タイ政府はEUとのFTA交渉を最優先事項に位置づけ、英国とのFTAも積極推進しています

タイのFTA戦略概要

タイ商務省貿易交渉局は2025年12月、FTA戦略を発表しました。EUとのFTAを最優先とし、韓国やASEANカナダFTAも並行推進します。これによりFTA締結数は17件に達し、貿易カバー率を60%超に高めます。esf+1

第8回EU交渉会合は2026年2月2日から6日までタイで開催予定です。全24章中8章が妥結済みで、年内結了を目指します。政府調達、知的財産、持続可能な貿易が焦点です。pattayamail+1

EU・英国FTAの進捗状況

EUはタイの第4位貿易相手で、2024年の貿易額は435億ドルです。主要輸出品は電子機器、ゴム製品、自動車部品で、輸入は機械や医薬品が中心となります。[jetro.go]​

英国とのFTA交渉はEnhanced Trade Partnershipに基づき、2026年初頭のJETCO会合で加速します。英国商工会議所はEU並みの関税優遇を求め、タイ輸出業者の競争力維持を強調しています。thaiexaminer+1

これらFTA発効で、タイの対EU輸出が強化され、電子部品や食品加工業に恩恵が及びます。[nationthailand]​

ビジネスマンへのビジネス影響

EU市場アクセス向上により、タイ製造業の関税削減が実現します。例えば、自動車部品輸出企業はEUの厳格基準クリアでシェア拡大可能です。jetro+1

英国FTAはBrexit後の代替ルートを提供し、宝石や鶏肉加工品の輸出機会を増やします。サプライチェーン多角化で米国関税リスクを軽減できます。bilaterals+1

投資家はサービス貿易開放を注視し、タイ現地生産で欧州進出を検討すべきです。[nationthailand]​

今後の対応策

企業は第8回交渉監視とルール適合を確認します。商工会議所やJETRO活用で最新情報を入手し、早期市場参入を準備してください。nationthailand+1

FTA活用でGDP押し上げ効果が期待され、2026年貿易額1390億バーツ増の見込みです。[nationthailand]​

日英EPAで「e-CO完全義務化」と聞いたら最初に押さえるべき事実

結論から言うと、日英EPAにおける特恵関税の原産地証明は、紙の原産地証明書を発給して提出する方式ではありません。日英EPAは自己申告制度のみを採用しており、第三者証明制度は採用されていません。

そのため、日英EPAについて「e-CO(電子原産地証明書)が完全義務化される」という表現は、用語の混同が起きている可能性が高いです。ここで言うe-COは、一般に第三者証明制度を採用するEPAで、発給機関から税関システムへ原産地証明書データを直接送る仕組みを指します。 (税関総合情報)

この記事では、日英EPAの正しい実務像を整理したうえで、なぜ誤解が起きやすいのか、企業が何を整備すべきかを、一次情報ベースで深掘りします。

1. 日英EPAの原産地証明は、そもそも「証明書」ではなく「申告」が基本

日英EPAで特恵を取る方法は、自己申告の2ルートです。

1つ目は、輸出者または生産者による「原産地に関する申告」。これは、協定で定められた文言を、日本語または英語で、インボイスなどの商業上の文書に記載して行います。翻訳は不要とされています。

2つ目は、輸入者の知識に基づく申告。輸入者が原産性を示す情報を保有していることが前提になります。

つまり、日英EPAの世界では、紙のC/Oを商工会議所や当局に申請して受け取る、という発想自体が主役ではありません。英国政府側の説明資料でも、日英EPAは自己証明ができ、税関当局の証明書は不要である点が明示されています。 (GOV.UK)

2. 「電子化」の中身は、e-COではなく、原産地申告の電子運用

日英EPAの実務で言う電子化は、次の意味合いになります。

・申告文を載せるインボイスやパッキングリストが、PDFや電子インボイスで運用される
・申告文をインボイスとは別紙に作成して添付することも可能
・商流が複雑でも、協定が求める要件に沿って、どの文書に申告文を載せるかを設計できる

