HS2022 第15類:動物性、植物性又は微生物性の油脂及びその分解生産物、調製食用脂並びに動物性又は植物性のろう(Animal, vegetable or microbial fats and oils and their cleavage products; prepared edible fats; animal or vegetable waxes)

用語の統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**で記載します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 大豆油、落花生油、オリーブ油、パーム油、菜種油などの油脂(化学的改質なし)(1507〜1515) (世界税関機構)
    • 水素添加・エステル交換等した油脂(ただし「さらに調製」していないもの)(1516) (世界税関機構)
    • マーガリンや、複数油脂の食用の混合・調製品(1517) (世界税関機構)
    • 化学的に改質(酸化・重合・硫黄化等)した油脂、または食用でない油脂混合物(1518) (世界税関機構)
    • 粗製グリセリン(1520)、ミツロウ等のろう(1521)、油滓・残留物(1522) (世界税関機構)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 第02.09項の豚又は家きんの脂肪(0209) (税関ポータル)
    • カカオ脂(ココアバター)(1804) (税関ポータル)
    • バター等(0405)を重量15%超含む調製食料品 → 主として第21類(例:スプレッド状の調製品が21類に回ることがある) (税関ポータル)
    • 油かす(搾りかす・抽出かす)(2304〜2306)や獣脂かす(2301) (税関ポータル)
    • 脂肪酸、せっけん、化粧品、調製ろう、硫酸化油等(第6部=主に第29類/第33類/第34類/第38類などに飛びやすい) (税関ポータル)
    • ファクチス(油由来の加硫ゴム様物質)(4002) (税関ポータル)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「化学的改質なし」か/「化学的改質あり」か(1501〜1517 vs 1518 など) (世界税関機構)
    2. 「さらに調製」しているか(1516 vs 1517) (世界税関機構)
    3. (頻出)オリーブ油:溶剤抽出か否か(1509 vs 1510)/菜種油:低エルカ酸か否か(1514.11/1514.19) (税関ポータル)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 食用油脂は**食品衛生(輸入届出・検査)**と絡みやすく、遅延・保管コストが出やすい(とくに初回輸入・新製造者)。 (厚生労働省)
    • FTA/EPAの原産地で、HSの付番ミスがPSR選択ミスにつながり、特恵否認になり得ます(RCEP/CPTPP等はHS版も要注意)。 (税関ポータル)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注で決める):第15類は**類注(除外・定義)**が強く、まず注で「入る/除外」を固めます(例:オリーブの溶剤抽出油は1509に入れない、など)。 (税関ポータル)
    • GIR6(6桁は同列比較):例えば1509はHS2022で細分が増え、1509.20/30/40/90のどれかを定義(酸度・カテゴリー)で落とします。 (税関ポータル)
    • GIR3(混合物・複合品):マーガリン等の「混合・調製」では、1516/1517/1518の境界が問題になり、性状・用途・加工工程が鍵になります。 (世界税関機構)
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 原料の由来(動物・植物・微生物) (世界税関機構)
    • 加工度(粗製/精製、脱ガム、脱酸、脱臭、脱色など)
    • 改質の有無(水素添加、エステル交換、酸化、重合など) (世界税関機構)
    • 用途(食用/工業用)混合・乳化しているか(1517に寄る)
    • 抽出方法(圧搾 vs 溶剤抽出:特にオリーブ) (税関ポータル)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず除外チェック
    • 0209(豚/家きん脂肪)、1804(カカオ脂)、21類(0405>15%の調製食料品)、23類(油かす)、第6部(脂肪酸・せっけん等)、4002(ファクチス)に当たらないか確認。 (税関ポータル)
  • Step2:品目タイプを決める
    • 「単体油脂/分別物」か、「混合・調製(食用)」か、「化学改質」か、「ろう/残渣/粗製グリセリン」か。 (世界税関機構)
  • Step3:改質・調製の度合いで分岐
    • 化学的改質なし → 1501〜1515
    • 水素添加等(1516に列挙された処理)で、さらに調製していない → 1516 (世界税関機構)
