AJCEPなどでBack-to-Back COの適用が難しい理由

Back-to-Back COは制度として存在していても、協定の構造・各国の国内整備・書類管理の複雑さという三層の障壁が重なることで実務上の難易度が高くなります 。jetro+1


理由①:「任意規定」であるため各国の国内法に委ねられる

AJCEPのOCP Rule 3(4)は「中継国の発給当局が発行できる(may issue)」という任意規定です 。これは「発行しなくてもよい」ことを意味するため、各国が国内法や運用手続きを整備していなければ事実上発行されません 。シンガポールはTradeNetで電子化済みのため対応できますが、ベトナムは年間数件程度しか発給実績がなく具体的な運用細則が存在しません 。jaftas+1


理由②:日本商工会議所はAJCEPのBack-to-Back COを発給しない

日本がASEAN国からの貨物を中継して別のASEAN国へ再輸出する場合、日本側の発給機関である日本商工会議所はAJCEPのBack-to-Back COを発給していません 。同じ日本商工会議所がRCEPのBack-to-Back COは発給しているため、協定によって対応が分かれています 。さらに日本とASEAN国間の二国間EPA(JVEPA等)ではBack-to-Back CO制度そのものが規定されていないため利用不可です 。jetro+1


理由③:「非加工証明書」の取得が構造的に難しい

中継国での加工が行われていないことを証明する**非加工証明書(Proof of Non-Manipulation)**は、Back-to-Back CO申請の核心書類ですが、発行機関・様式・取得手続きが協定や国ごとにバラバラです 。[jetro.go]​

非加工証明書の現状
シンガポールTradeNetで手続き完結。発給当局が電子的に確認 [mofa.go]​
タイ税関管轄下にある貨物なら発行可。実質加工なければ認める [mofa.go]​
ベトナム発行機関が明確でなく、担当者が現地倉庫へ出向いて目視確認 [jetro.go]​
インドネシア書類審査が厳格。提示できない場合は拒否 [jmcti]​

理由④:複数の協定・条文を同時に管理しなければならない

Back-to-Back COは「元CO」「中継国でのBack-to-Back CO」「最終輸入国での受理」という三段階が異なる協定・異なる国の法令に基づくため、1つの取引で最低3つの法的根拠を並行管理する必要があります 。[global-scm]​

① 最初の輸出国(例:日本)
↓ AJCEP OCP Rule 2 に基づくForm AJ発行
② 中継国(例:シンガポール)
↓ AJCEP OCP Rule 3(4)・IR Rule 9に基づくBack-to-Back Form AJ発行
↓ + シンガポール国内のCustoms Act・TradeNet規則
③ 最終輸入国(例:ベトナム)
↓ ベトナム国内規則による受理・特恵適用の可否判断

これに対してATIGAは10か国のASEAN内だけで完結し、共通のOCPが機能しているため、相対的に管理が容易です 。[mofa.go]​


理由⑤:書類の「紐付け」が弱いと検証リスクが急増する

Back-to-Back COには元COの参照番号・発給日・発給機関が正確に記載されていなければならず、最終輸入国の税関から検証(Verification)が来た際には中継国の発給当局にまで調査が及びます 。コンソリ出荷(複数の元COを束ねる場合)では照合ポイントが倍増し、1つの番号の誤りで全ロットのFTA特恵が否定されるリスクがあります 。[global-scm]​


理由⑥:各国税関の「解釈の相違」が解消されていない

ATIGAとAJCEPの条文はほぼ同じ内容ですが、「どの協定のBack-to-Back COを受け入れるか」は最終的に各国税関の運用次第であり、ASEAN全体での統一解釈がありません 。インドネシアがシンガポール発行のAJCEP Back-to-Back COを拒否した事例はその典型であり、日本機械輸出組合が複数年にわたり「ASEAN域内での統一・明確化」を要望しているにもかかわらず未解決のままです 。[jmcti]​


制度的な抜け道:RCEPへの切り替え

こうした困難を回避する手段として、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)のBack-to-Back COへの切り替えが選択肢となります 。RCEPは日本・ASEAN・中国・韓国・豪州・ニュージーランドをカバーする広域FTAであり、日本商工会議所もRCEPのBack-to-Back CO発給に対応しています 。AJCEPで壁にぶつかった案件でも、RCEP経由で同等の特恵税率が得られるか確認することが有効な実務的対応です 。tarifflabo+1

AJCEP Form AJ(Back-to-Back CO)の記入サンプル

Form AJはATIGAのForm Dとほぼ同じ構成ですが、Box番号の振り方と一部項目の名称が異なります 。以下でBack-to-Back COとして発行する場合の記入ポイントを各Boxごとに解説します。[scribd]​


