HS2022 第36類:火薬類、火工品、マッチ、発火性合金及び調製燃料(Explosives; pyrotechnic products; matches; pyrophoric alloys; certain combustible preparations)

用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 火薬(推進薬。銃用・ロケット用などの推進目的のもの):3601
    • 調製した爆薬(推進薬以外の爆薬。ダイナマイト等の「混合物」としての爆薬):3602
    • 導火線・導爆線・雷管等(爆破の附属品):3603(HS2022では用途別に6桁が細分化)
    • 花火、信号用フレア、霧中信号用品などの火工品:3604
    • マッチ(火工品を除く):3605
    • フェロセリウム(発火石)や、一定の「調製燃料」(固形燃料・小型ライター用燃料・付け木等):3606
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 化学的に単一の化合物(原則):第28類または第29類へ(例:未調製の硝酸塩類、単一化合物の爆発性物質など)。ただし類注2(a)(b)に該当する「燃料用途の成形品」等は例外で第36類に残る
    • ニトロセルロース(綿火薬などとして言及されがちでも、物としてはプラスチック系の見出しへ):39.12
    • 写真用のせん光材料:37.07
    • 化学ルミネセンス(いわゆるケミカルライト等):38.24
    • 爆薬入りの空包、銃砲弾用の信管・カートリッジケース等:93.06
    • ライター本体・ライター部品:96.13(3606.10は「補充燃料」側の話で、ライター本体ではありません)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 化学的に単一の化合物か、調製した混合物・成形品か(類注1・2が分岐点)
    • 3606.10に当たるか(ライター補充用の容器、かつ容量300立方センチメートル以下)
    • 3604.10(花火)か3604.90(信号用等のその他の火工品)か(用途・設計思想で分岐)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 火薬類は日本では輸入許可・承認等の法規制が絡みやすく、HSの誤りが許認可・危険品輸送・保険・保管要件に波及しやすいです(通関の遅延や差止め、返送・廃棄リスクも実務上は無視できません)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):第36類は「類注」が強い類です。特に、類注1(単一化合物の原則除外)と類注2(3606の範囲を限定)が、分類先を大きく左右します。
    • GIR6(6桁の決定):HS2022では3603が6桁で細分化されたため、3603を使うときはGIR6で確実に落とし込みが必要です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途:推進(3601)か、破壊・爆破(3602)か、信号・照明・娯楽(3604)か
    • 物の状態:単一化合物(28/29へ行きやすい)か、混合物・調製品(36に入りやすい)か
    • 形状・包装:固形燃料が「タブレット状」等に成形されているか、ライター補充用の小型容器か(3606の分岐)
    • 規制・危険物情報:SDS、UN番号、危険物クラスは、HSの根拠資料としても「説明の一貫性」を作るのに有効です(ただしUN分類とHSは別体系なので、そのまま自動一致はしません)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その物は「爆発・発火・燃焼効果」を目的とした製品か、またはそれに直接使われる附属品か
    • はい:Step2へ
    • いいえ:第36類以外(例:化学ルミネセンスは38.24、写真用フラッシュは37.07など)
  • Step2:化学的に単一の化合物として提示されているか(混合物ではないか)
    • はい:原則として第28類または第29類(ただし、類注2(a)(b)に当てはまる燃料用途の成形品・小型容器入り燃料は例外で3606)
    • いいえ(混合物・調製品・完成品):Step3へ
  • Step3:4桁(項)を当てる
    • 推進薬:3601
    • 調製爆薬:3602
    • 導火線・雷管等:3603
    • 火工品(花火・信号等):3604
    • マッチ:3605
    • フェロセリウム、固形燃料、ライター補充燃料、付け木等:3606
  • Step4:6桁(号)を当てる(分岐があるのは主に3603・3604・3606)
    • 3603:用途別(導火線、導爆線、火管、雷管、イグナイター、電気雷管)
    • 3604:花火(3604.10)か、その他の火工品(3604.90)
    • 3606:小型容器入りのライター補充燃料(3606.10)か、それ以外(3606.90)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第36類と第28/29類:単一化合物か、調製品か(類注1・2)
    • 第36類と第93類:弾薬・空包・信管等(93.06)との線引き
    • 第36類と第37類:写真用フラッシュ(37.07)
    • 第36類と第38類:化学ルミネセンス、使い捨てカイロ等(38.24)
    • 第36類と第96類:ライター本体・部品(96.13)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

原則:第36類の4桁見出しは少ないため全列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3601火薬(推進薬)黒色火薬、無煙火薬、ロケット推進薬など推進目的の火薬。単一化合物は原則28/29へ。ニトロセルロースは39.12に飛びやすい点に注意
3602爆薬(調製したもの、推進薬以外)ダイナマイト、ANFO等の「混合物」としての爆薬単一化合物の爆発性物質は28/29へ(例:単体の硝酸塩など)。「調製(混合・感度調整等)」が鍵
3603導火線・導爆線・火管・雷管・イグナイター・電気雷管導火線、導爆線、雷管(電気雷管含む)などHS2022で6桁細分化(3603.10〜3603.60)。弾薬の構成品は93.06に行き得る
3604花火、信号用フレア等の火工品花火、信号用ロケット、霧中信号、玩具用雷管(ロールキャップ等)3604.10(花火)と3604.90(その他)。写真用フラッシュは37.07、化学ルミネセンスは38.24
3605マッチ(3604の火工品を除く)木軸マッチ、紙軸マッチ等ベンガルマッチ等の火工品は3604。用途・構造で見極め
3606フェロセリウム等の発火性合金、及び類注2の可燃性材料の製品発火石、固形燃料タブレット、ライター補充燃料(小型缶)、付け木類注2で範囲が限定。3606.10は「ライター補充用」かつ「300cm3以下」。ライター本体・部品は96.13

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(この類でよく効く軸)
    • 3603:機能(導火線か、導爆線か、雷管か等)
    • 3604:用途(娯楽用の「花火」か、信号・救難等の「その他」か)
    • 3606:包装・用途(ライター補充用の容器か、固形燃料の成形品か、付け木等か。特に300cm3要件)
  • 3603(HS2022)の6桁区分(業務での見分けポイント)
号(6桁)名称の要旨典型例判断に必要な情報(例)
3603.10導火線時間差で燃焼して火炎を伝える導火線構造(外被+心薬)、用途(雷管へ火炎を伝達)
3603.20導爆線爆発を伝えるコード(detonating cord)中心薬(爆薬)を持つか、爆発伝達用途か
3603.30火管打撃等で着火する小型点火具(percussion caps)製品の作動方式(打撃着火か等)
3603.40雷管(電気雷管除く)起爆用キャップ(detonating caps)電気式か否か、用途(起爆)
3603.50イグナイター点火具(igniters)何を点火する部品か、電気雷管との区別
3603.60電気雷管電気式の起爆具(electric detonators)電気点火・信号線等の仕様
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3603.10(導火線)と3603.20(導爆線)
      • どこで分かれるか:火炎伝達(燃焼)か、爆発伝達(起爆)か
      • 判断に必要な情報:用途、構造、SDS、製品仕様書(「爆発を伝える」記載の有無)
      • 典型的な誤り:ケーブル状だから導爆線と決め打ちする(実は導火線)
    2. 3603.40(雷管)と3603.60(電気雷管)
      • どこで分かれるか:電気式で起爆するか
      • 判断に必要な情報:電気点火の有無、リード線、点火方式の説明資料
      • 典型的な誤り:商品名に「雷管」とあるだけで電気式の判定をしない
    3. 3604.10(花火)と3604.90(その他の火工品)
      • どこで分かれるか:娯楽用の花火か、信号・救難・霧中信号等の用途か
      • 判断に必要な情報:用途(玩具・娯楽か、救難信号か)、取扱説明、認証情報、カタログ
      • 典型的な誤り:発光するから全部「花火」としてしまう(信号用フレア等が混在)
    4. 3606.10(ライター補充燃料)と3606.90(その他)
      • どこで分かれるか:容器が「ライターの充てんに使用する種類」かつ「300cm3以下」か
      • 判断に必要な情報:容器容量(仕様・表示)、用途表示(refill/for lighters 等)、販売形態
      • 典型的な誤り:小型ガス缶だから3606.10とする(用途がライター補充ではない/容量要件を満たさない)
    5. 3604(火工品)と38.24(化学ルミネセンス等)
      • どこで分かれるか:燃焼・爆発で光るか、化学反応(ルミネセンス)で光るか
      • 判断に必要な情報:発光原理、SDS、構造(火薬の有無)
      • 典型的な誤り:光る棒状製品を花火扱いにする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第36類は第6部(化学工業品等)の中にあり、部注には「セット」や「小売用包装」など、化学品でよく出る論点が整理されています。特に、複数の成分がセットで提示され混合して使うタイプは、一定条件のもと「混合後の製品」を基準に分類する考え方が示されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 火薬類そのものというより、化学品全般に共通する注意点ですが、同梱セット・小分け包装・用途表示が分類根拠になり得ます。第36類では、3606の「燃料用途の成形品」や「小型容器入り燃料」がまさに包装・形状で範囲が決まるため、部注の考え方(包装や提示方法が分類に影響し得る)を意識しておくと整理が楽になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第36類の外形に見えても、実質が写真用フラッシュ(37.07)や化学ルミネセンス(38.24)なら、その見出しへ行きます(除外の考え方の具体例として有用です)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:この類は、原則として「化学的に単一の化合物」を含みません(例外は類注2(a)(b)に該当するもの)。つまり、単体化学品は28/29へ行きやすく、36類は「混合物」や「完成品」に寄りやすい、という大原則です。
    • 類注2:3606の「可燃性材料の製品」を、(a)固形燃料等、(b)小型ライター用燃料(300cm3以下)、(c)付け木等に限定しています。3606に入るかどうかは、この限定に当たるかが全てです。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 3606の「可燃性材料の製品」は、類注2に列挙される範囲に限る、という定義運用になります(列挙外は「可燃性」でも原則対象外)。
    • 300立方センチメートル(300cm3)要件は、容器容量で客観的に判断します。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 写真用のせん光材料:37.07
    • 化学ルミネセンス製品:38.24
    • 弾薬関連(空包、信管、カートリッジケース等):93.06
    • ライター本体・部品:96.13
    • ニトロセルロース(綿火薬など):39.12

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:単一化合物か、調製品か(類注1)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 成分表(単一物質か混合か)
      • SDS(化学品名、組成、混合物区分)
      • 製造工程(混合・感度調整・成形の有無)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS、仕様書、COA(分析証明)、配合表、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • 爆発性があるという理由だけで3602へ入れてしまう(実際は単一化合物で28/29へ)
  • 影響ポイント2:3606の範囲限定(類注2)と「300cm3」要件
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 用途表示(ライター補充用か)
      • 容器容量(300cm3以下か)
      • 形状(固形燃料がタブレット等か)
    • 現場で集める証憑:
      • 容器仕様(寸法・容量)、ラベル、外箱表示、製品写真、SDS
    • 誤分類の典型:
      • 小型の燃料缶というだけで3606.10としてしまい、容量要件や用途要件を落とす
  • 影響ポイント3:3604の「花火」か「その他火工品」か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 使用目的(娯楽用か、救難・信号用か)
      • 取扱説明、販売先、法規・規格上の区分(可能な範囲で)
    • 現場で集める証憑:
      • カタログ、用途説明、製品写真、輸送・保管区分資料(危険品情報)
    • 誤分類の典型:
      • 「発光=花火」で3604.10に固定してしまい、信号用フレア等を混在させる

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:単一化合物の爆発性物質を3602(爆薬)に入れる
    • なぜ起きる:名称が「爆薬」っぽい、危険物だから36類だと思い込む
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注1により、単一化合物は原則として36類に入らず、28/29へ行きます(例外は3606の一部)。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • SDSで「単一物質」か「混合物」かを確認
      • 社内質問例:配合して感度調整していますか。成形して燃料用途ですか。
  2. 間違い:綿火薬(ニトロセルロース)を3601(火薬)に入れる
    • なぜ起きる:「火薬」という用途イメージで分類してしまう
    • 正しい考え方:ニトロセルロースは36類から除外され、39.12が示されています。
    • 予防策:
      • 製品が「ニトロセルロース樹脂」なのか「推進薬として調製済み」なのかを分けて資料化
  3. 間違い:弾薬・空包・信管などを3603/3602に入れる
    • なぜ起きる:中に火薬が入っているので同じと考える
    • 正しい考え方:弾薬等は93.06へ除外され得ます(日本の解説でも明示)。
    • 予防策:
      • 社内質問例:最終用途は弾薬(カートリッジ)ですか。薬室・ケースを伴いますか。
  4. 間違い:玩具用の雷管(ロールキャップ等)を3605(マッチ)に入れる
    • なぜ起きる:「点火」「小型」で近いと感じる
    • 正しい考え方:玩具用雷管は火工品として3604に含まれる例が示されています。
    • 予防策:
      • 製品がマッチか火工品か(燃焼の効果・構造)を写真付きで整理
  5. 間違い:写真用フラッシュ材料を3604に入れる
    • なぜ起きる:「せん光=火工品」と短絡する
    • 正しい考え方:写真用のせん光材料は37.07へ除外されます。
    • 予防策:
      • 社内質問例:写真撮影・撮影機材向けの消耗材ですか。
  6. 間違い:ケミカルライト(化学ルミネセンス)を3604に入れる
    • なぜ起きる:「光る=火工品」と思い込む
    • 正しい考え方:化学ルミネセンス現象で光る製品は38.24へ除外されます。
    • 予防策:
      • 発光原理(燃焼か化学反応か)を仕様書で確認
  7. 間違い:使い捨てカイロを3606(調製燃料)に入れる
    • なぜ起きる:「熱を出す=燃料」と捉える
    • 正しい考え方:光や炎を出さない発熱反応で熱を生じる使い捨てカイロは38.24へ除外されます。
    • 予防策:
      • 「燃焼」か「酸化等の発熱反応」かを確認
  8. 間違い:ライター補充燃料のつもりで、容量要件を見ずに3606.10に入れる
    • なぜ起きる:商品カテゴリ名だけで分類してしまう
    • 正しい考え方:3606.10は容器容量300cm3以下に限定されています。
    • 予防策:
      • 容器容量(ml・cm3)を必ず取得し、資料に残す
      • 社内質問例:容器容量は何mlですか。用途はライター補充に限定ですか。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HSがずれると、適用すべきPSR(CTH/CTSH、RVC、工程基準など)の特定自体がずれ、原産性判断が崩れます。
  • この類は3603がHS2022で細分化されたため、協定が旧版HSを参照している場合、PSR側のコード体系に戻して評価する必要が出やすい類です。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本税関の公表資料では、協定ごとに参照HS版が異なることが明示されています(例):
    • CPTPP:HS2012
    • 日EU・EPA、日英協定、日米貿易協定:HS2017
    • RCEP:2022年12月31日まではHS2012、2023年1月1日以降はHS2022
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 日本の輸入申告では最新の国内コード(基礎はHS2022)を使う一方、PSRや譲許表は協定の参照HS版で書かれているため、同じ「製品」でもコードの見え方が変わります。
    • 第36類では、3603が典型で、HS2017では3603.00だったものがHS2022では3603.10〜3603.60に分かれています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • まず協定が参照するHS版でPSRを確認
    • 次に、WCOの相関表(correlation table)等で新旧コードの対応を把握
    • 社内のBOM・原価計算・工程記録の「品目番号」は、協定版HSと申告用HSの両方の管理ができるようにしておくと、監査・事後確認に強くなります。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 第36類は規制産品になりやすいので、原産地資料に加えて、許認可・SDS・危険物情報もセットで整備すると通関が安定します(分類根拠の説明にもなります)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(6桁細分化)3603.00 → 3603.10/20/30/40/50/603603が用途別に細分化協定参照HS版とのズレが発生しやすい。PSR調査・統計・輸出管理での粒度が上がる

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCO HS2017のChapter 36では、3603は3603.00の単一号でした。
    • WCO HS2022のChapter 36では、3603が3603.10〜3603.60に細分化されています。
    • WCOのHS2022↔HS2017相関表(Table I)でも、3603.10〜3603.60が「ex 3603.00」からの細分化であること、及び細分化の趣旨(監視・統制の目的)が示されています。
  • “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”
    • 上記WCO一次資料(HS2017章別表、HS2022章別表、相関表)を突合し、3601/3602/3604/3605/3606の構造が同一である一方、3603のみ6桁が新設された点を変更点と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第36類は、HS2007→HS2012→HS2017→HS2022の流れで見ると、見出し構造の大枠は維持され、HS2022で3603が6桁細分化されたのが目立つ変更です。

主要論点旧コード→新コード(または行き先)
HS20073603は3603.003603.00(継続)
HS20123603は3603.003603.00(継続)
HS20173603は3603.003603.00(継続)
HS20223603を用途別に細分化3603.00 → 3603.10/20/30/40/50/60

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ライター補充燃料の容量要件見落とし
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):3606.10の「300cm3以下」要件を確認せず申告(類注2(b))
    • 起きやすい状況:仕入先が複数サイズを扱っており、社内マスターが一括で3606.10になっている
    • 典型的な影響:コード修正、税率差・規制照合のやり直し、輸入許可手続きの遅延
    • 予防策:容器容量(仕様・写真)を品番ごとに保存し、マスターで条件管理する
  • 事例名:化学ルミネセンス製品を火工品として申告
    • 誤りの内容:3604に入れたが、除外(38.24)に該当
    • 起きやすい状況:商品名が「light stick」「glow stick」で発光するため花火扱いした
    • 典型的な影響:規制照合の誤り、危険品区分の誤前提、検査・補足資料要求
    • 予防策:発光原理と火薬の有無をSDSで確認
  • 事例名:単一化合物の爆発性物質を3602に入れてしまう
    • 誤りの内容:類注1の原則(単一化合物は除外)を見落とし
    • 起きやすい状況:危険物ラベルだけで分類を決める
    • 典型的な影響:税番差替え、規制・許認可の前提が崩れる
    • 予防策:混合物か単一物質かを必ず書面で確定
  • 事例名:玩具用雷管をマッチとして申告
    • 誤りの内容:3605ではなく3604側の火工品
    • 起きやすい状況:小売商品で外観が似ている
    • 典型的な影響:分類補正、危険品取り扱いの再確認
    • 予防策:構造(火工剤の有無)と用途(玩具の効果)で整理

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 火薬類取締法:火薬類の輸入には許可が必要となる場合があります(法令上の規定・運用の確認が必須)。
    • 経済産業省(貿易管理)側の手続:火薬類の輸入に関する承認・申請手続の案内が公表されています。
    • 税関で確認する他法令:火薬類取締法が輸入関係他法令として整理されています(税関での確認対象になり得る)。
  • 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く)
    • その他の許認可・届出:
      • 火薬類:用途(産業用・玩具用等)や品目により、所管官庁・都道府県等で手続が分かれ得るため、輸入前に必ず行政窓口・通関業者と手続確認が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(火薬類の輸入手続案内)
    • e-Gov法令検索(火薬類取締法、施行規則)
    • 税関(輸入関係他法令の案内)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類根拠:仕様書、SDS、製品写真、用途説明、包装仕様(容量含む)
    • 規制対応:許可申請に必要な書類、輸送危険物情報(UN番号等)、保管・輸送計画

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品の機能(推進・爆破・信号・娯楽・点火・燃料)
    • 組成(単一物質か混合物か)、SDS入手
    • 形状・包装(固形燃料の形、ライター燃料の容器容量、ラベル表示)
    • 製品写真(外観、ラベル、危険表示)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1・2を満たすか(単一化合物、3606の限定範囲)
    • 93.06、37.07、38.24、96.13等の除外に該当しないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名を用途が分かる表現に(例:signal flare / fireworks / lighter refill fuel 等)
    • 数量単位(個数・重量など)を実態に合わせる
    • 税関照会に備えて、SDS・仕様書・写真を即時提出できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版を確認(CPTPP=HS2012等)
    • HS2022申告コードと協定HSコードの対応(3603は特に注意)
    • 原産資料(BOM、工程、原価、保存)を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 火薬類取締法等の許可要否を、品目・用途・数量で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Chapter 36(0636_2022E)参照日:2026-02-21
    • WCO HS Nomenclature 2017 Chapter 36(0636_2017E)参照日:2026-02-21
    • WCO HS Nomenclature 2012 Chapter 36(0636-2012E)参照日:2026-02-21
    • WCO HS Nomenclature 2007 Chapter 36(0636_2007E)参照日:2026-02-21
    • WCO Correlation Table(HS2022↔HS2017、Table I)参照日:2026-02-21
    • WCO HS2022 Section VI Notes(0600_2022E)参照日:2026-02-21
  • 日本(税関・公的機関)のガイド
    • 税関:関税率表解説 第36類(36r.pdf)参照日:2026-02-21
    • 税関:EPA原産地規則マニュアル(協定参照HS版の一覧を含む)参照日:2026-02-21
    • 税関:税関で確認する輸入関係他法令の概要(火薬類取締法の整理)参照日:2026-02-21
  • 日本(所管省庁・法令)
    • 経済産業省:火薬類の輸入(手続案内)参照日:2026-02-21
    • e-Gov法令検索:火薬類取締法 参照日:2026-02-21
    • e-Gov法令検索:火薬類取締法施行規則 参照日:2026-02-21

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第35類:たんぱく系物質、変性でん粉、膠着剤及び酵素(Albuminoidal substances; modified starches; glues; enzymes)

用語の統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • カゼイン/カゼイナート(乳由来たんぱく質・塩)や、(条件により)カゼイングルー(3501)
    • 卵白アルブミンミルクアルブミン、(条件により)ホエイたんぱく濃縮物(WPC)(3502)
    • ゼラチン(長方形/正方形シートを含む)、アイシングラス等(3503)
    • ペプトン、その他のたんぱく質系物質(他に該当しないもの)や皮粉(3504)
    • デキストリン/変性でん粉、およびでん粉系の膠着剤(3505)
    • 調製接着剤(工業用接着剤・小売用接着剤1kg以下を含む)(3506)、酵素・調製酵素(3507)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 酵母 → 第21類(21.02)
    • (治療用・予防用に調製した)血液分画物や医薬品 → 第30類(※血液アルブミンでも用途・調製状態で分岐)
    • 洗浄用途の酵素系調製品(酵素入り洗剤など) → 第34類(例:洗浄・浸せき用)
    • なめし前処理用の酵素系調製品 → 第32類(32.02)
    • 硬化たんぱく質(硬化カゼイン/硬化ゼラチン等) → 第39類(39.13)
    • (定義を超える)でん粉分解物:還元糖が乾燥状態で10%超 → 第17類(17.02)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「ホエイたんぱく濃縮物」:乾燥基準で80%超かどうか(3502か、別章か)
    2. 「デキストリン」:還元糖(乾燥基準)が10%以下かどうか(3505か17.02か)
    3. 接着剤:小売用(1kg以下)か/2液セットか/用途が“接着”か(3506に寄るか、他章か)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 食品原料(WPC、ゼラチン、酵素、変性でん粉)は、関税だけでなく、**輸入手続(食品衛生・動物検疫)**や、**EPAのPSR(品目別規則)**にも連鎖しやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):第35類は「類注(除外規定・定義)」が強いです。例えば、酵母は21.02、洗浄用途の酵素系調製品は第34類に飛びます。
    • GIR6(号=6桁の比較):3502(卵白の乾燥/その他)や3506(小売用1kg以下/その他)など、6桁で要件が明確なものがあります。
    • (重要)Section VI 注2・注3の使いどころ
      • 注2:小売用・計量単位で販売などの理由で35.06に該当する場合、他の見出しではなく35.06に固定する趣旨です。
      • 注3:2液型接着剤(樹脂+硬化剤)のように、混合して製品(Section VI/VIIの物品)を得るセットは、条件を満たすと得られる製品の見出しで分類します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 成分(由来:乳/卵/魚/植物、たんぱく含量、糖含量、添加物)
    • 状態(乾燥/液状/シート/成形品、硬化の有無)
    • 用途(食品原料、培地、洗浄、なめし、接着、写真等)
    • 販売形態(小売包装、セット品、正味重量)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:物品が「たんぱく系物質/変性でん粉/接着剤/酵素(または調製品)」かを確認
  • Step2:第35類注の除外に当たらないか確認(酵母、医薬品、洗浄用途の酵素系調製品、硬化たんぱく質 等)
  • Step3:該当しそうな**項(3501〜3507)**を当てる
    • 乳たんぱく(カゼイン)→3501
    • アルブミン(卵白、血清、ミルク、WPC80%超)→3502
    • ゼラチン/動物にかわ→3503
    • ペプトン/その他たんぱく系物質/皮粉→3504
    • 変性でん粉/デキストリン/でん粉系のり→3505
    • 調製接着剤/小売用1kg以下接着剤→3506
    • 酵素/調製酵素→3507
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 3502(WPC80%超)↔ 04.04(WPC80%以下)
    • 3505(デキストリン)↔ 17.02(還元糖10%超)
    • 3507(酵素)↔ 第34類(酵素系洗浄調製品)/32.02(なめし前処理用酵素調製品)
    • 3503(ゼラチンシート)↔ 96.02(切抜き・成形品)/49類(印刷物)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第35類は4桁見出しが少ないため全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3501カゼイン、カゼイナート、カゼイン誘導体、カゼイングルー酸カゼイン、ナトリウムカゼイナート、工業用カゼイン糊小売用1kg以下の「接着剤」としての包装なら3506へ寄りやすい/硬化カゼインは39.13へ
3502アルブミン類(WPC80%超を含む)、アルブミナート等乾燥卵白、血清アルブミン(非治療用)、WPC(乾燥基準80%超)WPC80%超がポイント(計算方法も)/治療・予防用に調製した血液アルブミンは30類へ
3503ゼラチン、ゼラチン誘導体、アイシングラス、動物性にかわ(カゼイン糊除く)食品用ゼラチン、写真用ゼラチン、魚膠シート形状(長方形/正方形)/切抜き・成形品は96.02へ、印刷業のゼラチン製品は49類へ
3504ペプトン等、その他たんぱく質系物質(他に該当しないもの)、皮粉ペプトン(培地用)、コラーゲンペプチド原料、皮粉(タンニン定量用)食品添加目的の「調製食料品」扱いになると21.06へ行き得る/酵素は3507へ
3505デキストリン・変性でん粉、でん粉/デキストリン系の膠着剤マルトデキストリン、糊化済でん粉、アセチル化でん粉、でん粉糊デキストリン定義:還元糖10%以下/アセチル化でん粉はDS値で実務基準あり(日本)
3506調製膠着剤・調製接着剤、小売用1kg以下接着剤瞬間接着剤、エポキシ接着剤(工業用/小売用)、接着剤粉末小売用1kg以下が独立要件(3506.10)/マスチック等(32.14)や“接着性が主目的でない”調製品(38.09等)は除外
3507酵素、他に該当しない調製酵素レンネット、アミラーゼ、プロテアーゼ、酵素ブレンド洗浄用途の酵素系調製品は34類、なめし前処理用は32.02へ除外

