理するのが無難です。 (税関庁)

迷ったら相談導線を確保する

税関は通関手続に関する照会先として Customs Counselors を案内し、全国税関の連絡先リストを公開しています。社内で判断が割れる品目は、通関業者任せにする前に、相談ルートを持っておくと修正コストが抑えられます。 (税関庁)

参照ページの保管は版と日付を必ず残す

2026年版は January 1, 2026 として公開されています。実務では、見ていた版が違うだけで議論が噛み合わないことが起きます。社内共有は、版の日付をタイトルに入れて保存する運用が効きます。 (税関庁)

2026年対応の社内チェックリスト

  1. 自社の主要輸入品目について、9桁統計コードの最新版をマスターに反映する (税関庁)
  2. 原価計算で使う関税率の参照版を January 1, 2026 に切り替える (税関庁)
  3. 数量単位の略号を、購買、物流、経理で共通言語化する (税関庁)
  4. 海外拠点や仕入先には、英語版の参照先を共有し、社内翻訳のばらつきを減らす (税関庁)
  5. 迷う品目は、相談先と社内決裁ルートを先に決める (税関庁)

まとめ

今回の英語版公開は、派手な制度変更ではありません。しかし、品目番号と税率という実務の中核情報を、英語で同じ参照元に揃えられるようになった点が重要です。海外とのやり取りが多い企業ほど、分類の手戻りや見積のブレが減り、社内統制も効かせやすくなります。 (税関庁)

補足として、財務省の関税制度ページにも、輸入統計品目表(実行関税率表)など関連リンクが整理されています。社内ポータルに貼るリンク集を作るなら、このページを起点にしておくと迷子になりません。 (mof.go.jp)

米国HTS 2026 Basic Edition 公開:年初に必ず押さえる実務ポイント

米国向けビジネスでは、関税率そのもの以上に、どの品目番号で申告するかが収益とリスクを左右します。そんな中で、USITC(米国国際貿易委員会)が管理するHTS(米国の関税表)について、2026 Basic Edition が公開されました。USITCの公式ページでは、2026 HTS Basic Edition が2025年12月31日付で掲載され、HTMLに加えてCSV、XLS、JSONのダウンロード導線も示されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
またUSITCの案内ページでも、2026 HTS Basic Edition が2025年12月31日に公表された旨が掲出されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

この記事では、Basic Editionとは何か、なぜ年初に確認すべきか、そして企業が現場でやるべき具体策を整理します。


1. そもそもHTSとBasic Editionは何か

HTSは、米国輸入時に使う公式の品目分類と税率表です。HSの国際ルールに基づく階層(章から号まで)で構成され、税率や統計分類の枠組みを提供します。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

Basic Editionは年次の基準版です。実務的には、社内の品目マスタや通関指示書、価格見積の前提を最新版へ揃えるための起点になります。

重要なのは、年次版で終わりではない点です。HTSはその後も法令や大統領布告、官報告示などに基づき改訂が起こり、USITCは改訂版(Revision)を公開していきます。改訂の追随が遅れると、社内と通関業者の参照版のズレが発生し、誤申告や追加コストの引き金になります。


2. 法的に重要な部分と統計上の部分を分けて理解する

HTSには、法的に効力がある部分と、統計目的で付される部分が混在します。現場の落とし穴は、税率だけを見て番号の更新や注記条件の変化を見落とすことです。

特に、国際的に共通になりやすいのは6桁までで、8桁以降は米国の国内細分や統計上の要請が絡みます。社内マスタで10桁番号を管理している企業ほど、年初の整備が効きます。


3. 2026 Basic Edition 公開が意味すること

今回のポイントは、2026 Basic Edition がUSITCの公式アーカイブで参照でき、しかも機械処理に向いた形式でも入手可能だという点です。USITCのHTS Archiveでは、2026 Basic Edition(2025年12月31日付)にHTML、CSV、XLS、JSONの導線が表示されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

さらにUSITCのOpen Data案内では、HTSはAPI、CSV、Excel、JSONで提供される旨が明記されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
加えてHTSサイト側には、現在のHTSをCSV、Excel、JSONのいずれかでエクスポートできる機能が案内されています。 (Harmonized Tariff Schedule)

つまり、読むための資料としてだけでなく、社内マスタ更新や差分検知の自動化にそのまま繋げられる状態が整っています。


4. 実務で影響が出る5つのチェックポイント

4-1. 税率カラムの読み分け

一般税率だけでなく、特別税率やプログラム適用の有無が絡む品目は、年初の確認が最優先です。税率が同じでも、注記や条件の位置が変わるだけで実務は動きます。

4-2. 10桁番号や国内細分の更新

税率が変わっていなくても、国内細分や統計上の分類が更新されると、申告番号の整合が崩れます。品目マスタ、インボイス記載、通関指示書、連携データの更新負荷が一気に増えるため、Basic Edition公開直後の棚卸しが効率的です。

4-3. 追加条件の見落とし

年次版に合わせて参照すべき注記や特別規定が動くことがあります。特定の追加適用や例外の入り口が変わると、同じ品目番号でも実効税率が変わることがあります。

4-4. 参照版の統一

社内、海外拠点、通関業者、フォワーダーで参照している版が違うと、原因究明に時間がかかります。年初に版と日付を明示して揃えるだけで、トラブル対応が短縮します。

4-5. データ更新の仕組み化

改訂が年中に発生する前提で、差分を検知してマスタへ反映する運用設計が必要です。HTSが機械可読形式で提供されている点を活かせば、属人的な確認作業を減らせます。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)


5. 企業が今すぐやるべき対応チェックリスト

  1. 重点品目の版合わせ
    売上上位品目と高税率品目だけでも、2026 Basic Editionで番号と注記の整合を確認する
  2. 通関業者との前提共有
    参照しているHTSの版、公開日、データソースURLを共有して突合コストを削減する
  3. 品目マスタの更新手順を確立
    CSVやExcelで更新する担当運用と、JSONやAPIで差分検知する仕組みを切り分ける (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
  4. 次の改訂に備える
    年初に整えた後、改訂追随が遅れないように月次など定期の点検サイクルを置く

6. 情報収集を効率化するコツ

手作業でHTSを読み替えるだけでは、改訂が多い年ほど現場が回りません。USITCはHTSを複数形式で提供しており、次のように目的別に使い分けができます。

・社内マスタ更新向け
CSVやExcelで一括取得し、品目番号や税率カラムを更新する (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

・差分検知やシステム連携向け
JSONやAPIで取得し、改訂の有無を自動判定して更新対象だけを抽出する (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

この二段構えにするだけで、年初の一括更新と年中の追随を両立しやすくなります。


おわりに

2026 HTS Basic Edition の公開は、米国ビジネスの土台を最新版に揃える合図です。税率の見直しだけでなく、番号体系や注記条件、そして改訂追随の運用まで含めて整えることで、通関トラブルとコストを同時に抑えられます。

最後に、本文で触れたUSITCのデータ取得先を、リンク先が分かる形でまとめます。


参考リンク(リンク先明示)

USITC HTS Export(現在のHTSをCSV、Excel、JSONでエクスポート)
https://hts.usitc.gov/export

USITC HTS Archive(年次版や改訂版をHTML、CSV、XLS、JSONで参照、ダウンロード)
https://www.usitc.gov/harmonized_tariff_information/hts/archive/list