特に注意したいのは三国間取引です。第三国の事業者がインボイスを発行する形は現実に多い一方、日英EPAの手引きでは、第三国の事業者が発行した文書上に、輸出締約国の輸出者が申告文を作成することは想定されていない、と整理されています。代替として、輸出締約国側の輸出者が発行する別の商業文書(例としてデリバリーノート)に申告文を載せる運用が示されています。

この論点は、紙か電子かの問題ではなく、どの当事者が、どの文書で、原産地申告を作成するかという統制設計の問題です。

3. 少額免除と保存義務。電子化で楽になるが、責任は軽くならない

日英EPAでは、課税価格の総額が20万円以下の場合、特恵待遇の要求の根拠となる書類の提出が不要と整理されています。

一方で、保存義務は明確です。

・輸入者は、日本の国内法令により、輸入許可日の翌日から5年間、原産品に関する書類を保存
・輸出者自己申告を作成した日本の輸出者および生産者は、作成日から4年間、申告書の写しと原産性を示す記録を保存

ここで重要なのは、紙の提出が減っても、事後確認や検証がなくなるわけではないという点です。税関はリスク評価に応じて、輸入申告時または輸入許可後に確認を行い、要件を満たさない場合は特恵税率が認められない可能性があります。

4. では「e-CO完全義務化」は何を指しやすいのか。混同の正体

日本の貿易実務でe-COという言葉が強く使われるのは、第三者証明制度を採用するEPAで、紙の原産地証明書に代えて、発給機関から税関システムへデータを直接送る運用が始まっているからです。税関も、e-COを「NACCSで受信した原産地証明書データ」として整理しています。 (税関総合情報)

実際、日インドネシアEPAではe-COの本格導入が進み、本格運用後は輸入申告でe-COのみ提出を求める運用が説明されています。 (ジェトロ)

さらに、商工会議所が発給する原産地証明書には、非特恵と特恵があり、特恵側はEPAに基づく特定原産地証明書です。企業の現場では、ここでの電子化やデータ交換の話を、日英EPAにも同じように当てはめてしまう誤解が起きやすい構造があります。 (東京商工会議所)

整理すると、次の対比になります。

区分日英EPAe-COが登場しやすいEPA
証明の仕組み自己申告のみ第三者証明制度を採用する協定で多い
典型的な証憑インボイス等への原産地申告文、輸入者の知識発給機関が発給する原産地証明書
電子化の姿文書運用の電子化、保存の電子化証明書データの税関システムへの直接送信

日英EPAをe-COの延長で理解すると、不要な申請や誤った手続設計を招きます。逆に、e-CO型の協定を紙前提で回していると、特恵が取れないリスクが現実化します。

5. 企業がいま整備すべき実務チェックリスト

日英EPA向けに、すぐ着手すべき論点を絞ります。

・原産地申告文を載せる文書を社内標準化する(インボイス、別紙、パッキングリストのどれを正とするか)
・三国間取引の文書設計を見直す(第三国インボイスの場合の代替文書運用)
・少額免除の適用条件を運用ルールに落とす(20万円以下の扱い)
・保存義務に耐える証跡設計を作る(輸入者5年、輸出者4年)
・事後確認を前提に、原産性を説明できる形でデータを残す(BOM、工程、サプライヤー情報、PSR判断)

まとめ。日英EPAのキーワードは「自己申告の電子運用」。e-COとは別物

日英EPAは自己申告制度のみで動いており、第三者証明制度の電子化として語られるe-COとは制度設計が異なります。

日英EPAで企業が勝つために必要なのは、紙をなくすことではなく、原産地申告をどの文書で、誰が、どの責任範囲で作成するかを明確にし、保存と説明責任に耐える証跡を整えることです。そこまで設計できれば、電子化は自然にコストを下げ、スピードを上げる武器になります。

日英EPAの乗用車関税撤廃(2026年2月)

2026年2月1日。ついに、日本とイギリスの間で大きな経済の節目が訪れます。日英EPA(包括的経済連携協定)に基づき、日本から英国へ輸出される乗用車の関税が完全に「ゼロ」になります。

2021年の協定発効から段階的に引き下げられてきた関税が、ついに撤廃されるこの瞬間。日本の自動車産業、そして現地の消費者にとってどのような意味を持つのか、深掘り解説します。


1. 2026年2月、何が起きるのか?

