米国の鉄鋼・アルミ関税動向:ビジネスへの影響と対策

2026年2月13日、米国トランプ政権による鉄鋼・アルミ関税の一部引き下げ報道が世界の市場を揺るがしました。しかし、政権当局者は即座にこれを否定し、現行の関税は維持される姿勢を示しています。この流動的な状況は、日本企業のビジネス戦略に重大な影響を及ぼし続けています。本稿では、最新の米国鉄鋼・アルミ関税動向と日本企業が直面する課題、そして実効性のある対応策について詳しく解説します。reuters+1

米国鉄鋼・アルミ関税の現状

現行の関税率と適用範囲

米国は1962年通商拡大法232条に基づき、国家安全保障を理由として鉄鋼・アルミニウム製品に追加関税を課しています。この232条は、特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を与えると判断される場合、政権に追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認める条項です。jetro.go+2

第一次トランプ政権下の2018年3月に導入された当初の関税率は、鉄鋼製品25パーセント、アルミ製品10パーセントでした。しかし、2025年6月4日、トランプ大統領は鉄鋼・アルミニウム製品にかける追加関税を50パーセントに引き上げると発表し、即日発動しました。この措置により、鉄鋼関税は25パーセントに据え置かれたものの、アルミ関税は10パーセントから25パーセントに引き上げられ、さらに一部は50パーセントとなりました。rieti+4

2025年3月12日からは、国や地域別に設けられていた適用除外が廃止され、一律適用が開始されました。これにより、カナダやメキシコなど従来は除外されていた国々も関税対象となり、日本に対する関税割当制度も撤廃されました。iti+1

最新動向:関税引き下げ報道と政権の否定

2026年2月13日、英紙フィナンシャル・タイムズは、トランプ政権が鉄鋼・アルミニウム製品に対する一部関税の引き下げを計画していると報じました。報道によれば、米商務省と米通商代表部が鉄鋼・アルミ関税の対象製品リストを見直しており、一部品目は課税を免除する一方で、特定製品に絞って国家安全保障に関する調査を開始する計画があるとされました。reuters+3

しかし、ホワイトハウス当局者は即座に反論し、トランプ大統領が公式に発表しない限り、鉄鋼やアルミニウム、派生製品に対する広範な関税は変更されないと言明しました。ナバロ大統領上級顧問は報道を否定し、トランプ政権にとって鉄鋼とアルミは「神聖」という認識を示しました。[jp.reuters]​

ベセント財務長官も、関税措置に修正があるかどうかは「大統領の決定次第」と強調しており、現時点では何ら具体的な変更はないとしています。この一連の混乱は、政権内部での検討が進められている可能性を示唆していますが、最終決定権はトランプ大統領にあり、状況は極めて流動的です。reuters+2

関税導入の背景と目的

トランプ政権が鉄鋼・アルミ関税を強化する背景には、米国内製造業の保護と雇用創出という明確な政策目標があります。トランプ大統領は2025年5月30日、USスチールの工場での演説で「関税を50パーセントにしたら、海外の鉄鋼製品がもうフェンスを乗り越えることは不可能になる」と述べ、国内産業保護の姿勢を鮮明にしました。[diamond]​

大統領布告では、従来の関税のもとでは国防需要に必要な生産稼働率を実現し維持することができなかったと、関税率引き上げの理由が説明されています。2000年以降、過剰な輸入が国産品に代替し、米国鉄鋼産業の稼働率低下、失業、赤字操業などをもたらしたことが問題視されており、国内産業の稼働率80パーセントを可能にする水準での輸入制限が提言されてきました。nri+1

日本企業への影響

直接的な影響:輸出コストの増加

米国向けに鉄鋼・アルミ製品を輸出する日本企業は、関税による直接的なコスト増に直面しています。日本製鉄は2026年3月期の連結業績予想で、事業利益が前期比41.5パーセント減の4000億円、純利益は42.9パーセント減の2000億円と大幅な減益を見込んでいます。同社は米政権の関税政策について「当社への間接的な影響は甚大」としつつ、どの程度業績に響くかは現時点で把握困難としています。dlri+1[youtube]​

日本からの対米鉄鋼輸出は、関税により競争力が著しく低下しています。試算によれば、NIEsや日本への影響は大きく、日本の対米輸出は大幅なマイナス寄与となっています。一方、アルミニウムについては、日本からの対米輸出額が相対的に小規模であるため、日本経済全体に与える影響は鉄鋼ほど深刻ではないとの分析もあります。nri+1

間接的な影響:サプライチェーン全体への波及

鉄鋼・アルミ関税の影響は、直接輸出する企業だけでなく、川下産業にも広範に及んでいます。米国内で製造を行う日系企業は、原材料コストの上昇により生産コストが増加し、価格競争力が低下するリスクにさらされています。jetro.go+1

建設、自動車、産業機械などの業界では、鉄鋼・アルミ製品を利用した製造コストが上昇する可能性が指摘されており、米国シンクタンクのケイトー研究所は「米国経済、特に製造業にとっては大きな損失を招くことになる」と懸念を示しています。[jetro.go]​

日本国内のねじ・部品関連メーカーも例外ではありません。自動車・自動車部品産業、機械・機械部品産業、特に鉄鋼・アルミニウムを原材料とするメーカーに大きな打撃を与えています。トランプ関税の悪影響は、直接米国に輸出していない企業にも、取引先企業を通じて間接的に波及しています。[fukasawa.co]​

日本製鉄によるUSスチール買収への影響

日本製鉄によるUSスチール買収構想は、鉄鋼関税の引き上げにより新たな局面を迎えています。トランプ大統領は、日本製鉄がUSスチールに140億ドル(約2兆円)を投資することに触れ、「10万人を超える雇用が生まれ、ピッツバーグは『鉄の町』として世界から再び尊敬される」と語りました。[diamond]​

採算割れが懸念されていた日鉄の巨額投資への疑問は、「輸入品排除」の「鉄鋼50パーセント関税」で払拭される可能性があります。関税により海外の鉄鋼製品が事実上締め出されることで、米国内生産の収益性が向上し、投資の採算が取れる環境が整いつつあります。[diamond]​

しかし、この関税の2倍引き上げは世界の強い反発を招いており、買収計画の先行きは依然として不透明です。[diamond]​

日本企業の対応策

現地生産体制の強化

トランプ関税の影響を回避・軽減するため、自動車やFA(ファクトリーオートメーション)といった大手メーカーの中には、米国内での生産体制強化や現地化の推進に踏み切った企業があります。米国内で生産することで、輸入関税の影響を受けずに米国市場に製品を供給できるためです。[fukasawa.co]​

また、メキシコやカナダなどのUSMCA域内生産を行うことで、米国への輸出時の関税軽減や回避を図る戦略も有効です。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の原産地規則を満たせば、域内での貿易は関税の対象外となるためです。[fukasawa.co]​