USITC Open Data(HTSがAPI、CSV、Excel、JSONで提供される旨の案内)
https://www.usitc.gov/data/index.htm

HTSUS 2026版と相互関税大統領令の監視ポイント

2026年は、米国の関税実務に関わる担当者にとって「年次改訂のHTSUS」と「相互関税(Reciprocal Tariff)の大統領令」が同時に効いてくる年です。前者は品目番号や統計コード、関税率表示の更新を通じて、後者は追加関税の上乗せや例外の変更を通じて、見積り、契約、通関、原産地管理の全領域に波及します。

本稿では、HTSUS 2026版をどう扱うべきか、相互関税の大統領令がどこで実務に影響するかを整理し、ビジネス担当者が週次・月次で監視すべきポイントを実務目線でまとめます。

1. まず押さえるべきHTSUS 2026版の性格

HTSUSは、単なる「関税率表」ではありません。品目分類(4桁、6桁、8桁)に加えて、10桁目として統計用の2桁(Statistical Suffix)が紐づき、通関・統計・規制の運用基盤になっています。USITCの資料でも、Statistical Suffixは見出し番号と組み合わさって10桁のHTS番号となり、CBPの分類裁定(CROSS)とも連携する要素として整理されています。

ここで重要なのは、年次のBasic Editionだけ見て安心しないことです。USITCは年次版に加えて、法律改正、大統領令、連邦官報告示などに応じて改訂版を継続的に公表します。過去のガイドでも、Basic Editionが公表された後、改訂はオンラインで随時反映され、変更履歴(Change Record)は改訂ごとに作成される(累積一覧ではない)点が明記されています。つまり、2026年版のスタート地点を押さえたうえで、継続的な改訂の追跡が不可欠です。

加えて、更新頻度は想像以上に高くなっています。USITCの予算資料では、年次のBasic Edition(1月)に加えて複数回の改訂が公表されており、HTSがCBPの取締りや米国統計の基盤である点も強調されています。

監視の結論
2026年版HTSUSは「年次の版替え」ではなく、「頻繁な改訂を前提にした運用基盤の最新版」です。年初に更新して終わりにすると、途中で追加関税の章99が動いた際に、見積りと実際の納税額がズレるリスクがあります。

2. 相互関税の大統領令は、章99で実務に落ちる

相互関税は、通関現場では「章99の追加番号を付けるかどうか」で具現化します。制度の核心は、IEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠にした追加従価税の上乗せです。

2025年4月2日の大統領令14257は、「大規模かつ持続的な対米貿易赤字」が国家安全保障と経済に対する異常かつ重大な脅威であると認定し、IEEPAに基づき世界の貿易相手国に対して相互関税を課す枠組みを設定しました。基本設計は「すべての国に対してまず10%の追加関税、その後別表(Annex I)に列挙された国は国別税率へ引き上げ」というものです。

その後、2025年7月30日付の大統領令は、HTSUSを別表(Annex II)で改訂し、発効タイミングを「2025年8月7日午前0時01分(米東部時間)」としつつ、一定条件を満たす輸送中貨物には旧税率を適用できる例外(in-transit exception)を設けています。また、別表に記載のない国は10%の追加従価税が適用されることが明記されています。

さらに重要なのが、関税回避のための迂回輸出(トランシップ)とCBPが判断した場合、追加で40%を課す枠組みです。この「40%上乗せ」は対象施設や経路に対する強い抑止措置であり、関税還付や減免の余地が原則認められない点も特徴です。

ここまで来ると、監視対象は「税率」だけではなくなります。いつから変わるのか、輸送中例外に該当するのか、原産地と物流経路の証跡は揃っているのか、という運用面が中心になります。

3. 実務で見るべき一次情報の置き場

相互関税の改訂は、大統領令だけ追っても現場実装が読み切れません。最低限、次の三点セットを監視する前提で社内運用を構築するのが安全です。

(1)USTRの「Presidential Tariff Actions」一覧
相互関税に関係する大統領令と別表への導線がまとまっており、改訂の連鎖を追跡しやすい構成になっています。

(2)Federal Register(連邦官報)の実装告示
相互関税や二国間合意の実施に際し、HTSUS改訂(章99追加など)が官報で告示され、発効日が告示日とズレることがあります。例えばスイス・リヒテンシュタイン案件では、告示自体は2025年12月18日でも、HTSUS改訂の一部が2025年11月14日以降の輸入に遡って適用され得る形になっています。

(3)CBPのCSMS(Cargo Systems Messaging Service)ガイダンス
現場の申告ルールが最も具体的に示されます。2025年7月30日のCSMSでは、特定国(Annex I)対象品がHTSUSの9903.02.02から9903.02.71の範囲で申告される旨、EUは「列1税率が15%未満なら合算で15%、15%以上なら追加ゼロ」という扱いになる旨など、実務に直結する情報が記載されています。

4. 日本企業が特に注意すべき論点

日本向けの扱いは、「税率表の国別税率を探す」だけでは不十分です。二国間合意の実施や例外設計で細かく動くからです。

Federal Registerの「米日合意の関税要素実施」に関する告示では、日本品についても、列1税率が15%以上なら追加関税がゼロ、15%未満なら合算で15%になる、という設計が示されています。さらに、対象範囲や民間航空機協定など、相互関税や他の布告関税が重なる領域での除外調整にも言及があります。

ここから読み取れる監視ポイントは明確です。日本向けの影響は「一律の国別追加税率」ではなく、「列1税率との合算ロジック」や「品目別の除外調整」で動く可能性がある、ということです。

5. 監視ポイントを業務に落とすチェックリスト

以下は、実務担当が週次・月次で確認すべき監視項目です。社内で担当を割り当て、変更が出たら誰が何を更新するかまで決めておくと、トラブルが減ります。

5-1. HTSUS側の監視

10桁コードの変化(Statistical Suffixの変更)
コードが変わると、原価計算、禁制品判定、通関データ連携が崩れます。Statistical Suffixが10桁番号の一部である点は、USITCの仕様として押さえておく必要があります。

Change Recordと章98・章99の確認
影響が出やすいのは「本表」よりも、例外や追加関税が集まる章99です。改訂ごとのChange Recordは累積ではない前提なので、最新版だけでなく改訂履歴も合わせて確認します。

データ取得の自動化
USITCはCSV、Excel、JSONでのエクスポートやREST APIを提供しています。人手での転記は遅延とミスの温床なので、少なくともマスタ更新は半自動化するのが現実的です。

5-2. 相互関税側の監視

発効日の定義と輸送中例外
大統領令は「entered for consumption」などの発効条件と時刻を厳密に定義します。輸送中例外の条件も合わせて確認し、船積み日と入港後の申告時点で適用が変わるリスクを管理します。

章99の申告番号と適用順序
追加関税や貿易救済措置が重なると、申告行で複数の章99番号を記載することになります。CBPは報告順序(301関税、IEEPAフェンタニル関連、IEEPA相互関税、232関税など)を明示しているため、ブローカーへの指示書にこの順序を固定で記載しておくと、申告エラーが減ります。

除外リスト(Annex II)の変動
除外は固定ではなく、更新され得ます。Annex IIは8桁サブヘディングの列挙で構成され、説明文は参考情報であり、正式な適用は別表の正式文言が優先されます。疑義がある場合はCBPへの確認が必要です。社内では「8桁でヒットしたら即影響あり」ではなく、「正式文言と章99実装を確認して確定」という手順を標準化します。

