■HS2028■⑤半導体、トランスデューサ等のエレクトロニクス関連のHSコード

8541と8542の境界が、関税だけでなく原産地と輸出管理まで動かす

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(HS条約第16条)に基づく次期HSです。WCOは、HS委員会(HSC)がHS2028向けの改正勧告を暫定採択し、2025年末の正式採択後に2026年1月に公表、2028年1月1日に発効すると説明しています。(世界税関機関)
EUの公式説明文書でも、HS2028の改正目的として「新技術や新製品を反映し分類を容易にする」例の一つに、半導体とトランスデューサが明示されています。

この記事では、半導体とトランスデューサ(センサー等)で、企業実務にどのような影響が出やすいかを、一次情報で確度高く言える範囲に絞って整理します。
注意点として、どのHS6桁が新設・統合・移動するかの確定は、WCOが公表するHS2028の法文と相関表(HS2022↔HS2028)で最終確認が必要です。ここでは、変化の方向性と、実務上「どこが動くと困るのか」を具体化します。(世界税関機関)


1. なぜ半導体とトランスデューサがHS2028の注目領域なのか

理由はシンプルです。分類が揺れやすいからです。
半導体は、単体デバイス、IC、複合パッケージ、センサー内蔵モジュールなど形態の進化が速く、従来の品名だけでは「どこまでが8541(半導体デバイス)で、どこからが8542(電子集積回路)か」「機器(90類など)に寄るのか」が揺れやすい分野です。

EUはHS2028改正の狙いとして、新技術の反映と分類容易化を掲げ、半導体とトランスデューサを具体例に挙げています。つまり、この周辺で文言や注記、区分の調整が入り得るという前提で企業側は備えるべきです。


2. まず押さえる 現行HSの分岐点

トランスデューサは定義がある。仕様書が弱いと誤分類が起きる

半導体とトランスデューサの分類は、第85類の注記が実務の分岐点になります。米国のSchedule B(輸出統計品目表)や豪州関税表でも、8541・8542のために「半導体デバイス」と「半導体ベーストランスデューサ」を定義し、さらに多成分IC(MCO)まで定義しています。(Census.gov)

ここで重要なのは次の3点です。

2-1. 半導体ベーストランスデューサは、センサーやアクチュエータ等を含む

定義上、半導体ベーストランスデューサは「半導体ベースのセンサー、アクチュエータ、レゾネータ、オシレータ」を含み、物理量や化学現象を電気信号に変換する等の固有機能を持つ離散デバイスと整理されています。(Census.gov)
自動車・産業機器・医療機器で多いセンサー素子やMEMS系の一部が、まさにこの定義に乗ります。

2-2. 多成分IC(MCO)は、ICとセンサー等が一体化したものを想定している

MCOは「1個以上の集積回路に、シリコンベースのセンサー等や一定の受動部品機能を組み合わせ、PCB実装用の単一ボディとして不可分にしたもの」と定義されています。(Census.gov)
つまり、同じ“センサー”でも、単体素子なのか、ICと一体のパッケージなのかで、8541と8542の分岐が生まれます。

2-3. 8541と8542は、原則として他の見出しより優先する

注記では、定義に合致する限り、8541・8542が機能ベースで他の見出しに引っ張られることを抑える優先規定が置かれています(例外は8523など)。(Census.gov)
これは「最終用途が自動車部品だから部品の見出しへ」という短絡が通りにくいことを意味します。


3. HS2028で企業に起きやすい具体的な影響

番号が変わるだけではなく、判定に必要な情報が増える

HS2028で半導体・トランスデューサ領域が動くとき、企業が現場で直面しやすい変化は大きく3つです。

3-1. 8541か8542かの判断が、より仕様依存になる

半導体ベーストランスデューサの定義は「半導体基板上に作られ、物理・化学現象を電気信号へ変換する等の固有機能を持つ離散デバイス」という技術要件を含みます。(Census.gov)
HS2028で分類容易化が進むほど、この技術要件を説明できない製品が、税関照会や差戻しの対象になりやすくなります。特に、センサー素子とセンサーモジュールを同一カテゴリで運用している会社ほど、影響が出やすいです。

3-2. センサー内蔵パッケージの扱いが、社内マスターの整合を崩しやすい

MCOの定義は、まさにセンサー内蔵ICなどの実装形態を想定しています。(Census.gov)
HS2028側で文言や区分が調整されると、同一製品群でも「この型番は8542寄り」「この型番は8541寄り」の差が出て、関税率だけでなく、原産地規則のCTC判定や統計集計が分断されがちです。

3-3. 各国の国内コード(8桁・10桁)の再整列が起きやすい

HSは6桁が国際共通で、各国はその下に独自の細分を置きます。HS6桁が動けば、国内の8桁・10桁は連鎖的に動きます。WCOは299セットの改正からなるHS2028勧告を公表し、各国は自国の関税・統計分類を整合させる必要があります。(世界税関機関)
半導体は国別の統計・規制連動が強い分野なので、国内細分の変更は現場影響が大きくなります。


4. ビジネス部門に効く論点

関税だけではない。原産地と輸出管理が同時に動く

半導体はサプライチェーンが複雑で、分類変更が与える影響が大きいことが指摘されています。業界資料でも、8541・8542の注記や定義が技術進化に合わせて改訂されてきた経緯が整理されています。(世界税関機関)
ビジネス側が押さえるべきは、分類変更が次の領域に波及する点です。

  1. 関税と追加関税の適用品目が変わり得る
  2. FTAやEPAの原産地規則で、CTCの起点コードが変わり得る
  3. 統計コードの変更で、取引実績やKPIが連続しなくなる
  4. 輸出管理や制裁対応で、コード参照のルールがある場合に差分が出る

5. いまからできる準備

HS2028の公表テキストが出た瞬間に動ける会社が勝つ

最後に、半導体・トランスデューサ領域で、準備効果が高い順に並べます。

  1. 製品を3階層に分ける
    半導体デバイス単体(8541候補)
    電子集積回路やMCO(8542候補)
    モジュールや完成品(他章の可能性が残る)
  2. 仕様情報の最小セットをマスターに持たせる
    半導体基板上の構造か
    固有機能がトランスデューサか
    ICと不可分に一体化しているか
    これらは注記の定義に直結します。(Census.gov)
  3. HS2022とHS2028の二重管理を前提に設計する
    WCOは2026年1月の公表と2028年1月1日の発効を示しています。切替直前の一括置換は高リスクです。(世界税関機関)
  4. 高額品目と規制連動品目は、分類根拠メモを先に作る
    後から説明できる根拠があるかどうかで、照会対応コストが決まります。

まとめ

HS2028は、半導体とトランスデューサを含む新技術領域で、分類を容易にする方向が公式に示されています。
そして現行制度でも、トランスデューサやMCOは第85類注記で技術的に定義されており、製品形態の違いが8541と8542の分岐を生みます。(Census.gov)

企業にとっての実務インパクトは、番号の付け替え以上に、分類の説明責任が増え、マスター整合と原産地・規制連動が同時に揺れる点です。
いまのうちに、製品群を階層分解し、定義に効く仕様項目を整備しておけば、HS2028の確定テキストと相関表が出た瞬間に、最短で安全な移行ができます。

EU:スマートテキスタイル(電子機能付き衣類)の分類基準を策定

EUでスマートテキスタイルが普及するほど、企業実務では「衣類なのか、電気機器なのか」という関税分類の迷いが増えます。EUは、こうした境界領域の製品について、単発の解釈ではなく、CN運用の枠組みの中で判断の一貫性を担保する仕組みを整備してきました。本稿では、スマートテキスタイルを巡るEUの分類基準が、実務上どのように組み立てられているかを、一次情報に基づいて整理します。 (Taxation and Customs Union)

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  1. スマートテキスタイルとは何か
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    スマートテキスタイルは、一般に「スマート(インテリジェント)テキスタイル/繊維製品」を対象に、定義やカテゴリ分けが議論されている領域です。国際標準化の文脈では、ISO/TR 23383:2020 が、スマートテキスタイルと繊維製品の定義や類型化を扱う文書として位置づけられています。 (ISO)

実務上のスマートテキスタイルは、例えば次のような特徴を持ちます。

  1. 導電糸や配線を繊維に織り込む
  2. センサー、発光、加温、通信などの電子機能を衣類に付与する
  3. 電子モジュールが縫い付け固定か、着脱式かで輸入時の姿が変わる

この「輸入時の姿」と「主要な機能」が、EUの関税分類を左右します。

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2. EUの関税分類はCNが軸になる
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EUでの関税分類は、HSを基礎にした8桁体系のCombined Nomenclature(CN)が中核です。CNは、共通関税率の適用と対外貿易統計の双方の要請を満たすための分類体系として説明されています。 (Taxation and Customs Union)

加えて、TARIC(EU Customs Tariff)は、CNを土台に、貿易救済や規制措置などの情報を紐づけて運用する実務基盤です。TARICの法的基礎がCouncil Regulation (EEC) No 2658/87であることも、欧州委員会が明示しています。 (Taxation and Customs Union)

またCNは毎年更新され、官報で公表される運用です。これは、毎年の改訂と公表が制度として定着していることを示します。 (Taxation and Customs Union)

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3. 「EUの分類基準」とは何を指すのか
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スマートテキスタイルに限らず、EUは分類のブレを抑えるために、複数の手段を組み合わせています。EU側の資料では、加盟国間で解釈が割れた場合に、分類規則、CN説明注、分類ステートメント等で統一的な分類を確保する旨が述べられています。 (Taxation and Customs Union)

