日本の通関実務が変わる日。税関が推奨する「HSコード分類根拠書」とは何か

2026年1月26日、日本の貿易実務において静かですが重要な変化がありました。財務省関税局は、輸入申告に際し「HSコード分類根拠書(通称:ドシエ)」の任意提出を一層積極的に推奨する方針を示しました。

これまでHSコードの決定過程は企業内部の判断に委ねられ、税関には「結論としてのコード」だけが申告されるのが一般的でした。ところが今後は、そのコードを選定した論理的根拠の提示が求められる方向に動いています。これは形式的な申告から、説明責任を伴う判断型の通関へと移行する兆しです。


数字だけでなく「ロジック」を問われる時代へ

税関が推奨するのは、単なるHSコード入力ではなく、それを選定した過程と法的根拠をまとめた文書の添付です。典型的なドシエには以下の内容が含まれます。

  • 製品の客観的な仕様(材質、機能、用途)
  • 検討したHSコードの候補と除外理由
  • 適用した法的根拠(関税率表の解釈に関する通則、類注・部注)
  • 参照した過去の事前教示やWCO分類意見など

税関がこのような詳細情報を求める背景には、製品の多様化・AI技術の進展があります。複雑化する貨物を短時間で正確に分類するためには、輸入者自身による「論理の見える化」が不可欠になっています。つまり、税関と企業が同じ視点で審査の起点を共有する仕組みづくりが進んでいるのです。


企業にとってのメリット:防御から戦略へ

一見すると事務負担が増える施策に見えますが、実は企業に大きな利点があります。

  1. 通関の迅速化。
    ドシエによって判断の根拠が明確になれば、審査時に疑義が生じる可能性が下がり、貨物滞留リスクを減らせます。
  2. 事後調査リスクの軽減。
    万一HSコードが誤っていたとしても、合理的な根拠を提出していれば、企業は「正当な注意義務(Reasonable Care)」を果たしたと評価され得ます。これにより、重加算税などの厳罰を回避し、修正申告で済む場合が増えるでしょう。

このようにドシエは、単なる説明書ではなく企業を守る保険であり、同時に通関精度を高める経営戦略ツールでもあります。


「なんとなく分類」からの脱却

これまで多くの現場では、「前回と同じ」「仕入先からそう言われた」といった慣習的判断に頼る傾向がありました。税関の今回の方針転換は、そうした「前例主義」からの脱却を意味します。今後の優秀な貿易担当者には、合理的根拠を文書化できる力が不可欠になります。HSコードの知識だけでなく、「なぜそのコードなのか」を説明できる論理構成力が問われる時代に入りました。


AIとテクノロジーがカギを握る

すべての申告で人手による詳細なドシエ作成を行うのは非現実的です。そこで注目されるのがAIや専門システムの活用です。
商品仕様を入力するだけで、関連通則・類注を自動抽出し、分類根拠を論理的に組み立てるAIツールも登場しています。企業はこうした技術を導入することで、人の判断を強化しつつ業務負担を抑え、コンプライアンスの精度を高めることが可能になります。


まとめ

2026年1月26日は、日本の通関実務が「結果主義」から「プロセス重視」へと舵を切った節目となるかもしれません。
税関のメッセージは明快です。――「あなたの会社の論理を示してください」。

この要求に根拠あるドシエで応えられる企業こそが、通関トラブルの少ない持続的な貿易を実現し、ホワイトな物流体制を築くことができるでしょう。

変化を恐れず、根拠を武器に。新しい通関の時代が、すでに始まっています。

韓国:「品目分類変更告示」(2026年1月22日)の実務ポイント

2026年1月22日、韓国関税庁(Korea Customs Service)は、2025年12月16日に開催された「第8回 品目分類委員会」の審議結果(9件)を反映した「輸出入物品等に対する品目分類変更告示」の改正内容を官報に掲載したと公表しました。
この種の告示は、韓国向け輸出入に関わる企業にとって、関税率だけでなく、FTA適用や申告実務(品目マスタ、通関指示、事後修正の要否)に直接影響します。


1. 今回の改正で何が起きたか

今回のポイントは、韓国での品目分類の取り扱いについて、品目分類委員会の決定を通じて解釈が明確化され、その内容が告示改正という形で公式ルールに組み込まれた、という位置付けです。
同じ製品であっても、分類の変更や整理が行われると、次のような要素が連鎖的に変わり得ます。

  • 適用関税率(基本税率、WTO譲許税率、協定税率など)
  • FTAの原産地規則における判定起点(HSベースのCTC基準など)
  • 輸入側での審査観点(補足資料要求、差し止め、事後調査リスクなど)

公表された9件のうち、実務的に象徴性が高い事例として、冷凍水産品と情報機器関連品の分類が説明されています(以下では代表的な論点として整理)。


2. 注目すべき分類事例

事例A:冷凍「チュクミ(주꾸미)」の扱い

争点は、「国際的な学名(属名)の変更が、HS上の分類変更を当然に意味するのか」という点です。
HS2017・HS2022体系では、タコ類は一般に「0307.52 Octopus (Octopus spp.), frozen」に分類されており、コードの構造自体は属の学名変更に直接連動しない形で設計されています。

韓国税関は、学名の変更は生物分類学上の名称変更にとどまり、HS体系の構造やコードの範囲が自動的に変わるものではない、という考え方に立ち、タコ類としての取扱いを維持する判断を示しています(具体の10桁分類「0307.52-3000」自体は韓国の細分コードであり、国際HSでは6桁までである点に注意が必要です)。
実務的には、韓国・ASEANはじめ各FTAで、同じHSコードに属するか否かにより関税率(0%か、そうでないか)が分かれる場合があり、この判断は輸入者・輸出者双方にとって影響が大きいテーマです。

また、韓国関税庁はこのような学名変更とHS分類の関係について、世界税関機構(WCO)の場で整理を進める姿勢を示しており、将来的な国際的ガイダンス整備につながる可能性があります。

事例B:CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)の扱い

CPU冷却用の装置(ラジエーター、ポンプ、チューブ、冷却ヘッド、ファン等で構成された液冷クーラーなど)について、「単なるファン(HS第84.14項)」や「一般的な冷却機器(HS第84.19項)」としてではなく、「自動データ処理機器用の部品(HS第84.73項)」として整理した点が重要です。

理由としては、次のような事情が総合的に評価されたと説明されています。

  • 複数の構成要素が一体となってCPU冷却という単一の機能を果たしている点(複合品としての一体性)
  • コンピュータ(自動データ処理機器)に専用、または主として使用される点(用途の専用性)

このような判断は、WCO解釈通則の「機能の一体性」や「特定用途向け部品」の考え方とも整合的であり、韓国としてコンピュータ関連部品の分類を整理していく流れの一端と位置付けられます。


2事例をビジネス視点で整理

実務上の示唆を、争点・結論・企業側の着眼点という切り口で整理すると、次のようになります(以下の表のコメント部分は筆者による実務的解釈です)。

対象争点韓国側の結論・方向性(要約)企業への示唆(実務的な解釈)
冷凍チュクミ(タコ類)学名(属名)の変更がHS分類を動かすか学名の変更それ自体ではHSの分類範囲は自動的には変わらない。タコ類としての分類を維持する方向。商品説明を生物分類上の名称だけに頼り過ぎず、実際の形態・用途・通関上の既存取扱いとの整合を確認する。FTA税率差の有無も含め、韓国側の分類と社内マスタを合わせる必要。
CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)ファン(8414)か、冷却機器(8419)か、それともコンピュータ部品(8473)か複数部材が一体となってCPU冷却という単一機能を果たし、かつコンピュータに専用または主として使用されることから、コンピュータ部品側(8473)に整理。構成部材の「寄せ集め説明」ではなく、用途の専用性と機能の統合性を文書で示す。写真・構成図・取付先機器等を整理し、「一般用ファン」や「汎用冷却装置」とは異なることを根拠立てる。

3. 日本企業が取るべき実務アクション

ここからは、日本企業が自社の業務フローにどう落とし込むかという視点で整理します。

アクション1:該当可能性のある品目の棚卸し

  • 韓国向け出荷品のうち、食品(水産物)、PC部材、冷却・電装周辺品など、今回の事例に類似性が高い分野を優先的に抽出する。
  • インボイス記載HS(6桁)と、韓国側申告コード(10桁)の間でズレが生じやすい品目(生物名ベースの品目、複合機能品など)を重点的に確認する。

アクション2:品目マスタと通関指示書の更新

  • 社内の輸出用HSマスタ(6桁・必要に応じて9桁)と、韓国輸入者側で使用される10桁コード体系を、定期的に照合しながら管理する。
  • 過去に韓国向け輸出実績がある品目については、分類根拠を1枚の説明資料(根拠シート)に整理しておくと有効です(例:
    製品概要、構成要素、主要用途、写真・図面、カタログ抜粋、取付先機器、比較候補コード(なぜ他の号ではないか)など)。

アクション3:不確実な品目は事前照会ルートを活用

韓国税関は、品目分類の不確実性を減らすための事前審査制度を運用しており、UNIPASS(韓国の通関電子申告システム)上で申請が可能と案内しています。
また、2026年1月2日施行の制度改正では、一定条件下で不足税額に対する加算税(不誠実申告加算税)の減免が認められるケースにも言及されており、輸入後に修正が生じ得る業種ほど、社内での修正手順と期限管理のルールをあらかじめ設計しておく価値があります。


4. 実務上の意味合いと今後の活用

今回の「品目分類変更告示(2026年1月22日)」は、単なる個別事例の紹介にとどまらず、韓国が品目分類の予測可能性を高めつつ、WCOとの整合も意識して運用をアップデートしているシグナルといえます。
日本企業としては、影響が出やすい品目から優先度を付け、韓国側の分類ロジックに沿った形で根拠書類の整備と品目マスタ更新を進めることが、最も効率的な対応策となります。