日英EPAでは、日本から輸出される乗用車にかけられていた10%の関税を、8年かけて段階的に削減するスケジュールが組まれていました。

  • 2019年〜: 日EU・EPAのスケジュールを継承(いわゆる「キャッチアップ」)。
  • 2021年1月: 日英EPA発効。この時点で関税はすでに削減の途上(約7.5%)。
  • 2026年2月1日: 関税率 0%(完全撤廃)が実現。

これにより、日本で製造された車両をイギリスへ輸出する際のコストが大幅に抑えられ、欧州メーカーや韓国・中国メーカーとの価格競争において、日本車が再び強力な武器を手にすることになります。


2. なぜ「今」この撤廃が重要なのか?

自動車業界が100年に一度の変革期(CASE)にある中、この関税撤廃は単なる「値下げ」以上の意味を持ちます。

① EVシフトへの強力な後押し

現在、英国市場では「ZEV(ゼロエミッション車)販売義務化」が進んでいます。関税がゼロになることで、日本メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、マツダなど)は、高価になりがちなEV(電気自動車)やハイブリッド車の価格を抑えて市場に投入しやすくなります。

② 英国市場での「日本車ブランド」の再定義

イギリスは伝統的に日本車への信頼が厚い市場ですが、近年は他国メーカーの台頭も目立ちます。関税コストが消えることで、浮いた資金をマーケティングやインフラ整備、アフターサービスに投資できるようになり、ブランド力の再強化が可能になります。

③ サプライチェーンの最適化

日英EPAでは、自動車部品の多くが既に即時撤廃されています。完成車関税がゼロになることで、「日本でコア技術を製造し、英国で最終組み立てを行う」あるいは「日本から完成車を輸出する」といった戦略の選択肢が広がり、物流の最適化が進みます。


3. 注意点:「原産地規則」の壁

関税が0%になるとはいえ、無条件ではありません。ここで重要になるのが**「原産地規則(Rules of Origin)」**です。

ポイント:

車両の価値のうち、一定割合(付加価値基準)が「日本産」または「英国産」である必要があります。特にEVの心臓部であるバッテリーに関しては、原材料の調達先が厳しくチェックされます。

もし、バッテリーの主要部材を日本や英国、EU以外から調達しすぎると、「日本産」と認められず、0%の優遇税率を受けられないリスクがあります。メーカーはこのルールをクリアするための調達戦略を2026年に向けて緻密に練り上げてきました。


4. 消費者・ビジネスへの影響まとめ

視点期待される影響
日本の自動車メーカー輸出コスト削減による収益性向上、EV市場での価格競争力強化。
英国の消費者日本車の選択肢が増え、高性能なハイブリッド車やEVがより手頃な価格に。
物流・商社日本からの輸出台数増加に伴う、日英間の貿易活発化。

結び:2026年、日英経済の絆は次のステージへ

乗用車関税の撤廃は、日英関係が「ポスト・ブレグジット(英国のEU離脱)」の混乱を乗り越え、強固なパートナーシップを構築した象徴とも言えます。2026年2月以降、イギリスの街中で最新の日本車がより多く走る姿を目にすることになるでしょう。