ここが重要です。つまり「基準を策定」といっても、ひとつの包括ガイドラインで一気に規定するより、次のように積み上げで基準が形作られます。

  1. 分類規則(特定商品のCN分類を法的に確定)
  2. CN説明注(解釈指針を官報で明確化)
  3. BTI(個別企業が法的安定性を得るための仕組み)
  4. 公開データベースでの参照性向上(CLASS等)

この流れを補強する動きとして、欧州委員会は「分類規則の統合リストを公表した」と発表しています。実務者が過去の分類規則を横断的に参照しやすくするための環境整備といえます。 (Taxation and Customs Union)

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4. スマートテキスタイルで実務判断が割れやすいポイント
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スマートテキスタイルは、繊維と電子の複合製品です。EU実務で争点になりやすい判断軸を、制度の建て付けから逆算して整理すると、次の順序になります。

  1. 輸入時の提示形態がどうなっているか
    ・衣類に電子部品が縫い付け固定か
    ・電子モジュールが着脱式で、別梱包か
    ・複数の構成品が「セット」として提示されるのか

この「輸入時点の姿」が違うと、同じ製品コンセプトでも分類ロジックが変わります。

  1. 主要機能と客観的特性は何か
    ・衣類としての着用が主で、電子は補助的か
    ・電子機能が主で、衣類は保持体や装着体に近いのか
    ・通信、計測、加温、発光など、何が価値の中心か

EUの分類は、宣伝文句よりも、構造や機能など客観的特性に引き寄せて判断されやすいのが特徴です。

  1. 複数素材や複合品のとき、どの要素が「本体」を決めるか
    この点は、スマートウオッチ用ストラップに関するCN説明注が、分かりやすい実例になります。EUは、スマートウオッチ(通信機器側の分類になり得る機器)に専用設計されたストラップであっても、ストラップ単体で提示される限り、ストラップとして分類されることを明確にしています。さらに、ストラップが複数素材から成る場合は、一般規則3(b)の「本質的特性」により素材を決める、と説明しています。 (EUR-Lex)

この考え方は、スマートテキスタイルにもそのまま波及します。
・電子機器に接続する部材でも、単体提示なら「部材側の分類」に残る場合がある
・複合素材なら「本質的特性」をどれが与えるかが焦点になる

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5. 企業が取るべき実務対応
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スマートテキスタイルは、分類の迷いが起きやすい一方、事前に手を打てる領域でもあります。

  1. 分類ドシエの作り込み
    ・BOM、回路図、着脱構造、電源の有無、通信方式、使用手順、洗濯可否
    ・輸入時の提示形態(同梱か別梱か、セット扱いか)を明文化
    この資料が薄いほど、分類の再現性が落ちます。
  2. CLASSで先行情報を検索する
    欧州委員会は、CLASS(分類文書、CNノート、TARIC情報、BTI決定等を参照する入口)を公開しています。まずは既存の整理を探索するのが近道です。 (European Commission)
  3. BTIで法的安定性を取りに行く
    Access2Marketsの解説では、BTIは税関当局が出す法的決定であり、EU域内で3年間有効で、申請者とEUの全税関当局を拘束すると説明されています。スマートテキスタイルのような境界製品では、BTIの費用対効果が高くなりやすい領域です。 (EU貿易)
  4. 分類規則とCN説明注の更新を追う
    欧州委員会が分類規則の統合リストを公表した事実は、企業側も「点のBTI」だけでなく「面の動向」を追う必要があることを示唆します。 (Taxation and Customs Union)
  5. 原産地規則への波及を必ず試算する
    衣類として分類されるのか、電気機器として分類されるのかで、EPAやFTAの品目別規則の読み方が変わります。衣料品が一般にHS 61類または62類に入り、原産地規則の確認が必要になることは、JETROの解説でも触れられています。スマートテキスタイルは、ここに「分類ブレ」が加わるため、分類と原産地は必ずセットで検証してください。 (ジェトロ)

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6. まとめ
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スマートテキスタイルのEU分類は、単一の新ルールが突然降ってくるというより、CNの枠組みの中で、分類規則、CN説明注、BTI、公開システムを通じて基準が積み上がっていく性格が強い分野です。 (Taxation and Customs Union)

実務での勝ち筋は明確です。

  1. 輸入時の提示形態を設計し、文書化する
  2. 主要機能と本質的特性を、客観資料で説明できるようにする
  3. CLASSで探索し、必要ならBTIで確定させる
  4. 分類変更が原産地規則と関税率に与える影響まで同時に試算する

HS2028に備えるための主要国8桁公表状況(2026年1月16〜20日点検)

2028年に向けて進むHS改正(HS2028)は、通関部門だけの話ではありません。関税コスト、原産地管理(EPA・FTA)、輸出入規制、商品マスタ、売上集計、価格改定、契約条件まで、企業の意思決定の前提データをまとめて揺らします。
今回の記事では、主要国の8桁(各国の拡張桁を含む実務上のコード)に関して、どこまで情報が公表プロセスに入っているかを、2026年1月16〜20日の公開情報点検という前提で整理し、経営・事業サイドが取るべき実務アクションまで落とし込みます。

まず前提整理:HS2028はいつ何が起きるのか

世界税関機構(WCO)の枠組みで、HSは国際標準として6桁までが共通です。HS2028はその6桁体系の改正で、各国は自国の関税率表・統計分類をそれに合わせて改訂していきます。WCOの発表では、HS2028改正案は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れが示されています。 (World Customs Organization)

ここで重要なのは、企業実務で普段使っているのは6桁だけではないという点です。多くの国は6桁の上に、国内事情に合わせた桁(8桁、9桁、10桁など)を積んで運用します。つまり、HS2028の6桁改正は、その上に載る国内拡張桁の組み替えを引き起こします。

8桁公表状況とは何を指すのか

ここでいう「8桁公表状況」は、単に「WCOの6桁改正が出たか」ではなく、次のような段階を含めて実務的に捉えるのが有効です。

  • 段階1:WCOのHS2028(6桁改正)の公表
  • 段階2:各国当局が、自国の拡張体系(8桁や10桁など)へ落とすための国内プロセスを開始
  • 段階3:当局がドラフト(案)を公開し、意見募集や事前周知を開始
  • 段階4:法令・官報・公定データベースとして確定版を公表
  • 段階5:通関システム、申告様式、統計、FTA運用などへ実装し、適用開始

企業にとって痛いのは、段階4や5で初めて慌てることです。データ更新やシステム改修は時間がかかり、品目数が多いほど遅れが致命傷になります。だからこそ、段階2や3が見えた時点で社内の準備を始めるのが勝ち筋です。

主要国の8桁周辺の制度と、HS2028に向けた公表状況(点検期間:2026年1月16〜20日)

以下は、各国の「桁の考え方」と「公表プロセスの見え方」を、一次情報を中心にまとめたものです。国によって“8桁”の意味合いが異なるので、そこも含めて比較します。

米国:8桁と10桁が実務の中心、2026年2月にドラフト公開予定という具体的マイルストーンがある

米国のHTS(Harmonized Tariff Schedule)は、国際HS(4桁、6桁)に加え、米国独自の8桁・10桁の区分を持ちます。USITC(米国国際貿易委員会)も、国際HSは4桁・6桁、米国独自部分が8桁・10桁である旨を説明しています。 (usitc.gov)

HS2028対応に関しては、USITCが改正反映プロセスを開始しており、2026年2月に暫定ドラフト(HTS改訂案)を公表して意見募集、その後2026年9月に大統領向け報告を提出する見通しが公式に示されています。 (usitc.gov)

ビジネス的に重要なポイントはここです。
主要国の中で、ドラフト公開の時期がここまで明確に読める国は多くありません。米国向け売上が大きい企業ほど、2026年2月のドラフトを「分類番号の更新イベント」ではなく、「関税と規制の再設計イベント」として扱う必要があります。

実務アクションの例

  • 米国売上上位品目、対米調達上位品目を棚卸しし、現行HTSの8〜10桁でリスト化
  • 2026年2月のドラフト公開時に、該当品目が分割・統合・移動していないかを即時確認
  • 影響が大きい品目は、社内分類根拠(なぜその番号なのか)を説明可能にしておく

EU:8桁はCN(Combined Nomenclature)。毎年更新され官報で公表される仕組みが明確

EUの8桁はCN(Combined Nomenclature)で、国際HS(6桁)にEU独自の2桁を加えた8桁体系です。CNは関税率の決定や統計に使われ、毎年更新され、官報(EU Official Journal)で公表される仕組みになっています。 (EU Trade)

直近の例として、EUは2026年適用のCNを2025年10月31日に公表し、2026年1月1日から適用する旨を欧州委員会が案内しています。 (Taxation and Customs Union)

HS2028に向けた意味合いは次の通りです。

  • EUでは、8桁(CN)が実務上の基準であり、更新と公表が毎年必ず回る
  • HS2028の6桁変更は、CNの年次改訂の中で反映されていく可能性が高い
  • 企業側は「次のCN改訂で何が変わるか」を継続監視し、品目マスタや価格テーブルに反映する運用が必要

実務アクションの例

  • EU向けの主要品目について、現行CNと社内品目マスタを必ず一致させる
  • CN改訂のたびに、統計・関税・規制(対象品目指定)に波及がないかを点検する

日本:実務は9桁(統計品目番号)。6桁HS+国内3桁という構造が明確で、改正時はマッピングが鍵

日本の通関実務では、9桁の統計品目番号が基本です。日本税関は、9桁の統計品目番号が6桁HS+国内3桁で構成されることを明示しています。 (Japan Customs)

