下記情報は確実にと努力しましたが、不確定な部分もあり、あくまで参考としてください。
最新動向(2025年8月~10月)
2025年8月以降、Section 232関税制度は更なる拡大を続けています。8月18日に407品目の派生製品が追加され、9月にはインクルージョン申請の第2回受付期間が実施され、10月には木材・重トラック関税の新規措置が発表されました。
8月18日発効:407品目の大規模追加
商務省産業安全保障局(BIS)は、407の製品カテゴリーを232関税対象の「派生製品」リストに追加しました。この拡大により、年間輸入額2,000億ドル超に相当する400以上のHS番号が新たに対象となり、実効関税率が約1パーセントポイント上昇したと推定されています。
- 風力タービンおよび部品・コンポーネント
- 移動式クレーン
- ブルドーザーおよび重機
- 鉄道車両
- 家具
- 圧縮機・ポンプ
- オートバイ
- 船舶用エンジン
- 電気自動車用電気鋼材
- 自動車排気システム部品
- バス部品
- 空調ユニット部品
この措置は、6月23日発効の家電製品追加に続く第2弾の大規模拡大であり、鉄鋼・アルミニウムの含有価額部分に50%の関税が課されます。
9月:第2回インクルージョン申請期間
BISは2025年9月15日から29日まで、第2回目のインクルージョン申請受付期間を実施しました。このプロセスは年3回(5月・9月・1月)実施され、国内生産者等が追加対象品目を申請できる制度です。申請から60日以内にBISが判断を行い、採用された品目は順次232関税の対象に追加されます。
10月14日発効:木材・木製品への新規232関税
9月29日の大統領布告により、針葉樹材・木材および木製派生製品に対する新たなSection 232関税が10月14日から適用されています。
- 針葉樹材・木材:10%
- 室内装飾付き木製家具:25%(2026年1月1日から30%に引上げ)
- キッチンキャビネット・洗面台:25%(2026年1月1日から50%に引上げ)
- 相互関税(reciprocal tariffs)およびIEEPA関税とは重複適用されない
- 232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみ適用
- 対カナダ・メキシコIEEPA関税と重複する場合は木材232関税のみ適用
11月1日発効予定:中・大型トラック関税
10月6日、トランプ大統領は中型・大型トラック(車両総重量10,000ポンド超)および部品に対する25%の232関税を11月1日から適用すると発表しました。当初は10月1日発効予定でしたが、米国自動車メーカーからのロビー活動を受けて1カ月延期されました。
4月に開始された商務省の232調査では、「少数の外国供給者が略奪的貿易慣行により米国輸入の大部分を占めている」と指摘されており、国家安全保障上の脅威と位置付けられています。主要な影響国は、メキシコ、カナダ、日本、ドイツ、フィンランドです。
米国トラック協会(ATA)は、この措置に加えてIEEPA関税や232鉄鋼・アルミ関税も適用されることで業界への負担が過大になるとして、緩和を求めています。
1. 2025年の大改定のポイント
関税率の大幅引上げ
2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。
課税方式の変更:「金属含有価額」ベース
従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。
除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設
2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。
重複課税(スタッキング)の整理
複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。
2. 派生製品の対象拡大
「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。
2025年の主な追加項目
- 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
- ビール(HS 2203.00.00)
- 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
- 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)
- ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ
- 風力タービンおよび部品・コンポーネント
- 移動式クレーン
- ブルドーザーおよび重機
- 鉄道車両
- 家具
- 圧縮機・ポンプ
- オートバイ
- 船舶用エンジン
- 電気自動車用電気鋼材
- 自動車排気システム部品
- 針葉樹材・木材
- 室内装飾付き木製家具
- キッチンキャビネット・洗面台
- 車両総重量10,000ポンド超の中型・大型トラックおよび部品
今後の展開
BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。次回の申請期間は2026年1月に予定されています。
3. 関税算定の具体的方法
基本税率
課税ベースの算定
- HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
- 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
- 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税
申告方式:「2行計上」
- 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
- 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税
算定例
洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:
- 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
- アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
- 232関税合計:60ドル
中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。
4. 重複関税の取扱い
232関税 vs 301関税(対中)
累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。
232関税(鉄鋼・アルミ) vs IEEPA(相互関税)
232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。
232関税(木材) vs その他関税
木材関連の232関税は、相互関税・IEEPA関税(ブラジル40%、インド25%)とは重複適用されません。232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみが適用されます。
その他の特則
5. 企業の実務対応チェックリスト
A. 分類・原産・含有価額の把握
HTS分類の見直し:新規派生指定品目について社内マスターを更新
- 家電、トレーラー、空缶・ビール(既存)
- 風力タービン、移動式クレーン、ブルドーザー、鉄道車両、家具、圧縮機、ポンプ、オートバイ、船舶用エンジン、EV用電気鋼材、排気システム部品(8月18日追加)
- 木材、木製家具、キャビネット(10月14日追加)
- 中・大型トラック(11月1日予定)
金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築
- 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
- アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
- メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意
B. 課税最適化戦略
調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用
米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性
設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮
複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算
C. 契約・申請対応
価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加
インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定
6. 実際の企業事例
American Trailer Manufacturers Coalition
Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。
Whirlpool(米国家電メーカー)
家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。
Ball Corporation(アルミ缶メーカー)
2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。
外国自動車メーカー連合
外国自動車メーカー連合は、EV用電気鋼材や排気システム部品の派生製品追加に対して、米国内に十分な生産能力がないことを理由に反対意見を提出しましたが、採用されませんでした。
Tesla
Teslaは、電気自動車モーターや風力タービンに使用される鉄鋼製品の追加指定について、米国内の生産能力が不足しているとして反対しましたが、8月18日の決定で対象に含まれました。
7. 今後の注意点
制度面のポイント
- 232税率は原則50%(英国25%、木材10~25%)
- 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
- 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定(年3回:5月・9月・1月)
- 301関税(対中)とは累積適用される
- 2026年1月には木製家具・キャビネット関税が段階的に引上げ(30%・50%)
企業の優先対応事項
緊急対応(~2025年11月):
継続対応:
- HTS分類の再確認(407品目追加を反映)
- 含有価額算定体制の整備
- Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
- 契約価格条項の見直し
- 対中国301関税重複の影響分析
- (国内生産者の場合)次回インクルージョン制度(2026年1月)の活用検討
情報収集:
この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。特に2025年8月の407
FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック