HS2022 第89類:船舶及び浮き構造物(Ships, boats and floating structures)

用語(本稿内の呼び方を統一します)

  • =Chapter、=Heading(4桁)、=Subheading(6桁)、=Section、=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 人員/貨物の輸送用の船舶(客船、フェリー、貨物船、はしけ等)→ 89.01
    • 漁船・工船(漁獲物の加工・保存用) → 89.02
    • ヨット・プレジャーボート、カヌー、櫓櫂船(膨張式ボート含む)→ 89.03
    • タグボート・プッシャー → 89.04
    • しゅんせつ船、クレーン船、浮きドック、浮遊式/潜水式の掘削・生産プラットホーム → 89.05
    • 船舶としての特性が弱い浮き構造物(浮き桟橋、ブイ、コファダム、いかだ等)→ 89.07
    • 解体目的で提示される船舶等 → 89.08
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 船舶の部分品・附属品(船体を除く):この類に入らず、構成や機能に応じ他類へ(例:プロペラは84.87、帆は63.06、いかりは73.16 等)
    • 水陸両用自動車(車両としての水陸両用)→ 第87類(部注で明記)
    • 水上機・飛行ボート → 88.02
    • 玩具のボート → 95.03、遊園地/ウォーターパークの娯楽設備用の小舟 → 95.08(部注で除外)
    • 装飾用の模型船 → 44.20、83.06 等(材質・品目により)
    • 固定式(浮遊式でも潜水式でもない)海洋掘削/生産プラットホーム → 84.30(89.05から除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「完成船」か「部分品(船体以外)」か(第89類は“部分品が原則入らない”のが最大の落とし穴)
    2. 輸送船(89.01)か、航行が従の作業船(89.05)か、停止して使う浮き構造物(89.07)か
    3. 未完成/船体/分解提示:特定の船舶の“重要な特性(essential character)”があるか(なければ89.06)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • RCEP等のPSR(品目別規則)選択が崩れる(HS違い・トランスポジション含む)
    • 輸出規制:漁船は外為法に基づく承認が必要(輸出)
    • 解体用船舶(89.08):シップ・リサイクル法や、輸出入形態によってはバーゼル法等の確認が必要

