HSCF: 付番トライアル010:JRで見つけたハイテク・コインロッカー

家に帰る途中でJRの駅で見つけたコインロッカーで試してみました。

判定に使った写真

  • 品名/用途:—(画像のみ)
  • 材質:—
  • 構成・セット:—
  • 電気性・測定/通信:—
  • 寸法・仕様値:—
  • 型番・画像:画像1枚(IMG_5034.JPG)
  • 通関国・前提:—

1) 結論

  • 推定HS(6桁):9403.20(その他の金属製の家具)
  • 国別例示(任意):
    • JP:9403.20-000(その他の金属製の家具)
    • US:9403.20.00(Other metal furniture)
    • EU:9403 20 80(Other metal furniture)
  • 要約:駅等で使われるコインロッカーは、本質が「荷物を一時保管するロッカー=家具」。支払い・電子解錠部は従属機能のため、第94.03項の金属製家具(9403.20)に分類が妥当。
  • 確度(%):85%

2) 根拠

  • 適用通則・注(例:GRI 1, 3(b), 6、類注・部注):
    項・注の文言を優先(GRI 1)、複合物品は主たる性質で決定(GRI 3(b))、号レベルは同水準比較(GRI 6)。本品は「収納家具」として把握し、附属の電子端末は主機能を変えないため家具の号へ帰着。
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等):
    • 主用途:利用者の手荷物を一時保管するロッカー群=家具用途が支配的。
    • 主要材質:外装・仕切りは金属(画像から一般的に推測可能)。
    • 機能:タッチパネル・投貨/IC読取は施錠管理の附属装置。物品全体の主たる性質は収納にある(GRI 3(b))。
    • 構成:多数扉のロッカー+集中操作盤の一体設備。小売用セットではなく、単一設備として提示される想定。
  • 仮定(入力不足を補う前提):
    金属筐体・屋内据付、耐火金庫等の「装甲仕様」ではない、決済は硬貨/IC等の電子制御…(いずれも画像から合理的に想定)。
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由):
    • 83.03(8303.00:金庫・強化金庫等):対象は装甲・強化構造の金庫類や金庫室用保管箱。一般的なコインロッカーはそこまでの防護を目的とせず、収納家具に該当。
    • 84.76(自動販売機等):商品を販売・払出す機械。ロッカーは「収納の賃貸」であり払出機構の主機能を持たないため不適。
    • 84.79(他の個別機能機械):家具として特定できるため包括項は使わない(GRI 1優先)。
  • 型番・画像(観察メモ):
    • 画像A(全体):ロッカー列と集中端末、各扉の取手・表示灯が見える=収納家具の構成が明確。
    • 画像B(操作部):タッチパネル、投貨口/IC読取、券口等=施錠管理の附属機構。
    • 画像C(扉部):個別扉・電子ラッチ・表示灯=収納機能が主。

3) 候補比較

候補HS理由(該当可能性)棄却理由確度%
9403.20金属製ロッカー=家具。電子決済・解錠は従属機能。85
8303.00金庫・強化金庫・金庫室用保管箱(ベースメタル製)。一般的コインロッカーは装甲金庫ではなく銀行保管箱でもない。10
8476.89自動販売機(その他)。商品払出し機能を有さず、主機能は収納家具。5

4) 争点・注意

  • 装甲・耐火・耐工具等の仕様(扉厚・鋼板・UL/EN規格)を満たす場合は83.03の可能性が生じうる。
  • ロッカー部と端末を別送する場合:通則2(a)/3(b)・16部注等の適用関係に留意し、単体品は性質に応じて別分類(端末単体は85類相当の可能性)。
  • 据付(アンカー固定)か可搬かで国内統計細分の切り分けが変わることがある。

5) 追加で必要な情報

  • 材質・構造:板厚、補強・耐火・耐工具の有無(83.03との境界判定の核心)。
  • 端末仕様:決済方式(硬貨/IC/QR等)、通信・遠隔管理の有無。
  • 輸入形態:完成一体か、ロッカー部と端末部の別送か。
  • 据付方法:アンカー固定、壁面固定の有無。

6) 参考資料・出所

  • 関税率表の解釈に関する通則(GRI 1, 3(b), 6)。
  • 関税率表解説(第94類家具・第83.03 金庫等の範囲)。
  • 税関・講習資料/分類の基礎(複合物品の主たる性質、実務留意点)。
  • HS商品インデックス(日本関税協会)。

補足:本回答は画像に基づく推定であり、仕様確認により最終分類が変動し得ます(特に83.03との境界)。必要なら、仕様書・構造図(板厚・耐火性能・施錠ユニット)をご提示ください。

HS 2028「最終合意」とデジタル製品・サービス区分が、実務に突きつけるもの


2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS 2028改正(Harmonized System 2028)の改正パッケージが受け入れられたことを公表しました。発効は2028年1月1日。つまり、各国が国内制度や通関システム、統計、企業のマスタデータを切り替えるための実装期間が、いま明確にスタートした形です。 (世界関税機関)

一方で、企業の現場感として最も悩ましいのが、デジタル製品とデジタルサービスの区分です。モノとして国境を越えるのか、データとして越えるのか。単体販売なのか、ハードとサブスクが束ねられているのか。こうした論点は、HSという制度の外側にまで波及します。

この記事では、HS 2028の「最終合意」が何を意味し、なぜいま「デジタル製品・サービスの区分」が企業課題として深刻化するのかを、ビジネス実務の観点で掘り下げます。


1. まず押さえる:HS 2028で何が「最終合意」したのか

HS 2028は、第7次見直しサイクルの成果です。このサイクルは通常より長く、2019年7月から2025年6月までの6年間に延長されました。コロナ禍の影響で議論を完結させるために例外的に延長された、という位置づけです。 (世界関税機関)

その上で、2025年3月(10日から21日)に開催されたHS委員会(HSC)第75回会合で、HS 2028を構成する改正勧告(Article 16 Recommendation)が暫定採択され、「すべての交渉が完了した」とWCOが明記しています。ここで言う「最終合意」は、技術交渉としての決着、という意味合いが強い。 (世界関税機関)

そして2026年1月、WCOはHS 2028改正が受け入れられたと発表しました。改正は299セット、HS 2022比で見出し(headings)数や小見出し(subheadings)数が増減し、新設や削除も行われています。発効は2028年1月1日で、残り2年の実装期間に入った、という説明も併記されています。 (世界関税機関)

この「2年」は、制度側だけでなく企業側にも重い意味を持ちます。HSは関税率だけの話ではなく、輸入規制、統計、FTA原産地判定の入口、社内の品目マスタのキーになっていることが多いからです。


2. HS 2028の改正思想は「政策目的を帯びた可視化」

HS 2028の特徴は、貿易実務の利便性だけでなく、政策目的に直結する可視化を強めている点です。WCOは、改正が「世界的な優先課題と貿易の変化」に適応するものだと位置づけ、特に公衆衛生と環境を強く打ち出しています。 (世界関税機関)

例として分かりやすいのが、ワクチンとプラスチックです。

ワクチンについては、HS 2028で新たな見出しの枠組みを導入し、人用ワクチンとその他(動物用を含む)を分け、より詳細な分類を可能にする方向が示されています。WCOの説明では、従来30.02に含まれていたものを30.07(人用ワクチン)と30.08(その他のワクチン)に再編する構造が明確に書かれています。 (世界関税機関)
WTO側も、HS 2028の改正がワクチン等の分類の改善に繋がる点をニュースで取り上げています。 (WTO)

プラスチックについては、バーゼル条約との整合を意識して、プラスチック廃棄物の分類を再編し、有害性やPIC(事前通報・同意)対象かどうか等を識別しやすくする、とWCOは説明しています。さらに「単回使用(single-use)」という概念を法的注として明示し、分類の一貫性やデータ精度、政策実装を支えるとしています。 (世界関税機関)

ここまで読むと、HS 2028はデジタル製品やサービスにも同じ発想で踏み込むのでは、と思うかもしれません。ところが実際には、ここにHSの構造的な限界が出てきます。


3. ここが本題:HSは物品分類であり、デジタル取引の核心はしばしばHSの外にある

HSはあくまで「物品」を分類する体系です。つまり、国境を越える対象が「モノ」ならHSが中心に来る。しかし、デジタル経済では、価値の中核が「データの送信」や「利用権」「クラウド上の機能提供」に移りやすい。

このとき問題になるのが、電子送信されるデジタル製品を財(goods)と見るのか、サービス(services)と見るのか、という整理です。WCOの文書でも、電子送信される製品が財かサービスかの性格付けは、例えば電子書籍、ソフトウェア、映画、雑誌、新聞などのケースで市場アクセス上の実務的帰結を持つ、と明示されています。 (世界関税機関)

さらに、WCOのEnvironmental Scan 2024では、WTOが2024年に「電子送信への関税賦課のモラトリアム」をさらに2年更新したことに触れた上で、HSや関税評価(Valuation)との関係で、電子送信をどう扱い、どう区分し、どう課税するかをWCOとしても検討し得る論点だ、と問題提起しています。 (世界関税機関)

つまり、ここにあるのは「HS 2028の中でデジタルが整理されて終わった」という話ではなく、むしろ逆です。HS 2028が最終合意して発効準備に入ったことで、物品としての分類整備は進む。しかし、価値が電子送信やサービス提供に移る取引は、HSだけでは完結しない、という現実がより鮮明になっています。


4. ビジネス実務で使える「デジタル製品・サービス区分」3分類

制度論を待っても、企業の現場は止まりません。そこで実務上は、取引を次の3つに切り分けるところから始めるのが現実的です。

4.1 物品としてのデジタル関連商品

例:ハードウェア、端末、記録媒体、デバイスに同梱されたソフト、物理的に輸送される製品

ここはHSのど真ん中です。HS 2028の改正により、該当品目の見出しや小見出しが変わる可能性があるため、輸出入量が多い製品から順にマッピングが必要になります。WCO自身が、発効までの2年で相関表(Correlation Tables)の整備などを進める、としています。 (世界関税機関)

4.2 電子送信されるデジタル製品

例:ソフトウェアのダウンロード、電子書籍、デジタルコンテンツ配信

ここは「国境を越えて価値は移転するが、物品としての通関がない」領域です。財かサービスかの整理自体が、国際的にも一枚岩ではないことをWCO文書は示唆しています。 (世界関税機関)
また、電子送信に対する関税の扱いはWTOのモラトリアム議論と連動し得るため、ビジネス側は制度動向の監視が必要になります。 (世界関税機関)
実際、各種の通商協定でも電子送信に関税を課さない旨を定める例があり、日EU・EPAでも電子送信への関税を課さない条項が置かれています。 (外務省)

4.3 デジタルサービス

例:SaaS、クラウド利用、保守、サポート、運用代行、データ分析サービス

これはHSではなく、サービスとしての税務・契約・規制の世界が中心になります。ただし重要なのは、物品とサービスがセットで売られることが多い点です。ここを曖昧にすると、税関評価や間接税、移転価格などの論点が連鎖します。


5. いちばん危ないのは「束ね売り」:ハードとサブスク、機器と利用権、導入費と保守

デジタル製品・サービス区分の論点が、実際に燃えやすいのは「束ね売り」の場面です。

典型例として、機器の販売に、初期設定費、導入支援、トレーニング、保守、クラウド利用料が混在するケースがあります。このとき請求書や契約が一体化していると、どこまでが物品の対価で、どこからがサービスなのかが不明確になりやすい。

実務的には、物品に含まれない費用要素を切り分け、根拠を揃えることが重要です。例えばKPMGの解説でも、トレーニング、組立、保守、保証などのアフターサービスや導入後サービスは、関税上の非課税要素になり得る点が示されています(ただし具体の扱いは契約と当局実務に依存)。 (KPMG Assets)

ここでのポイントは、関税コストの最適化というよりも、説明可能性の確保です。税関・税務当局のデジタル化が進むほど、取引データの整合性は機械的に突合されやすくなります。契約、請求、製品マスタの整合が崩れると、後から修正するコストが跳ね上がります。


6. HS 2028発効までに企業がやるべきこと

HS 2028は2028年1月1日発効です。これは単なる将来の予定ではなく、すでに国際的には「切替が前提の世界」に入っています。 (世界関税機関)

デジタル製品・サービス区分の観点も含め、企業が今から進めるべき実務を、優先度順にまとめます。

  1. 取引タイプの棚卸しをする
    物品の輸出入なのか、電子送信なのか、サービス提供なのか。さらに、単体か束ね売りか。まずは売上上位とリスク上位の取引から分類します。
  2. 物品側はHS 2022からHS 2028へのマッピング準備を始める
    発効前にWCOが相関表などの実装ツールを整備するとしています。各国の8桁や10桁への落とし込みは国ごとにタイムラグが出るため、主要国別にウォッチします。 (世界関税機関)
  3. 契約と請求書を「区分できる構造」にする
    物品対価、導入支援、保守、サブスク利用料などを分け、説明可能な形にします。後追いでの区分は、監査・税関調査で弱いです。 (KPMG Assets)
  4. 製品マスタとルールを、関税分類だけでなく商品設計と連動させる
    HSは分類番号に見えますが、実際は事業の共通キーです。営業、購買、経理、法務、物流、ITが同じデータを参照できる体制が、後の事故を減らします。
  5. 電子送信の論点は、制度動向を前提に「変化に耐える設計」にする
    WCOも電子送信をどう区分し、どう課税するかは将来的に検討が必要になり得ると示唆しています。WTOのモラトリアム動向も含め、固定的な前提を置き過ぎない設計が安全です。 (世界関税機関)

おわりに:HS 2028は「コード更新」ではなく、取引の設計思想を試すイベント

WCOのHS 2028改正は、最終合意を経て2028年発効に向けた実装フェーズに入りました。公衆衛生や環境など、政策目的を帯びた可視化が強まるのが今回の特徴です。 (世界関税機関)

ただし、デジタル製品・サービスの区分という観点では、HSの最終合意が「解決」を意味しません。むしろ、HSが物品分類である以上、電子送信やデジタルサービスは別の制度軸で整理される、という構造がより鮮明になります。 (世界関税機関)

だからこそ、企業にとっての勝ち筋は、制度が完全に確定するのを待つことではありません。取引を区分できる契約と請求、説明可能なマスタ、変更に耐える運用ガバナンスを整えること。HS 2028対応は、その体制を作るための最も分かりやすいタイミングです。


米国で揺れる「スマートウォッチ」と「医療用モニター」の境界線

最終更新:2026年1月24日(日本時間)

2025年8月、Appleは米国で一時停止されていたApple Watchの血中酸素(Blood Oxygen)機能について、ソフトウェア更新で再提供する「再設計版」を発表しました。ポイントは、Apple Watch側で取得したセンサーデータを、ペアリングしたiPhone側で計測と計算を行い、iPhoneのヘルスケアアプリ内で結果を表示する設計に変えた点です。Appleは「最近の米国税関の判断が、この更新を可能にした」と明言しています。(Apple)

この出来事は「ある健康機能が、いつから医療用モニター級の扱いになるのか」という、境界線をビジネス面から突きつけました。しかも論点は、FDAの医療機器規制だけではありません。米国では、特許紛争を背景にした輸入差止(貿易救済)と税関当局の運用が、製品設計と市場投入を左右しうることが、改めて可視化されました。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

以下は、ビジネスパーソン向けに「今回の最新裁定の意味」を深掘りした整理です。この記事は一般情報であり、個別案件の法的助言ではありません。


忙しい人向けの要点

  • 最新の焦点は、Apple Watch単体ではなく「WatchとiPhoneの組み合わせで成立する血中酸素機能」を、輸入差止の対象とみなすかどうかに移りました。(Apple)
  • 税関判断を契機に機能が復活した一方、医療モニタリング企業Masimoはその判断を不服として提訴し、輸入差止の復活を求めています。(Reuters)
  • 2025年11月、米国国際貿易委員会(ITC)は、再設計版が輸入差止の対象になるかを改めて審査する新たな手続を開始しました(目標は約6か月)。(Reuters)
  • 2026年1月にはFDAが「低リスクのウェルネス機器」をめぐる考え方を改めて明確化しました。ただし、規制上の位置付けがウェルネス寄りでも、特許と輸入差止のリスクが消えるわけではありません。(U.S. Food and Drug Administration)

そもそも何が「裁定」なのか

今回は「裁定」という言葉が複数の層を指します。

  1. ITCの輸入差止命令(セクション337)
    ITCは2023年10月、Masimo側の主張を一部認め、特定の特許を侵害する「光学式パルスオキシメトリ(血中酸素)機能を持つウェアラブル電子機器」等について、限定的輸入差止命令(Limited Exclusion Order)などを出したと公表しています。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
    その後の大統領審査期間(60日)において、米国通商代表部(USTR)はITC判断を覆さない(不承認にしない)と表明しました。これにより、輸入差止の効力が維持される流れが固まりました。(United States Trade Representative)
  2. 税関当局(CBP)による「輸入差止の執行判断」
    ITCの命令は、実際の水際での運用は米国税関・国境警備局(CBP)が担います。そこで、当該命令の対象に該当するか否かが「税関判断」として争点化します。(Reuters)

今回ビジネス上のインパクトが大きいのは、まさに2番目です。製品の作り方(どこで何を計算し、どこで結果を表示するか)により、水際での扱いが変わり得ることが示唆されたからです。(Apple)


時系列で理解する:境界線が動いたポイント

時期出来事ビジネス上の意味
2023年10月ITCが限定的輸入差止命令などを発出(血中酸素機能のあるウェアラブル等)特許紛争が「輸入そのもの」を止め得る領域へ(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
2023年12月USTRが不承認(覆す)を行わないと表明輸入差止が実運用へ(United States Trade Representative)
2024年〜米国向けモデルでは血中酸素機能が停止される動き機能のオンオフが市場対応手段に(ただし顧客体験に影響)(AP News)
2025年8月14日Appleが「再設計版Blood Oxygen」を公表。Watchで測定し、iPhoneで計算し、ヘルスケアアプリで表示。税関判断で可能に機能の分散設計が水際リスクを左右し得る(Apple)
2025年8月MasimoがCBPを提訴し、税関判断の無効化などを求める水際判断自体が訴訟対象に(Reuters)
2025年11月ITCが再設計版の扱いを改めて検討する新手続を開始境界線が確定せず、再び輸入差止が拡大する可能性(Reuters)
2025年12月連邦地裁がMasimo側の差止(TRO・仮差止)申立てを退けたと報じられる短期的には輸入継続。ただし本案とITCは別軸で残る(news.bloomberglaw.com)

今回の「境界線」の核心:医療用モニターはハードで決まらない

今回の示唆は、単純に「スマートウォッチは民生品、医療用モニターは医療機器」という二分法が崩れている点にあります。

  • Appleは再設計版について、計算と表示をiPhone側に移し、結果はiPhoneのヘルスケアアプリ(呼吸器関連の表示セクション)で見られると説明しています。(Apple)
  • つまり「測定センサーを腕に付ける」ことと「医療的意味を持つ数値として算出し、ユーザーに提示する」ことが別デバイスに分割されました。(Apple)

これがなぜ境界線の話になるか。
輸入差止の実務では「輸入される物が、命令の対象かどうか」が問われます。再設計により、輸入時点でのWatch単体が命令対象から外れる余地が生まれた、と理解されているのが今回の騒動です。(Reuters)

しかし、2025年11月にITCが新手続を開始したこと自体が「結論がまだ揺れている」ことを示します。ITCは、再設計版が従来命令の射程に入るかを改めて検討する方向へ動きました。(Reuters)


MasimoがCBPを提訴した理由:争点は「手続」と「実質」

Reutersによると、MasimoはCBPの判断が輸入差止命令を弱めると主張し、CBPに対して訴訟を提起しました。Masimo側は、CBPが従前の判断を適切な通知なく変更したなどと訴え、当該判断の差し止めを求めています。(Reuters)

ここで重要なのは、相手がAppleだけでなく「税関当局」である点です。
ビジネス的には、次の現象を意味します。

  • 製品の設計変更を巡り、民間同士の特許訴訟だけでなく、行政手続の適法性(行政訴訟)に争点が広がる
  • 「水際で通るかどうか」が、単なる解釈問題ではなく、訴訟リスクとして長期化しうる

この構図は、医療領域に隣接する機能を持つ民生デバイス全般に波及し得ます。(Reuters)


裁判所の動きと、短期的な落ち着き

2025年12月には、Masimoが求めた一時的な差止(TRO・仮差止)について、連邦地裁が認めなかったと報じられています。これにより、短期的には輸入継続の公算が高い状態が続いています。(news.bloomberglaw.com)

ただし、これは「最終的にどちらが勝つか」とは別問題です。
ITC側の新手続が動いている以上、企業としては「一度通った設計が、半年後も通る」とは言い切れません。(Reuters)


