HS2022 第82類:卑金属製の工具、道具、刃物、スプーン及びフォーク並びにこれらの部分品(Tools, implements, cutlery, spoons and forks, of base metal; parts thereof of base metal)

用語の統一(本稿の表記)

  • 部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 農業・園芸・林業向けの手道具(例:シャベル、くわ、剪定ばさみ)→ 8201
    • のこぎり・のこ刃(手のこ、帯のこ刃、丸のこ刃など)→ 8202
    • プライヤー、ニッパー、金切りばさみ等の手工具 → 8203
    • 交換式工具(ドリルビット、タップ、フライス等)→ 8207
    • 包丁・ナイフ(機械用刃物を除く)やその刃 → 8211
    • スプーン・フォーク等の食卓用具(セット含む)→ 8215
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • スタンドやフレームに固定して使う「手回しドリル」等(手で回しても“機械”寄り)→ 第84類(例:工作機械側の見出し)
    • ベースプレート等に取り付けたギロチン式の剪断機(手動でも機械扱い)→ 第84類(例:8462)
    • 噴霧装置、空気圧工具、事務用ステープル打ち機など、「手で使う」でも第84類に明確に含まれるタイプ → 第84類(例:8424、8467、8472)
    • 医療用・獣医用の器具として使用されるはさみ・刃物等 → 第90類(例:9018)
    • 貴金属(または貴金属張り)を“装飾の域を超えて”柄や刃など主要部に使用したカトラリー等 → 第71類に移りやすい
    • 電気かみそり/電気バリカンの頭部・刃 → 85.10(第85類)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「手工具(82類)」か「機械(84類)」か:スタンド固定・ベース付き等は機械側に寄りやすい
    2. 刃物の系統:交換式工具(8207)/機械用刃(8208)/手持ちナイフ(8211)を分ける
    3. セット扱い:ナイフ(8211)+同数以上のカトラリー(8215)セットは、原則8215に寄せる
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • EPA/FTAのPSR適用:HSの付番がズレると、原産性判断(CTC/RVC等)も連鎖的に崩れます。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注で決める):第82類は、類注(注1〜注3)が「入る/入らない」「セットの扱い」「部分品の扱い」を強く決めます。まず注を読んでから項へ進むのが安全です。
    • GIR3(複合品・セット):工具セットやキッチンセットは「小売用のセット」論点になりやすいです(ただし、82.11+82.15セットは類注で明確に指示あり)。
    • GIR6(6桁の決定):4桁が決まっても、6桁で「材質(鋼か、サーメットか)」「固定刃か折りたたみか」「セットか単品か」などでズレます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で効く順):
    • 作用する部分(刃・刃先・作用面)の材質:卑金属等でない場合、原則82類から外れやすい(例:ゴム・革・陶磁等の作用部は別類へ)。
    • 手で使うのか/機械に組み込まれるのか/据え付けるのか(82類⇔84類の境界)
    • セット内容(構成品の種類・点数・用途):82.06や82.15のセット、82.11+82.15のセットなど。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象が「工具・道具・刃物・カトラリー」系か?(第82類の総説イメージに合うか)
  • Step2:作用する部分(刃・作用面)が、卑金属/金属炭化物/サーメット等か?
    • YES → Step3へ
    • NO → 原則は材質別の類(例:ゴムなら40類等)へ(※例外・個別判断あり)
  • Step3:手工具か?機械側か?
    • スタンド固定・ベース付き・据え付け前提 → 第84類寄り(例示あり)
    • 手で保持して使用 → Step4へ
  • Step4:4桁を決める(8201〜8215)
    • 交換式工具 → 8207
    • 機械用ナイフ・刃 → 8208
    • ナイフ(機械用以外)→ 8211
    • スプーン・フォーク等 → 8215
    • など
  • Step5:類注(注2=部分品、注3=セット)で“強制移動”がないか確認
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第82類 ⇔ 第84類:手で使える形でも、据付け・ベース付き等で機械側に寄る例が明示されています。
    • 第82類 ⇔ 第90類(医療器具):医療・獣医用途の器具としての性格が強いと第90類(例:9018)に寄ります。
    • 第82類 ⇔ 第71類(貴金属要素):貴金属の使い方が“装飾”の範囲を超えると71類へ。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8201農業・園芸・林業用の手道具シャベル、くわ、剪定ばさみ用途が「主として」該当分野か(ただし他用途に流用されても可)
8202手のこ、各種のこ刃手のこ、帯のこ刃、丸のこ刃丸のこ刃は「鋼の作用部」等で6桁分岐
8203やすり、プライヤー類、金切りばさみ等ラスプ、ニッパー、パイプカッター“手工具”か“機械(84類)”かの境界に注意
8204手動スパナ・レンチ、ソケットモンキーレンチ、ソケットレンチ調整式か否か(8204.11/8204.12)
8205その他の手工具等(ダイヤ切り、トーチ、万力等)ドライバー、金づち、万力、トーチ「工作機械やウォータージェット切断機の部品・付属品」は除外される点に注意
82068202〜8205の複数見出し工具を小売セットにしたもの工具箱(のこ+レンチ+ドライバー等)“小売用セット”として8206に寄るか、個別か(構成・包装・販売形態)
8207手工具/工作機械用の交換式工具ドリルビット、タップ、ダイス、フライス“交換式”が本質。岩盤掘削工具はサーメット有無で分岐
8208機械・器具用のナイフ/切断刃食品加工機の刃、木工機械のナイフ“機械用”が決め手。手持ちナイフ(8211)と混同しやすい
8209サーメット製の未装着工具チップ等チップ、インサート(未装着)“サーメット”かつ“未装着”が核
821010kg以下の手動機械式器具(飲食物の調製等)手動ミンサー、手動ジューサー「10kg以下」「飲食物の調製等」が要件
8211機械用以外のナイフ等+刃包丁、折りたたみナイフ、替刃8211.91/92/93(固定刃/折りたたみ)などで分岐。セット規定あり
8212かみそり、かみそり刃等安全かみそり刃、替刃ブランク電気かみそりの頭部・刃は8510へ(類注)
8213はさみ類(テーラー用等)+刃裁ちばさみ、キッチンばさみ医療用器具(9018)との境界に注意
8214その他の刃物類、マニキュア/ペディキュア用具ペーパーナイフ、爪切り、ネイルファイル“刃物類のその他”の受け皿。玩具(95類)との境界例示あり
8215スプーン、フォーク等(食卓/台所用)スプーン、フォーク、レードルナイフ+カトラリーセットは8215へ(類注)。貴金属要素で71類に飛ぶことも

注:上表は**HS6桁(国際6桁)**の枠組みです。日本の輸入申告では、別途「国内コード(統計細分)」が付く点に留意してください(本稿では国内細分は扱いません)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の典型(この類で頻出):
    • 材質(例:丸のこ刃の“作用部が鋼か”)
    • 形態(固定刃/折りたたみ、セット/単品)
    • 用途(機械用か、手持ち用か)
    • 要件(例:8210は“10kg以下”)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8202.31 vs 8202.39(丸のこ刃)
      • どこで分かれるか:作用する部分が鋼か(8202.31)/それ以外(8202.39、部分品含む)
      • 判断に必要な情報:刃先材質(超硬チップ等)、構成(本体・チップ)、仕様書
      • 典型的な誤り:名称だけで「丸のこ刃」→鋼と決め打ちしてしまう
    2. 8204.11 vs 8204.12(スパナ・レンチ)
      • どこで分かれるか:非調整式(8204.11)か、調整式(8204.12)か
      • 判断に必要な情報:口幅可変機構の有無(ウォームギヤ等)、製品写真
      • 典型的な誤り:「モンキー」でも固定口の製品を混同
    3. 8207.13 vs 8207.19(岩盤掘削用の交換式工具)
      • どこで分かれるか:作用部がサーメット(8207.13)か、それ以外(8207.19)
      • 判断に必要な情報:作用部材質(サーメットの有無)、カタログ
      • 典型的な誤り:超硬(炭化物)とサーメットの区別を確認せずに選択
    4. 8211.91 / 8211.92 / 8211.93(ナイフの形態)
      • どこで分かれるか:テーブルナイフ(固定刃)(8211.91)/その他の固定刃(8211.92)/固定刃以外(折りたたみ等)(8211.93)
      • 判断に必要な情報:用途(テーブル用か)、刃の固定可否、ロック機構
      • 典型的な誤り:テーブル用セットの一部を「その他固定刃」に入れてしまう
    5. 8215.10 / 8215.20 / 8215.91 / 8215.99(カトラリーと“貴金属めっき”)
      • どこで分かれるか:セットか単品か、また貴金属めっきの有無
      • 判断に必要な情報:セット内容、めっきの材質・範囲、仕様書
      • 典型的な誤り:装飾が“軽微”か“主要部”かの見極め不足(主要部なら71類に飛ぶ可能性)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第82類(第15部)の内部では、**「はん用性の部分品(parts of general use)」**は、原則として第82類に置かれず、別の見出し(ねじ・ボルト等)へ行きます。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:剪定ばさみ用のばね、工具に使われるねじ・ナット等は、「工具の一部だから82類」と決めず、**はん用性部分品として他の章(例:73類等)**を検討します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 工具の部品として入ってきたが、実は「はん用性の部分品」だった(ねじ・ボルト・ばね等)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1〜注3):
    • 注1:原則として「刃・作用面などの作用部」が、卑金属等(卑金属/金属炭化物/サーメット等)でできているものに限って第82類に入る(ただしトーチ等の例外あり)。
    • 注2:第82類の物品の卑金属製部分品は、原則として“完成品と同じ項”へ。ただし、**手工具用ツールホルダー(8466)**等の例外や、はん用性の部分品は除外。また電気かみそり等の頭部・刃は8510へ。
    • 注38211のナイフ8215の食卓用具が「同数以上」でセットになっている場合は、8215に分類。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 類注自体は「卑金属・サーメット等」「はん用性の部分品」等の参照を置いており、定義は別注(部注)側で与えられる構造です。実務上は「作用部材質」「部品の汎用性」を仕様書で裏どりします。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 手工具用ツールホルダー → 8466
    • 電気かみそり/電気バリカンの頭部・刃 → 8510

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:注1(作用部材質)で「82類に入る/入らない」が決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 刃・刃先・作用面の材質(卑金属、炭化物、サーメット、研磨材の付き方)
    • 現場で集める証憑:
      • 材料仕様書、図面、カタログ、写真、(必要に応じて)材質証明
    • 誤分類の典型:
      • 見た目が金属でも、実は作用部が別材質で82類に入らないのに「工具だから82類」で押してしまう。
  • 影響ポイント2:注2(部分品)で「完成品と同じ項」か「例外」かが変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 当該部品が「特定品の専用品」か「はん用性の部分品」か
      • ツールホルダー該当性(8466)
    • 現場で集める証憑:
      • BOM、用途説明、取付図、互換性情報(汎用品か専用品か)
    • 誤分類の典型:
      • ネジ・ばね等を「工具の部品」として82類に入れてしまう(はん用性部分品は除外)。
  • 影響ポイント3:注3(セット)で「8211→8215へ強制的に寄せる」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • セットの構成(ナイフの本数、スプーン/フォーク等の本数、販売形態)
    • 現場で集める証憑:
      • セット写真、梱包内容一覧、SKU構成、販売ページ(小売セットの実態)
    • 誤分類の典型:
      • 「ナイフセットだから8211」としてしまい、カトラリー同梱(同数以上)の注3適用を見落とす。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:据え付け型の手回し機器を82類(手工具)に入れる
    • なぜ起きる:動力が電動でない=“手工具”と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
      • 手で使えても、スタンド固定・ベース付き等で機械(第84類)に寄る例示があります。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「床・作業台に据える設計か?」「ベースプレートやスタンドがあるか?」を写真・図面で確認
  2. 間違い:機械用の刃(8208)を、手持ちナイフ(8211)に入れる
    • なぜ起きる:「刃物」「ナイフ」という商品名に引っ張られる
    • 正しい考え方:
      • 機械・器具に用いる刃は8208、機械用以外のナイフは8211という切り分けが見出し上明確です。
    • 予防策:
      • 「装着先(機械名・型式)は何か?」を必ず確認。取付方法(ボルト穴等)もチェック
  3. 間違い:“交換式工具”でないのに8207に入れる
    • なぜ起きる:ドリル関連・切削関連=8207、という思い込み
    • 正しい考え方:
      • 8207は交換式工具(手工具用/工作機械用)という性格が核。固定刃の機械用ナイフは8208等。
    • 予防策:
      • 「工具が交換式(消耗交換)として設計されているか」「シャンク規格や保持方式は?」を確認
  4. 間違い:工具の“部品”なら何でも注2で82類に入ると思う
    • なぜ起きる:注2の前半(完成品と同じ項)だけ読んでしまう
    • 正しい考え方:
      • はん用性の部分品は除外、ツールホルダー(8466)等は例外、電気かみそり刃は8510へ、と但し書きが重要です。
    • 予防策:
      • 部品について「汎用品か専用品か」をBOMと図面で確認(ねじ・ばね等は要注意)
  5. 間違い:ナイフ+カトラリーのセットを8211で申告
    • なぜ起きる:主役(ナイフ)だけを見てしまう
    • 正しい考え方:
      • 類注3で、条件を満たすセットは8215に分類と指示されています。
    • 予防策:
      • セット内容の数量(同数以上か)をインボイス/梱包明細/写真で確定させる
  6. 間違い:貴金属の使い方を軽視して82類のままにする
    • なぜ起きる:少し光っている程度に見える/「装飾」だと自己判断
    • 正しい考え方:
      • “軽微な装飾”の範囲なら82類に留まり得ますが、主要部に貴金属等を用いると71類に移る旨が示されています。
    • 予防策:
      • 貴金属めっき/張りの範囲(柄全体か、ワンポイントか)と素材証明を取得
  7. 間違い:医療用はさみ等を82類に入れる
    • なぜ起きる:形状が通常のはさみと同じに見える
    • 正しい考え方:
      • 医療・獣医用の器具としての性格が明確なら90類(例:9018)に寄ることが示されています。
    • 予防策:
      • カタログ用途(medical/surgical 等)、販売先、滅菌対応等の仕様を確認
  8. 間違い:「手で使う=82類」として、84類に明確に含まれる器具を入れてしまう
    • なぜ起きる:ニューマチックツールや噴霧器、ステープラー等は“手持ち”に見える
    • 正しい考え方:
      • これらは例示として84類に含まれる旨が説明されています。
    • 予防策:
      • 「動力源(空気圧等)」「機械的機構」「用途」が84類側の典型に当てはまらないかを確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること:
    • PSR(CTC/RVC/加工工程等)はHS(多くは6桁)を前提に書かれているため、HSが1桁でもズレると、満たすべきルール自体が変わります。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品だけでなく、非原産材料側のHS付番もPSRの判定(CTH/CTSH等)に影響
    • セット(82.06/82.15 等)の扱いを誤って、PSRの“対象コード”が変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 一般論(実務で重要):
    • 協定ごとに採用HS版が異なり、協定が採用していないHS版でPSR検索すると結果が誤る可能性がある旨、税関ポータルでも注意喚起されています。
    • 一方で、輸入申告は最新のHSを使う(協定検索と申告で“HS版がズレる”ことが起き得る)点も明示されています。
  • 本稿で例示した協定(参考:代表例):
    • RCEP:PSR附属書(Annex 3A)はHS2012に基づく旨が明記されています。
      • ただし、日本の外務省資料では、RCEP合同委員会で採択されたHS2022へのトランスポーズ版PSRが2023-01-01から実施される旨が示されています。
    • CPTPP:日本税関の原産地規則資料で、CPTPPの関税分類番号(6桁)がHS2012で運用されていることが読み取れます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • ①協定本文・運用資料が指すHS版を確認 → ②旧HSでPSRを確定 → ③WCO相関表や当局のトランスポーズ表で新HSに対応付け、**申告HS(最新)**と整合を取る、という順が事故を減らします。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(最低限):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、各材料の原産国、非原産材料のHS(協定が採用する版)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 自己申告・第三者証明の別により提出書類が変わるため、税関のガイド・様式に合わせて保存(協定ごとの運用に従う)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2007→HS2012削除/統合8201.208201の「フォーク」区分(8201.20)が削除され、他の区分へ整理旧データ参照時に8201.20が出てきたら要注意(現行は別号へ寄せる)
HS2007→HS2012削除/再整理8205.808205.80(“金床等”のサブ見出し)が削除され、8205内の区分が整理8205の旧番号で管理している品目は、現行の8205内で再判定が必要
HS2007→HS2012文言修正8205.908205.90の説明が「セット」中心から「その他(セット含む)」へ整理8205.90に“セット以外”も入る整理のため、旧ロジックの見直しが必要
HS2012→HS2017文言修正/範囲明確化8205(見出し文)8205の除外に「ウォータージェット切断機」関連が追加8205に見えても、当該機械の部品・付属品なら機械側(例:8466等)検討が必要
HS2017→HS2022変更なし(実質同一)8201〜8215、類注第82類の見出し・類注は実質同一(少なくともWCO条文比較上の変更は確認できない)過去データとの突合(統計/PSR)時は、主にHS2012以前の番号差に注意

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断のしかた:
    • **HS2007とHS2012のWCO条文(第82類)**を比較すると、8201に存在した「8201.20(Forks)」がHS2012では掲載されていないこと、また8205に存在した「8205.80」がHS2012では掲載されていないことが確認できます。
    • HS2012とHS2017を比較すると、8205の見出し文に「water‑jet cutting machines」が追加されていることが確認できます(HS2012側には当該文言がない)。
    • HS2017とHS2022は、第82類の見出し・類注の記載が一致しており、条文上の再編は確認できませんでした。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要ポイント(第82類に関して、実務で影響が出やすいもの)を整理します。

版の流れ主な追加・削除・再編(第82類の例)旧コード→新コード(考え方)備考
HS2007→HS20128201.20(フォーク)削除、8205.80削除、8205の「その他」整理旧8201.20は現行8201内で再分類、旧8205.80は現行8205内で再分類実務では“旧HSでの社内マスタ”を洗い替え
HS2012→HS20178205見出し文にウォータージェット切断機の除外を追加8205周辺で「機械の部品・付属品」論点が強化機械側見出し(例:8466等)再確認
HS2017→HS2022第82類は実質変更なし大きな再編は見当たらない

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ナイフ+カトラリーセットの申告ミス
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注3(セットは8215へ)を見落とし、8211で申告
    • 起きやすい状況:商品名が「ナイフセット」、梱包明細が曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:セット内容(点数)と写真を事前に揃え、注3を必ずチェック
  • 事例名:工具の“汎用ネジ”を82類部品で申告
    • 誤りの内容:注2ただし書き(はん用性部分品は除外)を無視
    • 起きやすい状況:「工具の修理部品」として一括手配
    • 典型的な影響:品目更正、関税・消費税差額、帳票再作成
    • 予防策:BOMで汎用品(ねじ・ばね等)を切り出し、別分類を検討
  • 事例名:電気かみそり刃の誤分類
    • 誤りの内容:類注2で8510と明示されているのに、8212(かみそり刃)で申告
    • 起きやすい状況:「替刃」という品名のみで判断
    • 典型的な影響:修正、差額、審査長期化
    • 予防策:電気式か否か、適合機種(電気かみそり/バリカン)を品名に明記
  • 事例名:据付け前提の“手動”機器を82類に入れる
    • 誤りの内容:82類の総説が示す82類⇔84類の境界を見落とす
    • 起きやすい状況:現物写真がなく、仕様が「手動」としか書かれていない
    • 典型的な影響:差戻し、追加資料要求
    • 予防策:スタンド/ベースの有無、使用方法(据置きか手持ちか)を図面で確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 銃砲刀剣類所持等取締法(いわゆる銃刀法)関連:刀剣類等について、税関で確認が必要な輸入規制が案内されています(品目により要件が異なるため、個別確認が必須)。
    • 輸入関係他法令:税関は「輸入関係他法令一覧」や「輸出入禁止・規制品目」等で主管省庁確認を促しています。
    • (参考)銃刀法は近年改正情報もあるため、最新の公表情報を確認してください。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等):第82類は通常は該当しにくい(食品そのものではないため)
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:通常は該当しにくい
    • 安全保障貿易管理:個別製品の仕様により別途確認(本稿では一般論に留めます)
    • その他の許認可・届出:刀剣類・一部の刃物等は、主管当局・税関への確認が重要
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(カスタムスアンサー、輸入関係他法令一覧)
    • 警察庁(銃刀法関連の公表情報)
    • 経済産業省(輸入管理関連:該当する場合)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品写真、仕様書(刃渡り等の属性を含む場合は特に)、用途説明、取引書類、必要に応じて許可・承認書類

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 作用部材質(刃先・作用面)、用途(手持ち/機械用/医療用等)、構造(固定・折りたたみ、据付けの有無)
    • セット内容(同梱品と数量)、包装形態(小売用か)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1〜3を再確認(作用部材質、部分品、セット)
    • 82類⇔84類(機械)、82類⇔90類(医療)、82類⇔71類(貴金属)の境界を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「用途(機械用/手持ち)」「セット構成」「材質」を織り込む
    • 写真・カタログ・仕様書を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が採用するHS版でPSRを確認(検索時のHS版違いに注意)
    • BOM(材料HS含む)、工程、原価データを保存(自己申告・検証に備える)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 刀剣類・一部刃物等は「輸入関係他法令」「税関FAQ」を参照し、主管当局も含め事前確認

12. 参考資料(出典)

※参照日(YYYY-MM-DD):2026-02-28

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 82 条文(1582_2022E)
    • HS2017 Chapter 82 条文(1582_2017E)
    • HS2012 Chapter 82 条文(1582_2012E)
    • HS2007 Chapter 82 条文(1582_2007E)
  • 日本税関・公的機関(分類・原産地・規制)
    • 関税率表解説 第82類(82r.pdf)
    • 関税率表の解釈に関する通則(GIR)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索ポータル(HS版の注意喚起含む)
    • 我が国の原産地規則(EPA原産地規則の詳細、2025年4月)
    • RCEP:外務省掲載ページ(HS2022トランスポーズPSRへの注意書き)
    • RCEP:Annex 3A(PSR、HS2012ベースの明記あり)
    • RCEP:HS2022へのトランスポーズPSR(2023-01-01実施の明記あり)
    • 輸入関係他法令一覧(英語版、2026-01-01)
    • 税関FAQ:銃砲刀剣類所持等取締法に基づく輸入規制の確認要件(英語)
    • 輸出入禁止・規制品目(税関)
    • 銃砲刀剣類所持等取締法(e-Gov法令)
    • 警察庁:銃刀法改正(2024年6月)の案内
    • 経済産業省:輸入管理(武器等)関連ページ(該当時の参照先)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第81類:その他の卑金属及びサーメット並びにこれらの製品(Other base metals; cermets; articles thereof)

  • 用語統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • タングステン(粉・塊・線・くず等)【8101】
    • タンタル(塊/粉・くず・るつぼ等)【8103】
    • ビスマス(99.99%超の地金/その他)【8106.10/8106.90】
    • ジルコニウム(原料・粉等/ハフニウム比で分岐)【8109】
    • カドミウム等の「8112対象金属」およびその製品【8112】
    • サーメットおよびその製品【8113】
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 金属炭化物(例:炭化タングステン粉):原則この類に入らず(例:28類や38類、工具用は82類へ)
    • 金属粉を基材にした塗料・インキ等:32.07〜32.15等(部注で除外)
    • 貴金属・貴金属合金:第71類(部注で除外)
    • 機械・電気機器の「部品として完成したもの」:多くが第16部(84・85類)等へ(部注で除外)
    • 工具用の未装着チップ/プレート等:82.09(サーメットであっても、形状・用途が工具用ならこちらが優先しやすい)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 「金属そのもの」か/「化合物(炭化物等)」か/「サーメット」か(ここで章が飛ぶ)
    • 形状(粉・くず・地金・線・板など):部注で定義があり、数値要件もあります
    • 成分比・純度要件(例:Zr/Hf比、Mg純度、Bi純度)で6桁が変わります
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSRがHSコード前提のため、誤分類が原産性判断の崩壊に直結しやすい(特に素材輸出入)
    • 「くず」扱いは、通関・環境規制(バーゼル等)・契約条件に波及しやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し(Heading/Subheading)の文言と注(Notes)でまず決めます。第81類は「金属名×形状(粉・くず・地金等)」で整理されているため、まず金属の同定形状が最優先です。
    • GIR6:6桁(号)の分岐は、同じ見出し内で「純度」「成分比」「形状」の条件が多いので、最後に6桁を必ず当て直します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(何の金属/合金か):合金は「どの金属の合金として扱うか」が部注で決まります(優勢重量など)。
    • 状態(地金/粉/くず/製品):粉・くずは部注で定義があり、形状も部注で定義されます。
    • 用途・完成度:工具用チップ、機械部品などは別類が優先し得ます(部注の除外)。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象が「第15部(卑金属)」相当かを確認
    • 貴金属(第71類)や、塗料等(第32類)など除外規定に当たらないかを先に確認します。
  • Step2:「金属そのもの」か「化合物」か「サーメット」かを確定
    • 金属炭化物(化学物質)なら原則第28類等へ。
    • サーメットなら81.13(ただし工具用形状は82.09等に寄ることが多い)。
  • Step3:金属を同定(W、Mo、Ta、Mg、Co、Bi、Ti、Zr、Sb、Mn、または8112対象金属)
    • 8112は対象金属が多いので、まず「どの元素か」を確定します。
  • Step4:形状・純度・成分比で6桁を確定
    • 例:粉の定義(90%/1mm)で「粉」扱いかが変わる。
    • 例:ZrはHf比(1:500未満)で6桁が変わる。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 81類(金属) vs 28類(化合物:炭化物等)
    • 81類(素材) vs 82類(工具・工具用チップ)/84・85類(機械・電気機器の部品)
    • 81類(合金として分類) vs 72類(フェロアロイ等)(用途が「フェロ〜」として流通するか、構成が何か)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第81類は項数が少ないため、全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8101タングステン及びその製品(くずを含む)タングステン粉、焼結棒、線、スクラップ炭化タングステン(化合物/混合物/工具用チップ)は別類へ行くことがある
8102モリブデン及びその製品(くずを含む)モリブデン粉、板、線、スクラップ「単に焼結して得た棒」か否かの分岐が出やすい
8103タンタル及びその製品(くずを含む)タンタル粉、タンタルるつぼ、熱交換器用部材HS2022で「るつぼ」が独立(8103.91)
8104マグネシウム及びその製品(くずを含む)Mg地金、削りくず、粉地金は純度99.8%以上で分岐(8104.11/19)
8105コバルトのマット等中間生産物、コバルト及びその製品(くずを含む)コバルトマット、地金、粉8105.20が「中間生産物/地金/粉」をまとめて含む構造
8106ビスマス及びその製品(くずを含む)高純度ビスマス地金HS2022で99.99%超か否かで分岐(8106.10/90)
8108チタン及びその製品(くずを含む)チタンスポンジ、粉、スクラップ6桁の構造は「未加工チタン;粉」等が同一号に入る点に注意
8109ジルコニウム及びその製品(くずを含む)ジルコニウム地金、粉、管材、スクラップHS2022で**Hf含有比(1:500未満)**で細分化
8110アンチモン及びその製品(くずを含む)アンチモン地金、粉、スクラップ「未加工アンチモン;粉」など形状で分岐
8111マンガン及びその製品(くずを含む)マンガン地金、スクラップ見出しはシンプルだが、フェロマンガン等(72類)との境界に注意
81128112対象金属(Be/Cr/Hf/Re/Tl/Cd/Ge/V/Ga/In/Nb)とその製品ベリリウム地金、ハフニウム、レニウム、カドミウムスクラップ等対象金属が多い。HS2022でHf・Re・Cdなどが独立細分化
8113サーメット及びその製品(くずを含む)サーメット材料、サーメット製品サーメット定義は部注(微細な金属+セラミックの組合せ、焼結金属炭化物を含む)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 粉(Powders):製品の90%以上(重量)が1mmふるいを通過するか(部注の定義)。サプライヤーの粒度分布表(PSD)が重要です。
    • くず(Waste and scrap):破損・切断・摩耗などで「そのままでは使えない」金属廃材か(部注の定義)。中古部材・オフカットは境界になりがちです。
    • 純度/成分比:Mg(99.8%)、Bi(99.99%超)、Zr(Hf比)など。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8109.21/8109.29(未加工Zr;粉)・8109.31/8109.39(くず)・8109.91/8109.99(その他)
      • どこで分かれるか:ハフニウムが「Zr500に対しHf1未満(重量)」かどうか
      • 判断に必要な情報:成分分析(Hf含有量、Zr含有量、分析方法、ロット)
      • 典型的な誤り:Zr品なのにHf比を確認せず「その他」へ入れる/逆に低Hfをうたうだけで根拠資料がない
    2. 8106.10/8106.90(ビスマス)
      • どこで分かれるか:**Bi 99.99%超(重量)**か否か
      • 判断に必要な情報:ミルシート、分析証明(Assay)、不純物一覧
      • 典型的な誤り:「99.99%以上」と誤読して境界を曖昧にする(条文は“more than 99.99%”)
    3. 8104.11/8104.19(マグネシウム地金)
      • どこで分かれるか:**Mg 99.8%以上(重量)**か否か
      • 判断に必要な情報:成分表(Al, Zn等の含有)、規格(例:純Mgか合金か)
      • 典型的な誤り:マグネシウム合金(他元素が多い)を高純度地金扱いする
    4. 8102.94/8102.95(モリブデン)(同様構造はタングステン等でも実務論点)
      • どこで分かれるか:「単に焼結して得た棒を含む未加工」か/それ以外の棒・形材等か
      • 判断に必要な情報:製造工程(焼結のみか、圧延・引抜き等の後加工があるか)、形状写真
      • 典型的な誤り:見た目が棒状=すべて8102.95と決め打ちする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注3:本表全体でいう「卑金属(base metals)」の範囲(鉄鋼〜タングステン〜レニウム等)が列挙されています。第81類対象金属の理解に直結します。
    • 部注4:サーメットの定義(微細な金属成分+セラミック成分、焼結金属炭化物を含む)。
    • 部注5:合金の分類(原則は優勢重量など)。
    • 部注8:「くず」「粉」の定義(粉=90%/1mm)。
    • 部注9:棒・形材・線・板などの形状定義(第81類にも準用)。
    • 部注1:塗料等や貴金属、機械類等の除外(どの部・どの類へ飛ぶかの入口)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「タングステン粉」と称していても、粒度分布が定義を満たさないと「粉」号に入れないことがあります(PSDが必須)。
    • 「炭化タングステン」は、化合物としての粉なら第28類、調製混合物なら第38類、工具用の板・チップ等なら第82類へ、というように状態で飛び先が変わります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 金属粉末を含む塗料・インキ → 第32類(部注で除外)
    • 完成品(機械・電気機器の部品等) → 第16部(84/85類など)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第81類には類注(Chapter Notes)や号注(Subheading Notes)は置かれていません(=分岐の多くは部注と各見出し文言で行います)。
    • 参考:HS2007/2012/2017には「第74類注1の形状定義を準用する」という号注がありましたが、HS2022では部注9側に定義が整理されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • サーメットの定義:部注4
    • 粉・くず:部注8
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 除外そのものは主に部注1(第32類、第71類、第16部など)で整理されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
→第81類は類注がないため、実務上の分岐は“部注(Section Notes)”が実質的に作ります