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類でよく出る軸)
    • 含有率(乾燥基準):WPCの「ホエイたんぱく80%超」
    • 糖(還元糖)の割合(乾燥基準):デキストリン定義「10%以下」
    • 包装形態・正味重量:小売用接着剤「1kg以下」
    • 形状(シート形状/成形品):ゼラチンシート(長方形/正方形)か
    • 用途(洗浄・なめし等):酵素が“洗浄調製品”なら第34類へ
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3502(アルブミン類) vs 0404(ホエイ等)
      • どこで分かれるか:ホエイたんぱく濃縮物が「乾燥基準で80%超」かどうか。超えると3502側に入る整理です。
      • 判断に必要な情報:
        • 乾燥基準のホエイたんぱく含有率(COA/分析表)
        • 計算根拠(窒素量×換算係数など:日本の解説では計算方法の言及あり)
      • 典型的な誤り:「乳由来=第4類」と短絡して04.04へ固定する。
    2. 3505(デキストリン/変性でん粉) vs 1702(糖類)
      • どこで分かれるか:でん粉分解物のうち、還元糖(ぶどう糖換算)が乾燥基準で10%以下なら「デキストリン」扱い(3505)になり得ます。10%を超えると17.02へ。
      • 判断に必要な情報:還元糖の分析(乾燥基準、換算方法)
      • 典型的な誤り:「マルトデキストリン=必ず3505」または「糖っぽい=必ず17.02」。
    3. 3505(変性でん粉) vs 1108(でん粉)(日本で特に実務的)
      • どこで分かれるか:一般論として、変性したでん粉は3505寄りですが、アセチル化でん粉は「DS値が非常に低いと区別困難」なため、日本の分類例規ではDS値0.01以上を変性でん粉として扱う整理が示されています。
      • 判断に必要な情報:DS(Degree of Substitution)の試験成績、製造方法、用途(増粘・糊化特性など)
      • 典型的な誤り:DSや変性内容を確認せず、品名だけで3505に決めてしまう。
    4. 3506(調製接着剤) vs 39類/32.08/32.14/38.09 等
      • どこで分かれるか:
        • 「接着剤として調製されたもの」か(用途・配合・形態)
        • 小売用で1kg以下なら3506.10がまず候補
        • マスチック・充てん料的性格が強いものは32.14へ除外され得ます(税関解説で言及)。
      • 判断に必要な情報:SDS、配合(樹脂・溶剤・充填材)、用途説明(接着か、充填/シールか)、包装仕様(正味重量)
      • 典型的な誤り:「樹脂が主成分だから39類」として、調製接着剤の要件や小売条件を見落とす。
    5. 3507(酵素/調製酵素) vs 34類(洗浄調製品)/32.02(なめし前処理)
      • どこで分かれるか:第35類注で、洗浄・浸せき用途の酵素系調製品は第34類なめし前処理用の酵素系調製品は32.02へ除外されます。
      • 判断に必要な情報:用途(洗浄/工業触媒/食品加工)、添加成分(界面活性剤の有無)、商品形態(洗剤として販売か)
      • 典型的な誤り:「酵素が入っている=3507」と決め打ちする。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section VI 注2:一定の品目(例:35.06)について、小売用・計量形態等の条件で当該見出しに該当するなら、他の見出しに移さないという整理です。
    • Section VI 注3:複数構成要素を「混合して」製品を得るセットは、条件を満たすとその製品の見出しで分類します(2液接着剤などが典型)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「エポキシ樹脂+硬化剤」が同梱された2液接着剤キット:単なる樹脂や硬化剤単品ではなく、セットとして“接着剤”の性格が明確なら注3の考え方で扱います(最終的には見出し要件で3506に寄ることが多いです)。
    • 小売用チューブ入り瞬間接着剤(正味20gなど):注2の趣旨も踏まえ、小売用・1kg以下の要件を満たすなら3506.10が強い候補になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 35.06に該当する「小売用」形態の判断を落とすと、39類等に誤って寄せてしまいがちです(注2の発想でブレーキをかけるのが実務的)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第35類注1は、酵母、医薬品(血液分画物等)、なめし前処理用酵素調製品、洗浄用途の酵素調製品、硬化たんぱく質、印刷業のゼラチン製品などを除外します。
    • 第35類注2は、35.05の「デキストリン」の定義を置き、還元糖(ぶどう糖換算)が乾燥基準で10%以下とする線引きを明確化しています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「デキストリン」:でん粉分解物のうち、還元糖(ぶどう糖換算)が乾燥状態で10%以下のもの。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 酵母 → 21.02
    • 洗浄用途の酵素系調製品 → 第34類
    • なめし前処理用の酵素系調製品 → 32.02
    • 硬化たんぱく質 → 39.13
    • 印刷業のゼラチン製品 → 第49類

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:でん粉分解物が「35.05(デキストリン)」か「17.02」か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):還元糖(ぶどう糖換算)の含有率(乾燥基準)
    • 現場で集める証憑:成分表、試験成績書(糖組成・還元糖)、製造工程(酸/酵素分解の程度)
    • 誤分類の典型:「デキストリン」という商流名だけで3505にする/逆に甘いから17.02にする
    • 根拠:類注2で10%基準が示されます。
  • 影響ポイント2:WPC(ホエイたんぱく濃縮物)が「3502」か「0404」か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):乾燥基準のホエイたんぱく含有率(80%超か)
    • 現場で集める証憑:COA、窒素量からの計算根拠(換算)、製品仕様書(WPC80/WPC90等)
    • 誤分類の典型:乳由来なので第4類に固定する
    • 根拠:3502の見出しにWPCの要件が含まれ、日本の解説でも80%超/以下の分岐と計算方法の考え方が整理されています。
  • 影響ポイント3:酵素が「3507」か、用途で「32.02/34類」へ飛ぶか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):用途(なめし前処理か、洗浄用途か、その他の工業用途か)/界面活性剤の有無
    • 現場で集める証憑:SDS、用途資料、ラベル表示、販売形態(洗剤としての表示)
    • 誤分類の典型:酵素入り洗剤を3507にしてしまう
    • 根拠:類注1で用途別の除外が明確です。
  • 影響ポイント4:ゼラチンが「3503」か「96.02/49類」へ飛ぶか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):形状(長方形/正方形シートか、その他形状か)/印刷物か
    • 現場で集める証憑:写真(寸法が分かる)、製品図面、用途、加工内容(印刷、成形)
    • 誤分類の典型:円形に打ち抜いたゼラチンを3503のまま申告
    • 根拠:見出し要旨・解説で、シート形状や他類(96.02、49類)への分岐が示されています。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:WPC(高たんぱく)を0404で申告
    • なぜ起きる:乳由来=第4類という思い込み、仕様書に「WPC」としか書かれない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):3502はWPC(乾燥基準80%超)を包含する趣旨が見出しに明記されています。
    • 予防策:COAで乾燥基準たんぱく%を確認し、計算根拠(窒素換算等)も保存
  2. 間違い:マルトデキストリンを一律3505(または一律1702)にする
    • なぜ起きる:商品名が紛らわしい(糖っぽい/でん粉っぽい)
    • 正しい考え方:類注2の「還元糖10%」で線引き。超えると17.02に行き得ます。
    • 予防策:還元糖(乾燥基準)の分析結果を入手し、ロット差の有無も確認
  3. 間違い:アセチル化でん粉を“変性だから”と無条件で3505
    • なぜ起きる:変性の程度(DS値)を確認していない
    • 正しい考え方:日本の分類例規では、アセチル化でん粉はDS値0.01以上を変性でん粉として扱う整理が示されています。
    • 予防策:DS値の試験成績を必須資料化(仕様書のテンプレに組み込む)
  4. 間違い:小売用(1kg以下)の接着剤を、原料樹脂(39類)として申告
    • なぜ起きる:成分(樹脂)だけ見て用途・包装を見ない
    • 正しい考え方:35.06は「小売用で1kg以下」の接着剤を明確に含み、Section VI 注2の趣旨も踏まえます。
    • 予防策:包装形態(小売用表示、NET重量)をインボイス・仕様書に明記
  5. 間違い:2液接着剤キットを、樹脂と硬化剤で別々の品目として分類
    • なぜ起きる:出荷形態(セット)を見落とす
    • 正しい考え方:Section VI 注3は、混合して製品を得るセットの分類方針を示します。
    • 予防策:セット梱包の写真、同梱構成、混合比、用途(接着)を資料化
  6. 間違い:酵素入り洗剤を3507(酵素)で申告
    • なぜ起きる:主成分が酵素だと思い込む/洗剤としての販売実態を軽視
    • 正しい考え方:類注1で「洗浄用途の酵素系調製品」は第34類へ除外されます。
    • 予防策:界面活性剤の有無、洗浄用途表示、SDS・ラベルで用途を確認
  7. 間違い:円形に切り抜いたゼラチンシートを3503のまま申告
    • なぜ起きる:原料がゼラチンなので見出しを固定してしまう
    • 正しい考え方:3503で扱うシートは形状要件があり、切抜き・成形品は別項へ行き得ます。
    • 予防策:形状(寸法・図面)、加工内容(打ち抜き・成形)を提出資料に入れる
  8. 間違い:たんぱく質加水分解物(食品用途)を3504と決め打ち
    • なぜ起きる:「たんぱく質=第35類」という単純化
    • 正しい考え方:税関解説では、成分・用途により21.06へ除外され得る例が示されています(調製食料品の添加物として使用するもの等)。
    • 予防策:用途(食品原料か工業原料か)、食塩等の混合状況、最終製品としての提示形態を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(誤ると原産性判断が崩れます)。
  • よくある落とし穴:
    • 「最終製品HS」と「材料HS」を取り違える
    • 同じ“酵素”でも、洗剤(34類)側に落ちるとPSRが全く変わる
    • WPCの80%基準など、閾値でHSが変わるとPSRも変わります

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HS版が異なること、輸入申告は最新HSを使うことが注意書きされています。
  • 例:RCEPは譲許表がHS2012ベースで、申告時は最新HSへ読み替える必要がある旨が税関資料で説明されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①まず輸入国(日本)の最新HS(HS2022)でHS6桁を確定
    • ②協定が参照するHS版(HS2012/2017等)へ、相関表(Correlation Table)で対応付け
    • ③対応付けたコードでPSRを確認し、必要な工程・原価情報を当てはめる
    • 相関表の入手先として、WCOおよび税関の案内があります。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):工程フロー、歩留まり、外注工程、分析成績書(含有率閾値品目は特に)
  • 分類が揺れやすい品目(WPC、でん粉分解物、酵素系調製品、接着剤キット)は、分類根拠(閾値・用途・包装)もセットで保存がおすすめです。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくとも第35類のHS6桁体系)3501〜3507見出し構成・号(6桁)が同一第35類内の6桁付番は基本的に継続利用(ただし各国の国内コード改正は別途確認)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、WCO公表のHS2017版・HS2022版の第35類(Chapter 35)の見出し・号を比較すると、3501〜3507の構成は同一です。
  • また、WCOの相関表(Table I)は「HS2022で範囲が変わった、または新設されたサブヘディング」を列挙する趣旨ですが、第35類の主要コード(3501、3507等)は当該表に現れないことを確認できます(=変更対象として挙げられていない)。
  • したがって、HS2017→HS2022で第35類(HS6桁)に実務上のコード変更はないと整理できます(※国内コードは国ごとに改正あり得るため別確認)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、少なくとも公開されているWCOの各版の第35類を見る限り、3501〜3507の見出し・号の枠組みは一貫しています。
版(例)主要コードの追加・削除・再編旧コード→新コード(対応)コメント
HS2007→HS2012大きな再編なし(3501〜3507の枠組み維持)3501→3501 … 3507→3507第35類の基本体系は安定
HS2012→HS2017大きな再編なし同上見出し・号の構成が同一
HS2017→HS2022大きな再編なし同上相関表でも変更対象として現れない整理

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):WPCの80%判定を示せず通関が止まる
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):3502に入る根拠(乾燥基準80%超)を提出できず、04.04側との境界が不明確
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「Whey protein concentrate」のみ、COAなし
    • 典型的な影響:分類保留、追加資料要請、検査・分析、通関遅延
    • 予防策:COA(乾燥基準たんぱく%)と計算根拠を事前に準備・保存
  • 事例名(短く):“デキストリン”表示だが還元糖10%超で更正
    • 誤りの内容:類注2の10%基準に照らすと17.02相当だった
    • 起きやすい状況:サプライヤー名義で「dextrin」と表記されているだけ
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、以後の検査強化
    • 予防策:還元糖分析(乾燥基準)の提出、ロットばらつき確認
  • 事例名(短く):酵素入り洗剤を3507で申告し、34類へ振替
    • 誤りの内容:類注1で洗浄用途の酵素系調製品は第34類へ除外
    • 起きやすい状況:主成分が酵素で、担当者が“酵素=3507”と誤認
    • 典型的な影響:再分類、SDS確認の追加、通関遅延
    • 予防策:用途表示・界面活性剤の有無・SDSで「洗浄調製品」該当性を先に潰す
  • 事例名(短く):小売用接着剤(1kg以下)を39類で申告し差戻し
    • 誤りの内容:35.06(小売用1kg以下)を見落とし
    • 起きやすい状況:成分(樹脂)だけで分類、包装仕様書がない
    • 典型的な影響:修正申告、資料再提出、遅延
    • 予防策:包装形態(小売用、NET重量)をインボイス・Packing Listに明記

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 食品・食品添加物(ゼラチン、変性でん粉、酵素、たんぱく原料等)として輸入する場合、食品衛生法に基づく輸入届出などの手続が必要です(検疫所で受付・審査)。
    • 酵素が食品添加物(加工助剤等)として扱われる場合、関連の基準・評価の枠組みが存在します(製品の位置づけ確認が重要)。
  • 動物由来(動物検疫等)
    • ゼラチン等の動物由来原料は、品目・由来・加工度によって、動物検疫所での手続や輸入条件の確認が必要になる場合があります。
  • 化学物質管理(SDS/ラベル等)
    • 接着剤(3506)は配合化学品であることが多く、成分によっては化管法SDS制度の対象(指定化学物質を一定含有率以上含む製品など)となり、他事業者への譲渡・提供時にSDS情報提供が求められます。
    • 溶剤系接着剤は引火性等の危険有害性の観点から、輸送・保管・表示で別途要件が出ることがあります(製品SDSで確認が実務的です)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 食品等:厚生労働省(食品等輸入手続/検疫所)
    • 動物由来:農林水産省 動物検疫所
    • SDS等:経済産業省(化管法SDS制度)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 食品系:原材料表、製造方法、添加物の使用状況、成分規格、COA
    • 動物由来:原料部位・由来国、加工工程、必要に応じ輸出国証明書
    • 接着剤・化学品:SDS、成分表(秘密情報は要相談)、用途、危険有害性情報、包装仕様

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何由来の製品か(乳/卵/魚/植物/微生物)
    • 乾燥基準の含有率(WPC80%など閾値)
    • 還元糖(デキストリン10%)、DS値(アセチル化でん粉0.01)
    • 用途(食品、洗浄、なめし、接着、培地、印刷等)
    • 形状(シート/成形品/粉/液)・硬化の有無
    • 包装(小売用か、正味重量、セット品か)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第35類注の除外に当たらないか(酵母、洗浄用途酵素調製品、硬化たんぱく質等)
    • 3502↔0404、3505↔1702、3507↔34類の境界を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「WPC」「maltodextrin」「enzyme preparation」「adhesive」など曖昧品名の補足(成分・用途・閾値根拠)
    • 写真、SDS、COA、工程図(特に境界品)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定のHS版(HS2012/2017等)と最新HSのズレを確認
    • 相関表で読み替え、PSR適用コードを確定
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品用途:食品衛生法の輸入届出
    • 動物由来:動物検疫手続の要否
    • 接着剤:SDS/ラベルの義務対象確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • HS2017 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • HS2012 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • HS2007 Chapter 35 (参照日:2026-02-20)
    • Section VI Notes(注2・注3) (参照日:2026-02-20)
    • Correlation Tables HS2017–HS2022(Table Iの位置づけ説明) (参照日:2026-02-20)
    • Table I(検索上、3501/3507が現れない確認) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第35類) (参照日:2026-02-20)
    • 分類例規:アセチル化でん粉(DS値0.01) (参照日:2026-02-20)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索(HS版注意) (参照日:2026-02-20)
    • HS2022改正(税関案内) (参照日:2026-02-20)
    • RCEPとHS版の読み替え注意(税関資料) (参照日:2026-02-20)
  • 規制(食品・動物検疫・化学物質)
    • 食品等輸入手続(厚労省) (参照日:2026-02-20)
    • 動物検疫所:輸入畜産物の検査手続 (参照日:2026-02-20)
    • 動物性加工たん白質等の輸入検疫(ゼラチン等に触れる資料) (参照日:2026-02-20)
    • 化管法SDS制度(対象物質/対象事業者/Q&A) (参照日:2026-02-20)
  • その他(実務に有用)
    • 税関:事前教示回答(品目分類) (参照日:2026-02-20)
    • 税関:輸入貨物の品目分類事例 (参照日:2026-02-20)
    • 税関:関税率表解説・分類例規の案内 (参照日:2026-02-20)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第34類:せっけん、有機界面活性剤、洗剤、調製潤滑剤、人造ろう、調製ろう、磨き剤、ろうそくその他これに類する物品、モデリングペースト、歯科用ワックス及びプラスターをもととした歯科用の調製品(Soap, organic surface-active agents…)

用語の統一(本資料内):類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 固形せっけん(トイレ用・洗濯用など):3401(例:固形石けん、洗濯石けん)
    • 液体・クリーム状で小売りの皮膚洗浄剤(ハンドソープ等):3401.30
    • 台所用・住居用などの洗浄/清掃用調製品:3402(例:食器用洗剤、浴室用洗剤)
    • 調製潤滑剤(切削油、グリース、防錆・離型など潤滑を基礎とするもの):3403
    • ポリッシュ/クレンザー等の磨き剤・研磨剤(ワックス3404を除く):3405
    • ろうそく:3406、モデリングペースト/歯科用ワックス等:3407
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • シャンプー/歯磨き/シェービング剤/入浴剤(せっけん等を含んでいても) → 第33類(33.05〜33.07)
    • 化学的に単一の化合物(“単体の化学品”) → 原則:第28類・第29類側で検討(第34類注で除外)
    • 食用の油脂の混合物で離型用に用いる種類のもの → 第15類 1517
    • 鉱物ろう(パラフィン等) → 第27類 2712(“鉱物ろう”)
    • 殺虫・消毒など(主目的が防除等)の製剤 → 多くは第38類(例:3808)側で検討(表示・主目的が鍵)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 3401(せっけん/皮膚洗浄)か 3402(その他の洗浄・清掃)か:用途(皮膚用か)、形状(固形/液体)、小売り形態がカギ
    2. “界面活性剤(3402)”として扱えるか:注の試験条件(0.5%水溶液・表面張力など)を満たすかが論点になることがあります
    3. 3402の号の並びがHS2022で変わった:協定PSRや社内マスターの旧コード(3402.11等)を新コード(3402.31等)へ置換する必要が出ます
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAでPSR検索に使うHS版を誤る(協定HSと申告HSのズレ)
    • 潤滑剤・溶剤・アルコール等で危険物(消防法)やSDS提供が絡み、書類不備で止まりやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注が最優先):第34類は注(特に「除外」「定義」)が強く、まず注で“入る/入らない”を固めます(例:33類へ飛ぶ除外、せっけんの定義、界面活性剤の定義)。
    • GIR6(6桁の分岐):3401の「トイレ用/その他」、3402の「アニオン/カチオン/非イオン」等。
    • GIR3(b)(セット):2液混合型の研磨剤・洗浄剤など“混ぜて使うセット”は、部注(Section VI注3)の条件に合えば完成品の見出しで整理しやすいです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途(皮膚用か/住居用か/工業用か/潤滑目的か)
    • 形状・包装(固形バー、粉、液、含浸不織布、小売包装)
    • 成分(単体化学品か、混合物か、石油油分の比率など):3403は“石油油が70%以上を基礎成分とするもの”を除外する設計です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第34類に“入らない”除外に当たらないか?
    • シャンプー/歯磨き/シェービング/入浴剤 → 33類へ
    • 単一化合物 → 28/29類側へ
  • Step2:せっけん・皮膚洗浄(3401)か?
    • 固形のせっけん(バー等)/皮膚洗浄の液体・クリーム(小売)/洗剤含浸紙・不織布 → 3401
  • Step3:洗浄・清掃用調製品(3402)か?
    • 3401以外の洗浄剤・清掃剤・界面活性剤(注の定義を満たすかも確認)→ 3402
  • Step4:潤滑・離型・防錆など“潤滑を基礎”にする調製品(3403)か?
    • 切削油、ボルト外し、離型、防錆、繊維・皮革の油脂処理など → 3403(ただし石油油70%以上基礎成分は除外)
  • Step5:ろう(3404)か、磨き剤(3405)か、ろうそく(3406)か、工作・歯科(3407)か?
    • 人造ろう・調製ろう → 3404(注の定義・除外が重要)
    • 研磨(クレンザー)・靴/床/家具用ポリッシュ → 3405
    • ろうそく → 3406、モデリングペースト・歯科用ワックス等 → 3407
  • よく迷う境界:
    • 33類(シャンプー等) vs 34類(せっけん・洗剤)
    • 3401(皮膚洗浄の小売液体) vs 3402(住居・台所などの洗浄)
    • 3401(研磨粉入りでも“バー形状”なら残る) vs 3405(粉・ペーストのクレンザー)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3401せっけん、石けんとして使用する界面活性製品(バー等)、皮膚洗浄用の液体/クリーム(小売)、洗剤含浸の紙・不織布等固形石けん、洗濯石けん、液体ハンドソープ、洗剤含浸ワイプ「せっけん」は水溶性に限る。研磨粉入りでもバー/成形品なら3401に残るが、粉・ペーストなら3405へ。
3402せっけん以外の有機界面活性剤、界面活性調製品、洗浄剤・清掃剤(3401以外)食器用洗剤、住居用洗剤、工業用界面活性剤(原料)有機界面活性剤の定義は注に試験条件あり(0.5%水溶液・表面張力等)。HS2022で6桁構成が変更(3402.31等)。
3403調製潤滑剤(切削油、離型、防錆等を含む)・繊維等の油脂処理用調製品切削油、グリース、離型剤、防錆スプレー石油油70%以上を基礎成分とするものは除外(別章検討)。日本の分類例規で「グリース」定義(JISのちょう度等)に触れる例あり。
3404人造ろう・調製ろうPEG系ワックス、ワックス混合品、樹脂や鉱物粉を含む調製ワックス注で「ワックス」の範囲と除外(15.21、27.12、液媒体に分散したワックス等)を規定。
3405靴・床・家具等のポリッシュ/研磨ペースト・粉/類似品(3404除く)靴クリーム、床用ワックス(磨き剤側のもの)、クレンザー3401の注2の“研磨粉入りの扱い”が重要(バー形状を外れると3405へ)。
3406ろうそく、ろうそく芯つきの類似品キャンドル、テーパー香り付きでも基本は3406(ただし“他の本体”が主なら別分類も)。
3407モデリングペースト、歯科用ワックス・印象材、石こう基材の歯科用調製品工作用粘土、歯科用ワックス、印象材、石こう系歯科材歯科用途でセット/小売包装の形態条件が出やすい。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効く軸)
    • 3401(石けん/皮膚洗浄):トイレ用(3401.11)かその他(3401.19)か/固形以外の石けん(3401.20)か/皮膚洗浄の液体・クリーム(3401.30)か
    • 3402(洗浄・清掃/界面活性剤):アニオン(3402.31/3402.39)・カチオン(3402.41)・非イオン(3402.42)等/小売用調製品(3402.50)/その他(3402.90)
    • 3403(潤滑):石油油を含むか、用途(繊維・皮革処理用か)などで分岐
    • 3405(研磨):用途(靴/木製家具/車体/研磨粉)で枝分かれ
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3401.30(皮膚洗浄の液体/クリーム・小売) vs 3402.50(小売用の洗浄/清掃調製品)
      • どこで分かれるか:“洗う対象が皮膚か(toilet/skin washing)”、小売形態か。
      • 判断に必要な情報:用途表示、販売チャネル、製品説明(手肌/ボディ用か、キッチン/住居用か)、容器表示写真
      • 典型的な誤り:「液体=洗剤=3402」と短絡(ハンドソープは3401.30側に寄ります)。
    2. 3401(研磨粉入り石けん) vs 3405.40(研磨ペースト/粉=クレンザー)
      • どこで分かれるか:研磨粉入りでもバー/ケーキ/成形品なら3401に残り得るが、粉・ペースト形状は3405
      • 判断に必要な情報:形状、包装(固形成形か)、研磨材の有無、用途
      • 典型的な誤り:研磨粉入りを一律3405にする/逆に粉クレンザーを3401にする。
    3. 3402(界面活性剤) vs 第29類(単一化合物)
      • どこで分かれるか:第34類注で化学的に単一の化合物は除外。ただし実務上、界面活性剤は“同族体の混合”になっていることが多く、成分の作り(単体か混合か)の確認が必要です。
      • 判断に必要な情報:SDS(成分が単一か/混合か)、CAS、規格書(炭素鎖分布など)
      • 典型的な誤り:界面活性剤=必ず3402、と決め打ち。
    4. 3403.19(石油油等を含む潤滑)に関する“グリース”の扱い(国内運用)
      • どこで分かれるか:日本の分類例規では、グリースをJIS試験(ちょう度等)で説明する例があり、液状潤滑剤と混同しやすいです。
      • 判断に必要な情報:基油の種類、増ちょう剤(石けん等)有無、ちょう度(JIS K2220)等、用途
      • 典型的な誤り:名称だけで「油=27類」「グリース=一律3403」とする。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • Section VI注3:2つ以上の成分を混ぜて最終製品を得るセットは、条件を満たせば“最終製品の見出し”で分類します(例:混合して使う洗浄剤・研磨剤のキット)。
    • Section VI注2:小売・定量包装で特定見出しに該当するものは当該見出しに固定されますが、列挙対象は主に33類等で、34類は直接は入っていません(ただし34類注の除外とセットで理解すると混乱が減ります)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:2液混合型の研磨ペーストセット
      • セット要件(同梱・補完関係など)を満たすなら、完成品(3405等)側で整理しやすいです。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 例:せっけん成分を含む製品でも、**シャンプー等(33類)**は第34類注で除外されます(34類注1(c))。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:食用離型用油脂(15.17)、単一化合物、シャンプー等(33.05〜33.07)を除外
    • 注2:3401の「せっけん」=水溶性のせっけんに限る。研磨粉入りは“バー等の成形品”のみ3401、それ以外は3405へ
    • 注3:3402の「有機界面活性剤」=0.5%水溶液(20℃)で1時間放置などの条件と、表面張力(45 dyne/cm以下)等の基準
    • 注5:3404の「人造ろう・調製ろう」の定義と、除外(15.21、27.12、液媒体中のワックス等)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「有機界面活性剤」(3402):上記の試験条件・表面張力の基準が定義として効きます。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • シャンプー等 → 33.05〜33.07
    • 鉱物ろう → 27.12、動植物ろう(単体)→ 15.21 など(3404注の除外)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:注2(3401)で、研磨粉入り石けんが 3401↔3405 に割れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):研磨材の有無、形状(バー/成形か、粉/ペーストか)、用途表示
    • 現場で集める証憑:現品写真(形状・成形)、仕様書、成分表
    • 誤分類の典型:粉クレンザーを“せっけん扱い”で3401にしてしまう。
  • 影響ポイント2:注3(3402)で、“界面活性剤扱いできるか”が論点になる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):0.5%水溶液での状態(透明/安定乳化等)と表面張力基準に合うか
    • 現場で集める証憑:SDS、規格書(界面活性の試験データがあると強い)、用途資料
    • 誤分類の典型:「洗剤っぽい」だけで3402に寄せ、実は別章(単一化合物等)だった。
  • 影響ポイント3:注1(c)で、せっけん入りでも“化粧・トイレタリー”は33類へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):製品がシャンプー・歯磨き・シェービング・入浴剤に該当するか
    • 現場で集める証憑:表示・用途、配合、販売形態
    • 誤分類の典型:「石けん入り=34類」と短絡。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ハンドソープを3402.50にしてしまう
    • なぜ起きる:液体洗剤は全部3402という思い込み。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):皮膚洗浄用(液体/クリーム・小売)は3401.30の設計です。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「洗う対象は皮膚?食器?住居?」を営業/企画に確認
      • 容器表示(用途)と商品説明ページを保存
  2. 間違い:シャンプーや入浴剤を“せっけん入りだから34類”にしてしまう
    • なぜ起きる:成分(soap)に引っ張られる。
    • 正しい考え方:第34類注で、これらは33.05〜33.07に除外されています。
    • 予防策:
      • 製品カテゴリ(シャンプー/浴用など)を先に確定
      • 33類の見出し(33.05〜33.07)も同時に確認
  3. 間違い:研磨粉入りの製品を一律3405にする(または一律3401にする)
    • なぜ起きる:注2(形状条件)を見落とす。
    • 正しい考え方:研磨粉入りでもバー/成形品なら3401に残り得て、粉・ペーストは3405へ。
    • 予防策:
      • 現品写真で形状を確認(粉/ペースト/成形)
      • “成形しているか”を製造に確認
  4. 間違い:界面活性剤原料(工業用)を、根拠なく3402に置く
    • なぜ起きる:用途が洗剤だから、という短絡。
    • 正しい考え方:34類注で単一化合物は除外。3402の定義(試験条件)も踏まえ、成分の“単体/混合”を確認します。
    • 予防策:
      • SDSで「単一物質か混合物か」を確認(CASが複数か等)
      • 同族体混合(炭素鎖分布)かどうかをメーカーに質問
  5. 間違い:潤滑剤を“石油製品だから27類”で処理してしまう(逆も)
    • なぜ起きる:基油だけで判断。
    • 正しい考え方:3403は“調製潤滑剤”の見出しで、用途・調製の実態で判断。一方、3403は石油油70%以上基礎成分のものを除外します。
    • 予防策:
      • 基油比率、添加剤、用途(切削・離型・防錆等)を仕様書で回収
      • 日本の分類例規(例:グリースの説明)も参照して整理
  6. 間違い:HS2022改正(3402の号変更)を反映せず、旧コードのままPSR・社内マスターを運用
    • なぜ起きる:見出し(4桁)は同じなので見落としやすい。
    • 正しい考え方:HS2022で3402の6桁体系が置換されました。
    • 予防策:
      • 旧→新対応表を社内に持ち、マスター更新(後述の7章・8章参照)
      • 協定の採用HS版でPSRを検索(税関注意書き)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。特に第34類は3402の6桁構成が変わっているため、材料HS・最終品HSのどちらも“どのHS版で見ているか”がブレやすいです。
  • よくある落とし穴
    • 旧3402.11等のまま協定PSRを読んでしまう(HS2022では該当しない)
    • “洗浄剤”として一括で材料HSを置き、CTC(タリフジャンプ)検討が崩れる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本税関のPSR検索は、協定ごとに採用HS版が異なるため、採用版で検索すべきこと、ただし輸入申告は最新HSを使うことを明記しています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • WCO相関表(Correlation Table)で旧HS→新HSの対応を確認し、社内で根拠を残します(税関PSR検索も相関表参照を案内)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 3402(界面活性剤)を材料に使う場合は、HS版差をまたぐので:
    • “協定のHS版での材料HS”と“申告HS(最新)”を対照表で管理
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定のガイダンス/税関ポータルの説明に沿って整備

