HS2022 第17類:糖類及び砂糖菓子(Sugars and sugar confectionery)実務向け整理

用語は次のとおり統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
なお、HSは6桁(号)までが国際共通で、7桁目以降は各国の国内細分(国内コード)です。日本の統計品目番号(9桁)などは国内コードです。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • サトウキビ糖・てん菜糖、純粋しょ糖(固形)(例:グラニュー糖、角砂糖、氷砂糖)=主に1701
    • 乳糖(ラクトース)・ぶどう糖(グルコース)・果糖(フルクトース)、それらのシロップ(無香味・無着色)=主に1702
    • 糖蜜(モラセス)=1703
    • 砂糖菓子(ココアを含まないもの:キャンディ、グミ等)、チューインガム、(括弧書きで)ホワイトチョコレート=1704
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ココアを含む砂糖菓子・チョコレート菓子 → 第18類 1806(類注の除外)
    • 化学的に純粋な糖で、しょ糖・乳糖・麦芽糖・ぶどう糖・果糖以外(例:キシロース等)→ 第29類 2940(類注の除外)
    • 医薬品・医薬用途の製品(例:医薬的効能を標榜するトローチ等)→ 第30類(類注の除外)
    • 天然はちみつ → 第4類 0409(1702の「人工はちみつ」と混同注意)
    • 砂糖を含むが「菓子」ではない加工食品(例:飲料・ソース・調製品)→ 第20〜22類や第21類(用途・性状次第)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 固形のしょ糖(1701)か/その他の糖・シロップ(1702)か(固形か、糖の種類・組成は何か)
    2. 砂糖菓子(1704)か/ココア含有で18類(1806)か(原材料にココアがあるか)
    3. 1702のシロップ類は“乾燥状態での果糖%”で号が分かれる(<20%、20〜<50%、>50%、インバートシュガー等)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 日本では砂糖・異性化糖・加糖調製品に関して、**価格調整制度(調整金の徴収等)**が絡む場合があり、コード誤りがコスト・申告修正・契約条件(DDP等)に波及しやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIRは、まず**GIR1(見出しと注で決める)**です。第17類は、類注(除外)と見出し文言で範囲が比較的明確です。
  • 次に**GIR6(6桁の分岐)**が重要です。たとえば1701の「原糖」定義(旋光度/しょ糖含有)や、1702の「乾燥状態の果糖%」など、注(Subheading Notes)に基づく数値条件で号が変わります。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 糖の種類(しょ糖/乳糖/ぶどう糖/果糖/混合/人工はちみつ/キャラメル)
    • 状態(固形か、シロップか)
    • 添加(香料・着色料の有無。1702のシロップは“無香味・無着色”が基本条件)
    • 菓子かどうか(“砂糖菓子”の性状:そのまま嗜好品として食べる体裁か)
    • ココアの有無(1704 vs 1806)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その品は「糖そのもの」か「糖を主とする菓子」か?
    • 糖そのもの(原料糖、糖粉、糖シロップ、糖蜜)→ Step2へ
    • 菓子(ガム・キャンディ・グミ・ホワイトチョコ等)→ Step4へ
  • Step2:糖そのものの場合、固形のしょ糖か?
