■HS2028■➀プラスチック廃棄物とリサイクル関連のHSコード

3915の大改編と、回収インフラ機器まで含む実務インパクト

2028年1月1日発効予定のHS2028は、WCO(世界税関機構)が取りまとめた299セットの改正を含みます。改正テーマには、環境・取締り目的でのモニタリング強化が明確に掲げられており、その代表格がプラスチック廃棄物(見出し3915)と、単回使用(single-use)プラスチック、さらに回収・選別に関わる機器です。(世界税関機関)

この記事では、HS2028で何がどう変わり、企業実務にどんな影響が出るのかを、ビジネス目線で整理します。


1. なぜ今、プラスチック廃棄物のHSが大きく動くのか

背景にあるのは、バーゼル条約(Basel Convention)のプラスチック廃棄物改正です。2019年に採択され、2021年1月1日から新しい区分(A3210、Y48、B3011)が有効になりました。ポイントは、国境を越えるプラスチック廃棄物の移動について、PIC手続(事前の同意手続)の対象範囲を明確化したことにあります。(バーゼル条約)

特に、PIC対象外になり得るB3011は「単一の非ハロゲン系ポリマーのみ」や「PE・PP・PETの混合(条件付き)」などを対象としつつ、ほぼ汚染がなく、他の廃棄物混入がないこと、環境上適正なリサイクルに向けられること、といった条件を伴います。(バーゼル条約)

HS2028では、この考え方を税関実務で扱いやすいように、HSコード側(3915)を大幅に細分化し、危険性・ポリマー種・混合形態で分類しやすくする方向が明確になっています。(連邦関税局)


2. HS2028の核心:見出し3915が「危険性」と「材質」で再設計される

HS2028では、見出し39.15(プラスチックのくず、切れ端、スクラップ等)が実質的に作り替えられます。大枠は次の3層です。(連邦関税局)

2-1. 3915.40:有害性のあるプラスチック廃棄物を切り出す

3915.40は、新設の小見出し注で定義される「一定の有害物質を含み、かつ危険特性を示す」プラスチック廃棄物のみを対象にします。注には、重金属類や有機ハロゲン化合物などの例示と、爆発性・引火性・腐食性・急性毒性・生態毒性等の危険特性が列挙されています。(連邦関税局)

実務的には、廃棄物として輸出入する際に、SDSや分析、汚染・添加剤情報などの裏取りが強く求められる領域です。

2-2. 3915.51〜3915.59:非ハロゲン系で、単一ポリマーかつ汚染が少ない廃棄物をポリマー別に分類

HS2028では、非ハロゲン系ポリマーの単一材(ほぼ汚染がなく他廃棄物の混入がない)を、材質別に細分します。代表例は次の通りです。(連邦関税局)

・3915.51 ポリエチレン系
・3915.52 ポリプロピレン系
・3915.53 スチレン系
・3915.54 ABS
・3915.55 PET
・3915.56 ポリカーボネート
・3915.57 ポリエーテル
・3915.58 尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂
・3915.59 その他

ここは、バーゼル条約B3011の「単一ポリマーで、ほぼ汚染がない」という条件と整合する思想が見えます。(バーゼル条約)

2-3. 3915.61、3915.62、3915.69:ハロゲン系やフッ素系を明確に分ける

ハロゲン系ポリマーを含む廃棄物は別建てに整理されます。PVCのみのもの(3915.61)や、特定フッ素系ポリマーの製造くず(3915.62)などが明示され、その他は3915.69に整理されます。(連邦関税局)

2-4. 3915.91:PE・PP・PETの混合(条件付き)を独立コードに

PE・PP・PETのみからなる混合で、ほぼ汚染がなく他廃棄物の混入がない場合を3915.91に整理します。その他は3915.99です。(連邦関税局)

さらに重要なのが、小見出し注のルールです。
「物理的に分離可能な異種ポリマーの混合廃棄物」は、単一ポリマー扱いの区分に入れられず、3915.40、3915.69、3915.91、3915.99のいずれかにしか分類できない、と明記されます。(連邦関税局)

これは、現場で起きがちな「混合だけど、主材で押し込む」運用にブレーキがかかることを意味します。


3. 「廃棄物」だけではない:単回使用プラスチックの定義とコード整備

HS2028では、Chapter 39に「single-use」の定義が入り、単回使用プラスチックのモニタリングを意識した小見出し整備が進みます。定義は、通常1回の使用後に廃棄またはリサイクルされ、反復・長期使用を意図しないもの、という考え方です。(連邦関税局)

具体例として、単回使用の飲用ストローが3917.24や3917.34に明示されたり、包装容器(3923)や食卓用品(3924)などでも単回使用区分が追加されています。(連邦関税局)

ここは、製品メーカー側にも「単回使用か否か」を税番で切り分ける実務が入り込む可能性があり、廃棄物(3915)に加えて、製品側のコード管理も見直し対象になります。


4. リサイクル関連設備も影響:回収機(reverse vending machines)がHS上で明確化

デポジット回収などで使われる自動回収機(reverse vending machines)も、HS2028で扱いが明確になります。見出し84.76の見出し文に「自動回収機」が明記され、さらに「自動回収機」専用の小見出し8476.30が新設されます。選別・圧縮・保管コンポーネントを付けた状態でも対象になることが書かれています。(連邦関税局)

回収機を製造・輸出入している企業や、設備を海外展開するリテール・飲料関連企業にとって、税番の固定化は契約・通関の安定材料になります。一方で、従来別分類で運用していた場合は、切替時にマスター改修が必要です。


5. 企業実務で起きる影響を、現場の言葉に直す

5-1. HSコードが細かくなるほど、要求される証拠も細かくなる

3915は「材質の自己申告」だけでは通りにくくなります。単一ポリマーか、混合か、ハロゲン含有か、有害性を示す添加剤や汚染があるか、といった判断に、仕様書・分析・工程情報が必要になります。(連邦関税局)

5-2. バーゼル対応の輸出入実務と、税番がより直結する

バーゼル条約では、PIC対象外になり得るB3011でも「環境上適正なリサイクル」や「ほぼ汚染がない」等の条件が明記されています。税番の細分化は、これら条件を税関実務に落とすための道具になりやすい構造です。(バーゼル条約)

輸出入規制は国ごとに運用が異なるため一律ではありませんが、少なくとも「税番が変わることで、許可要否や審査ポイントが変わり得る」点は、法務・環境部門と通関部門の連携テーマになります。(バーゼル条約)

5-3. 契約とコストに波及する

税番が変わると、通関で止まるリスク、追加の分析費、再仕分けコスト、差戻し時の輸送費負担などが顕在化します。廃棄物・スクラップ取引は単価が低いケースも多く、少額の追加コストでも損益が崩れやすい領域です。


6. いますぐ着手できる準備メニュー

以下は、プラスチック廃棄物とリサイクル関連で、実務的に効果が出やすい順の対応です。

6-1. 品目棚卸しの切り口を変える

・3915に入れている取引を、単一ポリマー、混合、ハロゲン含有、有害性疑い、の4類型で再分類
・輸出入国別に、許可や届出の関係部門を明確化(通関、環境、法務、営業)(連邦関税局)

6-2. 証跡セットを最小構成で整える

・ポリマー種の根拠(工程、材料証明、分析)
・汚染・混入の管理ルール(受入検査、サンプリング、保管方法)
・リサイクル先の実在と処理内容(契約、処理フロー、受領記録)(バーゼル条約)

6-3. マスターとEDIの設計を、2028年切替前提に変える

・HS2022とHS2028の両方を保持できる項目設計(適用開始日で切替)
・3915は、材質、ハロゲン有無、混合可否、有害性フラグを持たせる
・回収機など設備系(8476.30など)も、該当品番の棚卸しを実施(連邦関税局)


まとめ

HS2028では、プラスチック廃棄物(3915)が「危険性」と「ポリマー種」「混合形態」で再設計され、単回使用プラスチックの定義導入や、回収機(reverse vending machines)の明確化まで進みます。(連邦関税局)
これは、単にコードが増える話ではなく、取引の通し方が「証拠を伴う分類」に寄っていくことを意味します。

廃棄物・リサイクルは、通関だけで完結しません。環境・法務・購買・現場運用まで巻き込んで、2028年を待たずに、いま棚卸しと証跡設計に着手するのが安全です。

HS2028と品目分類アップデートを経営課題に変える方法 2028年1月1日に向けた企業の実務ロードマップ


はじめに

HS改正は、関税コストやEPA・FTAの原産地判定、輸出入規制、社内マスタやBIの集計軸まで、企業の意思決定に直結する基盤データの更新です。特にHSの改正は、現場が気づいた時にはシステム改修やデータ整備が間に合わず、誤申告やコスト増に繋がるケースが起きやすいテーマです。

この記事では、メールの要点を踏まえつつ、HS2028の背景、企業に起こる現実的な影響、そして今から取るべき準備を、経営・事業サイドの視点で整理します。根拠は一次情報を優先し、公式発表を中心に組み立てます。wcoomd

まず結論:今日のメールが示す3つの意味

メールの短い文面を、ビジネス視点で言い換えるとポイントは次の3つです。

HS2028はすでに「準備段階」ではなく「実装計画を動かす段階」に入っている

WCOの第75回HS委員会は、2025年3月にHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択しました。 この勧告は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する予定です。 つまり、企業に残された時間は「まだ2年ある」ではなく、「本格対応のための猶予が実質2年しかない」という意味です。strtrade+1​

HS2022からHS2028へのマッピングは、通関だけでなく社内データの変換作業である

メールが示唆する「HS2022→HS2028のマッピング開始」は、単なるコード置換ではありません。多くの場合、旧コード1つが新コード複数に分岐したり、統合されたりします。結果として、商品マスタ、BOM、購買カテゴリ、輸出入統計の集計軸まで影響します。WCOのHS委員会第76回会合(2025年9月)では、HS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)の作成に着手し、改善された形式を採用することで明確性と使いやすさを高める方針が示されました。customsmanager+1​

国別の関税率表・規制の追随で、実際のコストとリスクが確定する

HSは世界共通の6桁ですが、各国はその先の桁で自国の関税率表や統計品目表を作ります。したがって、企業にとっての本番は「自社が輸出入する国で、いつ、どのように関税率表や規制が改正されるか」です。米国ではUSITCが2025年8月にHTS改正のための調査(Investigation No. 1205-032)を開始し、2026年2月に予備案を公表、2026年9月に大統領へ報告する予定です。 これは、主要国がすでに国内実装に動き出していることを示す分かりやすい例です。usitc+1​

HS2028の公式タイムラインを整理する

意思決定で重要なのは、社内の工程表に落とせる形で公式の流れを押さえることです。

2025年3月
WCOのHS委員会第75回会合がHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択しました。 改正パッケージは299セットの改正で構成されています。aeb+2​

2025年6月
WCO理事会がHS2028改正案を採択し、HS条約締約国に回付しました。 締約国は6か月の留保期間中に異議を提起できます。tarifftel

2025年12月末
正式採択の予定です。wcoomd+1​

2026年1月
HS2028勧告が公表されます。 これが企業にとって全体像を把握できる最初のタイミングです。strtrade+2​

2028年1月1日
HS2028が発効し、各国の関税率表・統計品目表が順次HS2028ベースへ切替わります。tarifftel+2​

このスケジュールを見ると、企業が主導できる余地が大きいのは2026年から2027年にかけてです。ここでマスタ整備と影響分析を終えておかないと、2028年直前は各国の実装情報が押し寄せ、火消し型の対応になりがちです。

そもそもHS改正とは何を変えるのか

HSは6桁の国際共通コードで、各国・地域はこれに独自の枝番を付けて関税率表や統計品目表を運用しています。EUでは、HS6桁を土台に8桁のCN(Combined Nomenclature)が構成され、通関や統計に使われます。 つまり、国際共通部分(最初の6桁)が動くと、その上に乗る各国の体系が連鎖的に動きます。siccode

ビジネスに効くポイントは次の通りです。

  • HS改正は「商品名の辞書の更新」ではなく、企業の基幹データキーの更新
  • 同じ商品でも、分類ロジック(用途、材質、機能など)によって別コードになり得る
  • コードが変わると、関税率だけでなく、規制判定や社内集計も変わる

HS2028の方向性:なぜ改正されるのか

HS2028の改正は、単なる整理ではなく「政策目的を持ったアップデート」です。299セットの改正は、貿易パターンの変化、新技術の登場、そして社会・環境・安全保障上の要請に対応するためです。 具体例として、プラスチック廃棄物、ワクチン等の健康関連品目、農業分野で重要度が増した品目群、食品強化用のミックス、食品サプリメント、eバイク、半導体やトランスデューサ、清掃ロボット、ドローンなど、新製品・市場変化を踏まえた分類の整合が含まれます。aeb+2​

この点は経営層にとって重要です。なぜならHS改正は、次のような企業リスクを「構造的に増やす」からです。

  • 新技術領域は製品定義が早く変わり、分類根拠が揺らぎやすい
  • 環境・安全保障領域は規制との紐付けが強く、誤分類のペナルティが重くなりやすい
  • 簡素化の名目で統合・削除が起きると、旧データとの連続性が崩れ、集計・比較が難しくなる

「分類」アップデートが企業を揺らす理由

メール題名にあるClassificationは、単にHS改正だけでなく、日々積み上がる分類判断(分類裁定、分類意見、解説書の改正など)も含むと捉えるのが実務的です。

