CBPが公表した「重複関税の解除チャート」をどう読むか


1. まず押さえるべき「重複解除」の原則(EO 14289)

重複関税整理の土台となるのは、2025年4月29日付の大統領令「Addressing Certain Tariffs on Imported Articles(EO 14289)」です。presidency.ucsb+1
この大統領令は、「複数の追加関税措置の対象になり得る品目」について、どの関税を優先的に適用し、どれを排除するかという手順(single‑duty rule/優先順位)を定めています。business.gmu+1

EO 14289の対象となる追加関税措置は、次の5つに限定されています。govdelivery+1

  • 232条 自動車・自動車部品(Proclamation 10908 等)govdelivery
  • IEEPA カナダ追加関税(EO 14193 系)immpolicytracking+1
  • IEEPA メキシコ追加関税(EO 14194 系)strtrade+1
  • 232条 アルミニウム(Proclamation 9704 系及びその改正)whitehouse
  • 232条 鉄鋼(Proclamation 9705 系及びその改正)whitehouse

これ以外の関税措置(例:Section 301、対中IEEPA、AD/CVDなど)は、EO 14289の「非スタック」ルールの対象外であり、個別のルールで判断されます。global-scm+1

CBP CSMSによると、非重複の優先関係は、要約すると次のようになります。cassidylevy+1

  • まず「232 自動車・部品」に該当し、正味の追加関税額が0%を超える場合、その品目にはカナダIEEPA、メキシコIEEPA、232アルミ、232鉄鋼は重ねない。
  • 自動車・部品に該当しない場合、カナダIEEPAが「実際に関税がかかる(subject to)」なら、メキシコIEEPAや232鉄鋼・232アルミは原則として重ねない。
  • カナダIEEPAもかからない場合、メキシコIEEPAがかかるなら、232鉄鋼・232アルミは原則として重ねない。
  • 232鉄鋼と232アルミは、対象品目が両制度の範囲に入り、かつそれぞれに正味の追加関税額が発生する限り、同一品目に同時適用され得る(特に派生品については両方課されるケースが明示されています)。whitecase+1

ここで重要なのが、「subject to」の意味です。CBPは、「ある措置の下で実際に0%を超える追加関税が発生する場合に、その措置に“subject to”される」と説明しており、USMCA原産として免税になる場合などは、その措置の対象外として扱うと明示しています。cassidylevy+1

さらに、EO 14289の適用対象外の関税は引き続きスタックし得ます。具体的には、通常税率(HTSUS一般税率)、Section 301対中関税、対中IEEPA関税(EO 14195 系)、アンチダンピング・相殺関税(AD/CVD)などは、EO 14289によって自動的に打ち消されるわけではありません。whitehouse+2

EO 14289による非スタック・ルールは、2025年3月4日以降の輸入に遡及して適用され、対象5措置が重複して課されていた場合には、CBPの通常手続に従い還付請求が可能とされています。cassidylevy+1


2. なぜ「チャート」が必要になったのか

EO 14289は「第一幕」として5つの主要措置の優先関係を定めましたが、その後も大統領布告やCSMSにより、対象品目の拡大や追加的な非重複ルールが積み上がり、実務上の判断はさらに複雑になりました。whitehouse+1
例えば、木材・家具等に対する232措置(Proclamation 10976 など)では、カナダ・メキシコ・その他IEEPA関税との非重複関係が個別に明示されているケースがあります。globaltradealert+1

こうした「個々の布告・通達で追加されてきた非スタック・ルール」を、実務者が一覧で俯瞰できるように可視化したものが、CBPの「Unstacking Certain Tariffs Chart」と理解すると整理しやすくなります。geodis+1


3. チャートの実務的な読み方(3ステップ)

GHYなどの実務解説では、このチャートの使い方を3ステップで説明しています。ghy+1

ステップ1:自社品目が属する「行」を確定する

チャートは、行が「品目カテゴリまたは原産国等の条件」、列が「各関税措置」という構造になっています。ghy
解説では、例えば「自動車・自動車部品」「中大型トラック及び部品」「自動車・トラック以外でアルミを含有する品目」「鉄鋼・アルミ派生品」「木材・家具関連」などの行が並ぶ形で紹介されています。ghy+1