規制(FDA)面の境界線も動いている

ここで混同しがちなのが「FDAの医療機器規制」と「特許と輸入差止」の軸です。別軸として理解した方が安全です。

  • Apple自身、Blood Oxygenの測定について「医療用途を意図したものではなく、一般的なフィットネスとウェルネス目的」と説明しています。(Apple サポート)
  • そして2026年1月、FDAは「General Wellness: Policy for Low Risk Devices」というガイダンスを更新し、健康的生活の維持・促進に関する一定のソフトウェア機能が、疾病の診断・治療等と無関係であれば、法令上の医療機器の定義から外れることがある、という枠組みを改めて明確化しています。(U.S. Food and Drug Administration)
  • Reutersも、FDAが健康・フィットネス系ウェアラブルの規制を限定し、医療的な主張(例:医療グレードの血圧測定など)を行わない限り、情報提供型のツールを許容する方向を報じています。(Reuters)

ここから得られる実務的な結論はシンプルです。
規制上はウェルネス寄りに位置付けられても、特許と輸入差止の世界では「医療モニタリング技術」として争われ得ます。境界線は1本ではなく、複数の当局と制度の重なりで決まります。(Apple サポート)


ビジネスへの示唆:この事案が他業界にも刺さる理由

スマートウォッチ業界だけの話ではありません。特に、ヘルスケア寄り機能を持つIoTや家電、アプリ、B2Bデバイスにも共通する論点が含まれます。

  1. 機能分散アーキテクチャは、法務と貿易の論点になる
    今回の再設計は「どこで計算し、どこで結果を表示するか」を変えています。これは製品設計の話ですが、水際リスクを左右する可能性があることが示されました。(Apple)
  2. 民生機器でも、輸入差止で一気にサプライチェーンが止まる
    ITCの命令は、訴訟の勝ち負けだけでなく、特定モデルの輸入停止という形で事業インパクトを直撃します。これは関税率の問題よりも急激です。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
  3. 争点が「機能のオンオフ」になると、顧客体験と説明責任が重くなる
    機能停止や表示先の変更は、同じ型番でも体験が変わることを意味します。アップデートや地域差がある場合、販売現場やカスタマーサポート、契約条項まで連動します。(Apple)
  4. 規制コンプライアンスとIPリスク評価を一体運用する必要がある
    FDAガイダンスの枠内に収める設計や表示をしても、特許紛争や輸入差止とは別で火が付く場合があります。社内の担当分断があるほど対応が遅れます。(U.S. Food and Drug Administration)
  5. 「医療」企業との競争領域に入った瞬間、相手の戦い方が変わる
    Masimoは医療モニタリング企業であり、争点が医療計測技術に絡むと、特許、ITC、税関手続、複数裁判地が同時進行になり得ます。事実として、この紛争は複数の場で動いています。(Reuters)

実務チェックリスト:製品企画と事業責任者が押さえるべきこと

社内で今すぐ点検できる観点を、実務寄りにまとめます。

  • 製品機能の分解表を作る
    センサー、アルゴリズム、表示、保存、共有、外部連携(医師との共有など)が、どのデバイスで動くかを明文化する。今回のように分散設計が争点化し得るため。(Apple)
  • 市場別の機能差とアップデート方針を契約・表示に落とし込む
    地域差や購入時期で機能が変わる可能性がある場合、販売条件とアフターサービスの説明責任を整理する。(Apple)
  • IPと貿易救済(ITC)を初期段階で横串評価する
    特許調査が訴訟回避だけでなく、輸入可否の事業継続性に直結する。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
  • 規制上の主張(ウェルネスか、医療か)をマーケと法務で統一する
    FDAの枠組みを意識しつつ、医療的な主張の一線を越えない表現設計にする。(U.S. Food and Drug Administration)
  • 水際で止まった場合の代替案を事前に用意する
    モデル切替、ソフトウェア機能の限定、在庫・販路の切替などのシナリオを準備する。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

今後の見通し:2026年前半の注目点

2026年1月時点で、注視すべきは次の3点です。

  • ITCの新手続の行方
    再設計版が輸入差止の射程に入るかどうかは、ビジネス上の不確実性の源泉です。目標は約6か月とされています。(Reuters)
  • CBP判断を巡る訴訟の進展
    短期の差止が退けられたとしても、本案で判断枠組みが変われば、再び水際運用が動く可能性があります。(news.bloomberglaw.com)
  • 規制面では、ウェルネス枠の拡大と「医療的主張」への監視の両立
    FDAは低リスク領域を明確化する一方、医療グレードをうたう主張には警戒を示しています。製品の言い方が市場アクセスを左右します。(U.S. Food and Drug Administration)

まとめ

今回の一連の動きが教えるのは、ウェアラブルの健康機能が進化すると「医療」と「民生」の線引きが、規制だけでなく、特許と貿易救済、そして税関の水際運用で決まっていくという現実です。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

ビジネス側に必要なのは、機能の設計、法務、規制、貿易実務を分けて考えないことです。分散コンピューティングやソフトウェア更新が当たり前になった今、境界線は仕様書の中にあります。


EUのHS2028対応で実務が詰まるのはどこか

2028年1月1日、世界共通の品目分類であるHSはHS2028へ切り替わります。WCOは、HS2028が2028年1月1日に発効し、発効までの準備期間に相関表の作成や解説書類の更新などを進める方針を明記しています。つまり、コード変更は確定事項であり、企業側は準備の先送りができません。 (World Customs Organization)

EU向けビジネスでは、この変更がEU独自の品目表であるCNと、関税措置や規制措置まで含むTARICに波及します。分類コードの変更は、単なる表の更新ではなく、関税額、輸入規制、統計申告、社内マスタやERP連携まで直撃します。

この記事では、EUの官報とCN改正をどう監視すべきかを、ビジネスマン向けに実務目線で深掘りします。

まず押さえるべき構造

HSとCNとTARICの関係

CNは、EUの共通関税率と貿易統計の要件を満たすための品目分類で、WCOのHSを土台にEU独自の細分を加えたものです。EU委員会の説明でも、CNはHSの発展形であり、EU向けの品目分類として使われることが示されています。 (Taxation and Customs Union)

実務上は、次のように理解すると整理が早いです。

  1. HSは世界共通の6桁
  2. CNはEUの8桁
  3. TARICはEUの統合関税データベースで、関税措置や規制措置まで含めて運用される

CN改正は毎年起きる

EUでは、CNの最新版本が毎年更新され、EU官報のLシリーズで委員会実施規則として公表されます。EU委員会は、CNが毎年更新され官報で公表されること、そしてそれが事業者と税関にとって重要な作業ツールであることを明記しています。 (Taxation and Customs Union)

さらに、EUR-Lexの要約情報では、毎年のCNと共通関税率の完全版を再現する規則が採択され、官報で遅くとも10月31日までに公表され、翌年1月1日から適用されると整理されています。 (EUR-Lex)

この毎年10月末という節目を知っているかどうかで、監視体制の設計が大きく変わります。

TARICは日次で動く

TARICはEUの統合関税データベースで、EUの関税、商業、農業関連の措置を統合して提供する仕組みです。EU委員会は、TARICデータが電子ネットワークで日次送信され、加盟国の税関システムに反映されることで、即時かつ正確な情報提供が担保されると説明しています。 (Taxation and Customs Union)

また、TARICのデータ抽出に関するEU側の説明資料では、TARICのデイリー更新と照会サイトが、原則として欧州委員会の稼働日の月曜から金曜に、夜7時以降に日次更新される旨が示されています。

結論として、年1回のCN改正だけを追うと、途中で変わる規制措置や追加コードの変更を見落としやすいという構造があります。

HS2028がEUにどう入ってくるか

EUはHS条約の枠組みで改正を受け入れた場合、締約当事者として自らの関税統計品目表を改正HSに整合させる必要があります。EU委員会が2025年に公表した文書でも、受諾されたHS改正は国際法上拘束力を持ち、EU法では規則2658/87の付属書Iに取り込まれる、と明確に述べられています。

このため、HS2028は2028年1月1日の発効に合わせて、EUでもCNとTARICに反映される方向で動くと読むのが自然です。

官報とCN改正の監視点

ここからが本題です。監視点は、いつ、どこを、何の観点で見るかに分解すると実務に落ちます。

監視点1 官報で何を拾うべきか

EU官報は、改正の確定情報が出る場所です。特に見るべきはLシリーズの規則です。

見る対象の優先順位は次の通りです。

  1. 翌年版CNを確定する委員会実施規則
  2. 年途中に品目表や関連付属書に影響を与える実施規則
  3. TARIC上の措置変更につながる規制や実施規則

例えば、2026年版CNは2025年10月31日に官報で公表され、2026年1月1日から適用されています。こうした年次改正の型を知っておくと、HS2028対応年の動きも読みやすくなります。 (Taxation and Customs Union)

加えて、EUR-Lexの各規則ページには、メール通知やRSS通知の作成機能が用意されています。官報を目視で追うだけでなく、通知を前提にした監視設計にするのが現実的です。 (EUR-Lex)

実務で効く検索軸は、規則のタイトルや本文に頻出する定型句です。
例としては、規則2658/87付属書Iの改正、CN、Common Customs Tariff、amending Annex I といった要素が核になります。

監視点2 CN改正で確認すべき論点

CN改正を見たときに、単にコードが変わったかだけを見ると危険です。見るべきは、ビジネス影響に直結する変更パターンです。

  1. 分割と統合
    1つのコードが複数に分割されたり、逆に統合されると、社内の商品マスタや取引条件、原産地管理の前提が崩れます。
  2. 品目文言の変化
    文言の追加や削除は、分類判断の境界が変わったサインです。
  3. 追加注記や脚注、補助単位
    統計単位や補助単位の変更は、申告システムや帳票の仕様に響きます。EU委員会もCNには脚注や補助単位などが含まれると説明しています。 (Taxation and Customs Union)
  4. 関税率の変化
    WTO約束税率の変更や自律関税の調整が絡むと、損益に直結します。

ここで重要なのは、CNの8桁だけを見て終わらせないことです。輸入の現場ではTARICのコード体系や措置条件のほうが実際の通関可否を左右します。

監視点3 TARICの監視は日次前提で設計する

規制対応やコストに直撃するのは、年次改正よりも、日々変わる措置です。TARICは日次送信され加盟国側で運用される仕組みであるため、監視間隔は商品カテゴリにより最適化すべきです。 (Taxation and Customs Union)