  • 影響ポイント1:「粉」定義(90%/1mm)で、同じ“粉っぽい”ものが別号になる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):粒度分布(PSD)、ふるい試験結果、製品仕様(平均粒径では不足)
    • 現場で集める証憑:仕様書、SDS、試験成績書(粒度)、写真(粒状/フレーク状)
    • 誤分類の典型:「微粉末」と商品名にある=粉(Powders)と決め打ち
  • 影響ポイント2:合金の分類(優勢重量など)で“金属名”が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):合金の重量組成(各元素%)、製造方法(焼結混合物か溶融か)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、成分分析、BOM(材料配合)、工程図
    • 誤分類の典型:用途(例:超硬用途)だけで「タングステン系」として8101へ寄せる
  • 影響ポイント3:サーメット定義に該当するかで、81.13または82.09へ動く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):微細組織(焼結体か、金属×セラミック複合か)、用途(工具用形状か)
    • 現場で集める証憑:材質説明(例:WC-Co、TiC系等)、用途資料、形状図面
    • 誤分類の典型:サーメット素材を81.13で申告すべきところ、工具用チップ形状でも81.13にしてしまう(82.09が優先しやすい)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:炭化タングステン粉を8101(タングステン)に入れる
    • なぜ起きる:商品名に「タングステン」とある/超硬用途=タングステンと短絡
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):日本税関解説で「金属炭化物はこの類に属しない」旨が明確。粉は28類、調製混合物は38類、工具用チップ等は82類など状態で分かれる。
    • 予防策:SDS・化学式・焼結/未焼結・結合材の有無・用途(工具用チップ形状か)を確認する
  2. 間違い:「粉」の号に入れたが、粒度要件(90%/1mm)を満たしていない
    • なぜ起きる:「粉末」「パウダー」という商流表示が先行
    • 正しい考え方:部注8(b)の定義で判断する。
    • 予防策:PSD(ふるい/レーザー回折など)をロット別に入手。社内質問例「90%が1mmふるい通過の試験結果はありますか?」
  3. 間違い:ジルコニウムを8109.29等に入れたが、実はHf比で8109.21側だった(または逆)
    • なぜ起きる:成分表がZr%のみで、Hf含有が管理されていない
    • 正しい考え方:HS2022はHf比(1:500未満)で6桁が分岐する。
    • 予防策:分析項目にHfを追加。社内質問例「Hfの保証値(ppm/%)は?分析方法は?」
  4. 間違い:ビスマスを一律8106.10(高純度)にしてしまう
    • なぜ起きる:「高純度」と聞くと99.99%扱いしがち
    • 正しい考え方:8106.10は99.99%超。境界は厳密。
    • 予防策:Assay(不純物一覧込み)を必須化。社内質問例「Bi純度は“>99.99%”を保証していますか?」
  5. 間違い:マグネシウム地金を8104.11(99.8%以上)に入れたが、実際は合金で8104.19側
    • なぜ起きる:Mg基材=純Mgと誤認
    • 正しい考え方:8104.11は純度条件がある。
    • 予防策:成分表でMg以外(Al/Zn等)を確認。社内質問例「これは純Mgですか、Mg合金ですか?」
  6. 間違い:「くず(scrap)」を安易に選び、実は再使用可能なオフカットだった
    • なぜ起きる:取引慣行で“スクラップ”と呼ぶ
    • 正しい考え方:部注8(a)は「そのままでは使えない」ことがポイント。
    • 予防策:形状写真・再使用可否・切断状態を確認。社内質問例「同形状で再販売/再加工用途はありますか?」
  7. 間違い:サーメット素材を81.13で申告すべきところ、工具用チップ形状でも81.13にしてしまう
    • なぜ起きる:「材質=サーメット」だけで判断
    • 正しい考え方:サーメット定義は部注4。ただし工具用のプレート・チップ等は82類(例:82.09)により具体的に規定され得る。
    • 予防策:用途・形状(工具用か)で二段階確認。図面・カタログを入手
  8. 間違い:HS6桁と日本の国内コード(統計番号9桁等)を混同
    • なぜ起きる:社内資料が9桁前提で、HS6桁に戻す工程が抜ける
    • 正しい考え方:HSは6桁まで国際共通。9桁等は国内細分。
    • 予防策:社内で「HS6桁→国内コード」の対応表を作る(付録A参照)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤ると、材料HSや工程判定(CTC/RVC等)がずれ、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(粉・合金・スクラップ)のHSがずれている
    • 「化合物(28類)」と「金属(81類)」の取り違えで、CTC条件の“章/類/項変更”判定が逆転する

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用しているHS年版が異なります。税関のPSR検索でも「協定のHS年版と違うHSで検索すると誤り得る」旨が注意喚起されています。
  • 例:RCEPは、HS2022に置換したPSRを採択し、2023年1月1日から運用とされています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定のPSRが旧版参照の場合、当局が提供する置換表(トランスポーズPSR等)やガイダンスに従い、“協定が要求するHS版”でPSR判定→**“通関は最新HS”**という二重管理が必要になることがあります。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
  • 第81類は素材が多いので、**材料HSの確定(粉/くず/合金/化合物)**と、**成分証明(Zr/Hf、純度等)**が特に重要です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割8106.00 → 8106.10 / 8106.90ビスマスを高純度(>99.99%)とその他に分割分析証明が必須化。申告コード・関税率・PSRが変わる可能性
HS2017→HS2022分割(細分化)8109.20/30/90 → 8109.21/29/31/39/91/99ジルコニウムをHf比(<1:500)で細分化成分分析(Hf)が必須。誤ると規制・統計・PSRに影響
HS2017→HS2022文言修正/細分(実質新設)8103.90 → 8103.91 / 8103.99タンタル「るつぼ」を独立コード化るつぼ取引でコードが変わる。品名・規格で判定
HS2017→HS2022削除+移動81.07(カドミウム)削除 → 8112へ包含HS2022では81.07が削除表示となり、カドミウムは8112見出しに含まれる旧コードでの社内マスタが崩れる。過去データ・PSRの読み替えが必要
HS2017→HS2022分割(細分化)8112(その他)中心 → Hf/Re/Cd等の個別号を追加8112でハフニウム・レニウム・カドミウム等が独立号で明確化「Other」一括が減り、金属同定がより重要に
HS2017→HS2022注の整理Subheading Note(74類注1準用)廃止HS2017等の号注がなくなり、形状定義は部注側で運用定義の参照先が変わる。社内マニュアル更新が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠は、**WCOのHS条文(HS2017とHS2022のChapter 81)**を見比べ、見出し・号の構造変更(例:81.07の有無、8106や8109の細分化、8103のるつぼ追加、8112の細分)を確認しました。
  • 例えば、HS2017では81.07として「Cadmium and articles thereof…」が存在しますが、HS2022では81.07が削除表示となり、8112の見出し文言にcadmiumが含まれています(条文上の位置づけが変化)。
  • 形状定義については、HS2007/2012/2017で「74類注1を準用する号注」が存在する一方、HS2022ではChapter 81側にその号注がなく、Section XVの定義(Note 9等)を参照する実務になります。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(可能な範囲で旧→新対応)
版の変遷主要な追加・削除・再編(第81類)旧コード→新コードの見え方(例)備考
HS2007→HS2012大枠の構造は同一(81.07カドミウムあり、8106は単一)8106.00(維持)、8107(維持)少なくとも章レベルでは顕著な再編なし
HS2012→HS2017大枠の構造は同一(号注あり)8106.00(維持)、8107(維持)81類の条文構造は継続
HS2017→HS20228106分割、8109細分、8103るつぼ新設、81.07削除→8112へ、8112細分、号注整理8106.00→8106.10/90、8107→(削除)→8112(cadmium)等実務マスタ更新・PSR読み替えが必要

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「炭化タングステン粉」をタングステン粉として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):日本税関解説のとおり金属炭化物は81類に属さない(化合物/混合物/工具用等へ)。
    • 起きやすい状況:商品名「タングステン粉」、用途「超硬」だけで判断
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:化学式・結合材・焼結有無・用途(工具用形状)を資料で確定
  • 事例名:ジルコニウムのHf比未確認で誤った6桁を選択
    • 誤りの内容:8109のHf比条件(<1:500)を満たす/満たさないの判断が欠落
    • 起きやすい状況:成分表にHf項目がない
    • 典型的な影響:統計誤り、FTA/規制チェックの手戻り
    • 予防策:ロット別分析、保証値の取得
  • 事例名:ビスマス高純度の「>99.99%」を「≥99.99%」と誤認
    • 誤りの内容:8106.10の閾値表現の読み違い
    • 起きやすい状況:規格書が「99.99%」表記止まり
    • 典型的な影響:コード差し戻し、追加資料要求
    • 予防策:Assayで“more than”を満たす記載を確保(不純物一覧付き)
  • 事例名:サーメット材料を81.13で申告したが、実は工具用チップで82.09
    • 誤りの内容:材質だけで判断し、より具体的な見出し(工具用)を見落とし
    • 起きやすい状況:形状が「ブランク」でも工具用途が明確
    • 典型的な影響:品目更正、関税率・規制判定の再確認
    • 予防策:用途・形状図面を必ず確認し、どの見出しがより具体か検討

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、金属素材自体はSPS中心ではありませんが、粉末はSDSや危険物/輸送要件の確認が実務上重要です(HS分類とは別管理)。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:第81類は通常対象外。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合):
      • HS分類とは別に、外為法に基づく輸出管理(リスト規制・キャッチオール等)が適用され得ます。METIのQ&Aには、ジルコニウム素材(素管等)に関する該非判断例が掲載されています。
      • 実務は「該非判定(スペックで判定)→取引審査→出荷管理」の順で設計されます(HSだけでは完結しません)。
    • その他の許認可・届出:
      • スクラップ等は、バーゼル条約関連の規制対象となる場合があり、税関も水際で取締りを実施しています(対象可否は品目・性状・汚染状況等で個別判断)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • METI(安全保障貿易管理、Q&A、改正情報)
    • 税関(バーゼル該当物品の水際取締り等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS:仕様書、成分分析、製造工程、形状写真
    • 規制:SDS、用途・需要者情報、該非判定書(必要に応じて)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 金属種(元素)/合金組成(重量%)
    • 形状(粉・くず・地金・板・線等)+製造工程(焼結のみか、圧延・引抜き等があるか)
    • 純度条件(Mg 99.8%、Bi >99.99%、Zr/Hf比など)
    • SDS、粒度分布(粉の場合)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 化合物(炭化物等)や調製品(混合物)でないか
    • 工具用形状、機械・電気部品として完成していないか(別類優先)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は金属名+形状+純度/成分比を併記(例:Zirconium unwrought, Hf <0.2%)
    • ロット別分析証明を添付できる体制
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が採用するHS年版でPSR検索(税関注意喚起あり)
    • RCEPはHS2022置換PSRが運用(2023/1/1〜)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • METI該非(HSとは別)/スクラップのバーゼル該当性など

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-27

  • WCO(HS2022 Chapter 81)
  • WCO(HS2017 Chapter 81)
  • WCO(HS2012 Chapter 81)
  • WCO(HS2007 Chapter 81)
  • WCO(HS2022 Section XV Notes:base metals/ cermets/ alloys/ waste & scrap/ powders/ shapes)
  • 日本税関:関税率表解説 第81類(81r)
  • 日本税関:品目別原産地規則検索(HS年版の注意)
  • 外務省:RCEP「HS2022に従った品目別規則(PSR)の採択」
  • 日本税関:RCEP協定のHS2022版PSR(案内)
  • 経済産業省(METI):安全保障貿易管理Q&A(素材:ジルコニウム素管等の例)
  • 経済産業省(METI):安全保障貿易管理(English/改正情報等)
  • 日本税関:バーゼル条約該当物品の水際取締り

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第80類:すず及びその製品(Tin and articles thereof)

【用語の統一(本資料内)】

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • ※第80類は**「類注(Chapter Notes)」がなく、主に「号注(Subheading Notes)」で定義が置かれています**。

【入力(ユーザーが与える情報:このブロックはそのまま残し、{ }を埋めてください)】

  • 対象:HS2022 第{CHAPTER_NO}類(Chapter {CHAPTER_NO})
  • 類名:{CHAPTER_TITLE_JP}(英語:{CHAPTER_TITLE_EN})
  • 対象国・実務前提:{COUNTRY}(例:日本)/{IMPORT_EXPORT}(輸入/輸出/両方)
  • 主な想定品目・用途(任意):{PRODUCTS}
  • 参照するFTA/EPA(任意):{AGREEMENTS}(例:日EU EPA、CPTPP、RCEP…)
  • 免責事項:このプロンプト末尾に固定文として既に貼付済み(変更しない)

(上記{ }の充足)

  • 対象:HS2022 第{CHAPTER_NO}類 → 第80類(Chapter 80)
  • 類名:{CHAPTER_TITLE_JP} → すず及びその製品(英語:Tin and articles thereof
  • 対象国・実務前提:{COUNTRY}/{IMPORT_EXPORT} → 日本/輸入・輸出(両方)
  • 主な想定品目・用途:{PRODUCTS} → 錫インゴット、錫合金、錫くず、錫線・棒、錫箔/板、錫粉、錫製容器・食卓用品、はんだ用材料等
  • 参照するFTA/EPA:{AGREEMENTS} → CPTPP、RCEP、日EU・EPA(例)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 未加工の錫(インゴット等):8001(錫(合金を除く)/錫合金)
    • 錫くず(スクラップ):8002
    • 錫の棒・形材・線:8003
    • 錫の板・シート・ストリップ、錫箔、錫粉/フレーク、錫の管・管継手、その他の錫製品:8007
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉄鋼に錫めっきした板(いわゆるブリキ):通常は**第72類(鉄鋼製のめっき・被覆板等)**側で検討(例:7210)
    • 錫のスラグ・灰・残留物(製錬残さ等):第26類 2620(残留物)
    • 溶剤等と混合済みの“調製された”金属粉塗料等:第32類(調製塗料等)へ(部注の除外)
    • フラックスで被覆したはんだ棒・はんだ線等:第83類 8311(被覆/中空の溶接・ろう付け・はんだ付け用品)
    • 錫の化合物(酸化物・塩・有機錫等):第28〜29類(化学品)側(第80類は金属とその製品が中心)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「錫(合金を除く)」か「錫合金」か(Sn≥99%+Bi/Cu閾値、または他元素合計>1%等)→ 8001.10 vs 8001.20
    2. “くず”か“再溶融したインゴット(塊)”か → 8002 か 8001 か
    3. 単なる錫製品か、他章の「特定用途・特定機能の物品」か(部注で機械/電気等へ飛ぶ)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 8007(その他の錫製品)に何でも入れてしまう(実際は83類・84/85類・72類等へ分岐するケースがある)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し・注に従う):第80類は号注で「錫(合金除く)」「錫合金」の定義が置かれており、まずここで決めます。
    • GIR3(混合物・複合品):錫めっき鋼板のように“主体が鉄鋼”なら第72類へ、など「材質の本質」を見ます(複合品ルールと各部注の除外も併用)。
    • GIR6(6桁の決定):8001は 8001.10/8001.20 に分かれるため、**成分データ(分析値)**が必要になります。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(錫か、錫合金か、錫“めっき”された鉄鋼か)
    • 形状・加工度(塊/線/粉/箔/容器など)
    • 状態(スクラップか、再溶融して塊になっているか)
    • 機能・用途(機械・電気の“部品”として特定されるか)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:主材が錫(Sn)か
    • いいえ → 第72類(鉄鋼)や第74類(銅)等、主材の章へ(例:ブリキは第72類側が典型)
  • Step2:錫が主材 → 未加工(塊)/くず/棒線/その他製品のどれか?
    • 塊(未加工)→ 8001
    • くず → 8002(ただし“再溶融インゴット”は8001)
    • 棒・形材・線 → 8003
    • それ以外の錫製品 → 8007
  • Step3:8001の場合 → 錫(合金を除く)か錫合金かを号注で判定
    • Sn≥99%かつBi<0.1%、Cu<0.4% → 8001.10
    • それ以外(錫優勢で他元素合計>1%等)→ 8001.20
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 錫製“容器/食卓用品”(8007) vs 特定機能を持つ機械・電気機器(第84/85類)
    • 錫粉(8007) vs 調製塗料等(第32類:部注で除外)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第80類は4桁見出しが少ないため全列挙します。なおWCO条文上、**[80.04] [80.05] [80.06] は角括弧付き(未使用/留保の見出し)**として掲載されています。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8001すずの塊(未加工錫)錫インゴット、錫地金、錫合金インゴット8001.10/8001.20の分岐は号注の成分定義で判定(Sn≥99%等)
8002すずのくず錫スクラップ、錫屑、回収錫**スラグ・灰等(26.20)**は除外/再溶融して塊状なら8001へ
8003すずの棒、形材及び線錫棒、錫線、錫形材、(フラックス無しの)はんだ棒フラックス被覆は8311へ除外。鋳造して引抜き等の素材は8001側になり得る点に注意
8007その他のすず製品錫板/箔、錫粉・フレーク、錫製容器、錫管・継手、ピューター食卓用品 等第80類の“寄せ集め”だが、83類(一般用部品等)や84/85類(機械・電気)に当たると除外。また粉末は部注の定義参照

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 第80類でHS6桁の“明確な分岐”があるのは主に 8001.10 と 8001.20 です。
    • 8001.10(錫:合金除く):Snが重量で少なくとも99%で、BiとCuが各上限未満(Bi<0.1%、Cu<0.4%)。
    • 8001.20(錫合金):錫が他元素より重量で最大であり、(i)他元素合計>1% または (ii)BiまたはCuが上限以上。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8001.10(錫:合金除く) vs 8001.20(錫合金)
      • どこで分かれるか:成分(Sn比率、Bi/Cu、他元素合計)
      • 判断に必要な情報:成分分析(試験成績表)、材料規格、MSDS(合金組成欄)
      • 典型的な誤り:「Snが99%あるから無条件で8001.10」として、Bi/Cuが閾値以上を見落とす
    2. 8002(くず) vs 8001(塊)
      • どこで分かれるか:“くず”の状態か、再溶融してインゴット等になっているか
      • 判断に必要な情報:写真、梱包形態、製造工程(回収→再溶融の有無)
      • 典型的な誤り:スクラップを溶かしてインゴット化したのに8002のまま申告

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注1(除外):調製塗料等、機械・電気、車両等は第15部から除外され得ます。
    • 第15部注5(合金の分類):卑金属合金は基本的に“最も重量が大きい金属”の合金として扱います。
    • 第15部注8(くず・粉末の定義):粉末は「1mmふるいを90%以上通過」等の定義があります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 錫粉でも、溶剤等と混合済みの調製品なら第32類(部注で除外される側)になり得ます。
    • “錫を含む合金”でも、錫が最も重いなら錫合金として第80類で検討します(ただし第80類の号注条件も確認)。
    • “くず”は単なる端材だけでなく、破損・切断等で本来用途に使えない金属製品も含み得ます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 機械・電気機器の部分品(Section XVI)に該当 → 第84/85類へ(第15部から除外)
    • 調製塗料・インキ等(第32類) → 第15部から除外

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第80類は、**類注(Chapter Notes)がなく、号注(Subheading Notes)**で「錫(合金除く)」「錫合金」の定義を置いています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「錫(合金を除く)」=Sn≥99% かつ Bi<0.1%、Cu<0.4%
    • 「錫合金」=錫が他元素より重量で最大、かつ(他元素合計>1%)または(Bi/Cuが閾値以上)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 号注自体は“除外先”を列挙する形式ではないため、除外は**部注(第15部注1等)**と各項解説で判断します。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第80類は“類注”ではなく“号注”中心なので、ここでは**号注(Subheading Notes)**の影響として整理します。

  • 影響ポイント1:8001.10 ⇄ 8001.20(純錫か錫合金か)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • Sn%、Bi%、Cu%、その他元素合計%(分析値)
    • 現場で集める証憑:
      • 成分分析表(第三者試験でも可)、規格書、SDS(組成)、製造仕様
    • 誤分類の典型:
      • Snが高いだけで8001.10にして、Bi/Cu閾値や他元素合計>1%を見落とす
  • 影響ポイント2:8002(くず)⇄ 8001(塊)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 形状(スクラップか、インゴット等の塊か)、再溶融の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 写真、工程図(回収→再溶融→鋳造の有無)、梱包形態
    • 誤分類の典型:
      • 「原料はスクラップ由来」だけで8002にし、実際は再溶融インゴットで8001相当

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:錫めっき鋼板(ブリキ)を第80類に入れる
    • なぜ起きる:「錫だから第80類」と短絡しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):主材が鉄鋼のフラットロール品は第72類(例:7210)側で検討
    • 予防策:基材が何か(鉄鋼/錫)を仕様書で確認、断面写真や材質証明を入手
  2. 間違い:Snが99%あるだけで8001.10と決める
    • なぜ起きる:閾値がSnだけだと誤解
    • 正しい考え方:Bi/Cuの上限や、他元素合計>1%等も要件
    • 予防策:分析表でSn/Bi/Cu/他元素合計を必須項目化
  3. 間違い:再溶融した錫インゴットを8002(くず)で申告
    • なぜ起きる:原料がスクラップ由来だと“くず”と思い込み
    • 正しい考え方:再溶融しインゴット等の形状になれば8001側になり得る
    • 予防策:工程(回収→溶解→鋳造)をインボイス説明に反映
  4. 間違い:フラックス被覆のはんだ棒を8003に入れる
    • なぜ起きる:「はんだ=錫」として材質で判断
    • 正しい考え方:フラックス被覆等は83類(8311)へ除外
    • 予防策:被覆の有無(断面/仕様)を確認、品名に「flux cored/coated」等がないかチェック
  5. 間違い:錫粉を“何でも”8007にして、調製品を見落とす
    • なぜ起きる:粉=金属粉と思い込み
    • 正しい考え方:溶剤・樹脂等と混合した調製品は第32類等へ(第15部除外)
    • 予防策:SDSの組成欄で“樹脂/溶剤/添加剤”有無を確認
  6. 間違い:錫製容器でも、機械装置付き(加熱/冷却等)を8007に入れる
    • なぜ起きる:容器=8007と機能評価を省略
    • 正しい考え方:機械装置の有無で第84類等へ分岐し得る(部注で飛ぶ)
    • 予防策:設備仕様(バルブ/熱交換/駆動部)を図面で確認
  7. 間違い:“錫合金”のつもりが、実は錫が優勢でない
    • なぜ起きる:商業名(ピューター等)だけで判断
    • 正しい考え方:合金は“どの金属が重量で優勢か”が基準
    • 予防策:必ず元素%で確認(社内で材料表を回収)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HSを誤ると、適用すべき品目別規則そのものが変わり、原産性判断(CTC/RVC/加工工程)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSだけ合っていても、非原産材料のHSが誤っているとCTC判定がズレる
    • 8007(その他)に“まとめ分類”すると、PSRの条件(CTH/CTSH等)が想定外になる可能性