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割/置換(号の再編)3402旧:3402.11〜3402.19、3402.20 → 新:3402.31(LAS等)/3402.39、3402.41〜3402.49、3402.50(小売)、3402.90へ置換旧コードの社内マスター・PSR参照・統計の突合で“コード不一致”が発生しやすい。変換表の整備が必須。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • WCOの相関表(HS2017→HS2022)Table Iにて、3402.11〜3402.19および3402.20を削除し、3402.31〜3402.50へ置換した旨が示されています。
    • HS2022の第34類本文に、3402.31(Linear alkylbenzene sulphonic acids and their salts)等の新しい号構成が明示されています。
  • 以上より、本資料では 「HS2017→HS2022で、第34類のうち3402のHS6桁体系が再編された」 と整理しています(他の3401/3403/3404/3405/3406/3407については、相関表Table Iに“範囲変更・新設としての記載”が見当たらないため、少なくともHS6桁の大改正は確認できません)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

版の比較主要な追加・削除・再編(第34類、HS6桁)旧コード→新コード(概要)
HS2002→HS2022(長期の見通し)3402の6桁が、旧体系(3402.11〜3402.20)から新体系(3402.31〜3402.50)へ再編旧:3402.11(アニオン)等/3402.20(小売) → 新:3402.31(特定のアニオン:LAS等)/3402.39、3402.50(小売)など
HS2017→HS2022上記のとおり 3402 の置換が主要点7章参照
  • 補足:
    • 2002版でも3402.11(アニオン)等の旧体系が確認でき、2022版では3402.31等に変わっています。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ハンドソープを食器用洗剤扱いにしてしまった
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):3401(皮膚洗浄・小売)の設計を無視して3402.50で申告
    • 起きやすい状況:商品名に“ソープ/クリーン”などが混在、用途表示を見ていない
    • 典型的な影響:修正申告、税番根拠資料の追提出
    • 予防策:用途表示写真・製品説明を分類前に回収し、皮膚用かを先に確定
  • 事例名:研磨粉入り製品の形状を見落として3401↔3405を誤る
    • 誤りの内容:3401注2の“バー形状条件”を外しているのに3401で申告
    • 起きやすい状況:現品確認をせず、成分(せっけん)だけで判断
    • 典型的な影響:差戻し・補足説明、サンプル提出
    • 予防策:現品写真(粉/ペースト/成形)+仕様書で形状を立証
  • 事例名:シャンプー(石けん入り)を34類で申告
    • 誤りの内容:34類注1(c)の除外(33.05〜33.07)に抵触
    • 起きやすい状況:成分表の“soap”だけ見て判断
    • 典型的な影響:修正申告、規制(表示・区分)側の確認も巻き込む
    • 予防策:製品カテゴリ(シャンプー等)を先に確定し、33類も並行チェック
  • 事例名:HS2022の3402改正を反映せず旧コードで書類作成
    • 誤りの内容:3402.11等の旧HSをそのままインボイス・原産地関連書類に記載
    • 起きやすい状況:社内マスター未更新、協定PSRのHS版と申告HSの混同
    • 典型的な影響:照会、原産地手続のやり直し、通関遅延
    • 予防策:協定採用HS版でPSR確認+相関表で変換根拠を保存

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 一般の洗剤・潤滑剤は食品検疫の中心領域ではありませんが、家庭用品として流通する場合、別法令(表示・有害物質規制)の対象になり得ます(下記)。
  • その他の許認可・届出
    • 家庭用品品質表示(合成洗剤):消費者向けの合成洗剤は、品名や成分表示ルールが示されています(表示設計に影響)。
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制(家庭用品規制法):対象物質群・規制の考え方が整理されています(対象製品の場合は該当確認が必要)。
    • 消防法(アルコール等):アルコール類は危険物として取扱い注意喚起が出ています(芳香・洗浄系で高濃度アルコール品は要注意)。
    • 化管法(PRTR/SDS):対象化学物質やそれを含有する製品を事業者間で譲渡・提供する際、SDS情報提供義務があり得ます。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(分類・原産地)
    • 消費者庁(家庭用品品質表示)
    • 経産省(化管法SDS)
    • 消防庁(危険物・注意喚起)
    • 厚労省(家庭用品規制法の枠組み)
  • 実務での準備物(一般論):
    • SDS、成分表(含有率)、用途・表示案、製品写真、危険物該当性(引火点等)、BOM・原産国情報

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 用途(皮膚/台所/住居/工業/潤滑/歯科)
    • 形状(バー/粉/ペースト/液/含浸不織布/セット)
    • 成分(単一化合物か混合か、石油油比率、研磨材の有無)
    • 包装(小売か業務用か)、表示・説明書
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 34類注1(c)(シャンプー等は33類へ)
    • 34類注2(研磨粉入りの形状条件)
    • 34類注3(界面活性剤の定義)
    • 3403の70%石油油除外(該当なら別章再検討)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は用途が分かるように(例:“liquid hand soap for skin washing”, “dishwashing detergent”, “lubricating grease”)
    • 形状・用途・成分が分かる資料(SDS、写真、カタログ)を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が採用するHS版でPSR検索(税関の注意書きどおり)
    • 3402はHS2022で号体系が変わるため、旧→新の対応根拠(相関表等)を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 消費者向け合成洗剤:表示(品名・成分等)
    • 危険物:高濃度アルコール等の取扱注意
    • 事業者間取引:化管法SDS提供の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 34(注・号構成)(参照日:2026-02-20)
    • Section VI Notes(セット等)(参照日:2026-02-20)
    • WCO Correlation Tables(HS2017→HS2022、Table I)(参照日:2026-02-20)
    • HS2002 Chapter 34(旧体系の例:3402.11等)(参照日:2026-02-20)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説(第34類)」(参照日:2026-02-20)
    • 税関「分類例規(第34類)」(参照日:2026-02-20)
    • 税関「品目別原産地規則(PSR)検索」注意事項(HS版差・最新HSで申告)(参照日:2026-02-20)
    • 税関「EPA・原産地規則ポータル」(参照日:2026-02-20)
  • 規制(日本)
    • 消費者庁:合成洗剤の表示(ガイド/規程)(参照日:2026-02-20)
    • 経産省:化管法SDS制度(対象事業者・制度概要)(参照日:2026-02-20)
    • 消防庁:消毒用アルコールの安全な取扱い(危険物)(参照日:2026-02-20)
    • 厚労省:家庭用品規制法に関する説明資料 (参照日:2026-02-20)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 国内実務はHS6桁に国内細分(統計品目番号:輸出入で9桁等)を使います。HS(6桁)と国内コードを混同しないでください。
  • 第34類はとくに3402のHS6桁がHS2022で置換されているため、国内細分の更新も含めて、社内マスター(商品・材料・BOM・原産地)を一括点検するのが安全です。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 迷う境界(例:3401↔3402、3401↔3405、3402↔29類、34類↔33類)がある場合、税関の公開資料(解説・例規)を当たり、重要取引は事前相談(一般論)を検討します。
  • 相談を早めるために揃えるもの(一般論):
    • 用途表示(ラベル・説明書)、現品写真(形状)、SDS、成分表(含有率)、工程・用途資料、想定HS候補と迷点

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第33類:精油、レジノイド、調製香料及び化粧品類(Essential oils and resinoids; perfumery, cosmetic or toilet preparations)

用語の統一(本資料内):類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 精油(例:オレンジ精油、レモン精油、ペパーミント精油)=3301
    • 香料原料としての調合香料(フレグランス基材/フレーバー基材)=3302
    • 香水・オーデコロン=3303
    • 化粧品(スキンケア、日焼け止め、メイク、ネイル)=3304
    • シャンプー等の頭髪用調製品=3305
    • 歯磨き・マウスウォッシュ・義歯用洗浄剤等の口腔衛生=3306
    • デオドラント、浴用剤、脱毛剤、ルームフレグランス=3307
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 天然のオレオレジン/植物性エキス(抽出物でも、天然オレオレジン等)→ 第13類 1301/1302
    • せっけん等 → 第34類 3401
    • ガムテレビン油等のテルペン油 → 第38類 3805
    • 単一の化学品(香気成分単体など) → 原則として第29類(単一の化合物)※第33類の「香気性物質」は3302の定義に効きますが、単体=3302とは限りません(後述)
    • 医薬品的な効能・治療目的が前面の製品 → 多くは第30類(医薬品)側で検討(表示・成分・作用が鍵)
    • ろうそく(キャンドル)そのもの → 通常第34類(例:3406)※香り付きでも「製品の本体」がろうそくなら別章になりやすい(要個別判断)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「原料用(工業用)」の香料混合物(3302)か、「小売向け完成品」(3303〜3307)か:包装形態・表示・用途が分岐点
    2. 化粧品(3304等)か、洗浄剤(34類)か:特に「シャンプー」は33類側に残る点が頻出
    3. 3302(香料調製品)と、食品調製品(例:2106)などの境界:日本の実務では「香気性物質の重量割合」等で判断する場面あり
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則)選択がズレる(最終製品HSを誤ると原産性判断が崩れます)
    • 規制(薬機法・食品衛生等)の手続きが製品区分(化粧品/医薬部外品/医薬品、食品添加物等)で大きく変わる

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し文言+注):第33類は「類注(注1〜4)」が強い章です。まず注で範囲と除外を固めます。
    • GIR6(号レベルの分岐):例えば 3302.10(食品・飲料用)/3302.90(その他)、3304の用途別分岐など。
    • GIR3(b)(セット):香水+ボディローション等の「小売用セット」は、性質(本質)で分類する場面が多いです。加えて、部注(Section VI注3)で「混合して製品を得るセット」も規定があります。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途(完成品か原料か):同じ香料でも「工業原料」なら3302、「ルーム用芳香剤として小売」なら3307に寄りやすい、など。
    • 状態・形状・包装:小売容器、添付の使用説明、用途表示が決定打になることが多いです(類注3の考え方)。
    • 成分(単体か混合物か、香気成分の有無・割合):3302は「香気性物質」を基礎とする混合物等。日本の運用では割合基準に触れる通達もあります(後述)。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象が「精油・レジノイド等」そのものか?
    • YES → 3301(精油、レジノイド、オレオレジン抽出物、精油の水溶液等)を起点に検討
    • NO → Step2へ
  • Step2:香り付けのための“原料”として使う香料調製品か?(工業原料、飲料製造用香料等)
    • YES → 3302(食品・飲料用なら3302.10、その他なら3302.90)
    • NO → Step3へ
  • Step3:小売向けの完成品(トイレタリー/化粧品/芳香剤等)か?
    • YES → 3303〜3307(類注3の「小売用包装」ロジックが効きます)
    • NO → 他類(例:29類の化学品、34類洗浄剤、13類抽出物等)を再点検
  • Step4:完成品の中でどれに当たるか
    • 3303:香水・オーデコロン
    • 3304:美容/メイク/皮膚の手入れ(日焼け止め含む)、ネイル
    • 3305:頭髪用(シャンプー、リンス、染毛等)
    • 3306:口腔衛生(歯磨き、義歯用洗浄剤、マウスウォッシュ、デンタルフロス)
    • 3307:ひげそり、デオドラント、浴用剤、脱毛剤、ルーム芳香/防臭、その他
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 33類(3305シャンプー) vs 34類(3401せっけん等)
    • 33類(3302香料調製品) vs 21類(2106等の食品調製品)(とくに飲料用フレーバー)
    • 33類(3304等の化粧品) vs 30類(医薬品)(表示・作用・有効成分が鍵)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3301精油(脱テルペンしたものを含む)、コンクリート/アブソリュート、レジノイド、オレオレジン抽出物、油脂中の精油コンセントレート、精油の水溶液等オレンジ精油、ペパーミント精油、ローズウォーター(精油のアキュアスディスチレート)抽出物でも**天然オレオレジン/植物エキス(13類)**は除外。分画等で組成が著しく変わると33.02へ寄ることあり。溶剤残留が少量あっても直ちに除外ではない(実務)。
3302香気性物質の混合物/香気性物質を基礎とする混合物(工業原料)、飲料製造用の香料調製品香料ベース、フレーバーコンパウンド(飲料用)、石けん用香料原料用途が前提。食品・飲料用(3302.10)かその他(3302.90)。日本では「香気性物質重量2%以上」等の通達がある(適用範囲に注意)。
3303香水類・オーデコロン類パルファム、オードトワレ、練り香水人体に芳香を与える目的。精油の水溶液(3301)と混同注意。
3304美容/メイク/皮膚の手入れ(医薬品除く)、日焼け止め/日焼け、マニキュア/ペディキュア保湿クリーム、日焼け止め、ファンデ/パウダー、口紅、ネイルポリッシュ医薬品との境界(治療目的・有効成分濃度・表示)に注意。ベビーパウダー等でも「小売用で化粧用途」ならここに入ることがある。人工爪(素材により他類)など除外あり。
3305頭髪用調製品シャンプー、リンス、ヘアスプレー、染毛剤、パーマ液シャンプーはせっけん含有でも3305になり得る(34類注との関係)。頭皮以外の体毛用は3307へ。
3306口腔・歯科衛生用、義歯定着剤、デンタルフロス(小売包装)歯磨き粉、マウスウォッシュ、義歯洗浄剤、デンタルフロス「歯磨き」は研磨剤有無、歯科医用か否かを問わず含まれる旨の解説あり。
3307ひげそり前後、デオドラント、浴用剤、脱毛剤、その他のトイレタリー、調製した室内防臭剤制汗剤、ボディスプレー、入浴剤、脱毛クリーム、ルームスプレー、線香(燃焼型芳香)「調製した室内防臭剤」は消毒性があっても3307に属し得る(解説)。類注4で、におい袋・燃焼型芳香・化粧料含浸紙・コンタクトレンズ液・化粧品含浸不織布・動物用トイレタリー等も含める。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効く軸)
    • 用途:食品/飲料用(3302.10)か、香料工業・せっけん工業等(3302.90)か
    • 包装形態:小売用包装で、その用途が表示されているか(3303〜3307へ寄る類注3)
    • 形状:パウダーか否か(3304.91)、燃焼型芳香か否か(3307.41)など
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3302.10(食品/飲料用) vs 3302.90(その他)
      • どこで分かれるか:最終用途が食品・飲料工業向けか(香味付け等)。
      • 判断に必要な情報:
        • 販売先(飲料メーカー/食品メーカー/日用品メーカー等)
        • 製品仕様書(用途欄)、SDS、配合(香気成分+担体)
        • 製品名が「フレーバー」「香料基材」等か
      • 典型的な誤り:用途を確認せず「香料だから一律3302.90」としてしまう。
    2. 3302(香料調製品) vs 2106等(食品調製品)(※6桁同士ではないが実務で頻出の境界)
      • どこで分かれるか:日本の通達では、着香目的で工業原料として使う混合物のうち、判断困難なものについて、香気性物質の重量が(一定の除外をした)全重量の2%以上なら3302に分類する目安を示しています(適用条件と例外あり)。
      • 判断に必要な情報:
        • 香気性物質の重量(保留剤・溶剤(PG、グリセリン、エタノール等)を除外して計算する扱い)
        • 食品由来成分(果汁、脱脂粉乳等)との混合比、最終用途
      • 典型的な誤り:糖類・果汁が多いから食品調製品と決め打ち/逆に香料と決め打ち。
    3. 3305.10(シャンプー) vs 3401(せっけん等)
      • どこで分かれるか:頭髪用としての性格が明確なら、せっけんや界面活性剤を含んでいても3305に含まれる旨の解説があります。
      • 判断に必要な情報:用途表示(頭髪用)、成分(界面活性剤の種類)、形状(液体等)、販売形態。
      • 典型的な誤り:「洗う=34類」と短絡。
    4. 3304.91(粉末) vs 3304.99(その他)
      • どこで分かれるか:**粉末(圧縮の有無を問わない)**かどうか。
      • 判断に必要な情報:形状(ルース/プレスト)、用途(フェイスパウダー、ベビーパウダー等)。
      • 典型的な誤り:粉末化粧品を「その他」で処理してしまう。
    5. 3307.41(燃焼型芳香) vs 3307.49(その他の室内芳香・防臭)
      • どこで分かれるか:燃焼させて使用するタイプ(例:線香、インセンス)かどうか。
      • 判断に必要な情報:使用方法(燃焼/噴霧/置き型)、梱包表示、形状。
      • 典型的な誤り:室内芳香剤を一律3307.49にする(燃焼型を見落とす)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注2:一定の見出し(3303〜3307を含む)の物品が、計量された用量または小売用としての性格によりその見出しに該当する場合、Section VI内の他の見出しではなく当該見出しに分類する、という“固定化”ルールがあります。
    • 部注3:複数の構成品からなる「混ぜて製品を得るセット」(例:2液混合で使うヘアカラー等)が条件を満たすと、完成品の見出しに分類する考え方があります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ヘアカラーの2剤セット(別々のボトルが同梱、混ぜて使用)
      • 条件を満たすと「完成品(頭髪用調製品=3305)」側に整理しやすい(ただし個別事情で要確認)。
    • 例:化粧品のトライアルキット(小売包装・用途明確)
      • 部注2+類注3の発想で、3304等に固定されやすい。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • Section VI注自体は他章へ飛ばすというより、Section VI内の競合見出し(例:33類 vs 34類・38類など)での“決着”に効きます。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1(除外):13.01/13.02(天然オレオレジン・植物エキス)、34.01(せっけん等)、38.05(テレビン油等)を除外。
    • 類注2(香気性物質の定義):3302の「香気性物質」は、3301の物質/そこから単離した香気成分/合成香料のみ。
    • 類注3(小売用包装):3303〜3307は、用途に適する物品で小売用包装のものを(混合の有無を問わず)含む(ただし精油の水系蒸留物等は除外)。
    • 類注4(3307の範囲の明示):におい袋、燃焼型芳香、香紙、化粧料含浸紙、コンタクトレンズ/義眼用液、化粧品含浸不織布、動物用トイレタリー等を含む。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「香気性物質」(3302)=上記の通り限定定義。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 天然オレオレジン/植物エキス → 13.01/13.02
    • せっけん等 → 34.01
    • テルペン油(テレビン油等) → 38.05

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:類注3(小売用包装)で“原料→完成品”に見える分類が起きる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 小売用包装か(サイズ・容器・箱)
      • ラベル/説明書の用途表示(例:ルーム用、ボディ用、歯科用など)
      • その用途に適する性状(希釈済み、使用可能状態)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真(外装・表示面)
      • カタログ、EC掲載情報(用途・使用法)
      • 仕様書(濃度・形状)
    • 誤分類の典型:
      • 「成分が同じだから原料(3302)」と判断してしまい、**小売向け芳香剤(3307)**を見落とす。
  • 影響ポイント2:類注2(香気性物質の定義)で“香りがある=3302”が否定される
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 香りの原因が、3301由来/単離香気成分/合成香料なのか
      • それとも、食品(肉エキス等)や植物搾汁など他類の物品由来なのか(日本通達の注記でも例示)
    • 現場で集める証憑:
      • 配合表(香気成分の名称、CAS等)
      • SDS(成分同定)
      • 製造工程図
    • 誤分類の典型:
      • 「香りがある食品素材」を3302に寄せてしまう(香気性物質の定義に合わない)。
  • 影響ポイント3:類注4(3307の例示)で“意外なものが3307”になる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製品が「コンタクトレンズ液」「香料含浸不織布(ウェットシート等)」「動物用トイレタリー」等に該当するか
    • 現場で集める証憑:
      • 製品の用途説明、医療機器該当性の社内確認(規制面も絡む)
      • 不織布基材か、含浸しているのが何か(化粧料/香料 vs せっけん/洗浄剤)
    • 誤分類の典型:
      • ウェットシート類を一律に34類(洗浄)側へ(含浸物の性格で変わります)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:シャンプーを「洗浄剤だから34類」としてしまう
    • なぜ起きる:用途が“洗う”なので短絡しがち。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):頭髪用調製品(3305)で、せっけん/界面活性剤を含んでも3305に含み得る旨の解説あり。
    • 予防策:
      • 容器表示(頭髪用)・使用方法・成分表を入手
      • 「頭皮以外の毛用か?」も確認(体毛用なら3307へ)
  2. 間違い:香りがあるから3302(調製香料)と決め打ちする
    • なぜ起きる:香料=33類という先入観。
    • 正しい考え方:3302の「香気性物質」は限定定義(3301由来/単離香気成分/合成香料)。香りの原因が食品素材等なら合わないことがある。
    • 予防策:
      • 香気成分リスト(CAS含む)を必ず取得
      • 「香気の由来」をSDS/配合で特定する
  3. 間違い:飲料用フレーバーを食品調製品(例:2106)にしてしまう/逆も同様
    • なぜ起きる:果汁・糖類・酸味料などが入っていて食品っぽい。
    • 正しい考え方:日本の分類通達では、判断困難な調製品について香気性物質割合2%等の目安を示し、例外も明記。
    • 予防策:
      • 香気性物質重量の計算根拠(除外する溶剤・保留剤)を作る
      • 用途(飲料製造用で、提示時に飲料として消費されない)を確認する
  4. 間違い:スキンケア製品を3304に入れたが、実態は医薬品寄り
    • なぜ起きる:外観が化粧品っぽい。
    • 正しい考え方:3304は「医薬品を除く」。湿疹治療用クリーム等は除外例として示されている(30類側検討)。
    • 予防策:
      • 表示(効能効果)・有効成分濃度・規制上の区分(化粧品/医薬部外品/医薬品)を社内で確認
      • カタログ記載の「治療」「予防」等の表現を点検
  5. 間違い:ルームスプレー等を「消毒性があるから3808」としてしまう
    • なぜ起きる:“disinfectant”表示に引っ張られる。
    • 正しい考え方:見出し3307は「調製した室内防臭剤(消毒性があっても)」を含む旨が示されている(ただし、主目的や表示実態の評価が必要)。
    • 予防策:
      • 主たる用途(芳香/防臭か、消毒か)と表示の優先順位を確認
      • SDSと販売資料をセットで保管
  6. 間違い:ベビーパウダー(タルク)を鉱物(25類)で処理してしまう
    • なぜ起きる:主成分がタルクなので素材で判断。
    • 正しい考え方:小売用で化粧用途に特定されている場合、3304に含まれ得る旨が解説で例示。
    • 予防策:用途表示・包装形態(ベビー/肌用)を確認し、類注3の観点で再点検。
  7. 間違い:香水ギフトセットを構成品ごとにばらして分類してしまう
    • なぜ起きる:セット判定(GIR3(b))を使わない。
    • 正しい考え方:小売用セットはGIR3(b)で本質で決める場面が多い(内容・価格・役割で判断)。
    • 予防策:セット構成、価格比、主要用途を一覧化して“本質”を説明できるようにする。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品HSがズレると、必要なCTC(関税分類変更)やRVC計算の起点がズレます
  • よくある落とし穴
    • “香料原料(3302)”と“完成品(3303〜3307)”の取り違え
    • 材料のHS(香気成分単体=29類になり得る)を雑に置く
    • セット品のHS確定前にPSRを当てはめてしまう(GIR3(b)の結果が先)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 税関のPSR検索ポータルでも、協定ごとに採用HS版(HS2002/2007/2012/2017等)が異なるため、採用版で検索すべき旨が明記されています。また、輸入申告は最新HSを使用する注意もあります。
  • 具体例(一次情報に近い公表資料ベース)
    • CPTPP:PSR等は「2017年1月1日直前のHS(HS2012)」で最終化された旨のガイド記載(豪当局の説明)。
    • RCEP:日本税関が公開するPSR(Annex 3A)は「HS2012版に基づく」と明記。
      • 一方で、外務省のRCEPページでは、原産地証明(Proof of Origin)に記載するHSコード等は、2023-01-01以降、HS2022に移行したPSR(transposed PSR)に基づく旨が示されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • WCOの相関表(Correlation Tables)で、旧HSの号→新HSの号の対応を確認します。
    • ただしWCO相関表は「実装を助けるガイドで法的地位なし」と明記されています。最終的には各国税関の運用(国内相関、告示、通達)も確認が必要です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • セット品は、HS確定(GIR3(b))→PSR選択の順で
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定ごとの自己申告/第三者証明、保存年限、原産地証明文言を確認
    • HS版ズレがある場合は、どのHS版でPSRを読んだかを社内記録に残す