これは単なる貿易の数字の変化ではなく、日本の技術が世界で選ばれ続けるための大きな追い風です。


「日英EPAによる乗用車関税の完全撤廃(2026年2月)」は、日本の自動車メーカーにとって、イギリス市場での競争環境を劇的に変えるゲームチェンジャーとなります。

具体的にどの車種が恩恵を受けるのか、そしてメーカーが直面する「原産地規則」という新たな壁について深掘りします。


1. 恩恵を直接受ける「注目の車種」

現在、イギリスで販売されている日本車の多くは「英国産」または「欧州産」ですが、日本から直接輸出されている高付加価値モデルが、今回の関税撤廃で最も大きな恩恵を受けます。

① レクサス(Lexus)全般

レクサスの多くは日本国内(田原工場など)で生産され、イギリスへ輸出されています。

  • 対象モデル: RX, NX, UX, RZ(EV), LC, LSなど
  • メリット: 高級車セグメントでは数%の価格差が大きな競争力になります。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州メーカーに対し、より攻めた価格設定や装備の充実が可能になります。

② スポーツモデル・趣味性の高い車

「日本専売」に近い形で製造され、世界に輸出されるモデルも恩恵を受けます。

  • トヨタ: GRヤリス、スープラ、GR86
  • ホンダ: シビック Type R
  • マツダ: MX-5(ロードスター)これらはファンが多く、関税撤廃による価格維持(または値下げ)は、ブランドロイヤリティを高める要因となります。

③ 最新の輸入EV・ハイブリッド車

  • 日産:アリア(Ariya)
    • 日産の主力EVですが、英国サンダーランド工場ではなく日本の栃木工場で生産されています。これまでかかっていた関税がゼロになることで、テスラや中国メーカー(BYDなど)との価格競争が激化する英国EV市場で有利に立ちます。
  • マツダ・スバル:CX-60, アウトバック, フォレスター
    • 輸出比率が高いこれらのブランドにとって、英国市場は収益性の高いエリアに変わります。

2. 「原産地規則」の壁:2027年の崖

関税がゼロになっても、手放しでは喜べないのが**「原産地規則(Rules of Origin)」**の問題です。特にEVについては、2027年に大きなルール変更が控えています。

EVバッテリーの「現地調達率」ルール

日英EPA(および英EU間ルール)では、関税ゼロの適用を受けるために、車両価値の一定割合を「日本・英国・欧州」の部品で構成する必要があります。

期間車両の現地調達率(RVC)要求バッテリーへの要求
〜2026年末まで40%〜45%(緩和措置中)比較的緩やかな基準
2027年1月〜55%以上セル・材料の多くが現地産であること

この「2027年の崖」をクリアできないと、**せっかく2026年2月に関税が0%になっても、2027年から再び10%の関税が課される(=原産地ルール違反)**という事態になりかねません。


3. 各社の最新動向:生き残りをかけた戦略

メーカー各社は、この「2027年ルール」をクリアするために、サプライチェーンの再構築を急いでいます。

  • 日産自動車(EV36Zero戦略):英国サンダーランド工場の隣に、パートナー企業のAESC(旧エンビジョンAESC)と共同で**巨大なギガファクトリー(バッテリー工場)**を建設中。英国産のバッテリーを搭載することで、2027年以降も関税ゼロを確実に維持する構えです。
  • トヨタ自動車:英国バーナストン工場でのハイブリッド車生産に加え、欧州域内でのバッテリー調達を強化。また、日本から輸出するEV(レクサスなど)についても、日本産バッテリーの付加価値を高めることで「日本産」としての認定を維持する戦略をとっています。
  • マツダ・スバル:両社は日本国内での生産比率が高いため、パナソニックなどの国内バッテリーメーカーとの連携を強化しています。日本で「材料から一貫生産したバッテリー」を搭載することで、日英EPAのルール下で「日本産」として認められる付加価値比率を確保しようとしています。

4. ブログのまとめ:2026年は「攻め」、2027年は「守り」

2026年2月の関税撤廃は、日本車にとっての**「輸出の春」です。しかし、その直後に控える2027年の原産地規則厳格化は、「バッテリーの自給自足」**を迫る厳しい試練でもあります。