この行の特定を誤ると、その後の判断がすべてずれてしまうため、ビジネス側が準備しておくべき最低限の情報は次の通りです。

  • 米国HTSコード(品目分類)
  • 原産国(USMCA原産かどうかを含む)
  • 鉄鋼・アルミ・銅等の含有有無と、その含有部分の価額(派生品の場合)
  • 自動車・自動車部品・トラック等の車両関連品目に該当するかどうか

ステップ2:行を横に読んで、YES / 条件付き / NOを拾う

各セルには「YES」「CONDITIONAL」「NO」などの表示があり、その行の条件下で、各関税措置が適用され得るかどうかの目安として使うことができます。ghy
ただし、「YESだから自動的に課税確定」という意味ではなく、あくまで「該当する可能性あり」のフラグであり、具体的な適用要件は各大統領令・布告・官報告示等を確認する必要があります。chrobinson

ステップ3:最終判断は一次資料で裏取りする

チャートは情報提供目的のツールであり、法的拘束力を持つ「公式解釈」ではありません。ncbfaa+1
最終的な判断は、EO 14289の本文、関連する大統領布告、Federal Register 掲載告示、CSMS等の一次資料を踏まえて行うことが求められます。govdelivery


4. 「解除」といっても、申告が簡単になるわけではない

非スタック・ルールの導入により「二重取り」が一定程度抑制される一方、2025年はむしろ申告データの要件が増えている側面があります。jetworldwide+1
典型例が、232条鉄鋼(特に派生品)に関する「含有価額ベースの申告」です。govdelivery+1

232鉄鋼・アルミ派生品や、鉄鋼品(Chapter 73 など)について、CBPはCSMSで次のような実務指示を示しています。govdelivery+1

  • 対象となる派生品については、232関税を「鉄鋼部分(またはアルミ部分)の価額」に限定して計算する。
  • 非鉄鋼(または非アルミ)部分の価額については、別ラインで申告し、IEEPA関税やその他の追加関税をそのラインに載せる。
  • 232の追加関税率を適用するラインと、IEEPA等を適用するラインで、価額を混在させないようにする(ACEの計算ロジック上も分離が必要とされる)。whitecase+1

その結果、現場では次のような構図になりがちです。

  • 非スタック・ルールにより「同じ価額に対する二重取り」は減る。
  • 一方で、「二行申告」「価額分解」「複数のChapter 99の組み合わせ」が増え、通関実務としてはむしろ複雑化する。

5. ビジネス上のインパクト:押さえるべき2つの数字

(1) 過去分キャッシュ(還付余地)

EO 14289は、2025年3月4日以降の輸入・保税引取りに遡及して適用され、対象5措置について不適切なスタックがあった場合には、通常のCBP手続により還付請求が可能とされています。cassidylevy+1
したがって、「2025年3月4日以降の米国輸入で、232自動車・232鉄鋼・232アルミ・カナダIEEPA・メキシコIEEPAが同一貨物に重複して課されていないか」を棚卸しすることには大きな価値があります。govdelivery

(2) 今後の原価(正しい適用での着地)

非スタック・ルールの対象外であるSection 301、AD/CVD、通常税率、対中IEEPA(EO 14195 系)などは、従来どおり残ります。federalregister+1
したがって、将来の着地原価を再計算する際は、「解除された分だけ単純に下がる」と見るのではなく、「残る関税(301、AD/CVD、IEEPA等)も含めたうえで、非スタック・ルールを考慮した新しい積み上げ」を行うことが必要です。global-scm+1


6. 日本企業向けの実務ToDo(すぐ効く順)