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくともHS6桁レベルで第33類は改正対象として示されていない)33類(3301〜3307)WCOの章立て(見出し・注・6桁号)が同一HS付番の再学習コストは小。国内細分や運用(通達等)は別途確認が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017版・HS2022版のChapter 33の条文(注・号構成)が同一であること。
    • WCO「Correlation Tables HS 2017–2022」は、HS2022で新設/範囲変更等があった号を中心に列挙する趣旨であること(Introductionの説明)。
    • そのTable I/II(WCO公表)に、33類(3301〜3307)に該当する改正対象号が現れない(=改正による移動・新設の対象として扱われていない)こと。
  • 以上より、本資料では 「HS2017→HS2022で第33類(HS6桁)に実務上のコード変更はない」 と整理しています。
    • ただし、WCO相関表はガイドで法的地位なしと明記されているため、輸入国(日本等)の国内コード(9桁)や運用通達の改正有無は別確認が必要です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(可能な範囲)
版の比較主要な追加・削除・再編(第33類、HS6桁)補足
HS2007→HS2012大きな再編なし(章注・6桁号構成が同型で推移していることを確認)HS2012の一次資料確認は別途推奨(ここではWCO 2007/2017/2022で同型である点を重視)
HS2012→HS2017大きな再編なし(WCO 2017の章注・号構成)
HS2017→HS2022大きな再編なし(章注・号構成が同一)
  • 「旧コード→新コード(または行き先不明)」の対応
    • 第33類に関しては、上記のとおり主要な新設・削除・分割・統合が確認できないため、代表的な「旧→新の付替え例」は特段ありません(HS6桁ベース)。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「工業用香料」だと思ったら“小売用ルーム芳香”だった
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注3(小売用包装)を見落とし、3302で申告
    • 起きやすい状況:小型ボトル・使用説明付きなのに、成分が香料ベースなので原料と誤認
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、説明資料の追加提出、検査強化
    • 予防策:包装・表示写真を分類前に必ず回収し、用途表示を一次情報として扱う
  • 事例名:飲料用フレーバーを2106で申告してしまった
    • 誤りの内容:3302(飲料製造用香料調製品)と食品調製品の境界判断を誤る
    • 起きやすい状況:果汁・糖類が多い、名称が「シロップ」「ベース」
    • 典型的な影響:税率差、原産地規則(PSR)選択ミス、事後調査
    • 予防策:香気性物質割合(日本通達の計算方法)と用途(飲料として消費されない)をセットで立証
  • 事例名:シャンプーを3401(せっけん)で申告
    • 誤りの内容:33.05の範囲(せっけん含有でも可)を見落とし
    • 起きやすい状況:成分欄に「soap」「界面活性剤」
    • 典型的な影響:修正申告、インボイス品名の修正指導
    • 予防策:用途(頭髪用)・商品カテゴリ・説明書を添付し、33.05の解説趣旨を踏まえて整理
  • 事例名:コンタクトレンズ用液を別章で処理
    • 誤りの内容:類注4で3307に含める旨の例示を見落とし
    • 起きやすい状況:規制上の医療機器イメージが強く、HSも同じだと誤解
    • 典型的な影響:税番差・書類差、規制確認の遅延
    • 予防策:HS分類(類注)と規制法(薬機法等)の“軸の違い”を分けて整理し、両方の担当でレビュー

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 化粧品・医薬部外品・医薬品等(薬機法領域)
      • 業として輸入販売する場合、製造販売業許可等や品目ごとの手続が必要になるのが原則、通関時に許可証や届書等の提示を求められる旨の案内があります(詳細は所管機関の最新情報確認が必要)。
    • 食品用途の香料(フレーバー等)
      • 食品等の輸入は、食品衛生法適合性の確認や検疫所への輸入届出・検査対象の確認が必要になる場合があります。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第33類自体は“HSだけで該非が決まる”わけではありませんが、輸出統計品目表の「他法令」欄に、輸出貿易管理令(外為法関連)の注意が付されている品目番号も見られます。成分・用途・仕様で該非判定が必要です。
  • その他の許認可・届出(例)
    • アルコールを多く含む香水・芳香剤等は、**危険物・輸送規制(消防法・航空/海上危険物規則等)**の確認が必要になることがあります(本資料では一般論に留めます)。
    • SDS(安全データシート)やGHS表示が必要な化学品としての要件が絡む場合があります。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(品目分類・事前教示)
    • 厚生労働省/PMDA(薬機法関連手続)
    • 検疫所(輸入食品等)
    • 経済産業省(安全保障貿易管理:該非判定)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 成分表(INCI等)、SDS、用途・表示案、ラベル、製品写真、BOM、原産国情報、該当時は許認可書類

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品の用途(人体用/室内用/動物用/工業原料)
    • 成分表(香気成分の有無、単体か混合か、担体)
    • 形状(液体/粉末/燃焼型/不織布含浸など)
    • 包装形態(小売用か、業務用か)、表示・説明書
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1(13類/34類/38類除外)を必ず再確認
    • 類注3(小売用包装)に該当しないか、写真で再確認
    • 3302の「香気性物質」定義に合うか再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「perfume base」「hair shampoo」等、用途が伝わる表現へ
    • 統計数量単位(kg等)に合わせた数量整合(国内コード側で単位が出ることあり)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が採用するHS版でPSRを確認(税関ポータルの注意喚起に従う)
    • HS版の変換は相関表で根拠を残す
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 化粧品/医薬部外品/医薬品の区分、輸入手続(薬機法)
    • 食品用途(香料等)の輸入届出・検査(食品衛生)
    • 輸送危険物、SDS、表示

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 33(見出し・注) (参照日:2026-02-20)
    • WCO HS2022 Section VI Notes(部注) (参照日:2026-02-20)
    • WCO HS2017 Chapter 33(比較用) (参照日:2026-02-20)
    • WCO HS2007 Chapter 33(旧版確認) (参照日:2026-02-20)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022(Introduction / Table I・II) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説・分類例規」 (参照日:2026-02-20)
    • 税関「関税率表解説(第33類)33r.pdf」 (参照日:2026-02-20)
    • 税関「分類例規(第33類)33rd.pdf」(香気性物質2%基準等) (参照日:2026-02-20)
    • 税関「品目別原産地規則(PSR)検索」注意事項 (参照日:2026-02-20)
    • 税関「事前教示(品目分類)検索/制度案内」 (参照日:2026-02-20)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 外務省 RCEPページ(HS2022へ移行したPSRの案内) (参照日:2026-02-20)
    • 税関 RCEP Annex 3A(HS2012ベースのPSR) (参照日:2026-02-20)
    • CPTPP:HS2012でPSRが最終化された旨の説明(豪当局ガイド) (参照日:2026-02-20)
  • 規制(日本)
    • 厚労省:化粧品製造(輸入販売)業の許可申請等(通関時の提示等に言及) (参照日:2026-02-20)
    • 地方厚生局:医薬品等の輸入手続(薬機法関係の概要、2026-02-09更新) (参照日:2026-02-20)
    • PMDA:外国製造業者の手続き等(化粧品関連届出情報) (参照日:2026-02-20)
    • 検疫所(FORTH):輸入食品関係参考情報(食品衛生) (参照日:2026-02-20)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 日本の申告実務では、HS6桁に国内細分を加えた**統計品目番号(9桁)**を使います(輸出入で同型のことが多いですが、運用は最新表で確認してください)。
  • 例(輸出統計品目表に基づく表示例):
    • 3302.10-000(食品・飲料工業用の香料調製品)
    • 3303.00-000(香水・オーデコロン)
    • 3305.10-000(シャンプー)
    • 3306.10-000(歯磨き)
    • 3307.20-000(身体用防臭剤・汗止め)
  • 注意点:
    • 協定PSRはHS2012等の版で書かれていることがある一方、申告は最新HS/国内コードで行う、という“二重管理”が起きます。税関ポータルの注意書きに従い、相関表で変換根拠を残してください。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 日本税関は、品目分類の**事前教示制度(advance ruling)**を案内しており、公開可能な事前教示回答を検索できます。
  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
      1. 製品概要(用途、使用方法)
      1. 成分表(配合比、香気成分、担体、CAS)
      1. 写真(外装・表示、内容物)
      1. カタログ・SDS・工程(該当する場合)
      1. 想定HS(候補)と迷っている論点(例:3302 vs 2106、3305 vs 3401 など)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第32類:なめしエキス、染色エキス、タンニン及びその誘導体、染料、顔料その他の着色料、ペイント、ワニス、パテその他のマスチック並びにインキ(Tanning or dyeing extracts; tannins and their derivatives; dyes, pigments and other colouring matter; paints and varnishes; putty and other mastics; inks)

  • 用語(本資料内の呼び方)
    • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 植物性なめしエキス/タンニン(例:ケブラチョエキス、ワットル(ミモザ)エキス、各種タンニン)【3201】
    • 合成なめし剤(合成タンニン剤等)や、なめし用の調製品【3202】
    • 有機合成染料・有機合成顔料(蛍光増白剤を含む)【3204】
    • 塗料・ワニス(溶剤系=3208、水系=3209)
    • パテ・シーリング材・マスチック(ただしアスファルト系を除く)【3214】
    • 印刷インキ、筆記・描画用インキ等【3215】
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 化学的に単一の元素・化合物(例:単一の溶剤、単一の顔料成分、単一の有機化合物)
      → 原則として第28類/第29類(ただし例外あり:3203/3204、ルミノホア用無機物(3206)、特定形状の石英ガラス(3207)、小売包装の染料等(3212))
    • アスファルトマスチック等の歴青質マスチック → 第27類 2715
    • 接着剤(調製接着剤) → 第35類 3506(シーリング材と紛らわしい)
    • 化粧品・トイレタリーの着色調製品 → 第33類(用途と表示で分かれやすい)
    • 写真用薬品(例:写真用現像等の化学品) → 第37類(インキと誤認注意)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 化学的に単一か/混合・調製品か(注1(a)が強い)
    2. 「着色料」そのものか/塗料・インキ・パテ等の“用途調製品”か(注3で線引き)
    3. 水系か溶剤系か、分散媒体が何か(特に顔料分散体)(3208/3209/3212で大きく変わる)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **危険物・SDS・輸送規制(引火性溶剤等)**の要否が変わるのに、品名だけで「塗料」として一括してしまう(通関だけでなく物流が止まりやすい)。
    • **RCEP等のPSR(品目別規則)**で参照HS版が異なるため、HS付番のズレが原産性判断に直撃する。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し文言+部注/類注が最優先)
      第32類は「注(Notes)」が分類範囲をかなり強く決めています。特に「化学的に単一の元素・化合物は原則除外(例外付き)」や、「顔料分散体は一定条件で除外」など、注に合うかどうかが起点です。
    • GIR6(6桁の号は“同じ階層の文言”で比較)
      例:塗料は「水系/非水系」「樹脂の種類」「黒インキ/その他」など、号の文言で枝分かれします。
    • GIR3(b)や“部注(Section Note)”が効く場面
      2液型塗料(主剤+硬化剤)のように複数構成で提示される場合、部注(第6部注3)により「混合して製品にするセット」は完成品側へ寄せる考え方が出ます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途(着色用か、被膜形成=塗装用か、印字用か、充填・シール用か)
    • 状態(粉末/粒、溶液、分散液、ペースト、シート状)
    • 媒体(水か、有機溶剤か、その他)
    • 組成(樹脂/結合剤、溶剤比率、顔料含有、添加剤)
    • 包装(小売用の形状・包装か):3212へ飛ぶ典型

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その製品は何をするものですか?
    • 皮なめし用/染色用抽出物・タンニン系 → 3201/3202候補
    • 色を付けるための“着色料(染料・顔料)” → 3203〜3207/3212/3213候補
    • 被膜形成(塗ると膜になる) → 3208〜3210/3211/3214候補
    • 印字・筆記 → 3215候補
  • Step2:化学的に単一の元素・化合物ですか?(=単一物質名で純度が高い等)
    • YES → 原則 第28類/第29類へ(ただし 3203/3204 等の例外確認)
    • NO(混合・調製品) → Step3へ
  • Step3:形状・媒体・包装を確認(ここが第32類の勝負所)
    • 顔料を水以外の媒体に分散した液体/ペーストで、塗料製造用タイプ → 3212側を優先検討(注3)
    • 染料・着色料が小売用の形状/包装 → 3212へ(部注2も後押し)
    • 塗料・ワニス:水系か非水系か → 3208/3209/3210へ
  • Step4:境界を最終チェック(よく迷う境界)
    • 第32類 ↔ 第28/29類(単一物質か、例外か)
    • 第32類 ↔ 第35類(シーリング材/マスチック vs 接着剤3506)
    • 第3214 ↔ 第2715(歴青質=アスファルト系は2715)
    • 第3208/3209 ↔ 第39類(樹脂溶液の“溶剤50%超”など)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3201植物性なめしエキス、タンニン、タンニン誘導体ケブラチョ/ワットル抽出物、各種タンニン植物原料(抽出前)は14.04、合成なめし剤と混合したものは3202、歴青質は別章など。化学的単一物質は原則除外(注1(a))
3202合成なめし物質・無機なめし物質・なめし用調製品合成タンニン剤、なめし用配合剤「なめし用途の調製品」であること。単なる単一化学品は28/29候補になり得る
3203植物性/動物性の着色料・染色エキス、調製品アナトー、コチニール系色素、天然色素調製品カーボンブラックは28.03、有機合成着色料は3204、小売包装の染料等は3212へ
3204合成有機着色料・それを基にした調製品・蛍光増白剤等分散染料、反応染料、有機顔料、蛍光増白剤アゾ染料生成用(ジアゾ塩+カップリング成分の混合)は3204に含む(注2)。小売包装は3212へ寄りやすい
3205レーキ顔料・それを基にした調製品カルミンレーキ、各種レーキ顔料「レーキ(担体に沈着固定した顔料)」の概念が鍵。単なる染料粉末は3203/3204側
3206その他の着色料(無機顔料等)・調製品(注3)TiO₂系顔料調製品、クロム化合物系顔料、メタリック粉等TiO₂は乾燥物換算80%等の号分岐が重要。粉末顔料と“分散液”で3212へ分かれ得る(注3)
3207セラミック/ガラス/ほうろう用の調製顔料・釉薬等釉薬(うわぐすり)調製品、フリット、液状光沢剤工業用途(セラミック/ガラス等向け調製品)であること。注1(a)で石英ガラスの特定形状が例外的にここへ
3208合成高分子等を非水系媒体に分散/溶解した塗料・ワニス溶剤系アクリル塗料、溶剤系ウレタンワニス注4:39.01〜39.13の物品を揮発性有機溶剤に溶かし、溶剤が全重量の50%超の溶液もここに含み得る
3209同上(水系媒体)水性アクリル塗料、水性ワニス水が主媒体。溶剤系との混同注意(3208/3209)
3210その他の塗料/ワニス、皮革仕上げ用水性顔料等ディステンパー等、皮革仕上げ用調製品3208/3209に当たらない塗料類。皮革仕上げ用の“調製水性顔料”が入るのが特徴
3211調製乾燥剤(ドライヤー)塗料用乾燥促進剤(コバルト系等の調製品)「調製」されていること(単一化学品は28/29候補)
3212塗料製造用の非水系顔料分散液/ペースト、スタンプ用箔、小売包装の染料等カラーペースト、ホットスタンプ箔、染料小袋注6でスタンプ箔の構成が定義。小売包装で3212へ飛ぶ(部注2も関係)
3213画家用/学生用/ポスターカラー等(小売形状)絵具チューブ、水彩絵具、ポスターカラー“用途と形状(小売向け)”が鍵。業務用顔料とは分ける
3214ガラス用パテ、樹脂セメント、コーキング材、マスチック等シーリング材、充填材、パテ注1(c):アスファルトマスチック等は2715へ。接着剤3506との境界も実務頻出
3215印刷インキ、筆記・描画インキ等グラビアインキ、フレキソインキ、サインペンインキ“インキ用途”が鍵。塗料(被膜形成)との混同注意。黒印刷インキ等で号分岐

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で効きやすい軸)
    • 媒体(非水系/水系):3208(非水系)↔3209(水系)
    • 溶剤比率(50%超):樹脂の溶液が3208に入るトリガー(注4)
    • 包装形態(小売用か):3212(小売包装の染料等)
    • 分散形態(顔料粉末 vs 非水系分散液/ペースト):3203〜3206 ↔ 3212(注3)
    • 含有率(例:TiO₂の乾燥物換算80%など、号で閾値があるもの)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3208(非水系塗料) vs 3209(水系塗料)
      • どこで分かれるか:媒体が「水」か「非水(有機溶剤等)」か
      • 判断に必要な情報:SDS、配合表(溶剤・水の比率)、製品仕様(“water-based / solvent-based”表示)
      • 典型的な誤り:水性なのに“溶剤系塗料”の品名だけで3208にしてしまう
    2. 3206(顔料・着色料) vs 3212(非水系顔料分散液/ペースト、塗料製造用)
      • どこで分かれるか:粉末等の「着色料/顔料」か、**非水媒体に分散した“カラーペースト”**か
      • 判断に必要な情報:形状(液/ペースト/粉)、媒体(水以外か)、用途(塗料製造用か)、SDS
      • 典型的な誤り:“顔料”という品名だけで3206に固定し、分散体を見落とす(注3の落とし穴)
    3. 3204.18(カロテノイド系着色料) vs 3204.19(その他)(HS2017→HS2022で新設)
      • どこで分かれるか:合成有機着色料のうち、カロテノイド系として扱われるか
      • 判断に必要な情報:着色成分(CAS、成分名)、用途資料(色素の系統)、分析/仕様書
      • 典型的な誤り:旧HSの感覚で3204.19にまとめ続け、HS2022の分岐を反映しない
    4. 3208(樹脂系塗料/ワニス) vs 第39類(樹脂そのもの)
      • どこで分かれるか:樹脂が「塗料/ワニスとしての調製品」か、単なる樹脂(一次形状等)か。さらに溶剤が全重量の50%超なら3208に入り得る(注4)
      • 判断に必要な情報:樹脂のHS候補(39.01〜39.13相当か)、溶剤比率、揮発性有機溶剤の有無、製品用途(coating用か)
      • 典型的な誤り:“アクリル樹脂溶液”を無条件で39類にしてしまう
    5. 3214(マスチック/シーリング材) vs 2715(アスファルトマスチック)
      • どこで分かれるか:主材が歴青質(アスファルト等)かどうか
      • 判断に必要な情報:原材料(アスファルト/ビチューメン含有)、SDS、技術資料
      • 典型的な誤り:建材用途=3214と短絡し、注1(c)の除外を見落とす

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注2(第6部):一定の物品は「小売用の形状/包装」「定量・小分け」などの理由で、指定の項(例:3212)に分類され、他の項に行かない、という整理です。
    • 部注3(第6部):複数構成品(セット)で提示され、混合して1つの製品(第6部または第7部の製品)になる場合、条件を満たせば完成品側の項に分類する、という考え方です(2液型塗料・2液型マスチック等の典型)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:主剤(樹脂+顔料)と硬化剤(別容器)を“セット”で輸入し、混ぜて2液型塗料として使う
      → 条件(同梱、詰替不要、補完関係が明確)を満たすなら、部注3に沿って塗料側(3208/3209等)で一体評価しやすいです。
    • 例:染料を家庭用に小袋で販売する形にしたもの
      → 「小売包装」要素により3212へ寄る設計になっているため、原料染料(3204等)とは切り分けが必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 3212(小売包装の染料等)や3506(接着剤)など、「小売形態」や「用途調製品」の見出しが優先してしまい、28/29の単一化学品分類より強くなるケース(部注2)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(a):化学的に単一の元素・化合物は原則この類に入らない(ただし例外あり)
    • 注1(b):特定のタンナート等(タンニン誘導体)は除外(対象章が明示)
    • 注1(c):アスファルトマスチック等は2715へ
    • 注2:アゾ染料生成用の混合物を3204に含める
    • 注3:3203〜3206は「着色料を基にした調製品」も含むが、非水系分散の液/ペーストで塗料製造用のもの等は除外(=3212等)
    • 注4:3208には、39.01〜39.13の物品を揮発性有機溶剤に溶かし、溶剤が全重量の50%超の溶液も含み得る
    • 注5:この類の「着色料」には、油ペイントの体質顔料(フィラー)として使う種類の物品は含めない(=別章へ行き得る)
    • 注6:3212の「スタンプ用のはく(箔)」の範囲を構成要件で定義
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「スタンプ用のはく(箔)」は、印捺用途の薄いシート状で、金属粉/顔料+結合剤で凝結したもの、または支持体上に金属/顔料を付着させたもの、という趣旨で限定されています(注6)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 化学的に単一の元素・化合物 → 第28類/第29類(例外は注1(a)の列挙を確認)
    • 歴青質マスチック(アスファルトマスチック等) → 第27類 2715
    • 特定のタンナート等 → 第29類/第35類側(注1(b)に列挙)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:「化学的に単一」かどうかで、第28/29類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):純度、単一CASか、混合物か、添加剤の有無、仕様書
    • 現場で集める証憑:SDS(第3章/第9章)、CoA(分析表)、配合表、製造工程概要
    • 誤分類の典型:単一の有機化合物(溶剤・添加剤等)を“塗料の原料”という理由だけで第32類に置いてしまう
  • 影響ポイント2:顔料が「粉」か「非水系分散液/ペースト」かで 320x ↔ 3212 が動く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):形状(液・ペースト・粉)、分散媒体(水以外か)、用途(塗料製造用か)
    • 現場で集める証憑:SDS、技術データシート(TDS)、製品写真、用途説明(カタログ)
    • 誤分類の典型:「pigment dispersion」「color paste」を“顔料”として3206に入れてしまう(注3の除外)
  • 影響ポイント3:樹脂溶液の“溶剤50%超”で 3208 に入ることがある
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):溶剤含有率(重量%)、揮発性有機溶剤の種類、樹脂が39.01〜39.13相当か
    • 現場で集める証憑:SDS、配合表、製品仕様(固形分/不揮発分)
    • 誤分類の典型:「樹脂溶液」=39類と決め打ちし、注4を確認しない
  • 影響ポイント4:マスチックが“アスファルト系”だと 2715 に除外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):歴青質(ビチューメン/アスファルト)を主材としているか
    • 現場で集める証憑:SDS、原材料表、用途・施工説明書
    • 誤分類の典型:建材系のコーキングをすべて3214とみなす

