実際のCBP Ruling事例:Essential Characterが決定できなかったケース

事例:超音波・UV除菌器(NY N321794, 2021年)

製品仕様:

  • 超音波洗浄機能
  • UV-C LED除菌機能
  • ワイヤレス充電機能(スマートフォン用)
  • 防水リザーバー内に配置

CBPの判断プロセス:

  1. 複合品として認定:複数のheadingに該当する機能を持つ複合品と判断
  2. Essential characterの検討
    • 超音波洗浄機能(heading 8479)
    • ワイヤレス充電機能(heading 8504)
    • UV除菌機能(heading 8543)
  3. CBPの結論: “CBPは、超音波洗浄機能、UV洗浄機能、充電機能のいずれも、エンドユーザーにとって全て同等に重要であるため、製品にessential characterを与えないと判断した”[cmtradelaw]​
  4. GRI 3(c)の適用
    番号順で最後のheading 8543で分類[cmtradelaw]​

この事例が示す重要なポイントは、「全ての機能がエンドユーザーにとって同等に重要」という客観的判断が、essential character不明瞭の根拠になるということです。

実務判断フローチャート

以下のフローで、セット商品がGRI 3(c)の対象かを判断します:

ステップ1:セット要件の確認

textセット3要件を満たすか?
├─ YES → ステップ2へ
└─ NO → セットとして扱わず、各構成品を個別分類

ステップ2:GRI 3(a)の適用試行

textより特定的な記述の項が存在するか?
├─ YES → その項で分類(終了)
└─ NO → ステップ3へ

ステップ3:GRI 3(b)のEssential Character分析

3-1. 各構成要素の客観的データ収集

  • 価値(円、ドル、ユーロ)と価値比率(%)
  • 重量(グラム、kg)と重量比率(%)
  • 体積(cm³、リットル)と体積比率(%)
  • 数量

3-2. 機能的役割の評価

text主目的を完遂するために不可欠な構成要素は明確か?
├─ YES → その構成要素で分類(終了)
└─ NO → 3-3へ

3-3. 専用性の評価

text特定の活動に対して明確に専用設計された構成要素があるか?
├─ YES → その構成要素で分類(終了)
└─ NO → 3-4へ

3-4. 消費者認識の確認

text消費者が「この製品の本質」として明確に認識する構成要素は?
├─ 明確 → その構成要素で分類(終了)
└─ 不明確 → ステップ4へ

ステップ4:「Essential Character決定不可」の立証

以下の全ての条件を満たす場合、GRI 3(c)を適用:

  • 価値比率が拮抗している(例:30%、35%、35%)
  • 重量・体積でも優位性がない
  • 機能的に独立しており、どれも「主役」でない
  • 専用性が低く、代替可能性が高い
  • 消費者が「これが本質」と明確に認識する要素がない
  • 客観的証拠で上記を説明できる

ステップ5:GRI 3(c)の適用

text候補となるheadingを番号順に並べる
→ 最後の番号のheadingで分類(終了)

Essential Characterが決定できない典型パターン

パターン1:機能分散型(UV Sanitizer型)

特徴:

  • 複数の独立した機能を持つ
  • 各機能が異なるユーザーニーズに対応
  • どの機能も「なければ困る」レベルではない

判定基準:
「エンドユーザーにとって全て同等に重要」かを問う[cmtradelaw]​

実例:

  • 超音波洗浄+UV除菌+充電器
  • ラジオ+懐中電灯+充電器
  • Bluetooth スピーカー+時計+温度計

パターン2:価値均衡型

特徴:

  • 複数の構成品の価値が拮抗
  • 機能的役割も同程度

判定基準:
価値比率が30-40%の範囲に複数の構成品が入るか[zonos]​

実例:

  • 靴下(40%)+ネクタイ(60%)のギフトセットcmtradelaw+1
  • 革50%+繊維50%のベルト[customslegaloffice]​

パターン3:独立商品型

特徴:

  • セット内の各商品が独立した商業価値を持つ
  • 一緒に使う必然性が弱い
  • ギフト用途で束ねただけ

判定基準:
「特定の活動」の定義が曖昧で、essential characterも決められない[tradeinsightai]​

実例:

  • ハンカチ+靴べら+キーホルダーのギフトセット
  • コスメ複数種(口紅、アイシャドウ、マスカラ)で特定のメイクアップ用途が不明確

実務チェックリスト:GRI 3(c)適用前の確認事項

✅ GRI 3(a)を真剣に検討したか

  • 各候補headingの記述を正確に読み比べた
  • より特定的な記述がないことを確認した
  • 検討プロセスを文書化した

✅ GRI 3(b)の全判断要素を検討したか

  • 性質:材料・構成要素の本質的特性を分析した
  • :物理的な大きさを測定・比較した
  • 数量:量的な割合を計算した
  • 重量:重量比率を算出した
  • 価値:価格比率を計算した(原価ベースと販売価格ベースの両方)
  • 使用における役割:機能的支配性を評価した

✅ 「決定できない」ことを客観的に説明できるか

  • 比較表(Excel等)を作成し、数値的根拠を示した
  • なぜどの要素も決定的な優位性がないか文章化した
  • 第三者(上司、通関業者、税関)が納得できる説明になっている

✅ 一貫性を確保しているか

  • 類似のセット商品で過去に異なる判断をしていないか確認した
  • 社内の判断基準と矛盾していないか確認した
  • 公表されているruling/BTI/事前教示事例を調査した