読者へのメッセージ:

「イギリスで日本車が安くなる!」というニュースの裏には、各メーカーによる壮絶なバッテリー調達競争と、国境を越えたサプライチェーンの書き換えがあるのです。


カナダで審議中「CPTPP 英国加盟の実施法案」とは何か

2026年1月10日時点、カナダ議会では、英国のCPTPP加盟をカナダ国内法として実装するための法案(Bill C-13)が審議段階にあります。結論から言うと、カナダがこの法案を成立させて批准手続きを完了しない限り、CPTPPはカナダと英国の間では使えません。 (カナダ議会)

本稿では、いま何が起きていて、ビジネス実務に何が影響するのかを、忙しいビジネスパーソン向けに整理します。


1. まず押さえる要点

・カナダでは「Bill C-13」が、英国のCPTPP加盟プロトコルを国内法に反映するための実施法案として審議中
・2026年1月10日時点のステータスは、下院の委員会審査(国際貿易委員会)に付託された段階
・法案が成立し、カナダが批准を完了しない限り、カナダ企業は英国向けにCPTPPの優遇関税や原産地ルールを使えない
・一方で、英国のCPTPP加盟はすでに一部加盟国との間で発効しており、カナダだけが「未接続」の状態になっている
・発効のカギは批准完了後のタイムラグで、基本は当該国の批准完了から60日後に適用開始になる仕組み (カナダ議会)


2. 何が遅れているのか

英国は2023年7月16日にCPTPP加盟の「加入議定書(Accession Protocol)」に署名し、CPTPPは「全員批准」または「一定数批准」で発効する仕組みです。15か月(2024年10月16日)を過ぎると、英国と少なくとも6か国の批准で、批准済みの国との間から先に動き始める設計になっています。 (GOV.UK)

実際に、英国と複数の加盟国との間では2024年12月に発効が進みましたが、カナダでは「カナダ向けの発効」がまだ来ていません。カナダ政府のCPTPP公式情報でも、英国加入議定書は「カナダでは未発効」と明記されています。 (外交課題カナダ)


3. カナダ議会の現在地:Bill C-13

カナダ側の実施法案は Bill C-13(英国加入議定書の実施法)です。

・2025年10月21日:下院に提出(第一読会)
・2025年12月11日:第二読会を終え、下院の国際貿易委員会(CIIT)へ付託
・2026年1月10日時点:委員会段階で審査待ち(委員会の当該案件で会合実績はまだ表示されていない) (カナダ議会)

つまり「これから委員会で条文精査や参考人招致などが進む」フェーズです。


4. Bill C-13 は何を変える法案か

ポイントは2つです。

4-1. 「英国がCPTPPの対象だ」と国内法の参照関係を整える

法案サマリー上、加入議定書を実施するために、各種法律の中でCPTPPの定義や参照の仕方を更新し、議定書を含む形に整合させる狙いが示されています。 (カナダ議会)

4-2. 関税実務の核心:カナダ関税率表に英国向けの新しい優遇枠を作る

実務担当者にとって最重要なのがここです。法案本文では、カナダの関税制度に「Comprehensive and Progressive United Kingdom Tariff(略称 CPUKT)」という英国向けの優遇関税区分を新設し、段階的な引下げ(ステージング)や端数処理、遡及しないことなど、運用ルールまで条文で組み立てています。 (カナダ議会)

条文には例えば次のような設計が見えます。
・CPUKTの最終税率が無税(Free)になる品目は「A」で表現
・段階引下げ品目は「F」や「X78・X79・X80」などのコードで、発効日または毎年1月1日の節目で税率が落ちていく
・ただし、カナダと英国の間でCPTPPが発効する前の期間には効かない(遡及なし)ことを明記 (カナダ議会)