迂回輸出・トランシップのリスク
大統領令は、回避目的のトランシップと判断された場合に追加40%を課す設計を含んでいます。サプライヤー証明、製造工程、原材料原産地、物流経路の証跡を、価格調整や関税還付より優先して整備する必要があります。

官報告示による遡及リスク
官報告示でHTSUS改訂が公表される際、告示日より前の輸入に適用される形があり得ます。輸入案件の締め処理では、通関日と発効日を照合し、必要なら追徴や修正申告の可能性まで視野に入れておくべきです。

6. 監視体制の構築方法

現実的な運用の型として、以下を提案します。

情報源を三つに固定する
USTR一覧、Federal Register、CBP CSMS。まずこれらを「毎週確認する」ルールにします。

変更が出たら、影響判定は10桁コードと章99で行う
8桁の品目分類だけで止めず、10桁の統計コードと章99の追加番号まで落として初めて影響判定を確定します。

ブローカー向け指示書をテンプレ化する
「適用法令」「章99番号」「申告順序」「輸送中例外の判断材料」をセットにして、案件ごとに差し替える形式にします。

7. まとめ

HTSUS 2026版は、年次の版替えというより「頻繁に更新される基盤の最新版」です。相互関税の大統領令は、章99と発効日管理、除外リスト、そして原産地と物流証跡の強化を通じて、実務を直接揺さぶります。

2026年は、関税率の確認だけでなく、どの情報源をいつ確認し、どのタイミングで社内マスタとブローカー指示を更新するか、という運用設計が成否を分けます。

本稿は一般的な情報提供を目的としたものです。個別案件の判断は、通関業者や専門家、関係当局の最新ガイダンスに基づいて行ってください。

世界税関機構(WCO)および各国税関当局による最新の発表・更新情報

(2025年12月31日時点で確認可能な公式情報)

以下は、通関手続、HSコード分類、原産地規則に関連する、世界税関機構(WCO)および各国・地域の税関当局による最近の主な公式発表・更新情報です。


世界税関機構(WCO)による公式アップデート

  1. WCO 原産地規則アフリカ・プログラム(2025年12月)
    世界税関機構は、「原産地規則アフリカ・プログラム」の一環として、EU-WCO 原産地規則アフリカ・プログラム運営委員会に関する一連の最新情報を公表しました。
    これらの内容では、2025年における影響評価や、アフリカ地域における原産地自己証明制度の導入に向けた検討が進められていることが示されています。
    これらの情報は、2025年12月までにWCO公式サイトで公開された原産地規則関連ニュースに基づいています。

WCO ハーモナイズド・システム(HS)に関する動向

  1. HS2028 改正案の暫定採択
    世界税関機構の**HS委員会(Harmonized System Committee)**は、2025年3月から4月に開催された第75回会合において、**HS2028年版に関する第16条勧告(Article 16 Recommendation)**を暫定的に採択しました。
    この勧告は、2026年1月に正式公表され、2028年1月1日から発効する予定です。 現在、HS2022からHS2028への移行に向けて、改正内容の詳細検討や実務上の影響評価などの準備作業が進められています。

各国・地域における通関手続関連の主な動き

  1. インドのHSNコード・ガイドブック(2025年)
    インド政府は、2025年10月にHSN(Harmonized System of Nomenclature)コードの包括的ガイドブックを公表しました。
    このガイドブックは、WCOの品目分類体系に整合した内容となっており、GSTおよび通関実務におけるHS分類の一貫性向上を目的としています。
  2. 中国による輸入関税引下げの発表(2026年発効)
    中国の関税税則委員会は、2026年から約935品目を対象に輸入関税を引き下げる方針を発表しました。
    これは国家レベルの関税政策変更であり、WCOによる決定ではありませんが、通関申告や関税コスト管理に直接影響する重要な動きといえます。
  3. 米国 税関・国境警備局(CBP)による原産地表示ガイダンスの更新(2025年)
    米国の税関・国境警備局(CBP)は、2025年初頭に原産地表示(Country of Origin Marking)に関するガイダンスを更新しました。
    この更新は、WCOの原産地に関する考え方との整合性を意識したもので、複数国で生産工程を経る製品の原産地判定実務に影響を与える内容となっています。

HS分類および原産地規則に関する補足的な背景

  1. HS改正サイクルと原産地規則への影響
    WCOのハーモナイズド・システムは、原則として約5年ごとに改正されます。
    HS番号の変更は、関税率表だけでなく、EPA・FTAにおける品目別原産地規則(PSR)や関税削減スケジュールにも直接影響するため、企業実務においては早期の対応準備が不可欠です。

重要ポイントの整理

・WCOによる原産地規則アフリカ・プログラムは、2025年12月時点まで継続的に更新されている
・HS2028改正は暫定採択段階にあり、2026年正式公表、2028年発効予定
・インド、中国、米国において、HS分類や原産地、関税に関わる実務上重要な動きが確認されている

■HSCFの強み■ その4 「うちのシステム、まだ使えるのか?」―HSコードは、止まらない


「このシステムで符番してきたけど、今も問題ないんだろうか?」
「HSコードに関する改正があったらしいが、うちの分類は大丈夫なのか?」
「分類ルールが更新されているって聞いたけど、いつの情報を信じればいい?」

これ、すべて実際の現場から聞こえてくる不安の声です。

HSコードの世界は、常に動いています。AIの進化、国内外の分類ルールの更新、事前教示や分類事例の積み上げ、そしてHS改訂。環境が動くほど、ツールも動き続けないと「使えない状態」になってしまいます。

HSCFは、この「変化に追いつく運用」をサービスの中心に置いています。


HSCFは、AIエンジンとしてChatGPTを活用しています。現時点では、ChatGPT 5.2 Thinking をメインに、HSコードの検討を行っています。

AIは短期間で賢くなります。でも、使う側が追従できないと効果が出ない。それどころか、「前はこれで良かったのに」という混乱が生まれてしまいます。

HSCFでは、AIの更新に合わせて、HSコード付番のための対話設計や判断ロジックの調整も継続して実施します。ユーザーがモデルの違いを意識しなくても、常に「仕事で使える品質」を狙って改善していきます。

「AIのモデルが上がるたびに、結局どう使うのが正解か分からなくなる。HSCFはいつ使っても同じ感覚で相談できるのが助かる」


正しいHSコード判断には、AIの性能だけでなく、根拠となる情報の更新が欠かせません。

「検索したら出てきた資料が5年前のもので、今も有効かどうかわからない」
「国によって解釈が違うらしいけど、どれが正しいのか判断できない」

こんな悩み、ありませんか?

HSCFでは、専門家の付番手順や判断の観点を磨き続けると同時に、国内外の事前教示、関税率表の解説、分類例規や分類事例など、実務に直結する一次情報の更新も随時反映していきます。

「検索しても資料が古かったり、国によって書き方が違ったりして迷う。HSCFは前提となる情報が更新されるのが安心」


次の大きな節目がHS 2028です。WCO(世界税関機構)では、HS 2028改正が進められており、2028年1月1日に発効する見込みとされています。

HS改訂が入ると、企業側には一気に負荷がかかります。

  • 社内マスタの更新
  • 品目管理の見直し
  • 通関指示の修正
  • 社内教育の再実施

これらすべてが同時に発生し、現場は大混乱に陥りがちです。

「過去のデータとの突合だけで何日もかかった」
「社内への説明資料を作るだけで時間が溶けた」
「結局、改訂前後で何が変わったのか整理しきれなかった」

そんな経験、ありませんか?