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定・運用資料によって、PSRが参照するHS版が異なる場合があります。実務では税関の原産地規則ポータル等で、協定別に確認するのが安全です。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • まず“協定本文/附属書上のHS番号(旧版)”でPSRを特定し、必要なら相関表でHS2022番号に読み替える
    • 結論に不安がある場合は、税関相談(原産地部門)や通関業者へ照会

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・制度(第三者証明/自己申告)ごとに異なるため運用資料で確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言/構成の整理(注の削除)第80類 注(形状定義等)HS2017では第80類注に棒・線・板・管等の定義があったが、HS2022条文(第80類)では号注と見出しのみの構成となっている「形状の定義」を参照する場合、部注・解説(税関解説等)で補う運用が必要
HS2017→HS2022変更なし(HS6桁の範囲変更は確認されていない)8001/8002/8003/8007WCO相関表(Table I)はHS2017→HS2022で“変更/新設”のある号を列挙する形式であり、そこに第80類の号が掲載されていないHS6桁レベルでは大きな付番変更は起きにくい(ただし相関表はガイドで法的地位なし)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • WCO HS2017の第80類には、注(Note)として棒・線・板・管等の定義が掲載されています。
  • WCO HS2022の第80類は、号注(Subheading Notes:錫/錫合金の定義)と見出し列挙([80.04]等を含む)で構成され、HS2017にあった注が見当たりません。
  • 一方で、日本税関の「関税率表解説」では、第80類の各項解説内で第15部注(粉末、棒・線、板・箔、管等の定義)を参照して理解する旨が整理されています。
  • 以上より、「HS2022で第80類の注が削除され、形状定義は部注/解説等の参照で補う」点が実務上の主要差分と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

ここは“HSの版改正で、章の見出し構造がどう変わったか”を俯瞰する目的です。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)根拠
HS2002→HS200780.04〜80.06が削除旧:80.04〜80.06(錫箔・錫管等に相当する見出しが存在していた版がある)→ HS2007以降は80.07(8007)に集約され、80.04〜80.06は欠番化HS2007改正資料で「Headings 80.04 to 80.06. Delete these headings」と明記
HS2007→HS2022欠番の維持[80.04][80.05][80.06]が角括弧付きで残り、実体は8007に集約HS2022条文の見出し列挙で角括弧付き表示

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“純錫”として申告したが、Bi/Cuが閾値超過
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):号注の定義(8001.10要件)不適合
    • 起きやすい状況:回収材由来の地金で不純物が上下する
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、分析要求による遅延(一般論)
    • 予防策:ロットごとの分析表添付、インボイスに成分記載
  • 事例名:スクラップ(8002)で申告したが実体は再溶融インゴット(8001)
    • 誤りの内容:部注8(くず)定義と、解説の除外(再溶融塊は8001)を見落とし
    • 起きやすい状況:「原料=スクラップ」だけが社内伝言で残る
    • 影響:品目更正、価格・統計影響、審査長期化(一般論)
    • 予防策:工程証明(溶解の有無)と写真を事前準備
  • 事例名:フラックス被覆はんだ棒を8003に誤分類
    • 誤りの内容:8003解説の除外(83.11)を無視
    • 起きやすい状況:「はんだ=錫棒」という品名だけで判断
    • 影響:税番修正、規制や統計コードの修正(一般論)
    • 予防策:被覆構造・材料表の確認、SDS添付

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 廃棄物(スクラップ等)としての輸出入は、バーゼル法(特定有害廃棄物等)に関係する可能性があります。該当性がある場合、経産省の輸出(承認)手続や環境省の案内を確認します。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、金属の錫そのものでは該当しにくい(ただし用途や付着物で別途確認)
    • ワシントン条約(CITES)等:通常該当しにくい
    • 安全保障貿易管理:個別品の仕様・用途により確認(本資料では一般論のみ)
    • その他の許認可・届出:廃棄物該当性が鍵
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(バーゼル法関連:輸出入管理)
    • 環境省(廃棄物等の輸出入手続案内)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 貨物の性状説明(写真、成分/汚れ/付着物、由来工程)
    • 契約書・用途説明、運搬/処理計画(廃棄物該当の場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質(錫/合金/めっき)、成分表(Sn/Bi/Cu等)、形状寸法、用途、製造工程
    • 写真(全体/断面/被覆の有無)、SDS、規格書
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 8001の号注要件(Sn・Bi・Cu・他元素合計)
    • 8002の“くず”定義と除外(再溶融塊、残留物)
    • 83類/84-85類/72類などへの境界再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に材質・形状・被覆有無を反映(例:Tin wire / Tin ingot / Flux coated solder wire 等)
    • 分析表・写真を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 税関PSR検索で当該HS(4桁または6桁)を確認
    • BOM・原価・工程の保存(協定別に運用確認)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • スクラップ等はバーゼル法該当性を一次判定(経産省・環境省情報で確認)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 80(Tin and articles thereof) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2022 Section XV Notes(Base metals and articles of base metal) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables HS2017–HS2022(説明ページ・Table I) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2017 Chapter 80(Tin and articles thereof) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2007改正資料(80.04〜80.06削除の根拠) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説 第80類(80r) (参照日:2026-02-27)
    • 税関:関税率表の解釈に関する通則(GIR) (参照日:2026-02-27)
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索/原産地規則ポータル、原産地規則マニュアル (参照日:2026-02-27)
  • 規制(廃棄物等)
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出入管理/輸出承認手続 (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:廃棄物等の輸出入手続 (参照日:2026-02-27)
  • 境界説明補助(例:ブリキ=鉄鋼のすずめっき板)
    • UNSD(7210:tin-plated flat-rolled steelの区分情報) (参照日:2026-02-27)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第79類:亜鉛及びその製品(Zinc and articles thereof)

  • 用語:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 亜鉛の塊(インゴット、スラブ、ペレット等)=亜鉛地金(7901)
    • 亜鉛合金の塊(ダイカスト用合金地金など)(7901.20)
    • 亜鉛くず(リサイクル原料としての金属スクラップ)(7902)
    • 亜鉛のダスト/粉/フレーク(7903。※「ダスト」は定義あり)(7903)
    • 亜鉛の棒・形材・線(7904)、亜鉛の板・シート・帯・箔(7905)
    • その他の亜鉛製品(配管・継手・簡単な成形品などがここに来やすい)(7907)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 亜鉛鉱・精鉱:第26類(例:2608)
    • 亜鉛酸化物(ZnO)などの化学品:第28類(例:2817)※化学組成で分類
    • 亜鉛粉を「塗料・インキ」等に調製したもの:第32類(「金属粉・フレーク基材の調製塗料等」は第15部から除外)
    • 亜鉛めっき鋼板(いわゆるトタン板等):基材が鉄鋼なら第72類/第73類側(“亜鉛板”と誤認しやすい)
    • 亜鉛めっき工程等で出るスラグ・灰・残留物(ドロス等):第26類(例:2620)へ行きやすい
    • 機械・電気機器の部品(機能で分類されるもの):第16部(84/85類)等へ(第15部の除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「亜鉛(金属)」なのか「亜鉛化合物/調製品」なのか(第79類か第28/32類か)
    2. くず(7902)か、灰/スラグ等の残留物(例:2620)か(廃棄物・副産物は高頻度で揉めます)
    3. 合金か否か/粉末かダストか(Zn%や他元素合計、粒度・製法で分岐)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 亜鉛くずの輸出入で「バーゼル法(特定有害廃棄物等)」該当性が絡むと、許認可・遅延リスクが跳ね上がります(分類+規制の二重チェックが必要)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
    • GIR1:まず「見出し(項)の文言」と「部注/類注(Notes)」で決めます。第79類は品目数が少ないので、最初の段階でかなり絞れます。
    • GIR6:6桁(号)の分岐は、各号の文言と注(ここでは第79類の号注)で判断します。
    • 合金・複合品の扱いは、第15部注(合金の分類・複合品の分類)が実務で効きます(「亜鉛合金」判定はここを外すと崩れます)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 材質・組成:Zn含有率、他元素の合計、主成分が何か(合金判定)
    • 状態(加工度):地金(unwrought)か、半製品(棒・板等)か、完成品(その他の製品)か
    • 粉体の状態:ダスト(定義あり)か、粉/フレークか、塗料等に「調製」されているか
    • スクラップ/残渣:金属スクラップか、灰・スラグ・スラッジ等の残留物か

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「亜鉛(Zn)の金属・合金」か?
    • 化学品(酸化物、塩類)なら第28類などへ。
  • Step2:第15部の除外(例:調製塗料、機械・電気製品など)に当たらないか?
  • Step3:状態で大枠を決める
    • 地金(塊)→ 7901
    • くず → 7902
    • ダスト/粉/フレーク → 7903
    • 棒・形材・線 → 7904(形状定義は部注)
    • 板・シート・帯・箔 → 7905(形状定義は部注)
    • 上記以外の亜鉛製品 → 7907(配管・継手・単純な成形品が来やすい)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第79類(亜鉛) vs 第72類(鉄鋼):亜鉛めっき鋼板は「亜鉛」ではなく「鉄鋼」を主として分類するのが典型。
    • 7902(亜鉛くず) vs 2620(灰・残留物):めっき工程のドロス等は「くず」ではなく残留物側に寄りやすい。
    • 7903(粉) vs 第32類(塗料等):粉末がバインダー等と混ざり調製品になっていると第32類へ。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第79類は4桁見出しが少ないため、全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7901亜鉛の塊(地金)亜鉛インゴット、ビレット、スラブ、ペレット、亜鉛合金インゴット亜鉛(合金除く)はZn比率の定義あり。99.99%で6桁分岐。粉・ダストは7903。
7902亜鉛のくず亜鉛スクラップ(リサイクル原料)めっき工程のスラグ/灰/スラッジ等は2620へ行きやすい。くずを再溶解して鋳造した塊は7901へ。
7903亜鉛のダスト、粉及びフレーク亜鉛ダスト、亜鉛粉末、亜鉛フレーク「亜鉛ダスト」は粒度・製法・Zn%の定義あり。塗料等に調製されたものは第32類へ。
7904亜鉛の棒、形材及び線亜鉛棒、亜鉛線、亜鉛押出形材「棒/形材/線」の定義は第15部注(断面形状、厚み/幅比、コイルか等)で判断。部品化していれば7907へ。
7905亜鉛の板、シート、帯及び箔亜鉛板(屋根材用等)、亜鉛箔「板/シート/帯/箔」も第15部注で定義。加工により“物品の性格”が出ると7907等へ。
7907その他の亜鉛製品亜鉛製の管・継手、亜鉛製の単純成形品、亜鉛製アノード等他章でより具体的に規定される物品(例:第82/83類)や機械部品(第84/85類)等は除外され得る(第15部注)。

※HS上、[79.06]は角括弧で表示される「未使用(予約)」見出しです。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 7901.11 vs 7901.12:Zn 99.99%以上かどうか(純度で分岐)
    • 7901.1x(亜鉛:合金除く) vs 7901.20(亜鉛合金)
      • 合金除く亜鉛=Znが全重量の97.5%以上(定義)
      • 亜鉛合金=Znが各元素より多く、かつ他元素合計が2.5%超(定義)
    • 7903.10(亜鉛ダスト) vs 7903.90(その他:粉/フレーク等):亜鉛ダストは「亜鉛蒸気の凝結由来」「球状」「63µmふるい通過率80%以上」「金属亜鉛85%以上」などの要件で判定
    • 7902(くず) vs 2620(灰/残留物):第15部注の「くず・スクラップ」概念+解説の除外例で判断(工程残渣は要注意)
    • 7904/7905(半製品) vs 7907(その他の製品):断面形状・厚み/幅比・コイル形状などの“定義”と、最終用途で“物品の性格”が出ているかで判断
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
      1. 7901.11(Zn 99.99%以上) vs 7901.12(未満)
      • どこで分かれるか:検査成績書(COA)のZn純度(99.99%ライン)
      • 判断に必要な情報:COA、ロット番号、規格(例:SHG等)、用途(ダイカスト用かめっき用か)
      • 典型的な誤り:「高純度」の言葉だけで7901.11に寄せる(実測値が必要)
      1. 7901.12(亜鉛:合金除く) vs 7901.20(亜鉛合金)
      • どこで分かれるか:他元素合計が2.5%を超えるか、Znが最大元素か
      • 判断に必要な情報:全元素分析(Zn、Al、Cu、Mg、Pb等)、規格票(JIS/ASTM等)
      • 典型的な誤り:「合金」の商品名だけで7901.20にする(定義は成分で決まる)
      1. 7903.10(亜鉛ダスト) vs 7903.90(粉/フレーク)
      • どこで分かれるか:製法(蒸気凝結か)、粒子形状(球状か)、粒度(63µm)、金属Zn%(85%以上)
      • 判断に必要な情報:製造工程説明、粒度分布(ふるい/レーザー)、SEM写真(あると強い)、COA
      • 典型的な誤り:「zinc dust」と称する“煙道ダスト(残渣)”を7903にしてしまう(2620側の可能性)
      1. 7902(くず) vs 7901(再溶解して鋳造した塊)
      • どこで分かれるか:提示形状(くずのままか、溶かしてインゴット化しているか)
      • 判断に必要な情報:加工工程(再溶解の有無)、写真、取引書類(インゴット売買かスクラップか)
      • 典型的な誤り:リサイクル由来だからといって一律7902にする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部は、塗料等に調製された金属粉、機械・電気製品、貴金属製品などを除外します。
    • **合金は「どの金属が重量で優勢か」**で所属が決まるのが原則(亜鉛合金かどうかの大前提)。
    • くず・スクラップ、粉末の定義が部注で与えられています(粉末=1mmふるい通過90%以上等)。
    • 第74〜76類・第78〜81類(亜鉛を含む)向けに、棒・形材・線・板・管等の形状定義が部注で共通化されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:亜鉛粉末を樹脂や溶剤と混ぜた防錆塗料原料は、第15部の除外により第32類側が本線になります(“粉末だから7903”ではない)。
    • 例:亜鉛の押出形材でも、断面や寸法が「棒/形材」の定義に当てはまるかで 7904 を支えます(定義は部注)。
    • 例:**複合品(亜鉛+他の卑金属)**は、原則として重量優勢金属で分類(ただし、見出しが別途要求する場合は例外)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 調製塗料・インキ等(第32類)へ
    • 機械・電気製品(第16部:84/85類)へ
    • 亜鉛めっき工程の残渣(第26類:2620等)へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第79類は「類注(Chapter Notes)」は実質なく、主に「号注(Subheading Notes)」で定義が置かれています。
    • 号注で重要なのは「亜鉛(合金除く)」「亜鉛合金」「亜鉛ダスト」の定義です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 亜鉛(合金を除く。):Znが全重量の97.5%以上の金属
    • 亜鉛合金:Znが各元素より重量で多く、かつ他元素合計が全重量の2.5%超
    • 亜鉛のダスト:亜鉛蒸気の凝結由来で球状粒子、63µmふるい通過率80%以上、金属Zn 85%以上(要旨)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 亜鉛粉等を塗料等に「調製」したもの:第32類
    • 亜鉛のスラグ/灰/残留物(例:めっきの残渣):第26類(例:2620)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第79類は「類注」よりも**号注(Subheading Notes)**が実務分岐の中心です。

  • 影響ポイント1:「亜鉛(合金除く)」か「亜鉛合金」かで 7901.1x / 7901.20 が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):Zn%と他元素の合計(2.5%基準)、Znが最大元素か
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
      • COA(全元素分析)
      • 規格票(JIS/ASTM/社内規格)
      • 用途(めっき用、ダイカスト用、化学用途など)
    • 誤分類の典型:
      • 商品名に「合金」とあるだけで7901.20にしてしまう(実際は他元素2.5%以下で“合金”定義外の可能性)
  • 影響ポイント2:「亜鉛ダスト(7903.10)」の要件を満たすか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):製法(蒸気凝結)、粒子形状(球状)、粒度(63µm基準)、金属Zn%(85%以上)
    • 現場で集める証憑:
      • 製造工程説明(どの工程で発生/製造したか)
      • 粒度分布(ふるい/レーザー)
      • COA(金属Zn%)
    • 誤分類の典型:
      • めっき工程の煙道ダスト等(残渣)を「ダスト」と称して7903に入れる(2620側の可能性)
  • 影響ポイント3:7904/7905(半製品)と7907(その他製品)の線引き
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):断面形状・コイルか否か・厚み/幅比(棒/板の定義)+“物品としての性格”が出ているか
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(寸法・断面)
      • 仕様書(加工内容:穴あけ、ねじ切り、フランジ等)
      • 写真(外観で「部品化」していないか)
    • 誤分類の典型:
      • 端部加工済み・取付穴付きの部材を「板」扱いで7905にしてしまう(実態は7907寄り)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:「亜鉛めっき鋼板」を“亜鉛板(7905)”として申告
    • なぜ起きる:商流で「トタン」「亜鉛板」と呼ばれることがある
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):基材が鉄鋼なら第72類/第73類側が本線(亜鉛は被覆)。第79類は亜鉛そのものの製品。
    • 予防策:素材証明(材質:steelかzincか)、断面写真、仕様書で基材を確認
  2. 間違い:亜鉛酸化物(ZnO)等を第79類に入れる
    • なぜ起きる:「亜鉛製品」という日本語の印象
    • 正しい考え方:化学品は第28類等(元素ではなく化合物として分類)
    • 予防策:SDS/成分(ZnO等)、CAS No.、化学式を確認
  3. 間違い:亜鉛粉末入りの調製塗料・ペーストを7903に入れる
    • なぜ起きる:「粉末が主成分」だけで判断
    • 正しい考え方:第15部は「金属粉/フレーク基材の調製塗料等」を除外し、第32類に送る設計です。
    • 予防策:混合有無(樹脂・溶剤・添加剤)、製品形態(ペースト/分散液)を確認。配合表を入手
  4. 間違い:亜鉛くず(7902)と、灰/スラグ等(2620)を混同
    • なぜ起きる:工場から出る「廃棄物」を一括でスクラップ扱いする
    • 正しい考え方:解説上、めっき等の際に生じるスラグ・灰・残留物は7902から除外され得ます。
    • 予防策:発生工程(溶融めっき槽、電気めっきスラッジ等)、外観(灰状/スラッジ状)、金属回収可能性、分析値を確認
  5. 間違い:再溶解して鋳造したインゴットを“くず(7902)”のまま申告
    • なぜ起きる:原料がスクラップ由来
    • 正しい考え方:インゴット等の塊に鋳造されていれば7901側が問題になります。
    • 予防策:提示形状(塊か、くずか)、加工工程(溶解・鋳造の有無)を確認
  6. 間違い:「亜鉛合金」を成分確認なしで7901.20に決め打ち
    • なぜ起きる:商品名・用途(ダイカスト用)だけで判断
    • 正しい考え方:亜鉛合金かどうかは、Znが最大元素+他元素合計2.5%超の要件で判断します。
    • 予防策:COA(全元素)を必須化(社内手順)
  7. 間違い:“亜鉛ダスト”を名乗る粉体を一律7903.10にする
    • なぜ起きる:名称に引っ張られる
    • 正しい考え方:7903.10の「ダスト」は粒度・製法・Zn%の要件があります。
    • 予防策:粒度分布(63µm)、製法説明、金属Zn%の提出を求める
  8. 間違い:亜鉛製部品を、形材/板(7904/7905)として処理
    • なぜ起きる:外観が棒や板に見える
    • 正しい考え方:加工により「部品としての性格」が出ている場合、7907側へ寄るのが一般的です(他章のより具体的規定があればそちら)。
    • 予防策:加工内容(穴・ねじ・フランジ等)を図面で確認し、用途(機械部品か単体物品か)をヒアリング

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 例:最終製品を7907としてPSRを見たつもりが、実態は鉄鋼製品(第72/73類)だった、などは“根本からズレます”。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • 原材料(例:亜鉛地金7901、亜鉛粉7903、亜鉛酸化物2817)のHSが混ざると、CTC/RVCの計算前提が崩れます。
    • 税関のPSR検索(品目別原産地規則検索)を使うと、協定別の規則参照がスムーズです。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • 実務では、協定本文/附属書がHS2012/HS2017ベースで運用されていることがあります(協定ごとに確認が必要)。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • HS2022で注の位置が変わる(例:形状定義が部注へ移動)と、参照先条文がズレて見えることがあります。HS版の取り違えを避けます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • WCO相関表や税関のHS2022改正資料を使い、旧HS→新HSの対応関係を確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 亜鉛製品は材料(亜鉛地金・合金地金・粉体)起点で整理しやすい一方、他金属や樹脂との複合化で判定が難しくなります。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 税関の原産地規則マニュアル等に沿って、証憑を体系的に保存(BOM、製造工程、仕入書、COA等)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正(注の再配置)Chapter 79 Note / Section XV Note 9棒・形材・線・板・管等の形状定義が、類注(Chapter Note)から部注(Section XV Note 9)へ移動。HS2022の第79類本文は主に号注のみ。実務で参照すべき注の位置が変わる(教育・手順書の更新が必要)
HS2017→HS2022変更なし(見出し構成)7901〜7907([7906]除く)6桁見出しの並びは基本的に同じ。79.06は引き続き予約扱い。コード体系自体は安定。誤りは主に“注の参照ミス”で発生

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCO HS2017 第79類条文(第79類の注に形状定義+号注が存在)
    • WCO HS2022 第79類条文(第79類は号注中心で、形状定義は載らない)
    • WCO HS2022 第15部(Section XV)部注(Note 9に形状定義が整理)
    • WCO 相関表ページ/税関のHS2022改正案内(相関表の位置づけ確認)
  • “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”
    • HS2017の第79類では、**「Bars and rods」「Profiles」「Wire」「Plates…」「Tubes and pipes」**等の定義が「Chapter 79 Note」にまとまっていました。
    • HS2022では、これらの定義が「Section XV Note 9」に移り、第79類自体は号注(亜鉛/合金/ダストの定義)と見出し一覧が中心になっています。
    • したがって、コードの大枠は変わらない一方で、判断の根拠条文(参照先)が変わった点が実務上の変更点です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
  • 可能な範囲で「旧コード→新コード(または行き先不明)」の対応を示す
版間追加/削除/再編旧コード新コードコメント
HS2007→HS2012実質変更なし7901〜7907([7906]含む)同左見出し構成は維持。
HS2012→HS2017実質変更なし同左同左見出し構成は維持。
HS2017→HS2022見出しは維持/注の移動同左同左形状定義が部注へ移動(7章参照)。

※第79類は、コード自体の改廃が少ない一方、注の参照位置が変わる点に注意が必要です。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「亜鉛スクラップ」で申告したが、実はめっき残渣
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):7902の除外(灰・残留物等)に該当し得る
    • 起きやすい状況:工場で「亜鉛系の廃棄物」を一括でスクラップと呼ぶ
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、輸出入許可の追加確認
    • 予防策:発生工程と外観、分析、写真を揃え、必要なら税関相談
  • 事例名:「亜鉛粉末」で申告したが、実は調製塗料(ペースト)
    • 誤りの内容:第15部除外(調製塗料)を見落とし
    • 起きやすい状況:「Zinc-rich」等の品名に引っ張られる
    • 典型的な影響:分類差替え、税率・規制・原産地判断のやり直し
    • 予防策:SDS・配合表(バインダー/溶剤/添加剤)を取得し、調製品か確認
  • 事例名:「亜鉛板(7905)」で申告したが、実は亜鉛めっき鋼板
    • 誤りの内容:材質(基材)確認不足
    • 起きやすい状況:「トタン」「亜鉛板」の慣用呼称
    • 典型的な影響:HS変更、税率変更、統計誤り
    • 予防策:ミルシート、断面写真、材質表示を入手
  • 事例名:合金地金(7901.20)で申告したが、実は部品(7907)
    • 誤りの内容:加工度(地金 vs 物品)を誤認
    • 起きやすい状況:ダイカスト成形の「形だけ部品」に見える/見えない問題
    • 典型的な影響:分類差替え、他法令確認(用途規制等)の追加対応
    • 予防策:形状・機能・取付け方法が分かる図面/写真を提出できるようにする

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • **廃棄物・スクラップ(7902等)**は、貨物の性状次第でバーゼル法(特定有害廃棄物等)や廃棄物処理法の論点が出ます。
    • **輸出管理(安全保障貿易管理)**は、最終用途・需要者によってはキャッチオール管理の観点で確認が必要です(一般論)。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、金属亜鉛そのものは該当が限定的(ただし用途・混合物は別途)
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:通常なし
    • 安全保障貿易管理:用途・需要者で確認(一般論)
    • その他の許認可・届出:廃棄物・スクラップはバーゼル関連手続の可能性
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省:バーゼル法関連(輸出入手続)
    • 環境省:廃棄物等の越境移動規制関連
    • 税関:輸入関係他法令一覧、相談窓口
  • 実務での準備物(一般論):
    • くず・廃棄物該当性の判断資料(発生工程、分析結果、写真、契約書、処理予定)
    • 必要に応じて承認申請書類(所管省庁の様式・手引きに従う)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品仕様書(材質、用途、加工度)
    • COA(Zn%、他元素、金属Zn%)
    • 粒度分布(粉・ダストの場合)
    • 写真(外観、梱包、断面)
    • 工程図(特にスクラップ/残渣、ダストの発生工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第15部注:除外(調製塗料、機械等)、合金、くず・粉の定義
    • 第79類号注:亜鉛(合金除く)/合金/ダストの定義
    • 7902 vs 2620、7903 vs 第32類など境界の再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス:英語品名(unwrought zinc / zinc waste and scrap / zinc dust 等)と状態が一致
    • 補足資料:COA、写真、工程説明を添付(税関照会の予防)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • PSR検索(協定・HS6桁)
    • BOM、非原産材料HS、工程、RVC計算の前提(必要な場合)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • スクラップ/廃棄物:バーゼル法等の該当性を所管省庁手引きで確認
    • 輸出管理:用途・需要者(一般論)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 79 “Zinc and articles thereof” (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2022 Section XV Notes(特にNote 8, 9) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2017 Chapter 79(旧版比較用) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2012 Chapter 79(旧版比較用) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2007 Chapter 79(旧版比較用) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022(相関表の位置づけ) (参照日:2026-02-27)
    • WCO GIR(General Rules) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第79類)79r.pdf (参照日:2026-02-27)
    • 関税率表の解釈に関する通則(日本税関) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022改正について(税関) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022改正概要資料(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 日本の関税率表(参照用・2026/1/1版の入口) (参照日:2026-02-27)
    • 輸入関係他法令一覧(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 事前教示回答(品目分類)検索(税関) (参照日:2026-02-27)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • EPA・原産地規則ポータル(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 我が国の原産地規則(税関資料) (参照日:2026-02-27)
    • EPA原産地規則マニュアル(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索画面 (参照日:2026-02-27)
  • その他(規制)
    • 経済産業省:バーゼル法・特定有害廃棄物等の輸出入管理 (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:廃棄物等の輸出入の手続 (参照日:2026-02-27)
    • METI Trade Control(安全保障貿易管理の入口) (参照日:2026-02-27)
    • 輸出貿易管理令(英訳) (参照日:2026-02-27)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 日本の国内コード(統計品目番号等)は、HS6桁の下に税率・統計・制度運用の都合で細分されます(例:課税価格条件、用途、規格等)。
  • 最新の国内細分は、税関の「実行関税率表(輸入統計品目表)」から該当税番ページで確認してください(改正で変わり得ます)。
  • NACCS用コード一覧(NACCS用品目コード)も別途公開されています(通関実務で参照)。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 税関の**事前教示回答(品目分類)**は公開分を検索できます。
  • 相談が早い情報(一般論):
    • 製品概要(用途・機能)
    • 材質(成分表/COA、SDS)
    • 製造工程(特にダスト/スクラップ/残渣)
    • 写真(全体・断面・梱包)
    • 図面(寸法・断面形状・加工内容)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第78類:鉛及びその製品(Lead and articles thereof)

