WCOがHS2028改正を正式に確定。企業実務で注視すべき4領域はセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維

2026年1月21日、世界税関機構WCOはHS2028改正(HS2028 amendments)が受け入れられたことを公表しました。HSは各国の関税率表、統計、各種規制の土台であり、改正は通関部門だけでなく、調達、設計、営業、経営管理にまで影響します。発効は2028年1月1日で、いまは実務準備のための移行期間に入った局面です。 (wcoomd.org)

本稿では、公式一次情報で確認できる範囲を軸に、改正の全体像と、タイトルで挙げたセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維がなぜ経営課題になりやすいのか、そして今から何を準備すべきかを整理します。



1. 何が決まったのか。HS2028の確定内容とスケジュール

HS2028は2028年1月1日に発効。改正は299セット

WCOの公表によれば、HS2028の改正は299セットの変更で構成され、HS2022と比べて新設と削除が発生しています。公式発表では、見出しは1,229、号は5,852となり、HS2022比で見出し6本と号428本が新設、見出し5本と号172本が削除と説明されています。 (wcoomd.org)

また、レビューサイクルは通常5年ですが、今回はCOVID-19等の影響で2019年7月から2025年6月までの6年に延長されたことも明記されています。 (wcoomd.org)

改正の意思決定はHS条約第16条の勧告として進んだ

実務上重要なのは、HS2028がHS条約第16条に基づく勧告パッケージとして取りまとめられた点です。2025年3月10日から21日のHSC第75回会合で、HS2028の改正勧告が暫定採択され、WCO理事会に回付される流れが示されています。 (wcoomd.org)

そのうえで、WCOは2026年1月21日に改正が受け入れられたと公表し、2028年1月1日に発効するとしています。 (wcoomd.org)


2. 公式発表で強調された主題と、企業にとっての意味

WCOの発表は、今回の改正が単なる品目名の整理ではなく、政策目的や規制執行を支える役割が強まっている点を繰り返し強調しています。 (wcoomd.org)

公衆衛生と緊急対応をHSで見える化

WCOは、ワクチンと医療緊急物資の見える化を主要成果として詳細に説明しています。ワクチンはHS2022の30.02から再編され、ヒト用ワクチンを30.07、その他を30.08とする新見出しと詳細な号構造が導入されるとしています。 (wcoomd.org)

環境対応は廃棄物と単回使用製品を中心に具体化

環境面では、プラスチック廃棄物をバーゼル条約の枠組みに整合させる形で整理し、単回使用という概念を法的注記で明示して分類と統計の一貫性を高める方向が示されています。 (wcoomd.org)

この方向性は、企業実務に直結します。HSは関税率だけでなく、規制対象品の特定、禁制品管理、サプライチェーンの可視化、統計分類、さらにEPAやFTAの原産地規則運用にも影響します。HS改正は、企業データの基準軸が入れ替わるイベントと捉えるべきです。


3. なぜセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維が注目領域なのか

WCOの公式発表は公衆衛生と環境を前面に出していますが、HS2028は技術進化に合わせて分類を簡素化し、新製品や組成変化に対応することも狙いに入っています。EUはWCO理事会での第16条勧告採択に向けた説明文書で、具体例として半導体とトランスデューサ、清掃ロボット、ドローン、e-bike等を挙げ、分類容易化の対象になっていると明記しています。 (EUR-Lex)

ここでいうトランスデューサは、センサー領域と重なります。さらに、EV電池とスマート繊維は、環境規制と複合製品化という二つの潮流の中心にあり、HS改正が引き金となって各国が8桁や10桁で細分や運用明確化を進めやすい領域です。


4. 領域別に起きやすい論点と、実務での備え

以下は、HS2028で何番がどう変わるという断定ではなく、公式文書が示す方向性と、各国当局の分類実務で繰り返し問題化している境界から、企業が先回りで潰すべき論点を整理したものです。

4-1. センサー。争点は機能の複合化と分類境界

センサーは単体部品ではなく、信号処理、通信、電源、ソフトウェアを組み込んだモジュールとして取引されることが増えています。すると、測定機器なのか、電気機器なのか、あるいは特定機械の部分品なのかという境界論点が表面化します。

スマート繊維の事例ですが、米国CBPの分類事前教示では、センサー付きコンプレッション衣類、データモジュール、USBケーブルのセットについて、セットの本質的特性は衣類側にあるとして衣類側の号でセットを分類しつつ、データモジュールを単体輸入すれば測定機器側、ケーブルは電気導体側に分けて分類しています。複合製品がどこで分解され、どこでセットとして扱われるかが、税番と税率を左右する典型です。 (CROSS)

企業側の備えは、製品仕様の情報粒度を上げることです。最低限、測定対象、測定原理、出力形態、通信機能の有無、当該機械専用品か汎用品か、部品としての完成度を、型番単位でマスタ化しておくと、改正後の移行でも揺れにくくなります。

4-2. 半導体。品名より実体で分類される時代に入っている

半導体は、ウェハ、ダイ、パッケージ品、モジュール、基板実装品など形態が多様で、同じ用途でも供給形態が変われば分類ロジックが変わります。EU文書が半導体とトランスデューサを、分類容易化の対象例として名指しした点は、改正の方向性を読むうえで重要です。 (EUR-Lex)

企業実務では、材料名や用途説明だけでは足りません。取引単位が何か、電気的機能がどこまで内蔵されているか、複数機能のうち主たる機能は何かを、設計部門と調達部門が共通言語で説明できる状態を作る必要があります。HS2028対応を機に、半導体関連は分類ドシエを標準化し、品目説明のテンプレート化まで踏み込むと効果が出ます。

4-3. EV電池。環境規制と国際取引の両面で監視が強まる

EV電池は、製品としての分類だけでなく、使用済み電池や電池廃棄物、リサイクル原料としての取引が増えること自体が、分類と規制運用を難しくします。OECDは、リチウムイオン電池の循環型バリューチェーンを進めるうえで、廃棄物としての位置付けの明確化、輸送保管の安全規則の整合、設計標準の調和、回収とリサイクルの規制目標などが必要だと指摘しています。 (OECD)

一方、WCOはHS2028で環境保護を主要テーマに掲げ、廃棄物分類を国際環境枠組みに整合させ、単回使用概念まで法的注記で明確化する方向を打ち出しています。 (wcoomd.org)

この二つを合わせて読むと、EV電池は次の3点を社内で先に固めるのが合理的です。新品のセル、モジュール、パックの取引単位と機能定義。車両と一体輸入される場合と単体輸入の扱い。使用済み電池と廃棄物の線引きに必要な証憑と、物流側の安全規則対応。ここが曖昧だと、HS改正後に税番移行だけでなく、規制対応や廃棄物該当性の判断まで連鎖して止まります。

4-4. スマート繊維。複合製品の典型で、分類の根拠が問われる

スマート繊維は、繊維製品としての性格と、電子機能としての性格を同時に持ちます。実務上の争点は、電子部品が着脱可能か、着脱後も繊維製品としての価値が成立するか、機能の中心はどちらかです。

先のCBP事例は示唆が大きく、衣類にセンサーが縫い込まれ、モジュールが着脱式で、セットとして販売される場合に、セットの本質は衣類側にあるという評価が採られています。モジュール単体は測定機器側、ケーブルは導体側と分けて評価されています。スマート繊維は設計段階で、何を一体化し、何を分離するかが、分類と税率に直結する領域です。 (CROSS)


5. いま企業が着手すべきHS2028対応ロードマップ

WCOは、2028年1月1日の発効までに相関表の整備、HS関連ツールと刊行物の更新、各国実装の準備が進むと説明しています。企業側も、この2年で何を終えるかを逆算する必要があります。 (wcoomd.org)

  1. 影響棚卸し
    自社の輸出入上位品目を、HS6桁と国別8桁10桁まで含めて一覧化し、売上、原価、関税インパクト、規制リスクで優先順位を付けます。
  2. 二重管理の設計
    2027年のどこかで、現行コードとHS2028想定コードを並記できる状態を作ります。ERP、品目マスタ、通関指示書、原産地判定ロジックのどこで切り替えるかを先に決めます。
  3. 分類ドシエの標準化
    センサー、半導体、スマート繊維は、製品説明の粒度が勝負です。設計仕様、機能、構成、用途、写真、データシートを型番単位で一枚にまとめ、当局照会や監査で即答できる形にします。
  4. 国別実装の監視
    HS6は共通でも、各国は8桁以降の細分と運用で差が出ます。主要仕向け国の改正版タリフ公布とガイダンスを継続監視し、通関委託先とも切替手順を合意します。
  5. 先行してルールを取りに行く
    グレーになりやすい品目は、主要国で事前教示制度の活用を検討します。改正後の初期は当局側も運用を固めるため、早期に根拠を確保した企業が有利になります。

6. まとめ。HS2028は分類改正であり、基準データの更新である

HS2028は、2026年1月21日に受け入れが公表され、2028年1月1日に発効します。改正は299セットで、見出しと号の新設と削除が伴います。 (wcoomd.org)

公衆衛生と環境が公式発表の主役ですが、EUの公式説明は半導体とトランスデューサを明示的に挙げ、技術進化に合わせた分類容易化が改正の柱であることも示しています。 (EUR-Lex)

さらにWCOは、HSそのものの分かりやすさと使いやすさを高めるための枠組み強化プロジェクトを進め、2033に向けたより深い見直しも議論しています。今回の改正対応は、次の改正を楽にする投資でもあります。 (wcoomd.org)