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):船舶は用途(輸送/漁業/娯楽/作業)で項が分かれるため、まず見出し文言と第89類注(注1)第17部注で枠を確定します。
    • GIR2(a)(未完成・未組立/分解提示)+類注1の組合せ:未完成船舶や分解提示が多い業界なので、「重要な特性(essential character)」の有無を中心に判断します。
    • GIR6(6桁の選択):HS2022では特に**89.03(プレジャーボート等)**が重量/長さで細分され、6桁で差が出やすいです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 主たる用途(輸送用か、作業用か、娯楽用か)
    • 航行の位置づけ(航行が主=輸送船等 / 航行が従=作業船89.05 / 停止して使用=浮き構造物89.07)
    • 状態(完成・未完成、組立済み/未組立、解体目的の提示か)
    • “部分品”か“船体/船舶そのもの”か(第89類はここが最重要)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「船舶/ボート/浮き構造物」か?
    • いいえ → 第89類以外(例:玩具ボート95.03、模型船44.20等)
  • Step2:単体で提示される「部分品・附属品(船体以外)」か?
    • はい → 原則として第89類ではなく、材質・機能により他類(例:プロペラ84.87、帆63.06等)
  • Step3:「船体」または「未完成/分解提示の船舶」か?
    • はい → 特定の船舶の重要な特性(essential character)があるかを評価
      • 重要な特性なし → 89.06
      • 重要な特性あり → その特定船舶(例:輸送船なら89.01 等)
  • Step4:完成船(または重要特性あり)なら、主用途で項(4桁)へ
    • 輸送 → 89.01/漁業・加工 → 89.02/娯楽・スポーツ → 89.03
    • タグ・プッシャー → 89.04/作業船・浮きドック・浮遊式プラットホーム → 89.05
    • その他(軍艦・救命艇・海底電線敷設船など)→ 89.06
    • 停止して使う浮き構造物 → 89.07/解体目的 → 89.08
  • Step5:号(6桁)の分岐条件(長さ・重量・モーター有無等)で確定(特に89.03)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 89.01(輸送) vs 89.05(作業船) vs 89.07(浮き構造物):航行の位置づけと設計目的で分岐
    • 第89類 vs 第87類(車両):水陸両用“自動車”は87類、ホバークラフトは設計により89類もあり得る
    • 89.05(浮遊式/潜水式プラットホーム) vs 84.30(固定式プラットホーム)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第89類の項(4桁)は全8項です。以下、全てを一覧化します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8901人員または貨物の輸送用の船舶(客船・貨物船・はしけ等)フェリー、コンテナ船、ばら積み船、はしけ、RO-RO船娯楽用(8903)や救命艇・軍隊輸送船・病院船(8906)等は除外になり得る
8902漁船、工船、漁獲物の加工・保存用の船舶トロール船、まぐろ漁船、加工工船スポーツフィッシング用は8903。漁業用でも“櫓櫂船”は8903
8903ヨット等の娯楽/スポーツ用の船舶、櫓櫂船、カヌープレジャーボート、ヨット、カヤック、膨張式ボート(RHIB含む)HS2022で号(6桁)が大きく細分(重量・長さ・モーター等)
8904タグボート、プッシャー港湾タグ、押船主用途が曳航・押航であること(一般の輸送船は8901等)
8905照明船、消防船、しゅんせつ船、クレーン船等(航行が従)、浮きドック、浮遊式/潜水式プラットホームしゅんせつ船、クレーン船、浮きドック、半潜水式掘削プラットホーム“航行以外の機能が主”が核。固定式プラットホームは84.30へ
8906その他の船舶(軍艦・救命艇等。櫓櫂船は除外)軍艦、救命艇(非櫓櫂)、海底電線敷設船、気象観測船類注1:船体/未完成/分解提示で、特定船の重要特性がなければここへ
8907その他の浮き構造物(いかだ、タンク、コファダム、浮き桟橋、ブイ等)浮き桟橋、係留ブイ、水路浮標、浮きタンク一般に使用時は停止。輸送用ポンツーンは8901、クレーン台床は8905などに分岐
8908解体用の船舶その他の浮き構造物解撤(ship breaking)向けの廃船「解体目的で提示」されることが前提。装備品が事前に撤去されていても該当し得る

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第89類で“数字条件”が効く代表)
    • 89.03(娯楽・スポーツ用等)
      • 膨張式ボート:モーター用か/重量(100kg)
      • セールボート/モーターボート/その他:長さ(7.5m、24m)
      • 「モーターボート(膨張式以外)」は船外機艇を含まない(=船外機艇は“Other”側へ行きやすい)
    • 89.05:しゅんせつ船(8905.10)/浮遊式・潜水式プラットホーム(8905.20)/その他(8905.90)
    • 89.07:膨張式いかだ(8907.10)/その他(8907.90)
  • 89.03(プレジャーボート等)HS2022の6桁構造(実務メモ)
    • 8903.11:モーター付き/装着設計、(モーター除く)正味重量100kg以下
    • 8903.12:モーター用に設計されず、正味重量100kg以下
    • 8903.19:上記以外の膨張式(RHIB含む)
    • 8903.21/22/23:膨張式以外のセールボート(補助モーター可)、長さで3区分(≤7.5m、7.5–24m、>24m)
    • 8903.31/32/33:膨張式以外のモーターボート(船外機艇を除く)、長さで3区分(≤7.5m、7.5–24m、>24m)
    • 8903.93/99:その他(例:船外機艇などがここに来やすい)、長さで2区分(≤7.5m、それ以外)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8903.11 vs 8903.12 vs 8903.19(膨張式ボート)
      • どこで分かれるか:モーター用設計か/重量100kg条件の当てはまり
      • 判断に必要な情報:メーカー仕様(想定エンジン搭載可否)、正味重量(モーター除外の扱い含む)
      • 典型的な誤り:「電動モーター別売」の商品を“モーター用設計”と見落とす、重量の定義を取り違える
    2. 8903.31/32/33(モーターボート・船外機艇除く) vs 8903.93/99(その他)
      • どこで分かれるか:「船外機艇を含まない」という除外の読み落とし
      • 判断に必要な情報:推進方式(船外機/船内機/ウォータージェット等)、全長
      • 典型的な誤り:船外機艇を“モーターボート”側に入れてしまう
    3. 8907.10(膨張式いかだ) vs 8903.1(膨張式ボート)
      • どこで分かれるか:「いかだ(浮き構造物)」か「ボート(船舶)」か、設計目的(救難・漂流/停止使用 vs 航走)
      • 判断に必要な情報:救命設備としての仕様(自動膨張・定員・装備)、推進/操舵の設計、使用態様
      • 典型的な誤り:救難用の膨張式を“プレジャーボート”と誤認
    4. 8905.20(浮遊式/潜水式プラットホーム) vs 84.30(固定式プラットホーム)
      • どこで分かれるか:浮遊/潜水式か(曳航・自航・バラスト等)/固定式か
      • 判断に必要な情報:構造図、係留方式、バラストタンク、脚の有無、運用方法
      • 典型的な誤り:海洋掘削=すべて8905.20と決め打ち