特に次に該当する場合、日次に近い監視が現実的です。

  1. 貿易救済、制裁、輸入許可、証明書などの措置に触れる品目
  2. 自社の主力売上や原価に関係する関税額が大きい品目
  3. 短納期で止められない物流を抱える品目

TARIC照会サイトの更新タイミングが夜7時以降とされている点も踏まえ、社内のデータ更新ジョブやチェックの時間帯を設計すると、無駄な差分や当日反映漏れを減らせます。

HS2028対応で企業が実際に詰まりやすいポイント

ここは現場でよく起きます。

  1. 商品マスタと申告コードの不一致
    営業や調達は旧コードで動き、通関は新コードを要求される。結果として荷物が止まる。
  2. 原産地管理や協定適用の判定ロジックが崩れる
    品目コードをキーにしている場合、マッピングが遅れると適用可否の判断が止まります。
  3. 調達契約の通関費用条項が古い前提のまま
    関税負担の帰属や価格改定条項が想定どおりに働かなくなります。
  4. 外部委託先任せで、社内の意思決定が遅れる
    通関業者やフォワーダーは手続きはしてくれますが、分類やリスク判断の最終責任は原則として事業者側に残ります。

監視を仕組みに落とす 失敗しない運用モデル

おすすめは、官報とTARICを分けて考え、二層で監視する方法です。

層A 官報ベースの確定情報監視

目的は、年次CN改正とHS2028反映の確定情報を最速で拾うことです。
運用例

  1. EUR-Lexで規則2658/87付属書I改正に関する規則ページの通知を設定する
  2. 10月は監視頻度を上げ、翌年版CN公表のタイミングに備える
  3. 公表後は社内影響評価の締切日を決め、更新を滞留させない

CNが毎年更新され官報で公表される点、そして翌年版が10月末までに公表される点は、監視カレンダーを固定する根拠になります。 (Taxation and Customs Union)

層B TARICベースの実務影響監視

目的は、当日の措置を見落として通関を止めないことです。
運用例

  1. 自社の重点コードをリスト化し、TARIC上で措置条件の差分を確認する
  2. 規制品や高リスク品は日次、その他は週次などで監視間隔を変える
  3. データ更新時間帯を考慮し、夜間更新後にチェックする

TARICが日次送信されること、照会サイトが日次更新されることは、運用設計の根拠になります。 (Taxation and Customs Union)

2026年から2028年1月までの実務ロードマップ

2026年1月時点で残り2年です。今からやるべきことを、優先度順に並べます。

  1. 影響範囲の棚卸し
    輸出入、三国間取引、EU域内統計、関税コスト、規制対象を、コード単位で見える化する。
  2. マッピングの準備
    現行HSやCNからHS2028や将来CNへの対応表を作る前提を置く。WCOが相関表作成を進める方針であるため、公開後にすぐ取り込める体制にしておく。 (World Customs Organization)
  3. 監視の自動化
    官報は通知、TARICは差分監視を基本にする。
  4. システム改修の段取り
    ERP、通関連携、品目マスタ、帳票、BIの集計キーをコード変更に耐えられる形にする。
  5. 2027年10月の山場に備える
    翌年版CNが10月末までに公表される型があるため、2027年10月に社内切替準備が集中する可能性を前提に、リソースと締切を先に確保する。 (EUR-Lex)

まとめ

HS2028は2028年1月1日に発効し、企業側には準備期間が残されています。 (World Customs Organization)
EU向け実務では、年1回のCN改正を官報で確実に拾うことと、日次で動くTARICの措置変更を取りこぼさないことが両輪です。 (Taxation and Customs Union)

この二層監視を、通知と差分監視を前提に仕組み化できれば、HS2028対応は焦りやすい年末プロジェクトではなく、通常業務として吸収できます。

免責
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別案件の分類判断や通関可否、契約条件の見直しは、社内の責任者や専門家とあわせて確認してください。

韓国と中国:HS2028国内適用の現状と発表動向(2026年1月時点)

はじめに

2028年1月1日、世界共通の商品分類体系であるHS(Harmonized System)は、第8版となる「HS2028」に切り替わります。
WCO(世界税関機構)は、HS2028改正案が正式に採択されたことを公表し、今後2年間で相関表の整備、解説書の更新、各国での国内実装が進むことを明示しています。

韓国と中国は、日本企業の取引量やサプライチェーン依存度が高い相手国です。両国それぞれの国内コード体系と、公表の「癖」を理解しておくことが、HS2028対応プロジェクトの成否を左右します。


1. HS2028で何が変わるのか:ビジネスが先に見るべき改正テーマ

HS2028は、299件の改正セットから構成され、見出し(heading)および号(subheading)レベルで多数の新設・削除が行われます。
WCOは、次のようなテーマを主要ポイントとして挙げています。

  • 公衆衛生・保健危機対応
    救急関連機器、PPE(個人防護具)、人工呼吸器、診断機器、ワクチンなどについて、より細分化されたコードを設定。
  • ワクチン分類の再編
    さまざまな感染症別に分類を整理し、統計・政策立案での可視性を向上。
  • サプリメント(栄養補助食品)の新設・再構成。
  • プラスチック廃棄物・使い捨てプラスチック関連の分類見直し
    バーゼル条約等との整合を図り、廃棄物・環境関連規制とのリンクを明確化。

この種の改正は、「関税率そのもの」よりも、次のような領域に波及しやすい点が実務上の要注意ポイントです。

  • 許認可・検疫・化学物質・廃棄物関連の規制要件
  • 統計コードの再編
  • 原産地規則(品目別規則やCTC判定の前提となるHSコード)

2. 韓国:国内適用のルートと、現時点で見える動き

2.1 国内実装の基本ライン

韓国のHS改正対応では、概ね次の三つがセットで動きます。

  • 関税率表(関税法別表等)
  • HSK(韓国の関税・統計統合品目番号、一般に10桁)
  • HS解説書や運用基準(韓国関税庁が公表する解釈ツール)

前回HS2022では、韓国はHS協約改正に合わせて、関税率表、HSK(企画財政部の告示)、HS解説書(関税庁の告示)を改正し、2022年1月1日から適用しました。
この前例から、HS2028でも同様の立て付け(関税率表+HSK+解説書の三点セット)で国内実装が進む可能性が高いと考えられます。

2.2 現時点(2026年1月)の公表状況

2026年1月時点で、韓国関税庁は、WCOの会合でHS2028に伴う解説書改正が議論されたこと、とりわけワクチン関連の新設を踏まえた分類明確化について各国が意見交換したことを公表しています。
これは、韓国側が少なくとも「解説書・運用解釈の整備フェーズ」に入りつつあることを示す一次情報といえます。

一方で、HS2028版HSK(国内10桁コード体系)や改正関税率表の具体的な案・最終版は、2026年1月時点ではまだ「山場前」と見るのが自然です。前回HS2022でも、実際の告示や対照表は施行前年に集中して公表されました。

2.3 韓国の発表を追うときの実務的な「当たり先」

韓国でHS2028関連情報を追う際の主な入口は次の通りです。

  • 韓国関税庁(Korea Customs Service)の公式発表
    報道資料、行政予告、告示などが掲載される。
  • CLIP(関税法令情報ポータル)
    • HS比較:国別・年次の関税率表を並べて参照するための機能。
    • HS解説書検索:WCO版解説書へのアクセス窓口。
    • HS協約改正資料:HS改正関連の公式資料。

2026年の段階では、「どのタイプの情報がどのサイトから出るか」を整理しておき、2027年以降の告示ラッシュに備えてウォッチ体制を整えるのが現実的です。


3. 中国:国内適用のルートと、コード体系の注意点

3.1 関税税則と申告コードの構造

中国では、HS改正は主に次の二本立てで国内反映されます。

  • 関税税則(進出口税則):税率・基本統計コード(8桁)を規定。
  • 申告コード(海关商品编号):通関実務で使用される拡張桁を含むコード。

通関現場では、申告コードが最大13桁で運用されることがあり、一般的な構造は次のように説明されています。

  • 1〜8桁:税則・統計上の基本コード(HSベース)
  • 9〜10桁:監管附加(規制・税制上の追加番号)
  • 11〜13桁:検験検疫関連の附加番号(CIQコードなど)

この構造は、HS2028で6桁・8桁レベルの改正が行われた場合、後段の監管・検疫関連桁も連動して変更され得ることを意味します。
ERPや品目マスタが「8桁/10桁のみ」で固定されている場合、移行期に申告用コードとの間で齟齬やデータ欠損が発生しやすいため注意が必要です。

3.2 前回HS2022の対応と、HS2028への含意

前回HS2022では、中国はHS改正の国内反映に向けて、海关总署公告(2021年第78号)によりHS2022対応の修正目録(中文版)を公表したと報告されています。
これに合わせて、進出口税則および関連通達が改正され、2022年1月1日から適用されました。

この前例から、HS2028でも以下のような流れになる可能性が高いと考えられます。

  • 海关总署(GACC)公告で、HS2028対応の修正目録・申告コードルールを公表。
  • 税則委員会(関税税則委員会)関連の公表で、年次の関税調整・税目修正を告知。

3.3 中国の発表を追うときの実務的な「当たり先」

中国でHS2028関連情報を追う際の主な入口は次の通りです。

  • 海关总署(GACC)公式サイト
    公告、政策法規、通関関連通知。
  • 税則委員会(関税税則委員会)
    年次の関税調整・税目修正に関する公表。
  • 地方税関の公式Q&A・ガイド
    実際の申告要件やコードの桁運用、ローカルな解釈が出ることがある。

申告コードの多桁構造が移行時の落とし穴になりやすいため、「どの桁まで社内マスタに持つか」「どの桁をどの部門がメンテナンスするか」をあらかじめ決めておくことが重要です。


4. 発表動向の読み方:いつ情報が揃い始めるか

WCOは、HS2028改正の採択後、「残り2年の期間で相関表の整備や解説書更新を進め、2028年1月1日の発効に備える」と説明しています。
HS2022のときの各国の動き(施行前年に公告・告示が集中しやすい)も踏まえると、企業側の情報収集は次の三段階で設計するのが現実的です。

  • 2026年:
    WCOの一次情報(改正内容・相関表)と、韓国・中国それぞれの「準備着手サイン」(会合報告、研究報告、制度改正の予告的資料)を押さえるフェーズ。
  • 2027年:
    各国の国内コード案、対照表、運用通知が本格的に出始めるタイミング。告示や公告のウォッチを強化し、社内マスタの「新旧対照」設計に着手するフェーズ。
  • 2028年:
    施行直後の現場運用(申告却下の理由、追加情報要求、検査指示の傾向など)をフィードバックし、社内ルール・マスタを微修正するフェーズ。

