HS2022 第84類:原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品(Nuclear reactors, boilers, machinery and mechanical appliances; parts thereof)

(用語統一)本稿では、**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**で表記します。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 各種のボイラー、蒸気タービン、内燃機関(8402〜8412周辺)
    • ポンプ・圧縮機・ファン、空調機、冷凍設備(8413〜8418周辺)
    • 包装機・充填機・ラベラー、重量測定機、噴霧機(8422〜8424周辺)
    • クレーン・搬送設備、フォークリフト等(8425〜8428周辺)
    • 工作機械、溶接機器、手持ち電動工具(8456〜8468周辺)
    • 自動データ処理機械(ADP)とそのユニット、事務機器(8471〜8473周辺)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 電気機器(モーター、発電機、変圧器等):多くは第85類(例:電動機は85.01)
    • 車両・航空機等(輸送機器):第17部(Section XVII)
    • 測定機器・精密機器:第90類(Chapter 90)
    • 手工具・刃物類:第82類、卑金属製品の一般用部分品:第83類/第15部注の「一般用部分品」扱い
    • (典型)機械に使うからといって、82・83類の物品が84類になるわけではありません(部注の除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「完成品(機械)」か「部分品」か(部注(Section XVI Note 2)で分類ロジックが変わります)
    2. ADP(8471)に該当するか(類注で要件が定義されています)
    3. HS2022で新設/整理された領域(例:積層造形(8485)産業用ロボット(8428.70)冷間等方圧プレス(8479.83))を踏むか
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 半導体製造装置(8486):装置の一部・ユニット・付属装置の範囲判定でぶれやすい(類注で専用の取り扱いあり)
    • 産業用ロボット:8428(搬送系)か8479(個別機能)か、さらにHS2017→2022の細分変更で旧コード参照事故が起きやすい
    • 積層造形装置(8485):従来の「樹脂加工機(8477)」や「紙加工機(8441)」等に寄せた誤分類が発生しやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • **GIR1(見出し文言+部注/類注)**が基本です。機械類は「注(Notes)」が強く効きます。特にSection XVI(第16部)の部注は、部分品・複合機械・機能ユニットの分類を大きく左右します。
    • GIR6(6桁の決定):同じ4桁でも6桁で用途・方式・機能別に分かれ、FTAのPSRにも直結しやすいです。
    • **GIR3(複合品/セット)**は、機械単体よりも「付属品同梱」「セット販売」「ユニット構成」で出やすい論点です。ただし、機械類ではGIR3の前に、**Section XVI Note 3・4(複合機械/機能ユニット)**が先に効く場面が多いです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 機能(何をする機械か):搬送・加工・冷却・計算・印刷など
    • 対象物(何を処理するか):液体、気体、鉱物、食品、金属、樹脂、データ等
    • 構成(単体か、ラインか、ユニットか):配管・ケーブルで結合した“機能ユニット”になっていないか
    • 電気機器要素の優先:電気的機能が本質なら85類側に寄ることがある(ただしケースバイケース)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第16部(Section XVI)に入る“機械類”か?
    • まず部注1で、82・83類、17部、90類等の除外に当たらないか確認します。
  • Step2:完成品(機械)か、部分品か?
    • “部分品”ならSection XVI Note 2のルール(どの見出しに振り分けるか)に従います。
  • Step3:類注(Chapter 84 Notes)で定義・例外がないか?
    • ADP(8471)の要件、積層造形(8485)の定義、半導体製造装置(8486)の範囲などは、類注が起点です。
  • Step4:最も具体的な4桁(項)に当てはめる
    • ポンプなら8413、包装なら8422、工作機械なら8456〜8465…という具合に、機能で当てに行きます。
  • Step5:6桁(号)で“方式・用途・機能”の条件分岐
    • 産業用ロボット(8428.70)や、冷間等方圧プレス(8479.83)等、HS2022で細分が増えた領域は特に注意します。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第84類 ↔ 第85類(電動機・変圧器・電気制御装置など)
    • 第84類 ↔ 第90類(測定・検査・分析が本質の装置)
    • 第84類 ↔ 第82・83類(工具・一般用部分品)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表