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17部は、玩具(95.03/95.08)等を除外します(=船っぽく見えても“玩具/娯楽設備”なら第89類に来ない)。
    • 「parts / parts and accessories」に当たるからといって第17部に来るとは限らず、部注で**部品の除外(機械類・電気品・工具等)**が列挙されています。
    • 水陸両用自動車は87類
    • エアクッションビークル(ホバークラフト等)は設計類似で分類(水上走行設計なら89類へ)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • “船外機”や“レーダー”を単体で輸出入する場合、船に使うからといって第89類にせず、機械/電気の章で検討します(第17部注2の発想)。
    • ホバークラフトは、水上を走る設計なら第89類になり得ますが、陸上/水陸両用寄りなら第87類の可能性が高い、という“設計思想”で分岐します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 玩具・娯楽設備 → 第95類
    • 船舶の部品(船体以外)→ 第84類/第73類/第63類など(例:プロペラ84.87)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1):
    • 船体未完成・未組立/分解提示の船舶完成船の未組立/分解提示は、
      • その時点で「特定の船舶の重要な特性(essential character)」がなければ 89.06 に分類する、というルールです。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 条文は定義語を多く置かず「essential character」の判断を要求します(実務では、構造・主要機器の搭載状況・完成度などで総合判断)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • **船舶/浮き構造物の部分品(船体を除く)**は第89類に属さない(例:プロペラ84.87、帆63.06、いかり73.16、玩具ボート95.03等)。
    • 水陸両用自動車は87類、水上機は88.02。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:未完成/分解提示の扱い(注1+GIR2(a))
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • どの種類の船として設計されているか(輸送/作業/娯楽 等)
      • 組立状況(船体完成度、推進・操舵・航行装置の有無、搭載機器の状況)
    • 現場で集める証憑:
      • 造船仕様書、GA(General Arrangement)図、工程表、写真、インボイス明細(同梱部材リスト)
    • 誤分類の典型:
      • “鋼構造物”や“部品一式”として他類に逃がす(注1により89.06または本来の船の項へ)
  • 影響ポイント2:ホバークラフト等(第17部注5)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 走行設計(ガイドトラック/陸上/水上)、運用仕様(海上航行が主か)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様(メーカー)、用途説明、航行・揚陸・氷上走行の可否
    • 誤分類の典型:
      • “水陸両用”の語感だけで87類に固定、または逆に89類に固定(注5の設計基準に沿って再判定)
  • 影響ポイント3:「部分品(船体以外)は第89類に入らない」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 提示形態が「船舶そのもの」か「部品」か(単体提示か、船の未組立一式か)
    • 現場で集める証憑:
      • 梱包明細、構成部材の用途、材質、機能(プロペラ/舵/マスト/帆/いかり等)
    • 誤分類の典型:
      • 890xでまとめて申告(→部品は84/73/63等に分解して検討)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:船舶用のプロペラいかりを「船の部品だから第89類」とする
    • なぜ起きる:第89類は“船の類”なので、部品も同じ類と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第89類は船体以外の部分品・附属品を原則含まない。例としてプロペラは84.87(HS6で8487.10)と示されています
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「提示形態は船そのもの?部品単体?」を必ず確認
      • 部品なら“機能”で章を当てる(機械/鉄鋼製品/繊維等)
  2. 間違い:未完成の船体(ハル)を「鉄鋼構造物(例:73類)」として処理
    • なぜ起きる:見た目が構造物で、船の完成度が低いと判断が揺れる
    • 正しい考え方:第89類注1により、船体・未完成船は「特定の船舶の重要な特性がなければ89.06」