ここは、施行後に通関・原価管理・販売価格に直結します。関税優遇を使う企業ほど、法案成立後の制度切替に備える価値が大きい部分です。


5. いつから使えるのか:発効までの流れ

ビジネス視点では「法案成立日」よりも、「カナダが批准を完了し、発効日が確定する日」が重要です。

一般に、英国加入議定書は、当該国が批准を終えると、その国との関係で60日後に適用が始まる仕組みだと説明されています。 (GOV.UK)

したがって、社内で見るべき時系列は次の通りです。

  1. Bill C-13 が議会で成立
  2. カナダ政府が批准手続きを完了
  3. 発効日が確定(目安は批准完了から60日後)
  4. 通関では、原産地証明と申告を揃えた企業から順に恩恵が出る

6. 日本企業にとっての実務インパクト

日本のビジネスパーソンに関係が深い論点を、現場目線でまとめます。

6-1. カナダと英国間の「優遇関税の取り方」が変わる

カナダ側でCPUKTが導入されると、通関現場では「英国向けのCPTPP優遇」を前提にした品目判定、税率参照、ステージング管理が必要になります。 (カナダ議会)
日本企業でも、カナダ拠点から英国へ輸出する場合や、英国製品をカナダに輸入して販売する場合に、価格戦略へ影響します。

6-2. 原産地ルールとサプライチェーン設計

CPTPPはルールが比較的詳細で、特に「原産地の取り方」が社内統制の対象になります。
カナダと英国の間でCPTPPが使えるようになると、原産地判定・証憑(サプライヤー申告、製造工程、材料証明など)の整備をCPTPP仕様に寄せる必要が出ます。
この部分は、関税メリットが大きいほど監査対応も含めて重要になります。

6-3. 競争環境

英国とカナダの間でCPTPPが動き出すと、関税条件が変わるため、同一商品でも競合の価格条件が変わり得ます。特に「段階引下げ」の品目は、年明けなど節目で条件が動く可能性があります。 (カナダ議会)


7. 企業が今やるべきチェックリスト

制度が動く前に、社内で先回りしておくと楽になります。

  1. 対象取引の棚卸し
    ・カナダと英国の売買があるか
    ・英国経由やカナダ経由のサプライチェーンがあるか
  2. 関税と原産地の準備
    ・対象HSの関税優遇が段階引下げか、即時無税か
    ・原産地判定に必要な証憑を、CPTPP基準で揃えられるか(サプライヤーから取れるか)
  3. 通関オペレーションの整備
    ・申告時の優遇税率区分(CPUKT)の設定
    ・ERPや関税マスタの更新手順
    ・監査対応の保存年限と保管場所
  4. 進捗モニタリング
    ・法案の委員会審査の進み具合
    ・批准完了と発効日の確定

法案の公式ステータスはLEGI Sinfoで追えます(現状は委員会付託中)。 (カナダ議会)


まとめ

カナダの Bill C-13 は、英国のCPTPP加盟を「カナダでも使える状態」にするための最後の国内手続きに近い位置付けです。審議が進んで成立すれば、カナダと英国の間でCPTPPの優遇関税や原産地ルールが実務に乗ってきます。 (カナダ議会)

ビジネス側は、発効後に慌てないために、対象取引の洗い出しと、原産地証憑と関税マスタの準備を先に進めておくのが現実解です。

【2025年12月合意】米英「医薬品ゼロ関税・薬価改革パッケージ」の全貌と実務インパクト


2025年12月1日、米英両政府は医薬品貿易および薬価に関する歴史的な合意を発表しました。これは単なる「関税撤廃」のニュースではありません。**「米国市場へのアクセス権」と引き換えに「英国の医療制度(NHS)が相応の対価を支払う」**という、極めて戦略的かつ実利的な取引(ディール)です。

本記事では、この合意が医薬品のサプライチェーン、薬価戦略、そして日本企業の投資判断に与える影響を解説します。

1. 「米英医薬品合意」の核心:何を交換したのか?