HSCFは、この改訂の影響を前提に、ユーザーの操作感をできるだけ変えずに、参照データや変換の仕組みを更新していく方針です。

「HS改訂のたびに、過去データとの突合や社内説明で時間が溶ける。できれば”いつもの流れ”のまま追従したい」


HSCFは現時点ではChatGPTを活用して品質を維持していますが、将来、品質向上や安定運用の観点から別のAI(例:Geminiなど)を併用・切替する可能性もゼロではありません。

その場合でも、ユーザーに分からない形で勝手に変えるのではなく、変更内容と理由を明確にお伝えします。

「なんか急に精度が落ちた気がする」
「前はできたことができなくなった」

こんな不安を感じさせない、それがHSCFの運用ポリシーです。


HSCFが目指しているのは、付番結果だけでなく「いつ使っても、実務で迷いにくい状態」を保ち続けることです。

  • AIの進化も、
  • ルールの改訂も、
  • 情報の更新も、

全部まとめて追従する。

だからこそ、担当者は判断に集中できます。

HSコードの世界が動き続ける限り、HSCFも止まりません。変化を味方につける、進化し続けるHSコード付番環境。それがHSCFです。

EUが2026年版Combined Nomenclature(CN)を公布:企業実務で押さえるべき変更点と対応手順


EUが2026年版Combined Nomenclature(CN)を公布:企業実務で押さえるべき変更点と対応手順

EU(欧州連合)は、EU域内で輸入・輸出の申告や統計に使う品目分類表であるCombined Nomenclature(CN)の2026年版を公布しました。適用開始は2026年1月1日です。

CNは関税率の判定や各種EU政策の適用判断の入口になるため、改訂幅が小さく見えても、マスタ更新漏れがあると通関遅延やコスト増につながります。

1. Combined Nomenclature(CN)とは何か

CNは、EUの共通関税率表とEUの対外貿易統計の両方の要件を満たすための品目分類です。世界共通のHS(Harmonized System)をベースにしつつ、EU独自の細分(追加の区分)を付けて、より具体的に分類できるようにしたものです。

基本的には8桁で運用され、EUの輸入・輸出申告や域内統計(Intrastat)で使用されます。実務的には、CNコードが次のような判断を左右します。

  • どの関税率が適用されるか
  • 統計上どう扱われるか
  • 各種EU政策(通商措置、輸入規制など)の対象かどうか

2. 2026年版CNの公布:決定事項のまとめ

今回の2026年版CNは、欧州委員会の実施規則として以下の通り公表されました。

  • 法令名:Commission Implementing Regulation (EU) 2025/1926
  • 採択日:2025年9月22日
  • 官報掲載:2025年10月31日(EU Official Journal L系列)
  • 適用開始:2026年1月1日

CNは毎年更新され、基本規則である理事会規則(EEC)2658/87の別表(Annex I)が差し替えられる形で最新版が示されます。

3. 2026年版CN:主な変更の方向性

欧州委員会の案内では、CNの近代化の観点から、特定品目のモニタリング(把握)をしやすくするための新しい区分の導入が示されています。特にエネルギー転換や先端製造に関わる品目が例示されており、該当する企業は分類見直しの優先度が高い領域です。

公表情報で例として挙げられている新設区分(コード帯)は次のとおりです。

分類領域主な品目例
電池材料関連リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸鉄リチウムなど
太陽光・炭素材料人造黒鉛、太陽電池用ウェハーなど
風力・水力関連風力発電用タワー、ブレード、水力タービン用ローター・ステーターなど
水素・電力変換水素燃料電池、最大電力点追従機能(MPPT)付きインバータなど
化学品特定の芳香族エーテル、飽和脂肪族モノカルボン酸の誘導体など

4. 企業にとっての実務インパクト

影響が出やすい場面として、主に以下の3点が挙げられます。

  1. 輸出品の該当:EU向け輸出品が、上記のような新設・細分領域に該当する場合。
  2. 取引先との整合:EU側輸入者がCN更新に合わせてマスタ更新を進める中で、コード不一致が起きる場合。
  3. 規制対応:EUの通商措置や環境規制(CBAM等)がCNコードで指定されている場合。

旧コードのまま出荷すると、EU側で通関エラーが発生したり、関税率や統計単位の取り違えによるコスト増を招いたりするトラブルが想定されます。

5. いま取るべき対応チェックリスト

適用開始が2026年1月1日に迫っているため、早急に以下のステップを確認してください。

  • 影響範囲の一次スクリーニング自社品目のうち、電池、風力、太陽光、水素、先端化学品などに該当するものを抽出します。
  • 旧版と新版の差分確認各国当局が提供する対応表を活用し、変更されたコードの洗い出しを行います。スペイン税務当局(Agencia Tributaria)などが詳細な比較ファイルを案内しています。
  • マスタ更新と周辺文書の整備製品税番マスタ、HS/CN変換テーブル、インボイス、原産地関連資料を更新します。
  • 取引先とのすり合わせEU側の輸入者や通関業者と、2026年1月以降に使用するコードを事前に確認し合います。
  • 解釈の裏付け判断に迷う品目はCN Explanatory Notes(解説注)を参照してください。法的拘束力はありませんが、重要な判断材料になります。

まとめ

2026年版CNは、2026年1月1日から一斉に適用されます。特にグリーン・デジタル分野での細分化が進んでおり、該当企業の現場負荷は例年以上に高くなることが予想されます。

年末年始の出荷に向けて、早めの準備と取引先との連携がスムーズな通関の鍵となります。


免責事項:本稿は一般情報の提供を目的としたものです。個別品目の分類は、製品の仕様や用途によって結論が変わるため、最終的な判断は当局の公式判断や専門家の見解を仰いでください。


WCO第76回HS委員会、解説注と分類意見を改正

世界的なHS(Harmonized System)の運用ルールが一段とクリアになりつつあり、2026年の契約・調達プロセスに重大な影響を及ぼす可能性が高まっています。
これは2025年10月に開催されたWCO(世界税関機構)HS委員会第76回会期で、現行のHS2022版に関して解説注の改正、分類意見の追加・削除、分類決定の採択などが行われたためです。(World Customs Organization)

🔍 第76回会期で何が決まったのか

  • HS2022解説注の改正が2件承認 — 解説注(Explanatory Notes)は国際的に解釈・分類ルールの基準となる文書で、これが改正されると分類整合性に影響します。(World Customs Organization)
  • 新たに21件のClassification Opinionsが作成、既存2件が削除 — WCOの意見集(Compendium of Classification Opinions)が更新され、実務上の分類判断が変わる可能性があります。(World Customs Organization)
  • 40件の分類決定(Classification Decisions)を採択 — 国際的に共有される具体的な品目分類判断が追加されました。(World Customs Organization)
  • HS2022〜HS2028相関表の整備開始 — 今後のHSコード大改正(HS2028版)への移行準備が進み、新版との対応関係が整理されます。(CATTS)