また、日本税関は「Japan’s Tariff Schedule」として、改訂版を日付付きで公表しています(2026年1月1日版が掲載されていることが確認できます)。 (Japan Customs)

HS2028に向けて日本企業が注意すべき点は、6桁変更に連動して9桁の国内3桁が見直され、過去データの継続性が崩れるリスクがあることです。
輸入の関税計算、EPA適用、調達コスト配賦、品目別採算などで「前年同一品目の比較」が効かなくなりやすい局面です。

実務アクションの例

  • 主要品目について、9桁をただの番号としてではなく、分類根拠とセットで管理する
  • HS改正に備え、現行9桁→将来体系への対照表(マッピング)を前提にしたデータ設計へ切り替える

中国:8桁ベースの国内細分が公式に示されており、6桁変更の影響は8桁再編に直結する

中国税関の公開資料では、HSに基づく中国の分類(CCCS)について、8桁の細分があり、最初の6桁はHSに対応し、7桁目と8桁目が国内細分である旨が説明されています。 (Customs.gov.cn)

また、ジェトロの整理では、中国の税則の品目総数について、HSコード8桁分類ベースでの言及があります(特定年版の税則に基づく説明)。 (JETRO)

HS2028の観点では、WCOの6桁が動けば、中国の7〜8桁(国内細分)も、分類ロジックの再整理を迫られる可能性が高いということです。特に中国は規制・許認可・監督条件が品目に紐づくケースが多いため、番号変更は通関可否や必要書類に波及し得ます。

実務アクションの例

  • 中国向け主要品目について、該当する規制や必要書類がHSに紐づいていないかを先に棚卸し
  • 取引先(輸入者)と、どの番号を使うかの合意形成と証憑整備を早めに開始

韓国:10桁体系。6桁HSを超える国内拡張が明確で、HS改正時は10桁の組み替えが発生する

韓国税関(Korea Customs Service)は、韓国が10桁コードを使用し、6桁HSは世界共通で、各国が6桁以降を独自に拡張する旨を明示しています。 (customs.go.kr)

HS2028に向けては、韓国の10桁体系のうち、影響が出るのは「国内拡張部分だけ」とは限りません。6桁の構造が変われば、その下に積まれた10桁全体の再編が起き得ます。

実務アクションの例

  • 韓国向けの主要品目について、現行10桁を輸入者と突合し、品名と仕様が一致する状態を作る
  • FTAの運用が絡む場合、品目別規則がどの桁を参照しているかを確認し、改正時の影響を事前に試算する

英国:コードは最長10桁。ただし関税は8桁を基礎にする場面が多く、9〜10桁が追加条件を左右する

英国政府のガイダンスでは、英国の申告で用いるcommodity codeは最長10桁になり得ると説明されています。 (Business Growth Service)
さらに、関税率は多くの場合最初の8桁で設定される一方で、9桁目と10桁目が関税や適用措置に影響することがある、と明記されています。 (GOV.UK)

これは、8桁だけを見て「だいたい合っている」と判断すると、措置や税率の取りこぼしが起きることを意味します。HS2028で6桁が動くと、英国の8桁と10桁は連鎖的に更新対象になります。

実務アクションの例

  • 英国向けは、8桁で一次判定しつつ、最終的な適用措置まで含めて10桁で確定する運用へ
  • サンクション、規制、セーフガード等の対象品目は、10桁までの一致を前提に管理する

まとめ表:主要国の「桁」と「公表プロセスの見え方」

地域・国実務で中心になる桁公式に確認できるポイントHS2028に向けて今見えるマイルストーン
WCO(国際)6桁2026年1月公表、2028年1月1日発効の流れ (World Customs Organization)まず6桁改正の確定内容を把握することが全ての起点
米国8桁・10桁8桁と10桁は米国独自 (usitc.gov)2026年2月ドラフト、2026年9月報告 (usitc.gov)
EU8桁(CN)CNは8桁で毎年更新、官報公表 (EU Trade)年次改訂の枠でHS2028反映が進む可能性が高い
日本9桁9桁=6桁HS+国内3桁 (Japan Customs)将来の対照表(マッピング)前提のデータ設計が重要
中国8桁(国内細分)8桁細分で、最初の6桁がHS、7〜8桁が国内 (Customs.gov.cn)6桁改正は8桁再編に直結しやすい
韓国10桁韓国は10桁を使用 (customs.go.kr)6桁変更に伴い10桁の組み替えが発生し得る
英国最長10桁(関税は8桁基礎が多い)9〜10桁が措置や税額に影響する場合あり (GOV.UK)8桁だけの管理で止めず、10桁確定まで運用設計

経営・事業サイドが今やるべきこと:通関の話を「経営課題」に変える手順

ここからが本題です。HS改正対応は、突き詰めると「社内の型」を作る仕事です。大きく外さないために、次の順番で着手するのが現実的です。

1) 影響範囲を「品目」ではなく「売上と原価」で切る

  • 売上上位、粗利上位、調達額上位の品目から着手する
  • 国別に、どの桁で申告しているか(EUならCN、米国ならHTSなど)を揃える

2) 二層管理に切り替える

  • 国際6桁:全世界で共通の骨格として管理
  • 国別拡張(8〜10桁):国ごとの申告・税率・規制の確定値として管理

この二層を混ぜると、改正時に詰みます。特に「海外拠点が現地コードで管理している」「本社は6桁しか持っていない」といった分断は、改正局面でデータ整合が崩壊しやすい典型パターンです。

3) 取引先との合意を先に作る

  • 輸入者側が最終判断権を持つ国が多い
  • 自社だけで番号を決めたつもりでも、相手国税関で止まると意味がない

結論:2026年は「公表を待つ年」ではなく「仕組みを作る年」

2026年1月16〜20日の時点で見える構図はシンプルです。

  • HS2028は、2026年1月公表、2028年1月1日発効という国際スケジュールが明確 (World Customs Organization)
  • 各国の実務コードは、6桁の上に国内拡張(8〜10桁)があり、国ごとに桁も運用も異なる (EU Trade)
  • 米国は2026年2月にドラフト公開予定という具体的な山場がある (usitc.gov)
  • EUや日本は、年次改訂と公表の仕組みが制度として確立しているので、改正局面では「改訂情報の取り込み運用」が勝負になる (Taxation and Customs Union)

HS2028対応で差がつくのは、情報収集の速さよりも、社内データと業務運用の型を先に作れるかどうかです。
次に何が出たら動くのか、そのトリガー(米国なら2026年2月、EUなら次のCN改訂情報、日本なら改訂版の公表と対照表など)を決め、監視と更新をルーチン化してください。

必要であれば、この枠組みをそのまま社内向けの「HS2028対応ロードマップ(部門別タスク、マスタ設計、監視頻度、改正時の意思決定フロー)」に落とし込んだ雛形も、文章として作れます。

CBPが「燃料ポンプ+液面センサー一体品」の再分類を提案した件を、実務目線で読み解く:一体品の分類リスク

米国の税関当局CBPが、車載向けの「燃料ポンプと燃料レベルセンサー(液面センサー)が一体となったユニット」について、過去の分類見解を見直し、別のHS番号へ動かす提案を公表したと報じられています。結論から言うと、従来「液面計測(9026)」として扱ってきたものを、「内燃機関用のポンプ(8413)」として扱う方向の提案で、一般税率ベースでは無税から2.5%へ変わり得る、というのがポイントです。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

以下、ビジネスマン向けに、何が起きているのか、なぜ重要か、今すぐ何をすべきかを整理します。


1. 何が起きているのか:提案の概要と期限

報道ベースでは、CBPは2025年12月31日付のCustoms Bulletinで、燃料ポンプ+燃料レベルセンサーの一体品(fuel sender等と呼ばれることが多い)について、ポンプとしての分類(HTSUS 8413.30.90)へ再分類し、関連する既存の判断(NY 809868)を撤回する提案を出しています。コメント期限は2026年1月31日とされています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

重要なのは、これは「確定」ではなく「提案」である点です。とはいえ、コメント募集は、裏を返せばCBPが一定の結論を持って動いているサインでもあり、影響を受ける企業は手当てが必要です。


2. そもそも過去はどう分類されていたのか:NY 809868の読みどころ

1995年のNY 809868では、対象品は「燃料ポンプ部分」と「フロート(浮き)式の液面センサー部分」を持つアセンブリで、燃料タンク内に挿入され、液面変化に応じた電気信号をメーターへ送る、と説明されています。 (Customs Mobile)

当時の整理は実務的で、機能が2つあり(ポンプ=8413、液面センサー=9026)、特定の単独見出しがないとして、GRI 3(c)により「番号の後ろに出てくる方」を採って9026に寄せた、というロジックでした。 (Customs Mobile)

ここが今回の論点の出発点です。すなわち「二機能品をどう扱うか」を、CBPが別の理屈で組み替えようとしている、という構図になります。


3. 今回CBPはなぜ「ポンプ(8413)」に寄せたいのか

報道では、CBPはこの一体品を「複合機械(composite machines)」として捉え、主たる機能はタンクからエンジンへ燃料を送ること=ポンプが中核であり、液面センサーの情報は有用だが付随的だ、という立て付けで説明しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