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:単一化学物質(高純度の溶剤・添加剤など)を第32類に入れる
    • なぜ起きる:用途が塗料・インキ関連だと、製品名に引っ張られる
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注1(a)で「化学的に単一」は原則除外(例外以外は28/29へ)
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • SDSで「単一物質」か「混合物」かを確認
      • 社内質問例:「着色成分・樹脂・溶剤は何が何%ですか?CASは何ですか?」
  2. 間違い:顔料分散体(非水系カラーペースト)を3206(粉末顔料)で申告
    • なぜ起きる:品名が“pigment”で、形状(ペースト)を見落とす
    • 正しい考え方:注3で、特定の分散液/ペースト(塗料製造用)は3203〜3206から外れる
    • 予防策:
      • 「媒体は水ですか?有機溶剤ですか?」「塗料の製造工程で使う中間品ですか?」を確認
      • TDS(用途・粘度・固形分)と製品写真を入手
  3. 間違い:水性塗料を3208(非水系)にしてしまう/逆も同様
    • なぜ起きる:品名が“paint”“coating”だけで、媒体を確認しない
    • 正しい考え方:3208は非水系、3209は水系(媒体の違いが本質)
    • 予防策:
      • SDSの溶剤欄、水分含有、危険物情報(引火点など)を確認
      • 社内質問例:「希釈は水ですか?シンナーですか?」
  4. 間違い:樹脂溶液を第39類に固定してしまい、3208の注4を見落とす
    • なぜ起きる:“resin solution”=樹脂の一種、と理解してしまう
    • 正しい考え方:注4により、一定の樹脂溶液(溶剤>50%等)が3208に含まれ得る
    • 予防策:
      • 固形分(不揮発分)と溶剤重量%を確認
      • 製品が「塗装用途(coating)」として販売されているか確認
  5. 間違い:2液型(主剤+硬化剤)を別々のHSで別申告してしまう
    • なぜ起きる:容器が別で、別商品に見える
    • 正しい考え方:部注3(第6部)で、混合して製品となるセットは完成品側へ分類し得る(条件あり)
    • 予防策:
      • “セットで提示されるか”“詰替不要か”“補完関係が明確か”を確認
      • 梱包明細(セット構成)を入手
  6. 間違い:シーリング材/マスチックを3214に入れるべきところ、アスファルト系を見落とす
    • なぜ起きる:用途(シール)で一括してしまう
    • 正しい考え方:注1(c)で歴青質マスチックは2715へ除外
    • 予防策:
      • SDSで“bitumen/asphalt”含有を確認
      • 社内質問例:「主材はアスファルト系ですか?樹脂系ですか?」
  7. 間違い:“インキ”を塗料(3208/3209)として扱う/逆
    • なぜ起きる:どちらも液体で着色するため、工程側の呼び方が混ざる
    • 正しい考え方:印字用途のインキは3215。被膜形成の塗料・ワニスは3208〜3210
    • 予防策:
      • 用途(印刷方式:グラビア/フレキソ等、筆記等)と乾燥後の機能(印字か塗膜か)を確認
  8. 間違い:小売用の染料(家庭用染色セット等)を原料染料(3204等)で申告
    • なぜ起きる:成分からだけで見てしまう
    • 正しい考え方:小売用の形状/包装は3212へ寄る(部注2+類注の例外)
    • 予防策:
      • 販売形態(小袋、説明書付き、消費者向け)と梱包状態を確認
  9. 間違い:セラミック用釉薬調製品を“粉末”というだけで他章(69/70等)へ寄せる
    • なぜ起きる:セラミック=陶磁器の章、という先入観
    • 正しい考え方:釉薬・フリット等の「調製品」は3207に立つことが多い(用途・調製の有無が鍵)
    • 予防策:
      • 「ガラス/ほうろう/陶磁器工業用の調製品か」「フリット(融着ガラス)を含むか」を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 第32類は「調製品」が多く、媒体や包装形態の違いでHSが動くため、PSR(例:CTH/CTSH/RVC等)の当てはめがズレやすいです。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • “顔料(粉)”としてBOMを組んでいたが、実際に輸出するのは“非水系分散ペースト(3212)”だった、など。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 当該協定が参照するHS版(代表例)
    • 日EU EPA:HS2017(PSR附属書がHS2017分類を前提)
    • RCEP:HS2022版PSRが2023年1月1日から実施(従来HS2012→HS2022に置換)
    • CPTPP:PSRがHS2012体系(HS2012 nomenclature)を前提
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 輸入申告は最新HS(日本では最新の実行関税率表)を使用しつつ、PSR参照は協定のHS版で見る、という“二重管理”が起きます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 旧HSでPSRを見ている場合は、WCO相関表(Correlation Table)で新旧コードを対応づけ、**「PSRの参照コード」と「通関申告コード」**を混同しない運用が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 第32類は溶剤・樹脂・添加剤が多く、非原産材料が多数になりがちです。BOMは「重量%」「固形分(不揮発分)」も併記すると、後工程の説明が楽になります。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕様書(組成・用途)、SDS、工程フロー、製造指図、原料原産証憑、コスト積上げ根拠を、協定の保存年限に合わせて保管。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設/分割3204.183204.19(その他の合成有機着色料)から、カロテノイド系着色料を独立させた扱い(相関表上の備考で示される)HS2017運用のまま3204.19で管理している場合、HS2022で6桁が変わる可能性。原産地規則/統計/社内コード連携に影響
HS2017→HS2022変更なし(相関表に当該改正の記載なし)第32類(上記以外)相関表(改正箇所の一覧)上、第32類で他の改正は示されていない基本は継続だが、国内細分(各国の8桁/9桁)改正や解釈運用は別途確認が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCOのHS2022↔HS2017相関表(Table I)において、3204.18の新設と3204.19からの分割が備考付きで示されています。
    • 日本税関が公開しているHS2022↔HS2017相関表(WCO作成表の公表形)でも同趣旨の記載が確認できます。
    • HS条文(Chapter 32の品目表)として、HS2022の第32類(3204に3204.18が存在する構造)を確認しています。
  • “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”
    • 相関表の「2017→2022」の該当行で、旧:3204.19 から新:3204.18 が派生した旨が示されているため、**号レベルの分割(新設)**と判断しました。
    • なお、相関表は改正があるコードを中心に列挙する形式のため、表に出てこないコードは“少なくとも大きな号構造改正が示されていない”と整理しています(ただし各国国内細分の改正は別途起こり得ます)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第32類に関係する範囲)
    | 改正の流れ | 主な追加・削除・再編 | 旧コード→新コード(または影響) | 概要 | 実務メモ |
    |—|—|—|—|—|
    | HS2007→HS2012 | 範囲調整(他章新設の影響) | (一部の)3201.90 等 → 2852.90 へ移り得る | HS2012で非化学的に単一でない水銀化合物のための2852.90が整備され、その結果、旧分類に含まれていた一部が移る可能性が相関表備考で示される | 第32類に限らず「旧コードに含まれていた例外品」が抜けるタイプ。SDS成分で水銀化合物が関与する場合は特に要注意 |
    | HS2012→HS2017 |(相関表上)第32類の号構造改正の記載なし | — | HS2012↔HS2017相関表(改正一覧)に第32類コードが見当たらない=少なくとも改正一覧に載る変更は示されていない | “変更なし”扱いでも、各国国内コードや解釈事例は更新され得る |
    | HS2017→HS2022 | 新設/分割 | 3204.19 → 3204.18(カロテノイド系)等 | 3204の一部が細分化(カロテノイド系の識別) | 統計、社内品目コード、PSR参照HS版の整合に影響 |

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):2液型塗料セットを“別製品”として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部注3(セットで混合して製品になる場合)を考慮せず、主剤と硬化剤を別分類で申告
    • 起きやすい状況:インボイスに主剤・硬化剤が別行、HSも別で書かれている
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、到着後の保管・危険物対応の遅延(一般論)
    • 予防策:セット梱包の証憑(写真、梱包明細、使用手順)を準備し、セットとしての補完関係を説明できるようにする
  • 事例名:アスファルト系シーリング材を3214で申告
    • 誤りの内容:注1(c)(歴青質マスチックは除外)に抵触
    • 起きやすい状況:“sealant/caulking”という用途名だけで3214と判断
    • 典型的な影響:分類差し戻し、関税率差があれば追徴、危険物/建材関連の追加確認
    • 予防策:SDSでビチューメン含有を事前確認し、2715候補も並行検討
  • 事例名:顔料カラーペーストを粉末顔料として申告
    • 誤りの内容:注3(塗料製造用の非水系分散液/ペースト等は3203〜3206に含めない趣旨)を見落とす
    • 起きやすい状況:品名が“pigment”、梱包がドラム缶で中間原料っぽい
    • 典型的な影響:HS更正、用途説明追加、場合により規制(危険物・SDS)確認の追加
    • 予防策:形状(液/ペースト)・媒体(水以外)・用途(塗料製造用)を示すTDS/カタログを添付
  • 事例名:樹脂溶液の溶剤比率を確認せず39類で申告
    • 誤りの内容:注4(溶剤>50%等の樹脂溶液が3208に含まれ得る)を無視
    • 起きやすい状況:“acrylic resin solution”としか書かれていない
    • 典型的な影響:分類差し戻し、評価書類の追加要求
    • 予防策:固形分・溶剤重量%を明記した仕様書をインボイスに紐付ける

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 第32類は化学工業製品が中心で、食品検疫の典型対象ではありませんが、用途が食品接触材や消費者向け化学品にまたがる場合は別途所管法令(例:用途規制)確認が必要です(一般論)。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • 第32類自体は通常CITESの中心ではありません(ただし、原料由来が動植物の場合は別管理が起こり得るため、個別確認)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 一部の化学品は規制対象になり得ますが、個別成分と用途で判断が分かれます(一般論)。
    • その他の許認可・届出(第32類で実務頻出)
      • 化審法(化学物質審査規制法):新規化学物質や指定物質等の枠組みがあり、輸入者側での確認が必要になり得ます。
      • PRTR(化管法):指定化学物質の排出・移動量把握と届出等の制度。塗料・インキは溶剤成分が対象に該当することがあります。
      • 毒物及び劇物取締法(毒劇法):毒物・劇物を販売/授与目的で輸入する場合、登録等が必要になり得ます(都道府県窓口等)。
      • 消防法(危険物):溶剤系塗料・インキ等は「引火性液体(第四類)」に該当し得ます。保管・運送・表示などの実務影響が大きいので、引火点等をSDSで確認します。
      • 安衛法(SDS/ラベル等):表示・SDS交付義務対象物質かどうかを確認し、SDSが日本語で整備されているか等をチェックします。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省:化審法、PRTR制度
    • 厚労省/関係機関:毒劇物、SDS・ラベル(職場のあんぜんサイト等)
    • 総務省消防庁:危険物の区分(消防法)
  • 実務での準備物(一般論):
    • SDS(最新版)、成分表(CAS/含有率)、用途説明(カタログ/TDS)、輸送区分情報(UN番号等がある場合)、ラベル表示案、保管条件資料

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 用途(着色/塗装/印字/充填・シール/なめし)
    • 形状(粉・液・ペースト・シート)
    • 媒体(水/非水)、溶剤重量%、固形分
    • 組成(樹脂、顔料、染料、添加剤、アスファルト有無)
    • 包装形態(小売用か、セットか)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1(a)(単一物質除外)・注3(分散体除外)・注4(溶剤50%超の樹脂溶液)・注1(c)(アスファルト除外)を再点検
    • 2液型/セットは部注3の要件に当てる
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “water-based / solvent-based”“pigment dispersion”“for paint manufacture”など、分類に効く語を品名に反映
    • SDS、TDS、写真をすぐ出せる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定のHS版(HS2012/2017/2022)を確認し、通関HS(最新)と混同しない
    • 相関表でコード対応づけ(WCO correlation)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • SDSに基づき:毒劇物、危険物、PRTR、安衛法(SDS/ラベル)を横断確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 32(品目表PDF)〔参照日:2026-02-20〕
    • WCO HS2022 Section VI Notes(部注)〔参照日:2026-02-20〕
    • WCO HS2022→HS2017 Correlation Table(Table I)〔参照日:2026-02-20〕
    • WCO HS2017→HS2012 / HS2012→HS2007 Correlation Table(Table I)〔参照日:2026-02-20〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説 第32類(32r.pdf)〔参照日:2026-02-20〕
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索ページ(HS版注意喚起含む)〔参照日:2026-02-20〕
    • 日本税関:HS2022↔HS2017相関表(公表PDF)〔参照日:2026-02-20〕
    • 外務省:RCEP HS2022版PSR採択(2023年1月1日運用開始の説明)〔参照日:2026-02-20〕
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの実施案内〔参照日:2026-02-20〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 日EU EPA:PSR附属書(HS2017前提の記載がある)〔参照日:2026-02-20〕
    • CPTPP:PSRがHS2012 nomenclatureである旨の公的ガイド(豪州当局)〔参照日:2026-02-20〕
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • 経産省:化審法〔参照日:2026-02-20〕
    • 経産省:PRTR制度〔参照日:2026-02-20〕
    • 厚労省関係:毒劇物(輸入時の登録等の注意)〔参照日:2026-02-20〕
    • 総務省消防庁:危険物の概要(消防法)〔参照日:2026-02-20〕
    • 厚労省:SDS/ラベル義務対象物質の調べ方等〔参照日:2026-02-20〕

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第31類:肥料(Fertilisers)

用語は次で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 家畜ふん堆肥・堆肥・植物性残さ由来肥料などの動物性・植物性肥料(3101)
    • 尿素(水溶液を含む)(3102.10)
    • 硫酸アンモニウム(3102.21)、硝酸アンモニウム(水溶液を含む)(3102.30)
    • 過リン酸石灰(単・重・三重)(3103.11/3103.19)
    • 塩化カリウム(3104.20)・硫酸カリウム(3104.30)
    • 家庭園芸用の小袋肥料(総重量10kg以下)やタブレット状肥料(3105.10)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 動物の血:第05.11項(=第31類には入らない)
    • 化学的に単一の化合物(原則):第31類注の例外(注2(a)・3(a)・4(a)・5)に当たらない限り、**第28類/第29類(無機/有機化学品)**側で検討
      • 例:肥料用途でも「単一化合物」として扱われるものがあり得ます(SDS・純度で要確認)。
    • 培養した塩化カリウム結晶(1個2.5g以上):第38.24項、塩化カリウムから製造した光学用品:第90.01項
    • 肥料成分(N/P/K)を主要成分として含まない“土壌改良材・調整材”:第31.05項「その他の肥料」の定義に当てはまらず、他章(例:鉱物・化学品・調製品)を検討
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 包装・形状:タブレット状 or 総重量10kg以下の包装なら、まず 3105.10を最優先で確認(“この類の物品”を含む点が重要)
    2. 化学的に単一の化合物か:単一化合物は原則除外。ただし、注で列挙された例外(尿素等、MAP/DAP等)は第31類に残る
    3. 肥料成分の組合せ(Nのみ/Pのみ/Kのみ/複合):3102/3103/3104/3105の基本分岐
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **10kg境界(総重量)**で3102〜3104/3101→3105.10へ“跳ぶ”のに気づかず、統計・原産地・社内マスタが崩れるケース
    • **MAP/DAP(りん酸一/二アンモニウム)**を、リン酸肥料(3103)や無機化学品(28類)として扱ってしまうケース(注で3105に指定)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注)が最重要です。第31類は、類注(注2〜4)が「この項に入るのは列挙した品目だけ」と強く限定しています。よって、似ているからといって通則2(b)等で勝手に範囲拡大できません。日本税関の通則解説でも、第31類注を例に「範囲を拡大して含めることはできない」旨が明示されています。
    • GIR6(号の選択):特に 3103(過リン酸塩のP2O5含有率)、3105(NP系の“硝酸塩+りん酸塩”有無)など、成分分析・化学形態がないと6桁が決まりません。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 用途:肥料として使用する種類か(注6の「その他の肥料」要件に直結)
    • 成分:N/P/Kの有無・組合せ、化学形態(硝酸塩・りん酸塩など)、含有率(P2O5等)
    • 状態:固体/液体、水溶液/アンモニア溶液、被覆(コーティング)等
    • 包装:総重量10kg以下か、タブレット状か(3105.10分岐)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:肥料用途(施肥)として使用する種類か?
    • YES → Step2へ
    • NO/不明 → 注6の要件を満たさない可能性。土壌改良材・調製品・化学品等(他章)を並行検討
  • Step2:第31類注1の除外に当たらないか?
    • 動物の血(05.11)→ 除外
    • 化学的に単一の化合物 → 原則除外(ただし注2(a)・3(a)・4(a)・5の例外は残る)
    • 培養KCl結晶(2.5g/個以上)やKCl光学用品 → 除外
  • Step3:包装・形状のチェック
    • タブレット状/同様の形状 または 総重量10kg以下の包装 → 3105.10
    • それ以外 → Step4へ
  • Step4:MAP/DAP(りん酸一/二アンモニウム)か?
    • YES(純粋か否かを問わず、両者の混合も含む)→ 3105(3105.40/3105.30)
    • NO → Step5へ
  • Step5:動植物性肥料(堆肥など)か?
    • YES → 3101
    • NO → Step6へ
  • Step6:ミネラル/化学肥料で、Nのみ/Pのみ/Kのみか、複合か
    • Nのみ(注2に列挙の範囲)→ 3102
    • Pのみ(注3に列挙の範囲)→ 3103
    • Kのみ(注4に列挙の範囲)→ 3104
    • NPK/NP/PK/その他(注6の「その他の肥料」要件を満たす)→ 3105(.20/.51/.59/.60/.90)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第31類 vs 第28/29類:単一化合物(SDSで高純度・一定組成)だと、第31類注1(b)で除外されることがあります(例外として尿素等は残る)。
    • 第31類 vs 第38類:肥料成分のない土壌調整材や、KCl培養結晶(2.5g/個以上)等で境界が出ます。
    • 3102/3103/3104 vs 3105:10kg以下包装(総重量)・タブレット、または複合(NPK/NP/PK)で3105へ。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3101動物性・植物性肥料(混合/化学処理を含む)堆肥、家畜ふん堆肥、植物残さ肥料、油かす系肥料動物の血(05.11)は除外。10kg以下包装・タブレットなら3105.10が先に来得ます。
3102窒素質の鉱物性・化学肥料尿素、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素+硝安溶液(UAN)類注2で列挙された範囲のみ。10kg以下包装等は除外(→3105.10)。
3103りん酸質の鉱物性・化学肥料過リン酸石灰、焼成リン鉱石、塩基性スラグ類注3で列挙された範囲のみ。過リン酸はP2O5含有率で3103.11/3103.19。CaHPO4はF≥0.2%条件に注意。10kg以下包装等は除外(→3105.10)。
3104加里質の鉱物性・化学肥料塩化カリウム、硫酸カリウム、粗の天然カリ塩類注4で列挙された範囲のみ。培養KCl結晶(2.5g/個以上)は除外(38.24)。10kg以下包装等は除外(→3105.10)。
3105NPK複合、その他肥料、及び「この類の物品のうち」小包装/タブレットNPK複合肥料、DAP、MAP、NP肥料、PK肥料、被覆尿素等の調製肥料、家庭園芸用小袋3105.10(タブレット/総重量≤10kg)が非常に強い分岐。MAP/DAPは注5で3105指定。「その他の肥料」は注6の要件(N/P/Kを主要成分として含む)あり。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 包装(総重量10kg以下)/タブレット状:3105.10
    • MAP/DAP:3105.40(MAPおよびMAP+DAP混合)、3105.30(DAP)
    • 過リン酸石灰(3103系):P2O5が 35%以上 → 3103.11、その他 → 3103.19
    • NP肥料(3105.5x):「硝酸塩+りん酸塩を含む」→ 3105.51、その他 → 3105.59
    • “単一化合物”判定:注1(b)の原則除外に当たると、そもそも第31類から外れます(例外:尿素等、MAP/DAP等)。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3102.xx(バルク) vs 3105.10(小包装/タブレット)
      • どこで分かれるか:総重量10kg以下包装か、タブレット等か
      • 判断に必要な情報:包装形態、総重量(グロス)、販売形態(家庭園芸用か等)
      • 典型的な誤り:ネット重量だけ見て10kg以下と誤判断、または小袋でも3102のままにしてしまう
    2. 3103.11 vs 3103.19(過リン酸塩)
      • どこで分かれるか:P2O5含有率35%の閾値
      • 判断に必要な情報:成分分析(P2O5%)、規格書
      • 典型的な誤り:「過リン酸=全部同じ」として一括で扱う
    3. 3105.30/3105.40(DAP/MAP) vs 3103/28類
      • どこで分かれるか:注5によりMAP/DAPは3105に固定
      • 判断に必要な情報:化学名称(SDS)、成分(NH4+とPO4の形態)、混合か
      • 典型的な誤り:リン酸肥料=3103に寄せる/化学品として28類に寄せる
    4. 3105.51 vs 3105.59(NP肥料)
      • どこで分かれるか:「硝酸塩(nitrates)とりん酸塩(phosphates)を含む」か
      • 判断に必要な情報:原料・反応系、イオン形態、SDS、配合表
      • 典型的な誤り:NとPが入っていれば一括で3105.59にしてしまう
    5. 3104.20(KCl) vs 注1(c)除外(培養KCl結晶等)
      • どこで分かれるか:培養結晶で1個2.5g以上等の条件
      • 判断に必要な情報:結晶の製法(培養か)、単体重量、用途(光学等)
      • 典型的な誤り:KClは全部3104.20と決め打ちする

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第31類が属する**第6部(化学工業等)**には、「複数成分を“セット”で提示し、混合して化学品(第6部または第7部の製品)を作るもの」の分類ルールがあります。条件(同梱・一緒に使うことが明確・相互補完)が揃うと、完成品(混合後の製品)側の見出しで分類します。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:**液体肥料のA液/B液(混合して使う)**を“セット”で輸入し、包装態様が部注の要件を満たす場合、個別に分けて分類するのではなく、混合後の「肥料」としての分類(第31類側)を検討する、という発想になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • セットが「肥料」ではなく、混合後に第7部(プラスチック等)や第38類(調製化学品)相当の製品になる場合、その完成品側見出しに寄る可能性があります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第31類に入らないもの(動物の血/単一化合物の原則除外/培養KCl結晶等)を明確化
    • 注2〜4:3102/3103/3104は「列挙品目だけ」。さらに3105の形状・包装(10kg等)にしたものは除外(=3105側へ)
    • 注5:MAP/DAPは(純否問わず)必ず3105
    • 注6:3105の「その他の肥料」は、肥料用途で、主要成分としてN/P/Kのいずれかを含むものに限定
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「その他の肥料」=肥料用途かつN/P/Kを主要成分として含む(注6)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 動物の血 → 05.11
    • 培養KCl結晶(一定条件) → 38.24、KCl光学用品 → 90.01
    • 単一化合物(例外以外) → 28類/29類側で検討

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:10kg以下包装/タブレット → 3105.10へジャンプ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):包装仕様、ラベル表示、総重量(グロス)、形状(粒状/錠剤等)
    • 現場で集める証憑:製品梱包仕様書、外装写真、SKU一覧、出荷形態(小売向け/業務向け)
    • 誤分類の典型:業務用と同じつもりで3102〜3104のまま申告、またはネット重量で判断してしまう
  • 影響ポイント2:単一化合物の原則除外(ただし注の例外は残る)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):SDS、CAS、純度、化学式、製造プロセス(反応生成物か単離精製品か)
    • 現場で集める証憑:SDS、CoA(分析証明)、規格書、製造工程図
    • 誤分類の典型:「肥料用途だから第31類」と決め打ちして、注1(b)のフィルターを飛ばす
  • 影響ポイント3:MAP/DAP固定(注5)と、分析値閾値(例:P2O5 35%)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):化学名称(MAP/DAPか)、P2O5含有率(過リン酸)、特定成分(例:CaHPO4のF含有率0.2%)
    • 現場で集める証憑:成分分析(P2O5、F等)、SDS、原料配合表
    • 誤分類の典型:MAP/DAPを3103に寄せる/過リン酸を分析なしで3103.11に寄せる

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:小袋の尿素(例:5kg×2袋)を3102.10のままにする
    • なぜ起きる:成分(尿素)だけ見て、包装条件(総重量10kg以下/タブレット)を後回しにする
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):3105は「この類の物品で、10kg以下包装/タブレット」を含むため、まず3105.10を確認します。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 仕様書:外装の総重量、販売単位(小売/業務)
      • 質問例:「輸入時の最小包装単位は?グロス何kg?」
  2. 間違い:DAP/MAPを3103(りん酸質肥料)や28類に分類してしまう
    • なぜ起きる:リン酸系=3103という思い込み、または単一化合物=28類という思い込み
    • 正しい考え方:注5によりMAP/DAP(純否問わず、混合含む)は3105に分類します。
    • 予防策:
      • SDSで化学名称を確定(MAP/DAPか)
      • 質問例:「製品は“りん酸一アンモニウム/二アンモニウム”そのものですか?混合比は?」
  3. 間違い:“肥料用途の単一化合物”を第31類に入れてしまう
    • なぜ起きる:用途優先で、注1(b)の「単一化合物は原則除外」を見落とす
    • 正しい考え方:単一化合物は原則第31類から外れます(ただし注2(a)・3(a)・4(a)・5で例外指定されたものは第31類)。
    • 予防策:
      • SDS・純度・CASで「単一化合物か/調製品か」を先に判定
      • 質問例:「純度は何%?副成分は工程由来か、意図的添加か?」
  4. 間違い:被覆尿素(硫黄/樹脂コーティング等)を“尿素だから3102.10”と決める
    • なぜ起きる:基材が尿素なので3102に寄せたくなる
    • 正しい考え方:3102は類注2の列挙品目に限られ、添加・被覆の態様によっては「その他の肥料(3105.90)」側が現実的になります。日本税関の事前教示公開事例でも、尿素に硫黄等を被覆した肥料が3105.90-000とされている例があります(国内コード)。
    • 予防策:
      • 被覆材(硫黄、樹脂、ワックス等)の種類・割合を把握
      • 質問例:「被覆目的は徐放性?被覆材の重量%は?」
  5. 間違い:過リン酸塩を3103.11(P2O5 35%以上)と決め打ち
    • なぜ起きる:品名(トリプル過リン酸等)だけで高濃度だと思い込む
    • 正しい考え方:3103.11/3103.19はP2O5含有率35%で分かれます。分析値が必要です。
    • 予防策:
      • 成分分析(P2O5%)を調達
      • 質問例:「保証成分(P2O5)は何%?測定方法は?」
  6. 間違い:NP肥料を3105.51/3105.59で取り違える
    • なぜ起きる:NとPが入っていれば同じ、と見てしまう
    • 正しい考え方:3105.51は「硝酸塩とりん酸塩を含む」、3105.59はそれ以外です。化学形態がポイントです。
    • 予防策:
      • SDSで硝酸態N/りん酸態Pの有無を確認
      • 質問例:「窒素源は硝酸塩系?アンモニア態?尿素態?」
  7. 間違い:リン酸肥料(3103)に、無機非肥料成分を混ぜた製品を“3105”に寄せてしまう
    • なぜ起きる:「混合=3105」と短絡する
    • 正しい考え方:類注3(c)は、列挙品目(例:重過リン酸石灰)と白亜・石膏等の“肥料でない無機物”の混合でも3103に入り得ることを示します。日本税関の分類事例でも、重過リン酸石灰等を混合した肥料が3103.90(国内コード3103.90-000)とされています。
    • 予防策:
      • “混ぜた相手”が何か(白亜/石膏/他無機)を確認
      • 質問例:「混合相手は肥料成分か、担体(非肥料)か?」
  8. 間違い:堆肥等(3101)を、10kg以下の小売包装でも3101のままにする
    • なぜ起きる:3105が“鉱物/化学肥料の見出し”に見え、小売包装規定が3101にも及ぶと気づかない
    • 正しい考え方:3105.10は「この類の物品(=Chapter 31全体)」の小包装/タブレットを含むため、3101相当品でも包装によって3105.10を検討します。
    • 予防策:
      • “家庭園芸用”SKUは別管理(3105.10候補)
      • 質問例:「同一製品で業務用(20kg)と小売用(5kg)が混在していない?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。例えば、同じ尿素系でも小袋(3105.10)とバルク(3102.10)でPSRが変わり得るため、誤分類すると原産性判断(CTH/CTSH/RVC等)の前提が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 最終製品HSだけでなく、主要原材料のHSもCTC判定の前提になる
    • “肥料”のつもりで進めたが、注1(b)で第28/29類に移り、PSRが別物になる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定・制度によって参照するHS版が異なることがあります。日本税関のPSR検索等でも、協定が参照するHS版を意識して検索する必要がある旨が示されています。
  • 第31類で実務上効く例(ズレの具体例)
    • HS2012では3103.10(過リン酸塩)HS2017以降は3103.11/3103.19に分割されています。協定がHS2012参照のPSRであれば、旧コード(3103.10)側で規則が書かれている可能性があるため、トランスポジションが必要です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM):原材料の原産国、HS(可能なら6桁以上)、含有比率
  • 原価情報:RVC計算の基礎(協定で定義が異なるため、計算式と対象コストを協定に合わせる)
  • 工程情報:混合・造粒・被覆などで「製造」評価がどう変わるか
  • 証明書類・保存:自己申告/第三者証明の要否、保存年限(協定・国内運用で要確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(実務上の号体系差分なし)3101〜3105WCOのChapter 31(注・見出し/号)ベースで差分が見当たりませんHS更新対応は比較的軽い(ただし国内細分・税率・他法令は別途確認)
(参考)HS2012→HS2017分割3103.10 → 3103.11/3103.19過リン酸塩(superphosphates)をP2O5含有率35%で分割FTA/EPA等がHS2012参照だとトランスポジションが必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • HS2017→HS2022について
    • 根拠資料として、WCOが公開するHS2017版とHS2022版のChapter 31(注および見出し/号の列挙)を突合しました。その結果、3101〜3105の範囲で条文・号体系に差分が見当たらないため、「変更なし」と整理しています。
  • HS2012→HS2017について(参考として重要)
    • WCO相関表(HS2017→HS2012)において、3103.10が3103.11/3103.19へ分割され、3103.11はP2O5 35%以上を対象とする旨が明示されています。
    • 併せて、HS2012版のChapter 31では3103.10が単一号、HS2022版では3103.11/3103.19となっていることを確認しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第31類(肥料)について、主要な再編が確認できるポイントを整理します(HS6桁中心)。