※項番号の並び・欠番([84.69])の扱いはHS2022条文に基づきます。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8401原子炉・核燃料要素など原子炉装置、燃料要素規制・安全保障管理の対象になり得る(別途確認)
8402蒸気ボイラー等蒸気ボイラー8403(暖房用)との切り分け
8403暖房用ボイラーセントラルヒーティング用8402以外の暖房用
8404ボイラー附属装置等エコノマイザ、復水器ボイラーとの関係(附属装置)
8405ガス発生装置発生炉ガス発生器ガス製造の方式・用途
8406蒸気タービン等蒸気タービン8411(ガスタービン等)と区別
8407火花点火式内燃機関ガソリンエンジン8408(ディーゼル等)と区別
8408圧縮点火式内燃機関ディーゼルエンジン8407との区別
84098407/8408用部分品エンジン部品Section XVI Note 2(部分品規則)も確認
8410水力タービン等水車、水力タービン
8411ジェット等・ガスタービンガスタービン航空用途は別規制の可能性
8412その他の原動機油圧モーター等8406/8411以外
8413液体ポンプ等遠心ポンプ、液体エレベータ流量計付き等でも8413が起点
8414空気/真空ポンプ等コンプレッサ、送風機HS2022で一部細分・移転あり
8415空気調和機エアコン
8416バーナー等炉用バーナー
8417非電気式工業炉等工業用炉(非電気)電気炉は85類側の可能性
8418冷蔵・冷凍機器冷凍機、冷凍ショーケース家庭用/業務用の境界は6桁で確認
8419温度変化工程機器熱交換器、乾燥機HS2022で凍結乾燥等の細分あり
8420カレンダー等カレンダー機金属圧延(8455)等と混同注意
8421遠心分離・ろ過等フィルター装置HS2022で車両用触媒等の細分あり
8422洗瓶/充填/包装機等充填機、ラベラー8443(印刷)との境界に注意
8423計量機器はかり、計量機90類(分析)と混同注意
8424噴霧・散布機等スプレー装置
8425ホイスト等ジャッキ、ウインチ
8426クレーン等クレーン、デリック国内規制(クレーン則)確認が必要な場合
8427フォークリフト等フォークリフト
8428搬送・荷役機械コンベヤ、エレベータ8428.70 産業用ロボットがHS2022で明確化
8429自走式土工機械ブルドーザー等
8430その他の土工機械掘削機、杭打機
84318425〜8430用部分品クレーン部品等部品は“専用性”が鍵
8432農林業用耕うん機械耕うん機
8433収穫・脱穀等コンバイン
8434搾乳・乳業機械搾乳機
8435果実破砕・圧搾等ぶどう圧搾機
8436その他農業機械等養鶏機械等
8437穀物の製粉等精米機等
8438食品・飲料製造機械製パン機械等HS2022で“微生物油脂”の扱い整理(8479.20へ)
8439パルプ・紙製造機械パルプ製造装置
8440製本機械製本機
8441紙加工機械等紙裁断機等HS2022で一部が8485へ移転(3Dプリンタ等)
8442印刷版等の製造機器版下・版作成装置8443(印刷機)との関係に注意
8443印刷機・プリンタ等印刷機、複写機8471(ADP)との境界が論点になりやすい
8444人造繊維用機械紡糸機等
8445紡績準備・紡績機紡績機
8446織機織機
8447編機等編機
84488444〜8447用補助機械・部品繊維機械部品部注の部分品規則も確認
8449不織布等製造機械不織布製造装置
8450洗濯機(家庭用等)家庭用洗濯機
8451繊維の洗浄・乾燥等仕上げ機
8452ミシン工業用ミシン
8453皮革加工機械なめし機械
8454冶金用鋳造機等連続鋳造機等
8455金属圧延機等圧延機8420(カレンダー)と混同注意
8456レーザー等加工機械レーザー加工機“加工原理”で8457〜8465より優先する局面あり(類注)
8457マシニングセンタ等マシニングセンタ類注で定義(8457)
8458旋盤CNC旋盤
8459穴あけ・中ぐり等ボール盤等
8460研削・研磨等研削盤等HS2017で細分整理(旧版参照時注意)
8461平削り・ブローチ等ブローチ盤等
8462鍛造・曲げ等プレスブレーキ等HS2022でサブヘディング再整理(旧版対応注意)
8463その他金属加工機引抜機等
8464石材・ガラス加工機石材切断機
8465木工等機械木工機8465.20(マシニングセンタ様)等、サブヘディング注の定義あり
84668456〜8465用部品等工作機械用ツールホルダ部品は見出し指定に注意(8466/8487等)
8467手持ち工具(動力付)電動ドリル等82類(手工具)との境界注意
8468ろう付け・溶接機器等溶接装置(85.15以外)
(欠番)[84.69](削除・欠番)HS2022条文上、84.69は欠番表示
8470計算機・レジ等電卓、POS“ポケットサイズ”定義が類注にあり
8471自動データ処理機械等PC、サーバ、ユニット類注でADPの要件・除外が規定
8472その他事務機器事務用シュレッダー等旧84.69(タイプライター等)の移転先になり得る(旧版参照事故注意)
84738470〜8472用部品等PC周辺部品等部品の専用性・共用性で分岐
8474鉱物処理機械破砕機等
8475ランプ組立・ガラス加工機電球組立機等HS2022で一部が8485へ移転(3Dプリンタ)等
8476自動販売機自販機
8477ゴム・プラ加工機械射出成形機HS2022で一部が8485へ整理される可能性
8478たばこ製造機械たばこ加工機
8479個別機能機械産業用ロボット等8479.50(産業用ロボット)・**8479.83(冷間等方圧プレス)**等の細分に注意
8480鋳型等金型
8481バルブ等減圧弁等油圧/空気圧用は6桁で分岐(8481.20)
8482軸受ベアリング類注で鋼球の定義等あり
8483伝動装置ギア、クラッチ
8484ガスケット等メカニカルシール
8485積層造形(Additive manufacturing)機械3Dプリンタ(産業用)類注の定義に該当するかが核心
8486半導体・FPD製造用機械等露光装置等類注で対象機器が列挙・定義
8487その他の機械部分品機械部品(電気部品除く)Section XVI Note 2(c)等の“最後の受け皿”

