HS2022 第88類:航空機及び宇宙船並びにこれらの部分品(Aircraft, spacecraft, and parts thereof)

  • 用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 無人航空機(ドローン):無操縦者で飛行する機体(HS2022で新設の項:88.06)
    • 有人の航空機:ヘリコプター、飛行機等(ただし無人航空機は除く)
    • 宇宙機:衛星、サブオービタル機、宇宙機打上げ機など
    • 気球・滑空機等(動力のない航空機):グライダー、ハンググライダー等
    • パラシュート類:パラグライダー、ロトシュートを含む
    • 航空機/無人航空機の部分品:プロペラ、降着装置、その他の部品(HS2022で88.07に整理)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 飛行玩具(“遊び専用”のトイドローン等)第95類 95.03(類注で「無人航空機」の定義から除外)
    • 航空機に使う“汎用部品”(ねじ・ボルト等の「一般用部分品」など)→ 材質/汎用品の章(例:第15部、39類等)(部注で除外)
    • 機械類・電気機器として独立して性格を持つもの(例:多くの電気機器)→ 第84類/第85類(部注で「parts」扱いから除外)
    • 測定機器・光学機器など第90類(部注で除外)
    • 武器第93類(部注で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. “無人航空機”か“飛行玩具(遊び専用)”か(88.06 ↔ 95.03)
    2. 無人航空機の6桁分岐:遠隔操作のみか/それ以外(自律等)か(8806.21〜.29 ↔ 8806.91〜.99)
    3. 部品の扱い:本当に88.07の「部分品」か/汎用品・他章の機器か(第17部注で大きく左右)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • ドローンの新設項(88.06)絡み:旧HS(HS2017等)や社内マスターのコードが残っていると、関税・統計・原産地規則(PSR)・輸出管理の社内判定が連鎖的に崩れやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など):
    • **GIR1(品名+部注/類注で決める)**が最重要です。第88類では、
      • 類注(第88類注)が**「無人航空機」の範囲を定義し、さらに飛行玩具(95.03)を除外**します。
      • 部注(第17部注)が、“parts(部分品)”と言えても除外される物(汎用品、電気機器、計測機器等)を定めます。
        → つまり「品名が“drone parts”だから88.07」といった決め方が危険です。
    • **GIR6(6桁の選択)**も実務で必須です。特に無人航空機(88.06)は、
      • 「遠隔操作のみ」かどうか
      • **最大離陸重量(maximum take-off weight)**の区分
        で6桁が分かれます。最大離陸重量の定義自体が類注(サブヘディング注)にあります。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 用途/機能:遊び専用か(玩具)、業務用途(撮影・測量・散布・運搬等)か。
    • “飛ぶもの”の状態:完成機、未完成機、分解して輸送しているか(キット)。
    • 部品の性格:航空機専用品か、汎用品か、他章の機器(電気/光学等)か。
    • 重量:88.06は最大離陸重量、88.02は空荷重量(unladen weight)が分岐軸です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「機体(飛ぶもの)」か、「部分品」か、「地上設備/訓練装置」か?
    • 機体 → Step2へ
    • 部品 → Step4へ
    • 地上設備/訓練装置 → 8805の可能性を確認
  • Step2:機体の場合、「無人航空機」か?
    • 人(操縦者)が搭乗しない設計 → 原則「無人航空機」候補
    • ただし、遊び専用の飛行玩具(95.03)は除外
  • Step3:無人航空機なら 88.06(8806)
    • 6桁は「旅客輸送用」か、その他(遠隔操作のみ/その他)+重量で分岐
      無人航空機でない機体なら、主に以下:
    • 動力のない航空機 → 88.01(8801)
    • 有人の航空機・宇宙機 → 88.02(8802)
    • パラシュート類 → 88.04(8804)
  • Step4:部品の場合、88.07(8807)に行けるかを部注でチェック
    • 8807は「88.01/88.02/88.06の部分品」
    • ただし部注により、汎用品・電気機器・計測機器などは“parts扱い”から外れます。
    • また、部品が複数章の見出しに該当する場合は**“主たる用途”**で決める考え方が示されています。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 88.06(無人航空機) vs 95.03(飛行玩具):設計目的が「遊び専用」かが争点
    • 88.07(部分品) vs 他章(84/85/90等):部注2の除外リストに当たるか、専用品かが争点

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第88類は4桁見出しが少ないため、HS2022に基づき全列挙します(※削除された[88.03]も、誤読防止のため注記付きで掲載)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8801気球・飛行船、グライダー、ハンググライダー等(動力なし)係留気球、グライダー、ハンググライダー「動力なし」が鍵。パラグライダーは8804側に明記あり(混同注意)。
8802その他の航空機(ヘリ、飛行機等)+宇宙機(衛星等)※無人航空機除く有人ヘリ、有翼機、衛星、打上げ機**「無人航空機(8806)を除く」**がHS2022で明確化。6桁は空荷重量(unladen weight)で分岐。
8803(参考)HS2017まで:88.01/88.02の部分品旧:プロペラ、降着装置等HS2022では削除([88.03])。現在は8807へ再整理。
8804パラシュート(パラグライダー含む)、ロトシュート、その部品・附属品パラシュート、パラグライダー翼、予備傘、ハーネス等“パラグライダー”は8804に明示。8801(ハンググライダー)との混同注意。
8805航空機発進装置、デッキアレスター、地上飛行訓練器等とその部分品カタパルト、着艦制動装置、フライトシミュレータ(地上飛行訓練器)6桁で「エアコンバットシミュレータ」等に分岐。単なるPC用ゲーム機器等は別章の可能性。
8806無人航空機産業用ドローン、測量ドローン、物流ドローン、(例)旅客輸送用eVTOL(無操縦者)飛行玩具(95.03)は除外。6桁は「旅客輸送用」or「遠隔操作のみ/それ以外」+最大離陸重量。
880788.01/88.02/88.06の部分品プロペラ、降着装置、機体構造部材、ドローン用ロータ等部注で“parts扱いから除外される物”が多い(電気機器・計測機器・汎用品等)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理

A) 8806(無人航空機)の6桁分岐:ここが最大の実務ポイント

  • まず 8806.10:旅客輸送用(Designed for the carriage of passengers)
    • 例:操縦者が搭乗しない旅客輸送用eVTOL(自動運航想定のエアタクシー機体など)
  • それ以外は、次の二段階で分岐します:
    1. **遠隔操作のみ(remote-controlled flight only)**か
    2. **最大離陸重量(maximum take-off weight)**がどのレンジか
  • 最大離陸重量は、類注(サブヘディング注)で「通常飛行状態での離陸時最大重量(ペイロード・装備・燃料を含む)」と定義されています。
    • 実務では、メーカー仕様の「MTOW」「最大離陸重量」「最大離陸時重量」が、ペイロードを含む定義かを確認します(仕様書に根拠を残す)。

B) 8802(有人航空機・宇宙機)の6桁分岐:重量の定義が独特

  • 8802.11/12:ヘリコプター(空荷重量≦2,000kg/>2,000kg)
  • 8802.20/30/40:飛行機等(空荷重量のレンジ)
  • 「空荷重量(unladen weight)」も類注(サブヘディング注)で定義されています(乗員・燃料等を除外)。
    • 例:機体メーカーの「Empty weight」「Operating empty weight」等のどれを使っているか要注意。

C) 8807(部分品)の6桁分岐

  • 8807.10:プロペラ/ロータ等
  • 8807.20:降着装置等
  • 8807.30:飛行機・ヘリ・無人航空機のその他部品
  • 8807.90:その他(例:宇宙機(8802.60)の部品などは、文言上ここに寄ることがあります)
    • ただし、部注で電気機器・計測機器等は除外され得ます。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8806.21〜.29(遠隔操作のみ) vs 8806.91〜.99(それ以外)
      • どこで分かれるか:機体が**「遠隔操作“のみ”」**かどうか(自律飛行・自動航行等の機能の有無が論点になりやすい)
      • 判断に必要な情報:取説(自律飛行モードの有無)、仕様書(オートパイロット/ウェイポイント機能)、販売資料
      • 典型的な誤り:「手で操作できる=遠隔操作のみ」と早合点(“only”の解釈が争点になり得る)
    2. **8806.21(≤250g) vs 8806.22(>250g〜7kg)**等(重量レンジの取り違え)
      • どこで分かれるか:最大離陸重量の閾値
      • 判断に必要な情報:MTOW(ペイロード含む)を裏づける仕様書、バッテリー含む重量定義
      • 典型的な誤り:本体重量(機体のみ)や梱包重量で判断
    3. 8807(部分品) vs 第85類/第90類(電気・計測機器としての性格)
      • どこで分かれるか:部注2の除外(電気機器・計測機器等)に該当するか
      • 判断に必要な情報:当該品の機能説明、単体販売実態、型式・仕様、他用途への転用可能性
      • 典型的な誤り:「機体に付けるから全部8807」

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17部注は、「車両・航空機・船舶」分野でよくある誤りである**“何でも parts 扱い”を防ぐ**ために、除外品目を列挙しています。
    • 特に重要なのは次の2つ:
      • 部注2:汎用品(一般用部分品)や電気機器・計測機器等は、たとえ当該部の物品として識別できても「parts」等の表現を適用しない
      • 部注3:86〜88章の「parts/ accessories」は、“その章の物品専用(solely or principally)”でないものには適用されない。複数見出しに該当するなら主たる用途で分類
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例1:ドローン用のねじ・ワッシャ → “parts”として8807ではなく、汎用品として材質章(第15部等)に寄りやすい(部注2)。
    • 例2:ドローンに搭載するカメラモジュール → 電気/光学機器としての性格が強い場合、部注2により第85類/第90類へ行きやすい(“機体に付ける=8807”は危険)。
    • 例3:「ドローン専用バッテリー」等 → 電気機器(第85類)に寄りやすく、部注2の観点で8807にしない整理が必要(個別判断)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • **電気機器(第85類)・計測(第90類)・工具(第82類)・武器(第93類)**などが、部注2で明示的に除外される。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第88類注は、HS2022で新設された**「無人航空機」概念**を示し、
      • 88.01(動力のない航空機)以外の、搭乗者なしで飛行する航空機
      • ペイロード搭載や、飛行中に実用機能を果たせるように統合されたカメラ等を備え得る
        といった特徴を踏まえて整理します。
    • ただし、遊び専用の飛行玩具(95.03)は“無人航空機”に含めない点が明記されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 最大離陸重量(maximum take-off weight):離陸時の最大重量(ペイロード・装備・燃料を含む)
    • 空荷重量(unladen weight):通常飛行状態の機体重量(乗員・燃料等を除外)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 飛行玩具(遊び専用) → 95.03(第88類注で明示)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:“無人航空機”か“飛行玩具(95.03)”か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 設計目的(遊び専用か、撮影・測量・運搬等の実用か)
      • 機能(ペイロード搭載、統合カメラ、実用機能の説明)
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
      • メーカー仕様書(用途・機能・ペイロード・飛行モード)
      • 販売カタログ/商品ページ(“toy”表示の有無、対象年齢、遊び目的の強調)
      • 取扱説明書(飛行モード・安全機能)
      • 外観写真(玩具的意匠か、業務機器的か)
    • 誤分類の典型:
      • 小型ドローンをすべて8806に寄せてしまい、“遊び専用”と判断され95.03に修正される
  • 影響ポイント2:88.06(無人航空機)の重量定義が、そのまま6桁を決める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 最大離陸重量(MTOW)=ペイロード等込みの定義か(類注で定義)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書の重量定義(MTOW/最大離陸重量、最大搭載量)
      • 申告時の説明資料(重量の算定根拠)
    • 誤分類の典型:
      • “機体のみ重量”で判定してしまい、閾値(250g/7kg/25kg/150kg)を跨いでしまう
  • 影響ポイント3:「部分品」扱い(8807)か、部注で他章へ飛ぶか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その品が汎用品か、電気機器/計測機器等か(部注2の除外リスト)
      • 88.01/88.02/88.06向けに**専用(solely or principally)**と言えるか(部注3)
    • 現場で集める証憑:
      • 図面・品番体系(航空機専用であること)
      • 他用途転用の可否が分かる技術資料
      • 取引実態(単体販売の市場、汎用流通しているか)
    • 誤分類の典型:
      • “ドローンに付く”だけで8807にして、部注2該当(電気機器等)で修正される

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ドローンを旧来の8802(航空機)や、カメラ側(例:8525)に寄せ続ける
    • なぜ起きる:社内マスターがHS2017以前のロジックのまま/「カメラ付きだからカメラ」と短絡
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
      • HS2022では無人航空機が88.06として独立し、旧分類の一部が8802やex8525.80から移されたことが相関表で示されています。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「HS2022対応済みのマスターですか?」
      • 「機体として輸入? カメラ等の部品単体? セット?」(品目の同一性を確認)
  2. 間違い:“トイドローン”を8806(無人航空機)で申告
    • なぜ起きる:外観がドローンで、飛ぶ=航空機と考える
    • 正しい考え方:
      • 第88類注で、遊び専用の飛行玩具は95.03と明示されています。
    • 予防策:
      • 商品の対象年齢、玩具表示、遊び目的の強調、機能(実用機能の有無)を確認
      • カタログ・外箱写真・取説を必ず保管
  3. 間違い:8806の重量分岐を「機体重量」「梱包重量」で判定
    • なぜ起きる:重量の定義を読まず、手元の重量データで決めてしまう
    • 正しい考え方:
      • 8806の閾値は「最大離陸重量」であり、ペイロード・装備・燃料を含むと注で定義されています。
    • 予防策:
      • 仕様書に「最大離陸重量(定義)」が明記されているか確認
      • 不明ならメーカーに「MTOWにペイロード含みますか?」を照会
  4. 間違い:“遠隔操作のみ”と“それ以外”の区分を見落とす(8806.2xと8806.9xの取り違え)
    • なぜ起きる:無人航空機=全部同じ、と思い込む
    • 正しい考え方:
      • 8806は「遠隔操作のみ」グループと「その他」グループに分かれています。
    • 予防策:
      • 取説で自律飛行(自動航行/ウェイポイント等)の可否を確認
      • 商品企画/技術部に「遠隔のみ?自律あり?」を質問
  5. 間違い:8807(部分品)に“何でも”入れる
    • なぜ起きる:「航空機に使う=航空機部品」とラベルで判断
    • 正しい考え方:
      • 第17部注2で、電気機器・計測機器・汎用品などは「parts」扱いにしない、と明記されています。
    • 予防策:
      • 部品の機能が「電気機器/計測機器/工具/汎用品」に該当しないかチェック
      • 他用途に流通するか(汎用性)を購買・技術に確認
  6. 間違い:パラグライダーを8801(グライダー等)にしてしまう
    • なぜ起きる:「グライダー」という日本語イメージで分類
    • 正しい考え方:
      • HS上、**パラグライダーは8804(パラシュート類)**に明記されています。
    • 予防策:
      • 製品が“パラシュート構造(翼)”か、“剛翼の滑空機”かを写真・構造図で確認
  7. 間違い:フライトシミュレータを“ゲーム機/PC周辺機器”として別章で処理
    • なぜ起きる:外観が電子機器で、航空訓練器に見えない
    • 正しい考え方:
      • 8805には「地上飛行訓練器」や「エアコンバットシミュレータ」が明記されています。
    • 予防策:
      • 用途が訓練(ground flying trainers)なのか、娯楽用途かを契約・仕様・販売先で確認
  8. 間違い:部品・付属品の“主たる用途”を整理せずに複数見出しのうち適当なものを選ぶ
    • なぜ起きる:複合品(例:センサー付き部品)で迷い、慣例で決める
    • 正しい考え方:
      • 部注3は、複数見出しに該当する場合、主たる用途に対応する見出しで分類する考え方を示しています。
    • 予防策:
      • 「単体で何をする物か」「他用途に転用できるか」「どの機種に専用か」を技術部に確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • PSRは原則、**最終製品のHS(多くは6桁)**に紐づくため、HSがズレると適用すべき規則自体が変わります。
    • 第88類はHS2022で構造が変わっているため(88.06/88.07新設、88.03削除)、旧HS前提でPSRを読むと事故が起きやすいです。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • ドローン本体(8806)と、カメラ等の電気部品(別章)を混ぜてBOM分類してしまう
    • 旧コード(8803)で部材HSを管理し続け、PSRの章立てと齟齬が出る

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • 本件は協定が未指定のため、例示します(実務では必ず対象協定の附属書冒頭でHS版の明記を確認してください)。
      • 日EU・EPA:品目別規則(PSR)がHS2017改正体系に基づく旨が附属書で示されています。
      • CPTPP:PSRはHS2012体系で整理されている旨が各国当局の案内にあります。
      • RCEP:PSR(Annex 3A)はHS2012改正体系に基づく旨が明示されています。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • HS2022で確定した6桁を、そのままPSR表に当てはめられない場合があります(表がHS2012/2017で組まれているため)。
    • 特に第88類は、HS2022でドローン(8806)とその部品(8807)が新設されたため、協定側が旧版HSのままだと“読む場所”が変わります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ① まず輸出入申告は(多くの国で)現行HSで行う
    • ② 原産地(PSR)は協定参照HS版に合わせる必要がある場合、相関表で旧新版対応を取る
    • ③ 対応が一対一でない場合(分割/統合)は、品目の範囲説明や当局ガイドも参照し、必要なら事前照会も検討
      ※第88類のHS2017→HS2022は、相関表で移行の方向性(8806/8807新設、8803削除)が明確に示されています。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 完成品(例:ドローン=8806)と主要材料(モーター、制御基板、カメラ等)のHS付番を分けて管理
    • 主要工程(組立、制御ソフト書込み、キャリブレーション等)を工程表に落とす
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定により異なるため、自己申告/原産地証明書の要件、保存年限を協定本文・運用指針で確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設88.06(8806)無人航空機(ドローン)を独立項として新設。旧版では一部が8802やex8525.80側に存在。社内マスター更新必須。PSR参照HS版とのズレが出やすい。
HS2017→HS2022範囲変更8802.11〜8802.408802の一部範囲が、無人航空機(88.06)へ移管され、8802の範囲が狭まった。“有人/無人”の峻別がより重要に。
HS2017→HS2022新設88.07(8807)88.01/88.02に加えて、88.06(無人航空機)の部分品を整理するため新設。「部品」の見直しが必要。旧8803の置換。
HS2017→HS2022削除88.03(8803)旧88.03(88.01/88.02の部分品)は削除され、HS2022では88.07へ。旧8803管理の部品は移行が必要(特にデータ連携)。
HS2017→HS2022注の追加/整備第88類注・サブヘディング注“無人航空機”定義+「飛行玩具(95.03)除外」、8806の最大離陸重量定義を明記。申告根拠(仕様書)整備が重要に。重量算定の説明が必要。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)を列挙し、
    “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”を文章で説明します。
    • **WCOのHS2022条文(第88類)で、88.06(無人航空機)と88.07(部分品)が見出しとして掲載され、旧88.03が[88.03]**として表示されていることから、HS2022で新設/削除が起きたと判断しました。
    • **WCOのHS2017条文(第88類)**では88.03(部分品)が存在し、88.06/88.07が存在しないため、2017→2022で構成が変わったことが確認できます。
    • **HS2022-HS2017相関表(WCO)**において、
      • 88.06新設により8802の範囲が狭まったこと、
      • 88.07新設により88.06の部分品をカバーし、旧88.03が削除されたこと、
      • 8806がex8802・ex8525.80等から移管されたこと
        が明記されているため、移管・整理の方向性を裏づけました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第88類の範囲)
期間主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(代表)補足
HS2007→HS2012大枠の4桁構成(8801〜8805、8803含む)に目立った変更なし両版とも88.03(8803)が存在。
HS2012→HS2017大枠の4桁構成に目立った変更なし88.03(8803)が引き続き存在。
HS2017→HS202288.06新設、88.07新設、88.03削除、8802範囲変更8803.* → 8807.10/20/30/90(部品)無人航空機が独立したことで、旧来の社内コード運用に改修が必要。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):トイドローンを8806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第88類注の「飛行玩具(95.03)除外」
    • 起きやすい状況:品名が“mini drone”、安価で玩具用途だが説明資料が薄い
    • 典型的な影響:修正申告、分類根拠資料の追加提出、通関遅延
    • 予防策:外箱・対象年齢・用途説明の保存、玩具該当性の事前整理
  • 事例名:ドローンの6桁で“遠隔操作のみ”の選択ミス
    • 誤りの内容:8806.2x(遠隔操作のみ)と8806.9x(その他)の取り違え
    • 起きやすい状況:自律飛行機能の有無を営業資料だけで判断
    • 典型的な影響:修正申告、仕様書提出要請
    • 予防策:取説・仕様書で自律飛行機能を確認し、分類メモに残す
  • 事例名:“ドローン部品”として8807に入れたが、実態は電気機器
    • 誤りの内容:部注2(電気機器等はparts扱いしない)に抵触
    • 起きやすい状況:カメラ、通信モジュール等を「機体用部品」として一括申告
    • 典型的な影響:別章へ更正、評価・原産地判定のやり直し
    • 予防策:部品を「機械/電気/計測/汎用品」に分解し、各章で当てる
  • 事例名:航空機用のボルトを8807で申告
    • 誤りの内容:部注2(一般用部分品)に抵触
    • 起きやすい状況:航空機専用と言い切れない標準規格品
    • 典型的な影響:材質章へ更正、課税・統計の修正
    • 予防策:専用設計(図面・専用品番)か、汎用品かを区別

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 通常、第88類自体でSPS(食品・動植物検疫)要件が前面に出るケースは多くありません(搭載物や材質で別途発生することはあります)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • ドローンは軍事転用の観点から、**外為法に基づく輸出管理(リスト規制/キャッチオール規制)**の対象になり得ます。
    • 経産省の資料では、無人機(ドローン)の管理でキャッチオール規制の確認フロー等が示されています。
    • 実務では「性能(航続距離、ペイロード等)」「需要者/用途」「仕向地」等で判断が変わるため、社内の該非判定・取引審査フローに落とすのが重要です。
  • その他の許認可・届出
    • (日本国内で飛行させる場合)無人航空機の登録・Remote ID等
      • MLIT(国交省)情報として、屋外で飛行する100g以上のドローン/模型航空機は登録対象で、未登録の飛行は禁止、罰則(罰金・拘禁刑)リスクが示されています。
      • また、登録ID表示やRemote ID機能装備などの要件も案内されています。
        ※これは「飛行規制」であり、HS分類とは別枠ですが、輸入後の使用計画に直結するため、取引条件に織り込む必要があります。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 飛行・登録:国交省(MLIT)無人航空機関連ポータル
    • 輸出管理:経産省(METI)安全保障貿易管理(ドローン輸出資料等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 輸出:仕様書(性能)、BOM、用途・需要者情報、仕向地、該非判定書(社内/外部)
    • 国内運用:機体重量(100g基準)、登録ID、Remote IDの要否、飛行許可/承認要否

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品の正体:完成機/部品/セット(同梱品一覧)
    • 用途:遊び専用か、実用(撮影・測量・運搬等)か
    • 機能:自律飛行の有無、ペイロード、統合カメラ等
    • 重量:8806なら最大離陸重量(定義込み)、8802なら空荷重量
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • トイドローン除外(95.03)に当たらないか
    • 部品は第17部注2/3で除外されないか
    • 6桁の分岐条件(遠隔操作のみ/その他、重量レンジ)を根拠資料で裏取り
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「drone」「parts」だけでなく、用途/機能(例:unmanned aircraft for aerial survey)を補足
    • 仕様書、写真、カタログをセットで用意(特に88.06/88.07は説明が効く)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版(HS2012/2017等)を確認し、必要なら相関表で読み替え
    • BOMの材料HS・工程・原価(RVC等)を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 輸出:METIの輸出管理(リスト/キャッチオール)に該当し得るか
    • 国内飛行:MLITの登録・Remote ID・許可/承認等の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO:HS Nomenclature 2022(Chapter 88、Section XVII Notes) (参照日:2026-03-01)
    • WCO:HS Nomenclature 2017/2012/2007(Chapter 88) (参照日:2026-03-01)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:HS2022-HS2017相関表(WCO相関情報を含む) (参照日:2026-03-01)
    • 税関:品目分類とHSの解説ページ (参照日:2026-03-01)
    • 税関:品目分類の事前教示制度(Advance Ruling on Classification) (参照日:2026-03-01)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 日本外務省:日EU・EPA 品目別規則(附属書:HS2017に基づく旨の記載) (参照日:2026-03-01)
    • Australian Border Force:RCEP Annex 3A(PSRがHS2012に基づく旨の記載) (参照日:2026-03-01)
    • Australian Border Force:CPTPP(PSRがHS2012体系である旨の案内) (参照日:2026-03-01)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • 国交省(MLIT):無人航空機登録・飛行ルール(100g以上の登録、Remote ID等) (参照日:2026-03-01)
    • 経産省(METI):ドローン輸出と安全保障貿易管理(外為法・輸出管理、キャッチオール確認フロー等) (参照日:2026-03-01)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第86類:鉄道用又は軌道用の機関車及び車両並びにこれらの部分品、鉄道又は軌道の線路用装備品及びその部分品並びに機械式交通信号用機器(電気機械式のものを含む。)

(Railway or tramway locomotives, rolling-stock and parts thereof; railway or tramway track fixtures and fittings and parts thereof; mechanical (including electro-mechanical) traffic signalling equipment of all kinds)実務向け整理