要するに、昔の「二機能だから最後の番号(GRI 3(c))」ではなく、いまは「主機能で決める」という考え方で、ポンプ側に寄せたい、という発想です。


4. 企業への影響:関税だけでは終わらない

4-1. 関税コストの増加可能性

HTS 9026.10.20(電気式の液面計測等)は、USITCのHTS検索でも一般税率がFree(無税)として表示されます。 (hts.usitc.gov)
一方、8413.30.9090等の内燃機関用ポンプ類は、CBPの他の分類例でも2.5%が示されています。 (rulings.cbp.gov)

例えば年間輸入CIF価格が10百万ドル相当なら、単純計算で追加関税コストは25万ドル規模になり得ます(一般税率のみの概算)。

ただし、USMCAなどの特恵で結果的にゼロになるケースもあり得るため、最終影響は「原産地」「特恵適用」「追加関税の有無」まで含めて試算が必要です。

4-2. 税率以外の二次影響

HS番号が変わると、社内の品目マスター、通関指示、価格転嫁ロジック、引当金、顧客との契約条項(関税負担者)に波及します。加えて、特定国追加関税や統計、社内監査の観点でも「なぜこの番号なのか」を説明できる状態が必要になります。


5. 実務対応:今すぐやるべきことチェック

  1. 該当品の棚卸し
    ・fuel sender、fuel pump module、fuel level sensor integrated などの呼称で買っている部品を抽出
    ・部品表(BOM)と仕様書で、ポンプ機能とセンサー機能の構成、出力信号、使用場所(タンク内搭載など)を確認
  2. 影響試算
    ・現行分類(9026)での輸入実績金額を集計
    ・仮に8413へ動いた場合の一般税率差分(概算)を算出
    ・特恵適用の可否(USMCA等)で結果がどう変わるかも並行試算
  3. 根拠資料の整備
    ・機能説明書、回路やフロート機構の説明、ポンプ単体での販売有無、センサー単体での使用可能性など
    ・分類ロジックを、GRIと注記に沿って文章化(監査対応のミニドシエ化)
  4. コメント提出の検討
    法的には、CBPは解釈変更や撤回に当たり公告と意見募集を行う枠組みを持っています。 (法律情報研究所)
    影響が大きい企業ほど、技術的事実と分類ロジックを整理した上で、期限までに意見提出する価値があります(賛否は別として、実態を正確に伝えること自体が重要です)。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

6. コメント作成で争点になりやすい論点

・製品の「主たる機能」は何か(車両としての役割、故障時のフェイル動作、制御上の重要度)
・ポンプとセンサーが機能的に不可分か、それとも単なる同梱か
・市場実態として「燃料計測ユニット」として買われているのか、「燃料供給ユニット」として買われているのか
・説明資料(カタログ、図面、ECU信号仕様)が、どちらの機能を主として描いているか

ここは、技術部門の文言がそのまま分類ロジックに直結します。通関・法務・技術で同じ絵を見て、言葉を揃えるのが最短ルートです。


まとめ:今回の話は「一体品の分類リスク」が表面化した典型例

今回の提案は、古い判断でも見直され得ること、そして二機能一体品が「最後の番号」から「主機能」へ寄せられる可能性があることを示しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

確定前の今だからこそ、影響棚卸し、試算、根拠整備、必要ならコメント提出までを一気通貫で行うのが、最もコスト効率の良い対応になります。

タイ税関が電子機器パーツのHSコード解釈を厳格化

実務で最も警戒すべきポイントは2つあります。
1つ目は、通関時の分類(HS)に対する追加資料要求が増え、通関の初速が落ちること。
2つ目は、通関後の事後調査で分類差を指摘され、追徴や手続き負担が増えることです。

タイでは以前から、関税分類の解釈相違がFTA適用可否や追徴に直結しやすいという指摘があります。JETROは、タイ税関の関税分類解釈を起点に、輸入時または事後調査でHS相違を指摘され、過去に遡及して負担が生じる事例に言及しています。(JETRO)
さらに近年は、当局側がデジタル化と監査高度化を進め、HSコードを含む申告の正確性をより厳密に検証する方向性が明確です。タイの税関・税務環境が厳格化し、税関当局が事後調査やAI活用を強化している旨が、PwC Thailandの発信でも説明されています。(PwC)

以下、電子機器パーツに焦点を当てて、何が起きやすいのか、企業はどう備えるべきかを、HSコード実務の観点で整理します。


1. 「厳格化」が意味するもの:現場では何が変わるか

ニュースの見出しが「HSコード解釈の厳格化」である場合、現場で起きやすい変化は概ね次の3類型です。

  1. 申告時のエビデンス要求が増える
    インボイス品名が抽象的、部品用途が曖昧、仕様が不足している場合に、カタログ、仕様書、写真、構成部材、機能説明の追加提出を求められやすくなります。郵便・小口領域でも、タイ向けは2026年1月1日以降、通関電子データの要求が強化され、不十分・不正確だと遅延や返送リスクが高まると日本郵便が注意喚起しています(6桁HS推奨、詳細な品名等)。(郵便局 | 日本郵便株式会社)
  2. 部品か完成品か、複合品かの線引きが厳しくなる
    電子部品はモジュール化が進み、「単なる部品」ではなく、特定機能を完結するユニットとして評価されやすい領域です。ここを税関側が厳密に見始めると、分類が変わるだけでなく、必要許認可や税率、FTA適用実務まで連鎖します。
  3. 事後調査での再判定が増える
    タイ当局は事後調査の仕組みを整備し、輸入時は迅速化しつつ、後段で精緻に確認する運用を強めています。(PwC)
    この局面では、同一品目を継続輸入している企業ほど、過去分まで一括で影響が出ます。

2. なぜ「電子機器パーツ」が狙われやすいのか

電子機器パーツは、税関分類の観点で「揉めやすい条件」が揃っています。

  • 製品の多様化が速く、機能と構造が短期間で変わる
  • 部品と完成品の境界が曖昧になりやすい(モジュール、組立品、キット)
  • 章またぎ(第84類・第85類・第90類など)が起きやすい
  • HSの違いが、関税だけでなく規制(許認可、標準、禁制)やFTA実務に波及しやすい

加えて、タイでは従来から「担当官によりHSコードの解釈が異なる」「判断基準の透明性が課題」といった指摘が、日本側の対外要望の中で繰り返し表面化しています。(jmcti.org)


3. 電子機器パーツで頻出する分類論点(実務での地雷)

ここからは、企業側が社内チェックリストに落とし込みやすい形で、論点を整理します。個別のHS番号断定が目的ではなく、税関から質問される論点を先回りして潰すことが目的です。

論点A 部品(parts)として認められるか

チェック観点

  • 当該パーツは、特定の機器に専ら又は主として使用されるか
  • 単体で独立した機能を発揮するか(測定、変換、通信、制御など)
  • ソフトウェアを搭載し、単体で特定機能を完結するか
  • 外観上、完成品の性格が強いか(筐体、表示、入出力、電源等)

用意する証跡

  • 用途を特定できる資料(組込先の型式、図面、取付位置、BOM上の位置付け)
  • 単体機能の範囲が分かる資料(仕様書、ブロック図、入出力仕様)
  • 市販汎用品か専用品かの説明

論点B 複合機能品の「本質」判定

チェック観点

  • 複数機能がある場合、主要機能は何か
  • 主要機能を支える部材構成は何か(価値、体積、役割)
  • 測定機能があるのか、制御機能があるのか、単なる信号変換か

用意する証跡

  • 機能説明(何を入力し、何を出力し、何を達成する製品か)
  • 構成部材表(主要IC、センサー素子、電源、通信部等)
  • 動作モードと使用シーン

論点C 通関・FTAでの「HS不一致」リスク

タイでは、原産地証明書に記載されたHSと、輸入通関で税関が判断するHSが不一致とされ、FTA税率が認められない相談が多いとJETROが指摘しています。(JETRO)
分類厳格化局面では、この不一致が起きる頻度が上がります。

用意する証跡

  • FTAで使うHS(協定上の基準年・桁数)と、通関で使うHS(現行税番)の対応関係
  • 相手国輸入者と合意したHS見解メモ
  • 分類根拠(後述の分類ドシエ)

4. 会社が今日から整備すべき「分類ドシエ」最低限セット

電子機器パーツで通関が止まりやすい会社ほど、HSを「番号」ではなく「判断記録」として持っていません。厳格化局面で効くのは、次のような最低限のドシエです。

  • 製品概要:用途、組込先、製品写真
  • 機能説明:入力、処理、出力、主要機能
  • 仕様書:電気仕様、通信仕様、測定範囲等
  • 構成部材:主要部品表、基板実装の有無、ソフトウェア搭載の有無
  • 分類ロジック:どの論点で分岐し、なぜその結論か(社内判定メモで可)
  • 取引実態:インボイス品名、型番体系、梱包形態、セット有無
  • 運用履歴:過去の申告実績、指摘履歴、差戻し履歴

タイでは、事前教示制度の活用が推奨される一方、回答まで時間を要することもある、という現場声もJETROが報告しています。(JETRO)
だからこそ、事前教示を待つ間も「自社の説明責任」を果たせる形に整えることが先決です。


5. タイで揉めたときの実務手順:止めない、燃やさない

1) まずは「分類の争点」を言語化する

税関とのやり取りが長期化する企業は、争点が整理できていないことが多いです。
部品か完成品か、主要機能は何か、どこが章またぎか。争点を1枚にまとめて提出できるようにします。

2) 早期に「事前教示」または「分類判断の相談ルート」に載せる

タイでは、輸入時に関税分類解釈の確認を税関側に依頼する運用も紹介されています。(JETRO)
社内で抱え込まず、輸入者・通関業者と一体で、当局照会の段取りを作るのが現実的です。