適用除外措置の申請

トランプ第一次政権時における鉄鋼・アルミへの課税や対中追加関税の場合と同様に、日本企業は米国政府に対して品目別に適用除外措置を申請するという受け身的な対応を選ばざるを得ないことが予想されます。[iti.or]​

しかし、2025年3月12日以降、国や地域別の適用除外が廃止されたため、個別企業が品目ごとに適用除外を申請するプロセスは以前よりも複雑化しています。米国税関・国境警備局が公表したガイダンスに従い、通関申告の際に含有する鉄鋼・アルミ材の価格および重量などを詳細に申告する必要があります。[jetro.go]​

サプライチェーンの多様化

米国依存度を下げるため、販売先市場の多様化を図ることも重要な戦略です。アジア、欧州、中南米など、米国以外の成長市場への展開を強化することで、特定市場への過度な依存によるリスクを軽減できます。

また、原材料調達先の多様化も検討すべきです。鉄鋼・アルミの調達を米国内のサプライヤーに切り替えることで、関税の影響を回避できる可能性があります。ただし、米国内の鉄鋼・アルミ価格は関税により上昇しているため、コスト面での詳細な分析が必要です。

政府間交渉への期待と企業の働きかけ

日本は、トランプ第一次政権時において、232条に基づく鉄鋼・アルミへの関税賦課に対して報復措置を打ち出しませんでした。その後、日米両政府は2022年2月、鉄鋼製品の一部について一定の割当量まで日本からの輸入に対して関税を免除する関税割当を導入することで合意しましたが、この制度も2025年3月に撤廃されました。jetro.go+1

今後、日本政府が米国政府と新たな交渉を行い、関税の軽減や例外措置を獲得できるかが焦点となります。企業としては、業界団体を通じて日本政府に働きかけ、政府間交渉を後押しすることが重要です。

為替リスク管理と価格戦略の見直し

関税増加分を価格に転嫁できるかどうかは、各企業の市場での競争力に左右されます。付加価値の高い製品や代替困難な技術を持つ企業は、価格転嫁が比較的容易ですが、汎用品を扱う企業にとっては厳しい状況です。

また、為替変動も収益に大きく影響します。円安が進めば、ドル建ての関税負担は相対的に軽減されますが、逆に円高が進めば負担が増加します。為替ヘッジなどのリスク管理手法を活用することも検討すべきです。

今後の展望と不確実性

政策変更の可能性

2026年2月の報道が示すように、トランプ政権内部では関税政策の見直しが検討されている可能性があります。中間選挙に向けた物価高対策として、一部品目の関税引き下げが政治的に必要になる可能性も指摘されています。bloomberg+2

しかし、ホワイトハウス当局者やナバロ上級顧問の発言からは、鉄鋼・アルミ産業保護への強いコミットメントが読み取れます。トランプ大統領が「国家と経済の安全保障に極めて重要な国内製造業、特に鉄鋼とアルミの生産の再活性化について、妥協することは決してない」と述べていることから、大幅な関税引き下げは期待しにくい状況です。[jp.reuters]​

国際的な反発と報復措置のリスク

米国の鉄鋼・アルミ関税は、世界貿易機関(WTO)のルールに違反する可能性があり、国際的な反発を招いています。鉄鋼やアルミの輸入が増加したからといって、国家安全保障が脅かされるという議論はいかにも極論であって、鉄鋼輸出国はこれに全く納得していないのが実情です。rieti+1

第一次トランプ政権時には、鉄鋼・アルミ輸出国が強く反発し、対抗措置やWTOへの紛争付託の可能性を表明しました。韓国は、この232条措置の圧力の下で自動車市場アクセスを米国に有利に改定し、さらに拘束力はないものの米国が長年要求してきた為替操作禁止条項を挿入することで米韓FTA再交渉が妥結し、鉄鋼製品の輸出自主規制を飲まされました。[rieti.go]​

今後も各国からの報復関税やWTO紛争が激化する可能性があり、貿易環境全体が不安定化するリスクがあります。

長期的なビジネス環境の変化

米国の保護主義的な通商政策は、グローバルサプライチェーンの再構築を促しています。企業は短期的な関税回避策だけでなく、長期的な視点でビジネスモデルの変革を迫られています。

デジタル化や自動化による生産効率の向上、高付加価値製品へのシフト、新興市場の開拓など、多角的な戦略が求められます。また、地政学リスクの高まりにより、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)を高めることも重要な経営課題となっています。

まとめ

米国の鉄鋼・アルミ関税は、2026年2月時点で鉄鋼25パーセント、アルミ25〜50パーセントという高水準が維持されており、一部引き下げの報道は政権により否定されています。日本企業は直接的な輸出コスト増に加え、サプライチェーン全体への波及効果により厳しい経営環境に直面しています。jetro.go+2[youtube]​

対応策としては、米国内生産の強化、USMCA域内生産の活用、適用除外申請、サプライチェーンの多様化、政府間交渉への働きかけなど、多角的なアプローチが必要です。政策の不確実性が高い中、企業は柔軟な戦略立案と迅速な意思決定が求められています。iti+1

トランプ政権の通商政策は今後も流動的であり、最新情報の継続的な収集と分析、そして状況変化に応じた機動的な対応が、ビジネスの成否を分ける鍵となるでしょう。


免責事項:本記事は2026年2月15日時点の公開情報に基づいて作成されたものであり、情報の正確性や完全性を保証するものではありません。米国の通商政策は流動的であり、今後変更される可能性があります。実際のビジネス判断においては、最新の公式情報を確認し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。本記事の内容に基づいて行われた判断や行動について、筆者および発行者は一切の責任を負いかねます。

中国、鋼材輸出に新たな許可要件 2026年1月から何が変わるのか

2026年1月1日から、中国は一部の鉄鋼製品について輸出時に「輸出許可証」を求める制度を開始します。対象はHS10桁ベースで約300品目とされ、原料から半製品、鋼板・コイル、めっき材、形鋼、鋼管など広い範囲をカバーします。輸出実務に直結するため、調達・販売・物流の現場が先に影響を受けやすいテーマです。 (ジェトロ)

本稿は、2026年1月27日時点で確認できる一次情報と信頼できる報道に基づき、制度の要点と実務対応を整理します。 (中国商务部)

要点サマリー

項目内容
施行日2026年1月1日
根拠文書商務部・海関総署 公告2025年第79号(文書日付は2025年12月9日、公表は12月12日)
対象一部鉄鋼製品(HS10桁で約300品目、詳細は公告添付リスト)
申請に必要な主要書類輸出契約、メーカー発行の製品品質検査合格証明
許可証の発給機関商務部および委託を受けた省級・一部副省級都市の商務主管部門など(企業属性で管轄が分かれる)
実務細則未規定事項は公告2024年第65号に従う

上記は、ジェトロの整理と中国商務部の公告本文に一致します。 (ジェトロ)