※用語統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 電気機関車(外部電源・蓄電池駆動)=8601
    • ディーゼル電気機関車、蒸気機関車等の「その他の機関車」=8602
    • 自走式の鉄道用・軌道用の客車/貨車(電車・気動車等)=8603
    • 線路保守・作業用車両(自走式か否かを問わない)=8604
    • 貨車(非自走)=8606、台車・ブレーキ等の部分品=8607
    • 転車台・積載限界ゲージ・機械式(電気機械式含む)の信号・交通管制機器=8608、インターモーダルコンテナ=8609
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 木製・コンクリート製のまくら木、空気浮上式鉄道用のコンクリート製案内軌道走行路:第44.06項/第68.10項
    • 鉄鋼製レール等の線路用建設資材:第73.02項
    • 信号用・安全用・交通管制用の電気機器第85.30項
    • 「ただのケース・木箱」など、多方式輸送用に特に設計・装備されていない容器:構成材料で分類(例:木製・金属製の該当項)
    • 道路用トレーラー(主として道路トレーラーとして使用):87.16
    • 玩具の列車:95.03(参考:税関解説で除外例として挙示)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 「信号・管制」が“機械式(電気機械式含む)”か、“電気機器(電子機器)”か:8608 ↔ 8530の境界が最大の地雷です。
    • 「部分品」かどうか:Section XVIIの部注(汎用部品・汎用品の除外、専ら/主としての使用)で、8607に行けないケースが多発します。
    • 道路・鉄道の両用車両:原則、Chapter 87側に寄る規定があるため要注意です。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 8608(機械式)で申告したが、実物はPLC・電子制御主体で85.30相当だった、など(税番差+規制・原産地ルールにも波及)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • GIR1(見出し文言+注で決める)
    第86類は、類注(Chapter Notes)で「この類に含めないもの(=除外)」と「8607/8608に含むもの」が明確です。まず注を読み、除外(44.06/68.10、73.02、85.30)に当たらないか確認します。
  • GIR2(a)(未完成・未組立でも“完成品の重要な特性”があれば完成品扱い)
    鉄道車両は、未完成でも「車両としての重要な特性」を備える場合があり得ます。日本税関解説でも未完成車両の考え方と例示が整理されています。
  • GIR6(6桁の号レベルは、同じ“号”同士で比較)
    例:貨車(8606)内で「タンク貨車(8606.10)」か「自動荷卸し(8606.30)」か等は、号の文言と条件(形状・機能)で詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 自走式か否か(8601〜8603 vs 8605〜8606)
    • 用途(保守・作業用か、輸送用か)(8604 vs 8603/8605/8606)
    • 信号装置の方式(機械式/電気機械式 vs 電気式)(8608 vs 8530)
    • 部分品の性格(汎用部品/一般機械/電気品を除外)(Section XVII部注)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物は「鉄道用又は軌道用」か?(車両・線路装備・信号・コンテナ)
    • “鉄道・軌道”は、通常のレールだけでなく、磁気浮揚式走行路やコンクリート軌道等の誘導システムも含む扱いがあります(税関解説上の整理)。
  • Step2:それは「完成車両(自走/非自走)」か?「部分品」か?
    • 自走:8601〜8603へ(ただし8604除外)
    • 非自走の客車等:8605、貨車:8606
    • 部分品:原則8607だが、Section XVII部注で弾かれないか確認
  • Step3:線路用装備・信号装置か?
    • 機械式(電気機械式含む)の信号・安全・交通管制、または線路用装備品:8608へ
    • ただし、電気式の信号・安全・交通管制機器は85.30(第86類注で明確に除外)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第86類 ↔ 第73.02項(線路用建設資材:レール・分岐器用の一部資材等)
    • 第86類 ↔ 第85.30項(信号・安全・交通管制の“電気機器”)
    • 第86類 ↔ 第87類(道路・鉄道両用車両)
    • 8609(コンテナ) ↔ “単なる包装容器”(材料で分類)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第86類は4桁見出しが多くないため全列挙します(8601〜8609)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8601外部電源または蓄電池により走行する鉄道用機関車架線集電の電気機関車、蓄電池機関車“電気機関車”でも、ディーゼル等は8602へ。外部電源か蓄電池かで6桁分岐。
8602その他の鉄道用機関車および炭水車蒸気機関車、ディーゼル機関車、炭水車8602.10は“ディーゼル電気”。油圧式・機械式ディーゼル等は8602.90側になり得る。
8603自走式の鉄道用・軌道用客車/貨車(8604除外)電車(EMU)、気動車(DMU)、自走式路面電車8604(保守・作業用車両)を除外。動力が外部電源か否かで6桁分岐。
8604鉄道/軌道の保守用・作業用車両(自走式か否か問わず)バラストタンパ、軌道検測車、軌道作業車、クレーン車例示が見出しに明記。道路・鉄道両用車両は部注で第87類へ寄る規定に注意。
8605非自走の客車等(旅客車・手荷物車・郵便車・特殊用途車)客車、郵便車、荷物車自走式なら8603へ。8604(作業用)を除外。
8606非自走の貨車タンク貨車、ホッパー貨車、無蓋貨車、有蓋貨車8606.92は「無蓋で側板固定・側板高>60cm」。条件確認が必須。
8607機関車/車両の部分品台車、輪軸、ブレーキ装置、連結器、車体部材類注で8607に含む範囲が例示。Section XVII部注で“汎用部品/電気品”等を除外。
8608線路用装備品+機械式(電気機械式含む)信号・交通管制機器+部分品転車台、積載限界ゲージ、機械式信号機、踏切用制御機等類注で含有例示。電気式信号機器は85.30に除外。税関解説で除外例(信号用ランプ等)も整理。
8609コンテナ(多方式輸送用に特に設計・装備/液体用含む)ISOコンテナ、タンクコンテナ、断熱コンテナ等“フック・吊り輪・キャスター・支持具”等の装備が典型。単なるケース等は材料で分類。道路用トレーラーは87.16除外。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    第86類は“材質割合”よりも、**機能(動力方式、用途、構造、装備)**が分岐条件になりやすい類です。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8601.10 / 8601.20(電気機関車:外部電源 vs 蓄電池)
      • どこで分かれるか:走行用電力の主供給源が、架線・第三軌条等の外部電源か、車上の蓄電池か。
      • 判断に必要な情報:主電源方式、集電装置の有無(パンタグラフ等)、バッテリー容量・用途。
      • 典型的な誤り:ハイブリッド/補助電源の有無だけで“蓄電池”と誤解する(主たる走行電源で判断)。
    2. 8602.10 / 8602.90(その他の機関車:ディーゼル電気 vs その他)
      • どこで分かれるか:“ディーゼル電気”=ディーゼルエンジン直結発電機→電流で牽引電動機を駆動、という駆動方式(税関解説に説明あり)。
      • 判断に必要な情報:動力伝達方式(電気式/油圧式/機械式/蒸気/ガスタービン等)、主構成(発電機・牽引電動機の有無)。
      • 典型的な誤り:ディーゼル機関車=全部8602.10と短絡(油圧式・機械式ディーゼルは8602.90側になり得る)。
    3. 8603.10 / 8603.90(自走式車両:外部電源 vs その他)
      • どこで分かれるか:外部電源で走る電車等(8603.10)か、それ以外(ディーゼル、蓄電池等=8603.90)か。
      • 判断に必要な情報:電源方式、主機関仕様。
      • 典型的な誤り:車両が電動機を持つ=8603.10と誤解(車上発電のディーゼル電気方式等は“外部電源”ではない)。
    4. 8606.91 / 8606.92 / 8606.99(貨車:有蓋・無蓋(側板固定・側板高>60cm)・その他)
      • どこで分かれるか:
        • 8606.91:Covered and closed(有蓋・密閉)
        • 8606.92:Open(無蓋)かつ 側板が取り外せない、さらに 側板の高さが60cmを超える
        • 8606.99:その他
      • 判断に必要な情報:屋根・側壁の有無、側板が固定か可動か、側板高さ(>60cmか)。
      • 典型的な誤り:「無蓋=全部8606.92」と誤解(側板固定・高さ条件を満たさないと8606.99側)。
    5. 8607.21 / 8607.29(ブレーキ:空気ブレーキ vs その他)
      • どこで分かれるか:ブレーキ装置が空気式(air brakes)か、その他方式か。
      • 判断に必要な情報:ブレーキ方式(空気・油圧・電磁等)、構成部品の仕様書。
      • 典型的な誤り:車両側の“空気配管がある”だけで空気ブレーキと断定(部品単体の方式で判断)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section XVII 注2:「部分品」「部分品及び付属品」として扱わないもの(汎用性の部分品、機械(84類)、電気品(85類)等)が列挙されています。
    • Section XVII 注3:“専ら又は主として”第86〜88類の物品に使用されることが、部分品・付属品として分類されるための重要条件です。
    • Section XVII 注4:道路・鉄道の両用車両は原則第87類の該当見出しへ、という規定があります。
    • Section XVII 注5:空気クッション車両(hovertrains等)の分類ルールがあり、ガイドトラック上を走るhovertrainsは第86類側に寄ります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:鉄道車両用に設計された台車でも、そこに使う「汎用のボルト・ナット」は“部分品”扱いされず、材質により分類されます(Section XVII注2の考え方)。
    • 例:道路と線路の両方を走る保守車両は、見た目が“鉄道用”でも、部注により第87類で検討が必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • **電気機器(Chapter 85)**に飛ぶ(例:電気式信号・管制機器)
    • 84類の機械・装置に飛ぶ(例:車両に搭載される一般機械で、Section注2(e)の除外に該当)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第86類は、(a)木/コンクリ製まくら木等、(b)73.02の線路用鉄鋼建設資材、(c)85.30の電気式信号・安全・交通管制機器を含まない
    • 注2:8607(部分品)に含まれる代表例(輪軸、台車、ブレーキ装置、連結器、車体等)を列挙。
    • 注3:注1の物品を除き、8608に含まれる代表例(組立線路、転車台、積載限界ゲージ、腕木信号機等の機械式信号装置)を列挙。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 条文上の定義文は限定的ですが、日本税関解説では「鉄道・軌道」の範囲を広く捉える説明(磁気浮揚式・コンクリート軌道等の誘導システムも含む)が示されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 44.06/68.10(まくら木・案内軌道走行路)、73.02(線路用鉄鋼資材)、85.30(電気式信号・管制)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:信号・交通管制機器:8608(機械式/電気機械式)↔ 85.30(電気式)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 駆動方式(機械連動、電気機械式=モーター+機械連結、電子回路主体 等)
      • 電気部品の有無ではなく、**“機器として電気式か”**が争点になりやすいです。
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(制御方式・ブロック図)、配線図、写真、設置図、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • 踏切制御装置を「鉄道の信号だから8608」としたが、実態が電気式信号・制御(85.30)だった。
  • 影響ポイント2:8607(部分品)に行けるか:Section XVII 注2・注3で弾かれる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が“専ら又は主として”鉄道車両に使われる設計か(共用品か)
      • 汎用部品(ねじ・ボルト・ワッシャー等)や電気品(85類)に当たらないか
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(取付穴位置等)、適合車種リスト、メーカーの用途説明、販売実態(カタログ)、部品表(BOM)
    • 誤分類の典型:
      • 形鋼・板材を「車両用フレーム部材」と称して8607申告したが、加工が不十分で汎用品扱いになった。
  • 影響ポイント3:道路・鉄道両用車両の章跨ぎ(第87類へ)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 走行機構(道路走行装置の有無・主要性)、車両設計コンセプト(“両用”として特に設計されているか)
    • 現場で集める証憑:
      • 型式仕様、走行モード説明、写真(タイヤ/レール輪の構成)、取扱説明書
    • 誤分類の典型:
      • 軌道保守車両を8604で固定してしまい、部注4の検討が漏れる。
  • 影響ポイント4:8609(コンテナ)↔ “単なる容器”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 多方式輸送(道路・鉄道・海上・航空等)を想定し、荷役・固定のための取付具を装備しているか
    • 現場で集める証憑:
      • 外観写真(コーナーフィッティング等)、仕様書、ISO規格適合情報、用途説明
    • 誤分類の典型:
      • 大型の箱=コンテナとして8609申告したが、吊り具等の装備がなく材料分類だった。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:レール・分岐器周りの鉄鋼材を8608(線路用装備品)にしてしまう
    • なぜ起きる:現場では「線路部材=8608」と一括で呼びがち。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注1で73.02の線路用鉄鋼建設資材は除外。税関解説でも、転轍棒などが73.02になり得る旨の注意があります。
    • 予防策:
      • 図面で“レール/継目板/ポイント部材”か、“転車台等の装置”かを切り分ける
      • 社内質問例:「その部材は73.02でいう“線路用建設資材”の範囲ですか?(レール、継目板、分岐器の構成材等)」
  2. 間違い:踏切・信号システムを8608に固定し、電気式(85.30)を見落とす
    • なぜ起きる:「鉄道信号」という用途名に引っ張られる。
    • 正しい考え方:類注1(c)で電気式の信号・安全・交通管制機器(85.30)は第86類から除外
    • 予防策:
      • 仕様書で「機械式(連動棒・レバー)」「電気機械式(モーター+機械)」か、「電気/電子(センサー+電子制御)」かを確認
      • 社内質問例:「制御の主体は機械連動ですか?それとも電気/電子制御ですか?」
  3. 間違い:道路・鉄道両用車両を第86類(8604等)で申告する
    • なぜ起きる:実使用が鉄道現場中心だと“鉄道用”に見える。
    • 正しい考え方:Section XVII 注4により、道路・鉄道両用として特に構築された車両は第87類での検討が必要。
    • 予防策:
      • 道路走行装置(タイヤ等)の仕様と役割の確認
      • 社内質問例:「道路走行は補助ですか?両モード走行を前提に設計されていますか?」
  4. 間違い:台車に取り付けていない車体(客車・貨車の車体)を、完成車(8605/8606)として申告する
    • なぜ起きる:“車体=車両”と思いがち。
    • 正しい考え方:税関解説では、台車に取り付けていない車体は、車両の部分品(8607)として扱う趣旨が明記されています。
    • 予防策:
      • 出荷形態(台車付き/なし、走行装置の有無)を写真で確認
      • 社内質問例:「出荷時点で走行装置(台車・輪軸)は付いていますか?」
  5. 間違い:ディーゼル機関車を一律8602.10(ディーゼル電気)にする
    • なぜ起きる:ディーゼル=ディーゼル電気と誤解。
    • 正しい考え方:税関解説でディーゼル機関車の方式(電気式/油圧式/機械式)が整理されており、“電気式”であることが8602.10のポイント
    • 予防策:
      • 動力伝達方式(発電機→牽引電動機か)を仕様書で確認
  6. 間違い:貨車の無蓋タイプを条件確認なしで8606.92にする
    • なぜ起きる:無蓋貨車=8606.92と覚えてしまう。
    • 正しい考え方:8606.92は「側板固定」かつ「側板高>60cm」という条件付き。
    • 予防策:
      • 側板の固定/可動、側板高さを採寸・図面で確認
  7. 間違い:8607(部分品)と、Section XVII 注2の除外(汎用部品・電気品等)を混同する
    • なぜ起きる:“車両に使う=全部8607”と短絡。
    • 正しい考え方:Section XVII 注2で、電気機器(85類)等は“部分品”扱いしない、と整理。
    • 予防策:
      • 材質・機能・汎用性の確認(“ボルトはボルト”)
  8. 間違い:8609(コンテナ)に、単なる大型箱・保管箱を入れてしまう
    • なぜ起きる:物流現場で“コンテナ”と呼ぶ範囲が広い。
    • 正しい考え方:多方式輸送のために**特に設計・装備(吊り具等)**した容器が8609。単なるケース等は材料で分類。
    • 予防策:
      • コーナーフィッティング等の装備有無、繰返し使用前提、荷役容易性の設計を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。
    例:完成車両(8603/8605/8606)と部分品(8607)でPSRが全く変わることがあり、誤分類すると原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • **材料側HS(部材・電子機器)**が、Section XVII注2の除外で別章になるのに、BOM上は“鉄道部品”としてまとめてしまう
    • **未完成品(GIR2(a)相当)**の扱いを誤り、完成品HSで見るべきところを部品HSで評価してしまう(または逆)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 参照するFTA/EPA:未指定(取引の協定本文・付属書で要確認)
  • 一般論:
    • 多くの協定は、特定のHS版(例:HS2012等)を参照してPSRを記載します。自社の申告HS(HS2022)と協定HS版がズレる場合、**トランスポジション(旧→新対応)**が必要です。
    • 第86類は、WCO相関表上、HS2007→2012→2017→2022の各版で8601〜8609の変更が示されていません(変更がある場合に掲載される相関表に該当が見当たらない)。
      ただし、個別協定の運用(各国の国内コード・解釈)まで同一とは限らないため、協定本文・税関ガイダンス確認が前提です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • “部分品”の判定に効く資料(用途・適合・図面)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定ごとの自己申告/第三者証明、保存期間、サプライヤー証明の形式を確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(WCO条文・相関表上、該当変更の表示なし)8601〜8609見出し・類注・号の構造に変更なし過去版からの移行コストは小さい(ただし国内細分・運用差は別途)
HS2012→HS2017変更なし(相関表に該当表示なし)8601〜8609同上同上
HS2007→HS2012変更なし(相関表に該当表示なし)8601〜8609同上同上

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断:
    • WCOのHS2017 Chapter 86とHS2022 Chapter 86を比較すると、**類名、類注1〜3、見出し(8601〜8609)、号(例:8606.92 “Open, with non-removable sides of a height exceeding 60 cm” 等)**が同一です。
    • WCOのHS2017→HS2022相関表(Table I/II)は、変更・新設された号を列挙する性格ですが、表中に「860…」が見当たりません。
      以上から、HS2017→HS2022で第86類(HS6桁レベル)の変更はないと整理しました。
  • 変更がない場合も「変更なし」と明示:上記の通りです。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第86類)
版間主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(6桁)補足
HS2007→HS2012変更なし(相関表に該当表示なし)該当なし相関表は“変更がある号”を中心に掲示されるため、860…が出ない=変更なしの整理
HS2012→HS2017変更なし(相関表に該当表示なし)該当なし同上
HS2017→HS2022変更なし(WCO相関表に該当表示なし)該当なし同上

※注意:各国の「国内コード」(8桁/9桁等)の新設・改廃は、HS6桁とは別に起こり得ます。国内コードに触れる場合は、必ず各国関税率表で確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):踏切制御装置を8608で申告したが、電気式と判断された
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第86類注1(c)(85.30除外)に抵触
    • 起きやすい状況:品名が「踏切信号装置」「鉄道用信号」など用途名中心で、方式(機械式/電気式)の説明がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延
    • 予防策:方式が分かる仕様書(制御ブロック図・配線図)を添付、必要なら税関の事前相談
  • 事例名:転轍棒(ポイントロッド)を8608の部分品として申告
    • 誤りの内容:税関解説で、線路下を通って連結する転轍棒等は73.02に属し得る旨の注意(結果として第86類外)
    • 起きやすい状況:線路装置一式の一部として、部材レベルの分類が雑になる
    • 典型的な影響:税番差・関税差、仕入原価計算やPSRに波及
    • 予防策:装置(8608)と建設資材(73.02)を部材表で分離、図面で位置・機能を明確化
  • 事例名:台車なしの車体を完成貨車(8606)として申告
    • 誤りの内容:税関解説で「台車に取り付けていない車体」は8607(部分品)側で扱う趣旨
    • 起きやすい状況:出荷単位が“車体のみ”なのに、社内名称が「貨車」
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、追加資料要求
    • 予防策:出荷形態(台車有無)を写真・仕様で説明、インボイス品名に“car body (without bogies)”等の補足
  • 事例名:道路・鉄道両用保守車両を8604で申告
    • 誤りの内容:Section XVII 注4(両用車両はChapter 87)を見落とし
    • 起きやすい状況:現場用途が鉄道中心で、道路走行機能を軽視
    • 典型的な影響:税番変更、規制・統計の再整理
    • 予防策:走行モード仕様・写真提出、事前教示の活用
  • 事例名:大型保管箱を8609(コンテナ)で申告
    • 誤りの内容:8609は多方式輸送向けに特に設計・装備した容器。単なるケース等は材料分類(税関解説に除外例)。
    • 起きやすい状況:物流用語の“コンテナ”をそのままHSに当てはめる
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税
    • 予防策:吊り具・支持具等の有無、繰返し使用設計の説明を準備

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 鉄道車両・部品・信号機器は、仕様(スペック)や用途、需要者によっては外為法のリスト規制またはキャッチオール規制の検討対象になり得ます。
    • キャッチオール規制は、(要約すると)輸出貨物・技術が大量破壊兵器等や通常兵器に用いられるおそれがあると知った場合、または当局からインフォーム通知を受けた場合に許可が必要となる制度です。
    • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
      • 経済産業省「安全保障貿易管理(概要)」、リスト規制・キャッチオール規制のページ
    • 実務での準備物(一般論):
      • 該非判定資料(仕様書・カタログ)、用途・需要者情報、輸出管理の社内記録(取引審査)
  • その他の許認可・届出(該当がある場合のみ)
    • 信号・通信機器が無線を含む等、別法令が関与する可能性はあります(ただし、無線装置は通常Chapter 85側での分類・規制検討が中心になります)。
    • 具体的な該当性は品目仕様に依存するため、個別確認が前提です。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 完成品か部分品か、出荷形態(未完成/未組立含む)
    • 自走式/非自走、動力方式(外部電源/蓄電池/ディーゼル電気/その他)
    • 信号・管制は方式(機械式/電気機械式/電気式)
    • コンテナは装備(吊り具・支持具等)と多方式輸送設計の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(44.06/68.10、73.02、85.30)に触れていないか
    • 8607の“部分品”がSection XVII部注で弾かれないか(汎用部品・電気品等)
    • 道路・鉄道両用車両は部注4の再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「self-propelled / not self-propelled」「car body without bogies」等、判断に効く語を入れる
    • 図面・写真・仕様書を添付できるよう整理
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終製品HSと材料HSの整合、協定参照HS版の確認、トランスポジションの要否
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • METIのリスト規制/キャッチオール規制の該当性確認(用途・需要者含む)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 86(条文・見出し) (参照日:2026-02-28)
    • WCO HS Nomenclature 2017:Chapter 86(比較用) (参照日:2026-02-28)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022:Table I / Table II (参照日:2026-02-28)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第86類(86r)」 (参照日:2026-02-28)
    • 税関「事前教示回答(品目分類)」検索・案内 (参照日:2026-02-28)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • (本回答では協定を特定していないため、個別協定の条文引用は省略。取引協定の附属書PSR・運用指針で参照HS版を確認してください。)
  • その他(規制)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(制度概要) (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:補完的輸出規制(キャッチオール規制) (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:リスト規制の説明 (参照日:2026-02-28)

【訂正箇所(前回回答からの主な修正・追記)】

  • WCOのHS2017/HS2022 Chapter 86本文を直接突合し、「見出し・類注・号が同一」である根拠を明確化しました(引用ではなく要約)。
  • HS改正差分(7章・8章)について、WCO相関表(HS2017–2022)に第86類(860…)の掲載がない事実を根拠として明示し、論拠の書き方を強化しました。
  • 8608と85.30の境界(機械式/電気機械式 vs 電気式)を、第86類注1(c)・注3の位置付けに沿って整理し、誤分類パターンと必要資料を追記しました。
  • 8607(部分品)の扱いを、**Section XVII部注(汎用部品・電気品等の除外、専ら/主として使用)**と結びつけて説明を増補しました。
  • 8609(コンテナ)について、税関解説の説明(装備要件・除外例:ケース、道路用トレーラー、モジュール式建築ユニット等)を反映し、記述を精緻化しました。
  • 規制(安全保障貿易管理)は、民間二次資料中心の説明を改め、経済産業省の公式ページを主参照にして校正しました。
  • 文章全体を、見出しごとに冗長箇所を削りつつ「判断に必要な情報」「社内質問例」が読み取りやすいように再配置しました(体裁・用語統一)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第85類:電気機械器具及びその部分品並びに録音機、録音再生機及びテレビジョンの画像及び音声の記録機又は再生機並びにこれらの部分品及び附属品(Electrical machinery and equipment and parts thereof; sound recorders and reproducers, television image and sound recorders and reproducers, and parts and accessories of such articles)

用語:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 電動機・発電機・変圧器・整流器(8501〜8504)
    • 一次電池・蓄電池(8506、8507)※蓄電池は注で範囲拡張あり
    • 通信機器(電話、基地局、ルーター等:8517)※スマホ定義あり
    • フラットパネル・ディスプレイモジュール(8524)※優先規定あり
    • 半導体・IC(8541、8542)
    • 電気・電子機器の廃棄物・スクラップ(8549)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 半導体製造装置等(8486)→ 第84類(第85類注1(c)で除外)
    • 医療用の真空装置(9018)→ 第90類(第85類注1(d)で除外)
    • 電気毛布・電熱衣類等(第85類注1(a)で除外)→ 別見出し(製品実態で確認)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 8524(ディスプレイモジュール)か、8528(モニタ/TV)か:注7で8524が優先とされ、ただし“信号変換等の機能を持つと別見出しの性格”になります。
    • スマホ(8517.13)か、その他電話/端末か:注5でスマホ定義が明確化されています。
    • 廃棄物(8549)か、中古品(再使用)か:Section XVIのe-waste定義+日本のバーゼル法運用が絡み、高リスク領域です。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第85類は“電気的機能”で枝が細かいため、まず注(特に注5・注7・注12)で用語の定義と優先規定を確認します。
  • 部注(Section XVI Note 2)の部分品ルールにより、同じ「部品」でも「どの機器の部品か(主用性)」が分類を左右します。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第85類注1の除外をチェック(例:8486、9018等)
  • Step2:完成品か、部分品か(Section XVI Note 2で“主用性”を確認)
  • Step3:ディスプレイ関連なら注7で8524を優先検討
  • Step4:通信機器なら注5(スマホ定義)を確認し8517へ
  • Step5:廃棄物・スクラップならSection XVI Note 6と8549を検討
  • よく迷う境界:
    • 8524(モジュール) vs 8528(モニタ/TV)
    • 8517(通信) vs 8525(送信/カメラ) vs 8526(レーダー等)
    • 8541(半導体素子) vs 8542(IC) vs 8534(印刷回路)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第85類の4桁見出しを全列挙(HS2022の見出し・注に基づく)
  • 注記:HS2022では 8520(85.20)は欠番(角括弧表示)です。

表(1/2):8501〜8529

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8501電動機・発電機(発電セット除く)サーボモータ、発電機8502(発電セット)と区別
8502発電セット、ロータリーコンバータ発電機セットエンジン一体のセット構成を確認
85038501/8502の部分品モータ用部品部品の専用性(主用性)を説明
8504変圧器、静止型変換器、インダクタ変圧器、インバータ、UPS等UPSは8504になりやすい(構成確認)
8505電磁石、永久磁石、電磁クラッチ等電磁チャック、磁石用途と構造確認
8506一次電池(非充電)乾電池8507(蓄電池)と区別
8507蓄電池(充電式)リチウムイオン電池注3で“補助部品付き”も蓄電池に含み得る
8508掃除機家庭用掃除機84類注で84類から除外される位置づけ
8509家庭用の電動機器(モータ内蔵)ミキサー、フードプロセッサ注4:原則20kg以下等/除外例も明記
8510電気かみそり等(モータ内蔵)シェーバー家庭用器具として特掲
8511内燃機関用の点火・始動装置等スタータモータ等8501〜8504の一般機器とは別体系
8512車両等の照明・信号装置等車載ライト、ワイパー等8513(携帯灯)と別
8513携帯電灯(自蔵電源)懐中電灯電源方式確認
8514電気炉・誘導加熱等電気炉、誘導加熱装置8417(非電気炉)と境界
8515電気/レーザー等の溶接・切断機アーク溶接機、レーザー溶接8468(8515以外)と境界
8516家庭用電熱器具等電気ケトル、ヘアドライヤ8509注4で8516は除外扱い
8517電話・データ送受信装置等スマホ、ルーター、基地局注5でスマホ定義/部品の優先規定も絡む
8518音響機器(マイク/スピーカ等)ヘッドホン、アンプ8519〜との区別
8519録音・再生装置(音声)オーディオプレーヤー8521(映像)と区別
8521映像の記録・再生装置レコーダー8522(部品)と連動
85228519〜8521の部品・付属品交換針等専用性資料
8523記録媒体、SSD、スマートカード等SSD、メモリカード注6で定義あり
8524フラットパネル・ディスプレイモジュールLCD/OLEDモジュール注7:定義+“8524優先”/信号変換機能等で別見出し化
8525送信機器、TVカメラ/デジカメ等放送送信機、デジカメ8517/8526との機能境界。注・細分注意
8526レーダー、無線航法、無線遠隔制御レーダー装置用途で明確
8527ラジオ受信機ラジオ8528(TV受信)と区別
8528モニタ/プロジェクタ、TV受信機PC用モニタ、TV8524(モジュール)と混同注意
85298524〜8528用部分品チューナ部品等Section XVI Note 2(b)で“8524用部品は8529”など整理