HS 2028「最終合意」とデジタル製品・サービス区分が、実務に突きつけるもの


2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS 2028改正(Harmonized System 2028)の改正パッケージが受け入れられたことを公表しました。発効は2028年1月1日。つまり、各国が国内制度や通関システム、統計、企業のマスタデータを切り替えるための実装期間が、いま明確にスタートした形です。 (世界関税機関)

一方で、企業の現場感として最も悩ましいのが、デジタル製品とデジタルサービスの区分です。モノとして国境を越えるのか、データとして越えるのか。単体販売なのか、ハードとサブスクが束ねられているのか。こうした論点は、HSという制度の外側にまで波及します。

この記事では、HS 2028の「最終合意」が何を意味し、なぜいま「デジタル製品・サービスの区分」が企業課題として深刻化するのかを、ビジネス実務の観点で掘り下げます。


1. まず押さえる:HS 2028で何が「最終合意」したのか

HS 2028は、第7次見直しサイクルの成果です。このサイクルは通常より長く、2019年7月から2025年6月までの6年間に延長されました。コロナ禍の影響で議論を完結させるために例外的に延長された、という位置づけです。 (世界関税機関)

その上で、2025年3月(10日から21日)に開催されたHS委員会(HSC)第75回会合で、HS 2028を構成する改正勧告(Article 16 Recommendation)が暫定採択され、「すべての交渉が完了した」とWCOが明記しています。ここで言う「最終合意」は、技術交渉としての決着、という意味合いが強い。 (世界関税機関)

そして2026年1月、WCOはHS 2028改正が受け入れられたと発表しました。改正は299セット、HS 2022比で見出し(headings)数や小見出し(subheadings)数が増減し、新設や削除も行われています。発効は2028年1月1日で、残り2年の実装期間に入った、という説明も併記されています。 (世界関税機関)

この「2年」は、制度側だけでなく企業側にも重い意味を持ちます。HSは関税率だけの話ではなく、輸入規制、統計、FTA原産地判定の入口、社内の品目マスタのキーになっていることが多いからです。


2. HS 2028の改正思想は「政策目的を帯びた可視化」

HS 2028の特徴は、貿易実務の利便性だけでなく、政策目的に直結する可視化を強めている点です。WCOは、改正が「世界的な優先課題と貿易の変化」に適応するものだと位置づけ、特に公衆衛生と環境を強く打ち出しています。 (世界関税機関)

例として分かりやすいのが、ワクチンとプラスチックです。

ワクチンについては、HS 2028で新たな見出しの枠組みを導入し、人用ワクチンとその他(動物用を含む)を分け、より詳細な分類を可能にする方向が示されています。WCOの説明では、従来30.02に含まれていたものを30.07(人用ワクチン)と30.08(その他のワクチン)に再編する構造が明確に書かれています。 (世界関税機関)
WTO側も、HS 2028の改正がワクチン等の分類の改善に繋がる点をニュースで取り上げています。 (WTO)

プラスチックについては、バーゼル条約との整合を意識して、プラスチック廃棄物の分類を再編し、有害性やPIC(事前通報・同意)対象かどうか等を識別しやすくする、とWCOは説明しています。さらに「単回使用(single-use)」という概念を法的注として明示し、分類の一貫性やデータ精度、政策実装を支えるとしています。 (世界関税機関)

ここまで読むと、HS 2028はデジタル製品やサービスにも同じ発想で踏み込むのでは、と思うかもしれません。ところが実際には、ここにHSの構造的な限界が出てきます。


3. ここが本題:HSは物品分類であり、デジタル取引の核心はしばしばHSの外にある

HSはあくまで「物品」を分類する体系です。つまり、国境を越える対象が「モノ」ならHSが中心に来る。しかし、デジタル経済では、価値の中核が「データの送信」や「利用権」「クラウド上の機能提供」に移りやすい。

このとき問題になるのが、電子送信されるデジタル製品を財(goods)と見るのか、サービス(services)と見るのか、という整理です。WCOの文書でも、電子送信される製品が財かサービスかの性格付けは、例えば電子書籍、ソフトウェア、映画、雑誌、新聞などのケースで市場アクセス上の実務的帰結を持つ、と明示されています。 (世界関税機関)

さらに、WCOのEnvironmental Scan 2024では、WTOが2024年に「電子送信への関税賦課のモラトリアム」をさらに2年更新したことに触れた上で、HSや関税評価(Valuation)との関係で、電子送信をどう扱い、どう区分し、どう課税するかをWCOとしても検討し得る論点だ、と問題提起しています。 (世界関税機関)

つまり、ここにあるのは「HS 2028の中でデジタルが整理されて終わった」という話ではなく、むしろ逆です。HS 2028が最終合意して発効準備に入ったことで、物品としての分類整備は進む。しかし、価値が電子送信やサービス提供に移る取引は、HSだけでは完結しない、という現実がより鮮明になっています。


4. ビジネス実務で使える「デジタル製品・サービス区分」3分類

制度論を待っても、企業の現場は止まりません。そこで実務上は、取引を次の3つに切り分けるところから始めるのが現実的です。

4.1 物品としてのデジタル関連商品

例:ハードウェア、端末、記録媒体、デバイスに同梱されたソフト、物理的に輸送される製品

ここはHSのど真ん中です。HS 2028の改正により、該当品目の見出しや小見出しが変わる可能性があるため、輸出入量が多い製品から順にマッピングが必要になります。WCO自身が、発効までの2年で相関表(Correlation Tables)の整備などを進める、としています。 (世界関税機関)

4.2 電子送信されるデジタル製品

例:ソフトウェアのダウンロード、電子書籍、デジタルコンテンツ配信

ここは「国境を越えて価値は移転するが、物品としての通関がない」領域です。財かサービスかの整理自体が、国際的にも一枚岩ではないことをWCO文書は示唆しています。 (世界関税機関)
また、電子送信に対する関税の扱いはWTOのモラトリアム議論と連動し得るため、ビジネス側は制度動向の監視が必要になります。 (世界関税機関)
実際、各種の通商協定でも電子送信に関税を課さない旨を定める例があり、日EU・EPAでも電子送信への関税を課さない条項が置かれています。 (外務省)

4.3 デジタルサービス

例:SaaS、クラウド利用、保守、サポート、運用代行、データ分析サービス

これはHSではなく、サービスとしての税務・契約・規制の世界が中心になります。ただし重要なのは、物品とサービスがセットで売られることが多い点です。ここを曖昧にすると、税関評価や間接税、移転価格などの論点が連鎖します。


5. いちばん危ないのは「束ね売り」:ハードとサブスク、機器と利用権、導入費と保守

デジタル製品・サービス区分の論点が、実際に燃えやすいのは「束ね売り」の場面です。

典型例として、機器の販売に、初期設定費、導入支援、トレーニング、保守、クラウド利用料が混在するケースがあります。このとき請求書や契約が一体化していると、どこまでが物品の対価で、どこからがサービスなのかが不明確になりやすい。

実務的には、物品に含まれない費用要素を切り分け、根拠を揃えることが重要です。例えばKPMGの解説でも、トレーニング、組立、保守、保証などのアフターサービスや導入後サービスは、関税上の非課税要素になり得る点が示されています(ただし具体の扱いは契約と当局実務に依存)。 (KPMG Assets)

ここでのポイントは、関税コストの最適化というよりも、説明可能性の確保です。税関・税務当局のデジタル化が進むほど、取引データの整合性は機械的に突合されやすくなります。契約、請求、製品マスタの整合が崩れると、後から修正するコストが跳ね上がります。


6. HS 2028発効までに企業がやるべきこと

HS 2028は2028年1月1日発効です。これは単なる将来の予定ではなく、すでに国際的には「切替が前提の世界」に入っています。 (世界関税機関)

デジタル製品・サービス区分の観点も含め、企業が今から進めるべき実務を、優先度順にまとめます。

  1. 取引タイプの棚卸しをする
    物品の輸出入なのか、電子送信なのか、サービス提供なのか。さらに、単体か束ね売りか。まずは売上上位とリスク上位の取引から分類します。
  2. 物品側はHS 2022からHS 2028へのマッピング準備を始める
    発効前にWCOが相関表などの実装ツールを整備するとしています。各国の8桁や10桁への落とし込みは国ごとにタイムラグが出るため、主要国別にウォッチします。 (世界関税機関)
  3. 契約と請求書を「区分できる構造」にする
    物品対価、導入支援、保守、サブスク利用料などを分け、説明可能な形にします。後追いでの区分は、監査・税関調査で弱いです。 (KPMG Assets)
  4. 製品マスタとルールを、関税分類だけでなく商品設計と連動させる
    HSは分類番号に見えますが、実際は事業の共通キーです。営業、購買、経理、法務、物流、ITが同じデータを参照できる体制が、後の事故を減らします。
  5. 電子送信の論点は、制度動向を前提に「変化に耐える設計」にする
    WCOも電子送信をどう区分し、どう課税するかは将来的に検討が必要になり得ると示唆しています。WTOのモラトリアム動向も含め、固定的な前提を置き過ぎない設計が安全です。 (世界関税機関)

おわりに:HS 2028は「コード更新」ではなく、取引の設計思想を試すイベント

WCOのHS 2028改正は、最終合意を経て2028年発効に向けた実装フェーズに入りました。公衆衛生や環境など、政策目的を帯びた可視化が強まるのが今回の特徴です。 (世界関税機関)

ただし、デジタル製品・サービスの区分という観点では、HSの最終合意が「解決」を意味しません。むしろ、HSが物品分類である以上、電子送信やデジタルサービスは別の制度軸で整理される、という構造がより鮮明になります。 (世界関税機関)

だからこそ、企業にとっての勝ち筋は、制度が完全に確定するのを待つことではありません。取引を区分できる契約と請求、説明可能なマスタ、変更に耐える運用ガバナンスを整えること。HS 2028対応は、その体制を作るための最も分かりやすいタイミングです。