1. 何が変わったのか 輸出許可証が必要になる

今回のポイントは「鉄鋼の輸出が全面禁止になる」ではなく、対象品目を輸出する際に、通関前提として輸出許可証を取得し、税関手続で提示できる状態にしておくことが求められる点です。公告2025年第79号は、既存の「輸出許可証管理貨物目録(2025年)」を調整し、鉄鋼製品の一部を当該目録に追加する、と明記しています。 (中国商务部)

実務上は、次のどこかで詰まると出荷が止まります。

  1. 対象品目かどうか(HS10桁の判定、製品仕様の確定)
  2. メーカー品質証明の手当て(発行主体・記載内容・タイミング)
  3. 許可申請の受付・審査(申請窓口の確認、差戻し対応)
  4. 通関時の整合(申告HS、インボイス記載、許可証の一致)

制度は、輸出企業の社内手続ではなく、出荷そのものに影響する運用ルールです。 (中国商务部)

2. 対象範囲は広い 原料から完成品まで

ジェトロは対象をHS10桁で約300品目と整理しています。 (ジェトロ)
JOGMECやCISTECの解説でも、原材料・一次形状品(銑鉄、再生鉄鋼原料、鉄鋼くず等)から、半製品(ビレット、スラブ等)、熱延・冷延、めっき・コーティング、その他鋼材や鋼管まで、産業チェーン全体を網羅する構成である点が強調されています。 (JOGMEC 石炭資源情報)

ここで重要なのは、一般に「鋼材」と聞いて想起する薄板・形鋼だけではなく、半製品やスクラップ類も含み得る設計になっていることです。対象判定を甘く見ると、契約済みの出荷直前にストップするリスクが上がります。 (JOGMEC 石炭資源情報)

3. 申請に必要なもの 契約と品質証明が鍵

公告2025年第79号は、対象品目を輸出する際、輸出契約とメーカー発行の製品品質検査合格証明で許可を申請すると明記しています。 (中国商务部)

この要件は、現場に次の行動を迫ります。

  • 取引スキームの再設計
    例えば、商社が輸出者でメーカーが別の場合、品質証明の入手ルートと責任分界を契約に落とし込む必要があります。
  • 書類の整合管理
    品質証明に紐づくロット、規格、品名、仕様が、インボイスや通関申告とズレると差戻しの原因になります。
  • リードタイムの織り込み
    許可取得の所要日数は案件・地域でブレます。月末集中出荷やスポット案件ほど遅延が表面化しやすくなります。

制度の狙いとして「品質」を前面に出している点は、各種報道でも繰り返し言及されています。 (Reuters)

4. 誰が許可証を出すのか 窓口が分かれる

公告本文は、商務部および委託を受けた省級地方の商務主管部門、さらに一部副省級都市の商務主管部門などが分担して許可証を発行するとしています。加えて、北京で国務院国資委監督下の企業は商務部許可証局が発行し、それ以外は所在地の省級または副省級都市の主管部門が発行する、と管轄分岐も書かれています。 (中国商务部)

ここは日本企業側も無関係ではありません。なぜなら、許可取得の窓口が誤っていると、申請差戻しで出荷遅延になり、そのコストはサプライチェーン全体に転嫁されやすいからです。

5. なぜ今なのか 貿易摩擦と「量は増えたが値は下がる」構造

背景として複数の論点が重なっています。

  • 輸出量の増加と対外摩擦の増加
    JOGMECは、輸出価格の下落や低付加価値品の増加、反ダンピングなど貿易摩擦の増加に触れています。 (JOGMEC 石炭資源情報)
  • 国際的な保護主義の圧力
    ロイターも、増加する中国鉄鋼輸出が各国で反発を招いている点を背景として報じています。 (Reuters)
  • WTO整合性を意識した「監視・管理」手段
    ロイターは、中国商務部が本制度をWTOルールに沿うものと説明していること、輸出量の制限そのものではない旨を述べたことを報じています。 (Reuters)

ビジネス目線での読み方はシンプルです。中国が輸出の蛇口をすぐに締めると断定はできない一方、輸出フローを制度的に追跡し、品質証明を紐づけることで、今後より強い運用(対象拡大、審査厳格化、別制度との連結)に移行できる土台が整う、という点に意味があります。 (中国商务部)

6. 日本企業にとっての実務インパクト

中国から鋼材・鋼材加工品を調達する企業、または第三国向けに中国製鋼材を扱う商社・物流企業は、次の影響を見込むべきです。

  1. 納期リスクの増加
    許可取得が前工程として追加されるため、従来のリードタイム設計が崩れます。スポット輸送や短納期案件ほど影響が出ます。 (中国商务部)
  2. 契約実務の論点増
    契約条件に「輸出許可証の取得と提示」「未取得時の解除・遅延免責」「追加費用負担」「代替調達」などを明確化しないと、揉めやすくなります。
  3. HS判定の重要度が上がる
    対象品目がHS10桁で規定されるため、分類の揺れがそのまま通関可否に響きます。 (ジェトロ)
  4. 品質証明書の標準化圧力
    「メーカー発行の品質検査合格証明」が要件に入ったことで、従来のミルシート運用や検査体系が弱いサプライヤーは遅延要因になります。 (中国商务部)

7. 今日からできるチェックリスト

輸入者・購買側(日本企業)向け

  1. 調達品目が対象かをHS10桁で特定する
    現行のインボイスHSと、実際の仕様を突合する。
  2. サプライヤーに確認する
    対象なら、どの当局窓口で許可申請するのか、申請に必要な品質証明は誰がいつ発行するのか。
  3. 出荷条件を更新する
    出荷前に許可証写しの提出を求め、未取得時の対応(納期延長、代替、キャンセル)を条文化する。
  4. 物流と通関の手順を見直す
    ブッキング前に許可取得状況を確認するゲートを設ける。

輸出者・商社側(中国側サプライヤーを含む)向け

  1. 対象判定のワークフローを固定する
    設計変更・規格変更がある場合、HSと対象判定が変わる前提で管理する。
  2. 品質証明書のテンプレートと発行責任を決める
    ロット、規格、数量、品名が契約・インボイス・申告と一致するように統一する。
  3. 申請窓口を間違えない
    公告にある管轄分岐(商務部許可証局、地方商務主管部門、副省級都市など)を確認する。 (中国商务部)
  4. 細則は公告2024年第65号で補完される前提で読む
    同公告には、許可の申領、許可機関、通関使用回数に関する枠組みが示されています。 (中国商务部)
    ロイターは、鋼材の輸出許可について有効期間や通関での利用回数が論点になる旨も報じています。 (Reuters)