期間主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(目安)補足
HS2007→HS2012主要な再編なし(少なくとも3103の構造は維持)3103.10(継続)HS2007/2012のChapter 31に3103.10が存在
HS2012→HS20173103.10の分割3103.10 → 3103.11(P2O5≥35%)3103.19(その他)WCO相関表で分割理由(監視・統計目的の細分化)が説明
HS2017→HS2022主要な再編なし3101〜3105(継続)HS2017/2022のChapter 31で同一体系

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):小袋肥料なのにバルクコードで申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):3105.10の包装要件を見落とし(見出し文言の優先)
    • 起きやすい状況:業務用(20kg)と家庭園芸用(1〜5kg)が同一マスタで運用
    • 典型的な影響:申告更正、統計・協定税率管理の修正、社内PSR判定のやり直し
    • 予防策:SKU単位で包装(グロス)を必須属性化、輸入前レビューで3105.10チェック
  • 事例名:MAP/DAPを3103で申告
    • 誤りの内容:注5(MAP/DAPは3105へ)を無視
    • 起きやすい状況:品名が「リン酸肥料」「リン安」等で、実体がMAP/DAP
    • 典型的な影響:税番更正、原産地規則(PSR)の再評価、商品マスタの是正
    • 予防策:SDSの化学名でMAP/DAP判定→3105固定、品名ルール(和名+化学名併記)
  • 事例名:単一化合物を“肥料だから31類”で処理
    • 誤りの内容:注1(b)(単一化合物の原則除外)を見落とし
    • 起きやすい状況:化学メーカー品で高純度、しかし用途が肥料
    • 典型的な影響:税番更正、規制該当性(化学品側の法令)確認のやり直し
    • 予防策:SDS/純度で「単一化合物か」を最初に判定、注の例外(尿素等)と照合
  • 事例名:A液/B液(混合して使う肥料)を別々に申告して整合が崩れる
    • 誤りの内容:部注(セット)・実態(混合して使用)と申告形態が不整合
    • 起きやすい状況:物流上A/Bを別品番で管理し、通関も別建てにしてしまう
    • 典型的な影響:説明資料の追加提出、審査長期化
    • 予防策:提示形態(同梱/セット)を整理し、混合後製品の分類根拠を準備

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第31類は動植物由来のもの(堆肥等)も含むため、成分・由来によっては別途(検疫/環境/廃棄物系)論点が出ることがあります。ここは個別品目で行政照会が必要です(一般論)。
  • その他の許認可・届出(日本の肥料制度)
    • 肥料を生産・輸入・販売する場合、原則として「肥料の品質の確保等に関する法律」に基づく登録・届出・表示が必要とされています。
    • 輸入通関に際しても、肥料の種類(普通肥料/外国生産肥料/指定混合肥料/特殊肥料)に応じて、登録証・証明書等を輸入関係書類と対査確認する運用が示されています。
    • 輸出入で証明書が必要な場合、農林水産省の案内に沿って申請する枠組みがあります。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 化学品・肥料の一部は用途・成分によって別途確認が必要な場合があります。輸出時は社内の該非判定フロー(SDS・成分・用途)に載せてください(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 農林水産省:肥料制度、輸入時の税関確認、輸出入証明
    • 税関:品目分類(通則・解説)、事前教示(後述)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 肥料法関連:登録証/仮登録証/各種証明書、製品名の整合(インボイス品名と登録名)
    • 分類根拠:SDS、成分表(N/P/K、P2O5、F等)、配合・製造工程、包装仕様(グロス)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 化学名(MAP/DAP等)、SDS、CAS、純度
    • N/P/K含有(保証成分)、P2O5、必要ならF含有(CaHPO4系)
    • 製造工程(混合・造粒・被覆・溶液化)
    • 包装仕様:最小販売単位、総重量(グロス)、タブレット/スティック等の形状
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1の除外(血、単一化合物、培養KCl結晶等)を再点検
    • 3102〜3104が「列挙品目のみ」である点を再点検(通則解説の指摘も踏まえる)
    • 3105.10(10kg以下/タブレット)に当たらないか再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名:一般名+化学名(例:monoammonium phosphate)
    • 同一製品の包装違い(20kg/5kg)を同一税番で運用していないか
    • 税関説明用:写真、SDS、成分保証書、包装仕様書
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012等)を確認し、必要ならトランスポジション(3103.10→3103.11/19)
    • BOM、原産国、工程、RVC/CTCの根拠資料を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 肥料法:登録・届出の要否、輸入時の証明書類の準備
    • 物流:危険物該当がないかSDSで確認(一般論)

12. 参考資料(出典)

  • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 31 “Fertilisers”(注・見出し/号) (参照日:2026-02-20)
  • WCO HS Nomenclature 2017:Chapter 31 “Fertilisers” (参照日:2026-02-20)
  • WCO HS Nomenclature 2012:Chapter 31 “Fertilisers” (参照日:2026-02-20)
  • WCO HS Nomenclature 2007:Chapter 31 “Fertilisers” (参照日:2026-02-20)
  • WCO HS2022:Section VI Notes(セットの扱い等) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:関税率表の解釈に関する通則(解説。第31類注を例示) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:関税率表解説 第31類(類注) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:HS2017-HS2012 相関表(3103.10分割の根拠) (参照日:2026-02-20)
  • 農林水産省:肥料の品質と安全性の確保(肥料制度の全体像) (参照日:2026-02-20)
  • 農林水産省:輸入肥料の税関確認事務(通達・確認書類の考え方) (参照日:2026-02-20)
  • 農林水産省:肥料の輸出・輸入証明 (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:分類事例(肥料 3103.90 の例。国内コード記載あり) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:Advance Classification Ruling System(事前教示制度・英語) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:文書による事前教示照会書 記載例(品目分類) (参照日:2026-02-20)
  • 日本税関:PSR検索(HS版の違いに留意する旨) (参照日:2026-02-20)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

センサー類のPSRリスクと実務チェック

HSコード見直しから始める、EPA・FTA原産地管理の失敗を減らす実務

センサーは高付加価値で、部材点数も多く、サプライチェーンも国際分業になりやすい製品です。その結果、EPA・FTAを使った特恵関税の活用では、品目別原産地規則(PSR)の確認と運用でつまずきやすい代表格でもあります。
PSRはProduct-Specific Rulesの略で、協定・HSコードごとに定められた原産地基準です。多くの現場では、最終製品が非原産材料を含むケースが一般的であり、その場合にPSRの達成可否が特恵適用の成否を左右します。

この記事では、センサー類に特有のPSRリスクを深掘りしつつ、現場でそのまま使える実務チェックを、ビジネスマン向けに噛み砕いて整理します。結論から言うと、センサー類のPSR対策は、HSコードの見直しと変更管理を起点に、証拠と業務フローを先に固めた企業が勝ちます。


PSRとは何か

なぜセンサー類でリスクが跳ね上がるのか

PSR(品目別原産地規則)は、協定の原産地規則章とセットで運用され、協定ごとに附属書(Annex)に整理されています。たとえばRCEPでは附属書三A、TPP11(CPTPP)では附属書三-DにPSRが置かれています。

またPSRは大きく次のような型に整理できます。
関税分類変更基準(材料と最終製品のHSコードが一定桁で変わること)
付加価値基準(域内原産割合などが一定以上)
加工工程基準(特定の工程を行うこと) (ジェトロ)

センサー類で難しいのは、次の条件が同時に起こりやすいからです。

  1. 最終製品のHSコードが揺れやすい
    センサーは、何を測るか、どこまでの機能を持つか、単体かモジュールか、で分類の争点が変わります。HSコードが変わると適用されるPSRも変わるため、分類のブレがそのままPSRリスクになります。
    さらに、税関での輸入申告は最新のHSコードを使う一方、協定のPSRが採用するHS年版は協定ごとに異なる点が、混乱の火種になります。 (税関ポータル)
  2. 部材の調達先が多国籍になりやすい
    センサーは、半導体、基板、受動部品、ハーネス、筐体、梱包材などが混在します。PSRが関税分類変更基準型の場合、非原産材料がどのHSに属するかを、部材レベルで押さえないと判定が崩れます。
  3. 設計変更や派生品が頻繁に起きる
    量産途中の部材変更、仕入先変更、型番派生、無線追加、ファームウェア変更などは、分類とPSRの双方に影響し得ます。
    実務では「同じ製品の延長」として扱われがちですが、原産地管理では別製品として再判定が必要になる場面が少なくありません。

センサー類で実際に起こるPSRリスク

現場がつまずく典型パターン

1. HSコードが誤っている、または協定のHS年版とズレている

PSRはHSコードを起点に読むため、分類が違えば、参照するPSR自体が間違います。
さらに実務で頻発するのが、協定のPSRが採用するHS年版と、社内マスタや相手国通関で運用されるHS年版がズレる問題です。協定で求められる年版(例:RCEPのPSRはHS2012ベースとされる)と、実際の通関・システムが採用する年版が一致しないと、書類のHS記載や照合でトラブルが起きます。 (税関ポータル)

実務の示唆
PSR確認は「協定が採用するHS年版で行う」、一方で「輸入申告は最新HSで行う」という二重運用を前提に、読み替えルールと証拠を整える必要があります。 (税関ポータル)

2. 部材のHS分類を置き去りにして、最終品のHSだけで判定してしまう

関税分類変更基準型では、非原産材料のHSが重要です。
しかし現場では、BOMの部材にHSが付いていない、あるいは「購買都合の分類」になっていて根拠が薄い、といった状態でPSR判定が進みがちです。これが監査や事後検証で弱点になります。

3. 軽微な工程の扱いを見落とす

RCEPなどでは、軽微な工程・加工に関する規定があり、単純な包装、選別、単純組立などは原産性を与えない方向で整理されています。センサーでも、最終工程が実質的にラベル貼付や梱包、動作検査だけに近い場合は注意が必要です。

4. 付属品・梱包材・予備部品の扱いがブレる

協定には、梱包材料・包装材料、付属品・予備部品・工具などの扱いが定義されています。センサー類は、ケーブル、取付治具、アダプタ、保護キャップ、校正証明書同梱などが起こりやすく、どこまでを同一の産品として扱うかで判定や記載が揺れます。

5. 直接積送や第三者インボイスの条件を実務が追いついていない

ハブ倉庫経由、委託販売、三国間取引などが増えるほど、直接積送や第三者インボイスの取り扱いを満たすための証拠管理が重要になります。RCEPの原産地手続にも、直接積送や第三者の仕入書に関する規定が並んでいます。


おすすめの実務アプローチ

センサー類のPSRを崩さない運用設計

ここからは、現場が回る形に落とし込むための実務手順です。ポイントは、判定そのものよりも、判定を再現できる形で残すことです。

ステップ1 最終製品のHSコードを固める

社内合意より、当局が尊重する根拠を優先する

センサー類は分類の争点が起こりやすいため、早い段階で「税関に根拠を寄せる」ことが効果的です。日本の税関には、輸入予定貨物の関税分類を文書で照会し、文書で回答を受けられる事前教示制度があります。文書回答は原則3年間尊重される旨が案内されています。

実務のすすめ
社内の分類会議で結論を急ぐより、争点がある品番は優先順位を付け、事前教示や当局照会を組み込む方が、結果的にPSRも安定します。

ステップ2 対象協定を決め、PSRを協定の年版HSで確認する

協定ごとにHS年版が違う前提で、検索ルールを固定する

税関のPSR検索画面でも、協定によって採用しているHSコードのバージョンが異なり、違う年版で検索すると結果が誤る可能性がある旨が注意喚起されています。 (税関ポータル)

加えて、RCEPのようにPSRが特定のHS年版で規定されるとされるケースもあります。実務では、社内の品目マスタが最新HS、協定PSRが旧年版HS、相手国通関がまた別年版、という状況が起こり得ます。 (ジェトロ)

実務のすすめ
協定別に次をセットで持ちます。
協定が採用するHS年版
読み替えに使う相関表の管理方法
社内マスタの最新版HSとの紐付けルール
これを最初に決めると、後工程の判定と証拠が整います。

ステップ3 PSRの型を見極め、BOMを判定に耐える粒度にする

PSRが関税分類変更基準型か、付加価値基準型か、加工工程基準型かで、必要なデータが変わります。PSRの基本類型や、HSコード変更の桁の考え方(類・項・号)も、公的機関の解説資料で整理されています。 (ジェトロ)

実務のすすめ
BOMのうち、原産性に効く部材から順に整備します。
高額部材
機能の中核部材
分類が章またぎになりやすい部材
サプライヤー変更が頻繁な部材
センサー類は、ここを外すと付加価値計算も関税分類変更基準の判定も、どちらも崩れます。

ステップ4 証明手続の種類に合わせて、社内の提出物を設計する

自己申告は、書類を減らす制度ではなく、説明責任を社内に引き寄せる制度

日EU・EPAは自己申告制度のみが採用され、輸出者・生産者・輸入者が作成できる枠組みが示されています。税関が追加的な説明資料を求め得ることも整理されています。

実務のすすめ
自己申告を採用する協定ほど、次の内製が重要です。
原産性説明パッケージ(判定ロジック、BOM、根拠資料の束)
型番単位の判定書
変更履歴と再判定の記録
営業や物流が急いでも、これがあると現場が止まりません。


センサー類向け

おすすめのPSR実務チェックリスト

以下は、センサー類で特に事故が起きやすい観点に絞ったチェックです。監査や事後検証を想定し、証拠として残る形を意識しています。

区分チェック項目失敗しやすいポイント実務の落としどころ
HSコード最終製品の分類根拠が、仕様書と整合しているか型番名やカタログ用途だけで分類している仕様書、構造図、機能説明、入出力、使用環境を分類根拠に紐付ける
HS年版協定のPSRが採用するHS年版で検索しているか最新HSでPSR検索してしまう協定別に検索年版を固定し、読み替え表を社内標準にする (税関ポータル)
PSR特定対象協定と対象品番のPSRを、証拠付きで特定できるか口頭共有のみで、後から追えないPSRの条文・附属書参照情報を判定書に貼り付ける
BOM非原産材料の範囲が定義されているかサプライヤー情報が曖昧、材料原産地が未確認サプライヤー宣誓や原産性情報の取得フローを購買に組み込む
分類変更基準材料HSの根拠があるか部材HSが社内都合で、根拠が弱い争点部材は優先順位を付け、当局照会や根拠資料を蓄積する
付加価値基準計算式、範囲、為替、原価データの出所が統一されているか部署ごとに原価の定義が違う経理と貿易管理で定義書を一枚にまとめる (ジェトロ)
軽微工程工程が軽微工程に該当しないか実態が包装や検査中心工程フロー図と作業標準で実態を説明できるようにする
付属品・梱包ケーブルや治具、梱包材の扱いを協定ルールに沿っているか同梱品の扱いが案件ごとにブレる同梱パターンを製品群ごとに標準化し、例外は申請制にする
物流条件直接積送の証拠を確保できるか倉庫経由で証拠が消えるB/Lや倉庫証明の入手ルールを物流委託先と契約に入れる
組織運用設計変更・仕入先変更時に再判定が走る仕組みがあるか変更が現場で止まり、判定が更新されない変更管理のトリガーをERPや承認フローに埋め込む
根拠確保当局の事前教示など、分類の安定化策を使っているか係争リスクがある品番を放置重要品番は事前教示を優先し、根拠を外部に寄せる

経営・管理職が押さえるべき要点

PSRは現場の努力だけでは安定しない

PSR運用は、貿易実務担当者の経験や頑張りだけに依存すると、組織が大きくなるほど破綻します。センサー類は特に、製品ライフサイクルの中で変更が多く、分類とPSRの再判定が頻繁に必要になるためです。

管理職として押さえたいのは次の3点です。

  1. HSコードをマスタではなく、経営リスクの入力値として扱う
    HSが動けば、PSR、関税コスト、原産地証明、顧客との価格交渉まで連鎖します。HSコード見直しを単なる事務作業にしないことが重要です。
  2. 判定結果より、判定プロセスと証拠の整備に投資する
    税関や取引先が求めるのは、説明可能性です。協定上、追加説明資料を求め得る枠組みも整理されています。
  3. 協定別の運用差を最初から前提にする
    RCEP、TPP11、日EU・EPAなどで、原産地の考え方や証明手続の設計が異なります。協定の違いを吸収する共通の社内フォーマットを持つと、現場の負担が下がります。

参考情報

読み間違いを減らすために、まず当たるべき一次情報

  • 税関:原産地規則とは (税関ポータル)
  • 税関:原産地基準・証明手続 (税関ポータル)
  • 税関:PSR検索画面(協定ごとのHS年版注意) (税関ポータル)
  • 税関:RCEP協定 原産地規則について(概要)
  • 税関:TPP11(CPTPP)原産地規則について(概要)
  • 税関:日EU・EPA 自己申告制度について(概要)
  • JETRO資料:PSRの3類型、HS変更桁の考え方 (ジェトロ)
  • 税関:関税分類の事前教示制度(パンフレット)
  • JETRO:HS年版の違いに起因するトラブル(RCEP運用上の留意) (ジェトロ)

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の取引、製品、HSコードの分類、PSR判定、特恵関税の適用可否を保証するものではありません。実務への適用にあたっては、最新の協定文、税関の公表資料、社内の事実関係に基づき、必要に応じて通関業者・専門家等へご相談ください。

EVバッテリーのPSRリスクとFTA影響

ビジネスを守る原産地ルールの読み解き方と実務の打ち手

はじめに

EVバッテリーは、原材料からセル、モジュール、パックまで多国間で分業されやすく、関税メリットを狙ってFTAを使うほど、原産地規則の難易度が上がります。ポイントは、輸送ルートではなく、どこで何がどの程度加工され、どの国の原産と認められるかです。日本の税関も、優遇関税を受けるには、協定で定められた原産地要件を満たし、必要書類などの手続きを完了することが前提だと整理しています。(税関ポータル)

本稿では、EVバッテリーのPSR(品目別原産地規則)を軸に、FTAの影響がどこで利益にも損失にも変わるのかを、ビジネス判断に落とし込んで解説します。

PSRとは何か

PSRは関税ゼロの条件が書かれた仕様書

PSRは、品目(HSコード)ごとに、非原産材料を使って製造した場合でも原産品と認められる条件をまとめたものです。RCEPの案内でも、PSRはHSコード単位で整理された基準であり、これを満たせば原産品として扱われると説明されています。(税関ポータル)

CTH、CTSH、RVCを短時間で理解する

PSRで頻出する代表的な条件は大きく2系統あります。

1つ目は関税分類変更(CTC)です。たとえばRCEPの定義では、CTHは4桁の見出しレベル、CTSHは6桁の小見出しレベルで、非原産材料のHS分類が完成品と十分に変わることを求めます。(外務省)

2つ目は域内原産割合(RVC)です。RCEPではRVC40はRVCが40%以上であることを意味すると定義されています。(外務省)

実務上は、同じ製品でも協定ごとに採用する基準や計算の前提が変わり、合否が変わるのが落とし穴です。

HSコードがずれるとPSRもずれる

PSRはHSコードを前提に書かれます。したがって、分類がずれると、満たすべきPSRそのものが変わり、原産地判定が崩れます。

リチウムイオン蓄電池は、国連統計局のHS分類でも、6桁小見出し850760として整理されています。(UNSD)

さらに、HS自体は改正サイクルがあり、世界税関機構はHSの改正が5年サイクルで進むことを明記しています。(世界 Customs Organization)
つまり、製品は変わっていないのに、コード体系が動くことで、協定側のPSRの読み替えや運用が必要になります。

主要FTAでEVバッテリーPSRはどう違うか

ここからが本題です。EVバッテリーのPSRは、協定によって要求水準とクリア方法が違います。違いを把握しておかないと、同じBOMでも、ある国向けは関税ゼロ、別の国向けは関税発生という事態が起きます。

RCEP

RCEPの品目別規則(HS2012ベース)では、リチウムイオン(8507.60)のPSRとして、CTSHまたはRVC40が示されています。(外務省)
この形は実務的に示唆が大きく、6桁レベルで非原産材料を振り替える設計にするか、価格要素で40%を超える設計にするか、どちらかで勝負できます。

注意点として、RCEPの品目別規則自体はHS2012に基づくことが注記されています。(外務省)
一方で日本の外務省は、2023年1月1日以降の原産地証明では、HS2022に移した品目別規則に基づくべき旨を案内しています。(外務省)
この読み替え対応を後回しにすると、現場が旧HSで証明を作り、通関で差し戻されるリスクが現実化します。

CPTPP(TPP11)

CPTPP(TPP11)の品目別規則では、電気蓄電池(8507.30から8507.80の範囲に該当)について、基本は他の見出しからの変更、もしくはRVCを一定以上にするという選択肢が示されています。具体的には、域内原産割合を積上げ方式で30%以上、または控除方式で40%以上などの条件が記載されています。(グローバル affairs カナダ)

RCEPが8507.60単独でCTSHまたはRVC40を掲げているのに対し、CPTPPは範囲指定と複数のRVC計算方法を含む設計で、設計自由度が上がる一方、計算の前提整備がない企業は運用が破綻しやすい構造です。

日EU・EPA

日EU・EPAの品目別規則(HS2017ベース)では、85.03から85.18の範囲に対し、CTHに加えて、非原産材料比率の上限やRVC基準の選択肢が提示されています。(外務省)
8507(電気蓄電池)はこの範囲に含まれるため、BOMの組み方次第で、関税分類変更を軸にするのか、価額基準を軸にするのか、戦い方が変わります。

ここで効いてくるのが、どの価額ベースで計算するかです。協定によって、FOBや工場出荷価格などの前提が変わり得るため、経理と貿易実務が同じ数字を見ていないと、社内で合格と思っていたものが輸入国で否認されることがあります。

EU・英国(TCA)

EUと英国のTCAでは、EVとバッテリーの原産地要件が段階的に厳しくなる設計でした。2023年末に、より厳しいルールの適用が2024年から始まるのを避け、現行ルールを2026年末まで延長することが合意されています。EU理事会は、延長により、要件を満たさない場合に発生し得た10%関税の適用を回避できると説明しています。(欧州理事会)
英国政府も、延長によりEV取引への10%関税を回避する趣旨を公表しています。(GOV.UK)

ただし、これは猶予であって免除ではありません。パートナーシップ・カウンシルの決定は、2027年1月1日から協定の所定の品目別原産地規則が適用されること、さらに2032年1月1日までは当該分野の品目別原産地規則の追加変更をできない枠組みを示しています。(GOV.UK)
つまり、2027年に向けた対応は先送りできず、しかも再延長を当てにした戦略が組みにくいのが現実です。

PSRリスクはどこで起きるか

EVバッテリーのPSRリスクは、単なる貿易実務の話ではなく、原価、投資回収、顧客契約に直結します。典型的な故障点は次のとおりです。

1. HS分類がサプライチェーンの実態に追いつかない

セル、モジュール、パック、BMS、熱管理部材など、構成と用途の説明が不足すると、社内と通関現場の分類がぶれます。分類がぶれればPSRの読みがぶれ、原産地判定が成立しません。
対策としては、品目定義書を技術部門と共通化し、輸出入国での事前教示の活用を検討することが有効です。

2. CTC要件は部材の6桁管理が必要になる

RCEPではCTSHが6桁変更を意味すると定義されています。(外務省)
実務では、主要材料だけでなく、非原産材料の6桁まで揃えないと判定できないケースが出ます。ここで部材マスターが4桁止まりだと、判定が止まります。

3. RVCは計算ロジックよりもデータが壊れやすい

RVCは計算式そのものより、前提データの整合が崩れやすい領域です。為替、移転価格、値引き、リベート、歩留まり、製造間接費、スクラップ控除などが、統一されていないと数値が揺れます。
さらにCPTPPのように複数の算定方法がある場合、どの方式で統一するかを、監査対応も見据えて決める必要があります。(グローバル affairs カナダ)

4. 最小限の加工に該当すると失格になる

RCEPの案内でも、PSRを満たしていても、行った作業が単純な作業に該当する場合は原産品と認められない旨が説明されています。(税関ポータル)
バッテリー領域では、ラベリングや梱包、単純な組付けだけで原産地を作ろうとすると、この論点に刺さりやすくなります。

5. 書類不備は技術や原価とは別軸で否認される

日本税関の整理でも、優遇を受けるには、原産品要件だけでなく必要書類の提出などの手続きが必要です。(税関ポータル)
現場では、調達先の証明の形式違い、サプライヤー宣誓書の更新漏れ、保存期間の未対応など、地味な作業が最終的な否認につながります。

FTA影響をどうビジネスに落とすか

PSRの影響は、関税率の差額だけではありません。意思決定者が押さえるべきは、次の3レイヤーです。

レイヤー1 関税コストの直接影響

EU・英国のように、要件未達で10%関税が現実に発生し得るケースでは、利益率が一気に溶けます。延長措置の背景説明としても、要件未達の場合に10%関税が課され得る点が明記されています。(欧州理事会)

レイヤー2 供給網の設計制約

RCEPの8507.60がCTSHかRVC40であることは、6桁で見た材料の出自と、価額の積み上げのどちらでも戦えることを意味します。(外務省)
一方で、EU・英国の2027年ルールが避けられない構造である以上、欧州域内のセルや正極材などへの投資判断が、製造拠点戦略そのものになります。(GOV.UK)

