■日本■ 2026年からヘビースクラップHSコードが2区分へ。何が変わり、実務はどう備えるか

鉄スクラップ取引の現場では、品種名として長く使われてきたヘビースクラップが、統計上の扱いでも大きく動きました。日本の輸出統計品目番号では、ヘビースクララップに相当する7204.49のヘビーくずが、2026年1月1日から2つに細分化されています。 (jisri.or.jp)

この変更は、単なる番号の付け替えではありません。厚さ6ミリメートルという明確な数値基準が入ることで、現場の選別、契約条件、申告根拠の作り方まで影響が及びます。

まず結論。2026年の新コードはこの2つ

ヘビーくずは、2026年1月1日版で次の2区分になっています。 (jisri.or.jp)

区分輸出統計細分要点
厚さが6ミリメートル以上7204.49-110最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であることが条件
その他7204.49-190上記以外。実務上は厚さ6ミリ未満側が中心

7204.49-110は、説明文でも厚さ6ミリ以上が明記されています。 (kanzei.or.jp)
7204.49-190は、品名概要として厚さ6ミリ未満のヘビーくずと整理されています。 (kanzei.or.jp)

ここで注意したいのは、いわゆる国際的なHS6桁が変わったというより、日本の輸出統計細分がより細かく分かれた、という性格が強い点です。実務ではこの枝番まで正しく入れて申告するため、影響は十分に大きいと考えるべきです。

ヘビーくずの定義が、数値で整理された

今回の見直しでは、ヘビーくずとは何か、どこまでが別物か、が文章で整理されています。

ヘビーくずの基本像は次のとおりです。

・鋼板、形鋼、レール、列車車体、船舶胴体、重機、ボンベ等の鉄鋼製品を切断、解体したもの
・圧縮成形されたプレスくずは除外
・1個当たり重量が1kg以上1,000kg以下
・寸法の目安として、厚さ1mm以上から500mm以下、幅または高さ300mm以上から500mm以下、長さ300mm以上から1,200mm以下が示されている

この整理の意味は大きく、税関側の判断軸が明確になる一方で、輸出者側も根拠を示せるように整備しないと、通関段階で止まりやすくなります。

分岐点は厚さ6ミリ。判断方法が実務向けに定義されている

今回の最大ポイントは、7204.49-110の判定方法が、現場で揉めやすいところまで踏み込んで定義されている点です。

・厚さ6ミリ以上とは、最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であること
・厚さ6ミリ未満のものと分けていないものは含めない、とされている

つまり、荷姿の中に6ミリ未満が混ざっているのにまとめて6ミリ以上として扱う、という運用はリスクが高い、というメッセージになります。

さらに、取引実務でよく出る等級呼称との対応も示されています。

・厚さ6ミリ以上は、HSまたはH1として取引されることがある
・厚さ6ミリ未満は、H2、H3またはH4として取引されることがある

統計番号の変更は、現場の商慣行に近い区分を税関手続きに持ち込んだ、と捉えると理解しやすいはずです。

なぜ今、細分化なのか。背景は資源循環の可視化

報道ベースでは、今回の改正は、輸出入の動きをより細かく把握して金属資源の流れを見える化し、国際資源循環の適正化につなげる狙いがある、と説明されています。 (イルミル)

一方で、現場負担が増えることへの懸念も強く、業界団体が反対や不安の声を上げていることも報じられています。 (鉄鋼・非鉄金属業界の専門紙「日刊産業新聞」)

ビジネス側として重要なのは、背景の是非よりも、税関実務がこの基準で動き始めたという事実です。基準が明文化された以上、事後的に説明できる体制がない企業ほど、遅延や差し戻し、追加確認の影響を受けやすくなります。

企業実務への影響。特に効くのは5点

1. HSマスターとNACCS連携の改修が必須

7204.49-110、7204.49-190は、NACCS用コードも付いて流通します。 (kanzei.or.jp)
社内の品目マスター、通関業者への指示票、インボイス品名、出荷システムのコード連携を、枝番まで含めて点検してください。

2. 選別と検収の定義が契約条件になる

厚さ6ミリの判定が入ると、仕入、ヤード選別、積込検収のどこで判定し、どの記録を残すかが、取引トラブルの焦点になります。特に最も薄い部分基準は、測り方を決めておかないと現場で判断が割れます。

3. 混載リスクが上がる

厚さ6ミリ未満と分けていないものを含めない、という書き方は、混載しているだけで110側が否定され得る設計です。
コンテナ単位、船積みロット単位で区分が明確になる運用に寄せるのが現実的です。

4. 通関で聞かれるポイントが変わる

従来は、ヘビーくずかどうかの説明で済んでいた場面でも、今後は厚さの根拠を聞かれる可能性が上がります。写真、計測表、検収基準書、ヤードの選別ルールなど、後から出せる証跡を整えておく方が強いです。

5. 輸出管理の観点も再確認

該当品目には、輸出貿易管理令の参照が付されています。取引先や仕向地によっては、分類だけでなく輸出管理側の確認も併走させるべきです。 (kanzei.or.jp)

すぐに使える実務チェックリスト

・社内の品目マスターで、7204.49-110と7204.49-190を別品目として登録したか
・ヤード選別で、厚さ6ミリの判定基準と測定方法を文章化したか
・最も薄い部分の厚さを測る運用と、記録様式を決めたか
・混載を避ける積込ルールを設定し、通関業者に共有したか
・契約書、検収条件、クレーム条件に厚さ基準を反映したか
・輸出管理上の確認が必要な仕向地、取引先に対して、社内フローを更新したか (kanzei.or.jp)

まとめ。細分化は、トラブル予防の仕組みでもある

今回の改正は、ヘビースクラップを厚さ6ミリで2区分し、定義と判定方法を明文化した点に本質があります。 (jisri.or.jp)
統計を細かくする狙いは資源循環の可視化にあるとされますが、企業側から見ると、通関で説明できる材料を揃えれば揃えるほど、通関遅延や差し戻しを減らせる設計になったとも言えます。 (イルミル)

現場の選別、契約条件、申告根拠の3点をセットで整備し、通関業者と同じ判定軸で動ける状態にすること。それが、2026年以降のヘビースクラップ取引で最も効く実務対応になります。

自動車用センサーの分類リスクを深掘りする HSコードの税番ミスが、利益と納期を静かに削る理由

自動車用センサーは、いまや部品ではなく「事業の要」になりました。ADAS向けのカメラやミリ波レーダー、排ガス向けのガスセンサー、圧力や流量の各種センサーまで、車両の価値はセンサーとソフトウェアで決まると言っても過言ではありません。

一方で、サプライチェーンが国境を跨ぐほどに増えるのが、HSコードの分類ミスです。HSは世界の200以上の国や経済圏で使われる国際的な品目分類で、6桁コードを基礎に、関税や統計などに用いられます。しかも技術や貿易の変化に合わせて定期的に改正されます。ここでの判断を誤ると、関税コストだけでなく、通関遅延、監査対応、取引条件の見直しなど、ビジネス全体に波及します。 (World Customs Organization)

本稿は、以前の「自動車用センサー分類リスク一覧」を、実務に落ちる粒度まで掘り下げたものです。狙いは、現場で起きやすい失敗を、構造として理解し、再発しない運用に落とすことです。


1. なぜ自動車用センサーは分類が難しいのか

難しさの本質は、センサーが「車の部品」に見えやすい一方で、HSの世界では「何の部品か」より「何として機能するか」が強く問われる点にあります。

HSの解釈では、まず見出し(heading)と、セクション注や章注(Notes)に従って分類します。見出しのタイトルは参考であって、法的には見出し文言と注記が優先です。 (Canada Border Services Agency)

ここで自動車業界の落とし穴になるのが、「車両の部分品(8708)に寄せたくなる心理」です。確かに第87類には「自動車の部分品及び附属品(87.08)」があります。 (Canada Border Services Agency)

しかし、セクションXVIIの注記では、部分品や附属品の考え方が適用されない品目が明確に列挙されています。代表的な除外として、電気機器(第85類)や測定・検査等の機器(第90類)が挙がります。つまり、車に付くからといって、自動的に8708になるわけではありません。 (Canada Border Services Agency)

センサーは、まさに第85類や第90類に該当しやすい典型例です。だからこそ、分類リスクが高いのです。


2. センサーを「税番を決める観点」で分類し直す

技術分類(レーダー、LiDAR、カメラ…)は開発や調達では有効ですが、HSの初動判断では別の切り口が効きます。ポイントは次の3つです。

  1. 測定・検査の機器か(第90類になりやすい)
  2. 画像・電波などの電気機器か(第85類になりやすい)
  3. それでも部分品として扱えるのか(第87類で検討できるのか)