WCOのHS委員会は、HSの統一的解釈のために分類判断や解説の改正を継続的に行っています。第75回会合では105件の改正案、5件の解説注改正を採択し、第76回会合(2025年9月)では40件の分類決定を採択、21件の新規分類意見を作成し、2件の既存意見を削除しました。 また、HS2028とHS2022の相関表の議論も開始されています。wcoomd+2​

ここから導ける実務の教訓は明確です。分類は一度決めて終わりではなく、制度側の判断が積み重なっていく領域です。HS2028の大改正は、その積み重ねが一気に体系変更として表面化するイベントだと言えます。

ビジネスへの影響を「5つの損益項目」で見る

HS改正は通関や貿易管理の話に見えますが、事業PLの要素に分解すると、経営会議で議論しやすくなります。

関税と輸送を含む着地原価(landed cost)

HSコードが変われば、各国の関税率表で適用税率が変わる可能性があります。税率が同じでも、追加要件(統計単位、特別措置、規制コード付与など)が付くことがあります。国別の実装が確定するまで見通しは立ちにくいので、影響が大きい品目から順にシナリオ分析するのが現実的です。usitc

EPA・FTAの原産地判定

多くの協定では関税分類(項、号など)を使って原産地規則を定義します。HSが改正されると、ルールの適用解釈や、協定側の改訂・経過措置が論点になります。調達や生産設計の意思決定に影響するため、貿易管理部門だけに閉じない論点です。

輸出入規制・社内コンプライアンス

HSコードが規制の入口になっているケースは少なくありません。分類の精度がコンプライアンスの前提になります。

需要・売上・粗利の分析軸

HSを商品分類のキーとして社内集計に流用している企業は多いはずです。HS変更は、経営ダッシュボードの前年対比や市場シェア分析の連続性を壊し得ます。ここは財務・経営企画が早めに関与すべき領域です。

取引条件・価格交渉

関税コストが変われば、価格改定や契約条項(関税負担、価格改定条項、長期契約の見直し)に波及します。特にBtoBで長期契約が多い業界は、HS改正が「誰が追加コストを負担するか」の交渉材料になります。

2026年から始める実務ロードマップ

ここからが本題です。HS2028対応は、プロジェクトとして切り出すと成功確率が上がります。おすすめは次の6ステップです。

ステップ1 影響が大きい領域の棚卸し

  • 輸出入額上位の品目
  • 規制対象や監査頻度が高い品目
  • FTA利用比率が高い品目
  • 新技術カテゴリ(例:電子部品、機器、電池、環境関連など)

ステップ2 分類根拠の整備

コードだけを並べても、変更時に判断が揺れます。製品仕様、用途、材質、機能、構造、技術資料など、分類根拠の証跡を揃えます。

ステップ3 HS2022からHS2028へのマッピング設計

相関表を使う場合でも、単純な置換ではなく、分岐・統合の扱いが肝になります。WCO側でも相関表は重要な実装ツールとして議論されています。 社内では「自社の品目がどの分岐に該当するか」を決める必要があります。customsmanager+1​

ステップ4 国別の実装情報を監視する仕組みを作る

HSは各国で枝番と税率が付くため、国別ウォッチが必要です。特に輸出入量が多い国は、官報、税関告示、関税率表改正、関連機関のパブコメなどを定常監視に入れます。米国向け取引がある場合、USITCのHTS改正プロセスのように、ドラフトが公表されるタイミングを先に工程表へ入れられます。starusa+1​

ステップ5 システムとデータのバージョン管理を実装する

HSの年版(例:HS2022、HS2028)と適用期間をデータ項目として持ち、いつの時点でどのHS体系を使ったのかを追える設計にします。ここを曖昧にすると、監査対応とBIの整合が崩れます。

ステップ6 社外パートナーとの同期

通関業者、フォワーダー、海外子会社、主要サプライヤーに対し、いつから何を切り替えるかを共有します。データ連携をしている場合は、マッピングテーブルの配布・受領、テスト計画まで含めます。

経営層が見ておくべきKPI

現場任せにすると、進捗が見えません。次の指標は、経営側でもモニタリングしやすいです。

  • 売上または輸出入額の上位80パーセントを占める品目のうち、HS2028影響分析が完了した比率
  • マッピングで分岐・統合が発生する品目数(ここが工数とリスクの中心)
  • 規制対象品目の再確認完了率
  • 主要国別の実装情報収集状況(ドラフト入手、社内反映、テスト完了)

まとめ:HS2028は一度きりのイベントではない

HS2028は大きな節目ですが、そこがゴールではありません。WCOは継続的にHSの解釈と適用の統一を推進しており、今後も定期的な改正サイクルが続きます。 つまり、企業としては「改正のたびに頑張る」のではなく、「改正に強い運用能力」を作ることが投資対効果の高い戦略になります。wcoomd+1​

HSは通関のための番号に見えて、実態は利益管理と規制対応の共通キーです。今日のメールをきっかけに、2028年の切替を、リスク回避だけでなく、データ基盤整備と意思決定スピード向上の機会として設計していくのが得策です。


  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  2. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced
  3. https://www.customsmanager.info/post/wco-hs-decisions-what-changed-hsc-76-customs-manager-ltd
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/october/harmonized-system-committee-concludes-its-76th-session-with-remarkable-outcomes.aspx
  5. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  6. https://starusa.org/trade-news/usitc-investigation-launched-on-2028-harmonized-tariff-schedule-changes-to-align-with-global-standards/
  7. https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php
  8. https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/
  9. https://siccode.com/page/combined-nomenclature-cn
  10. https://global-scm.com/blog/?p=3091
  11. https://www.scribd.com/document/899687945/75
  12. https://www.internationaltradenews.co.uk/issue80/next_edition_of_harmonised_system_to_be_available_from_january_2026.htm
  13. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/tools-to-assist-with-the-classification-in-the-hs/hs_classification-decisions.aspx
  14. https://global-scm.com/hscf/archives/466
  15. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx?stf=1
  16. https://catts.eu/wco-wto-updates-april-2025/
  17. https://www.tariffnumber.com/info/combined-nomenclature

自動車用センサー群のHS2028切替判断を深掘りする


車載センサーは、いまやクルマの付加価値の中心です。ところが貿易実務の現場では、センサーは関税分類が揺れやすい代表格でもあります 。なぜなら、車両の部品なのか、電気機器なのか、計測機器なのか、あるいは半導体デバイスなのかという境界線上に立ち続けているからです。wcoomd

そして2028年1月1日にHS2028が発効します 。HSの最初の6桁が変われば、輸出入申告、原産地証明、社内マスター、取引先との品目管理まで連鎖的に影響します。特にセンサー群は、分類根拠が曖昧なままだと、切替時に一斉に火を噴きやすい領域です。aeb+1​

この記事では、HS2028で自動車用センサー群の切替判断をどう進めるべきかを、経営・事業・SCM・貿易管理の目線で、実務に落とせる形まで深掘りします。制度の正確性を優先し、確度の高い一次情報に基づいて整理します。

まず押さえるべきHS2028の公式タイムライン

HS2028は、単に「2028年に番号が変わる」という話ではありません。準備の起点は2026年1月です 。wcoomd

世界税関機構(WCO)は、2025年3月の第75回HSC会合でHS2028改正勧告を暫定採択し、2025年12月末に正式採択された後、2026年1月に公表され、2028年1月1日に発効すると明記しています 。aeb+1​

またWCOは、HS2028と現行HS2022の相関表(Correlation Tables)を整備しており、実装のための重要な参照資料になると説明しています 。global-scm+2​

つまり企業側の現実的な勝負どころは、2026年から2027年にかけて、どれだけ分類根拠とマスター整備を詰められるかです。

なぜ自動車用センサーは分類が揺れやすいのか

車両部品扱いにしたくても、HSのルールがそれを許さないケースがある

現場で頻出する誤解は「車に使うのだから車両部品(第87類)でよい」という発想です。ところが、HSは用途だけで決める体系ではありません 。janronconsult

HSのSection XVII(車両等のセクション)のNote 2では、「部品・付属品」として分類されないものを明確に列挙しており、その中に「第85類の電気機器」と「第90類の機器(計測・検査等)」が含まれます 。traide+1​

言い換えると、あるセンサーが第85類や第90類に該当するなら、たとえ車載専用品であっても、原則として車両部品として分類できない構造になっています 。ここが、センサー分類の根本的な難しさです。janronconsult

半導体としてのセンサーという概念が、すでにHSの中に組み込まれている

HS2022では、半導体デバイスの定義の中で「Semiconductor-based sensor(半導体ベースのセンサー)」が定義されています 。圧力、加速度、磁場、光、湿度などの物理・化学量を検知し、電気信号へ変換するもの、という考え方です 。hts.usitc

さらに重要なのは、これらの定義に該当する物品について、見出し8541や8542が他の見出しより優先される、という優先規定が存在する点です 。customsmobile

この構造があるため、同じ「センサー」という呼び名でも、

  • 半導体デバイスとしてのセンサー
  • 計測機器としてのセンサー
  • 電気機器としてのセンサー
  • 車両部品としてのセンサー

に分岐し得ます。HS2028への切替判断は、この分岐を放置したまま相関表だけで置換すると、高確率で破綻します。

切替判断の前提を揃える

HS2028対応は、コードの付け替え作業ではなく、分類根拠の棚卸しです。センサー群では特に、次の2つを先に揃えると後工程が崩れにくくなります。

製品群を「素子」「モジュール」「アセンブリ」で分ける

自動車用センサーと一口に言っても、輸出入される姿が違います。分類が変わるのは、むしろここです。

  • 素子寄り: ダイ、ウェハ、パッケージICに近いもの
  • モジュール寄り: PCB、コネクタ、筐体、補正回路、通信インタフェースを含むもの
  • アセンブリ寄り: ハーネス一体、ブラケット一体、車両の特定機能ユニットに統合されたもの

同じ機能を担うセンサーでも、この姿の違いで候補章が変わることがあり、HS2028の相関表だけでは吸収できません。

技術情報は「分類のための記述」に翻訳して整理する

分類の議論で行き詰まる会社ほど、設計資料があっても分類判断に必要な記述になっていません。最低限、次の項目を製品ごとに揃えると判断速度が上がります。

  • 検知対象(圧力、加速度、光、電磁波など)と検知原理
  • 出力が電気信号なのか、データ通信なのか
  • 内蔵回路の範囲(信号変換のみか、演算・制御まで含むか)
  • 実装形態(半導体チップ、パッケージ、基板実装、筐体一体)
  • 車両以外への転用可能性(専用品か汎用品か)
  • 輸出入時の構成品(付属品、ケーブル、ソフトの扱い)

この翻訳ができると、HSのセクション注・類注の適用可否を論理的に追えるようになります。

自動車用センサー群のHS2028切替判断フレーム

ここからが本題です。HS2028の切替判断を、意思決定と実装の両面で崩れにくい形にします。

ステップ1 現行コードの根拠を分類する

まず、現行HSコードが「なぜそのコードなのか」を4つに分類します。

  • 税関の文書回答や事前教示に基づく
  • 類似品の公的な分類事例に基づく
  • 通関業者や取引先の提示を採用した
  • 社内慣行で決めた

この4つは、HS2028移行時のリスクがまったく違います。特に、後ろ2つは相関表を当てる前に根拠の再構築が必要です。

ステップ2 まず6桁で論点を収束させる

HSは6桁が国際共通の基礎で、各国はその下に細分を付けます。HS2028の改正も、まず6桁のレベルで構造が変わります 。wcoomd

センサー群の切替判断は、いきなり国別の細分(日本の9桁など)から詰めるより、6桁の所属の筋を通した方が早く確実です。ここで重要になるのが、前述のセクション注です 。車両部品に寄せたくても、第85類や第90類に該当するなら排除される可能性があることを先に踏まえます。janronconsult

ステップ3 相関表は「置換表」ではなく「出発点」として使う

WCOはHS2028とHS2022の相関表を整備し、実装の重要な参照資料になるとしています 。wcoomd

ただし、相関表は次を保証しません。

  • 旧分類が正しかったこと
  • 国別の細分がそのまま対応すること
  • 複合品やモジュールの本質的な所属判断

したがって、相関表を当てた後に、センサー群の中でも境界品目だけは必ず再判定の対象に残すのが実務的です。

ステップ4 影響評価は関税だけで終わらせない

ビジネス判断としての切替では、税率だけを見ると失敗します。特に自動車部品はEPA利用比率が高く、原産地規則との整合が利益に直結します。

つまりHS2028切替は、関税率の変更だけでなく、原産地判定ロジックや、協定バージョン管理にも波及します 。global-scm

判断が難しいセンサー群ほど、事前教示を戦略的に使う

センサーは、複合品・新技術・半導体境界の要素が重なりやすく、社内だけで決め切るとブレます。ここで効くのが税関の事前教示です。

日本税関は、輸入前に関税分類と税率を照会し、文書による回答を得られる制度として事前教示を案内しています 。これにより、原価計算や販売計画を立てやすくなり、申告前に税番が固まることで通関が円滑になるとされています 。global-scm

さらに、文書による回答は原則として一定期間尊重されることや、全国の税関で一貫して扱われることなど、実務上の安定性も示されています 。global-scm

HS2028の切替判断では、全品目を事前教示に出す必要はありません。費用対効果が高いのは、次のタイプです。

  • 8708(車両部品)と85類・90類の境界にいるセンサー
  • 素子とモジュールの境界にいる製品(同じ型番でも出荷形態が複数ある)
  • 高関税国向けで、税率差が利益を左右する製品
  • EPA適用可否が案件の採算を左右する製品