表(2/2):8530〜8549

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8530鉄道・道路等の電気信号装置踏切制御等8531との違い(用途)
8531電気の音響/視覚信号装置警報器、表示盤車両用は8512等も検討
8532コンデンサ電解コンデンサ8542(IC)等と別
8533抵抗器(加熱抵抗除く)可変抵抗8516等の加熱抵抗は別
8534印刷回路プリント基板(裸)注8:印刷工程で形成された回路が範囲
85351000V超の開閉・保護装置等高圧遮断器8536との電圧境界
85361000V以下の開閉・保護装置等低圧スイッチ、コネクタ光ファイバ用コネクタ定義あり
8537配電盤等制御盤、分電盤注10で除外あり(赤外線リモコン等は8543)
85388535〜8537の部分品配電盤部品専用性立証
8539ランプ類LEDランプ等LEDの定義(注11)でモジュール/ランプ区別
8540真空管等ブラウン管等技術的に古いが項は残存
8541半導体デバイス等太陽電池セル、LED素子注12で定義
8542電子集積回路CPU、メモリIC注12で定義(MCO含む)
8543他に特掲のない電気機器各種電気機器8537注10除外の赤外線リモコン等が来得る
8544絶縁電線・ケーブル等(光ファイバケーブル含む)USBケーブル、電力ケーブル端子付でも基本は8544になり得る(要確認)
8545炭素電極等カーボンブラシ用途確認
8546電気用がいし磁器がいし材質問わず
8547絶縁物のみから成る絶縁用部品絶縁スペーサ“絶縁物のみ”要件に注意
8548他に特掲のない電気機械部品電気機器の部品まず特掲(8538/8529等)に入らないか確認
8549電気・電子機器の廃棄物・スクラップ廃基板、e-wasteSection XVI Note 6の定義+バーゼル法運用が重要

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理
    • OS・アプリ実行能力(スマホ定義)
    • 表示装置が“モジュール”段階か、完成品(モニタ等)か(8524の優先と例外)
    • 充電式か否か、BMS等の付帯部品の有無(8507注3)
    • 半導体/ICの定義(8541/8542の境界)
    • 廃棄物の状態・混合・破砕・選別の程度(8549)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 8517.13(スマートフォン)周り
  • どこで分かれるか:
    • 注5で「携帯網用電話で、モバイルOSを搭載し、ADP的機能(複数アプリの同時実行、第三者アプリのDL/実行等)を行えるもの」がスマホと定義されています。
  • 判断に必要な情報:
    • OS種別、アプリ実行、通信方式、製品仕様書(SoC/OS/アプリ)
  • 典型的な誤り:
    • “小型PC”として8471に寄せる(8471注・8517注の整理が優先)。
  1. 8524(フラットパネル・ディスプレイモジュール) vs 8528(モニタ/TV)
  • どこで分かれるか:
    • 注7で8524は「他の物品に組み込まれることを前提とした表示モジュール」を定義し、8524が他の見出しに優先。ただし、スケーラIC等の“信号変換”などを備え、他見出しの性格を帯びるものは8524から外れる整理です。
  • 判断に必要な情報:
    • 構成部品(スケーラ/デコーダ/アプリプロセッサの有無)、入出力、単体使用可否
  • 典型的な誤り:
    • “液晶パネル”を一律8528(モニタ)扱いしてしまう(モジュール段階なら8524が優先になり得る)。
  1. 8507(蓄電池)—BMS付き電池パック
  • どこで分かれるか:
    • 注3で、蓄電池は「コネクタ、温度制御、回路保護等の補助部品付き」や「使用機器の保護ハウジングの一部を含む」形態も含み得ます。
  • 判断に必要な情報:
    • 充電式の有無、BMS構成、ハウジング範囲、機器本体と一体か
  • 典型的な誤り:
    • BMS付き=8504(コンバータ)と短絡(実体が蓄電池であれば8507検討)。
  1. 8541(半導体デバイス) vs 8542(IC)
  • どこで分かれるか:
    • 注12で、半導体デバイス/ICの定義が整理されています(MCOの概念も含む)。
  • 判断に必要な情報:
    • デバイス構造(単体素子か、集積回路か)、パッケージ、データシート
  • 典型的な誤り:
    • “電子部品だからIC”と決め打ちし、8541/8542の定義確認を省略。
  1. 8549(e-waste) vs 通常の部品/スクラップ
  • どこで分かれるか:
    • Section XVI Note 6の“電気・電子廃棄物・スクラップ”の定義に合うかどうか。
  • 判断に必要な情報:
    • 廃棄目的か、再使用(リユース)目的か、選別・破砕状況、混合物の内容
  • 典型的な誤り:
    • “中古品輸出”と称して実質廃棄物を輸出し、バーゼル法上の問題を起こす。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section XVI Note 2(部分品):第85類でも「どの機器の部品か」が分類に直結します。
    • Section XVI Note 2(b)の“部品の優先”:通信機器(8517)と放送/カメラ等(8525〜8528)の部品の扱いなど、優先規定が効きます(HS2022でフラットパネル関連の改正も反映)。
    • Section XVI Note 6(e-waste):8549の適用判断の基礎。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ディスプレイモジュール(8524)用の専用部品は8529側の整理が絡み得る(注・部注の優先を確認)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:8486(半導体製造装置等)、9018(医療用真空装置)等の除外。
    • 注3:8507(蓄電池)の範囲(補助部品・ハウジング一部を含み得る)。
    • 注4:8509(家庭用電動機器)の範囲(重量要件、除外機器の列挙)。
    • 注5:8517(スマホ定義)。
    • 注7:8524(フラットパネル・ディスプレイモジュール定義、優先規定、例外)。
    • 注12:8541/8542(半導体・IC定義、MCO含む)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 8486(第84類)へ:第85類注1(c)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:8524(ディスプレイモジュール)の優先規定
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 組込み前提のモジュールか、完成表示装置(モニタ等)か
      • スケーラIC/デコーダIC/アプリプロセッサ等の“信号変換・処理”の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 回路構成図、BOM、データシート、I/O仕様、写真
    • 誤分類の典型:
      • パネル=8528(モニタ)と短絡して8524の優先規定を見落とす。
  • 影響ポイント2:8517(スマホ定義)
    • 何を見れば判断できるか:
      • モバイルOS、アプリの同時実行、第三者アプリのDL/実行等
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様書(OS/SoC/機能)、ユーザーマニュアル
    • 誤分類の典型:
      • スマホを“携帯端末一般”として雑に扱い、細分(スマホ)を落とす。
  • 影響ポイント3:8549(e-waste)とバーゼル法
    • 何を見れば判断できるか:
      • 再使用か廃棄か、破損/欠損状況、混合物の内容、処理目的
    • 現場で集める証憑:
      • 動作確認記録、梱包写真、検品結果、契約書(再使用目的の裏付け)
    • 誤分類の典型:
      • HSだけ整えて“中古”として輸出→実務上はバーゼル法判断で止まる。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:スマホを8471(ADP)にする
    • なぜ起きる:アプリ実行=コンピュータと見てしまう
    • 正しい考え方:8517注5でスマホ定義があり、通信機器として8517で整理
    • 予防策:OS/アプリ仕様、通信方式、製品カテゴリを資料化
  2. 間違い:液晶/OLED“モジュール”を8528(モニタ)とする
    • なぜ起きる:画面=モニタという連想
    • 正しい考え方:注7で8524の定義・優先規定。信号変換機能等がある場合は例外。
    • 予防策:回路構成(スケーラ等)、“組込み前提”の記載、I/O仕様を確認
  3. 間違い:BMS付き電池パックを別見出しへ
    • なぜ起きる:電子回路が付いている=変換器/制御装置と誤認
    • 正しい考え方:8507注3で“補助部品付き蓄電池”を含み得る
    • 予防策:BMSが蓄電池の保護・供給機能に留まるか(機能の範囲)を確認
  4. 間違い:プリント基板(PCB)を一律8534にする
    • なぜ起きる:“基板=printed circuit”の思い込み
    • 正しい考え方:注8で「印刷工程で形成された回路」等を定義。能動素子等を組み込むと別扱いになり得る。
    • 予防策:実装の有無、能動素子の有無、製造工程資料
  5. 間違い:e-wasteを“金属スクラップ”として他章へ
    • なぜ起きる:見た目がスクラップで金属に見える
    • 正しい考え方:Section XVI Note 6と8549新設を前提に判断
    • 予防策:再使用目的・廃棄目的、選別・破砕状況、混合物の内容を文書化
  6. 間違い:無線機器の通関だけで安心して販売
    • なぜ起きる:HS分類=法規制クリアと誤解
    • 正しい考え方:日本では電波法(技適等)やPSE等、HSと別軸の適合が必要になることがある
    • 予防策:販売国の規制チェックを分類と並行して実施

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • 第85類は“部品(8529、8538等)”が多く、最終品と部品のHS取り違えがPSR誤適用につながりやすいです。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • HS2022で**8524(フラットパネルディスプレイモジュール)8549(e-waste)**などが新設され、旧版でPSRを運用している場合は読み替えが必要になり得ます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • BOM(部材HS含む)、原価(RVC)、工程、非原産材料の比率、IC/モジュールの原産国情報
  • 保存要件:サプライヤー証憑、試験成績、工程説明、価格根拠

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

(主に HS2017→HS2022 の差分。相関表に記載のある第85類関連を中心に整理)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設8524フラットパネル・ディスプレイモジュール新設(注7追加、優先規定)パネル/モジュール輸出入で分類再点検が必要
HS2017→HS2022新設8549電気・電子廃棄物・スクラップ新設廃基板/中古機器の取引でHSと規制(バーゼル)整理が必須
HS2017→HS2022新設8517.13スマートフォン新設(注5で定義)通信端末の枝番見直しが必要
HS2017→HS2022新設8517.71通信用アンテナの新設アンテナ類の整理が変わり得る
HS2017→HS2022再編8501太陽エネルギー関連等の観点で電動機・発電機の細分再編(相関表記載)製品ラインによって枝番が変わる
HS2017→HS2022再編8525特定のカメラ等で細分再編(相関表記載)監視カメラ等の分類が変わり得る

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCO HS2022 第85類注(スマホ定義、8524定義と優先、半導体/IC定義等)
    • HS2022↔HS2017 相関表(8524/8549/8517.13等の新設理由が記載)
  • どの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 相関表で8524と8549の新設が明示され、かつ第85類注7・Section XVI Note 6が適用の枠組み(定義・優先/概念)を与えているため、HS2022で分類実務が変わったと判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

(第85類に関係が深い“主要”な追加・削除・再編を、相関表ベースで抜粋)

改正サイクル変更タイプ旧コード→新コード(例)概要実務メモ
HS2007→HS2012新設8507.50/8507.60 等NiMH/Li-ion蓄電池の細分新設(相関表に理由記載)電池種類の情報が必須に
HS2012→HS2017再編8528(モニタ/プロジェクタ)細分再編ADP接続可能性等を踏まえた再編(相関表に理由記載)PC用モニタ等で枝番影響
HS2012→HS2017新設8539.50 等LEDランプの細分新設(相関表)LED“モジュール/ランプ”区別が重要に
HS2012→HS2017範囲拡大8542MCO(複合IC)の概念追加(注の追加)センサ内蔵IC等の整理に影響
HS2017→HS2022新設8524/8549ディスプレイモジュール、e-waste新設パネル/廃基板等の分類再点検

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:「液晶モジュールを8528で申告→修正」
    • 誤りの内容:第85類注7(8524優先)を未確認
    • 起きやすい状況:部品表がなく、パネルが“モニタ用”とだけ記載
    • 影響:修正申告、追加資料要求、通関遅延
    • 予防策:構成図・スケーラ等の有無を証憑化(BOM、回路図)
  • 事例名:「中古スマホの輸出がe-waste扱い」
    • 誤りの内容:HSだけで“中古品”と判断し、バーゼル法の該非判断を省略
    • 起きやすい状況:動作確認なし・破損品混在
    • 影響:貨物差止め、行政照会、契約不履行リスク
    • 予防策:中古品(リユース)としての証明資料、検品記録整備
  • 事例名:「無線機器の技適未対応で販売停止」
    • 誤りの内容:通関後の国内販売段階で電波法適合(技適等)を満たさない
    • 起きやすい状況:海外仕様のWi-Fi/Bluetooth機器をそのまま輸入
    • 影響:回収・販売停止・ブランド毀損
    • 予防策:技適の取得/確認、検索ポータルでの照合、ラベリング確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等):通常は該当が限定的(医療機器は90類へ行くことが多い)
    • 安全保障貿易管理(該当する場合):
      • 半導体・電子部品、通信機器は、仕様により外為法上の管理対象となる可能性があります。
    • その他の許認可・届出:
      • 電気用品安全法(PSE):対象品目は政令の別表で決まり、輸入者に届出・適合性確認・表示等の義務が発生します。
      • 電波法(技適等):無線設備は技術基準適合証明/工事設計認証等の制度があり、対象機器は認証・表示の確認が必要です。
      • バーゼル法(e-wasteの輸出入):2025年1月以降のe-waste判断基準等、運用が具体化されています(取引前に該非判断が重要)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省:PSE/安全保障貿易管理
    • TELEC等(登録証明機関)・電波利用ポータル(技適検索の案内)
    • 環境省:バーゼル法・中古品判断基準等
  • 実務での準備物(一般論):
    • 技術仕様(無線方式、周波数等)、適合証明書、表示方法
    • e-waste/中古品:検品記録、動作確認、梱包・写真、契約書(再使用目的の裏付け)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 機能(通信/表示/電源/制御)、無線の有無、回路構成、BOM、写真
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第85類注5(スマホ)、注7(8524)、注12(半導体/IC)
    • Section XVI Note 2(部分品)、Note 6(e-waste)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “flat panel display module / monitor / smartphone / router”等、機能が一目で分かる品名へ
    • 回路図・データシート添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • HS2022の新設(8524/8549等)でPSR参照HS版とのズレを要確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • PSE対象、技適対象、バーゼル法対象(e-waste/中古品)を並行で判定

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文・注)
    • WCO HS2022 Chapter 85(Notes含む) (参照日:2026-02-28)
    • WCO HS2022 Section XVI Notes(e-waste定義等) (参照日:2026-02-28)
  • 相関表(改正根拠)
    • HS2022↔HS2017 Correlation Table (参照日:2026-02-28)
    • HS2017↔HS2012 Correlation Table (参照日:2026-02-28)
    • HS2012↔HS2007 Correlation Table (参照日:2026-02-28)
  • 日本:規制・制度
    • 経済産業省:電気用品安全法(PSE)概要・対象品目 (参照日:2026-02-28)
    • TELEC:技術基準適合証明・工事設計認証の概要/技適検索案内 (参照日:2026-02-28)
    • 環境省:バーゼル法(e-waste該非判断基準、改正附属書発効後の運用、中古品判断基準) (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(説明資料・改正説明等) (参照日:2026-02-28)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第84類:原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品(Nuclear reactors, boilers, machinery and mechanical appliances; parts thereof)

(用語統一)本稿では、**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**で表記します。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 各種のボイラー、蒸気タービン、内燃機関(8402〜8412周辺)
    • ポンプ・圧縮機・ファン、空調機、冷凍設備(8413〜8418周辺)
    • 包装機・充填機・ラベラー、重量測定機、噴霧機(8422〜8424周辺)
    • クレーン・搬送設備、フォークリフト等(8425〜8428周辺)
    • 工作機械、溶接機器、手持ち電動工具(8456〜8468周辺)
    • 自動データ処理機械(ADP)とそのユニット、事務機器(8471〜8473周辺)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 電気機器(モーター、発電機、変圧器等):多くは第85類(例:電動機は85.01)
    • 車両・航空機等(輸送機器):第17部(Section XVII)
    • 測定機器・精密機器:第90類(Chapter 90)
    • 手工具・刃物類:第82類、卑金属製品の一般用部分品:第83類/第15部注の「一般用部分品」扱い
    • (典型)機械に使うからといって、82・83類の物品が84類になるわけではありません(部注の除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「完成品(機械)」か「部分品」か(部注(Section XVI Note 2)で分類ロジックが変わります)
    2. ADP(8471)に該当するか(類注で要件が定義されています)
    3. HS2022で新設/整理された領域(例:積層造形(8485)産業用ロボット(8428.70)冷間等方圧プレス(8479.83))を踏むか
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 半導体製造装置(8486):装置の一部・ユニット・付属装置の範囲判定でぶれやすい(類注で専用の取り扱いあり)
    • 産業用ロボット:8428(搬送系)か8479(個別機能)か、さらにHS2017→2022の細分変更で旧コード参照事故が起きやすい
    • 積層造形装置(8485):従来の「樹脂加工機(8477)」や「紙加工機(8441)」等に寄せた誤分類が発生しやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • **GIR1(見出し文言+部注/類注)**が基本です。機械類は「注(Notes)」が強く効きます。特にSection XVI(第16部)の部注は、部分品・複合機械・機能ユニットの分類を大きく左右します。
    • GIR6(6桁の決定):同じ4桁でも6桁で用途・方式・機能別に分かれ、FTAのPSRにも直結しやすいです。
    • **GIR3(複合品/セット)**は、機械単体よりも「付属品同梱」「セット販売」「ユニット構成」で出やすい論点です。ただし、機械類ではGIR3の前に、**Section XVI Note 3・4(複合機械/機能ユニット)**が先に効く場面が多いです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 機能(何をする機械か):搬送・加工・冷却・計算・印刷など
    • 対象物(何を処理するか):液体、気体、鉱物、食品、金属、樹脂、データ等
    • 構成(単体か、ラインか、ユニットか):配管・ケーブルで結合した“機能ユニット”になっていないか
    • 電気機器要素の優先:電気的機能が本質なら85類側に寄ることがある(ただしケースバイケース)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第16部(Section XVI)に入る“機械類”か?
    • まず部注1で、82・83類、17部、90類等の除外に当たらないか確認します。
  • Step2:完成品(機械)か、部分品か?
    • “部分品”ならSection XVI Note 2のルール(どの見出しに振り分けるか)に従います。
  • Step3:類注(Chapter 84 Notes)で定義・例外がないか?
    • ADP(8471)の要件、積層造形(8485)の定義、半導体製造装置(8486)の範囲などは、類注が起点です。
  • Step4:最も具体的な4桁(項)に当てはめる
    • ポンプなら8413、包装なら8422、工作機械なら8456〜8465…という具合に、機能で当てに行きます。
  • Step5:6桁(号)で“方式・用途・機能”の条件分岐
    • 産業用ロボット(8428.70)や、冷間等方圧プレス(8479.83)等、HS2022で細分が増えた領域は特に注意します。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第84類 ↔ 第85類(電動機・変圧器・電気制御装置など)
    • 第84類 ↔ 第90類(測定・検査・分析が本質の装置)
    • 第84類 ↔ 第82・83類(工具・一般用部分品)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の一覧表


※項番号の並び・欠番([84.69])の扱いはHS2022条文に基づきます。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8401原子炉・核燃料要素など原子炉装置、燃料要素規制・安全保障管理の対象になり得る(別途確認)
8402蒸気ボイラー等蒸気ボイラー8403(暖房用)との切り分け
8403暖房用ボイラーセントラルヒーティング用8402以外の暖房用
8404ボイラー附属装置等エコノマイザ、復水器ボイラーとの関係(附属装置)
8405ガス発生装置発生炉ガス発生器ガス製造の方式・用途
8406蒸気タービン等蒸気タービン8411(ガスタービン等)と区別
8407火花点火式内燃機関ガソリンエンジン8408(ディーゼル等)と区別
8408圧縮点火式内燃機関ディーゼルエンジン8407との区別
84098407/8408用部分品エンジン部品Section XVI Note 2(部分品規則)も確認
8410水力タービン等水車、水力タービン
8411ジェット等・ガスタービンガスタービン航空用途は別規制の可能性
8412その他の原動機油圧モーター等8406/8411以外
8413液体ポンプ等遠心ポンプ、液体エレベータ流量計付き等でも8413が起点
8414空気/真空ポンプ等コンプレッサ、送風機HS2022で一部細分・移転あり
8415空気調和機エアコン
8416バーナー等炉用バーナー
8417非電気式工業炉等工業用炉(非電気)電気炉は85類側の可能性
8418冷蔵・冷凍機器冷凍機、冷凍ショーケース家庭用/業務用の境界は6桁で確認
8419温度変化工程機器熱交換器、乾燥機HS2022で凍結乾燥等の細分あり
8420カレンダー等カレンダー機金属圧延(8455)等と混同注意
8421遠心分離・ろ過等フィルター装置HS2022で車両用触媒等の細分あり
8422洗瓶/充填/包装機等充填機、ラベラー8443(印刷)との境界に注意
8423計量機器はかり、計量機90類(分析)と混同注意
8424噴霧・散布機等スプレー装置
8425ホイスト等ジャッキ、ウインチ
8426クレーン等クレーン、デリック国内規制(クレーン則)確認が必要な場合
8427フォークリフト等フォークリフト
8428搬送・荷役機械コンベヤ、エレベータ8428.70 産業用ロボットがHS2022で明確化
8429自走式土工機械ブルドーザー等
8430その他の土工機械掘削機、杭打機
84318425〜8430用部分品クレーン部品等部品は“専用性”が鍵
8432農林業用耕うん機械耕うん機
8433収穫・脱穀等コンバイン
8434搾乳・乳業機械搾乳機
8435果実破砕・圧搾等ぶどう圧搾機
8436その他農業機械等養鶏機械等
8437穀物の製粉等精米機等
8438食品・飲料製造機械製パン機械等HS2022で“微生物油脂”の扱い整理(8479.20へ)
8439パルプ・紙製造機械パルプ製造装置
8440製本機械製本機
8441紙加工機械等紙裁断機等HS2022で一部が8485へ移転(3Dプリンタ等)
8442印刷版等の製造機器版下・版作成装置8443(印刷機)との関係に注意
8443印刷機・プリンタ等印刷機、複写機8471(ADP)との境界が論点になりやすい
8444人造繊維用機械紡糸機等
8445紡績準備・紡績機紡績機
8446織機織機
8447編機等編機
84488444〜8447用補助機械・部品繊維機械部品部注の部分品規則も確認
8449不織布等製造機械不織布製造装置
8450洗濯機(家庭用等)家庭用洗濯機
8451繊維の洗浄・乾燥等仕上げ機
8452ミシン工業用ミシン
8453皮革加工機械なめし機械
8454冶金用鋳造機等連続鋳造機等
8455金属圧延機等圧延機8420(カレンダー)と混同注意
8456レーザー等加工機械レーザー加工機“加工原理”で8457〜8465より優先する局面あり(類注)
8457マシニングセンタ等マシニングセンタ類注で定義(8457)
8458旋盤CNC旋盤
8459穴あけ・中ぐり等ボール盤等
8460研削・研磨等研削盤等HS2017で細分整理(旧版参照時注意)
8461平削り・ブローチ等ブローチ盤等
8462鍛造・曲げ等プレスブレーキ等HS2022でサブヘディング再整理(旧版対応注意)
8463その他金属加工機引抜機等
8464石材・ガラス加工機石材切断機
8465木工等機械木工機8465.20(マシニングセンタ様)等、サブヘディング注の定義あり
84668456〜8465用部品等工作機械用ツールホルダ部品は見出し指定に注意(8466/8487等)
8467手持ち工具(動力付)電動ドリル等82類(手工具)との境界注意
8468ろう付け・溶接機器等溶接装置(85.15以外)
(欠番)[84.69](削除・欠番)HS2022条文上、84.69は欠番表示
8470計算機・レジ等電卓、POS“ポケットサイズ”定義が類注にあり
8471自動データ処理機械等PC、サーバ、ユニット類注でADPの要件・除外が規定
8472その他事務機器事務用シュレッダー等旧84.69(タイプライター等)の移転先になり得る(旧版参照事故注意)
84738470〜8472用部品等PC周辺部品等部品の専用性・共用性で分岐
8474鉱物処理機械破砕機等
8475ランプ組立・ガラス加工機電球組立機等HS2022で一部が8485へ移転(3Dプリンタ)等
8476自動販売機自販機
8477ゴム・プラ加工機械射出成形機HS2022で一部が8485へ整理される可能性
8478たばこ製造機械たばこ加工機
8479個別機能機械産業用ロボット等8479.50(産業用ロボット)・**8479.83(冷間等方圧プレス)**等の細分に注意
8480鋳型等金型
8481バルブ等減圧弁等油圧/空気圧用は6桁で分岐(8481.20)
8482軸受ベアリング類注で鋼球の定義等あり
8483伝動装置ギア、クラッチ
8484ガスケット等メカニカルシール
8485積層造形(Additive manufacturing)機械3Dプリンタ(産業用)類注の定義に該当するかが核心
8486半導体・FPD製造用機械等露光装置等類注で対象機器が列挙・定義
8487その他の機械部分品機械部品(電気部品除く)Section XVI Note 2(c)等の“最後の受け皿”

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第84類で頻出):
    • 機能(搬送か加工か、データ処理か、温調か)
    • 方式(油圧/空気圧、レーザー/水ジェット等)
    • 装置の構成(単体/ライン/ユニット、分割提示か同時提示か)
    • 専用性(“特定機械専用”の部分品か、汎用品か)
    • 類注の定義要件(ADPの4要件、ポケットサイズ寸法、積層造形の定義等)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8428.70(産業用ロボット) vs 8479.50(産業用ロボット)
      • どこで分かれるか:
        • 搬送・荷役機械(8428)の文脈に当たるロボットは8428側、
        • 他に特掲されない産業用ロボットは8479.50側、という整理が出やすいです(ただし実態・仕様次第)。
      • 判断に必要な情報:ロボットの主機能(荷役・搬送か/加工・組立等か)、把持機構・軸構成、ライン内の役割、カタログ
      • 典型的な誤り:HS2017等の古い細分の知識のまま、8428.70の存在を見落として「8428.90(その他)」や「8479.50固定」にしてしまう
    2. 8438(食品機械) vs 8479.20(油脂・油の抽出/調製機械)
      • どこで分かれるか:油脂・油の抽出/調製に当たるか、対象が何由来か。HS2022では**“微生物油脂”**の扱いが整理され、8479.20側に含める趣旨が明示されています。
      • 判断に必要な情報:対象油脂の由来(動物・植物・微生物)、工程(抽出/精製/調製)、用途、プロセスフロー
      • 典型的な誤り:「食品工場で使うから8438」と用途だけで決めてしまう
    3. 8485(積層造形機械) vs 8477(プラ加工機)/8441(紙加工機)/8463等
      • どこで分かれるか:“積層造形”に該当するか(類注の定義)。3Dプリンタでも、方式・機能が積層造形の定義に当たるかが鍵です。
      • 判断に必要な情報:造形方式(粉末床溶融、材料押出、液槽光重合等)、材料形態(粉末/フィラメント等)、工程説明、メーカー仕様
      • 典型的な誤り:「樹脂を使う=8477」「紙を使う=8441」など、材料側に引っ張られる
    4. 8471(ADP機械・ユニット) vs 8443(プリンタ等)/他の“個別機能機械”
      • どこで分かれるか:ADPとしての要件(プログラム実行、データ処理、記憶、入出力等)を満たすか、また“プリンタ等”が別立ての扱いになるか。
      • 判断に必要な情報:OS/プログラムの可否、CPU/記憶装置、入出力構成、接続形態(ユニットか独立機か)
      • 典型的な誤り:「PCが入っているから全部8471」として、機械の“主機能”側(機能ユニット)を見落とす
    5. 8479.83(冷間等方圧プレス) vs 8479.89(その他)
      • どこで分かれるか:冷間等方圧(Cold Isostatic Pressing)に該当するか。HS2022で8479.83が新設されています。
      • 判断に必要な情報:加圧方式(等方圧)、温度条件(冷間)、用途(粉末成形等)、仕様書
      • 典型的な誤り:旧HSのまま8479.89へ入れてしまい、統計・規制・PSRで差が出る