日本企業が短期的に着手しやすい対応は、次のように整理できます。

  • 2025年3月4日以降の米国向け輸入エントリーを抽出し、対象5措置が「不適切に重複していないか」の一次診断を行う(特に自動車・金属含有品)。cassidylevy+1
  • 自社の主要品目を、「チャート上のどの行に該当するか」(自動車系、金属含有品、木材・家具系、対中IEEPA対象品など)に分類し、社内で共有する。global-scm+1
  • 通関業者と協議し、Chapter 99 の付番方針、二行申告の要否、鉄鋼・アルミ部分の価額分解の根拠資料の持ち方など、実務プロセスを事前にすり合わせる(特に232派生品・金属含有品)。govdelivery+1
  • 社内規程として、「チャートのYESはあくまで“要検討”であり確定ではない」「最終判断は一次資料(EO・布告・官報)に基づく」「reasonable care(合理的注意義務)の観点から、適用関税の根拠を文書化する」といった原則を明文化する。ncbfaa+1

結び:チャートは「地図」であり、ルールの代替ではない

CBPの「Unstacking Certain Tariffs Chart」は、関税の重複を減らすために導入された複雑なルール群を、実務者が一望できるよう整理した地図の役割を果たします。geodis+1
しかし、地図だけではゴールに到達できません。EO 14289が定めた非スタックの骨格、各大統領布告やCSMSが追加してきた個別ルール、そして対象外として残るSection 301やAD/CVD等を同時に管理してはじめて、2025年型の米国通関コンプライアンスが成立します。presidency.ucsb+1

  1. https://global-scm.com/blog/?p=3509
  2. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e0a63e
  3. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e36d96
  4. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-24-2025-client-advisory-cbp-releases-informational-tariff-unstacking-chart/
  5. https://ncbfaa.org/news-advocacy/monday-morning-ebriefing-details
  6. https://www.presidency.ucsb.edu/documents/executive-order-14289-addressing-certain-tariffs-imported-articles
  7. https://www.cassidylevy.com/news/new-cbp-guidance-clarifies-tariff-stacking-refund-procedures/
  8. https://www.whitecase.com/insight-alert/trump-administration-increases-steel-and-aluminum-section-232-tariffs-50-and-narrows
  9. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/02/2025-07835/addressing-certain-tariffs-on-imported-articles
  10. https://business.gmu.edu/news/2025-07/addressing-certain-tariffs-imported-articles-executive-order-14289
  11. https://immpolicytracking.org/policies/potus-issues-eo-on-northern-border-and-imposes-tariffs-on-canada/
  12. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/tariff-actions-resources/ieepa-tariffs-on-canada-china-mexico-venezuelan-oil
  13. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/06/adjusting-imports-of-aluminum-and-steel-into-the-united-states/
  14. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/11/modifying-duties-addressing-the-synthetic-opioid-supply-chain-in-the-peoples-republic-of-china/
  15. https://www.federalregister.gov/documents/2025/02/07/2025-02408/imposing-duties-to-address-the-synthetic-opioid-supply-chain-in-the-peoples-republic-of-china
  16. https://globaltradealert.org/blog/US-Tariff-Stacking-Explained
  17. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/cit-confirms-court-authority-order-refunds-ieppa-duties-without-required
  18. https://www.ghy.com/trade-compliance/cbp-provides-unstacking-tariff-chart/
  19. https://www.ghy.com/trade-compliance/category/us-customs/
  20. https://www.jetworldwide.com/blog/unstacking-usa-trump-tariffs
  21. https://www.ghy.com/trade-compliance/guidance-on-executive-order-issued-to-prevent-tariff-stacking-on-us-imports/
  22. https://phillipslytle.com/clarifying-guidance-on-new-stacking-tariffs/
  23. https://www.linkedin.com/posts/hugopakula_customscompliance-trump-tariffs-activity-7330540305852551170-Mvd9
  24. https://www.reddit.com/r/CustomsBroker/comments/1n2qz9v/how_is_cbp_being_impacted_by_the_tariffs_and_ice/
  25. https://www.customsmanager.info/post/customs-manager-us-cbp-tariff-factsheet
  26. https://worldtradescanner.com/Guidance%20on%20Tariff%20Rates%20for%20Products%20of%20China%20under%20IEEPA%20Executive%20Orders.htm
  27. https://www.chrobinson.com/en-sg/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q2/05-21-2025-client-advisory-cbp-issues-guidance-on-tariff-prioritization-under-executive-order-14289/
  28. https://www.federalregister.gov/documents/2025/02/07/2025-02406/imposing-duties-to-address-the-flow-of-illicit-drugs-across-our-northern-border
  29. https://www.thompsonhinesmartrade.com/2025/03/tariffs-against-china-and-hong-kong-increase-to-20-on-march-4-2025/
  30. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/amendment-to-duties-to-address-the-flow-of-illicit-drugs-across-our-northern-border-9350/
  31. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/03/further-amendment-to-duties-addressing-the-synthetic-opioid-supply-chain-in-the-peoples-republic-of-china/
  32. https://www.congress.gov/crs_external_products/IN/HTML/IN12533.html
  33. https://www.ghy.com/tariff-tracker/
  34. https://millerco.com/sites/default/files/2025-05/CBP-Clarification-of-Tariff-Stacking-Rules-and-Refund-Opportunity-May-16-2025.pdf
  35. https://thetradelawfirm.squarespace.com/s/Tariff-Update-March-10-2025.pdf
  36. https://www.macmap.org/OfflineDocument/TradeRemedy/InternalLink/USA/CSMS65936570%20GUIDANCE_%20Section%20232%20Additional%20Steel%20Derivative%20Tariff%20Inclusion%20Products.pdf
  37. https://www.govinfo.gov/app/details/DCPD-202500539
  38. https://www.westernoverseas.com/guidance-steel-iron-and-aluminum-derivative/
  39. https://jaguarfreight.com/update-dec-22-2025/
  40. https://jsconnor.com/tariffs/additional-steel-and-aluminum-derivative-products-subject-to-section-232-tariff/

CBPが公表した「重複関税(Tariff Stacking)の解除」ガイドを深掘り:対象範囲・優先順位・還付実務まで(ビジネス向け)

CBPが公表した「重複関税(Tariff Stacking)の解除」ガイドを深掘り:対象範囲・優先順位・還付実務まで(ビジネス向け)

※本稿は、一次資料(Executive Order 14289/Federal Register告示/CBPのCSMS通達/ジェトロ解説)に基づき、内容の整合・用語統一・読みやすさの観点で複数回見直したうえで、全体を校正しています。regulations.justia+4


1. 「重複関税(スタッキング)」とは何か。何が“解除”されたのか

米国向け輸出・輸入、とくに北米サプライチェーンで問題になっていたのが、「同じ輸入貨物に複数の追加関税が重なって課される(tariff stacking)」という状況です。business.gmu+1

この問題に対し、大統領令「Executive Order 14289(Addressing Certain Tariffs on Imported Articles)」は、特定の追加関税について「どの順番でどれを適用し、どれを排除するか」という**優先順位(single‑duty rule)**を定め、重複(スタッキング)を原則として排除する仕組みを導入しました。federalregister+2

CBP(米国税関・国境警備局)は、この大統領令を実務に落とし込む形でCSMS通達(CSMS #65054270 ほか)を発出し、適用順序と、過去に「重複で支払われた」部分の還付手続きについて具体的なガイダンスを示しています。macmap+2

重要なのは、これは「米国のあらゆる関税を軽くする」ものではなく、「EO 14289が対象として定めた5つの追加関税の重複」を解消する制度だという点です。通常の基本関税やSection 301、AD/CVD、その他の税・手数料は、依然として別枠で課され得ます。internationaltradeinsights+2


2. 対象は「5つの追加関税」:まずここを押さえる

CBPのガイダンス(CSMS #65054270)は、EO 14289の対象となる**5つの大統領措置(presidential actions)**を明示しています。govdelivery+2