レイヤー3 顧客契約と価格改定の論点

顧客が関税ゼロ前提で調達単価を組んでいる場合、原産地否認は値上げ交渉ではなく、契約不履行の争点になり得ます。したがって、営業契約には、原産地の前提条件、否認時の関税負担の帰属、サプライヤー情報提供義務を、できるだけ具体に入れておく必要があります。

すぐ使える対応ロードマップ

最後に、担当者任せにしないための、管理職向けの進め方を提示します。

1. 取引ルート別に、対象FTAとPSRを棚卸しする

国別ではなく、出荷ルートと顧客別で整理します。理由は、同じ国向けでも、顧客のサプライチェーン要求やインコタームズで、原産地の計算前提が変わるためです。

2. HS分類とBOMを、原産地判定の粒度で揃える

RCEPのCTSHのように6桁が論点になる協定がある以上、部材マスターを6桁まで保守できる体制が必要です。(外務省)
さらに、HS改正は5年サイクルで起きるため、品目コードの読み替えとPSRの再チェックを、定例業務に組み込むのが現実的です。(世界 Customs Organization)

3. サプライヤー宣誓書を、交渉カードにする

サプライヤーに原産情報を出してもらえないと、PSRの計算ができません。購買契約に、データ提出、更新頻度、監査対応を組み込み、提出しない場合の不利益も明確化します。

4. 監査対応を前提に、計算方式を固定する

CPTPPのように複数方式がある協定では、どの方式を社内標準にするかを決め、経理と物流が同じ数字を参照する仕組みを作ります。(グローバル affairs カナダ)

5. 2027年を見据えたEU・英国シナリオを今期中に作る

EU・英国は2026年末までが猶予で、2027年から所定ルール適用、2032年まで追加変更が困難という枠組みです。(GOV.UK)
この条件下では、ギガファクトリー立地、正極材の域内調達、セル内製化など、供給網投資の回収ロジックとPSRを同じ資料で説明できることが、経営会議での説得力になります。

まとめ

EVバッテリーのPSRは、貿易部門の手続き問題ではなく、供給網と利益率を左右する設計条件です。RCEPやCPTPP、日EU・EPAでは、CTCとRVCの選択肢の出方が異なり、同じ製品でも協定ごとに勝ち筋が変わります。(外務省)
また、EU・英国は2027年に向けて、猶予はあっても先延ばしが難しい枠組みです。(欧州理事会)

優遇関税を取りに行く企業ほど、PSRをコスト削減の話で終わらせず、原産地を前提にBOMと調達と投資を再設計することが、競争力になります。

免責事項:本記事は、公開情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、法務・税務・通関実務に関する助言や保証を行うものではありません。制度や運用は変更される可能性があり、また個別取引の事実関係により結論が異なる場合があります。実際の判断や申告にあたっては、最新の公的資料の確認および、通関業者・弁護士・税理士等の専門家へご相談ください。

HS2022 第30類:医療用品(Pharmaceutical products)

用語の対応を統一します(本資料内の呼び方):

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ワクチン(人用・動物用)(3002.41/3002.42)
    • 抗体製剤(例:単クローン抗体)などの免疫産品(3002.13〜3002.15 等)
    • 医薬品(治療/予防目的):バルク(非小売/非投与量)=3003、投与量・小売包装=3004
    • 医薬品を含浸したガーゼ/絆創膏等(3005)
    • 救急箱・救急袋、滅菌縫合材、造影剤(患者投与)等の「注4限定品」(3006)
    • 細胞培養(cell cultures)・細胞治療製品(3002.51 等)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • サプリ・強化食品・健康飲料など(静脈注射用栄養剤を除く):第4部(食品)側へ(例:21類等)
    • ニコチン含有の禁煙補助(ガム・パッチ等)24.04
    • 診断用試薬(特に検体検査用の試薬・キット)38.22へ(HS2022で明確化)
    • 化粧品系の調製品(3303〜3307):効能をうたっていても原則そちら
    • 医薬品添加のせっけん等(3401):第34類へ
    • 治療/予防用に調製していない血液アルブミン:35.02へ
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「医薬(治療/予防)」か、食品/サプリ/化粧品/雑品か(類注1で強く除外)
    2. 診断“試薬・検査キット”の性格:患者に投与する造影剤/診断用試薬(3006.30)か、検体検査用の試薬(3822)か
    3. 3003(非投与量・非小売) vs 3004(投与量・小売包装)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 臨床試験向けキット(プラセボ/盲検):HS2022で3006.93が新設され、食品/雑品/医薬品側からの移動が起きやすい
    • 診断キット(例:感染症検査キット):HS2017の3002.11(マラリア診断キット等)から、HS2022で3822側へ整理されているため、旧運用のままだとズレやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • **GIR1(見出し+注)**が最重要です。第30類は、**類注1(除外)類注4(3006は列挙品だけ、かつ他項に入らない)**で“行き先”が決まりやすい類です。
    • **GIR6(号レベル)**では、3002(免疫産品)や3003/3004(有効成分別の細分、抗マラリア製剤の定義)で差が出ます。
    • GIR3(混合品・セット)が関係する場面もありますが、第30類は部注・類注側で優先ルールが置かれていることが多いです(例:部注2「投与量/小売包装なら3004等に固定」)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途:治療・予防(therapeutic/prophylactic)か、栄養・美容・衛生か
    • 剤形・包装:投与量(measured doses)か/小売包装か(3003/3004の分岐)
    • 成分:抗生物質、ホルモン、アルカロイド(エフェドリン等)、ビタミン、抗マラリア有効成分など
    • 診断の形態:患者に投与する診断用(3006.30)か、検体検査用(3822)
    • 規制区分(薬機法等):HSを直接決めるものではありませんが、用途・形態の裏付け資料になり得ます(添付文書、承認情報等)。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:除外(類注1)に当たらないか?
    • サプリ/飲食物(静脈注射用栄養剤を除く)→第4部へ
    • ニコチン禁煙補助(ガム/パッチ等)→24.04
    • 診断用試薬(38.22)→3822
    • 化粧品(3303〜3307)、医薬品添加せっけん(3401)等もここで弾く
  • Step2:3006(注4の列挙品)に該当するか?
    • 滅菌縫合材、造影剤(患者投与)、救急箱、避妊剤(条件あり)、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット…など
      → 該当すれば原則3006で固定(他項ではなく)
  • Step3:3005(含浸ガーゼ等)に該当するか?
    • 医薬品を含浸/塗布、または医療目的で小売包装されたガーゼ・包帯・絆創膏等 → 3005
  • Step4:3002(血液・免疫産品・ワクチン・微生物培養・細胞培養)か?
    • 抗体・免疫グロブリン、ワクチン、毒素、微生物培養(酵母除く)、細胞培養/細胞治療等 → 3002
  • Step5:残りは概ね3001(臓器療法用等)または3003/3004(医薬品)
    • 投与量・小売包装なら3004、そうでなければ3003(ただし化学的に単一化合物等で章28/29側に落ちる余地もあるため、注と実態で確認)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第30類 vs 第38類(3822:診断用試薬・キット)
    • 第30類 vs 第21類(サプリ/食品)
    • 第30類 vs 第33類(化粧品)
    • 第30類 vs 第24類(ニコチン禁煙補助=24.04)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第30類は4桁項が少ないため、全列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3001臓器療法用の腺・器官(乾燥)、その抽出物、ヘパリン等乾燥臓器粉末、臓器抽出物、ヘパリン/塩、治療用に調製した動物性物質生鮮臓器等は別類になり得る。血液製剤・免疫血清等は3002へ。
3002人血、治療/予防/診断用に調製した動物血、抗血清・血液分画物・免疫産品、ワクチン、毒素、微生物培養、細胞培養免疫グロブリン、抗体製剤、ワクチン、毒素、培養微生物、細胞治療製品、細胞培養HS2022で**細胞培養(cell cultures)**が明示。診断“試薬”は3822除外に注意。
3003混合した医薬品(治療/予防)で、投与量・小売包装ではない原薬混合粉末(製造用)、バルク医薬製剤3004との境界=投与量/小売包装。類注3の「混合してない/混合した」の扱いが重要。
3004医薬品(治療/予防)で、投与量・小売包装(貼付剤含む)錠剤・カプセル・注射剤、経皮吸収パッチ、処方薬/OTC部注2により、投与量/小売包装で3004に該当するなら他類(28/29等)より優先されやすい。
3005医薬品含浸/塗布、または医療用小売包装のガーゼ等絆創膏、消毒ガーゼ、貼付用ドレッシング単なる綿/ガーゼ(医薬品なし・医療用小売包装でない)だと30類外の可能性。
3006類注4で列挙された「その他の医療用品」滅菌縫合材、造影剤、救急箱、避妊用調製品、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット列挙品のみ、かつ「他の項に属しない」と明記。特に3006.93(HS2022新設)に注意。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 投与量(measured doses)・**小売包装(retail sale)**か:3003↔3004
    • 免疫産品の「混合してない/混合した」:3002.13↔3002.14(号注1)
    • 抗マラリア有効成分の該当:3003.60/3004.60(号注2で成分範囲が規定)
    • 診断用:患者投与か/検体検査か:3006.30↔3822
    • 臨床試験用プラセボ/盲検キット:3006.93(HS2022で明確化)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 3003(医薬品・非投与量/非小売) vs 3004(医薬品・投与量/小売)
    • どこで分かれるか:投与量(錠剤、アンプル、貼付剤等)または小売包装で販売される形か
    • 判断に必要な情報:
      • 包装形態(1回量/単回投与か、瓶/ブリスター等)
      • ラベル表示(用法用量、一般消費者向け表示の有無)
      • 流通形態(製造用バルクか、最終製品か)
    • 典型的な誤り:原薬混合品(製造用)を“医薬品だから”と3004にしてしまう
  2. 3002.13(免疫産品:混合してない、非小売/非投与量) vs 3002.14(混合した、非小売/非投与量) vs 3002.15(投与量/小売)
    • どこで分かれるか:号注1により、溶媒に溶かす・安定剤添加等で「混合した」に寄るかどうかが分岐点になります
    • 判断に必要な情報:
      • 製剤形態(凍結乾燥、溶液、懸濁)
      • 添加物(安定剤、防腐剤、緩衝剤など)
      • 小売包装・投与量の有無
    • 典型的な誤り:溶媒に溶かしただけの抗体溶液を「混合してない」と扱う/逆に微量添加を見落とす
  3. 3006.30(造影剤・患者投与の診断用試薬) vs 3822(診断用試薬・検査キット)
    • どこで分かれるか:患者に投与することを前提としているか(3006.30)/検体検査(in vitro)側か(3822)
    • 判断に必要な情報:
      • 使用方法(投与/注入 vs 検体に滴下)
      • 添付文書(投与経路、禁忌、用量の記載)
      • 梱包(投与量にしたものか)
    • 典型的な誤り:検体検査キット(例:迅速検査)を「医療用途だから30類」としてしまう
      ※HS2022では診断用試薬・キットの3822側への整理が明確です
  4. 3006.93(プラセボ/盲検臨床試験キット) vs 3004.90(一般の医薬品)/ 2106・3824等
    • どこで分かれるか:「認可(recognized)された臨床試験」用で、投与量にしたプラセボ/盲検(または二重盲検)キットに該当するか
    • 判断に必要な情報:
      • 臨床試験プロトコル(試験名、盲検設計、使用目的)
      • キット構成(プラセボ/実薬の有無、表示)
      • 投与量包装の有無
    • 典型的な誤り:プラセボを「食品」や「雑品」として扱う/実薬が入るので3004に固定してしまう
  5. 3004.60(抗マラリア:サブヘディング注2該当) vs 3004.90(その他)
    • どこで分かれるか:**注2に列挙された抗マラリア有効成分(例:アルテミシニン系、クロロキン等)**を含むかどうか
    • 判断に必要な情報:
      • 有効成分(INN名まで)と含有有無
      • 配合剤か単剤か(配合でも該当し得る)
    • 典型的な誤り:「抗マラリア用途」だけで判断し、成分要件を確認しない

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注2(Section VI Note 2):投与量にしてある/小売包装であることにより、3004・3005・3006等に該当する場合、他の類(28/29等)よりも当該見出しで分類する趣旨の“固定”ルールです。
    • 部注3(Section VI Note 3):複数成分をセットにして「混ぜて使う」形で提示される場合、一定条件を満たすと出来上がり製品の見出しで分類します(医療用調製品・キットで論点になり得ます)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)同じ化学物質でも、医薬品として投与量包装された形だと3004に寄りやすい(ただし第30類注の除外や3006限定など“上位ルール”がある点に注意)。
    • 例)「2液混合で使う」医療用調製品は、セットの提示方法次第で分類が変わる可能性があるため、**梱包形態(同梱・補完性・再梱包不要)**の確認が重要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 投与量/小売包装の条件を満たすことで、もともと28/29側(化学品)で考えていたものが、30.04等へ“移動”する検討が必要になる。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第30類注の骨格):
    • 注1:除外(食品・禁煙ニコチン品・化粧品・3822診断試薬など)
    • 注2:3002の「免疫産品」定義(単クローン抗体など免疫過程制御に直接関与するペプチド/タンパク質)
    • 注3:3003/3004/注4(d)における“混合してない/混合した”の扱い(28/29の物品も「混合してない」に含める等)
    • 注4:3006は列挙品のみで、他の見出しに入らない(exclusive list)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「免疫産品」:抗体関連物質、インターロイキン、インターフェロン等(29.37を除外)という整理
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 禁煙補助(ニコチン含有の錠剤/ガム/パッチ等)→24.04
    • 診断用試薬→38.22
    • 化粧品調製品→33.03〜33.07

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「診断」なのに第30類に入らない(3822へ)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 患者投与(造影剤等)か、検体検査(in vitro)か
      • 製品の使用手順書・添付文書の記載(投与経路の有無)
    • 現場で集める証憑:
      • 添付文書、IFU、製品仕様書、梱包写真(キット内容)
    • 誤分類の典型:
      • 「医療用途だから30類」として、検査キットを3002/3006にしてしまう
      • HS2022で注1(ij)新設により、診断試薬・キット(マラリア診断キット含む)が3822へ移管された点が背景です
  • 影響ポイント2:3006(注4列挙品)は“リスト品だけ・他項に入らない”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 注4(a)〜(l)のどれに該当するか(例:救急箱、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験キット等)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、用途説明、梱包/ラベル、滅菌証明、臨床試験関連文書(3006.93)
    • 誤分類の典型:
      • 「キット」だからGIR3で雑品扱い/「医薬品が入っている」から3004固定で考える
      • 実際は注4(e)でプラセボ/盲検臨床試験キットが明確に3006対象になっています
  • 影響ポイント3:“混合してない/混合した”の扱い(注3・号注)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 28/29の化学品は「混合してない」に含める等、注3の“みなし”ルール
      • 免疫産品は号注1で「溶媒に溶かした」「安定剤を加えた」等を混合として扱う
    • 現場で集める証憑:
      • 成分表、SDS、製剤処方、安定剤・賦形剤の有無、製造工程概要
    • 誤分類の典型:
      • 「溶液=単一成分」と誤解して“混合してない”にしてしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:サプリ(錠剤・カプセル)を3004(医薬品)にする
    • なぜ起きる:剤形が医薬品と似ており、宣伝文言も紛らわしい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):食品・飲料(食餌補助剤等)は第30類から除外(注1(a))
    • 予防策:
      • 確認資料:販売形態、表示(栄養補助/疾病治療の標榜)、成分・用量
      • 社内質問例:「日本/輸出先で医薬品承認の対象か?」「添付文書(医薬品様式)があるか?」
  2. 間違い:ニコチンガム/ニコチンパッチ(禁煙補助)を3004にする
    • なぜ起きる:「治療目的」「パッチ=3004に書いてある」などの早合点
    • 正しい考え方:注1(b)で24.04へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:ニコチン含有有無、用途(禁煙補助)、製品説明
  3. 間違い:検体検査キット(迅速検査など)を3002/3006にする
    • なぜ起きる:「診断=医療用品」だから30類と思い込む
    • 正しい考え方:注1(ij)で3822診断試薬を除外、HS2022で移管が明確化
    • 予防策:
      • 確認資料:IFU(検体検査か患者投与か)、キット構成、用途
      • 社内質問例:「患者に投与する試薬ですか?それとも検体に反応させますか?」
  4. 間違い:血液型判定用試薬を3006.20とみなす(HS2017の名残)
    • なぜ起きる:旧HSのサブヘディングを参照している
    • 正しい考え方:HS2022で血液型判定用試薬は3822.13側へ移管(3006.20は移管対象)
    • 予防策:
      • 確認資料:適用HS版(通関は最新HS)、移行表(相関表)確認
  5. 間違い:3003(バルク)と3004(投与量/小売)を取り違える
    • なぜ起きる:インボイス品名が「medicament」等で粗い、包装情報が不足
    • 正しい考え方:3004は投与量・小売包装(貼付剤含む)であることが核心
    • 予防策:
      • 確認資料:包装仕様(ブリスター、アンプル単位)、最終用途(患者向けか製造向けか)
  6. 間違い:造影剤を“診断用試薬=3822”に寄せてしまう
    • なぜ起きる:「診断」という言葉に引っ張られる
    • 正しい考え方:患者に投与する造影剤・診断用試薬は注4(d)により3006.30側の枠で考える
    • 予防策:
      • 確認資料:投与経路、投与量包装、薬事資料(添付文書)
  7. 間違い:臨床試験用のプラセボ/盲検キットを2106(食品)や3824(化学品)にする
    • なぜ起きる:見た目が食品/錠剤・ゼラチンカプセル等で、医薬品として販売しないため
    • 正しい考え方:HS2022で注4(e)が置かれ、3006.93として明確化
    • 予防策:
      • 確認資料:臨床試験での使用証跡(プロトコル、治験届関連、キット仕様)
  8. 間違い:細胞培養品を「研究用だから30類外」と決め打ちする
    • なぜ起きる:医薬品のイメージに合わず、化学品/試薬扱いしがち
    • 正しい考え方:3002見出しに“cell cultures”が含まれる(HS2022で明確)
    • 予防策:
      • 確認資料:製品説明(cell cultureであること)、用途(治療/研究)、輸送形態(凍結・培地等)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。
    例)最終製品が3004(医薬品)か3822(診断試薬)かで、PSR(CTC条件やRVC条件)が変わり、原産性判断が崩れる可能性があります(特にHS2022での診断試薬の移管があるため注意)。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSと、BOM上の材料HSを混同する
    • 3006(キット類)を“セットだから”と別分類にしてしまい、PSRがズレる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 各EPA等は採用しているHS版が異なるため、協定で採用するHS版でPSRを引く必要があります。
  • HS2022の番号で検索すると誤ることがあるため、税関のPSR検索画面でも注意喚起されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 「通関は最新HS」「PSR確認は協定採用HS」になり得るため、相関表で旧新コードの対応を必ず作る(特に3006.93新設や3002→3822移管のような構造変更時)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程フロー、原産国
    • 非原産材料のHS(協定採用HS版で)
    • RVC計算の前提(対象費目、計算方式)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 製造記録、購買記録、原材料の原産証明、工程外注情報 等

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022移管(30類→38類)+注新設3002.11 等 → 3822.11/3822.12/3822.19 等診断用試薬・キット(マラリア診断キット含む)を3822へ整理。第30類注1(ij)で3822を除外。検査キットの“30類固定”が崩れる。過去コード運用の見直しが必要。
HS2017→HS2022移管(30類→38類)+注置換3006.20 → 3822.13血液型判定用試薬が3822.13へ。注4(e)の置換に伴う移管。血液型判定試薬の分類が変わる。旧3006.20参照は要注意。
HS2017→HS2022削除・置換(サブヘディング再編)3002.20/3002.30 → 3002.41/3002.42/3002.49ワクチン等の細分を再構成(人用/動物用等の整理)。品目番号が変わり、社内マスタ・PSR対応が必要。
HS2017→HS2022新設(明確化)3002.51/3002.59cell cultures(細胞培養)を明確化し、細胞治療製品等を分類しやすく。細胞系製品の分類根拠が明確に。輸出管理・規制確認も強化しやすい。
HS2017→HS2022新設3006.93認可臨床試験用のプラセボ/盲検(または二重盲検)キットを新設。治験関連の輸出入で、食品/雑品/医薬品扱いの揺れを減らす。
HS2017→HS2022文言修正・参照変更注1(b)ニコチン禁煙補助の除外先が24.04に明確化。禁煙補助製品の分類先が明確。
HS2017→HS2022削除3002.19空のサブヘディングとして削除。実務影響は限定的(マスタ整合は必要)。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と読み取り(本稿の判断根拠):
    • **WCO HS2022 第30類本文(注1・注4・3002の見出しにcell cultures追加、3006.93等)**に基づき、HS2022の範囲・定義・列挙品を確認しました。
    • **WCO 相関表(HS2017→HS2022, Table I)**の「Remarks」により、
      • 診断用試薬・キット(マラリア診断キットを含む)が3002側から3822へ移管
      • 血液型判定用試薬が3006.20から3822.13へ移管
      • ワクチン(3002.20/3002.30)の再編(3002.41等)
      • cell cultures(3002.51等)の新設
      • 3006.93の新設
        という“何が変わったか”を裏取りしました。
    • 日本実務では、**税関の関税率表解説(第30類)**が日本語で注・用語を整理しているため、実務的な読み替え・証憑収集の観点は同資料に従って整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(“実務で効くもの”中心)を、HS2007→2012→2017→2022の流れで整理します(相関表ベース)。

版の変化主な追加/削除/再編旧コード → 新コード(例)変更の要旨実務メモ
HS2007→HS2012範囲拡大(免疫産品)(概念的に)3002.10の範囲拡大免疫学的過程に直接関与する免疫産品を3002側でカバーする方向で範囲が拡大。免疫産品の取り扱いが段階的に整備されてきた流れ。
HS2012→HS2017新設/細分(診断・免疫・抗マラリア等)3002.10 → 3002.11(マラリア診断キット)+3002.12〜3002.15(免疫産品) 等免疫産品の細分、マラリア診断キットの切り出し等。HS2022でこの“診断キット”は3822側へ移るので、旧知識の固定化に注意。
HS2012→HS2017新設(抗マラリア医薬)(一部)3003.90等 → 3003.60、3004.60抗マラリア医薬を独立サブヘディング化し、注で成分範囲を明確化。成分(INN)確認が必須。
HS2017→HS202230類→38類へ移管(診断用)3002.11等 → 3822.11/12/19等3822側に診断試薬・キットを整理。30類注1(ij)新設。検査キットの分類ミスが多発しやすい改正。
HS2017→HS202230類→38類へ移管(血液型判定試薬)3006.20 → 3822.13注4(e)の置換+3822.13新設で移管。3006.20を使い続けない。
HS2017→HS2022新設(治験キット)該当なし → 3006.93認可臨床試験用プラセボ/盲検キットを明確化。治験関連の輸出入で“分類の根拠資料”が重要に。
HS2017→HS2022新設(細胞培養の明確化)(従来3002.90等で解釈)→ 3002.51/59cell culturesの分類を明確化。再生医療系・研究用細胞の分類検討がしやすい。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):検体検査キットを30類で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第30類注1(ij)(3822診断試薬の除外)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「diagnostic kit」だけ、用途説明不足
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延
    • 予防策:IFU・用途説明(患者投与か検体検査か)を添付
  • 事例名:禁煙ニコチンパッチを医薬品(3004)扱い
    • 誤りの内容:第30類注1(b)(24.04へ)
    • 起きやすい状況:「経皮投与=3004」と短絡
    • 影響:税番修正、許認可/規制確認のやり直し
    • 予防策:成分(ニコチン)と用途(禁煙補助)を明記し、24.04検討
  • 事例名:治験用プラセボキットを食品扱い
    • 誤りの内容:第30類注4(e)の見落とし(3006.93)
    • 起きやすい状況:外観が“錠剤/カプセル”で食品に似る、治験資料が社内にない
    • 影響:税番修正、出荷遅延(治験スケジュール影響)
    • 予防策:臨床試験プロトコル、キット仕様(盲検設計)、投与量包装の証憑整備
  • 事例名:血液型判定試薬を旧3006.20で申告
    • 誤りの内容:HS2022で3822.13へ移管(改正追随漏れ)
    • 起きやすい状況:社内マスタがHS2017のまま
    • 影響:税番修正、原産地判定や許認可確認の再作業
    • 予防策:HS版管理(改正時の相関表で一括棚卸)

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

ここでは日本前提で「第30類に多い論点」を一般論で整理します(個別品目で要確認)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 人血・動物血、ワクチン、微生物培養、細胞培養などは、製品の性質により別途の衛生・バイオ関連規制が関係し得ます(輸入前に所管官庁・税関へ確認)。
    • 少なくとも、医薬品等として業で輸入する場合は、製造販売業/製造業の許可や品目ごとの承認等が必要となる旨が行政側で案内されています。
  • その他の許認可・届出(薬機法系)
    • 業として医薬品等を輸入する場合:輸入通関の都度、業許可証や製造販売承認書等の提示が必要とされる旨のQ&A・案内があります。
    • 個人輸入:輸入確認証(旧「薬監証明」)等の枠組みがあり、一定範囲を超える場合等は手続が必要とされています。
  • 麻薬・向精神薬等(該当する場合)
    • 成分によっては、麻薬及び向精神薬取締法等の規制対象となり、輸入・輸出手続が大きく変わります。
    • 実務上は「有効成分(INN/一般名)」「含有量」「用途」「製剤形態」を起点に該当性を確認します。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第30類(特に3002の毒素・微生物培養等)は、**輸出管理(外為法の枠組み)**の確認が必要になるケースがあります(該非判定、用途・需要者確認など)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(品目分類・事前教示、輸入手続)
    • 厚生労働省(医薬品等の輸入手続、個人輸入、各種法令)
    • 必要に応じて経済産業省(安全保障貿易管理)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品仕様書、成分表(API/添加剤)、SDS、添付文書/IFU、包装仕様(投与量・小売)、用途説明
    • 治験品なら:プロトコル、盲検設計、キット構成表(3006.93判断用)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(INN名まで)・含有量、剤形、用途(治療/予防/診断/栄養)
    • 包装:投与量か、小売包装か
    • 診断品:患者投与か、検体検査か
    • キット:セット構成、同梱状況、混合して使うか
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第30類注1の除外(食品、ニコチン禁煙補助、3822診断試薬、化粧品等)を再確認
    • 3006は注4列挙品だけか確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「dosage form」「for clinical trial」「for administration to patient」など誤解が出ない語を入れる
    • 補足資料:ラベル写真、添付文書、仕様書、MSDS/SDS
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定採用HS版でPSRを確認(HS版ズレ注意)
    • 相関表で旧新コードの対応表を社内保管(改正時に更新)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 業として輸入:許可・承認書類の要否を確認
    • 個人輸入が関係する販売形態なら輸入確認証等の案内も確認
    • 規制成分(麻薬・向精神薬等)の該当性確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Nomenclature, Chapter 30(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS2022 Nomenclature, Section VI Notes(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS Correlation Table HS2017→HS2022 (Table I)(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS Correlation Table HS2012→HS2007 (Table I)(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS Correlation Table HS2017→HS2012 (Table I)(PDF/日本税関掲載) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第30類(医療用品)」PDF (参照日:2026-02-19)
    • 税関 PSR検索画面(HS版違いの注意) (参照日:2026-02-19)
    • 税関「協定・法令等(HS版がEPAで異なる旨)」 (参照日:2026-02-19)
    • 税関「医薬品・化粧品等の個人輸入」Q&A (参照日:2026-02-19)
  • 省庁(規制・手続)
    • 地方厚生局「医薬品等の輸入手続(業として輸入)」 (参照日:2026-02-19)
    • 地方厚生局「医薬品等輸入手続Q&A」(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • 厚労省「医薬品等の個人輸入について(輸入確認証等)」 (参照日:2026-02-19)
    • e-Gov法令「麻薬及び向精神薬取締法」 (参照日:2026-02-19)
    • 経産省(安全保障貿易管理の制度)資料 (参照日:2026-02-19)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品の仕様書(用途・剤形・成分・含有量)
    • 写真(外観、ラベル、包装、キット構成)
    • SDS/成分表、添付文書/IFU、臨床試験プロトコル(治験品の場合)
    • 「なぜそのHS候補だと思うか」のメモ(注の該当箇所)
  • 税関の公式導線(日本)
    • 事前教示制度(品目分類):Eメールでも照会可能
    • 事前教示回答(品目分類)の検索:公開可能な回答を検索できる
    • 参考になる「輸入貨物の品目分類事例」も別途公開