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注1(除外):82・83類、17部、90類などは第16部から除外されます。
    • 部注2(部分品の分類規則)
      • (a) まず“それ自体が84/85類の見出しに含まれる部分品”は、その見出しへ
      • (b) それ以外でも“特定機械に専用・主として使用”なら、その機械(または指定の部分品見出し)へ
      • (c) どれにも当たらない部分品は、指定の部分品見出し(例:8487/8548等)へ、という考え方です。
    • 部注3(複合機械):複数機能がある場合は“主要機能”で分類。
    • 部注4(機能ユニット):分割提示でも、配管・ケーブル等で一体として明確な機能を果たすなら、その機能の見出しにまとめて分類。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「ライン一式」を分割して輸入する場合でも、据付後に一体の機能を果たす設計・提示になっていると、機能ユニットとして1つの見出しに寄る可能性があります(要:図面、P&ID、据付計画)。
    • “部品”として申告するつもりでも、**それ自体が独立した機械(ポンプ、バルブ等)**として見出しがあるなら、部分品扱いではなく“当該機械”で分類されやすいです。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 機械に使う**ボルト・ナット等(一般用部分品)**を、84類の「機械部品」として申告してしまう → 第15部(一般用部分品)や83類へ。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(代表的に実務で効くもの):
    • ADP(8471)の定義・除外:8471に入るための要件、周辺機器の扱いが規定されています。
    • ポケットサイズの定義(8470関連):寸法条件で“ポケットサイズ”を定義。
    • 鋼球の定義(8482関連):一定の公差・品質条件を満たす鋼球の扱い。
    • 積層造形(8485)の定義:積層造形(Additive manufacturing)の意味を定義。
    • 半導体・FPD製造機械(8486)の範囲:対象となる機械・装置の範囲を類注で示す。
    • 工作機械の定義注:8457・8458等の定義や、8462の“ライン”定義等が置かれています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 積層造形(8485):材料を層状に積み重ねて固化させる等の方法による製造、という趣旨で定義されています(詳細は類注の定義に従って確認)。
    • 機械加工センタ様の木工機(8465.20等):自動工具交換等の要件がサブヘディング注で定義されています(旧版からの転記時に特に注意)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第16部の除外(82・83類、17部、90類等)をまず優先確認します。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「部分品」か否か(Section XVI Note 2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):部品の用途(専用/汎用)、適用機械、単体で独立機能があるか
    • 現場で集める証憑:仕様書、図面(組付位置)、部品表(BOM)、カタログ、写真
    • 誤分類の典型:汎用のバルブ・ベアリング・ボルト等を「機械部品」として一括で8487に寄せる
  • 影響ポイント2:ADP(8471)の定義注
    • 何を見れば判断できるか:プログラム実行性、CPU/メモリ、入出力の構成、システムとして提示か
    • 現場で集める証憑:仕様書(CPU/OS)、構成図、入出力一覧、接続仕様
    • 誤分類の典型:「コンピュータを搭載=8471」と決め打ちして、機能ユニット(部注4)や他の特掲見出しを見落とす
  • 影響ポイント3:積層造形(8485)の定義注
    • 何を見れば判断できるか:造形方式、材料形態、工程(積層→固化)
    • 現場で集める証憑:方式説明、プロセス図、材料SDS、装置カタログ
    • 誤分類の典型:従来の8477/8441などに寄せる(HS2022で8485が新設された点の見落とし)
  • 影響ポイント4:半導体・FPD製造装置(8486)の類注
    • 何を見れば判断できるか:製造工程(ウェーハ、デバイス、IC、FPD等)との関係、専用性
    • 現場で集める証憑:工程フロー、用途説明、装置仕様、納入先工程
    • 誤分類の典型:汎用機械(8479等)として処理してしまい、8486特有の扱いを外す

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:電動機付き機械を「機械だから84類」としてしまう
    • なぜ起きる:機械=84類という先入観
    • 正しい考え方:電動機や電気機器は85類が起点になるケースが多い。まず部注の除外・境界を確認。
    • 予防策:仕様書で「主機能」「駆動方式」「電気機器の構成(モーター単体か、機械一体か)」を確認
  2. 間違い:汎用ボルト・ナット等を8487(機械部分品)に入れる
    • なぜ起きる:機械に使う=機械部品、と短絡
    • 正しい考え方:部注で「一般用部分品」や82・83類等の除外が明示されています。
    • 予防策:材質・形状が汎用品か、特定機械専用設計かを図面で確認
  3. 間違い:ライン一式を分割輸入して、各機器をバラバラの項で申告
    • なぜ起きる:インボイス記載単位に引っ張られる
    • 正しい考え方:機能ユニット(部注4)に該当すると、全体を1見出しにまとめる可能性があります。
    • 予防策:据付後の機能、結合関係(配管・ケーブル)、制御の一体性を示す資料を準備
  4. 間違い:産業用ロボットを「とにかく8479.50」に固定
    • なぜ起きる:旧知識・検索慣れ
    • 正しい考え方:8428の中に**8428.70(産業用ロボット)**があり、8428の文脈に当たる場合はそちらを検討する必要があります。
    • 予防策:ロボットの主機能(荷役・搬送か、加工か)を仕様書で明確化
  5. 間違い:“3Dプリンタ”を材料側(樹脂=8477等)で決める
    • なぜ起きる:材料(樹脂/金属/粉末)に引っ張られる
    • 正しい考え方:HS2022で**積層造形(8485)**が独立し、定義に該当するかが核心です。
    • 予防策:造形方式(積層・固化)と工程資料を必ず入手
  6. 間違い:PC内蔵機器を全部8471(ADP)にしてしまう
    • なぜ起きる:制御PCの存在で短絡
    • 正しい考え方:ADPの要件・除外は類注で整理され、機械の主機能や機能ユニットで別見出しになることがあります。
    • 予防策:主機能が「データ処理」か「他の機械的機能」かを設計資料で確認
  7. 間違い:8479.83(冷間等方圧プレス)を見落として8479.89に入れる
    • なぜ起きる:HS2022の新設サブヘディングを未反映
    • 正しい考え方:HS2022で8479.83が新設されています。
    • 予防策:加圧方式・温度条件を仕様書で確認し、相関表で旧→新の対応も確認
  8. 間違い:84.69(タイプライター)をHS2022でも使えると思い込む
    • なぜ起きる:旧資料の参照
    • 正しい考え方:HS2022条文上、84.69は欠番表示で、HS2017への改正で移転が示されています。
    • 予防策:社内マスタのHS版(2012/2017/2022)を明示し、相関表で更新

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結するため、誤分類=原産性判断の前提崩れになり得ます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSは合っていても、非原産材料のHSがズレていてCTC判定が崩れる
    • 機能ユニット(部注4)で“まとめて分類すべき”ところを分割して扱い、PSRの単位が変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によってPSRが参照するHS版が異なることがあり、HS2022(6桁)で見ているつもりでも、協定上はHS2012等で判定するケースがあります。
  • 例(一次情報に基づく代表例):
    • RCEP:HS2022に基づくPSRの採択・公表がされています。
    • CPTPP:原産地規則で参照するHS版としてHS2012が示されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定参照HS版に合わせてPSRを確認し、必要なら相関表(correlation table)で旧HS→HS2022の対応を取ります(6桁ベース)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須になりやすいデータ:
    • 材料表(BOM)、材料原産国、非原産材料のHS(協定参照版で)、工程フロー、原価・RVC計算前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 税関の案内・協定運用ガイダンスに従い、根拠資料を保存(期間・形式は協定・国内運用で変動)
  • 実務の“社内で聞く質問例”:
    • 「その装置は単体ですか、**ライン(ユニット)**ですか?」
    • 「“ロボット”の主機能は搬送ですか、**加工(溶接/組立/塗装)**ですか?」
    • 「3Dプリンタは積層方式(方式名)ですか? 材料は? 固化方法は?」

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設(細分)8428.70産業用ロボットを特定する新サブヘディングを創設旧コード参照のまま8428.90等に置く事故/統計・規制・PSR影響
HS2017→HS2022新設(細分)8479.83冷間等方圧プレスを特定する新サブヘディングを創設8479.89との取り違えが起きやすい
HS2017→HS2022新設(見出し)8485積層造形(3Dプリンタ等)を独立見出し化8477/8441/8463等との誤分類リスクが増える
HS2017→HS2022範囲変更8438 / 8479.20微生物油脂の抽出/調製機械の範囲を整理(8479.20側へ)食品機械(8438)寄せの誤り是正が必要
HS2017→HS2022新設(細分)8419.33(等)凍結乾燥等の監視・管理目的で新サブヘディング創設(関連サブヘディングの番号変更含む)旧番号の参照事故/統計・許認可の紐づけ影響
HS2017→HS2022新設(細分)8421.32車両用触媒・粒子フィルタを特定するサブヘディング創設8421内での細分が変化
HS2017→HS2022改正(細分再整理)8462(配下)技術発展を反映しサブヘディングを改正・新設旧→新のマスタ変換で注意
HS2017→HS2022新設(細分)8414.70(等)バイオ関連など特定用途を踏まえた細分創設、移転が発生8414/8421間での移転に注意

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • 日本税関掲載のHS2022↔HS2017相関表(WCO相関表)
    • HS2022の条文(Chapter 84)および定義(Note 10/11など)
  • どの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 相関表の「Remarks(改正理由・移転の説明)」により、8428.70の新設8479.83の新設8485の新設8438/8479.20の範囲整理等が明示されています。
    • さらに、HS2022条文側で**8428.70(Industrial robots)8479.83(Cold isostatic presses)**等が実際に設けられていることを確認しています。
    • 8485については、相関表の移転説明に加え、Chapter 84の類注で“積層造形”の定義が置かれていることを根拠に、HS2022で独立領域として扱うべきと整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

ここでは、税関掲載のWCO相関表(HS2007→2012→2017→2022)で確認できる範囲で、第84類に関係する“実務影響が出やすい”追加・削除・再編を抜粋します。

変遷主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(例)コメント
HS2007→HS2012水ジェット切断機の扱い見直し(例)8479.89 等 → 8456(配下)8456の範囲拡大に伴う移転が示されています
HS2007→HS2012旅客搭乗橋(Passenger boarding bridges)の細分創設8479.71/8479.79 新設搭乗橋の識別のため新サブヘディングが創設
HS2012→HS201784.69(タイプライター等)の削除・移転8469.00 → 8472.90低取引量等を理由に、84.69が削除され8472.90へ移転
HS2012→HS2017木工機械の細分(8465.20等)8465.20 新設自動工具交換等の要件を満たす機械向け細分が創設
HS2017→HS2022産業用ロボットの細分8428.70 新設HS2022で新サブヘディング創設
HS2017→HS2022積層造形(3Dプリンタ等)の独立8485 新設8441.80/8477.80等からの移転が示されています

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“部品一括”で8487に寄せて否認
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部分品の分類規則(Section XVI Note 2)に反し、独立見出しのある部品も一括計上
    • 起きやすい状況:BOMが粗い/インボイスに「spare parts」だけ
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、補足資料要求、検査強化
    • 予防策:部品明細(用途・型式・対応機械)、図面、写真を添付
  • 事例名:ライン分割輸入で“機能ユニット”否認
    • 誤りの内容:機能ユニット(部注4)の要件資料が不足し、個別分類へ
    • 起きやすい状況:装置一式を分割し、別々の船積・別インボイス
    • 典型的な影響:分類の再構成、税率・統計・規制の再評価
    • 予防策:据付後の一体機能を示す構成図(配管・ケーブル・制御)、工程資料
  • 事例名:“3Dプリンタ”の誤分類(8477等)
    • 誤りの内容:HS2022の8485新設と定義注の見落とし
    • 起きやすい状況:「樹脂加工機」として購入・社内登録されている
    • 典型的な影響:分類更正、FTAのPSR再判定、輸出管理番号の再評価
    • 予防策:造形方式・材料形態・プロセス資料を事前に整備
  • 事例名:産業用ロボットの細分見落とし
    • 誤りの内容:8428.70の新設(HS2022)を反映せず“その他”へ
    • 起きやすい状況:旧HSベースの社内マスタ
    • 典型的な影響:統計・規制・許可要否の判断がズレる
    • 予防策:HS版管理(2012/2017/2022)と相関表更新を運用化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 第84類そのものはSPSよりも、**製造設備としての衛生法規(食品工場等)**に波及することが多いです(品目分類とは別軸)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 第84類には**汎用品でも輸出管理(キャッチオール含む)**の検討が必要になり得る機械が多く含まれます(半導体製造装置、ロボット、真空装置、加工機等)。
      • 確認先:経済産業省の安全保障貿易管理(輸出管理)情報、該非判定の社内手順。
    • その他の許認可・届出(例)
      • ボイラー・圧力容器:労働安全衛生法体系の省令(ボイラー及び圧力容器安全規則)等に基づく手続・要件が関係する場合があります(設備としての設置・検査・届出等)。
      • クレーン等:クレーン等安全規則に基づく検査・届出等が関係する場合があります。
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(性能・用途・構造)、図面、カタログ、型式、最終用途(エンドユーザ・用途)
    • (輸出)該非判定書、用途確認書、輸出管理チェック記録

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何をする機械か(主機能)
    • 対象物(液体/気体/鉱物/食品/データ等)
    • 構成(単体/ライン/ユニット)、同時提示か分割提示か
    • 仕様書・カタログ・写真・工程図(可能なら)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • Section XVI Note 1(除外)に当たらないか
    • 部品ならSection XVI Note 2の順序で整理できているか
    • 8471(ADP)・8485(積層造形)・8486(半導体)など、類注定義を踏んでいるか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名が機能を表しているか(“parts”だけにしない)
    • 数量単位(台、セット、kg等)と実態が整合しているか
    • 付属品・スペアの取り扱い(同梱か別送か)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版(2012/2017/2022)を確認
    • 相関表で旧→新コードの対応を確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 輸出管理(該非判定・用途確認)
    • 国内法規(ボイラー則・クレーン則など該当時)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Nomenclature:Section XVI Notes(PDF) (参照日:2026-02-28)
    • HS2022 Nomenclature:Chapter 84(PDF) (参照日:2026-02-28)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説(第84類)PDF (参照日:2026-02-28)
    • 税関:相関表 HS2022→HS2017(PDF) (参照日:2026-02-28)
    • 税関:相関表 HS2017→HS2012/HS2012→HS2007(PDF) (参照日:2026-02-28)
    • 税関:品目別原産地規則 検索(JRO) (参照日:2026-02-28)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関:CPTPP 原産地規則関係手引(HS2012参照の記載) (参照日:2026-02-28)
    • 外務省:RCEP(協定情報) (参照日:2026-02-28)
    • 税関:RCEPにおけるHS2022に基づくPSR採択(案内) (参照日:2026-02-28)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • e-Gov法令検索:ボイラー及び圧力容器安全規則 (参照日:2026-02-28)
    • e-Gov法令検索:クレーン等安全規則 (参照日:2026-02-28)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(輸出管理)関連情報 (参照日:2026-02-28)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第83類:各種の卑金属製品(Miscellaneous articles of base metal)

※用語は次のとおり統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 錠前・南京錠・鍵(卑金属製、鍵式/ダイヤル式/電気式)→ 83.01
    • 蝶番、建具金物、家具金物、キャスター(取付具付き)、ドアクローザー → 83.02
    • 耐火・防盗の金庫や強化金庫扉(卑金属製)→ 83.03
    • バインダー金具、クリップ、ホチキス針(帯状)などの事務用品 → 83.05
    • 王冠、金属キャップ、金属製フタ等の包装用付属品 → 83.09
    • 溶接・ろう付け用の被覆電極/フラックス入りワイヤ等 → 83.11
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 刃物・工具・カトラリー(ハサミ、ナイフ等)→ 第82類(Chapter 82)
    • ねじ・ボルト・ナット・くぎ・鎖・ばねなど「汎用の金属部品」→(例)73.18、73.15、73.20 等(部注/類注で“83類の部分品扱い”から除外されやすい)
    • 照明付きのサイン・表示(LED内蔵の看板等)→ 94.05(照明器具等)
    • キャップ・栓でも素材がプラスチック主体 → 第39類(プラスチック製品)側が候補(材質支配)
    • 機械の「構造の重要部分」(窓枠そのもの等)→ 83.02ではなく、建材・機械側の章へ(個別判断)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「はん用性の部分品(parts of general use)」かどうか(= 83.01/83.02/83.08/83.10/83.06の枠・鏡 などは“部品”でも原則それ自体の類・項で扱われやすい)
    2. キャスターの定義(寸法):83.02の「キャスター」に入るか(直径・幅)
    3. 錠前(83.01)なのか/錠のない留金・金具(83.02/83.08等)なのか
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 機械・家具の「部品」として申告してしまい、実は83類の“はん用性部品”だった(関税率・統計・原産地規則に波及)
    • **食品接触・包装用途(例:83.09の金属キャップ)**で、食品衛生法手続の要否判断を誤る

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • **GIR1(見出し文言+注)が中心です。第83類は「金属の種類」より製品の機能・用途(錠、金具、包装付属品、表示板等)で見出しが立っています。まず項(4桁)の文言と部注(第15部注)・類注(第83類注)**で当否を詰めます。
    • **GIR6(号レベル)**で、用途区分(建築用/家具用/自動車用など)や形状(電極の種類等)に沿って6桁を確定します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 同じ「金具」「部品」でも、錠機構の有無取付対象(建築・家具・車両)寸法要件(キャスター)、**被覆・フラックス入り(溶接材)**でコードが変わります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その物品は「卑金属製の完成品(またはそれに準ずるもの)」で、第83類の各項の機能に当たりますか?(錠、取付金具、包装付属品、表示板、溶接材など)
  • Step2:部注(第15部注)で“はん用性の部分品”扱いになりませんか?
    • 83.01/83.02/83.08/83.10/83.06(枠・鏡)は、他章の「部品」から外れてこちらに残る代表です。
  • Step3:類注を確認
    • 「部分品は本体と同じ項」原則(注1)+ただし例外(ねじ・ばね等は除外)
    • キャスターの定義(注2)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 83.02(取付金具) vs 機械部品(84/85類):一般用途の取付金具なら83.02側に残りやすい
    • 83.10(表示板) vs 94.05(照明付き表示)
    • 83.01(錠) vs 83.08(錠なし留金・ファスナー類)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第83類は実務上、4桁が11項と多くないため全列挙します(見出し要旨はHS2022の第83類に基づく要約です)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8301卑金属製の錠・鍵(鍵式/ダイヤル式/電気式)、錠一体の留金・枠、鍵玄関錠、南京錠、家具用シリンダー錠、カードキー錠、鍵(単体提示)錠機構の有無が最重要。錠なしの留金は83.08側になり得ます。
8302家具・建具・車体等用の取付金具、支持具、取付具付きキャスター、ドアクローザー蝶番、レール、取手、ブラケット、ドアクローザー、キャスターキャスター定義(注2)、用途区分(建築/家具/自動車)が6桁に影響。
8303金庫・強化金庫扉等(卑金属製)耐火金庫、強化金庫扉、貸金庫扉「金庫」用途・構造の確認(単なる保管箱は別項の可能性)。
8304金属製の事務・机上用品(家具を除く)書類トレー、ペントレー、スタンプ台立て**家具(94.03)**は除外(机・キャビネット本体等)。
8305バインダー金具、クリップ、ホチキス針(帯状)等ルーズリーフ金具、ゼムクリップ、ホチキス針、インデックス金具針金・くぎ等の他類(73類等)と混同注意。
8306非電気の鐘・ゴング、金属製置物・装飾、金属枠、金属鏡ドアベル(機械式)、トロフィー、装飾置物、写真立て枠、金属鏡非電気が条件。枠・鏡は「はん用性部品」に該当し得る点に注意。
8307卑金属製のフレキシブルチューブ(継手の有無不問)金属フレキ管(配管用)ゴム/樹脂ホースは別類。素材・構造確認。
8308衣料・靴・鞄等用の留金/バックル/ホック等、管状リベット、金属ビーズ・スパンコールベルトバックル、ホック、アイレット、鞄留具、管状リベット〜に使用する種類のもの」要件。ボタン・ファスナー等は別類の可能性。
8309王冠、キャップ、ふた、封印等の包装付属品(卑金属製)王冠、アルミキャップ、スクリューキャップ、シール食品包装用途なら食品衛生法手続の要否確認。
8310金属製の表示板・銘板・文字・記号等(照明付き除外)ステンレス銘板、住所表示、数字プレート照明付き(94.05)除外。表示方法(発光の有無)を確認。
8311溶接・ろう付け等用の被覆電極/フラックス入り材等アーク溶接用被覆棒、フラックス入りワイヤ、金属溶射用ワイヤ用途(溶接等)と被覆/芯入りの有無が決め手。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 用途(motor vehicles / buildings / furniture / clothing等):83.02・83.08で特に重要
    • 寸法(キャスター):83.02注2(直径・幅)
    • 機構の有無(錠の有無、電気か否か):83.01・83.06
    • 被覆/フラックス入り(溶接材):83.11
    • 材質の二分(鉄鋼 vs その他):83.07
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8301(錠) vs 8308(錠なし留金・バックル等)
      • どこで分かれるか:施錠機構(鍵/ダイヤル/電気)を持つか
      • 判断に必要な情報:構造図、鍵の有無、操作方式(カード/暗証番号等)。
      • 典型的な誤り:鞄の留金(鍵なし)を「錠」として8301に入れる。
    2. 8302.20(キャスター) vs 8302.49(その他取付金具)/他類
      • どこで分かれるか:キャスターは注2の寸法定義を満たすことが前提。
      • 判断に必要な情報:車輪直径(タイヤ含む)、車輪/タイヤ幅、取付具の材質、用途。
      • 典型的な誤り:大型車輪ユニットを寸法確認せず8302.20にしてしまう(注2外→除外、例:第87類)。
    3. 8302.41(建築物用) vs 8302.42(家具用) vs 8302.30(自動車用)
      • どこで分かれるか:設計上「どこに適するか」(建築/家具/自動車)。
      • 判断に必要な情報:取付対象、取付穴ピッチ、耐候性仕様、車両規格適合等。
      • 典型的な誤り:「見た目が似ている」だけで建築用/家具用を取り違える。
    4. 8310(表示板) vs 9405(照明付き表示)
      • どこで分かれるか:表示板に恒久的な光源(LED等)を備えるか
      • 判断に必要な情報:電源・配線、発光部の有無、商品仕様書(電気定格)。
      • 典型的な誤り:LED内蔵銘板を金属板扱いで8310にする。
    5. 8311(溶接材) vs 素材の線材(72〜81類等)
      • どこで分かれるか:フラックスで被覆/芯入りで、溶接・ろう付け等に使用する“性格”があるか。
      • 判断に必要な情報:SDS/仕様書(被覆成分・芯材)、用途説明(溶接条件)、形状(電極/ワイヤ/棒)。
      • 典型的な誤り:フラックス入りワイヤを「鋼線」として素材章へ。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注では、**“はん用性の部分品(parts of general use)”**を定義し、その中に
      • 83.01、83.02、83.08、83.10、および 83.06の枠・鏡 を含めています。
    • その結果、他章(例:73〜76、78〜82)で「部品」と書いてあっても、はん用性の部分品は“部品”に含めない扱いになります。
    • さらに、(一定の留保の下で)第82類・第83類の物品は、素材章(72〜76、78〜81)から除外される旨も示されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)産業機械の扉に付く一般的な蝶番:機械の“専用部品”に見えても、一般用途の取付金具なら83.02に残りやすい(=はん用性の部分品)。
    • 例)錠前に使うねじ・ばね:注1の例外で、83類の“部分品”として扱わず、ねじ(73.18)・ばね(73.20)等に戻る、という整理がしやすい。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「錠の部分品です」と言われた物が、実体はねじ・ボルト・ばね・鎖等 → 73類等へ
    • 「表示板です」と言われた物が、実体は照明付きサイン → 94.05へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第83類注):
    • 注1(部分品は本体と同じ項):原則として、卑金属製の部分品は“親となる物品”と同じ項で分類します。
    • ただし例外(注1のただし書):鉄鋼製の一定の物品(例:73.12、73.15、73.17、73.18、73.20)や、同様の他の卑金属製品は、この類の物品の“部分品”としては扱いません。
    • 注2(キャスター定義):83.02の「キャスター」は、直径・幅の要件で定義されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「キャスター」
      • 直径(タイヤがあればタイヤ含む)が75mm以下、または
      • 直径が75mm超でも、取り付けた車輪/タイヤの幅が30mm未満
        のもの、という整理です。
    • 日本税関の解説では、空気タイヤの場合の直径測定(通常空気圧)や、スポーク有無は分類に影響しない、注2に該当しないキャスターは除外(例:第87類)といった実務的な補足があります。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 注2に該当しない「キャスター」→ 83.02から除外(例:第87類)
    • ねじ・ばね等(例:73.18、73.20等)→ 83類の部分品にしない