    • しょ糖(固形)中心 → 1701候補
    • それ以外(乳糖・ぶどう糖・果糖、各種糖シロップ、人工はちみつ、キャラメル等)→ 1702候補
  • Step3:1701/1702の6桁分岐を詰める
    • 1701:原糖(1701.12/13/14)か、着色/香味付け(1701.91)か、その他(1701.99)か
    • 1702:乳糖99%要件、乾燥状態での果糖%、インバートシュガー除外などを確認
  • Step4:菓子の場合、ココアを含むか
    • ココアを含む → 1806へ(第17類は類注で除外)
    • ココアを含まない → 1704へ(ガムは1704.10、その他は1704.90)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第17類(1704) vs 第18類(1806):ココア有無
    • 第17類(1702のシロップ) vs 第21類(調製食料品):香味・着色の有無/用途(飲料ベース等)
    • 第17類(1704) vs 第30類:医薬品としての性格(効能標榜・有効成分・用法用量表示など)

2. 主な項(4桁)とその内容

第17類の4桁見出し(項)は実務上も少数で、基本は全列挙で十分です。

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
1701サトウキビ糖・てん菜糖、純粋しょ糖(固形)グラニュー糖、角砂糖、氷砂糖、着色糖固形が前提。原糖の判定は注の定義(旋光度/しょ糖含有)に依存。着色/香味付けは別号。
1702その他の糖(乳糖・麦芽糖・ぶどう糖・果糖等)、糖シロップ(無香味無着色)、人工はちみつ、キャラメル乳糖粉、コーンシロップ、HFCS、メープルシロップ、人工はちみつ、カラメル1702のシロップは無香味・無着色が基本。6桁は**乾燥状態の果糖%**等で分岐。
1703糖の抽出・精製で生じる糖蜜(モラセス)サトウキビ糖蜜、ビートモラセス「糖蜜」であること(製造工程由来)を説明できる資料が重要。
1704ココアを含まない砂糖菓子(ガム含む、ホワイトチョコ含む)チューインガム、キャンディ、グミ、ホワイトチョコココア含有は除外(1806へ)。臨床試験キット等の特殊品は別章へ移る場合あり。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 1701(しょ糖・固形)
      • 「原糖」の定義:乾燥状態のしょ糖含有(旋光度で表される基準)で判断します。
      • 1701.13は「遠心分離なしのサトウキビ糖」等、製法・性状要件があるため、製造工程情報が必須です。
    • 1702(その他の糖・シロップ)
      • 乳糖は「乾物換算で99%以上」など含有率要件があります。
      • ぶどう糖シロップ/果糖シロップは「乾燥状態での果糖重量%」が鍵(<20、20〜<50、>50、インバートシュガー除外等)。
    • 1704(砂糖菓子)
      • ガム(1704.10)かその他(1704.90)か。
      • ココア有無で18類に飛びます(類注除外)。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 1704.90(ココアなし砂糖菓子) vs 1806(ココア入り菓子)
      • どこで分かれるか:原材料に**ココア(粉、ペースト等)**が入るか。
      • 判断に必要な情報:配合表、原材料表示、製造仕様書。
      • 典型的な誤り:「チョコ味=ココア入り」と早合点、または逆に微量ココアを見落とし。
    2. 1702.30 vs 1702.40(ぶどう糖/ぶどう糖シロップ:果糖%の閾値)
      • どこで分かれるか:乾燥状態の果糖が20%未満か、20%以上50%未満か。
      • 判断に必要な情報:分析表(乾物換算の果糖%)、水分、算定根拠。
      • 典型的な誤り:液体の“そのまま濃度”で果糖%を見てしまい、乾物換算にしていない。
    3. 1702.60 vs 1702.90(果糖シロップ/インバートシュガー等)
      • どこで分かれるか:乾燥状態の果糖が50%を超えるか、**インバートシュガーやブレンド(50%果糖のものを含む)**か。
      • 判断に必要な情報:糖組成(果糖/ぶどう糖/しょ糖)、インバートか否か、製法。
      • 典型的な誤り:HFCSとインバートシュガーを混同。
    4. 1701.13 vs 1701.14(原糖の中のサトウキビ糖)
      • どこで分かれるか:1701.13は「遠心分離なしのサトウキビ糖」等、注で要件が限定されます。
      • 判断に必要な情報:製造工程(遠心分離の有無)、しょ糖含有(旋光度)、外観/結晶性状。
      • 典型的な誤り:「黒糖/パネラ=1701.13」と決め打ちして、工程・旋光度を確認しない。
    5. 1704.90(砂糖菓子) vs 3006.93(臨床試験用のプラセボ等)(HS2022で特に注意)
      • どこで分かれるか:医薬品の臨床試験で使う「プラセボ/盲検キット」で、計量投与形態等の要件に当たるか。
      • 判断に必要な情報:用途(臨床試験か)、梱包形態(計量投与)、ラベル、治験関連書類。