経営と現場が合意しやすい「切替判断」の落としどころ

ここまでの話を、意思決定に落とし込みます。ポイントは、分類の正解を当てることより、社内で再現可能な判断基準を作ることです。

切替判断を3層に分ける

センサー群は、製品ごとに確実性が違います。判断を次の3層に分けると、意思決定が進みます。

  • 確定層: 公的根拠があり、HS2028でも相関表で素直に移れる見込みが高い
  • 要検証層: 相関表は引けるが、境界論点が残るため再判定が必要
  • 要外部確定層: 事前教示や主要国の判断を取りに行くべき

この区分があると、2026年に全社的な作業量とコストを見積もれます。

マスターは二重持ちが現実解になりやすい

HS2028の発効日は2028年1月1日です 。輸入申告は原則その時点で最新HSで行う前提になるため、直前での一括更新は危険です 。wcoomd+2​

多くの企業で現実的なのは、

  • 現行HS(運用用)
  • 次期HS(HS2028想定)

をマスターで併存させ、取引・国・時点で使い分けられる設計にすることです。特に、協定ごとにHSバージョンが違う原産地判定では、この設計が後から効いてきます。

2026年からの実務ロードマップ

最後に、企業の動き方を具体化します。WCOの公式スケジュールに合わせると、2026年が準備の起点です 。wcoomd

2026年上期

  • WCO公表のHS2028改正内容を精読し、センサー群の影響範囲を特定
  • 現行分類の根拠を棚卸しし、要検証層と要外部確定層を切り分け
  • 相関表を使った一次マッピングの試作を開始(暫定)

2026年下期から2027年

  • 境界品目の再判定と、社内分類基準の文書化
  • 必要品目は事前教示の取得を進める(特に高関税国、EPA重要品)
  • ERP、PLM、貿易システム、顧客提出書類の二重コード運用を設計

2027年下期から2028年直前

  • 国別細分の確定版への置換、最終テスト
  • 取引先との品目マスター突合、インボイス記載やEDI影響の最終確認
  • 発効日に合わせて運用切替

まとめ

自動車用センサー群のHS2028切替判断で一番危険なのは、相関表で機械的に置き換え、現行の分類根拠の弱さをそのまま引き継ぐことです。センサーは、第87類の車両部品に見えても、第85類や第90類に該当すれば部品扱いが排除され得るという、HSの構造的な難しさを抱えています 。janronconsult

一方で、タイムラインは明確です。2026年1月に改正勧告が公表され、2028年1月1日に発効します 。aeb+1​

この2年の間に、センサー群を素子・モジュール・アセンブリで棚卸しし、根拠の強い分類に再構築し、必要なものは事前教示で確定させ、マスターとシステムを二重運用に耐える形へ整備する。これが、経営にとっても現場にとっても、最も損失が出にくい切替判断になります。


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HS2028と半導体分類の前提


半導体は、関税・原産地・輸出入規制・統計・契約条件まで巻き込んでビジネスを動かす中核品目です。 その土台となるのが、HSコードを中心とした品目分類であり、2028年1月1日に次期版HS(通称HS2028)が発効します。wcoomd+1​

WCOの公表では、HS2028に向けた改正パッケージは「299セットの改正」としてHS委員会(HSC)で暫定採択され、2025年末のWCO理事会(Council)での正式採択を経て、2026年1月に公表され、2028年1月1日に発効するタイムラインが示されています。 HS改正は単なる「コード表の更新」ではなく、発効日をまたぐ取引、在庫、長期契約、サプライチェーン全体のデータ連携に一斉に影響します。global-scm+2​


なぜERP対応が重くなるのか

WCOは、HS改正の実装には「事実上約2年半」の準備期間が必要であると整理しており、その中に相関表(Correlation Tables)の整備、解説書改正、各国の関税率表・関連法令改正、システム更新を含めています。 企業側では、ERPや関連システムのマスタ更新・インターフェース改修・周辺業務の見直しが、このスケジュールに乗って進むことになります。wcoomd+1​

つまりHS改正は、貿易実務だけでなく「データとシステムの大規模改修」を前提にした国際ルールであり、その中核にERPが位置します。youtube​


HS2028で半導体が注目される理由

WCOや各国解説によれば、HS2028改正は新技術や貿易実態の変化への対応を目的としており、その改正議題の一つとして半導体および半導体ベースのトランスデューサー(一般に各種センサー類を含む)が明示されています。 このため、半導体は「たまたま変わるかもしれない品目」ではなく、「改正射程に入っている品目」と位置づけられます。global-scm+1​

半導体とその周辺(センサー、モジュール、基板、製造装置、材料)は、次の広い領域に直結します。global-scm+1​

  • 関税とコスト:HSコードは関税率、追加関税、免税措置の起点であり、特に地政学的に政策が動きやすい分野ほど分類精度がコストに直結する。
  • 原産地判定とFTA/EPA:品目別規則(PSR)はHSコードに紐づくのが一般的であり、版が変わると参照関係や運用が揺れる。
  • 輸出入申告とリードタイム:差戻しや照会は出荷遅延や違約リスクにつながる。
  • 統計・KPI・管理会計:HSコードは通関統計だけでなく社内品目体系にも使われるため、分類変更は前年対比やカテゴリ別粗利の見え方を変える。

半導体分類が難しい理由

8541と8542を軸とする体系

現行HS2022では、半導体デバイスは8541、電子集積回路は8542が分類の中心です。tsukanshi+1​

  • 8541:半導体デバイス(ダイオード、トランジスタ、半導体ベースの変換器=トランスデューサー等)kanzei+1​
  • 8541.51:半導体ベースの変換器(semiconductor-based transducers)dutyskip+1​
  • 8542:電子集積回路(プロセッサ・コントローラ、メモリ、アンプ、その他、などの6桁区分)deepbeez

このように、半導体は「とりあえず電子部品」で片付ける領域ではなく、国際的に細かい切り分けが前提の領域です。tsukanshi

境界線で起きやすい3つの論点

半導体分類で揉めやすいポイントは、そのままERPマスタ設計上の事故ポイントと重なります。global-scm

  • 単体デバイスか、集積回路か、モジュールか
    同じ「チップ」に見えても、ウェハ、ダイ、パッケージ、マルチチップ、モジュール化などで扱いが変わります。 これに合わせて過去の改正や注釈が見直されてきました。global-scm
  • トランスデューサー(センサー)なのか、測定機器なのか
    素子単体か、ハウジングや補正回路を含むか、表示や制御機能を持つかで、8541系・90類等との境界が変わります。 ERP上で「品目名」と「型番」だけでは、こうした属性差が情報として落ちてしまい、後で分類根拠を再構成できません。deepbeez+2​
  • 部品か、特定機器の部分品か
    多用途な半導体は、機器側の部品として見たくなる一方で、注釈上は半導体側の番号を優先する考え方が採られる例があります。 このため、どの属性に基づいて分類したかをERP内で残せる設計が必須になります。deepbeez+1​

ERP設計の中核思想

HS2028対応を「HSコードの置換作業」として捉えると失敗しやすく、「分類データの版管理プロジェクト」として設計する必要があります。 半導体分類のHS2028対応において、ERPに求められる設計思想は次の4点です。global-scm+2​

設計思想1:HSコードを「値」ではなく「版付きデータ」として持つ

ERPの品目マスタにHSコード欄が1つだけ、という設計はリスクが高く、少なくとも以下を持たせる必要があります。global-scm

  • HS版(例:HS2022、HS2028)を明示するフィールド
  • 有効開始日・有効終了日
  • 判定根拠(社内判断メモ、仕様書リンク、事前教示・裁決、通関士見解など)を紐づける仕組み

HS2028は2028年1月1日発効であり、発効日前後にまたがる出荷・輸入は必ず発生します。 日付で切り替えられない設計は、現場を破綻させます。wcoomd+1​

設計思想2:グローバル6桁と国別拡張桁を分離する

HSは6桁が国際共通で、その下の桁は各国が独自に拡張します。 ERPでは、グローバル6桁と国別桁を論理的に分離した方が安定します。tarifftel+1​
推奨される持ち方の例:

  • グローバルHS6桁(全社共通キー)
  • 国別品目番号(各国の追加桁、必要な国だけ)
  • 取引条件別例外(委託加工、キット、サンプル等)の管理テーブル

こうしておくと、HS2028で6桁が動く場合でも、国別追加桁・国内制度変更を切り離して管理できます。global-scm

設計思想3:品目属性を「分類可能な粒度」で持つ

半導体分類で効いてくる属性は、型番だけでは表現できません。 最低限、次のような属性をERP内で保持する必要があります。global-scm+1​

  • 形態:ウェハ、ダイ、パッケージ、モジュール、基板実装品
  • 種別:半導体デバイス、半導体ベースのトランスデューサー、電子集積回路、部分品
  • 構成:単体、マルチチップ、複合化(マルチコンポーネント等)
  • 機能カテゴリ:プロセッサ・コントローラ、メモリ、アンプ等(8542の区分に対応)

設計思想4:分類変更を「ワークフロー」として扱う

Excelマッピングで置換して終わらせ、登録ルールや承認フローを変えないのが、HS改正対応で最も危険なパターンです。global-scm

  • 誰が、いつ、どの根拠で、どの版のHSコードに変更したか
    を、ERP内の承認フローとログで追える状態にする必要があります。 分類は監査対象であり、「説明可能性」がガバナンスの中核となります。global-scm

HS2028に向けたERP実装ステップ

HS2028改正に対して半導体関連企業が現実的に動くためのステップを、業務成果物ベースで整理します。global-scm

ステップ1:影響範囲の確定

成果物:対象品目リスト、リスク優先度、責任部門の割当。global-scm

  • 自社品目を、半導体関連の観点でセグメント(ディスクリート、IC、センサー素子、モジュール、基板実装品、部分品、試作品等)。
  • 売上・調達額、国別取引量、関税影響、監査リスクを軸に優先度を付与。

半導体は品番数が多いため、全品目を同じ熱量で扱うと破綻します。リスクベースで切るのが現実的です。global-scm

ステップ2:ERPデータモデル改修

成果物:マスタ項目設計、版管理設計、入出力IF仕様。global-scm
必須要件:

  • HS版と有効日管理
  • 国別コードの分離
  • 根拠資料リンク・分類メモ・承認フロー
  • 申告システム、通関業者、物流EDIとの連携項目の整合

ステップ3:HS2022→HS2028マッピング設計

成果物:マッピングルール、例外判断基準、再判定フロー。global-scm

  • WCO相関表に基づく自動変換範囲を定義(一対一は自動、分岐は再判定へ)。global-scm
  • 再判定に必要な技術情報の収集ルート(設計、品質、サプライヤー)を整備。半導体は「データがない」ことが最大のボトルネックになりやすい領域です。global-scm

ステップ4:周辺業務への波及対応

成果物:業務手順書改定、教育資料、統制ポイント設計。global-scm
見落とされやすい連鎖:

  • 原産地判定ロジック(PSR参照、社内原産地計算)
  • 価格条件(関税転嫁条項、DPP・見積ロジック)
  • 出荷停止ルール(HS未設定・承認未了・例外コード)
  • 監査対応(説明責任を果たせる資料保管)

ステップ5:テストと切替計画

成果物:移行手順、発効日跨ぎテスト、例外取引テスト。global-scm
半導体企業で必須となるテスト例:

  • 2027年末受注・2028年初出荷
  • 2027年末輸入・2028年以降補正申告
  • 返品・無償交換・サンプル・修理逆流
  • 同一品目の複数国出荷(国別桁の相違)

ステップ6:運用定着

成果物:分類ガバナンス、定期棚卸、モニタリング指標。global-scm

  • 分類変更の窓口を一本化。
  • 仕様変更・製造委託先変更・梱包形態変更など、変更検知の仕組みを整備。
  • 申告差戻し率、分類照会件数、監査指摘件数をKPI化。

よくある失敗パターンと回避策

  • 失敗1:HSコード欄だけ差し替えて終わる
    回避策:有効日・版・根拠・承認の4点セットでデータモデルを設計し、まずERP内の「データの姿」を変える。global-scm
  • 失敗2:センサーやモジュールを一括で同じ分類に寄せる
    回避策:形態と機能を属性として持ち、分類判断の再現性を確保する。半導体は同一カテゴリに見えて境界論点が多い領域です。global-scm
  • 失敗3:国別実装差を無視してグローバル統一を強行する
    回避策:グローバル6桁と国別桁を分離し、国別例外を許容する設計にする。tarifftel+1​
  • 失敗4:発効日を跨ぐ取引の例外処理が決まっていない
    回避策:受注日、出荷日、輸入申告日、インボイス日など、どの日付でHSを確定するかを業務ルールとして明文化し、システム参照日付を統一する。global-scm

経営層に伝えるべきポイント

HS2028対応は貿易部門だけのテーマではなく、半導体・センサー領域では分類が政策と市場の両方に直結しやすいため、ERP全体に影響が及びます。 WCOの議論やEU文書でも、改正対象例として半導体・トランスデューサーが挙げられており、今後の相関表や各国実装で具体的なコード変更が明らかになります。global-scm+2​

だからこそ、HS2028対応を「一度きりの置換作業」と見るのではなく、「分類データを版管理し、説明可能な形で維持できる企業体質への転換」として位置づける方が、投資対効果は高くなります。global-scm+1​


