「インド提案のメキシコPTA構想」——“関税ショック”への最短リスクヘッジ


「インド提案のメキシコPTA構想」——“関税ショック”への最短リスクヘッジ

2025年12月、インド政府はメキシコとの**Preferential Trade Agreement(PTA:特恵貿易協定)**締結を提案し、すでにオンライン会合を経て技術協議フェーズに入ったと報じられています。 この動きは「新規FTA交渉のスタート」というよりも、2026年1月1日から段階的に適用される、最大50%のメキシコ輸入関税引き上げへの実務的な危機対応と位置づける方が現実的です。timesofindia.indiatimes+3

いま何が起きているか(3行要約)

  • メキシコ議会は、FTA未締結国からの一部輸入品について、5〜50%の関税を課す法案を承認し、約1,400品目が対象となる見通しです(主に自動車、部品、繊維、鉄鋼、プラスチック、履物など)。reuters+2
  • インドは、自国の対メキシコ輸出(2024年輸出額約57億ドル)のうち、およそ20億ドル規模が今回の関税で打撃を受け得ると試算し、**PTAによる部分的な関税優遇で“穴を開ける”**戦略を示しています。tradingeconomics+2
  • 背景には、USMCA(2026年見直し)をにらんだ米国の対中強硬路線と、それに歩調を合わせたメキシコのサプライチェーン再編・国内産業保護という政治経済文脈があります。table+2

背景:メキシコの“非FTA国向け”関税引き上げの狙い

今回の措置は、特定国のみを狙い撃ちするというより、「メキシコとFTAを持つか否か」で世界を二分する設計になっています。 USMCA、CPTPP、日墨EPAなどの協定パートナーは優遇または現状維持となる一方、インド、中国、韓国、タイなど非FTA国は高関税MFN枠に押し込まれ、競争力が大きく低下する構図です。aa+2

メキシコ政府は、この関税引き上げの目的として、国内産業・雇用の保護、貿易不均衡の是正、特にアジア製品からの輸入代替と北米サプライチェーンへの組み込み強化を掲げています。 併せて、財政赤字の縮小に向けた関税収入増も副次的な目的とされています。financialpost+3


影響の輪郭:どの業界が“刺さる”のか

報道ベースで、メキシコが高関税対象として想定している主なセクターは以下の通りです。reuters+2

  • 自動車・二輪・部品(完成車、部品、関連金属)reuters+2
  • 繊維・衣料・履物reuters+2
  • 鉄鋼・その他金属製品gmk+2
  • プラスチック、ゴム・皮革製品、その他工業製品aa+2

インドの対メキシコ輸出は、2024年時点で約57億〜57.3億ドル規模とされ、このうち自動車、部品、繊維、鉄鋼など約20億ドル相当が新関税で大きな影響を受け得るとインド政府は見込んでいます。timesofindia.indiatimes+2


核心論点:なぜ「FTA」ではなく「PTA」なのか

インド当局者の発言から読み取れるロジックを整理すると、次の3点に収斂します。tradingview+2

  1. WTOで争いにくい構造
    メキシコは、WTOにおける譲許表(bound rate)の範囲内でMFN税率を引き上げる形をとっており、形式上はWTO義務に反しない設計です。 インド側も、「MFNベースの引き上げである以上、WTOでの法的救済の余地は限定的」とコメントしています。tradingview+1
  2. 包括的FTAは時間切れリスクが大きい
    包括的FTA交渉は、サービス、投資、政府調達、知財など幅広い分野が交渉対象となり、通常は数年単位を要します。 一方、メキシコの新関税は2026年1月1日から適用開始予定であり、このタイムラインにフルスコープFTAを間に合わせる現実性は低いと見られています。indiainmexico+3
  3. PTAなら“影響品目だけ”を優先的に救える
    PTAは、関税譲許の範囲を特定品目や限定セクターに絞り込み、関税ショックが大きい品目群に的を絞った救済設計が可能です。 インド当局者も、PTAを「影響緩和のための迅速な解決策」と位置付けており、まずは貨物貿易にフォーカスした限定的スキームから着手する構想と報じられています。economictimes+2

PTAが動き出した場合、企業実務はどう変わるか

PTAは「締結=ゴール」ではなく、「締結=実務負荷の立ち上がり」です。企業側で特に重要になる論点は次の3つです。

  1. 対象品目の線引き(自社SKUが入るか)
    PTAは、影響の大きいHS品目に絞って関税優遇を設定する設計になりやすく、品目リストに載る/載らないで明暗が分かれます。 企業としては、HSコード×原産国別に「PTA対象・非対象」を瞬時に判定できる体制が必要です。reuters+1
  2. 原産地規則(ROO)と証明の“必須化”
    関税優遇の適用には、PTAで定める原産地規則を満たし、インボイスや原産地証明書等で原産性を立証することが前提条件となります。 インド製品であっても、部材が多国籍にまたがる場合は、BOMレベルでのトレースとサプライヤー宣誓の取得がボトルネックになり得ます。itj.dgciskol+1
  3. 中継・積替え取引への監視強化リスク
    今回の関税引き上げの政治的背景には、米国が問題視する**迂回(trans-shipment)**対策やサプライチェーンの透明性強化があります。 PTAを通じた優遇が広がるほど、メキシコ税関は書類・物流経路の整合性チェックを強化し、コンプライアンス体制の差が実務リスクの差として顕在化する可能性があります。table+2

日本企業にとっての“見落としやすい示唆”

日本企業は、「日墨EPA」「CPTPP」といった枠組みにより、メキシコ向け輸出で相対的に有利なポジションを維持しているケースが少なくありません。 しかし、次のようなケースでは、今回のインド・メキシコPTA構想とメキシコ関税引き上げの影響を軽視すべきではありません。indiainmexico+1

  • メキシコ拠点がインドから部品・素材を調達している場合
    関税引き上げがそのままインプットコスト増に直結し、価格転嫁・設計変更・調達先多角化が不可避となる可能性があります。businesstoday+2
  • メキシコ市場でインド企業と競合している場合
    一時的には、インド製品が高関税で不利になり、日本製品が優位に立つ可能性があります。 しかし、PTAによってインド製品の関税負担が軽減されれば、「関税差による優位性」が短期間で失われるシナリオを織り込む必要があります。businesstoday+3

企業の打ち手(今日からできる順)