8. 今後の注視点

  • 対象リスト(HS10桁)の改訂有無
    制度開始後に、対象の微調整が入る可能性があります。 (中国商务部)
  • 審査運用の実態
    申請が集中する時期や地域で遅延が恒常化するか。
  • 品質要件の厳格化
    「品質証明が必要」という設計は、将来的に具体的な規格適合や検査要件の強化につながり得ます。
  • 各国の通商措置との連動
    反ダンピングやセーフガードなど対外措置の状況次第で、輸出管理がより政策的に使われる余地があります。 (JOGMEC 石炭資源情報)

2025年、鉄鋼・金属サプライチェーンを揺さぶる関税再編――現場のビジネスマンが押さえるべきポイント


世界の鉄鋼・金属市場は、ここ数年で「自由貿易」から「管理貿易+安全保障+脱炭素」へと、完全にカラーが変わりました。
とくに鉄鋼・アルミ・銅などの金属は、各国の産業政策や安全保障、気候変動政策の”ど真ん中”にあるため、関税・セーフガード・税還付の見直しが立て続けに起きています。
この記事では、「鉄鋼・金属」にフォーカスした関税動向を整理しつつ、製造業・商社・加工業などのビジネスマンが、実務上なにをチェックすべきかをコンパクトにまとめます。

1. ざっくり言うと:鉄鋼・金属の関税は「高止まり+環境要件付き」の時代へ

直近の大きな流れだけ整理すると、次の3つです。

  • 米国:セクション232関税(鉄鋼・アルミ)の大幅引き上げ
    2025年6月、米国は鉄鋼・アルミに対するセクション232関税を、原則25%→50%に倍増。英国など一部を除き、USMCA域内(メキシコ・カナダ)も対象となったことが最大の衝撃です 。strtrade+1
  • EU:輸入鋼材への関税率引き上げ+関税枠(TRQ)の大幅縮小
    欧州委員会は、2026年から適用する新たな制度案として、無関税枠の数量を2024年比で約47%削減し、枠超過分には50%関税を課す方針を打ち出しています 。secnewgate+1
  • 中国:アルミ・銅などの輸出税還付(リベート)を廃止
    中国は2024年12月1日から、アルミ・銅など主要金属の輸出税還付を廃止・縮小し、実質的な輸出インセンティブを削除しました 。english.www+1

これに加えて、**EUのCBAM(炭素国境調整メカニズム)や、米国との交渉材料としてのメキシコの対中輸入高関税(最大50%)**など、鉄鋼・金属を直撃する制度が連鎖的に動いています 。ttnews

2. 米国:Section 232関税の再強化

対米ビジネスは「50%関税前提」が新常態

  • 何が起きているのか
    2025年6月4日以降、米国の鉄鋼・アルミ輸入にかかるセクション232関税は、原則50%に引き上げられました。
    特筆すべきは、これまで免除対象だったメキシコやカナダからの輸入にも50%が適用された点です 。英国向けについては25%に据え置かれていますが、それ以外の供給国にとっては極めて厳しい状況となっています 。また、対象品目は素材だけでなく、釘やワイヤーなどの派生製品(Derivatives)にも拡大しており、HSコードごとの確認が不可欠です。whitecase+1
  • ビジネスマン視点:なにが変わる?
    • 対米輸出モデルの再設計が必須
      50%の関税コストを吸収できる高付加価値品か、それとも米国内生産(現地化)に切り替えるか。事業戦略レベルの二択を迫られています。
    • 「melted and poured(溶解・鋳造)」ルールの厳格化
      原産地判定において「どの国で溶かし、どこで鋳造したか」の証跡管理が義務化されています。中国産鋼材が第三国で加工されて流入することを防ぐ狙いがあり、ミルシートのトレーサビリティが税率を左右します 。eurometal

3. EU:輸入鋼材への「量&価格」ダブル防衛+CBAM

新しい鉄鋼防衛策(セーフガード後継案)

  • 鉄鋼防衛策の激変
    EUは、2026年6月で終了する現行セーフガード措置に代わる新スキームとして、以下の厳しい提案を行っています 。euperspectives+1
    • 無関税枠(TRQ)を約33百万トン → 18.3百万トンへ約47%削減
    • TRQを超えた輸入には、従来の25% → 50%の関税
    • 枠の「繰り越し(Carry-over)」廃止
      つまり、**「輸入量を半減させ、超過分には倍のペナルティを課す」**という強烈な保護政策です。背景には、中国等の過剰生産に対するEU域内産業の危機感があります。
  • CBAMで「CO2コスト」も上乗せ
    これと並行してCBAMが進行しており、2026年からは本格的な課金フェーズに入ります。枠内(無関税)で輸入できたとしても、CO2排出量に応じた炭素コストの支払いが必須となります。

4. 中国:輸出税還付見直しで、アルミ・銅のグローバル供給に変化

輸出税還付(リベート)廃止・縮小

  • 何が起きたか
    中国は2024年12月1日より、アルミ半製品・銅製品などの輸出税還付(13%)を廃止しました 。これは長年、中国製品の価格競争力を支えていた「補助金的」な仕組みでしたが、これを撤廃することで、実質的な輸出価格の引き上げ(またはメーカーのマージン悪化)を招いています。bsstainless+1
  • ビジネスへの影響
    • LME価格および実勢価格の上昇
      還付廃止分を価格転嫁する動きが進んでおり、中国材の「安さ」というメリットが薄れています 。think.ing
    • 調達ソースの分散
      中国一辺倒だった非鉄金属の調達は、東南アジアや中東、リサイクル材へのシフトが加速しています。

5. メキシコ:対中高関税は「対米交渉」の切り札

北米サプライチェーン再編の正念場

  • 背景にある「対米交渉」
    2025年12月現在、メキシコ議会では中国などFTAを持たない国からの輸入に最大50%の関税を課す法案が審議されており、12月8日には下院委員会を通過しました 。bloomberg+1
    この動きの最大の動機は、米国によるメキシコ産鉄鋼への50%関税(6月発動)を解除してもらうことにあります。メキシコは「中国からの迂回輸出ルート(Backdoor)」を自ら塞ぐ姿勢を示すことで、米国からの制裁関税免除(Relief)を勝ち取ろうとしています 。financialpost
  • なにがポイントか
    • 「中国→メキシコ→米国」ルートの完全遮断
      メキシコでの加工を前提とした中国材ビジネスは、メキシコ側の入口で50%、米国側の入口でも原産地規則で弾かれるという「二重の壁」に直面します。
    • 生産拠点の再考
      メキシコが「北米の工場」としての地位を維持できるか、それとも米国南部への回帰が進むか、この法案の成立と米国の反応(関税解除の有無)が2026年の分水嶺となります。