合意の要点は、**「英国が米国の要求通りに薬価・医療支出を引き上げる代わりに、米国は英国製医薬品を『追加関税』の脅威から完全に保護する」**というバーター取引です。

米国側のコミットメント:完全なゼロ関税の保証

  • 対象: 英国原産の医薬品、原薬(API)、医療技術。
  • 内容: 少なくとも3年間、関税を0%に固定。
  • 特記事項: 通常のWTO関税だけでなく、通商拡張法232条(国家安全保障)に基づく追加関税や、通商法301条(不公正貿易)に基づく調査・報復措置からの免除を確約。

英国側のコミットメント:市場の魅力向上

  • 薬価支出の拡大: 新規医薬品への純支出を約25%増額(過去20年で最大規模)。
  • NICE評価基準の緩和: 費用対効果の閾値(Threshold)を引き上げ、高額薬を採用しやすくする。
  • VPAGリベートの引き下げ: 2026年のリベート率を**14.5%**へ大幅に引き下げ、さらに向こう3年間は15%を上限とするキャップ制を導入。

この合意は、本年5月に進展した「米英経済繁栄協定(EPD)」の具体的成果として位置づけられています。

2. なぜ今「ゼロ関税」が重要なのか?(WTOとの違い)

「医薬品の関税はWTO協定でもともとゼロではないか?」という疑問はもっともです。1994年のWTO医薬品協定(ゼロ・フォー・ゼロ)により、主要国間の医薬品関税は原則撤廃されています。

しかし、2025年の地政学リスクは「WTOの外」にあります。

米政権は「医薬品の海外依存は安全保障リスク(232条)」あるいは「各国の薬価統制は米国へのただ乗り(フリーライド)」であるとして、WTO税率とは別枠の10〜100%の追加関税を課す構想を掲げてきました。

今回の合意のビジネス上の価値は、**「英国だけが、この追加関税リスクから『制度的に』免除された」**という点にあります。EUや日本からの輸出が潜在的な追加関税リスク(あるいは既に発動された措置)に晒される中、英国は「確実な避難所(Safe Haven)」としての地位を確保しました。

3. 英国市場の変化:NICE改革とVPAG修正

英国は米国市場へのアクセスを守るため、自国の医療財政ルールを大きく変更します。

3-1. NICE(医療技術評価機構)の基準緩和

費用対効果評価(HTA)の厳格さで知られるNICEですが、今回の合意により新薬の承認基準となる「閾値」を引き上げます。

  • 変更内容: 1QALY(質調整生存年)あたりの許容コストを、従来の2万〜3万ポンドから、2万5千〜3万5千ポンドへ上方修正。
  • 影響: これまで「高すぎる」として償還を拒否されていたがん治療薬、希少疾患薬、遺伝子治療などが、NHSで採用される可能性が飛躍的に高まります。

3-2. VPAG(自発的制度)リベート率の適正化

製薬業界にとって最大の朗報は、売上の一部を政府に返還する「VPAG」制度の見直しです。

  • 現状(2025年): 新薬に対するリベート率は**22.9%**まで高騰し、英国でのイノベーション投資を阻害する要因となっていました。
  • 合意後(2026年〜): リベート率は**14.5%**へ急低下し、さらに3年間は「上限15%」が保証されます。これにより、英国事業の予見可能性(Predictability)と利益率が大幅に改善します。

4. サプライチェーンと投資への実務インパクト

4-1. 「対米輸出ハブ」としての英国

英国製造拠点の競争優位性は明確です。

  • 関税コスト差: 他国(EU・日本等)からの対米輸出に追加関税が課されるシナリオにおいて、英国産(0%)は圧倒的なコスト競争力を持ちます。
  • 規制調和: GMP相互承認(MRA)の活用により、査察コストも最小化されています。