Form AJ 全体レイアウト(Back-to-Back CO版)

┌────────────────────────────────────────────────────────────┐
│ CERTIFICATE OF ORIGIN Form AJ(AJCEP) │
│ Reference No. ___________ │
├──────────────────────┬─────────────────────────────────────┤
│ Box 1: Exporter │ Box 2: Production Method │
│ (中継国の輸出者) │ (空欄または該当記載) │
├──────────────────────┤ │
│ Box 3: Importer │ │
│ (最終輸入国の輸入者)│ │
├──────────────────────┴──────────────┬────────────────────┤
│ Box 4: Means of Transport / Route │ Box 4: For Official│
│ (輸送手段・経路) │ Use(公用欄) │
├──────────────────────────────────────┴────────────────────┤
│ Box 5: Item No. │ Box 6: Pref. Criteria │ Box 7: Qty │
│ Box 8: Inv. No & Date │
│ Box 9: Gross Weight / FOB Value ← Back-to-Back COは必記 │
├────────────────────────────────────────────────────────────┤
│ Box 10: Declaration by Exporter(輸出者申告) │
├────────────────────────────────────────────────────────────┤
│ Box 11: Certification by Issuing Authority(発給機関認証) │
├────────────────────────────────────────────────────────────┤
│ Box 12: Remarks(備考欄)← 元COの参照番号・発給日を記入 │
├────────────────────────────────────────────────────────────┤
│ Box 13: □ Third Country Invoicing │
│ ☑ Back-to-Back CO ← 必ずチェック │
│ □ Issued Retroactively │
└────────────────────────────────────────────────────────────┘

Box別の記入方法(Back-to-Back CO専用ポイント)

Box 1:Exporter(輸出者)

中継国(シンガポール等)の輸出者の名称・住所を記載します 。最初の輸出国(日本など)の輸出者ではありません。三国間インボイス(Third Country Invoicing)の場合、インボイスを発行している国が中継国と異なる場合があるため注意します 。jetro+1

Box 3:Importer(輸入者)

最終輸入国の輸入者の名称・住所を記載します。

Box 4:Means of Transport & Route(輸送手段・経路)

中継国(例:シンガポール)から最終輸入国(例:ベトナム)への輸送情報を記載します 。中継国への入港情報ではなく中継国からの出発情報です。[jetro.go]​

Box 6:Preference Criteria(原産基準)

元COで使用した原産基準をそのまま引き継ぎます 。Back-to-Back COで新たに原産性を判定するわけではないため、元COの基準コード(例:「B」「C」「D」等)を転記します 。jcci+1

Box 9:Gross Weight / FOB Value

Back-to-Back CO最大の記入上の注意点です 。[mofa.go]​

状況Box 9の記載
全量輸出(元COと同数量)中継国のFOB価格を記載
分割輸出(元COの一部)分割分に案分した中継国のFOB価格を記載 [global-scm]​
RVC基準不使用の場合FOB価格記載を省略できる国あり(ただしBack-to-Back COは記載推奨)[mofa.go]​

Box 12:Remarks(備考欄)

元COの参照情報を必ず記載します 。[customs.go]​

記載例:
Back-to-Back CO issued on the basis of Original Form AJ
No. [元COの番号], issued on [元COの発給日] by [元COの発給機関名],
[最初の輸出国名]

例:

“Back-to-Back CO issued on the basis of Original Form AJ No. AJ/JP/2025/001234, issued on 10 January 2025 by Japan Chamber of Commerce, Japan”

Box 13:チェックボックス(最重要)

「Back-to-Back CO」の□に必ずチェック(√)を入れます 。これがないとBack-to-Back COとして認識されません。協定条文(OCP Rule 3(4))にも、「Box 13のBack-to-Back COにチェックを入れること」が明記されています 。[scribd]​


記入完成イメージ(日本→シンガポール→ベトナム)

Box記入内容
Box 1 ExporterABC Trading Pte. Ltd., 123 Orchard Road, Singapore 238823
Box 3 ImporterXYZ Co., Ltd., 456 Nguyen Hue, Ho Chi Minh City, Vietnam
Box 4 TransportVessel “PACIFIC STAR”, Dep. Singapore 5 Feb 2026 → Ho Chi Minh City
Box 5 Item No.1
Box 6 CriteriaB(CTH+RVC40%)[jcci.or]​
Box 7 Qty500 cartons / 5,000 kg
Box 8 InvoiceINV-SG-2026-0201, dated 1 Feb 2026
Box 9 FOB ValueSGD 50,000(シンガポールのFOB価格)[global-scm]​
Box 12 RemarksBack-to-Back CO issued on the basis of Original Form AJ No. AJ/JP/2025/9876, issued 10 Jan 2025 by JCCI, Japan [customs.go]​
Box 13☑ Back-to-Back CO [scribd]​