5. 企業が今すぐ着手すべき実務チェックリスト(韓国・中国共通)

5.1 品目マスタの棚卸し

  • 現在、韓国ではHSK10桁、中国では8桁・10桁・13桁のどこまでを社内マスタで管理しているのかを確認する。
  • 桁数と採番ルール(例:8桁までをグローバル共通、以降は国別拡張など)を明確化し、将来のHS2028対応時に一括変換できる構造にしておく。

5.2 影響が出やすい領域から先に当てる

WCOがHS2028で大きく見直すと明示している領域(ワクチン、医療機器、サプリメント、プラスチック廃棄物・使い捨てプラスチック関連など)は、取扱量が少なくても規制要件に直撃しやすい分野です。
これらの商材を扱う場合は、優先順位を高く設定し、早期にHS2028のコード候補を検討しておくとリスクを抑えられます。

5.3 二重コード運用の設計

2027年以降、WCOおよび各国から相関表や国内コード案が揃い始めた段階で、社内マスタに「現行版コード」と「HS2028想定コード」を併記できる構造に移行することが望ましいです。
WCOの相関表が正式に出たタイミングで、即座に本番コードを差し替えられるよう、情報項目やテーブル設計を前もって決めておくとスムーズです。

5.4 原産地規則・許認可・検疫の横串チェック

HSコードの変更は、単なる関税分類だけでなく、次のような領域に横串で影響します。

  • 原産地規則(品目別規則・CTC判定の前提HS)
  • 輸入規制(ライセンス・承認制度)
  • 検疫・化学物質・廃棄物規制の対象判定

とくに中国では、申告コードの後段桁(監管附加、CIQ)に規制要件がぶら下がる構造になっているため、HS2028移行時は「基本コード+附加コードのセット」で見直す必要があります。


6. まとめ

  • HS2028は2028年1月1日に発効予定であり、WCOは改正案の採択を行い、2026~2027年を各国の準備フェーズと位置づけています。
  • 韓国は、少なくともHS解説書改正の議論に参加していることが公表されており、今後HSKや関税率表の改正情報が、どの経路(告示・報道資料・CLIP等)で出るかを押さえておく段階にあります。
  • 中国は、申告コードが多桁構造であること自体が移行時のリスク要因になり得るため、海关总署公告と年次税則改定をセットで追いながら、「どの桁まで社内で持つか」を含めて設計することが重要です。

必要であれば、貴社の主要品目(上位20〜50品目)を前提に、韓国HSKと中国申告コードの「移行監視リスト」(どのサイトをいつ見るか、誰が担当するか)まで落とし込んだ運用表のたたき台も作成できます。

米国と日本:HS2028を国内法に移す正式ルートを深掘りする

この記事は、2026年1月23日時点で確認できる一次情報を中心に、HS2028が米国と日本でどのように国内制度へ反映されるかを、ビジネス実務の視点で整理したものです。HS改正は「税番が変わる」だけでは終わりません。関税率、EPAやFTAの原産地規則、通商救済措置の対象品目、社内マスターや通関システムまで波及します。だからこそ、正式ルートを理解しておくことが、準備の精度を上げます。

まず押さえるべき国際スケジュール:HS2028は2028年1月1日に発効

HS2028は、世界税関機構WCOが管理するHS品目表の第8版で、2028年1月1日に発効します。今回の改正は、通常5年サイクルの見直しが例外的に6年へ延長された上で成立したもの、とWCOが明確にしています。(World Customs Organization)

WCOは、HS2028について「国内レベルでは必要な立法手続、ITシステムや刊行物・手続の更新、税関職員や関係者への研修が必要」といった実装作業が不可欠であることも明記しています。つまり、HS2028は2028年にいきなり現場に降ってくるのではなく、各国が国内法制と運用を揃える準備期間を前提に動きます。(World Customs Organization)

国際的な採択手続の流れとしては、HS委員会での暫定採択を経て、WCO理事会で正式採択され、2026年1月に公開、2028年1月1日に発効というスケジュールがWCOから示されています。(World Customs Organization)

「国内法に移す」とは何を変えることか

HSは6桁までが国際共通で、各国はそれ以降の細分を設けます。したがって、各国がHS2028を国内で使える形にするには、少なくとも次の層を整合させる必要があります。

  1. 国際6桁の改正を反映する
  2. 自国の細分桁を作り直す
  3. 関税率や特恵税率、通商救済措置など、番号に紐づく制度をつなぎ替える
  4. 申告受理システムや統計システムを改修する
  5. 税関の解釈資料や運用通達を更新する

このうち、どこまでが「法律の改正」で、どこからが「行政の告示・通達・運用更新」かが、米国と日本で大きく異なります。

米国の正式ルート:USITCの勧告と大統領布告でHTSUSを更新する

米国の制度の土台:HTSUSは議会が制定し、USITCが維持し、CBPが執行する

米国の関税分類はHTSUSにより運用され、USITCの説明では、国際HSの4桁・6桁区分を米国独自に細分し、8桁の米国税率区分と、10桁の統計用区分へ展開するとされています。また、USITCがHTSを維持・公表し、CBPが解釈と執行を担う構図も明確です。(USITC)

HS改正を国内へ反映する公式プロセス:USITCが実施案を作り、大統領が布告する

WTO向け資料として公表されている米国側の説明では、WCOがHS改正を承認した後、USITCがHTSUSへ反映するための作業を行い、最終的に大統領が改正を布告できる、という整理になっています。

HS2022実施を例にした時系列は、実務目線で非常に示唆的です。

  • USITCが調査を開始
  • USITCがドラフトと経済影響の見込みを公表し、意見募集
  • USITCが最終勧告を大統領へ提出
  • 議会でのレビュー期間を経て、大統領が布告
  • 官報に当たるFederal Register掲載から30日後に発効

この「Federal Register掲載から30日後に発効」は、実務側の切替日を考える上で重要なポイントです。

法的根拠:1988年法に基づきUSITCが勧告し、大統領が改正を布告できる

HS2022反映を含むHTSUS改正の大統領布告(Proclamation 10326)を掲載したFederal Registerには、1988年法によりUSITCがHTSを継続的に見直し改正を勧告すること、そして大統領がUSITCの勧告に基づきHTS改正を布告できることが記載されています。(Federal Register)

現場に降りる最終段階:CBPとACEが受ける番号体系の切替

CBPの通達では、Proclamation 10326によりHTSUSが改正され、USITCの刊行物が参照されていること、そして改正内容が一定の日付以降の輸入に適用されることが明示されています。さらに、申告システムACE側の受入れ開始時刻にも触れており、制度改正がシステム実装と不可分であることがよく分かります。(GovDelivery)

ここから読み取れる米国の特徴は次の通りです。

  • 国内実装の最終トリガーは大統領布告とFederal Register掲載
  • 発効日は国際発効日と一致するとは限らず、実装上のタイムラグがあり得る
  • 現場はCBPの運用告知とACEの受入れ仕様に強く依存する

HS2028でも同様に、WCOの発効日だけでなく、Federal RegisterとCBPの実装告知をセットで追う必要があります。

日本の正式ルート:関税定率法の別表改正と、告示・通達で統計品目表や解説を更新する

日本の制度の土台:関税率表は関税定率法の別表で、HS条約に基づく

財務省・税関の分類センター資料では、日本の関税率表は関税定率法の別表であり、HS条約に基づいていることが明確に説明されています。(JETRO)

また同資料は、6桁までは国際共通で、7桁以降は各国が定めること、日本では輸出と輸入でそれぞれ3桁の細分を設け、9桁の統計品目番号として運用していることも示しています。(JETRO)

経済産業省のEPA案内でも、日本では9桁、米国では10桁という桁数の違い、6桁までが世界共通である点が説明されています。(Ministry of Economy, Trade and Industry)

立法ルート:関税定率法等の改正案を政府が作り、国会で成立させる

日本の正式ルートの中心は、「関税定率法等の一部を改正する法律案」という形での法改正です。財務省が公表しているHS2022対応の法案概要では、WCOで採択されたHS条約のHS品目表改正に応じて関税率表を改正する、と明記されています。さらに、その施行日として、HS対応部分は翌年1月1日が設定されていました。(Ministry of Finance Japan)

この構図はHS2028でも基本的に同じで、関税定率法の別表を改正して関税率表を更新するため、政府が法案を準備し、国会で成立し、公布され、施行日を迎えるという流れになります。

告示と通達:統計品目表や解説、分類例規などを実装レベルへ落とす

税関が公表しているHS2022のFAQは、HS改正を受けて、関税定率法別表、輸出入統計品目表、関税率表解説、分類例規が改正対象になることを具体的に示しています。さらに、輸出入統計品目表の改正は財務省告示として行われ、関連リンクが税関サイトに整理されていることも示されています。(Japan Customs)

同FAQでは、HS2022対応の実行関税率表、輸出統計品目表、関税率表解説が、発効日に合わせて税関サイトで公開されていることも明記されています。企業側の実務では、この「公開される版」と「適用開始日」を揃えて把握することが、切替事故を防ぐ鍵になります。(Japan Customs)

ここから読み取れる日本の特徴は次の通りです。

  • 関税率表の本体は法律の別表で、法改正を伴う
  • 9桁の統計品目番号や解説類は、告示や通達等で具体化される
  • 税関サイトでの版管理と公開日が、現場の実装上の重要情報になる

米国と日本の違いを一枚で整理

観点米国日本
国内の基本表HTSUS(国際HSを8桁税率区分と10桁統計区分へ展開)(USITC)関税定率法の別表(関税率表)。6桁まで共通、国内細分で9桁運用(JETRO)
主導機関USITCが改正案の勧告、CBPが執行(USITC)財務省・税関が制度整備、税関が運用・公表(Ministry of Finance Japan)
法的な最終トリガー大統領布告とFederal Register掲載(Federal Register)国会での法改正成立と施行、加えて告示・通達の整備(Ministry of Finance Japan)
切替日の読み方国際発効日と一致しない可能性がある。Federal Register掲載後30日発効の慣行が重要原則は1月1日施行が多いが、法案で施行日が明示される。税関サイトの版公開も併せて確認(Ministry of Finance Japan)