    • 食用の混合・調製(マーガリン等) → 1517 (世界税関機構)
    • 1516以外の化学的改質、または食用でない混合物等 → 1518 (世界税関機構)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第15類 vs 第21類:バター等(0405)を重量15%超含む“食用調製品”は21類に飛びやすい。 (世界税関機構)
    • 第15類 vs 第23類:油かす(搾りかす・抽出かす)は23類、15.22は“処理残渣”で性格が違う。 (税関ポータル)
    • 1509 vs 1510:オリーブ由来でも、溶剤抽出油は1510へ。 (税関ポータル)
    • 1516 vs 1517 vs 1518:水素添加等で「さらに調製なし」=1516、食用の混合・調製=1517、それ以外の化学改質/非食用混合=1518。 (世界税関機構)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
1501豚脂・家きん脂肪(0209/1503除く)ラード等0209(別章)や1503(ステアリン等)との線引き。 (世界税関機構)
1502牛・羊・山羊の脂肪(1503除く)牛脂(タロー)1503の「油・ステアリン等」でないか確認。 (世界税関機構)
1503ラードステアリン等(乳化・混合・調製なし)ラード油、タロー油「混合/調製」すると1517等に寄る可能性。 (世界税関機構)
1504魚・海生哺乳類の油脂(化学改質なし)魚肝油、魚油精製は可、化学改質すると1516/1518側も検討。 (世界税関機構)
1505羊毛脂(ラノリン)等ラノリン化粧品原料は33類へ飛びやすい点に注意(製品形態次第)。 (世界税関機構)
1506その他の動物性油脂(化学改質なし)骨脂等動物由来の規制(検疫)にも注意(後述)。 (世界税関機構)
1507大豆油(化学改質なし)1507.10 粗製/脱ガム等多くが「粗製/その他」で分岐。 (世界税関機構)
1508落花生油ピーナッツ油粗製/その他で分岐。 (世界税関機構)
1509オリーブ油エクストラバージン等HS2022で細分増。溶剤抽出油は1510へ。 (世界税関機構)
1510オリーブから得た「その他の油」等(オリーブ搾りかす油等)オリーブポマース油1509との境界は注2(溶剤抽出)。 (世界税関機構)
1511パーム油パーム油(粗製/その他)パーム核油(1513)と混同注意。 (世界税関機構)
1512ひまわり/サフラワー/綿実油綿実油等ひまわり/綿実でサブ区分が違う。 (世界税関機構)
1513やし(コプラ)油・パーム核油・ババス油ココナッツ油、パーム核油1511(パーム油)と区別(原料が違う)。 (世界税関機構)
1514菜種/からし菜種油キャノーラ油等低エルカ酸(1514.11/19)は定義あり(<2%)。 (税関ポータル)
1515その他の固定植物性又は微生物性油脂亜麻仁油、とうもろこし油、ひまし油、ゴマ油、微生物油HS2022で「微生物性」追加・新号あり。 (世界税関機構)
1516動物/植物/微生物の油脂:水素添加等(さらに調製なし)硬化油(ショートニング原料)1517(調製食用)との線引きが重要。 (世界税関機構)
1517マーガリン、食用混合・調製油脂(1516除く)マーガリン、ファットスプレッド日本税関の事前教示でも事例あり。 (世界税関機構)
15181516以外の化学改質油脂、非食用混合・調製油脂乾性油、酸化油、工業用混合油等注3「単に変性」は1518に入れない。 (税関ポータル)
1519欠番(使用なし)HSの番号体系上の欠番。 (世界税関機構)
1520粗製グリセリン、グリセリン水・灰液粗製グリセリン純品(化学的単一物質)は別章(例:第29類)になり得る。 (世界税関機構)
1521植物ろう、ミツロウ等、鯨ろう等ミツロウ、カルナバろう「調製ろう(例:ワックスブレンド)」は34類等へ飛びやすい。 (世界税関機構)
1522デグラス、油脂/ろうの処理残渣ソープストック、油さい等注4で具体例列挙(これらは1522へ)。 (税関ポータル)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類でよく出る“軸”)
    • 粗製(Crude)か/その他(精製等)か:多くの油(1507, 1508, 1511〜1514, 1515等)が「粗製/その他」で分岐します。 (世界税関機構)
    • オリーブ油のカテゴリー:1509.20(Extra virgin)、1509.30(Virgin)、1509.40(Other virgin)、1509.90(Other)。特に1509.30は酸度(オレイン酸換算2.0g/100g以下)+Codex標準に基づく区別が条件。 (税関ポータル)
    • 菜種油の低エルカ酸:1514.11/1514.19は「エルカ酸2%未満」の定義があり、分析値が要ります。 (税関ポータル)
    • 微生物由来の油脂:1515.60(微生物性油脂)、1516.30(微生物性油脂:水素添加等)など、由来の確認が必要。 (世界税関機構)