日本発行のForm AJ(特定原産地証明書)との違い

日本がASEAN国へ直接輸出する際の特定原産地証明書は日本商工会議所が発行する「AJCEP Form AJ(日本側書式)」ですが 、Back-to-Back CO案件ではASEANの発給機関が発行するASEAN側Form AJが使われます 。書式は同一ですが、発給機関欄(Box 11)の記載内容が日本商工会議所からシンガポールやタイ等の機関に変わります。最終輸入国の税関がどちらの書式であるかを問わずBox 13のBack-to-Back COチェックが入っていることを確認するため、この欄の漏れが最も多い形式ミスとなります 。jcci+3

日・ASEAN EPA(AJCEP)Back-to-Back COの発給手順

AJCEPのBack-to-Back COはOCP Rule 3(4)とImplementing Regulations(IR)Rule 9に基づいて発行されます 。ATIGAとは根拠条文・様式・申請書類の一部が異なるため、以下に専用の手順を整理します。global-scm+1


① 案件開始前の事前確認

AJCEPのBack-to-Back COは各国国内法に委ねられた任意規定のため、中継国の発給当局と最終輸入国の税関の両方に「Form AJ Back-to-Back COを受理するか」を文書で確認することが最初のステップです 。特に最終輸入国がインドネシアの場合、シンガポール発行のAJCEP Back-to-Back COを拒否した実例があるため、ATIGAへの切り替えを先に検討します 。jcci+1


② 元COの取得と確認

中間輸出締約国(最初の輸出国)が発行した**有効なCO(Form AJ)の原本または認証謄本(Certified True Copy)**を取得します 。AJCEPでは遡及発給されたCO(Issued Retroactively欄がチェック済み)も元COとして使用できます 。bruneitrade.mofe.gov+1


③ 中継国の発給当局への申請

中継国の発給当局(商工会議所または政府機関)へ以下の書類を提出します 。global-scm+1

書類備考
Back-to-Back CO発給申請書中継国所定の書式
元CO(Form AJ)原本または認証謄本有効期限(発給日から12か月)内のもの [global-scm]​
中継国からの輸出インボイス最終輸入国向けのもの
パッキングリスト数量・重量の確認用
船荷証券(B/L)またはAWB輸送形態に合わせて
非加工証明書(Proof of Non-Manipulation)中継国で加工が行われていないことの証明(要求がある場合)[global-scm]​

④ Form AJのBack-to-Back COとしての記載方法

発行されるForm AJには、通常の記載事項に加えて以下を明記します 。customs+2

textBox 13(Remarks欄)
  └── "Back-to-Back CO"の□にチェック(√)を入れる ← 必須 [web:123]
  └── 元COの参照番号・発給日・原産国を記載

Box 9(FOB価格欄)
  └── 中継国のFOB価格を記載

分割出荷の場合(Implementing Regulations Rule 9)
  └── 当該分割出荷分の価額(Partial Export Value)と数量を記載
  └── 累計発行数量が元COの総数量を超えないこと [web:121][web:115]

⑤ 発給後の管理と最終輸入国への提出

発給されたForm AJ(Back-to-Back CO)は発給日から12か月以内に最終輸入国の税関へ提出します 。提出と同時に以下も保管します。[global-scm]​

  • 元COの原本またはスキャンデータ(検証要請に備えて)
  • 数量残高台帳(分割出荷時の累計管理)
  • インボイス・B/L等の輸出書類一式

ATIGAとAJCEPの手順の主な相違点

手順上の差異ATIGA(Form D)AJCEP(Form AJ)
Box 13の記載Back-to-Back CO専用参照番号欄に記載 [global-scm]​Box 13の「Back-to-Back CO」チェックボックスにチェック customs+1
分割出荷の根拠OCP Annex 8 Rule 11(c) [vntr.moit.gov]​Implementing Regulations Rule 9 mofa.go+1
COの有効期限発給日から12か月 [global-scm]​発給日から12か月(同じ)[global-scm]​
日本が輸出国の場合日本はATIGA締約国でないため不可対応可。日本発行のForm AJを元COとして使える [jetro.go]​
コンソリ出荷Rule 11(1)(2)で規定(元COは1か国のみ)[miti.gov]​OCP Rule 3(4)・IR Rule 9に基づくが制限は同様 [mofa.go]​
自己証明(Origin Declaration)ATIGAでCE制度が整備済み [global-scm]​AJCEP側では未整備の国が多い [global-scm]​