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第84類で頻出):
    • 機能(搬送か加工か、データ処理か、温調か)
    • 方式(油圧/空気圧、レーザー/水ジェット等)
    • 装置の構成(単体/ライン/ユニット、分割提示か同時提示か)
    • 専用性(“特定機械専用”の部分品か、汎用品か)
    • 類注の定義要件(ADPの4要件、ポケットサイズ寸法、積層造形の定義等)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8428.70(産業用ロボット) vs 8479.50(産業用ロボット)
      • どこで分かれるか:
        • 搬送・荷役機械(8428)の文脈に当たるロボットは8428側、
        • 他に特掲されない産業用ロボットは8479.50側、という整理が出やすいです(ただし実態・仕様次第)。
      • 判断に必要な情報:ロボットの主機能(荷役・搬送か/加工・組立等か)、把持機構・軸構成、ライン内の役割、カタログ
      • 典型的な誤り:HS2017等の古い細分の知識のまま、8428.70の存在を見落として「8428.90(その他)」や「8479.50固定」にしてしまう
    2. 8438(食品機械) vs 8479.20(油脂・油の抽出/調製機械)
      • どこで分かれるか:油脂・油の抽出/調製に当たるか、対象が何由来か。HS2022では**“微生物油脂”**の扱いが整理され、8479.20側に含める趣旨が明示されています。
      • 判断に必要な情報:対象油脂の由来(動物・植物・微生物)、工程(抽出/精製/調製)、用途、プロセスフロー
      • 典型的な誤り:「食品工場で使うから8438」と用途だけで決めてしまう
    3. 8485(積層造形機械) vs 8477(プラ加工機)/8441(紙加工機)/8463等
      • どこで分かれるか:“積層造形”に該当するか(類注の定義)。3Dプリンタでも、方式・機能が積層造形の定義に当たるかが鍵です。
      • 判断に必要な情報:造形方式(粉末床溶融、材料押出、液槽光重合等)、材料形態(粉末/フィラメント等)、工程説明、メーカー仕様
      • 典型的な誤り:「樹脂を使う=8477」「紙を使う=8441」など、材料側に引っ張られる
    4. 8471(ADP機械・ユニット) vs 8443(プリンタ等)/他の“個別機能機械”
      • どこで分かれるか:ADPとしての要件(プログラム実行、データ処理、記憶、入出力等)を満たすか、また“プリンタ等”が別立ての扱いになるか。
      • 判断に必要な情報:OS/プログラムの可否、CPU/記憶装置、入出力構成、接続形態(ユニットか独立機か)
      • 典型的な誤り:「PCが入っているから全部8471」として、機械の“主機能”側(機能ユニット)を見落とす
    5. 8479.83(冷間等方圧プレス) vs 8479.89(その他)
      • どこで分かれるか:冷間等方圧(Cold Isostatic Pressing)に該当するか。HS2022で8479.83が新設されています。
      • 判断に必要な情報:加圧方式(等方圧)、温度条件(冷間)、用途(粉末成形等)、仕様書
      • 典型的な誤り:旧HSのまま8479.89へ入れてしまい、統計・規制・PSRで差が出る