    • 1516/1517/1518の線引き:加工内容(何をしたか)と最終形態(食用調製か、工業用か)が決定打になります。 (世界税関機構)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 1509(オリーブ油) vs 1510(オリーブ由来のその他油)
      • どこで分かれるか:溶剤抽出の有無(溶剤抽出油は1509に入らず1510)。 (税関ポータル)
      • 判断に必要な情報:
        • 製造工程(圧搾/遠心分離/溶剤抽出)
        • 製造者の工程フロー、COA、SDS(溶剤の使用有無)
      • 典型的な誤り:品名が「olive oil」だから1509に入れてしまう(実はpomace/solvent extracted)。
    2. 1514.11/1514.19(低エルカ酸菜種油) vs 1514.91/1514.99(その他菜種油)
      • どこで分かれるか:エルカ酸含有率2%未満かどうか(固定油)。 (税関ポータル)
      • 判断に必要な情報:
        • エルカ酸の分析結果(ロット別COA)
        • 原料種別(キャノーラ等の品種情報)
      • 典型的な誤り:「菜種油=キャノーラ」と決め打ちして低エルカ酸扱いにする。
    3. 1516(硬化油等:さらに調製なし) vs 1517(マーガリン等の食用調製)
      • どこで分かれるか:1516は「水素添加等した油脂」だが、**“さらに調製していない”**ことが前提。食用の混合・乳化・スプレッド化等は1517に寄りやすい。 (世界税関機構)
      • 判断に必要な情報:
        • 工程(乳化、加塩、香料添加、ビタミン添加、結晶化制御などの有無)
        • 形状(固形スプレッド、液体マーガリン等)
        • 用途(家庭用/業務用、パン塗布用等)
      • 典型的な誤り:硬化油を含むから1516、としてしまう(実際はマーガリン工程を経て1517)。
      • 補足例:植物性油脂・乳化剤・香料等の混合物について、日本税関の事前教示事例があります(工程・配合が分類根拠になる典型)。 (税関ポータル)
    4. 1518(化学改質油) vs “単に変性”した油(→元の項へ)
      • どこで分かれるか:注3により、「単に変性」した油脂は1518に入れず、元の油脂の項へ。 (税関ポータル)
      • 判断に必要な情報:
        • 変性の目的と方法(食用不可にする添加・臭い付け等)
        • 化学改質(酸化・重合等)を実際にしているか
      • 典型的な誤り:「変性=化学改質」と誤解して1518へ。
    5. 1520(粗製グリセリン) vs(参考)化学的に純なグリセリン(別章になり得る)
      • どこで分かれるか:「粗製」か、化学的に単一で高純度か(用途・規格・純度)。 (世界税関機構)
      • 判断に必要な情報:
        • 純度、規格書(USP/EP等)、不純物組成
        • 製造工程(副生粗製か、精製工程済みか)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15類は第3部(Section III)に属しますが、実務上の分岐は**第15類の類注(Notes)と号注(Subheading Notes)**が中心です。 (世界税関機構)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:オリーブ油の「溶剤抽出は1509でなく1510」というルールは、見出しよりも注で確定します。 (税関ポータル)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • (第15類では)他章へのジャンプは主に類注1の除外規定で起きます(0209/1804/21類/23類/第6部/4002)。 (世界税関機構)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:この類に含めない物品(除外先の章・項が列挙) (税関ポータル)
    • 注2:1509(オリーブ油)には溶剤抽出油を含めない→1510へ (税関ポータル)
    • 注3:1518には単に変性した油脂を含めない→元の油脂の項へ (税関ポータル)
    • 注4:ソープストック等の残留物は1522へ (税関ポータル)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 号注(Subheading Notes)
      • 1509.30の「バージンオリーブ油」:**酸度(オレイン酸換算2.0g/100g以下)**かつCodex標準の特性で区別可能。 (税関ポータル)
      • 1514.11/1514.19の「低エルカ酸菜種油」:エルカ酸が全重量2%未満の固定油。 (税関ポータル)
    • 備考(実務上よく使う定義)