  • Section 232 自動車・自動車部品(232 Auto/Auto Parts)
  • IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく対カナダ措置(いわゆる「IEEPA Canada」:対カナダの違法薬物・国境治安関連関税)
  • 同じく対メキシコ措置(「IEEPA Mexico」)
  • Section 232 アルミニウム関税(232 Aluminum)
  • Section 232 鉄鋼関税(232 Steel)regulations.justia+2

実務的には、まず自社の米国向け輸入(米国内拠点の調達を含む)が、

  • 自動車・自動車部品に該当するのか
  • 鉄鋼・アルミニウム(およびその派生品)に該当するのか
  • 原産国がカナダ/メキシコで、IEEPA由来の追加関税の対象になり得るのか

を棚卸しするところからスタートします。ghy+2


3. 本題:優先順位(どれが適用され、どれが外れるか)

3‑1. 2025年5月版(CSMS #65054270):EO 14289の基本ルール

Federal Registerの告示とCSMS #65054270では、「同じ貨物が複数の対象関税に“subject to”となる場合、どの順番で判定し、どれを残すか」が示されています。internationaltradeinsights+2

要点を実務向けに整理すると、次のとおりです(2025年6月3日までの枠組み)。

  • まず 232 自動車・自動車部品に該当するかを判定し、該当する場合は他の4つ(IEEPAカナダ/メキシコ、232鉄鋼・アルミ)は上乗せしない
  • 自動車・部品でない場合、つぎに IEEPA(カナダ/メキシコ) に該当するかを判定し、該当する場合は 232 鉄鋼・アルミは上乗せしない
  • IEEPAにも該当しない場合に、最後に 232 アルミ/232 鉄鋼を判定する。
  • 232 鉄鋼と 232 アルミについては、同じ貨物に対し両方が適用され得る(鋼とアルミの両方の含有価値を持つ派生品など)という点が特に明記されています。macmap+2

ここでいう「subject to」は、当該措置の下で正味の追加関税額が0%を超える(免除や例外ではない)場合を指す、とCBPは補足しています。internationaltradeinsights+1

また、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の原産資格の有無が、IEEPA関税の「subject to」判定に影響し得ることも、CBPの解説や外部解説で繰り返し触れられています。USMCA原産となればIEEPAの対象外となり、その結果、232側が優先されるケースが出てきます。ghy+2

3‑2. 2025年6月4日以降(CSMS #65236574):優先順位が“改定”された点に注意

2025年6月3日に署名された鉄鋼・アルミ輸入調整の大統領布告(Section 232関係のProclamation)を受け、CBPはCSMS #65236574で優先順位(tariff stackingのルール)を改定しています。millerco+2

新しい優先順位(2025年6月4日 0:01(米東部夏時間)以降にエントリーされた貨物)では、次の順番で判定するよう指示されています。internationaltradeinsights+2

  1. 232 自動車・自動車部品(232 Auto/Auto Parts)
  2. 232 アルミニウム(232 Aluminum)
  3. 232 鉄鋼(232 Steel)
  4. IEEPA カナダ
  5. IEEPA メキシコ

この改定により、**232 アルミ/232 鉄鋼に該当する貨物については、IEEPA(カナダ・メキシコ)を上乗せしない(232側を優先する)**という整理が、CSMS内でより明確になりました。chrobinson+2

実務上の結論は、「同じHSコード・同じサプライチェーンの品目でも、輸入日(エントリー日)によって適用される追加関税の組み合わせが変わり得る」ということです。したがって、社内分析や還付検討は、少なくとも「2025年3月4日~6月3日」と「6月4日以降」で区切って行うのが安全です。geodis+1


4. いつから遡れるか:還付(Refund)の基本ルール

4‑1. 遡及適用の起点は「2025年3月4日」

Federal Registerの告示およびCSMSガイダンスは、EO 14289(およびその改定)の適用対象を「2025年3月4日以降に消費仕向けで輸入された貨物(または保税倉庫から引き出された貨物)」とし、その時点まで遡ってスタッキング解消のルールを適用する旨を明記しています。millerco+2