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注1(除外):82・83類、17部、90類などは第16部から除外されます。
    • 部注2(部分品の分類規則)
      • (a) まず“それ自体が84/85類の見出しに含まれる部分品”は、その見出しへ
      • (b) それ以外でも“特定機械に専用・主として使用”なら、その機械(または指定の部分品見出し)へ
      • (c) どれにも当たらない部分品は、指定の部分品見出し(例:8487/8548等)へ、という考え方です。
    • 部注3(複合機械):複数機能がある場合は“主要機能”で分類。
    • 部注4(機能ユニット):分割提示でも、配管・ケーブル等で一体として明確な機能を果たすなら、その機能の見出しにまとめて分類。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「ライン一式」を分割して輸入する場合でも、据付後に一体の機能を果たす設計・提示になっていると、機能ユニットとして1つの見出しに寄る可能性があります(要:図面、P&ID、据付計画)。
    • “部品”として申告するつもりでも、**それ自体が独立した機械(ポンプ、バルブ等)**として見出しがあるなら、部分品扱いではなく“当該機械”で分類されやすいです。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 機械に使う**ボルト・ナット等(一般用部分品)**を、84類の「機械部品」として申告してしまう → 第15部(一般用部分品)や83類へ。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(代表的に実務で効くもの):
    • ADP(8471)の定義・除外:8471に入るための要件、周辺機器の扱いが規定されています。
    • ポケットサイズの定義(8470関連):寸法条件で“ポケットサイズ”を定義。
    • 鋼球の定義(8482関連):一定の公差・品質条件を満たす鋼球の扱い。
    • 積層造形(8485)の定義:積層造形(Additive manufacturing)の意味を定義。
    • 半導体・FPD製造機械(8486)の範囲:対象となる機械・装置の範囲を類注で示す。
    • 工作機械の定義注:8457・8458等の定義や、8462の“ライン”定義等が置かれています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 積層造形(8485):材料を層状に積み重ねて固化させる等の方法による製造、という趣旨で定義されています(詳細は類注の定義に従って確認)。
    • 機械加工センタ様の木工機(8465.20等):自動工具交換等の要件がサブヘディング注で定義されています(旧版からの転記時に特に注意)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第16部の除外(82・83類、17部、90類等)をまず優先確認します。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「部分品」か否か(Section XVI Note 2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):部品の用途(専用/汎用)、適用機械、単体で独立機能があるか
    • 現場で集める証憑:仕様書、図面(組付位置)、部品表(BOM)、カタログ、写真
    • 誤分類の典型:汎用のバルブ・ベアリング・ボルト等を「機械部品」として一括で8487に寄せる
  • 影響ポイント2:ADP(8471)の定義注
    • 何を見れば判断できるか:プログラム実行性、CPU/メモリ、入出力の構成、システムとして提示か
    • 現場で集める証憑:仕様書(CPU/OS)、構成図、入出力一覧、接続仕様
    • 誤分類の典型:「コンピュータを搭載=8471」と決め打ちして、機能ユニット(部注4)や他の特掲見出しを見落とす
  • 影響ポイント3:積層造形(8485)の定義注
    • 何を見れば判断できるか:造形方式、材料形態、工程(積層→固化)
    • 現場で集める証憑:方式説明、プロセス図、材料SDS、装置カタログ
    • 誤分類の典型:従来の8477/8441などに寄せる(HS2022で8485が新設された点の見落とし)
  • 影響ポイント4:半導体・FPD製造装置(8486)の類注
    • 何を見れば判断できるか:製造工程(ウェーハ、デバイス、IC、FPD等)との関係、専用性
    • 現場で集める証憑:工程フロー、用途説明、装置仕様、納入先工程
    • 誤分類の典型:汎用機械(8479等)として処理してしまい、8486特有の扱いを外す