よくある実務上の間違いと回避方法

❌ 間違い1:「Essential character判定が面倒だから3(c)を使う」

リスク:
税関監査で「GRI 3(b)の検討が不十分」と指摘され、追徴課税・罰金の可能性[tradeinsightai]​

正しいアプローチ:
GRI 3(b)の全判断要素を真剣に検討し、その検討プロセスを文書化した上で、「それでも決定できない」と結論づけるtradeinsightai+1

❌ 間違い2:「価値が同じだからGRI 3(c)」

リスク:
価値は判断要素の一つに過ぎず、機能的役割で明確な優位性があればGRI 3(b)で分類すべきcbsa-asfc+1

正しいアプローチ:
価値が拮抗していても、機能的役割・専用性・消費者認識などの要素を総合的に評価する

❌ 間違い3:「どのheadingでも良いと思ったからGRI 3(c)」

リスク:
GRI 3(c)は「同等に考慮に値する項」の中で最後の番号を選ぶルールであり、「どれでも良い」という意味ではないtraide+1

正しいアプローチ:
候補となるheadingを明確に特定し、それらが「同等に考慮に値する」理由を説明する[tradeinsightai]​

❌ 間違い4:「GRI 3(c)だから説明不要」

リスク:
事前判断制度(BTI、ruling、事前教示)の申請が却下される、または望まない分類が回答されるtaxation-customs.europa+1

正しいアプローチ:
GRI 3(c)に至った判断プロセスを詳細に文書化し、申請時に添付する[gov]​

各国での申請時の説明文例

米国CBP Ruling申請

text分類根拠の説明:

1. GRI 3(a)の検討:
   本製品は以下の複数のheadingに該当する可能性があります:
   - Heading 8479(超音波洗浄機)
   - Heading 8504(充電器)
   - Heading 8543(UV除菌装置)
   
   これらのheadingはいずれも本製品の一部の機能のみを記述しており、
   どのheadingも他より特定的とは言えません。

2. GRI 3(b)の検討:
   Essential characterの判定を試みました:
   
   価値分析:
   - 超音波洗浄機能:35%
   - 充電機能:30%
   - UV除菌機能:35%
   
   機能分析:
   各機能は独立しており、エンドユーザーは用途に応じて
   いずれかの機能を選択的に使用します。どの機能も
   「この製品の本質」として明確に優位ではありません。
   
   結論:Essential characterを決定できません。

3. GRI 3(c)の適用:
   候補heading:8479、8504、8543
   番号順で最後のheading 8543を提案します。

添付資料:
- 構成要素の詳細仕様
- 価値・重量・体積の比較表
- 製品カタログ
- 使用説明書

EU BTI申請

BTI申請フォームの「分類根拠」欄に記載:

textClassification Justification:

The product is a composite good with three distinct functions:
1. Ultrasonic cleaning (heading 8479)
2. Wireless charging (heading 8504)  
3. UV sanitization (heading 8543)

GRI 3(a): No heading is more specific than others.

GRI 3(b): Essential character cannot be determined because:
- Value distribution: 35% / 30% / 35% (attached breakdown)
- Functional independence: Each function operates independently
- Consumer perception: No single function dominates user purpose
- All functions are equally important to end users

GRI 3(c): Among headings 8479, 8504, and 8543, we propose 
heading 8543 as the last in numerical order.

Supporting documents attached:
- Technical specifications
- Value/weight/volume comparison table
- User manual
- Product photographs

日本税関・事前教示照会

text分類根拠の説明:

本製品は以下の複数の項に該当する可能性があります:
- 第8479項(超音波洗浄機)
- 第8504項(充電器)
- 第8543項(UV除菌装置)

関税率表解釈に関する通則3(a):
各項はそれぞれ本製品の一部の機能のみを記述しており、
より特定的な記述を有する項を決定できません。

関税率表解釈に関する通則3(b):
重要な特性を与える材料または構成要素の判定を試みましたが、
以下の理由により決定できませんでした:

・価値比率:超音波機能35%、充電機能30%、UV機能35%
・重量比率:ほぼ均等に分散
・機能的役割:各機能は独立しており、使用者は用途に応じて
  いずれかを選択的に使用するため、どの機能も決定的な
  優位性を持ちません

関税率表解釈に関する通則3(c):
上記により、番号順で最後に来る第8543項が適用されると
考えますが、ご教示をお願いします。

添付資料:
・製品仕様書
・構成要素の価値・重量比較表
・製品カタログ(日本語・英語)
・取扱説明書

まとめ:GRI 3(c)は「最後の手段」であり「逃げ道」ではない

セット商品でessential characterが不明瞭な場合、GRI 3(c)により番号順で最後のheadingで分類します。wcotradetools+2

ただし、実務で最も重要なのは:

  1. GRI 3(a)と3(b)を真剣に検討したことを証明するlinkedin+1
  2. 「Essential characterが決定できない」ことを客観的証拠で示す[cmtradelaw]​
  3. 判断プロセスを第三者が再現できる形で文書化する[tradeinsightai]​
  4. 各国の事前判断制度で確認を取るcustoms+2

UV Sanitizerの事例が示すように、CBPでさえ「全ての機能が同等に重要」と判断してGRI 3(c)を適用することがあります。恐れる必要はありませんが、その判断に至るプロセスの透明性と説明責任が鍵です。[cmtradelaw]​

 

FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック

Logistique Inc.

投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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