日本が中継国になる場合の注意点

AJCEPの特徴として、日本が中継国(中間締約国)となるケースが理論上あり得ます。例えばASEAN国A→日本(倉庫)→ASEAN国B という商流です。この場合は日本商工会議所または日本税関がBack-to-Back Form AJを発行することになります 。ただし日本国内でのAJCEP Back-to-Back COの発給実績は極めて少なく、案件前に日本商工会議所または税関への事前照会が必須です 。[jcci.or]​

日・ASEAN EPA(AJCEP)でのBack-to-Back CO利用可否

AJCEPでBack-to-Back COは協定上「利用可能」ですが、「中間締約国の発給当局が発行できる(may issue)」という任意規定(Optional)であるため、各国の国内法・運用に依存します 。bruneitrade.mofe.gov+1


協定上の根拠:Annex 4 OCP Rule 3(4)

AJCEPのBack-to-Back COは、**Annex 4(運用上の証明手続:OCP)のRule 3(4)**に規定されています 。条文の骨子は以下のとおりです。tarifflabo+1

「輸出締約国の発給当局が発行した有効な元CO(Original CO)の提示を条件に、輸出者または代理人の申請があれば、中間締約国(輸入締約国)の発給当局はBack-to-Back COを新たなCOとして発行できる(may issue)。」
― AJCEP Annex 4 OCP Rule 3(4)(a)[bruneitrade.mofe.gov]​

さらにRule 3(4)(b)では、Back-to-Back COにおける原産国の扱いが明確化されており、「元COを発行した締約国(最初の輸出国)の原産品として取り扱う」と規定されています 。[bruneitrade.mofe.gov]​


AJCEP Back-to-Back COのForm AJへの記載方法

形式面ではForm AJの第13欄(Box 13)に「Back to Back CO」のチェックボックスがあり、そこにチェックを入れることで連続する原産地証明書と認定されます 。この記載がなければ最終輸入国の税関に通常のForm AJと誤認されるリスクがあります。[jetro.go]​


ATIGAとAJCEPの利用可否・実務条件比較

比較項目ATIGA(Form D)AJCEP(Form AJ)
根拠条文Annex 8 OCP Rule 11 [vntr.moit.gov]​Annex 4 OCP Rule 3(4) [bruneitrade.mofe.gov]​
発行の性質任意(may issue) [vntr.moit.gov]​任意(may issue) [bruneitrade.mofe.gov]​
対象当事国ASEAN10か国間のみ日本+ASEAN10か国(11か国)[jetro.go]​
日本が絡む取引原則不可(ATIGAは日本を除くASEAN間)対応可(日本が輸出国・輸入国になれる) [jetro.go]​
Form の記載欄Back-to-Back CO専用欄(参照番号・発給日)[global-scm]​Box 13にチェック [jetro.go]​
分割出荷Rule 11(c)で規定 [vntr.moit.gov]​Implementing Regulations Rule 9で規定 [mofa.go]​
インドネシアでの受理概ね可シンガポール発行のものを拒否した実例あり [jmcti]​
国内整備状況ATIGAの方が整備が進む国によって未整備 [tarifflabo]​

AJCEPが持つ特有の強み:累積制度との組み合わせ

AJCEPはATIGAにはない**日本・ASEAN10か国全体での累積(ASEAN-wide cumulation)**が認められているため、日本製部品をASEAN国で加工した産品をASEAN別国へ再輸出する三国間取引でBack-to-Back COが最も力を発揮します 。[mizuho-rt.co]​

text例:日本(部品供給)→タイ(完成品製造)→シンガポール(中継)→ベトナム(輸入)
         日本製部品のRVC             AJCEP Back-to-Back CO
      がタイ原産品のRVC計算に                で
          累積される          ベトナムがATIGA/AJCEP特恵を受ける

ATIGAでは日本が締約国でないため日本製部品を累積できませんが、AJCEPであれば日本製部品の価値をASEAN国の原産資格計算に算入でき、より高い原産品認定率が期待できます 。[mizuho-rt.co]​


実務上の重要注意点

AJCEPのBack-to-Back COをインドネシアへの輸入に使う場合は、シンガポール税関発行のForm AJを認めないという実例が報告されているため、ATIGAへの切り替えを先に検討する必要があります 。また、AJCEPの分割出荷Back-to-Back COは単独の協定条文ではなくImplementing Regulations Rule 9に規定されており、ATIGAのOCP Rule 11とは参照すべき文書が異なる点にも注意が必要です 。mofa.go+1

ATIGAとAJCEPの第三国経由要件比較

ATIGAとAJCEPはいずれも「原則直送・例外として第三国経由を認める」という構造ですが、要件の細部・証明書類・Back-to-Back COの位置付けに重要な差異があります 。jetro+1