本稿の要点整理

  • HS2028は2028年1月1日発効、2026年1月公表のスケジュールで進んでいる。wcoomd
  • HS2028勧告パッケージは299セットの改正から成り、半導体ベースのトランスデューサーを含む半導体・センサー領域が改正議題に含まれている。global-scm
  • 半導体は8541・8542を軸に国際的に細分化されており、トランスデューサーやIC区分など、ERPで属性を持たないと分類根拠を再現できない領域である。kanzei+2​
  • ERP対応の核心は、HSコードを「版・有効日・根拠付きのデータ」として管理し、グローバル6桁と国別桁を分離し、分類変更をワークフロー化する設計にある。global-scm+1​
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  15. https://global-scm.com/hscf/

日・EU・中国のHS2028移行と監視の実務要点


ビジネスマン向け深掘り版(2026年1月時点)

グローバルにモノを売買する企業にとって、HSコードは単なる分類番号ではありません 。関税コスト、原産地判定、輸出入規制、制裁対応、統計、社内マスタの整合性まで、実務の土台になっています。wcoomd

その土台が、2028年1月1日に大きく更新されます 。WCO(世界税関機構)の次期改正はHS2028として実施され、勧告は2025年末に正式採択、2026年1月に公開、2028年1月1日に発効という整理が示されています 。wcoomd

本稿では、日本・EU・中国を主要対象に、HS2028の移行(切替)と監視(継続運用)を、実務の観点から深掘りします。ポイントは、単にコード表を置き換えるのではなく、社内外のデータと判断の連鎖を、期限つきで安全に繋ぎ直すことです。


1. HS2028はいつ確定し、いつ効くのか

まず日程と前提を固める

今回の改正は通常の5年サイクルではなく、例外的に1年延長され、次版は2028年1月1日に実施されます 。延長理由はパンデミックによる交渉サイクルへの影響で、次のサイクル(2033)は通常の5年に戻るという整理です 。wcoomd+1​

2025年3月のHS委員会(HSC)第75回会合でHS2028改正の勧告案が暫定採択され、2025年末の正式採択後、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効というタイムラインがWCOから明示されています 。改正内容は299セットの修正案を含み、HS2022の351件と比べて数は少ないものの、電子機器、医薬品、グリーン技術、デュアルユース製品など多岐にわたる分野で重要な変更が予想されています 。tarifftel+1​

HS条約の手続として、WCO理事会が勧告した改正は通知後6か月以内に異議がなければ受諾されたものとみなされます 。wcoomd

ここから実務的に導ける結論は2つです。

結論1 2026年は「影響分析と設計の年」
勧告が公表され、比較や移行設計を進められる状態に入ります 。wcoomd

結論2 2027年は「実装と並行稼働の年」
制度対応、取引先連携、IT改修、運用訓練を終え、年末の切替を安全に越えるのが主戦場です。


2. 日本・EU・中国で「同じHS」と言っても桁と制度が違う

移行設計の前に押さえる土台

HSの国際基準は6桁ですが 、実務では各国・地域が独自の下位桁を付けます。ここを曖昧にしたまま移行を進めると、マスタは揃っているのに通関で止まる、という事故が起きます。globalior

日本

日本の輸出入手続で用いる統計品目番号は9桁で、最初の6桁がHSの番号、下3桁が国内細分です。つまり、HS2028の改正は、まず6桁部分が動き、続いて9桁全体の再編として現場に降りてきます。

EU

EUでは、HSを基礎にしたCN(Combined Nomenclature、統合品目分類表)が8桁で、さらにTARIC(Integrated Tariff、統合関税率表)はEU措置などを反映する10桁以上のコード体系です 。同じ製品でも、対EUの申告ではCNやTARICの桁まで正しく持つ必要があります。さらに、CNは原則として毎年更新される枠組みのため、HS2028対応は単発プロジェクトではなく、年次更新に接続した運用にするのが現実的です 。siccode+1​

中国

中国の関税分類体系はHS6桁を基礎に、8桁の細分(中国独自の7桁目と8桁目)を持つことが中国税関の公式説明から確認できます 。第7桁と第8桁は、関税率、貿易統計、貿易政策措置のために設定された国内小分類です 。さらに申告実務では、監管(監督管理)や検査検疫などの管理要素に関連して9桁目以降の追加番号体系を扱う場面があるため 、社内マスタ上も「HS6桁」「中国8桁」「申告用の追加桁」という層構造で整理しておくと事故が減ります。china-briefing+2​

実務の要点は、次の分離です。

  • 国際共通のHS6桁を基幹マスタとして持つ
  • 国・地域別の拡張桁(日本9桁、EU8桁と10桁、中国8桁など)を派生マスタとして持つ
  • 有効開始日と終了日を必ず持たせ、2028年1月1日で切り替わるようにする

3. HS2028移行で本当に難しいのは「番号の差し替え」ではない

連鎖の断線を防ぐ8つの作業パッケージ

移行プロジェクトを失敗させる典型は、分類表の差し替えだけをゴールにしてしまうことです。実務では、HSコードに紐づく判断とデータが、社内外に連鎖しています。どこかが切れると、通関停止、追徴、納期遅延、在庫滞留になります。

以下は、日・EU・中をまたぐ企業が、現実に組むべき作業パッケージです。

3-1 影響分析

目的は「どの商品が変わるか」を早く確定することです。

WCOはHS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)整備を進めており、相関表の改善が議論されています 。相関表は必須のツールですが、法的拘束力を持つ文書ではない点に留意が必要です 。unstats.un+1​

実務では次の順で進めると速いです。

  • 売上上位、輸入額上位、利益率上位、規制品目を優先して影響の当たりを付ける
  • 相関表で、変更が入る6桁を抽出する
  • 変更が入る6桁の配下にぶら下がる社内品目を全て棚卸しする
  • 変更の種類(分割、統合、品目注の移動、文言変更)ごとに再分類の負荷を見積もる

3-2 マスターデータ設計

HSを「属性」ではなく「重要な基幹コード」として扱う必要があります。

推奨する設計思想は、二階建てです。

一階 製品実体の識別(品名、仕様、材質、用途、機能、成分、写真、図面、SDSなど)
二階 各国分類(HS6桁、JP9桁、EU CN8桁とTARIC10桁、中国8桁など)と、その根拠

二階に有効期間を持たせないと、2027年末から2028年初の出荷が破綻します。出荷日、積載日、通関日、到着日が跨ぐためです。

3-3 再分類の意思決定プロセス

重要なのは、誰が最終判断し、どう根拠を残すかです。

おすすめの運用は、社内でリスク階層を作ることです。

  • 低リスク 既存分類の微修正で済む、税率差が小さい、規制が軽い
  • 中リスク 税率差が大きい、原産地ルールや許認可が絡む
  • 高リスク アンチダンピング、制裁・規制、危険品、医薬・化学品、デュアルユース等に波及

高リスク領域は、各地域の事前教示や拘束力ある判断を活用して、係争リスクを下げます。

日本は、輸入前に税番や税率について税関へ照会し回答を得られる事前教示(品目分類)が制度化されています。EUはBTI(Binding Tariff Information、拘束的関税情報)が一般に3年間有効で、EU域内全体で拘束力を持つ枠組みです 。中国も、貨物の実際の輸出入前に商品帰類の予裁定申請ができる案内が税関サイトに示されています。welcometodojo+1​

3-4 関税と原産地と規制の連鎖チェック

HS変更は、関税率表だけでなく、原産地規則や規制品目リストにも波及します。特にFTAの品目別規則(CTCルールなど)はHS改正で読み替えが必要になります。

したがって、移行時のチェック項目は次のように「連鎖」で設計します。

  • 税率 通常税率、特恵、暫定措置
  • 原産地 品目別原産地規則(PSR)の読み替え、サプライヤー証明の更新
  • 規制 許可承認、輸入規制、輸出管理、制裁、二重用途、環境規制など
  • 統計 社内KPI、需要予測、原価分析の分類軸

3-5 IT改修とデータ連携

影響が出やすいのは、次の周辺です。

  • ERPや品目マスタの桁数制約
  • 通関ソフトやフォワーダー連携の項目定義
  • 電子インボイス、物流ラベル、原産地システム、輸出管理システム

特にEUはCNとTARIC、中国は申告で追加番号体系を扱う場面があるため、桁数固定の実装は危険です 。rotra+1​

3-6 取引先と契約の調整

HS変更は、価格や責任分界にも影響します。実務で効くのは次の2点です。

  • どちらがHSコードを確定し、誤りのコストを負担するのか
  • 2028年以降、分類変更により関税や規制が変わった場合の価格調整条項

サプライヤーには、製品仕様の提出フォーマットを統一し、分類根拠の再取得を促すのが有効です。

3-7 年末年始の通関シナリオ設計

2027年末から2028年初にかけては、通関日基準で新旧が割れる可能性があります。輸送モードによってリードタイムが異なるため、次を事前に決めます。

  • どの日付をもってHS2028を適用するか(通関受理日、申告日、蔵置許可日など、各地域の実務に合わせる)
  • 出荷を前倒しする品目、逆に遅らせる品目
  • 旧コードで出した書類と新コードでの申告がズレる場合の対応

3-8 ガバナンスと監査可能性

HSは担当者の経験に依存しやすい領域です。移行期ほど、属人化がリスクになります。

最低限、次の体制を置くのが現実的です。

  • オーナー 通関コンプライアンス責任者
  • 協力 調達、物流、営業、経理、IT、法務
  • 意思決定会議 高リスク分類のみ合議、低リスクはルール化
  • 監査ログ 誰が、いつ、どの根拠で変更したか

4. 監視の実務要点

HS2028は切替が終わってからが本番

ここで言う監視とは、同じ製品でも、時間と地域でコードが変わり得る前提で、社内データと実際の申告を継続的に整合させる運用です。

4-1 WCOレベルの監視

WCOはHS委員会の活動の中で、HS改正に向けた相関表整備を進めていることが公表されています 。相関表はWCOのウェブサイトで公開され、ユーザビリティ課題が継続的に議論されています。ddcustomslaw+1​

実務では、WCO側の更新を受けて社内の比較表を更新し、影響品目の再確認を四半期ごとに回す形が堅いです。

4-2 日本の監視

日本は統計品目番号が9桁で、最初の6桁がHS、下3桁が国内細分である点を踏まえ、更新の粒度を二段階で見ます。また、事前教示(品目分類)の公開情報検索も提供されており、類似品の判断や根拠整理に使えます。

監視の実務例

  • 四半期 主要品目について、事前教示の類似回答や分類変更の兆候をチェック
  • 月次 社内の例外申告(差戻し、補正、税関照会)を集計し、分類起因の案件を重点レビュー

4-3 EUの監視

EUはCNとTARICという二層に加え、BTIが実務上の重要な拠り所になります 。siccode+1​

BTIは一般に3年有効ですが、品目分類の変更、新しいEU分類規則、裁判所の判決、説明ノートの改正などの状況では、3年の期間が短縮され、BTI決定が無効化される場合があります 。HS2028切替では既存BTIの棚卸しが必須です。welcometodojo

監視の実務例

  • 年次 CNの年次更新に合わせて、EU向けコードの一斉更新
  • 四半期 BTIの有効性レビューと、適用コードが変わった場合の影響評価
  • 月次 TARIC措置の変更による追加対応の有無を確認

4-4 中国の監視

中国はHSを基礎に8桁までの細分があり 、さらに申告では監管等の追加番号体系を扱う場面があるため 、システムと運用で分けて管理するのが安全です。また、実際の輸出入前に商品帰類の予裁定を申請できる案内があるため、高リスク品目は予裁定を活用して変更期の係争を減らします。english.customs+2​

監視の実務例

  • 月次 中国向けの申告差戻し理由を分類起因とそれ以外に分解して分析
  • 四半期 予裁定の取得状況と、社内ルールへの反映状況を点検

5. 2026年から逆算するロードマップ

今から何をやるべきか

2026年上期

  • HS2028の正式資料を前提に、影響分析を完成させるwcoomd
  • 高リスク品目を抽出し、日・EU・中の事前教示や予裁定の取得計画を立てる
  • HS6桁と地域別拡張桁を分離したマスタ設計に着手する

2026年下期

  • 再分類を量産できる体制へ移行(根拠テンプレ、レビュー手順、監査ログ)
  • IT改修の要件確定と開発着手(桁数制約、連携インターフェース、帳票)

2027年

  • 並行稼働(同一品目に旧コードと新コードを紐づけ、有効日で切替)
  • フォワーダーや通関業者とテスト
  • 年末年始の通関シナリオ訓練

2028年1月

  • 本番切替後の30日間は、例外処理を優先する集中監視期間とし、差戻し理由を即日で分類し再発防止を回す

6. よくある落とし穴

日・EU・中で特に起きやすい

落とし穴1 HS6桁だけ更新して、下位桁の更新が遅れる

日本は9桁、EUは8桁と10桁、中国は8桁など、下位桁が実務の通関可否を左右します 。rotra+2​

落とし穴2 原産地ルールの読み替えを後回しにする

HS改正と原産地ルールは連動し、相関表の質がFTA運用に直結します。

落とし穴3 既存の拘束力ある判断を棚卸ししない

EUのBTIは一般に3年有効ですが、改正等で無効化される場合があり得ます 。切替でコードが変わるなら、既存判断の有効性確認を必ず組み込みます。welcometodojo

落とし穴4 監視がニュースチェックで終わる

監視は、更新情報を読むだけでは足りません。社内マスタ、申告データ、差戻し理由の分析まで含めて閉じる仕組みが必要です。


7. まとめ

HS2028対応を「プロジェクト」で終わらせないために

HS2028は2028年1月1日に発効します 。しかも今回は例外的にサイクルが延長され 、次の改正(2033)も見据えた継続的な運用が求められます。unstats.un+2​