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:電動機付き機械を「機械だから84類」としてしまう
    • なぜ起きる:機械=84類という先入観
    • 正しい考え方:電動機や電気機器は85類が起点になるケースが多い。まず部注の除外・境界を確認。
    • 予防策:仕様書で「主機能」「駆動方式」「電気機器の構成(モーター単体か、機械一体か)」を確認
  2. 間違い:汎用ボルト・ナット等を8487(機械部分品)に入れる
    • なぜ起きる:機械に使う=機械部品、と短絡
    • 正しい考え方:部注で「一般用部分品」や82・83類等の除外が明示されています。
    • 予防策:材質・形状が汎用品か、特定機械専用設計かを図面で確認
  3. 間違い:ライン一式を分割輸入して、各機器をバラバラの項で申告
    • なぜ起きる:インボイス記載単位に引っ張られる
    • 正しい考え方:機能ユニット(部注4)に該当すると、全体を1見出しにまとめる可能性があります。
    • 予防策:据付後の機能、結合関係(配管・ケーブル)、制御の一体性を示す資料を準備
  4. 間違い:産業用ロボットを「とにかく8479.50」に固定
    • なぜ起きる:旧知識・検索慣れ
    • 正しい考え方:8428の中に**8428.70(産業用ロボット)**があり、8428の文脈に当たる場合はそちらを検討する必要があります。
    • 予防策:ロボットの主機能(荷役・搬送か、加工か)を仕様書で明確化
  5. 間違い:“3Dプリンタ”を材料側(樹脂=8477等)で決める
    • なぜ起きる:材料(樹脂/金属/粉末)に引っ張られる
    • 正しい考え方:HS2022で**積層造形(8485)**が独立し、定義に該当するかが核心です。
    • 予防策:造形方式(積層・固化)と工程資料を必ず入手
  6. 間違い:PC内蔵機器を全部8471(ADP)にしてしまう
    • なぜ起きる:制御PCの存在で短絡
    • 正しい考え方:ADPの要件・除外は類注で整理され、機械の主機能や機能ユニットで別見出しになることがあります。
    • 予防策:主機能が「データ処理」か「他の機械的機能」かを設計資料で確認
  7. 間違い:8479.83(冷間等方圧プレス)を見落として8479.89に入れる
    • なぜ起きる:HS2022の新設サブヘディングを未反映
    • 正しい考え方:HS2022で8479.83が新設されています。
    • 予防策:加圧方式・温度条件を仕様書で確認し、相関表で旧→新の対応も確認
  8. 間違い:84.69(タイプライター)をHS2022でも使えると思い込む
    • なぜ起きる:旧資料の参照
    • 正しい考え方:HS2022条文上、84.69は欠番表示で、HS2017への改正で移転が示されています。
    • 予防策:社内マスタのHS版(2012/2017/2022)を明示し、相関表で更新