6. 鉄鋼・金属ビジネスマンのための「明日からの」実務チェックリスト

最後に、今すぐ着手すべき実務アクションを整理します。

  1. 関税エクスポージャーの再計算(特にUSMCA圏)
    米国向けだけでなく、メキシコ・カナダ向けの輸出についても、現在の50%関税が適用されるのか、迂回防止措置に抵触しないかをHSコード単位で精査する。
  2. 契約・価格条件(インコタームズ)の防衛
    DDP条件での契約は、突発的な関税コスト(50%)を売り手が被るリスクがあるため極力避ける。「関税率の変更は買い手負担(Pass-through)」とする条項の明記が必須。
  3. 「中国離れ」の在庫戦略
    中国の還付廃止とメキシコの対中関税により、中国材の流動性が低下しています。東南アジアやインドなど、第二・第三のソース確保を急ぐとともに、TRQ枠が逼迫する前の「期初(1月・4月)の輸入枠確保」が勝負になります。
  4. 「Melted & Poured」とCO2データのセット管理
    「どこで溶かしたか(原産地)」と「CO2はどれくらいか(CBAM)」、この2つのデータがないと、欧米市場では土俵にすら上がれない時代です。サプライヤーからのミル証明書取得プロセスをデジタル化・厳格化しておくことが、将来のコスト削減に直結します。

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ソースを確認

  1. https://www.whitecase.com/insight-alert/trump-administration-increases-steel-and-aluminum-section-232-tariffs-50-and-narrows
  2. https://financialpost.com/pmn/business-pmn/mexico-to-hike-china-tariffs-raising-hopes-of-us-steel-relief
  3. https://www.ttnews.com/article/mexico-china-raise-tariffs
  4. https://eurometal.net/meps-international-understanding-the-eus-steel-defence-proposal/
  5. https://euperspectives.eu/2025/10/commission-slashes-steel-import-quotas-doubles-out-of-quota-tariff-to-50/
  6. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/tariff-actions-resources/section-232-tariffs-on-steel-aluminum
  7. https://www.secnewgate.eu/the-future-of-a-critical-sector-for-the-eu-addressing-the-overcapacity-of-steel/
  8. https://english.www.gov.cn/news/202411/15/content_WS67374d69c6d0868f4e8ed074.html
  9. https://www.spglobal.com/energy/en/news-research/latest-news/crude-oil/111524-china-to-end-export-tax-rebates-on-aluminum-copper-biofuel-feedstock-dec-1
  10. https://www.bsstainless.com/market-mayhem-china-cancels-tax-rebate-on
  11. https://think.ing.com/articles/the-commodities-feed-lme-aluminium-jumps-after-china-ends-export-tax-rebate/
  12. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-12-08/mexico-to-hike-china-tariffs-raising-hopes-of-us-steel-relief
  13. https://www.china-briefing.com/news/navigating-chinas-latest-export-tax-rebate-adjustments-implications/
  14. https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/Report/DownloadReportByFileName?fileName=UCO+Export+Tax+Rebate+Terminated_Beijing_China+-+People%27s+Republic+of_CH2024-0149.pdf
  15. https://www.metal.com/en/newscontent/103044495
  16. https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/06/fact-sheet-president-donald-j-trump-increases-section-232-tariffs-on-steel-and-aluminum/
  17. https://www.argusmedia.com/es/news-and-insights/latest-market-news/2730867-mexico-to-raise-auto-import-tariffs-to-50pc
  18. https://www.reuters.com/markets/commodities/china-cut-or-cancel-export-tax-rebates-products-including-aluminium-copper-2024-11-15/
  19. https://www.internationaltradeinsights.com/2025/06/amendment-to-imports-of-aluminum-and-steel-increases-232-tariffs-to-50/
  20. https://www.bruegel.org/first-glance/eu-should-moderate-its-steel-protection-plan

EU鉄鋼セーフガードの兆しを読む――2026年以降を見据えたビジネスパーソンの視点

EU鉄鋼セーフガードの兆しを読む
――2026年以降を見据えたビジネスパーソンの視点


※本記事は、2025年12月時点で公開されているEU・業界団体等の資料に基づいています。


1. まず「EU鉄鋼セーフガード」を30秒でおさらい

EUの鉄鋼セーフガードは、「輸入が急増して域内産業に深刻な被害が出そうなとき、一時的に輸入を抑えるための非常ブレーキ」です。WTO協定に基づくセーフガード措置の一種で、EUでは主に次のような仕組みになっています。

  • 対象:26品目カテゴリーの鉄鋼製品
  • 形式:関税割当(TRQ)+超過分25%関税
  • 内容:2015〜2017年の平均輸入実績をベースに関税割当枠を設定し、その枠内は無税、枠を超えた輸入には25%の追加関税

この制度は、2018年の米国による鉄鋼セクション232関税(25%)をきっかけに、EU市場に鉄鋼がなだれ込む「迂回輸出」を防ぐ目的で導入されました。


2. いまEUセーフガードはどこまで来ているのか

2-1. 2026年6月までは現行セーフガードが継続

EUは2024年6月の調査を経て、鉄鋼セーフガードを2026年6月30日まで2年間延長することを決定しました。

  • 延長期間:2024年7月1日〜2026年6月30日
  • 形式:これまで同様、TRQ+超過分25%関税
  • 理由:
    • 世界的な鉄鋼過剰設備と中国等からの輸出増
    • 他地域の保護措置(米国など)によるEU市場への迂回輸出
    • EU内の需要減少と価格下落

EU自身、「この措置は2018年の最初の発動から数えて最長8年で終了する」と明言しており、現在のセーフガードは2026年6月で打ち切りが原則です。

2-2. 2025年から運用は一段とタイトに

「延長したからしばらく現状維持だろう」と見るのは危険です。
2024年末に開始された「機能見直し(functioning review)」を経て、2025年3月に公表された実施規則2025/612により、運用がタイト化しています。

さらに3月25日、欧州委員会は輸入制限強化を発表しました。

主なポイントは以下の通りです。

  • 関税割当(TRQ)の水準をおおむね15%程度削減
  • 国別枠の「余り」を他国に回すといったキャリーオーバー(持ち越し)を禁止
  • 輸入圧力が高く需要が低迷している品目では、より厳しい管理
  • 枠を超えた分には引き続き25%の追加関税

つまり、同じルールの名前でも、実質的な輸入の「門」はじわじわ狭まっている状況です。

2-3. 2026年以降は「新たな鉄鋼輸入政策」へ?