基本構造の比較

要件項目ATIGA(第32条)AJCEP
根拠条文Article 32 Direct ConsignmentAnnex 4 OCP・積送基準条項 [jetro.go]​
直送原則輸出国→輸入国へ直送同左 [jetro.go]​
第三国経由の許容条件①地理的理由または輸送上の必要性、②当該国での貿易・消費なし、③積卸し・保全作業以外の加工なし同左(ほぼ同じ要件) jetro+1
第三国の範囲ASEAN加盟国・非加盟国のいずれも経由可同左 [jetro.go]​
Back-to-Back CO規定Annex 8 Rule 11に明示規定あり規定あり・ただし「各国国内法による」留保付き jetro.go+1
Back-to-Back COの発行体中間締約国の発給機関中間締約国の発給機関(同じ) [jetro.go]​
非締約国(第三国)経由時のBack-to-Back CO非加盟国では発行不可(ASEAN域内のみ)同左 [jetro.go]​

積送基準の証明書類の違い

ATIGA

輸入通関時に以下のいずれかを税関へ提出します 。[jetro.go]​

  • 通し船荷証券(Through B/L)の写し
  • 非加工証明書(第三国において積卸し・保全作業以外が行われていないことを証明)

AJCEP

ATIGA同様、通し船荷証券または非加工証明書が基本ですが、AJCEPでは輸入国税関が「貨物が良好な状態を保つための作業以外を受けていないことを示す証明書・情報」の提出を求め**得る(may require)**という任意規定になっており、実際に何を求めるかは各国に裁量があります 。global-scm+1


Back-to-Back COの要件比較

発行条件ATIGA Annex 8 Rule 11AJCEP
有効な元COの提示原本またはCertified True Copy [jetro.go]​同左 [global-scm]​
Box 9のFOB価格記載中間締約国のFOB価格を記載義務あり同左(分割の場合は分割分の輸出価格を記載)jetro.go+1
分割出荷時の数量管理中間締約国が累計数量の超過防止を管理中間締約国が合計数量の超過防止を管理 jetro.go+1
疑義時の元CO提示最終輸入国が元COの原本提示を要求可同左 [jetro.go]​
検認(Verification)の適用Back-to-Back CO発行国にも適用同左 jetro.go+1
国内法による留保「発行しない国もありうる」と協定文に明記同左(「各締約国の国内法による」) jetro.go+1

最大の実務上の差異:FOB価格の記載義務

ATIGAの2020年修正議定書(OCP改訂)では、Form DのBox 9のFOB価格記載は原則撤廃され、カンボジア・インドネシア・ラオスとの取引でRVC基準を使う場合のみ記載が必要となっています 。しかしBack-to-Back COについては、中間締約国のFOB価格記載が別途義務付けられています 。この点はATIGAの通常のForm Dと異なる記載要件であり、実務上の混乱が生じやすい部分です。[jetro.go]​


協定選択の実務的な判断軸

textATIGAを選ぶ場合
  → 日本を介さないASEAN間の取引
  → 中継国がBack-to-Back COの実績が豊富(シンガポール等)

AJCEPを選ぶ場合
  → 日本が荷主・輸出国として絡む取引
  → Back-to-Back CO受理を最終輸入国が確認済み
  ※インドネシアはAJCEPのBack-to-Back COを拒否した実例あり
    →ATIGAへ切り替えを検討 [web:17]

協定上の要件はほぼ同じでも、最終輸入国が実際にどの協定のBack-to-Back COを受け入れるかは国内法の運用に依存するため、事前確認が最も重要な実務判断となります 。jetro+1

ATIGA・AJCEPの遡及発給とバックトゥバック発給を実務で使い切るための要件整理

原産地証明が「間に合わない」「経由地で積み替える」「一度輸入してから別国へ再輸出する」。この手の事象は、現場では珍しくありません。ところが、原産地証明の発給タイミングや記載ルールを外すと、関税メリットが消えるだけでなく、輸入側での差し戻し、追加資料対応、社内外の手戻りが発生します。

本稿では、ASEAN域内のATIGAと、ASEANと日本のAJCEPについて、遡及発給とバックトゥバック発給の要件を条文ベースで整理し、ビジネス担当者が運用設計できるところまで掘り下げます。国別の細かな申請手続は発給当局ごとに異なるため、最後に運用の考え方とチェックポイントもまとめます。

0. まず押さえる前提と用語

ATIGAの「Proof of Origin」は3つある

ATIGAでは、原産地証明に使える書類を総称してProof of Originと呼び、次の形態があります。
・原産地証明書 Form D
・電子原産地証明 e-Form D
・認定輸出者が作成する原産地申告 Origin Declaration (ASEAN Main Portal)

また、バックトゥバックは「最初の輸出国が出したProof of Originを根拠に、中継国が発行するProof of Origin」と定義されています。 (ASEAN Main Portal)