ジェトロの解説も同様に、「2025年3月4日以降の輸入分について、重複して課されていた関税の見直し・還付申請が可能」と整理しています。millerco+1

4‑2. 還付請求は「PSC」か「Protest」:清算(Liquidation)前後で分岐

CBPは、還付請求の手段を明確に2つに分けています。govdelivery+1

  • 未清算(unliquidated)のエントリー:
    Post Summary Correction(PSC)で修正・還付を申請。
  • 清算済み(liquidated)だが異議申立期間内のエントリー:
    19 U.S.C. 1514 に基づく Protest(異議申立て)で対応。一般にはCBP Form 19を使用し、清算日から180日以内が基本的な申立期限と整理されています。millerco+1

4‑3. 「何でも還付」ではない:対象外も明確

EO 14289の対象外となる関税については、同令に基づく還付は認められないことが、Federal RegisterおよびCSMSで繰り返し注意喚起されています。federalregister+2

具体的には、以下のような負担は、今回の「スタッキング解除」の枠外として扱われます。

  • 通常関税(HTSUS column 1/column 2の基本税率)
  • Section 301追加関税
  • 別の大統領令・法律に基づく追加関税(EO 14289で列挙されていないもの)
  • 反ダンピング(AD)・相殺関税(CVD)
  • その他、IEEPAに基づくがEO 14289のリスト外の措置 などfederalregister+2

加えて、CBPは「232 自動車・自動車部品」については優先順位の最上位であり、EO 14289によるスタッキング解消の結果として還付対象となるケースは想定されない、とする説明も行っています(最初から最上位で課されているため)。macmap+1


5. ビジネス現場で“損しない”ための実務チェックリスト(6ステップ)

ここからは、通関実務だけでなく経営・財務インパクトも踏まえ、還付と今後の最適設計の両方を意識した動き方を6ステップで整理します。

ステップ1:対象期間を確定(まずは3/4以降、次に6/4で区切る)

  • 2025年3月4日以降の輸入エントリー/保税引取りを抽出する。
  • 2025年6月4日以降は優先順位が変更されるため、「3/4~6/3」と「6/4以降」で分析を分ける。internationaltradeinsights+3

ステップ2:「重複して払った可能性があるエントリー」を洗い出す

  • 同一エントリーで、EO 14289対象の5措置に属する追加関税が複数計上されていないかをチェック(期間別に)。
  • 通関業者(Customs Broker)からACEデータやエントリーサマリーを入手し、対象関税コード・税額を一覧化すると効率的です。geodis+2

ステップ3:USMCA適用可否を再点検(“subject to”判定が変わる)

  • USMCA原産判定の見直しにより、IEEPA(カナダ/メキシコ)の「subject to」判定が変わり、232側に倒れるケースがあります。
  • CBPおよび外部解説は、USMCA適用がスタッキング判定に影響する点を明示しており、この再点検は還付・将来設計の両面で重要です。ghy+2

ステップ4:還付インパクトを財務目線で試算(キャッシュフローに直結)

  • 「理論上の率」ではなく、実際に支払った追加関税額(対象5措置分のみ)ベースで試算する。
  • 還付対象は、EO 14289の優先順位に反して二重に課されていた分のみであり、Section 301やAD/CVDなど対象外の負担を混ぜないことが重要です。govdelivery+2

ステップ5:清算ステータスで手段を決定(PSCかProtestか)

  • 未清算エントリー → Post Summary Correction(PSC)で修正・還付請求。
  • 清算済みエントリー → Protest(19 U.S.C. 1514、通常180日ルール)で対応。ジェトロ等もこの整理で解説しています。millerco+2

ステップ6:再発防止(次の輸入から“最初から正しい税額”にする)

  • CBPは、EO 14289のもとでも輸入者の reasonable care(合理的注意)義務は維持されるとし、誤りがある場合はCBP窓口やACEヘルプデスクへの相談を案内しています。fedex+2
  • 社内的には、
    • ブローカーへのインストラクション更新(優先順位・対象5措置の適用ロジックを共有)
    • 品目マスター(HTS分類)と原産地判定フロー(USMCA・232・IEEPA)の再設計
    • 追加関税の判定ロジックを「輸入日/エントリー日」も含めてシステム実装
    まで落とし込むことで、「将来分を最初から正しい税額で申告」という状態に近づけることができます。internationaltradeinsights+2