      • 典型的な誤り:外観が菓子に似ているため1704.90で申告。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17類が属する**第IV部(調製食料品等)**の部注には、「ペレット」の定義(特定の項で使う)があります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 第17類そのものでは「ペレット」は通常出てきませんが、糖蜜等を混ぜた飼料用調製品など、別章(例:第23類)の検討に入る場面で、形状(ペレット)を問われることがあります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 砂糖・糖蜜を含むが、用途・配合から「飼料用の調製品」と評価される場合は、第17類ではなく第23類(2309等)の検討が必要になります(部注自体は定義補助、最終は見出しと注の総合判断)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17類は、次のタイプを明示的に除外します:
      1. ココアを含む砂糖菓子(18.06へ)
      2. しょ糖・乳糖・麦芽糖・ぶどう糖・果糖以外の「化学的に純粋な糖」等(29.40へ)
      3. 医薬品等(第30類へ)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「原糖(raw sugar)」:1701の特定の号に関して、乾燥状態のしょ糖含有(旋光度)で定義されます。
    • 1701.13(特定のサトウキビ糖):遠心分離なし等の製法・性状が条件になっています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • ココア含有の砂糖菓子 → 第18類 1806
    • 上記以外の化学的に純粋な糖など → 第29類 2940
    • 医薬品等 → 第30類(3003/3004等)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:1701の「原糖」判定(1701.12/13/14)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 乾燥状態のしょ糖含有(旋光度)
      • 香味・着色の添加の有無
      • 固形かどうか
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
      • COA(分析証明:しょ糖%・水分・灰分など)、製造工程(精製/遠心分離の有無)、製品写真(結晶・色調)、用途(精製原料か食用直売か)
    • 誤分類の典型:
      • 「原糖=茶色い砂糖」と思い込み、旋光度(しょ糖%)の根拠がないまま1701.14等で申告。
  • 影響ポイント2:1701.13(遠心分離なしのサトウキビ糖等)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 遠心分離工程の有無、旋光度レンジ、結晶の性状など(注の要件)
    • 現場で集める証憑:
      • 製糖工程図、製造者の工程説明、品質規格書(旋光度)、外観写真、サンプル
    • 誤分類の典型:
      • “パネラ/ジャガリー/黒糖”という商品名だけで1701.13に固定してしまう。
  • 影響ポイント3:1702(シロップ類)の乾燥状態果糖%
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 果糖含有(乾物換算)、インバートシュガー該当性、香味/着色の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 成分分析(果糖/ぶどう糖/しょ糖、固形分、水分)、製法(酵素異性化か、しょ糖転化か)、SDS/規格書
    • 誤分類の典型:
      • 「HFCS 55」など表示を見て“55%果糖”だと思うが、乾物換算かどうか不明なまま申告。
  • 影響ポイント4:類注の除外(1704↔1806、17類↔29類/30類)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ココア原料の有無(配合表)、化学的純度(対象糖の種類)、医薬的効能標榜・用途・有効成分
    • 現場で集める証憑:
      • 原材料表示、配合表、COA、ラベル、広告表示資料、製品の使用説明書
    • 誤分類の典型:
      • 「のど飴」を常に1704とみなし、医薬品該当性(第30類)を検討しない。
  • 影響ポイント5:HS2022での1704.90の範囲(他章新設による“実質的な除外”)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 「臨床試験用プラセボ/盲検キット」等の用途・梱包(計量投与)
      • 食用昆虫を一定割合以上含むか(成分・配合)
    • 現場で集める証憑:
      • 治験関連書類、製品仕様書、配合表、分析表
    • 誤分類の典型:
      • 見た目が菓子に近い=1704.90、と判断してしまう。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:「黒糖/ブラウンシュガー」を一律に“原糖”として1701.14等で申告
    • なぜ起きる:商品名・色で判断しがち。原糖の定義(旋光度/乾燥状態しょ糖)を見ていない。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):原糖は注の定義で判定。1701の各号は“原糖かどうか”“製法(1701.13)”“添加の有無”で分岐します。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • COA(旋光度/しょ糖%・水分)、製造工程(遠心分離の有無)
      • 質問例:「この砂糖は遠心分離していますか?」「しょ糖の分析値(乾物)は?」