センサー、半導体、EV電池、スマート繊維は、複合化と規制強化の交点にあります。だからこそ、いま必要なのは税番を当てることではなく、税番が揺れないように仕様情報と根拠を整え、切替の手順を設計し、国別実装を監視することです。これを2年で終えた企業だけが、2028年の切替をコストではなく競争力に変えられます。

■HS2028■⑥規制・監視目的(環境、健康、安全保障)で取締り対象になりやすい品目関連のHSコード品目分類

環境、健康、安全保障で止まらないために企業が知るべき変化

2028年1月1日に発効するHS2028は、関税分類の更新という枠を超え、社会、環境、安全保障の観点で「特定品目を把握しやすくし、取締りやモニタリングをやりやすくする」方向性が明確に打ち出されています。EUの公式説明では、299セットの改正は貿易パターンや新技術の反映に加え、社会、環境、セキュリティ上の懸念に対応し、特定品目のコントロールと監視を容易にする目的を持つ、と整理されています。
WCOも、HS2028改正勧告パッケージがまとまり、2025年末に正式採択、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効するタイムラインを示しています。(世界税関機関)

この記事では、規制や監視の対象になりやすい品目群で、HS2028が企業実務にどんな影響を与え得るかを、ビジネスマン向けに整理します。


1. なぜ「規制・監視目的の品目」がHS2028で影響を受けやすいのか

HSコードは、関税率を決めるだけの番号ではありません。輸出入許可、危険物や有害化学物質の管理、廃棄物規制、制裁や輸出管理、取引審査やリスク選別など、行政の判断トリガーとして広く使われます。
そのため、規制や監視の対象になりやすい品目ほど、HS側で区分を細かくして「見分けやすくする」メリットが大きく、改正の優先度が上がります。EUの説明でも、取締りや監視をしやすくするための改正として、プラスチック廃棄物やワクチン、健康関連グループなどが例示されています。


2. HS2028で起きやすい変化のパターン

規制・監視に効くHS改正は、企業側から見ると次の形で現れやすいです。

  1. 見出しや号の新設、細分化
    対象品目を識別しやすくするため、区分を増やす動きです。ワクチンの粒度を上げる提案が典型例です。(WTO)
  2. 注記や定義の追加
    見分け方を明確にして、各国運用のブレを減らします。分類に必要な製品情報が増えやすい点が実務インパクトになります。
  3. 低取引量区分の整理
    一方で、取引量の少ない見出しや号を削除して体系を簡素化する動きも併存します。統計や社内マスターの連続性を確保する工夫が必要になります。

3. 環境で取締り対象になりやすい品目群

廃棄物、有害化学物質、持続可能性関連

3-1. プラスチック廃棄物は代表格

HS2028の改正例として、プラスチック廃棄物は公式に挙げられています。
また、WCOの地域会合報告でも、HS2028改正のカテゴリーとして「プラスチック廃棄物」が言及されています。
企業目線では、廃棄物の区分が細かくなるほど、材質、混合状態、汚染の有無など、分類と規制判断に必要な証拠が増えると見ておくべきです。

3-2. 国際条約で管理される有害化学物質は、HSと連動が強い

有害化学物質や農薬を国際的に管理する枠組みの一つにロッテルダム条約があります。WCOは、HSが各改正でロッテルダム条約の対象物質の変化を反映し、正当な貿易の監視とPIC手続への適合確認を可能にする、と説明しています。(世界税関機関)
さらに、HS2028の発効を待つ間でも統計上の追跡を可能にするため、WCOは各国に対し、特定化学物質について国内統計品目で追加細分を設けるよう推奨しています。例として、デカブロモジフェニルエーテルをHS 2909.30の下、PFOAとその塩をHS 2915.90の下で細分する推奨が示されています。(世界税関機関)
ここは、化学品を扱う企業ほど影響が直撃しやすい領域です。税番の変更だけでなく、SDSや成分証明、用途説明などの整備が、通関と規制対応の安定性を左右します。


4. 健康で取締り対象になりやすい品目群

ワクチン、医薬品、パンデミック対応物資

4-1. ヒト用ワクチンは、より細かい識別へ

WTOの公表情報では、HS2028で「ヒト用ワクチン」の新見出しを設け、複数の区分を置く提案が進んでいるとされています。(WTO)
パンデミック時に、統計と政策判断のためにワクチン分類の粒度を上げたいという問題意識が背景にあり、企業側には品目マスターの再設計や、製品属性の整理が求められます。

4-2. 医薬品はコード変更より「分類運用の厳密化」が効いてくる

WCOはHS委員会の会合成果として、WHOのINNリストに基づく医薬品物質について多数の分類整理が行われたことを公表しています。(世界税関機関)
これはHS本文の改正とは別枠ですが、医薬品や関連物資が当局にとって重要な監視対象であること、そして分類の統一運用が強く求められている現実を示します。ビジネスでは、成分特定の証拠や品名管理を軽視すると、照会や差戻しのコストが増えやすくなります。


5. 安全保障で取締り対象になりやすい品目群

違法薬物製造関連、爆発物前駆体、デュアルユース

5-1. 違法薬物製造に使われる物質のトラッキング強化

WCOの会合報告を引用した地域資料では、HS2028改正のカテゴリーとして「違法薬物製造に用いられる物質」が挙げられています。
規制対象になりやすい化学品は、合法用途と違法用途が混在しやすく、HSの識別力が上がるほど、企業側には用途説明、顧客審査、出荷管理の厳密さが求められます。

5-2. 爆発物前駆体など、合法流通品の悪用がリスクになる

WCOは2025年の国際取締り作戦で、爆発物前駆体などのデュアルユース品が不正に転用され得ること、税関がリスク選別と監視で重要な役割を担うことを強調しています。(世界税関機関)
HS2028の直接改正項目そのものは別途確認が必要ですが、安全保障分野では「品目を特定しやすいHS区分」が、取締り実務の基盤になります。企業側は、輸出管理や制裁スクリーニングのルールがHS参照で組まれている場合、HS変更が誤検知や見逃しにつながる点に注意が必要です。


6. 企業が受ける実務インパクト

止まりやすいのは、通関ではなく社内の情報連携

規制・監視目的の品目は、HSの区分が細かくなるほど「説明できるデータ」が必要になります。しかも影響は関税部門だけに留まりません。

・輸出入許可、危険物、有害化学物質管理などの法令対応
・制裁、輸出管理、取引審査システムのルール更新
・ERPや品目マスター、統計分析の連続性確保
・取引先へのHS版指定と証拠要求の標準化

この連鎖を短時間で処理するには、HS2022とHS2028の対応表が鍵になります。WCOもHS2028とHS2022の相関表を整備し、実装のための重要ツールになると位置づけています。(世界税関機関)


7. いまからできる最小の準備

規制対象品目ほど、先に動いた企業が勝つ

  1. 規制、監視に紐づく品目を棚卸しする
    環境、健康、安全保障のいずれかに関係する品目をリスト化し、現行HSと関連法令、社内ルールの紐付けを見える化します。
  2. 分類に効く属性情報を品目マスターに追加する
    化学品は成分と用途、廃棄物は材質と混合状態、ヘルスケアは用途区分など、分類と規制判断の根拠になる情報を最小セットで整備します。(世界税関機関)
  3. HS変更が効くシステムを先に特定する
    制裁、輸出管理、危険物、許認可、物流制御、統計集計など、HS参照のルールが埋め込まれているシステムを洗い出し、相関表で一括更新できる構造にします。(世界税関機関)

まとめ

HS2028は、新技術対応だけでなく、社会、環境、安全保障の観点から、特定品目の取締りとモニタリングを強化する目的が明確に示されています。
プラスチック廃棄物、ワクチン、有害化学物質、違法用途に転用され得る化学品やデュアルユース品は、まさにその中心にある領域です。

企業にとっての勝ち筋は、番号が変わってから慌てるのではなく、規制対象品目から先に、証拠とデータ項目を整え、HS2022とHS2028を接続できる状態を作ることです。これが2028年の切替で止まらない最短ルートになります。

■日本■ 2026年からヘビースクラップHSコードが2区分へ。何が変わり、実務はどう備えるか

鉄スクラップ取引の現場では、品種名として長く使われてきたヘビースクラップが、統計上の扱いでも大きく動きました。日本の輸出統計品目番号では、ヘビースクララップに相当する7204.49のヘビーくずが、2026年1月1日から2つに細分化されています。 (jisri.or.jp)

この変更は、単なる番号の付け替えではありません。厚さ6ミリメートルという明確な数値基準が入ることで、現場の選別、契約条件、申告根拠の作り方まで影響が及びます。

まず結論。2026年の新コードはこの2つ

ヘビーくずは、2026年1月1日版で次の2区分になっています。 (jisri.or.jp)

区分輸出統計細分要点
厚さが6ミリメートル以上7204.49-110最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であることが条件
その他7204.49-190上記以外。実務上は厚さ6ミリ未満側が中心

7204.49-110は、説明文でも厚さ6ミリ以上が明記されています。 (kanzei.or.jp)
7204.49-190は、品名概要として厚さ6ミリ未満のヘビーくずと整理されています。 (kanzei.or.jp)

ここで注意したいのは、いわゆる国際的なHS6桁が変わったというより、日本の輸出統計細分がより細かく分かれた、という性格が強い点です。実務ではこの枝番まで正しく入れて申告するため、影響は十分に大きいと考えるべきです。

ヘビーくずの定義が、数値で整理された

今回の見直しでは、ヘビーくずとは何か、どこまでが別物か、が文章で整理されています。

ヘビーくずの基本像は次のとおりです。

・鋼板、形鋼、レール、列車車体、船舶胴体、重機、ボンベ等の鉄鋼製品を切断、解体したもの
・圧縮成形されたプレスくずは除外
・1個当たり重量が1kg以上1,000kg以下
・寸法の目安として、厚さ1mm以上から500mm以下、幅または高さ300mm以上から500mm以下、長さ300mm以上から1,200mm以下が示されている