用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注) です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉛の塊(インゴット等):精製鉛・その他(硬鉛等)→ 7801
    • 鉛のくず(スクラップ):切粉、端材、使用不能な鉛材のくず → 7802
    • 鉛の板・シート・ストリップ・はく(厚さ条件あり)→ 7804
    • 鉛の粉・フレーク(“粉”の定義あり)→ 7804.20
    • その他の鉛製品:おもり、容器、鉛管・継手、鉛棒・線など → 7806
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉛製造で生じるスラグ・灰・残留物(例:鉛マット)2620
    • 鉛のくずを再溶解して鋳造したインゴット等 → “くず”ではなく 7801
    • 塗料・着色剤用に調製した鉛粉/フレーク(結合剤・溶剤でペースト等)→ 第32類
    • 弁(コック等)付きの鉛管用継手8481
    • 絶縁電線で鉛外装を被覆したもの8544
    • 使用済/くず鉛蓄電池(そのまま電池として認識できる廃棄物)8549.11(第85類)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「鉛のくず」か「鉛の塊(インゴット)」か(再溶解・鋳造の有無)
    2. 粉・フレークが“原料状態”か、“塗料等に調製済”か(混合・ペースト化)
    3. “鉛のくず”と思ったものが、実は「使用済鉛蓄電池」等の別章(85.49)か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 使用済鉛蓄電池や鉛スクラップは、分類誤りがバーゼル法手続・通関遅延・差止めに波及しやすい(規制と直結)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し(項)+注(部注/類注)でまず決めます。第78類は特に、
      • 精製鉛の定義(号注)
      • “くず”の定義(部注)
      • 形状(板・管など)の定義(部注)
        が実務の分岐点になります。
    • GIR6:号(6桁)では、厚さ(0.2mm)や“精製鉛”定義など、号の文言・注で詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 状態:塊(unwrought)/くず(waste & scrap)/粉末/成形品
    • 成分:純度(Pb 99.9%以上か)、合金成分(Sbが主成分か)
    • 形状・寸法:板/シート/はく(厚さ 0.2mm境界)、管・継手の“弁付き”など
    • 調製の有無:粉末が塗料等へ“調製済”なら第32類へ飛ぶ

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「鉛(または鉛合金)」としての物品ですか?
    • 鉛が主体なら第78類候補。ただし、機械/電気機器としての完成品・部品は部注で除外され得ます(例:弁付き継手、絶縁電線)。
  • Step2:“くず(waste and scrap)”か?
    • 使えない金属くずなら 7802 が候補。
    • ただし、**使用済鉛蓄電池(廃棄物)**は HS2022 では **85.49(8549.11)**が明確に存在するため、まずここを疑います(電池として認識できる形状が残っているか)。
  • Step3:塊(7801)/板・粉(7804)/その他(7806)
    • 鋳造塊・インゴット等 → 7801
    • 板・シート・ストリップ・はく/粉・フレーク → 7804(厚さ・粉の定義で細分)
    • それ以外の鉛製品(おもり、容器、鉛棒・線、鉛管・継手など)→ 7806
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 7802(鉛くず) vs 7801(鉛塊):くずを再溶解して塊に鋳造すると 7801 側へ
    • 7802(鉛くず) vs 8549.11(使用済/くず鉛蓄電池):電池として認識できる廃棄物は 85.49 を優先的に検討
    • 7804.20(鉛粉) vs 第32類(調製した粉):結合剤・溶剤・他の着色剤を混ぜて“塗料状/ペースト状”なら 32類

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

(第78類は4桁見出しが少ないため全列挙します。)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7801鉛の塊(unwrought lead)精製鉛インゴット、硬鉛(Sb含有)インゴット、電解精製用の鋳造陽極など精製鉛の定義(Pb≥99.9%+不純物上限)で 7801.10 判定
7802鉛のくず(waste and scrap)端材、切粉、解体で出た鉛片製錬スラグ等は除外(2620)。再溶解して塊に鋳造したものは 7801
7804鉛の板等/はく/粉・フレーク鉛シート(遮蔽・屋根材)、鉛はく(包装)、鉛粉末0.2mm境界(補強材除外)。粉は“粉の定義”あり。調製粉は 32類へ
7806その他の鉛製品おもり、鉛容器、鉛棒・線、鉛管・継手、鉛陽極など弁付き継手→8481、鉛被覆絶縁電線→8544、被覆棒→8311等は除外

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 純度・不純物上限(精製鉛):7801.10 の鍵
    • 合金成分(Sbが“鉛以外で主”か):7801.91 vs 7801.99
    • 厚さ 0.2mm(補強材除外):7804.11 vs 7804.19
    • 粒度(粉の定義):7804.20 の適否
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7801.10(精製鉛) vs 7801.99(その他の鉛塊)
      • どこで分かれるか:Pb 99.9%以上に加え、各元素の上限を満たすか(単に「99.9%」だけでは足りません)。
      • 判断に必要な情報:ミルシート/分析表(元素別%)、規格(JIS等のグレード)、ロット管理
      • 典型的な誤り:「純度99.9%とだけ書かれた資料」や「商品名(refined)だけ」で 7801.10 と断定してしまう
      精製鉛(refined lead)判定の実務用チェック表(号注ベース)
      Pbが全重量の99.9%以上で、かつ他元素が以下を超えないこと: 他元素上限(全重量に対する%)銀(Ag)0.02砒素(As)0.005ビスマス(Bi)0.05カルシウム(Ca)0.002カドミウム(Cd)0.002銅(Cu)0.08鉄(Fe)0.002硫黄(S)0.002アンチモン(Sb)0.005すず(Sn)0.005亜鉛(Zn)0.002その他(例:Te)各0.001
    2. 7801.91(Sbが主な鉛以外元素) vs 7801.99(その他)
      • どこで分かれるか:鉛以外の元素のうち、重量でアンチモンが最大かどうか
      • 判断に必要な情報:合金成分表(Sb、Sn、As等の比較)、用途(硬鉛用途か)
      • 典型的な誤り:「硬鉛だからSb主」と思い込み、成分比較をせずに 7801.91
    3. 7804.11(厚さ0.2mm以下:補強材除外) vs 7804.19(その他)
      • どこで分かれるか:厚さ(“補強材の厚さを除く”)が 0.2mm以下か
      • 判断に必要な情報:断面図、厚み測定結果、ラミネート/補強材の仕様
      • 典型的な誤り:ラミネート材込みの総厚で判定してしまう
    4. 7804.20(粉・フレーク) vs 32類(調製粉)
      • どこで分かれるか:粉自体が部注の“粉”定義に該当し、かつ塗料等に調製されていない
      • 判断に必要な情報:粒度分布(ふるい試験等)、SDS、配合表(結合剤・溶剤・他着色剤の有無)
      • 典型的な誤り:「鉛粉末」とだけ聞いて 7804.20。実はペースト状で32類相当

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注8
      • “くず(waste and scrap)”=金属くず全般/破損等で使用不能な金属製品
      • “粉(powders)”=重量の90%以上が1mmふるいを通過
    • 部注9:板・線・管などの形状定義(第74〜76類・第78〜81類共通の言葉の意味)
    • 部注1(除外):塗料等に該当するもの、機械・電気機器等、弾薬用散弾等はSection XVから除外され得る
  • 実務での意味(具体例つき):
    • “くず”判定では「鉛が含まれている」だけでなく、商品としてそのまま使えるか(破損・切断・摩耗等で使用不能か)を見ます。
    • “粉”は粒度の定義があるため、粉末でも粒が粗いと 7804.20 で説明しづらい場合があります(粒度データを取るのが安全)。
    • “板/シート/はく”は厚さや形状定義が背景にあります。特に 0.2mm境界は書類で裏付けが必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 鉛粉が調製済(ペースト/分散液) → 第32類
    • 弁付き管用継手 → 8481
    • 鉛外装の絶縁電線 → 8544
    • 弾薬用に調製した散弾等 → 第93類(例:9306)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第78類は、号注(Subheading Note)として「精製鉛」の定義を置いています(Pb 99.9%以上+不純物上限表)。
    • **[78.03]・[78.05]**は角括弧付きで表示され、HS上「削除された見出し」であることを示します(実務上は 7806 側で扱う場面が増えます)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「精製鉛(refined lead)」=Pb 99.9%以上かつ、Ag/As/Bi/Ca/Cd/Cu/Fe/S/Sb/Sn/Zn/その他の各上限を満たす金属
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注自体の除外というより、部注・各類解説で第26類(残留物)第32類(調製粉)、**第84/85類(機械・電気)**などへ分岐が出ます。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:7801.10(精製鉛)に該当するか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):元素別の分析(Pb含有率と不純物)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、分析表、SDS、規格書、ロット証跡
    • 誤分類の典型:「純度99.9%」だけで 7801.10 としてしまい、実は不純物上限を超えて 7801.99 相当
  • 影響ポイント2:7802(くず)か 7801(塊)か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):再溶解・鋳造の有無、形状(インゴット等)、取引実態(原料としての塊か、くずとしての雑材か)
    • 現場で集める証憑:工程図(回収→溶解→鋳造)、写真、インボイス品名、梱包状態
    • 誤分類の典型:「原料だからスクラップ」という思い込み(溶解して塊なら 7801)
  • 影響ポイント3:“鉛くず”が実は 85.49(使用済/くず鉛蓄電池)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):貨物が電池の形状・構成を保っているか、廃棄物としての性状(“spent”)
    • 現場で集める証憑:写真(外観・端子・ケース)、品名(used lead-acid batteries等)、梱包明細、処理契約情報
    • 誤分類の典型:電池を「鉛含有物=鉛スクラップ」として 7802 申告(通関・規制で止まりやすい)
  • 影響ポイント4:鉛粉が 7804.20 か 32類か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):粒度(1mmふるい90%)、混合/分散/ペースト化の有無
    • 現場で集める証憑:配合表、SDS、製品形態(粉体/ペースト/スラリー)
    • 誤分類の典型:“粉末”という単語だけで 7804.20(実は調製品)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:使用済鉛蓄電池を 7802(鉛くず)にしてしまう
    • なぜ起きる:鉛が主材料なので“鉛スクラップ”と思い込みやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):HS2022では使用済/くず蓄電池として **85.49(例:8549.11)**が明確(第85類)
    • 予防策:写真で「電池として認識できるか」を必ず確認/インボイス品名に “spent/used lead-acid accumulators” 等の記載有無を確認
  2. 間違い:くずを溶かして鋳造したインゴットを 7802(くず)
    • なぜ起きる:原料用途=スクラップ、という商慣習語の混同
    • 正しい考え方:再溶解・鋳造でインゴット等の塊になれば 7801
    • 予防策:工程図(溶解・鋳造の有無)/形状写真(インゴット、スラブ)を必須資料に
  3. 間違い:鉛製錬のスラグ・灰・残留物を 7802(くず)
    • なぜ起きる:見た目が“くず”に近い
    • 正しい考え方:製造時残留物は 2620 に飛ぶ(鉛マット等の例示あり)
    • 予防策:発生工程(製錬/精錬工程)を確認、MSDS/分析で“残留物”性状を整理
  4. 間違い:鉛粉ペースト(結合剤入り)を 7804.20(鉛粉)
    • なぜ起きる:名称が“鉛粉”のまま取引される
    • 正しい考え方:塗料・着色剤等に調製された粉は第32類(結合剤・溶剤・分散等)
    • 予防策:配合表(樹脂/溶剤/添加剤)確認。SDSで形態(paste/suspension)確認
  5. 間違い:鉛はく/薄板の 0.2mm境界を見落とし 7804.19 に一括
    • なぜ起きる:寸法データがインボイスにない
    • 正しい考え方:厚さ(補強材除外)0.2mm以下は 7804.11 として区別
    • 予防策:仕様書に「鉛層厚み(単体)」を記載。測定記録を保管
  6. 間違い:弁付きの鉛管用継手を 7806(鉛製品)
    • なぜ起きる:材質(鉛)だけで判断
    • 正しい考え方:弁(コック等)付き継手は 8481 側に除外され得る
    • 予防策:図面で弁の有無確認。セット構成(継手+弁)を明確に分けて記載
  7. 間違い:鉛外装の絶縁電線を 7806
    • なぜ起きる:外装が鉛で目立つ
    • 正しい考え方:絶縁電線として 8544 に除外され得る
    • 予防策:製品の本質(電線/導体/絶縁)を優先。カタログ・断面図で確認
  8. 間違い:被覆した棒・線(溶接/ろう付け用)を 7806
    • なぜ起きる:棒状=鉛棒という認識
    • 正しい考え方:被覆棒は 8311 等に除外され得る(解説で言及)
    • 予防策:用途(溶接・ろう付け)、被覆材(フラックス等)を仕様書で確認
  9. 間違い:複合金属(鉛+他の卑金属)を用途で決め打ち
    • なぜ起きる:用途・名称が先行
    • 正しい考え方:複合卑金属品は原則「重量で優勢な金属」による扱いが基本(部注の考え方)
    • 予防策:構成金属の重量比をBOM/図面で取り、GIRの順序で整理

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHSを誤ると、適用すべきPSR自体が変わるため、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(非原産材)のHSと最終品HSの取り違え
    • “鉛くず(7802)”と思ったら実は“使用済鉛蓄電池(8549)”で、PSRが根本から変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用しているHSバージョン(HS2002/2007/2012/2017等)が異なり得ます。日本税関のPSR検索でも、協定のHS版と異なる版で検索すると結果が誤る可能性がある旨が明示されています。
  • 実務対応(一般論):
    • 輸入申告は最新HS(例:HS2022)、一方で協定PSRは協定が採用するHS版で確認
    • HS版がズレる場合は、(1)協定側HS版でPSRを確認→(2)最新HSとの対応(トランスポジション)を取って社内メモ化、が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・運用で異なるため、税関/発給機関のガイドに合わせて整備

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲(定義)の実質は同等/所在変更(注の所在)棒・線・板・管などの定義が、HS2017では第78類注に置かれていたが、HS2022では第15部注9へ整理“類注を見ていた人”が見落としやすい。定義確認は部注へ
HS2017→HS2022変更なし(コード構造)7801/7802/7804/7806第78類のHS6桁は同一([78.03]・[78.05]も同様に欠番表示)コード自体の付替えは原則不要(ただし周辺章改正には注意)

※参考(周辺章):HS2022で**85.49(電気・電子廃棄物等)**が新設され、使用済/くず蓄電池が 8549.11 等で整理されています。鉛取引では誤分類が起きやすいので注意してください。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料(一次情報):
    • HS2017の第78類:棒・線・板・管等の定義がChapter Noteとして記載
    • HS2022の第78類:同定義がChapter側から外れ、第15部注9に集約(第78類側は精製鉛の号注のみ)
  • 以上より、「第78類のHS6桁(見出し・号)は変更なし」「ただし定義条文の所在が移動」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れ(第78類):
    • [78.03]・[78.05]が欠番表示である点は、少なくともHS2007時点から同様です。
    • HS2007/2012/2017では、棒・線・板・管等の定義が第78類注として記載されていましたが、HS2022では第15部注9へ移動しています。

(整理表:主要論点のみ)

HS版主要コード(第78類)78.03/78.05注(定義)の所在コメント
HS20077801/7802/7804/7806欠番表示あり第78類注に定義ありコード構造は概ね現行と同様
HS2012同上欠番表示あり第78類注に定義あり同様
HS2017同上欠番表示あり第78類注に定義あり同様
HS2022同上欠番表示あり第15部注9へ移動(78類は号注中心)“注を探す場所”が変わった

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):使用済鉛蓄電池を鉛スクラップとして申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):HS2022で 85.49 が整理されているのに 7802 申告してしまう(分類根拠が弱い)
    • 起きやすい状況:中古部品や雑スクラップに電池が混入、外観確認不足
    • 典型的な影響:検査強化、差止め、書類追加、遅延(一般論)
    • 予防策:混入防止手順、写真添付、品名明確化、必要なら事前教示
  • 事例名:“くず”の再溶解インゴットを 7802 と誤申告
    • 誤りの内容:くずではなく塊(7801)側
    • 起きやすい状況:リサイクル材の売買(インゴット形状)
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税(一般論)
    • 予防策:工程・形状写真・契約書で“鋳造塊”を明確化
  • 事例名:鉛粉ペーストを 7804.20 としてしまう
    • 誤りの内容:調製済なら第32類へ
    • 起きやすい状況:SDS未入手、配合不明のまま輸出入
    • 典型的な影響:分類差戻し、追加資料要求
    • 予防策:配合表・形態(粉/ペースト)を事前取得
  • 事例名:弁付き鉛継手を 7806 としてしまう
    • 誤りの内容:弁付きは 8481 側へ
    • 起きやすい状況:部品セットで輸入、品名が曖昧(“pipe fitting”のみ)
    • 典型的な影響:分類変更、追加説明
    • 予防策:図面で弁の有無確認、品名を “valve-fitted” 等で明確化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第78類そのものは食品検疫の中心ではありませんが、鉛は有害性の高い化学物質として、取扱い上SDS整備やラベル・安全管理が求められる局面があります(輸送・保管・作業安全)。厚労省のGHSモデルSDS情報が参照できます。
  • その他の許認可・届出(バーゼル法等)
    • 使用済鉛バッテリーやそれを含む貨物の輸出入は、バーゼル法手続が問題となりやすい領域です。経産省は「特定有害廃棄物等の輸出承認」手続を案内し、使用済鉛バッテリーのように明確な対象の場合の書類取扱いにも言及しています。
    • 環境省も品目別情報として「使用済鉛バッテリー」関連の注意喚起・情報提供を整理しています。
    • 実際に、手続未了で使用済鉛バッテリーが混入した輸出申告が問題となった公表事例があります(混入防止が重要)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出承認(バーゼル)
    • 環境省:廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入(品目別情報)
    • 厚労省:GHSモデルSDS(鉛)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(成分・形状・用途)、写真、SDS、分析表
    • 廃棄物該当性の整理(発生工程図、処理工程、契約書類等:バーゼル対応)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Pb%、合金元素、微量元素)、形状(板/管/粉)、寸法(厚さ/粒度)、用途
    • 写真(外観・断面)、カタログ、工程図(スクラップなら発生工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 精製鉛:不純物上限まで確認したか
    • くず:再溶解・鋳造の有無を確認したか
    • 電池:使用済鉛蓄電池(8549)に該当しないか
    • 調製粉:32類へ飛ばないか(結合剤・溶剤)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「形状・状態」を入れる(例:lead ingots / lead scrap / lead sheets 0.18mm)
    • 厚さ・粒度・成分表を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定HS版でPSR確認→最新HSとの対応を社内メモ化
    • BOM、非原産材HS、工程、原価の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 使用済電池・スクラップ混入の有無(バーゼル)
    • SDS整備(鉛)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 78(1578_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Section XV Notes(1500_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2017/2012/2007 Chapter 78(比較用) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Chapter 85(85.49/8549:使用済/くず蓄電池) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables(HS2017–2022)案内 (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関 関税率表解説(第78類:78r.pdf) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 事前教示回答(品目分類)検索 (参照日:2026-02-27)
    • 税関 品目分類の事前教示制度(カスタムスアンサー) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 品目別原産地規則検索(HS版注意喚起あり) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 原産地規則(概要) (参照日:2026-02-27)
  • 規制(バーゼル等)
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出承認(使用済鉛バッテリー言及あり) (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:品目別情報(使用済鉛バッテリー) (参照日:2026-02-27)
    • 経産省・環境省:使用済鉛バッテリー混入貨物に関する注意喚起例 (参照日:2026-02-27)
  • その他
    • 厚労省:職場のあんぜんサイト(鉛のGHSモデルSDS) (参照日:2026-02-27)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品の写真(全体・断面)、材質(成分表)、用途、製造工程、カタログ、梱包形態
    • “くず”なら「使用不能性」「発生工程」「再溶解の有無」を説明できる資料
  • 探し方
    • 日本税関の「事前教示回答(品目分類)」で、公開可能な事前教示の検索ができます。類似品名(例:lead scrap、鉛管、鉛はく等)で当たりを付け、論点(厚さ・弁付き等)を抽出すると効率的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

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HS2022 第76類:アルミニウム及びその製品(Aluminium and articles thereof)

(用語の統一)本資料では、**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注/号注)**として説明します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 7601:アルミニウムの塊(インゴット、ビレット、スラブ等の未加工の塊)
    • 7607:アルミ箔(アルミ厚さが0.2mm以下。紙・樹脂等で裏打ちされたものも含む)
    • 7604:アルミ棒・形材(押出形材、丸棒、アングル等)
    • 7612:アルミ缶・ドラム等(容量300L以下、機械・加熱冷却装置なし)
    • 7614:アルミより線・ケーブル(電気絶縁していないもの)
    • 7616:その他のアルミ製品(ねじ・ボルト等、他に当てはまらないアルミ製品)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ボーキサイト等のアルミ鉱石:第26類 2606(アルミ鉱石・精鉱)
    • 酸化アルミニウム/水酸化アルミニウム(アルミナ):第28類 2818
    • 金属粉・フレークを基材にした塗料・インキ等の調製品:第32類(部注で第15部から除外)
    • 機械・電気機器としての完成品:第84類/第85類など(部注で第15部から除外)
    • プレハブ建物94.06(7610「構造物」から明示除外)
    • サーメット(例:アルミとアルミナの焼結品)81.13(第76類から除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • (A) アルミ(合金を除く)か、アルミ合金か(多くの号がここで割れる)
    • (B) 板・シート・帯(7606)か、箔(7607)か:厚さ0.2mmが境目(裏打ち材の厚みは除外)
    • (C) 形材(7604)か、構造物用に準備されたもの(7610)か(加工度・用途で分かれやすい)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • スクラップ(7602):貨物性状次第で環境規制(バーゼル法等)や検査対応が重くなることがあるため、**「スクラップの定義に当てはまるか」**を資料で固める必要があります。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1:まずは見出し(項)文言と、第15部注(除外/定義)+第76類の**号注(定義)**で決めます。
    • GIR6:6桁(号)は、同じ階層で比較(例:7607.11 vs 7607.19)し、厚さ・裏打ち有無・加工度などの分岐条件で決めます。
    • GIR2(a):未完成・未組立でも完成品の性質を有する場合があります(例:構造物の未組立セット等)。
    • GIR3:複合材(アルミ+他金属、アルミ+樹脂等)は、見出しに別段がない限り「本質的特性」等で判断し、**第15部注7(複合品の取扱い)**も意識します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要)
    • 材質(純アルミか合金か):号注に定義があり、成分で分岐します。
    • 形状(棒/線/板/箔/管/継手/構造物/容器):第15部注9の定義が効きます。
    • 寸法(0.2mm、6mm、7mm、容量300L):見出し文言に直結します。
    • 加工度(“構造物用に準備”か、単なる形材か):7610の適用で重要です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「アルミ金属」か?それとも鉱石・化学品か?
    • 鉱石 → 第26類(例:2606)
    • 酸化物/水酸化物(アルミナ) → 第28類(2818)
    • 金属・金属製品 → Step2へ
  • Step2:第15部の除外に当たらないか?
    • 金属粉等を基材にした塗料・インキ等の調製品、機械・電気品、家具等は第15部から除外され得ます。
  • Step3:アルミ(またはアルミ合金)が主体で、第76類の範囲か?
    • 複数金属の複合品は、見出しに別段がない限り、重量優勢等で取扱う考え方が出ます(第15部注7)。
  • Step4:第76類のどの「形態」かを決める(7601〜7616)
    • 塊/スクラップ/粉 → 7601/7602/7603
    • 半製品(棒・線・板・箔・管・継手)→ 7604〜7609
    • 構造物/容器/ガス容器/より線/家庭用品/その他製品 → 7610〜7616
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 7606(板等) vs 7607(箔):0.2mmが境目(裏打ち材は厚さ計算から除外)。
    • 7604(形材) vs 7610(構造物用に準備されたもの):取付穴加工、切断、組立前提の加工などで争点になりやすい。
    • 7616(その他のアルミ製品) vs 82/83類:第15部注2(一般用の部分品)や「より特殊に限定した見出し」に引っ張られます。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7601アルミニウムの塊(未加工)インゴット、ビレット、スラブ合金か否かで号分岐。スクラップを再溶解して鋳造した塊は7601側になり得る(7602と区別)。
7602アルミニウムくず(スクラップ)端材、使用済みアルミ部材の破砕片「くず」の定義(使用不能)に合うか。スラグ/ドロス等は除外され得る。
7603アルミ粉・フレークアルミ粉(非薄片/薄片)、フレーク粉の定義(ふるい)と、塗料等の調製品(第15部除外)に注意。
7604アルミ棒・形材押出形材、丸棒、アングル、チャンネル中空形材か否か(7604.21/29等)、合金/非合金。構造物用に準備されると7610側の争点。
7605アルミ線コイル状線材(ワイヤロッド、電線素線)コイルであることが「線(wire)」の基本定義。最大寸法7mm超/以下で号分岐。
7606アルミ板・シート・帯(厚さ0.2mm超)建材用アルミ板、加工用シート厚さ0.2mm超。矩形断面か否か、合金/非合金。
7607アルミ箔(厚さ0.2mm以下)家庭用アルミホイル、包装材厚さ0.2mm以下(裏打ち除外)。裏打ち有無、追加加工の有無。
7608アルミ管アルミパイプ合金/非合金。中空で壁厚等が均一な「管」の考え方に注意。
7609アルミ管継手エルボ、ソケット、カップリング管そのものではなく継手
7610アルミ構造物・構造物部品サッシ枠(構造用途加工済)、手すり、架構材プレハブ建物(94.06)除外。形材でも「構造物用に準備」されるとここ。
7611大型容器(容量300L超)大型タンク、リザーバー圧縮/液化ガス以外。300L超。機械/熱装置なし。
7612容器(容量300L以下)缶、ドラム、箱、チューブ容器圧縮/液化ガス以外。300L以下
7613圧縮/液化ガス用容器高圧ガスボンベ用途が決め手(ガス容器)。
7614より線・ケーブル等(非絶縁)アルミより線、撚りケーブル電気絶縁していないこと。鋼心有無で分岐。
7615家庭用品・台所用品・衛生用品鍋、弁当箱、洗面器等家庭用品系(7615.10)と衛生用品(7615.20)。
7616その他のアルミ製品ねじ・ボルト、金網、その他加工品7616.10(ねじ等)か、7616.91(金網等)か、7616.99(その他)。