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結するため、誤分類=原産性判断の前提崩れになり得ます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSは合っていても、非原産材料のHSがズレていてCTC判定が崩れる
    • 機能ユニット(部注4)で“まとめて分類すべき”ところを分割して扱い、PSRの単位が変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によってPSRが参照するHS版が異なることがあり、HS2022(6桁)で見ているつもりでも、協定上はHS2012等で判定するケースがあります。
  • 例(一次情報に基づく代表例):
    • RCEP:HS2022に基づくPSRの採択・公表がされています。
    • CPTPP:原産地規則で参照するHS版としてHS2012が示されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定参照HS版に合わせてPSRを確認し、必要なら相関表(correlation table)で旧HS→HS2022の対応を取ります(6桁ベース)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須になりやすいデータ:
    • 材料表(BOM)、材料原産国、非原産材料のHS(協定参照版で)、工程フロー、原価・RVC計算前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 税関の案内・協定運用ガイダンスに従い、根拠資料を保存(期間・形式は協定・国内運用で変動)
  • 実務の“社内で聞く質問例”:
    • 「その装置は単体ですか、**ライン(ユニット)**ですか?」
    • 「“ロボット”の主機能は搬送ですか、**加工(溶接/組立/塗装)**ですか?」
    • 「3Dプリンタは積層方式(方式名)ですか? 材料は? 固化方法は?」

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設(細分)8428.70産業用ロボットを特定する新サブヘディングを創設旧コード参照のまま8428.90等に置く事故/統計・規制・PSR影響
HS2017→HS2022新設(細分)8479.83冷間等方圧プレスを特定する新サブヘディングを創設8479.89との取り違えが起きやすい
HS2017→HS2022新設(見出し)8485積層造形(3Dプリンタ等)を独立見出し化8477/8441/8463等との誤分類リスクが増える
HS2017→HS2022範囲変更8438 / 8479.20微生物油脂の抽出/調製機械の範囲を整理(8479.20側へ)食品機械(8438)寄せの誤り是正が必要
HS2017→HS2022新設(細分)8419.33(等)凍結乾燥等の監視・管理目的で新サブヘディング創設(関連サブヘディングの番号変更含む)旧番号の参照事故/統計・許認可の紐づけ影響
HS2017→HS2022新設(細分)8421.32車両用触媒・粒子フィルタを特定するサブヘディング創設8421内での細分が変化
HS2017→HS2022改正(細分再整理)8462(配下)技術発展を反映しサブヘディングを改正・新設旧→新のマスタ変換で注意
HS2017→HS2022新設(細分)8414.70(等)バイオ関連など特定用途を踏まえた細分創設、移転が発生8414/8421間での移転に注意

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • 日本税関掲載のHS2022↔HS2017相関表(WCO相関表)
    • HS2022の条文(Chapter 84)および定義(Note 10/11など)
  • どの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 相関表の「Remarks(改正理由・移転の説明)」により、8428.70の新設8479.83の新設8485の新設8438/8479.20の範囲整理等が明示されています。
    • さらに、HS2022条文側で**8428.70(Industrial robots)8479.83(Cold isostatic presses)**等が実際に設けられていることを確認しています。
    • 8485については、相関表の移転説明に加え、Chapter 84の類注で“積層造形”の定義が置かれていることを根拠に、HS2022で独立領域として扱うべきと整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

ここでは、税関掲載のWCO相関表(HS2007→2012→2017→2022)で確認できる範囲で、第84類に関係する“実務影響が出やすい”追加・削除・再編を抜粋します。

変遷主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(例)コメント
HS2007→HS2012水ジェット切断機の扱い見直し(例)8479.89 等 → 8456(配下)8456の範囲拡大に伴う移転が示されています
HS2007→HS2012旅客搭乗橋(Passenger boarding bridges)の細分創設8479.71/8479.79 新設搭乗橋の識別のため新サブヘディングが創設
HS2012→HS201784.69(タイプライター等)の削除・移転8469.00 → 8472.90低取引量等を理由に、84.69が削除され8472.90へ移転
HS2012→HS2017木工機械の細分(8465.20等)8465.20 新設自動工具交換等の要件を満たす機械向け細分が創設
HS2017→HS2022産業用ロボットの細分8428.70 新設HS2022で新サブヘディング創設
HS2017→HS2022積層造形(3Dプリンタ等)の独立8485 新設8441.80/8477.80等からの移転が示されています