この整理の意味は大きく、税関側の判断軸が明確になる一方で、輸出者側も根拠を示せるように整備しないと、通関段階で止まりやすくなります。

分岐点は厚さ6ミリ。判断方法が実務向けに定義されている

今回の最大ポイントは、7204.49-110の判定方法が、現場で揉めやすいところまで踏み込んで定義されている点です。

・厚さ6ミリ以上とは、最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であること
・厚さ6ミリ未満のものと分けていないものは含めない、とされている

つまり、荷姿の中に6ミリ未満が混ざっているのにまとめて6ミリ以上として扱う、という運用はリスクが高い、というメッセージになります。

さらに、取引実務でよく出る等級呼称との対応も示されています。

・厚さ6ミリ以上は、HSまたはH1として取引されることがある
・厚さ6ミリ未満は、H2、H3またはH4として取引されることがある

統計番号の変更は、現場の商慣行に近い区分を税関手続きに持ち込んだ、と捉えると理解しやすいはずです。

なぜ今、細分化なのか。背景は資源循環の可視化

報道ベースでは、今回の改正は、輸出入の動きをより細かく把握して金属資源の流れを見える化し、国際資源循環の適正化につなげる狙いがある、と説明されています。 (イルミル)

一方で、現場負担が増えることへの懸念も強く、業界団体が反対や不安の声を上げていることも報じられています。 (鉄鋼・非鉄金属業界の専門紙「日刊産業新聞」)

ビジネス側として重要なのは、背景の是非よりも、税関実務がこの基準で動き始めたという事実です。基準が明文化された以上、事後的に説明できる体制がない企業ほど、遅延や差し戻し、追加確認の影響を受けやすくなります。

企業実務への影響。特に効くのは5点

1. HSマスターとNACCS連携の改修が必須

7204.49-110、7204.49-190は、NACCS用コードも付いて流通します。 (kanzei.or.jp)
社内の品目マスター、通関業者への指示票、インボイス品名、出荷システムのコード連携を、枝番まで含めて点検してください。

2. 選別と検収の定義が契約条件になる

厚さ6ミリの判定が入ると、仕入、ヤード選別、積込検収のどこで判定し、どの記録を残すかが、取引トラブルの焦点になります。特に最も薄い部分基準は、測り方を決めておかないと現場で判断が割れます。

3. 混載リスクが上がる

厚さ6ミリ未満と分けていないものを含めない、という書き方は、混載しているだけで110側が否定され得る設計です。
コンテナ単位、船積みロット単位で区分が明確になる運用に寄せるのが現実的です。

4. 通関で聞かれるポイントが変わる

従来は、ヘビーくずかどうかの説明で済んでいた場面でも、今後は厚さの根拠を聞かれる可能性が上がります。写真、計測表、検収基準書、ヤードの選別ルールなど、後から出せる証跡を整えておく方が強いです。

5. 輸出管理の観点も再確認

該当品目には、輸出貿易管理令の参照が付されています。取引先や仕向地によっては、分類だけでなく輸出管理側の確認も併走させるべきです。 (kanzei.or.jp)

すぐに使える実務チェックリスト

・社内の品目マスターで、7204.49-110と7204.49-190を別品目として登録したか
・ヤード選別で、厚さ6ミリの判定基準と測定方法を文章化したか
・最も薄い部分の厚さを測る運用と、記録様式を決めたか
・混載を避ける積込ルールを設定し、通関業者に共有したか
・契約書、検収条件、クレーム条件に厚さ基準を反映したか
・輸出管理上の確認が必要な仕向地、取引先に対して、社内フローを更新したか (kanzei.or.jp)

まとめ。細分化は、トラブル予防の仕組みでもある

今回の改正は、ヘビースクラップを厚さ6ミリで2区分し、定義と判定方法を明文化した点に本質があります。 (jisri.or.jp)
統計を細かくする狙いは資源循環の可視化にあるとされますが、企業側から見ると、通関で説明できる材料を揃えれば揃えるほど、通関遅延や差し戻しを減らせる設計になったとも言えます。 (イルミル)

現場の選別、契約条件、申告根拠の3点をセットで整備し、通関業者と同じ判定軸で動ける状態にすること。それが、2026年以降のヘビースクラップ取引で最も効く実務対応になります。

自動車用センサーの分類リスクを深掘りする HSコードの税番ミスが、利益と納期を静かに削る理由

自動車用センサーは、いまや部品ではなく「事業の要」になりました。ADAS向けのカメラやミリ波レーダー、排ガス向けのガスセンサー、圧力や流量の各種センサーまで、車両の価値はセンサーとソフトウェアで決まると言っても過言ではありません。

一方で、サプライチェーンが国境を跨ぐほどに増えるのが、HSコードの分類ミスです。HSは世界の200以上の国や経済圏で使われる国際的な品目分類で、6桁コードを基礎に、関税や統計などに用いられます。しかも技術や貿易の変化に合わせて定期的に改正されます。ここでの判断を誤ると、関税コストだけでなく、通関遅延、監査対応、取引条件の見直しなど、ビジネス全体に波及します。 (World Customs Organization)

本稿は、以前の「自動車用センサー分類リスク一覧」を、実務に落ちる粒度まで掘り下げたものです。狙いは、現場で起きやすい失敗を、構造として理解し、再発しない運用に落とすことです。


1. なぜ自動車用センサーは分類が難しいのか

難しさの本質は、センサーが「車の部品」に見えやすい一方で、HSの世界では「何の部品か」より「何として機能するか」が強く問われる点にあります。

HSの解釈では、まず見出し(heading)と、セクション注や章注(Notes)に従って分類します。見出しのタイトルは参考であって、法的には見出し文言と注記が優先です。 (Canada Border Services Agency)

ここで自動車業界の落とし穴になるのが、「車両の部分品(8708)に寄せたくなる心理」です。確かに第87類には「自動車の部分品及び附属品(87.08)」があります。 (Canada Border Services Agency)

しかし、セクションXVIIの注記では、部分品や附属品の考え方が適用されない品目が明確に列挙されています。代表的な除外として、電気機器(第85類)や測定・検査等の機器(第90類)が挙がります。つまり、車に付くからといって、自動的に8708になるわけではありません。 (Canada Border Services Agency)

センサーは、まさに第85類や第90類に該当しやすい典型例です。だからこそ、分類リスクが高いのです。


2. センサーを「税番を決める観点」で分類し直す

技術分類(レーダー、LiDAR、カメラ…)は開発や調達では有効ですが、HSの初動判断では別の切り口が効きます。ポイントは次の3つです。

  1. 測定・検査の機器か(第90類になりやすい)
  2. 画像・電波などの電気機器か(第85類になりやすい)
  3. それでも部分品として扱えるのか(第87類で検討できるのか)

目線合わせのために、代表例を「当たりを付ける早見表」として整理します。最終決定は個別仕様で変わるため、ここではあくまで検討の出発点として扱ってください。

自動車用センサーの代表例と、検討に上がりやすい見出し

  • 車載カメラ系
    第85類の85.25には、テレビカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラレコーダー等が含まれます。ADASカメラやサラウンドビューは、この周辺が候補になりやすい領域です。 (Canada Border Services Agency)
  • ミリ波レーダー系
    第85類の85.26には、レーダー装置、無線航行援助装置、無線遠隔制御装置が掲げられています。一般に車載レーダーは、この見出しの検討が避けられません。 (Canada Border Services Agency)
  • 圧力・流量・レベルなどのプロセス系センサー
    第90類の90.26は、液体や気体の流量、液位、圧力などを測定または検査する機器を対象にしています。燃料、冷媒、吸気、ブレーキ等、車両内の流体を扱うセンサーは、この枠に入り得ます。 (Canada Border Services Agency)
  • ガス分析・排ガス関連センサー
    第90類の90.27には、ガスまたは煙の分析装置など、物理的・化学的分析の機器が含まれます。排ガス関連の分析用途はこの見出しが論点になります。 (Canada Border Services Agency)
  • 上記に当てはまらない測定・検査機器
    第90類の90.31は、同章の他の見出しに特掲されない測定・検査機器を扱います。仕様によってはここが候補になることがあります。 (Canada Border Services Agency)
  • いわゆる「自動車の部分品」
    第87類の87.08は、87.01から87.05の自動車の部分品・附属品を対象にします。ただし前述のとおり、セクションXVII注記の除外に当たる場合は、車用と識別できても8708にできないケースがあります。 (Canada Border Services Agency)

3. 自動車用センサー分類リスク一覧(深掘り版)

ここからが本題です。現場で起きやすい「分類ミスの型」を、原因と対策まで含めて掘り下げます。

リスク1 品名や業界呼称だけで決めてしまう

起きる理由
センサーは略称が多く、同じ呼び名でも機能が異なります。例えば「センサーECU」「センサーモジュール」は、純粋な検知素子なのか、演算・制御まで含むのかで分類論点が変わります。

典型的な失敗
仕入先のインボイス品名だけを見て、既存品の税番を流用する。

打ち手
仕様書から、最低限次を揃えます。検知対象、測定原理、出力(アナログ、デジタル、画像、電波)、演算の有無、制御ループの有無、通信機能の有無、単体販売か車両組込みか。分類は「現物の提示状態」で決まるという原則も、要注意です。 (Canada Border Services Agency)