出典:WCO HS2022 第76類本文および日本の関税率表解説(第76類)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の代表(第76類で頻出)
    • 合金/非合金:7601/7604/7605/7606/7608 などで分岐(号注で定義)。
    • 板か箔か:0.2mm(7606/7607)。
    • 箔の裏打ち有無(7607.11/19/20)。
    • 線の太さ:最大横断寸法7mm(7605.11/19、7605.21/29)。
    • 金網等(7616.91)の“線”定義:最大寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)
    • 容器の容量:300L(7611/7612)。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7606(板・シート等) vs 7607(箔)
      • どこで分かれるか:厚さ0.2mm(7606は超える、7607は以下)。裏打ち材の厚さは除外。
      • 判断に必要な情報:アルミ層の実測厚(ミクロン表記含む)、裏打ち材の仕様、製造工程(箔/板)。
      • 典型的な誤り:紙/樹脂の厚み込みで0.2mm超と誤判定し7606にしてしまう。
    2. 7605(線) vs 7604(棒・形材)
      • どこで分かれるか:「線(wire)」は基本的にコイル状(第15部注9(c))かどうか。
      • 判断に必要な情報:包装形態(コイル/直棒)、断面形状、寸法、引抜/押出の工程。
      • 典型的な誤り:直線状に切断されたものを“線材”と呼んで7605に寄せる。
    3. 7611(300L超) vs 7612(300L以下) vs 7613(ガス容器)
      • どこで分かれるか:内容物の性状(圧縮/液化ガスか否か)+容量300Lで分岐。
      • 判断に必要な情報:容量(L)、用途、機械/熱装置の有無。
      • 典型的な誤り:“容器”というだけで7612に寄せ、ガス容器7613や7611の容量条件を落とす。
    4. 7616.91(金網等) vs 7616.99(その他)
      • どこで分かれるか:金網等に使う「線」は最大寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)。
      • 判断に必要な情報:線径(最大横断寸法)、メッシュ形状、製品用途。
      • 典型的な誤り:太い棒材(>6mm)で作った格子を7616.91とする(定義不一致)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注1:第15部(卑金属)に入らないものを列挙(例:金属粉等を基材にした塗料・インキ等、機械類、家具、玩具など)。
    • 第15部注2:「一般用の部分品(parts of general use)」の定義(ねじ・ボルト等)と、各章の“parts”に含めない取扱い。
    • 第15部注7:複数の卑金属からなる製品は、原則として重量が最大の卑金属の製品として扱う。
    • 第15部注8:スクラップ(waste and scrap)と粉末(powders)の定義。
    • 第15部注9:棒・形材・線・板/箔・管などの形状定義(第74〜76類等で共通)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • アルミ粉(7603)でも、塗料・インキ等として調製されていると第15部から外れ、Chapter 32等の扱いになり得ます(「金属粉を基材にした調製品」を除外する規定)。
    • アルミ部品が機械の一部でも、**一般用の部分品(ねじ・ボルト等)**は、機械の部分品扱いではなく、部注により別章(例:83類)側で扱われることがあります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第15部注1(f):機械・電気品 → 第84類/第85類
    • 第15部注1(k):家具・照明・プレハブ建物 → 第94類
    • 第15部注2:一般用の部分品 → 73類・83類等の該当見出し

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

※HS2022の第76類は、いわゆる「類注(Chapter Notes)」ではなく、冒頭に**号注(Subheading Notes)**として定義が置かれています(日本の関税率表解説でも「号注」として掲載)。

  • ポイント要約:
    • 「アルミニウム(合金を除く。)」の定義:Al 99%以上かつ他元素が上限以下。
    • 「アルミニウム合金」の定義:アルミが重量最大で、他元素条件(上限超過または合計>1%)に該当。
    • 7616.91の“線”の特則:第15部注9(c)にかかわらず、最大横断寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「アルミニウム(合金を除く。)」= Al 99%以上+(Fe+Si合計1%以下、その他各元素0.1%以下等の条件)
    • 「アルミニウム合金」=上記の条件に当てはまらないが、アルミが重量最大の金属
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第76類本文上、7610から**プレハブ建物(94.06)**は除外。
    • 日本の解説では、アルミとアルミナ焼結品は**サーメット(81.13)**として除外。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:合金/非合金の定義で、号が二分される
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 成分表(ミルシート、材質証明)、規格(JIS/ASTM等)、合金番号(例:6061等)
      • ※ただし「合金番号の呼称」だけでなく、最終的には含有率で判定するのが安全です。
    • 現場で集める証憑:
      • ミルシート、SDS(粉末の場合)、仕様書、材料規格書
    • 誤分類の典型:
      • “高純度アルミ”という営業表現だけで7601.10(非合金)にしてしまい、実際は合金条件を満たしていた。
  • 影響ポイント2:「線(wire)」は原則コイル、ただし7616.91は例外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • コイル品か(第15部注9(c))
      • 金網等(7616.91)の場合は、最大寸法6mm以下か(巻いてあるか否か不問)
    • 現場で集める証憑:
      • 寸法測定記録、写真(梱包形態)、図面(線径/断面)
    • 誤分類の典型:
      • 直線状の線材を7605に入れる/太い格子材を7616.91に入れる。
  • 影響ポイント3:7606/7607の「0.2mm」と「裏打ち除外」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • アルミ層の厚さ(μm→mm換算)、裏打ち材の有無と厚さ
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様書、断面構成表、サンプル測定
    • 誤分類の典型:
      • 裏打ち材込みの総厚で判断し、7606に寄せる(本来7607.20など)。
  • 影響ポイント4:「一般用の部分品」扱いで83類等に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ねじ・ボルト等に該当するか、用途が特定機械専用でも“parts of general use”の範囲か
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、カタログ、用途説明(一般用か専用品か)
    • 誤分類の典型:
      • 機械の部品だからと機械類(84/85)の部分品にしてしまう(部注で除外され得る)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:7606(板)と7607(箔)を総厚で判断
    • なぜ起きる:裏打ち材(紙・樹脂)込みで厚さを見てしまう。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):7607は「厚さ(裏打ち除外)0.2mm以下」と明記。
    • 予防策:断面構成の仕様書(アルミ層厚)を入手し、測定基準(裏打ち除外)を社内ルール化。
  2. 間違い:“アルミ線”という呼称で、直棒品を7605に分類
    • なぜ起きる:現場用語の“線材”とHS定義のwireがずれる。
    • 正しい考え方:wireは原則コイル(第15部注9(c))。
    • 予防策:梱包形態(コイル/直棒)写真を必須添付、工程(引抜→巻取)を確認。
  3. 間違い:金網を7616.91としつつ、線径条件を確認していない
    • なぜ起きる:見出し名(wire cloth等)だけで判断。
    • 正しい考え方:7616.91の“線”は最大横断寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)。
    • 予防策:線径(最大寸法)の測定記録を作り、図面に落とす。
  4. 間違い:押出形材をすべて7604に入れる(7610を見ない)
    • なぜ起きる:“形材=7604”の思い込み。
    • 正しい考え方:7610は「構造物」および「構造物用に準備された板・棒・形材・管等」を含む。
    • 予防策:穴あけ、切断、取付加工、セット出荷の有無を確認し、用途(建具/架構)をヒアリング。
  5. 間違い:容器を7612に寄せて、7611(>300L)/7613(ガス容器)を落とす
    • なぜ起きる:容器分類を“材質”だけで見てしまう。
    • 正しい考え方:7611/7612は容量300Lで分岐、7613はガス用途で別立て。
    • 予防策:容量・用途・機械装置の有無をインボイス品名に併記(例:“Aluminium tank 500L, no mechanical equipment”)。
  6. 間違い:スクラップ(7602)と未加工塊(7601)を混同
    • なぜ起きる:再溶解インゴット(見た目は“スクラップ由来”)を7602と誤認。
    • 正しい考え方:スクラップ再溶解で鋳造した塊は7601側になり得る(日本解説でも7602除外として言及)。
    • 予防策:製造工程(再溶解・鋳造の有無)を確認し、出荷形態(インゴット等)を記録。
  7. 間違い:アルミ粉(7603)を、塗料・インキ用途の「調製品」でも7603として申告
    • なぜ起きる:粉=7603の単純化。
    • 正しい考え方:金属粉等を基材にした塗料・インキ等の調製品は第15部から除外され得る。
    • 予防策:SDSと配合表で「単体粉」か「調製品」かを判別(樹脂・溶剤・分散剤等の有無)。
  8. 間違い:7616(その他)に“何でも”入れてしまう
    • なぜ起きる:最終項だから安心、という心理。
    • 正しい考え方:部注(除外)や一般用の部分品(83類等)を先に排除し、それでも残るものが7616。
    • 予防策:チェック順序を固定(除外→形態→最終項)し、社内レビューでダブルチェック。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HS(6桁)を誤ると、適用すべきPSRが別物になり、原産性判断(CTC/RVC/工程要件)が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 最終製品(完成品)のHSは合っているが、材料HSの付番が粗い/誤りで、CTH/CTSH判定が崩れる。
    • 7606(板)と7607(箔)を誤ると、材料と産品の比較桁(CTH/CTSH)が変わるケースがある(協定PSR次第)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSRが参照するHS版(改正年)が異なることがあります。HS2022で分類した6桁と、協定側の品目表が参照する版にズレがある場合は、対応(トランスポジション)が必要になります。
  • 実務では、税関の「品目別原産地規則(PSR)検索」で、協定を選んで確認するのが近道です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(一般論):
    • BOM(材料表)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS(可能なら6桁まで)、RVC計算の前提
    • 証明書類・保存要件は税関資料で確認(社内保存ルールに落とす)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022実質:注の再配置(参照変更)7616.91(注の参照)HS2017では7616.91の“wire”特則が「Chapter Note 1(c)」にかかる形だったが、HS2022では定義が**第15部注9(c)**へ移ったため参照先が変更。実務の結論(6mm特則)は同じ。ただし「どの注を根拠にするか」の説明が変わる。
HS2017→HS2022変更なし(HS6桁の構成)7601〜7616第76類の項/号の並び自体は維持(少なくとも本文対比上)。国内コード(9桁等)や運用は別途要確認。

出典:WCO HS2017/HS2022 第76類本文および第15部注。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • HS2017(第76類)では、棒・形材・線などの定義が第76類のChapter Note 1として置かれていました。
  • HS2022(第76類)では、その種の定義は第76類からは外れ、第15部注9として共通定義化され、7616.91の“wire”特則も「第15部注9(c)」への参照に変わっています。
  • したがって、HS2017→HS2022で、7616.91の“wire=最大寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)”という実体要件は維持されつつ、根拠条文の“所在”が変わった、と整理できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

※第76類は長期的に大枠が安定していますが、HS2007→HS2012で7615の号が統合されています(HS2007では7615.11/7615.19、HS2012以降は7615.10)。

版の推移変更タイプ(新設/削除/分割/統合)旧コード新コード(行き先)要旨
HS2007→HS2012統合7615.11 / 7615.197615.10家庭用品等の内訳(たわし等/その他)を統合し、7615.10に整理。
HS2012→HS2017変更なし(第76類のHS6桁)大きな改編は確認されません(本文対比上)。
HS2017→HS2022変更なし(コード)/注の再配置コードは維持。定義は第15部注へ移動。

出典:WCO HS2007/HS2012/HS2022 第76類本文。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):裏打ちアルミ箔の厚さ判定ミス
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):7607の厚さは「裏打ち除外」なのに、総厚で判定。
    • 起きやすい状況:ラミネート包装材(紙/樹脂+アルミ箔)で、仕様書に総厚しかない。
    • 典型的な影響:税番更正、再計算、審査長期化。
    • 予防策:アルミ層厚を示す仕様(断面構成)を入手、測定手順を標準化。
  • 事例名:直線状線材を7605で申告
    • 誤りの内容:wireの基本定義(コイル)を満たさないのに7605。
    • 起きやすい状況:切断済みの線材、棒状梱包。
    • 典型的な影響:税番更正、説明資料追加提出。
    • 予防策:梱包形態・工程を写真/工程表で確認。
  • 事例名:金網を7616.91にしたが線径>6mm
    • 誤りの内容:7616.91の“線”定義(最大寸法6mm以下)違反。
    • 起きやすい状況:フェンス/グリル状製品で、棒材を使用。
    • 典型的な影響:税番更正、輸入許可遅延。
    • 予防策:線径測定(最大横断寸法)記録を添付。
  • 事例名:形材(7604)と構造物(7610)の境界誤り
    • 誤りの内容:7610の「構造物用に準備された」要素を見落とし。
    • 起きやすい状況:穴あけ・切断済みのフレーム材を“形材”とだけ記載。
    • 典型的な影響:検査・照会増、納期遅延。
    • 予防策:用途・加工内容をインボイスに具体化、図面添付。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • {日本}前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • アルミそのものは検疫対象でないことが多い一方、**食品接触用途(容器・箔等)**は相手国側規制(食品接触材規制等)で追加資料を求められることがあります(HSの範囲外のため一般論に留めます)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 通常、アルミ製品自体は該当しません(木材・革等の複合品は別途注意)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • アルミ粉末・特定用途材等は、用途/仕様/取引先によって外為法・輸出管理の確認が必要になる場合があります。該非判定は品目・仕様で決まるため、経産省の案内(マトリクス等)で確認します。
  • その他の許認可・届出
    • スクラップ(7602):性状により「廃棄物」の越境移動規制(バーゼル法)に関係する可能性があるため、事前相談の活用が推奨されます。
    • ガス容器(7613):高圧ガス関連法令の適用(検査・刻印等)を要するケースがあり、所管の案内で確認が必要です。
    • アルミ粉・フレーク(7603):取扱い・輸送でSDS確認が重要(危険性は製品性状による)。参考として安全情報データベース等で物質情報を確認します。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(バーゼル法の相談、輸出管理、容器関連情報)
    • 環境省(バーゼル関連情報)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品仕様書、SDS(粉末/化学的性状が絡む場合)、写真、図面、工程図、成分証明(合金判定)、用途説明書

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Al%・他元素)、形状(棒/線/板/箔/管/継手/容器/構造物)、寸法(0.2mm・6mm・7mm・300L)
    • 梱包形態(コイルか否か)、加工度(穴あけ/切断/取付加工)
    • 写真、図面、仕様書、SDS(粉末等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第15部注1(除外)・注2(一般用の部分品)・注8/9(定義)
    • 第76類号注(合金定義、7616.91線の特則)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は「形状+用途+寸法」を入れる(例:“Aluminium foil, thickness 0.018mm, backed”)
    • 測定根拠(仕様書、試験成績書)を準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • PSR検索、BOM、材料HS、工程、RVC等、保存ルール確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • スクラップの越境移動(バーゼル)、高圧ガス容器、輸出管理該非などを所管情報で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、HS2017/2012/2007条文)
    • HS2022 第76類(1576_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 第15部注(1500_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2017 第76類(1576_2017e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2012 第76類(1576_2012e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2007 第76類(1576_2007e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 第26類(アルミ鉱石2606を含む) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 第28類(2818を含む) (参照日:2026-02-27)
  • {日本}税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第76類:76r) (参照日:2026-02-27)
    • 国内分類例規(第76類:76rd) (参照日:2026-02-27)
    • 関税率表の解釈に関する通則(GIR解説) (参照日:2026-02-27)
    • 事前教示(品目分類) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022改正(税関資料) (参照日:2026-02-27)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索 (参照日:2026-02-27)
    • 税関:EPA原産地規則資料(例:epa_roo.pdf) (参照日:2026-02-27)
    • 税関:原産地規則ポータル (参照日:2026-02-27)
  • その他(規制)
    • 経済産業省:バーゼル法(事前相談等) (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:バーゼル関連情報(事前相談等) (参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(マトリクス等) (参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:高圧ガス容器関連(案内) (参照日:2026-02-27)
    • 厚生労働省:職場のあんぜんサイト(物質情報例:アルミニウム粉末) (参照日:2026-02-27)

※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記

付録A. 国内コード({日本})での主な細分と注意点(任意)

  • HS6桁→国内細分で実務影響が大きいもの(例)
    • 7602.00(アルミスクラップ):日本の輸出統計品目表で「サッシのもの」の取扱いが示され、ねじ等が残っていても含み得る等、運用上の注意が記載されています(国内コードの解説)。
    • 7606.12(合金板):輸入統計品目表の統計細分として「3000系/5000系/6000系合金」等の例規が示され、成分条件や熱処理区分(JIS質別記号)に触れています(国内コードの解説)。
    • 7612.90(容器“その他”):国内分類例規として具体的な製品例(食品用ユニット式キャビネット)が掲載されています。
  • 注意点
    • これらは**国内コード(統計細分)**の扱いであり、国際共通のHS6桁とは別です。対外説明では「HS6桁」と「国内コード」を明確に分けて運用してください。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 仕様書(材質/成分/寸法/用途)、写真、図面、工程図、SDS(粉末等)、サンプルの有無
  • 探し方
    • 税関の「事前教示回答(品目分類)」で、公開可能な事前教示の検索ができます(税番・貨物概要等)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第75類:ニッケル及びその製品 Nickel and articles thereof 実務向け整理

用語:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**で統一します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの 超要約

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ニッケルマットニッケル酸化物焼結体などの製錬中間物(7501)
    • 未加工のニッケル(地金)(インゴット、カソード等)(7502)
    • ニッケルの廃品・くず(スクラップ)(7503)
    • ニッケル粉末・フレーク(7504)
    • 棒・ロッド・形材・線(7505)、板・シート・ストリップ・箔(7506)、管・パイプ・継手(7507)
    • その他のニッケル製品(例:ニッケル線の布・グリル・ネット=金網類)(7508)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ニッケル鉱石・精鉱:第26類 2604(鉱石段階)
    • 塗料・インキ等の調製品(金属粉・フレークを基材として調製されたもの):第32類側(第XV部注で除外)
    • 機械・電気機器(またはそれとしての性格が支配的なもの):第XVI部(第XV部注で除外)
    • 貴金属関係(例:貴金属張りの基材等):第71類(第XV部注で除外)
    • 母材が鉄鋼で、ニッケルは表面処理(めっき等)にすぎない製品:通常は母材側(第72類/第73類等)で検討(※ただし複合品の支配的要素は個別判断)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 非合金ニッケル(not alloyed)か、ニッケル合金(alloys)か(第75類の号注で成分要件が数値定義)
    2. 廃品・くず(スクラップ)か、材料として使用可能な形状材か(第XV部注「waste and scrap」定義)
    3. 粉末か否か(第XV部注「powders」=1mmふるい90%以上通過)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 7503(スクラップ):品目分類だけでなく、貨物の状態・混入・汚染等によってはバーゼル法等の輸出入規制の検討が必要になり、遅延や手戻りが起きやすいです(一般論)。

1. 区分の考え方 どうやってこの類に到達するか

1-1. 分類の基本ルール GIRの使いどころ

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言+注(部注/類注)で決めます。第75類は、まず「ニッケル及びその製品」に該当し、かつ第XV部注の除外(機械・電気等)に当たらないことを確認します。
    • GIR6:6桁(号)の選択は、特に**7502/7505/7506/7507の“非合金/合金”**が核心で、号注の成分定義に当てはめます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質:ニッケル主体か(母材+めっき等の場合は母材側の検討が必要になりやすい)
    • 成分:Ni+Co、Co、Fe、O、その他元素の含有率(非合金/合金の定義に直結)
    • 状態:製錬中間物/未加工(地金)/廃品・くず/粉末/形状材(棒・線・板・管)/完成品(その他の製品)
    • 形状:線(原則コイル)か、棒(非コイル)か、管か、継手か(第XV部注の形状定義が効きます)
    • 使用可能性:スクラップは「確実に使用不能」であることが要件(第XV部注)

1-2. 判定フロー 疑似フローチャート

  • Step1:対象は「ニッケル金属」または「ニッケルが主となる合金」か
    • 例:ニッケルめっき鋼板 → 原則として母材(鉄鋼)側を起点に再確認
  • Step2:貨物の状態はどれか(4桁で大枠を決める)
    • 製錬中間物 → 7501
    • 未加工(地金) → 7502
    • 廃品・くず → 7503
    • 粉末・フレーク → 7504
    • 形状材(棒/線/板/管/継手) → 7505〜7507
    • 上記以外の製品 → 7508
  • Step3:6桁で分岐(非合金/合金、管か継手か、7508.10か等)
  • よく迷う境界:
    • 7502(地金) vs 7503(スクラップ):使用不能の裏付けの有無
    • 7504(粉末):粒度が定義を満たすか
    • 7505(線) vs 7505(棒):線は原則コイル(部注定義)
    • 7508.10(金網類):wireの特則(コイル不要+断面寸法6mm以下)が適用されるか

2. 主な項 4桁 とその内容

2-1. 4桁 項 の主なもの一覧表 必須

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7501ニッケルマット、ニッケル酸化物焼結体、その他のニッケル製錬中間物ニッケルマット、酸化物焼結体「化学品」なのか「製錬中間物」なのかは工程・用途で裏付け(呼称だけで決めない)。
7502未加工のニッケル(地金)カソード、インゴット、ブリケット7502.10/7502.20は非合金/合金の成分定義で判定。
7503ニッケルの廃品・くず端材、切削くず、スクラップ「確実に使用不能」かが鍵(第XV部注)。混入物・汚染は規制検討にも影響(一般論)。
7504ニッケル粉末・フレーク粉末(焼結用等)、フレーク「粉末」定義(1mmふるい90%以上通過)で裏付け。
7505ニッケルの棒・ロッド・形材・線棒材、線材、形材線=原則コイル(第XV部注の定義)。形材は「棒/線/板/管」に当てはまらない断面一定材。
7506ニッケルの板・シート・ストリップ・箔ニッケル板、ニッケル箔「板・箔」は厚み/幅等の形状定義に照らす。加工で“別の製品の性格”になっていないか注意。
7507ニッケルの管・パイプ・継手ニッケル管、エルボ、カップリング管(中空・一定断面)か、継手(接続用)かを図面で確認。
7508その他のニッケル製品ニッケル金網、その他ニッケル製品7508.10は金網類。ここだけwireの特則(コイル不要+断面寸法6mm以下)。

2-2. 6桁 号 で実務上重要な分岐 必須

  • 分岐条件の整理(第75類で頻出):
    • **非合金ニッケル(Nickel, not alloyed)**の定義(号注)
      • Ni+Coが99%以上
      • Co≦1.5%
      • Fe≦0.5%、O≦0.4%、その他元素は各々0.3%以下

        → 実務では「Ni%が高い」だけでは足りず、Co/Fe/O/その他元素まで確認が必要です。
    • **ニッケル合金(Nickel alloys)**の定義(号注)
      • ニッケルが各元素より重量で優勢で、かつ
        • Co>1.5%、または
        • 上記のFe/O/その他元素の上限を超える元素がある、または
        • (Ni+Co以外の元素合計)>1%
    • 廃品・くず(waste and scrap)(第XV部注)
      • 「金属の廃品・くず」および「破損・切断・摩耗等で確実に使用不能な金属製品」
    • 粉末(powders)(第XV部注)
      • 1mmメッシュのふるいを重量で90%以上通過
    • 7508.10のwire特則(号注)
      • 本来のwire定義(原則コイル)ではなく、コイルか否かを問わず、かつ断面寸法が6mm以下に限定
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7502.10(非合金) vs 7502.20(合金)
      • どこで分かれるか:上記の号注(Co、Fe、O、その他元素、合計1%)
      • 判断に必要な情報:ミルシート、成分分析表(Ni、Co、Fe、O、その他元素の重量%)
      • 典型的な誤り:「Ni 99%」だけで7502.10とする(Coや不純物条件未確認)
    2. 7503(スクラップ) vs 7502/7505〜(材料)
      • どこで分かれるか:「確実に使用不能」か(第XV部注)
      • 判断に必要な情報:写真、破断/摩耗状況、選別工程、取引条件(スクラップ売買か)
      • 典型的な誤り:端材を商流上“スクラップ”と呼ぶだけで7503にする
    3. 7504(粉末) vs 7502/7505(粒状・ショット等)
      • どこで分かれるか:粉末定義(1mmふるい90%)
      • 判断に必要な情報:粒度分布、ふるい試験成績、SDS
      • 典型的な誤り:「粉末」と呼称されるが、試験で定義を満たさない
    4. 7505.11/12(棒・形材) vs 7505.21/22(線)
      • どこで分かれるか:線は原則コイル(第XV部注)
      • 判断に必要な情報:梱包状態(コイル/リール/直材)、断面寸法・形状
      • 典型的な誤り:直材を「ワイヤー」と呼んで線扱いにしてしまう
    5. 7508.10(金網類) vs 7508.90(その他)
      • どこで分かれるか:製品が「布・グリル・ネット(金網類)」か/それ以外か
      • 判断に必要な情報:構造(織り/溶接/編み)、用いたwireの最大断面寸法(≤6mm)
      • 典型的な誤り:金網っぽい外観だけで7508.10、寸法要件を未確認

3. 部注と類注の詳細解釈 条文から実務的な意味

3-1. 関連する部注 Section Notes

  • ポイント要約:
    • 第XV部注には、除外(第XVI部等)合金・複合品の扱い廃品・くず/粉末の定義、**形状材の定義(棒・線・板・管等)**が規定されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 7503を使うなら、“確実に使用不能”の客観資料(写真、検収記録)を準備します。
    • 7504を使うなら、「粉末」の**ふるい定義(1mm90%)**を試験成績書で裏付けます。
    • 7505の線は原則コイルなので、直材なら棒/形材側を再検討します。
    • ニッケル製でも機械・電気製品の性格が支配的なら第XVI部等に移るため、用途・構造の説明資料が重要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 金属粉が塗料・インキ等に調製されている → 第32類へ
    • 機械・電気機器(またはそれらの部品としての性格が支配的) → 第XVI部へ

3-2. この類の類注 Chapter Notes

  • ポイント要約:
    • 第75類は、**号注(Subheading Notes)**で「非合金ニッケル」「ニッケル合金」の数値定義が置かれています。
    • さらに7508.10のwire特則(6mm以下、コイル不要)が規定されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 非合金ニッケル:Ni+Co≥99%、Co≤1.5%、Fe/O/その他元素の上限あり
    • ニッケル合金:Ni優勢+(Co>1.5%、または上限超過元素あり、または(Ni+Co以外)合計>1%)
    • 7508.10のwire:コイル不要+断面寸法6mm以下
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第75類は第XV部の一部なので、除外は主に第XV部注で整理します(機械・電気等)。

4. 類注が分類に与える影響 どこでコードが変わるか

この章は「注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:非合金か合金か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):Ni、Co、Fe、O、その他元素(重量%)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、成分分析表、規格書、SDS
    • 誤分類の典型:Ni%だけで判断し、Co/不純物上限/(Ni+Co以外)合計1%を確認していない
  • 影響ポイント2:スクラップか否か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):「確実に使用不能」か(破損、切断、摩耗等)
    • 現場で集める証憑:写真、検収記録、選別工程、売買契約(スクラップ取引条件)
    • 誤分類の典型:再利用可能な端材を7503としてしまう
  • 影響ポイント3:粉末か否か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):1mmふるい90%以上通過
    • 現場で集める証憑:粒度分布表、試験成績書、SDS
    • 誤分類の典型:粒状・ショットを「粉末」と呼称だけで7504にする
  • 影響ポイント4:7508.10のwire特則
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):wireの最大断面寸法が6mm以下
    • 現場で集める証憑:図面、実測記録、カタログ
    • 誤分類の典型:金網類なら無条件に7508.10として寸法裏付けを省略