米国と日本:HS2028を国内法に移す正式ルートを深掘りする

この記事は、2026年1月23日時点で確認できる一次情報を中心に、HS2028が米国と日本でどのように国内制度へ反映されるかを、ビジネス実務の視点で整理したものです。HS改正は「税番が変わる」だけでは終わりません。関税率、EPAやFTAの原産地規則、通商救済措置の対象品目、社内マスターや通関システムまで波及します。だからこそ、正式ルートを理解しておくことが、準備の精度を上げます。

まず押さえるべき国際スケジュール:HS2028は2028年1月1日に発効

HS2028は、世界税関機構WCOが管理するHS品目表の第8版で、2028年1月1日に発効します。今回の改正は、通常5年サイクルの見直しが例外的に6年へ延長された上で成立したもの、とWCOが明確にしています。(World Customs Organization)

WCOは、HS2028について「国内レベルでは必要な立法手続、ITシステムや刊行物・手続の更新、税関職員や関係者への研修が必要」といった実装作業が不可欠であることも明記しています。つまり、HS2028は2028年にいきなり現場に降ってくるのではなく、各国が国内法制と運用を揃える準備期間を前提に動きます。(World Customs Organization)

国際的な採択手続の流れとしては、HS委員会での暫定採択を経て、WCO理事会で正式採択され、2026年1月に公開、2028年1月1日に発効というスケジュールがWCOから示されています。(World Customs Organization)

「国内法に移す」とは何を変えることか

HSは6桁までが国際共通で、各国はそれ以降の細分を設けます。したがって、各国がHS2028を国内で使える形にするには、少なくとも次の層を整合させる必要があります。

  1. 国際6桁の改正を反映する
  2. 自国の細分桁を作り直す
  3. 関税率や特恵税率、通商救済措置など、番号に紐づく制度をつなぎ替える
  4. 申告受理システムや統計システムを改修する
  5. 税関の解釈資料や運用通達を更新する

このうち、どこまでが「法律の改正」で、どこからが「行政の告示・通達・運用更新」かが、米国と日本で大きく異なります。

米国の正式ルート:USITCの勧告と大統領布告でHTSUSを更新する

米国の制度の土台:HTSUSは議会が制定し、USITCが維持し、CBPが執行する

米国の関税分類はHTSUSにより運用され、USITCの説明では、国際HSの4桁・6桁区分を米国独自に細分し、8桁の米国税率区分と、10桁の統計用区分へ展開するとされています。また、USITCがHTSを維持・公表し、CBPが解釈と執行を担う構図も明確です。(USITC)

HS改正を国内へ反映する公式プロセス:USITCが実施案を作り、大統領が布告する

WTO向け資料として公表されている米国側の説明では、WCOがHS改正を承認した後、USITCがHTSUSへ反映するための作業を行い、最終的に大統領が改正を布告できる、という整理になっています。

HS2022実施を例にした時系列は、実務目線で非常に示唆的です。

  • USITCが調査を開始
  • USITCがドラフトと経済影響の見込みを公表し、意見募集
  • USITCが最終勧告を大統領へ提出
  • 議会でのレビュー期間を経て、大統領が布告
  • 官報に当たるFederal Register掲載から30日後に発効

この「Federal Register掲載から30日後に発効」は、実務側の切替日を考える上で重要なポイントです。

法的根拠:1988年法に基づきUSITCが勧告し、大統領が改正を布告できる

HS2022反映を含むHTSUS改正の大統領布告(Proclamation 10326)を掲載したFederal Registerには、1988年法によりUSITCがHTSを継続的に見直し改正を勧告すること、そして大統領がUSITCの勧告に基づきHTS改正を布告できることが記載されています。(Federal Register)

現場に降りる最終段階:CBPとACEが受ける番号体系の切替

CBPの通達では、Proclamation 10326によりHTSUSが改正され、USITCの刊行物が参照されていること、そして改正内容が一定の日付以降の輸入に適用されることが明示されています。さらに、申告システムACE側の受入れ開始時刻にも触れており、制度改正がシステム実装と不可分であることがよく分かります。(GovDelivery)

ここから読み取れる米国の特徴は次の通りです。

  • 国内実装の最終トリガーは大統領布告とFederal Register掲載
  • 発効日は国際発効日と一致するとは限らず、実装上のタイムラグがあり得る
  • 現場はCBPの運用告知とACEの受入れ仕様に強く依存する

HS2028でも同様に、WCOの発効日だけでなく、Federal RegisterとCBPの実装告知をセットで追う必要があります。

日本の正式ルート:関税定率法の別表改正と、告示・通達で統計品目表や解説を更新する

日本の制度の土台:関税率表は関税定率法の別表で、HS条約に基づく

財務省・税関の分類センター資料では、日本の関税率表は関税定率法の別表であり、HS条約に基づいていることが明確に説明されています。(JETRO)

また同資料は、6桁までは国際共通で、7桁以降は各国が定めること、日本では輸出と輸入でそれぞれ3桁の細分を設け、9桁の統計品目番号として運用していることも示しています。(JETRO)

経済産業省のEPA案内でも、日本では9桁、米国では10桁という桁数の違い、6桁までが世界共通である点が説明されています。(Ministry of Economy, Trade and Industry)

立法ルート:関税定率法等の改正案を政府が作り、国会で成立させる

日本の正式ルートの中心は、「関税定率法等の一部を改正する法律案」という形での法改正です。財務省が公表しているHS2022対応の法案概要では、WCOで採択されたHS条約のHS品目表改正に応じて関税率表を改正する、と明記されています。さらに、その施行日として、HS対応部分は翌年1月1日が設定されていました。(Ministry of Finance Japan)

この構図はHS2028でも基本的に同じで、関税定率法の別表を改正して関税率表を更新するため、政府が法案を準備し、国会で成立し、公布され、施行日を迎えるという流れになります。

告示と通達:統計品目表や解説、分類例規などを実装レベルへ落とす

税関が公表しているHS2022のFAQは、HS改正を受けて、関税定率法別表、輸出入統計品目表、関税率表解説、分類例規が改正対象になることを具体的に示しています。さらに、輸出入統計品目表の改正は財務省告示として行われ、関連リンクが税関サイトに整理されていることも示されています。(Japan Customs)

同FAQでは、HS2022対応の実行関税率表、輸出統計品目表、関税率表解説が、発効日に合わせて税関サイトで公開されていることも明記されています。企業側の実務では、この「公開される版」と「適用開始日」を揃えて把握することが、切替事故を防ぐ鍵になります。(Japan Customs)

ここから読み取れる日本の特徴は次の通りです。

  • 関税率表の本体は法律の別表で、法改正を伴う
  • 9桁の統計品目番号や解説類は、告示や通達等で具体化される
  • 税関サイトでの版管理と公開日が、現場の実装上の重要情報になる

米国と日本の違いを一枚で整理

観点米国日本
国内の基本表HTSUS(国際HSを8桁税率区分と10桁統計区分へ展開)(USITC)関税定率法の別表(関税率表)。6桁まで共通、国内細分で9桁運用(JETRO)
主導機関USITCが改正案の勧告、CBPが執行(USITC)財務省・税関が制度整備、税関が運用・公表(Ministry of Finance Japan)
法的な最終トリガー大統領布告とFederal Register掲載(Federal Register)国会での法改正成立と施行、加えて告示・通達の整備(Ministry of Finance Japan)
切替日の読み方国際発効日と一致しない可能性がある。Federal Register掲載後30日発効の慣行が重要原則は1月1日施行が多いが、法案で施行日が明示される。税関サイトの版公開も併せて確認(Ministry of Finance Japan)

企業の実務ロードマップ:2026年から逆算して何をするか

WCOは、HS2028発効までの2年間で、各国が立法手続やIT更新、研修などを進める必要があると明記しています。企業側も同じ発想で、2年を「準備期間」として設計するのが合理的です。(World Customs Organization)

2026年に着手すべきこと

  • 自社取扱品目のHS2022コードの棚卸しと、変更影響の優先順位付け
  • 米国向けは10桁、日本向けは9桁のマスターを分けて管理し、相互参照表を整備する
  • 通関委託先と「切替日に何を正とするか」を合意する(旧コードの扱い、積送品の扱い、修正申告の方針)

2027年に固めるべきこと

  • 国内改正のドラフトが出るタイミングを想定し、マスターの改修をテスト環境で回す
  • FTAやEPAの原産地規則がHS版に依存する場合、協定で採用しているHS版と実務適用を棚卸しする
  • 取引条件を見直す(関税負担の帰属、税番変更時の価格条項、通関遅延の責任分界)

2028年の切替直前に必ずやること

  • 申告書、インボイス、品名、製品仕様書の記載と税番の整合性を最終点検
  • システムと帳票の改版日を、米国向けと日本向けで別に管理する
  • 切替日前後の出荷をルール化する(通関日の基準、入港日基準か、搬入日基準か等は制度と運用に依存するため、必ず通関関係者と確認する)

よくある落とし穴:分類変更は関税率だけでなく周辺制度を連鎖させる

  1. 関税率が変わらない場合でも、通商救済措置や追加関税の対象付け替えが起きる
    米国では、HTSUSの改正と同時に、特定措置の対象となる番号体系も整合させる必要があり、CBPが具体的な告知を出します。(GovDelivery)
  2. 原産地規則の判定がズレる
    原産地規則はHSコードに依存するため、分類ズレはそのまま原産地判定ズレにつながります。日本の実務資料でも、HSコードを誤ると税率や品目別規則が変わる旨が繰り返し強調されています。(JETRO)
  3. 社内の番号は更新したのに、通関委託先のシステムが追随していない
    米国はACEの受入れ仕様、日本は税関サイトの版公開と運用文書の更新が現場要件になります。切替期は、番号の正しさだけでなく、相手側システムが受ける形式になっているかが成否を分けます。(GovDelivery)