    • 予防策:
      • 造船仕様書・工程表で「どの船のハルか」「どこまで出来ているか」を裏付ける
  3. 間違い:漁船(89.02)とスポーツフィッシング用ボート(89.03)を混同
    • なぜ起きる:どちらも“釣り”に使えるため用途認定が曖昧
    • 正しい考え方:漁業用に設計された漁船は89.02。スポーツフィッシング用は89.03と明示されています
    • 予防策:
      • 「商業漁業のための設計か(漁労設備、積載・保存設備等)」「遊漁・レジャー主体か」を確認
  4. 間違い:船外機艇を「モーターボート(8903.31等)」に入れる
    • なぜ起きる:一般用語の“モーターボート”=船外機艇、と思いがち
    • 正しい考え方:HS2022の89.03では、**モーターボート区分が“船外機艇を含まない”**と明記
    • 予防策:
      • 推進方式(船外機/船内機/ウォータージェット等)を仕様書で確認
  5. 間違い:膨張式の救難用いかだを「膨張式ボート(89.03)」にする
    • なぜ起きる:“膨張式=ボート”と連想
    • 正しい考え方:89.07には膨張式いかだ(8907.10)があり、救難者運搬用の円形の浮き船等も例示されています
    • 予防策:
      • 目的(救難・漂流用か、航走用か)、装備(自動膨張・定員等)を確認
  6. 間違い:浮きクレーン/しゅんせつ船を「貨物船(89.01)」とする(または逆)
    • なぜ起きる:大型で航行するため“船”として一括認識
    • 正しい考え方:89.05は「航行が主でなく、主機能が作業」の船舶。しゅんせつ船・クレーン船等が該当
    • 予防策:
      • 主機能(作業内容)と航行の位置づけをカタログ/運用実態で確認
  7. 間違い:ポンツーン(平底船)を一律に89.07へ
    • なぜ起きる:“浮いてる=浮き構造物”と短絡
    • 正しい考え方:ポンツーンでも、輸送用は89.01、クレーン等の台床は89.05、仮橋支持等の中空筒型やいかだ類は89.07…のように分岐が明記されています
    • 予防策:
      • 「輸送用か」「作業船の台床か」「停止して支持・係留に使うか」を確認
  8. 間違い:海洋プラットホームをすべて8905.20にする
    • なぜ起きる:石油・ガス関連=“プラットホーム”で一括しがち
    • 正しい考え方:89.05は浮遊式/潜水式が対象。固定式は89.05に含まれず84.30へ、という整理が示されています
    • 予防策:
      • 係留・脚・バラストなど構造情報を入手して分類
  9. 間違い:ホバークラフト等を“水陸両用”という理由だけで87類に固定(または89類に固定)
    • なぜ起きる:製品名だけで判断しがち
    • 正しい考え方:第17部注5により、エアクッションビークルは「最も類似するビークル」に分類し、水上走行設計なら89類へ
    • 予防策:
      • 設計仕様(主にどこを走るか)を確認し、部注5に当てはめる
  10. 間違い:解体目的の廃船を“金属スクラップ”として別章で申告
  • なぜ起きる:解体前でも「廃船=スクラップ」と思いがち
  • 正しい考え方:89.08は「89.01〜89.07の船舶等で、解体目的で提示されるもの」に限定して規定
  • 予防策:
    • 契約書・用途(breaking up)・引渡し条件等で「解体目的での提示」を立証できるよう整理
    • 併せて規制(シップ・リサイクル法、バーゼル法等)も確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。船舶(第89類)は高額品が多く、HSを誤ると原産性判断(CTC/RVC等)の前提が崩れ、遡及否認リスクがあります(一般論)。
  • よくある落とし穴:
    • 「最終製品(船舶)」のHSと「主要構成品(エンジン等)」のHSを混同する
    • 未組立/分解提示の扱い(GIR2(a))により、完成品HSとしてPSRを見るべきなのに部品HSで見てしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 代表例(一般論):
    • RCEP:HS2012ベースのPSRをHS2022へ置換したPSRが採択され、2023-01-01から運用と案内されています(日本税関/外務省発表)。
    • 日英EPA:日EU EPAと同様にHS2017採用、と説明する資料があります。
    • CPTPP:HS2012基準とする政府ガイドがある一方で、委員会でPSRのHS2017/HS2022へのトランスポジションが議題となっています(=運用確認が必要)。
    • 協定ごとのHS版は、日本税関の協定関連ページでも確認できます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定が参照するHS版がHS2022と異なる場合:
      1. 協定で指定されたHS版のPSRを確認
      2. 必要に応じて相関表(correlation)で旧新コード対応を当てる
      3. 最終的に、輸入国税関の運用(ガイダンス/照会)に合わせて証明書の記載を整合