AJCEPの基本は原産地証明書 CO、様式はForm AJ

AJCEPはOperational Certification Procedures(OCP)とImplementing Regulations(IR)でCO(原産地証明書)の運用を定め、IRの添付様式としてASEAN側様式と日本側様式が提示されています。日本側様式ではForm AJとして示されています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

1. 遡及発給とは何か

遡及発給は、ざっくり言えば「出荷時点までに原産地証明が出せなかったときの救済措置」です。重要なのは、遡及発給は原産地の要件を緩める制度ではない点です。あくまで、原産性が成立していることを前提に、手続上の遅れを補正するための仕組みです。

実務で遡及発給が問題になるのは、次のようなときです。
・輸出許可は切ったが、原産地証明の申請が間に合わず船が出た
・書類不備や入力ミスで発給が遅れた
・インボイスやB Lなど、証明書記載に必要な情報の確定が遅れた
・輸出側は間に合ったつもりでも、発給日が出荷日より後になっていた

ここから先は、ATIGAとAJCEPで要件が微妙に違うので、分けて整理します。

2. ATIGAの遡及発給の要件と実務ポイント

条文上の要件

ATIGAでは、Form Dは原則として出荷前または出荷時に発給されるべきもの、とされています。

そのうえで、次の場合に遡及発給が認められます。
・Form Dが、出荷時点で発給されなかった理由が、不可抗力的な誤りや記載漏れ、その他の正当な理由であること
・宣言した出荷日以後に遡及発給できる
・ただし、出荷日から1年を超えての遡及発給は不可
・遡及発給であることをIssued Retroactivelyとして明確に表示する

2022年以降の運用上の落とし穴

ATIGAのOCP改正により、Form Dが宣言出荷日より後に発給される場合は、Issued Retroactivelyの表示が必要になる、という運用が明確化されています。シンガポール税関の通達では、出荷日の翌日に発給されたケースでもIssued Retroactively欄をチェックする例が示され、従来の「出荷後3日を超えたらチェック」という扱いとの違いが明記されています。 (Singapore Customs)

実務上の示唆はシンプルです。
・宣言する出荷日を誤ると、意図せず遡及扱いになる
・輸出側の申請プロセスが短い場合でも、発給日が出荷日をまたぐだけで遡及表示が必要になり得る

いつまでに輸入側へ出せばよいか

ATIGAのProof of Originは、原則として発給日(Origin Declarationなら作成日)から12か月有効で、その期間内に輸入国税関へ提出する必要があります。 (ASEAN Main Portal)

遡及発給は「発給できる期限」と「輸入側へ提出する期限」が別物です。
・発給できる期限:出荷日から1年以内
・輸入側へ提出する期限:発給日から12か月以内
この2本立てで管理すると、輸入側への提出遅れを防ぎやすくなります。 (ASEAN Main Portal)

運用の組み方

遡及発給を起こさないのが最善ですが、起きる前提でプロセスを決めると事故率が下がります。
・出荷確定から発給申請までの社内締切を、出荷前日ではなく出荷2営業日前に置く
・インボイス番号と出荷日が確定しない案件は、案件管理上、黄色扱いにして目視で追う
・輸入者へは、遡及発給になる可能性と、受領予定日を早めに共有する

3. AJCEPの遡及発給の要件と実務ポイント

条文上の要件

AJCEPのIRでは、COは原則として出荷時点まで、または出荷日から3日以内に発給されるべきものとされています。

それでも間に合わなかった例外的な場合には、次の条件で遡及発給が可能です。
・輸出者の要請に基づき、輸出国の法令に従って遡及発給できる
・期限は出荷日から12か月以内
・Issued Retroactivelyの表示欄をチェックする
・遡及発給COには、出荷日を所定欄に記載する
・輸入者は、輸入国の法令に従う範囲で、遡及発給COを提出して特恵申告できる

いつまでに輸入側へ出せばよいか

AJCEPのOCPでは、COは発給日から1年以内に輸入国税関へ提出する必要があるとされています。さらに、不可抗力など正当な理由があれば期限後でも受理され得る旨が規定されています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

運用の組み方

AJCEPでは、出荷後3日以内なら原則として通常発給に収まる設計です。とはいえ、輸出国当局の審査や繁忙で3日を超えることは現場では起こり得ます。
・出荷後3日を超えそうな兆候が出た時点で、輸入者へ遡及発給の可能性を連絡
・輸入者側で、CO後追い提出や申告訂正が可能かどうかを事前に確認しておく
・COのIssued Retroactively欄のチェック漏れは、輸入側差し戻しの典型なので、社内点検項目に固定する