  • HSコード×原産国×契約条件ベースの影響試算
    どのHSにどの関税率がかかるのか、インド経由品がどの程度コスト上昇するのかを早期に可視化します。reuters+1
  • 価格条項・インコタームズ・再交渉条項の棚卸し
    関税負担がどこに帰属する契約かを洗い出し、価格見直しやサプライチェーン再設計の余地を確認します。newindianexpress+1
  • 原産地証明スキームの設計
    BOM精査、サプライヤー宣誓・定期監査、トレース体制の整備など、PTA適用に耐えうる証憑基盤を準備します。itj.dgciskol+1
  • 代替調達・代替生産シナリオの検討
    メキシコとFTAを持つ国からの調達・生産への切り替え余地を検証し、インド依存度の高い部材の「第二ソース」を確保します。financialpost+1
  • 業界団体・現地商工会との情報ライン構築
    品目リストや具体的税率の最終確定、PTAのスコープについて、一次情報を継続的に取得できるチャネルを確保します。timesofindia.indiatimes+1

今後の見通し:短期はPTA、長期はFTA(ただし政治次第)

インドとメキシコは、すでにオンライン会合を通じてPTAの技術協議を開始しており、短期的には**「高関税の影響が大きい品目をPTAでピンポイント救済する」方向**が現実的と見られます。tradingview+2

一方で、より包括的なFTAに発展するかどうかは、2026年USMCA見直しを含む対米関係、対中政策、メキシコ国内産業保護の政治力学に大きく左右されます。 企業としては、「短期:PTAによる部分的な関税差」「中長期:FTAや北米サプライチェーン再編による構造変化」の両方を織り込んだシナリオプランニングが必要です。bloomberg+4


本稿は公開情報に基づくビジネス上の一般的解説であり、特定の取引・案件に対する法務・税務・通関上の助言を構成するものではありません。具体的な案件については、協定正文・国内実施法・通関実務を確認のうえ、専門家への相談を推奨します。

  1. https://www.reuters.com/world/india/india-talks-with-mexico-over-tariffs-threatening-2-billion-exports-2025-12-15/
  2. https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/trade-talks-india-mexico-open-dialogue-to-blunt-tariff-shock-preferential-pact-on-the-table/articleshow/125976849.cms
  3. https://www.reuters.com/business/retail-consumer/mexicos-senate-approves-tariff-hikes-chinese-other-asian-imports-2025-12-11/
  4. https://www.aa.com.tr/en/americas/mexican-senate-approves-up-to-50-tariffs-on-imports-from-china-asian-nations/3768289
  5. https://financialpost.com/news/mexico-50-tariffs-chinese-asian-imports
  6. https://tradingeconomics.com/india/exports/mexico
  7. https://table.media/en/china/news-en/mexico-import-tariffs-against-china-and-other-asian-countries
  8. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-12-11/mexico-aligns-with-us-on-tougher-tariffs-on-chinese-asian-goods
  9. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-tariff-hike-hit-1-billion-india-car-exports-despite-automaker-lobbying-2025-12-11/
  10. https://gmk.center/en/news/mexico-approves-tariff-increases-on-chinese-and-other-asian-imports/
  11. https://www.tradingview.com/news/reuters.com,2025:newsml_L1N3XL083:0-india-proposes-trade-deal-to-counter-sharp-tariff-hike-by-mexico/
  12. https://economictimes.com/news/economy/foreign-trade/why-mexico-slapped-50-tariff-on-india-how-it-matters/articleshow/125916395.cms
  13. https://www.indiainmexico.gov.in/public_files/assets/pdf/India-Mexico_Trade_Commercial_Relations_june.pdf
  14. http://itj.dgciskol.gov.in/hsLagNXcDNZLrfxnFiuzppuA3ckWhBLyT8a0cJ41.pdf
  15. https://www.businesstoday.in/india/story/india-mexico-trade-faces-new-headwinds-amid-threat-of-up-to-50-tariff-on-asian-goods-506267-2025-12-11
  16. https://www.newindianexpress.com/business/2025/Dec/12/mexico-to-impose-up-to-50-tariff-on-indian-exports
  17. https://www.reuters.com/business/tariffs/
  18. https://www.facebook.com/etnow/posts/50-tariff-india-engaged-with-mexico-over-unilateral-hike-fta-talks-soon-read-/1274343104724591/
  19. https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/trade-deficit-narrows-november-deficit-drops-to-24-53-billion-compared-to-41-68-billion-in-october-check-details/articleshow/125974431.cms
  20. https://tradingeconomics.com/mexico/imports/india

メキシコ関税法改正:2026年1月施行へ――電子通関ファイルと罰則強化で「見える化」される貿易実務


1. 何が起きたのか:19年の大改正、2026年1月から本格スタート

2025年11月19日、メキシコ政府は官報(Diario Oficial de la Federación)で「関税法(Ley Aduanera)の改正・追加・削除」を定める大きな政令を公布しました。対象条文はなんと113条に及びます。(info.expeditors.com)

この改正は、

  • 2026年1月1日に原則施行
  • 一部の条文は施行後1か月または3か月後に段階的に適用

というスケジュールになっています。(dlapiper.com)

改正の狙いとして、各種解説では共通して次の点を挙げています。

  • 通関手続のデジタル化・トレーサビリティの徹底
  • 税関当局(SAT・ANAM)の統制強化と税収拡大
  • 密輸・過少申告・虚偽原産地証明など「huachicol fiscal(税の抜け穴)」への対策 (GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

日本企業にとっては、「関税率が上がる」話ではなく、通関実務の管理・証憑・ITシステムが一気に重くなる改正と理解するのが出発点です。

なお、日本語で「メキシコ関税法」と呼ばれることが多い法律は、ここでいう**「Ley Aduanera(税関法)」です。
別に
関税率表を定める「一般輸入・輸出税法(LIGIE)」の改正案(約1,400品目の関税引き上げ)は、今回とは別トラック**で進んでおり、後述のとおり審議が先送りされています。(dlapiper.com)


2. 改正の3つの柱

2-1. 電子通関ファイルの中身が激変:契約書・支払証憑まで必須に

今回の改正で、電子通関ファイル(expediente electrónico aduanero)に保管すべき資料の最低要件が、質・量ともに大きく引き上げられました。

KPMG や各種法律事務所の解説では、以下のような書類が**「最低限」**求められるとされています。(KPMG)

  • インボイス、B/Lなど従来の通関書類に加え
  • 電子税務証憑(CFDI)
  • 国内輸送用のCFDI+Carta Porte補完(車両・ルート・ドライバー情報を含む)(alvarezandmarsal.com)
  • 送金明細・銀行振込記録
  • 保険料・運賃・その他通関関連コストの支払証憑
  • 売買・委託加工・リースなど関連契約書一式
  • 価値申告・バリュエーション分析(Transfer Pricing との整合が問われる部分)

さらに、通関ファイルと在庫管理システム・監視カメラ・トラッキング情報を連動させた「統合電子システム」の義務化が、保税蔵置場やRFE(Recinto Fiscalizado Estratégico)などにも課されます。これらのシステムには、税関当局がリモートで常時アクセスできることが要求されています。(GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