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第29類:有機化学品(Organic chemicals)

用語は次のとおり統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • メタノール(有機溶剤・原料)
    • アセトン(溶剤)
    • 酢酸(基礎化学品)
    • アニリン(染料・ゴム薬品等の中間体)
    • カフェイン(複素環化合物)
    • ビタミン類・ホルモン・アルカロイド・抗生物質(例:ビタミンC、ホルモン原体、各種アルカロイド、ペニシリン系等)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • エチルアルコール(エタノール):第22類(2207/2208)
    • メタン・プロパン:第27類(2711)
    • 尿素:第31類(3102/3105)
    • 有機染料・蛍光増白剤・ルミノフォア等:第32類(3204等)
    • 酵素:第35類(3507)
    • 免疫学的産品:第30類(3002)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「化学的に単一の化合物(単離化合物)」か?(混合物・製剤だと第29類から外れやすい)
    2. 溶媒に溶かしている理由が“安全・輸送上の通常の方法”か?(用途調整=製剤化だと他類へ)
    3. 複数の官能基がある場合、どの項が最後になるか(類注3)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 国際条約・規制対象物質(例:PFOS等、化学兵器禁止条約関連物質、麻薬条約関連物質等)を「その他」で雑に申告すると、規制チェック漏れ差し止め/追加手続のリスクが上がります。HS2022改正でも、こうした監視・規制目的の細分が増えています。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+部注/類注で決める)が中心です。第29類は「何の化合物か(官能基・骨格)」を注で縛っているため、商品名よりも化学構造が決定打になります。
    • GIR6(6桁の号まで落とす)では、サブヘディングノート(号注)も効きます。特に「類注3(最後の項)」が号には適用されない点は事故要因です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(第29類で必須になりやすい)
    • CAS番号/IUPAC名/構造式(官能基)
    • 純度と不純物の扱い(“単一化合物+不純物”は第29類に入り得る)
    • 異性体の混合か(ただし「非環式炭化水素の異性体混合」は例外で第27類へ行き得る)
    • 溶液(溶媒種類、濃度、溶解理由)
    • 添加剤(安定剤、固結防止、識別用着色、催吐剤等)の有無と目的

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その貨物は「有機化学品」か?
    • 有機系でも、注で**別類に飛ぶ例(エタノール、染料、酵素、免疫学的産品等)**があるので、まず除外規定を確認します。
  • Step2:「第29類が扱う形」か?(単一化合物/異性体混合/溶液/必要最小の添加)
    • 単一化合物(不純物可)、同一化合物の異性体混合、水溶液、必要な溶媒溶液、必要な安定剤・識別添加は第29類に残り得ます。
    • ただし「特定用途に適するようにした」=実質製剤化なら、第38類などへズレやすいです。
  • Step3:官能基・骨格で項(4桁)を決める
    • 2901〜2935は主に官能基・構造で分類、2936〜2941は特定グループ(ビタミン等)、2942がその他という整理で考えると迷いが減ります。
    • 複数の項に入れそうなら、原則として**「数字上最後の項」**へ(類注3)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第27類 vs 第29類:非環式炭化水素の異性体混合(立体異性体以外)は第27類へ行き得ます。
    • 第29類 vs 第32類:染料・蛍光増白剤は第32類へ(第29類から除外)。
    • 第29類 vs 第30類:医薬用途で小売用・定量用にしたものは第30類へ(Section VIのルール)。
    • 第29類 vs 第38類:混合・調製して用途(洗浄、塗料、消火、インク除去等)に最適化すると第38類へ寄りやすい。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

ここでは実務で頻出・誤分類が起きやすい項を中心に挙げ、残りは「その他」にまとめます(HS6桁の最終決定は条文・解説で要確認)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2901非環式炭化水素エチレン、プロピレン、ブタジエン「異性体混合」の扱いに注意(第27類へ行く例外あり)
2902環式炭化水素ベンゼン、トルエン、キシレン単一異性体か、混合異性体かで号が分かれます(例:混合キシレン)
2903炭化水素のハロゲン化誘導体ジクロロメタン、クロロホルムHS2022で一部細分が再編(規制物質の監視目的)
2904炭化水素のスルホン化/ニトロ化/ニトロソ化誘導体ニトロベンゼン等PFOS等の規制物質は専用号が設定され得る(HS2017以降)
2905非環式アルコールメタノール、イソプロパノールエタノールは第22類(除外規定)
2907フェノール類フェノール、クレゾール染料(第32類)との混同に注意
2909エーテル類・有機過酸化物等ジエチルエーテル、各種有機過酸化物有機過酸化物の扱いは注・改正で要注意(29.09/29.11境界)
2912アルデヒド類等ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド「溶液」でも第29類に残る条件あり(用途調整は別)
2914ケトン類・キノン類アセトン、MEK等反応性・用途でなく官能基で決める
2915飽和非環式一価カルボン酸等(酸塩化物等含む)酢酸、無水酢酸「酸」「酸塩化物」「無水物」等の誘導体でもこの系統に入る(注の取扱い)
2916不飽和非環式一価カルボン酸等アクリル酸、メタクリル酸HS版移行で一部サブヘディング整理がある(低取引量削除等の例)
2917多価カルボン酸等フタル酸、シュウ酸等多官能基で他項と競合する場合は類注3に注意
2918付加的酸素官能基を有するカルボン酸等乳酸、クエン酸等「酸素官能基」の定義に注意(注4)
2921非環式アミン類エチルアミン、アニリン等塩の扱い、混合/製剤化の有無を確認
2922酸素官能基を有するアミノ化合物エタノールアミン類、アミノ酸系複数官能基で項が競合しやすい→類注3
2924アミド類DMF、尿素系の一部(※尿素自体は除外)尿素は第31類へ(除外)
2926ニトリル類アクリロニトリル等危険物・規制対象になりやすいのでSDS確認推奨
2930有機硫黄化合物チオール類、スルフィド類HS2022で特定物質の細分新設あり
2933窒素複素環化合物ピリジン、カフェイン等HS2022でフェンタニル等の監視目的細分あり
2934核酸・その他複素環化合物核酸塩、複素環中間体HS2022で「フェンタニル類」細分新設あり
2936ビタミン等ビタミンC、ビタミンE等「化学的に単一であるかないかを問わない」扱いがあり得る(注1(c))
2937ホルモン各種ホルモン、誘導体用語定義(ホルモンの範囲)に注あり
2939アルカロイドエフェドリン系等HS2022でエフェドラ由来アルカロイド誘導体の扱い調整あり
2941抗生物質ペニシリン、ストレプトマイシン等医薬品形態(定量・小売用)だと第30類へ移る可能性
2942その他の有機化合物他に当てはまらない単一化合物「その他」だからこそCAS/構造で根拠固め必須
その他2906, 2908, 2910, 2911, 2913, 2919, 2920, 2923, 2925, 2927〜2929, 2931, 2932, 2935, 2938, 2940 など例:エポキシ(3員環)(2910)、有機リン/有機金属(2931)、スルホンアミド(2935)、配糖体(2938)、糖エーテル(2940)類注4〜7、塩・錯体・誘導体の扱い(注5)、複素環の除外(注7)を必ず確認

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第29類で多い順)
    • 化学物質の同定(CAS、IUPAC、構造式、官能基)
    • 異性体(単一異性体か混合か/例外として第27類へ飛ぶか)
    • 溶液・添加(溶媒の種類、濃度、溶解の目的、添加剤の目的)
    • 規制対象の特定(条約名で“監視用の専用号”が設定されている物質がある)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. キシレン:単一異性体 vs 混合異性体(2902.41/42/43 と 2902.44 等)
      • どこで分かれるか:o-/m-/p-などの単一異性体か、混合キシレン異性体
      • 判断に必要な情報:GC分析(異性体比率)、SDSの組成、CAS(混合のCAS)
      • 典型的な誤り:「キシレン」だけで単一異性体の号に固定してしまう(実態は混合)
    2. エタノール:第29類(2905)ではなく第22類(2207/2208)
      • どこで分かれるか:注の除外規定で強制的に第22類
      • 判断に必要な情報:成分(エタノールか)、変性の有無、濃度、用途よりも“物としての形態”
      • 典型的な誤り:「工業用アルコールだから有機化学品」と短絡する
    3. PFOS等:専用号(2904.31〜2904.36 等) vs “その他”(2904.99等)
      • どこで分かれるか:PFOS、その塩、PFOSFなどの該当物質かどうか
      • 判断に必要な情報:化学名、CAS、塩の形態、含有の有無(混合/製剤なら別章の可能性も)
      • 典型的な誤り:規制物質を「その他」へ入れてしまい、規制対応のトリガーを逃す
    4. 有機過酸化物:29.09(2909.60等)と29.11周辺の境界
      • どこで分かれるか:有機過酸化物の範囲(注・改正で移動が発生し得る)
      • 判断に必要な情報:官能基(–O–O–)、製品の反応性、SDS、構造式
      • 典型的な誤り:アセタール系/ヘミアセタール系の過酸化物を旧来の感覚で29.11側に置く(HS2022で移動に言及)
    5. フェンタニル類等:2933/2934の新設号 vs “その他”
      • どこで分かれるか:INN(一般名)や構造でフェンタニル類・前駆体に該当するか
      • 判断に必要な情報:INN、CAS、構造式、塩の形態
      • 典型的な誤り:「麻薬規制は別部署の話」として分類側で同定が浅くなる(実務上は相互依存)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • (Section VI注2):医薬品等で定量・小売用にしたものは、該当見出し(例:3004等)に分類し、この部(第29類など)に戻しません。
    • (Section VI注3):複数成分を一緒にして「混ぜて使うセット」は、完成品側の見出しに寄せる考え方があります(ただし条件あり)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:抗生物質でも、原薬のバルクなら第29類(2941)の検討余地がありますが、錠剤・小売包装・用法が明確なら第30類側を優先検討、という方向になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 医薬・化粧品・接着剤・殺虫剤などの「小売用・用途特化」で他章が優先される(部注2の思想)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:第29類は原則として
      • (a) 化学的に単一の有機化合物(不純物可)
      • (b) 同一化合物の異性体混合(ただし非環式炭化水素の異性体混合は例外)
      • (d)(e) 水溶液/必要な溶媒溶液
      • (f)(g) 保存・輸送・識別・安全のための最小限の添加
      • (h) アゾ染料製造用に標準濃度にした特定物質
        など“限られた形”を対象にしています。
    • 類注2:エタノール、染料、酵素、免疫学的産品などは明確に除外。
    • 類注3:2つ以上の項に入るなら「数字上最後の項」。
    • 類注4〜7:複合誘導体の扱い、官能基の定義、エステル・塩・錯体の分類、複素環の除外など、化学構造での“落とし穴”が多数。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 例:ホルモン(2937)の範囲(放出因子、拮抗物質等を含む)など。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • エチルアルコール→22.07/22.08、染料→32.03/32.04/32.12、酵素→35.07、免疫学的産品→30.02等。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「単一化合物」か「用途調整された製剤」か(類注1(e)(g)×部注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 溶媒の種類と目的(安全/輸送か、用途最適化か)
      • 添加剤(安定剤、着色、香気、催吐)の目的(識別/安全か、用途性能か)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS、仕様書、配合表、用途説明、ラベル表示、輸送規格(UN番号等があれば)
    • 誤分類の典型:
      • 「溶液だから化学品」→実は用途特化(洗浄剤等)で第38類だった、など
  • 影響ポイント2:異性体混合の例外(類注1(b))で第27類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか:
      • 対象が「非環式炭化水素」か、混合が「立体異性体以外」か
    • 現場で集める証憑:
      • 組成分析(GC)、CAS、工程(分留・精製の程度)、製品規格
    • 誤分類の典型:
      • “混合溶剤”を第29類の「異性体混合」と誤解(実態は第27類の石油系留分)
  • 影響ポイント3:多官能基化合物の「最後の項」ルール(類注3)
    • 何を見れば判断できるか:
      • 官能基の一覧(酸、アルコール、アミン、ニトロ、ハロゲン等)
      • 競合し得る項番号の並び(どれが“最後”か)
    • 現場で集める証憑:
      • 構造式、IUPAC名、反応式(中間体なら特に)
    • 誤分類の典型:
      • “主用途”で決めてしまい、注が要求する「官能基・並び」を見落とす
  • 影響ポイント4:塩・錯体・酸塩化物など誘導体の帰属(類注5等)
    • 何を見れば判断できるか:
      • その物質が「塩」「錯体」「金属アルコラート」「酸ハロゲン化物」等に該当するか
    • 現場で集める証憑:
      • 反応・中和の有無、カウンターイオン、金属結合の有無、SDS(組成)
    • 誤分類の典型:
      • “別物質”として2942等に逃がす(実は元化合物の扱いに寄せるべき)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:エタノールを2905(アルコール)で申告
    • なぜ起きる:一般感覚で「アルコール=有機化学品」と連想する
    • 正しい考え方:類注2で**エチルアルコールは第22類(2207/2208)**に除外
    • 予防策:
      • 確認資料:成分表、濃度、変性の有無
      • 社内質問例:「主成分はエタノールですか?変性剤は何ですか?」
  2. 間違い:“溶液”というだけで第29類に固定
    • なぜ起きる:SDSに溶媒が書かれているだけで「化学品だから」と判断
    • 正しい考え方:類注1(e)は「安全/輸送のための通常の溶液」に限定し、用途最適化なら外れ得る
    • 予防策:
      • 確認資料:用途説明、ラベル、添加剤の目的
      • 社内質問例:「溶媒は輸送上の理由?それとも塗布/洗浄など用途のため?」
  3. 間違い:染料・蛍光増白剤を第29類で処理
    • なぜ起きる:原料が有機化合物なので“有機化学品”だと誤解
    • 正しい考え方:類注2で有機系の着色料等は第32類へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:用途(着色/蛍光)、製品名(dye, pigment, brightener等)、社内の使用部門
  4. 間違い:単一化合物かどうかの確認不足(商標名で分類)
    • なぜ起きる:取引名が“剤”“ソリューション”など曖昧
    • 正しい考え方:第29類は「単一化合物(不純物可)」等が原則
    • 予防策:
      • 確認資料:CAS、純度、主要成分の含有率、複数成分の有無(混合なら第38類等)
  5. 間違い:非環式炭化水素の異性体混合を第29類で処理
    • なぜ起きる:「異性体混合は第29類」と一般化してしまう
    • 正しい考え方:類注1(b)に例外があり、非環式炭化水素の異性体混合は第27類に行き得る
    • 予防策:
      • 確認資料:炭化水素かどうか、環式かどうか、異性体の種類(立体/構造)
  6. 間違い:多官能基化合物を“主用途”で決めて類注3を見落とす
    • なぜ起きる:営業・研究の説明が用途中心で、構造を見ない
    • 正しい考え方:2つ以上の項に入り得るときは、原則「最後の項」(類注3)
    • 予防策:
      • 確認資料:構造式、官能基一覧
      • 社内質問例:「官能基は何が入っていますか?酸/アミン/アルコールなど全部列挙できますか?」
  7. 間違い:塩・錯体・酸塩化物を別物扱いで2942等に“逃がす”
    • なぜ起きる:SDSの名称が別名で、元化合物と結びつかない
    • 正しい考え方:誘導体の扱いは注(エステル・塩・錯体等)に従って“元の系統”に寄せる考え方がある
    • 予防策:
      • 確認資料:反応前後の名称、塩形成の情報、金属結合の有無
  8. 間違い:規制対象物質(PFOS等、条約対象)を“その他”で申告
    • なぜ起きる:規制チェックと分類が分業で、分類側が“監視用細分”を意識しない
    • 正しい考え方:HS改正で条約対応の細分が設定されており、同定が分類品質に直結
    • 予防策:
      • 確認資料:CAS、条約リスト照合(社内コンプラ部門と連携)、税関相談

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第29類は「原料=化学品」になりやすく、最終製品HSが1桁違うだけでPSRが別物になることが普通にあります。
  • よくある落とし穴
    • 原料(複数)のHSが曖昧(混合物・溶液・塩など)
    • 最終製品が第29類ではなく、第30類(医薬)、第32類(染料)、第38類(調製品)にズレる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 経済連携協定等は、採用しているHS版が異なることがあります(協定によってHS2012/2017など)。検索時にバージョン違いだと誤判定になり得ます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定の参照HS版でPSRを確認現行申告HS(HS2022/国内コード)に対応付け(相関表で確認)という順番が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(第29類は特に“同定情報”が重要)
    • BOM(材料表)、原産国、各材料のHS(できればHS6桁まで)、非原産材料の比率
    • 工程(反応・精製・混合のどこまで行うか)
    • 原価(RVC方式の場合)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 供給者証明、SDS、分析表、製造工程図、インボイス品名の整合、保存年限は協定・社内規程に従う

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割/再編2903.31/2903.39 → 2903.41〜2903.69 等Kigali改正(モントリオール議定書)関連物質の監視目的で細分再編冷媒・発泡剤等の特定品は「その他」逃げが難化、CAS同定が必須
HS2017→HS2022範囲明確化(注修正)29.09/29.11(例:2911.00→2909.60への移動言及)類注・見出しの明確化により、特定の有機過酸化物(アセタール/ヘミアセタール過酸化物)が29.09側へ旧分類慣行のままだと差異が出るため、SDS/官能基で再点検
HS2017→HS2022新設2930.102-(N,N-ジメチルアミノ)エタンチオール用の号新設(化学兵器禁止条約関連の監視)規制対応(輸出入届出等)のトリガーになり得る
HS2017→HS2022分割/再編+新設2931.31〜2931.39 → 2931.41〜 等、2931.54新設CWC(化学兵器)対象の監視強化+ロッテルダム条約対象(トリクロルホン)号新設有機リン/有機金属等はサブヘディング再確認必須
HS2017→HS2022新設2932.96カルボフラン(carbofuran)用の号新設(ロッテルダム条約)農薬原体等の同定・規制チェックが重要に
HS2017→HS2022範囲拡大+新設2933.33の範囲拡大、2933.34/35/36/37新設フェンタニル類・前駆体、3-キヌクリジノール等の監視(国連麻薬単一条約/CWC)輸出入規制・社内コンプラの連携必須(INN/CAS管理)
HS2017→HS2022新設2934.92フェンタニル類(その他)向け号新設(国連麻薬単一条約)同上(2934側に分類される対象もある)
HS2017→HS2022範囲変更2939.71 → 2939.45/2939.49等エフェドラ由来アルカロイド誘導体の扱いを他の誘導体と整合旧コード運用の品は相関確認が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料(相関表)として、WCOの**HS2022↔HS2017相関表(Table I)**に、Chapter 29の具体的な改正理由(条約名・監視目的・新設/再編)が明記されています。上表の要旨は、当該相関表の記載(例:Kigali改正、化学兵器禁止条約、ロッテルダム条約、国連麻薬単一条約等)に基づいて整理しました。
  • 併せて、HS2022の**第29類注(Note 1〜Subheading Notes)**により、対象範囲(単一化合物/溶液/添加/除外/最後の項ルール等)が確認できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(例)を、HS2007→2012→2017→2022の流れで整理します(代表例)。

HS版移行主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(例)背景/狙い(要旨)
HS2007→HS20122916.35削除(低取引量)等2916.35 →(統合/整理先へ)取引量・統計整備の観点
HS2007→HS20122931の細分(有機金属等)2931.00 → 2931.10/2931.20/2931.90 等ロッテルダム条約(PIC)等に伴う監視・管理
HS2007→HS20122939.44新設(ノルエフェドリン等)(旧2939.49等)→ 2939.44等規制・統計上の識別強化
HS2012→HS2017PFOS等の専用号新設2904.90(ex)→ 2904.31〜2904.36ストックホルム条約/ロッテルダム条約の監視・管理
HS2012→HS2017クロロピクリン等の細分新設2904.90(ex)→ 2904.91 等有害化学物質の国際移動の把握
HS2017→HS2022冷媒系(2903)の大規模再編2903.31/2903.39 → 2903.41〜2903.69Kigali改正対応(オゾン層・温室効果ガス管理)
HS2017→HS2022化学兵器/麻薬等に関連する細分強化2930/2931/2933/2934 等に新設・再編CWC、国連麻薬単一条約、ロッテルダム条約等への対応

注:表の「旧→新」は代表例です。実務では対象物質のCAS/INNと、相関表の該当行(ex表記含む)で突合してください。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“溶液だから第29類”で申告したら製剤扱い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注1(e)の「安全/輸送上の通常の溶液」要件を満たさず、実態が用途特化(部注2の思想にも抵触)
    • 起きやすい状況:洗浄用、塗布用に濃度・添加剤を調整した“ソリューション”
    • 典型的な影響:税番更正、追加資料要求、検査・遅延
    • 予防策:SDS+用途説明+「溶解理由(輸送か用途か)」の文書化
  • 事例名:エタノールを2905で申告
    • 誤りの内容:類注2(b)の除外(エタノールは22.07/22.08)
    • 起きやすい状況:“工業用アルコール”とだけ記載、変性情報が不足
    • 影響:税番訂正、場合により酒税・許認可の論点が発生
    • 予防策:変性の有無、濃度、用途(飲用でないこと)等を明確化
  • 事例名:PFOS等を「2904.99 その他」で申告
    • 誤りの内容:HS改正で設定された監視用細分に合致する可能性を見落とし
    • 起きやすい状況:CASの照合をせず、化学名が略称のみ
    • 影響:規制チェック漏れ→差止め/追加手続/是正
    • 予防策:CASで同定→条約/規制対象の社内照合→必要なら税関相談
  • 事例名:フェンタニル類を“その他の複素環”で処理
    • 誤りの内容:HS2022での監視用新設号(2933/2934側)を見落とす
    • 起きやすい状況:INN不明、塩の形態だけが伝票に記載
    • 影響:輸出入規制(麻薬等)確認の遅れ、通関保留
    • 予防策:INN/CAS/塩の種別を必須入力項目にする

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • {日本}前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第29類自体は検疫というより、危険物・毒劇物・薬物など別法令での管理が中心になりやすいです(個別物質で判断)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 化学兵器禁止条約関連物質などは、輸出入実績の届出等が必要となり得ます(物質・数量・制度要件で判断)。
  • その他の許認可・届出(代表例)
    • 麻薬及び向精神薬:輸出入や所持等が厳格に規制(対象物質は法令・別表等で判断)。
    • 税関の輸出入禁止・規制品目として、麻薬等は明示されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 税関(規制品目・手続)、経済産業省(化学兵器関連等)、厚生労働省(麻薬等)
  • 実務での準備物(一般論)
    • SDS、成分表、CAS/INN、用途説明、数量・濃度、契約書/インボイスの品名整合、必要な場合は許可証・届出書

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • CAS/IUPAC名、構造式(官能基)、純度、不純物
    • 異性体の有無(単一/混合)
    • 溶媒・添加剤の種類と目的(安全/輸送/識別か、用途最適化か)
    • SDS(最新版)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1(単一化合物/溶液/添加の条件)に適合するか
    • 類注2(除外:エタノール、染料、酵素等)に当たらないか
    • 類注3(最後の項)を適用すべきか/ただし号には適用されない点を認識
    • HS版改正の影響(相関表で旧→新のズレ確認)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「一般名+化学名+CAS」等で誤解を減らす
    • 危険物・規制物質は、必要情報(濃度、UN番号等)が書類に揃っているか
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版でPSR確認→相関で現行HSへ接続
    • BOM、工程、原価、材料HS(非原産)を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 麻薬等:該当の有無、許可・届出手続
    • 化学兵器関連:指定物質等の届出の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 29 “Organic chemicals”(条文・類注)[参照日:2026-02-19]
    • HS2022 Section VI Notes(部注)[参照日:2026-02-19]
    • HS2022↔HS2017 Correlation Table (Table I)[参照日:2026-02-19]
    • HS2017↔HS2012 Correlation Table (Table I)[参照日:2026-02-19]
    • HS2012↔HS2007 Correlation Table (Table I)[参照日:2026-02-19]
  • {日本}税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説(第29類 有機化学品)」[参照日:2026-02-19]
    • 税関「関税率表第29類の概要(分類整理資料)」[参照日:2026-02-19]
    • 税関:輸出入禁止・規制品目(麻薬等)[参照日:2026-02-19]
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関「品目別原産地規則(PSR)検索」—HS版違い注意[参照日:2026-02-19]
  • その他(規制関係)
    • 経済産業省:化学兵器禁止法関連物質(輸入・届出等)[参照日:2026-02-19]
    • 厚生労働省:麻薬及び向精神薬取締法(条文)[参照日:2026-02-19]

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 第29類は特に、CAS/IUPAC名、構造式、純度、不純物、溶媒・添加剤の目的が重要です(SDSはほぼ必須)。
    • 「どの項・号を想定しているか」「なぜそこで迷うか」を文章化すると、照会が通りやすいです。
  • 探し方(日本税関)
    • **品目分類の事前教示制度(カスタムスアンサー)**で制度概要を確認
    • 事前教示回答(品目分類)検索で、類似品・類似物質の回答を探す
    • **輸入貨物の品目分類事例(類別一覧)**で、整理された代表事例を確認

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。