日・EU・中国をまたぐ企業の勝ち筋は、次の3点に集約されます。

  1. HS6桁を基幹に、地域別拡張桁を分離してマスタ設計する
  2. 相関表と追跡ツールで影響分析を固め、再分類を仕組み化する
  3. 切替後を見据え、年次更新と一体化した監視運用に接続する

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  30. https://uvozizkine.com/en/blog/hs-code-for-imports-from-china-a-guide-to-the-harmonized-system

HS2028採択と相関表作業の公式スケジュール


企業が「いつ何を準備すべきか」を条約手続と公表情報から整理する

HS2028対応は、単にHSコード表が書き換わるだけではなく、通関申告、関税率表、原産地規則、統計分類、社内マスタ、契約書の品目定義などに連鎖して波及する、典型的な全社案件になり得るテーマである。wcoomd+1​
一方で現場がつまずきやすいのが「いつ何が正式に確定するのか」であり、HS条約の手続きとWCOの公表スケジュールを押さえないと、準備開始のタイミングを読み違えやすい。unstats.un+1​
本稿では、HS条約Article 16とWCO・USITC・EU等の公表情報に基づき、企業目線で2025〜2028年のタイムラインと、相関表作業の位置づけを再整理する。strtrade+2​


1. HS2028の「採択」は少なくとも3段階ある

ビジネス現場で混乱しやすいポイントは、「HS2028の採択」という言葉が単一の出来事ではなく、条約手続き上は少なくとも次の3段階に分かれることである。strtrade+1​

  • HS委員会(HSC)による改正パッケージの暫定採択
    • WCOのHarmonized System Committee(HSC)は、HS改正案を技術的に審議し、Article 16勧告案(改正パッケージ)を暫定採択する役割を持つ。wcoomd
  • WCO理事会(Council)による勧告の採択
    • HSCで取りまとめられたArticle 16勧告案は、WCO Councilに付託され、HS条約Article 16に基づく正式な勧告として採択される。strtrade+1​
  • 締約国による「みなし受諾」と発効日の確定
    • HS条約によれば、事務総長による通知から6か月以内に反対(objection)が出されない限り、その勧告は締約国により受諾されたものとみなされる仕組みになっている。unstats.un+1​

この構造により、「理事会で採択された時点=企業準備が完了しているべき時点」ではなく、「理事会採択〜正式採択〜発効までの間にどこまで前倒しするか」が企業の戦略論点になる。wcoomd+1​


2. なぜ施行が2028年1月1日なのか(Article 16のタイムルール)

HS改正の発効日は、HS条約Article 16のカレンダー規定にしたがって機械的に決まる。unstats.un+1​

  • 受諾(みなし受諾)のルール
    • Article 16に基づき、WCO事務総長が締約国に勧告通知を行った日から6か月間に反対が残っていなければ、その改正は締約国により受諾されたものとみなされる。wcoomd+1​
  • 発効日のルール
    • 通知日が4月1日より前の場合は翌々年1月1日、4月1日以降の場合は3年後の1月1日に発効する、という時期ルールがArticle 16で定められている。unstats.un+1​

HS2028について、WCOや各種解説では、2025年中頃にCouncilで勧告が採択され、Article 16に基づく正式採択を経て2028年1月1日に発効するという前提で整理されており、EUや民間の解説資料でも同様の前提が示されている。aeb+3​


3. HS2028採択の公式マイルストーン(2025〜2028年)

ここでは、WCO等で明示されている事実ベースのマイルストーンだけを抽出する。

  • 2025年3月:HSC第75回会合でArticle 16勧告案を暫定採択
    • WCOのニュースリリースによれば、2025年3月10〜21日のHSC第75回会合で、HS2028改正に関するArticle 16勧告が暫定採択され、299セットの改正パッケージが取りまとめられたとされている。wcoesarpsg+2​
  • 2025年6月:WCO理事会でArticle 16勧告を採択(予定)
    • EUや各種解説によると、2025年6月末のWCO Council会期でHS2028に関するArticle 16勧告が採択される見込みであり、その後6か月間の異議申立期間が続く旨が説明されている。tarifftel+2​
  • 2025年7月〜12月:6か月の異議期間
    • WCOの説明では、Councilで勧告が採択された後、締約国は6か月間、留保や反対を表明できるとされており、この期間を経てみなし受諾に至る。wcoomd+1​
  • 2025年12月末:正式採択(みなし受諾)のタイミング
    • HSC第75回会合のニュースリリースでは、改正勧告は2025年12月末に正式採択され、2026年1月に公表され、2028年1月1日に発効すると明記されている。aeb+2​
  • 2026年1月:WCOによる勧告の公表
    • 同リリース等では、正式採択後に2026年1月にArticle 16勧告と改正HS表が公表される予定であるとされており、民間解説でも2026年1月の公表が前提として扱われている。bex+3​
  • 2028年1月1日:HS2028発効
    • WCOリリースおよび各種解説はいずれも、HS2028改正は2028年1月1日に発効する予定であるとし、各締約国はこの日までに関税・統計分類を改正HSに整合させる必要があると整理している。strtrade+2​

このため、企業にとっての国際的な節目は「2025年末の正式採択」「2026年1月のWCO公表」「2028年1月1日の発効」の3点に収れんする。aeb+2​


4. 相関表とは何か:公式資料での位置づけと法的ステータス

相関表(Correlation Tables)は、旧版HSコードと新版HSコードの対応関係を示す表であり、企業の品目マスタやシステム移行に直結する実務上の要となるツールである。wcoomd+1​
WCOはHS2017/HS2022相関表の公表時に、「相関表は法的文書ではなく、HSCが審査したものの分類決定そのものではないが、新版導入準備のために不可欠なツールとなっている」と明確に述べており、国際的には「非拘束だが実務上必須の参照資料」という位置づけが定着している。wcoomd+2​

この構造はHS2028でも変わらないと見込まれ、HSC第76回会合(2025年秋)において、HS2022とHS2028間の相関表作成に向けた作業開始と、相関表のフォーマット改善が決定されたことが公表されている。customsmanager
したがって、HS2028対応では「法的拘束力を持つ改正HS条文」と「実装を支える非拘束ツールとしての相関表・解説書等」を組み合わせて運用する前提で計画を組む必要がある。wcoomd+1​


5. 相関表作業の進み方:WCO側で何が起き、いつ企業に効いてくるか

5-1. 既に確定していること:相関表作業はHSCで開始済み

2025年10月前後に開催されたHSC第76回会合についての解説では、次の点が明示されている。customsmanager

  • HS2022とHS2028の相関表開発に向けた作業が正式に開始されたこと
  • 相関表の形式(フォーマット)を改善する方針が採択されたこと

つまり、HS2028の相関表は2026年以降に突然登場するのではなく、HSCの議題として段階的に検討が進んでいるフェーズに既に入っており、HSC報告採択後に順次公表されるという流れが想定される。wcoomd+1​

5-2. Council採択から発効までの間に集中する作業

国連統計委員会の会合で共有されたWCO資料では、CouncilによるHS改正勧告の採択から発効までの準備期間に、次のような作業が走ると整理されている。unstats.un

  • Secretariat・HSCによる相関表の作成
  • 解説書(Explanatory Notes)など関連刊行物の改訂・公表
  • データベースや教材・研修資料の整備
  • 各国レベルでの関税表改正、システム更新、関係者教育

このため、企業としては「相関表だけ先に見る」のではなく、解説書の改訂や新たなClassification Opinionsの整備タイミングも視野に入れて、分類判断の最終確定時期を段階的に設計することが重要になる。wcoomd+1​

5-3. HS2022における実績:発効約14か月前に相関表が公表

HS2022の際、WCOは2020年11月にHS2017/HS2022相関表を公表しており、2022年1月1日の発効から逆算すると約14か月前に国際相関表が利用可能になったことになる。wcoomd
WCOリリースでは、HSC第66回会合(2020年10月)で相関表案の審査を終え、同年11月13日のHSC報告採択をもって相関表の公表が承認された、と手順が詳述されている。wcoomd+1​

HS2028でも同一タイミングでの公開が保証されているわけではないが、少なくとも「理事会採択後〜発効前の期間に相関表がHSC報告採択を経て公表される」という運用パターンは維持されると考えるのが自然である。customsmanager+1​


6. 実務上の落とし穴:WCO相関表と各国相関表は別物になりうる

企業実務で特に誤解が起きやすいのは、次の三点である。ddcustomslaw+1​

  • WCO相関表は原則6桁レベル(国際共通部分)の対応を示すツールであること
  • 多くの国は、輸入申告や統計で7桁以降の独自細分(国別サブヘディング)を用いていること
  • そのため、国内税番の移行は6桁レベルのシンプルな1対1変換にとどまらず、1対多・多対1・多対多の組み合わせが生じやすいこと

また、WCOリリースや各種ガイドラインでも、「相関表自体は法的地位を持たず、最終的な分類は各国の法令・関税表に依拠する」という点が繰り返し示されている。brussels.customs+1​
結果として、企業が本当に必要とするのは、WCO相関表だけでなく、主要取引国の「国内相関表」「関税表改正の官報・告示」「実務通達」の組み合わせであり、WCOと各国の両輪を継続的に追う体制である。ddcustomslaw+1​


7. 各国の国内対応はいつ動き出すか:米国の公式スケジュール例

国際スケジュールと並行して、各国は自国の関税表・統計表をHS2028に合わせて改正する必要があり、そのタイミングは国によってかなり異なる。usitc+1​
米国は相対的に早くプロセスを公表しており、企業にとってHS2028対応スケジュールの「具体例」として有用である。

  • USITCによるHTS改正プロセスの開始(2025年8月)
    • 米国国際貿易委員会(USITC)は、HS改正を反映するHTS改正作業についての調査を2025年8月に開始し、2028年版HTSに向けた変更を検討することを公表している。usitc
  • 2026年2月:予備的改正案の公表と意見募集予定
    • 同リリースでは、USITCが2026年2月にHTS改正の予備的案を公表し、一般から意見募集を行う予定であることが示されている。usitc+1​
  • 2026年9月:大統領への報告書提出予定
    • USITCは、パブリックコメントを踏まえて2026年9月に最終的な必要改正案を取りまとめ、大統領に報告書を提出する見通しであるとしている。usitc

さらに、民間の通商専門メディアでも「WCOが2026年1月にHS2028勧告を公表し、それを受けてUSITCが2月にHTS案を示す」という前提でタイムラインが整理されている。strtrade
この例から、主要国の国内税番具体化は「WCOによる2026年1月の公表直後から本格的に動き始める可能性が高い」という点を、企業の計画にも組み込むべきだといえる。strtrade+2​


8. 企業実務における2026〜2028年の現実的な段取り

ここでは、上述の公式マイルストーンを前提に、企業が「堅めに」取り得る進め方を年次ごとに整理する。

2026年:分類影響の棚卸しとマッピング設計

  • 自社品目マスタを6桁HSベースで一覧化し、輸出入・三国間・返品・保税等の取引形態を紐付ける。
  • HS2028で改正が集中するセクター(例:電子機器、環境関連、医療・化学等)を洗い出し、変更リスクの高い領域から詳細分析する。
  • 1対1・1対多・多対1・多対多のマッピングルール、属性追加の方針、社内の最終判定責任者を定義する。

このフェーズは、WCOによる勧告公表や相関表の整備が進むほど後工程が楽になる一方、全て出そろってから着手すると、主要国の国内改正スケジュールとバッティングしやすい領域である。wcoomd+1​

2027年:主要国の国内税番への落とし込み

  • 主要仕向け国・仕入国ごとに、国内相関表、関税表改正の官報・通達、HS2028対応ガイダンスを継続的にモニタリングする。
  • 税番変更が関税率、EPA/FTA上の特恵税率、原産地規則・積送要件、セーフガード・ADD等に与える影響を洗い出す。
  • 通関システム、ERP、商品データベース、帳票テンプレート、取引先マスタ等の更新と検証を順次進める。

2028年に向けた移行期運用の設計

  • 2027年末〜2028年初の出荷・到着・保税・返品・インコタームス条件など、「旧HSと新HSがまたがるケース」の社内処理基準を文書化する。
  • 社内教育(通関・調達・営業・経理)と、主要取引先への事前説明・通知を前倒しで実施する。

これらの作業は各社の事業ポートフォリオに依存するが、「2026年:影響把握と設計」「2027年:主要国マッピングとシステム実装」「2028年:移行運用と定着」という3段階で組むと、HS条約・WCOスケジュールと無理なく整合させやすい。usitc+2​


9. まとめ:公式スケジュールを押さえることで、準備の着手点が明確になる

  • HS2028は、HSCでのArticle 16勧告案の暫定採択、WCO理事会での勧告採択、6か月の異議期間を経たみなし受諾という段階を踏む構造になっている。wcoomd+1​
  • WCOは、2025年12月末の正式採択、2026年1月の勧告・改正HS表公表、2028年1月1日の発効というタイムラインを示しており、多数の国・民間解説もこれを前提としている。bex+3​
  • 相関表は国際法上の拘束力は持たないが、新版HS実装のための不可欠なツールと位置づけられており、HS2022/HS2017間の相関表は発効約14か月前の2020年11月に公表された実績がある。wcoomd+1​
  • HSC第76回会合時点でHS2022/HS2028相関表作業が開始されたことが公表されており、Council採択から発効までの期間に相関表・解説書・国内関税表改正が集中的に進むことが、国連統計関係資料等でも整理されている。customsmanager+1​
  • 国内税番の具体化時期は国ごとに異なり、米国では2026年2月にHTS改正案公表・意見募集、2026年9月に大統領への報告書提出といったスケジュールが示されているため、企業はWCO相関表だけでなく、主要国の国内相関表・官報・通達を並行して追う体制を構築する必要がある。strtrade+1​
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  27. https://www.tariffbase.io/en/blog/wco-strategic-review-of-hs-interim-report/
  28. https://syslp.customsinfo.com/sections/home/public/2022%20Tariff%20Information/WCO/WCO%202017%202022%20Correlation.xlsx
  29. https://global-scm.com/hscf/archives/46
  30. https://mpoverello.com/2020/11/13/wco-publishes-hs-2022-correlation-tables/