👉 日本企業への含意

  • 「インボイス+パッキングリストさえあれば通関できる」という世界は終わりに近づいている
  • メキシコ子会社の会計・契約・物流情報を、通関ファイルに一元紐づける体制が必要
  • 日本本社側も、契約スキームや価格決定ロジックを説明できる形で文書化しておかないと、監査で突かれやすくなる

2-2. 通関業者(ブローカー)・倉庫・物流事業者への規制強化

(1) 「一生モノ」だった通関士ライセンスが20年更新制+3年ごとの認証に

これまで、メキシコの通関業者(agente aduanal)は、実務上「終身ライセンス」とも言える形で活動してきました。
しかし改正後は、以下のように制度が大きく変わります。(GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

  • 通関士ライセンスの有効期間:20年(同期間の更新可)
  • ライセンスは個人的かつ譲渡不可
  • 3年ごとの技術認定(試験・更新)が義務化
  • 公職にある者は、通関士ライセンスを取得・維持できない
  • 繰り返しの違反や重い犯罪での訴追・起訴で、停止・取消のリスクが大幅増

さらに、これまで存在した**「荷主が虚偽情報を出した場合はブローカーは免責」という条項が削除**され、
荷主の誤った申告に対しても、通関業者が連帯責任を負う方向に転じています。(alvarezandmarsal.com)

>その結果、通関業者は「自分を守るために、荷主へのデューデリジェンスと社内監査を強化せざるを得ない」と各所で指摘されています。(dlapiper.com)

(2) 倉庫・保税区画へのハイレベルなシステム要件

保税蔵置場やRFEなどの施設については、電子在庫管理・ビデオ監視・リアルタイム追跡などのシステム導入が、許可要件として明文化されます。(GPF ASESORIA DE NEGOCIOS)

  • 税関電子システムとの相互接続(インターオペラビリティ)
  • 当局への24時間リモートアクセス
  • 物流・在庫データと通関ファイルの一致性

を求められるため、IT投資なしに倉庫ビジネスを続けることは難しくなります。

(3) 物流・ECオペレーターにも直接規制

Expeditors のまとめによれば、改正は以下のようなプレイヤーにも直接影響を与えます。(info.expeditors.com)

  • 輸入貨物を保管する一般倉庫
  • 航空・宅配便などのクーリエ事業者(簡易通関スキームの明文化)
  • 越境ECプラットフォーム(登録義務や上限の見直し)

👉 日本企業への含意

  • ブローカー側がリスクを嫌い、書類の要求水準や質問のレベルが一段と厳しくなる
  • 「今まで付き合いでやってくれていた」ブローカーが、リスクの高い貨物の取扱いを断る可能性も
  • メキシコ側の倉庫・3PLに対し、システム要件・コンプライアンス状況を確認するデューデリジェンスが必要

2-3. 罰則・税務リスクの大幅強化

関税法そのものに加え、連邦税法典(Código Fiscal de la Federación)の改正もセットで行われ、
密輸・脱税・虚偽申告に対する行政・刑事リスクがかなり強化されています。(dlapiper.com)

代表的なポイントは以下の通りです。

  • 制限品・禁止品の輸入や、非関税措置(NOM・衛生規制・許可等)の不履行に対して
    貨物価値の250〜300%に相当する罰金が科され得る(dlapiper.com)
  • 価値申告(Manifestación de Valor)や電子価格証明(COVE)での誤り
    ⇒ 1件あたり約29,000〜53,500ペソの罰金(約25〜45万円規模)(alvarezandmarsal.com)
  • ラベリング違反、申告住所に貨物が存在しない場合など、新たな差押え(embargo)事由が追加(alvarezandmarsal.com)
  • FTA上の特恵関税を不正に得るための虚偽原産地証明について、
    税法典上の**「脱税」「虚偽申告」等の刑事リスク**が明確化(dlapiper.com)

👉 日本企業への含意

  • RCEP・日メキシコEPA・USMCA原産地証明などをメキシコ側が利用する場合、
    日本本社が出すサプライヤー証明や原産地情報に虚偽・過失があると、メキシコ側で刑事リスクに直結する可能性
  • 移転価格税制のみならず、関税バリュエーションの整合性が、これまで以上に重要な経営課題になる

3. IMMEX・RFEなど製造優遇スキームへの直撃

今回の改正は、単なる「通関ルール改正」にとどまらず、IMMEX・RFEといった製造優遇スキームに特に厳しいメッセージを発しています。(dlapiper.com)

3-1. RFE(Recinto Fiscalizado Estratégico)

  • RFEへの貨物導入にあたり、関税保証口座や信用状による保証義務を明文化(dlapiper.com)
  • 貨物の加工・保管・分配等を行う場合、実際に工程が行われたことを示す技術・会計資料を保持しなければならない
  • RFEが港・税関と隣接していない場合、認定された「認定商業パートナー(socio comercial certificado)」のみが輸送・通関を実施可(dlapiper.com)

3-2. IMMEX(マキラ)企業

  • IMMEX間の移転取引について、**拡張版の通関ファイル(Article 59 V)**を作成・保管する義務
    • 通常の通関書類に加え、工程資料・原材料使用実績・会計記録などを含めて一体管理 (dlapiper.com)
  • 在庫管理・工程トレーサビリティ・リモート監査に対応できるシステム導入が必須

DLA Piper は、これらの改正を踏まえ、2026年にメキシコの貿易税収が約1517億ペソから2547億ペソに増加するとの政府見通しを紹介しており、その相当部分が監査・検査強化による追加徴収と見られています。(dlapiper.com)

👉 日本企業への含意

  • メキシコでの組立・加工拠点(マキラ・IMMEX工場)を持つ企業は、最優先で影響分析が必要
  • 工場内の在庫管理・実績データと、通関データ・会計データの**「三位一体」管理**が求められる
  • RFEを活用した在庫バッファ・再輸出スキームは、保証や証憑負担の増加を前提に再設計すべき段階

4. 「関税率引き上げ法案(LIGIE改正)」との関係

今回の関税法(Ley Aduanera)改正とは別に、メキシコ政府は一般輸入・輸出税法(LIGIE)の大改正案も提出しています。

  • 1,463の関税分類を改正し、主にFTAのない国(中国など)からの輸入品に35%前後の高関税を課す構想(Eje Central)
  • しかし、このLIGIE改正案は、議会での審議が先送りされ、現行会期末の2027年8月31日まで棚上げされる可能性があるとDLA Piperは指摘しています。(dlapiper.com)
  • とはいえ、大統領は緊急権限に基づき個別に関税を引き上げる権限を維持しており、完全にリスクが消えたわけではありません。(dlapiper.com)