3) 係争中でも貨物を止めない選択肢を準備する

分類が確定しない場合でも、保証金を積んで通関を進め、後で結論を受ける運用があります。タイの電子輸入手続きマニュアルでも、HS分類を争う場合の保証金・異議の扱いが説明されています。(ccc.customs.go.th)


6. まとめ:厳格化局面で勝つ会社は「番号」より「根拠」を持つ

電子機器パーツのHS分類は、技術進化で曖昧さが増える一方、税関側はデジタル化と監査高度化で、説明責任の水準を引き上げています。(PwC)
このギャップを埋める最短ルートは、分類ドシエを整備し、部品・複合機能・章またぎの論点を先回りして潰すことです。

厳格化は、正しく準備した企業にとっては「予見可能性を上げるチャンス」にもなります。通関を止めず、追徴を防ぎ、FTAも取りこぼさないために、まずは自社の電子部品トップ品目から、分類根拠の棚卸しを始めてください。

■HS2028■④e-bike、ドローン、清掃ロボット関連のHSコード

番号の付け替えではなく、分類の境界線が動く

2028年1月1日発効予定のHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(Article 16 Recommendation)に基づく新しいHS版で、299セットの改正を含みます。改正の狙いとして「新製品や国際標準の反映により分類を容易にする」例に、e-bike、清掃ロボット、ドローンが明示されています。

本稿では、公開一次情報で確度高く言える範囲に絞り、これら3分野でどのような影響が出やすいかを、ビジネスマン向けに整理します。
注意点として、改正勧告の全文(どのHS6桁がどう変わるか)は、各国の国内実装や相関表の整備と合わせて最終確認が必要です。ここでは、確定情報と、実務的に起きやすい影響を分けて説明します。(世界税関機関)


1. まず押さえるべき「影響の出方」

e-bike、ドローン、清掃ロボットに共通するリスクは、分類が揺れやすい境界線にいることです。

・製品の実態は同じでも、呼び方や用途説明で章がブレる
・自律機能やソフト機能の追加で、従来の品名表現に当てにくくなる
・各国が独自に細分(8桁、10桁)してきた分野が、HS(最初の6桁)側で整え直される

HS2028はまさにこの「当てにくい分野」を整える方向が公式説明で示されています。


2. ドローンはここが具体的に動く

自律補助機能があっても、8806で迷わない方向へ

ドローン(無人航空機)は、HS2022で見出し8806が新設され、重量区分などで細分されています。ところが近年は、帰還(Return to Home)や障害物回避のような補助的な自律機能が標準化し、「remote-controlled flight only(遠隔操縦のみ)」という文言だと実態とズレる場面が出てきました。

この点について、WCOのHS見直し小委員会(RSC)で、8806.2の品名表現を
remote-controlled flight only から remote-controlled flight, with or without auxiliary autonomous flight
へ改める合意があったこと、さらに「remote-controlled flight」の意味を定義する章注案が提案され、HS委員会へ送付されHS2028で採択され得ることが、米国政府の公開ページで具体的に説明されています。(貿易庁 | Trade.gov)

企業実務への影響は次の通りです。
・自律補助機能付きドローンでも、遠隔操縦型として8806の枠内に位置づけやすくなる
・「自律機能があるから別分類」といった誤解による差戻しや照会が減りやすい
・一方で、重量区分や用途区分(旅客運送設計など)の判定は引き続き重要

現場で必要になる証跡は、従来の仕様書に加え、操縦形態(遠隔操縦を前提にし、補助的自律機能を含むこと)、最大離陸重量、運用形態の説明です。(貿易庁 | Trade.gov)


3. 清掃ロボットはここが具体的に動く

85.08の文言や扱いを明確化する動きが出ている

清掃ロボットは、家庭用のロボット掃除機だけでなく、床洗浄、モップ掛け、業務用の自走清掃など形態が広がり、各国で分類が揺れやすい分野です。

まず現状の参考として、米国CBPの分類例では、Wi-Fi接続のロボット掃除機が「self-drive(自律走行)モード」を備えていても、真空式掃除機として8508に分類されています。(customsmobile.com)
つまり、少なくとも一部当局実務では「ロボットであること」自体は85.08から外れる理由になっていません。

一方、HS見直しの議論では、清掃ロボットについて「見出し85.08の品名表現を修正する可能性」が議題として挙がっています。HS見直し小委員会のドラフト議題(公開ファイル)には、見出し85.08に関して cleaning robots を対象とした品名修正の可能性が明記されています。(nbr.gov.bd)
さらに、WCO職員によるHS改正案の説明資料でも、清掃ロボットが改正テーマとして列挙されています。(unstats.un.org)

企業実務への影響は次の通りです。
・清掃ロボットを85.08など既存の枠に当てやすくするため、品名や注記の整備が進む可能性
・国ごとにバラついていた「ロボット清掃機器」の扱いが寄っていき、税番の安定度が上がりやすい
・逆に、これまで別章で運用していた場合は、HS2028切替時に品目マスターの見直しが必要

社内で先に整えるべきデータ項目は、清掃方式(吸引、ブラシ、モップ、洗浄液の有無)、ダスト容器の有無と容量、電動機内蔵、用途(家庭用か業務用か)、自走の有無です。ここが揃うと、切替時に分類根拠の再作成が速くなります。(customsmobile.com)


4. e-bikeは何が起きやすいか

国別の細分が先行しており、HS6桁側で整理されやすい領域

e-bikeは、HS2028で分類容易化の例として明示されています。
一方で、公開情報だけで「HS6桁が何番に分割される」と断定できる段階の資料は限られます。そこで本稿では、企業にとって現実的に起きやすい影響を、確度の高い観察事実から整理します。

観察事実として、e-bikeはすでに多くの国・地域で細分管理が先行しています。
例えば英国の公開ガイダンスでは、ペダルアシスト型電動自転車を8711 60 10(CNの区分)として扱う説明が示されています。(GOV.UK)
EUの文書でも、通常の電動自転車とスピード型電動自転車を別コードで扱ってきた経緯が記されています。(EUR-Lex)
またEUは、e-bikeがHS8711 60に分類されることを前提に、原産地の非優遇ルールの情報提供を行っています。(Taxation and Customs Union)

この状況は、次を意味します。
・HS6桁(国際共通の最初の6桁)では一括でも、各国が8桁以降で分けて管理せざるを得なかった
・その結果、国をまたぐと「同じe-bikeのはずが統計や社内マスター上は別物」になりやすい
・HS2028が分類容易化を狙う以上、HS6桁側で境界線を明確にする方向の議論が入りやすい

企業実務への影響は、コードが変わるかどうか以前に、判定に必要な客観仕様を揃えることが必須になる点です。
特に次の仕様は、将来の区分整理の基礎データとして重要度が高いです。
・ペダルアシストか、スロットル主体か
・定格出力、最高速度、車両区分の根拠
・バッテリー仕様と同梱形態
・車体重量、用途(公道、私有地、貨物用途など)

これらが揃っていないと、HS2028切替後に取引先や通関業者から「仕様を出してほしい」が集中し、出荷が止まりやすくなります。


5. 3分野共通の社内アクション

2028年に止まらないための最小セット

  1. 品目マスターに、分類に効く仕様項目を追加する
    e-bikeは出力と車両性、ドローンは操縦形態と重量、清掃ロボは清掃方式と機能で、まずは項目を揃えるのが最優先です。(貿易庁 | Trade.gov)
  2. HS2022とHS2028を二重管理できる設計にする
    切替日は2028年1月1日です。HS6桁が変わると、申告、原産地、統計、契約表示まで連鎖します。WCOもHS2028の公表と発効タイムラインを示しています。(世界税関機関)
  3. 争点になりやすい品目は、分類根拠メモを先に作る
    新技術系は「なぜその章なのか」を後から説明できることが、照会対応と監査対応のコストを決めます。HS2028はまさに、こうした分野の分類容易化を目的に含む改正です。

まとめ

HS2028で e-bike、ドローン、清掃ロボットが影響を受けやすい理由は、製品の進化速度が速く、従来の品名表現だけでは境界が曖昧になりやすいからです。EUの公式説明でも、これらが分類容易化の対象例として挙げられています。

ドローンは、補助的自律機能を前提に8806の文言を更新する提案が具体的に示されており、HS2028で採択され得ます。(貿易庁 | Trade.gov)
清掃ロボットも、85.08の扱いを明確化する議論が確認でき、実務上の揺れを抑える方向が見えます。(nbr.gov.bd)
e-bikeは各国で細分管理が先行しており、HS6桁側で整理が入りやすい領域です。(GOV.UK)

■HS2028■③ヘルスケア食品サプリメントと食品強化用ミックス関連のHSコード

2106一括運用が通用しにくくなる理由と、企業が備えるべき実務ポイント

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCOが取りまとめた299セットの改正で、社会・環境・健康・セキュリティ上の要請を反映しつつ、分類のしやすさと監視のしやすさを高める方向で設計されています。EUの公式説明でも、改正の具体例として食品サプリメントと食品強化用ミックスが明示されています。
またWCOは、HS2028の改正勧告がまとまり、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れを示しています。(世界税関機関)

本稿では、食品サプリメントと食品強化用ミックスについて、HS2028で想定される変化の方向性と、企業実務で起きる影響を、一次情報に基づく範囲で整理します。
注意点として、どのHS6桁が新設・統合・移動するかの確定は、WCOが公表するHS2028法文と相関表で最終確認する必要があります。一方で、分野として改正対象に入ること自体は公式資料で確認できます。