企業の実務ロードマップ:2026年から逆算して何をするか

WCOは、HS2028発効までの2年間で、各国が立法手続やIT更新、研修などを進める必要があると明記しています。企業側も同じ発想で、2年を「準備期間」として設計するのが合理的です。(World Customs Organization)

2026年に着手すべきこと

  • 自社取扱品目のHS2022コードの棚卸しと、変更影響の優先順位付け
  • 米国向けは10桁、日本向けは9桁のマスターを分けて管理し、相互参照表を整備する
  • 通関委託先と「切替日に何を正とするか」を合意する(旧コードの扱い、積送品の扱い、修正申告の方針)

2027年に固めるべきこと

  • 国内改正のドラフトが出るタイミングを想定し、マスターの改修をテスト環境で回す
  • FTAやEPAの原産地規則がHS版に依存する場合、協定で採用しているHS版と実務適用を棚卸しする
  • 取引条件を見直す(関税負担の帰属、税番変更時の価格条項、通関遅延の責任分界)

2028年の切替直前に必ずやること

  • 申告書、インボイス、品名、製品仕様書の記載と税番の整合性を最終点検
  • システムと帳票の改版日を、米国向けと日本向けで別に管理する
  • 切替日前後の出荷をルール化する(通関日の基準、入港日基準か、搬入日基準か等は制度と運用に依存するため、必ず通関関係者と確認する)

よくある落とし穴:分類変更は関税率だけでなく周辺制度を連鎖させる

  1. 関税率が変わらない場合でも、通商救済措置や追加関税の対象付け替えが起きる
    米国では、HTSUSの改正と同時に、特定措置の対象となる番号体系も整合させる必要があり、CBPが具体的な告知を出します。(GovDelivery)
  2. 原産地規則の判定がズレる
    原産地規則はHSコードに依存するため、分類ズレはそのまま原産地判定ズレにつながります。日本の実務資料でも、HSコードを誤ると税率や品目別規則が変わる旨が繰り返し強調されています。(JETRO)
  3. 社内の番号は更新したのに、通関委託先のシステムが追随していない
    米国はACEの受入れ仕様、日本は税関サイトの版公開と運用文書の更新が現場要件になります。切替期は、番号の正しさだけでなく、相手側システムが受ける形式になっているかが成否を分けます。(GovDelivery)

まとめ:正式ルートを理解すると、準備の打ち手が具体化する

HS2028は2028年1月1日に発効し、各国は国内の立法手続やIT更新を伴って実装します。(World Customs Organization)
米国は、USITCの勧告と大統領布告、Federal Register掲載を軸にHTSUSを更新し、CBPとACEの運用に落ちます。
日本は、関税定率法の別表改正を中心とする法改正に加え、告示・通達・税関サイトの版管理で運用を完成させます。(Ministry of Finance Japan)

この違いを踏まえて、企業側は「国際発効日」だけでなく、「米国はFederal RegisterとCBP告知」「日本は法改正の施行日と税関サイトの公開版」という二つの観測点を持つと、準備が現実的になります。

WCOが公開したHS2028の新設コード技術解説とは何か

新設コード一覧の読み方と、企業が今すぐやるべき実務

2026年1月、WCOはHS2028改正に関する情報発信を本格化させ、改正の全体像とともに、特定分野の新設コードについて技術的な解説を公開しています。ポイントは、HS2028の新設コード一覧が「番号の追加」ではなく、規制運用と統計精度を変える設計図になっていることです。読み方を誤ると、2028年の切替時点で通関だけでなく、原産地判定、輸出入規制、社内マスタ、価格設計まで連鎖的に影響します。 (世界税関機構)

この記事では、WCOが公開した一次情報を軸に、新設コード一覧の技術解説が何を意味するのか、そして企業がどう使うべきかを、ビジネスマン向けに整理します。


1. まず前提:HS2028は何がどれだけ変わるのか

WCOは、HS2028改正が299セットの改正で構成されること、HS2022比で新設が「見出し6件、号428件」、削除が「見出し5件、号172件」であることを明示しています。発効は2028年1月1日で、残り約2年の実装期間に相関表の整備やツール更新が進む、という整理です。 (世界税関機構)

ここから読み取るべきは次の2点です。

1つ目は、企業が影響を受けるのは8桁や10桁だけではなく、土台である6桁の構造が動くことです。
2つ目は、相関表の完成を待って着手すると遅いということです。WCOが公開する技術解説は、相関表が出る前に、影響を受ける領域と論点を先読みするための材料になります。 (世界税関機構)


2. 新設コード一覧は、なぜ企業リスクに直結するのか

新設コードは、次のどれかの目的で作られます。

・国際的な規制や取締りで識別が必要になった
・統計の粒度が足りず、政策判断や需給分析に使えない
・現場の分類が割れ、法的安定性が低い

HSは「関税番号」ですが、現実には許認可、輸入規制、輸出管理、環境規制、統計、サプライチェーン可視化の共通言語です。WCOの技術解説は、新設コードがどの目的に紐づくのか、どんな条件でそのコードに落ちるのかを説明します。つまり、単なる新番号ではなく、将来の検証ポイントが文章化された資料です。 (世界税関機構)


3. 技術解説の深掘り:WCOが示した新設コードの具体像

ここでは、WCOが公開した技術解説のうち、企業実務への波及が大きい代表例を取り上げます。結論から言うと、HS2028は「環境」と「健康」の領域で、分類判断に必要なデータ項目が増えます。

3-1 プラスチック廃棄物:バーゼル条約に合わせて39.15を再構成

WCOは、プラスチック廃棄物の国際移動を巡る課題として、違法投棄や不適切処理のリスクを挙げ、バーゼル条約のプラスチック廃棄物改正に合わせてHS2028で39.15を再構成したと説明しています。 (世界税関機構)

技術解説で重要なのは、どのコードに落ちるかが「樹脂の種類」だけでなく「混合の有無」「汚染や有害性」「条約上の管理区分」によって左右される、という設計になっている点です。WCOは、危険なプラスチック廃棄物を識別する新設号や、一定条件を満たす再資源化向けの廃棄物を識別する号群などを具体的に示しています。 (世界税関機構)

企業側の実務論点は明確です。

・廃棄物やスクラップを扱う企業は、品名だけでは申告できない
・ポリマー種別、混合の有無、汚染度合い、用途(リサイクル目的)などの属性情報が必要になる
・輸出入や委託処理の契約条件に、分類根拠となるデータ提供義務を入れないと、通関遅延や差止めが起きる

これはリサイクル業だけの話ではありません。製造業でも、戻り材、端材、スクラップ、副産物を国境越えで動かす企業は直撃します。

3-2 プラスチック製品:単回使用という概念を法的に定義し、個別コードへ落とす

WCOは、プラスチック汚染に関する国際的議論を踏まえ、HS2028で「単回使用」の概念を定義し、プラスチック関連の複数品目で新設号を設けたと説明しています。 (世界税関機構)

ここがビジネス上の地雷です。単回使用かどうかが分類の分岐条件になると、製品設計と販売形態が分類に影響します。WCOは単回使用を「通常1回の使用で廃棄またはリサイクルされ、反復的または長期の使用を目的としない」ものとして定義しています。 (世界税関機構)

この定義が入ることで、企業は次の対応が必要になります。

・同じ見た目でも、単回使用か再使用かでコードが分かれる可能性がある
・営業資料や仕様書に、反復使用を前提とする設計根拠がないと、単回使用扱いで分類されやすい
・海外子会社や委託先で、説明の粒度が落ちると分類がブレる

WCOは例として、単回使用ストロー、包装容器、キャップ類、台所用品、手袋、プラスチック製帽子類などで新設号が導入されたことを挙げています。 (世界税関機構)

さらにWCOは、環境上注目されるポリマー(一次形状)や、特定の発泡ポリスチレン製品などにも新設号を設けたことを示しています。これにより、素材の種類が統計や規制運用に直結しやすくなります。 (世界税関機構)

3-3 ワクチン:30.02から分離し、30.07と30.08を新設して粒度を上げる

WCOは、HS2022ではワクチンが人用と動物用の大枠しかなく、国際貿易フローや政策対応に必要な粒度が不足していたと指摘し、HS2028でワクチン体系を再編したと説明しています。具体的には、人用ワクチンを30.07に、その他(獣医用等)を30.08に分け、疾病ベース等で細分化した構造にしています。 (世界税関機構)

医薬品企業だけでなく、コールドチェーン機材、医療機器、緊急時物資など、ヘルスケア周辺産業にも影響が及びます。理由は単純で、分類粒度が上がるほど、輸入国での規制運用や統計モニタリングが強くなるからです。 (世界税関機構)


4. 企業へのインパクト:通関だけで終わらない連鎖

新設コードは、次の領域で連鎖します。

  1. 関税コスト
    6桁が動けば、各国の8桁や10桁の枝番も再設計され、税率や特恵の適用可否が変わり得ます。 (世界税関機構)
  2. EPA・FTAの原産地判定
    品目別規則はHSベースです。6桁の再編は、PSRや関税譲許表の移行に波及し、移行期に照合ミスが起こりやすくなります。(世界税関機構)
  3. 輸出入規制とコンプライアンス
    プラスチック廃棄物のように、国際条約や環境規制と結びつく新設コードは、検査や許可、手続の厳格化とセットで動きます。 (世界税関機構)
  4. 社内マスタとデータガバナンス
    単回使用かどうか、ポリマー種別、混合や汚染など、従来は任意だった属性が、分類根拠として必須に近づきます。設計部門、調達、品質保証、通関が同じデータを共有できない企業ほど事故ります。 (世界税関機構)

5. 今すぐ実装に落とすための、実務手順

相関表が出るまで待たず、WCOの技術解説を使って前倒しで準備するのが合理的です。

ステップ1 影響品目の棚卸しを「新設コード起点」でやる

自社のHSリストから出発すると漏れます。新設コードのテーマ領域(環境、健康、食品と医薬の境界など)から逆算して、自社の製品・原材料・副産物を当てに行くのが早いです。 (世界税関機構)

ステップ2 分類根拠に必要な属性を、設計と調達に要求仕様として渡す

単回使用の定義が入った以上、製品の仕様書に「反復使用の設計意図」や「材質」を書かないと分類の説明ができません。廃棄物なら、ポリマー組成や汚染の有無をサプライヤー証明に落とす必要が出ます。 (世界税関機構)

ステップ3 2028切替はデュアル運用を前提にする

WCO自身が実装期間中に各国の法改正、IT更新、教育が必要だと述べています。企業側も、HS2022とHS2028を併記できるマスタ、社内照会フロー、申告データの変換ロジックを準備しておくのが安全です。 (世界税関機構)