したがって、

  • 「2026年1月に変わるのは主に手続と罰則」
  • 「関税率そのものの大幅引き上げ(LIGIE改正)は、別の政治日程で動き続けている」

という二重の時間軸でメキシコリスクを見ておく必要があります。


5. 日本企業が今からやるべき5つのチェックポイント

最後に、日本のビジネスマンの視点で、2026年1月までに最低限チェックしたいポイントを整理します。

5-1. メキシコ側の「電子通関ファイル」体制の棚卸し

  • メキシコ法人がどの程度、
    • CFDI+Carta Porte
    • 契約書・見積り・支払証憑
    • バリュエーション資料
      一元的に保管・紐づけできているかを確認
  • ERP・WMS・TMS と通関システムが「バラバラ」になっている場合、
    2025年のうちに統合作業をどこまで進められるかが勝負

5-2. 通関ブローカーとの関係性の再構築

  • 改正後は、ブローカーも自らのライセンスを守るために保守的になります
  • 現在取引しているブローカーに対し:
    • 改正関税法への対応方針
    • 必要書類の増加や、質問項目の変化
    • 社内監査(due diligence)の頻度
      事前にすり合わせておくことが重要です

5-3. IMMEX・RFE利用スキームの総点検

  • 工場の在庫・工程データと通関データが、
    「いつでも監査対応できるレベル」でリンクしているかを確認
  • RFE利用を検討・利用中の企業は、
    • 保証口座・信用状のコスト
    • 限定された輸送業者・通関業者の利用制約
      を考慮してビジネスケースの再計算が必要です

5-4. 原産地証明・バリュエーションのガバナンス強化

  • 日本本社が発行する
    • サプライヤー証明
    • 原産地証明用の情報
    • 移転価格ポリシー
      が、メキシコでの通関・税務監査に耐えうる文書になっているか再点検
  • 特に、虚偽原産地証明に対する刑事リスクが明確化されたため、
    FTA/EPA対応部門と税務・コンプライアンス部門の連携が必須です。(dlapiper.com)

5-5. メキシコを「低コスト拠点」とだけ見ない

  • 改正は明らかに、「税関・税務コンプライアンスが重い国」としてのメキシコを前提にした制度設計です
  • 中国+1、USMCA向け生産拠点としての魅力は依然高いものの、
    「安い・緩いからメキシコ」という発想は通用しなくなるタイミングと言えます

6. まとめ:2026年のメキシコは「通関DX+監査強化」元年

  • 2025年11月19日に公布された関税法改正は、113条を一気にいじる大規模な制度変更であり、
    2026年1月1日から本格施行されます。(info.expeditors.com)
  • 中心テーマは
    • 電子通関ファイルとITシステムの義務化・高度化
    • 通関業者・倉庫・IMMEX/RFEへの規制強化
    • 罰則・刑事リスクの大幅引き上げ
      であり、実務の透明性と当局の監視能力を一気に高める内容です。
  • 関税率そのものをいじるLIGIE改正案(約1,400品目の高関税化)は、
    議会で先送りされたとはいえ、政治状況次第で再浮上し得るリスクとして残っています。(dlapiper.com)

日本企業としては、

「関税率はまだ上がっていないから安心」ではなく、
「通関・税務コンプライアンスの管理レベルを2026年仕様に引き上げる」

という発想で準備を進めることが重要です。


※本記事は、KPMG、DLA Piper、Alvarez & Marsal、Mijares、Expeditors など複数の専門家レポートを比較・確認したうえで、ビジネス向けに要約したものです。個別案件への適用には、必ず現地の専門家・顧問弁護士等の助言を受けてください。(KPMG)

メキシコ自動車関税案:「棚上げ」の深層と日本企業の対応策

1. 背景:50%関税案は「廃案」ではなく「延期」へ

2025年9月の改正案提出と衝撃
2025年9月、メキシコのシェインバウム政権は2026年度予算関連法案の一環として、輸出入関税法(LIGIE)の改正案を議会に提出しました。その核心は、一般関税率(MFN税率)の大幅な引き上げにあります 。spglobal+1

  • 対象品目: 自動車、同部品、鉄鋼、繊維など1,463品目
  • 関税率:
    • 自動車(EV含む):現行15〜25% → 最大50%argusmedia
    • 自動車部品:多くの品目で35%前後へ引き上げargusmedia
  • 影響範囲: メキシコとFTAを締結していない国(中国、韓国、インド、タイ、トルコ、ロシアなど)からの輸入約500億ドル相当photonpay+1

重要事項: 日墨EPAやCPTPP、USMCA(米国・カナダ)の要件を満たす「FTA相手国原産品」は、今回の引き上げ対象外です。日本原産品は引き続き無税または低関税が維持されます。

最新動向:2027年までの審議凍結
しかし、2025年10月28日、メキシコ連邦下院・経済通商競争委員会は、同法案の最終案取りまとめ期限を**「2027年8月末まで延長」**することを決定しました。これにより、法案が本会議で採決されるのは数年先となり、事実上の「棚上げ」となりました 。mex.news.o-abroad

【注意】ここが最大のリスクです
法案審議は止まりましたが、メキシコ憲法第131条および貿易法第4条に基づき、大統領は**「政令(Decreto)」によって関税率表(TIGIE)を随時変更する権限**を持っています。「包括的な法改正」は延期されましたが、「政令による特定品目のピンポイント利上げ」はいつでも発動可能な状態にある点に警戒が必要です 。whitecase+1

2. 延期の要因:国内産業の混乱と中国の反発

今回の決定の背景には、内外からの強い圧力がありました。

(1) 国内産業界からの悲鳴
急激な関税引き上げは、非FTA国からの輸入に依存するメキシコ国内産業を直撃します。

  • 自動車ディーラー協会(AMDA): 「中国ブランド車等を扱う約800店舗・3.2万人の雇用が危機に瀕する」と警告。
  • 自動車部品工業会(INA): 北米で調達不可能な部材をアジアに依存しており、製造コスト増による競争力低下を懸念。
  • 経営者団体(COPARMEX): 「中国対策の必要性は理解するが、一律50%への急激な引き上げはインフレを招く」として、段階的導入を要請しました 。bloomberg

(2) 中国による対抗措置の示唆
中国商務省は2025年9月、メキシコの関税方針に対し「貿易・投資障壁調査」の開始を発表し、強く牽制しました 。メキシコ新車市場における中国製車両(中国ブランドおよび欧米メーカーの中国生産車)のシェアは20.2%に達しており、経済的な結びつきは無視できないレベルにあります 。cfr+1

(3) 「2027年まで」の政治的意味
委員会による審査期限の延長は、以下のバランスを取るための高度な政治的判断といえます。

  • 財界へ: 「当面の間、急激な変更は行わない」という安心感を与える。
  • 中国へ: 「法案は確定していない」と逃げ道を残す。
  • 米国へ: 「法案自体は撤回していない」と対中姿勢をアピールする。