5. 分類でよくある間違い 原因→対策

  1. 間違い:ニッケルめっき鋼板・めっき部材を第75類にしてしまう
    • なぜ起きる:品名・外観(ニッケル色)で母材を見ない
    • 正しい考え方:第75類は「ニッケル及びその製品」。表面処理だけで材質が変わるわけではないため、母材・複合の支配的要素を確認する(一般論)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:母材材質証明、めっき仕様書(厚み、工程)
      • 社内で聞く質問例:「母材は何ですか?」「ニッケルは全体材質ですか、表面処理ですか?」
  2. 間違い:7502.10(非合金)をNi%が高いだけで選ぶ
    • なぜ起きる:定義を「Ni 99%」と誤解
    • 正しい考え方:非合金はNi+Co≥99%に加え、Co≤1.5%、Fe/O/その他元素上限が条件
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:成分分析(Ni、Co、Fe、O、その他元素)
      • 質問例:「Coは何%ですか?」「Fe/O/その他元素は上限内ですか?」
  3. 間違い:スクラップ取引という理由だけで7503にする
    • なぜ起きる:商流用語(scrap)をそのままHSに当てはめる
    • 正しい考え方:スクラップは「確実に使用不能」要件(第XV部注)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:現物写真、検収記録、再利用可否の判断根拠
      • 質問例:「このまま材料として使えますか?」「破損・摩耗で使用不能ですか?」
  4. 間違い:粒状品・ショットを7504(粉末)にする
    • なぜ起きる:「粉末」の定義を数値で見ない
    • 正しい考え方:粉末=1mmふるい90%以上通過(第XV部注)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:粒度分布、ふるい試験成績
      • 質問例:「1mmふるいで90%以上通りますか?」
  5. 間違い:直材を「ワイヤー」と呼び7505の線へ寄せる
    • なぜ起きる:現場の呼称が混在
    • 正しい考え方:wireは原則コイル(第XV部注)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:梱包写真(コイル/リール/直材)、長さ・断面
      • 質問例:「コイル巻きですか?直材ですか?」
  6. 間違い:7508.10(金網類)でwireの6mm要件を見落とす
    • なぜ起きる:「金網=7508.10」と短絡
    • 正しい考え方:7508.10のwireは特則で“断面寸法6mm以下”
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:図面・カタログ・実測記録
      • 質問例:「wireの最大断面寸法は何mmですか?」
  7. 間違い:ニッケル製の機械部品を材質だけで7508にする
    • なぜ起きる:材質起点で分類しがち
    • 正しい考え方:第XV部注で機械・電気等は除外。用途・構造で第XVI部等を検討
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:用途説明、取付構造、図面
      • 質問例:「特定機械の専用品ですか?汎用ですか?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR 品目別規則 の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第75類は非合金/合金で号が変わるため、分類の裏付け(成分表)がないと原産性判断も崩れやすいです(一般論)。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSは合っているが、非原産材料のHSがずれてCTC判定が崩れる
    • 7503(スクラップ)を材料として使う場合の整理(材料のHS・工程・原価の整合)

6-2. 協定が参照するHS版の違い HS2012/2017/2022のズレ

  • 実務では「協定が参照するHS版」が協定ごとに異なります。日本税関の原産地規則マニュアルは、RCEPが2023-01-01以降HS2022を使用する等、協定ごとの参照HS版を整理しています。
  • 例:RCEPは、合同委員会でHS2022へ置換したPSRが採択され、各締約国で2023-01-01から実施とされています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • ①協定本文・運用資料で参照HS版を特定
    • ②WCO相関表(改正対象一覧)で、当該コードが改正対象に入っているか点検
    • ③必要に応じて、協定側の置換PSR(RCEPのような公式置換資料)で読み替え

6-3. 実務チェック 原産性判断に必要なデータ

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・国内運用により差があるため、税関・協定ガイドの最新を確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い 違うことになった根拠

7-1. 変更点サマリー 必須 表

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022コード体系としての再編なし(HS6桁)7501〜7508HS2017/HS2022ともに7501〜7508の構成で、WCO相関表(改正対象一覧)にも第75類コードが列挙されていないHS6桁の社内マスタは大きく変わりにくい(ただし国内コードは別途要確認)
HS2017→HS2022定義・参照先の整理(条文構造)wire定義の参照先7508.10のwire特則が、HS2017では「Chapter Note 1(c)」を前提に上書き、HS2022では「Section XV Note 9(c)」を前提に上書きに変更根拠条文の参照先が変わるため、社内手順書・教育資料の引用先を更新

7-2. 違うことになった根拠 必須

  • HS6桁の大きな再編がないと判断した根拠:
    • HS2017とHS2022の第75類条文を比較すると、見出し(7501〜7508)構成が同じです。
    • WCO相関表(改正対象一覧:scope変更/新設の列挙)にも第75類の該当コードが現れません。
  • 条文構造(参照先)が変わった根拠:
    • HS2017では第75類のChapter Note 1に形状定義(wire等)が置かれていました。
    • HS2022では形状定義が第XV部注9に置かれ、第75類の7508.10はそのwire定義(9(c))を前提に特則で上書きする書きぶりになっています。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第75類は、少なくとも相関表(改正対象一覧に相当)で追える範囲では、HS2002→2007→2012→2017→2022の各改正で「750」系列の大きな再編(新設/削除/分割/統合)が表に現れていません(=改正対象として列挙されていない、という意味での整理)。

版の変更第75類(7501〜7508)に関する主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例備考
HS2002→HS2007相関表(改正対象一覧)上、750の列挙を確認できず(該当なし)大きなコード再編が改正対象一覧に現れない整理
HS2007→HS2012相関表上、750の列挙を確認できず(該当なし)同上
HS2012→HS2017相関表上、750の列挙を確認できず(該当なし)同上
HS2017→HS2022相関表上、750の列挙を確認できず(該当なし)HS6桁の大きな再編は表に現れない整理

9. 類注違反による通関トラブル 想定事例

  • 事例名:スクラップ申告だが「使用不能」根拠が弱い
    • 誤りの内容:第XV部注のwaste and scrap定義に合わないのに7503で申告
    • 起きやすい状況:端材・短尺材をスクラップ扱いで売買
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、遅延(一般論)
    • 予防策:写真・検収記録で「使用不能」を立証、再利用可否を事前整理
  • 事例名:粉末の定義を満たさず7504が否認
    • 誤りの内容:粉末定義(1mmふるい90%)未確認
    • 起きやすい状況:粒状・ショットを粉末と称して販売
    • 影響:照会、サンプル提出、分類変更
    • 予防策:粒度分布・ふるい試験の提出
  • 事例名:非合金/合金の取り違えで税番が変わる
    • 誤りの内容:号注の数値条件(Co、Fe/O、合計1%)未確認
    • 起きやすい状況:ミルシート未入手、Ni%だけで判断
    • 影響:税率・原産地規則(PSR)への波及(一般論)
    • 予防策:成分表入手を前提に分類(入手できない場合は保守的に対応、税関相談)
  • 事例名:金網類で7508.10の寸法要件未確認
    • 誤りの内容:wire特則(断面寸法6mm以下)を満たさないのに7508.10
    • 起きやすい状況:図面・カタログ不備
    • 影響:照会・保留、分類変更
    • 予防策:実測記録、図面、カタログを添付

10. 輸出入規制事項 コンプライアンス観点

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 規制該当性はHSだけで決まらず、仕様・用途・需要者等に基づく該非判定(リスト規制)やキャッチオールの検討が必要です(一般論)。該非判定の情報収集(仕様書等)をMETIも案内しています。
    • その他の許認可・届出(バーゼル等、該当する場合)
      • 金属スクラップは、性状・混入物等によりバーゼル法等の規制対象になり得ます。METI/環境省の事前相談制度もあり、税関判断と異なる可能性がある点まで明記されています(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 安全保障貿易管理:METI(該非判定、マトリクス表等)
    • バーゼル関連:METI/環境省(事前相談、制度案内)
    • 品目分類の不明点:税関の事前教示制度(一般論)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類:仕様書、成分表(ミルシート)、図面、写真、SDS、工程説明
    • 規制:用途説明、需要者情報、該非判定書、スクラップは混入物・汚染状況資料

11. 実務チェックリスト 分類→通関→原産地→規制

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質:ニッケル主体か、母材+表面処理か
    • 成分:Ni/Co/Fe/O/その他元素(重量%)
    • 状態:中間物/地金/スクラップ/粉末/形状材/完成品
    • 形状:コイルの有無、断面寸法、管か継手か(図面で確認)
    • スクラップ:使用不能根拠(写真・検収)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第XV部注の除外(機械・電気等)に当たらないか
    • 7508.10はwire寸法6mm以下の特則を確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名が曖昧(nickel alloy / scrap等)になっていないか
    • 成分表・写真・図面を提出できるか(照会対応の短縮)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版を確認(協定ごとに違う)
    • 製品HSと材料HS、工程、原価(RVC)整合
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 輸出:該非判定・用途需要者確認(METI案内に沿って資料収集)
    • スクラップ:バーゼル法等の対象性(事前相談活用)

12. 参考資料 出典

  • WCO HS2022 第75類 条文(Nickel and articles thereof) (参照日:2026-02-27)
  • WCO HS2022 第XV部 注(Base metals and articles of base metal:除外、廃品・くず、粉末、形状定義等) (参照日:2026-02-27)
  • WCO HS2017 第75類 条文(旧版:Chapter Note 1の形状定義等) (参照日:2026-02-27)
  • WCO 相関表(HS2017–HS2022:改正対象の考え方) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:HS2022改正について(制度概要) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:HS2022↔HS2017 相関表(PDF) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:HS2017↔HS2012、HS2012↔HS2007、HS2007↔HS2002 相関表(PDF) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:事前教示制度(品目分類) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:EPA原産地規則マニュアル(協定ごとの参照HS版) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:RCEP HS2022置換PSR(PDF) (参照日:2026-02-27)
  • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR採択(運用開始日等) (参照日:2026-02-27)
  • METI:安全保障貿易管理(該非判定マトリクス表の案内) (参照日:2026-02-27)
  • METI:安全保障貿易管理の概要(英語ガイダンス:リスト規制/キャッチオール等) (参照日:2026-02-27)
  • METI:バーゼル法 輸出入規制 事前相談(委託) (参照日:2026-02-27)
  • 環境省:バーゼル条約関係の国内枠組み(輸出入手続の概説) (参照日:2026-02-27)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第74類:銅及びその製品(Copper and articles thereof)

※用語を次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 銅の粗銅・アノード、電解精製用の銅(7402)
    • 精製銅・銅合金の「地金(インゴット、ワイヤバー、ビレット等)」(7403)
    • 銅くず・スクラップ(7404)
    • 銅粉・銅フレーク(7406)
    • 銅の板・帯(厚さ0.15mm超:7409)/銅箔(厚さ0.15mm以下:7410)
    • 銅管・継手(7411/7412)、銅製のねじ・ボルト等(7415)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 銅鉱石・精鉱:第26類(例:2603)
    • 銅の化合物(酸化物・塩・リン化物等):第28類(※類注で「リン含有が高いリン銅」は第28類側へ行く旨が明示)
    • 絶縁電線・ケーブル:第85類(例:8544)※第74類の7413は「非絶縁」
    • 機械・電気機器の完成品:第16部/第85類(部注で除外)
    • 硬貨:第71類(7118 など)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 地金(7403)なのか/スクラップ(7404)なのか(=「使用に耐えない」状態かどうか)
    • 板(7409:0.15mm超)なのか/箔(7410:0.15mm以下)なのか
    • 非絶縁の銅線(7408/7413)なのか/絶縁電線(8544)なのか
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **銅スクラップ(7404)**は、HS分類だけでなく、**バーゼル法(有害廃棄物等の越境移動規制)**の該当性判断が絡みやすく、通関遅延・差止めリスクが相対的に高いです(後述)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注):第74類は「形状(地金/粉/線/板/箔/管/継手/ねじ等)」と「注の定義(精製銅・合金・スクラップ等)」でほぼ勝負が決まります。
    • GIR6(号=6桁の比較):0.15mm、6mm、合金区分(黄銅/青銅/白銅等)といった“定量条件”で6桁が割れます。
    • GIR3(複合品):銅+他金属の複合記事(例:銅合金部材+鋼材部材)では、部注(複合品は重量優先など)を踏まえて整理します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質・成分(Cu%と不純物、Zn/Sn/Ni等)
    • 状態(地金/スクラップ/粉/半製品/完成品)
    • 形状・寸法(厚さ、最大断面、コイル状か等)
    • 絶縁の有無(電線の典型)
    • 加工度(“鋳造・鍛造のみ”か、切削など追加加工ありか:7419で重要)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物が「銅(Cuが主体)」か?
    • 成分証明(ミルシート、分析表、SDS)で確認。
  • Step2:第15部(卑金属)に残るか?(完成機械・電気機器ではないか)
    • 例:銅バーでも、機械・電気機器の完成品/専用品の形態なら第16部・第85類へ寄ることがあります。
  • Step3:状態の大分類:地金(7401-7403)/スクラップ(7404)/粉(7406)/半製品(7407-7413)/記事(7415-7419)
  • Step4:半製品なら**形状定義(棒・線・板・箔・管など)**に当てはめる
    • ここで部注(定義)に立ち戻ります。
  • Step5:6桁の分岐(例:0.15mm、6mm、合金グループ、裏打ちの有無など)を確定
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第74類(銅の未完成材・一般記事) vs 第85類(絶縁電線・電気機器)
    • 第74類(銅スクラップ) vs 第26類(鉱石)/第28類(化学品)
    • 第74類(銅の一般記事7419) vs 第83類(汎用金具・金物類)※品目実態次第で第83類側へ寄るケースがあります(部注の“部分品/汎用品”の考え方に注意)。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7401銅マット、沈殿銅(セメント銅)製錬中間物鉱石(第26類)と混同しない
7402粗銅、電解精製用銅アノードアノード7403(精製銅地金)と区別
7403精製銅・銅合金の地金カソード、ワイヤバー、ビレット、インゴット「地金(unwrought)」概念が中核。端部加工だけなら地金扱いの留意あり
7404銅くず・スクラップ被覆除去した銅線くず、加工端材**“使用に耐えない”**状態か(部注の定義)+バーゼル法等の規制面
7405銅の母合金脱酸用母合金合金地金(7403)との区別(「母合金」定義)
7406銅粉・銅フレークアトマイズ粉、フレーク粉「粉」の定義(ふるい)+ラメラ/非ラメラで分岐
7407銅の棒・ロッド・形材丸棒、角棒、押出形材形状定義(部注)と「コイル状でない」等の要件
7408銅線裸銅線絶縁が無いこと。精製銅の一部は最大断面寸法6mmで分岐
7409銅の板・シート・帯(厚さ0.15mm超)銅板、銅帯0.15mm超。合金種類・コイル状で細分
7410銅箔(厚さ0.15mm以下)電子用銅箔、裏打ち銅箔0.15mm以下、裏打ちの有無(厚さは裏打ち除外)
7411銅管銅パイプ継手(7412)と混同しやすい
7412銅管継手エルボ、ソケット材質(精製銅/合金)で細分
7413より線・ケーブル等(非絶縁)銅より線、ブレード非絶縁。絶縁品は8544へ
7414(HS上 未設定/予約)HS条文でブラケット表示(現行運用では使わない)
7415銅製のくぎ・ねじ・ボルト・ナット等銅ボルト、銅ワッシャー83.05(ステープル等)除外あり/ねじ山の有無で分岐
7416(HS上 未設定/予約)同上
7417(HS上 未設定/予約)同上
7418銅製家庭用品・衛生用品等台所用品、たわし、衛生設備品7418.10/7418.20
7419銅製その他の製品銅製部品、銅製記事一般HS2022で6桁構造が変更(7419.20/7419.80)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出):
    • 厚さ:7409(>0.15mm) vs 7410(≤0.15mm)
    • 最大断面寸法:7408(精製銅)で >6mm(7408.11) とその他(7408.19)
    • 合金の種類:黄銅・青銅・白銅(キュプロニッケル)・洋白(ニッケルシルバー)等(類注の定義で判定)
    • 加工度:7419.20(鋳造・鍛造等のみで追加加工なし) vs 7419.80(切削等でさらに加工)
    • 裏打ち(backed)の有無:7410で分岐(厚さは裏打ちを除く)
    • 粉体の構造:7406.10(非ラメラ) vs 7406.20(ラメラ/フレーク)+「粉」の定義(ふるい)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 7409(板・帯) vs 7410(箔)
    • どこで分かれるか:厚さ0.15mm(裏打ちがある場合は裏打ち除外の厚さ)
    • 判断に必要な情報:製品図面、厚さ測定結果(複数点)、裏打ち材の有無と構成
    • 典型的な誤り:名目「銅箔」でも0.2mmで実態は7409、または裏打ち厚込みで誤判定
  2. 7408(銅線) vs 7413(より線等) vs 8544(絶縁電線)
    • どこで分かれるか:単線か撚りか/絶縁の有無(絶縁があると第85類へ)
    • 判断に必要な情報:断面写真、構造図(導体+絶縁+シース)、用途説明
    • 典型的な誤り:絶縁被覆付きなのに7408/7413で申告
  3. 7411(銅管) vs 7412(銅管継手)
    • どこで分かれるか:「管そのもの」か「接続用継手」か
    • 判断に必要な情報:形状(エルボ/ソケット等)、接続機能の有無、カタログ
    • 典型的な誤り:短い管片を“継手”と誤認、または継手を“管”と誤認
  4. 7419.20 vs 7419.80(その他銅製品の中の加工度)
    • どこで分かれるか:鋳造・鍛造等の後、機械加工や穴あけ等で「さらに加工」しているか
    • 判断に必要な情報:工程表、加工指示書、図面(公差/ねじ/穴)
    • 典型的な誤り:「鍛造品」名目で実は切削済み(7419.80寄り)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部は、完成機械・電気機器など多くを除外(部注1)。
    • “parts of general use(一般用の部分品)”は、ねじ・ボルト等の汎用品を指し、機械の「部品」扱いではなく各章の当該見出しに分類させる趣旨(部注2)。ただしインプラント(9021)専用設計のものは除外され得ます。
    • 合金・複合品の基本は「重量優先」(部注5〜7)。
    • **スクラップ(waste and scrap)粉(powders)**の定義(部注8)は、第74類の7404/7406の境界で重要。
    • 第74類などに共通の「棒・線・板・管」等の形状定義が部注9に集約(HS2022の特徴)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:銅製ボルトを「機械の専用部品」として機械側の部品番号に入れる発想は危険です。汎用の締結具は通常、銅なら7415等に落ちます(ただし医療用インプラント専用設計など例外があり得る)。
    • 例:銅粉でも、**塗料・インキ等の“調製品”**としての性格が強い場合は第32類側(部注1(a))に飛ぶ可能性があります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 絶縁電線(第85類)
    • 機械・電気機器の完成品(第16部)
    • 調製された塗料・インキ等(金属粉ベースの調製品)(第32類)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 精製銅(refined copper):Cu 99.85%以上、またはCu 97.5%以上で不純物が一定限度以下。
    • 銅合金(copper alloys):Cuが他元素より重量で優位で、他元素が一定限度超または総量が2.5%超。
    • 母合金(master alloys):他元素と合計してCu>10%、有用な展延性がなく、添加剤等として用いるもの(ただし高リンのリン銅は第28類側へ)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 黄銅(brass):Cu-Zn合金。Znが他の各元素より重量で優位、Ni<5%、Sn<3%等の条件。
    • 青銅(bronze):Cu-Sn合金。Snが他元素より優位(一定条件でZnがSnを超え得るが上限あり)。
    • 洋白(nickel silver):Cu-Ni-ZnでNi≧5%。
    • 白銅(cupro-nickel)等:Cu-Ni系(Znは1%以下等)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • リン銅(銅リン化物)でリン含有が高いものは第28類(HS2022では28.53)側へ(類注で明示)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「精製銅」か「銅合金」かで6桁が変わる(7407/7408/7409/7410/7411/7412など)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • Cu%と不純物(Ag/As/Cd/Cr等)の分析値、Zn/Sn/Ni等の含有率
    • 現場で集める証憑:
      • ミルシート、成分分析表(第三者分析)、SDS、材料規格(JIS/ASTM等)
    • 誤分類の典型:
      • 商品名「純銅」だが実際は添加元素が多く合金扱いになり、精製銅のサブヘディングで申告してしまう
  • 影響ポイント2:スクラップ(7404)認定の可否(=部注8の“使用に耐えない”)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 破損・切断・摩耗などで「そのまま使用できない」こと、取引実態(スクラップとして購入/売却)
    • 現場で集める証憑:
      • 写真(全体+クローズアップ)、スクラップ証明、梱包状態、契約書(scrapとしての売買)、選別工程の資料
    • 誤分類の典型:
      • 中古部品・再利用可能品を“スクラップ”として7404申告(税関で否認されやすい)
  • 影響ポイント3:形状定義(部注9)に合わないと、そもそも見出しがズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 断面形状、寸法(厚さ/幅/外径/内径)、コイル状か、加工内容
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、検査成績表、工程図(圧延/押出/伸線/切削)、サンプル写真
    • 誤分類の典型:
      • 0.15mm境界の測定が曖昧で7409/7410を誤る

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:銅箔(7410)を銅板(7409)で申告(または逆)
    • なぜ起きる:厚さの測り方(裏打ち込み/除外)や公差、呼称に引っ張られる
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):0.15mmの基準は見出し文言で固定
    • 予防策:図面で「銅単体の厚さ」を確認、複数点測定、裏打ち材の構成資料を添付
  2. 間違い:絶縁電線を7408/7413で申告
    • なぜ起きる:導体が銅なので“銅線”と理解してしまう
    • 正しい考え方:7413は「非絶縁」、絶縁品は第85類へ(部注1で第16部/第85類が除外の文脈も)
    • 予防策:断面写真・仕様書で絶縁層の有無を必ず確認
  3. 間違い:スクラップ(7404)と地金(7403)を取り違える
    • なぜ起きる:「リサイクル原料=スクラップ」と短絡
    • 正しい考え方:スクラップは“使用に耐えない”状態の定義に当てる
    • 予防策:取引書類(scrap表記)、写真、用途(溶解原料専用か)を揃える
  4. 間違い:“黄銅”と聞いて何でも brass(黄銅)サブヘディングに入れる
    • なぜ起きる:商慣習名とHS定義がズレる(Ni/Sn含有で黄銅の定義外になること)
    • 正しい考え方:黄銅/青銅/洋白等は類注の定義で判定
    • 予防策:Zn/Sn/Niの含有率を確認(合金証明)
  5. 間違い:7412(継手)を7411(管)で申告
    • なぜ起きる:短い配管部材を“管”と誤認/逆も同様
    • 正しい考え方:接続機能を持つ形状(エルボ等)は継手側
    • 予防策:カタログ・図面で形状と用途を確認(配管部材の呼称だけに依存しない)
  6. 間違い:銅製ねじ等を“機械の部品”として機械側見出しに入れる
    • なぜ起きる:部品=完成品側、という思い込み
    • 正しい考え方:汎用締結具は“parts of general use”として独立分類が原則(例外:インプラント専用設計等)
    • 予防策:汎用品か専用品か、用途限定性(医療用等)を仕様で確認
  7. 間違い:7419.20(追加加工なし)と7419.80(その他)を混同
    • なぜ起きる:「鍛造品」という言い方が工程実態(切削済み)を隠す
    • 正しい考え方:見出しの“but not further worked”を工程で判定
    • 予防策:工程表・加工内容(穴、ねじ、切削、研磨)を提出資料として揃える

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。特に第74類は「板/箔」「管/継手」「地金/スクラップ」でPSRのロジック(CTH/RVC/WO等)が変わりやすいです。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSを誤る→適用すべきPSR自体が変わる
    • 材料(非原産材料)のHSを適当に置く→CTC判定が崩れる
    • 工程で“さらに加工”しているのに、加工度が低い見出しで考えてしまう(7419など)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 実務では「協定本文(当初版)」と「運用上参照すべきHS(置換PSR等)」がズレることがあります。
  • 例(日本の実務で重要):
    • RCEP:HS2012のPSRが、合同委員会でHS2022に置き換えられ、2023-01-01から運用(原産地証明のHSも置換PSRに基づく)。
    • CPTPP:HS2012ベースで運用される枠組みが一般的(日本税関の原産地規則マニュアルの整理に従い確認)。
    • 日EU EPA・日英EPA:HS2017ベース(同マニュアルの整理に従い確認)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • まず「協定が要求するHS版」を確認→次に税関/公的機関が出す「置換PSR」「読み替え表」の有無を確認
    • HS2022で通関していても、PSRは別版参照の場合があるので、協定・制度ごとに切り分けます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(最低限):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 原産地証明関連(CO/申告)、裏付資料(仕入証憑、製造記録、成分証明)を、社内規程で一括管理

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割/統合(再構成)7419旧:7419.10(チェーン)+7419.91/7419.99 → 新:7419.20/7419.80(加工度で区分)旧コード前提のマスタ/PSR/統計の見直しが必要
HS2017→HS2022注の新設/移動Section XV 注9棒・線・板・管などの定義を、各章注から部注へ集約形状判定の根拠条文が「章注→部注」へ移り、説明資料の参照先が変わる
HS2017→HS2022定義の見直しSection XV 注8(スクラップ)スクラップ定義が整理(“金属くず全般”“使用不能品”)7404該当性説明の書き方(証憑)を見直す
HS2017→HS2022定義の変更Section XV 注2(parts of general use)インプラント専用設計品の扱いが明確化医療用ねじ等で分類が変わり得る(汎用品か専用品かの証明が重要)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 7419の変更根拠:
    • HS2017では7419.10(チェーン)と7419.91/7419.99(その他)が存在。
    • HS2022では7419.20/7419.80へ再編され、チェーンの独立号が無い。
    • WCO相関表(HS2017→HS2022)でも、7419.10等が7419.80等へ対応付けされている。
  • 形状定義の移動(章注→部注)の根拠:
    • HS2017の第74類注に棒・線・板・管等の定義が記載。
    • HS2022ではそれらがSection XV注9に集約。
  • 変更がない部分:
    • 7401〜7413、7415、7418など多くの4桁はHS2017とHS2022で大枠は維持されています(ただし“根拠注”の参照先が変わり得る点は注意)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(HS2007→2012→2017→2022):