4. バックトゥバック発給とは何か

バックトゥバックは、物流的には次のような構図のときに問題になります。
・最初の輸出国で原産地証明を取っている
・しかし、いったん中継国に入れて、そこから別の国へ再輸出する必要がある
・最終輸入国で特恵を取るには、中継国から最終輸入国への輸出に対応した証明が必要になる

ATIGAでは、バックトゥバックを「中継国が、最初の輸出国のProof of Originを根拠に発行するProof of Origin」と明示しています。 (ASEAN Main Portal)
AJCEPでも、輸入国(中継国)の当局が、原本COを根拠に新しいCOとしてバックトゥバックCOを発給できる、と規定しています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

ここで実務的に重要なのは、バックトゥバックは単なる積み替えだけの話ではない点です。中継国での在庫保管、分割出荷、コンソリなど、商流と物流が動くときの制度です。

5. ATIGAのバックトゥバック発給の要件と実務ポイント

発給主体と基本条件

ATIGAでは、中継国にあたる中間輸出加盟国の発給当局が、輸出者の申請に基づいてバックトゥバックForm Dを発給できます。

条件は多いのですが、実務的に効くところを絞ると次です。
・最初の輸出国が発行した有効なProof of Originを1通以上提示する
・原本が提示できない場合は、certified true copyを提示する

記載と紐付けの要点

バックトゥバックForm Dは、元のProof of Originと同種の情報を一定程度引き継ぎつつ、全ての欄を埋めることが求められます。

さらに、次の点は現場で差し戻しの原因になりやすいので要注意です。
・元のProof of Originの発給日と参照番号を、バックトゥバックForm Dの所定欄に記載する(複数ある場合も含む)
・中継国でのFOB価格を所定欄に反映する

分割出荷とコンソリの管理

ATIGAでは、分割出荷とコンソリについて、バックトゥバックの扱いが明示されています。
・分割出荷の場合、元の証明書の全額ではなく、分割した分の輸出価格を示す
・コンソリ(複数の元証明を束ねる)場合、最終輸入国への提示期限は、元のProof of Originのうち最も早く失効するものに合わせる
・中継国は、再輸出される数量の合計が元証明の数量を超えないように管理する責任がある

ここは運用で差が出ます。おすすめは、元証明ごとに残数量を管理する台帳を作り、分割出荷のたびに残を減らすシンプルな管理です。台帳がないと、倉庫と書類の整合が崩れて、発給当局の審査で詰まります。

最終輸入国の追加要求と検証リスク

最終輸入国側で、情報が不十分、または迂回の疑いがある場合、元のProof of Originの提出を求められる可能性があります。
また、バックトゥバック発給国にも、検証手続が適用され得ることが明記されています。

つまり、バックトゥバックは便利な一方で、書類の紐付けが弱いと検証リスクが上がります。特に、複数の元証明を束ねるコンソリは、照合可能性を最優先に設計すべきです。

認定輸出者によるバックトゥバック原産地申告

ATIGAでは、認定輸出者がバックトゥバックOrigin Declarationを作成できる枠組みもあります。条件はForm Dと同様の考え方で、元のProof of Originの保有、FOB価格の反映、数量超過防止、検証適用、同一品目について認定を受けた認定輸出者であることなどが求められます。

記録保持の最低ライン

ATIGAでは、輸出者や生産者、認定輸出者が、Proof of Originに関する記録を少なくとも3年間保持することが定められています。 (ASEAN Main Portal)
バックトゥバックは特に紐付け資料が命なので、元証明の写し、倉庫出入庫記録、分割台帳、インボイス連番、B Lなどを同じ案件フォルダに固定して保管するのが安全です。

6. AJCEPのバックトゥバック発給の要件と実務ポイント

発給主体と基本条件

AJCEPでは、元のCOが発給されている原産品が、輸入国(中継国)から別の締約国へ輸出される場合、輸入国(中継国)の当局が新しいCOとしてバックトゥバックCOを発給できる、とされています。発給には、輸入国(中継国)の輸出者または代理人の申請と、有効な元のCOの提示が必要です。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

ここはATIGAと同じ発想ですが、AJCEPは条文上、元のCO原本提示を前提に書かれています。原本管理を社内統制の対象にする価値があります。

経由輸送の追加資料

AJCEPでは、貨物が一つ以上の締約国または非締約国を経由して輸入される場合、輸入国税関が、通し船荷証券などの輸送書類、または貨物が荷卸し、積替え、良好な状態を保つための作業以外を受けていないことを示す証明書や情報の提出を求め得る、とされています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

バックトゥバック案件はハブ経由が多いので、この追加資料要件を最初から織り込むと、輸入側の詰まりが減ります。

分割出荷の要件

AJCEPのIRでは、分割出荷のバックトゥバックでは、分割分の輸出価格と数量をバックトゥバックCOに示し、分割の合計数量が元のCO記載数量を超えないよう中継国が管理することが求められます。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