2026年6月で今のセーフガードは終わる――はずなのに、EUはすでに「その先」の構想を打ち出し始めています。

2025年7月、欧州委員会は今後の鉄鋼保護策に関するコンサルテーションを開始し、セーフガード終了後も何らかの保護メカニズムが必要だとの立場を示しました。

続いて2025年10月7日、現行セーフガードに代わる新たな鉄鋼輸入政策の提案を公表。法律事務所の分析によれば、その骨子は次の通りとされています。

  • 無税枠(TRQ)の大幅削減
    • 2024年比で約47%減(年間1,830万トン程度に上限)
  • 超過関税の引き上げ
    • 25% → **50%**へ引き上げ
  • 「melt and pour(溶解・鋳造地)」のトレーサビリティ義務
    • どの国で溶かされ、鋳造された鋼材かの証明を求め、迂回輸出を防止
  • 対象:現在セーフガードの対象となっている26品目カテゴリーにほぼそのまま適用
  • 発効予定:2026年7月以降(EU議会・理事会での審議・修正を経て最終決定)

重要なのは、これはまだ「提案」であり、確定ではないという点です。しかし、方向性としては、

「現行セーフガードより、さらに厳しい恒常的な輸入管理」

に向かっているシグナルとして読むことができます。


3. EUは何を恐れているのか:政策の「読み方」

3-1. 背景にあるのは「世界的な過剰設備」と中国

EUがセーフガード延長と新しい保護策に踏み切ろうとしている背景には、世界的な鉄鋼過剰設備があります。

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)のファクトシートによると:

  • 中国の鉄鋼輸出は2024年に1.3億トン規模
  • EU向け輸入のシェアは2024年に**27%**まで上昇
  • 2008年以降、EU鉄鋼産業では約9.5万人の雇用が失われた
  • 2024年だけで約1,800万人トン相当の能力が閉鎖

さらに、米国がEU産鉄鋼への関税(25%→50%)を再強化したことで、米国向けが閉ざされた分の鉄鋼がEU市場へ迂回するリスクも高まっています。

EUから見ると、
「このまま何もしなければ、輸入に市場を奪われ、脱炭素投資どころではなくなる」
という危機感が明確です。

3-2. グリーンスチールと産業政策

大手鉄鋼メーカーのアルセロール・ミタルも、**「グリーンスチール投資には、より強力な貿易防衛が必要だ」**と公然と主張しています。

  • エネルギーコストの高止まり
  • 中国などからの低価格輸入
  • 顧客がグリーンスチールに十分なプレミアムを払いたがらない

こうした事情から、EUは2025年に「Steel and Metals Action Plan」を打ち出し、グリーンディールとの整合を取りつつ、鉄鋼産業への支援と保護を強める方向に舵を切っています。

3-3. 「鋼材ユーザー」側からの強い反発

一方、機械・電機・自動車など鋼材を大量に使う下流産業は、新たなセーフガード案に強く反発しています。

欧州のテクノロジー産業団体Orgalimは、「新しいEU鉄鋼セーフガードは欧州の製造業競争力を損なう」として強く反対するポジションペーパーを公表しました。

  • 鋼材ユーザーのコスト増
  • 特殊鋼などEU内で十分作れない製品の供給不安
  • 四半期ごとの割当枠管理による頻繁な枯渇リスク
  • 「melt and pour」ルールによる事務負担の増加

などを理由に、提案の修正や撤回を求めています。

ポイントは、EU内部で「鉄鋼メーカー vs 鋼材ユーザー」の綱引きが激しくなっているということです。これは最終的な制度設計に大きく影響するため、日本企業としてもウォッチすべき重要な「兆し」です。


4. 日本企業にとっての「痛点」はどこか

4-1. 日本からEU向け鋼材輸出

Akin Gumpの分析では、2025年7〜9月期のデータで、冷延鋼板(CRC)や溶融亜鉛めっき鋼板(HDG)などの主要品目について、日本を含む複数国がTRQ枠を9割〜ほぼ100%使い切っていると指摘されています。

ここに、

  • 2025年のTRQ削減(約15%)
  • 2026年以降の47%削減・50%関税案

が重なると、次のようなリスクが現実味を帯びてきます。

  1. 枠の早期枯渇 → 期中に一気に50%関税ゾーンへ
  2. 「残余枠」を狙うグローバルな競合との争奪戦激化(キャリーオーバー禁止で余裕も減少)
  3. 価格転嫁が難しいFOB契約では、サプライヤー側のマージン圧迫

日本の高級鋼材・自動車向け鋼板などは「ニッチかつ高付加価値」であるがゆえに、EU市場へのアクセスが限定されると代替市場を探しにくいという構造的な弱点もあります。

4-2. EU域内で鋼材を調達する製造業

欧州に生産拠点を持つ日系の自動車メーカーや建機・産業機械メーカーは、域内調達価格の上振れリスクに向き合う必要があります。

  • EU内の鉄鋼価格が、アジアに比べて常に割高になりやすい
  • グリーンスチールへの転換コストも上乗せされる
  • サプライヤーがセーフガードを理由に価格交渉力を強める可能性

サプライチェーンとしては、

「どの工程でどの鋼材をEU由来にするのか」
「どこまでをアジアから輸入し、どこからをEU内生産・調達とするのか」

といった、生産・調達の線引きを再設計する必要が出てきます。

4-3. 商社・トレーディングビジネス

鉄鋼トレーダーや商社にとっては、

  • 第三国経由のスキームが「melt and pour」ルールで塞がれるリスク
  • TRQの国別・品目別配分の変化に応じたポートフォリオ組み替え
  • EU・英国・中東など複数市場を見ながらの物量の再配分

といった実務的な対応が必要になります。


5. 兆しをどう読むか:実務者向け「ウォッチポイント」

EU鉄鋼セーフガードの今後を読むうえで、ビジネスパーソンが押さえておきたい「チェックポイント」は次の5つです。

① EU官報・欧州委員会(DG TRADE)の動き

  • 実施規則(Implementing Regulation)の改正
  • DG TRADEのニュースリリースやコンサルテーション告知

→ 法令ベースでルールが動きそうな「前触れ」を早期に把握。

② 業界団体のポジションペーパー

  • EUROFER(鉄鋼メーカー)
  • Orgalimなど鋼材ユーザー団体

→ どの程度「強い措置」が政治的に許容されるかを読む材料。

③ TRQ消化率と輸入統計

  • HSコード別・原産国別の輸入量
  • 各カテゴリーのTRQ消化率(枠の埋まり方)

→ 自社が関わる品目の「枠の混み具合」を常時モニター。

④ 米国・中国を中心とした他国の貿易政策

  • 米国の鉄鋼関税(再導入・引き上げなど)
  • 中国・東南アジアの輸出動向、設備増設計画

→ 他地域の一手が、EUへの迂回輸入圧力として跳ね返る。

⑤ EU域内の政治・雇用情勢

  • 大手製鉄所の閉鎖・リストラ報道
  • 各国政府・地方政府の支援・救済策

こうしたニュースが増えるほど、「より強い保護措置を求める声」が政治的に力を持ちやすくなります。


6. 2026年までに日本企業がやっておきたい5つのアクション

最後に、ビジネスパーソンの立場から見た「実務的な打ち手」を5つに整理します。

1. 自社製品を「HSコード×セーフガードカテゴリー」で棚卸し

  • 自社が扱う鋼材・鋼材を含む製品を、
    • HSコード
    • EUセーフガードのカテゴリー
      にマッピングし、「どの枠に乗っているのか」を可視化する。