まとめ:正式ルートを理解すると、準備の打ち手が具体化する

HS2028は2028年1月1日に発効し、各国は国内の立法手続やIT更新を伴って実装します。(World Customs Organization)
米国は、USITCの勧告と大統領布告、Federal Register掲載を軸にHTSUSを更新し、CBPとACEの運用に落ちます。
日本は、関税定率法の別表改正を中心とする法改正に加え、告示・通達・税関サイトの版管理で運用を完成させます。(Ministry of Finance Japan)

この違いを踏まえて、企業側は「国際発効日」だけでなく、「米国はFederal RegisterとCBP告知」「日本は法改正の施行日と税関サイトの公開版」という二つの観測点を持つと、準備が現実的になります。

HS2028採択後、公式に何が公表されているのか

2026年1月23日現在、HS2028は「採択を経て、改正内容が公式に公表され、各国が2028年1月1日の切替に向けて国内実装へ移る」フェーズに入りました。いま重要なのは、企業が日々使うコードが多くの場合8桁以上で運用されている点です。国際共通の6桁が動くと、各国の拡張桁、通関システム、統計、FTA運用まで連鎖して動きます。したがって「採択後の公式公表状況」を押さえることは、単なる情報収集ではなく、基幹データ更新の着手判断そのものになります。 (世界関税機関)


1. まず前提:HS2028はどう採択され、いつ効力を持つのか

HS2028は、WCOのHS委員会が改正勧告(HS条約第16条に基づく勧告パッケージ)を取りまとめ、理事会での勧告を経て、異議がなければ受諾される、という国際手続で進みます。EU側の公式文書でも、理事会が勧告した改正は、締約国から6か月以内に異議がなければ受諾と扱われることが明記されています。

今回、WCOは2025年3月(HSC第75回会合)にHS2028改正案を暫定採択した旨を公表しており、その中で改正パッケージが299セットの改正から成ることなどが示されています。 (世界関税機関)
そして2026年1月21日付のWCO公表では、HS2028改正が受諾されたこと、2028年1月1日の発効に向けて相関表作成や各種ツール更新を進めることが示されています。 (世界関税機関)

さらに決定的なのが、WCOが公開している改正条文の公式PDFです。そこには、2025年6月26日の勧告に基づき受諾された改正であり、発効日は2028年1月1日であることが明記されています。 (世界関税機関)


2. 企業がいう「公式公表」は、実は5層ある

現場で混乱が起きやすいのは、「WCOが出した」だけでは通関実務がまだ動かない点です。企業の実務に効く公式公表は、おおむね次の5層で見ます。

  1. WCOの改正条文(HS条約附属書の改正)
  2. WCOの解説類の更新(HS解説書など)
  3. WCO相関表(HS2022とHS2028の対応表)
  4. 各国・地域の拡張桁の確定公表(8桁、10桁等の国内関税率表・統計品目表)
  5. 税関システム、申告様式、統計、FTA運用への実装開始

WCO自身も、受諾後の2年間で相関表作成、解説類更新、加盟国側の立法やIT改修、訓練が必要だと明確に述べています。 (世界関税機関)


3. 2026年1月時点の公式公表状況

下表は「今、一次情報として何が出ているか」を、企業実務の観点で整理したものです。

公表物2026年1月時点の状況企業にとっての意味主な一次情報
1HS条約附属書の改正条文WCOが改正条文PDFを公開、発効日も明記6桁の改正内容を一次情報で確定できるWCO改正条文PDF (世界関税機関)
1から2改正の公式概要受諾と主要改正テーマをWCOが公表影響領域の当たりを付け、社内棚卸しを開始できるWCOニュース (世界関税機関)
2主要改正ポイントの説明ページWCOが主要変更点を整理し、PDFも提示どこが大きく動くかを経営層にも説明しやすいWCO「Amendments effective from 1 January 2028」 (世界関税機関)
3相関表(HS2022↔HS2028)WCOが作成を進める段階と明言品目マスター一括移行の実務は相関表が出てからが本番WCO同ページ記載 (世界関税機関)
4各国の拡張桁国により今後順次。現時点は準備段階が中心8桁以上は国別に最終確定を待つ必要次章参照
5国内IT・申告実装これから各国で本格化通関委託先やERP改修のリードタイムが勝負WCOが必要作業を明示 (世界関税機関)

4. 主要国・地域は今どこまで動いているか

ここでは、公式に確認できる「手続の開始」や「公表サイクル」を中心に、企業が追うべき観測点を示します。国ごとの8桁確定版は、最終的には官報や公定データに落ちるまで確定しません。

米国:HTSUS改正に向けた手続が公式に走り始めた

USITCは、HS改正に整合させるための調査を開始したと公表しており、2026年2月にドラフト改正案を公表し意見募集、2026年9月に大統領へ報告する見込みまで具体的に示しています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
企業にとっては、米国向け輸出入がある場合、ドラフト段階から自社品目がどう扱われるかを追い、差分が大きい品目は早期に代理店や通関先とすり合わせる価値があります。

EU:CNは毎年更新され、官報公表の締切ルールがある

EUのCNは毎年更新され、EU官報に実施規則として公表されることが欧州委員会の説明ページで明記されています。 (Taxation and Customs Union)
さらに、CNの年次版は遅くとも10月31日までに官報公表し、翌年1月1日から適用する、という運用ルールが法令上も示されています。 (EUR-Lex)
この仕組みから、HS2028を取り込むCNは、発効日の2028年1月1日に合わせた年次規則として整理されるのが通常の筋になります。ここがEUの観測ポイントです。

ASEAN:AHTN 2028の開発が公式に言及されている

ASEANは、AHTN 2022の見直しがAHTN 2028の策定につながり、WCOのHS2028改正に整合させる旨を公式ページで述べています。 (ASEAN)
ASEAN向けは国ごとの国内実装時期の差が出やすいため、AHTNと各国国内税関の切替時期を二重に追う前提で計画を組むのが安全です。

日本:統計品目表は毎年更新され、公開サイクルがある

日本の税関は輸出統計品目表を年次で公開しており、2026年1月版が2026年1月1日に掲載されています。 (税関総合情報)
HS2028そのものの国内拡張桁がいつどの形で公表されるかは、最終的には公定の関税率表・統計品目表の形で確定するため、普段からこの種の公表サイクルの場所を固定して監視するのが現実的です。


5. WCOが示した主要改正テーマを、企業の影響領域に翻訳する

WCOの説明ページでは、299セットの改正、見出し数や号数の増減、主要テーマが整理されています。 (世界関税機関)
この中で、ビジネス影響が読める論点を、経営目線に直すと次の通りです。

  1. 医療・公衆衛生関連の見える化が進む
    救急車、PPE、人工呼吸器、診断・監視機器など、緊急時物資の識別がより細かくなる方向が示されています。 (世界関税機関)
    実務では、関税というより輸出入規制、統計、危機時の簡素化措置などに波及します。
  2. ワクチンやサプリなど、境界領域の整理が進む
    ワクチンを2つの新見出しに再編すること、サプリメント向けの新見出し21.07を設けることなどが明記されています。 (世界関税機関)
    企業にとっては、食品と医薬の境界、景表法・薬機法的な位置づけ、輸入時の規制要件に直結しやすい領域です。
  3. 環境対応としてプラ関連の整理が進む
    プラ廃棄物の区分見直しや、単回使用の概念を法的注記で明確化することが示されています。 (世界関税機関)
    ここは環境規制、輸出入許可、リサイクル物流、原材料調達の説明責任に波及しやすい領域です。

6. 企業がいま着手すべき準備

相関表や各国8桁が揃うまで待つと、2027年後半からの改修ラッシュに巻き込まれます。WCOが示す通り、2年間は各国が立法とIT改修を進める期間です。 (世界関税機関)
いまは次の順で、軽くても着手しておくのが合理的です。

  1. 自社の品目マスター棚卸し
    輸出入で使っているコード、相手国の拡張桁、FTAの品目別規則で参照している桁数を一覧化します。
  2. 影響の優先順位付け
    売上・購買金額、関税率差、規制該当、原産地規則依存度の4軸で、先に見る品目を決めます。
  3. 分類根拠の整備
    改正でコードが動くときに説明できるよう、用途、材質、機能、構成、技術資料を根拠として束ねます。後で8桁が出たときの再判定が速くなります。
  4. 2026年2月以降のドラフト群を追う
    米国のようにドラフト公開予定まで明示している国は、そこが最初の分岐点になります。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

まとめ

HS2028は、受諾と発効日が公式に確定し、改正条文PDFも公開されました。 (世界関税機関)
これからの勝負は、相関表の公開と、各国の拡張桁確定、公定データ化、システム実装の連鎖にどう先回りするかです。WCOが示した2年間を、企業側の準備期間として使い切れるかが、そのまま2028年1月の安定稼働に直結します。 (世界関税機関)

WCOがHS2028改正を正式に確定。企業実務で注視すべき4領域はセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維

2026年1月21日、世界税関機構WCOはHS2028改正(HS2028 amendments)が受け入れられたことを公表しました。HSは各国の関税率表、統計、各種規制の土台であり、改正は通関部門だけでなく、調達、設計、営業、経営管理にまで影響します。発効は2028年1月1日で、いまは実務準備のための移行期間に入った局面です。 (wcoomd.org)

本稿では、公式一次情報で確認できる範囲を軸に、改正の全体像と、タイトルで挙げたセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維がなぜ経営課題になりやすいのか、そして今から何を準備すべきかを整理します。



1. 何が決まったのか。HS2028の確定内容とスケジュール

HS2028は2028年1月1日に発効。改正は299セット

WCOの公表によれば、HS2028の改正は299セットの変更で構成され、HS2022と比べて新設と削除が発生しています。公式発表では、見出しは1,229、号は5,852となり、HS2022比で見出し6本と号428本が新設、見出し5本と号172本が削除と説明されています。 (wcoomd.org)

また、レビューサイクルは通常5年ですが、今回はCOVID-19等の影響で2019年7月から2025年6月までの6年に延長されたことも明記されています。 (wcoomd.org)