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:“はん用性の部分品”に該当すると、機械・家具の「部品」扱いから外れやすい
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 「一般的な取付金具か(汎用形状・規格)/特定機械の専用品か」
      • 取り付け対象(建築・家具・車両・機械)と、単体での用途説明
    • 現場で集める証憑:
      • 取付図、組立図、写真(取付状況)、カタログ、用途説明、寸法図、材質表
    • 誤分類の典型:
      • 機械のドアヒンジを「機械部品」として84/85類に入れてしまい、83.02が正だった、という形
  • 影響ポイント2:キャスターの“直径・幅”で83.02の入口に立てるかが決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 車輪直径(タイヤ含む)、車輪/タイヤ幅、空気タイヤの測定条件、取付具の材質
    • 現場で集める証憑:
      • メーカー仕様書、図面、実測写真(ノギス等)、型番表、タイヤ仕様
    • 誤分類の典型:
      • 「キャスターっぽい」だけで83.02に入れ、注2不適合で差し戻し(例:第87類)
  • 影響ポイント3:“部分品は親と同じ項”の原則と、注1の例外(ねじ・ばね等)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 部品の実体が、ねじ・ばね・鎖・ワイヤ類など、例外に列挙される類型に該当しないか
    • 現場で集める証憑:
      • 部品表(BOM)、部品図、規格(JIS/ISO)、材質・形状写真
    • 誤分類の典型:
      • 「錠の部品です」→実は汎用ねじ(73.18相当)なのに8301.60で申告してしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:錠のない鞄留金を8301(錠)で申告
    • なぜ起きる:品名が「lock」「錠前」と書かれている(販売名ベース)。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):施錠機構がなければ、83.01の「錠」ではなく、83.08の留金類に寄るのが自然です(“鍵/ダイヤル/電気”の有無で整理)。
    • 予防策:仕様書に「キー付きか」「暗証番号機構か」「電気解錠か」を明記してもらう。
  2. 間違い:ドアの掛け金・かんぬきを8301に入れる
    • なぜ起きる:「施錠」っぽく見える。
    • 正しい考え方:鍵で操作する錠でなければ、83.02の建具金物側が候補になります(日本税関解説でも、単なる掛け金等は83.02、錠なし留具は83.08と整理されています)。
    • 予防策:鍵穴・シリンダーの有無、操作方式(鍵/レバーのみ)を確認。
  3. 間違い:機械に取り付ける蝶番を機械部品(84/85類)で申告
    • なぜ起きる:「機械専用品」の思い込み。
    • 正しい考え方:一般的な取付金具は83.02として扱われやすく、部注の“はん用性の部分品”の考え方が効きます。
    • 予防策:汎用品か専用品か(流通型番の有無、汎用寸法か)を確認。
  4. 間違い:キャスターを寸法確認せず8302.20で申告
    • なぜ起きる:外観がキャスター。
    • 正しい考え方:83.02注2の寸法要件を満たす必要があり、満たさないものは除外(例:第87類)とされています。
    • 予防策:直径(タイヤ含む)と幅を仕様書に必須項目としてもらう。
  5. 間違い:錠の“部分品”として、ねじ・ばね等を8301.60で申告
    • なぜ起きる:BOM上は錠の部品扱い。
    • 正しい考え方:第83類注1のただし書で、一定の鉄鋼製品等は83類の部分品にしない、とされています(ねじ・ばね等は代表例)。
    • 予防策:部品の形状分類(ねじ/ばね/鎖/ワイヤ)を先に行い、例外に当たるかチェック。
  6. 間違い:LED内蔵の銘板を8310で申告
    • なぜ起きる:ベースが金属板。
    • 正しい考え方:83.10は照明付き表示(94.05)を除外します。
    • 予防策:電源・発光部の有無をインボイス品名と仕様書に明記(“illuminated”など)。
  7. 間違い:金属キャップ(83.09)をプラスチック包装(39類)で申告
    • なぜ起きる:パッキン等に樹脂が付いていて材質判断が曖昧。
    • 正しい考え方:主たる性質・構成・見出し該当性で判断(キャップ/フタとしての本体が卑金属なら83.09が候補)。
    • 予防策:材質構成比、断面図、主要部材(本体・ライナー)を確認。
  8. 間違い:フラックス入り溶接ワイヤを「鋼線」として素材章へ
    • なぜ起きる:見た目がワイヤで、用途情報が不足。
    • 正しい考え方:83.11は、溶接・ろう付け等用の被覆/芯入り材を含みます。
    • 予防策:SDS、製品カタログ(用途・成分)、溶接条件表の提出を求める。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。
    • 例:83.02(取付金具)なのか、84/85の機械部品なのかで、PSRの章・項が変わり、原産性判定が根本から変わります。
  • よくある落とし穴:
    • 「完成品HS」だけでなく、非原産材料のHSも精度が要ります(材料のHSミス→PSR評価軸ズレ)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに参照HS版が異なることがあり、同じ“83.08”でも文言・範囲が版で変わる可能性があります。
  • RCEPについて、日本の外務省ページでは、証明書に記載するHSコード・原産基準は**HS2022へトランスポーズされたPSRに基づく(2023-01-01以降)**旨が明示されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • ①協定のPSRが参照するHS版を確認 → ②自社運用HS(HS2022)との対応表で突合 → ③疑義があれば協定ガイダンス/税関相談。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 少なくとも、**分類根拠(なぜ83類か)**が説明できる資料(図面・仕様書・用途説明)は保存推奨です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(相関表上、第83類の変更対象コードが見当たらない)83類全般WCO相関表(Table I)は変更のあったサブヘディングを列挙する形式だが、83類コードは掲載されていない2017運用から2022運用へ移行時、第83類ではコード体系の再付番対応が相対的に少ない可能性(ただし国内細分は別)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断プロセス:
    • **WCOの相関表(HS2017–2022 Table I)**は、HS2022で新設/範囲変更等のあったサブヘディングを列挙する形式です。そこに第83類のサブヘディングが登場しないため、少なくともHS2017→HS2022で“相関表に載るレベルの改正”は第83類に見当たらない、と整理できます(※相関表は分類決定ではなくガイド、という位置付けも併せて留意)。
    • さらに、WCOが公開する第83類テキスト(HS2017版とHS2022版)を見比べても、見出し構成・注の骨格は同一です。
  • 変更がない場合の明示:
    • したがって本資料では、**HS2017→HS2022の第83類は「変更なし」**として扱います。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第83類は、少なくとも主要な見出し(8301〜8311)の枠組み自体は継続しており、版間の目立つ差は「見出し文言の明確化(例:83.08)」のような形で現れています。

版の流れ主な追加・削除・再編(第83類)旧コード→新コードの対応
HS2007→HS2012コード体系(8301〜8311)は概ね維持。83.08の見出し文言はHS2007と同様の範囲表現(衣料・履物・日よけ・ハンドバッグ・旅行用品等)。大きな付替えなし(6桁レベル)
HS2012→HS201783.08の見出し文言が拡張(衣料付属品、宝飾品、時計、書籍、革製品、馬具等の用途語が追加され、対象用途の説明が明確化)。コード(8308.10/20/90)は維持、見出し説明の明確化が中心
HS2017→HS2022第83類は大きな改正が見当たらない(相関表上)。付替え対応は限定的(6桁レベル)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):キャスター寸法の見落としでコード差し戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):83.02注2の定義外(直径・幅不適合)
    • 起きやすい状況:型番だけで「キャスター」と判断し、寸法証憑を取っていない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:直径(タイヤ含む)・幅を仕様書/実測で固定し、注2適合を明文化
  • 事例名:錠の部分品として“ねじ・ばね”を8301.60で申告
    • 誤りの内容:第83類注1のただし書(ねじ・ばね等は部分品扱いしない)
    • 起きやすい状況:BOMの分類をそのまま税番に転記
    • 典型的な影響:分類補正、書類追加要請、通関遅延
    • 予防策:部品表に「形状分類(ねじ/ばね等)」欄を追加し、例外品を自動抽出
  • 事例名:機械用ヒンジを機械部品(84類等)で申告
    • 誤りの内容:部注の「はん用性の部分品」整理の見落とし
    • 起きやすい状況:装置メーカーが「専用品」と説明、実際は汎用品
    • 典型的な影響:差し戻し、分類根拠提出要求
    • 予防策:汎用規格品かどうか(市販型番の有無)と用途を写真付きで説明
  • 事例名:照明付き銘板を8310で申告
    • 誤りの内容:83.10の除外(94.05)
    • 起きやすい状況:金属板にLEDが組み込まれているのに、見た目で判断
    • 典型的な影響:修正申告、追加確認(電気用品含む)
    • 予防策:電源の有無・発光機能の有無をインボイス品名へ明記

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 検疫・衛生(SPS等):
      • 食品衛生法(輸入食品等):販売または営業上使用する「食品等」(食品、添加物、器具、容器包装など)を輸入する場合、検疫所への輸入届出が必要で、届出なしでは販売・営業使用できない旨が示されています。
      • 第83類では、特に **83.09(ボトルキャップ、王冠、ふた等)**が「容器包装」として該当し得るため、用途(食品用途/非食品用途)確認が重要です。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:
      • 第83類は金属製品中心のため、通常は該当しにくい(ただし装飾に動植物由来素材を含む場合は別途確認)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合):
      • 第83類単体では典型例は多くありませんが、用途・仕様(軍用向け特殊仕様等)によっては別途確認が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 厚生労働省(検疫所)「食品等輸入手続」
    • 日本税関(関税率表解説・事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書、用途説明(食品接触の有無)、材質情報、製造工程情報(必要に応じ)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 機能(錠/取付/包装付属/表示/溶接材)
    • 取付対象(建築/家具/車両/機械)
    • 寸法(キャスター:直径・幅)
    • 被覆/芯入り(溶接材:SDS・仕様)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 「はん用性の部分品」該当か(83.01/83.02/83.08/83.10/83.06枠・鏡)
    • 第83類注1の例外(ねじ・ばね等)を踏んでいないか
    • キャスター注2適合か
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「with lock / without lock」「illuminated」等、誤解防止語を入れる
    • 図面・写真・カタログを添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版を確認
    • RCEPはHS2022トランスポーズPSRの適用開始日に注意
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 83.09等が食品用途なら、食品衛生法の輸入届出要否を確認

12. 参考資料(出典)

※参照日(2026-02-28)

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 83(Miscellaneous articles of base metal)
    • HS2022 Section XV Notes(parts of general use の定義など)
    • HS2017 Chapter 83(版比較用)
    • HS2007 Chapter 83(版比較用)
    • Correlation Tables HS2017–HS2022(Table I)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第83類)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 外務省:RCEP協定(PSRのHS2022トランスポーズ適用開始の注記)
  • 規制(検疫・衛生)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続(食品衛生法に基づく輸入届出、対象範囲(器具・容器包装等))

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第82類:卑金属製の工具、道具、刃物、スプーン及びフォーク並びにこれらの部分品(Tools, implements, cutlery, spoons and forks, of base metal; parts thereof of base metal)

用語の統一(本稿の表記)

  • 部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 農業・園芸・林業向けの手道具(例:シャベル、くわ、剪定ばさみ)→ 8201
    • のこぎり・のこ刃(手のこ、帯のこ刃、丸のこ刃など)→ 8202
    • プライヤー、ニッパー、金切りばさみ等の手工具 → 8203
    • 交換式工具(ドリルビット、タップ、フライス等)→ 8207
    • 包丁・ナイフ(機械用刃物を除く)やその刃 → 8211
    • スプーン・フォーク等の食卓用具(セット含む)→ 8215
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • スタンドやフレームに固定して使う「手回しドリル」等(手で回しても“機械”寄り)→ 第84類(例:工作機械側の見出し)
    • ベースプレート等に取り付けたギロチン式の剪断機(手動でも機械扱い)→ 第84類(例:8462)
    • 噴霧装置、空気圧工具、事務用ステープル打ち機など、「手で使う」でも第84類に明確に含まれるタイプ → 第84類(例:8424、8467、8472)
    • 医療用・獣医用の器具として使用されるはさみ・刃物等 → 第90類(例:9018)
    • 貴金属(または貴金属張り)を“装飾の域を超えて”柄や刃など主要部に使用したカトラリー等 → 第71類に移りやすい
    • 電気かみそり/電気バリカンの頭部・刃 → 85.10(第85類)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「手工具(82類)」か「機械(84類)」か:スタンド固定・ベース付き等は機械側に寄りやすい
    2. 刃物の系統:交換式工具(8207)/機械用刃(8208)/手持ちナイフ(8211)を分ける
    3. セット扱い:ナイフ(8211)+同数以上のカトラリー(8215)セットは、原則8215に寄せる
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • EPA/FTAのPSR適用:HSの付番がズレると、原産性判断(CTC/RVC等)も連鎖的に崩れます。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注で決める):第82類は、類注(注1〜注3)が「入る/入らない」「セットの扱い」「部分品の扱い」を強く決めます。まず注を読んでから項へ進むのが安全です。
    • GIR3(複合品・セット):工具セットやキッチンセットは「小売用のセット」論点になりやすいです(ただし、82.11+82.15セットは類注で明確に指示あり)。
    • GIR6(6桁の決定):4桁が決まっても、6桁で「材質(鋼か、サーメットか)」「固定刃か折りたたみか」「セットか単品か」などでズレます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で効く順):
    • 作用する部分(刃・刃先・作用面)の材質:卑金属等でない場合、原則82類から外れやすい(例:ゴム・革・陶磁等の作用部は別類へ)。
    • 手で使うのか/機械に組み込まれるのか/据え付けるのか(82類⇔84類の境界)
    • セット内容(構成品の種類・点数・用途):82.06や82.15のセット、82.11+82.15のセットなど。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象が「工具・道具・刃物・カトラリー」系か?(第82類の総説イメージに合うか)
  • Step2:作用する部分(刃・作用面)が、卑金属/金属炭化物/サーメット等か?
    • YES → Step3へ
    • NO → 原則は材質別の類(例:ゴムなら40類等)へ(※例外・個別判断あり)
  • Step3:手工具か?機械側か?
    • スタンド固定・ベース付き・据え付け前提 → 第84類寄り(例示あり)
    • 手で保持して使用 → Step4へ
  • Step4:4桁を決める(8201〜8215)
    • 交換式工具 → 8207
    • 機械用ナイフ・刃 → 8208
    • ナイフ(機械用以外)→ 8211
    • スプーン・フォーク等 → 8215
    • など
  • Step5:類注(注2=部分品、注3=セット)で“強制移動”がないか確認
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第82類 ⇔ 第84類:手で使える形でも、据付け・ベース付き等で機械側に寄る例が明示されています。
    • 第82類 ⇔ 第90類(医療器具):医療・獣医用途の器具としての性格が強いと第90類(例:9018)に寄ります。
    • 第82類 ⇔ 第71類(貴金属要素):貴金属の使い方が“装飾”の範囲を超えると71類へ。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8201農業・園芸・林業用の手道具シャベル、くわ、剪定ばさみ用途が「主として」該当分野か(ただし他用途に流用されても可)
8202手のこ、各種のこ刃手のこ、帯のこ刃、丸のこ刃丸のこ刃は「鋼の作用部」等で6桁分岐
8203やすり、プライヤー類、金切りばさみ等ラスプ、ニッパー、パイプカッター“手工具”か“機械(84類)”かの境界に注意
8204手動スパナ・レンチ、ソケットモンキーレンチ、ソケットレンチ調整式か否か(8204.11/8204.12)
8205その他の手工具等(ダイヤ切り、トーチ、万力等)ドライバー、金づち、万力、トーチ「工作機械やウォータージェット切断機の部品・付属品」は除外される点に注意
82068202〜8205の複数見出し工具を小売セットにしたもの工具箱(のこ+レンチ+ドライバー等)“小売用セット”として8206に寄るか、個別か(構成・包装・販売形態)
8207手工具/工作機械用の交換式工具ドリルビット、タップ、ダイス、フライス“交換式”が本質。岩盤掘削工具はサーメット有無で分岐
8208機械・器具用のナイフ/切断刃食品加工機の刃、木工機械のナイフ“機械用”が決め手。手持ちナイフ(8211)と混同しやすい
8209サーメット製の未装着工具チップ等チップ、インサート(未装着)“サーメット”かつ“未装着”が核
821010kg以下の手動機械式器具(飲食物の調製等)手動ミンサー、手動ジューサー「10kg以下」「飲食物の調製等」が要件
8211機械用以外のナイフ等+刃包丁、折りたたみナイフ、替刃8211.91/92/93(固定刃/折りたたみ)などで分岐。セット規定あり
8212かみそり、かみそり刃等安全かみそり刃、替刃ブランク電気かみそりの頭部・刃は8510へ(類注)
8213はさみ類(テーラー用等)+刃裁ちばさみ、キッチンばさみ医療用器具(9018)との境界に注意
8214その他の刃物類、マニキュア/ペディキュア用具ペーパーナイフ、爪切り、ネイルファイル“刃物類のその他”の受け皿。玩具(95類)との境界例示あり
8215スプーン、フォーク等(食卓/台所用)スプーン、フォーク、レードルナイフ+カトラリーセットは8215へ(類注)。貴金属要素で71類に飛ぶことも

注:上表は**HS6桁(国際6桁)**の枠組みです。日本の輸入申告では、別途「国内コード(統計細分)」が付く点に留意してください(本稿では国内細分は扱いません)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の典型(この類で頻出):
    • 材質(例:丸のこ刃の“作用部が鋼か”)
    • 形態(固定刃/折りたたみ、セット/単品)
    • 用途(機械用か、手持ち用か)
    • 要件(例:8210は“10kg以下”)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8202.31 vs 8202.39(丸のこ刃)
      • どこで分かれるか:作用する部分が鋼か(8202.31)/それ以外(8202.39、部分品含む)
      • 判断に必要な情報:刃先材質(超硬チップ等)、構成(本体・チップ)、仕様書
      • 典型的な誤り:名称だけで「丸のこ刃」→鋼と決め打ちしてしまう
    2. 8204.11 vs 8204.12(スパナ・レンチ)
      • どこで分かれるか:非調整式(8204.11)か、調整式(8204.12)か
      • 判断に必要な情報:口幅可変機構の有無(ウォームギヤ等)、製品写真
      • 典型的な誤り:「モンキー」でも固定口の製品を混同
    3. 8207.13 vs 8207.19(岩盤掘削用の交換式工具)
      • どこで分かれるか:作用部がサーメット(8207.13)か、それ以外(8207.19)
      • 判断に必要な情報:作用部材質(サーメットの有無)、カタログ
      • 典型的な誤り:超硬(炭化物)とサーメットの区別を確認せずに選択
    4. 8211.91 / 8211.92 / 8211.93(ナイフの形態)
      • どこで分かれるか:テーブルナイフ(固定刃)(8211.91)/その他の固定刃(8211.92)/固定刃以外(折りたたみ等)(8211.93)
      • 判断に必要な情報:用途(テーブル用か)、刃の固定可否、ロック機構
      • 典型的な誤り:テーブル用セットの一部を「その他固定刃」に入れてしまう
    5. 8215.10 / 8215.20 / 8215.91 / 8215.99(カトラリーと“貴金属めっき”)
      • どこで分かれるか:セットか単品か、また貴金属めっきの有無
      • 判断に必要な情報:セット内容、めっきの材質・範囲、仕様書
      • 典型的な誤り:装飾が“軽微”か“主要部”かの見極め不足(主要部なら71類に飛ぶ可能性)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第82類(第15部)の内部では、**「はん用性の部分品(parts of general use)」**は、原則として第82類に置かれず、別の見出し(ねじ・ボルト等)へ行きます。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:剪定ばさみ用のばね、工具に使われるねじ・ナット等は、「工具の一部だから82類」と決めず、**はん用性部分品として他の章(例:73類等)**を検討します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 工具の部品として入ってきたが、実は「はん用性の部分品」だった(ねじ・ボルト・ばね等)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1〜注3):
    • 注1:原則として「刃・作用面などの作用部」が、卑金属等(卑金属/金属炭化物/サーメット等)でできているものに限って第82類に入る(ただしトーチ等の例外あり)。
    • 注2:第82類の物品の卑金属製部分品は、原則として“完成品と同じ項”へ。ただし、**手工具用ツールホルダー(8466)**等の例外や、はん用性の部分品は除外。また電気かみそり等の頭部・刃は8510へ。
    • 注38211のナイフ8215の食卓用具が「同数以上」でセットになっている場合は、8215に分類。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 類注自体は「卑金属・サーメット等」「はん用性の部分品」等の参照を置いており、定義は別注(部注)側で与えられる構造です。実務上は「作用部材質」「部品の汎用性」を仕様書で裏どりします。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 手工具用ツールホルダー → 8466
    • 電気かみそり/電気バリカンの頭部・刃 → 8510

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:注1(作用部材質)で「82類に入る/入らない」が決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 刃・刃先・作用面の材質(卑金属、炭化物、サーメット、研磨材の付き方)
    • 現場で集める証憑:
      • 材料仕様書、図面、カタログ、写真、(必要に応じて)材質証明
    • 誤分類の典型:
      • 見た目が金属でも、実は作用部が別材質で82類に入らないのに「工具だから82類」で押してしまう。
  • 影響ポイント2:注2(部分品)で「完成品と同じ項」か「例外」かが変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 当該部品が「特定品の専用品」か「はん用性の部分品」か
      • ツールホルダー該当性(8466)
    • 現場で集める証憑:
      • BOM、用途説明、取付図、互換性情報(汎用品か専用品か)
    • 誤分類の典型:
      • ネジ・ばね等を「工具の部品」として82類に入れてしまう(はん用性部分品は除外)。
  • 影響ポイント3:注3(セット)で「8211→8215へ強制的に寄せる」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • セットの構成(ナイフの本数、スプーン/フォーク等の本数、販売形態)
    • 現場で集める証憑:
      • セット写真、梱包内容一覧、SKU構成、販売ページ(小売セットの実態)
    • 誤分類の典型:
      • 「ナイフセットだから8211」としてしまい、カトラリー同梱(同数以上)の注3適用を見落とす。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:据え付け型の手回し機器を82類(手工具)に入れる
    • なぜ起きる:動力が電動でない=“手工具”と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
      • 手で使えても、スタンド固定・ベース付き等で機械(第84類)に寄る例示があります。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「床・作業台に据える設計か?」「ベースプレートやスタンドがあるか?」を写真・図面で確認
  2. 間違い:機械用の刃(8208)を、手持ちナイフ(8211)に入れる
    • なぜ起きる:「刃物」「ナイフ」という商品名に引っ張られる
    • 正しい考え方:
      • 機械・器具に用いる刃は8208、機械用以外のナイフは8211という切り分けが見出し上明確です。
    • 予防策:
      • 「装着先(機械名・型式)は何か?」を必ず確認。取付方法(ボルト穴等)もチェック
  3. 間違い:“交換式工具”でないのに8207に入れる
    • なぜ起きる:ドリル関連・切削関連=8207、という思い込み
    • 正しい考え方:
      • 8207は交換式工具(手工具用/工作機械用)という性格が核。固定刃の機械用ナイフは8208等。
    • 予防策:
      • 「工具が交換式(消耗交換)として設計されているか」「シャンク規格や保持方式は?」を確認
  4. 間違い:工具の“部品”なら何でも注2で82類に入ると思う
    • なぜ起きる:注2の前半(完成品と同じ項)だけ読んでしまう
    • 正しい考え方:
      • はん用性の部分品は除外、ツールホルダー(8466)等は例外、電気かみそり刃は8510へ、と但し書きが重要です。
    • 予防策:
      • 部品について「汎用品か専用品か」をBOMと図面で確認(ねじ・ばね等は要注意)
  5. 間違い:ナイフ+カトラリーのセットを8211で申告
    • なぜ起きる:主役(ナイフ)だけを見てしまう
    • 正しい考え方:
      • 類注3で、条件を満たすセットは8215に分類と指示されています。
    • 予防策:
      • セット内容の数量(同数以上か)をインボイス/梱包明細/写真で確定させる
  6. 間違い:貴金属の使い方を軽視して82類のままにする
    • なぜ起きる:少し光っている程度に見える/「装飾」だと自己判断
    • 正しい考え方:
      • “軽微な装飾”の範囲なら82類に留まり得ますが、主要部に貴金属等を用いると71類に移る旨が示されています。
    • 予防策:
      • 貴金属めっき/張りの範囲(柄全体か、ワンポイントか)と素材証明を取得
  7. 間違い:医療用はさみ等を82類に入れる
    • なぜ起きる:形状が通常のはさみと同じに見える
    • 正しい考え方:
      • 医療・獣医用の器具としての性格が明確なら90類(例:9018)に寄ることが示されています。
    • 予防策:
      • カタログ用途(medical/surgical 等)、販売先、滅菌対応等の仕様を確認
  8. 間違い:「手で使う=82類」として、84類に明確に含まれる器具を入れてしまう
    • なぜ起きる:ニューマチックツールや噴霧器、ステープラー等は“手持ち”に見える
    • 正しい考え方:
      • これらは例示として84類に含まれる旨が説明されています。
    • 予防策:
      • 「動力源(空気圧等)」「機械的機構」「用途」が84類側の典型に当てはまらないかを確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること:
    • PSR(CTC/RVC/加工工程等)はHS(多くは6桁)を前提に書かれているため、HSが1桁でもズレると、満たすべきルール自体が変わります。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品だけでなく、非原産材料側のHS付番もPSRの判定(CTH/CTSH等)に影響
    • セット(82.06/82.15 等)の扱いを誤って、PSRの“対象コード”が変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 一般論(実務で重要):
    • 協定ごとに採用HS版が異なり、協定が採用していないHS版でPSR検索すると結果が誤る可能性がある旨、税関ポータルでも注意喚起されています。
    • 一方で、輸入申告は最新のHSを使う(協定検索と申告で“HS版がズレる”ことが起き得る)点も明示されています。
  • 本稿で例示した協定(参考:代表例):
    • RCEP:PSR附属書(Annex 3A)はHS2012に基づく旨が明記されています。
      • ただし、日本の外務省資料では、RCEP合同委員会で採択されたHS2022へのトランスポーズ版PSRが2023-01-01から実施される旨が示されています。
    • CPTPP:日本税関の原産地規則資料で、CPTPPの関税分類番号(6桁)がHS2012で運用されていることが読み取れます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • ①協定本文・運用資料が指すHS版を確認 → ②旧HSでPSRを確定 → ③WCO相関表や当局のトランスポーズ表で新HSに対応付け、**申告HS(最新)**と整合を取る、という順が事故を減らします。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(最低限):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、各材料の原産国、非原産材料のHS(協定が採用する版)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 自己申告・第三者証明の別により提出書類が変わるため、税関のガイド・様式に合わせて保存(協定ごとの運用に従う)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2007→HS2012削除/統合8201.208201の「フォーク」区分(8201.20)が削除され、他の区分へ整理旧データ参照時に8201.20が出てきたら要注意(現行は別号へ寄せる)
HS2007→HS2012削除/再整理8205.808205.80(“金床等”のサブ見出し)が削除され、8205内の区分が整理8205の旧番号で管理している品目は、現行の8205内で再判定が必要
HS2007→HS2012文言修正8205.908205.90の説明が「セット」中心から「その他(セット含む)」へ整理8205.90に“セット以外”も入る整理のため、旧ロジックの見直しが必要
HS2012→HS2017文言修正/範囲明確化8205(見出し文)8205の除外に「ウォータージェット切断機」関連が追加8205に見えても、当該機械の部品・付属品なら機械側(例:8466等)検討が必要
HS2017→HS2022変更なし(実質同一)8201〜8215、類注第82類の見出し・類注は実質同一(少なくともWCO条文比較上の変更は確認できない)過去データとの突合(統計/PSR)時は、主にHS2012以前の番号差に注意

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断のしかた:
    • **HS2007とHS2012のWCO条文(第82類)**を比較すると、8201に存在した「8201.20(Forks)」がHS2012では掲載されていないこと、また8205に存在した「8205.80」がHS2012では掲載されていないことが確認できます。
    • HS2012とHS2017を比較すると、8205の見出し文に「water‑jet cutting machines」が追加されていることが確認できます(HS2012側には当該文言がない)。
    • HS2017とHS2022は、第82類の見出し・類注の記載が一致しており、条文上の再編は確認できませんでした。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要ポイント(第82類に関して、実務で影響が出やすいもの)を整理します。

版の流れ主な追加・削除・再編(第82類の例)旧コード→新コード(考え方)備考
HS2007→HS20128201.20(フォーク)削除、8205.80削除、8205の「その他」整理旧8201.20は現行8201内で再分類、旧8205.80は現行8205内で再分類実務では“旧HSでの社内マスタ”を洗い替え
HS2012→HS20178205見出し文にウォータージェット切断機の除外を追加8205周辺で「機械の部品・付属品」論点が強化機械側見出し(例:8466等)再確認
HS2017→HS2022第82類は実質変更なし大きな再編は見当たらない

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ナイフ+カトラリーセットの申告ミス
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注3(セットは8215へ)を見落とし、8211で申告
    • 起きやすい状況:商品名が「ナイフセット」、梱包明細が曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:セット内容(点数)と写真を事前に揃え、注3を必ずチェック
  • 事例名:工具の“汎用ネジ”を82類部品で申告
    • 誤りの内容:注2ただし書き(はん用性部分品は除外)を無視
    • 起きやすい状況:「工具の修理部品」として一括手配
    • 典型的な影響:品目更正、関税・消費税差額、帳票再作成
    • 予防策:BOMで汎用品(ねじ・ばね等)を切り出し、別分類を検討
  • 事例名:電気かみそり刃の誤分類
    • 誤りの内容:類注2で8510と明示されているのに、8212(かみそり刃)で申告
    • 起きやすい状況:「替刃」という品名のみで判断
    • 典型的な影響:修正、差額、審査長期化
    • 予防策:電気式か否か、適合機種(電気かみそり/バリカン)を品名に明記
  • 事例名:据付け前提の“手動”機器を82類に入れる
    • 誤りの内容:82類の総説が示す82類⇔84類の境界を見落とす
    • 起きやすい状況:現物写真がなく、仕様が「手動」としか書かれていない
    • 典型的な影響:差戻し、追加資料要求
    • 予防策:スタンド/ベースの有無、使用方法(据置きか手持ちか)を図面で確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 銃砲刀剣類所持等取締法(いわゆる銃刀法)関連:刀剣類等について、税関で確認が必要な輸入規制が案内されています(品目により要件が異なるため、個別確認が必須)。
    • 輸入関係他法令:税関は「輸入関係他法令一覧」や「輸出入禁止・規制品目」等で主管省庁確認を促しています。
    • (参考)銃刀法は近年改正情報もあるため、最新の公表情報を確認してください。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等):第82類は通常は該当しにくい(食品そのものではないため)
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:通常は該当しにくい
    • 安全保障貿易管理:個別製品の仕様により別途確認(本稿では一般論に留めます)
    • その他の許認可・届出:刀剣類・一部の刃物等は、主管当局・税関への確認が重要
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(カスタムスアンサー、輸入関係他法令一覧)
    • 警察庁(銃刀法関連の公表情報)
    • 経済産業省(輸入管理関連:該当する場合)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品写真、仕様書(刃渡り等の属性を含む場合は特に)、用途説明、取引書類、必要に応じて許可・承認書類