4-2. 投資判断のポイント

ModernaやBMSなどが英国への追加投資を表明していますが、各社は以下のバランスを見て判断する必要があります。

  • プラス要因: 対米アクセスの保証、英国内の薬価環境改善。
  • リスク要因: ゼロ関税の保証期間が現時点では「少なくとも3年間」であること。また、VPAGの15%という水準は欧州他国と比較して依然として低くはないこと。

5. 日本・アジア企業にとっての機会とリスク

チャンス:3つの視点

  1. 対米輸出ルートの再構築:高マージンの新薬やバイオシミラーについて、追加関税リスクのある日本・EU拠点ではなく、英国拠点での製造・最終包装(Secondary Packaging)を行うことで関税を回避するスキーム。
  2. 英国市場での再挑戦:過去にNICEで償還不可となった製品や、採算性から投入を見送った希少疾患薬の再申請検討。
  3. CDMO・エコシステム活用:英国のCDMO(開発製造受託機関)への委託需要増を見越した提携や投資。

リスク:2つの懸念

  1. 3年後の「クリフ」リスク:米国の政権交代や方針転換により、3年後にゼロ関税枠組みが延長されないリスク。投資回収期間のシミュレーションには保守的なシナリオが必要です。
  2. 英国財政の持続可能性:薬価支出を25%増やすことによるNHS財政への圧迫が、将来的に別の形での規制強化(処方制限など)につながる可能性があります。

6. ビジネスパーソンが今すぐ行うべきアクション

  1. 関税インパクトの試算(P/Lシミュレーション):自社の主力対米輸出品について、「現状ルート(日本/EU発)」と「英国経由ルート」での関税・物流コスト総額を比較する。特に「セーフガード関税」が発動された場合の感度分析を行う。
  2. 英国薬価戦略のアップデート:新しいNICE閾値(£25k-£35k/QALY)とVPAGリベート(15% Cap)を前提に、英国での上市計画とプライシングを見直す。
  3. サプライチェーンのオプション検討:完全な工場移転ではなく、英国のパートナー企業(CDMO等)を活用した「製造の一部英国化」による原産地規則(Rules of Origin)クリアの可能性を探る。

おわりに

今回の合意は、医薬品ビジネスにおいて**「貿易政策」と「薬価政策」が不可分になった**ことを象徴しています。英国は「高い薬価(=イノベーションへの対価)」を受け入れることで、「産業の安全(=対米アクセス)」を買いました。

今後、日米間や日欧間でも同様の「管理貿易的アプローチ」が議論される可能性があります。ヘルスケア産業の担当者は、薬事規制だけでなく、通商政策の動向を注視する必要があります。


Would you like me to…

イギリスのTPP参加?

以前のブログで、「イギリスのTPP参加?インドのTPP参加?」と言うタイトルで書きました。

昨日、この記事へのアクセスがなぜか急上昇。新しい投稿でもないのになぜなのか分かりませんでした。

理由が判明しました。

イギリスのフィナンシャルタイムズで、「イギリスがTPP参加を検討?」という記事が出たためのようです。

担当している大臣は否定しているようですが、イギリスに近いオーストラリアやニュージーランドがTPP11に参加していますし、カナダも参加しています。

イギリスはEUからの離脱で通商交渉を一から考えねばならず、その意味でのTPP11参加はあり得る話でしょう。イギリスが加盟すれば、条件面からのってこないかもしれませんが、インドもやはり可能性がないわけではありません。

イギリスのTPP参加?インドのTPP参加?

アメリカの政治家の中には、イギリスのTPP参加の可能性に言及する人がいるようです。

面白い発想ですね。あり得なくないと思います。

EUほどのきつい縛りがTPPにたくさんある訳ではありませんし。

もし、可能性が出てくれば、オーストラリア、ニュージーランドも賛同するでしょう。

また、イギリスとのFTAに関する話題で持ちきりのインドも、これを機会にTPPに加盟するかもしれません。(インドの場合、超えねばならない課題も多いでしょうが)