改正の意思決定はHS条約第16条の勧告として進んだ

実務上重要なのは、HS2028がHS条約第16条に基づく勧告パッケージとして取りまとめられた点です。2025年3月10日から21日のHSC第75回会合で、HS2028の改正勧告が暫定採択され、WCO理事会に回付される流れが示されています。 (wcoomd.org)

そのうえで、WCOは2026年1月21日に改正が受け入れられたと公表し、2028年1月1日に発効するとしています。 (wcoomd.org)


2. 公式発表で強調された主題と、企業にとっての意味

WCOの発表は、今回の改正が単なる品目名の整理ではなく、政策目的や規制執行を支える役割が強まっている点を繰り返し強調しています。 (wcoomd.org)

公衆衛生と緊急対応をHSで見える化

WCOは、ワクチンと医療緊急物資の見える化を主要成果として詳細に説明しています。ワクチンはHS2022の30.02から再編され、ヒト用ワクチンを30.07、その他を30.08とする新見出しと詳細な号構造が導入されるとしています。 (wcoomd.org)

環境対応は廃棄物と単回使用製品を中心に具体化

環境面では、プラスチック廃棄物をバーゼル条約の枠組みに整合させる形で整理し、単回使用という概念を法的注記で明示して分類と統計の一貫性を高める方向が示されています。 (wcoomd.org)

この方向性は、企業実務に直結します。HSは関税率だけでなく、規制対象品の特定、禁制品管理、サプライチェーンの可視化、統計分類、さらにEPAやFTAの原産地規則運用にも影響します。HS改正は、企業データの基準軸が入れ替わるイベントと捉えるべきです。


3. なぜセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維が注目領域なのか

WCOの公式発表は公衆衛生と環境を前面に出していますが、HS2028は技術進化に合わせて分類を簡素化し、新製品や組成変化に対応することも狙いに入っています。EUはWCO理事会での第16条勧告採択に向けた説明文書で、具体例として半導体とトランスデューサ、清掃ロボット、ドローン、e-bike等を挙げ、分類容易化の対象になっていると明記しています。 (EUR-Lex)

ここでいうトランスデューサは、センサー領域と重なります。さらに、EV電池とスマート繊維は、環境規制と複合製品化という二つの潮流の中心にあり、HS改正が引き金となって各国が8桁や10桁で細分や運用明確化を進めやすい領域です。


4. 領域別に起きやすい論点と、実務での備え

以下は、HS2028で何番がどう変わるという断定ではなく、公式文書が示す方向性と、各国当局の分類実務で繰り返し問題化している境界から、企業が先回りで潰すべき論点を整理したものです。

4-1. センサー。争点は機能の複合化と分類境界

センサーは単体部品ではなく、信号処理、通信、電源、ソフトウェアを組み込んだモジュールとして取引されることが増えています。すると、測定機器なのか、電気機器なのか、あるいは特定機械の部分品なのかという境界論点が表面化します。

スマート繊維の事例ですが、米国CBPの分類事前教示では、センサー付きコンプレッション衣類、データモジュール、USBケーブルのセットについて、セットの本質的特性は衣類側にあるとして衣類側の号でセットを分類しつつ、データモジュールを単体輸入すれば測定機器側、ケーブルは電気導体側に分けて分類しています。複合製品がどこで分解され、どこでセットとして扱われるかが、税番と税率を左右する典型です。 (CROSS)

企業側の備えは、製品仕様の情報粒度を上げることです。最低限、測定対象、測定原理、出力形態、通信機能の有無、当該機械専用品か汎用品か、部品としての完成度を、型番単位でマスタ化しておくと、改正後の移行でも揺れにくくなります。

4-2. 半導体。品名より実体で分類される時代に入っている

半導体は、ウェハ、ダイ、パッケージ品、モジュール、基板実装品など形態が多様で、同じ用途でも供給形態が変われば分類ロジックが変わります。EU文書が半導体とトランスデューサを、分類容易化の対象例として名指しした点は、改正の方向性を読むうえで重要です。 (EUR-Lex)

企業実務では、材料名や用途説明だけでは足りません。取引単位が何か、電気的機能がどこまで内蔵されているか、複数機能のうち主たる機能は何かを、設計部門と調達部門が共通言語で説明できる状態を作る必要があります。HS2028対応を機に、半導体関連は分類ドシエを標準化し、品目説明のテンプレート化まで踏み込むと効果が出ます。

4-3. EV電池。環境規制と国際取引の両面で監視が強まる

EV電池は、製品としての分類だけでなく、使用済み電池や電池廃棄物、リサイクル原料としての取引が増えること自体が、分類と規制運用を難しくします。OECDは、リチウムイオン電池の循環型バリューチェーンを進めるうえで、廃棄物としての位置付けの明確化、輸送保管の安全規則の整合、設計標準の調和、回収とリサイクルの規制目標などが必要だと指摘しています。 (OECD)

一方、WCOはHS2028で環境保護を主要テーマに掲げ、廃棄物分類を国際環境枠組みに整合させ、単回使用概念まで法的注記で明確化する方向を打ち出しています。 (wcoomd.org)

この二つを合わせて読むと、EV電池は次の3点を社内で先に固めるのが合理的です。新品のセル、モジュール、パックの取引単位と機能定義。車両と一体輸入される場合と単体輸入の扱い。使用済み電池と廃棄物の線引きに必要な証憑と、物流側の安全規則対応。ここが曖昧だと、HS改正後に税番移行だけでなく、規制対応や廃棄物該当性の判断まで連鎖して止まります。

4-4. スマート繊維。複合製品の典型で、分類の根拠が問われる

スマート繊維は、繊維製品としての性格と、電子機能としての性格を同時に持ちます。実務上の争点は、電子部品が着脱可能か、着脱後も繊維製品としての価値が成立するか、機能の中心はどちらかです。

先のCBP事例は示唆が大きく、衣類にセンサーが縫い込まれ、モジュールが着脱式で、セットとして販売される場合に、セットの本質は衣類側にあるという評価が採られています。モジュール単体は測定機器側、ケーブルは導体側と分けて評価されています。スマート繊維は設計段階で、何を一体化し、何を分離するかが、分類と税率に直結する領域です。 (CROSS)


5. いま企業が着手すべきHS2028対応ロードマップ

WCOは、2028年1月1日の発効までに相関表の整備、HS関連ツールと刊行物の更新、各国実装の準備が進むと説明しています。企業側も、この2年で何を終えるかを逆算する必要があります。 (wcoomd.org)

  1. 影響棚卸し
    自社の輸出入上位品目を、HS6桁と国別8桁10桁まで含めて一覧化し、売上、原価、関税インパクト、規制リスクで優先順位を付けます。
  2. 二重管理の設計
    2027年のどこかで、現行コードとHS2028想定コードを並記できる状態を作ります。ERP、品目マスタ、通関指示書、原産地判定ロジックのどこで切り替えるかを先に決めます。
  3. 分類ドシエの標準化
    センサー、半導体、スマート繊維は、製品説明の粒度が勝負です。設計仕様、機能、構成、用途、写真、データシートを型番単位で一枚にまとめ、当局照会や監査で即答できる形にします。
  4. 国別実装の監視
    HS6は共通でも、各国は8桁以降の細分と運用で差が出ます。主要仕向け国の改正版タリフ公布とガイダンスを継続監視し、通関委託先とも切替手順を合意します。
  5. 先行してルールを取りに行く
    グレーになりやすい品目は、主要国で事前教示制度の活用を検討します。改正後の初期は当局側も運用を固めるため、早期に根拠を確保した企業が有利になります。

6. まとめ。HS2028は分類改正であり、基準データの更新である

HS2028は、2026年1月21日に受け入れが公表され、2028年1月1日に発効します。改正は299セットで、見出しと号の新設と削除が伴います。 (wcoomd.org)

公衆衛生と環境が公式発表の主役ですが、EUの公式説明は半導体とトランスデューサを明示的に挙げ、技術進化に合わせた分類容易化が改正の柱であることも示しています。 (EUR-Lex)

さらにWCOは、HSそのものの分かりやすさと使いやすさを高めるための枠組み強化プロジェクトを進め、2033に向けたより深い見直しも議論しています。今回の改正対応は、次の改正を楽にする投資でもあります。 (wcoomd.org)

センサー、半導体、EV電池、スマート繊維は、複合化と規制強化の交点にあります。だからこそ、いま必要なのは税番を当てることではなく、税番が揺れないように仕様情報と根拠を整え、切替の手順を設計し、国別実装を監視することです。これを2年で終えた企業だけが、2028年の切替をコストではなく競争力に変えられます。

■日本■ 2026年からヘビースクラップHSコードが2区分へ。何が変わり、実務はどう備えるか

鉄スクラップ取引の現場では、品種名として長く使われてきたヘビースクラップが、統計上の扱いでも大きく動きました。日本の輸出統計品目番号では、ヘビースクララップに相当する7204.49のヘビーくずが、2026年1月1日から2つに細分化されています。 (jisri.or.jp)

この変更は、単なる番号の付け替えではありません。厚さ6ミリメートルという明確な数値基準が入ることで、現場の選別、契約条件、申告根拠の作り方まで影響が及びます。

まず結論。2026年の新コードはこの2つ

ヘビーくずは、2026年1月1日版で次の2区分になっています。 (jisri.or.jp)

区分輸出統計細分要点
厚さが6ミリメートル以上7204.49-110最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であることが条件
その他7204.49-190上記以外。実務上は厚さ6ミリ未満側が中心

7204.49-110は、説明文でも厚さ6ミリ以上が明記されています。 (kanzei.or.jp)
7204.49-190は、品名概要として厚さ6ミリ未満のヘビーくずと整理されています。 (kanzei.or.jp)

ここで注意したいのは、いわゆる国際的なHS6桁が変わったというより、日本の輸出統計細分がより細かく分かれた、という性格が強い点です。実務ではこの枝番まで正しく入れて申告するため、影響は十分に大きいと考えるべきです。