      • 「酸価」:油脂1g中の遊離脂肪酸の中和に要するKOH mg数。 (税関ポータル)
      • 1518の「脱水」:油を構成するヒドロキシ脂肪酸の水酸基を除くこと。 (税関ポータル)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 0209、1804、(0405>15%含有の食用調製品は主に)21類、2301/2304〜2306、第6部の諸品、4002。 (税関ポータル)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:オリーブ油(1509)とオリーブ搾りかす油等(1510)の分岐
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
    • 現場で集める証憑:
      • 製造工程図、製造者宣誓書、SDS(溶剤)、COA、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “olive oil”表記の製品を全て1509にしてしまう(pomace oilを見落とす)。
  • 影響ポイント2:「単に変性」した油脂は1518ではない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 変性の内容(着臭・着色・微量添加等)と、化学反応を伴う改質かどうか (税関ポータル)
    • 現場で集める証憑:
      • 変性剤の配合表、SDS、工程条件、用途説明(工業用等)
    • 誤分類の典型:
      • 「変性=化学改質」と誤解し、1518へ寄せる。
  • 影響ポイント3:1522(残留物)への飛び
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • それが「油かす(23類)」なのか、「精製・処理工程から出る残留物(1522)」なのか
      • 具体例として、ソープストック、油さい、ステアリンピッチ等は1522とされます。 (税関ポータル)
    • 現場で集める証憑:
      • どの工程から出た副産物か(工程図)、サンプル写真、成分分析
    • 誤分類の典型:
      • “residue”と書いてあるだけで23類に入れてしまう/逆に油かすを1522にしてしまう。
  • 影響ポイント4:1514(低エルカ酸)の定義が税番を変える
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
    • 現場で集める証憑:
      • COA(脂肪酸組成)、規格書、品種情報
    • 誤分類の典型:
      • “canola”と書いてあるだけで低エルカ酸に決め打ち。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:溶剤抽出のオリーブ由来油を1509(オリーブ油)にする
    • なぜ起きる:商品名が「olive oil」「pomace」が小さく、工程情報が通関側に伝わらない。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注2により、溶剤抽出油は1509ではなく1510。 (税関ポータル)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:製造工程図、溶剤使用の有無が分かる書類(SDS/宣誓書)
      • 社内で聞く質問例:「この油は圧搾ですか?溶剤抽出ですか?原料は搾りかす(pomace)ですか?」
  2. 間違い:キャノーラ油を無条件に1514.11/1514.19(低エルカ酸)にする
    • なぜ起きる:取引上の“通称”と、HS上の定義がズレる。
    • 正しい考え方:低エルカ酸は「エルカ酸2%未満」の定義に合う必要がある。 (税関ポータル)
    • 予防策:
      • COA(脂肪酸組成)をロットで入手・保管
      • 「2%未満の根拠(試験法・結果)」を提出できるようにする
  3. 間違い:硬化油(部分水素添加)を、元の油(1507等)のままにする
    • なぜ起きる:精製と改質(水素添加等)を混同。
    • 正しい考え方:水素添加・エステル交換等で「さらに調製していない」なら1516。 (世界税関機構)
    • 予防策:
      • 工程表で「hydrogenated/inter-esterified」等の処理有無を確認
      • MSDSや製品仕様に“hydrogenated”表記があるかチェック
  4. 間違い:マーガリンを1516(硬化油)にする
    • なぜ起きる:原料に硬化油が含まれるため。
    • 正しい考え方:マーガリン等の食用混合・調製は1517(1516を除く)。 (世界税関機構)
    • 予防策:
      • 乳化工程、添加物(乳化剤・香料等)、最終形状(スプレッド)の有無を確認
      • 日本税関の事前教示事例の類似性を確認(工程が重要)。 (税関ポータル)