3. 延期の裏にある「3つの政治的意図」

公表情報と報道 から読み解く、政府の本音は以下の通りです。unav+1

  1. サプライチェーン再編のための時間稼ぎ
    名目は「国内生産の促進」ですが、現状のメキシコ産業はアジア製の部材・設備に依存しており、即時の50%関税に耐えられません。2027年までの猶予期間中に、調達網の北米シフト(ニアショアリング)を進めさせる狙いがあります。
  2. 米中対立の緩衝材(クッション)
    メキシコは「最大の顧客である米国」と「重要な供給元である中国」の板挟み状態にあります。期限延長は、米国の圧力(中国締め出し)に応える姿勢を見せつつ、中国からの即時の報復を回避するための「時間軸による調整弁」として機能しています。
  3. 2026年USMCA見直しへの「交渉カード」
    2026年に予定されるUSMCA(T-MEC)の再検討に向け、メキシコは「対中関税強化」というカードを温存しました。これを交渉材料として、米国から投資優遇や関税緩和などの有利な条件を引き出そうとする意図が透けて見えます 。reuters

4. 日本企業への影響:リスクと好機

4-1. 「日本原産」は安全だが、「メキシコ生産」は別問題
日本からの輸出品(日本原産)はEPA/CPTPPで守られますが、**「メキシコ工場がアジアから調達している部材」**はMFN関税引き上げの対象となり得ます。

4-2. リスクが高い企業の特徴

  • アジア部材依存型: 中国・韓国・タイ等の部材をメキシコで組み立てている(原産地規則上、非FTA原産となるケース)。
  • 経由輸出(迂回)型: 日本製品を中国・アジア経由でメキシコへ入れているケース。
  • IMMEX活用企業: 将来的に特定品目が免税対象から外れ、事後的に高関税が課されるリスク。

4-3. 日本企業にとってのチャンス
中国製品のコスト競争力が低下すれば、日本製品や北米生産品への回帰が進む可能性があります。品質と信頼性を武器に、メキシコ市場でのシェアを拡大する好機ともなり得ます 。automotivelogistics

5. 実務担当者が今すぐ取るべき5つのアクション

  1. 関税影響マップの作成(HSコード × 原産国)
    現在の輸入部材について、「現行税率」と「50%適用時の税率」を比較し、コストインパクトを可視化してください。これがサプライチェーンの健康診断となります。
  2. 「脱・非FTA国」調達のシミュレーション
    調達先を中国・非FTA国から、日本・北米・ベトナム(CPTPP加盟国)等へ切り替えた場合のコスト・リードタイムを試算してください。単価が多少上がっても、50%関税より安価なケースは多々あります。
  3. PROSEC / レグラ・オクターバの活用準備
    産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)や、部材の無税輸入許可(レグラ・オクターバ)の適用可能性を確認してください。政令による突発的な関税変更に備え、事前登録だけでも済ませておくことを推奨します 。monarch-global
  4. 契約への「関税変動条項」の明記
    将来の関税上昇分を誰が負担するか、価格改定のトリガー条件などを、サプライヤーおよび顧客との契約書に明文化してください。
  5. 2026-2027年を見据えたシナリオプランニング
    「2026年 USMCA再交渉」と「2027年 法案審議期限」を節目として、関税が発動された場合の在庫戦略や資金繰りへの影響を今のうちにシミュレーションしておくことが重要です。

6. まとめ:猶予期間を活かせるか

  • 「廃案」ではなく「延期」: 2027年まで法案審議は止まるが、政令によるリスクは残る 。mex.news.o-abroad
  • ターゲットは明確: 自動車・電機・機械分野における「非FTA原産品」が狙い撃ちされている 。argusmedia
  • タイムリミットは2〜3年: この期間に関税耐性のあるサプライチェーンへ組み替えられた企業だけが、北米市場での勝者となります。

本記事は2025年11月27日時点の情報に基づいています。メキシコの通商政策は流動的であるため、最新の官報(DOF)および専門家のレポートを継続的に確認してください。

  1. https://www.spglobal.com/ratings/en/regulatory/article/mexican-tariffs-a-speedbump-to-chinese-auto-firms-overseas-expansion-s101645512
  2. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-proposes-significant-customs-and-tariff-reforms-part-2026-economic-package
  3. https://www.argusmedia.com/en/news-and-insights/latest-market-news/2730867-mexico-to-raise-auto-import-tariffs-to-50pc
  4. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-auto-industry-warns-complex-outlook-ahead-usmca-review-2025-10-02/
  5. https://mex.news.o-abroad.com/~/economy/178543-en-mexico-doubts-over-tariff-reform-approval-70-billion-peso-revenue-expected.html
  6. https://monarch-global.com/2025/08/16/friendshoring-brings-industrial-sized-investment-opportunity-2-2-5-3/
  7. https://www.photonpay.com/hk/blog/article/mexico-tariff-policy-2025?lang=en
  8. https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-11-10/sheinbaum-s-china-tariffs-plan-meets-business-party-backlash
  9. https://www.cfr.org/article/china-latin-america-september-2025
  10. https://www.unav.edu/web/global-affairs/sheinbaums-trade-calculus
  11. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-discuss-tariff-hikes-with-china-others-before-making-law-2025-10-09/
  12. https://www.automotivelogistics.media/supply-chain/port-congestion-competition-pressures-loom-as-mexico-set-to-increase-tariffs-on-chinese-vehicle-imports/1608705
  13. https://www.jetro.go.jp
  14. https://mexicobusiness.news/automotive/news/mexicos-auto-industry-prepares-tariff-supply-chain-shocks
  15. https://www.prodensa.com/insights/blog/how-tariffs-are-shaping-automotive-manufacturers-in-mexico
  16. https://radiocomply.com/mexico-ift-delays-enforcement-of-ift-seal-requirements-amid-institutional-changes/
  17. https://www.argusmedia.com/es/news-and-insights/latest-market-news/2745164-mexico-s-reforms-constrain-gdp-growth-imef
  18. https://economic-research.bnpparibas.com/Media-Library/en-US/impact-will-Mexico-tariffs-have-imports-example-automotive-sector-10/21/2025,c44343
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  21. https://www.lemonde.fr/en/economy/article/2025/09/14/china-outraged-by-mexico-s-automotive-tariffs_6745399_19.html

メキシコ政府による「中国およびその他FTA非締約国からの完成車に対する最大50%関税」方針

エグゼクティブ・サマリー

メキシコ政府は2025年9月9日、中国などメキシコとFTAのない国から輸入される完成車の関税を、現行約20%から最大50%に引き上げる方針を議会に提出しました。これは2026年経済パッケージに含まれる大規模な関税改定案の一部です。whitecase+1

対象国は中国だけでなく、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、メキシコとFTAを結んでいない主要自動車輸出国全般に及びます。reuters