ヘビーくずの定義が、数値で整理された

今回の見直しでは、ヘビーくずとは何か、どこまでが別物か、が文章で整理されています。

ヘビーくずの基本像は次のとおりです。

・鋼板、形鋼、レール、列車車体、船舶胴体、重機、ボンベ等の鉄鋼製品を切断、解体したもの
・圧縮成形されたプレスくずは除外
・1個当たり重量が1kg以上1,000kg以下
・寸法の目安として、厚さ1mm以上から500mm以下、幅または高さ300mm以上から500mm以下、長さ300mm以上から1,200mm以下が示されている

この整理の意味は大きく、税関側の判断軸が明確になる一方で、輸出者側も根拠を示せるように整備しないと、通関段階で止まりやすくなります。

分岐点は厚さ6ミリ。判断方法が実務向けに定義されている

今回の最大ポイントは、7204.49-110の判定方法が、現場で揉めやすいところまで踏み込んで定義されている点です。

・厚さ6ミリ以上とは、最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であること
・厚さ6ミリ未満のものと分けていないものは含めない、とされている

つまり、荷姿の中に6ミリ未満が混ざっているのにまとめて6ミリ以上として扱う、という運用はリスクが高い、というメッセージになります。

さらに、取引実務でよく出る等級呼称との対応も示されています。

・厚さ6ミリ以上は、HSまたはH1として取引されることがある
・厚さ6ミリ未満は、H2、H3またはH4として取引されることがある

統計番号の変更は、現場の商慣行に近い区分を税関手続きに持ち込んだ、と捉えると理解しやすいはずです。

なぜ今、細分化なのか。背景は資源循環の可視化

報道ベースでは、今回の改正は、輸出入の動きをより細かく把握して金属資源の流れを見える化し、国際資源循環の適正化につなげる狙いがある、と説明されています。 (イルミル)

一方で、現場負担が増えることへの懸念も強く、業界団体が反対や不安の声を上げていることも報じられています。 (鉄鋼・非鉄金属業界の専門紙「日刊産業新聞」)

ビジネス側として重要なのは、背景の是非よりも、税関実務がこの基準で動き始めたという事実です。基準が明文化された以上、事後的に説明できる体制がない企業ほど、遅延や差し戻し、追加確認の影響を受けやすくなります。

企業実務への影響。特に効くのは5点

1. HSマスターとNACCS連携の改修が必須

7204.49-110、7204.49-190は、NACCS用コードも付いて流通します。 (kanzei.or.jp)
社内の品目マスター、通関業者への指示票、インボイス品名、出荷システムのコード連携を、枝番まで含めて点検してください。

2. 選別と検収の定義が契約条件になる

厚さ6ミリの判定が入ると、仕入、ヤード選別、積込検収のどこで判定し、どの記録を残すかが、取引トラブルの焦点になります。特に最も薄い部分基準は、測り方を決めておかないと現場で判断が割れます。

3. 混載リスクが上がる

厚さ6ミリ未満と分けていないものを含めない、という書き方は、混載しているだけで110側が否定され得る設計です。
コンテナ単位、船積みロット単位で区分が明確になる運用に寄せるのが現実的です。

4. 通関で聞かれるポイントが変わる

従来は、ヘビーくずかどうかの説明で済んでいた場面でも、今後は厚さの根拠を聞かれる可能性が上がります。写真、計測表、検収基準書、ヤードの選別ルールなど、後から出せる証跡を整えておく方が強いです。

5. 輸出管理の観点も再確認

該当品目には、輸出貿易管理令の参照が付されています。取引先や仕向地によっては、分類だけでなく輸出管理側の確認も併走させるべきです。 (kanzei.or.jp)

すぐに使える実務チェックリスト

・社内の品目マスターで、7204.49-110と7204.49-190を別品目として登録したか
・ヤード選別で、厚さ6ミリの判定基準と測定方法を文章化したか
・最も薄い部分の厚さを測る運用と、記録様式を決めたか
・混載を避ける積込ルールを設定し、通関業者に共有したか
・契約書、検収条件、クレーム条件に厚さ基準を反映したか
・輸出管理上の確認が必要な仕向地、取引先に対して、社内フローを更新したか (kanzei.or.jp)

まとめ。細分化は、トラブル予防の仕組みでもある

今回の改正は、ヘビースクラップを厚さ6ミリで2区分し、定義と判定方法を明文化した点に本質があります。 (jisri.or.jp)
統計を細かくする狙いは資源循環の可視化にあるとされますが、企業側から見ると、通関で説明できる材料を揃えれば揃えるほど、通関遅延や差し戻しを減らせる設計になったとも言えます。 (イルミル)

現場の選別、契約条件、申告根拠の3点をセットで整備し、通関業者と同じ判定軸で動ける状態にすること。それが、2026年以降のヘビースクラップ取引で最も効く実務対応になります。

自動車用センサーの分類リスクを深掘りする HSコードの税番ミスが、利益と納期を静かに削る理由

自動車用センサーは、いまや部品ではなく「事業の要」になりました。ADAS向けのカメラやミリ波レーダー、排ガス向けのガスセンサー、圧力や流量の各種センサーまで、車両の価値はセンサーとソフトウェアで決まると言っても過言ではありません。

一方で、サプライチェーンが国境を跨ぐほどに増えるのが、HSコードの分類ミスです。HSは世界の200以上の国や経済圏で使われる国際的な品目分類で、6桁コードを基礎に、関税や統計などに用いられます。しかも技術や貿易の変化に合わせて定期的に改正されます。ここでの判断を誤ると、関税コストだけでなく、通関遅延、監査対応、取引条件の見直しなど、ビジネス全体に波及します。 (World Customs Organization)

本稿は、以前の「自動車用センサー分類リスク一覧」を、実務に落ちる粒度まで掘り下げたものです。狙いは、現場で起きやすい失敗を、構造として理解し、再発しない運用に落とすことです。


1. なぜ自動車用センサーは分類が難しいのか

難しさの本質は、センサーが「車の部品」に見えやすい一方で、HSの世界では「何の部品か」より「何として機能するか」が強く問われる点にあります。

HSの解釈では、まず見出し(heading)と、セクション注や章注(Notes)に従って分類します。見出しのタイトルは参考であって、法的には見出し文言と注記が優先です。 (Canada Border Services Agency)

ここで自動車業界の落とし穴になるのが、「車両の部分品(8708)に寄せたくなる心理」です。確かに第87類には「自動車の部分品及び附属品(87.08)」があります。 (Canada Border Services Agency)

しかし、セクションXVIIの注記では、部分品や附属品の考え方が適用されない品目が明確に列挙されています。代表的な除外として、電気機器(第85類)や測定・検査等の機器(第90類)が挙がります。つまり、車に付くからといって、自動的に8708になるわけではありません。 (Canada Border Services Agency)

センサーは、まさに第85類や第90類に該当しやすい典型例です。だからこそ、分類リスクが高いのです。


2. センサーを「税番を決める観点」で分類し直す

技術分類(レーダー、LiDAR、カメラ…)は開発や調達では有効ですが、HSの初動判断では別の切り口が効きます。ポイントは次の3つです。

  1. 測定・検査の機器か(第90類になりやすい)
  2. 画像・電波などの電気機器か(第85類になりやすい)
  3. それでも部分品として扱えるのか(第87類で検討できるのか)

目線合わせのために、代表例を「当たりを付ける早見表」として整理します。最終決定は個別仕様で変わるため、ここではあくまで検討の出発点として扱ってください。

自動車用センサーの代表例と、検討に上がりやすい見出し

  • 車載カメラ系
    第85類の85.25には、テレビカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラレコーダー等が含まれます。ADASカメラやサラウンドビューは、この周辺が候補になりやすい領域です。 (Canada Border Services Agency)
  • ミリ波レーダー系
    第85類の85.26には、レーダー装置、無線航行援助装置、無線遠隔制御装置が掲げられています。一般に車載レーダーは、この見出しの検討が避けられません。 (Canada Border Services Agency)
  • 圧力・流量・レベルなどのプロセス系センサー
    第90類の90.26は、液体や気体の流量、液位、圧力などを測定または検査する機器を対象にしています。燃料、冷媒、吸気、ブレーキ等、車両内の流体を扱うセンサーは、この枠に入り得ます。 (Canada Border Services Agency)
  • ガス分析・排ガス関連センサー
    第90類の90.27には、ガスまたは煙の分析装置など、物理的・化学的分析の機器が含まれます。排ガス関連の分析用途はこの見出しが論点になります。 (Canada Border Services Agency)
  • 上記に当てはまらない測定・検査機器
    第90類の90.31は、同章の他の見出しに特掲されない測定・検査機器を扱います。仕様によってはここが候補になることがあります。 (Canada Border Services Agency)
  • いわゆる「自動車の部分品」
    第87類の87.08は、87.01から87.05の自動車の部分品・附属品を対象にします。ただし前述のとおり、セクションXVII注記の除外に当たる場合は、車用と識別できても8708にできないケースがあります。 (Canada Border Services Agency)

3. 自動車用センサー分類リスク一覧(深掘り版)

ここからが本題です。現場で起きやすい「分類ミスの型」を、原因と対策まで含めて掘り下げます。

リスク1 品名や業界呼称だけで決めてしまう

起きる理由
センサーは略称が多く、同じ呼び名でも機能が異なります。例えば「センサーECU」「センサーモジュール」は、純粋な検知素子なのか、演算・制御まで含むのかで分類論点が変わります。

典型的な失敗
仕入先のインボイス品名だけを見て、既存品の税番を流用する。

打ち手
仕様書から、最低限次を揃えます。検知対象、測定原理、出力(アナログ、デジタル、画像、電波)、演算の有無、制御ループの有無、通信機能の有無、単体販売か車両組込みか。分類は「現物の提示状態」で決まるという原則も、要注意です。 (Canada Border Services Agency)