目線合わせのために、代表例を「当たりを付ける早見表」として整理します。最終決定は個別仕様で変わるため、ここではあくまで検討の出発点として扱ってください。

自動車用センサーの代表例と、検討に上がりやすい見出し

  • 車載カメラ系
    第85類の85.25には、テレビカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラレコーダー等が含まれます。ADASカメラやサラウンドビューは、この周辺が候補になりやすい領域です。 (Canada Border Services Agency)
  • ミリ波レーダー系
    第85類の85.26には、レーダー装置、無線航行援助装置、無線遠隔制御装置が掲げられています。一般に車載レーダーは、この見出しの検討が避けられません。 (Canada Border Services Agency)
  • 圧力・流量・レベルなどのプロセス系センサー
    第90類の90.26は、液体や気体の流量、液位、圧力などを測定または検査する機器を対象にしています。燃料、冷媒、吸気、ブレーキ等、車両内の流体を扱うセンサーは、この枠に入り得ます。 (Canada Border Services Agency)
  • ガス分析・排ガス関連センサー
    第90類の90.27には、ガスまたは煙の分析装置など、物理的・化学的分析の機器が含まれます。排ガス関連の分析用途はこの見出しが論点になります。 (Canada Border Services Agency)
  • 上記に当てはまらない測定・検査機器
    第90類の90.31は、同章の他の見出しに特掲されない測定・検査機器を扱います。仕様によってはここが候補になることがあります。 (Canada Border Services Agency)
  • いわゆる「自動車の部分品」
    第87類の87.08は、87.01から87.05の自動車の部分品・附属品を対象にします。ただし前述のとおり、セクションXVII注記の除外に当たる場合は、車用と識別できても8708にできないケースがあります。 (Canada Border Services Agency)

3. 自動車用センサー分類リスク一覧(深掘り版)

ここからが本題です。現場で起きやすい「分類ミスの型」を、原因と対策まで含めて掘り下げます。

リスク1 品名や業界呼称だけで決めてしまう

起きる理由
センサーは略称が多く、同じ呼び名でも機能が異なります。例えば「センサーECU」「センサーモジュール」は、純粋な検知素子なのか、演算・制御まで含むのかで分類論点が変わります。

典型的な失敗
仕入先のインボイス品名だけを見て、既存品の税番を流用する。

打ち手
仕様書から、最低限次を揃えます。検知対象、測定原理、出力(アナログ、デジタル、画像、電波)、演算の有無、制御ループの有無、通信機能の有無、単体販売か車両組込みか。分類は「現物の提示状態」で決まるという原則も、要注意です。 (Canada Border Services Agency)


リスク2 何でも8708に寄せたくなる

起きる理由
調達や設計の目線では「車の部品」だからです。しかしHSでは、部分品の考え方が適用されない除外が明確に存在します。電気機器(第85類)や第90類の物品は、車用で識別できても「部分品扱い」から外れる可能性があります。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
カメラやレーダー、測定機器を「車に付くから」と8708で通そうとして差し戻される。

打ち手
最初にセクションXVII注記の除外リストを確認し、該当するなら第85類・第90類側から検討を始める。部分品に寄せるのは、除外に当たらないことを確認してからです。 (Canada Border Services Agency)


リスク3 より具体的な見出しを飛ばして、一般的な見出しに逃げる

起きる理由
分類は「最も具体的な記述」を優先するのが基本です。例えば、車用だからと部分品に寄せるより、品名や機能を具体的に指す見出しがあれば、そちらが優先される考え方が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
一旦90.31や8708に入れておけばよい、と考えてしまう。

打ち手
候補見出しが複数出たら、具体性の比較を必ず行う。どの見出しが「物そのもの」を名指ししているか、見出し文言で説明できるか、を文章で残しておく。


リスク4 複合モジュールの「本体」が何かを決められない

起きる理由
現代のセンサーは、検知素子だけでなく、基板、演算、信号処理、筐体、コネクタ、場合によっては通信機能まで含みます。複合品として複数見出しが競合することが増えます。分類はルールに従って順に判断します。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
BOMの主要部材の価格比だけで「本体」を決めてしまい、機能の説明と矛盾する。

打ち手
「何をする装置か」を先に言語化し、その機能に最も整合する見出しを探す。価格比は補助情報に留め、機能説明が主役になるように整理する。


リスク5 測定なのか、自動制御なのかを取り違える

起きる理由
測るだけの機器と、設定値に合わせて制御する機器では、議論の土俵が変わります。第90類には、自動制御に関する見出しの適用範囲が注記で示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
センサー名義で購入しているが、実は制御機能を持つユニットで、分類根拠が崩れる。

打ち手
入力(測定値)と出力(制御信号)の関係が、制御ループとして閉じているかを確認する。制御目標値を保持し、実測値を一定に保つ設計か、という観点で仕様を切る。


リスク6 専用性と汎用性の証拠が弱く、後から説明が崩れる

起きる理由
部分品の議論では、「専ら又は主として」どれに使うかが焦点になります。セクションXVII注記でも、部分品・附属品が、どの用途に適するかが分類に影響する旨が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
車載専用と主張したいのに、販促資料や仕様が他用途も示してしまっている。

打ち手
設計仕様、認証要件、耐環境条件、車載専用品番体系、OEM向け契約書や用途限定条項など、「車載主用途」を裏付ける証拠を揃える。


リスク7 国・地域で下位桁が違うのに、他国コードを流用する

起きる理由
HSは6桁が国際共通ですが、多くの国はそれより下位の桁を独自に細分化します。EUは8桁の体系を使うとされています。 (EU Trade)

典型的な失敗
ある国で通ったコードを、別の国でも同じだと思い込み、申告で不整合が出る。

打ち手
輸出入先ごとに、6桁までは共通、下位桁は各国の関税率表で確定する、という運用に切り替える。社内マスタも、6桁と国別下位桁を分けて管理する。


リスク8 HS改正でのコードずれを放置する

起きる理由
HSは技術や貿易の変化に応じて更新され、WCOはおおむね5から6年周期で改正すると説明しています。EU側の解説でも、直近の改正が2022年に発効した旨が示されています。 (World Customs Organization)

典型的な失敗
旧版の税番をそのまま使い続け、監査や照会で説明不能になる。

打ち手
年次でHS改正点を点検し、影響品目の洗い出しとマスタ更新を必ず行う。関税率表は少なくとも年1回以上更新され得る、という前提で体制を組む。 (Canada Border Services Agency)


リスク9 事前教示を取らずに量産・大量出荷に入る

起きる理由
分類に不確実性が残るまま量産すると、通関現場で止まったときの損失が大きくなります。EUには、分類の法的確実性のためにBTIを取得する仕組みがあり、一般に3年間有効でEU全域で拘束力を持つ、と説明されています。 (Taxation and Customs Union)

日本でも、輸入前に税番や税率について照会し回答を得る事前教示制度があり、条件を満たす書面回答は通関時に添付でき、原則3年間有効である旨が示されています。 (Japan Customs)

典型的な失敗
量産後に分類見解が割れ、取引価格を見直す羽目になる。

打ち手
不確実性が残る品目ほど、事前教示やBTIなどの制度を活用して、分類の前提を固める。コストではなく保険として扱う。


リスク10 サプライヤー提供のHSコードを無批判に採用する

起きる理由
サプライヤーのHSコードは、相手国前提だったり、梱包状態やセット構成が違ったりします。さらに、分類は申告者側の責任になる場面が多く、説明責任が自社に残りやすいのが現実です。

典型的な失敗
サプライヤーのインボイス記載をそのまま社内マスタ化し、製品改版で破綻する。

打ち手
サプライヤーHSは参考情報として受け取り、社内で根拠文言と注記を添えて決裁する。品番変更、基板変更、通信追加などの設計変更は、分類再評価のトリガーとして制度化する。


4. 失敗しないための実務フレーム(ビジネス向け)

最後に、現場で回る形に落とします。分類は担当者の勘に寄せるほど、属人化して事故が増えます。おすすめは、次の手順での標準化です。

ステップ1 技術情報を一枚にまとめる

最低限、次を一枚で説明できる状態にします。

  1. 検知対象と測定原理
  2. 出力の種類(電圧、デジタル信号、画像、電波など)
  3. 演算や制御の有無
  4. 通信機能の有無
  5. 提示状態(単体、モジュール、ハーネス同梱、ECU一体など)

ステップ2 候補見出しを「章」でまず切る

車載だから第87類、ではなく、まず第85類か第90類かを疑う。セクションXVIIの除外に触れると8708にできないため、最初の分岐が重要です。 (Canada Border Services Agency)

ステップ3 ルール順に根拠を積み上げる

見出し文言と注記で決める、という原則から外れない。複数候補なら、具体性が高い方を優先する、という考え方で説明文を作る。 (Canada Border Services Agency)

ステップ4 国別の下位桁と税率を確定する

6桁の議論が固まったら、国ごとの下位桁と税率表で最終確定する。EUなどは独自の下位桁体系を持つため、輸出入先別の確定プロセスが不可欠です。 (EU Trade)