対象品目は完成車(乗用車・貨物車)が最大50%、自動車部品や鉄鋼・繊維なども10〜50%の幅で関税引上げが提案されており、対象品目は1,463〜1,500超のHSコード、輸入額ベースで約520億ドル(全輸入の約8.6%)に及びます。mex.news.o-abroad+2

重要な点として、本措置はMFN(最恵国)関税のみが対象であり、USMCA(米国・カナダ)、日墨EPA、EU–メキシコ協定などFTA/EPA経由の輸入には適用されません。whitecase

現状(2025年11月時点)では、本提案は議会審議中であり、承認が遅れる可能性も指摘されています。ただし与党連合が上下両院で多数を握っているため、可決される可能性は高く、承認されれば2026年初に発効し、2026年12月31日までの「時限措置」として実施される見込みです。insightplus.bakermckenzie+2

日本企業への影響は、中国など非FTA国からメキシコ向けに輸出している完成車・部品ビジネスには強い逆風となる一方、日本・EU・米加産の車両・部品の相対的競争力向上、およびメキシコ現地生産・調達の追い風という、攻守両面のインパクトが想定されます。blogs.tradlinx+1


政策の概要

法的枠組みと位置づけ

2025年9月9日、メキシコ政府は「2026年経済パッケージ」を議会(下院)に提出し、その中で「一般輸入税・輸出税法(LIGIE)」改正のための立法措置を提案しました。insightplus.bakermckenzie+1

この提案は、メキシコのWTO約束税率(バウンドレート)の範囲内で、MFN輸入関税を最大50%まで大幅引上げする内容であり、主な対象産業に自動車・鉄鋼・繊維・プラスチック・玩具等が含まれます。whitecase

従来の措置との違いとして、2024年に実施された関税引上げは大統領令(政令)による時限的なものでしたが、今回は議会承認を経ることで法的安定性を高め、訴訟リスクを低減する意図があります。whitecase

完成車に対する最大50%関税

複数の報道と法務解説によれば、完成車に関するポイントは以下の通りです。

対象品目(例示)

  • HS第87類のうち、乗用車・レーシングカー(8703)、貨物用自動車(8704)などの完成車が、新たに「50%」のMFN税率に引き上げられるカテゴリーに含まれます。blogs.tradlinx+1

現行との比較

  • 中国など非FTA国からの完成車:現行 約20% → 最大50% に引上げ。reuters

対象国(代表例)

  • 中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、いずれもメキシコとFTA/EPAを締結していないため、MFN税率が適用される国です。reuters

適用期間とスケジュール

議会審議状況: 2025年11月時点では、承認が遅れる可能性も指摘されています。一部報道では、2025年12月15日の通常会期終了前に採決される可能性があるとされていますが、確定していません。mex.news.o-abroad+1

発効時期: 議会承認・官報(DOF)公布後、早ければ2026年1月1日に発効する見込みです。insightplus.bakermckenzie+1

適用期間: 提案では2026年12月31日までの時限措置とされていますが、延長の可能性も排除されていません。whitecase

政治的背景: 与党連合が議会で多数を占めていることから、基本方針は維持されたまま可決される可能性が高いと見られています。insightplus.bakermckenzie+1


背景:なぜメキシコは「50%」という高関税に踏み切るのか

中国製自動車の急増と価格懸念

中国は近年、メキシコ向け自動車輸出で最大の供給国となっており、2024年には約44.5万台を輸出したとされています。メキシコ市場における中国ブランドのシェアは、統計により9.5%~30%と幅がありますが、廉価EV・低価格車を中心に短期間で急伸していることは共通しています。reuters

メキシコ経済相マルセロ・エブラルド氏は、「中国車などが参照価格を下回る水準で流入しており、個別のアンチダンピング調査では追いつかないため、関税そのものを引き上げる」と説明し、国内産業を守るための「防御策」であると強調しています。wsws+1

また、メキシコの対中貿易赤字は2024年に1,200億ドルに達し、過去10年で倍増しており、2025年前半だけで570億ドルを超えています。wsws+1

米国の圧力とUSMCA 2026年見直し

米国は、中国製EVや完成車が「メキシコ経由で米国市場に流入すること」を強く警戒しています。reuters

米シンクタンクCSISのマリアナ・カンペロ氏は、「米国は、中国がメキシコを経由してUSMCAを”裏口”として使うことを認めないだろう」とコメントしており、メキシコの今回の措置は「USMCA 2026年レビューを前に、米国との関係を良好に保つための『対米配慮』」と分析されています。reuters

USMCA見直しの時期: メキシコ経済省によれば、USMCAの正式な見直しは2025年10月に開始され、2026年7月1日に完了予定とされています。wyche

同時に、トランプ前大統領は2025年7月にメキシコ産品に対して30%の関税を課す可能性を示唆しており、メキシコとしては「米側の追加関税を避けつつ、国内自動車産業と雇用を守る」という難しいバランスを取ろうとしていると言えます。wyche

Plan Méxicoと国内産業保護

メキシコ政府は2025年初から、「Plan México」の下で、既に約500品目(主に鉄鋼・アルミ・一部自動車部品)に5〜25%の追加関税を導入済みであり、2026年パッケージはその延長線上に位置付けられています。whitecase

政府説明では、過度な輸入依存により「国内の重要な生産部門が失われ、外部ショックへの脆弱性が高まった」こと、近年の「ニアショアリング」潮流を踏まえ、国内付加価値とローカルコンテンツを引き上げたいという意図が明記されています。whitecase

エブラルド経済相は、今回の措置により約32.5万人の産業・製造業雇用を保護できると試算しています。reuters


関税の具体像:どの国の、どの車に効いてくるのか

対象となる完成車・部品のイメージ(HSベース)

完成車(CBU)

  • HS 8703:乗用車・ステーションワゴン・レーシングカー
  • HS 8704:貨物用自動車
  • → MFN税率:50%blogs.tradlinx+1

自動車部品(例示)

  • HS 8708:車両の部分品・付属品
  • 一部のプラスチック部品(HS39類)、アルミ部品(HS76類)など
  • → 10〜50%のレンジで個別に設定whitecase

その他主要産業

  • 鉄鋼・アルミ:約35%
  • 繊維・衣類:10〜50%
  • 玩具・二輪車:約35%reuters+1

注意点: 最終的な税率は、政令の条文(HS6〜8桁レベル)で確定するため、各社は自社製品のHSコードベースで個別確認が必須です。whitecase

対象国:FTAあり/なしで明確に線引き

関税引上げの対象

  • 中国、韓国、インド、インドネシア、ロシア、タイ、トルコなど、メキシコとFTAを締結していない国。reuters

関税引上げの対象外(FTA/EPAにより優遇)