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 作用部材質(刃先・作用面)、用途(手持ち/機械用/医療用等)、構造(固定・折りたたみ、据付けの有無)
    • セット内容(同梱品と数量)、包装形態(小売用か)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1〜3を再確認(作用部材質、部分品、セット)
    • 82類⇔84類(機械)、82類⇔90類(医療)、82類⇔71類(貴金属)の境界を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「用途(機械用/手持ち)」「セット構成」「材質」を織り込む
    • 写真・カタログ・仕様書を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が採用するHS版でPSRを確認(検索時のHS版違いに注意)
    • BOM(材料HS含む)、工程、原価データを保存(自己申告・検証に備える)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 刀剣類・一部刃物等は「輸入関係他法令」「税関FAQ」を参照し、主管当局も含め事前確認

12. 参考資料(出典)

※参照日(YYYY-MM-DD):2026-02-28

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 82 条文(1582_2022E)
    • HS2017 Chapter 82 条文(1582_2017E)
    • HS2012 Chapter 82 条文(1582_2012E)
    • HS2007 Chapter 82 条文(1582_2007E)
  • 日本税関・公的機関(分類・原産地・規制)
    • 関税率表解説 第82類(82r.pdf)
    • 関税率表の解釈に関する通則(GIR)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索ポータル(HS版の注意喚起含む)
    • 我が国の原産地規則(EPA原産地規則の詳細、2025年4月)
    • RCEP:外務省掲載ページ(HS2022トランスポーズPSRへの注意書き)
    • RCEP:Annex 3A(PSR、HS2012ベースの明記あり)
    • RCEP:HS2022へのトランスポーズPSR(2023-01-01実施の明記あり)
    • 輸入関係他法令一覧(英語版、2026-01-01)
    • 税関FAQ:銃砲刀剣類所持等取締法に基づく輸入規制の確認要件(英語)
    • 輸出入禁止・規制品目(税関)
    • 銃砲刀剣類所持等取締法(e-Gov法令)
    • 警察庁:銃刀法改正(2024年6月)の案内
    • 経済産業省:輸入管理(武器等)関連ページ(該当時の参照先)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第81類:その他の卑金属及びサーメット並びにこれらの製品(Other base metals; cermets; articles thereof)

  • 用語統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • タングステン(粉・塊・線・くず等)【8101】
    • タンタル(塊/粉・くず・るつぼ等)【8103】
    • ビスマス(99.99%超の地金/その他)【8106.10/8106.90】
    • ジルコニウム(原料・粉等/ハフニウム比で分岐)【8109】
    • カドミウム等の「8112対象金属」およびその製品【8112】
    • サーメットおよびその製品【8113】
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 金属炭化物(例:炭化タングステン粉):原則この類に入らず(例:28類や38類、工具用は82類へ)
    • 金属粉を基材にした塗料・インキ等:32.07〜32.15等(部注で除外)
    • 貴金属・貴金属合金:第71類(部注で除外)
    • 機械・電気機器の「部品として完成したもの」:多くが第16部(84・85類)等へ(部注で除外)
    • 工具用の未装着チップ/プレート等:82.09(サーメットであっても、形状・用途が工具用ならこちらが優先しやすい)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 「金属そのもの」か/「化合物(炭化物等)」か/「サーメット」か(ここで章が飛ぶ)
    • 形状(粉・くず・地金・線・板など):部注で定義があり、数値要件もあります
    • 成分比・純度要件(例:Zr/Hf比、Mg純度、Bi純度)で6桁が変わります
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSRがHSコード前提のため、誤分類が原産性判断の崩壊に直結しやすい(特に素材輸出入)
    • 「くず」扱いは、通関・環境規制(バーゼル等)・契約条件に波及しやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し(Heading/Subheading)の文言と注(Notes)でまず決めます。第81類は「金属名×形状(粉・くず・地金等)」で整理されているため、まず金属の同定形状が最優先です。
    • GIR6:6桁(号)の分岐は、同じ見出し内で「純度」「成分比」「形状」の条件が多いので、最後に6桁を必ず当て直します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(何の金属/合金か):合金は「どの金属の合金として扱うか」が部注で決まります(優勢重量など)。
    • 状態(地金/粉/くず/製品):粉・くずは部注で定義があり、形状も部注で定義されます。
    • 用途・完成度:工具用チップ、機械部品などは別類が優先し得ます(部注の除外)。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象が「第15部(卑金属)」相当かを確認
    • 貴金属(第71類)や、塗料等(第32類)など除外規定に当たらないかを先に確認します。
  • Step2:「金属そのもの」か「化合物」か「サーメット」かを確定
    • 金属炭化物(化学物質)なら原則第28類等へ。
    • サーメットなら81.13(ただし工具用形状は82.09等に寄ることが多い)。
  • Step3:金属を同定(W、Mo、Ta、Mg、Co、Bi、Ti、Zr、Sb、Mn、または8112対象金属)
    • 8112は対象金属が多いので、まず「どの元素か」を確定します。
  • Step4:形状・純度・成分比で6桁を確定
    • 例:粉の定義(90%/1mm)で「粉」扱いかが変わる。
    • 例:ZrはHf比(1:500未満)で6桁が変わる。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 81類(金属) vs 28類(化合物:炭化物等)
    • 81類(素材) vs 82類(工具・工具用チップ)/84・85類(機械・電気機器の部品)
    • 81類(合金として分類) vs 72類(フェロアロイ等)(用途が「フェロ〜」として流通するか、構成が何か)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第81類は項数が少ないため、全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8101タングステン及びその製品(くずを含む)タングステン粉、焼結棒、線、スクラップ炭化タングステン(化合物/混合物/工具用チップ)は別類へ行くことがある
8102モリブデン及びその製品(くずを含む)モリブデン粉、板、線、スクラップ「単に焼結して得た棒」か否かの分岐が出やすい
8103タンタル及びその製品(くずを含む)タンタル粉、タンタルるつぼ、熱交換器用部材HS2022で「るつぼ」が独立(8103.91)
8104マグネシウム及びその製品(くずを含む)Mg地金、削りくず、粉地金は純度99.8%以上で分岐(8104.11/19)
8105コバルトのマット等中間生産物、コバルト及びその製品(くずを含む)コバルトマット、地金、粉8105.20が「中間生産物/地金/粉」をまとめて含む構造
8106ビスマス及びその製品(くずを含む)高純度ビスマス地金HS2022で99.99%超か否かで分岐(8106.10/90)
8108チタン及びその製品(くずを含む)チタンスポンジ、粉、スクラップ6桁の構造は「未加工チタン;粉」等が同一号に入る点に注意
8109ジルコニウム及びその製品(くずを含む)ジルコニウム地金、粉、管材、スクラップHS2022で**Hf含有比(1:500未満)**で細分化
8110アンチモン及びその製品(くずを含む)アンチモン地金、粉、スクラップ「未加工アンチモン;粉」など形状で分岐
8111マンガン及びその製品(くずを含む)マンガン地金、スクラップ見出しはシンプルだが、フェロマンガン等(72類)との境界に注意
81128112対象金属(Be/Cr/Hf/Re/Tl/Cd/Ge/V/Ga/In/Nb)とその製品ベリリウム地金、ハフニウム、レニウム、カドミウムスクラップ等対象金属が多い。HS2022でHf・Re・Cdなどが独立細分化
8113サーメット及びその製品(くずを含む)サーメット材料、サーメット製品サーメット定義は部注(微細な金属+セラミックの組合せ、焼結金属炭化物を含む)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 粉(Powders):製品の90%以上(重量)が1mmふるいを通過するか(部注の定義)。サプライヤーの粒度分布表(PSD)が重要です。
    • くず(Waste and scrap):破損・切断・摩耗などで「そのままでは使えない」金属廃材か(部注の定義)。中古部材・オフカットは境界になりがちです。
    • 純度/成分比:Mg(99.8%)、Bi(99.99%超)、Zr(Hf比)など。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8109.21/8109.29(未加工Zr;粉)・8109.31/8109.39(くず)・8109.91/8109.99(その他)
      • どこで分かれるか:ハフニウムが「Zr500に対しHf1未満(重量)」かどうか
      • 判断に必要な情報:成分分析(Hf含有量、Zr含有量、分析方法、ロット)
      • 典型的な誤り:Zr品なのにHf比を確認せず「その他」へ入れる/逆に低Hfをうたうだけで根拠資料がない
    2. 8106.10/8106.90(ビスマス)
      • どこで分かれるか:**Bi 99.99%超(重量)**か否か
      • 判断に必要な情報:ミルシート、分析証明(Assay)、不純物一覧
      • 典型的な誤り:「99.99%以上」と誤読して境界を曖昧にする(条文は“more than 99.99%”)
    3. 8104.11/8104.19(マグネシウム地金)
      • どこで分かれるか:**Mg 99.8%以上(重量)**か否か
      • 判断に必要な情報:成分表(Al, Zn等の含有)、規格(例:純Mgか合金か)
      • 典型的な誤り:マグネシウム合金(他元素が多い)を高純度地金扱いする
    4. 8102.94/8102.95(モリブデン)(同様構造はタングステン等でも実務論点)
      • どこで分かれるか:「単に焼結して得た棒を含む未加工」か/それ以外の棒・形材等か
      • 判断に必要な情報:製造工程(焼結のみか、圧延・引抜き等の後加工があるか)、形状写真
      • 典型的な誤り:見た目が棒状=すべて8102.95と決め打ちする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注3:本表全体でいう「卑金属(base metals)」の範囲(鉄鋼〜タングステン〜レニウム等)が列挙されています。第81類対象金属の理解に直結します。
    • 部注4:サーメットの定義(微細な金属成分+セラミック成分、焼結金属炭化物を含む)。
    • 部注5:合金の分類(原則は優勢重量など)。
    • 部注8:「くず」「粉」の定義(粉=90%/1mm)。
    • 部注9:棒・形材・線・板などの形状定義(第81類にも準用)。
    • 部注1:塗料等や貴金属、機械類等の除外(どの部・どの類へ飛ぶかの入口)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「タングステン粉」と称していても、粒度分布が定義を満たさないと「粉」号に入れないことがあります(PSDが必須)。
    • 「炭化タングステン」は、化合物としての粉なら第28類、調製混合物なら第38類、工具用の板・チップ等なら第82類へ、というように状態で飛び先が変わります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 金属粉末を含む塗料・インキ → 第32類(部注で除外)
    • 完成品(機械・電気機器の部品等) → 第16部(84/85類など)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第81類には類注(Chapter Notes)や号注(Subheading Notes)は置かれていません(=分岐の多くは部注と各見出し文言で行います)。
    • 参考:HS2007/2012/2017には「第74類注1の形状定義を準用する」という号注がありましたが、HS2022では部注9側に定義が整理されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • サーメットの定義:部注4
    • 粉・くず:部注8
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 除外そのものは主に部注1(第32類、第71類、第16部など)で整理されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
→第81類は類注がないため、実務上の分岐は“部注(Section Notes)”が実質的に作ります

  • 影響ポイント1:「粉」定義(90%/1mm)で、同じ“粉っぽい”ものが別号になる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):粒度分布(PSD)、ふるい試験結果、製品仕様(平均粒径では不足)
    • 現場で集める証憑:仕様書、SDS、試験成績書(粒度)、写真(粒状/フレーク状)
    • 誤分類の典型:「微粉末」と商品名にある=粉(Powders)と決め打ち
  • 影響ポイント2:合金の分類(優勢重量など)で“金属名”が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):合金の重量組成(各元素%)、製造方法(焼結混合物か溶融か)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、成分分析、BOM(材料配合)、工程図
    • 誤分類の典型:用途(例:超硬用途)だけで「タングステン系」として8101へ寄せる
  • 影響ポイント3:サーメット定義に該当するかで、81.13または82.09へ動く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):微細組織(焼結体か、金属×セラミック複合か)、用途(工具用形状か)
    • 現場で集める証憑:材質説明(例:WC-Co、TiC系等)、用途資料、形状図面
    • 誤分類の典型:サーメット素材を81.13で申告すべきところ、工具用チップ形状でも81.13にしてしまう(82.09が優先しやすい)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:炭化タングステン粉を8101(タングステン)に入れる
    • なぜ起きる:商品名に「タングステン」とある/超硬用途=タングステンと短絡
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):日本税関解説で「金属炭化物はこの類に属しない」旨が明確。粉は28類、調製混合物は38類、工具用チップ等は82類など状態で分かれる。
    • 予防策:SDS・化学式・焼結/未焼結・結合材の有無・用途(工具用チップ形状か)を確認する
  2. 間違い:「粉」の号に入れたが、粒度要件(90%/1mm)を満たしていない
    • なぜ起きる:「粉末」「パウダー」という商流表示が先行
    • 正しい考え方:部注8(b)の定義で判断する。
    • 予防策:PSD(ふるい/レーザー回折など)をロット別に入手。社内質問例「90%が1mmふるい通過の試験結果はありますか?」
  3. 間違い:ジルコニウムを8109.29等に入れたが、実はHf比で8109.21側だった(または逆)
    • なぜ起きる:成分表がZr%のみで、Hf含有が管理されていない
    • 正しい考え方:HS2022はHf比(1:500未満)で6桁が分岐する。
    • 予防策:分析項目にHfを追加。社内質問例「Hfの保証値(ppm/%)は?分析方法は?」
  4. 間違い:ビスマスを一律8106.10(高純度)にしてしまう
    • なぜ起きる:「高純度」と聞くと99.99%扱いしがち
    • 正しい考え方:8106.10は99.99%超。境界は厳密。
    • 予防策:Assay(不純物一覧込み)を必須化。社内質問例「Bi純度は“>99.99%”を保証していますか?」
  5. 間違い:マグネシウム地金を8104.11(99.8%以上)に入れたが、実際は合金で8104.19側
    • なぜ起きる:Mg基材=純Mgと誤認
    • 正しい考え方:8104.11は純度条件がある。
    • 予防策:成分表でMg以外(Al/Zn等)を確認。社内質問例「これは純Mgですか、Mg合金ですか?」
  6. 間違い:「くず(scrap)」を安易に選び、実は再使用可能なオフカットだった
    • なぜ起きる:取引慣行で“スクラップ”と呼ぶ
    • 正しい考え方:部注8(a)は「そのままでは使えない」ことがポイント。
    • 予防策:形状写真・再使用可否・切断状態を確認。社内質問例「同形状で再販売/再加工用途はありますか?」
  7. 間違い:サーメット素材を81.13で申告すべきところ、工具用チップ形状でも81.13にしてしまう
    • なぜ起きる:「材質=サーメット」だけで判断
    • 正しい考え方:サーメット定義は部注4。ただし工具用のプレート・チップ等は82類(例:82.09)により具体的に規定され得る。
    • 予防策:用途・形状(工具用か)で二段階確認。図面・カタログを入手
  8. 間違い:HS6桁と日本の国内コード(統計番号9桁等)を混同
    • なぜ起きる:社内資料が9桁前提で、HS6桁に戻す工程が抜ける
    • 正しい考え方:HSは6桁まで国際共通。9桁等は国内細分。
    • 予防策:社内で「HS6桁→国内コード」の対応表を作る(付録A参照)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤ると、材料HSや工程判定(CTC/RVC等)がずれ、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(粉・合金・スクラップ)のHSがずれている
    • 「化合物(28類)」と「金属(81類)」の取り違えで、CTC条件の“章/類/項変更”判定が逆転する

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用しているHS年版が異なります。税関のPSR検索でも「協定のHS年版と違うHSで検索すると誤り得る」旨が注意喚起されています。
  • 例:RCEPは、HS2022に置換したPSRを採択し、2023年1月1日から運用とされています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定のPSRが旧版参照の場合、当局が提供する置換表(トランスポーズPSR等)やガイダンスに従い、“協定が要求するHS版”でPSR判定→**“通関は最新HS”**という二重管理が必要になることがあります。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
  • 第81類は素材が多いので、**材料HSの確定(粉/くず/合金/化合物)**と、**成分証明(Zr/Hf、純度等)**が特に重要です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割8106.00 → 8106.10 / 8106.90ビスマスを高純度(>99.99%)とその他に分割分析証明が必須化。申告コード・関税率・PSRが変わる可能性
HS2017→HS2022分割(細分化)8109.20/30/90 → 8109.21/29/31/39/91/99ジルコニウムをHf比(<1:500)で細分化成分分析(Hf)が必須。誤ると規制・統計・PSRに影響
HS2017→HS2022文言修正/細分(実質新設)8103.90 → 8103.91 / 8103.99タンタル「るつぼ」を独立コード化るつぼ取引でコードが変わる。品名・規格で判定
HS2017→HS2022削除+移動81.07(カドミウム)削除 → 8112へ包含HS2022では81.07が削除表示となり、カドミウムは8112見出しに含まれる旧コードでの社内マスタが崩れる。過去データ・PSRの読み替えが必要
HS2017→HS2022分割(細分化)8112(その他)中心 → Hf/Re/Cd等の個別号を追加8112でハフニウム・レニウム・カドミウム等が独立号で明確化「Other」一括が減り、金属同定がより重要に
HS2017→HS2022注の整理Subheading Note(74類注1準用)廃止HS2017等の号注がなくなり、形状定義は部注側で運用定義の参照先が変わる。社内マニュアル更新が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠は、**WCOのHS条文(HS2017とHS2022のChapter 81)**を見比べ、見出し・号の構造変更(例:81.07の有無、8106や8109の細分化、8103のるつぼ追加、8112の細分)を確認しました。
  • 例えば、HS2017では81.07として「Cadmium and articles thereof…」が存在しますが、HS2022では81.07が削除表示となり、8112の見出し文言にcadmiumが含まれています(条文上の位置づけが変化)。
  • 形状定義については、HS2007/2012/2017で「74類注1を準用する号注」が存在する一方、HS2022ではChapter 81側にその号注がなく、Section XVの定義(Note 9等)を参照する実務になります。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(可能な範囲で旧→新対応)
版の変遷主要な追加・削除・再編(第81類)旧コード→新コードの見え方(例)備考
HS2007→HS2012大枠の構造は同一(81.07カドミウムあり、8106は単一)8106.00(維持)、8107(維持)少なくとも章レベルでは顕著な再編なし
HS2012→HS2017大枠の構造は同一(号注あり)8106.00(維持)、8107(維持)81類の条文構造は継続
HS2017→HS20228106分割、8109細分、8103るつぼ新設、81.07削除→8112へ、8112細分、号注整理8106.00→8106.10/90、8107→(削除)→8112(cadmium)等実務マスタ更新・PSR読み替えが必要

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「炭化タングステン粉」をタングステン粉として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):日本税関解説のとおり金属炭化物は81類に属さない(化合物/混合物/工具用等へ)。
    • 起きやすい状況:商品名「タングステン粉」、用途「超硬」だけで判断
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:化学式・結合材・焼結有無・用途(工具用形状)を資料で確定
  • 事例名:ジルコニウムのHf比未確認で誤った6桁を選択
    • 誤りの内容:8109のHf比条件(<1:500)を満たす/満たさないの判断が欠落
    • 起きやすい状況:成分表にHf項目がない
    • 典型的な影響:統計誤り、FTA/規制チェックの手戻り
    • 予防策:ロット別分析、保証値の取得
  • 事例名:ビスマス高純度の「>99.99%」を「≥99.99%」と誤認
    • 誤りの内容:8106.10の閾値表現の読み違い
    • 起きやすい状況:規格書が「99.99%」表記止まり
    • 典型的な影響:コード差し戻し、追加資料要求
    • 予防策:Assayで“more than”を満たす記載を確保(不純物一覧付き)
  • 事例名:サーメット材料を81.13で申告したが、実は工具用チップで82.09
    • 誤りの内容:材質だけで判断し、より具体的な見出し(工具用)を見落とし
    • 起きやすい状況:形状が「ブランク」でも工具用途が明確
    • 典型的な影響:品目更正、関税率・規制判定の再確認
    • 予防策:用途・形状図面を必ず確認し、どの見出しがより具体か検討

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、金属素材自体はSPS中心ではありませんが、粉末はSDSや危険物/輸送要件の確認が実務上重要です(HS分類とは別管理)。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:第81類は通常対象外。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合):
      • HS分類とは別に、外為法に基づく輸出管理(リスト規制・キャッチオール等)が適用され得ます。METIのQ&Aには、ジルコニウム素材(素管等)に関する該非判断例が掲載されています。
      • 実務は「該非判定(スペックで判定)→取引審査→出荷管理」の順で設計されます(HSだけでは完結しません)。
    • その他の許認可・届出:
      • スクラップ等は、バーゼル条約関連の規制対象となる場合があり、税関も水際で取締りを実施しています(対象可否は品目・性状・汚染状況等で個別判断)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • METI(安全保障貿易管理、Q&A、改正情報)
    • 税関(バーゼル該当物品の水際取締り等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS:仕様書、成分分析、製造工程、形状写真
    • 規制:SDS、用途・需要者情報、該非判定書(必要に応じて)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 金属種(元素)/合金組成(重量%)
    • 形状(粉・くず・地金・板・線等)+製造工程(焼結のみか、圧延・引抜き等があるか)
    • 純度条件(Mg 99.8%、Bi >99.99%、Zr/Hf比など)
    • SDS、粒度分布(粉の場合)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 化合物(炭化物等)や調製品(混合物)でないか
    • 工具用形状、機械・電気部品として完成していないか(別類優先)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は金属名+形状+純度/成分比を併記(例:Zirconium unwrought, Hf <0.2%)
    • ロット別分析証明を添付できる体制
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が採用するHS年版でPSR検索(税関注意喚起あり)
    • RCEPはHS2022置換PSRが運用(2023/1/1〜)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • METI該非(HSとは別)/スクラップのバーゼル該当性など

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-27

  • WCO(HS2022 Chapter 81)
  • WCO(HS2017 Chapter 81)
  • WCO(HS2012 Chapter 81)
  • WCO(HS2007 Chapter 81)
  • WCO(HS2022 Section XV Notes:base metals/ cermets/ alloys/ waste & scrap/ powders/ shapes)
  • 日本税関:関税率表解説 第81類(81r)
  • 日本税関:品目別原産地規則検索(HS年版の注意)
  • 外務省:RCEP「HS2022に従った品目別規則(PSR)の採択」
  • 日本税関:RCEP協定のHS2022版PSR(案内)
  • 経済産業省(METI):安全保障貿易管理Q&A(素材:ジルコニウム素管等の例)
  • 経済産業省(METI):安全保障貿易管理(English/改正情報等)
  • 日本税関:バーゼル条約該当物品の水際取締り

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第80類:すず及びその製品(Tin and articles thereof)

【用語の統一(本資料内)】

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • ※第80類は**「類注(Chapter Notes)」がなく、主に「号注(Subheading Notes)」で定義が置かれています**。

【入力(ユーザーが与える情報:このブロックはそのまま残し、{ }を埋めてください)】

  • 対象:HS2022 第{CHAPTER_NO}類(Chapter {CHAPTER_NO})
  • 類名:{CHAPTER_TITLE_JP}(英語:{CHAPTER_TITLE_EN})
  • 対象国・実務前提:{COUNTRY}(例:日本)/{IMPORT_EXPORT}(輸入/輸出/両方)
  • 主な想定品目・用途(任意):{PRODUCTS}
  • 参照するFTA/EPA(任意):{AGREEMENTS}(例:日EU EPA、CPTPP、RCEP…)
  • 免責事項:このプロンプト末尾に固定文として既に貼付済み(変更しない)

(上記{ }の充足)

  • 対象:HS2022 第{CHAPTER_NO}類 → 第80類(Chapter 80)
  • 類名:{CHAPTER_TITLE_JP} → すず及びその製品(英語:Tin and articles thereof
  • 対象国・実務前提:{COUNTRY}/{IMPORT_EXPORT} → 日本/輸入・輸出(両方)
  • 主な想定品目・用途:{PRODUCTS} → 錫インゴット、錫合金、錫くず、錫線・棒、錫箔/板、錫粉、錫製容器・食卓用品、はんだ用材料等
  • 参照するFTA/EPA:{AGREEMENTS} → CPTPP、RCEP、日EU・EPA(例)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 未加工の錫(インゴット等):8001(錫(合金を除く)/錫合金)
    • 錫くず(スクラップ):8002
    • 錫の棒・形材・線:8003
    • 錫の板・シート・ストリップ、錫箔、錫粉/フレーク、錫の管・管継手、その他の錫製品:8007
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉄鋼に錫めっきした板(いわゆるブリキ):通常は**第72類(鉄鋼製のめっき・被覆板等)**側で検討(例:7210)
    • 錫のスラグ・灰・残留物(製錬残さ等):第26類 2620(残留物)
    • 溶剤等と混合済みの“調製された”金属粉塗料等:第32類(調製塗料等)へ(部注の除外)
    • フラックスで被覆したはんだ棒・はんだ線等:第83類 8311(被覆/中空の溶接・ろう付け・はんだ付け用品)
    • 錫の化合物(酸化物・塩・有機錫等):第28〜29類(化学品)側(第80類は金属とその製品が中心)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「錫(合金を除く)」か「錫合金」か(Sn≥99%+Bi/Cu閾値、または他元素合計>1%等)→ 8001.10 vs 8001.20
    2. “くず”か“再溶融したインゴット(塊)”か → 8002 か 8001 か
    3. 単なる錫製品か、他章の「特定用途・特定機能の物品」か(部注で機械/電気等へ飛ぶ)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 8007(その他の錫製品)に何でも入れてしまう(実際は83類・84/85類・72類等へ分岐するケースがある)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し・注に従う):第80類は号注で「錫(合金除く)」「錫合金」の定義が置かれており、まずここで決めます。
    • GIR3(混合物・複合品):錫めっき鋼板のように“主体が鉄鋼”なら第72類へ、など「材質の本質」を見ます(複合品ルールと各部注の除外も併用)。
    • GIR6(6桁の決定):8001は 8001.10/8001.20 に分かれるため、**成分データ(分析値)**が必要になります。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(錫か、錫合金か、錫“めっき”された鉄鋼か)
    • 形状・加工度(塊/線/粉/箔/容器など)
    • 状態(スクラップか、再溶融して塊になっているか)
    • 機能・用途(機械・電気の“部品”として特定されるか)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:主材が錫(Sn)か
    • いいえ → 第72類(鉄鋼)や第74類(銅)等、主材の章へ(例:ブリキは第72類側が典型)
  • Step2:錫が主材 → 未加工(塊)/くず/棒線/その他製品のどれか?
    • 塊(未加工)→ 8001
    • くず → 8002(ただし“再溶融インゴット”は8001)
    • 棒・形材・線 → 8003
    • それ以外の錫製品 → 8007
  • Step3:8001の場合 → 錫(合金を除く)か錫合金かを号注で判定
    • Sn≥99%かつBi<0.1%、Cu<0.4% → 8001.10
    • それ以外(錫優勢で他元素合計>1%等)→ 8001.20
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 錫製“容器/食卓用品”(8007) vs 特定機能を持つ機械・電気機器(第84/85類)
    • 錫粉(8007) vs 調製塗料等(第32類:部注で除外)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第80類は4桁見出しが少ないため全列挙します。なおWCO条文上、**[80.04] [80.05] [80.06] は角括弧付き(未使用/留保の見出し)**として掲載されています。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8001すずの塊(未加工錫)錫インゴット、錫地金、錫合金インゴット8001.10/8001.20の分岐は号注の成分定義で判定(Sn≥99%等)
8002すずのくず錫スクラップ、錫屑、回収錫**スラグ・灰等(26.20)**は除外/再溶融して塊状なら8001へ
8003すずの棒、形材及び線錫棒、錫線、錫形材、(フラックス無しの)はんだ棒フラックス被覆は8311へ除外。鋳造して引抜き等の素材は8001側になり得る点に注意
8007その他のすず製品錫板/箔、錫粉・フレーク、錫製容器、錫管・継手、ピューター食卓用品 等第80類の“寄せ集め”だが、83類(一般用部品等)や84/85類(機械・電気)に当たると除外。また粉末は部注の定義参照