リスク2 何でも8708に寄せたくなる

起きる理由
調達や設計の目線では「車の部品」だからです。しかしHSでは、部分品の考え方が適用されない除外が明確に存在します。電気機器(第85類)や第90類の物品は、車用で識別できても「部分品扱い」から外れる可能性があります。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
カメラやレーダー、測定機器を「車に付くから」と8708で通そうとして差し戻される。

打ち手
最初にセクションXVII注記の除外リストを確認し、該当するなら第85類・第90類側から検討を始める。部分品に寄せるのは、除外に当たらないことを確認してからです。 (Canada Border Services Agency)


リスク3 より具体的な見出しを飛ばして、一般的な見出しに逃げる

起きる理由
分類は「最も具体的な記述」を優先するのが基本です。例えば、車用だからと部分品に寄せるより、品名や機能を具体的に指す見出しがあれば、そちらが優先される考え方が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
一旦90.31や8708に入れておけばよい、と考えてしまう。

打ち手
候補見出しが複数出たら、具体性の比較を必ず行う。どの見出しが「物そのもの」を名指ししているか、見出し文言で説明できるか、を文章で残しておく。


リスク4 複合モジュールの「本体」が何かを決められない

起きる理由
現代のセンサーは、検知素子だけでなく、基板、演算、信号処理、筐体、コネクタ、場合によっては通信機能まで含みます。複合品として複数見出しが競合することが増えます。分類はルールに従って順に判断します。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
BOMの主要部材の価格比だけで「本体」を決めてしまい、機能の説明と矛盾する。

打ち手
「何をする装置か」を先に言語化し、その機能に最も整合する見出しを探す。価格比は補助情報に留め、機能説明が主役になるように整理する。


リスク5 測定なのか、自動制御なのかを取り違える

起きる理由
測るだけの機器と、設定値に合わせて制御する機器では、議論の土俵が変わります。第90類には、自動制御に関する見出しの適用範囲が注記で示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
センサー名義で購入しているが、実は制御機能を持つユニットで、分類根拠が崩れる。

打ち手
入力(測定値)と出力(制御信号)の関係が、制御ループとして閉じているかを確認する。制御目標値を保持し、実測値を一定に保つ設計か、という観点で仕様を切る。


リスク6 専用性と汎用性の証拠が弱く、後から説明が崩れる

起きる理由
部分品の議論では、「専ら又は主として」どれに使うかが焦点になります。セクションXVII注記でも、部分品・附属品が、どの用途に適するかが分類に影響する旨が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
車載専用と主張したいのに、販促資料や仕様が他用途も示してしまっている。

打ち手
設計仕様、認証要件、耐環境条件、車載専用品番体系、OEM向け契約書や用途限定条項など、「車載主用途」を裏付ける証拠を揃える。


リスク7 国・地域で下位桁が違うのに、他国コードを流用する

起きる理由
HSは6桁が国際共通ですが、多くの国はそれより下位の桁を独自に細分化します。EUは8桁の体系を使うとされています。 (EU Trade)

典型的な失敗
ある国で通ったコードを、別の国でも同じだと思い込み、申告で不整合が出る。

打ち手
輸出入先ごとに、6桁までは共通、下位桁は各国の関税率表で確定する、という運用に切り替える。社内マスタも、6桁と国別下位桁を分けて管理する。


リスク8 HS改正でのコードずれを放置する

起きる理由
HSは技術や貿易の変化に応じて更新され、WCOはおおむね5から6年周期で改正すると説明しています。EU側の解説でも、直近の改正が2022年に発効した旨が示されています。 (World Customs Organization)

典型的な失敗
旧版の税番をそのまま使い続け、監査や照会で説明不能になる。

打ち手
年次でHS改正点を点検し、影響品目の洗い出しとマスタ更新を必ず行う。関税率表は少なくとも年1回以上更新され得る、という前提で体制を組む。 (Canada Border Services Agency)


リスク9 事前教示を取らずに量産・大量出荷に入る

起きる理由
分類に不確実性が残るまま量産すると、通関現場で止まったときの損失が大きくなります。EUには、分類の法的確実性のためにBTIを取得する仕組みがあり、一般に3年間有効でEU全域で拘束力を持つ、と説明されています。 (Taxation and Customs Union)

日本でも、輸入前に税番や税率について照会し回答を得る事前教示制度があり、条件を満たす書面回答は通関時に添付でき、原則3年間有効である旨が示されています。 (Japan Customs)

典型的な失敗
量産後に分類見解が割れ、取引価格を見直す羽目になる。

打ち手
不確実性が残る品目ほど、事前教示やBTIなどの制度を活用して、分類の前提を固める。コストではなく保険として扱う。


リスク10 サプライヤー提供のHSコードを無批判に採用する

起きる理由
サプライヤーのHSコードは、相手国前提だったり、梱包状態やセット構成が違ったりします。さらに、分類は申告者側の責任になる場面が多く、説明責任が自社に残りやすいのが現実です。

典型的な失敗
サプライヤーのインボイス記載をそのまま社内マスタ化し、製品改版で破綻する。

打ち手
サプライヤーHSは参考情報として受け取り、社内で根拠文言と注記を添えて決裁する。品番変更、基板変更、通信追加などの設計変更は、分類再評価のトリガーとして制度化する。


4. 失敗しないための実務フレーム(ビジネス向け)

最後に、現場で回る形に落とします。分類は担当者の勘に寄せるほど、属人化して事故が増えます。おすすめは、次の手順での標準化です。

ステップ1 技術情報を一枚にまとめる

最低限、次を一枚で説明できる状態にします。

  1. 検知対象と測定原理
  2. 出力の種類(電圧、デジタル信号、画像、電波など)
  3. 演算や制御の有無
  4. 通信機能の有無
  5. 提示状態(単体、モジュール、ハーネス同梱、ECU一体など)

ステップ2 候補見出しを「章」でまず切る

車載だから第87類、ではなく、まず第85類か第90類かを疑う。セクションXVIIの除外に触れると8708にできないため、最初の分岐が重要です。 (Canada Border Services Agency)

ステップ3 ルール順に根拠を積み上げる

見出し文言と注記で決める、という原則から外れない。複数候補なら、具体性が高い方を優先する、という考え方で説明文を作る。 (Canada Border Services Agency)

ステップ4 国別の下位桁と税率を確定する

6桁の議論が固まったら、国ごとの下位桁と税率表で最終確定する。EUなどは独自の下位桁体系を持つため、輸出入先別の確定プロセスが不可欠です。 (EU Trade)

ステップ5 不確実なものは制度で確実性を買う

EUのBTI、日本の事前教示など、公式な事前確認を活用する。ビジネスとしては、損失の上限を固定するための投資です。 (Taxation and Customs Union)


まとめ 分類はコストではなく、経営リスクの制御である

自動車用センサーは、機能が高度化するほど、モジュール化するほど、分類論点が増えます。そして分類の間違いは、数字としては関税に見えても、実態は納期、在庫、取引条件、監査対応など、経営の複合損失として跳ね返ります。

HSは世界共通の6桁を軸に、多くの国で運用され、技術進化に合わせて定期改正されます。だからこそ、分類を現場の経験則に任せるのではなく、根拠と更新を前提にした運用に切り替えることが、最も費用対効果の高い対策になります。 (World Customs Organization)


免責
本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件の法的助言ではありません。最終的な分類は、実際の貨物の仕様、提示状態、契約条件、輸出入国の関税率表や運用により変わり得ます。公的制度や専門家を活用し、確定判断は必ず根拠とともに行ってください。 (Canada Border Services Agency)

■HS2028■⑤半導体、トランスデューサ等のエレクトロニクス関連のHSコード

8541と8542の境界が、関税だけでなく原産地と輸出管理まで動かす

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(HS条約第16条)に基づく次期HSです。WCOは、HS委員会(HSC)がHS2028向けの改正勧告を暫定採択し、2025年末の正式採択後に2026年1月に公表、2028年1月1日に発効すると説明しています。(世界税関機関)
EUの公式説明文書でも、HS2028の改正目的として「新技術や新製品を反映し分類を容易にする」例の一つに、半導体とトランスデューサが明示されています。

この記事では、半導体とトランスデューサ(センサー等)で、企業実務にどのような影響が出やすいかを、一次情報で確度高く言える範囲に絞って整理します。
注意点として、どのHS6桁が新設・統合・移動するかの確定は、WCOが公表するHS2028の法文と相関表(HS2022↔HS2028)で最終確認が必要です。ここでは、変化の方向性と、実務上「どこが動くと困るのか」を具体化します。(世界税関機関)


1. なぜ半導体とトランスデューサがHS2028の注目領域なのか

理由はシンプルです。分類が揺れやすいからです。
半導体は、単体デバイス、IC、複合パッケージ、センサー内蔵モジュールなど形態の進化が速く、従来の品名だけでは「どこまでが8541(半導体デバイス)で、どこからが8542(電子集積回路)か」「機器(90類など)に寄るのか」が揺れやすい分野です。

EUはHS2028改正の狙いとして、新技術の反映と分類容易化を掲げ、半導体とトランスデューサを具体例に挙げています。つまり、この周辺で文言や注記、区分の調整が入り得るという前提で企業側は備えるべきです。


2. まず押さえる 現行HSの分岐点

トランスデューサは定義がある。仕様書が弱いと誤分類が起きる

半導体とトランスデューサの分類は、第85類の注記が実務の分岐点になります。米国のSchedule B(輸出統計品目表)や豪州関税表でも、8541・8542のために「半導体デバイス」と「半導体ベーストランスデューサ」を定義し、さらに多成分IC(MCO)まで定義しています。(Census.gov)