📌 なぜこれが重要なのか

WCOのHS解説注や意見集・分類決定は、国際貿易における商品の統一的な分類・申告の基準です。これらが更新されると、EPA/FTA原産地判定、関税率適用、輸出入申告書類・ITシステムの設定などの実務ルールに直接影響します。 Classification OpinionsやClassification Decisionsは、各国税関の分類判断の基準としても使われます。(customs.go.jp)

2026年の契約・調達実務では、更新された解説注・分類ルールに基づいてHSコードの見直しと内部プロセスの整備を行わないと、誤申告やFTA誤適用リスクが増大する可能性があります。
こうした国際ルール改正は、日本国内の関税率表・統計品目表、通関システム、原産地管理などの見直しと歩調を合わせる必要があります。(customs.go.jp)


今回のWCO・HS分類関連改正内容の一覧

対象は世界税関機構(WCO)
HS委員会(Harmonized System Committee)で確定した内容です。

改正内容サマリー

区分件数内容実務的意味
HS2022 解説注(Explanatory Notes)改正2件既存品目の解釈明確化分類根拠の再構築が必要
分類意見(Classification Opinions)新設21件具体的商品の公式分類例同種品のHS再検証が必須
分類意見の削除2件過去の解釈を撤回従来分類の正当性消失
分類決定(Classification Decisions)40件争点品目の最終判断事前教示・訴訟で引用
HS2022→HS2028 相関作業進行中次期改正準備中長期の品目戦略に影響

特に注意すべき改正の性質

  • 条文は変わっていないが解釈が変わる
  • 「これまで問題なかったHS」が突然リスク化
  • FTA原産地規則(CTC)が成立しなくなる可能性

なぜWCOのHS・分類改訂が最重要なのか


1. すべての関税・FTA実務の「上流」に位置する

(WCO)が所管するHSは、
関税率、EPA/FTA原産地規則、貿易統計、制裁・輸出管理の共通基盤です。

HS解釈が変わると、

  • 適用関税率
  • FTA特恵の可否
  • 原産地判定(CTC・PSR)
  • 過去申告の適否(追徴・還付)

まで連鎖的に影響します。


2. HS改訂は「6年ごと」だが、解釈変更は毎年起きる

注目すべきは、HS2022や将来のHS2028だけではありません。

実務に直撃するのは以下です。

  • Explanatory Notes(解説注)の改正
  • Classification Opinions(分類意見)の追加・削除
  • Classification Decisions(分類決定)

これらは毎年のHS委員会で更新され、
条文は変わっていないのに、解釈だけが変わることが起きます。


3. 各国税関・裁判所がWCO判断を引用する

WCOの分類判断は、

  • 各国税関の事前教示
  • 税関事後調査
  • 関税訴訟

事実上の国際基準として使われます。

「日本では通っていたHSが、海外税関で否認される」
というケースの多くは、WCOレベルの解釈変更を見落としていることが原因です。


特に重点的に追うべきWCOの動き(実務優先度順)

最優先

  • HS委員会(HSC)の会期結果
    • 解説注改正
    • 分類意見の新設・削除
    • 分類決定の採択

次点

  • HS2028に向けた改訂議論
    • 新技術(EV、電池、半導体、環境品目)
    • デジタル・複合製品の扱い

中期的関心

  • HS相関表(HS2022→HS2028)
  • 新分類導入時の各国実装タイミング差

ビジネスマン視点での実務対応ポイント

  • HSコードは「固定資産」ではない
  • 原産地管理や契約書のHS前提は定期点検が必須
  • 分類根拠(EN、分類意見、決定)の文書化が重要
  • AIやツール導入時も、WCO改訂への追随体制が鍵

まとめ

国際機関の動向の中で、
WCOのHS・分類関連改訂は、最も早く、最も広く、最も深く実務に影響する分野です。

関税やFTAを扱うビジネスでは、
「WTOよりも、まずWCO」
という視点で継続的に追跡する価値があります。

WCO第8次HS見直し提案募集が始動



2033年の品目分類変更は、経営に効く「先回りテーマ」になる

HSコードの改正は、通関担当だけの話ではありません。unstats.un
関税コスト、原産地規則、輸出入管理、商品マスタ、貿易統計の読み方まで、企業活動の前提を静かに書き換える「基盤データの改訂」です。unstats.un

その次の大きな節目が、WCO第8次見直しサイクル(HS2033版、2033年1月1日発効を想定)です。unstats.un
すでに各国では、WCOに持ち込む改正提案の取りまとめが動き始めています。govinfo

象徴的なのが、米国の公式官報(Federal Register)に掲載された提案募集です。govinfo
米国国際貿易委員会(USITC)は、WCO第8次見直しサイクルに向けて、国際HS(条文そのもの)をどう改めるべきかについて、広く提案を募る告知を公表しました。govinfo
目的は、技術や貿易構造の変化に合わせて、HSを最新の姿に保つことです。govinfo
提案の推奨提出期限は2027年10月1日で、2033年実施の国際HS改正を見据えています。govinfo+1

この動きは、日本企業にとっても決して他人事ではありません。
国際HSの6桁が動けば、日本を含む各国の国内細分や税率、原産地規則、統計品目表、さらに社内マスタや判断ロジックまで、一気に連鎖して動くからです。unstats.un


何が始まったのか
今回の募集は「国際HSの条文」そのものを動かす話

今回、USITCが提案を求めている対象は、国際HSのうち次のような法的テキストです。govinfo

・部注、類注(Section notes, Chapter notes)
・4桁の見出し(headings)
・6桁の号(subheadings)

米国の告知では、これら国際HS条文の具体的な改正案(文言)を提示することが求められており、提案には説明コメントや、可能であれば関連する貿易データの添付が推奨されています。govinfo

一方で、米国内の細分(10桁等)や税率水準といった「各国独自の運用部分」は、今回の募集対象ではないことも明記されています。govinfo

ここが重要なポイントです。
世界共通の土台である国際HSが変われば、日本を含む各国の関税率表や統計品目表、通関システム、EPA/FTAの原産地規則、企業内の商品マスタや判定ロジックに至るまで、広範な修正が必要になります。wcoomd+1


なぜ2033年の話を「いま」扱うべきか
改正は長期戦だが、議題形成の締切は早い

HS改正は、構想から実装まで時間がかかる制度です。

国連統計部門の資料では、HS2033の見直しサイクルは「2025年6月のWCO Council後に始まり、2030年6月のHS2033勧告提示まで続く」というタイムラインが例示されています。unstats.un
つまり、HS2033の内容を決める作業は、2025年半ばから2030年までの約5年間に集中する想定です。unstats.un

WCOは、HS改正が時間を要する理由として、審議と合意形成に加え、実装に必要な制度上の準備期間を挙げています。wcoomd
Councilでの正式採択後は条約上の留保期間があり、その間に相関表の整備、注釈書の改訂、各国の関税率表改正やシステム改修、教育・周知などが必要になるため、実質的に約2年半の実装期間が見込まれています。wcoomd+1

そのため、2033年は遠く見えても、企業が提案や問題意識を外部に届けやすい「議題形成の窓」は意外と短いのが実情です。unstats.un
米国の公募に限っても、推奨提出期限は2027年10月1日と示されており、そのタイミングまでに各国政府がWCOに持ち込む案を固めていくことになります。govinfo+1