2. 主要サプライヤー別のコストシミュレーション

  • 日本・韓国・EU内・第三国など、サプライヤー別に
    • TRQ枠内/枠外
    • 25%(現行)/50%(提案段階)の関税
      を前提とした原価シミュレーションを作成しておく。

3. 長期契約の価格条項(price adjustment clause)の見直し

  • セーフガードや新規輸入規制を「価格調整事由」として明示
  • 枠の急激な枯渇で関税が跳ね上がった場合のコスト分担ルールを合意しておく

4. 調達・生産の地理的分散

  • EU向け需要のうち、
    • どこまでを**EU域内生産(ローカル・フォー・ローカル)**で賄うか
    • どこまでを輸入でカバーするか
  • 中東・ASEANなど他地域への販売先転換シナリオも含め、複数パターンを事前に検討しておく。

5. 社内の「通商アラート」仕組みづくり

  • 法務・経営企画・サプライチェーン・営業を横串でつないだ小さなタスクフォースを設ける
    • EU官報・DG TRADEの更新
    • 業界団体の声明
    • TRQ消化率
      を月次〜四半期でレビューし、経営陣への簡易レポートを定例化する。

7. おわりに:セーフガードを「守り」で終わらせない

EU鉄鋼セーフガードは、単なる貿易規制ではなく、

  • グローバルな過剰設備
  • 米中・米EUの通商摩擦
  • グリーンスチールへの投資負担
  • EUの産業政策と政治・雇用

といった大きな潮流が交差する「縮図」です。

**2026年までの2年弱は、「現行セーフガードの最終章」であると同時に、「その先の新ルールへの助走期間」**でもあります。

  • ルールが決まってから慌てて対応するか
  • 兆しの段階から構造を読み、打ち手を仕込んでおくか

この差が、数年後の利益水準や市場シェアに大きく響いてきます。

この記事が、EU鉄鋼セーフガードの「兆し」を読み解き、
守りと攻めを両立させる通商戦略を考える一助になれば幸いです。


2025年米国鉄鋼・アルミニウム関税制度の概要と企業対応(2025年10月最新版)

下記情報は確実にと努力しましたが、不確定な部分もあり、あくまで参考としてください。

最新動向(2025年8月~10月)

2025年8月以降、Section 232関税制度は更なる拡大を続けています。8月18日に407品目の派生製品が追加され、9月にはインクルージョン申請の第2回受付期間が実施され、10月には木材・重トラック関税の新規措置が発表されました。

8月18日発効:407品目の大規模追加

商務省産業安全保障局(BIS)は、407の製品カテゴリーを232関税対象の「派生製品」リストに追加しました。この拡大により、年間輸入額2,000億ドル超に相当する400以上のHS番号が新たに対象となり、実効関税率が約1パーセントポイント上昇したと推定されています。

主な追加品目

  • 風力タービンおよび部品・コンポーネント
  • 移動式クレーン
  • ブルドーザーおよび重機
  • 鉄道車両
  • 家具
  • 圧縮機・ポンプ
  • オートバイ
  • 船舶用エンジン
  • 電気自動車用電気鋼材
  • 自動車排気システム部品
  • バス部品
  • 空調ユニット部品

この措置は、6月23日発効の家電製品追加に続く第2弾の大規模拡大であり、鉄鋼・アルミニウムの含有価額部分に50%の関税が課されます。

9月:第2回インクルージョン申請期間

BISは2025年9月15日から29日まで、第2回目のインクルージョン申請受付期間を実施しました。このプロセスは年3回(5月・9月・1月)実施され、国内生産者等が追加対象品目を申請できる制度です。申請から60日以内にBISが判断を行い、採用された品目は順次232関税の対象に追加されます。

10月14日発効:木材・木製品への新規232関税

9月29日の大統領布告により、針葉樹材・木材および木製派生製品に対する新たなSection 232関税が10月14日から適用されています。

税率

  • 針葉樹材・木材:10%
  • 室内装飾付き木製家具:25%(2026年1月1日から30%に引上げ)
  • キッチンキャビネット・洗面台:25%(2026年1月1日から50%に引上げ)

重複関税の取扱い

  • 相互関税(reciprocal tariffs)およびIEEPA関税とは重複適用されない
  • 232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみ適用
  • 対カナダ・メキシコIEEPA関税と重複する場合は木材232関税のみ適用

11月1日発効予定:中・大型トラック関税

10月6日、トランプ大統領は中型・大型トラック(車両総重量10,000ポンド超)および部品に対する25%の232関税を11月1日から適用すると発表しました。当初は10月1日発効予定でしたが、米国自動車メーカーからのロビー活動を受けて1カ月延期されました。

4月に開始された商務省の232調査では、「少数の外国供給者が略奪的貿易慣行により米国輸入の大部分を占めている」と指摘されており、国家安全保障上の脅威と位置付けられています。主要な影響国は、メキシコ、カナダ、日本、ドイツ、フィンランドです。

米国トラック協会(ATA)は、この措置に加えてIEEPA関税や232鉄鋼・アルミ関税も適用されることで業界への負担が過大になるとして、緩和を求めています。

1. 2025年の大改定のポイント

関税率の大幅引上げ

2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。

課税方式の変更:「金属含有価額」ベース

従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。

除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設

2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。

重複課税(スタッキング)の整理

複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。

2. 派生製品の対象拡大

「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。

2025年の主な追加項目

アルミニウム派生製品(4月4日発効)

  • 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
  • ビール(HS 2203.00.00)

鉄鋼派生製品(6月23日発効)

  • 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
  • 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)

トレーラー類(8月18日発効)

  • ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ

407品目の大規模追加(8月18日発効)

  • 風力タービンおよび部品・コンポーネント
  • 移動式クレーン
  • ブルドーザーおよび重機
  • 鉄道車両
  • 家具
  • 圧縮機・ポンプ
  • オートバイ
  • 船舶用エンジン
  • 電気自動車用電気鋼材
  • 自動車排気システム部品

木材派生製品(10月14日発効)

  • 針葉樹材・木材
  • 室内装飾付き木製家具
  • キッチンキャビネット・洗面台

中・大型トラック(11月1日発効予定)

  • 車両総重量10,000ポンド超の中型・大型トラックおよび部品

今後の展開

BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。次回の申請期間は2026年1月に予定されています。

3. 関税算定の具体的方法

基本税率

  • 鉄鋼・アルミニウム・派生品:50%(英国原産品のみ25%)
  • 木材派生品:10~25%(段階的引上げあり)
  • 中・大型トラック:25%(11月1日~)

課税ベースの算定

  • HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
  • 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
  • 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税

申告方式:「2行計上」

CBPの指示により、以下の2行に分けて申告します:

  1. 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
  2. 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税

算定例

洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:

  • 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
  • アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
  • 232関税合計:60ドル

中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。

4. 重複関税の取扱い

232関税 vs 301関税(対中)

累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。

232関税(鉄鋼・アルミ) vs IEEPA(相互関税)