  2. 間違い:液糖(シロップ)を1701(固形しょ糖)で申告
    • なぜ起きる:「砂糖=1701」という固定観念。
    • 正しい考え方:1701は「固形」のしょ糖。シロップは1702側の検討が基本(ただし香味・着色の有無に注意)。
    • 予防策:
      • 仕様書で「形状(固形/液状)」「添加物(香料・着色)」を必ず確認。
  3. 間違い:1702(ぶどう糖シロップ/HFCS)の号を果糖%の“湿量”で判定
    • なぜ起きる:ラベルの糖度表示をそのまま使い、乾物換算の概念が抜ける。
    • 正しい考え方:1702.30/1702.40/1702.60は「乾燥状態での果糖重量%」がキー。
    • 予防策:
      • COAに「dry basis」の果糖%を明記させる/水分と固形分から社内で換算根拠を保存。
  4. 間違い:乳糖をすべて1702.11(99%以上)で申告
    • なぜ起きる:粉末=高純度と思い込み。
    • 正しい考え方:1702.11は「乾物換算で乳糖99%以上」等の要件があるため、満たさなければ1702.19等。
    • 予防策:
      • ロット別COAで乳糖%(anhydrous換算)を取得。
  5. 間違い:ココア入りキャンディを1704(ココアなし砂糖菓子)で申告
    • なぜ起きる:「砂糖菓子=1704」とだけ理解し、類注の除外(ココア)を見落とす。
    • 正しい考え方:第17類はココア含有の砂糖菓子を除外(1806へ)。
    • 予防策:
      • 原材料表で「cocoa/cacao/chocolate」系をチェック。微量でも確認。
  6. 間違い:ホワイトチョコレートを“チョコだから”1806に固定
    • なぜ起きる:商品カテゴリ(市場用語)で判断。
    • 正しい考え方:HSの見出し上、1704は括弧書きでホワイトチョコレートを含める構造です(ただし実務では配合・性状確認が必要)。
    • 予防策:
      • HS見出し(括弧書き含む)に立ち返り、配合表で「ココア固形分」の有無を確認。
  7. 間違い:人工はちみつを0409(天然はちみつ)で申告
    • なぜ起きる:品名が“honey”だから。
    • 正しい考え方:1702は「人工はちみつ(天然混合含む)」を含み、天然はちみつは別章(第4類)です。
    • 予防策:
      • 原材料由来(蜂蜜か、糖液調製か)を仕様書で明確化。
  8. 間違い:糖蜜(モラセス)と“糖蜜入り飼料”を同じ1703で扱う
    • なぜ起きる:「molasses」という単語だけで判断。
    • 正しい考え方:1703は糖の抽出・精製で生じる糖蜜そのもの。配合・用途が飼料用調製品なら第23類の検討が必要。
    • 予防策:
      • 配合表・用途(人用/飼料用)、形状(ペレット等)を確認。
  9. 間違い:臨床試験用のプラセボ(菓子様外観)を1704.90で申告
    • なぜ起きる:外観と一般用途で判断してしまう。
    • 正しい考え方:HS2022では、臨床試験用のプラセボ/盲検キット等が別章に移った影響で、1704.90の範囲が狭くなっています。
    • 予防策:
      • 用途確認(治験か)、梱包形態(計量投与)、試験計画書の有無を確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。**最終製品のHS(6桁)**が違うと、CTC(関税分類変更)基準やRVC基準の見方が変わり、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 「材料のHS」と「最終製品のHS」を混同する
    • 1702のように成分比率で号が分かれる品目で、号を誤りPSRを誤選択する

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに参照するHS版が異なります。たとえば(日本関連の例):
    • CPTPP:HS2012
    • 日EU・EPA:HS2017
    • RCEP:HS2022
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意:
    • PSR検索は協定のHS版で行い、実際の通関(国内コード)とは“見かけの番号”がズレることがあります(トランスポジションが必要)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • WCO相関表(Correlation Tables)は実装支援のガイドですが、法的な分類決定ではない旨の注意書きがあります。実務は輸入国税関の運用・国内相関表も確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 砂糖類は“糖含有量”や“シロップ組成”が品目とPSRの前提になりやすいので、次を保存すると後で強いです:
    • COA(糖組成、水分、乾物換算の果糖%)
    • 製造工程(異性化工程、転化工程、精製工程)
    • 製品ラベル(用途・表示)
  • 証明書類・保存要件:協定・相手国で異なるため、協定ガイドと通関実務で要確認(一般論)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更(他章新設に伴う移管)1704.90臨床試験用プラセボ/盲検キット等が新設コード(3006.93)へ移るなどにより、1704.90の範囲が狭くなった。加えて食用昆虫一定割合以上の製品が別章へ移る影響も示されている。砂糖菓子様の物品でも用途・成分で17類外となり得る。用途確認(治験等)や配合確認(昆虫等)を追加しないと誤分類リスク。