6. 1枚で分かるチェックリスト

  1. 自社の品目群に、プラスチック廃棄物、単回使用製品、医療・ワクチン関連が含まれるか
  2. それらの品目で、材質や用途の属性が社内で統一されているか
  3. 単回使用と再使用の境界を、設計仕様で説明できるか (世界税関機構)
  4. 廃棄物・スクラップのポリマー種別、混合、汚染の情報を入手できるか (世界税関機構)
  5. 海外拠点や委託先と、分類根拠のテンプレートを共有しているか
  6. HS2022とHS2028を併記できるマスタ構造になっているか (世界税関機構)
  7. 規制や許認可の対象品目が、新設コードで拡大し得る前提で監視しているか
  8. 見積と価格条項に、HS変更リスクを織り込む運用があるか
  9. 原産地判定やPSRの照合で、HS移行期の例外処理を設計しているか
  10. 2027年中にテスト申告や社内リハーサルを回す計画があるか

まとめ

WCOの技術解説は、新設コード一覧を「実務で使える形」に翻訳したものです。HS2028は299セットの改正で、新設号だけでも数百規模に及びます。だからこそ、まずはWCOが技術解説で取り上げた分野から、影響と必要データを前倒しで整備するのが、最短で確実な対応になります。 (世界税関機構)

HS2028採択後、公式に何が公表されているのか

2026年1月23日現在、HS2028は「採択を経て、改正内容が公式に公表され、各国が2028年1月1日の切替に向けて国内実装へ移る」フェーズに入りました。いま重要なのは、企業が日々使うコードが多くの場合8桁以上で運用されている点です。国際共通の6桁が動くと、各国の拡張桁、通関システム、統計、FTA運用まで連鎖して動きます。したがって「採択後の公式公表状況」を押さえることは、単なる情報収集ではなく、基幹データ更新の着手判断そのものになります。 (世界関税機関)


1. まず前提:HS2028はどう採択され、いつ効力を持つのか

HS2028は、WCOのHS委員会が改正勧告(HS条約第16条に基づく勧告パッケージ)を取りまとめ、理事会での勧告を経て、異議がなければ受諾される、という国際手続で進みます。EU側の公式文書でも、理事会が勧告した改正は、締約国から6か月以内に異議がなければ受諾と扱われることが明記されています。

今回、WCOは2025年3月(HSC第75回会合)にHS2028改正案を暫定採択した旨を公表しており、その中で改正パッケージが299セットの改正から成ることなどが示されています。 (世界関税機関)
そして2026年1月21日付のWCO公表では、HS2028改正が受諾されたこと、2028年1月1日の発効に向けて相関表作成や各種ツール更新を進めることが示されています。 (世界関税機関)

さらに決定的なのが、WCOが公開している改正条文の公式PDFです。そこには、2025年6月26日の勧告に基づき受諾された改正であり、発効日は2028年1月1日であることが明記されています。 (世界関税機関)


2. 企業がいう「公式公表」は、実は5層ある

現場で混乱が起きやすいのは、「WCOが出した」だけでは通関実務がまだ動かない点です。企業の実務に効く公式公表は、おおむね次の5層で見ます。

  1. WCOの改正条文(HS条約附属書の改正)
  2. WCOの解説類の更新(HS解説書など)
  3. WCO相関表(HS2022とHS2028の対応表)
  4. 各国・地域の拡張桁の確定公表(8桁、10桁等の国内関税率表・統計品目表)
  5. 税関システム、申告様式、統計、FTA運用への実装開始

WCO自身も、受諾後の2年間で相関表作成、解説類更新、加盟国側の立法やIT改修、訓練が必要だと明確に述べています。 (世界関税機関)


3. 2026年1月時点の公式公表状況

下表は「今、一次情報として何が出ているか」を、企業実務の観点で整理したものです。

公表物2026年1月時点の状況企業にとっての意味主な一次情報
1HS条約附属書の改正条文WCOが改正条文PDFを公開、発効日も明記6桁の改正内容を一次情報で確定できるWCO改正条文PDF (世界関税機関)
1から2改正の公式概要受諾と主要改正テーマをWCOが公表影響領域の当たりを付け、社内棚卸しを開始できるWCOニュース (世界関税機関)
2主要改正ポイントの説明ページWCOが主要変更点を整理し、PDFも提示どこが大きく動くかを経営層にも説明しやすいWCO「Amendments effective from 1 January 2028」 (世界関税機関)
3相関表(HS2022↔HS2028)WCOが作成を進める段階と明言品目マスター一括移行の実務は相関表が出てからが本番WCO同ページ記載 (世界関税機関)
4各国の拡張桁国により今後順次。現時点は準備段階が中心8桁以上は国別に最終確定を待つ必要次章参照
5国内IT・申告実装これから各国で本格化通関委託先やERP改修のリードタイムが勝負WCOが必要作業を明示 (世界関税機関)

4. 主要国・地域は今どこまで動いているか

ここでは、公式に確認できる「手続の開始」や「公表サイクル」を中心に、企業が追うべき観測点を示します。国ごとの8桁確定版は、最終的には官報や公定データに落ちるまで確定しません。

米国:HTSUS改正に向けた手続が公式に走り始めた

USITCは、HS改正に整合させるための調査を開始したと公表しており、2026年2月にドラフト改正案を公表し意見募集、2026年9月に大統領へ報告する見込みまで具体的に示しています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
企業にとっては、米国向け輸出入がある場合、ドラフト段階から自社品目がどう扱われるかを追い、差分が大きい品目は早期に代理店や通関先とすり合わせる価値があります。

EU:CNは毎年更新され、官報公表の締切ルールがある

EUのCNは毎年更新され、EU官報に実施規則として公表されることが欧州委員会の説明ページで明記されています。 (Taxation and Customs Union)
さらに、CNの年次版は遅くとも10月31日までに官報公表し、翌年1月1日から適用する、という運用ルールが法令上も示されています。 (EUR-Lex)
この仕組みから、HS2028を取り込むCNは、発効日の2028年1月1日に合わせた年次規則として整理されるのが通常の筋になります。ここがEUの観測ポイントです。

ASEAN:AHTN 2028の開発が公式に言及されている

ASEANは、AHTN 2022の見直しがAHTN 2028の策定につながり、WCOのHS2028改正に整合させる旨を公式ページで述べています。 (ASEAN)
ASEAN向けは国ごとの国内実装時期の差が出やすいため、AHTNと各国国内税関の切替時期を二重に追う前提で計画を組むのが安全です。

日本:統計品目表は毎年更新され、公開サイクルがある

日本の税関は輸出統計品目表を年次で公開しており、2026年1月版が2026年1月1日に掲載されています。 (税関総合情報)
HS2028そのものの国内拡張桁がいつどの形で公表されるかは、最終的には公定の関税率表・統計品目表の形で確定するため、普段からこの種の公表サイクルの場所を固定して監視するのが現実的です。


5. WCOが示した主要改正テーマを、企業の影響領域に翻訳する

WCOの説明ページでは、299セットの改正、見出し数や号数の増減、主要テーマが整理されています。 (世界関税機関)
この中で、ビジネス影響が読める論点を、経営目線に直すと次の通りです。

  1. 医療・公衆衛生関連の見える化が進む
    救急車、PPE、人工呼吸器、診断・監視機器など、緊急時物資の識別がより細かくなる方向が示されています。 (世界関税機関)
    実務では、関税というより輸出入規制、統計、危機時の簡素化措置などに波及します。
  2. ワクチンやサプリなど、境界領域の整理が進む
    ワクチンを2つの新見出しに再編すること、サプリメント向けの新見出し21.07を設けることなどが明記されています。 (世界関税機関)
    企業にとっては、食品と医薬の境界、景表法・薬機法的な位置づけ、輸入時の規制要件に直結しやすい領域です。
  3. 環境対応としてプラ関連の整理が進む
    プラ廃棄物の区分見直しや、単回使用の概念を法的注記で明確化することが示されています。 (世界関税機関)
    ここは環境規制、輸出入許可、リサイクル物流、原材料調達の説明責任に波及しやすい領域です。

6. 企業がいま着手すべき準備

相関表や各国8桁が揃うまで待つと、2027年後半からの改修ラッシュに巻き込まれます。WCOが示す通り、2年間は各国が立法とIT改修を進める期間です。 (世界関税機関)
いまは次の順で、軽くても着手しておくのが合理的です。

  1. 自社の品目マスター棚卸し
    輸出入で使っているコード、相手国の拡張桁、FTAの品目別規則で参照している桁数を一覧化します。
  2. 影響の優先順位付け
    売上・購買金額、関税率差、規制該当、原産地規則依存度の4軸で、先に見る品目を決めます。
  3. 分類根拠の整備
    改正でコードが動くときに説明できるよう、用途、材質、機能、構成、技術資料を根拠として束ねます。後で8桁が出たときの再判定が速くなります。
  4. 2026年2月以降のドラフト群を追う
    米国のようにドラフト公開予定まで明示している国は、そこが最初の分岐点になります。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

まとめ

HS2028は、受諾と発効日が公式に確定し、改正条文PDFも公開されました。 (世界関税機関)
これからの勝負は、相関表の公開と、各国の拡張桁確定、公定データ化、システム実装の連鎖にどう先回りするかです。WCOが示した2年間を、企業側の準備期間として使い切れるかが、そのまま2028年1月の安定稼働に直結します。 (世界関税機関)

デモ依頼が増える理由 曖昧な情報でも結論まで導くHS判定の進め方

今日のデモ依頼は「情報が揃わない」現場あるある

今日も、ある企業さまからHSCFのデモのご依頼をいただきました。テーマは、現場で本当によく起きる悩ましいケースです。情報が揃いきらない状態でも、どこまで精度を上げて判断できるか。ここが今回の焦点でした。

ご相談は大きく3つ

今回のご相談は、次の3点に集約されました。

  1. 写真がややぼけている商品の判定を、SDSと突き合わせてどう進めるか
  2. 3Dプリンタで作成した補助具を、どの考え方で整理するか
  3. CTCでの部材HSコード付番を、HS年次変換込みでどう揃えるか

1つ目:写真がぼけていても、SDSで判断の筋道は作れる

写真がややぼけている商品は、見た目だけで判断すると誤判定につながりやすい一方で、SDSには組成や性状の重要な手掛かりが詰まっています。

HSCFでは、写真の情報を補いながら、SDSの要点を根拠として整理し、判断の筋道を見える形にするところまで一気に進めました。
ポイントは、見た目の印象ではなく、根拠として残せる情報に判断軸を寄せることです。