  5. 間違い:「変性油=1518」と決めつける
    • なぜ起きる:「変性」の言葉が曖昧(denatured / modified を混同)。
    • 正しい考え方:注3により「単に変性」は1518に入れず、元の油の項へ。 (税関ポータル)
    • 予防策:
      • 変性の目的・方法を文書化(食用不可化のための添加のみか、化学反応を伴う改質か)
      • SDS・配合表を提出資料に含める
  6. 間違い:粗製グリセリン(1520)と、精製グリセリン(別章)を混同
    • なぜ起きる:取引書類に “glycerin” としか書かれない。
    • 正しい考え方:1520は「粗製グリセリン等」。高純度の化学品は別章もあり得る(製品規格で判断)。 (世界税関機構)
    • 予防策:
      • COA(純度、不純物、水分)と規格(USP/EP等)の有無を確認
      • 工程(副生粗製か、蒸留等の精製品か)を確認
  7. 間違い:油かす(23類)を1522(残留物)にする/逆
    • なぜ起きる:“residue/cake”の英語だけで判断。
    • 正しい考え方:注1(d)は油かす(2304〜2306)を除外、注4は特定残留物を1522とする。 (税関ポータル)
    • 予防策:
      • 「油を搾った後の固形か(cake)」「精製工程で出る滓か(soap-stock等)」を工程図で区別
      • サンプル写真・水分/油分分析を用意
  8. 間違い:ミツロウ等(1521)と、調製ろう(第34類等)を混同
    • なぜ起きる:ワックスは用途が広く、混合品が多い。
    • 正しい考え方:1521はろうそのもの(植物ろう、ミツロウ等)。混合・調製されると別章候補。 (世界税関機構)
    • 予防策:
      • 配合(他のろう・樹脂・溶剤)と最終用途(研磨、コーティング等)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第15類は**「油脂の種類(項/号)」の違いHS版改正での細分**があり、コードがズレるとPSRの適用条文自体が変わります。 (世界税関機構)
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSは合っているが、非原産材料のHSが曖昧(例:添加物・乳化剤・香料は第15類ではなく第29/33類等になることがある)
    • 1516/1517/1518の境界を誤り、PSRの章・項が変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 参照協定が未指定のため、ここでは代表例と「確認方法」を示します。
  • 代表例(原産地規則・PSRで参照するHS版):
    • RCEP:PSR(附属書3A)はHS2012に基づく旨が明記されています。 (税関ポータル)
    • CPTPP(TPP11):日本税関の解説資料で、産品の関税分類番号をHS2012年版で扱う旨が示されています。 (税関ポータル)
    • 日EU EPA:EU側の実務ガイド等で、HS分類(2017)に基づく説明があります(実務上、コード参照版の確認が必要)。 (Cdnw8)
  • ズレる場合の注意(一般論):
    • 通関申告は輸入国の現行HS(例:HS2022)で行いつつ、原産地判定は協定が参照するHS版(例:HS2012)でPSRを見る、という二重管理が起こり得ます。 (税関ポータル)
    • 日本では、協定により**HS2022へのトランスポーズ(旧→新対応)**資料が案内される場合があります(例:HS2022ベースでPSR表示に関する注意書き)。 (外務省)
  • 実務の確認先:
    • 日本税関の品目別原産地規則(PSR)検索は、協定ごとに参照HS版が表示されます。 (税関ポータル)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算前提
    • 食用油脂の混合・調製(1517)では、**配合比率と工程(乳化・加塩等)**が重要
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 自己申告(CPTPP等)では、HS6桁や原産基準の記載が必要で、裏付け記録の提示を求められることがあります。 (税関ポータル)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分化)15091509.10(HS2017)相当が、1509.20/1509.30/1509.40等に再編(オリーブ油カテゴリー識別のため)。 (世界税関機構)オリーブ油輸入で、品名だけでなく酸度・区分資料が必須に。
HS2017→HS2022分割(細分化)15101510.00(HS2017)相当が、1510.10/1510.90に再編(オリーブ搾りかす油等の識別強化)。 (世界税関機構)1510が「粗製/その他」で管理しやすくなる。工程資料の重要性増。