ここで重要なのは次の3点です。

2-1. 半導体ベーストランスデューサは、センサーやアクチュエータ等を含む

定義上、半導体ベーストランスデューサは「半導体ベースのセンサー、アクチュエータ、レゾネータ、オシレータ」を含み、物理量や化学現象を電気信号に変換する等の固有機能を持つ離散デバイスと整理されています。(Census.gov)
自動車・産業機器・医療機器で多いセンサー素子やMEMS系の一部が、まさにこの定義に乗ります。

2-2. 多成分IC(MCO)は、ICとセンサー等が一体化したものを想定している

MCOは「1個以上の集積回路に、シリコンベースのセンサー等や一定の受動部品機能を組み合わせ、PCB実装用の単一ボディとして不可分にしたもの」と定義されています。(Census.gov)
つまり、同じ“センサー”でも、単体素子なのか、ICと一体のパッケージなのかで、8541と8542の分岐が生まれます。

2-3. 8541と8542は、原則として他の見出しより優先する

注記では、定義に合致する限り、8541・8542が機能ベースで他の見出しに引っ張られることを抑える優先規定が置かれています(例外は8523など)。(Census.gov)
これは「最終用途が自動車部品だから部品の見出しへ」という短絡が通りにくいことを意味します。


3. HS2028で企業に起きやすい具体的な影響

番号が変わるだけではなく、判定に必要な情報が増える

HS2028で半導体・トランスデューサ領域が動くとき、企業が現場で直面しやすい変化は大きく3つです。

3-1. 8541か8542かの判断が、より仕様依存になる

半導体ベーストランスデューサの定義は「半導体基板上に作られ、物理・化学現象を電気信号へ変換する等の固有機能を持つ離散デバイス」という技術要件を含みます。(Census.gov)
HS2028で分類容易化が進むほど、この技術要件を説明できない製品が、税関照会や差戻しの対象になりやすくなります。特に、センサー素子とセンサーモジュールを同一カテゴリで運用している会社ほど、影響が出やすいです。

3-2. センサー内蔵パッケージの扱いが、社内マスターの整合を崩しやすい

MCOの定義は、まさにセンサー内蔵ICなどの実装形態を想定しています。(Census.gov)
HS2028側で文言や区分が調整されると、同一製品群でも「この型番は8542寄り」「この型番は8541寄り」の差が出て、関税率だけでなく、原産地規則のCTC判定や統計集計が分断されがちです。

3-3. 各国の国内コード(8桁・10桁)の再整列が起きやすい

HSは6桁が国際共通で、各国はその下に独自の細分を置きます。HS6桁が動けば、国内の8桁・10桁は連鎖的に動きます。WCOは299セットの改正からなるHS2028勧告を公表し、各国は自国の関税・統計分類を整合させる必要があります。(世界税関機関)
半導体は国別の統計・規制連動が強い分野なので、国内細分の変更は現場影響が大きくなります。


4. ビジネス部門に効く論点

関税だけではない。原産地と輸出管理が同時に動く

半導体はサプライチェーンが複雑で、分類変更が与える影響が大きいことが指摘されています。業界資料でも、8541・8542の注記や定義が技術進化に合わせて改訂されてきた経緯が整理されています。(世界税関機関)
ビジネス側が押さえるべきは、分類変更が次の領域に波及する点です。

  1. 関税と追加関税の適用品目が変わり得る
  2. FTAやEPAの原産地規則で、CTCの起点コードが変わり得る
  3. 統計コードの変更で、取引実績やKPIが連続しなくなる
  4. 輸出管理や制裁対応で、コード参照のルールがある場合に差分が出る

5. いまからできる準備

HS2028の公表テキストが出た瞬間に動ける会社が勝つ

最後に、半導体・トランスデューサ領域で、準備効果が高い順に並べます。

  1. 製品を3階層に分ける
    半導体デバイス単体(8541候補)
    電子集積回路やMCO(8542候補)
    モジュールや完成品(他章の可能性が残る)
  2. 仕様情報の最小セットをマスターに持たせる
    半導体基板上の構造か
    固有機能がトランスデューサか
    ICと不可分に一体化しているか
    これらは注記の定義に直結します。(Census.gov)
  3. HS2022とHS2028の二重管理を前提に設計する
    WCOは2026年1月の公表と2028年1月1日の発効を示しています。切替直前の一括置換は高リスクです。(世界税関機関)
  4. 高額品目と規制連動品目は、分類根拠メモを先に作る
    後から説明できる根拠があるかどうかで、照会対応コストが決まります。

まとめ

HS2028は、半導体とトランスデューサを含む新技術領域で、分類を容易にする方向が公式に示されています。
そして現行制度でも、トランスデューサやMCOは第85類注記で技術的に定義されており、製品形態の違いが8541と8542の分岐を生みます。(Census.gov)

企業にとっての実務インパクトは、番号の付け替え以上に、分類の説明責任が増え、マスター整合と原産地・規制連動が同時に揺れる点です。
いまのうちに、製品群を階層分解し、定義に効く仕様項目を整備しておけば、HS2028の確定テキストと相関表が出た瞬間に、最短で安全な移行ができます。

HSCFのアップデート予定

HSCF、HS2028対応に向けて動きます(HS2022とHS2028を同時表示へ)

HS2028の内容が、少しずつ輪郭を帯びてきました。
分類が変わるということは、現場の「調べる」「付番する」「説明する」の手間が、これまでと同じでは済まないということでもあります。

そして当然、HSCFも“何もしない”わけにはいきません。

そこで今回、HSCFの機能拡充を企画しています。


いまのHSCFは「HS2022の付番ツール」

正式にHS2028が運用開始されるまでは、HSCFは基本的に HS2022のHSコード付番・検索ツールとしてお使いいただく形になります。

ただ、HS2028が近づくにつれ、こんなニーズが増えてくるはずです。

  • 「HS2022ではこのコードだけど、HS2028だとどうなる?」
  • 「分類変更の影響を、早めに把握しておきたい」
  • 「取引先や社内に、変更点を説明できる材料がほしい」

そこで:HS判定結果に「HS2028だとどう変わるか」も表示します

HSCFでHSコードを検索・判定したときに、

  • HS2022での検索結果(現行)
    に加えて、
  • HS2028ではどうなるか(変更見込み)

並べて確認できるようにする予定です。

つまり、ひと目で「現行」と「次期」の差分がつかめる状態を目指します。


※ただし、HS2028確定までは「暫定表示」です

この機能は、HS2028が正式に確定するまで、あくまで暫定情報としての提示になります。
(確定版が出次第、表示内容も順次アップデートしていく想定です。)


HS2028の本格運用が始まってから慌てるのではなく、
“変わる前提で準備できる”状態を、HSCFでつくっていきます。

EU:スマートテキスタイル(電子機能付き衣類)の分類基準を策定

EUでスマートテキスタイルが普及するほど、企業実務では「衣類なのか、電気機器なのか」という関税分類の迷いが増えます。EUは、こうした境界領域の製品について、単発の解釈ではなく、CN運用の枠組みの中で判断の一貫性を担保する仕組みを整備してきました。本稿では、スマートテキスタイルを巡るEUの分類基準が、実務上どのように組み立てられているかを、一次情報に基づいて整理します。 (Taxation and Customs Union)

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  1. スマートテキスタイルとは何か
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    スマートテキスタイルは、一般に「スマート(インテリジェント)テキスタイル/繊維製品」を対象に、定義やカテゴリ分けが議論されている領域です。国際標準化の文脈では、ISO/TR 23383:2020 が、スマートテキスタイルと繊維製品の定義や類型化を扱う文書として位置づけられています。 (ISO)

実務上のスマートテキスタイルは、例えば次のような特徴を持ちます。

  1. 導電糸や配線を繊維に織り込む
  2. センサー、発光、加温、通信などの電子機能を衣類に付与する
  3. 電子モジュールが縫い付け固定か、着脱式かで輸入時の姿が変わる

この「輸入時の姿」と「主要な機能」が、EUの関税分類を左右します。

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2. EUの関税分類はCNが軸になる
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EUでの関税分類は、HSを基礎にした8桁体系のCombined Nomenclature(CN)が中核です。CNは、共通関税率の適用と対外貿易統計の双方の要請を満たすための分類体系として説明されています。 (Taxation and Customs Union)

加えて、TARIC(EU Customs Tariff)は、CNを土台に、貿易救済や規制措置などの情報を紐づけて運用する実務基盤です。TARICの法的基礎がCouncil Regulation (EEC) No 2658/87であることも、欧州委員会が明示しています。 (Taxation and Customs Union)

またCNは毎年更新され、官報で公表される運用です。これは、毎年の改訂と公表が制度として定着していることを示します。 (Taxation and Customs Union)

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3. 「EUの分類基準」とは何を指すのか
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スマートテキスタイルに限らず、EUは分類のブレを抑えるために、複数の手段を組み合わせています。EU側の資料では、加盟国間で解釈が割れた場合に、分類規則、CN説明注、分類ステートメント等で統一的な分類を確保する旨が述べられています。 (Taxation and Customs Union)

ここが重要です。つまり「基準を策定」といっても、ひとつの包括ガイドラインで一気に規定するより、次のように積み上げで基準が形作られます。

  1. 分類規則(特定商品のCN分類を法的に確定)
  2. CN説明注(解釈指針を官報で明確化)
  3. BTI(個別企業が法的安定性を得るための仕組み)
  4. 公開データベースでの参照性向上(CLASS等)

この流れを補強する動きとして、欧州委員会は「分類規則の統合リストを公表した」と発表しています。実務者が過去の分類規則を横断的に参照しやすくするための環境整備といえます。 (Taxation and Customs Union)