変遷旧コード → 新コード(主な対応)変更の要点補足(実務)
HS2007→HS20127418.11/7418.19 → 7418.10家庭用品系サブヘディングの統合マスタ変換が必要(過去データ参照時)
HS2012→HS2017(章注の参照先)銅リン化物の除外先:28.48 → 28.53第28類側の見出し再編に伴う参照変更“高リンのリン銅”を扱う場合、版違いに注意
HS2017→HS20227419.10/7419.91/7419.99 → 7419.20/7419.807419の6桁構造変更旧7419.10(チェーン)はHS2022で別建てなし(7419.80側へ整理され得る)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「スクラップ申告だが再利用可能」問題
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部注8(スクラップ定義)に当てはまらない可能性
    • 起きやすい状況:中古モーターの銅部品・電線束など、再利用/修理可能な状態
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、通関遅延
    • 予防策:状態写真、売買契約(scrap条件)、選別工程の説明を事前に用意
  • 事例名:「銅箔の厚さ境界(0.15mm)で揉める」
    • 誤りの内容:7409/7410の見出し要件違反(厚さ)
    • 起きやすい状況:公差が大きいロット、裏打ち材付き
    • 影響:HS差替えによる税率・統計・原産地判定の連鎖変更
    • 予防策:厚さ測定記録、裏打ち除外厚さの根拠資料
  • 事例名:「絶縁電線を非絶縁として申告」
    • 誤りの内容:部注(第16部/第85類除外)の見落とし+7413の要件誤認
    • 起きやすい状況:導体銅比率が高く見た目が似ている
    • 影響:品目誤り、規制/安全基準/表示の追加確認
    • 予防策:断面・仕様書で絶縁層確認
  • 事例名:「鍛造品(7419.20)だと思ったら切削済み」
    • 誤りの内容:7419.20の“追加加工なし”要件の見落とし
    • 起きやすい状況:外注加工が工程表に出ていない
    • 影響:コード差替え、原産地ルール再判定
    • 予防策:工程表・加工指示書の入手、サンプル確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、第74類の銅材そのものはSPSの中心ではありません(用途・付着物・汚れ等がある場合は別途確認)。
    • バーゼル法(有害廃棄物等の越境移動)/廃棄物性の確認
      • 特に**銅くず・スクラップ(7404)**は、貨物が「廃棄物」に当たるかどうかで手続が大きく変わる可能性があります。
      • 税関はバーゼル法に関する「水際」情報を公表しており、輸出入時の注意点・相談導線が示されています。
      • 経済産業省はバーゼル法に関する事前相談の案内を公表しています。
      • 環境省も制度・手続の情報を公表しています。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 金属材料は一般品でも、仕様・用途・需要者・仕向地により、リスト規制/キャッチオール規制の確認が必要になることがあります(経産省の制度概要・ガイダンス参照)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • バーゼル法:税関(案内ページ)、経産省(事前相談)、環境省(制度説明)
    • 安全保障貿易管理:経産省(制度概要・キャッチオール等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 貨物の状態写真、成分表、用途説明、取引契約(スクラップ売買であること等)、工程・選別フロー、(必要に応じ)事前相談記録

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Cu/Zn/Sn/Ni等)、形状(棒/線/板/箔/管/継手)、寸法(厚さ0.15mm、最大断面6mmなどの境界)、絶縁の有無
    • スクラップの場合:使用不能性の根拠(写真・契約・選別工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 部注8(スクラップ/粉)、部注9(形状定義)、類注(精製銅/合金/母合金)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「銅板」「銅箔」「銅線(非絶縁)」「銅スクラップ」等、誤解が起きない粒度で
    • 裏付資料(図面・成分表・写真)をセットで管理
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(RCEPは2023-01-01以降HS2022置換PSR等)を確認
    • BOM、非原産材料HS、工程、原価資料を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 銅スクラップはバーゼル法の観点で事前確認(必要なら事前相談)
    • 安全保障貿易管理(該当性・用途確認)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文・注・相関表等)
    • HS2022 Chapter 74 “Copper and articles thereof”(参照日:2026-02-27)
    • HS2017 Chapter 74(参照日:2026-02-27)
    • HS2012 Chapter 74(参照日:2026-02-27)
    • HS2007 Chapter 74(参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Section XV Notes(参照日:2026-02-27)
    • HS2017 Section XV Notes(参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables 2017↔2022(Table II)(参照日:2026-02-27)
  • 日本:税関・公的機関
    • 税関:RCEP(HS2022版PSR・運用案内)(参照日:2026-02-27)
    • 税関:EPA原産地規則マニュアル(協定別HS版の整理を含む)(参照日:2026-02-27)
    • 税関:バーゼル法関係(水際情報)(参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:バーゼル法(事前相談)(参照日:2026-02-27)
    • 環境省:バーゼル法関連情報(参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(制度概要・キャッチオール等)(参照日:2026-02-27)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不

HS2022 第73類:鉄鋼製品(Articles of iron or steel)

  • 用語:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • 注意:ここで扱うのは原則**HS(6桁)です。日本の国内コード(9桁等)**は別物なので、触れる場合は「国内コード」と明記します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉄鋼製の管・パイプ・中空形材(鋳鉄/継目無/溶接などで区分)
    • 鉄鋼製の管継手(エルボ、フランジ等)
    • 鉄鋼製の構造物・構造物の部分(橋、鉄骨、足場材等)
    • 鉄鋼製のタンク・ドラム・ガス容器(ボンベ)
    • 鉄鋼製のボルト・ナット等の締結具
    • 鉄鋼製の厨房用品・衛生器具(鍋類、流し台等)
      ※第73類の見出し構成はHS条文に基づきます。
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉄鋼の一次製品(板、棒、形鋼、線材など) → 第72類(鉄鋼)に行きやすい(「製品」ではなく「素材形状」)
    • 機械・電気機器の部分品(ただし“一般用の部分品”は別)→ 多くは第84類・85類(部注で第15部から除外の考え方)
    • 鍵・蝶番・取っ手等の金物 → 第83類(卑金属製の雑品)に行きやすい
    • プレハブ建物 → 94.06(第94類)に除外される(第73類の構造物とは別扱いになり得る)
    • 医療用インプラント向けに専用設計されたボルト等 → 90.21(HS 9021)になり得る(HS2022の「一般用の部分品」定義で例外が明確化)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 第72類(素材形状)か、第73類(“製品”)か
    2. 「機械の部品」か「一般用の部分品(parts of general use)」か(ボルト/管継手/チェーン等は“部品”扱いでも機械の類に行かないのが原則)
    3. 鋼管・容器は製造方法/寸法/容量で号が変わりやすい(例:外径406.4mm、容量300L、50Lなど)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 鋼管(7304〜7306):号違いで税率・統計・規制・原産地判定(PSR)が連鎖して崩れる
    • ガス容器(7311):通関前後で高圧ガス関係の検査・手続が絡む場合がある(日本)
    • 締結具(7318):機械部品に見えるため誤って第84/85類に入れがち(ただし原則“一般用の部分品”)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIRを、ビジネスマン向けに説明します:
    • GIR1(見出し・注で決める):第73類は、部注・類注が強く効きます。まず「第15部注」→「第73類注」→「見出し」の順で当てはめます。
    • GIR6(号まで落とす):鋼管・容器・金網などは、号で寸法/容量/製造方法が分かれるので、最後はGIR6で精緻化します。
    • (ケースにより)GIR2(a):未完成品でも完成品の性格を持てば同様に扱われることがあります(例:穴あけ済みの鉄骨部材など)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 材質:鋳鉄か、ステンレス鋼か、非合金鋼か、合金鋼か(鋳鉄の定義は類注で重要)
    • 製造方法:継目無か、溶接か、鋳造か(鋼管で決定的)
    • 状態・加工度:構造物用に“準備された”部材か(7308)/単なる形鋼か(第72類寄り)
    • 用途:家庭用非電気調理器具(7321)/暖房用ラジエータ(7322)/衛生器具(7324)など

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:鉄または鋼の「製品」か?
    • 板・棒・線材など“素材形状”なら第72類を優先検討
    • “用途が立っている形状”なら第73類へ
  • Step2:部注で第15部から除外されないか?
    • 機械・電気機器(第16部)などに該当すると第15部から除外され得ます。
    • ただし 73.07/73.12/73.15/73.17/73.18 は「一般用の部分品」に該当しやすく、機械の“部分”と見えても第73類に残るのが原則です。
  • Step3:第73類のどの項(4桁)か?
    • 形状・機能でまず項を決め、次に号で寸法・材質・製造方法を詰めます。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第72類(鉄鋼) vs 第73類(鉄鋼製品):素材形状か、用途が立つ“製品”か
    • 第73類 vs 第83類(卑金属製雑品):鍵/蝶番/建具金物等は83類寄り
    • 第73類 vs 第84/85類(機械・電気の部品):ただし“一般用の部分品”は73類に残りやすい

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第73類は4桁見出しが 7301〜7326 と体系的なので、全列挙します(実務上も全体像が重要)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7301矢板・溶接形鋼等矢板、溶接アングル形鋼でも「溶接形鋼」等の範囲に注意
7302鉄道/軌道用の線路用材レール、まくら木(クロスタイ)、継目板“線路の固定・接合に特化”が鍵
7303鋳鉄製の管ダクタイル鋳鉄管など「鋳鉄」の定義は類注で確認
7304継目無(シームレス)管シームレス鋼管、油井管(継目無)用途・鋼種・加工(冷間等)で号が分岐
7305外径406.4mm超の円形断面管大口径鋼管(溶接等)外径406.4mmがキー
7306その他の管(溶接等)溶接鋼管、角パイプ溶接/断面形状/鋼種で号が分岐
7307管継手フランジ、エルボ、ソケット「一般用の部分品」該当が多い
7308構造物・その部分等鉄骨、橋梁部材、足場材プレハブ建物(94.06)除外に注意
7309容量300L超のタンク等大型貯槽、タンク300L超・機械/加熱装置なし
7310容量300L以下のドラム等ドラム缶、一斗缶、ペール缶50L境界など号で分岐
7311圧縮/液化ガス容器ガスボンベ、シリンダー“ガス用”は7311、規制実務に注意
7312撚り線・ワイヤロープ等ワイヤロープ、スリング電気絶縁の有無(“not electrically insulated”)
7313有刺鉄線等有刺鉄線、フェンス用線材フェンス用途の典型
7314金網・金網フェンス・エキスパンドメタル溶接金網、メッシュ、エキスパンド線径・目合い等で号分岐あり
7315チェーンローラチェーン等「一般用の部分品」該当が多い
7316いかり等アンカー、グラップネル船舶用品でも本項に残ることがある
7317釘・ステープル等釘、タッカー針(83.05除外)83.05(文具用等)との切分け
7318ねじ・ボルト・ナット等ボルト、ナット、リベット「一般用の部分品」該当が多い
7319縫針・安全ピン等手縫針、安全ピン、まち針現行HSは7319.40等の区分
7320ばねコイルばね、板ばねばねの形状で号が分岐
7321非電気の家庭用調理器等ガスコンロ、薪ストーブ“non-electric”が鍵
7322非電気の暖房用ラジエータ等セントラルヒーティング用ラジエータ“not electrically heated”が鍵
7323家庭用品・金たわし等鍋、フライパン、金たわし鋳鉄・ステンレス等で号分岐
7324衛生器具流し台、洗面器、浴槽7323(厨房用品)と混同しがち
7325その他の鋳鉄製品等鋳物のマンホール蓋等鋳物(cast)の扱いに注意
7326その他の鉄鋼製品ブラケット、金具、雑多な鉄製品“他に該当しない”の最後の受け皿

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 鋼管(7304/7305/7306):継目無/その他、外径406.4mm、断面形状、鋼種(ステンレス等)、用途(ラインパイプ等)
    • 容器(7309/7310/7311):ガス用か否か、容量300L、さらに7310は50Lなど
    • 金網(7314):溶接交点の有無、線径、目合い、めっき/樹脂被覆等(例:線径3mm以上・目合い100cm²以上で特定号)
    • 締結具(7317/7318/7319):ねじ山の有無、用途(手縫針等は7319)、一般用の部分品該当
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7304(継目無) vs 7306(溶接等)
      • どこで分かれるか:製造方法(seamless か、welded/open seam か)
      • 判断に必要な情報:製造工程(ミルシート/工程図)、製造方法の記載、規格(JIS/ASTM等)、断面形状
      • 典型的な誤り:「溶接なのに“鋼管”という品名だけで7304扱い」
    2. 7305(外径406.4mm超) vs 7306(その他)
      • どこで分かれるか:外径406.4mm超かどうか
      • 判断に必要な情報:外径(mm)、円形断面か、仕様書
      • 典型的な誤り:「大口径だが外径を確認せず7306で申告」
    3. 7309(>300L) vs 7310(≤300L)
      • どこで分かれるか:容量300L超/以下、機械/加熱装置の有無
      • 判断に必要な情報:容量(L)、構造図、付属機器(攪拌機・ヒーター等)の有無
      • 典型的な誤り:「300L境界を見落とす」「付属装置付きなのに7309/7310で処理」
    4. 7310(一般容器) vs 7311(圧縮/液化ガス用容器)
      • どこで分かれるか:ガス(圧縮/液化)用途かどうか
      • 判断に必要な情報:充填内容物、圧力設計、用途説明、ラベル、UN番号等
      • 典型的な誤り:「空のガスボンベを“容器”として7310にしてしまう」
      • 付随論点:日本では高圧ガス関係の輸入検査が絡むことがあるため、事前確認が重要です。
    5. 7318(一般のねじ等) vs 9021(医療用インプラント用に専用設計)
      • どこで分かれるか:「一般用の部分品」定義の中で、インプラント専用設計品は除外され得る点(HS2022)
      • 判断に必要な情報:医療用途、インプラント専用設計(形状・材質・規格)、医療機器カタログ、承認情報
      • 典型的な誤り:「手術用の骨ねじ等を“ねじ”として7318で固定」

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注は「第15部に含まれないもの(除外)」と「部内共通の定義(一般用の部分品、複合品等)」が分類を強く左右します。
    • 特に重要なのが 注2(parts of general use)注7(複合製品の扱い) です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • **ボルト(7318)**は、機械に使われても「機械の部分」ではなく、原則として7318に残りやすい(=“一般用の部分品”)。
    • **管継手(7307)**も同様に“一般用の部分品”に該当しやすく、設備の一部に組み込まれても7307を基点に検討します。
    • 複合品(例:鉄+ステンレス+銅の組合せ)の場合、原則は重量で優勢な卑金属で分類し、さらに「鉄と鋼は同一金属扱い」とされます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第16部(機械・電気)該当:機械としての本体・部品に吸収されるケース
    • 第94類(家具・照明・プレハブ等)該当:構造物(7308)と見えても、94類へ飛ぶケース(品目の性格次第)
    • 医療用インプラント(90.21):HS2022で「一般用の部分品」から除外され得る旨が明確化

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:鋳鉄(cast iron)の定義(鋳造で、鉄が他元素より重量優勢、かつ第72類注で定義される鋼の組成に該当しないもの)
    • 類注2:この類でいう**wire(線)**は、断面形状を問わず、断面寸法が16mmを超えない熱間/冷間成形品
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 上記の「鋳鉄」「wire」は、鋼管・金網等で“言葉の感覚”とズレることがあるため、必ず注の定義に寄せて判断します。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注自体は定義中心ですが、部注側の除外(第16部・第94類等)が実務上の除外として効きます。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:「鋳鉄」該当かどうかで、鋳鉄管(7303)や鋳物製品(7325)に寄る
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 材質(鋳鉄/鋼)、化学成分(主要元素の重量比)
      • 製造方法(鋳造か否か)
    • 現場で集める証憑:
      • ミルシート、材質証明、成分分析表、製造工程表
    • 誤分類の典型:
      • 「見た目が黒い=鋳鉄」と決めつける(実際は鋼)
  • 影響ポイント2:wireの定義(16mm)で、線材・金網の解釈がズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 断面最大寸法(mm)、断面形状、加工履歴(熱間/冷間)
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、寸法表、製造仕様書
    • 誤分類の典型:
      • “wire”を日常語の「細い線」だと思い込み、寸法確認を省略する

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:溶接鋼管を7304(継目無)で申告
    • なぜ起きる:品名が「鋼管」で、製造方法が書類に出ない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しが製造方法で分かれているため、工程情報が必要(7304/7306の構造)
    • 予防策:
      • 仕様書に「seamless/welded」の明記
      • ミルシートや規格票を入手
  2. 間違い:外径406.4mm超の管を7306に入れる
    • なぜ起きる:外径を“呼び径”で見てしまう
    • 正しい考え方:7305は外径406.4mm超を明示している
    • 予防策:
      • 外径(mm)の実測/図面値を確認
      • 呼び径→外径換算表を社内標準化
  3. 間違い:容量300L境界(7309/7310)を見落とす
    • なぜ起きる:容器の用途だけ見て容量を見ない
    • 正しい考え方:7309は300L超、7310は300L以下の構造
    • 予防策:
      • 容量(L)と「機械/加熱装置の有無」をチェック項目化
  4. 間違い:ガスボンベ(7311)を一般容器(7310)扱い
    • なぜ起きる:「空容器=一般容器」と誤解
    • 正しい考え方:7311は圧縮/液化ガス用容器、7310は“ガス以外”の一般容器
    • 予防策:
      • 内容物・用途(ガス充填)・圧力設計の確認
      • 日本向けは高圧ガス関係の輸入検査要否も事前確認
  5. 間違い:ボルト/ナットを機械(第84/85類)の部品として申告
    • なぜ起きる:実際に機械の部品として使うため
    • 正しい考え方:73.07/73.12/73.15/73.17/73.18は“一般用の部分品”として扱われ、機械の「部分」扱いにならない方向に働く
    • 予防策:
      • 「一般用の部分品」該当性チェック(ボルト、管継手、チェーン等)
  6. 間違い:医療用インプラント専用設計のねじ等を7318に固定
    • なぜ起きる:形状がボルト/ねじに見える
    • 正しい考え方:HS2022の部注で、インプラント専用設計品は“一般用の部分品”から除外され得る(90.21へ)
    • 予防策:
      • 医療用途・専用設計の有無を確認(医療機器カタログ、用途説明、規格)
  7. 間違い:金網(7314)の号を線径/目合い確認なしで決める
    • なぜ起きる:品名が「メッシュ」「フェンス」だけ
    • 正しい考え方:溶接交点・線径・目合いで号分岐(例:線径3mm以上・目合い100cm²以上など)
    • 予防策:
      • 寸法表(線径、目合い)、表面処理(亜鉛めっき/樹脂被覆)を取得
  8. 間違い:構造物用に“準備された”部材を第72類の形鋼で処理
    • なぜ起きる:材料形状がH形鋼等に見える
    • 正しい考え方:7308は、構造物や「構造物用に準備された板・棒・形材等」を含む構造で、加工状態が重要
    • 予防策:
      • 穴あけ、切断、溶接、取付け用加工の有無(図面・工程)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品HSを誤ると、PSR適用も誤り、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料のHS最終製品のHSを取り違える
    • 鋼管(7304/7306)などで製造方法を誤り、PSRの「CTH/CTSH」判定がズレる
    • “一般用の部分品”(7318等)を機械部品として扱い、材料HSが崩れる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSR(品目別規則)が参照するHS版が異なります。代表例:
    • RCEP:日本外務省は、原産地証明に記載するHSコードと原産品判定基準は、2023/1/1以降 HS2022へ転置(transposed)されたPSRを基礎にする旨を案内しています。
    • CPTPP:PSR検索は**HS2012での分類(6桁)**が必要、という説明があります(輸入国の関税率表・申告コードは別版を使うケースあり)。
    • 日EU EPA:PSR附属書(Annex 3-B)はHarmonized System classification (2017) を明記しています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
      1. 協定本文/公式ガイダンスで「参照HS版」を確定
      1. 旧版→新版の対応表(転置PSR、相関表)で、旧コード側でPSRを読み、必要なら新版に写像
      1. 取引で使う書類(原産地証明、申告)ごとに「どのHS版で書くか」を統一

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(最低限)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS(協定が参照するHS版)
    • RVC計算の前提(控除法/積上げ法等、協定ごとのルール)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕様書・工程表・計算根拠・仕入書・製造記録を、協定・国内法の保存要件に沿って保管

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更(部注)第15部 注2(“一般用の部分品”)/90.21「一般用の部分品」に含まれる73.07等について、医療用インプラント専用設計品(90.21)は除外され得る旨が明確化医療用途の締結具等で、7318固定の誤りを防ぐ。医療カタログ等の証憑が重要
HS2017→HS2022(確認範囲では)変更記載なし第73類(6桁)HS2022改正の相関表(改正項目の表)では、730/731/732で始まる記載が見当たらない(=第73類の号レベル改正は少なくとも当該表には現れていない)HS6桁の大改正は相対的に少ない可能性。ただし国内細分は国別に改正され得るため注意

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料と判断プロセス:
    • **根拠1:第15部 注2(HS2022)**には、73.07等を「一般用の部分品」とする規定の中で、医療用インプラント専用設計品(90.21)を除く旨が書かれています。
    • **根拠2:第15部 注2(HS2017)**には、同じ「一般用の部分品」定義はあるものの、インプラント除外の文言が確認できません
    • 以上より、「HS2017→HS2022で、一般用の部分品定義にインプラント例外が追加された」と整理しました(部注改正)。
  • 第73類自体(見出し・号)については、改正相関表(改正点の表)上で第73類に関する記載が確認できないため、「少なくとも当該表が対象とする改正点としては大きく現れていない」と控えめに記載しています。
  • なお、HS2022には**補完改正(complementary amendments)**が設定されることがあります。運用時点の版(発効日)も確認してください。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 第73類の中でも、旧版→新版で号(6桁)の再編が起きた例があります(代表例):
    • 例:73.19(縫針・安全ピン等)
      • HS2007では 7319.20(安全ピン)、7319.30(その他のピン)に分かれていた一方、HS2022では 7319.40(安全ピンその他のピン)というまとまりで示されています。
  • ただし、「いつの改正(HS2012/2017)で統合されたか」まで厳密に追うには、各版の条文(該当版)または公式相関表での確認が必要です(ここでは“少なくともHS2007→HS2022で差がある”ことを示しています)。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「機械部品」名目でボルトを84類申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第15部 注2(一般用の部分品)の考え方を無視
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “parts for machine” だけ、部品表の提出が薄い
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延(一般論)
    • 予防策:ボルト/ナット等は「7318の可能性」を最初に立て、寸法・規格・用途証明を添付
  • 事例名:鋼管の製造方法違いで号が変更
    • 誤りの内容:継目無(7304)と溶接(7306)を取り違え
    • 起きやすい状況:調達先が複数で、ミルシート形式がバラバラ
    • 典型的な影響:税率差・統計・原産地判定のズレ(一般論)
    • 予防策:ミルシート(製造方法)を必須添付、社内で規格の標準化
  • 事例名:ガスボンベの誤分類+高圧ガス手続の見落とし
    • 誤りの内容:7311相当を7310扱い等で申告、関連手続の確認漏れ
    • 起きやすい状況:空容器・付属バルブの扱いが曖昧
    • 典型的な影響:通関保留、追加書類要求、搬出遅延(一般論)
    • 予防策:用途(ガス用)・規格・輸入検査要否を事前確認
  • 事例名:医療用インプラントねじの分類差
    • 誤りの内容:7318固定(一般用の部分品)としてしまう
    • 起きやすい状況:医療用途情報が貿易書類に出てこない
    • 典型的な影響:規制・税率・統計・原産地の連鎖ズレ(一般論)
    • 予防策:医療用途・専用設計の証憑(カタログ/承認情報)を準備し、必要なら事前教示を活用

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第73類は食品そのものではないためSPSの中心ではありませんが、用途(食品接触)や製品規格により別途要件が付くケースはあり得ます(個別確認)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 第73類自体は通常対象外。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第73類そのものが一律規制対象ではありません。用途・仕様・最終需要者により確認が必要になる場合があるため、社内の輸出管理フローに組み込みます(一般論)。
  • その他の許認可・届出(日本で実務に出やすい例)
    • 高圧ガス(7311など):日本では、高圧ガスとその容器について、輸入後の移動等に輸入検査が関係する旨が制度上示されています(詳細は陸揚地の都道府県・関係機関へ確認)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税番の事前確認:日本税関の事前教示(品目分類)
    • 高圧ガス:経済産業省(高圧ガス保安法関係)や関連機関(KHK等)、陸揚地都道府県窓口
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(材質・寸法・製造方法)、図面、写真、用途説明、カタログ
    • 規制対象が疑われる場合:適用法令に基づく証明書・検査書類

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質(鋳鉄/鋼/ステンレス等)、製造方法(鋳造/継目無/溶接)、寸法(外径・肉厚・線径・目合い)、容量(L)、用途
    • 図面、ミルシート、工程表、カタログ、写真
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第15部注(一般用の部分品、複合品、除外)を確認
    • 第73類注(鋳鉄/ワイヤ定義)を確認
    • 迷う境界(72類/83類/84-85類/94類)を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「seamless/welded」「OD」「capacity」など判定要素を入れる
    • 必要に応じて仕様書・図面を添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版を確認(RCEP/CPTPP/日EU EPA等)
    • BOM、非原産材料HS、工程、原価計算根拠を揃える
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 7311等の可能性がある場合、高圧ガス関連の輸入検査要否を事前確認
    • 不明点は税関の事前教示も活用

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 第15部 注(Base metals and articles of base metal)
    • HS2017 第15部 注(比較用)
    • HS2022 第73類(Articles of iron or steel)
    • HS2007 第73類(旧版比較用)
    • HS2022関連(補完改正の案内等)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 事前教示(品目分類)制度(Advance Classification Ruling System)
    • HS2022改正相関表(改正点の表として参照)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • RCEP:外務省ページ(HS2022転置PSRの案内)
    • RCEP:HS2022転置PSR(採択/実施時期の説明を含む資料例)
    • CPTPP:PSRはHS2012で分類して参照(輸入者向けガイド例)
    • 日EU EPA:PSR附属書(HS2017明記)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • 高圧ガス保安(輸入検査の概説)
    • 経済産業省(高圧ガス保安法の輸入検査に関する案内例)
    • 参照日:2026-02-27

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第72類:鉄鋼(Iron and steel)実務向け整理