  • 米国・カナダ:USMCA
  • 日本:日墨EPA
  • EU諸国:EU–メキシコ・グローバル協定whitecase

重要な注意点: これらの国からの輸出であっても、原産地規則(RoO)を満たさない車両・部品は「非原産品」とみなされ、50%関税の対象になり得ます。whitecase


影響分析:誰が損をし、誰が得をするのか

メキシコ自動車市場・価格への影響

政府試算では、今回の関税引上げパッケージ全体で、対象輸入は520億ドル(全輸入の約8.6%)、平均MFN税率は16.1% → 33.8%に上昇する可能性が指摘されています。reuters

短期的には、中国車などの値上がり前の「駆け込み輸入・販売」が起こり、一時的にシェアがさらに伸びる可能性があります。blogs.tradlinx

中長期的には、低価格帯を中心に値上がりし、メキシコ国内生産車(メキシコ・米・日・欧ブランド)の価格競争力が相対的に高まると見込まれています。blogs.tradlinx

中国・その他非FTA国OEM/サプライヤーへの影響

中国側は本措置に強く反発し、「外部からの圧力や様々な口実による制限に断固反対する」と表明し、必要に応じて「対抗措置も検討」としています。reuters

自動車セクターでは、車両:20% → 50%、部品:現行 → 最大50%への関税引上げが想定されており、中国製完成車・部品をメキシコ向けに輸出するビジネスモデルは大きな見直しを迫られます。blogs.tradlinx+1

BYD・Cheryなど既にメキシコ工場計画を発表していた企業は、「メキシコで現地生産し、USMCAを通じて北米市場にアクセスする」戦略を加速するか、逆に計画を見直すかの分岐点に立たされています。blogs.tradlinx

日本・EU・米加の完成車メーカーへの影響

FTA/EPAを持つ日本・EU・米加の完成車メーカーは、関税面で直接のマイナス影響を受けない一方、中国など非FTA国の車両が50%関税を負うことで、相対的な価格競争力が大きく改善します。blogs.tradlinx+1

ただし、以下のようなケースは注意が必要です:

  • 日本メーカーが中国工場からメキシコへ完成車を輸出している場合 → その車両は中国原産扱いとなり、50%関税の対象になるリスクwhitecase
  • 日墨EPAを利用しているが、原産地基準をギリギリで満たしているモデル → 中国・韓国等非FTA国の部品比率が高い場合、将来の原産地検証でリスクが高まるwhitecase
  • EUメーカーが中国製EVを自社ブランドで輸入・販売している場合 → 影響を受ける可能性whitecase

北米サプライチェーン全体への波及

メキシコはUSMCAの下で米国向け自動車輸出の重要生産拠点であり、今回の措置は、「中国製車両・部品 → メキシコ → 米国」の回廊を抑制する方向に働きます。blogs.tradlinx+1

結果として、北米3カ国の間で「より閉じたブロック経済圏」が強まり、非FTA国からの参入ハードルが上がる一方、日本・EUなど既存FTAパートナーは、北米サプライチェーンへの組み込みを深める好機ともなり得ます。blogs.tradlinx+1


日本企業へのインプリケーションとチェックポイント

日本の完成車メーカー

日本→メキシコ向け輸出/メキシコ現地生産ともに、大枠では「プラス要素」が多いものの、以下の点を要チェックです。

輸出ルート別の影響整理

  • 日本工場 → メキシコ(原産地要件を満たし日墨EPA利用) → 関税引上げの直接影響なしwhitecase
  • 中国工場 → メキシコ(日本ブランドだが中国製) → 中国原産として50%関税の対象となる可能性whitecase
  • メキシコ工場 → 米国・カナダ(USMCA利用) → 中国製部品・バッテリー比率が高いと、将来の原産地検証や米国側の追加措置のリスクwhitecase

価格・商品ポートフォリオ戦略

  • 中国・韓国ブランドが撤退・値上げした価格帯を、メキシコ現地生産の小型車・コンパクトSUV・エントリーEVで取りに行く余地blogs.tradlinx
  • 逆に、自社が中国生産に依存しているエントリーモデルは、生産拠点の移管(日本/メキシコ/他FTA国)を検討する必要whitecase

日本の自動車部品・素材メーカー

中国や非FTA国からメキシコへ輸出している案件

  • 日系企業であっても、輸出国が中国・インド・ASEAN(非FTA)であれば50%関税の対象になり得ますwhitecase
  • まずは「HSコード × 原産国 × メキシコ向け売上」一覧を作成し、影響額を試算することが重要ですwhitecase

メキシコ現地生産・調達の機会

  • 中国など非FTA国製の部品が高関税となることで、メキシコ現地生産、あるいは日本・米・EUからのFTAベース調達へのシフトが起こる可能性が高いblogs.tradlinx+1
  • 日本のTier1・Tier2にとって、メキシコ増産・新規拠点設立の投資案件が増える可能性がありますblogs.tradlinx

商社・物流・金融機関

商社・物流

  • 2025年末〜2026年初にかけて、中国・韓国・インドなどからの「駆け込み輸出」対応(在庫・港湾・通関キャパ)が必要blogs.tradlinx
  • その後は、物流量の減少と貨物構成の変化(CBU→CKD/SKD・部品)に備えたネットワーク再設計が課題blogs.tradlinx

金融機関

  • 中国企業・メキシコ企業向けの既存融資のリスク評価(事業計画の前提価格・数量の見直し)whitecase
  • 日本企業によるメキシコでのM&A・JV案件(部品・物流・販売網)の増加に備えたサポート体制構築blogs.tradlinx

今後のシナリオと実務上のアクション

シナリオ(2025〜2027年)

ベースラインシナリオ

  • 2025年末までに議会承認 → 2026年初に発効 → 2026年末まで50%関税を含む高関税が継続insightplus.bakermckenzie+1

延長・強化シナリオ

  • 2026年末の段階で、メキシコ政府が関税の延長(2027年以降)あるいはより選択的な制度(特定国・特定品目に継続)を導入する可能性whitecase

遅延・緩和シナリオ

  • 議会承認が遅れ、2026年の発効が遅れる可能性mex.news.o-abroad
  • 中国との関係悪化やWTOでの問題化を避けるため、政治的なディールにより税率引下げや適用除外が検討される可能性もゼロではありませんreuters

日本企業が今取るべき具体的アクション(チェックリスト)

自社影響の定量把握

  • 「製品別HSコード × 原産国 × メキシコ向け売上」を一覧化
  • 現行20% vs 50%での粗利・販売価格へのインパクト試算whitecase

原産地戦略の見直し

  • 日墨EPA・USMCA・EU–メキシコ協定などを活用した原産地基準(RoO)の再確認・構成変更
  • 中国・非FTA国からの調達比率が高い場合、サプライチェーンの再設計を検討whitecase