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 第80類でHS6桁の“明確な分岐”があるのは主に 8001.10 と 8001.20 です。
    • 8001.10(錫:合金除く):Snが重量で少なくとも99%で、BiとCuが各上限未満(Bi<0.1%、Cu<0.4%)。
    • 8001.20(錫合金):錫が他元素より重量で最大であり、(i)他元素合計>1% または (ii)BiまたはCuが上限以上。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8001.10(錫:合金除く) vs 8001.20(錫合金)
      • どこで分かれるか:成分(Sn比率、Bi/Cu、他元素合計)
      • 判断に必要な情報:成分分析(試験成績表)、材料規格、MSDS(合金組成欄)
      • 典型的な誤り:「Snが99%あるから無条件で8001.10」として、Bi/Cuが閾値以上を見落とす
    2. 8002(くず) vs 8001(塊)
      • どこで分かれるか:“くず”の状態か、再溶融してインゴット等になっているか
      • 判断に必要な情報:写真、梱包形態、製造工程(回収→再溶融の有無)
      • 典型的な誤り:スクラップを溶かしてインゴット化したのに8002のまま申告

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注1(除外):調製塗料等、機械・電気、車両等は第15部から除外され得ます。
    • 第15部注5(合金の分類):卑金属合金は基本的に“最も重量が大きい金属”の合金として扱います。
    • 第15部注8(くず・粉末の定義):粉末は「1mmふるいを90%以上通過」等の定義があります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 錫粉でも、溶剤等と混合済みの調製品なら第32類(部注で除外される側)になり得ます。
    • “錫を含む合金”でも、錫が最も重いなら錫合金として第80類で検討します(ただし第80類の号注条件も確認)。
    • “くず”は単なる端材だけでなく、破損・切断等で本来用途に使えない金属製品も含み得ます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 機械・電気機器の部分品(Section XVI)に該当 → 第84/85類へ(第15部から除外)
    • 調製塗料・インキ等(第32類) → 第15部から除外

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第80類は、**類注(Chapter Notes)がなく、号注(Subheading Notes)**で「錫(合金除く)」「錫合金」の定義を置いています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「錫(合金を除く)」=Sn≥99% かつ Bi<0.1%、Cu<0.4%
    • 「錫合金」=錫が他元素より重量で最大、かつ(他元素合計>1%)または(Bi/Cuが閾値以上)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 号注自体は“除外先”を列挙する形式ではないため、除外は**部注(第15部注1等)**と各項解説で判断します。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第80類は“類注”ではなく“号注”中心なので、ここでは**号注(Subheading Notes)**の影響として整理します。

  • 影響ポイント1:8001.10 ⇄ 8001.20(純錫か錫合金か)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • Sn%、Bi%、Cu%、その他元素合計%(分析値)
    • 現場で集める証憑:
      • 成分分析表(第三者試験でも可)、規格書、SDS(組成)、製造仕様
    • 誤分類の典型:
      • Snが高いだけで8001.10にして、Bi/Cu閾値や他元素合計>1%を見落とす
  • 影響ポイント2:8002(くず)⇄ 8001(塊)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 形状(スクラップか、インゴット等の塊か)、再溶融の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 写真、工程図(回収→再溶融→鋳造の有無)、梱包形態
    • 誤分類の典型:
      • 「原料はスクラップ由来」だけで8002にし、実際は再溶融インゴットで8001相当

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:錫めっき鋼板(ブリキ)を第80類に入れる
    • なぜ起きる:「錫だから第80類」と短絡しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):主材が鉄鋼のフラットロール品は第72類(例:7210)側で検討
    • 予防策:基材が何か(鉄鋼/錫)を仕様書で確認、断面写真や材質証明を入手
  2. 間違い:Snが99%あるだけで8001.10と決める
    • なぜ起きる:閾値がSnだけだと誤解
    • 正しい考え方:Bi/Cuの上限や、他元素合計>1%等も要件
    • 予防策:分析表でSn/Bi/Cu/他元素合計を必須項目化
  3. 間違い:再溶融した錫インゴットを8002(くず)で申告
    • なぜ起きる:原料がスクラップ由来だと“くず”と思い込み
    • 正しい考え方:再溶融しインゴット等の形状になれば8001側になり得る
    • 予防策:工程(回収→溶解→鋳造)をインボイス説明に反映
  4. 間違い:フラックス被覆のはんだ棒を8003に入れる
    • なぜ起きる:「はんだ=錫」として材質で判断
    • 正しい考え方:フラックス被覆等は83類(8311)へ除外
    • 予防策:被覆の有無(断面/仕様)を確認、品名に「flux cored/coated」等がないかチェック
  5. 間違い:錫粉を“何でも”8007にして、調製品を見落とす
    • なぜ起きる:粉=金属粉と思い込み
    • 正しい考え方:溶剤・樹脂等と混合した調製品は第32類等へ(第15部除外)
    • 予防策:SDSの組成欄で“樹脂/溶剤/添加剤”有無を確認
  6. 間違い:錫製容器でも、機械装置付き(加熱/冷却等)を8007に入れる
    • なぜ起きる:容器=8007と機能評価を省略
    • 正しい考え方:機械装置の有無で第84類等へ分岐し得る(部注で飛ぶ)
    • 予防策:設備仕様(バルブ/熱交換/駆動部)を図面で確認
  7. 間違い:“錫合金”のつもりが、実は錫が優勢でない
    • なぜ起きる:商業名(ピューター等)だけで判断
    • 正しい考え方:合金は“どの金属が重量で優勢か”が基準
    • 予防策:必ず元素%で確認(社内で材料表を回収)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HSを誤ると、適用すべき品目別規則そのものが変わり、原産性判断(CTC/RVC/加工工程)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSだけ合っていても、非原産材料のHSが誤っているとCTC判定がズレる
    • 8007(その他)に“まとめ分類”すると、PSRの条件(CTH/CTSH等)が想定外になる可能性

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定・運用資料によって、PSRが参照するHS版が異なる場合があります。実務では税関の原産地規則ポータル等で、協定別に確認するのが安全です。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • まず“協定本文/附属書上のHS番号(旧版)”でPSRを特定し、必要なら相関表でHS2022番号に読み替える
    • 結論に不安がある場合は、税関相談(原産地部門)や通関業者へ照会

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・制度(第三者証明/自己申告)ごとに異なるため運用資料で確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言/構成の整理(注の削除)第80類 注(形状定義等)HS2017では第80類注に棒・線・板・管等の定義があったが、HS2022条文(第80類)では号注と見出しのみの構成となっている「形状の定義」を参照する場合、部注・解説(税関解説等)で補う運用が必要
HS2017→HS2022変更なし(HS6桁の範囲変更は確認されていない)8001/8002/8003/8007WCO相関表(Table I)はHS2017→HS2022で“変更/新設”のある号を列挙する形式であり、そこに第80類の号が掲載されていないHS6桁レベルでは大きな付番変更は起きにくい(ただし相関表はガイドで法的地位なし)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • WCO HS2017の第80類には、注(Note)として棒・線・板・管等の定義が掲載されています。
  • WCO HS2022の第80類は、号注(Subheading Notes:錫/錫合金の定義)と見出し列挙([80.04]等を含む)で構成され、HS2017にあった注が見当たりません。
  • 一方で、日本税関の「関税率表解説」では、第80類の各項解説内で第15部注(粉末、棒・線、板・箔、管等の定義)を参照して理解する旨が整理されています。
  • 以上より、「HS2022で第80類の注が削除され、形状定義は部注/解説等の参照で補う」点が実務上の主要差分と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

ここは“HSの版改正で、章の見出し構造がどう変わったか”を俯瞰する目的です。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)根拠
HS2002→HS200780.04〜80.06が削除旧:80.04〜80.06(錫箔・錫管等に相当する見出しが存在していた版がある)→ HS2007以降は80.07(8007)に集約され、80.04〜80.06は欠番化HS2007改正資料で「Headings 80.04 to 80.06. Delete these headings」と明記
HS2007→HS2022欠番の維持[80.04][80.05][80.06]が角括弧付きで残り、実体は8007に集約HS2022条文の見出し列挙で角括弧付き表示

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“純錫”として申告したが、Bi/Cuが閾値超過
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):号注の定義(8001.10要件)不適合
    • 起きやすい状況:回収材由来の地金で不純物が上下する
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、分析要求による遅延(一般論)
    • 予防策:ロットごとの分析表添付、インボイスに成分記載
  • 事例名:スクラップ(8002)で申告したが実体は再溶融インゴット(8001)
    • 誤りの内容:部注8(くず)定義と、解説の除外(再溶融塊は8001)を見落とし
    • 起きやすい状況:「原料=スクラップ」だけが社内伝言で残る
    • 影響:品目更正、価格・統計影響、審査長期化(一般論)
    • 予防策:工程証明(溶解の有無)と写真を事前準備
  • 事例名:フラックス被覆はんだ棒を8003に誤分類
    • 誤りの内容:8003解説の除外(83.11)を無視
    • 起きやすい状況:「はんだ=錫棒」という品名だけで判断
    • 影響:税番修正、規制や統計コードの修正(一般論)
    • 予防策:被覆構造・材料表の確認、SDS添付

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 廃棄物(スクラップ等)としての輸出入は、バーゼル法(特定有害廃棄物等)に関係する可能性があります。該当性がある場合、経産省の輸出(承認)手続や環境省の案内を確認します。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、金属の錫そのものでは該当しにくい(ただし用途や付着物で別途確認)
    • ワシントン条約(CITES)等:通常該当しにくい
    • 安全保障貿易管理:個別品の仕様・用途により確認(本資料では一般論のみ)
    • その他の許認可・届出:廃棄物該当性が鍵
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(バーゼル法関連:輸出入管理)
    • 環境省(廃棄物等の輸出入手続案内)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 貨物の性状説明(写真、成分/汚れ/付着物、由来工程)
    • 契約書・用途説明、運搬/処理計画(廃棄物該当の場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質(錫/合金/めっき)、成分表(Sn/Bi/Cu等)、形状寸法、用途、製造工程
    • 写真(全体/断面/被覆の有無)、SDS、規格書
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 8001の号注要件(Sn・Bi・Cu・他元素合計)
    • 8002の“くず”定義と除外(再溶融塊、残留物)
    • 83類/84-85類/72類などへの境界再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に材質・形状・被覆有無を反映(例:Tin wire / Tin ingot / Flux coated solder wire 等)
    • 分析表・写真を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 税関PSR検索で当該HS(4桁または6桁)を確認
    • BOM・原価・工程の保存(協定別に運用確認)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • スクラップ等はバーゼル法該当性を一次判定(経産省・環境省情報で確認)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 80(Tin and articles thereof) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2022 Section XV Notes(Base metals and articles of base metal) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables HS2017–HS2022(説明ページ・Table I) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2017 Chapter 80(Tin and articles thereof) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2007改正資料(80.04〜80.06削除の根拠) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説 第80類(80r) (参照日:2026-02-27)
    • 税関:関税率表の解釈に関する通則(GIR) (参照日:2026-02-27)
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索/原産地規則ポータル、原産地規則マニュアル (参照日:2026-02-27)
  • 規制(廃棄物等)
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出入管理/輸出承認手続 (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:廃棄物等の輸出入手続 (参照日:2026-02-27)
  • 境界説明補助(例:ブリキ=鉄鋼のすずめっき板)
    • UNSD(7210:tin-plated flat-rolled steelの区分情報) (参照日:2026-02-27)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第79類:亜鉛及びその製品(Zinc and articles thereof)

  • 用語:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 亜鉛の塊(インゴット、スラブ、ペレット等)=亜鉛地金(7901)
    • 亜鉛合金の塊(ダイカスト用合金地金など)(7901.20)
    • 亜鉛くず(リサイクル原料としての金属スクラップ)(7902)
    • 亜鉛のダスト/粉/フレーク(7903。※「ダスト」は定義あり)(7903)
    • 亜鉛の棒・形材・線(7904)、亜鉛の板・シート・帯・箔(7905)
    • その他の亜鉛製品(配管・継手・簡単な成形品などがここに来やすい)(7907)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 亜鉛鉱・精鉱:第26類(例:2608)
    • 亜鉛酸化物(ZnO)などの化学品:第28類(例:2817)※化学組成で分類
    • 亜鉛粉を「塗料・インキ」等に調製したもの:第32類(「金属粉・フレーク基材の調製塗料等」は第15部から除外)
    • 亜鉛めっき鋼板(いわゆるトタン板等):基材が鉄鋼なら第72類/第73類側(“亜鉛板”と誤認しやすい)
    • 亜鉛めっき工程等で出るスラグ・灰・残留物(ドロス等):第26類(例:2620)へ行きやすい
    • 機械・電気機器の部品(機能で分類されるもの):第16部(84/85類)等へ(第15部の除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「亜鉛(金属)」なのか「亜鉛化合物/調製品」なのか(第79類か第28/32類か)
    2. くず(7902)か、灰/スラグ等の残留物(例:2620)か(廃棄物・副産物は高頻度で揉めます)
    3. 合金か否か/粉末かダストか(Zn%や他元素合計、粒度・製法で分岐)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 亜鉛くずの輸出入で「バーゼル法(特定有害廃棄物等)」該当性が絡むと、許認可・遅延リスクが跳ね上がります(分類+規制の二重チェックが必要)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
    • GIR1:まず「見出し(項)の文言」と「部注/類注(Notes)」で決めます。第79類は品目数が少ないので、最初の段階でかなり絞れます。
    • GIR6:6桁(号)の分岐は、各号の文言と注(ここでは第79類の号注)で判断します。
    • 合金・複合品の扱いは、第15部注(合金の分類・複合品の分類)が実務で効きます(「亜鉛合金」判定はここを外すと崩れます)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 材質・組成:Zn含有率、他元素の合計、主成分が何か(合金判定)
    • 状態(加工度):地金(unwrought)か、半製品(棒・板等)か、完成品(その他の製品)か
    • 粉体の状態:ダスト(定義あり)か、粉/フレークか、塗料等に「調製」されているか
    • スクラップ/残渣:金属スクラップか、灰・スラグ・スラッジ等の残留物か

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「亜鉛(Zn)の金属・合金」か?
    • 化学品(酸化物、塩類)なら第28類などへ。
  • Step2:第15部の除外(例:調製塗料、機械・電気製品など)に当たらないか?
  • Step3:状態で大枠を決める
    • 地金(塊)→ 7901
    • くず → 7902
    • ダスト/粉/フレーク → 7903
    • 棒・形材・線 → 7904(形状定義は部注)
    • 板・シート・帯・箔 → 7905(形状定義は部注)
    • 上記以外の亜鉛製品 → 7907(配管・継手・単純な成形品が来やすい)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第79類(亜鉛) vs 第72類(鉄鋼):亜鉛めっき鋼板は「亜鉛」ではなく「鉄鋼」を主として分類するのが典型。
    • 7902(亜鉛くず) vs 2620(灰・残留物):めっき工程のドロス等は「くず」ではなく残留物側に寄りやすい。
    • 7903(粉) vs 第32類(塗料等):粉末がバインダー等と混ざり調製品になっていると第32類へ。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第79類は4桁見出しが少ないため、全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7901亜鉛の塊(地金)亜鉛インゴット、ビレット、スラブ、ペレット、亜鉛合金インゴット亜鉛(合金除く)はZn比率の定義あり。99.99%で6桁分岐。粉・ダストは7903。
7902亜鉛のくず亜鉛スクラップ(リサイクル原料)めっき工程のスラグ/灰/スラッジ等は2620へ行きやすい。くずを再溶解して鋳造した塊は7901へ。
7903亜鉛のダスト、粉及びフレーク亜鉛ダスト、亜鉛粉末、亜鉛フレーク「亜鉛ダスト」は粒度・製法・Zn%の定義あり。塗料等に調製されたものは第32類へ。
7904亜鉛の棒、形材及び線亜鉛棒、亜鉛線、亜鉛押出形材「棒/形材/線」の定義は第15部注(断面形状、厚み/幅比、コイルか等)で判断。部品化していれば7907へ。
7905亜鉛の板、シート、帯及び箔亜鉛板(屋根材用等)、亜鉛箔「板/シート/帯/箔」も第15部注で定義。加工により“物品の性格”が出ると7907等へ。
7907その他の亜鉛製品亜鉛製の管・継手、亜鉛製の単純成形品、亜鉛製アノード等他章でより具体的に規定される物品(例:第82/83類)や機械部品(第84/85類)等は除外され得る(第15部注)。

※HS上、[79.06]は角括弧で表示される「未使用(予約)」見出しです。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 7901.11 vs 7901.12:Zn 99.99%以上かどうか(純度で分岐)
    • 7901.1x(亜鉛:合金除く) vs 7901.20(亜鉛合金)
      • 合金除く亜鉛=Znが全重量の97.5%以上(定義)
      • 亜鉛合金=Znが各元素より多く、かつ他元素合計が2.5%超(定義)
    • 7903.10(亜鉛ダスト) vs 7903.90(その他:粉/フレーク等):亜鉛ダストは「亜鉛蒸気の凝結由来」「球状」「63µmふるい通過率80%以上」「金属亜鉛85%以上」などの要件で判定
    • 7902(くず) vs 2620(灰/残留物):第15部注の「くず・スクラップ」概念+解説の除外例で判断(工程残渣は要注意)
    • 7904/7905(半製品) vs 7907(その他の製品):断面形状・厚み/幅比・コイル形状などの“定義”と、最終用途で“物品の性格”が出ているかで判断
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
      1. 7901.11(Zn 99.99%以上) vs 7901.12(未満)
      • どこで分かれるか:検査成績書(COA)のZn純度(99.99%ライン)
      • 判断に必要な情報:COA、ロット番号、規格(例:SHG等)、用途(ダイカスト用かめっき用か)
      • 典型的な誤り:「高純度」の言葉だけで7901.11に寄せる(実測値が必要)
      1. 7901.12(亜鉛:合金除く) vs 7901.20(亜鉛合金)
      • どこで分かれるか:他元素合計が2.5%を超えるか、Znが最大元素か
      • 判断に必要な情報:全元素分析(Zn、Al、Cu、Mg、Pb等)、規格票(JIS/ASTM等)
      • 典型的な誤り:「合金」の商品名だけで7901.20にする(定義は成分で決まる)
      1. 7903.10(亜鉛ダスト) vs 7903.90(粉/フレーク)
      • どこで分かれるか:製法(蒸気凝結か)、粒子形状(球状か)、粒度(63µm)、金属Zn%(85%以上)
      • 判断に必要な情報:製造工程説明、粒度分布(ふるい/レーザー)、SEM写真(あると強い)、COA
      • 典型的な誤り:「zinc dust」と称する“煙道ダスト(残渣)”を7903にしてしまう(2620側の可能性)
      1. 7902(くず) vs 7901(再溶解して鋳造した塊)
      • どこで分かれるか:提示形状(くずのままか、溶かしてインゴット化しているか)
      • 判断に必要な情報:加工工程(再溶解の有無)、写真、取引書類(インゴット売買かスクラップか)
      • 典型的な誤り:リサイクル由来だからといって一律7902にする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部は、塗料等に調製された金属粉、機械・電気製品、貴金属製品などを除外します。
    • **合金は「どの金属が重量で優勢か」**で所属が決まるのが原則(亜鉛合金かどうかの大前提)。
    • くず・スクラップ、粉末の定義が部注で与えられています(粉末=1mmふるい通過90%以上等)。
    • 第74〜76類・第78〜81類(亜鉛を含む)向けに、棒・形材・線・板・管等の形状定義が部注で共通化されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:亜鉛粉末を樹脂や溶剤と混ぜた防錆塗料原料は、第15部の除外により第32類側が本線になります(“粉末だから7903”ではない)。
    • 例:亜鉛の押出形材でも、断面や寸法が「棒/形材」の定義に当てはまるかで 7904 を支えます(定義は部注)。
    • 例:**複合品(亜鉛+他の卑金属)**は、原則として重量優勢金属で分類(ただし、見出しが別途要求する場合は例外)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 調製塗料・インキ等(第32類)へ
    • 機械・電気製品(第16部:84/85類)へ
    • 亜鉛めっき工程の残渣(第26類:2620等)へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第79類は「類注(Chapter Notes)」は実質なく、主に「号注(Subheading Notes)」で定義が置かれています。
    • 号注で重要なのは「亜鉛(合金除く)」「亜鉛合金」「亜鉛ダスト」の定義です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 亜鉛(合金を除く。):Znが全重量の97.5%以上の金属
    • 亜鉛合金:Znが各元素より重量で多く、かつ他元素合計が全重量の2.5%超
    • 亜鉛のダスト:亜鉛蒸気の凝結由来で球状粒子、63µmふるい通過率80%以上、金属Zn 85%以上(要旨)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 亜鉛粉等を塗料等に「調製」したもの:第32類
    • 亜鉛のスラグ/灰/残留物(例:めっきの残渣):第26類(例:2620)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第79類は「類注」よりも**号注(Subheading Notes)**が実務分岐の中心です。

  • 影響ポイント1:「亜鉛(合金除く)」か「亜鉛合金」かで 7901.1x / 7901.20 が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):Zn%と他元素の合計(2.5%基準)、Znが最大元素か
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
      • COA(全元素分析)
      • 規格票(JIS/ASTM/社内規格)
      • 用途(めっき用、ダイカスト用、化学用途など)
    • 誤分類の典型:
      • 商品名に「合金」とあるだけで7901.20にしてしまう(実際は他元素2.5%以下で“合金”定義外の可能性)
  • 影響ポイント2:「亜鉛ダスト(7903.10)」の要件を満たすか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):製法(蒸気凝結)、粒子形状(球状)、粒度(63µm基準)、金属Zn%(85%以上)
    • 現場で集める証憑:
      • 製造工程説明(どの工程で発生/製造したか)
      • 粒度分布(ふるい/レーザー)
      • COA(金属Zn%)
    • 誤分類の典型:
      • めっき工程の煙道ダスト等(残渣)を「ダスト」と称して7903に入れる(2620側の可能性)
  • 影響ポイント3:7904/7905(半製品)と7907(その他製品)の線引き
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):断面形状・コイルか否か・厚み/幅比(棒/板の定義)+“物品としての性格”が出ているか
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(寸法・断面)
      • 仕様書(加工内容:穴あけ、ねじ切り、フランジ等)
      • 写真(外観で「部品化」していないか)
    • 誤分類の典型:
      • 端部加工済み・取付穴付きの部材を「板」扱いで7905にしてしまう(実態は7907寄り)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:「亜鉛めっき鋼板」を“亜鉛板(7905)”として申告
    • なぜ起きる:商流で「トタン」「亜鉛板」と呼ばれることがある
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):基材が鉄鋼なら第72類/第73類側が本線(亜鉛は被覆)。第79類は亜鉛そのものの製品。
    • 予防策:素材証明(材質:steelかzincか)、断面写真、仕様書で基材を確認
  2. 間違い:亜鉛酸化物(ZnO)等を第79類に入れる
    • なぜ起きる:「亜鉛製品」という日本語の印象
    • 正しい考え方:化学品は第28類等(元素ではなく化合物として分類)
    • 予防策:SDS/成分(ZnO等)、CAS No.、化学式を確認
  3. 間違い:亜鉛粉末入りの調製塗料・ペーストを7903に入れる
    • なぜ起きる:「粉末が主成分」だけで判断
    • 正しい考え方:第15部は「金属粉/フレーク基材の調製塗料等」を除外し、第32類に送る設計です。
    • 予防策:混合有無(樹脂・溶剤・添加剤)、製品形態(ペースト/分散液)を確認。配合表を入手
  4. 間違い:亜鉛くず(7902)と、灰/スラグ等(2620)を混同
    • なぜ起きる:工場から出る「廃棄物」を一括でスクラップ扱いする
    • 正しい考え方:解説上、めっき等の際に生じるスラグ・灰・残留物は7902から除外され得ます。
    • 予防策:発生工程(溶融めっき槽、電気めっきスラッジ等)、外観(灰状/スラッジ状)、金属回収可能性、分析値を確認
  5. 間違い:再溶解して鋳造したインゴットを“くず(7902)”のまま申告
    • なぜ起きる:原料がスクラップ由来
    • 正しい考え方:インゴット等の塊に鋳造されていれば7901側が問題になります。
    • 予防策:提示形状(塊か、くずか)、加工工程(溶解・鋳造の有無)を確認
  6. 間違い:「亜鉛合金」を成分確認なしで7901.20に決め打ち
    • なぜ起きる:商品名・用途(ダイカスト用)だけで判断
    • 正しい考え方:亜鉛合金かどうかは、Znが最大元素+他元素合計2.5%超の要件で判断します。
    • 予防策:COA(全元素)を必須化(社内手順)
  7. 間違い:“亜鉛ダスト”を名乗る粉体を一律7903.10にする
    • なぜ起きる:名称に引っ張られる
    • 正しい考え方:7903.10の「ダスト」は粒度・製法・Zn%の要件があります。
    • 予防策:粒度分布(63µm)、製法説明、金属Zn%の提出を求める
  8. 間違い:亜鉛製部品を、形材/板(7904/7905)として処理
    • なぜ起きる:外観が棒や板に見える
    • 正しい考え方:加工により「部品としての性格」が出ている場合、7907側へ寄るのが一般的です(他章のより具体的規定があればそちら)。
    • 予防策:加工内容(穴・ねじ・フランジ等)を図面で確認し、用途(機械部品か単体物品か)をヒアリング

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 例:最終製品を7907としてPSRを見たつもりが、実態は鉄鋼製品(第72/73類)だった、などは“根本からズレます”。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • 原材料(例:亜鉛地金7901、亜鉛粉7903、亜鉛酸化物2817)のHSが混ざると、CTC/RVCの計算前提が崩れます。
    • 税関のPSR検索(品目別原産地規則検索)を使うと、協定別の規則参照がスムーズです。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • 実務では、協定本文/附属書がHS2012/HS2017ベースで運用されていることがあります(協定ごとに確認が必要)。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • HS2022で注の位置が変わる(例:形状定義が部注へ移動)と、参照先条文がズレて見えることがあります。HS版の取り違えを避けます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • WCO相関表や税関のHS2022改正資料を使い、旧HS→新HSの対応関係を確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 亜鉛製品は材料(亜鉛地金・合金地金・粉体)起点で整理しやすい一方、他金属や樹脂との複合化で判定が難しくなります。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 税関の原産地規則マニュアル等に沿って、証憑を体系的に保存(BOM、製造工程、仕入書、COA等)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正(注の再配置)Chapter 79 Note / Section XV Note 9棒・形材・線・板・管等の形状定義が、類注(Chapter Note)から部注(Section XV Note 9)へ移動。HS2022の第79類本文は主に号注のみ。実務で参照すべき注の位置が変わる(教育・手順書の更新が必要)
HS2017→HS2022変更なし(見出し構成)7901〜7907([7906]除く)6桁見出しの並びは基本的に同じ。79.06は引き続き予約扱い。コード体系自体は安定。誤りは主に“注の参照ミス”で発生