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“部品一括”で8487に寄せて否認
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部分品の分類規則(Section XVI Note 2)に反し、独立見出しのある部品も一括計上
    • 起きやすい状況:BOMが粗い/インボイスに「spare parts」だけ
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、補足資料要求、検査強化
    • 予防策:部品明細(用途・型式・対応機械)、図面、写真を添付
  • 事例名:ライン分割輸入で“機能ユニット”否認
    • 誤りの内容:機能ユニット(部注4)の要件資料が不足し、個別分類へ
    • 起きやすい状況:装置一式を分割し、別々の船積・別インボイス
    • 典型的な影響:分類の再構成、税率・統計・規制の再評価
    • 予防策:据付後の一体機能を示す構成図(配管・ケーブル・制御)、工程資料
  • 事例名:“3Dプリンタ”の誤分類(8477等)
    • 誤りの内容:HS2022の8485新設と定義注の見落とし
    • 起きやすい状況:「樹脂加工機」として購入・社内登録されている
    • 典型的な影響:分類更正、FTAのPSR再判定、輸出管理番号の再評価
    • 予防策:造形方式・材料形態・プロセス資料を事前に整備
  • 事例名:産業用ロボットの細分見落とし
    • 誤りの内容:8428.70の新設(HS2022)を反映せず“その他”へ
    • 起きやすい状況:旧HSベースの社内マスタ
    • 典型的な影響:統計・規制・許可要否の判断がズレる
    • 予防策:HS版管理(2012/2017/2022)と相関表更新を運用化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 第84類そのものはSPSよりも、**製造設備としての衛生法規(食品工場等)**に波及することが多いです(品目分類とは別軸)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 第84類には**汎用品でも輸出管理(キャッチオール含む)**の検討が必要になり得る機械が多く含まれます(半導体製造装置、ロボット、真空装置、加工機等)。
      • 確認先:経済産業省の安全保障貿易管理(輸出管理)情報、該非判定の社内手順。
    • その他の許認可・届出(例)
      • ボイラー・圧力容器:労働安全衛生法体系の省令(ボイラー及び圧力容器安全規則)等に基づく手続・要件が関係する場合があります(設備としての設置・検査・届出等)。
      • クレーン等:クレーン等安全規則に基づく検査・届出等が関係する場合があります。
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(性能・用途・構造)、図面、カタログ、型式、最終用途(エンドユーザ・用途)
    • (輸出)該非判定書、用途確認書、輸出管理チェック記録

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何をする機械か(主機能)
    • 対象物(液体/気体/鉱物/食品/データ等)
    • 構成(単体/ライン/ユニット)、同時提示か分割提示か
    • 仕様書・カタログ・写真・工程図(可能なら)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • Section XVI Note 1(除外)に当たらないか
    • 部品ならSection XVI Note 2の順序で整理できているか
    • 8471(ADP)・8485(積層造形)・8486(半導体)など、類注定義を踏んでいるか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名が機能を表しているか(“parts”だけにしない)
    • 数量単位(台、セット、kg等)と実態が整合しているか
    • 付属品・スペアの取り扱い(同梱か別送か)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版(2012/2017/2022)を確認
    • 相関表で旧→新コードの対応を確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 輸出管理(該非判定・用途確認)
    • 国内法規(ボイラー則・クレーン則など該当時)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Nomenclature:Section XVI Notes(PDF) (参照日:2026-02-28)
    • HS2022 Nomenclature:Chapter 84(PDF) (参照日:2026-02-28)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説(第84類)PDF (参照日:2026-02-28)
    • 税関:相関表 HS2022→HS2017(PDF) (参照日:2026-02-28)
    • 税関:相関表 HS2017→HS2012/HS2012→HS2007(PDF) (参照日:2026-02-28)
    • 税関:品目別原産地規則 検索(JRO) (参照日:2026-02-28)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関:CPTPP 原産地規則関係手引(HS2012参照の記載) (参照日:2026-02-28)
    • 外務省:RCEP(協定情報) (参照日:2026-02-28)
    • 税関:RCEPにおけるHS2022に基づくPSR採択(案内) (参照日:2026-02-28)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • e-Gov法令検索:ボイラー及び圧力容器安全規則 (参照日:2026-02-28)
    • e-Gov法令検索:クレーン等安全規則 (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(輸出管理)関連情報 (参照日:2026-02-28)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック

Logistique Inc.

投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

コメントを残す