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4. スマートテキスタイルで実務判断が割れやすいポイント
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スマートテキスタイルは、繊維と電子の複合製品です。EU実務で争点になりやすい判断軸を、制度の建て付けから逆算して整理すると、次の順序になります。

  1. 輸入時の提示形態がどうなっているか
    ・衣類に電子部品が縫い付け固定か
    ・電子モジュールが着脱式で、別梱包か
    ・複数の構成品が「セット」として提示されるのか

この「輸入時点の姿」が違うと、同じ製品コンセプトでも分類ロジックが変わります。

  1. 主要機能と客観的特性は何か
    ・衣類としての着用が主で、電子は補助的か
    ・電子機能が主で、衣類は保持体や装着体に近いのか
    ・通信、計測、加温、発光など、何が価値の中心か

EUの分類は、宣伝文句よりも、構造や機能など客観的特性に引き寄せて判断されやすいのが特徴です。

  1. 複数素材や複合品のとき、どの要素が「本体」を決めるか
    この点は、スマートウオッチ用ストラップに関するCN説明注が、分かりやすい実例になります。EUは、スマートウオッチ(通信機器側の分類になり得る機器)に専用設計されたストラップであっても、ストラップ単体で提示される限り、ストラップとして分類されることを明確にしています。さらに、ストラップが複数素材から成る場合は、一般規則3(b)の「本質的特性」により素材を決める、と説明しています。 (EUR-Lex)

この考え方は、スマートテキスタイルにもそのまま波及します。
・電子機器に接続する部材でも、単体提示なら「部材側の分類」に残る場合がある
・複合素材なら「本質的特性」をどれが与えるかが焦点になる

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5. 企業が取るべき実務対応
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スマートテキスタイルは、分類の迷いが起きやすい一方、事前に手を打てる領域でもあります。

  1. 分類ドシエの作り込み
    ・BOM、回路図、着脱構造、電源の有無、通信方式、使用手順、洗濯可否
    ・輸入時の提示形態(同梱か別梱か、セット扱いか)を明文化
    この資料が薄いほど、分類の再現性が落ちます。
  2. CLASSで先行情報を検索する
    欧州委員会は、CLASS(分類文書、CNノート、TARIC情報、BTI決定等を参照する入口)を公開しています。まずは既存の整理を探索するのが近道です。 (European Commission)
  3. BTIで法的安定性を取りに行く
    Access2Marketsの解説では、BTIは税関当局が出す法的決定であり、EU域内で3年間有効で、申請者とEUの全税関当局を拘束すると説明されています。スマートテキスタイルのような境界製品では、BTIの費用対効果が高くなりやすい領域です。 (EU貿易)
  4. 分類規則とCN説明注の更新を追う
    欧州委員会が分類規則の統合リストを公表した事実は、企業側も「点のBTI」だけでなく「面の動向」を追う必要があることを示唆します。 (Taxation and Customs Union)
  5. 原産地規則への波及を必ず試算する
    衣類として分類されるのか、電気機器として分類されるのかで、EPAやFTAの品目別規則の読み方が変わります。衣料品が一般にHS 61類または62類に入り、原産地規則の確認が必要になることは、JETROの解説でも触れられています。スマートテキスタイルは、ここに「分類ブレ」が加わるため、分類と原産地は必ずセットで検証してください。 (ジェトロ)

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6. まとめ
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スマートテキスタイルのEU分類は、単一の新ルールが突然降ってくるというより、CNの枠組みの中で、分類規則、CN説明注、BTI、公開システムを通じて基準が積み上がっていく性格が強い分野です。 (Taxation and Customs Union)

実務での勝ち筋は明確です。

  1. 輸入時の提示形態を設計し、文書化する
  2. 主要機能と本質的特性を、客観資料で説明できるようにする
  3. CLASSで探索し、必要ならBTIで確定させる
  4. 分類変更が原産地規則と関税率に与える影響まで同時に試算する

HS2028に備えるための主要国8桁公表状況(2026年1月16〜20日点検)

2028年に向けて進むHS改正(HS2028)は、通関部門だけの話ではありません。関税コスト、原産地管理(EPA・FTA)、輸出入規制、商品マスタ、売上集計、価格改定、契約条件まで、企業の意思決定の前提データをまとめて揺らします。
今回の記事では、主要国の8桁(各国の拡張桁を含む実務上のコード)に関して、どこまで情報が公表プロセスに入っているかを、2026年1月16〜20日の公開情報点検という前提で整理し、経営・事業サイドが取るべき実務アクションまで落とし込みます。

まず前提整理:HS2028はいつ何が起きるのか

世界税関機構(WCO)の枠組みで、HSは国際標準として6桁までが共通です。HS2028はその6桁体系の改正で、各国は自国の関税率表・統計分類をそれに合わせて改訂していきます。WCOの発表では、HS2028改正案は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れが示されています。 (World Customs Organization)

ここで重要なのは、企業実務で普段使っているのは6桁だけではないという点です。多くの国は6桁の上に、国内事情に合わせた桁(8桁、9桁、10桁など)を積んで運用します。つまり、HS2028の6桁改正は、その上に載る国内拡張桁の組み替えを引き起こします。

8桁公表状況とは何を指すのか

ここでいう「8桁公表状況」は、単に「WCOの6桁改正が出たか」ではなく、次のような段階を含めて実務的に捉えるのが有効です。

  • 段階1:WCOのHS2028(6桁改正)の公表
  • 段階2:各国当局が、自国の拡張体系(8桁や10桁など)へ落とすための国内プロセスを開始
  • 段階3:当局がドラフト(案)を公開し、意見募集や事前周知を開始
  • 段階4:法令・官報・公定データベースとして確定版を公表
  • 段階5:通関システム、申告様式、統計、FTA運用などへ実装し、適用開始

企業にとって痛いのは、段階4や5で初めて慌てることです。データ更新やシステム改修は時間がかかり、品目数が多いほど遅れが致命傷になります。だからこそ、段階2や3が見えた時点で社内の準備を始めるのが勝ち筋です。

主要国の8桁周辺の制度と、HS2028に向けた公表状況(点検期間:2026年1月16〜20日)

以下は、各国の「桁の考え方」と「公表プロセスの見え方」を、一次情報を中心にまとめたものです。国によって“8桁”の意味合いが異なるので、そこも含めて比較します。

米国:8桁と10桁が実務の中心、2026年2月にドラフト公開予定という具体的マイルストーンがある

米国のHTS(Harmonized Tariff Schedule)は、国際HS(4桁、6桁)に加え、米国独自の8桁・10桁の区分を持ちます。USITC(米国国際貿易委員会)も、国際HSは4桁・6桁、米国独自部分が8桁・10桁である旨を説明しています。 (usitc.gov)

HS2028対応に関しては、USITCが改正反映プロセスを開始しており、2026年2月に暫定ドラフト(HTS改訂案)を公表して意見募集、その後2026年9月に大統領向け報告を提出する見通しが公式に示されています。 (usitc.gov)

ビジネス的に重要なポイントはここです。
主要国の中で、ドラフト公開の時期がここまで明確に読める国は多くありません。米国向け売上が大きい企業ほど、2026年2月のドラフトを「分類番号の更新イベント」ではなく、「関税と規制の再設計イベント」として扱う必要があります。

実務アクションの例

  • 米国売上上位品目、対米調達上位品目を棚卸しし、現行HTSの8〜10桁でリスト化
  • 2026年2月のドラフト公開時に、該当品目が分割・統合・移動していないかを即時確認
  • 影響が大きい品目は、社内分類根拠(なぜその番号なのか)を説明可能にしておく

EU:8桁はCN(Combined Nomenclature)。毎年更新され官報で公表される仕組みが明確

EUの8桁はCN(Combined Nomenclature)で、国際HS(6桁)にEU独自の2桁を加えた8桁体系です。CNは関税率の決定や統計に使われ、毎年更新され、官報(EU Official Journal)で公表される仕組みになっています。 (EU Trade)

直近の例として、EUは2026年適用のCNを2025年10月31日に公表し、2026年1月1日から適用する旨を欧州委員会が案内しています。 (Taxation and Customs Union)

HS2028に向けた意味合いは次の通りです。

  • EUでは、8桁(CN)が実務上の基準であり、更新と公表が毎年必ず回る
  • HS2028の6桁変更は、CNの年次改訂の中で反映されていく可能性が高い
  • 企業側は「次のCN改訂で何が変わるか」を継続監視し、品目マスタや価格テーブルに反映する運用が必要

実務アクションの例

  • EU向けの主要品目について、現行CNと社内品目マスタを必ず一致させる
  • CN改訂のたびに、統計・関税・規制(対象品目指定)に波及がないかを点検する

日本:実務は9桁(統計品目番号)。6桁HS+国内3桁という構造が明確で、改正時はマッピングが鍵

日本の通関実務では、9桁の統計品目番号が基本です。日本税関は、9桁の統計品目番号が6桁HS+国内3桁で構成されることを明示しています。 (Japan Customs)

また、日本税関は「Japan’s Tariff Schedule」として、改訂版を日付付きで公表しています(2026年1月1日版が掲載されていることが確認できます)。 (Japan Customs)

HS2028に向けて日本企業が注意すべき点は、6桁変更に連動して9桁の国内3桁が見直され、過去データの継続性が崩れるリスクがあることです。
輸入の関税計算、EPA適用、調達コスト配賦、品目別採算などで「前年同一品目の比較」が効かなくなりやすい局面です。

実務アクションの例

  • 主要品目について、9桁をただの番号としてではなく、分類根拠とセットで管理する
  • HS改正に備え、現行9桁→将来体系への対照表(マッピング)を前提にしたデータ設計へ切り替える