HS2017→HS2022変更なし(構造維持)1701〜1704(大枠)第17類の4桁構造自体は維持(1701/1702/1703/1704)。ただし「同じ番号でも範囲が変わる」ケースがあるため相関表注記を確認。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • WCO「HS2022–HS2017 Correlation Tables(Table I)」の備考欄に、1704.90の範囲が、(i) 臨床試験用プラセボ/盲検キットの新設コード(3006.93)への移管等により狭くなった旨が示されています。
    • 同じくWCO相関表は、表自体が「実装支援のガイドであり法的地位を持たない」旨を明記しています。
    • HS2022の第17類(見出し・類注・小分類注)はWCOの章別条文(Chapter 17)で確認しました。
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 「1704.90の番号自体は同じ」でも、WCO相関表(Table I)の備考で“移管により範囲が狭くなった”ことが明示されているため、**変更タイプは“範囲変更”**と判断しました。
  • 変更がない部分:
    • 第17類の見出し体系(1701〜1704)や、1701/1702/1703/1704の基本構造はHS2017とHS2022で維持されているため「構造変更は限定的」と整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な流れとして、第17類では HS2007→HS2012で1701の原糖サブ見出しが整理された点が目立ちます。

版の流れ主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(または行き先)実務上の意味
HS2007→HS20121701の原糖区分の再編(サトウキビ原糖の細分が変更)1701.11(サトウキビ原糖)→(再編)1701.13/1701.14へ“サトウキビ原糖”でも製法・性状によって号が分かれるため、工程情報・旋光度の管理が重要に。
HS2012→HS2017大枠は維持(この章の条文上は同様の体系)(実務上は多くが継続)取引実務では、相手国のHS運用や国内コード更新の影響に注意。
HS2017→HS2022コード維持だが1704.90の範囲が実質的に狭まる1704.90(範囲変更)/一部が3006.93等へ見た目で1704.90に寄せない。用途(治験等)確認を手順化。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「チョコ味キャンディ」を1704で申告して差し戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):ココア含有の砂糖菓子は第17類から除外(18.06へ)。
    • 起きやすい状況:香料・ココアパウダーの微量配合を見落とす/原材料表が英語で読み飛ばし。
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延。
    • 予防策:配合表・原材料表の“cocoa”チェックを申告前チェックに組み込み。
  • 事例名(短く):非遠心のサトウキビ糖(パネラ等)を1701.99で処理
    • 誤りの内容:1701.13の要件(工程・旋光度など)検討不足。
    • 起きやすい状況:仕入先のスペック不足、商品名だけで登録。
    • 典型的な影響:統計・規制・特恵の前提が崩れる、税関照会で資料追加。
    • 予防策:工程図・COA(旋光度)を初回輸入時に必須化。
  • 事例名(短く):HFCSの果糖%誤りで1702.30/1702.40が逆転
    • 誤りの内容:乾燥状態の果糖%で分岐する号を、湿量のまま判断。
    • 起きやすい状況:スペックシートにdry basisの記載がない。
    • 典型的な影響:税率・制度負担・原産地規則のズレ、再分析対応。
    • 予防策:dry basisの果糖%をサプライヤーに要求、計算根拠を保存。
  • 事例名(短く):治験用プラセボを“キャンディ”として1704.90で申告
    • 誤りの内容:HS2022で一部が3006.93へ移管された趣旨を踏まえず、外観で1704.90に寄せた。
    • 起きやすい状況:医療系部門と貿易部門の情報断絶。
    • 典型的な影響:分類訂正だけでなく、医薬関連の追加確認や通関遅延。
    • 予防策:用途確認(治験か)をHS判定シートの必須項目にする。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等):
      • 砂糖・菓子類は基本的に「食品」に該当し、輸入時には**食品衛生法に基づく輸入届出(食品等輸入届出)**や規格基準(添加物、残留農薬等)の確認が実務上の中心になります。
    • その他(制度・行政運用):
      • 砂糖・異性化糖・加糖調製品等について、**砂糖・でん粉の価格調整制度(調整金徴収・交付金等)**が運用されています(制度の対象・手続は品目や取引形態で要確認)。
      • 輸入関連法令の一覧でも、砂糖・でん粉に関する法令が挙げられています。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制:
      • 通常、第17類の糖類・菓子は該当しにくいです(例外があれば個別確認)。
    • 安全保障貿易管理:
      • 通常は該当しにくいですが、用途・相手先で別途審査が必要な場合があります。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 食品:厚生労働省(輸入食品監視・輸入届出)
    • 砂糖制度:農畜産業振興機構(ALIC)/関係法令(砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律)
    • 通関:税関(品目分類・事前教示など)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(糖組成、添加物)、COA(しょ糖/果糖%・乾物換算)、製造工程図、原材料表、写真、サンプル
    • 制度対象の可能性がある場合:契約条件(誰が制度負担/手続を担うか)、ALIC関連の手続確認、輸出時の返還制度の可能性など

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 形状:固形/粉末/シロップ
    • 糖の種類:しょ糖/乳糖/ぶどう糖/果糖/混合/人工はちみつ/キャラメル
    • 添加:香料・着色料・ココア・乳成分・昆虫由来等
    • 用途:食用一般/医薬的用途/治験用途/飼料用途
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 1704ならココア有無(18類除外)
    • 1701原糖なら旋光度(しょ糖)根拠、1701.13要件(工程)
    • 1702シロップなら乾物換算果糖%と無香味無着色
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「sucrose / glucose syrup / HFCS 55 / molasses」など成分が伝わる表現に
    • COA・仕様書を初回輸入や変更時に添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012/2017/2022)を確認し、トランスポジションの要否を判断
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品衛生法の輸入届出、添加物の適否、残留農薬等の確認
    • 砂糖・異性化糖・加糖調製品等の制度対象性確認(必要ならALIC確認)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 17(Sugars and sugar confectionery) (参照日:2026-02-16)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Section IV Notes (参照日:2026-02-16)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022(イントロ/注意書き) (参照日:2026-02-16)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022:Table I(1704.90の範囲変更の備考等) (参照日:2026-02-16)
    • WCO HS Nomenclature 2017:Chapter 17 (参照日:2026-02-16)
    • WCO HS Nomenclature 2012:Chapter 17 (参照日:2026-02-16)
    • WCO HS Nomenclature 2007:Chapter 17 (参照日:2026-02-16)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 厚生労働省:食品等の輸入手続(輸入届出等) (参照日:2026-02-16)
    • 日本税関:輸入関連法令リスト(砂糖・でん粉関連の法令を含む) (参照日:2026-02-16)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • EPA相談デスク(協定ごとの採用HS版の一覧を含む) (参照日:2026-02-16)
    • 税関:協定により参照HS版が異なる旨(PSR関連) (参照日:2026-02-16)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • ALIC:Sugar & Starch(価格調整制度の説明) (参照日:2026-02-16)
    • ALIC:砂糖の価格調整制度の仕組み(資料) (参照日:2026-02-16)
    • Japanese Law Translation:Act on Price Adjustment of Sugar and Starch (参照日:2026-02-16)
    • ALIC:調整金徴収業務(輸出時返還の記載等) (参照日:2026-02-16)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品説明(用途、食用/治験/飼料など)
    • 成分表(糖組成、ココア有無、添加物)
    • 製造工程(遠心分離の有無、異性化/転化の工程)
    • 分析表(乾物換算の果糖%・しょ糖%など、分岐条件に直結する項目)
    • 写真(外観・包装)、サンプル(必要な場合)
  • 実務メモ
    • 第17類は数値要件(旋光度、乾物換算果糖%)が出やすいので、税関照会前提でロット別COAの取得をルーチン化すると、初回輸入や監査対応が早くなります。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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