WCOのHS2028改正勧告パッケージとは何か。企業に効く中身を整理する

HS2028の改正は、HS条約第16条に基づくWCO理事会の勧告として、締約国へまとめて回付される形で進みます。ここでいう「改正勧告パッケージ」は、HS2028版の根幹となる改正の束で、企業実務では「今使っているHS2022の6桁が、どこでどう変わり得るか」を左右する最重要の一次情報です。 (wcoomd.org)

以下、ビジネスマン向けに、公開一次情報から確度高く言える範囲で中身をまとめます。個別の号レベルの差分一覧は、HSC第75回会合報告の付属文書(Annex)に入っているため、コード単位の全件精査はその正式テキストで行うのが前提です。 (EUR-Lex)


1. パッケージの規模と構成

WCOのHS委員会(HSC)は、HS2028に向けて次を暫定採択したと公表しています。 (wcoomd.org)

・HS2028改正提案 105件
・HS解説(Explanatory Notes)改正 5件
・HS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)として、HS2028向け改正セット合計299(第7次見直しサイクルで合意した改正の全パッケージ)

この299セットが、HS本文の見出し、号、注などの見直しを束ねた「改正の本体」です。 (wcoomd.org)

補足として、同じHSC会期で「分類決定」や「分類意見」も多数出ていますが、これは改正勧告パッケージとは別枠です。ただし実務では、分類の統一運用に影響し得るため、主要品目は併せてウォッチ対象になります。 (wcoomd.org)


2. 企業が理解すべき改正の狙い。改正は何のために入るのか

EUがWCO理事会での採択に向けて示した公式説明では、HS2028の改正セット(299)は次の目的を持つと整理されています。 (EUR-Lex)

  1. 貿易パターンの変化、新技術の発展を反映する
  2. 社会、環境、セキュリティの観点で、取締りやモニタリングをしやすくする
  3. 取引量が少ない見出しや号の整理で体系を簡素化する
  4. 国際標準や新商品、製品組成の変化に合わせ分類をしやすくする
  5. 仏語版と英語版の整合性を改善し、解釈のズレを減らす
  6. 不正や違法取引への対抗、健康と環境保護のため、特定分野で見出しや号を新設する

ここがポイントです。HS2028は「単なる番号の付け替え」ではなく、政策目的に直結する識別力を上げる改正が含まれる、と公式に説明されています。 (EUR-Lex)


3. 分野別にみたHS2028の主な改正テーマ

ここからが、企業にとって具体的な影響が出やすい領域です。以下は「改正の例として公式に言及されているテーマ」を中心に整理します。

3-1. 環境、循環経済。廃棄物と回収装置が焦点に入る

公式説明の中で、環境対応として明示されているのが次の領域です。 (EUR-Lex)

・プラスチック廃棄物に関する規定
・単回使用プラスチック
・使用済タイヤ由来のゴムや粉末
・ガラス繊維の廃棄物
・回収を促すためのリバースベンディングマシン(回収機)
・健康と環境保護に資する分野での見出しや号の新設

企業実務での含意は、廃棄物や再生原料だけでなく、回収や分別に使う装置そのものが、統計や規制目的で識別されやすい体系へ向かう可能性が高い、という点です。 (EUR-Lex)

3-2. 公衆衛生。ワクチンはより細かく識別される方向

EU側の説明では、パンデミック対応の反省を踏まえ「ワクチンや健康関連グループ」を明示しています。 (EUR-Lex)
さらにWTOの公式ニュースでは、HS2028で「人用ワクチン」のために新見出し3007を設け、その下に7つの区分を置く案が説明されています。 (WTO)

企業側では、医薬品、ワクチン原体や製剤、関連する供給網の統計管理や規制対応が、6桁レベルから細分化され得る点を早めに織り込む必要があります。 (WTO)

3-3. 食品、農業。機能性、配合物、サプリが論点化

公式説明の中で、食品側は次が例示されています。 (EUR-Lex)

・農業産業で重要性が増しているグループ
・食品強化用のミックス(food fortification mixes)
・食品サプリメント(food supplements)

食品と化学、医薬の境界にいる商品ほど、章注や定義の見直しで分類の根拠が変わりやすくなります。品名だけでなく、用途、配合、摂取形態、表示まで含めた説明責任が重くなる領域です。 (EUR-Lex)

3-4. 電機、機械、先端製造。新製品と機能の進化が改正を駆動する

公式説明では、技術進化や新製品への対応として、次が例示されています。 (EUR-Lex)

・電動アシスト自転車(e-bikes)
・半導体とトランスデューサー
・清掃ロボット
・ドローン

製品の機能や構成が進化すると、従来の「どれに近いか」では説明しづらくなり、分類のための定義整備が必要になります。これらは、輸出入の主力品目になりやすいだけに、企業インパクトが大きい領域です。 (EUR-Lex)

3-5. セキュリティ、取締り。不正や違法取引の識別を強める

HS2028改正の狙いとして、公式に「不正や違法取引への対抗」が挙げられ、例として次が明示されています。 (EUR-Lex)

・違法薬物の製造(illicit manufacture of drugs)に関する分野
・単回使用プラスチック
・ワクチン
・ヒートポンプ
・回収機(reverse vending machines)など

ここは関税だけでなく、輸出入規制、許認可、統計、監視という複数目的が重なるため、品目説明の精度と証跡の整備が重要になります。 (EUR-Lex)


4. 手続き面の重要ポイント。いつ確定し、いつ企業が全文を見られるか

WCOは、HSCで暫定採択された勧告を理事会へ上程し、2025年末の正式採択後、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効すると説明しています。 (wcoomd.org)
またEUの説明では、理事会が勧告した改正は、締約国が6か月以内に異議を出さなければ受諾されたものとみなされる仕組みが整理されています。 (EUR-Lex)

実務上、改正勧告のドラフトはHSC第75回会合報告のAnnex Q(文書NC3358Ba)に含まれる、とEU側文書で明記されています。 (EUR-Lex)


5. 企業向けまとめ。HS2028改正勧告パッケージをどう読むべきか

今回のパッケージは、299の改正セットを束ね、環境、健康、セキュリティ、新技術への対応を強く意識した内容です。 (EUR-Lex)
しかも、プラスチック廃棄物、ワクチン、食品サプリ、e-bikes、半導体、清掃ロボット、ドローン、ヒートポンプ、回収機など、企業の実需に直結する対象が公式に例示されています。 (EUR-Lex)

次にやるべきことはシンプルです。

・自社の主力品目が、上で挙げたテーマ領域に入るかを棚卸しする
・入るものは、HS2028の正式テキストと相関表が出た瞬間に、6桁の置換と定義差分を精査できる状態にしておく

HS2028採択と相関表スケジュールの全体像


HS2028対応は、単にコード表が更新されるだけでなく、通関、関税・原産地、輸出入統計、社内マスタ、契約書の品目定義まで連鎖する「全社案件」になりやすいテーマです。wcoomd
一方で、現場がつまずきやすいのが「いつ何が正式に確定するのか」であり、条約手続きとWCOの公表情報を押さえておかないと、着手時期や社内マイルストーンがぶれやすくなります。strtrade+1​

本稿では、HS条約Article 16の仕組みと、WCO・USITC等の公表情報に基づき、企業目線でのタイムラインと相関表作業の見通しを整理します。wcoomd+2​


1. 「HS2028採択」が意味する3つの段階

ビジネス現場で混乱が起きやすいのは、「採択」という言葉が単一の出来事ではなく、少なくとも次の3段階に分かれる点です。wcoomd

  • HS委員会(HSC)による改正パッケージの暫定採択
    • 2025年3月10〜21日に開催された第75回HS委員会で、HS2028版に向けたArticle 16勧告案(改正パッケージ)が暫定的に採択され、これにより交渉は完了したと説明されています。wcoomd
    • この暫定採択は「HSCレベルでの取りまとめ完了」であり、まだ条約上の正式な採択ではありません。wcoomd
  • WCO理事会(Council)による勧告の採択
    • 暫定採択されたArticle 16勧告案は、WCO理事会に付議され、HS条約Article 16に基づく勧告として採択されます。wcoomd
    • HS条約上の「理事会採択」が行われて初めて、締約国に対する正式な勧告として通知される位置づけになります。wcoomd
  • 締約国による「みなし受諾」と発効日の確定
    • Article 16では、事務総長による通知から6か月以内に締約国から異議(objection)が出なければ、その改正は締約国により受諾されたものとみなされると規定されています。wcoomd
    • WCOは、HS2028勧告について「2025年末に正式採択(理事会)→2026年1月に公表→2028年1月1日発効」というタイミングを公表しており、この枠組みの中でみなし受諾が整理されます。wcoomd

このため、企業側の準備は「HSCで決まったら終わり」でも「理事会で採択されたら即終わり」でもなく、条約上の節目と公表タイミングを踏まえて段階的に設計する必要があります。wcoomd


2. なぜ発効が2028年1月1日なのか(Article 16のカレンダー)

HS改正の発効日は、HS条約Article 16のタイムルールで機械的に決まります。wcoomd

  • 受諾(みなし受諾)のルール
    • 勧告は、締約国に通知してから6か月の間に反対が残っていなければ、締約国により受諾されたものとみなされる仕組みになっています。wcoomd
  • 発効日のルール(実務運用)
    • 実務上、WCOは理事会での勧告採択を年央(6月前後)とし、通知から6か月の異議期間を経て、次回改正を次々回の1月1日に発効させる運用をとってきました。strtrade+1​
    • HS2028についても、WCOは「2025年12月末に正式採択、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効」というタイムラインを明示しており、EUや各国の説明資料もこの前提に沿って記述しています。strtrade+1​

つまり、HS2028の「2028年1月1日発効」は、個別政治判断というより、Article 16に基づく標準運用の延長線上にあると理解するのが自然です。wcoomd


3. 2025〜2028年の公式マイルストーン

現時点でWCO等が公表している情報に基づき、HS2028に関する主要マイルストーンを整理すると、次のようになります。strtrade+1​

  • 2025年3月:HSC第75回会合で改正パッケージ暫定採択
    • HSC第75回会合(2025年3月10〜21日)で、HS2028版に向けたArticle 16勧告(HS2028改正パッケージ)が暫定採択され、交渉完了とされています。wcoomd
    • 改正パッケージは299の改正セットから構成されると説明されており、医薬品関連ではWHO INNリストに基づく多くの品目名整理が含まれます(ここは別記事で詳細に扱うのが安全です)。wcoomd
  • 2025年末:WCO理事会での正式採択(予定)
    • WCOは、HS2028勧告を2025年末の理事会で正式採択し、その後に勧告を公表すると案内しています。wcoomd
    • EUや各種解説資料も、「2025年6月の理事会会期での採択可能性」や「その後6か月の異議期間」の存在に言及しつつ、2028年1月1日発効を前提にしています。strtrade+1​
  • 2026年1月:WCOによるHS2028勧告の公表予定
    • WCOは、2025年末の正式採択を経て、2026年1月にHS2028の勧告内容を公表する予定であるとしています。wcoomd
    • 企業にとっては、この公表が「国際レベルでの条文・改正点を体系的に確認し、社内マッピングを本格化させる起点」となります。strtrade+1​
  • 2028年1月1日:HS2028発効
    • HS条約では、発効日に各締約国の関税・統計分類が改正HSに整合している必要があり、各国はこの日に向けて自国の関税表・統計コードを改正する義務を負います。wcoomd+1​

この間の「みなし受諾」のカウントは条約上重要ですが、企業実務としては「2026年1月の公表」と「2028年1月1日の発効」が分かりやすい節目になります。wcoomd


4. 相関表の位置づけとHS2028での動き

企業実務に直撃するのが相関表(Correlation Tables)であり、「旧版HSから新版HSへ、どのコードがどこへ移ったか」の対応関係を示すツールです。wcoomd+1​

  • 法的ステータス
    • WCOは、HS2017/HS2022相関表の公表時に、相関表が法的拘束力を持つ文書ではない一方、新版導入準備に不可欠なツールになっていると明言しています。wcoomd+1​
    • この位置づけはHS2028でも同様であり、「法源ではないが、実務上の事実上の標準参照ツール」と理解するのが適切です。wcoomd
  • 作業開始と形式改善
    • HS2028とHS2022間の相関表について、WCOはHSCの場で開発に向けた議論を開始しており、相関表の形式(見せ方)を改善する決定も採択しています(詳細は今後の会合報告で詰まる見込み)。wcoomd+1​
    • 相関表は、2026年以降に突然現れるのではなく、HSC正式議題として段階的に作り込まれるフェーズに入っていると言えます。wcoomd
  • HS2022の前例
    • HS2022では、WCOが2020年11月にHS2017/HS2022の相関表を公表しており、同年10月のHSC第66回会合での審査と、11月13日の報告採択後に公開されたと説明されています。wcoomd
    • HS2022の発効日は2022年1月1日であったため、WCO相関表が企業に届いたのは発効のおよそ14か月前となり、「WCO相関表は発効の1年前強には入手できる」という実務的な目安となります。goods-schedules.wto+1​