1. なぜ食品サプリと食品強化ミックスがHS改正のテーマになるのか

理由は大きく2つあります。

1つ目は、税関が識別したい商品が増えたことです。
食品サプリは、健康志向の高まりとともに市場が拡大し、形態もカプセル、錠剤、ゼリー、粉末、液体飲料など多様化しました。その結果、食品としての調製品なのか、飲料なのか、医薬品に近いのか、境界で分類のブレが起きやすくなっています。EUの裁判例でも、食品サプリの液体形態をめぐり、2106と2202の境界が争点になっています。(EUR-Lex)

2つ目は、食品強化が政策目的と結びつきやすいことです。
食品強化は、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素を食品に添加して栄養状態の改善を狙う施策で、国や地域で制度設計されやすい分野です。WHOも食品強化の定義と目的を整理しています。(世界保健機関)
この分野で使われる食品強化用ミックスは、最終食品ではなく、製造工程で投入されるプレミックスであることが多く、貿易・統計・監視の観点から識別ニーズが高い商品群です。HS2028では、こうしたニーズを踏まえた区分整備が例示されています。


2. HS2028で起きやすい変化の方向性

確度高く言えることと、実務上の見立て

2-1. 確度高く言えること

・HS2028の改正テーマとして、食品サプリメントと食品強化用ミックスが公式文書で明示されている
・HS2028は分類を容易にし、政府・産業・社会目的のモニタリングに資する区分を整備する方向で改正される
・WCOの関連組織でも、dietary supplementsの分類改正に関わる論点がHS2028の提案群として扱われている(世界税関機関)

2-2. 実務上の見立て

ここからは、上記の公式方針と、現行運用での争点を踏まえた見立てです。断言ではなく、影響が出る典型パターンとして整理します。

・HS6桁レベルで、食品サプリと食品強化ミックスを識別しやすい区分が追加される可能性
現状、多くの国で食品サプリは2106に寄せられがちですが、液体形態では2202側との境界問題も起きています。(EUR-Lex)
HS2028が分類容易化を狙う以上、こうした境界での判断基準や区分の粒度が調整される可能性があります。

・食品強化用ミックスは、最終食品と区別して追跡できる方向へ
食品強化のプレミックスは、最終製品ではなく、製造用投入材として動くため、統計・監視上は別管理したいニーズがあります。HS2028が食品強化用ミックスを例示したのは、その識別力を上げる方向性を示唆します。


3. 企業にとっての具体的な影響

何が増え、どこで止まりやすくなるか

3-1. 食品サプリは、品名よりも形態と用途情報が重要になる

現行でも、カプセルや錠剤など、摂取量が明確な形態のサプリは2106に分類されるという説明が政府ガイダンスにあります。(GOV.UK)
一方、液体形態は飲料(2202)側との境界問題があり、実務上の照会・差戻しが起きやすい類型です。(EUR-Lex)

HS2028で区分が細かくなると、通関で求められやすい情報は次の方向になります。
・形態:カプセル、錠剤、粉末、ゼリー、液体など
・表示と用途:サプリとしての摂取目的か、嗜好飲料か
・成分構成:ビタミン・ミネラル、植物抽出物、たん白、糖類などの主成分
・包装:小分けか、業務用バルクか

結論として、これまで商品名だけで通っていたものが、仕様書と表示情報まで含めて説明責任が重くなる可能性があります。

3-2. 食品強化用ミックスは、製造投入材としての説明が必要になる

食品強化用ミックスは、最終食品ではなく、微量栄養素を既定量で投入するためのプレミックスです。食品強化自体が公衆衛生と結びつくため、成分や用途の説明が重要になります。(世界保健機関)

実務で問われやすいのは次の点です。
・用途:最終食品向けか、飼料向けか
・投入先:小麦粉、米、塩、乳製品、飲料など
・組成:微量栄養素の種類と濃度、担体、固結防止剤等
・流通形態:業務用バルクか、消費者向け包装か

HS2028で識別力が上がると、これらの情報が分類の前提として必要になり、社内マスターに持たせないと運用が詰まりやすくなります。


4. すぐ始められる社内準備

ビジネス側の実装コストを下げる順番

  1. 対象品目の棚卸しを、形態と用途で切る
    ・食品サプリ:固形の摂取量明確品、液体形態、ゼリー・粉末
    ・食品強化ミックス:製造投入材、バルク、投入先が複数のもの
  2. 製品情報の最小セットを統一する
    ・原材料組成表、仕様書、ラベル表示、用途説明
    ・業務用は投入先と投入量の情報
  3. 現行分類の争点を先に潰す
    ・2106と2202の境界になり得る液体系サプリは、根拠と説明資料を強化する(EUR-Lex)
  4. HS2022とHS2028の二重管理を前提にデータ設計する
    ・WCOの公表テキストと相関表を受けた一括置換ができるよう、品目ID軸で履歴を持つ(世界税関機関)

まとめ

HS2028では、食品サプリメントと食品強化用ミックスが改正対象として明示され、分類をしやすくし、モニタリングにも使える品目体系へ寄せる方向が公式に示されています。
企業にとっての本質的な影響は、コードが変わることそのものよりも、分類に必要な情報が増え、説明責任が重くなることです。特に液体形態のサプリは、現行でも2106と2202の境界が争点になり得るため、HS2028移行で照会が増えやすい領域です。(EUR-Lex)

今やるべきことは、対象品目を形態と用途で棚卸しし、成分と表示を含む最小証跡セットを揃え、HS2028の公表テキストと相関表が出た瞬間にマスター改修へ移れる状態を作ることです。(世界税関機関)

WCOが示すセンサー関連の新分類意見


WCOが示す新しい線引き

WCOが2024年3月の第73回HS委員会で採択した分類意見により、Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)がHS 8542.39に分類されることが明文化されました。 センサー機能を内蔵したICを「測定機器」ではなく「電子集積回路」として扱う境界が、構造面から具体的に示された点が企業実務にとって重要です。


1. 分類意見とは何か

WCOの分類意見(Classification Opinions)は、HS委員会が扱った重要・難解な分類判断を、具体的な品目ごとに整理した公式資料です。 WCOは、分類意見がHS解説(Explanatory Notes)と並ぶ国際的な解釈ツールであり、特定製品に対する分類を示す点に特徴があると説明しています。[wcoomd]​

実務上のポイントは次のとおりです。

  • 分類意見は、各国税関が運用をそろえる際の強い参照点となる。**
  • もっとも、最終的な適用は各国の法令・運用に依存するため、WCOも「各国での実施状況を確認するように」と注意書きを付しています。
  • 実際にWCOは、「HS委員会の決定を適用していない、または適用できない」と通報した国の一覧を公表しています。[cbsa-asfc.gc]​

したがって、分類意見は軽視できない一方で、「自国・仕向国がどう実装しているか」の確認を含めて初めてリスクが閉じます。[cbsa-asfc.gc]​


2. Dual-die HallセンサーICの内容

2-1 対象品目と分類

今回センサー関連で実務に直結するのが、「Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)」をHS 8542.39に分類した新しい分類意見です。 HS上は85.42「電子集積回路」のうち「その他」に該当するサブヘディングに位置づけられています。[trademo]​

分類意見では、同じページで「4スイッチを3ダイに集積したIC」と「Dual-die Hall sensor IC」の2件がいずれも8542.39として示されており、いずれも第85類注12(b)(iii)とGIR1・GIR6を根拠としています。

2-2 製品構造の要点

Dual-die Hall sensor ICに関する分類意見で示されている構造要件は次のとおりです。

  • 1パッケージ内に、冗長構成の2つのセンサーを内蔵したDual-die Hall sensor integrated circuit(IC)である
  • 2つのセンシング要素は「個別の離散部品」ではなく、同一パッケージ内で同じ横方向位置(same lateral position)に配置された要素として集積されている
  • 2つのセンサーはいずれも半導体技術により製造されたモノリシック集積回路であり、互いに電気的には接続されていない
  • ダイ製造時にすべての構成要素が同時に集積されており、追加の能動素子・受動素子など他の回路要素は組み付けられていない
  • 用途は「角度および位置の検出(angle and position detection)」
  • 適用根拠として、GIR1、GIR6、および第85類注12(b)(iii)が明記されている

ここから企業側が読み取るべきメッセージは明確です。
センサー機能を備えていても、構造が電子集積回路そのものであり、追加の回路素子(能動・受動)を組み付けていない限り、測定機器ではなく8542の電子集積回路として整理され得る、という線引きが国際レベルで示されました。[trademo]​


3. なぜこの判断がビジネスに効くか

3-1 HSコード変更の連鎖

HSコードが8542か、それ以外(例えば測定機器、トランスデューサー等)かで変わると、影響は単なる関税率にとどまりません。

  • 原産地規則の品目別規則(CTH、CTSH、RVC等)の該当性
  • 社内マスタやERP・販売管理システム上の品目分類
  • 輸出入統計および社内KPIの集計ロジック
  • 取引契約書の品番・仕様欄に紐づく条文(関税・関税負担条項等)

センサーは採用品目の裾野が広く、同じ技術要素が複数製品に跨るため、一度分類が揺れると影響が部門横断で波及しやすい領域です。[perplexity]​

3-2 サプライヤー資料とBOMの書き方

今回の分類意見は、構造条件(冗長センサー構成、電気的非接続、追加素子の不在など)をかなり具体的に記述しています。

  • これらの条件が、サプライヤーのデータシートや仕様書、FMEA、機能安全ドキュメントのどこに記載されているか
  • BOM上で「ICとして完結しているのか」「基板上の他素子と一体でモジュール化されているのか」がどう表記されているか