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須になりやすい社内データ(一般論)
    • BOM(材料表)、主要部材の原産国、非原産材料のHS、原価(RVC必要時)、工程表(CTC/工程要件必要時)
    • 船舶はサプライチェーンが広いので、主要ユニット(エンジン、推進器、航海機器等)の非原産性の扱いがボトルネックになりやすい点に注意(一般論)。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定本文・運用ガイドライン、税関の手引きを確認(協定ごとに異なる)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分化)8903(号レベル)旧:8903.10/91/92/99 → 新:8903.11/12/19/21/22/23/31/32/33/93/99(膨張式・セール・モーター・その他をより細かく識別)プレジャーボート等の6桁が変わりやすく、PSR参照・統計・許認可の前提が変わる
HS2017→HS2022変更なし8901, 8902, 8904〜8908(項・号レベル)第89類の他の項・号は、条文上は同一の構成に見える旧版からの移行影響は相対的に小さい(ただし国内コードは別途確認)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料の列挙と、何が変わったかの説明:
    • **相関表(HS2022↔HS2017)**では、89.03について「膨張式ボート、セールボート、モーターボートを区分するために新しい号が設定された」旨が示されています。
    • HS2017の89.03は、膨張式(8903.10)と、その他(セールボート8903.91、モーターボート8903.92、その他8903.99)という比較的粗い構造です。
    • HS2022の89.03では、膨張式ボートがモーター可否・重量(100kg)で区分され、セールボート/モーターボート/その他が長さ(7.5m、24m)で区分されています。
    • 以上から、HS2022改正で第89類全体が大きく変わったというより、89.03の統計・管理ニーズに合わせて号が細分化されたと判断できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第89類は、項(4桁)構成自体はHS2007→2012→2017→2022で同一に見えます。主な再編は**89.03の号(6桁)**です。