様式上の表示

AJCEPのASEAN側様式では、所定欄にThird Country Invoicing、Back-to-Back CO、Issued Retroactivelyのチェック欄があり、バックトゥバックCOの場合はBack-to-Back CO欄、遡及発給の場合はIssued Retroactively欄をチェックするよう注記されています。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

日本側様式ではForm AJとして示され、Issued Retroactivelyのチェック欄が別の欄に配置されています。どの欄を使うかは様式に依存するため、使用様式を最初に固定するとミスが減ります。

紛失時の対応もセットで決める

AJCEPのIRでは、COの盗難、紛失、滅失があった場合に、輸出者が当局に新しいCOの発給や、適用可能な場合はcertified true copyの発給を求められる枠組みがあり、certified true copyは原本発給日から1年以内に発給されるべきことが示されています。

バックトゥバックは原本提示が前提になりやすいので、原本の物理管理と、紛失時のリカバリルートを同じ業務手順書に入れるのが現実的です。

期限管理

AJCEPのOCPでは、COは発給日から1年以内に輸入国税関へ提出する必要があります。 (Ministry of Foreign Affairs of Japan)
バックトゥバックは、元COの期限、再輸出スケジュール、輸入申告の締切が絡むため、案件開始時点で期限表を作るのが安全です。

7. ATIGAとAJCEPを横断した実務チェックリスト

最後に、遡及発給とバックトゥバック発給で、現場で事故が起きやすい点をチェックリストにします。

A. 遡及発給での典型的なミス

・出荷日と発給日の前後関係の見落とし
・Issued Retroactively表示のチェック漏れ
・輸入側提出期限(有効期間)の管理漏れ
・輸入者へ遡及発給になることを伝えず、輸入申告が先に確定してしまう

ATIGAでは宣言出荷日をまたぐだけで遡及表示が必要になり得る運用が示されているので、出荷日の確定フローを丁寧に作るほど強くなります。 (Singapore Customs)

B. バックトゥバックでの典型的なミス

・元のProof of OriginやCOの原本管理が甘く、提示できない
・分割出荷の合計数量が元証明の数量を超えるリスク管理がない
・複数の元証明を束ねたときに、期限が最短の元証明に引きずられることを見落とす(ATIGA)
・経由輸送の追加資料要求(通し船荷証券、保全作業以外の非実施証明など)を想定していない(AJCEP) (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

C. 書類保存と検証対応

・原産性の根拠資料は、税関照会や検証の対象になり得る
・少なくとも3年の記録保持が要請される枠組みがある(ATIGA、AJCEPとも) (ASEAN Main Portal)
バックトゥバックは、倉庫と書類の整合が崩れた瞬間に説明が苦しくなるので、案件フォルダに紐付け資料一式を固定する運用が向きます。

8. まとめ

遡及発給とバックトゥバック発給は、どちらも「例外処理」ですが、例外処理こそ運用設計で差が出ます。

・ATIGAの遡及発給は、出荷日以後の発給を遡及扱いとし、出荷日から1年以内に発給、Issued Retroactively表示が必要
・AJCEPの遡及発給は、出荷時点または出荷後3日以内が原則で、それを超えた例外は12か月以内の遡及発給とチェック欄表示
・ATIGAのバックトゥバックは、分割出荷とコンソリの要件、元証明の参照番号記載、数量超過防止、期限は最短の元証明に合わせるなど、管理ポイントが多い
・AJCEPのバックトゥバックは、元CO提示を前提に新しいCOとして発給され、分割出荷の価額と数量表示、経由輸送の追加資料要求を想定する必要がある (Ministry of Foreign Affairs of Japan)

明日からできる最小アクションとしては、次の2つが効きます。

  1. 出荷日確定から原産地証明発給までの社内締切を前倒しする
  2. バックトゥバック案件は、元証明番号と残数量を管理する台帳を案件単位で持つ

参考資料として、本文で参照したATIGAのOCP(Annex 8)、AJCEPのOCP(Annex 4)とImplementing Regulations、各国税関通達を一度通読しておくと、社内手順書の精度が一段上がります。

日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)でインドネシアが発効

3月1日から、日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)でインドネシアが発効します。

二国間の日・インドネシアEPAが既に発効して時間も経っており、AJCEPを使うメリットはあまりないですが、ようやく発効したことはいいことですね。これでAJCEPとして物品は揃いました。

http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/download/gensanchi/180228AJCEP-indonesia_jizensyuchi.pdf

インドネシアの側の発表は下記になります。

http://www.jdih.kemenkeu.go.id/fullText/2018/18~PMK.010~2018Per.pdf