6. 実務でよくある誤解(ここを外すと還付どころかリスク)

誤解1:スタッキング解除=関税が全般的に下がる
→ 対象はEO 14289が列挙した5措置の重複整理だけで、通常関税・Section 301・AD/CVD等は別枠のままです。regulations.justia+2

誤解2:とりあえずまとめて還付申請すればよい
→ 還付の可否は、「対象5措置の二重課税かどうか」と「清算ステータス(PSC/Protest)」次第です。手続きの要件を外すと、却下や後日のペナルティリスクにつながります。macmap+2

誤解3:232鉄鋼と232アルミは必ずどちらか一方
→ EO 14289とCBPガイダンスは、「232 Steelと232 Aluminumは同一貨物に同時適用され得る」と明記しており、鋼とアルミの両方の含有価値を持つ派生品では両方が課税対象になり得ます。internationaltradeinsights+2


7. “ガイド”を使いこなす:CBPの「Unstacking Certain Tariffs Chart」という補助ツール

2025年後半、CBPは、どの大統領措置がどの組み合わせで適用され得るかを一覧で確認できる「Unstacking Certain Tariffs Chart」(ファクトシート/スプレッドシート形式)を公表しました(法的拘束力はなく、あくまで情報提供であり、最終判断は法令・官報・布告が優先)。fedex+1

GHYなどの外部解説が示す実務的な使い方はシンプルです。ghy

  • 自社品目に該当しそうな行(HTS・措置分類)を探す。
  • 行を横に読み、各関税措置が「YES/条件付きYES/NO」となっているかを確認する。
  • そこで「YES」だからといって自動的に課税確定とはせず、例外条項やUSMCA適用状況などを一次資料(EO 14289・Federal Register・CSMS)で必ず裏取りする。

この種のチャートを活用すると、

  • 「どの部門が何を確認すべきか」の社内合意を取りやすくなる。
  • ブローカーとの議論が「そもそも課税か否か」から「どの条件を満たせば/外せばよいか」に進み、コミュニケーションコストを下げられる。

といった形で、実務のスピードと精度の両方に効きます。fedex+1


まとめ:経営としての“最適解”は「還付+再設計」を同時に進めること

CBPの「重複関税(tariff stacking)の解除」ガイドは、制度紹介にとどまらず、過去分のキャッシュ(還付)と今後の原価(追加関税負担)に直結するテーマです。govdelivery+1

経営として押さえるべきポイントは、次の3点に集約できます。

  • 対象は5つの措置に限定されており、かつ2025年6月4日以降は優先順位が変わるため、「3/4~6/3」と「6/4以降」で別々に分析すること。internationaltradeinsights+1
  • 2025年3月4日以降に遡及適用され、未清算はPSC、清算済みはProtest(180日)で還付を狙うこと。millerco+1
  • Section 301やAD/CVDなど対象外の負担を混ぜず、対象5措置だけを切り出して精査すること。federalregister+2