といった「書き方」次第で、同じ技術内容でも分類判断の強度が変わり得ます。 調達部門が受け取る仕様書の粒度が、そのまま通関時の説明可能性とリスクに直結するイメージです。[perplexity]​

3-3 モジュール化による分類の変化可能性

今回の分類意見が対象とするのはあくまでICそのものです。
実務では、同じHallセンサーでも、次のレイヤーで取引されるケースが多くなります。

  • 半導体ダイを一定のパッケージに封止したIC単体
  • ICを基板実装し、抵抗・コンデンサ・レギュレータ等を組み合わせたセンサーモジュール
  • コネクタ付き・筐体組込みのユニットとして自動車・産業機械に搭載される段階

モジュール化が進むほど、第85類注12(b)が定義する「電子集積回路」から外れ、他の見出し(例:8543のトランスデューサー類、計測機器類、車両部分品など)へ分類が移る可能性が高まります。 したがって、製品階層ごとに「どこまでがICで、どこからが装置か」を棚卸ししておく意味が大きくなります。[customsmobile]​


4. 実務落とし込み:3段階の切り分け

センサー品目を整理する際は、次の3段階で切り分けると迷いを減らせます。

A. 集積回路としてのセンサーIC

  • 今回の分類意見の射程に入る領域です。
  • 第85類注12(b)で定義される電子集積回路に該当するかどうかが中心論点になり、「追加の回路素子が組み付けられていないこと」が重要な判断材料となります。[trademo]​

B. センサーモジュール

  • IC以外の能動素子・受動素子、基板、コネクタ、シールド、磁性体等が一体化した段階では、Note 12(b)から外れてくる可能性が高まります。[customsmobile]​
  • 構成要素や主たる機能によっては、8543や90類の測定機器、あるいは装置の部分品としての検討が必要であり、品ごとの差が大きいため先入観で決めない方が安全です。[perplexity]​

C. センサー機能を含む機器・ユニット

  • 自動車、産業機械、ロボット、家電等の一部として機能する段階では、機器全体の主機能、章注、部品規定(例えば第17部注2など)が判断の軸になります。[perplexity]​
  • この段階では、もはや「センサーであること」よりも「当該機器が何をする装置か」が分類を決める主因になります。

今回の分類意見はAの領域をクリアにしたものであり、B・Cの判断を行う際の基準点としても位置づけることができます。


5. 各国実装のばらつきへの備え

分類意見は国際的に強い参照資料ですが、各国での適用にはタイムラグや例外があり得ます。WCO自身も、分類決定を輸出入に適用する際は、相手国での実装状況を確認するよう助言しており、適用できない決定の一覧も公開しています。[cbsa-asfc.gc]​

企業が取り得る現実的な対応は次のとおりです。

  • 主要仕向地ごとに、税関の公表資料・事前教示・通達などを通じて、自社が想定するHSコードと当局運用が一致しているか点検する
  • 差異が予見される国については、事前教示や技術資料の添付など、申告根拠を補強する運用を取る
  • 国別の運用差は、社内マスタに履歴として残し、営業・物流・経営層と共有することで、「国ごとにHSが違う」ことを前提にした価格・契約設計を可能にする

6. すぐ使える社内チェックリスト

今回の分類意見を踏まえ、Hallセンサー関連のSKUを整理する際の社内チェックポイントは以下が有効です。

  • 自社の「Hallセンサー関連SKU」を、IC単体、基板実装品、モジュール、ユニット等の階層に分解して一覧化する
  • 「IC単体」と主張するSKUについて、追加の能動素子・受動素子を組み付けていないことを、仕様書・BOM・レイアウト図で確認する(Note 12(b)の要件を満たすかどうか)[trademo]​
  • 仕様書に「冗長構成」「電気的に非接続」「角度・位置の検出」など、今回の分類意見の記述と対応する文言があるかを確認し、分類根拠資料として保管する。
  • 主要国(例:日本、EU、米国、韓国、中国など)で、当該分類意見がどのタイミングで反映されているかを確認し、必要に応じて事前教示を取得する。[cbsa-asfc.gc]​
  • HSコード変更が、原産地規則(PSR)、輸出管理、社内マスタ、取引契約、価格設定に与える影響を同時にレビューする

7. 一次情報へのアクセスルート

WCOは、HS品目表・法的注・解説・分類意見などの公式資料を「WCO Trade Tools」から参照できると案内しており、単なるPDF配布からオンラインサービスへと軸足を移しています。 継続的にHS分類を監視する企業ほど、この参照ルートを社内で固定し、定期的なアップデートを確認できる体制を持つことが、分類判断のスピードと再現性を高めます。[wcoomd]​


8. まとめ

今回のポイントは、センサー機能を持つICであっても、構造が電子集積回路そのものであり、追加の回路素子を組み付けていない場合には、8542.39に整理され得るという基準が、Dual-die Hall sensor ICを例に明確に示されたことです。 センサーは技術進化に伴い形態が急速に変わる一方で、分類体系は相対的にゆっくり動きます。

分類の再現性を高めるカギは、技術理解そのものに加え、

  • 製品階層の切り分け(IC/モジュール/機器)
  • それぞれの階層でNote 12(b)や部品規定をどう適用するかというルールの明文化
  • 根拠資料(仕様書・BOM・図面・安全認証資料等)の整理・保管

にあります。 Dual-die HallセンサーICの分類意見は、その起点として実務で活用しやすい材料と言えるでしょう。[wcoomd]​

■HS2028■②医薬品原薬・製剤、ワクチン、ヘルスケア関連のHSコード

ワクチンは新見出しで細分化へ。原薬はINN運用が実務インパクトを増す

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCO(世界税関機構)が取りまとめた改正パッケージ(299セットの改正)で、環境だけでなく「健康・パンデミック対応」を改正理由として明示している点が特徴です。EUの説明文書でも、改正の狙いとして「ワクチンや健康関連グループ(パンデミックで浮き彫りになったニーズに対応)」が例示されています。
またWCOは、HS2028の改正勧告(Article 16 Recommendation)が2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れを示しています。

本稿では、医薬品原薬・製剤、ワクチン、ヘルスケア関連で、企業実務にどのような影響が出るかを、確度の高い一次情報に絞って整理します。


1. 最大の注目点:ヒト用ワクチンが「独立見出し」で細分化される見込み

いまのHSでは、ヒト用ワクチンは「1つの号(subheading)に集約され、あらゆるワクチンが同じ分類に入る」構造です。WTOは、この状態がパンデミック時の政策対応(的を絞った関税・措置)や統計把握を難しくしたと明確に述べています。

そこでWHO・WCO・WTOが連携して、HS2028で次の見直しを進める方針が報告されています。
・新見出し3007「Vaccines for human medicine(ヒト用ワクチン)」を新設
・その下で7つの区分を置く
・特定疾病に対する合計36のワクチン名を含む下位区分が設けられる

この提案はWCO側のHS見直し小委員会で文言が承認され、HSC(HS委員会)に提出される段階まで進んだ、とWTOが報じています。
加えてWCOは、HS2028改正勧告パッケージが2025年3月のHSC会合で暫定採択され、交渉が完了したと公表しています。
この流れから、ワクチン分類の細分化は、HS2028で現実に起きる変化として見ておくのが合理的です。

企業実務への影響は次の通りです。
・品目マスターの再設計が必要になる
いままで「ワクチン」で一括だった社内コードが、疾病別などの粒度で分かれる可能性があり、製品名、適応、剤形、保冷条件などの属性管理が重要になります。
・通関・統計・規制の連動が強くなる
統計が細かくなるほど、当局照会や社内監査で「なぜこの区分か」を説明できる情報整備が必須になります。WCOはパンデミック期に、ワクチンや関連資材の越境移動を円滑化するため、WHOと協力して既存HSに基づく分類参照資料を作成してきました。HS2028の細分化は、その延長線上にあります。


2. 原薬(API)で起きやすい変化:コード変更より先に「分類運用」が変わる

原薬は、HS上は主に第29類(有機化学品など)側に置かれ、製剤(用量に調製された医薬品)は第30類に置かれるのが基本構造です。HS2028でここが丸ごと入れ替わる、という話ではありません。
ただし、原薬分野は次の理由で「実務インパクトが増す」局面に入っています。

WCOはHSC第75回会合の成果として、WHOのINN(国際一般名)リストに基づく医薬品原薬等について、441品目を分類したと公表しています。
これはHS2028の改正そのものとは別枠の成果ですが、企業側から見ると次を意味します。
・原薬は、世界的に分類の統一運用が強く求められている
・INN(国際一般名)ベースの分類整理が継続し、品名・成分特定の厳密さが問われやすい

WHOはINNの推奨・提案リストを継続的に公開しており、医薬品の命名とサプライチェーンの共通言語になっています。
原薬は品名が似ていても塩、異性体、誘導体、濃度、混合状態で分類判断が変わり得ます。HS2028移行のタイミングでは、コード変更の有無にかかわらず、当局や通関業者側のチェックが厳しくなるケースが実務的には増えます。

企業の備えとして効果が高いのは、次の3点です。
・INN、CAS、塩形、含量、用途(医薬用か研究用か)を品目マスターにひも付ける
・SDS、CoA、規格書、製造工程概要など、成分特定の証拠を一元管理する
・どのHS版(HS2022かHS2028か)を参照して分類したかを、記録として残す