HS2028についても、同じ時期に必ず公開されると断言はできませんが、WCOが既に作業開始を公表していること、HS2022と同様にHSC審査→報告採択→公開という手順を踏むことから、発効前に段階的に整備されるのが自然な流れです。wcoomd+1​


5. WCO相関表と各国相関表のズレ

実務上の落とし穴として、WCO相関表と各国の国内相関表(および国内税番改正)の関係があります。usitc+1​

  • WCO相関表
    • 原則として国際共通部分である6桁レベルの対応を示すものであり、国内細分(7桁以降)は対象外です。wcoomd+1​
  • 各国相関表・国内税番改正
    • 多くの国では、実際の輸入申告や統計で、7桁以降の国内細分(例えばHTSUS、EU CN、日本の9桁/10桁など)を用いており、6桁の単純な横スライドにはなりません。usitc+1​
    • 例えば米国では、USITCが「Recommended Modifications in the Harmonized Tariff Schedule, 2028」という調査を開始し、2026年2月にHTS改正の暫定案を公表(パブコメ)、2026年9月に大統領への報告書提出というスケジュールを示しています。usitc+1​

このため、企業が本当に必要なのは「WCO相関表+主要取引国の国内相関表と税番改正告示スケジュール」の両輪であり、6桁だけを見て国内税番を自動移行するアプローチはリスクが高いと言えます。usitc+1​


6. 企業実務:2026〜2028年の段取りの目安

条約手続きと公表スケジュールを踏まえると、企業の現実的な段取りは次のように整理できます。usitc+2​

  • 2026年:分類影響の棚卸しとマッピング設計
    • WCOが2026年1月にHS2028勧告を公表する予定であり、ここで条文と改正内容を体系的に確認できます。wcoomd
    • 自社品目マスタを6桁ベースで一覧化し、HS2028で改正が入りそうな品目群を仮特定したうえで、1対1・1対多・多対1などマッピングルールと社内判定責任を定義するフェーズに適しています。wcoomd+1​
  • 2027年:主要国の国内税番への落とし込み
    • USITCの例のように、主要国で2026年頃から国内法令・関税表改正プロセスが動き出すため、2027年は各国の国内相関表・改正告示を踏まえた「国別HS→国内税番」への落とし込みフェーズになります。usitc+1​
    • 関税率、EPA/FTA原産地ルール、原産性判定、通関システム・ERP・商品DB・取引先マスタなどの更新を、主要市場から優先的に進めるのが現実的です。usitc
  • 2028年に向けて:移行期運用
    • 2027年末〜2028年初の出荷・到着・保税・返品など、境界期間の扱いを手順化し、HS改正に起因する誤分類や追徴を抑える運用を設計する必要があります。wcoomd+1​
    • 社内教育と取引先への通知を前倒しし、「新旧コード併記」「監査証跡の確保」等を含む移行設計を行うことが望まれます。usitc

7. この記事で押さえておきたいポイント(まとめ)

  • HS2028は、HSCでの暫定採択→WCO理事会での正式採択→6か月の異議期間を経たみなし受諾→2028年1月1日発効という段階を踏む。wcoomd
  • WCOは、2025年末の正式採択、2026年1月の勧告公表、2028年1月1日の発効というタイムラインを示しており、企業はこれを前提に逆算して準備できる。strtrade+1​
  • 相関表は法的拘束力を持つ文書ではないものの、HS2022でも発効約14か月前に公表された公式ツールであり、HS2028でも実装の要となることが想定される。goods-schedules.wto+1​
  • WCO相関表は6桁レベルが中心であり、実務上は主要取引国の国内相関表・国内税番改正告示と組み合わせて管理する必要がある。wcoomd+1​
  • 米国USITCのように、2026年からHTS改正案と報告書作成が進む国もあり、企業は2026〜2028年の3年間を「棚卸し・設計」「国別落とし込み」「移行運用」の3フェーズとして設計するのが現実的である。strtrade+1​
  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  2. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2020/november/the-wco-has-published-the-hs-2017-2022.aspx
  3. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  4. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/august/next-round-of-htsus-modifications-anticipated-to-take-effect-in-2028
  5. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/hs-nomenclature-2022-edition/correlation-tables-hs-2017-2022.aspx
  6. https://goods-schedules.wto.org/sites/default/files/file/2020-11/W164_0.pdf
  7. https://www.linkedin.com/posts/customs-support_tradecompliance-customs-harmonizedsystem-activity-7313836607558606848-xvCD
  8. https://www.linkedin.com/posts/ashcheglov_tariff-customs-hs2028-activity-7313504438416003073-LVES
  9. https://www.orr.gov.uk/search-news/rail-regulator-sets-out-key-recommendations-assessing-costs-and-benefits-health-and
  10. https://humanrightstracker.com/en/un-recommendation/icescr-concluding-observations-2025-paragraph-71/
  11. https://www.gov.uk/government/publications/protocol-no15-amending-the-convention-on-the-protection-of-human-rights-and-fundamental-freedoms-ts-no192025
  12. https://research.hktdc.com/en/article/MjA5Mjg3NTc4OQ
  13. https://www.wepolu.org/post/successful-conclusion-of-the-71st-session-of-the-harmonized-system-committe
  14. https://www.ddcustomslaw.com/index.php?option=com_content&view=article&id=448%3Awco-releases-the-hs-2022-correlation-tables&Itemid=50&lang=en
  15. https://warrants.ubs.com/home/hkexdoc/ch/CBBC/ubs/pdf/20250317185628.pdf

HS2028で変わる半導体・センサー分類 ビジネスに効く論点と、今からできる準備


半導体やセンサーは、関税分類の世界で「技術進化が速いのに、分類体系の更新は緩やか」という典型例です。そこにHS2028の改正が迫っています。コードが変わるだけに見えますが、実務では関税率、原産地規則、統計、輸出管理、社内マスタの整合まで連鎖的に影響します。wcoomd

本記事は、技術者向けではなく、調達・営業・経営企画・貿易管理・物流のビジネス部門が、HS2028の半導体・センサー領域をどう捉え、どこにリスクと機会が生まれるかを整理するための実務ガイドです。なお、HS2028の改正はWCOの正式手続きを経て進行中で、発効日は2028年1月1日と確定しています。wcoomd

1. まずHS2028を正しく理解する

なぜ2028なのか、いつ何が起きるのか

HSは原則5年ごとに改正されますが、第7次見直しサイクルはパンデミック等の影響で1年延長され、次の版はHS2028として2028年1月1日に実施されます。次回は5年サイクルに戻り、HS2033が続くとWCOが明示しています。aeb+1​

2025年3月開催の第75回HS委員会(HSC)では、Article 16勧告として、299件の改正セットを含むHS2028勧告パッケージが暫定採択されました。この299件には、105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれます。正式採択は2025年12月末に予定され、2026年1月に最終版が公表、2028年1月1日に発効します。tarifftel+2​

HS改正は「合意が必要な国際標準」です。WCO理事会承認後、各締約国には6か月の異議申立期間があり、異議が出た部分は除外される可能性があります。つまり、企業は早期に影響を見積もりつつ、最終確定版で必ず再検証する姿勢が必須です。wcoomd

2. なぜ半導体・センサーがHS2028の注目テーマなのか

ビジネス側の論点は「税率」より広い

半導体業界団体は以前から、技術進化のスピードが5年サイクルのHS改正を上回るペースで進んでおり、より迅速な改正メカニズムが必要だと主張してきました。実際、多機能化したMCO(Multi-Chip Optoelectronics)やセンサー統合製品は、機能別分類か素子基準かで分類がぶれやすく、2017年および2022年のHS改正でも半導体定義の拡張が行われています。deepbeez+1​

HS2028でも、半導体ベースのトランスデューサー(変換素子)を含む分野が改正対象に挙がっています。これは単なる統計目的にとどまらず、次の実務要素に連動します。wcoomd+1​

  • 関税率と通商救済: MFN税率だけでなく、追加関税、セーフガード、アンチダンピング等がHSコードに紐づくため、コード変更は対象判定に影響します。
  • 原産地規則: 多くのFTAは品目別規則をHSの類・項・号で定義するため、HS変更は「同じ製品でも、どの規則を見るべきか」を変え得ます。
  • 輸出管理・規制: 規制リスト自体は性能・仕様基準が中心でも、運用現場ではHSコードをスクリーニングキーにすることが多く、分類変更は監視ロジックに影響します。
  • 企業の意思決定: 調達先分散、在庫配置、製造地設計、価格交渉など、サプライチェーンKPIにHS分類が組み込まれています。

3. 半導体・センサー分類で「揺れやすい境界」

HS改正が起きると影響が出やすい典型ポイント

半導体とセンサーは、商品形態が連続的に変化します。

  • ウエハ、ダイ
  • パッケージ化された素子
  • 信号処理ICと一体化したモジュール
  • 筐体、通信、電源、ソフトを含む完成品

HS分類は、こうした連続体を「どこで線を引くか」を国際標準として定める作業なので、改正が入ると境界付近の品目が動きます。ビジネスで影響が大きいのは、まさにこの境界品です。wcoomd

センサーで特に揺れやすい論点は次のとおりです。

  • センサー素子か、測定機器か: センサー素子は部品寄り(8541系)、測定機器は完成品寄り(他類)です。完成品側に寄るほど、半導体の章(第85類)から離れやすくなります。deepbeez
  • 変換素子か、信号処理まで含むか: 物理量を電気信号に変換するだけの段階と、補正・演算・デジタル出力まで含む段階は、税関分類の評価ポイントが変わります。deepbeez
  • 単機能か、多機能か: 環境センサーは温湿度、気圧、ガス、照度など複数要素を統合しがちで、多機能化は「主たる機能は何か」という論点を強めます。
  • どの産業用途に組み込まれるか: 同じセンサーでも、自動車、産業機械、医療、家電でパッケージや付加機能が変わり、分類は用途だけで決まらない一方、用途に由来する構成差は分類に影響します。youtube​

4. HS2028で半導体・センサー分類は何が「変わる」のか

確定情報と、実務上の読み方を分ける

情報の信頼性を最優先に、言い切れる範囲と言い切れない範囲を分けます。

4-1. 現時点で一次資料から言い切れること

  • HS2028は2028年1月1日に発効されるwcoomd
  • HS2028は299件の改正セットを含む勧告パッケージとして暫定採択されたstrtrade+1​
  • 改正には105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれるstrtrade+1​
  • 半導体ベースのトランスデューサー(変換素子)が改正議題に含まれているwcoomd+1​

つまり、半導体・センサー領域はHS2028の改正議題に含まれており、何らかの分類上の調整が入る可能性が高い、という点までは公的文書で裏づけられます。

4-2. 企業実務として「ここが動くと困る」を先に特定する

個別の6桁コードがどう変わるかは、2026年1月公表予定のWCO正式なHS2028法文と相関表(correlation table)で最終確認が必要です。ここを飛ばして断定すると、誤った社内判断につながります。tarifftel+1​

ビジネス側は、コード表の暗記ではなく「自社品が分類境界のど真ん中にいるか」を見抜くことが重要です。具体的には、次のような品目群はHS2028で影響を受けやすい位置にあります。

  • 半導体ベースの変換素子(各種トランスデューサー)deepbeez
  • センサー素子に信号処理ICが付随するモジュール
  • 複合センサー(複数の測定要素を統合)
  • 完成品に近いスマートセンサー(補正、演算、通信を内蔵)
  • センサーを搭載したユニットやサブアセンブリ(他機能と不可分)youtube​

これらは、分類が「素子」寄りか「機器」寄りかで分かれ、HS改正で線引きが再定義されると影響が出やすい領域です。

5. HS2028対応で失敗しやすい会社のパターン

通関担当だけに任せると、ほぼ確実に抜ける

半導体・センサー企業でよくある失敗は、HS改正を「通関部門のコード置換作業」にしてしまうことです。これだと次が抜けます。

  • 製品マスタの粒度が足りない: 分類に必要な属性(素子の役割、信号処理の有無、通信機能、主たる機能など)がマスタに入っていないと、相関表が出ても機械的に当てはめられません。
  • 原産地規則の影響評価が後回し: HS変更は、FTAの品目別規則(PSR)の参照単位を変え得ます。関税率がゼロでも、原産地判定でコストが跳ねることがあります。
  • 規制スクリーニングが壊れる: 社内の輸出審査フローでHSコードをキーにしている場合、誤分類や未更新は審査漏れの原因になります。

6. ビジネスマン向けの実務チェックリスト

2028年までに何を終わらせるか

以下は、半導体・センサー企業がHS2028で痛手を避けるための現実的な進め方です。

ステップ1: 影響範囲の棚卸し

  • 製品群を「素子」「モジュール」「完成品寄り」に3分類する
  • 売上上位、利益上位、規制リスク上位の品目を優先対象にする
  • 輸出入の主要国別に、関税率とFTA利用の有無を紐づける

ステップ2: 分類に必要な属性を社内で標準化する

センサーや半導体は、品名だけでは分類できません。仕様書を見なくても判断できる属性項目を、マスタに落とし込みます。

  • 測定対象(温度、圧力、加速度、光、ガスなど)
  • 変換方式と主要構成(半導体要素の有無、MEMSかどうかなど)
  • 信号処理の範囲(増幅、A/D、演算、補正)
  • 出力形態(アナログ、デジタル、通信プロトコル)
  • 単体販売か、ユニットの一部か