リスク2 何でも8708に寄せたくなる

起きる理由
調達や設計の目線では「車の部品」だからです。しかしHSでは、部分品の考え方が適用されない除外が明確に存在します。電気機器(第85類)や第90類の物品は、車用で識別できても「部分品扱い」から外れる可能性があります。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
カメラやレーダー、測定機器を「車に付くから」と8708で通そうとして差し戻される。

打ち手
最初にセクションXVII注記の除外リストを確認し、該当するなら第85類・第90類側から検討を始める。部分品に寄せるのは、除外に当たらないことを確認してからです。 (Canada Border Services Agency)


リスク3 より具体的な見出しを飛ばして、一般的な見出しに逃げる

起きる理由
分類は「最も具体的な記述」を優先するのが基本です。例えば、車用だからと部分品に寄せるより、品名や機能を具体的に指す見出しがあれば、そちらが優先される考え方が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
一旦90.31や8708に入れておけばよい、と考えてしまう。

打ち手
候補見出しが複数出たら、具体性の比較を必ず行う。どの見出しが「物そのもの」を名指ししているか、見出し文言で説明できるか、を文章で残しておく。


リスク4 複合モジュールの「本体」が何かを決められない

起きる理由
現代のセンサーは、検知素子だけでなく、基板、演算、信号処理、筐体、コネクタ、場合によっては通信機能まで含みます。複合品として複数見出しが競合することが増えます。分類はルールに従って順に判断します。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
BOMの主要部材の価格比だけで「本体」を決めてしまい、機能の説明と矛盾する。

打ち手
「何をする装置か」を先に言語化し、その機能に最も整合する見出しを探す。価格比は補助情報に留め、機能説明が主役になるように整理する。


リスク5 測定なのか、自動制御なのかを取り違える

起きる理由
測るだけの機器と、設定値に合わせて制御する機器では、議論の土俵が変わります。第90類には、自動制御に関する見出しの適用範囲が注記で示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
センサー名義で購入しているが、実は制御機能を持つユニットで、分類根拠が崩れる。

打ち手
入力(測定値)と出力(制御信号)の関係が、制御ループとして閉じているかを確認する。制御目標値を保持し、実測値を一定に保つ設計か、という観点で仕様を切る。


リスク6 専用性と汎用性の証拠が弱く、後から説明が崩れる

起きる理由
部分品の議論では、「専ら又は主として」どれに使うかが焦点になります。セクションXVII注記でも、部分品・附属品が、どの用途に適するかが分類に影響する旨が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
車載専用と主張したいのに、販促資料や仕様が他用途も示してしまっている。

打ち手
設計仕様、認証要件、耐環境条件、車載専用品番体系、OEM向け契約書や用途限定条項など、「車載主用途」を裏付ける証拠を揃える。


リスク7 国・地域で下位桁が違うのに、他国コードを流用する

起きる理由
HSは6桁が国際共通ですが、多くの国はそれより下位の桁を独自に細分化します。EUは8桁の体系を使うとされています。 (EU Trade)

典型的な失敗
ある国で通ったコードを、別の国でも同じだと思い込み、申告で不整合が出る。

打ち手
輸出入先ごとに、6桁までは共通、下位桁は各国の関税率表で確定する、という運用に切り替える。社内マスタも、6桁と国別下位桁を分けて管理する。


リスク8 HS改正でのコードずれを放置する

起きる理由
HSは技術や貿易の変化に応じて更新され、WCOはおおむね5から6年周期で改正すると説明しています。EU側の解説でも、直近の改正が2022年に発効した旨が示されています。 (World Customs Organization)

典型的な失敗
旧版の税番をそのまま使い続け、監査や照会で説明不能になる。

打ち手
年次でHS改正点を点検し、影響品目の洗い出しとマスタ更新を必ず行う。関税率表は少なくとも年1回以上更新され得る、という前提で体制を組む。 (Canada Border Services Agency)


リスク9 事前教示を取らずに量産・大量出荷に入る

起きる理由
分類に不確実性が残るまま量産すると、通関現場で止まったときの損失が大きくなります。EUには、分類の法的確実性のためにBTIを取得する仕組みがあり、一般に3年間有効でEU全域で拘束力を持つ、と説明されています。 (Taxation and Customs Union)

日本でも、輸入前に税番や税率について照会し回答を得る事前教示制度があり、条件を満たす書面回答は通関時に添付でき、原則3年間有効である旨が示されています。 (Japan Customs)

典型的な失敗
量産後に分類見解が割れ、取引価格を見直す羽目になる。

打ち手
不確実性が残る品目ほど、事前教示やBTIなどの制度を活用して、分類の前提を固める。コストではなく保険として扱う。


リスク10 サプライヤー提供のHSコードを無批判に採用する

起きる理由
サプライヤーのHSコードは、相手国前提だったり、梱包状態やセット構成が違ったりします。さらに、分類は申告者側の責任になる場面が多く、説明責任が自社に残りやすいのが現実です。

典型的な失敗
サプライヤーのインボイス記載をそのまま社内マスタ化し、製品改版で破綻する。

打ち手
サプライヤーHSは参考情報として受け取り、社内で根拠文言と注記を添えて決裁する。品番変更、基板変更、通信追加などの設計変更は、分類再評価のトリガーとして制度化する。


4. 失敗しないための実務フレーム(ビジネス向け)

最後に、現場で回る形に落とします。分類は担当者の勘に寄せるほど、属人化して事故が増えます。おすすめは、次の手順での標準化です。

ステップ1 技術情報を一枚にまとめる

最低限、次を一枚で説明できる状態にします。

  1. 検知対象と測定原理
  2. 出力の種類(電圧、デジタル信号、画像、電波など)
  3. 演算や制御の有無
  4. 通信機能の有無
  5. 提示状態(単体、モジュール、ハーネス同梱、ECU一体など)

ステップ2 候補見出しを「章」でまず切る

車載だから第87類、ではなく、まず第85類か第90類かを疑う。セクションXVIIの除外に触れると8708にできないため、最初の分岐が重要です。 (Canada Border Services Agency)

ステップ3 ルール順に根拠を積み上げる

見出し文言と注記で決める、という原則から外れない。複数候補なら、具体性が高い方を優先する、という考え方で説明文を作る。 (Canada Border Services Agency)

ステップ4 国別の下位桁と税率を確定する

6桁の議論が固まったら、国ごとの下位桁と税率表で最終確定する。EUなどは独自の下位桁体系を持つため、輸出入先別の確定プロセスが不可欠です。 (EU Trade)

ステップ5 不確実なものは制度で確実性を買う

EUのBTI、日本の事前教示など、公式な事前確認を活用する。ビジネスとしては、損失の上限を固定するための投資です。 (Taxation and Customs Union)


まとめ 分類はコストではなく、経営リスクの制御である

自動車用センサーは、機能が高度化するほど、モジュール化するほど、分類論点が増えます。そして分類の間違いは、数字としては関税に見えても、実態は納期、在庫、取引条件、監査対応など、経営の複合損失として跳ね返ります。

HSは世界共通の6桁を軸に、多くの国で運用され、技術進化に合わせて定期改正されます。だからこそ、分類を現場の経験則に任せるのではなく、根拠と更新を前提にした運用に切り替えることが、最も費用対効果の高い対策になります。 (World Customs Organization)


免責
本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件の法的助言ではありません。最終的な分類は、実際の貨物の仕様、提示状態、契約条件、輸出入国の関税率表や運用により変わり得ます。公的制度や専門家を活用し、確定判断は必ず根拠とともに行ってください。 (Canada Border Services Agency)

EU:スマートテキスタイル(電子機能付き衣類)の分類基準を策定

EUでスマートテキスタイルが普及するほど、企業実務では「衣類なのか、電気機器なのか」という関税分類の迷いが増えます。EUは、こうした境界領域の製品について、単発の解釈ではなく、CN運用の枠組みの中で判断の一貫性を担保する仕組みを整備してきました。本稿では、スマートテキスタイルを巡るEUの分類基準が、実務上どのように組み立てられているかを、一次情報に基づいて整理します。 (Taxation and Customs Union)

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  1. スマートテキスタイルとは何か
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    スマートテキスタイルは、一般に「スマート(インテリジェント)テキスタイル/繊維製品」を対象に、定義やカテゴリ分けが議論されている領域です。国際標準化の文脈では、ISO/TR 23383:2020 が、スマートテキスタイルと繊維製品の定義や類型化を扱う文書として位置づけられています。 (ISO)

実務上のスマートテキスタイルは、例えば次のような特徴を持ちます。

  1. 導電糸や配線を繊維に織り込む
  2. センサー、発光、加温、通信などの電子機能を衣類に付与する
  3. 電子モジュールが縫い付け固定か、着脱式かで輸入時の姿が変わる

この「輸入時の姿」と「主要な機能」が、EUの関税分類を左右します。

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2. EUの関税分類はCNが軸になる
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EUでの関税分類は、HSを基礎にした8桁体系のCombined Nomenclature(CN)が中核です。CNは、共通関税率の適用と対外貿易統計の双方の要請を満たすための分類体系として説明されています。 (Taxation and Customs Union)

加えて、TARIC(EU Customs Tariff)は、CNを土台に、貿易救済や規制措置などの情報を紐づけて運用する実務基盤です。TARICの法的基礎がCouncil Regulation (EEC) No 2658/87であることも、欧州委員会が明示しています。 (Taxation and Customs Union)

またCNは毎年更新され、官報で公表される運用です。これは、毎年の改訂と公表が制度として定着していることを示します。 (Taxation and Customs Union)

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3. 「EUの分類基準」とは何を指すのか
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スマートテキスタイルに限らず、EUは分類のブレを抑えるために、複数の手段を組み合わせています。EU側の資料では、加盟国間で解釈が割れた場合に、分類規則、CN説明注、分類ステートメント等で統一的な分類を確保する旨が述べられています。 (Taxation and Customs Union)

ここが重要です。つまり「基準を策定」といっても、ひとつの包括ガイドラインで一気に規定するより、次のように積み上げで基準が形作られます。

  1. 分類規則(特定商品のCN分類を法的に確定)
  2. CN説明注(解釈指針を官報で明確化)
  3. BTI(個別企業が法的安定性を得るための仕組み)
  4. 公開データベースでの参照性向上(CLASS等)