3. 製剤とヘルスケア関連は「パンデミック対応の粒度」が増える方向

EUの説明文書は、HS2028改正の狙いとして「ワクチンと健康関連グループ(パンデミックのニーズに直接対応)」を挙げています。
ただし、現時点で公開されている一次情報だけでは、医薬品製剤やヘルスケア関連について、どの見出し・号がどう分割されるかを網羅的に列挙するのは困難です(詳細はHS2028の法文と相関表で確定させる必要があります)。

一方で、企業の実務目線では「何が危ないか」は整理できます。パンデミック対応でボトルネックになりやすかったのは、次の領域です。
・ワクチンそのもの(分類の粒度不足)
・注射・接種関連の消耗品(針、シリンジ等)
・保管・輸送(コールドチェーン機器等)
・診断・検査系の物品(試薬・検査キット等)

このため、HS2028移行では「ヘルスケア関連の品目を、政策・統計で追える形にする」という方向で、分類や解説が調整される可能性が高いと見ておくべきです。


4. ビジネス向け実務チェックリスト

いま着手すべきことを、最小ステップに落とす

  1. 対象品目を3群に分ける
    ・ワクチン(ヒト用、動物用、研究用)
    ・原薬(INNが付く医薬品成分、バイオ医薬品原料を含む)
    ・ヘルスケア関連(診断、接種消耗品、保管輸送、医療機器)
  2. ワクチンは「3007新設」を前提にデータ項目を追加する
    ・疾病カテゴリや製品タイプなど、将来の細分化に耐える属性を準備
    ・社内の統計、輸出入許認可、ラベル表記の連動点を洗う
  3. 原薬は「成分特定の証拠」を整備する
    ・INN、CAS、塩形、含量、用途、SDS、CoA、規格書をセット管理
    ・分類根拠メモを必ず残す(後から説明できる形にする)
  4. HS2022とHS2028の二重管理を準備する
    ・HS版の切替日管理(2028年1月1日)
    ・相関表が出たら一括置換できるように、品目ID軸で履歴を持つ

まとめ

HS2028で医薬・ヘルスケア分野に最も大きな変化をもたらすのは、ヒト用ワクチンの独立見出し化と細分化です。WTOは、HS2028で新見出し3007を設け、7区分・36ワクチンを名指しする提案が進んでいると報告しています。
また原薬については、WCOがWHOのINNリストに基づき多数の分類整理を進めており、コード変更の前に「分類運用の厳密化」が企業の負担とリスクを左右します。
ヘルスケア関連は、パンデミック対応で重要だった物資を政策・統計で追えるようにする方向が公式文書で示されています。

最終的に勝ち筋になるのは、早い段階で品目棚卸しを行い、ワクチンは分類の粒度増を前提にマスターを作り直し、原薬は成分特定と根拠の証跡を整えることです。これだけで、2028年の切替時に止まらない体制が作れます。

主要国の事前分類申請と審査リードタイム比較

事前分類申請とは、輸出入申告の前に税関当局へ品目分類(HSコードや統計品目番号など)について照会し、公式な判断(裁定、事前教示、Advance ruling、BTIなど)を得る手続です。品目分類は関税率だけでなく、原産地規則の適用、輸入規制、統計、アンチダンピング課税などの前提となるため、誤分類はコスト増や通関遅延、修正申告やペナルティの原因となり得ます。事前に公式判断を確保しておくことで、通関の予見可能性と社内の見積精度を高めることができます。​

ただし、国や地域ごとに制度名、起算点、審査に要する標準日数、例外時の扱いが異なります。本稿では、各当局が公開しているサービス標準や法定期限を基準に、主要国のリードタイムを比較します。

比較の前提

リードタイムの起算点が国ごとに異なる

同じ「30日」でも、申請書の受理日から数える国もあれば、必要資料が揃った時点から数える国、または受理可否の審査期間と本審査期間が分かれている国があります。本稿の比較表では、当局資料が明示する起算点も併記します。​

追加資料要求や分析が入ると期限が延長される

多くの国で、追加資料の提出待ち期間や、試験・分析・専門家照会などの期間が標準期限の計算から除外される、または回答期限が延長される扱いとなっています。各制度の注意点も表と解説に反映します。​

本稿で扱うのは「品目分類」に関する事前判断

各国には原産地や関税評価、表示・マーキングまで含む包括的な事前教示制度もありますが、本稿は主に品目分類の事前判断に焦点を当てます。​

主要国の審査リードタイム比較表

国・地域制度の呼称(代表例)公表されている目安の審査リードタイム起算点・補足(要点)
日本事前教示制度(関税分類)原則30日以内文書照会の受付後、30日以内の早期回答に努める旨が案内されている​。
韓国品목분류 사전심사(品目分類事前審査)原則30日(一定の場合は15日)申請書受付日から30日が処理期限。緊急性が高い特定事由では15日。委員会審議、補正、試験・分析、対外照会などの期間は期限計算から除外される​。
豪州Tariff Advice通常30日(需要集中時は長期化あり)通常状況でのサービス標準が30日と明示。混雑時は長くなる可能性がある​。
中国商品归类预裁定(事前裁定)受理後60日(受理判断は10日以内)申請書と関連資料受領後10日以内に受理可否を判断し、受理後60日以内に決定書を発行。化验・検測・鑑定・専門家論証などに要する時間は60日に算入しない​。
EUBTI(Binding Tariff Information)受理後120日申請受領後30日以内に受理判断、その後、受理後120日でBTI決定を発行。例外的に延長の可能性あり​。
英国(グレートブリテン)Advance Tariff Ruling30〜120日申請後、30〜120日で返信すると明記​。
英国(北アイルランド)Binding Tariff Information decision120日を目標申請に対し120日以内の回答を目標とする旨が明記​。
カナダCBSA Advance Rulings必要情報受領後120日以内申請に必要な情報を全て受領してから120日以内が標準。追加情報を求めた場合、その受領後に120日のカウントが始まる​。
米国USMCA関連のAdvance ruling120日(延長要因あり)申請受領後120日以内にAdvance ruling letterを発行する旨が規定される一方、追加情報提出や他機関情報取得、ラボ分析が必要な場合は回答時間が延長され得る​。

リードタイムの分類

リードタイムを基準に分類すると、主要国は次の3グループに整理できます。

約30日グループ

日本、韓国、豪州がこの水準に位置します。いずれも、書類の完成度が高く、追加照会や試験が不要なケースでは短期間で結論が出やすい設計となっています。​

約60日グループ

中国は受理後60日が基本で、受理判断10日と組み合わせた制度設計です。ただし、化学分析や鑑定などの期間が60日に算入されないため、対象品目によっては実務上の所要日数が伸びる可能性があります。​

約120日グループ

EU、カナダ、米国(USMCA手続上)、英国(制度によって30〜120日、または120日目標)が概ねこの範囲です。EUは受理判断フェーズと受理後の決定フェーズが明確に分かれており、制度上は受理後120日に整理されています。​

リードタイムが延びる典型要因

次の要因は、多くの国で「期限延長」または「期限計算から除外」として扱われ、実務上の想定日数を押し上げます。

追加資料の要求と提出待ち

カナダでは、追加情報の提出後に120日のサービス標準が開始すると明示されています。米国(USMCA手続)でも、補足情報の提出が回答時間を延長し得る旨が記載されています。​

試験、分析、鑑定、専門家照会

韓国は、試験・分析や専門機関照会などの期間を期限計算から除外する旨が明確です。中国も、化验・検測・鑑定・専門家論証などの期間は60日に算入しないと明記しています。​

需要集中や繁忙期

豪州は、通常30日のサービス標準に加え、需要が多い時期は長くなる可能性を明示しています。

例外的な延長規定

EUは、受理後120日が基本である一方、例外的に延長され得る旨が示されています。​

実務で使える申請準備のポイント

リードタイムの短縮と回答の確実性を高めるため、国をまたいで通用する実務ポイントを整理します。

申請書の製品説明を分類ロジックに直結させる

以下の情報を明確に記載することが重要です。

  • 機能、用途、作動原理
  • 材質、成分比、構造(層構造、部品構成)
  • 製造工程(分類論点が工程に依存する場合)
  • 型番ごとの差異(どこまで同一品として扱えるか)

補助資料を最初から揃える

カタログ、仕様書、図面、写真、成分表や試験成績書などを初回提出時に揃えることが重要です。必要に応じてサンプル提出の可否も検討してください。追加資料要求が発生すると、各国で期限が延びたり、起算点が実質リセットされたりします。​

期限の「数字」だけでなく「起算点」を社内で統一管理する

例えばEUは、受理判断に最大30日、その後に受理後120日という設計なので、社内計画では単純な120日ではなく、受理前後を分けて見積もる方が安全です。中国も、受理可否の判断10日と受理後60日が示されており、同様に二段階で管理した方が誤差が減ります。​

リードタイムを逆算して「申請の締切日」を決める

以下のステップで社内スケジュールを設計します。

  • 新製品ローンチ、初回出荷、価格確定、契約締結など、分類が前提となるマイルストーンを列挙
  • 対象国の標準日数に、追加資料や試験のバッファを上乗せ
  • 輸出者と輸入者で、どちらが申請主体かも事前に合意

まとめ

主要国の事前分類の審査リードタイムは、30日、60日、120日という目安に概ね収れんします。ただし、実際の所要日数は、起算点、追加資料、試験・分析、当局の繁忙などで変動します。公式に示された「標準日数」は、「完全な情報が揃っている」ことを前提に設計されているケースが多いため、最も効果的な短縮策は初回提出の完成度を上げて追加照会を減らすことです。​