日本企業への実務インパクト
5つの領域で効いてくる

  1. 関税コストと採算
    品目分類は関税の基礎です。
    分類が変われば、適用税率の行き先、優遇税率の該当性、社内の原価・見積もりロジックまで影響を受けます。wcoomd
    日本の税関も、品目分類が関税計算や統計、原産性判断などに用いられる基礎情報であることを説明しています。wcoomd
  2. EPA・FTAの原産地規則
    原産地規則は、多くがHSの見出しや号を前提に設計されています。
    HSの改正や国内細分の更新が入ると、品目別規則(PSR)の読み替えや材料判定の前提が揺れ、証明実務やサプライチェーン設計に影響が及びます。unstats.un
  3. 輸出入管理とコンプライアンス
    社内の輸出入規制判定や出荷管理がHS参照で組まれている場合、分類変更は判定表や自動判定システムの改修案件になります。wcoomd
    監査や調査の場面でも、改正前後の分類根拠の説明が求められるケースが増えます。wcoomd
  4. 商品マスタと基幹システム
    HSコードは、インボイス、パッキングリスト、商品マスタ、通関データなどに深く組み込まれています。
    改正後に一括で対応すると、コード変換、マッピング、検証、社内教育が同時多発し、プロジェクト負荷が高まりがちです。wcoomd
  5. 貿易統計と市場分析
    HSの変更に伴い、統計コードも改訂され、時系列比較が難しくなります。unstats.un
    国連やWCOの資料では、各国の相関表や変換情報の公開が遅れると、企業や分析者に不確実性が生じる点が課題として指摘されています。unstats.un

国際HSは誰がどう変えるのか
民間の声が入る入口

WCOは、改正提案の典型的な流れとして、民間が税関や貿易当局など政府機関に要望を出し、政府内の関係省庁で調整された上で、WCOの場に公式提案として持ち込まれるケースが多いと説明しています。unstats.un

つまり、企業ができることは「決まるのを待つ」ことだけではありません。
自社の痛点や将来リスクを、政府や業界団体が扱える「提案の形」に整理しておくことで、国際HSの議論に間接的に参加することができます。govinfo


通りやすい提案の型
ビジネス語に翻訳するとこうなる

USITCの募集では、特に次のような提案が歓迎されると記載されています。govinfo

・貿易量が少ない見出しや号の整理・削除
・重要なのに適切な分類がなく、実務上問題となっている製品のための新設
・運用が難しい、分かりにくい規定の簡素化・明確化
・国際的な分類の統一や、管理の改善につながる提案

これを企業目線に置き換えると、次のような課題の解消に直結します。

・国によって分類が揺れ、通関が遅れる、コストが読みにくい
・新技術や複合製品が古い枠組みに押し込まれ、解釈が割れる
・曖昧な分類のせいで、関税、規制、原産地で二重三重のリスクが出る
・社内マスタの整合が取れず、現場の判断が属人化する


提案書で差が出るポイント
文言・根拠・データの三点セット

USITCの告知では、提案について「具体的なHS条文案」「説明コメント」「関連データ」の三点セットで提出することが推奨されています。govinfo

企業が準備するなら、次の素材が有効です。

・製品の仕様書、用途、構成、図面、写真などの技術情報
・現行の分類で困っている具体例(国ごとの分類差、事前教示・照会履歴、通関遅延や追加課税の事例など)
・想定される貿易量、取引国、サプライチェーン上の重要度
・分類の見直しが、貿易の円滑化や統計精度向上にどう貢献するかの説明
・代替案としての条文案(どの注記、どの見出し、どの号をどう変えるか)


直近の改正規模が示す現実
HS改正は点ではなく面で来る

HS改正は、一部のコードだけが単独で変わるのではなく、関連する周辺分類を含めて「パッケージ」で改正されるのが通常です。tarifftel

WCOは、HS2028に向けた検討の結果、HS委員会(HSC)が299セットの改正パッケージを暫定採択し、HS2028改正勧告の骨格としたことを公表しています。aeb+2
これは、HS2022改正(351セット)と比べればやや少ないものの、依然として広い範囲に影響する大規模改正であることを示しています。aeb+1

この規模感が意味するのは主に二点です。

・特定の品目だけでなく、その周辺の分類も含めた「面」で改正が入りやすい
・内容が確定してから動き始めると、社内対応が同時多発して詰まりやすい


今日からできる社内アクション
90日でやるべき棚卸し

経営層や部門長が音頭を取るなら、まずは次の順番だけでも十分な効果があります。

  1. 重点品目の特定
    売上・利益・規制リスク・主要市場の観点から、重点管理すべき品目を絞り込みます。
    HS改正で「動くと困る/動くと有利になる」品目群をリストアップするのが出発点です。unstats.un
  2. コードの現状マッピング
    HSは6桁が国際共通で、7桁以降は各国が追加できます。unstats.un
    日本では、統計上の細分として7〜9桁、さらに10桁目がNACCS等の運用に使われている構造であり、自社が実務上どの桁まで管理しているかを棚卸しします。unstats.un
  3. 困りごとの言語化
    分類が割れている品目、照会や事前教示が多い品目、国別差が顕著な品目を洗い出し、「どの条文・注記がネックになっているのか」を整理します。unstats.un
  4. 根拠資料の「箱」を作る
    分類根拠、照会・裁決・事前教示の履歴、税率や原産地判定への影響を、一か所に集約して保管します。
    後から提案書を作る際や、HS2028・2033対応プロジェクトを立ち上げる際のベースになります。wcoomd
  5. 外部ルートの整備
    業界団体、通関業者、商社、所管省庁への相談ルートを整理し、「どこからWCO提案ルートにつながるのか」をはっきりさせます。
    WCOも、民間から政府への要望がHS改正の起点になりうることを明示しています。unstats.un

結論
HS2033は「通関の話」ではなく「経営の準備運動」

米国の官報告知は、2033年実施を見据えた国際HS改正が、実務的な提案募集フェーズに入ったことを示すシグナルです。govinfo
同時に、WCOはHS2028勧告を暫定採択し、2033版に向けた戦略的レビュー(HS2033モダナイゼーション)も動き始めています。wcoomd+1

HSの改正は、関税、原産地、規制、システム、統計に一斉に波及します。wcoomd+1
日本の実務でも、品目分類が関税や原産性判断、統計など幅広い用途の基礎となることは、各種公的資料で繰り返し説明されています。wcoomd

だからこそ、「HS2033が決まってから対応する」のではなく、早めに自社の重点品目と痛点を整理し、外部に届けられる形に整えることが重要です。unstats.un
2033年のHS改正を、単なるコスト増のリスクではなく、自社に有利なルール作りとマスタ整備のチャンスに変えるための準備運動として位置づけることが、これからの10年の競争力を左右します。govinfo+1

本稿は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別案件の判断(HS分類や原産地規則の該当性、申告・システム対応など)は、社内の専門部署や関係当局・専門家と相談のうえで行うことをおすすめします。govinfo+1