ステップ5 不確実なものは制度で確実性を買う

EUのBTI、日本の事前教示など、公式な事前確認を活用する。ビジネスとしては、損失の上限を固定するための投資です。 (Taxation and Customs Union)


まとめ 分類はコストではなく、経営リスクの制御である

自動車用センサーは、機能が高度化するほど、モジュール化するほど、分類論点が増えます。そして分類の間違いは、数字としては関税に見えても、実態は納期、在庫、取引条件、監査対応など、経営の複合損失として跳ね返ります。

HSは世界共通の6桁を軸に、多くの国で運用され、技術進化に合わせて定期改正されます。だからこそ、分類を現場の経験則に任せるのではなく、根拠と更新を前提にした運用に切り替えることが、最も費用対効果の高い対策になります。 (World Customs Organization)


免責
本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件の法的助言ではありません。最終的な分類は、実際の貨物の仕様、提示状態、契約条件、輸出入国の関税率表や運用により変わり得ます。公的制度や専門家を活用し、確定判断は必ず根拠とともに行ってください。 (Canada Border Services Agency)

EU:スマートテキスタイル(電子機能付き衣類)の分類基準を策定

EUでスマートテキスタイルが普及するほど、企業実務では「衣類なのか、電気機器なのか」という関税分類の迷いが増えます。EUは、こうした境界領域の製品について、単発の解釈ではなく、CN運用の枠組みの中で判断の一貫性を担保する仕組みを整備してきました。本稿では、スマートテキスタイルを巡るEUの分類基準が、実務上どのように組み立てられているかを、一次情報に基づいて整理します。 (Taxation and Customs Union)

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  1. スマートテキスタイルとは何か
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    スマートテキスタイルは、一般に「スマート(インテリジェント)テキスタイル/繊維製品」を対象に、定義やカテゴリ分けが議論されている領域です。国際標準化の文脈では、ISO/TR 23383:2020 が、スマートテキスタイルと繊維製品の定義や類型化を扱う文書として位置づけられています。 (ISO)

実務上のスマートテキスタイルは、例えば次のような特徴を持ちます。

  1. 導電糸や配線を繊維に織り込む
  2. センサー、発光、加温、通信などの電子機能を衣類に付与する
  3. 電子モジュールが縫い付け固定か、着脱式かで輸入時の姿が変わる

この「輸入時の姿」と「主要な機能」が、EUの関税分類を左右します。

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2. EUの関税分類はCNが軸になる
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EUでの関税分類は、HSを基礎にした8桁体系のCombined Nomenclature(CN)が中核です。CNは、共通関税率の適用と対外貿易統計の双方の要請を満たすための分類体系として説明されています。 (Taxation and Customs Union)

加えて、TARIC(EU Customs Tariff)は、CNを土台に、貿易救済や規制措置などの情報を紐づけて運用する実務基盤です。TARICの法的基礎がCouncil Regulation (EEC) No 2658/87であることも、欧州委員会が明示しています。 (Taxation and Customs Union)

またCNは毎年更新され、官報で公表される運用です。これは、毎年の改訂と公表が制度として定着していることを示します。 (Taxation and Customs Union)

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3. 「EUの分類基準」とは何を指すのか
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スマートテキスタイルに限らず、EUは分類のブレを抑えるために、複数の手段を組み合わせています。EU側の資料では、加盟国間で解釈が割れた場合に、分類規則、CN説明注、分類ステートメント等で統一的な分類を確保する旨が述べられています。 (Taxation and Customs Union)

ここが重要です。つまり「基準を策定」といっても、ひとつの包括ガイドラインで一気に規定するより、次のように積み上げで基準が形作られます。

  1. 分類規則(特定商品のCN分類を法的に確定)
  2. CN説明注(解釈指針を官報で明確化)
  3. BTI(個別企業が法的安定性を得るための仕組み)
  4. 公開データベースでの参照性向上(CLASS等)

この流れを補強する動きとして、欧州委員会は「分類規則の統合リストを公表した」と発表しています。実務者が過去の分類規則を横断的に参照しやすくするための環境整備といえます。 (Taxation and Customs Union)

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4. スマートテキスタイルで実務判断が割れやすいポイント
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スマートテキスタイルは、繊維と電子の複合製品です。EU実務で争点になりやすい判断軸を、制度の建て付けから逆算して整理すると、次の順序になります。

  1. 輸入時の提示形態がどうなっているか
    ・衣類に電子部品が縫い付け固定か
    ・電子モジュールが着脱式で、別梱包か
    ・複数の構成品が「セット」として提示されるのか

この「輸入時点の姿」が違うと、同じ製品コンセプトでも分類ロジックが変わります。

  1. 主要機能と客観的特性は何か
    ・衣類としての着用が主で、電子は補助的か
    ・電子機能が主で、衣類は保持体や装着体に近いのか
    ・通信、計測、加温、発光など、何が価値の中心か

EUの分類は、宣伝文句よりも、構造や機能など客観的特性に引き寄せて判断されやすいのが特徴です。

  1. 複数素材や複合品のとき、どの要素が「本体」を決めるか
    この点は、スマートウオッチ用ストラップに関するCN説明注が、分かりやすい実例になります。EUは、スマートウオッチ(通信機器側の分類になり得る機器)に専用設計されたストラップであっても、ストラップ単体で提示される限り、ストラップとして分類されることを明確にしています。さらに、ストラップが複数素材から成る場合は、一般規則3(b)の「本質的特性」により素材を決める、と説明しています。 (EUR-Lex)

この考え方は、スマートテキスタイルにもそのまま波及します。
・電子機器に接続する部材でも、単体提示なら「部材側の分類」に残る場合がある
・複合素材なら「本質的特性」をどれが与えるかが焦点になる

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5. 企業が取るべき実務対応
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スマートテキスタイルは、分類の迷いが起きやすい一方、事前に手を打てる領域でもあります。

  1. 分類ドシエの作り込み
    ・BOM、回路図、着脱構造、電源の有無、通信方式、使用手順、洗濯可否
    ・輸入時の提示形態(同梱か別梱か、セット扱いか)を明文化
    この資料が薄いほど、分類の再現性が落ちます。
  2. CLASSで先行情報を検索する
    欧州委員会は、CLASS(分類文書、CNノート、TARIC情報、BTI決定等を参照する入口)を公開しています。まずは既存の整理を探索するのが近道です。 (European Commission)
  3. BTIで法的安定性を取りに行く
    Access2Marketsの解説では、BTIは税関当局が出す法的決定であり、EU域内で3年間有効で、申請者とEUの全税関当局を拘束すると説明されています。スマートテキスタイルのような境界製品では、BTIの費用対効果が高くなりやすい領域です。 (EU貿易)
  4. 分類規則とCN説明注の更新を追う
    欧州委員会が分類規則の統合リストを公表した事実は、企業側も「点のBTI」だけでなく「面の動向」を追う必要があることを示唆します。 (Taxation and Customs Union)
  5. 原産地規則への波及を必ず試算する
    衣類として分類されるのか、電気機器として分類されるのかで、EPAやFTAの品目別規則の読み方が変わります。衣料品が一般にHS 61類または62類に入り、原産地規則の確認が必要になることは、JETROの解説でも触れられています。スマートテキスタイルは、ここに「分類ブレ」が加わるため、分類と原産地は必ずセットで検証してください。 (ジェトロ)

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6. まとめ
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スマートテキスタイルのEU分類は、単一の新ルールが突然降ってくるというより、CNの枠組みの中で、分類規則、CN説明注、BTI、公開システムを通じて基準が積み上がっていく性格が強い分野です。 (Taxation and Customs Union)

実務での勝ち筋は明確です。

  1. 輸入時の提示形態を設計し、文書化する
  2. 主要機能と本質的特性を、客観資料で説明できるようにする
  3. CLASSで探索し、必要ならBTIで確定させる
  4. 分類変更が原産地規則と関税率に与える影響まで同時に試算する

CBPが「燃料ポンプ+液面センサー一体品」の再分類を提案した件を、実務目線で読み解く:一体品の分類リスク

米国の税関当局CBPが、車載向けの「燃料ポンプと燃料レベルセンサー(液面センサー)が一体となったユニット」について、過去の分類見解を見直し、別のHS番号へ動かす提案を公表したと報じられています。結論から言うと、従来「液面計測(9026)」として扱ってきたものを、「内燃機関用のポンプ(8413)」として扱う方向の提案で、一般税率ベースでは無税から2.5%へ変わり得る、というのがポイントです。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

以下、ビジネスマン向けに、何が起きているのか、なぜ重要か、今すぐ何をすべきかを整理します。


1. 何が起きているのか:提案の概要と期限

報道ベースでは、CBPは2025年12月31日付のCustoms Bulletinで、燃料ポンプ+燃料レベルセンサーの一体品(fuel sender等と呼ばれることが多い)について、ポンプとしての分類(HTSUS 8413.30.90)へ再分類し、関連する既存の判断(NY 809868)を撤回する提案を出しています。コメント期限は2026年1月31日とされています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