HS2017→HS2022新設+範囲変更1515.60微生物由来油脂を独立号として新設(1515.90から切出し)。 (世界税関機構)発酵油脂等で**由来証明(微生物)**が必要に。
HS2017→HS2022新設+範囲調整1516.301516.20(植物性)から微生物由来を独立識別。 (世界税関機構)1516の分類で「植物性/微生物性」の確認が必要に。
HS2017→HS2022文言修正(範囲拡張)第15類全般見出し・類名に「microbial(微生物性)」が入る。 (世界税関機構)新規素材(微生物油脂)の受け皿が明確化。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • オリーブ油(1509)とオリーブ搾りかす油等(1510)は、WCO相関表で「1509.10 → 1509.20/30/40 へ再編」「1510.00 → 1510.10/90 へ再編」と示され、同時にWCO HS2022条文でも新しい号が明確に列挙されています。 (世界税関機構)
    • 微生物油脂については、WCO相関表で1515.60および1516.30の新設(切出し)が示され、HS2022条文側でも見出しが「vegetable or microbial」となっています。 (世界税関機構)
    • 日本語の実務では、1509.30の定義(酸度2.0g/100g)や1514の低エルカ酸定義(2%未満)を、日本税関注で確認できます。 (税関ポータル)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第15類で実務に影響しやすい範囲に絞って整理します(網羅表ではありません)。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)コメント
HS2002→HS2007削除1515.40(Tung oil)削除 → 1515.90へ集約(低取引量等の理由が示される) (税関ポータル)“tung oil”が独立コードでなくなる点に注意(古い契約書・統計で残存)。
HS2017→HS2022再編1509.10 → 1509.20/30/40 等 (世界税関機構)オリーブ油の細分が増え、分析/証明資料が必要に。
HS2017→HS2022再編1510.00 → 1510.10/90 (世界税関機構)1510の粗製/その他分岐が明確に。
HS2017→HS2022追加1515.60 新設、1516.30 新設 (世界税関機構)微生物油脂を独立識別。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“Olive oil”の一括1509申告で差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注2(溶剤抽出油は1509に含めない)に抵触。 (税関ポータル)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が曖昧(olive oil/pomace oil混在)。
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査・遅延。
    • 予防策:工程証明(溶剤抽出の有無)を事前に入手・提出。
  • 事例名:“Denatured oil”を1518で申告したが否認
    • 誤りの内容:注3(単に変性した油脂は1518に含めない)に抵触。 (税関ポータル)
    • 起きやすい状況:英語のdenatured/modifiedの意味を取り違える。
    • 典型的な影響:税番訂正、関税率差・統計訂正。
    • 予防策:変性の内容(添加のみか/化学改質か)をSDS・配合で説明。
  • 事例名:油かす(23類)と1522(残渣)の取り違え
    • 誤りの内容:注1(d)・注4の理解不足。 (税関ポータル)
    • 起きやすい状況:“residue”や“cake”の訳語だけで判断。
    • 典型的な影響:品目分類修正、場合により規制区分・手続のやり直し。
    • 予防策:発生工程・物性(固形/液状、油分)を資料化。
  • 事例名:マーガリンの1516申告(硬化油扱い)
    • 誤りの内容:1517(食用混合・調製)を見落とし。 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:原料に硬化油が含まれる、業務用で説明が少ない。
    • 典型的な影響:税関から工程・配合資料の追加提出要求。
    • 予防策:乳化工程・添加物・最終形状(スプレッド等)を提示。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫(該当があるものだけ):
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 食用油脂(食用植物油、マーガリン等)は、輸入時に**食品衛生法に基づく「食品等輸入届出」**と、審査・必要に応じた検査があります(検疫所窓口)。 (厚生労働省)
    • 動物検疫(動物由来油脂の場合)