  1. https://unstats.un.org/unsd/classifications/Meetings/UNCEISC2024/Session2-4-Exploratory-Study-on-the-Possible-Strategic-Review-of-HS.pdf
  2. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-15/html/2025-22764.htm
  3. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-15/pdf/2025-22764.pdf
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  5. https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/
  6. https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php
  7. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced
  8. https://www.federalregister.gov/documents/2025/12/15/2025-22764/wco-eighth-review-cycle-request-for-proposals-to-amend-the-international-harmonized-system-for
  9. https://www.federalregister.gov/public-inspection/2025-22764/world-customs-organization-eighth-review-cycle-request-for-proposals-to-amend-the-international
  10. https://www.govinfo.gov/app/details/FR-2025-12-15/2025-22764
  11. https://www.federalregister.gov/documents/2025/08/15/2025-15511/recommended-modifications-in-the-harmonized-tariff-schedule
  12. https://services.swale.gov.uk/meetings/documents/s30985/Appendix%20I%20Planning%20and%20Transportation%20Policy%20Working%20Group%20Report%2015%2007%202025.pdf
  13. https://www.usitc.gov/commission_notices?month%5Bvalue%5D=&year%5Bvalue%5D=&field_notice_status_value=All&alpha=&search=&order=title_2&sort=asc&facets_query=&page=2
  14. https://unstats.un.org/capacity-development/calendar/online-events/
  15. https://www.usitc.gov/secretary/fed_reg_notices/tata/1205_14_notice08122025sgl.pdf
  16. https://unstats.un.org/unsd/envstats/Newsletter/Issue55.pdf
  17. https://www.federalregister.gov/index/2025/international-trade-commission
  18. https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000372853
  19. https://www.linkedin.com/posts/heitor-martins-%F0%9F%87%B5%F0%9F%87%B9-59b32756_hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-activity-7313842459153727488-2Ljf
  20. https://www.federalregister.gov/fr_index/pdf/2025/05/international-trade-administration-May-2025.pdf

第3節 HSコード付番は「なんとなく番号を付ける作業」ではない

面倒なことを言いますが、知っておかねばならないことです

多くのビジネスマンにとって、HSコードは

「フォワーダー(通関業者)が教えてくれる番号」
「インボイスにとりあえず書いてある数字」

くらいの認識かもしれません。

しかし、税関の専門家(品目分類官・通関専門官など)が行っているHSコード付番は、
**国際条約と法令に基づく「法律解釈の作業」**です。

  • ベースとなるのは、WCO(世界税関機構)のHS条約およびHS品目表 World Customs Organization+1
  • その解釈は「HSの解釈に関する通則(General Rules)」と
    部・類・号の注(Notes)に従うことが、締約国の義務として定められています。Kanzei

つまり、

「似た商品だからこの番号でいいだろう」ではなく、
条文とルールから論理的に導く


1. 税関専門家が使う「公式ルール」と「資料」

まず、専門家が何を根拠に分類しているのかを整理します。

1-1. HS条約とHS品目表(国際共通部分)

税関専門家が最初に立ち返るのは、HS条約(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)と、その附属書であるHS品目表です。Customs Japan+1

HS品目表は、

  • 部(Section):大きなグループ(21部)
  • 類(Chapter):2桁(第1類〜第97類)
  • 項(Heading):4桁
  • 号(Subheading):6桁

から構成され、
すべての国が共通して使うのは6桁までというルールになっています。Customs Japan+2World Customs Organization+2

1-2. 解釈の基本ルール:「HSの解釈に関する通則(General Rules)」

HS品目表には、「この品目表をどう解釈するか」を定めた**6つの通則(General Rules for the Interpretation of the HS, GRI 1〜6)**が付いています。World Customs Organization+2WCO Trade Tools+2

ざっくり言うと:

  1. 通則1
    見出し(Heading)の文言と、関連する部・類の注に従って分類する。
    部や類のタイトルは「参考」であり、法的根拠ではない。
  2. 通則2
    (a)未完成品・未組立品の扱い
    (b)混合物・合成品の扱い
  3. 通則3
    2つ以上の見出しに該当しそうな場合の決定ルール
    (より具体的なもの優先・本質的特性・番号順など)
  4. 通則4
    1〜3で決まらない場合、「最も類似する」見出しに分類
  5. 通則5
    特殊な容器・包装の扱い
  6. 通則6
    号(6桁)のレベルでの分類ルール(通則1〜5を準用)

税関専門家は、必ずこの順番で適用を検討するのが原則です。Wikipedia+1

1-3. 部注・類注・号注(Section Notes, Chapter Notes, Subheading Notes)

各部・類・号には、それぞれ**「注(Notes)」**が付いています。Customs Japan+2Customs Japan+2

例えば:

  • 「この類には〇〇は含まない」
  • 「この号には△△のうち、□□のもののみを含む」
  • 「部品は特定の条件を満たす場合に限り、この章に含める」

など、分類の“地雷ポイント”が細かく規定されており、
実務ではこの注を読み飛ばすことはありません。

1-4. WCO解説(Explanatory Notes)と分類意見(Classification Opinions)

国際的な解釈の統一のため、WCOは以下の資料を公表しています。World Customs Organization+2World Customs Organization+2

  • Explanatory Notes(解説注)
    → HSの公式解釈として位置づけられる詳細解説(全5巻)
  • Classification Opinions(分類意見)
    → 具体的な商品の分類例を示した国際的な「判例集」のようなもの

税関専門家は、国内法令だけでなく、これらの国際的資料も参照しながら解釈の整合性を図ります。Customs Japan+1

1-5. 各国の「実行関税率表」「解説」「分類例規」

日本であれば、HS品目表をベースにした 「実行関税率表」
**「関税率表解説」「分類例規(分類事例集)」**があり、
そこに国内での分類基準・事例がまとめられています。Customs Japan+2Customs Japan+2

税関専門家は、これらを総合的に読み合わせて、
**「通則 → 注 → 解説 → 事例」**の順で精度を上げていきます。


2. 税関専門家の分類プロセス:実務でのステップ

では、専門家は実際にどのような手順でHSコードを決めているのか。
典型的なプロセスを「実務の流れ」として説明します。

ステップ1:貨物の実態把握(Technical Fact Finding)

まずは、貨物の実態を徹底的に把握します。JETRO

ここで集める情報は:

  • 何に使うものか(用途・機能)
  • どのように動くか(原理・構造・電気式かどうか)
  • 材質(プラスチック、金属、繊維、木材、化学品の成分など)
  • 完成品か・未完成品か・部分品(部品)か
  • 単体か、セット品(工具セット、食器セットなど)か
  • サイズ・重量などの物理的性状
  • 技術資料(仕様書、図面、MSDS、安全データシート、カタログ など)

税関専門家は、この段階で

「どう見てもこれは〇〇類だろう」

と感覚で決めるのではなく、

「条文に当てはめるために必要な事実は何か」

という視点で情報を集めます。

ステップ2:類・項の候補を絞り込む(通則1の入り口)

次に、大まかな類・項の候補をピックアップします。

  • HS品目表の目次(部・類のタイトル)を眺めて当たりをつける
  • 実行関税率表や検索システムにキーワードを入れて候補を拾う
  • 類似品の既存分類やWCO・国内の事例を参考にする Customs Japan+2Customs Japan+2

ここではあくまで「候補」です。
この時点では確定させず、複数の可能性を並行して検討します。

ステップ3:通則1+部注・類注で「項(4桁)」を決める

本格的な分類作業は、通則1から始まります。World Customs Organization+2WCO Trade Tools+2

タイトルではなく、「見出しの文言」と「部注・類注」を根拠にする

という原則に従い、候補の項ごとに:

  1. 見出し文言と貨物の実態が一致しているか
  2. 関連する部注・類注で「除外」されていないか
  3. 部分品の扱い(機械類の部品など)が特別に規定されていないか