重要なのは、これは「確定」ではなく「提案」である点です。とはいえ、コメント募集は、裏を返せばCBPが一定の結論を持って動いているサインでもあり、影響を受ける企業は手当てが必要です。


2. そもそも過去はどう分類されていたのか:NY 809868の読みどころ

1995年のNY 809868では、対象品は「燃料ポンプ部分」と「フロート(浮き)式の液面センサー部分」を持つアセンブリで、燃料タンク内に挿入され、液面変化に応じた電気信号をメーターへ送る、と説明されています。 (Customs Mobile)

当時の整理は実務的で、機能が2つあり(ポンプ=8413、液面センサー=9026)、特定の単独見出しがないとして、GRI 3(c)により「番号の後ろに出てくる方」を採って9026に寄せた、というロジックでした。 (Customs Mobile)

ここが今回の論点の出発点です。すなわち「二機能品をどう扱うか」を、CBPが別の理屈で組み替えようとしている、という構図になります。


3. 今回CBPはなぜ「ポンプ(8413)」に寄せたいのか

報道では、CBPはこの一体品を「複合機械(composite machines)」として捉え、主たる機能はタンクからエンジンへ燃料を送ること=ポンプが中核であり、液面センサーの情報は有用だが付随的だ、という立て付けで説明しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

要するに、昔の「二機能だから最後の番号(GRI 3(c))」ではなく、いまは「主機能で決める」という考え方で、ポンプ側に寄せたい、という発想です。


4. 企業への影響:関税だけでは終わらない

4-1. 関税コストの増加可能性

HTS 9026.10.20(電気式の液面計測等)は、USITCのHTS検索でも一般税率がFree(無税)として表示されます。 (hts.usitc.gov)
一方、8413.30.9090等の内燃機関用ポンプ類は、CBPの他の分類例でも2.5%が示されています。 (rulings.cbp.gov)

例えば年間輸入CIF価格が10百万ドル相当なら、単純計算で追加関税コストは25万ドル規模になり得ます(一般税率のみの概算)。

ただし、USMCAなどの特恵で結果的にゼロになるケースもあり得るため、最終影響は「原産地」「特恵適用」「追加関税の有無」まで含めて試算が必要です。

4-2. 税率以外の二次影響

HS番号が変わると、社内の品目マスター、通関指示、価格転嫁ロジック、引当金、顧客との契約条項(関税負担者)に波及します。加えて、特定国追加関税や統計、社内監査の観点でも「なぜこの番号なのか」を説明できる状態が必要になります。


5. 実務対応:今すぐやるべきことチェック

  1. 該当品の棚卸し
    ・fuel sender、fuel pump module、fuel level sensor integrated などの呼称で買っている部品を抽出
    ・部品表(BOM)と仕様書で、ポンプ機能とセンサー機能の構成、出力信号、使用場所(タンク内搭載など)を確認
  2. 影響試算
    ・現行分類(9026)での輸入実績金額を集計
    ・仮に8413へ動いた場合の一般税率差分(概算)を算出
    ・特恵適用の可否(USMCA等)で結果がどう変わるかも並行試算
  3. 根拠資料の整備
    ・機能説明書、回路やフロート機構の説明、ポンプ単体での販売有無、センサー単体での使用可能性など
    ・分類ロジックを、GRIと注記に沿って文章化(監査対応のミニドシエ化)
  4. コメント提出の検討
    法的には、CBPは解釈変更や撤回に当たり公告と意見募集を行う枠組みを持っています。 (法律情報研究所)
    影響が大きい企業ほど、技術的事実と分類ロジックを整理した上で、期限までに意見提出する価値があります(賛否は別として、実態を正確に伝えること自体が重要です)。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

6. コメント作成で争点になりやすい論点

・製品の「主たる機能」は何か(車両としての役割、故障時のフェイル動作、制御上の重要度)
・ポンプとセンサーが機能的に不可分か、それとも単なる同梱か
・市場実態として「燃料計測ユニット」として買われているのか、「燃料供給ユニット」として買われているのか
・説明資料(カタログ、図面、ECU信号仕様)が、どちらの機能を主として描いているか

ここは、技術部門の文言がそのまま分類ロジックに直結します。通関・法務・技術で同じ絵を見て、言葉を揃えるのが最短ルートです。


まとめ:今回の話は「一体品の分類リスク」が表面化した典型例

今回の提案は、古い判断でも見直され得ること、そして二機能一体品が「最後の番号」から「主機能」へ寄せられる可能性があることを示しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

確定前の今だからこそ、影響棚卸し、試算、根拠整備、必要ならコメント提出までを一気通貫で行うのが、最もコスト効率の良い対応になります。

タイ税関が電子機器パーツのHSコード解釈を厳格化

実務で最も警戒すべきポイントは2つあります。
1つ目は、通関時の分類(HS)に対する追加資料要求が増え、通関の初速が落ちること。
2つ目は、通関後の事後調査で分類差を指摘され、追徴や手続き負担が増えることです。

タイでは以前から、関税分類の解釈相違がFTA適用可否や追徴に直結しやすいという指摘があります。JETROは、タイ税関の関税分類解釈を起点に、輸入時または事後調査でHS相違を指摘され、過去に遡及して負担が生じる事例に言及しています。(JETRO)
さらに近年は、当局側がデジタル化と監査高度化を進め、HSコードを含む申告の正確性をより厳密に検証する方向性が明確です。タイの税関・税務環境が厳格化し、税関当局が事後調査やAI活用を強化している旨が、PwC Thailandの発信でも説明されています。(PwC)

以下、電子機器パーツに焦点を当てて、何が起きやすいのか、企業はどう備えるべきかを、HSコード実務の観点で整理します。


1. 「厳格化」が意味するもの:現場では何が変わるか

ニュースの見出しが「HSコード解釈の厳格化」である場合、現場で起きやすい変化は概ね次の3類型です。

  1. 申告時のエビデンス要求が増える
    インボイス品名が抽象的、部品用途が曖昧、仕様が不足している場合に、カタログ、仕様書、写真、構成部材、機能説明の追加提出を求められやすくなります。郵便・小口領域でも、タイ向けは2026年1月1日以降、通関電子データの要求が強化され、不十分・不正確だと遅延や返送リスクが高まると日本郵便が注意喚起しています(6桁HS推奨、詳細な品名等)。(郵便局 | 日本郵便株式会社)
  2. 部品か完成品か、複合品かの線引きが厳しくなる
    電子部品はモジュール化が進み、「単なる部品」ではなく、特定機能を完結するユニットとして評価されやすい領域です。ここを税関側が厳密に見始めると、分類が変わるだけでなく、必要許認可や税率、FTA適用実務まで連鎖します。
  3. 事後調査での再判定が増える
    タイ当局は事後調査の仕組みを整備し、輸入時は迅速化しつつ、後段で精緻に確認する運用を強めています。(PwC)
    この局面では、同一品目を継続輸入している企業ほど、過去分まで一括で影響が出ます。

2. なぜ「電子機器パーツ」が狙われやすいのか

電子機器パーツは、税関分類の観点で「揉めやすい条件」が揃っています。

  • 製品の多様化が速く、機能と構造が短期間で変わる
  • 部品と完成品の境界が曖昧になりやすい(モジュール、組立品、キット)
  • 章またぎ(第84類・第85類・第90類など)が起きやすい
  • HSの違いが、関税だけでなく規制(許認可、標準、禁制)やFTA実務に波及しやすい

加えて、タイでは従来から「担当官によりHSコードの解釈が異なる」「判断基準の透明性が課題」といった指摘が、日本側の対外要望の中で繰り返し表面化しています。(jmcti.org)


3. 電子機器パーツで頻出する分類論点(実務での地雷)

ここからは、企業側が社内チェックリストに落とし込みやすい形で、論点を整理します。個別のHS番号断定が目的ではなく、税関から質問される論点を先回りして潰すことが目的です。

論点A 部品(parts)として認められるか

チェック観点

  • 当該パーツは、特定の機器に専ら又は主として使用されるか
  • 単体で独立した機能を発揮するか(測定、変換、通信、制御など)
  • ソフトウェアを搭載し、単体で特定機能を完結するか
  • 外観上、完成品の性格が強いか(筐体、表示、入出力、電源等)

用意する証跡

  • 用途を特定できる資料(組込先の型式、図面、取付位置、BOM上の位置付け)
  • 単体機能の範囲が分かる資料(仕様書、ブロック図、入出力仕様)
  • 市販汎用品か専用品かの説明

論点B 複合機能品の「本質」判定

チェック観点

  • 複数機能がある場合、主要機能は何か
  • 主要機能を支える部材構成は何か(価値、体積、役割)
  • 測定機能があるのか、制御機能があるのか、単なる信号変換か