この流れを補強する動きとして、欧州委員会は「分類規則の統合リストを公表した」と発表しています。実務者が過去の分類規則を横断的に参照しやすくするための環境整備といえます。 (Taxation and Customs Union)

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4. スマートテキスタイルで実務判断が割れやすいポイント
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スマートテキスタイルは、繊維と電子の複合製品です。EU実務で争点になりやすい判断軸を、制度の建て付けから逆算して整理すると、次の順序になります。

  1. 輸入時の提示形態がどうなっているか
    ・衣類に電子部品が縫い付け固定か
    ・電子モジュールが着脱式で、別梱包か
    ・複数の構成品が「セット」として提示されるのか

この「輸入時点の姿」が違うと、同じ製品コンセプトでも分類ロジックが変わります。

  1. 主要機能と客観的特性は何か
    ・衣類としての着用が主で、電子は補助的か
    ・電子機能が主で、衣類は保持体や装着体に近いのか
    ・通信、計測、加温、発光など、何が価値の中心か

EUの分類は、宣伝文句よりも、構造や機能など客観的特性に引き寄せて判断されやすいのが特徴です。

  1. 複数素材や複合品のとき、どの要素が「本体」を決めるか
    この点は、スマートウオッチ用ストラップに関するCN説明注が、分かりやすい実例になります。EUは、スマートウオッチ(通信機器側の分類になり得る機器)に専用設計されたストラップであっても、ストラップ単体で提示される限り、ストラップとして分類されることを明確にしています。さらに、ストラップが複数素材から成る場合は、一般規則3(b)の「本質的特性」により素材を決める、と説明しています。 (EUR-Lex)

この考え方は、スマートテキスタイルにもそのまま波及します。
・電子機器に接続する部材でも、単体提示なら「部材側の分類」に残る場合がある
・複合素材なら「本質的特性」をどれが与えるかが焦点になる

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5. 企業が取るべき実務対応
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スマートテキスタイルは、分類の迷いが起きやすい一方、事前に手を打てる領域でもあります。

  1. 分類ドシエの作り込み
    ・BOM、回路図、着脱構造、電源の有無、通信方式、使用手順、洗濯可否
    ・輸入時の提示形態(同梱か別梱か、セット扱いか)を明文化
    この資料が薄いほど、分類の再現性が落ちます。
  2. CLASSで先行情報を検索する
    欧州委員会は、CLASS(分類文書、CNノート、TARIC情報、BTI決定等を参照する入口)を公開しています。まずは既存の整理を探索するのが近道です。 (European Commission)
  3. BTIで法的安定性を取りに行く
    Access2Marketsの解説では、BTIは税関当局が出す法的決定であり、EU域内で3年間有効で、申請者とEUの全税関当局を拘束すると説明されています。スマートテキスタイルのような境界製品では、BTIの費用対効果が高くなりやすい領域です。 (EU貿易)
  4. 分類規則とCN説明注の更新を追う
    欧州委員会が分類規則の統合リストを公表した事実は、企業側も「点のBTI」だけでなく「面の動向」を追う必要があることを示唆します。 (Taxation and Customs Union)
  5. 原産地規則への波及を必ず試算する
    衣類として分類されるのか、電気機器として分類されるのかで、EPAやFTAの品目別規則の読み方が変わります。衣料品が一般にHS 61類または62類に入り、原産地規則の確認が必要になることは、JETROの解説でも触れられています。スマートテキスタイルは、ここに「分類ブレ」が加わるため、分類と原産地は必ずセットで検証してください。 (ジェトロ)

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6. まとめ
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スマートテキスタイルのEU分類は、単一の新ルールが突然降ってくるというより、CNの枠組みの中で、分類規則、CN説明注、BTI、公開システムを通じて基準が積み上がっていく性格が強い分野です。 (Taxation and Customs Union)

実務での勝ち筋は明確です。

  1. 輸入時の提示形態を設計し、文書化する
  2. 主要機能と本質的特性を、客観資料で説明できるようにする
  3. CLASSで探索し、必要ならBTIで確定させる
  4. 分類変更が原産地規則と関税率に与える影響まで同時に試算する

CBPが「燃料ポンプ+液面センサー一体品」の再分類を提案した件を、実務目線で読み解く:一体品の分類リスク

米国の税関当局CBPが、車載向けの「燃料ポンプと燃料レベルセンサー(液面センサー)が一体となったユニット」について、過去の分類見解を見直し、別のHS番号へ動かす提案を公表したと報じられています。結論から言うと、従来「液面計測(9026)」として扱ってきたものを、「内燃機関用のポンプ(8413)」として扱う方向の提案で、一般税率ベースでは無税から2.5%へ変わり得る、というのがポイントです。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

以下、ビジネスマン向けに、何が起きているのか、なぜ重要か、今すぐ何をすべきかを整理します。


1. 何が起きているのか:提案の概要と期限

報道ベースでは、CBPは2025年12月31日付のCustoms Bulletinで、燃料ポンプ+燃料レベルセンサーの一体品(fuel sender等と呼ばれることが多い)について、ポンプとしての分類(HTSUS 8413.30.90)へ再分類し、関連する既存の判断(NY 809868)を撤回する提案を出しています。コメント期限は2026年1月31日とされています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

重要なのは、これは「確定」ではなく「提案」である点です。とはいえ、コメント募集は、裏を返せばCBPが一定の結論を持って動いているサインでもあり、影響を受ける企業は手当てが必要です。


2. そもそも過去はどう分類されていたのか:NY 809868の読みどころ

1995年のNY 809868では、対象品は「燃料ポンプ部分」と「フロート(浮き)式の液面センサー部分」を持つアセンブリで、燃料タンク内に挿入され、液面変化に応じた電気信号をメーターへ送る、と説明されています。 (Customs Mobile)

当時の整理は実務的で、機能が2つあり(ポンプ=8413、液面センサー=9026)、特定の単独見出しがないとして、GRI 3(c)により「番号の後ろに出てくる方」を採って9026に寄せた、というロジックでした。 (Customs Mobile)

ここが今回の論点の出発点です。すなわち「二機能品をどう扱うか」を、CBPが別の理屈で組み替えようとしている、という構図になります。


3. 今回CBPはなぜ「ポンプ(8413)」に寄せたいのか

報道では、CBPはこの一体品を「複合機械(composite machines)」として捉え、主たる機能はタンクからエンジンへ燃料を送ること=ポンプが中核であり、液面センサーの情報は有用だが付随的だ、という立て付けで説明しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

要するに、昔の「二機能だから最後の番号(GRI 3(c))」ではなく、いまは「主機能で決める」という考え方で、ポンプ側に寄せたい、という発想です。


4. 企業への影響:関税だけでは終わらない

4-1. 関税コストの増加可能性

HTS 9026.10.20(電気式の液面計測等)は、USITCのHTS検索でも一般税率がFree(無税)として表示されます。 (hts.usitc.gov)
一方、8413.30.9090等の内燃機関用ポンプ類は、CBPの他の分類例でも2.5%が示されています。 (rulings.cbp.gov)

例えば年間輸入CIF価格が10百万ドル相当なら、単純計算で追加関税コストは25万ドル規模になり得ます(一般税率のみの概算)。

ただし、USMCAなどの特恵で結果的にゼロになるケースもあり得るため、最終影響は「原産地」「特恵適用」「追加関税の有無」まで含めて試算が必要です。

4-2. 税率以外の二次影響

HS番号が変わると、社内の品目マスター、通関指示、価格転嫁ロジック、引当金、顧客との契約条項(関税負担者)に波及します。加えて、特定国追加関税や統計、社内監査の観点でも「なぜこの番号なのか」を説明できる状態が必要になります。


5. 実務対応:今すぐやるべきことチェック

  1. 該当品の棚卸し
    ・fuel sender、fuel pump module、fuel level sensor integrated などの呼称で買っている部品を抽出
    ・部品表(BOM)と仕様書で、ポンプ機能とセンサー機能の構成、出力信号、使用場所(タンク内搭載など)を確認
  2. 影響試算
    ・現行分類(9026)での輸入実績金額を集計
    ・仮に8413へ動いた場合の一般税率差分(概算)を算出
    ・特恵適用の可否(USMCA等)で結果がどう変わるかも並行試算
  3. 根拠資料の整備
    ・機能説明書、回路やフロート機構の説明、ポンプ単体での販売有無、センサー単体での使用可能性など
    ・分類ロジックを、GRIと注記に沿って文章化(監査対応のミニドシエ化)
  4. コメント提出の検討
    法的には、CBPは解釈変更や撤回に当たり公告と意見募集を行う枠組みを持っています。 (法律情報研究所)
    影響が大きい企業ほど、技術的事実と分類ロジックを整理した上で、期限までに意見提出する価値があります(賛否は別として、実態を正確に伝えること自体が重要です)。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

6. コメント作成で争点になりやすい論点

・製品の「主たる機能」は何か(車両としての役割、故障時のフェイル動作、制御上の重要度)
・ポンプとセンサーが機能的に不可分か、それとも単なる同梱か
・市場実態として「燃料計測ユニット」として買われているのか、「燃料供給ユニット」として買われているのか
・説明資料(カタログ、図面、ECU信号仕様)が、どちらの機能を主として描いているか

ここは、技術部門の文言がそのまま分類ロジックに直結します。通関・法務・技術で同じ絵を見て、言葉を揃えるのが最短ルートです。


まとめ:今回の話は「一体品の分類リスク」が表面化した典型例

今回の提案は、古い判断でも見直され得ること、そして二機能一体品が「最後の番号」から「主機能」へ寄せられる可能性があることを示しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

確定前の今だからこそ、影響棚卸し、試算、根拠整備、必要ならコメント提出までを一気通貫で行うのが、最もコスト効率の良い対応になります。