中国:8桁ベースの国内細分が公式に示されており、6桁変更の影響は8桁再編に直結する

中国税関の公開資料では、HSに基づく中国の分類(CCCS)について、8桁の細分があり、最初の6桁はHSに対応し、7桁目と8桁目が国内細分である旨が説明されています。 (Customs.gov.cn)

また、ジェトロの整理では、中国の税則の品目総数について、HSコード8桁分類ベースでの言及があります(特定年版の税則に基づく説明)。 (JETRO)

HS2028の観点では、WCOの6桁が動けば、中国の7〜8桁(国内細分)も、分類ロジックの再整理を迫られる可能性が高いということです。特に中国は規制・許認可・監督条件が品目に紐づくケースが多いため、番号変更は通関可否や必要書類に波及し得ます。

実務アクションの例

  • 中国向け主要品目について、該当する規制や必要書類がHSに紐づいていないかを先に棚卸し
  • 取引先(輸入者)と、どの番号を使うかの合意形成と証憑整備を早めに開始

韓国:10桁体系。6桁HSを超える国内拡張が明確で、HS改正時は10桁の組み替えが発生する

韓国税関(Korea Customs Service)は、韓国が10桁コードを使用し、6桁HSは世界共通で、各国が6桁以降を独自に拡張する旨を明示しています。 (customs.go.kr)

HS2028に向けては、韓国の10桁体系のうち、影響が出るのは「国内拡張部分だけ」とは限りません。6桁の構造が変われば、その下に積まれた10桁全体の再編が起き得ます。

実務アクションの例

  • 韓国向けの主要品目について、現行10桁を輸入者と突合し、品名と仕様が一致する状態を作る
  • FTAの運用が絡む場合、品目別規則がどの桁を参照しているかを確認し、改正時の影響を事前に試算する

英国:コードは最長10桁。ただし関税は8桁を基礎にする場面が多く、9〜10桁が追加条件を左右する

英国政府のガイダンスでは、英国の申告で用いるcommodity codeは最長10桁になり得ると説明されています。 (Business Growth Service)
さらに、関税率は多くの場合最初の8桁で設定される一方で、9桁目と10桁目が関税や適用措置に影響することがある、と明記されています。 (GOV.UK)

これは、8桁だけを見て「だいたい合っている」と判断すると、措置や税率の取りこぼしが起きることを意味します。HS2028で6桁が動くと、英国の8桁と10桁は連鎖的に更新対象になります。

実務アクションの例

  • 英国向けは、8桁で一次判定しつつ、最終的な適用措置まで含めて10桁で確定する運用へ
  • サンクション、規制、セーフガード等の対象品目は、10桁までの一致を前提に管理する

まとめ表:主要国の「桁」と「公表プロセスの見え方」

地域・国実務で中心になる桁公式に確認できるポイントHS2028に向けて今見えるマイルストーン
WCO(国際)6桁2026年1月公表、2028年1月1日発効の流れ (World Customs Organization)まず6桁改正の確定内容を把握することが全ての起点
米国8桁・10桁8桁と10桁は米国独自 (usitc.gov)2026年2月ドラフト、2026年9月報告 (usitc.gov)
EU8桁(CN)CNは8桁で毎年更新、官報公表 (EU Trade)年次改訂の枠でHS2028反映が進む可能性が高い
日本9桁9桁=6桁HS+国内3桁 (Japan Customs)将来の対照表(マッピング)前提のデータ設計が重要
中国8桁(国内細分)8桁細分で、最初の6桁がHS、7〜8桁が国内 (Customs.gov.cn)6桁改正は8桁再編に直結しやすい
韓国10桁韓国は10桁を使用 (customs.go.kr)6桁変更に伴い10桁の組み替えが発生し得る
英国最長10桁(関税は8桁基礎が多い)9〜10桁が措置や税額に影響する場合あり (GOV.UK)8桁だけの管理で止めず、10桁確定まで運用設計

経営・事業サイドが今やるべきこと:通関の話を「経営課題」に変える手順

ここからが本題です。HS改正対応は、突き詰めると「社内の型」を作る仕事です。大きく外さないために、次の順番で着手するのが現実的です。

1) 影響範囲を「品目」ではなく「売上と原価」で切る

  • 売上上位、粗利上位、調達額上位の品目から着手する
  • 国別に、どの桁で申告しているか(EUならCN、米国ならHTSなど)を揃える

2) 二層管理に切り替える

  • 国際6桁:全世界で共通の骨格として管理
  • 国別拡張(8〜10桁):国ごとの申告・税率・規制の確定値として管理

この二層を混ぜると、改正時に詰みます。特に「海外拠点が現地コードで管理している」「本社は6桁しか持っていない」といった分断は、改正局面でデータ整合が崩壊しやすい典型パターンです。

3) 取引先との合意を先に作る

  • 輸入者側が最終判断権を持つ国が多い
  • 自社だけで番号を決めたつもりでも、相手国税関で止まると意味がない

結論:2026年は「公表を待つ年」ではなく「仕組みを作る年」

2026年1月16〜20日の時点で見える構図はシンプルです。

  • HS2028は、2026年1月公表、2028年1月1日発効という国際スケジュールが明確 (World Customs Organization)
  • 各国の実務コードは、6桁の上に国内拡張(8〜10桁)があり、国ごとに桁も運用も異なる (EU Trade)
  • 米国は2026年2月にドラフト公開予定という具体的な山場がある (usitc.gov)
  • EUや日本は、年次改訂と公表の仕組みが制度として確立しているので、改正局面では「改訂情報の取り込み運用」が勝負になる (Taxation and Customs Union)

HS2028対応で差がつくのは、情報収集の速さよりも、社内データと業務運用の型を先に作れるかどうかです。
次に何が出たら動くのか、そのトリガー(米国なら2026年2月、EUなら次のCN改訂情報、日本なら改訂版の公表と対照表など)を決め、監視と更新をルーチン化してください。

必要であれば、この枠組みをそのまま社内向けの「HS2028対応ロードマップ(部門別タスク、マスタ設計、監視頻度、改正時の意思決定フロー)」に落とし込んだ雛形も、文章として作れます。

CBPが「燃料ポンプ+液面センサー一体品」の再分類を提案した件を、実務目線で読み解く:一体品の分類リスク

米国の税関当局CBPが、車載向けの「燃料ポンプと燃料レベルセンサー(液面センサー)が一体となったユニット」について、過去の分類見解を見直し、別のHS番号へ動かす提案を公表したと報じられています。結論から言うと、従来「液面計測(9026)」として扱ってきたものを、「内燃機関用のポンプ(8413)」として扱う方向の提案で、一般税率ベースでは無税から2.5%へ変わり得る、というのがポイントです。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

以下、ビジネスマン向けに、何が起きているのか、なぜ重要か、今すぐ何をすべきかを整理します。


1. 何が起きているのか:提案の概要と期限

報道ベースでは、CBPは2025年12月31日付のCustoms Bulletinで、燃料ポンプ+燃料レベルセンサーの一体品(fuel sender等と呼ばれることが多い)について、ポンプとしての分類(HTSUS 8413.30.90)へ再分類し、関連する既存の判断(NY 809868)を撤回する提案を出しています。コメント期限は2026年1月31日とされています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

重要なのは、これは「確定」ではなく「提案」である点です。とはいえ、コメント募集は、裏を返せばCBPが一定の結論を持って動いているサインでもあり、影響を受ける企業は手当てが必要です。


2. そもそも過去はどう分類されていたのか:NY 809868の読みどころ

1995年のNY 809868では、対象品は「燃料ポンプ部分」と「フロート(浮き)式の液面センサー部分」を持つアセンブリで、燃料タンク内に挿入され、液面変化に応じた電気信号をメーターへ送る、と説明されています。 (Customs Mobile)

当時の整理は実務的で、機能が2つあり(ポンプ=8413、液面センサー=9026)、特定の単独見出しがないとして、GRI 3(c)により「番号の後ろに出てくる方」を採って9026に寄せた、というロジックでした。 (Customs Mobile)

ここが今回の論点の出発点です。すなわち「二機能品をどう扱うか」を、CBPが別の理屈で組み替えようとしている、という構図になります。


3. 今回CBPはなぜ「ポンプ(8413)」に寄せたいのか

報道では、CBPはこの一体品を「複合機械(composite machines)」として捉え、主たる機能はタンクからエンジンへ燃料を送ること=ポンプが中核であり、液面センサーの情報は有用だが付随的だ、という立て付けで説明しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

要するに、昔の「二機能だから最後の番号(GRI 3(c))」ではなく、いまは「主機能で決める」という考え方で、ポンプ側に寄せたい、という発想です。


4. 企業への影響:関税だけでは終わらない

4-1. 関税コストの増加可能性

HTS 9026.10.20(電気式の液面計測等)は、USITCのHTS検索でも一般税率がFree(無税)として表示されます。 (hts.usitc.gov)
一方、8413.30.9090等の内燃機関用ポンプ類は、CBPの他の分類例でも2.5%が示されています。 (rulings.cbp.gov)

例えば年間輸入CIF価格が10百万ドル相当なら、単純計算で追加関税コストは25万ドル規模になり得ます(一般税率のみの概算)。

ただし、USMCAなどの特恵で結果的にゼロになるケースもあり得るため、最終影響は「原産地」「特恵適用」「追加関税の有無」まで含めて試算が必要です。

4-2. 税率以外の二次影響

HS番号が変わると、社内の品目マスター、通関指示、価格転嫁ロジック、引当金、顧客との契約条項(関税負担者)に波及します。加えて、特定国追加関税や統計、社内監査の観点でも「なぜこの番号なのか」を説明できる状態が必要になります。