  • =Chapter、=Heading(4桁)、=Subheading(6桁)、=Section、=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 銑鉄・スピーゲル(一次形状の塊など)=7201
    • フェロアロイ(フェロシリコン、フェロマンガン等の合金添加材)=7202
    • **直接還元鉄(DRI)**や高純度鉄(規定の形状)=7203
    • 鉄鋼スクラップ/再溶解用スクラップインゴット=7204(「スクラップ」の定義に注意)
    • 鋼材(板・コイル・棒・形材・線材・線):熱延・冷延、めっき等の加工状態に応じて7208〜7217/ステンレスは7218〜7223/その他合金鋼は7224〜7229
    • 中空ドリル棒(寸法要件あり)=7228(ただし「その他の中空棒」は7304へ)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉄鋼製品(完成品):ボルト・ナット等(7318)、継手(7307)、ワイヤロープ(7312)などは原則**第73類(鉄鋼製品)**へ
    • 鋼管・中空形材(一般の中空棒を含む)=7304等(中空ドリル棒の例外を除く)
    • 矢板・溶接形鋼(7301)やレール等の軌道材料(7302)は、第72類の「形鋼」定義から明示的に除外されやすい
    • 機械・電気機器等の物品(Section XVI 等)は、部注で第15部(=第72類を含む)から除外される場合がある
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 化学成分で「非合金鋼/ステンレス鋼/その他の合金鋼」を決める(Cr 10.5%等の閾値、合金元素の閾値)
    2. 形状・寸法・巻取りで「フラットロール製品/棒・形材/線/線材(不規則巻)/半製品」を決める(厚さ4.75mm、幅600mm扱い等)
    3. 「材料(第72類)」か「製品(第73類)」か(ねじ・継手・ワイヤロープ等の“parts of general use”を見落としやすい)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **特殊関税(不当廉売関税等)**の対象になっている場合(原産地・品目で税額影響が大きい)
    • 輸出(または技術提供)での安全保障貿易管理(リスト規制):該当時は許可要否に直結
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則):最終品HSがズレると原産性判断が崩れる(協定ごとに参照HS版も違う)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(項の文言+部注・類注で決める)
      鉄鋼は、類注(定義)が非常に強い類です。まず「鋼」「ステンレス鋼」「その他の合金鋼」などの定義(成分閾値)を類注で確定し、その上で形状・加工状態を当てはめます。
    • GIR6(号=6桁は“同じ項内”でさらに文言と注で分ける)
      例えば「めっき鋼板」の号は、“電解か否か”“波形か否か”“厚さ”など、同じ項内の枝分かれ条件が多いです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 材質(成分):ミルシート(MTC)や成分分析表が最重要。ステンレス(Cr 10.5%以上など)や合金鋼判定は、通称名では確定できません。
    • 状態(加工度):「熱間圧延のみ/冷間圧延済み/めっき・塗装/クラッド」など、表面処理の有無が号を変えます。
    • 形状・寸法:「幅600mm」「厚さ4.75mm」「不規則巻か否か」「中空か否か」で章・類をまたぐことがあります。
    • 重要補足:第72類の注1(d)〜(f)(鋼、ステンレス鋼、その他の合金鋼の定義)は、この表全体に適用される旨が明記されています。つまり、第73類など他の章で「鋼/鋳鉄」を区別する際にも影響します。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:「材料」か「製品」か
    • ねじ・継手・ワイヤロープ等の“parts of general use”に該当しないか(該当なら多くは第73類へ)。
    • 鋼管・中空形材なら原則第73類(中空ドリル棒の例外を除く)。
  • Step2:第72類内での大区分(原料→鋼材)
    • 原料:7201(銑鉄等)/7202(フェロアロイ)/7203(直接還元鉄)/7204(スクラップ)/7205(粒・粉)
    • 鋼材:
      • 鉄・非合金鋼:7206〜7217
      • ステンレス鋼:7218〜7223
      • その他合金鋼:7224〜7229
  • Step3:成分で“鋼種”を確定
    • ステンレス鋼(C≤1.2%、Cr≥10.5%)か。
    • その他合金鋼(Mn≥1.65% 等、列挙元素のいずれかが閾値以上)か。
    • それ以外は(多くの場合)非合金鋼へ。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第72類(材料)⇔第73類(製品)
      「板・棒」なのか「管・継手・ねじ・構造物」なのか、加工度・用途・形状で変わります。特に**中空品(ドリル棒の例外)**と、**7301/7302(矢板・レール等)**は典型的な境界です。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第72類は項が多いですが、実務で境界を見落とすと大きく外すため、ここでは全列挙します(HS6桁ではなく4桁の見出し一覧)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7201銑鉄・スピーゲル(一次形状)銑鉄塊、スピーゲルP含有量や「合金銑鉄」定義で号が分かれることあり
7202フェロアロイフェロシリコン、フェロマンガン「二成分/三成分系」扱い等のルールあり
7203直接還元鉄等DRI(スポンジ鉄)7206等と混同注意
7204くず・スクラップ等鉄スクラップ、再溶解用スクラップインゴット「スクラップ」定義(使用不能)確認必須
7205粒・粉鉄粉、鋼粉、粒状品粉末(1mmふるい90%通過)等の定義あり
7206鉄・非合金鋼のインゴット等(7203除く)インゴット7203除外、鋼の定義(C≤2%等)前提
7207鉄・非合金鋼の半製品スラブ、ブルーム、ビレット(巻いてない)「半製品」定義、巻取り除外
7208幅≥600mm 熱延(非被覆)熱延コイル、熱延板フラットロール定義、加工状態に注意
7209幅≥600mm 冷延(非被覆)冷延コイル、冷延板冷間圧延の位置づけ
7210幅≥600mm 被覆(めっき等)亜鉛めっき鋼板、ブリキ電解めっき/その他、波形等で号分岐
7211幅<600mm 熱延等(非被覆)スリットコイル600mm境界、フラットロール定義
7212幅<600mm 被覆亜鉛めっき帯鋼被覆種別・電解か否か
7213鉄・非合金鋼の線材(不規則巻の棒)ワイヤロッド「棒(不規則巻)」定義が鍵
7214鉄・非合金鋼の棒(熱間加工中心)棒鋼(熱間圧延・鍛造等)7213/7215との境界、ねじり含む
7215鉄・非合金鋼のその他の棒研磨棒、さらに加工した棒7214より加工が進んだもの等
7216鉄・非合金鋼の形鋼H形鋼、山形鋼7301/7302は除外
7217鉄・非合金鋼の線鉄線、鋼線「線」定義(冷間成形・巻取り)
7218ステンレス鋼の一次形状・半製品ステンレススラブ等ステンレス定義(Cr≥10.5%等)前提
7219ステンレス 幅≥600mm フラットロールSUS板/コイル(600mm以上)厚さ4.75mm境界が号で出る
7220ステンレス 幅<600mm フラットロールSUS帯鋼600mm境界、加工状態で号分岐
7221ステンレス線材(不規則巻)SUSワイヤロッド7213と同様に“線材”の概念
7222ステンレスの棒・形鋼SUS棒、SUS形鋼熱間/冷間加工で号分岐
7223ステンレスの線SUS線7217と同様「線」概念
7224その他合金鋼の一次形状・半製品合金鋼スラブ等“その他合金鋼”の成分判定が先
7225その他合金鋼 幅≥600mm フラットロール合金鋼板(600mm以上)けい素電気鋼/亜鉛めっき等で号分岐
7226その他合金鋼 幅<600mm フラットロール合金鋼帯(600mm未満)高速度鋼、けい素電気鋼など
7227その他合金鋼の線材(不規則巻)合金ワイヤロッド高速度鋼/シリコマンガン鋼等の号
7228その他合金鋼の棒・形鋼/中空ドリル棒合金棒、ドリル用中空棒中空ドリル棒の寸法要件、他の中空棒は7304
7229その他合金鋼の線合金鋼線シリコマンガン鋼の号等

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効く順)
    1. 成分(鋼種判定)
      • 鋼:原則C≤2%(例外としてクロム鋼はC>2%含みうる旨の注記)
      • ステンレス鋼:C≤1.2%、Cr≥10.5%
      • その他合金鋼:Al 0.3%、B 0.0008%、Cr 0.3%、Co 0.3%、Cu 0.4%、Pb 0.4%、Mn 1.65%、Mo 0.08%、Ni 0.3%、Nb 0.06%、Si 0.6%、Ti 0.05%、W 0.3%、V 0.1%、Zr 0.05%、その他元素(S,P,C,N除く)0.1% のいずれか以上(ステンレス定義に当たらないもの)
      • 号注の定義が効く鋼種例:
        • 合金銑鉄(Cr 0.2%超等)
        • 非合金快削鋼(S≥0.08%、Pb≥0.1%等)
        • けい素電気鋼(Si 0.6〜6%、C≤0.08%等)
        • 高速度鋼(Mo/W/Vのうち二以上、合計≥7%、C≥0.6%、Cr 3〜6%等)
        • シリコマンガン鋼(C≤0.7%、Mn 0.5〜1.9%、Si 0.6〜2.3%等)
    2. 形状・寸法(フラットロール/棒/形鋼/線/半製品)
      • フラットロール製品の定義:
        • 「巻いたもの」または
        • 厚さ<4.75mmで幅≥厚さの10倍、または
        • 厚さ≥4.75mmで幅>150mmかつ幅≥厚さの2倍
          などの要件(さらに、穴あけ・波形・研磨等でも“他の項の特性”を持たなければ含みうる)
      • **長方形以外の形状でも、他の項の特性がなければ“幅600mm以上扱い”**となる規定があり、7208/7209/7210/7219/7225等の「幅≥600mm」系へ寄ることがあります。
      • 「棒(不規則巻)」と「線」の定義が別:
        • 線材(7213/7221/7227等):熱間圧延の不規則巻の棒
        • 線(7217/7223/7229等):冷間成形で巻いたもの(フラットロール該当除外)
    3. 加工状態(熱間/冷間/被覆・めっき)
      • 例:7210/7212で「電解亜鉛めっき」か「それ以外の亜鉛めっき」か、さらに波形か等で分岐。
    4. スクラップ・粉末等の定義
      • スクラップ:金属くず全般+破損等で“そのままでは使用不能”な金属製品
      • 粉末:1mmふるいに重量90%以上通過
      • 粒:1mmふるい90%未満通過、かつ5mmふるい90%以上通過
    5. 中空品(例外)
      • 中空ドリル棒:外側最大寸法>15mm〜52mm以下、内側最大寸法≤外側の1/2(形状不問)。それ以外の鉄鋼中空棒は7304へ。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7204.41 vs 7204.49(スクラップの形態)
      • どこで分かれるか:
        • 7204.41:切粉・削りくず・切断片等(turnings, shavings, chips…)
        • 7204.49:その他の鉄鋼スクラップ
      • 判断に必要な情報:発生形態(機械加工由来か、解体材か)、写真、梱包状態、スクラップ仕様書
      • 典型的な誤り:解体スクラップを「切粉系」として申告(または逆)
    2. 7210.30 vs 7210.41/7210.49(亜鉛めっき方法/波形)
      • どこで分かれるか:電解亜鉛めっき(electrolytically)か、その他の亜鉛めっきか。その他の場合は波形(corrugated)かどうか。
      • 判断に必要な情報:めっき仕様(電解/溶融等)、表面処理工程図、製品規格、写真
      • 典型的な誤り:「電解」を単に“めっきしている”と読み替えて誤分類
    3. 7219/7220の厚さ4.75mm境界(ステンレスのフラットロール)
      • どこで分かれるか:号の枝で“厚さ4.75mm以上/未満”が出る(項内で細分化)。
      • 判断に必要な情報:実測値(公差含む)、規格(JIS等)、ミルシート
      • 典型的な誤り:呼称厚さのみで判断して境界を跨ぐ
    4. 7226.11 vs 7226.19(けい素電気鋼:方向性の有無)
      • どこで分かれるか:けい素電気鋼のうち、grain-oriented(方向性)か否か。
      • 判断に必要な情報:電磁鋼板の仕様(方向性、磁気特性)、成分(Si、C等)
      • 典型的な誤り:「けい素が入っている=方向性」と早合点
    5. 7228.80(中空ドリル棒) vs 7304(その他中空棒)
      • どこで分かれるか:中空ドリル棒の寸法要件に当たるか。
      • 判断に必要な情報:外径・内径(最大寸法)、用途(ドリル用)、図面
      • 典型的な誤り:「中空=管」として無条件に7304へ(または逆)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部は「卑金属とその製品」ですが、部注で機械(Section XVI)や完成車両等(Section XVII)などは除外されます。
    • “parts of general use(一般用の部分品)”の定義があり、該当品(例:7307、7312、7315、7317、7318等)は、他の章の“部品”として扱わないルールがあります。
    • 混合金属の複合品は「重量で主となる卑金属」に分類し、鉄と鋼(鋼種の違い含む)は同一金属扱いです。
    • 「スクラップ」「粉末」の定義が部注で与えられます。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:鉄鋼製のボルトは、機械の部品に見えても“parts of general use”に該当し、原則7318で扱う方向になります(第72類ではない)。
    • 例:鉄スクラップは「中古鉄材」との線引きが重要で、“そのまま使用できる”状態だとスクラップの定義から外れる可能性があります(結果として7204以外の可能性)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • ねじ・継手・ワイヤロープ等 → 第73類の該当項(parts of general use)へ
    • 組立て済み軌道(assembled railway track)等 → Section XVII(例:8608)へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第72類は「鉄鋼の材料」中心で、類注で材質(鋼種)・形状(フラットロール、棒、線等)・粒/粉が細かく定義されています。
    • 注1(d)〜(f)(鋼、ステンレス鋼、その他の合金鋼の定義)はこの表全体に適用されます。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 銑鉄・スピーゲル・フェロアロイ(各元素の上限/下限)
    • 鋼/ステンレス鋼/その他の合金鋼(成分閾値)
    • 粒・半製品・フラットロール製品・棒・形鋼・線・中空ドリル棒(寸法・状態)
    • 号注:合金銑鉄、非合金快削鋼、けい素電気鋼、高速度鋼、シリコマンガン鋼等
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 形鋼の定義に関し、第72類には7301(矢板等)・7302(軌道材料)を含まない旨が明記されています。
    • 中空ドリル棒以外の鉄鋼中空棒は7304に属する旨が明記されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「ステンレス鋼」か否かで、項(4桁)が丸ごと変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):C%、Cr%(少なくとも)、合金元素の有無
    • 現場で集める証憑:ミルシート(MTC)、成分分析表、規格書(JIS等)、製品カタログ
    • 誤分類の典型:品名に「SUS」「ステン」等が無いから非合金鋼と扱う/表面処理(めっき)を“ステンレス”と誤認
    • 根拠:ステンレス鋼の定義(C≤1.2%、Cr≥10.5%)
  • 影響ポイント2:「その他の合金鋼」判定(合金元素の閾値)で、非合金鋼(72.06〜72.17)⇔合金鋼(72.24〜72.29)が分かれる
    • 何を見れば判断できるか:Mn≥1.65%、Si≥0.6%など、列挙元素のいずれかが閾値以上か
    • 現場で集める証憑:MTC(成分)、鋼種表(材質規格)、顧客仕様書
    • 誤分類の典型:MnやSiの多い鋼(例:電磁鋼板)を非合金側に入れてしまう
    • 根拠:その他合金鋼の定義(閾値一覧)
  • 影響ポイント3:フラットロール製品の定義(厚さ4.75mm、幅比、幅600mm扱い)で“板類”の項が分かれる
    • 何を見れば判断できるか:厚さ、幅、形状(長方形か否か)、巻取りの有無
    • 現場で集める証憑:図面、実測記録、製品仕様書、梱包写真(コイルか否か)
    • 誤分類の典型:異形(長方形以外)を幅<600mm扱いしてしまい、実は“幅600mm以上扱い”で7208等に寄るケース
    • 根拠:フラットロール製品定義・非長方形の幅600mm扱い規定
  • 影響ポイント4:スクラップ(7204)か否かは、部注の定義で決まる
    • 何を見れば判断できるか:そのまま使用できるか(破損・切断・摩耗等で“使用不能”か)、取引実態(原料用途か)
    • 現場で集める証憑:写真、検収基準、スクラップ規格(例:等級表)、用途説明
    • 誤分類の典型:中古材(再使用可能)をスクラップとして申告
    • 根拠:第15部注8(スクラップ定義)
  • 影響ポイント5:中空ドリル棒(7228.80)の例外で、72⇔73が入れ替わる
    • 何を見れば判断できるか:外側最大寸法(>15〜52mm)、内側最大寸法(≤外側の1/2)、用途(ドリル用)
    • 現場で集める証憑:図面、仕様書、用途説明、実測データ
    • 誤分類の典型:「中空=管」として無条件に7304へ
    • 根拠:中空ドリル棒の定義・その他中空棒は7304

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:亜鉛めっき鋼板を“非被覆の鋼板(7208/7209等)”として申告
    • なぜ起きる:品名が「鋼板」だけで、めっき情報がインボイス等に出ない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):被覆・めっきは7210/7212側で扱うのが基本で、同項内で電解/その他等の分岐がある
    • 予防策:表面処理(めっき種、方法、塗装)を仕様書で確認/工程表の入手
  2. 間違い:「SUS」表示がないからステンレスではない、と判断
    • なぜ起きる:取引名・商品名に引きずられる
    • 正しい考え方:ステンレスは成分定義(C≤1.2%、Cr≥10.5%)で判断
    • 予防策:MTCでCrとCを必ず確認/社内質問例「Cr何%ですか?」「C何%ですか?」
  3. 間違い:合金鋼を非合金鋼(72.06〜72.17)側に入れる
    • なぜ起きる:MnやSiなど“見落としやすい合金元素”が閾値を超えている
    • 正しい考え方:その他合金鋼の閾値(Mn 1.65%、Si 0.6%等)に一つでも当たれば合金鋼側
    • 予防策:成分表を“閾値表と突合”するチェックシート化(BOM/成分表に閾値欄を作る)
  4. 間違い:線材(7213等)と線(7217等)を混同
    • なぜ起きる:「ワイヤ」「ロッド」など呼称が混在
    • 正しい考え方:線材は“熱間圧延の不規則巻の棒”、線は“冷間成形で巻いたもの”という定義差を押さえる
    • 予防策:製造工程(熱間/冷間)と形状(不規則巻か、コイルか)を必ず確認
  5. 間違い:幅600mm境界を実測せず、呼称で判断
    • なぜ起きる:スリット品・異形品で実幅が変動
    • 正しい考え方:フラットロール定義に基づき、非長方形でも“幅600mm以上扱い”となる場合がある
    • 予防策:図面・実測値(公差含む)提出を社内ルール化
  6. 間違い:スクラップ(7204)に中古材(再使用可能)を入れる
    • なぜ起きる:取引上「スクラップ」と呼ぶ慣行
    • 正しい考え方:部注の“使用不能”要件がある
    • 予防策:写真・用途説明・検収基準を添付し、“使用不能”根拠を残す
  7. 間違い:中空ドリル棒(7228.80)を鋼管(7304)として申告(または逆)
    • なぜ起きる:「中空=管」という短絡
    • 正しい考え方:ドリル棒は寸法要件があり、それ以外の中空棒は7304へ飛ぶ
    • 予防策:外径・内径(最大寸法)の図面を必須化/用途(ドリル用)を明記
  8. 間違い:ボルト・ナット等を“棒鋼”として第72類で申告
    • なぜ起きる:素材(鋼)に引っ張られ、製品形態を見落とす
    • 正しい考え方:parts of general use の規定により、第73類で扱う方向
    • 予防策:形状(ねじ切り・頭部形状)写真+製品規格(ISO/JIS)を必ず確認
  9. 間違い:FTA/EPAで協定の参照HS版を見ず、HS2022でそのままPSR判断
    • なぜ起きる:社内のHSがHS2022で統一されており、協定側のHS版を忘れる
    • 正しい考え方:協定ごとに参照HS版が異なる(例:日EU・日英はHS2017、RCEPは2023年以降HS2022等)
    • 予防策:PSR確認シートに「協定参照HS版」欄を追加し、旧↔新の突合を必須化

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること
    • 最終製品のHS(通常6桁)でPSRが決まるため、ここがズレると原産性判断(CTC/RVC/加工工程条件)が根本から崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 材料(鉄鉱石、フェロアロイ、鋼材)と最終品(例:鉄鋼製品=第73類)でHSが変わるのに、BOM上のHS付番が曖昧
    • “合金鋼”か否かの判定ミスで、PSRの番号レンジが変わる(例:72.10系と72.25系のように章内で規則が分かれるケースもあり得る)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 日本税関の原産地規則マニュアルでは、発効中EPAがHS2002/2007/2012/2017/2022のいずれを参照しているかが整理されています(例:RCEPは2023-01-01以降HS2022、〜2022-12-31はHS2012)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定の参照HS版に合わせてPSRを確認し、社内HS(HS2022)とは相関表/トランスポーズ資料で突合してから、最終判断を組み立てるのが安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要なデータ(例)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS(少なくとも6桁)、RVC計算前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕入証憑(インボイス)、製造工程資料、MTC(成分証明)、製造指図書、原産地証明(第三者/自己申告)等を、協定の要求に沿って保存
    • 鉄鋼は材料が多段階(鉱石→原料→鋼材→製品)になりやすいので、工程と材料HSの紐付けを早めに行うのが実務上重要です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022(改正相関表で確認できる範囲では)大きな新設/削除/分割/統合は見当たらず第72類(7201〜7229)日税関掲載のHS2022-HS2017相関表(改正対象の対応表)内で「720/721/722」系コードが検出できず、改正対象として掲示されていないことを確認HS6桁の体系は概ね継続と考えられるため、実務は“定義(類注)・形状/成分の判定”が中心。※国内細分や協定税率は別途改正あり得る

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料と判断:
    • 日本税関掲載の**HS2022-HS2017相関表(PDF)**は、HS改正で変更が生じた品目の“旧→新対応”を示す資料です。
    • そのPDFテキスト検索(720/721/722)で該当が見つからないため、第72類の6桁レベルの大きな再編(新設・分割・統合等)は、少なくとも相関表に掲示される形では確認できませんでした。
    • ただし、これは「HS6桁の体系変更がない可能性が高い」ことを示すもので、国内コード(日本の9桁細分)や関税率(EPA税率等)の改正、解釈通達の改正まで否定するものではありません。重要取引では、最新の実行関税率表・税関通達も併せて確認してください。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
    (注:ここでは「相関表に掲載されるようなコード再編」を対象にしています。)
版の変更第72類(7201〜7229)に関する主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例備考
HS2007→HS2012相関表上、720/721/722系の改正対象としての掲載は確認できず(対応不要の可能性が高い)相関表の該当検索結果に基づく
HS2012→HS2017同上(対応不要の可能性が高い)相関表の該当検索結果に基づく
HS2017→HS2022同上(対応不要の可能性が高い)HS2022-HS2017相関表の該当検索結果に基づく

※実務上は、HS6桁が変わらなくても、**国内コード(9桁)**やEPA税率表(協定参照HS版)で影響が出ることがあります。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「ステンレスではないのにSUS扱い」
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):ステンレス鋼の定義(Cr≥10.5%、C≤1.2%)の未確認
    • 起きやすい状況:商流で「SUS相当」と呼ぶが、実際は表面処理鋼板・低Cr材
    • 典型的な影響:修正申告、税率や協定適用の見直し、追加資料要求
    • 予防策:MTC必須、Cr/Cを“閾値チェック”する社内工程
  • 事例名(短く):「幅600mm扱いの見落とし(異形フラットロール)」
    • 誤りの内容:フラットロールの“非長方形=幅600mm以上扱い”規定の見落とし
    • 起きやすい状況:テーパー・異形カット材、穴あけ材
    • 典型的な影響:項の取り違え(7208/7211など)、統計・協定税率の齟齬
    • 予防策:形状図面+「他の項の特性の有無」を判定メモ化
  • 事例名(短く):「スクラップ(7204)と中古材の混同」
    • 誤りの内容:部注のスクラップ定義(使用不能)を満たさないのに7204で申告
    • 起きやすい状況:「スクラップ」として売買されるが、実は再使用可能材
    • 典型的な影響:分類否認、追加説明要求、検査強化・遅延
    • 予防策:写真、検収基準、用途(溶解原料)を事前に整備
  • 事例名(短く):「中空ドリル棒と鋼管(7304)の取り違え」
    • 誤りの内容:中空ドリル棒の寸法要件を確認せず、72⇔73を誤る
    • 起きやすい状況:中空棒=鋼管、と社内で一律処理
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、通関遅延
    • 予防策:外径・内径の図面提出を必須化、用途明記

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 鉄鋼そのものは一般に食品・動植物検疫の中心対象ではありませんが、**梱包材(木材)付着物(油・汚れ)**等が別観点で問題になることがあります(ここでは一般論として注意喚起)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 通常は該当しません。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 特殊鋼・合金・粉末等は、用途・性能・仕様によりリスト規制の対象となる可能性があります。
    • METIは、該非判定で参照する「貨物のマトリクス表」等を案内しており、該当時は許可が必要としています。
    • また、リスト規制品は原則毎年改正されるため“最新法令で分類”する注意喚起があります。
  • その他の許認可・届出
    • 特殊関税(不当廉売関税等):対象品目・原産地の組合せで追加課税があり得ます。MOFは制度概要(AD duty)を説明しており、税関は課税中品目リストを公開しています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(特殊関税・課税中品目、分類相談)
    • METI(安全保障貿易管理:該非判定・許可)
    • MOF(不当廉売関税制度の概要)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(寸法・形状)、MTC(成分)、工程図(熱間/冷間/めっき等)、用途説明
    • 規制が疑わしい場合:該非判定票、性能データ、エンドユーザー/用途確認書

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質(鋼種・成分%)、形状(板/棒/線/中空)、寸法(厚さ・幅・外径/内径)、巻取りの有無
    • 加工状態(熱間/冷間、めっき・塗装、クラッド、穴あけ、波形)
    • 用途(ドリル棒用途など、例外要件に関係するもの)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • ステンレス/合金鋼の閾値チェック(Cr 10.5%、Mn 1.65%等)
    • フラットロール定義(4.75mm、幅比、非長方形の600mm扱い)
    • 中空ドリル棒の寸法要件と、その他中空棒(7304)への飛び
    • parts of general use(第73類へ)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「鋼種」「加工状態」「寸法」を入れる(例:electro-galvanized / hot-dip galvanized 等)
    • 写真・MTC・仕様書を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版を確認し、HS2022とのズレを相関資料で突合
    • BOMに“非原産材料HS6桁”を付番し、工程と紐付ける
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 特殊関税(不当廉売等)対象か:税関の課税中リストで確認
    • 安全保障貿易管理:該非判定が必要か、METIガイダンスで確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Section XV Notes(部注)(参照日:2026-02-26)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 72 Iron and steel(参照日:2026-02-26)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 73 Articles of iron or steel(参照日:2026-02-26)
  • 日本(税関・公的機関)のガイド
    • 税関:第72類 類注(実行関税率表:条文)PDF(参照日:2026-02-26)
    • 税関:関税率表の解釈に関する通則(GIR)PDF(参照日:2026-02-26)
    • 税関:関税率表解説・分類例規(ページ案内)(参照日:2026-02-26)
    • 税関:EPA 原産地規則マニュアル(協定参照HS版の整理を含む)PDF(参照日:2026-02-26)
    • 税関:RCEP 原産地規則 Implementing Guidelines(IG2:2023-01-01実施の改訂)PDF(参照日:2026-02-26)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 上記「EPA 原産地規則マニュアル」および各協定の公式資料に基づき、協定ごとの参照HS版を確認(参照日:2026-02-26)
  • 規制・コンプライアンス
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(Export Control/リスト規制)案内(参照日:2026-02-26)
    • 経済産業省:Security Export Control guidance(英語PDF、年次改正の注意喚起を含む)(参照日:2026-02-26)
    • 財務省:Anti-dumping Duty(制度概要:英語)(参照日:2026-02-26)
    • 税関:特殊関税制度/課税中の貨物・税率(案内)(参照日:2026-02-26)
  • 相関表(HS改正確認)
    • 税関:HS2022-HS2017 相関表PDF(参照日:2026-02-26)
    • 税関:HS2017-HS2012 相関表PDF(参照日:2026-02-26)
    • 税関:HS2012-HS2007 相関表PDF(参照日:2026-02-26)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • ①製品写真(全体・断面・表面)、②図面(寸法・公差)、③成分証明(MTC/分析表)、④製造工程(熱間/冷間、めっき等)、⑤用途説明、⑥比較対象(社内で迷っている候補コード)
    • 第72類は「定義(閾値)」が多いので、成分・寸法・加工状態が揃っていないと結論が出ません。特にステンレス/合金鋼判定(Cr、Mn、Si等)と、フラットロール判定(4.75mm・幅比・600mm扱い)は必須です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。