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCO HS2017 第79類条文(第79類の注に形状定義+号注が存在)
    • WCO HS2022 第79類条文(第79類は号注中心で、形状定義は載らない)
    • WCO HS2022 第15部(Section XV)部注(Note 9に形状定義が整理)
    • WCO 相関表ページ/税関のHS2022改正案内(相関表の位置づけ確認)
  • “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”
    • HS2017の第79類では、**「Bars and rods」「Profiles」「Wire」「Plates…」「Tubes and pipes」**等の定義が「Chapter 79 Note」にまとまっていました。
    • HS2022では、これらの定義が「Section XV Note 9」に移り、第79類自体は号注(亜鉛/合金/ダストの定義)と見出し一覧が中心になっています。
    • したがって、コードの大枠は変わらない一方で、判断の根拠条文(参照先)が変わった点が実務上の変更点です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
  • 可能な範囲で「旧コード→新コード(または行き先不明)」の対応を示す
版間追加/削除/再編旧コード新コードコメント
HS2007→HS2012実質変更なし7901〜7907([7906]含む)同左見出し構成は維持。
HS2012→HS2017実質変更なし同左同左見出し構成は維持。
HS2017→HS2022見出しは維持/注の移動同左同左形状定義が部注へ移動(7章参照)。

※第79類は、コード自体の改廃が少ない一方、注の参照位置が変わる点に注意が必要です。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「亜鉛スクラップ」で申告したが、実はめっき残渣
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):7902の除外(灰・残留物等)に該当し得る
    • 起きやすい状況:工場で「亜鉛系の廃棄物」を一括でスクラップと呼ぶ
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、輸出入許可の追加確認
    • 予防策:発生工程と外観、分析、写真を揃え、必要なら税関相談
  • 事例名:「亜鉛粉末」で申告したが、実は調製塗料(ペースト)
    • 誤りの内容:第15部除外(調製塗料)を見落とし
    • 起きやすい状況:「Zinc-rich」等の品名に引っ張られる
    • 典型的な影響:分類差替え、税率・規制・原産地判断のやり直し
    • 予防策:SDS・配合表(バインダー/溶剤/添加剤)を取得し、調製品か確認
  • 事例名:「亜鉛板(7905)」で申告したが、実は亜鉛めっき鋼板
    • 誤りの内容:材質(基材)確認不足
    • 起きやすい状況:「トタン」「亜鉛板」の慣用呼称
    • 典型的な影響:HS変更、税率変更、統計誤り
    • 予防策:ミルシート、断面写真、材質表示を入手
  • 事例名:合金地金(7901.20)で申告したが、実は部品(7907)
    • 誤りの内容:加工度(地金 vs 物品)を誤認
    • 起きやすい状況:ダイカスト成形の「形だけ部品」に見える/見えない問題
    • 典型的な影響:分類差替え、他法令確認(用途規制等)の追加対応
    • 予防策:形状・機能・取付け方法が分かる図面/写真を提出できるようにする

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • **廃棄物・スクラップ(7902等)**は、貨物の性状次第でバーゼル法(特定有害廃棄物等)や廃棄物処理法の論点が出ます。
    • **輸出管理(安全保障貿易管理)**は、最終用途・需要者によってはキャッチオール管理の観点で確認が必要です(一般論)。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、金属亜鉛そのものは該当が限定的(ただし用途・混合物は別途)
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:通常なし
    • 安全保障貿易管理:用途・需要者で確認(一般論)
    • その他の許認可・届出:廃棄物・スクラップはバーゼル関連手続の可能性
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省:バーゼル法関連(輸出入手続)
    • 環境省:廃棄物等の越境移動規制関連
    • 税関:輸入関係他法令一覧、相談窓口
  • 実務での準備物(一般論):
    • くず・廃棄物該当性の判断資料(発生工程、分析結果、写真、契約書、処理予定)
    • 必要に応じて承認申請書類(所管省庁の様式・手引きに従う)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品仕様書(材質、用途、加工度)
    • COA(Zn%、他元素、金属Zn%)
    • 粒度分布(粉・ダストの場合)
    • 写真(外観、梱包、断面)
    • 工程図(特にスクラップ/残渣、ダストの発生工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第15部注:除外(調製塗料、機械等)、合金、くず・粉の定義
    • 第79類号注:亜鉛(合金除く)/合金/ダストの定義
    • 7902 vs 2620、7903 vs 第32類など境界の再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス:英語品名(unwrought zinc / zinc waste and scrap / zinc dust 等)と状態が一致
    • 補足資料:COA、写真、工程説明を添付(税関照会の予防)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • PSR検索(協定・HS6桁)
    • BOM、非原産材料HS、工程、RVC計算の前提(必要な場合)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • スクラップ/廃棄物:バーゼル法等の該当性を所管省庁手引きで確認
    • 輸出管理:用途・需要者(一般論)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 79 “Zinc and articles thereof” (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2022 Section XV Notes(特にNote 8, 9) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2017 Chapter 79(旧版比較用) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2012 Chapter 79(旧版比較用) (参照日:2026-02-27)
    • WCO HS2007 Chapter 79(旧版比較用) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022(相関表の位置づけ) (参照日:2026-02-27)
    • WCO GIR(General Rules) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第79類)79r.pdf (参照日:2026-02-27)
    • 関税率表の解釈に関する通則(日本税関) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022改正について(税関) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022改正概要資料(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 日本の関税率表(参照用・2026/1/1版の入口) (参照日:2026-02-27)
    • 輸入関係他法令一覧(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 事前教示回答(品目分類)検索(税関) (参照日:2026-02-27)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • EPA・原産地規則ポータル(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 我が国の原産地規則(税関資料) (参照日:2026-02-27)
    • EPA原産地規則マニュアル(税関) (参照日:2026-02-27)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索画面 (参照日:2026-02-27)
  • その他(規制)
    • 経済産業省:バーゼル法・特定有害廃棄物等の輸出入管理 (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:廃棄物等の輸出入の手続 (参照日:2026-02-27)
    • METI Trade Control(安全保障貿易管理の入口) (参照日:2026-02-27)
    • 輸出貿易管理令(英訳) (参照日:2026-02-27)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 日本の国内コード(統計品目番号等)は、HS6桁の下に税率・統計・制度運用の都合で細分されます(例:課税価格条件、用途、規格等)。
  • 最新の国内細分は、税関の「実行関税率表(輸入統計品目表)」から該当税番ページで確認してください(改正で変わり得ます)。
  • NACCS用コード一覧(NACCS用品目コード)も別途公開されています(通関実務で参照)。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 税関の**事前教示回答(品目分類)**は公開分を検索できます。
  • 相談が早い情報(一般論):
    • 製品概要(用途・機能)
    • 材質(成分表/COA、SDS)
    • 製造工程(特にダスト/スクラップ/残渣)
    • 写真(全体・断面・梱包)
    • 図面(寸法・断面形状・加工内容)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第78類:鉛及びその製品(Lead and articles thereof)

用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注) です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉛の塊(インゴット等):精製鉛・その他(硬鉛等)→ 7801
    • 鉛のくず(スクラップ):切粉、端材、使用不能な鉛材のくず → 7802
    • 鉛の板・シート・ストリップ・はく(厚さ条件あり)→ 7804
    • 鉛の粉・フレーク(“粉”の定義あり)→ 7804.20
    • その他の鉛製品:おもり、容器、鉛管・継手、鉛棒・線など → 7806
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉛製造で生じるスラグ・灰・残留物(例:鉛マット)2620
    • 鉛のくずを再溶解して鋳造したインゴット等 → “くず”ではなく 7801
    • 塗料・着色剤用に調製した鉛粉/フレーク(結合剤・溶剤でペースト等)→ 第32類
    • 弁(コック等)付きの鉛管用継手8481
    • 絶縁電線で鉛外装を被覆したもの8544
    • 使用済/くず鉛蓄電池(そのまま電池として認識できる廃棄物)8549.11(第85類)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「鉛のくず」か「鉛の塊(インゴット)」か(再溶解・鋳造の有無)
    2. 粉・フレークが“原料状態”か、“塗料等に調製済”か(混合・ペースト化)
    3. “鉛のくず”と思ったものが、実は「使用済鉛蓄電池」等の別章(85.49)か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 使用済鉛蓄電池や鉛スクラップは、分類誤りがバーゼル法手続・通関遅延・差止めに波及しやすい(規制と直結)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し(項)+注(部注/類注)でまず決めます。第78類は特に、
      • 精製鉛の定義(号注)
      • “くず”の定義(部注)
      • 形状(板・管など)の定義(部注)
        が実務の分岐点になります。
    • GIR6:号(6桁)では、厚さ(0.2mm)や“精製鉛”定義など、号の文言・注で詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 状態:塊(unwrought)/くず(waste & scrap)/粉末/成形品
    • 成分:純度(Pb 99.9%以上か)、合金成分(Sbが主成分か)
    • 形状・寸法:板/シート/はく(厚さ 0.2mm境界)、管・継手の“弁付き”など
    • 調製の有無:粉末が塗料等へ“調製済”なら第32類へ飛ぶ

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「鉛(または鉛合金)」としての物品ですか?
    • 鉛が主体なら第78類候補。ただし、機械/電気機器としての完成品・部品は部注で除外され得ます(例:弁付き継手、絶縁電線)。
  • Step2:“くず(waste and scrap)”か?
    • 使えない金属くずなら 7802 が候補。
    • ただし、**使用済鉛蓄電池(廃棄物)**は HS2022 では **85.49(8549.11)**が明確に存在するため、まずここを疑います(電池として認識できる形状が残っているか)。
  • Step3:塊(7801)/板・粉(7804)/その他(7806)
    • 鋳造塊・インゴット等 → 7801
    • 板・シート・ストリップ・はく/粉・フレーク → 7804(厚さ・粉の定義で細分)
    • それ以外の鉛製品(おもり、容器、鉛棒・線、鉛管・継手など)→ 7806
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 7802(鉛くず) vs 7801(鉛塊):くずを再溶解して塊に鋳造すると 7801 側へ
    • 7802(鉛くず) vs 8549.11(使用済/くず鉛蓄電池):電池として認識できる廃棄物は 85.49 を優先的に検討
    • 7804.20(鉛粉) vs 第32類(調製した粉):結合剤・溶剤・他の着色剤を混ぜて“塗料状/ペースト状”なら 32類

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

(第78類は4桁見出しが少ないため全列挙します。)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7801鉛の塊(unwrought lead)精製鉛インゴット、硬鉛(Sb含有)インゴット、電解精製用の鋳造陽極など精製鉛の定義(Pb≥99.9%+不純物上限)で 7801.10 判定
7802鉛のくず(waste and scrap)端材、切粉、解体で出た鉛片製錬スラグ等は除外(2620)。再溶解して塊に鋳造したものは 7801
7804鉛の板等/はく/粉・フレーク鉛シート(遮蔽・屋根材)、鉛はく(包装)、鉛粉末0.2mm境界(補強材除外)。粉は“粉の定義”あり。調製粉は 32類へ
7806その他の鉛製品おもり、鉛容器、鉛棒・線、鉛管・継手、鉛陽極など弁付き継手→8481、鉛被覆絶縁電線→8544、被覆棒→8311等は除外

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 純度・不純物上限(精製鉛):7801.10 の鍵
    • 合金成分(Sbが“鉛以外で主”か):7801.91 vs 7801.99
    • 厚さ 0.2mm(補強材除外):7804.11 vs 7804.19
    • 粒度(粉の定義):7804.20 の適否
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7801.10(精製鉛) vs 7801.99(その他の鉛塊)
      • どこで分かれるか:Pb 99.9%以上に加え、各元素の上限を満たすか(単に「99.9%」だけでは足りません)。
      • 判断に必要な情報:ミルシート/分析表(元素別%)、規格(JIS等のグレード)、ロット管理
      • 典型的な誤り:「純度99.9%とだけ書かれた資料」や「商品名(refined)だけ」で 7801.10 と断定してしまう
      精製鉛(refined lead)判定の実務用チェック表(号注ベース)
      Pbが全重量の99.9%以上で、かつ他元素が以下を超えないこと: 他元素上限(全重量に対する%)銀(Ag)0.02砒素(As)0.005ビスマス(Bi)0.05カルシウム(Ca)0.002カドミウム(Cd)0.002銅(Cu)0.08鉄(Fe)0.002硫黄(S)0.002アンチモン(Sb)0.005すず(Sn)0.005亜鉛(Zn)0.002その他(例:Te)各0.001
    2. 7801.91(Sbが主な鉛以外元素) vs 7801.99(その他)
      • どこで分かれるか:鉛以外の元素のうち、重量でアンチモンが最大かどうか
      • 判断に必要な情報:合金成分表(Sb、Sn、As等の比較)、用途(硬鉛用途か)
      • 典型的な誤り:「硬鉛だからSb主」と思い込み、成分比較をせずに 7801.91
    3. 7804.11(厚さ0.2mm以下:補強材除外) vs 7804.19(その他)
      • どこで分かれるか:厚さ(“補強材の厚さを除く”)が 0.2mm以下か
      • 判断に必要な情報:断面図、厚み測定結果、ラミネート/補強材の仕様
      • 典型的な誤り:ラミネート材込みの総厚で判定してしまう
    4. 7804.20(粉・フレーク) vs 32類(調製粉)
      • どこで分かれるか:粉自体が部注の“粉”定義に該当し、かつ塗料等に調製されていない
      • 判断に必要な情報:粒度分布(ふるい試験等)、SDS、配合表(結合剤・溶剤・他着色剤の有無)
      • 典型的な誤り:「鉛粉末」とだけ聞いて 7804.20。実はペースト状で32類相当

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注8
      • “くず(waste and scrap)”=金属くず全般/破損等で使用不能な金属製品
      • “粉(powders)”=重量の90%以上が1mmふるいを通過
    • 部注9:板・線・管などの形状定義(第74〜76類・第78〜81類共通の言葉の意味)
    • 部注1(除外):塗料等に該当するもの、機械・電気機器等、弾薬用散弾等はSection XVから除外され得る
  • 実務での意味(具体例つき):
    • “くず”判定では「鉛が含まれている」だけでなく、商品としてそのまま使えるか(破損・切断・摩耗等で使用不能か)を見ます。
    • “粉”は粒度の定義があるため、粉末でも粒が粗いと 7804.20 で説明しづらい場合があります(粒度データを取るのが安全)。
    • “板/シート/はく”は厚さや形状定義が背景にあります。特に 0.2mm境界は書類で裏付けが必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 鉛粉が調製済(ペースト/分散液) → 第32類
    • 弁付き管用継手 → 8481
    • 鉛外装の絶縁電線 → 8544
    • 弾薬用に調製した散弾等 → 第93類(例:9306)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第78類は、号注(Subheading Note)として「精製鉛」の定義を置いています(Pb 99.9%以上+不純物上限表)。
    • **[78.03]・[78.05]**は角括弧付きで表示され、HS上「削除された見出し」であることを示します(実務上は 7806 側で扱う場面が増えます)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「精製鉛(refined lead)」=Pb 99.9%以上かつ、Ag/As/Bi/Ca/Cd/Cu/Fe/S/Sb/Sn/Zn/その他の各上限を満たす金属
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注自体の除外というより、部注・各類解説で第26類(残留物)第32類(調製粉)、**第84/85類(機械・電気)**などへ分岐が出ます。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:7801.10(精製鉛)に該当するか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):元素別の分析(Pb含有率と不純物)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、分析表、SDS、規格書、ロット証跡
    • 誤分類の典型:「純度99.9%」だけで 7801.10 としてしまい、実は不純物上限を超えて 7801.99 相当
  • 影響ポイント2:7802(くず)か 7801(塊)か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):再溶解・鋳造の有無、形状(インゴット等)、取引実態(原料としての塊か、くずとしての雑材か)
    • 現場で集める証憑:工程図(回収→溶解→鋳造)、写真、インボイス品名、梱包状態
    • 誤分類の典型:「原料だからスクラップ」という思い込み(溶解して塊なら 7801)
  • 影響ポイント3:“鉛くず”が実は 85.49(使用済/くず鉛蓄電池)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):貨物が電池の形状・構成を保っているか、廃棄物としての性状(“spent”)
    • 現場で集める証憑:写真(外観・端子・ケース)、品名(used lead-acid batteries等)、梱包明細、処理契約情報
    • 誤分類の典型:電池を「鉛含有物=鉛スクラップ」として 7802 申告(通関・規制で止まりやすい)
  • 影響ポイント4:鉛粉が 7804.20 か 32類か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):粒度(1mmふるい90%)、混合/分散/ペースト化の有無
    • 現場で集める証憑:配合表、SDS、製品形態(粉体/ペースト/スラリー)
    • 誤分類の典型:“粉末”という単語だけで 7804.20(実は調製品)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:使用済鉛蓄電池を 7802(鉛くず)にしてしまう
    • なぜ起きる:鉛が主材料なので“鉛スクラップ”と思い込みやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):HS2022では使用済/くず蓄電池として **85.49(例:8549.11)**が明確(第85類)
    • 予防策:写真で「電池として認識できるか」を必ず確認/インボイス品名に “spent/used lead-acid accumulators” 等の記載有無を確認
  2. 間違い:くずを溶かして鋳造したインゴットを 7802(くず)
    • なぜ起きる:原料用途=スクラップ、という商慣習語の混同
    • 正しい考え方:再溶解・鋳造でインゴット等の塊になれば 7801
    • 予防策:工程図(溶解・鋳造の有無)/形状写真(インゴット、スラブ)を必須資料に
  3. 間違い:鉛製錬のスラグ・灰・残留物を 7802(くず)
    • なぜ起きる:見た目が“くず”に近い
    • 正しい考え方:製造時残留物は 2620 に飛ぶ(鉛マット等の例示あり)
    • 予防策:発生工程(製錬/精錬工程)を確認、MSDS/分析で“残留物”性状を整理
  4. 間違い:鉛粉ペースト(結合剤入り)を 7804.20(鉛粉)
    • なぜ起きる:名称が“鉛粉”のまま取引される
    • 正しい考え方:塗料・着色剤等に調製された粉は第32類(結合剤・溶剤・分散等)
    • 予防策:配合表(樹脂/溶剤/添加剤)確認。SDSで形態(paste/suspension)確認
  5. 間違い:鉛はく/薄板の 0.2mm境界を見落とし 7804.19 に一括
    • なぜ起きる:寸法データがインボイスにない
    • 正しい考え方:厚さ(補強材除外)0.2mm以下は 7804.11 として区別
    • 予防策:仕様書に「鉛層厚み(単体)」を記載。測定記録を保管
  6. 間違い:弁付きの鉛管用継手を 7806(鉛製品)
    • なぜ起きる:材質(鉛)だけで判断
    • 正しい考え方:弁(コック等)付き継手は 8481 側に除外され得る
    • 予防策:図面で弁の有無確認。セット構成(継手+弁)を明確に分けて記載
  7. 間違い:鉛外装の絶縁電線を 7806
    • なぜ起きる:外装が鉛で目立つ
    • 正しい考え方:絶縁電線として 8544 に除外され得る
    • 予防策:製品の本質(電線/導体/絶縁)を優先。カタログ・断面図で確認
  8. 間違い:被覆した棒・線(溶接/ろう付け用)を 7806
    • なぜ起きる:棒状=鉛棒という認識
    • 正しい考え方:被覆棒は 8311 等に除外され得る(解説で言及)
    • 予防策:用途(溶接・ろう付け)、被覆材(フラックス等)を仕様書で確認
  9. 間違い:複合金属(鉛+他の卑金属)を用途で決め打ち
    • なぜ起きる:用途・名称が先行
    • 正しい考え方:複合卑金属品は原則「重量で優勢な金属」による扱いが基本(部注の考え方)
    • 予防策:構成金属の重量比をBOM/図面で取り、GIRの順序で整理

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHSを誤ると、適用すべきPSR自体が変わるため、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(非原産材)のHSと最終品HSの取り違え
    • “鉛くず(7802)”と思ったら実は“使用済鉛蓄電池(8549)”で、PSRが根本から変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用しているHSバージョン(HS2002/2007/2012/2017等)が異なり得ます。日本税関のPSR検索でも、協定のHS版と異なる版で検索すると結果が誤る可能性がある旨が明示されています。
  • 実務対応(一般論):
    • 輸入申告は最新HS(例:HS2022)、一方で協定PSRは協定が採用するHS版で確認
    • HS版がズレる場合は、(1)協定側HS版でPSRを確認→(2)最新HSとの対応(トランスポジション)を取って社内メモ化、が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・運用で異なるため、税関/発給機関のガイドに合わせて整備

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲(定義)の実質は同等/所在変更(注の所在)棒・線・板・管などの定義が、HS2017では第78類注に置かれていたが、HS2022では第15部注9へ整理“類注を見ていた人”が見落としやすい。定義確認は部注へ
HS2017→HS2022変更なし(コード構造)7801/7802/7804/7806第78類のHS6桁は同一([78.03]・[78.05]も同様に欠番表示)コード自体の付替えは原則不要(ただし周辺章改正には注意)

※参考(周辺章):HS2022で**85.49(電気・電子廃棄物等)**が新設され、使用済/くず蓄電池が 8549.11 等で整理されています。鉛取引では誤分類が起きやすいので注意してください。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料(一次情報):
    • HS2017の第78類:棒・線・板・管等の定義がChapter Noteとして記載
    • HS2022の第78類:同定義がChapter側から外れ、第15部注9に集約(第78類側は精製鉛の号注のみ)
  • 以上より、「第78類のHS6桁(見出し・号)は変更なし」「ただし定義条文の所在が移動」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れ(第78類):
    • [78.03]・[78.05]が欠番表示である点は、少なくともHS2007時点から同様です。
    • HS2007/2012/2017では、棒・線・板・管等の定義が第78類注として記載されていましたが、HS2022では第15部注9へ移動しています。

(整理表:主要論点のみ)

HS版主要コード(第78類)78.03/78.05注(定義)の所在コメント
HS20077801/7802/7804/7806欠番表示あり第78類注に定義ありコード構造は概ね現行と同様
HS2012同上欠番表示あり第78類注に定義あり同様
HS2017同上欠番表示あり第78類注に定義あり同様
HS2022同上欠番表示あり第15部注9へ移動(78類は号注中心)“注を探す場所”が変わった

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):使用済鉛蓄電池を鉛スクラップとして申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):HS2022で 85.49 が整理されているのに 7802 申告してしまう(分類根拠が弱い)
    • 起きやすい状況:中古部品や雑スクラップに電池が混入、外観確認不足
    • 典型的な影響:検査強化、差止め、書類追加、遅延(一般論)
    • 予防策:混入防止手順、写真添付、品名明確化、必要なら事前教示
  • 事例名:“くず”の再溶解インゴットを 7802 と誤申告
    • 誤りの内容:くずではなく塊(7801)側
    • 起きやすい状況:リサイクル材の売買(インゴット形状)
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税(一般論)
    • 予防策:工程・形状写真・契約書で“鋳造塊”を明確化
  • 事例名:鉛粉ペーストを 7804.20 としてしまう
    • 誤りの内容:調製済なら第32類へ
    • 起きやすい状況:SDS未入手、配合不明のまま輸出入
    • 典型的な影響:分類差戻し、追加資料要求
    • 予防策:配合表・形態(粉/ペースト)を事前取得
  • 事例名:弁付き鉛継手を 7806 としてしまう
    • 誤りの内容:弁付きは 8481 側へ
    • 起きやすい状況:部品セットで輸入、品名が曖昧(“pipe fitting”のみ)
    • 典型的な影響:分類変更、追加説明
    • 予防策:図面で弁の有無確認、品名を “valve-fitted” 等で明確化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第78類そのものは食品検疫の中心ではありませんが、鉛は有害性の高い化学物質として、取扱い上SDS整備やラベル・安全管理が求められる局面があります(輸送・保管・作業安全)。厚労省のGHSモデルSDS情報が参照できます。
  • その他の許認可・届出(バーゼル法等)
    • 使用済鉛バッテリーやそれを含む貨物の輸出入は、バーゼル法手続が問題となりやすい領域です。経産省は「特定有害廃棄物等の輸出承認」手続を案内し、使用済鉛バッテリーのように明確な対象の場合の書類取扱いにも言及しています。
    • 環境省も品目別情報として「使用済鉛バッテリー」関連の注意喚起・情報提供を整理しています。
    • 実際に、手続未了で使用済鉛バッテリーが混入した輸出申告が問題となった公表事例があります(混入防止が重要)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出承認(バーゼル)
    • 環境省:廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入(品目別情報)
    • 厚労省:GHSモデルSDS(鉛)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(成分・形状・用途)、写真、SDS、分析表
    • 廃棄物該当性の整理(発生工程図、処理工程、契約書類等:バーゼル対応)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Pb%、合金元素、微量元素)、形状(板/管/粉)、寸法(厚さ/粒度)、用途
    • 写真(外観・断面)、カタログ、工程図(スクラップなら発生工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 精製鉛:不純物上限まで確認したか
    • くず:再溶解・鋳造の有無を確認したか
    • 電池:使用済鉛蓄電池(8549)に該当しないか
    • 調製粉:32類へ飛ばないか(結合剤・溶剤)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「形状・状態」を入れる(例:lead ingots / lead scrap / lead sheets 0.18mm)
    • 厚さ・粒度・成分表を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定HS版でPSR確認→最新HSとの対応を社内メモ化
    • BOM、非原産材HS、工程、原価の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 使用済電池・スクラップ混入の有無(バーゼル)
    • SDS整備(鉛)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 78(1578_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Section XV Notes(1500_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2017/2012/2007 Chapter 78(比較用) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Chapter 85(85.49/8549:使用済/くず蓄電池) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables(HS2017–2022)案内 (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関 関税率表解説(第78類:78r.pdf) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 事前教示回答(品目分類)検索 (参照日:2026-02-27)
    • 税関 品目分類の事前教示制度(カスタムスアンサー) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 品目別原産地規則検索(HS版注意喚起あり) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 原産地規則(概要) (参照日:2026-02-27)
  • 規制(バーゼル等)
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出承認(使用済鉛バッテリー言及あり) (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:品目別情報(使用済鉛バッテリー) (参照日:2026-02-27)
    • 経産省・環境省:使用済鉛バッテリー混入貨物に関する注意喚起例 (参照日:2026-02-27)
  • その他
    • 厚労省:職場のあんぜんサイト(鉛のGHSモデルSDS) (参照日:2026-02-27)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品の写真(全体・断面)、材質(成分表)、用途、製造工程、カタログ、梱包形態
    • “くず”なら「使用不能性」「発生工程」「再溶解の有無」を説明できる資料
  • 探し方
    • 日本税関の「事前教示回答(品目分類)」で、公開可能な事前教示の検索ができます。類似品名(例:lead scrap、鉛管、鉛はく等)で当たりを付け、論点(厚さ・弁付き等)を抽出すると効率的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

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