5. 実務対応:今すぐやるべきことチェック

  1. 該当品の棚卸し
    ・fuel sender、fuel pump module、fuel level sensor integrated などの呼称で買っている部品を抽出
    ・部品表(BOM)と仕様書で、ポンプ機能とセンサー機能の構成、出力信号、使用場所(タンク内搭載など)を確認
  2. 影響試算
    ・現行分類(9026)での輸入実績金額を集計
    ・仮に8413へ動いた場合の一般税率差分(概算)を算出
    ・特恵適用の可否(USMCA等)で結果がどう変わるかも並行試算
  3. 根拠資料の整備
    ・機能説明書、回路やフロート機構の説明、ポンプ単体での販売有無、センサー単体での使用可能性など
    ・分類ロジックを、GRIと注記に沿って文章化(監査対応のミニドシエ化)
  4. コメント提出の検討
    法的には、CBPは解釈変更や撤回に当たり公告と意見募集を行う枠組みを持っています。 (法律情報研究所)
    影響が大きい企業ほど、技術的事実と分類ロジックを整理した上で、期限までに意見提出する価値があります(賛否は別として、実態を正確に伝えること自体が重要です)。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

6. コメント作成で争点になりやすい論点

・製品の「主たる機能」は何か(車両としての役割、故障時のフェイル動作、制御上の重要度)
・ポンプとセンサーが機能的に不可分か、それとも単なる同梱か
・市場実態として「燃料計測ユニット」として買われているのか、「燃料供給ユニット」として買われているのか
・説明資料(カタログ、図面、ECU信号仕様)が、どちらの機能を主として描いているか

ここは、技術部門の文言がそのまま分類ロジックに直結します。通関・法務・技術で同じ絵を見て、言葉を揃えるのが最短ルートです。


まとめ:今回の話は「一体品の分類リスク」が表面化した典型例

今回の提案は、古い判断でも見直され得ること、そして二機能一体品が「最後の番号」から「主機能」へ寄せられる可能性があることを示しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

確定前の今だからこそ、影響棚卸し、試算、根拠整備、必要ならコメント提出までを一気通貫で行うのが、最もコスト効率の良い対応になります。

タイ税関が電子機器パーツのHSコード解釈を厳格化

実務で最も警戒すべきポイントは2つあります。
1つ目は、通関時の分類(HS)に対する追加資料要求が増え、通関の初速が落ちること。
2つ目は、通関後の事後調査で分類差を指摘され、追徴や手続き負担が増えることです。

タイでは以前から、関税分類の解釈相違がFTA適用可否や追徴に直結しやすいという指摘があります。JETROは、タイ税関の関税分類解釈を起点に、輸入時または事後調査でHS相違を指摘され、過去に遡及して負担が生じる事例に言及しています。(JETRO)
さらに近年は、当局側がデジタル化と監査高度化を進め、HSコードを含む申告の正確性をより厳密に検証する方向性が明確です。タイの税関・税務環境が厳格化し、税関当局が事後調査やAI活用を強化している旨が、PwC Thailandの発信でも説明されています。(PwC)

以下、電子機器パーツに焦点を当てて、何が起きやすいのか、企業はどう備えるべきかを、HSコード実務の観点で整理します。


1. 「厳格化」が意味するもの:現場では何が変わるか

ニュースの見出しが「HSコード解釈の厳格化」である場合、現場で起きやすい変化は概ね次の3類型です。

  1. 申告時のエビデンス要求が増える
    インボイス品名が抽象的、部品用途が曖昧、仕様が不足している場合に、カタログ、仕様書、写真、構成部材、機能説明の追加提出を求められやすくなります。郵便・小口領域でも、タイ向けは2026年1月1日以降、通関電子データの要求が強化され、不十分・不正確だと遅延や返送リスクが高まると日本郵便が注意喚起しています(6桁HS推奨、詳細な品名等)。(郵便局 | 日本郵便株式会社)
  2. 部品か完成品か、複合品かの線引きが厳しくなる
    電子部品はモジュール化が進み、「単なる部品」ではなく、特定機能を完結するユニットとして評価されやすい領域です。ここを税関側が厳密に見始めると、分類が変わるだけでなく、必要許認可や税率、FTA適用実務まで連鎖します。
  3. 事後調査での再判定が増える
    タイ当局は事後調査の仕組みを整備し、輸入時は迅速化しつつ、後段で精緻に確認する運用を強めています。(PwC)
    この局面では、同一品目を継続輸入している企業ほど、過去分まで一括で影響が出ます。

2. なぜ「電子機器パーツ」が狙われやすいのか

電子機器パーツは、税関分類の観点で「揉めやすい条件」が揃っています。

  • 製品の多様化が速く、機能と構造が短期間で変わる
  • 部品と完成品の境界が曖昧になりやすい(モジュール、組立品、キット)
  • 章またぎ(第84類・第85類・第90類など)が起きやすい
  • HSの違いが、関税だけでなく規制(許認可、標準、禁制)やFTA実務に波及しやすい

加えて、タイでは従来から「担当官によりHSコードの解釈が異なる」「判断基準の透明性が課題」といった指摘が、日本側の対外要望の中で繰り返し表面化しています。(jmcti.org)


3. 電子機器パーツで頻出する分類論点(実務での地雷)

ここからは、企業側が社内チェックリストに落とし込みやすい形で、論点を整理します。個別のHS番号断定が目的ではなく、税関から質問される論点を先回りして潰すことが目的です。

論点A 部品(parts)として認められるか

チェック観点

  • 当該パーツは、特定の機器に専ら又は主として使用されるか
  • 単体で独立した機能を発揮するか(測定、変換、通信、制御など)
  • ソフトウェアを搭載し、単体で特定機能を完結するか
  • 外観上、完成品の性格が強いか(筐体、表示、入出力、電源等)

用意する証跡

  • 用途を特定できる資料(組込先の型式、図面、取付位置、BOM上の位置付け)
  • 単体機能の範囲が分かる資料(仕様書、ブロック図、入出力仕様)
  • 市販汎用品か専用品かの説明

論点B 複合機能品の「本質」判定

チェック観点

  • 複数機能がある場合、主要機能は何か
  • 主要機能を支える部材構成は何か(価値、体積、役割)
  • 測定機能があるのか、制御機能があるのか、単なる信号変換か

用意する証跡

  • 機能説明(何を入力し、何を出力し、何を達成する製品か)
  • 構成部材表(主要IC、センサー素子、電源、通信部等)
  • 動作モードと使用シーン

論点C 通関・FTAでの「HS不一致」リスク

タイでは、原産地証明書に記載されたHSと、輸入通関で税関が判断するHSが不一致とされ、FTA税率が認められない相談が多いとJETROが指摘しています。(JETRO)
分類厳格化局面では、この不一致が起きる頻度が上がります。

用意する証跡

  • FTAで使うHS(協定上の基準年・桁数)と、通関で使うHS(現行税番)の対応関係
  • 相手国輸入者と合意したHS見解メモ
  • 分類根拠(後述の分類ドシエ)

4. 会社が今日から整備すべき「分類ドシエ」最低限セット

電子機器パーツで通関が止まりやすい会社ほど、HSを「番号」ではなく「判断記録」として持っていません。厳格化局面で効くのは、次のような最低限のドシエです。

  • 製品概要:用途、組込先、製品写真
  • 機能説明:入力、処理、出力、主要機能
  • 仕様書:電気仕様、通信仕様、測定範囲等
  • 構成部材:主要部品表、基板実装の有無、ソフトウェア搭載の有無
  • 分類ロジック:どの論点で分岐し、なぜその結論か(社内判定メモで可)
  • 取引実態:インボイス品名、型番体系、梱包形態、セット有無
  • 運用履歴:過去の申告実績、指摘履歴、差戻し履歴

タイでは、事前教示制度の活用が推奨される一方、回答まで時間を要することもある、という現場声もJETROが報告しています。(JETRO)
だからこそ、事前教示を待つ間も「自社の説明責任」を果たせる形に整えることが先決です。


5. タイで揉めたときの実務手順:止めない、燃やさない

1) まずは「分類の争点」を言語化する

税関とのやり取りが長期化する企業は、争点が整理できていないことが多いです。
部品か完成品か、主要機能は何か、どこが章またぎか。争点を1枚にまとめて提出できるようにします。

2) 早期に「事前教示」または「分類判断の相談ルート」に載せる

タイでは、輸入時に関税分類解釈の確認を税関側に依頼する運用も紹介されています。(JETRO)
社内で抱え込まず、輸入者・通関業者と一体で、当局照会の段取りを作るのが現実的です。

3) 係争中でも貨物を止めない選択肢を準備する

分類が確定しない場合でも、保証金を積んで通関を進め、後で結論を受ける運用があります。タイの電子輸入手続きマニュアルでも、HS分類を争う場合の保証金・異議の扱いが説明されています。(ccc.customs.go.th)


6. まとめ:厳格化局面で勝つ会社は「番号」より「根拠」を持つ

電子機器パーツのHS分類は、技術進化で曖昧さが増える一方、税関側はデジタル化と監査高度化で、説明責任の水準を引き上げています。(PwC)
このギャップを埋める最短ルートは、分類ドシエを整備し、部品・複合機能・章またぎの論点を先回りして潰すことです。

厳格化は、正しく準備した企業にとっては「予見可能性を上げるチャンス」にもなります。通関を止めず、追徴を防ぎ、FTAも取りこぼさないために、まずは自社の電子部品トップ品目から、分類根拠の棚卸しを始めてください。