232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。

232関税(木材) vs その他関税

木材関連の232関税は、相互関税・IEEPA関税(ブラジル40%、インド25%)とは重複適用されません。232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみが適用されます。

その他の特則

  • ロシア関連アルミニウム:232とは別に200%の特則が存続
  • デューティードローバック不可
  • FTZは原則「特恵外国品扱い」が必要

5. 企業の実務対応チェックリスト

A. 分類・原産・含有価額の把握

HTS分類の見直し:新規派生指定品目について社内マスターを更新

  • 家電、トレーラー、空缶・ビール(既存)
  • 風力タービン、移動式クレーン、ブルドーザー、鉄道車両、家具、圧縮機、ポンプ、オートバイ、船舶用エンジン、EV用電気鋼材、排気システム部品(8月18日追加)
  • 木材、木製家具、キャビネット(10月14日追加)
  • 中・大型トラック(11月1日予定)

金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築

原産性証明の取得

  • 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
  • アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
  • メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意

B. 課税最適化戦略

調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用

米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性

設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮

複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算

C. 契約・申請対応

価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加

インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定

社内統制の強化:HTS・原産・含有価額・証憑の監査体制整備

6. 実際の企業事例

American Trailer Manufacturers Coalition

Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。

Whirlpool(米国家電メーカー)

家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。

Ball Corporation(アルミ缶メーカー)

2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。

外国自動車メーカー連合

外国自動車メーカー連合は、EV用電気鋼材や排気システム部品の派生製品追加に対して、米国内に十分な生産能力がないことを理由に反対意見を提出しましたが、採用されませんでした。

Tesla

Teslaは、電気自動車モーターや風力タービンに使用される鉄鋼製品の追加指定について、米国内の生産能力が不足しているとして反対しましたが、8月18日の決定で対象に含まれました。

7. 今後の注意点

制度面のポイント

  • 232税率は原則50%(英国25%、木材10~25%)
  • 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
  • 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定(年3回:5月・9月・1月)
  • 301関税(対中)とは累積適用される
  • 2026年1月には木製家具・キャビネット関税が段階的に引上げ(30%・50%)

企業の優先対応事項

緊急対応(~2025年11月)

  • 中・大型トラック輸入企業:11月1日発効の25%関税への対応準備
  • 木材・木製品輸入企業:10月14日発効の関税(10~25%)の影響分析と価格見直し

継続対応

  • HTS分類の再確認(407品目追加を反映)
  • 含有価額算定体制の整備
  • Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
  • 契約価格条項の見直し
  • 対中国301関税重複の影響分析
  • (国内生産者の場合)次回インクルージョン制度(2026年1月)の活用検討

情報収集

  • BISの連邦官報公告の定期的な確認(次回申請期間:2026年1月)
  • 自動車部品インクルージョン制度の動向監視(2025年10月1日から第1回申請期間開始)

この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。特に2025年8月の407

2025年米国鉄鋼・アルミニウム関税制度の概要と企業対応

1. 2025年の大改定のポイント

関税率の大幅引上げ

2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。

課税方式の変更:「金属含有価額」ベース

従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。

除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設

2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。

重複課税(スタッキング)の整理

大統領令第14289号(2025年4月29日)により、複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。

2. 派生製品の対象拡大

「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。

2025年の主な追加項目

アルミニウム派生製品(4月4日発効)

  • 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
  • ビール(HS 2203.00.00)

鉄鋼派生製品(6月23日発効)

  • 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
  • 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)

トレーラー類(8月18日発効)

  • ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ

今後の展開

BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。

3. 関税算定の具体的方法

基本税率

  • 鉄鋼・アルミニウム・派生品:50%(英国原産品のみ25%)

課税ベースの算定

  1. HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
  2. 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
  3. 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税

申告方式:「2行計上」

CBPの指示により、以下の2行に分けて申告します:

  • 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
  • 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税

算定例

洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:

  • 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
  • アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
  • 232関税合計:60ドル

中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。

4. 重複関税の取扱い

232関税 vs 301関税(対中)

累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。

232関税 vs IEEPA(相互関税)

232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。

その他の特則

  • ロシア関連アルミニウム:232とは別に200%の特則が存続
  • デューティードローバック不可、FTZは原則「特恵外国品扱い」が必要

5. 企業の実務対応チェックリスト

A. 分類・原産・含有価額の把握

  1. HTS分類の見直し:新規派生指定品目(家電、トレーラー、空缶・ビール等)について社内マスターを更新
  2. 金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築
  3. 原産性証明の取得
    • 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
    • アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
    • メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意

B. 課税最適化戦略

  1. 調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用
  2. 米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性
  3. 設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮
  4. 複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算

C. 契約・申請対応

  1. 価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加
  2. インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定
  3. 社内統制の強化:HTS・原産・含有価額・証憑の監査体制整備

6. 実際の企業事例

American Trailer Manufacturers Coalition

Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。

Whirlpool(米国家電メーカー)

家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。

Ball Corporation(アルミ缶メーカー)

2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。

7. 今後の注意点

制度面のポイント

  • 232税率は原則50%(英国25%)、2025年6月4日以降適用
  • 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
  • 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定
  • 301関税(対中)とは累積適用される

企業の優先対応事項

  1. HTS分類の再確認
  2. 含有価額算定体制の整備
  3. Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
  4. 契約価格条項の見直し
  5. 対中国301関税重複の影響分析
  6. (国内生産者の場合)インクルージョン制度の活用検討

この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。企業は早急に社内体制を整備し、適切な対応策を講じることが重要です。

日EU・EPAでの関税撤廃スケジュール(鉄鋼・鉄鋼製品、非鉄金属)

日EU・EPAでの関税撤廃スケジュールを記します。

今回は鉄鋼・鉄鋼製品、非鉄金属です。

  • 鉄鋼
    • 即時撤廃、1.7~7%
  • ステンレス鋼製の管用継手
    • 即時撤廃、3,7%
  • 鉄鋼製のチェーン、ばね
    • 即時撤廃、2.7%
  • 鉄鋼製のねじ
    • 即時撤廃、3.7%
  • 鉄器の一部(南部鉄器等)
    • 即時撤廃、3.2%
  • アルミニウムの箔
    • 即時撤廃・6年目撤廃、7.5~10%
  • チタンの粉、くず等
    • 即時撤廃・6年目撤廃、5~7%
  • のこぎり、ブレード
    • 即時撤廃、1.7~2.7%
  • 卑金属製の手工具
    • 即時撤廃、2.7%
  • ナイフ
    • 即時撤廃・6年目撤廃、2.7%~8.5%
  • 卑金属製の錠
    • 即時撤廃、2.7%
  • 自動車用の卑金属製の取り付け具(蝶番及びキャスターを除く)
    • 即時撤廃、2.7%

注:%は2013年4月時点のMFN税率です。