この枠組みを踏まえれば、「過去分の還付」と「今後の正しい関税設計」を同時並行で進めることが、北米ビジネスにとっての合理的な“最適解”になります。

  1. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e0a63e
  2. https://regulations.justia.com/regulations/fedreg/2025/05/20/2025-09066.html
  3. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/20/2025-09066/notice-of-implementation-of-addressing-certain-tariffs-on-imported-articles-pursuant-to-the
  4. https://www.ghy.com/trade-compliance/guidance-on-executive-order-issued-to-prevent-tariff-stacking-on-us-imports/
  5. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/cbp-guidance-feeder-vessels-transit-tariff-dates
  6. https://business.gmu.edu/news/2025-07/addressing-certain-tariffs-imported-articles-executive-order-14289
  7. https://macmap.org/OfflineDocument/USADMIN/Measure_Extraordinary_USA_35.pdf
  8. https://www.internationaltradeinsights.com/2025/05/cbp-issues-guidance-on-prioritization-of-articles-subject-to-more-than-one-tariff-under-eo-14289/
  9. https://millerco.com/sites/default/files/2025-06/Section-232-Steel-and-Aluminum-Tariff-Rate-Increase-to-50-and-Tariff-Stacking-Changes-June-3-2025.pdf
  10. https://www.internationaltradeinsights.com/2025/06/amendment-to-imports-of-aluminum-and-steel-increases-232-tariffs-to-50/
  11. https://www.chrobinson.com/de-de/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q2/06-04-2025-client-advisory-adjusting-imports-of-steel-and-aluminum-into-the-united-states/
  12. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e36e5e
  13. https://millerco.com/sites/default/files/2025-05/CBP-Clarification-of-Tariff-Stacking-Rules-and-Refund-Opportunity-May-16-2025.pdf
  14. https://www.fedex.com/content/dam/fedex/us-united-states/International/upload/Regulatory_News_-_Addressing_Certain_Tariffs_on_Imported_Articles.pdf
  15. https://blog.coleintl.com/tradenews/cbp-issues-guidance-on-tariff-stacking-under-executive-order-14289
  16. https://www.chrobinson.com/en-sg/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q2/05-21-2025-client-advisory-cbp-issues-guidance-on-tariff-prioritization-under-executive-order-14289/
  17. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/04/addressing-certain-tariffs-on-imported-articles/
  18. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-tariffs-client-updates
  19. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-05-20/html/2025-09066.htm
  20. https://asafishing.org/wp-content/uploads/2025/06/Tariff-Action-Cheat-Sheet-V31-5-26-2025.pdf

アメリカへの輸出は新たな時代を迎える

日本からの輸入に対して相互関税が15%と決まりましたが、それで終了というわけではないですね。

WTOによる貿易の時代は、一部の国とFTA利用をのぞき、同じ関税が適用されていましたが、トランプ大統領により、輸出国の違いで適用される相互関税が違うという事態になりました。

まだ交渉中でしょうか、例えばブラジルから輸入した場合に50%の関税が課せられる時代となります。同じ商品なら日本からの輸入だと15%のところをです。

つまり、その商品の原産地がどこかということが関税を左右させることになるわけです。

アメリカでは原産地の判定は「実質的変更基準 (Substantial Transformation)」が採用されます。例えば、基幹の部材までは中国で製造、組み立てをして、残りの簡単な生産を日本で行ってアメリカに輸出した場合、日本産とは認められず、中国産となるというのがこのルールです。

商品の作り方いかんでは別の国で作られたという判断をされるわけですね。日本が交渉で関税を15%にしたところで、実質的変更基準を満たさなければ、日本原産にはならないのです。現実的ではないですが、主たる部分をブラジルで作って、最終生産を日本で行ったのであれば、日本産ではなく、ブラジル産と判断される可能性があるということになります。その場合、関税は15%ではなく、50%ということになるわけです。

この基準が今回のトランプ関税の設定では大きな意味を持ちます。日本の企業はこの実質的変更基準を元にして原産国を自分たちの意図通り明確にできるようにサプライチェーンを再考する必要があります。

私の会社のロジスティックは、この実質的変更基準の適用・不適用は日本企業にとって大切な要素であると捉え、この基準で日本産であるかどうかを判断する模擬評価を行うサービスを始めました。「アメリカ原産地評価プログラム

無料というわけにはいきませんが、日本産から外れる可能性を検証するサービスを行います。

実質的変更基準では、事前教示が受けることができます。一番確かなのはアメリカでこの事前教示を受けることが安全な策となります。

ただ、その事前の段階で自社の商品に問題がないか、あるとすればどう対策すればいいかを把握し、改善することがこのサービスでわかりますので、是非お使い下さい。

本サービスに関して質問がございましたら、info@logistique-inc.com までお知らせ下さい。