ステップ3: 相関表が出た瞬間に「自動変換」しない

WCO手続き上、最終的な確定内容や各国の国内拡張桁への転記を確認する必要があります。相関表は出発点で、個別品目の仕様と照合して初めて確定に近づきます。wcoomd

ステップ4: 社内の下流影響を先に洗い出す

  • 価格条件(関税負担者)
  • 原産地証明の運用(PSR参照箇所)
  • 輸出入ライセンスや社内審査フロー
  • 統計や経営レポート(品目別KPI)
  • 取引先との品目コード整合(発注、納品、請求)

7. まとめ

HS2028は「半導体・センサーの線引き」がビジネスコストになる改正

HS2028は2028年1月1日に発効され、299件の改正セットからなる勧告パッケージとして暫定採択されました。改正には105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれます。また、半導体ベースのトランスデューサーが改正対象として明示されています。wcoomd+3​

ただし、個別のコード改編の詳細は、2026年1月公表予定のWCO正式なHS2028法文と相関表、さらに各国の国内法への転記で最終確認が必要です。ここを飛ばして社内で断定しないことが、信頼性の高いHS2028対応の第一歩です。tarifftel+1​

半導体・センサー企業にとっての成功の鍵は、改正が出てから慌てて置換することではありません。分類境界にいる品目を先に特定し、仕様に基づく分類判断を回せるマスタ設計と運用体制を2028年までに構築することです。


https://hts.usitc.gov/search?query=8541.42.00.10

https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/events/2019/hs-conference/semiconductors-and-the-future-of-the-hs_sia-white-paper_april-2019.pdf?la=fr

https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx

https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php

https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/october/successful-conclusion-of-the-72nd-session-of-the-harmonized-system-committee.aspx

https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/

https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced

https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/activities-and-programmes/amending_hs.aspx

https://deepbeez.com/d/hs/transducer

https://www.youtube.com/watch?v=d__kmRP19WA

https://global-scm.com/hscf/archives/134

https://global-scm.com/hscf/

https://global-scm.com/hscf/archives/34

https://www.ul.com/resources/global-market-access-regulatory-news-update

https://www.flexport.com/data/hs-code/85-electrical-machinery-and-equipment-and-parts-thereof-sound-recorders-and-reproducers-television-image-and-sound-recorders-and-reproducers-and-parts-an/

HS2028改正で注目される自動車センサーの再分類リスク 2028年1月1日までにやるべき実務対応

はじめに

自動車向けセンサーは、製品自体は小さくても、関税分類の論点が多層に重なります。
半導体デバイスとしての性格、測定機器としての性格、車両用部品としての性格、電気機器としての性格が同居しやすく、条文構造上も「どこに落とすか」で迷いやすい領域です。

HS2028改正は、こうした曖昧さが残りやすい品目ほど、再分類や各国運用の揺れが顕在化しやすい局面になります。
本稿では、HS2028の確定スケジュールと、法的に見落とされがちな優先ルールを踏まえたうえで、自動車センサー周りの再分類リスクと、2028年1月1日までに実務として準備しておくべき対応を整理します。


HS2028はいつ何が起きるのか

HSは国際的な品目分類の基盤であり、多くの国の関税率、原産地規則、輸出入統計、各種規制の適用判断がHS6桁レベルに直結しています。
各国・地域の関税分類体系はHSをベースに構築されているため、HS改正はサプライチェーン全体に共通の「イベント」として波及します。

World Customs Organization(WCO)の公表によれば、Harmonized System Committee(HSC)は2025年3月10日から21日の第75回会合において、HS2028改正パッケージとなるArticle 16勧告案を暫定採択しました。
この勧告は2025年末のWCO理事会で正式採択された後、2026年1月に公表され、2028年1月1日に発効するスケジュールとされています。

同改正パッケージでは、個別提案ベースで299件の改正パッケージが取りまとめられていると報じられており、改正範囲の広さがうかがえます。
また、2025年10月に開催された第76回HSC会合では、HS2022とHS2028の相関表の整備作業が進んでいることが公表されており、企業実務ではこの相関表がコード移行検討の出発点となります。

実務上のポイントは、2028年1月1日が切替日である一方、2026年のHS2028公表後には各国が自国の関税率表や統計品目、システムの更新・周知を進めるため、企業側の準備も2026年から本格化せざるを得ないという点です。
輸出入申告、原産地証明、顧客見積りが滞らないようにするには、その少し前の段階で品目マスタと分類根拠の整備を概ね完了しておく必要があります。


自動車センサーが再分類リスクを抱えやすい理由

自動車センサー周りの再分類リスクが高まりやすい理由は、大きく三つに整理できます。

1つ目は、「車両部品として見たくなるが、法的に車両部品にできない」ケースが頻発することです。
Section XVII(車両等)の注2は、「部品及び附属品」の適用除外を列挙しており、その中でChapter 85(電気機器)とChapter 90(測定・検査機器)が明示的に除外されています。つまり、電気機器や測定機器として該当する場合、それらはそもそもSection XVIIの「部品及び附属品」としては扱えない構造です。

自動車用であっても、用途情報だけを根拠に8708(自動車の部分品)に寄せてしまう発想は、注2との整合性を欠く場合があり、ここがセンサー品目の落とし穴になります。

2つ目は、半導体デバイスに関する優先ルールが強力であることです。
Chapter 85の注記は、半導体ベースのセンサーやアクチュエータ等を含む「semiconductor-based transducers」を定義したうえで、これに該当する品目について見出し8541または8542が他のいかなる見出しにも優先するとする「優先規定(precedence provision)」を設けています。

自動車用途であっても、物として半導体デバイスに該当すれば、他章や車両部品ではなく、半導体側の見出しが優先されることになります。
センサーの小型化・チップ化・モジュール化が進むほど、この優先規定が実務に与えるインパクトは大きくなります。

3つ目は、製品形態が「チップ → モジュール → ユニット → ECU一体」と連続的で、設計次第で境界が変わることです。
同じ用途のセンサーでも、出荷形態が半導体チップ、センサーモジュール、制御基板付きユニット、車両搭載サブアセンブリなどに分かれると、それぞれで関税分類上の論点が変わり得ます。


まず押さえるべき法的ポイント

ここからが、誤分類と再分類リスクを分ける実務上の要所です。

A. 車両部品8708は「最後に」検討する

Section XVII注2により、Chapter 85やChapter 90に該当するものは、Section XVIIの「部品及び附属品」には含まれません。
したがって、自動車センサーを見る際は、「自動車用かどうか」より先に、「電気機器か」「測定機器か」「半導体デバイスか」といった定義該当性を確認する必要があります。

B. 半導体デバイスに該当すれば8541・8542が優先し得る

Chapter 85の注記では、半導体ベースのセンサーについて、半導体基板や半導体材料を用い、半導体特性に基づいて物理量や化学量を検知・変換する構造が明確に定義されています。
さらに、この注記は、該当品目については見出し8541または8542が他のどの見出しよりも優先する旨の規定を置いており、いわゆる「半導体優先」のルールが明文化されています。

この優先規定を踏まえずに「自動車用だから8708だろう」という発想で分類すると、根拠の弱いコードが量産され、HS2028移行期の見直しで再分類指摘を受けるリスクが高まります。

C. MCO(多部品集積回路)という論点が増える

Chapter 85の注記には、多部品集積回路(MCO)の定義も含まれており、センサー、アクチュエータ、受動部品などを単一パッケージに統合した構造を想定しています。
自動車分野では、信号処理や補正機能を同一パッケージに実装したセンサーが増加しており、MCO該当性をめぐる論点は今後さらに増えることが見込まれます。

HS2028における条文変更そのものだけでなく、このMCO定義を踏まえた運用面での解釈も、センサー分類の重要論点として意識されやすくなります。


自動車センサーで想定される再分類シナリオ

ここでは、HS2028移行で見直しが生じやすいパターンを、コード断定ではなく論点として整理します。

シナリオ1 車両部品扱いから電気機器扱いへ

従来、国内運用や社内慣行で8708側に寄せていた品目について、Section XVII注2の適用を根拠にChapter 85側へ見直されるパターンです。
HS2028で当該条文が直接改正されない場合でも、相関表や各国の移行指針、監査強化などを通じて、除外規定の再確認が促され、分類の揺り戻しが起きやすくなります。

シナリオ2 センサーモジュールが半導体デバイス側へ寄る

形態がチップに近いモジュールや、半導体ベースのトランスデューサ定義に該当する製品は、8541または8542の優先規定の射程に入りやすい領域です。
機械的筐体や車両専用コネクタの有無よりも、機能と構造が半導体定義に該当するかが主要な論点となります。

シナリオ3 測定機器側へ寄る

距離、角速度、圧力、温度、流量、位置などの測定機能を有し、装置として測定機器の体裁が強い場合、Chapter 90の適用が検討対象となります。
この場合も、Section XVII注2によりChapter 90は車両部品扱いから除外されるため、「自動車用だから部品」という発想だけで8708に寄せると、注2を根拠にした指摘を受けやすくなります。

シナリオ4 レーダー・カメラ等の複合ユニットで分類が揺れる

ADAS用途のレーダー、カメラ、センサーフュージョンユニット等は、単なるセンサーではなく、検知・処理・通信・制御が混在する複合機能品です。
主機能の認定、ユニットとしての完成度、単体での個別機能の有無などが争点となり、HS改正期には過去の分類根拠の再説明が求められる局面が増えるため、根拠が薄いコードほど見直されやすくなります。


ビジネス影響は関税だけではない

再分類の影響は、関税率だけにとどまりません。

  • FTA原産地判定
    HSコードは品目別規則の適用に直結し、コード変更は原産地計算ロジックや非原産材料の判定に影響します。
  • 輸出管理・制裁・規制対応
    国や地域によっては特定HSコードに規制措置や追加関税を紐づけており、コード変更が規制適用の誤判定や申告漏れにつながるリスクがあります。
  • 見積りと長期契約
    仕入先との価格条件や顧客へのデューティ見込みをHSコード前提で固定している場合、HS2028切替前後で差額負担をどう扱うかを曖昧にすると、2028年初回出荷からトラブル化するおそれがあります。

2026年から着手すべき実務チェックリスト

2028年1月1日の切替に向け、2026年以降に段階的に進めたい実務対応を整理します。

ステップ1 対象品の棚卸しを品目マスタ単位で行う

センサー単体だけでなく、センサーモジュール、ユニット、ECU一体品、サービス部品、試作・評価用キットなど、HSコードが付与されている品目を品目マスタ単位で洗い出します。

ステップ2 技術情報の取得テンプレートを作る

分類精度は技術情報の質に依存するため、仕入先等に求める技術情報テンプレートを標準化します。
最低限、次の情報を押さえます。

  • 測定対象と測定原理
  • 出力形態(電気信号、デジタル通信等)
  • 半導体素子の有無と種類(ディスクリート、IC、MCO等)
  • 筐体・コネクタの有無、車両搭載状態での出荷か
  • 単体で測定装置として機能が完結するか
  • 回路ブロック図、データシート、型式仕様書

ステップ3 分類根拠メモを社内標準化する

「なぜその章か」「なぜその見出しか」「どの注記をどう適用したか」を文章で残し、監査や税関照会に耐える形で標準化します。
特に、Section XVII注2の除外規定とChapter 85注記の優先規定に一切触れていない根拠メモは、自動車センサー分野ではリスクが高いと考えるべきです。

ステップ4 HS2022→HS2028の相関表で影響を一次抽出する

WCOはHS2022とHS2028の相関表整備を進めていると公表しており、この相関表はコード変更可能性のある品目を機械的に抽出する一次スクリーニングに有用です。
最終判断は必ず個別の技術情報と法的根拠に立ち戻る前提で、「相関表はあくまで影響候補リストを作るためのツール」と位置づけることが重要です。

ステップ5 論点が重い品目は事前教示や裁定事例を活用する

各国制度に応じて、事前教示や裁定事例検索を活用し、重要品目について早期に当局見解を確認します。
製品仕様が固まっている品目から優先的に着手することで、HS2028切替時の不確実性を抑えられます。

ステップ6 契約条項と価格条件を点検する

HSコード変更や税率変更が発生した場合の価格調整条項の有無・内容を、部品供給契約や長期購買契約、顧客向け価格条件にわたって点検します。
2028年の切替を意識した条項修正を、2026〜2027年のうちに行っておくのが現実的です。

ステップ7 システム改修とマスタ統制

ERP、通関システム、原産地管理システム、品目マスタの連携ポイントを洗い出し、2028年の一斉更新に耐えられる統制を設計します。
HSコードは単なる入力情報ではなく、分類根拠とセットで管理すべきコンプライアンス情報として扱う必要があります。


HS2028に向けた実務の「勝ち筋」

HS2028は2028年1月1日に発効し、WCOは2026年1月に改正内容を公表するスケジュールを示しています。
自動車センサーは、Section XVIIの除外規定とChapter 85の半導体優先規定が同時に作用しやすい領域であり、車両部品扱いの慣行が再点検されるリスクが高い分野です。

実務上の「勝ち筋」は、ゴールとしてのコードを先に決め打ちするのではなく、製品仕様を起点に論点を分解し、根拠メモを整備し、相関表で影響を機械抽出しつつ、重要品目は早期に当局見解へ寄せていくことです。
2028年の切替は突然起こるのではなく、準備を前倒しした企業は静かに移行し、準備不足の企業だけが突然困る構図になると想定されます。