用意する証跡

  • 機能説明(何を入力し、何を出力し、何を達成する製品か)
  • 構成部材表(主要IC、センサー素子、電源、通信部等)
  • 動作モードと使用シーン

論点C 通関・FTAでの「HS不一致」リスク

タイでは、原産地証明書に記載されたHSと、輸入通関で税関が判断するHSが不一致とされ、FTA税率が認められない相談が多いとJETROが指摘しています。(JETRO)
分類厳格化局面では、この不一致が起きる頻度が上がります。

用意する証跡

  • FTAで使うHS(協定上の基準年・桁数)と、通関で使うHS(現行税番)の対応関係
  • 相手国輸入者と合意したHS見解メモ
  • 分類根拠(後述の分類ドシエ)

4. 会社が今日から整備すべき「分類ドシエ」最低限セット

電子機器パーツで通関が止まりやすい会社ほど、HSを「番号」ではなく「判断記録」として持っていません。厳格化局面で効くのは、次のような最低限のドシエです。

  • 製品概要:用途、組込先、製品写真
  • 機能説明:入力、処理、出力、主要機能
  • 仕様書:電気仕様、通信仕様、測定範囲等
  • 構成部材:主要部品表、基板実装の有無、ソフトウェア搭載の有無
  • 分類ロジック:どの論点で分岐し、なぜその結論か(社内判定メモで可)
  • 取引実態:インボイス品名、型番体系、梱包形態、セット有無
  • 運用履歴:過去の申告実績、指摘履歴、差戻し履歴

タイでは、事前教示制度の活用が推奨される一方、回答まで時間を要することもある、という現場声もJETROが報告しています。(JETRO)
だからこそ、事前教示を待つ間も「自社の説明責任」を果たせる形に整えることが先決です。


5. タイで揉めたときの実務手順:止めない、燃やさない

1) まずは「分類の争点」を言語化する

税関とのやり取りが長期化する企業は、争点が整理できていないことが多いです。
部品か完成品か、主要機能は何か、どこが章またぎか。争点を1枚にまとめて提出できるようにします。

2) 早期に「事前教示」または「分類判断の相談ルート」に載せる

タイでは、輸入時に関税分類解釈の確認を税関側に依頼する運用も紹介されています。(JETRO)
社内で抱え込まず、輸入者・通関業者と一体で、当局照会の段取りを作るのが現実的です。

3) 係争中でも貨物を止めない選択肢を準備する

分類が確定しない場合でも、保証金を積んで通関を進め、後で結論を受ける運用があります。タイの電子輸入手続きマニュアルでも、HS分類を争う場合の保証金・異議の扱いが説明されています。(ccc.customs.go.th)


6. まとめ:厳格化局面で勝つ会社は「番号」より「根拠」を持つ

電子機器パーツのHS分類は、技術進化で曖昧さが増える一方、税関側はデジタル化と監査高度化で、説明責任の水準を引き上げています。(PwC)
このギャップを埋める最短ルートは、分類ドシエを整備し、部品・複合機能・章またぎの論点を先回りして潰すことです。

厳格化は、正しく準備した企業にとっては「予見可能性を上げるチャンス」にもなります。通関を止めず、追徴を防ぎ、FTAも取りこぼさないために、まずは自社の電子部品トップ品目から、分類根拠の棚卸しを始めてください。

■HS2028■④e-bike、ドローン、清掃ロボット関連のHSコード

番号の付け替えではなく、分類の境界線が動く

2028年1月1日発効予定のHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(Article 16 Recommendation)に基づく新しいHS版で、299セットの改正を含みます。改正の狙いとして「新製品や国際標準の反映により分類を容易にする」例に、e-bike、清掃ロボット、ドローンが明示されています。

本稿では、公開一次情報で確度高く言える範囲に絞り、これら3分野でどのような影響が出やすいかを、ビジネスマン向けに整理します。
注意点として、改正勧告の全文(どのHS6桁がどう変わるか)は、各国の国内実装や相関表の整備と合わせて最終確認が必要です。ここでは、確定情報と、実務的に起きやすい影響を分けて説明します。(世界税関機関)


1. まず押さえるべき「影響の出方」

e-bike、ドローン、清掃ロボットに共通するリスクは、分類が揺れやすい境界線にいることです。

・製品の実態は同じでも、呼び方や用途説明で章がブレる
・自律機能やソフト機能の追加で、従来の品名表現に当てにくくなる
・各国が独自に細分(8桁、10桁)してきた分野が、HS(最初の6桁)側で整え直される

HS2028はまさにこの「当てにくい分野」を整える方向が公式説明で示されています。


2. ドローンはここが具体的に動く

自律補助機能があっても、8806で迷わない方向へ

ドローン(無人航空機)は、HS2022で見出し8806が新設され、重量区分などで細分されています。ところが近年は、帰還(Return to Home)や障害物回避のような補助的な自律機能が標準化し、「remote-controlled flight only(遠隔操縦のみ)」という文言だと実態とズレる場面が出てきました。

この点について、WCOのHS見直し小委員会(RSC)で、8806.2の品名表現を
remote-controlled flight only から remote-controlled flight, with or without auxiliary autonomous flight
へ改める合意があったこと、さらに「remote-controlled flight」の意味を定義する章注案が提案され、HS委員会へ送付されHS2028で採択され得ることが、米国政府の公開ページで具体的に説明されています。(貿易庁 | Trade.gov)

企業実務への影響は次の通りです。
・自律補助機能付きドローンでも、遠隔操縦型として8806の枠内に位置づけやすくなる
・「自律機能があるから別分類」といった誤解による差戻しや照会が減りやすい
・一方で、重量区分や用途区分(旅客運送設計など)の判定は引き続き重要

現場で必要になる証跡は、従来の仕様書に加え、操縦形態(遠隔操縦を前提にし、補助的自律機能を含むこと)、最大離陸重量、運用形態の説明です。(貿易庁 | Trade.gov)


3. 清掃ロボットはここが具体的に動く

85.08の文言や扱いを明確化する動きが出ている

清掃ロボットは、家庭用のロボット掃除機だけでなく、床洗浄、モップ掛け、業務用の自走清掃など形態が広がり、各国で分類が揺れやすい分野です。

まず現状の参考として、米国CBPの分類例では、Wi-Fi接続のロボット掃除機が「self-drive(自律走行)モード」を備えていても、真空式掃除機として8508に分類されています。(customsmobile.com)
つまり、少なくとも一部当局実務では「ロボットであること」自体は85.08から外れる理由になっていません。

一方、HS見直しの議論では、清掃ロボットについて「見出し85.08の品名表現を修正する可能性」が議題として挙がっています。HS見直し小委員会のドラフト議題(公開ファイル)には、見出し85.08に関して cleaning robots を対象とした品名修正の可能性が明記されています。(nbr.gov.bd)
さらに、WCO職員によるHS改正案の説明資料でも、清掃ロボットが改正テーマとして列挙されています。(unstats.un.org)

企業実務への影響は次の通りです。
・清掃ロボットを85.08など既存の枠に当てやすくするため、品名や注記の整備が進む可能性
・国ごとにバラついていた「ロボット清掃機器」の扱いが寄っていき、税番の安定度が上がりやすい
・逆に、これまで別章で運用していた場合は、HS2028切替時に品目マスターの見直しが必要

社内で先に整えるべきデータ項目は、清掃方式(吸引、ブラシ、モップ、洗浄液の有無)、ダスト容器の有無と容量、電動機内蔵、用途(家庭用か業務用か)、自走の有無です。ここが揃うと、切替時に分類根拠の再作成が速くなります。(customsmobile.com)


4. e-bikeは何が起きやすいか

国別の細分が先行しており、HS6桁側で整理されやすい領域

e-bikeは、HS2028で分類容易化の例として明示されています。
一方で、公開情報だけで「HS6桁が何番に分割される」と断定できる段階の資料は限られます。そこで本稿では、企業にとって現実的に起きやすい影響を、確度の高い観察事実から整理します。

観察事実として、e-bikeはすでに多くの国・地域で細分管理が先行しています。
例えば英国の公開ガイダンスでは、ペダルアシスト型電動自転車を8711 60 10(CNの区分)として扱う説明が示されています。(GOV.UK)
EUの文書でも、通常の電動自転車とスピード型電動自転車を別コードで扱ってきた経緯が記されています。(EUR-Lex)
またEUは、e-bikeがHS8711 60に分類されることを前提に、原産地の非優遇ルールの情報提供を行っています。(Taxation and Customs Union)

この状況は、次を意味します。
・HS6桁(国際共通の最初の6桁)では一括でも、各国が8桁以降で分けて管理せざるを得なかった
・その結果、国をまたぐと「同じe-bikeのはずが統計や社内マスター上は別物」になりやすい
・HS2028が分類容易化を狙う以上、HS6桁側で境界線を明確にする方向の議論が入りやすい