2つ目:3Dプリンタ補助具は、用途と組み込み方で結論が変わる

次は、3Dプリンタで作成した補助具の扱いです。用途や設計思想、最終的にどの機械や工程にどう組み込まれるかで結論が変わりやすく、担当者が最も迷いやすい類型のひとつです。

デモでは、判断に必要な追加質問を最短距離で引き出し、結論に至るロジックを分解して説明しました。
曖昧さを減らす鍵は、仕様や役割を言語化し、判断に必要な条件を先に揃えることにあります。


3つ目:CTCは部材HS付番の一貫性と年次差の整理が勝負

3つ目は、CTCでの部材のHSコード付番です。部材点数が多いほど、付番の一貫性と、年次の違いによる齟齬がボトルネックになります。

今回は、HS年次変換を織り込みながら、部材ごとの付番とCTC判定の前提条件を揃えるところまで確認しました。
CTCの議論は、前提が揃った瞬間にスムーズになります。逆に言えば、前提が揃っていないと、議論がいつまでも終わりません。


デモの反応は良好、そして話題は自然にFTA検証へ

得意領域の案件だったこともあり、デモ後の反応はかなり良好でした。
ただ、印象的だったのは、その後の会話が自然にFTAの原産地検証の話へ移ったことです。

実務では、HSコードが正しくても、運用や証明の組み立てが弱いと、検証対応で時間とコストを失います。
逆に言えば、ここを整えるだけで、FTAは守りではなく攻めの武器になります。


私たちが提供しているのは、HSだけではなくFTAの戦略活用まで

私どもは、HSコードの支援にとどまらず、FTAをどう戦略的に活用するかまで含めてコンサルティングしています。そこで最後に、「ご心配があれば、証明方法や運用が適切かを点検するFTA診断もあります」とお伝えしました。


まとめ:HSCFのデモも、FTAの相談も歓迎です

HSCFのデモはもちろん、FTAの運用設計や検証対応の不安、証明の仕組みづくりまで、相談は大歓迎です。
現場で詰まりやすい論点ほど、早めに整えて、安心して攻めに転じられる状態を一緒に作っていきましょう。

HSコードの「ドシエ」とは何か?通関の答え合わせではなく、経営のリスク管理である

輸出入の現場では、HSコードを決める作業が「通関担当者だけの仕事」と見なされがちです。しかし実際には、HSコードは関税コスト、EPA/FTAの適用可否、輸入規制、統計、さらには社内マスタの整合性まで、あらゆるビジネスプロセスに連鎖します。

そこで今、先進的な企業が取り入れているのが「HSコードのドシエ(Dossier)」という考え方です。本稿では、ドシエの重要性と、ビジネスマンがとるべき対応を実務視点で解説します。


1. HSコードにおける「ドシエ」の定義

ドシエとは、ある品目を特定のHSコードで申告することについて、「なぜその番号なのか」を合理的に説明できる根拠一式をまとめた証拠ファイルです。

英語では Classification DossierClassification Rationale File と呼ばれます。

ポイント:ドシエは単なる「番号のメモ」ではない

判断のプロセスと証拠を残す「仕組み」です。税関の事後調査や監査が入った際、第三者が納得できる形で説明できることを目的とします。


2. なぜ今、ドシエが必要なのか?

属人的な運用(「あの人が決めたから大丈夫」)には限界があります。以下のリスクを回避するために、ドシエによる組織的な管理が不可欠です。

  • 製品の高度化・複合化: センサー付部品やソフトウェア搭載機器など、分類の判断が分かれやすい製品が増えている。
  • サプライチェーンの分断: 設計は日本、製造は海外、通関は業者委託。情報が断片化し、分類の根拠が不明になりがち。
  • 税関のデータ分析力向上: 申告データがデジタル化され、同じ品目なのにコードが揺れていると、即座に照会の対象となる。
  • HS改正への対応: 数年ごとのHS改正や各国独自の細分改訂に対し、個人の記憶だけで整合性を保つのは危険。

3. 「強いドシエ」を構成する5つの要素

監査や照会に耐えうるドシエには、以下の情報が整理されている必要があります。

カテゴリ含まれるべき中身
A. 製品特定情報写真、図面、仕様書、カタログ、材質・組成、用途、機能の有無、変更履歴
B. 分類ロジック解釈通則の適用方針、参照した部類注・類注、候補から外した号とその理由
C. 外部根拠事前教示(Advance Ruling)、当局のガイダンス、他国での決定事例(EUのBTI等)
D. 運用情報適用税率、特恵適用の可否、他法令(許認可)の有無、統計品目番号
E. 統制・版管理作成・承認者、適用開始日、改訂理由(仕様変更やHS改正など)

4. 実務担当者が意識すべき「5つの論点」

ドシエを現場任せにせず、経営として機能させるための戦略的な視点です。

① 優先順位を決める(全品目を目指さない)

「支払関税額が大きい」「分類が難しい部品」「過去に指摘を受けた」など、リスクの高い品目から着手するのが現実解です。

② 情報の「所有権」を明確にする

分類は通関部門だけで完結しません。

  • 設計・品質管理: 製品の事実(Fact)を担保する。
  • 貿易担当: 分類ロジック(Logic)を構築する。最終的な説明責任は、外部業者ではなく自社にあります。

③ マスタデータと連動させる

ドシエはERP(基幹システム)や品目マスタの「裏付け」です。書類とシステム上のデータが一致していることが統制の基本です。

④ 変更管理のトリガーを定義する

「設計変更」「材料の変更」「ソフト更新による機能追加」があった際、自動的にドシエが再評価されるワークフローを構築します。

⑤ 事前教示を戦略的に使う

論点が大きい重要品目は、ドシエを土台にして税関の「事前教示」を取得し、公的なお墨付きを得ることでリスクをゼロに近づけます。


5. よくある失敗と回避策

  • 失敗:カタログだけで分類している
    • 対策: 仕様書や図面、用途限定の根拠をドシエに含める。
  • 失敗:結論(番号)しか書かれていない
    • 対策: 「なぜ他の号ではないのか」という消去法のプロセスを1行でも残す。
  • 失敗:サプライヤーの提示したHSを鵜呑みにする
    • 対策: サプライヤーの情報はあくまで参考。自社のロジックで再確認する。

まとめ:ドシエは「事業を守る資産」である

HSコードのドシエは、単なる通関書類ではありません。利益(過払い・追徴防止)、リードタイム(納期遅延防止)、そして企業の信頼を守るための経営資産です。

まずは重要品目から、**「1ページの最小ドシエ」**を作ることから始めてみてください。その運用が回り始めたとき、貴社の通関品質は劇的に安定するはずです。

HSCFで実現する「HSドシエ」の現在地:中身の生成と組織運用のギャップを整理する

これまでの仕様に基づくと、HSCFは**「HSドシエの核となる根拠を生成する機能」において非常に強力なポテンシャルを持っています。一方で、「社内統制(承認フロー・ERP連携等)」**については、今後の設計や外部システムとの連携が鍵となる領域です。

現在のHSCFがドシエの主要機能をどの程度カバーしているのか、一覧表で整理しました。

HSドシエ機能別のカバー範囲一覧

ドシエの機能ブロック具体的な実現内容HSCFの対応状況補足・今後の展望
1. 製品特定情報の収集仕様・用途・材質・構造の集約● カバー自然文、写真、図面等から属性を抽出。不足情報の自動質問機能あり。
2. 分類候補の提示候補コードの提示と確度比較● カバー複数候補のスコアリングと、比較検討の入口を提供。
3. 分類ロジックの説明選定理由・除外理由の文章化● カバー「なぜその号か」「なぜ他ではないか」の判断道筋を言語化。
4. 根拠ソースの提示通則、部類注・類注、WCO解説等の参照● カバーGIR(解釈通則)や各国ノート、WCO解説書等の紐付けを想定。
5. 証拠の添付・記録写真、仕様書、SDS等の保管● カバー分類レコードに各種ファイルを添付・記録可能。
6. 版管理・改正追随HS2022/2028等の版差分管理△ 一部カバー相関表による切替支援は想定。ただし社内承認・通知等の統制は未確定。
7. FTA/EPA観点の接続原産地規則(PSR)への展開△ 一部カバー相関表を用いた原産性チェック支援。ルールエンジンとの連携は要設計。
8. 関税・規制影響の整理税率、許認可、輸入規制のマッピング― 未確定関税率や他法令規制の自動紐付け機能は現時点では明示なし。
9. 承認フローと監査統制作成・承認、変更履歴、責任の明確化― 未確定ワークフロー機能や組織的な統制機能は現時点では明示なし。
10. ERP/PLM連携品目マスタとの同期、社内データ運用― 未確定基幹システムへの自動反映やコネクタ連携は現時点では明示なし。

HSCFの強み:ドシエの「コア(中身)」を作る力

要するに、HSCFはドシエにおける以下の「実務の核心部分」を高いレベルでカバーしています。

  1. 根拠を作る: 膨大なデータから最適なロジックを導き出す。
  2. 再現性のある説明文を作る: 属人性を排除した納得感のある推論を展開する。
  3. 証拠を紐づける: 根拠となる資料を分類結果と一体化させる。

これは、従来「ベテランの頭の中」にしかなかった暗黙知を、形式知化してドシエに落とし込む作業を劇的に効率化することを意味します。

今後の課題:ビジネス実装としての「ガバナンス」

一方で、ビジネスの仕組みとして完結させるために必要な「最後のピース」は、現時点では未確定の領域です。

  • 承認と改訂統制: 誰が承認し、いつから有効とするのかという運用フロー。
  • ERP品目マスタへの反映: 決定したコードをいかにミスなく基幹データへ同期するか。
  • 関税・規制情報の自動整理: 分類の結果、ビジネスにどのような実務的制約が生じるかの自動提示。

結論:HSCFをどう活用すべきか

あなたが想定しているドシエの定義が、「社外提出・監査に耐えうる完成品(要約+証拠+承認印)」であるなら、HSCFは「中身の自動生成と証拠収集のエキスパート」と言えます。

最終的な「社内統制」や「システム連携」までを仕組み化する場合、HSCFを中核に据えつつ、既存のワークフローシステムやERPとのAPI連携を設計していくのが、次なる開発・導入のステップになるでしょう。