      • 畜産物の輸入は、指定検疫物や家畜衛生条件・証明書等が関係する場合があります(動物検疫所)。 (農林水産省)
      • ※油脂の形態・用途・由来で扱いが変わり得るため、該当するかは動物検疫所の対象物情報で要確認。
    • 植物検疫(植物由来の場合)
      • 一般論として、高度に加工された植物加工品は植物検疫の対象外となる場合がありますが、個別判断が必要です(植物防疫所の案内)。 (農林水産省)
    • 安全保障貿易管理
      • 第15類の一般的な食用油脂は該当しにくい一方、用途(軍用・化学用途)や輸出先で別途確認が必要です(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書・成分表、製造工程表、COA、SDS、写真、用途説明
    • 初回輸入は特に、検疫所から求められる可能性のある資料(原材料・製造工程説明等)を事前に整備 (厚生労働省)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原料(由来:動物/植物/微生物)、脂肪酸組成、純度、含水、添加物の有無
    • 製造工程:圧搾/溶剤抽出、水素添加、エステル交換、乳化、化学改質の有無
    • 用途:食用/工業用、最終形状(液体/固形/スプレッド)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1で他章に飛ばないか(0209/1804/21類/23類/第6部/4002) (税関ポータル)
    • 注2(1509↔1510)、注3(1518と変性)、注4(1522)を再確認 (税関ポータル)
    • 号注:1509.30(酸度等)、1514(低エルカ酸)など、定義根拠の資料があるか (税関ポータル)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は「olive pomace oil」「hydrogenated vegetable oil」等、工程が分かる記載に寄せる
    • 補足資料:工程図、COA、SDS、写真
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版(HS2012/2017等)を確認(PSR検索で確認) (税関ポータル)
    • BOM、非原産材料HS、工程、原価・RVC根拠を保存(自己申告対応) (税関ポータル)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO「HS Nomenclature 2022 Edition」Chapter 15(0315_2022E) (世界税関機構)(参照日:2026-02-15)
    • WCO「HS Nomenclature 2017 Edition」Chapter 15(0315_2017E) (世界税関機構)(参照日:2026-02-15)
    • WCO「HS2022 Correlation Table(Table I)」 (世界税関機構)(参照日:2026-02-15)
  • 日本(税関・公的機関)のガイド
    • 日本税関:第15類 注(15r.pdf、HS2022) (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続について (厚生労働省)(参照日:2026-02-15)
    • 農林水産省 動物検疫所:畜産物の輸出入 (農林水産省)(参照日:2026-02-15)
    • 農林水産省 植物防疫所:輸入植物検疫の対象とならない植物について (農林水産省)(参照日:2026-02-15)
    • 日本税関:品目別原産地規則(PSR)検索 (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
    • 日本税関:RCEP原産地規則の概要(HS2012言及あり) (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
    • 日本税関:TPP11(CPTPP)原産地規則について(HS2012言及あり) (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
    • 日本税関:自己申告/原産地手続のガイド(CPTPP) (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
    • 日本税関:事前教示回答事例(例:マーガリン) (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
  • その他(相関表等)
    • 日本税関:HS2007-HS2002相関資料(1515.40削除の記載あり) (税関ポータル)(参照日:2026-02-15)
    • HS2002(参考)第15類(1515.40の存在確認) (世界税関機構)(参照日:2026-02-15)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。