企業実務への影響は、コードが変わるかどうか以前に、判定に必要な客観仕様を揃えることが必須になる点です。
特に次の仕様は、将来の区分整理の基礎データとして重要度が高いです。
・ペダルアシストか、スロットル主体か
・定格出力、最高速度、車両区分の根拠
・バッテリー仕様と同梱形態
・車体重量、用途(公道、私有地、貨物用途など)

これらが揃っていないと、HS2028切替後に取引先や通関業者から「仕様を出してほしい」が集中し、出荷が止まりやすくなります。


5. 3分野共通の社内アクション

2028年に止まらないための最小セット

  1. 品目マスターに、分類に効く仕様項目を追加する
    e-bikeは出力と車両性、ドローンは操縦形態と重量、清掃ロボは清掃方式と機能で、まずは項目を揃えるのが最優先です。(貿易庁 | Trade.gov)
  2. HS2022とHS2028を二重管理できる設計にする
    切替日は2028年1月1日です。HS6桁が変わると、申告、原産地、統計、契約表示まで連鎖します。WCOもHS2028の公表と発効タイムラインを示しています。(世界税関機関)
  3. 争点になりやすい品目は、分類根拠メモを先に作る
    新技術系は「なぜその章なのか」を後から説明できることが、照会対応と監査対応のコストを決めます。HS2028はまさに、こうした分野の分類容易化を目的に含む改正です。

まとめ

HS2028で e-bike、ドローン、清掃ロボットが影響を受けやすい理由は、製品の進化速度が速く、従来の品名表現だけでは境界が曖昧になりやすいからです。EUの公式説明でも、これらが分類容易化の対象例として挙げられています。

ドローンは、補助的自律機能を前提に8806の文言を更新する提案が具体的に示されており、HS2028で採択され得ます。(貿易庁 | Trade.gov)
清掃ロボットも、85.08の扱いを明確化する議論が確認でき、実務上の揺れを抑える方向が見えます。(nbr.gov.bd)
e-bikeは各国で細分管理が先行しており、HS6桁側で整理が入りやすい領域です。(GOV.UK)

■HS2028■③ヘルスケア食品サプリメントと食品強化用ミックス関連のHSコード

2106一括運用が通用しにくくなる理由と、企業が備えるべき実務ポイント

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCOが取りまとめた299セットの改正で、社会・環境・健康・セキュリティ上の要請を反映しつつ、分類のしやすさと監視のしやすさを高める方向で設計されています。EUの公式説明でも、改正の具体例として食品サプリメントと食品強化用ミックスが明示されています。
またWCOは、HS2028の改正勧告がまとまり、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れを示しています。(世界税関機関)

本稿では、食品サプリメントと食品強化用ミックスについて、HS2028で想定される変化の方向性と、企業実務で起きる影響を、一次情報に基づく範囲で整理します。
注意点として、どのHS6桁が新設・統合・移動するかの確定は、WCOが公表するHS2028法文と相関表で最終確認する必要があります。一方で、分野として改正対象に入ること自体は公式資料で確認できます。


1. なぜ食品サプリと食品強化ミックスがHS改正のテーマになるのか

理由は大きく2つあります。

1つ目は、税関が識別したい商品が増えたことです。
食品サプリは、健康志向の高まりとともに市場が拡大し、形態もカプセル、錠剤、ゼリー、粉末、液体飲料など多様化しました。その結果、食品としての調製品なのか、飲料なのか、医薬品に近いのか、境界で分類のブレが起きやすくなっています。EUの裁判例でも、食品サプリの液体形態をめぐり、2106と2202の境界が争点になっています。(EUR-Lex)

2つ目は、食品強化が政策目的と結びつきやすいことです。
食品強化は、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素を食品に添加して栄養状態の改善を狙う施策で、国や地域で制度設計されやすい分野です。WHOも食品強化の定義と目的を整理しています。(世界保健機関)
この分野で使われる食品強化用ミックスは、最終食品ではなく、製造工程で投入されるプレミックスであることが多く、貿易・統計・監視の観点から識別ニーズが高い商品群です。HS2028では、こうしたニーズを踏まえた区分整備が例示されています。


2. HS2028で起きやすい変化の方向性

確度高く言えることと、実務上の見立て

2-1. 確度高く言えること

・HS2028の改正テーマとして、食品サプリメントと食品強化用ミックスが公式文書で明示されている
・HS2028は分類を容易にし、政府・産業・社会目的のモニタリングに資する区分を整備する方向で改正される
・WCOの関連組織でも、dietary supplementsの分類改正に関わる論点がHS2028の提案群として扱われている(世界税関機関)

2-2. 実務上の見立て

ここからは、上記の公式方針と、現行運用での争点を踏まえた見立てです。断言ではなく、影響が出る典型パターンとして整理します。

・HS6桁レベルで、食品サプリと食品強化ミックスを識別しやすい区分が追加される可能性
現状、多くの国で食品サプリは2106に寄せられがちですが、液体形態では2202側との境界問題も起きています。(EUR-Lex)
HS2028が分類容易化を狙う以上、こうした境界での判断基準や区分の粒度が調整される可能性があります。

・食品強化用ミックスは、最終食品と区別して追跡できる方向へ
食品強化のプレミックスは、最終製品ではなく、製造用投入材として動くため、統計・監視上は別管理したいニーズがあります。HS2028が食品強化用ミックスを例示したのは、その識別力を上げる方向性を示唆します。


3. 企業にとっての具体的な影響

何が増え、どこで止まりやすくなるか

3-1. 食品サプリは、品名よりも形態と用途情報が重要になる

現行でも、カプセルや錠剤など、摂取量が明確な形態のサプリは2106に分類されるという説明が政府ガイダンスにあります。(GOV.UK)
一方、液体形態は飲料(2202)側との境界問題があり、実務上の照会・差戻しが起きやすい類型です。(EUR-Lex)

HS2028で区分が細かくなると、通関で求められやすい情報は次の方向になります。
・形態:カプセル、錠剤、粉末、ゼリー、液体など
・表示と用途:サプリとしての摂取目的か、嗜好飲料か
・成分構成:ビタミン・ミネラル、植物抽出物、たん白、糖類などの主成分
・包装:小分けか、業務用バルクか

結論として、これまで商品名だけで通っていたものが、仕様書と表示情報まで含めて説明責任が重くなる可能性があります。

3-2. 食品強化用ミックスは、製造投入材としての説明が必要になる

食品強化用ミックスは、最終食品ではなく、微量栄養素を既定量で投入するためのプレミックスです。食品強化自体が公衆衛生と結びつくため、成分や用途の説明が重要になります。(世界保健機関)

実務で問われやすいのは次の点です。
・用途:最終食品向けか、飼料向けか
・投入先:小麦粉、米、塩、乳製品、飲料など
・組成:微量栄養素の種類と濃度、担体、固結防止剤等
・流通形態:業務用バルクか、消費者向け包装か

HS2028で識別力が上がると、これらの情報が分類の前提として必要になり、社内マスターに持たせないと運用が詰まりやすくなります。


4. すぐ始められる社内準備

ビジネス側の実装コストを下げる順番

  1. 対象品目の棚卸しを、形態と用途で切る
    ・食品サプリ:固形の摂取量明確品、液体形態、ゼリー・粉末
    ・食品強化ミックス:製造投入材、バルク、投入先が複数のもの
  2. 製品情報の最小セットを統一する
    ・原材料組成表、仕様書、ラベル表示、用途説明
    ・業務用は投入先と投入量の情報
  3. 現行分類の争点を先に潰す
    ・2106と2202の境界になり得る液体系サプリは、根拠と説明資料を強化する(EUR-Lex)
  4. HS2022とHS2028の二重管理を前提にデータ設計する
    ・WCOの公表テキストと相関表を受けた一括置換ができるよう、品目ID軸で履歴を持つ(世界税関機関)

まとめ

HS2028では、食品サプリメントと食品強化用ミックスが改正対象として明示され、分類をしやすくし、モニタリングにも使える品目体系へ寄せる方向が公式に示されています。
企業にとっての本質的な影響は、コードが変わることそのものよりも、分類に必要な情報が増え、説明責任が重くなることです。特に液体形態のサプリは、現行でも2106と2202の境界が争点になり得るため、HS2028移行で照会が増えやすい領域です。(EUR-Lex)

今やるべきことは、対象品目を形態と用途で棚卸しし、成分と表示を含む最小証跡セットを揃え、HS2028の公表テキストと相関表が出た瞬間にマスター改修へ移れる状態を作ることです。(世界税関機関)

主要国の事前分類申請と審査リードタイム比較

事前分類申請とは、輸出入申告の前に税関当局へ品目分類(HSコードや統計品目番号など)について照会し、公式な判断(裁定、事前教示、Advance ruling、BTIなど)を得る手続です。品目分類は関税率だけでなく、原産地規則の適用、輸入規制、統計、アンチダンピング課税などの前提となるため、誤分類はコスト増や通関遅延、修正申告やペナルティの原因となり得ます。事前に公式判断を確保しておくことで、通関の予見可能性と社内の見積精度を高めることができます。​