主要論点HS2007HS2012HS2017HS2022実務メモ(旧→新の当て方)
89.03 膨張式8903.108903.108903.108903.11/12/19旧8903.10は、モーター用設計・重量100kg条件等で新号へ分岐(条件確認が必須)
89.03 セールボート8903.918903.918903.918903.21/22/23旧8903.91は、長さ(≤7.5m、7.5–24m、>24m)で新号へ分岐
89.03 モーターボート8903.928903.928903.928903.31/32/33旧8903.92は、長さで分岐。ただし「船外機艇は含まない」点に注意
89.03 その他8903.998903.998903.998903.93/99旧“その他”も、長さ≤7.5mか否かで分岐

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ノックダウン船の「部品」申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):未組立/分解提示でも、重要な特性があれば当該船として分類すべきところ、部品としてバラバラに申告(類注1・GIR2(a)の趣旨に反する)
    • 起きやすい状況:船体+機器一式を複数コンテナで分割輸送、インボイスが“parts”表記
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:梱包明細と図面で「一体としての船舶提示」であることを整理、事前教示の活用
  • 事例名:ポンツーン(平底船)の誤分類
    • 誤りの内容:輸送用ポンツーンを89.07にしてしまう(実際は89.01)等、用途別の分岐を無視
    • 起きやすい状況:用途をインボイス品名に書かない(“pontoon”のみ)
    • 典型的な影響:税率差・統計差、説明資料要求
    • 予防策:用途・構造(甲板構造、推進の有無、使用時停止か)を資料化
  • 事例名:ホバークラフトの分類不一致(輸出入国で相違)
    • 誤りの内容:設計基準(第17部注5)を確認せず、呼称だけで87/89を決める
    • 起きやすい状況:水上も陸上も走れる製品で、販売資料が用途を幅広く記載
    • 典型的な影響:相手国側のHS差し戻し、通関遅延
    • 予防策:設計仕様書を整備し、必要なら税関相談
  • 事例名:解体目的の廃船(89.08)輸出入での追加コンプラ対応漏れ
    • 誤りの内容:89.08の分類自体は正しいが、解体・廃棄物規制やシップ・リサイクル法の確認をせずに手配
    • 起きやすい状況:中古船売買契約で“for demolition”が付く案件
    • 典型的な影響:追加書類要求、手続遅延、場合により差止め(一般論)
    • 予防策:船の状態(有害物質の有無等)と輸出入形態を整理し、関係官庁ガイドを確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 船舶そのもの(特に軍艦等)や搭載機器(レーダー等)によって、外為法・輸出貿易管理令の枠組みで個別判断が必要になり得ます(一般論)。確認窓口は経済産業省の安全保障貿易管理情報です。
  • その他の許認可・届出
    • 漁船の輸出:経済産業大臣の承認が必要で、水産庁長官の事前確認証が必要と案内されています(輸出案件で要注意)。
    • シップ・リサイクル(解体)関連:香港条約の発効(2025-06-26)に伴い、担保法である「シップ・リサイクル法(船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律)」が同日施行、総トン数500トン以上等を対象とする旨が国交省から案内されています。
    • バーゼル法(特定有害廃棄物等):輸出入する“もの”が規制対象に該当するかの判断が必要で、制度概要は経産省が整理しています(解体材・廃棄物性のある貨物は要注意)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省(漁船輸出、安全保障貿易管理、バーゼル法)
    • 国交省(シップ・リサイクル法)
    • 税関(品目分類・事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 船舶:仕様書、用途説明、全長/重量、推進方式、写真、契約書(中古/解体目的含む)
    • 解体:有害物質関係資料(IHM等、該当する場合)、輸出入先の手続要件整理

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 船種(輸送/漁業/娯楽/作業/軍用等)、運用実態
    • 仕様:全長、重量、推進方式(船外機/船内機等)、膨張式か
    • 提示形態:完成/未完成、組立/未組立、分解の範囲、同梱品リスト
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 部注(玩具除外、ホバークラフト、水陸両用)
    • 類注1(船体/未完成の扱い)
    • 「部分品(船体以外)ではないか」再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “boat/ship/pontoon/platform”だけでなく、用途・仕様(長さ/重量)を品名欄に補足
    • 図面・仕様書を添付可能な状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版の確認(RCEPはHS2022置換PSRなど)
    • BOM・原価・工程の整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 漁船輸出承認の要否(該当時)
    • 解体関連(シップ・リサイクル法、バーゼル法等)の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 89(条文・6桁構造)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 Section XVII Notes(第17部注:玩具除外、ホバークラフト、水陸両用等)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2007/2012/2017 Chapter 89(旧版比較用)〔参照日:2026-03-01〕
    • HS2022↔HS2017 相関表(第89類の改正点確認)〔参照日:2026-03-01〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説(第89類)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:EPA/原産地関連(協定ごとのHS版の情報等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:事前教示(品目分類)・検索〔参照日:2026-03-01〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 外務省:RCEP HS2022置換PSRの採択(運用開始等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:RCEP HS2022版PSRに関する案内〔参照日:2026-03-01〕
    • (参考)CPTPPのHS版・トランスポジション関連情報〔参照日:2026-03-01〕
    • (参考)日英EPAのHS版に関する説明資料〔参照日:2026-03-01〕
  • 規制(日本)
    • 経産省:漁船の輸出(外為法に基づく承認等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 国交省:シップ・リサイクル法(香港条約発効・国内法施行)〔参照日:2026-03-01〕
    • 経産省:バーゼル条約・バーゼル法の制度概要〔参照日:2026-03-01〕

※Web参照は「参照日(2026-03-01)」を記載しました。


付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 品名(一般名称+用途)、材質、構造、寸法(全長)、重量(正味重量)、推進方式、写真、カタログ、図面、梱包明細
    • 未完成/分解提示の場合:工程表・同梱一覧・完成時の仕様(重要特性の判断材料)
  • 探し方(日本税関の公開情報)
    • **事前教示回答(品目分類)**は、税関サイトでキーワード検索が可能です(公開可能な範囲の回答)。
    • 英語ページ(Advance Rulings on Tariff Classification)も用意されています。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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