を、条文レベルで検討します。

この段階で、

  • 明らかに文言に合致しない項は候補から外し、
  • まだ複数の項が残る場合は、通則2・3の出番です。

ステップ4:未完成品・セット・混合物などの特殊ケース(通則2・3)

貨物が以下のような場合、通則2・3の適用を慎重に検討します。Kanzei+3Wikipedia+3WCO Trade Tools+3

■ 通則2(a):未完成品・未組立品

例えば、

  • 部品がばらばらの状態で一括輸入される「ノックダウン輸入」
  • 組立前だが、本質的機能がほぼ完成している機械

などは、完成品として分類される場合があります。

専門家は、

  • それで本質的機能を果たせるか
  • 容易に完成状態にできるか

といった条件を条文・解説で確認し、
「完成品扱い」か「部品扱い」かを判断します。

■ 通則2(b):混合物・合成品

化学品や混合物・複合材料の製品の場合、

  • 複数の物質・材料が混ざっている
  • どの材質がメインか判断が難しい

といったケースがあります。この場合、
通則2(b)と通則3のルールを組み合わせて、適切な項を選びます。

■ 通則3:複数の項に属しそうな場合

例えば、

  • 2つ以上の項で「それなりに当てはまりそう」な複合品
  • 電子機器+機械+外装などがセットになった商品
  • ギフトセット、工具セット、食器セット など

この場合、通則3は概ね次の順で判断します。

  1. 3(a):より具体的に該当する項を優先
  2. 3(b):本質的特性(essential character)を与える部分で判断
  3. 3(c):それでも決まらないときは、番号の一番後ろの項

税関専門家は、「何となくそれっぽい方」ではなく、

  • 商品の構成
  • 価格割合
  • 機能・役割の中心

などの客観的要素を検討して、
どの構成要素が本質的特性を与えているかを論理的に説明できるようにします。

ステップ5:通則4・5で「例外的な」ケースに備える

稀に、通則1〜3のどれにも明確には当てはまらないケースがあります。

  • 新技術の商品で、既存のどの見出しにもぴったり合わない
  • 非常に特殊な用途で、従来例がない

この場合は、通則4により「最も類似する」商品に分類します。
また、通則5では、特定の容器や包装(例:専用ケース等)の扱いを定めています。WCO Trade Tools+2customs.gov.bz+2

ステップ6:通則6で「号(6桁)」を決める

項(4桁)が決まったら、
その項の中でどの号(6桁)に属するかを、通則6で判断します。World Customs Organization+2WCO Trade Tools+2

  • 同じレベルの号同士だけを比較する
  • 見出しと号注、必要に応じて部注・類注も参照
  • 再び通則1〜5を準用する(mutatis mutandis)

ここでも、条文・注と貨物の事実関係を照合するという基本姿勢は変わりません。


3. グレーな案件への対応:事例・事前教示・国際調整

実務では、条文だけでは判断が難しい「グレーゾーン」の案件も多く存在します。

3-1. 国内の解説・分類事例の活用

日本では、

  • 関税率表解説
  • 分類例規(分類基準・分類事例の通達)

などに、具体的な貨物の分類事例が整理されています。Customs Japan+1

税関専門家は、これらを**国内の「先例」**として参照し、
同様の事案では同じ結論になるように配慮します。

3-2. WCOのClassification Opinions・Explanatory Notes

国際的に問題となった案件は、WCOのHS委員会で審議され、

  • Explanatory Notesの改訂
  • Classification Opinionsの採択

などが行われます。World Customs Organization+2World Customs Organization+2

各国税関はこれを尊重し、自国の分類運用に反映させることで、
国際的な整合性を確保しています。

3-3. 事前教示制度・裁判例

事業者が自らの貨物について事前に税関に照会する
**「事前教示制度」**の回答も、実務上重要な参考資料です。JETRO+1

また、分類をめぐる争いが訴訟になった場合には、
裁判所の判断(判例)も、その後の運用に影響します。


4. 税関専門家が重視する「記録」と「一貫性」

正しい付番は、**根拠が説明できて初めて「正しい」**と言えます。

4-1. 分類理由書・記録の作成

税関専門家は、重要な案件について

  • 適用した通則(GRI)
  • 参照した部注・類注・号注
  • 参照した解説・事例
  • 事実認定(貨物の構造、材質、用途など)

を整理した分類理由書や記録を残します。

これにより、

  • 後で同じ貨物を扱う際に同じ結論にできる
  • 他国税関・他部門からの問い合わせに説明できる
  • 監査・紛争時に一貫した立場を示せる

というメリットがあります。

4-2. HS改正へのフォロー

HSはおおむね5年ごとに改正されており、
直近では2022年版が発効しています。World Customs Organization+1

税関専門家や企業の分類担当者は、

  • 自社の主要品目が改正の影響を受けていないか
  • 見出しや注の文言変更により分類根拠が変わっていないか

を定期的に見直し、分類のアップデートを行います。


5. ビジネスマンが押さえるべきポイントと、専門家との付き合い方

ここまで読むと、

「そんなレベルで考えているなら、自分でHSコードを決めるのは無理では?」

と感じるかもしれません。

結論としては、

  • 税関専門家と同じレベルで付番する必要はない
  • しかし、どういう考え方・ルールで決まるのかを知っておくことは非常に重要

です。

5-1. ビジネスマンとして最低限押さえたいこと

  1. HSコードは国際条約と通則に基づく法的分類であること
  2. 「似た商品」「メーカーが言っているコード」だけでは不十分であること
  3. 商品の実態(用途・機能・材質・構造)を正確に伝えることが、自社を守ること
  4. EPA・FTA、規制品目、原産地規則など、多くの制度がHSコードを基準に動いていること Customs Japan+2World Customs Organization+2

5-2. 専門家に相談するときに喜ばれる情報

税関専門家や通関業者に相談するときは、次の情報をセットで出すと精度が上がります。

  • 製品カタログ・仕様書(できれば英語版含む)
  • 材質構成(%表示があるとなお良い)
  • 使用用途(どのような機械に組み込むのか等)
  • 過去に他国で適用されたHSコード(ある場合)
  • 参考にしたい事前教示や分類例規があればその番号

こうした情報が揃っていれば、

「どの通則をどう適用するか」

を専門家が説明しやすくなり、
結果としてビジネス側も納得感の高い結論を得られます。

5-3. 「丸投げ」から「協働」へ

HSコードを

  • 「フォワーダーに丸投げする数字」

から、

  • 「社内で説明責任を持つべき法的情報であり、
    専門家と協働して決めるべきもの」

と位置づけ直すことが、
グローバルビジネスにおけるリスク管理・コスト管理の第一歩です。


まとめ

税関の専門家が行う正しいHSコード付番は、

  1. HS条約・通則・注という法的枠組みを前提に
  2. 貨物の実態を正確に把握し
  3. 通則1〜6を順番に適用しながら
  4. Explanatory Notesや分類事例を参照して
  5. 根拠を説明できる形で結論を出す

という、論理的かつ重い作業です。

ビジネスマンとしては、

  • 「どのようなルールに基づいて番号が決まるのか」
  • 「自社の商品情報をどう整理して専門家に渡すべきか」

を理解しておくだけで、
見積もり・価格戦略・契約・コンプライアンスの質が確実に変わります。