ただし、国や地域ごとに制度名、起算点、審査に要する標準日数、例外時の扱いが異なります。本稿では、各当局が公開しているサービス標準や法定期限を基準に、主要国のリードタイムを比較します。

比較の前提

リードタイムの起算点が国ごとに異なる

同じ「30日」でも、申請書の受理日から数える国もあれば、必要資料が揃った時点から数える国、または受理可否の審査期間と本審査期間が分かれている国があります。本稿の比較表では、当局資料が明示する起算点も併記します。​

追加資料要求や分析が入ると期限が延長される

多くの国で、追加資料の提出待ち期間や、試験・分析・専門家照会などの期間が標準期限の計算から除外される、または回答期限が延長される扱いとなっています。各制度の注意点も表と解説に反映します。​

本稿で扱うのは「品目分類」に関する事前判断

各国には原産地や関税評価、表示・マーキングまで含む包括的な事前教示制度もありますが、本稿は主に品目分類の事前判断に焦点を当てます。​

主要国の審査リードタイム比較表

国・地域制度の呼称(代表例)公表されている目安の審査リードタイム起算点・補足(要点)
日本事前教示制度(関税分類)原則30日以内文書照会の受付後、30日以内の早期回答に努める旨が案内されている​。
韓国品목분류 사전심사(品目分類事前審査)原則30日(一定の場合は15日)申請書受付日から30日が処理期限。緊急性が高い特定事由では15日。委員会審議、補正、試験・分析、対外照会などの期間は期限計算から除外される​。
豪州Tariff Advice通常30日(需要集中時は長期化あり)通常状況でのサービス標準が30日と明示。混雑時は長くなる可能性がある​。
中国商品归类预裁定(事前裁定)受理後60日(受理判断は10日以内)申請書と関連資料受領後10日以内に受理可否を判断し、受理後60日以内に決定書を発行。化验・検測・鑑定・専門家論証などに要する時間は60日に算入しない​。
EUBTI(Binding Tariff Information)受理後120日申請受領後30日以内に受理判断、その後、受理後120日でBTI決定を発行。例外的に延長の可能性あり​。
英国(グレートブリテン)Advance Tariff Ruling30〜120日申請後、30〜120日で返信すると明記​。
英国(北アイルランド)Binding Tariff Information decision120日を目標申請に対し120日以内の回答を目標とする旨が明記​。
カナダCBSA Advance Rulings必要情報受領後120日以内申請に必要な情報を全て受領してから120日以内が標準。追加情報を求めた場合、その受領後に120日のカウントが始まる​。
米国USMCA関連のAdvance ruling120日(延長要因あり)申請受領後120日以内にAdvance ruling letterを発行する旨が規定される一方、追加情報提出や他機関情報取得、ラボ分析が必要な場合は回答時間が延長され得る​。

リードタイムの分類

リードタイムを基準に分類すると、主要国は次の3グループに整理できます。

約30日グループ

日本、韓国、豪州がこの水準に位置します。いずれも、書類の完成度が高く、追加照会や試験が不要なケースでは短期間で結論が出やすい設計となっています。​

約60日グループ

中国は受理後60日が基本で、受理判断10日と組み合わせた制度設計です。ただし、化学分析や鑑定などの期間が60日に算入されないため、対象品目によっては実務上の所要日数が伸びる可能性があります。​

約120日グループ

EU、カナダ、米国(USMCA手続上)、英国(制度によって30〜120日、または120日目標)が概ねこの範囲です。EUは受理判断フェーズと受理後の決定フェーズが明確に分かれており、制度上は受理後120日に整理されています。​

リードタイムが延びる典型要因

次の要因は、多くの国で「期限延長」または「期限計算から除外」として扱われ、実務上の想定日数を押し上げます。

追加資料の要求と提出待ち

カナダでは、追加情報の提出後に120日のサービス標準が開始すると明示されています。米国(USMCA手続)でも、補足情報の提出が回答時間を延長し得る旨が記載されています。​

試験、分析、鑑定、専門家照会

韓国は、試験・分析や専門機関照会などの期間を期限計算から除外する旨が明確です。中国も、化验・検測・鑑定・専門家論証などの期間は60日に算入しないと明記しています。​

需要集中や繁忙期

豪州は、通常30日のサービス標準に加え、需要が多い時期は長くなる可能性を明示しています。

例外的な延長規定

EUは、受理後120日が基本である一方、例外的に延長され得る旨が示されています。​

実務で使える申請準備のポイント

リードタイムの短縮と回答の確実性を高めるため、国をまたいで通用する実務ポイントを整理します。

申請書の製品説明を分類ロジックに直結させる

以下の情報を明確に記載することが重要です。

  • 機能、用途、作動原理
  • 材質、成分比、構造(層構造、部品構成)
  • 製造工程(分類論点が工程に依存する場合)
  • 型番ごとの差異(どこまで同一品として扱えるか)

補助資料を最初から揃える

カタログ、仕様書、図面、写真、成分表や試験成績書などを初回提出時に揃えることが重要です。必要に応じてサンプル提出の可否も検討してください。追加資料要求が発生すると、各国で期限が延びたり、起算点が実質リセットされたりします。​

期限の「数字」だけでなく「起算点」を社内で統一管理する

例えばEUは、受理判断に最大30日、その後に受理後120日という設計なので、社内計画では単純な120日ではなく、受理前後を分けて見積もる方が安全です。中国も、受理可否の判断10日と受理後60日が示されており、同様に二段階で管理した方が誤差が減ります。​

リードタイムを逆算して「申請の締切日」を決める

以下のステップで社内スケジュールを設計します。

  • 新製品ローンチ、初回出荷、価格確定、契約締結など、分類が前提となるマイルストーンを列挙
  • 対象国の標準日数に、追加資料や試験のバッファを上乗せ
  • 輸出者と輸入者で、どちらが申請主体かも事前に合意

まとめ

主要国の事前分類の審査リードタイムは、30日、60日、120日という目安に概ね収れんします。ただし、実際の所要日数は、起算点、追加資料、試験・分析、当局の繁忙などで変動します。公式に示された「標準日数」は、「完全な情報が揃っている」ことを前提に設計されているケースが多いため、最も効果的な短縮策は初回提出の完成度を上げて追加照会を減らすことです。​

HS2028と品目分類アップデートを経営課題に変える方法 2028年1月1日に向けた企業の実務ロードマップ


はじめに

HS改正は、関税コストやEPA・FTAの原産地判定、輸出入規制、社内マスタやBIの集計軸まで、企業の意思決定に直結する基盤データの更新です。特にHSの改正は、現場が気づいた時にはシステム改修やデータ整備が間に合わず、誤申告やコスト増に繋がるケースが起きやすいテーマです。

この記事では、メールの要点を踏まえつつ、HS2028の背景、企業に起こる現実的な影響、そして今から取るべき準備を、経営・事業サイドの視点で整理します。根拠は一次情報を優先し、公式発表を中心に組み立てます。wcoomd

まず結論:今日のメールが示す3つの意味

メールの短い文面を、ビジネス視点で言い換えるとポイントは次の3つです。

HS2028はすでに「準備段階」ではなく「実装計画を動かす段階」に入っている

WCOの第75回HS委員会は、2025年3月にHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択しました。 この勧告は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する予定です。 つまり、企業に残された時間は「まだ2年ある」ではなく、「本格対応のための猶予が実質2年しかない」という意味です。strtrade+1​

HS2022からHS2028へのマッピングは、通関だけでなく社内データの変換作業である

メールが示唆する「HS2022→HS2028のマッピング開始」は、単なるコード置換ではありません。多くの場合、旧コード1つが新コード複数に分岐したり、統合されたりします。結果として、商品マスタ、BOM、購買カテゴリ、輸出入統計の集計軸まで影響します。WCOのHS委員会第76回会合(2025年9月)では、HS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)の作成に着手し、改善された形式を採用することで明確性と使いやすさを高める方針が示されました。customsmanager+1​

国別の関税率表・規制の追随で、実際のコストとリスクが確定する

HSは世界共通の6桁ですが、各国はその先の桁で自国の関税率表や統計品目表を作ります。したがって、企業にとっての本番は「自社が輸出入する国で、いつ、どのように関税率表や規制が改正されるか」です。米国ではUSITCが2025年8月にHTS改正のための調査(Investigation No. 1205-032)を開始し、2026年2月に予備案を公表、2026年9月に大統領へ報告する予定です。 これは、主要国がすでに国内実装に動き出していることを示す分かりやすい例です。usitc+1​

HS2028の公式タイムラインを整理する

意思決定で重要なのは、社内の工程表に落とせる形で公式の流れを押さえることです。

2025年3月
WCOのHS委員会第75回会合がHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択しました。 改正パッケージは299セットの改正で構成されています。aeb+2​

2025年6月
WCO理事会がHS2028改正案を採択し、HS条約締約国に回付しました。 締約国は6か月の留保期間中に異議を提起できます。tarifftel

2025年12月末
正式採択の予定です。wcoomd+1​

2026年1月
HS2028勧告が公表されます。 これが企業にとって全体像を把握できる最初のタイミングです。strtrade+2​

2028年1月1日
HS2028が発効し、各国の関税率表・統計品目表が順次HS2028ベースへ切替わります。tarifftel+2​

このスケジュールを見ると、企業が主導できる余地が大きいのは2026年から2027年にかけてです。ここでマスタ整備と影響分析を終えておかないと、2028年直前は各国の実装情報が押し寄せ、火消し型の対応になりがちです。

そもそもHS改正とは何を変えるのか

HSは6桁の国際共通コードで、各国・地域はこれに独自の枝番を付けて関税率表や統計品目表を運用しています。EUでは、HS6桁を土台に8桁のCN(Combined Nomenclature)が構成され、通関や統計に使われます。 つまり、国際共通部分(最初の6桁)が動くと、その上に乗る各国の体系が連鎖的に動きます。siccode

ビジネスに効くポイントは次の通りです。

  • HS改正は「商品名の辞書の更新」ではなく、企業の基幹データキーの更新
  • 同じ商品でも、分類ロジック(用途、材質、機能など)によって別コードになり得る
  • コードが変わると、関税率だけでなく、規制判定や社内集計も変わる

HS2028の方向性:なぜ改正されるのか

HS2028の改正は、単なる整理ではなく「政策目的を持ったアップデート」です。299セットの改正は、貿易パターンの変化、新技術の登場、そして社会・環境・安全保障上の要請に対応するためです。 具体例として、プラスチック廃棄物、ワクチン等の健康関連品目、農業分野で重要度が増した品目群、食品強化用のミックス、食品サプリメント、eバイク、半導体やトランスデューサ、清掃ロボット、ドローンなど、新製品・市場変化を踏まえた分類の整合が含まれます。aeb+2​

この点は経営層にとって重要です。なぜならHS改正は、次のような企業リスクを「構造的に増やす」からです。

  • 新技術領域は製品定義が早く変わり、分類根拠が揺らぎやすい
  • 環境・安全保障領域は規制との紐付けが強く、誤分類のペナルティが重くなりやすい
  • 簡素化の名目で統合・削除が起きると、旧データとの連続性が崩れ、集計・比較が難しくなる

「分類」アップデートが企業を揺らす理由

メール題名にあるClassificationは、単にHS改正だけでなく、日々積み上がる分類判断(分類裁定、分類意見、解説書の改正など)も含むと捉えるのが実務的です。

WCOのHS委員会は、HSの統一的解釈のために分類判断や解説の改正を継続的に行っています。第75回会合では105件の改正案、5件の解説注改正を採択し、第76回会合(2025年9月)では40件の分類決定を採択、21件の新規分類意見を作成し、2件の既存意見を削除しました。 また、HS2028とHS2022の相関表の議論も開始されています。wcoomd+2​

ここから導ける実務の教訓は明確です。分類は一度決めて終わりではなく、制度側の判断が積み重なっていく領域です。HS2028の大改正は、その積み重ねが一気に体系変更として表面化するイベントだと言えます。

ビジネスへの影響を「5つの損益項目」で見る

HS改正は通関や貿易管理の話に見えますが、事業PLの要素に分解すると、経営会議で議論しやすくなります。

関税と輸送を含む着地原価(landed cost)

HSコードが変われば、各国の関税率表で適用税率が変わる可能性があります。税率が同じでも、追加要件(統計単位、特別措置、規制コード付与など)が付くことがあります。国別の実装が確定するまで見通しは立ちにくいので、影響が大きい品目から順にシナリオ分析するのが現実的です。usitc

EPA・FTAの原産地判定

多くの協定では関税分類(項、号など)を使って原産地規則を定義します。HSが改正されると、ルールの適用解釈や、協定側の改訂・経過措置が論点になります。調達や生産設計の意思決定に影響するため、貿易管理部門だけに閉じない論点です。

輸出入規制・社内コンプライアンス

HSコードが規制の入口になっているケースは少なくありません。分類の精度がコンプライアンスの前提になります。

需要・売上・粗利の分析軸

HSを商品分類のキーとして社内集計に流用している企業は多いはずです。HS変更は、経営ダッシュボードの前年対比や市場シェア分析の連続性を壊し得ます。ここは財務・経営企画が早めに関与すべき領域です。

取引条件・価格交渉

関税コストが変われば、価格改定や契約条項(関税負担、価格改定条項、長期契約の見直し)に波及します。特にBtoBで長期契約が多い業界は、HS改正が「誰が追加コストを負担するか」の交渉材料になります。

2026年から始める実務ロードマップ

ここからが本題です。HS2028対応は、プロジェクトとして切り出すと成功確率が上がります。おすすめは次の6ステップです。

ステップ1 影響が大きい領域の棚卸し

  • 輸出入額上位の品目
  • 規制対象や監査頻度が高い品目
  • FTA利用比率が高い品目
  • 新技術カテゴリ(例:電子部品、機器、電池、環境関連など)

ステップ2 分類根拠の整備

コードだけを並べても、変更時に判断が揺れます。製品仕様、用途、材質、機能、構造、技術資料など、分類根拠の証跡を揃えます。

ステップ3 HS2022からHS2028へのマッピング設計

相関表を使う場合でも、単純な置換ではなく、分岐・統合の扱いが肝になります。WCO側でも相関表は重要な実装ツールとして議論されています。 社内では「自社の品目がどの分岐に該当するか」を決める必要があります。customsmanager+1​

ステップ4 国別の実装情報を監視する仕組みを作る

HSは各国で枝番と税率が付くため、国別ウォッチが必要です。特に輸出入量が多い国は、官報、税関告示、関税率表改正、関連機関のパブコメなどを定常監視に入れます。米国向け取引がある場合、USITCのHTS改正プロセスのように、ドラフトが公表されるタイミングを先に工程表へ入れられます。starusa+1​

ステップ5 システムとデータのバージョン管理を実装する

HSの年版(例:HS2022、HS2028)と適用期間をデータ項目として持ち、いつの時点でどのHS体系を使ったのかを追える設計にします。ここを曖昧にすると、監査対応とBIの整合が崩れます。

ステップ6 社外パートナーとの同期

通関業者、フォワーダー、海外子会社、主要サプライヤーに対し、いつから何を切り替えるかを共有します。データ連携をしている場合は、マッピングテーブルの配布・受領、テスト計画まで含めます。

経営層が見ておくべきKPI

現場任せにすると、進捗が見えません。次の指標は、経営側でもモニタリングしやすいです。

  • 売上または輸出入額の上位80パーセントを占める品目のうち、HS2028影響分析が完了した比率
  • マッピングで分岐・統合が発生する品目数(ここが工数とリスクの中心)
  • 規制対象品目の再確認完了率
  • 主要国別の実装情報収集状況(ドラフト入手、社内反映、テスト完了)

まとめ:HS2028は一度きりのイベントではない

HS2028は大きな節目ですが、そこがゴールではありません。WCOは継続的にHSの解釈と適用の統一を推進しており、今後も定期的な改正サイクルが続きます。 つまり、企業としては「改正のたびに頑張る」のではなく、「改正に強い運用能力」を作ることが投資対効果の高い戦略になります。wcoomd+1​

HSは通関のための番号に見えて、実態は利益管理と規制対応の共通キーです。今日のメールをきっかけに、2028年の切替を、リスク回避だけでなく、データ基盤整備と意思決定スピード向上の機会として設計していくのが得策です。


  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  2. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced
  3. https://www.customsmanager.info/post/wco-hs-decisions-what-changed-hsc-76-customs-manager-ltd
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/october/harmonized-system-committee-concludes-its-76th-session-with-remarkable-outcomes.aspx
  5. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  6. https://starusa.org/trade-news/usitc-investigation-launched-on-2028-harmonized-tariff-schedule-changes-to-align-with-global-standards/
  7. https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php
  8. https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/
  9. https://siccode.com/page/combined-nomenclature-cn
  10. https://global-scm.com/blog/?p=3091
  11. https://www.scribd.com/document/899687945/75
  12. https://www.internationaltradenews.co.uk/issue80/next_edition_of_harmonised_system_to_be_available_from_january_2026.htm
  13. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/tools-to-assist-with-the-classification-in-the-hs/hs_classification-decisions.aspx
  14. https://global-scm.com/hscf/archives/466
  15. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx?stf=1
  16. https://catts.eu/wco-wto-updates-april-2025/
  17. https://www.tariffnumber.com/info/combined-nomenclature