価格・契約条件の見直し

  • メキシコ向け長期契約について、関税変動条項(tax/tariff adjustment clause)の有無と、価格改定の交渉余地を確認whitecase

現地情報の継続的モニタリング

  • メキシコ官報(DOF)、経済省・財務省の発表、業界団体(AMIA、AMDA など)のコメントを継続フォローmex.news.o-abroad+1

メキシコ現地パートナーとの連携強化

  • 通関業者・現地法律事務所と連携し、実際のHSコード・適用税率・通関実務への影響を早期にキャッチアップwhitecase

まとめ

今回のメキシコの50%関税方針は、単なる「中国たたき」にとどまらず、以下を意味します:wsws+2

  • 非FTA国に対するMFN関税の大幅引上げ
  • USMCAを軸にした北米ブロック化の加速
  • ニアショアリング/ローカルコンテンツ重視への明確なシフト
  • メキシコの対中貿易赤字削減と国内雇用保護

日本企業にとっては、中国・非FTA国拠点からのメキシコ向け輸出ビジネスには大きな再設計が必要である一方、日本・メキシコ・米国・EUとのFTAネットワークを活かした「良いポジション」を取るチャンスでもあります。blogs.tradlinx+1

まずは、自社のメキシコ向けビジネスをHSコード・原産国単位で棚卸しし、「どこで50%関税リスクを負っているのか」「どこで相対的優位を取れるのか」を可視化することが、実務的な第一歩と言えます。whitecase

  1. https://www.whitecase.com/insight-alert/mexico-proposes-significant-customs-and-tariff-reforms-part-2026-economic-package
  2. https://www.reuters.com/business/autos-transportation/mexico-raise-tariffs-cars-china-50-major-overhaul-2025-09-10/
  3. https://mex.news.o-abroad.com/~/economy/178543-en-mexico-doubts-over-tariff-reform-approval-70-billion-peso-revenue-expected.html
  4. https://insightplus.bakermckenzie.com/bm/international-commercial-trade/mexico-initiative-to-reform-the-customs-law-and-the-tariff-of-the-general-import-and-export-tariffs-law
  5. https://blogs.tradlinx.com/mexico-eyes-50-auto-tariffs-on-china-what-it-means-for-lsps-shippers/
  6. https://www.wsws.org/en/articles/2025/09/22/oyqn-s22.html
  7. https://wyche.com/the-evolving-tariff-landscape/
  8. https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/5926/text/ih?overview=closed&format=xml
  9. https://www.csis.org/analysis/usmca-review-2026
  10. https://mexicobusiness.news/trade-and-investment/news/mexico-prepares-2026-tariff-reform-amid-global-uncertainty

メキシコの関税分類等に関する事前教示(Advance Ruling)制度の実務概要

(本記事の確認日:2025年10月10日)

本稿では、メキシコの関税分類(HSコード)などに関する「事前教示(Advance Ruling/スペイン語:Resolución anticipada)」制度の概要と実務について解説します。

本稿の情報は、T-MEC(USMCA)第7章の国内実施規定である官報(DOF)告示、およびメキシコ税務庁(SAT)の公式ウェブサイトに掲載されている手続様式「E13」などを基に整理しています。


1. 担当機関と関連情報

メキシコの税関当局(autoridad aduanera)は、2022年1月以降、財務省傘下の独立機関である**国家税関庁(ANAM)が担っています。一方で、事前教示制度を含む税関関連手続きの申請窓口や審査実務は、従来通り税務庁(SAT)**の所管部局が担当しています。

制度の詳細は、以下の公式サイトで確認できます。

申請資格や審査手順といった制度の根幹は官報(DOF)に、具体的な申請窓口や必要書類などの実務情報はSATのウェブサイトにそれぞれ記載されています。


2. 申請プロセス

(1) 申請資格 メキシコの輸入者、T-MEC締約国(米国・カナダ)の輸出者または生産者、および正当な理由を持つその他の者が申請できます。代理人による提出も可能です。

(2) 対象事項

  • 関税分類(HSコード)
  • 関税評価方法の適用基準
  • 原産地判定(T-MEC協定上の原産品か否か)
  • その他、当事国間で合意した事項

※関税評価については、適用する「評価方法」の判断が対象であり、具体的な課税価格の決定は対象外です。

(3) 提出先 申請様式「E13」に必要書類を添付し、SATの下記担当部局へ提出します。

  • 原産地関連: ACAJACE (Administración Central de Apoyo Jurídico de Auditoría de Comercio Exterior)
  • 関税分類・評価関連: ACNCE (Administración Central de Normatividad en Comercio Exterior)

(4) 申請後の流れ 申請はスペイン語で行います。審査の過程で、追加情報やサンプルの提出を求められることがあります。なお、すでに紛争中または審査中の同一案件は受理されません。

(5) 結果の通知と不服申立 審査結果は**書面(Resolución anticipada)**で通知されます。法定期間(後述)内に通知がない場合は「不作為(=申請が認められなかった)」とみなされ、不服申立(revocación)、行政訴訟(TFJA)、アムパロ(憲法訴訟)といった法的手続きへ進むことができます。


3. 主な申請情報・必要書類

申請様式「E13」およびDOF規則77~78条で定められている主な記載事項・添付書類は以下の通りです。

  • 当事者情報
    • 申請者(輸入者/輸出者/生産者)の名称、住所、連絡先、通知を受け取るメールアドレス
    • 代理人が提出する場合は、その権限を証明する書類
  • 関連手続きの状況申告
    • 同一事項に関する原産地検証、既存の事前教示、各国での訴訟・不服申立の有無
  • 事実関係の詳細
    • 申請の目的・背景、T-MEC第7.5条(4)項に基づく申請動機、貨物の概要
  • 技術情報(特に関税分類の申請で必須)
    • 貨物の性状、組成、状態、特性、製造工程、輸入時の包装形態、用途(最終的な使われ方)、商慣習上の名称や技術名
    • 図面、写真、カタログ、サンプルなど(必要に応じて材料情報も)
  • 原産地関連情報
    • 生産工程の説明、使用材料の内訳とその根拠など、協定で定められた情報
    • ※様式E13の提出要領に詳細な記載があります。代表者の権限証明書、身分証明書、サンプル等の添付が必要です。

4. 審査期間

  • 原則120日以内 T-MEC第7.5条(6)項に基づき、申請に必要な情報がすべて受理されてから最長120日以内に事前教示が発出されます。期限を過ぎても発出されない場合は「不作為」とみなされ、不服申立が可能です。
  • 注意点 SATのウェブサイトには「審査期間は適用される条約・協定に依存する」との注記があります。T-MEC以外の協定に基づいて申請する場合は、該当する協定の規定も併せて確認してください。

5. 事前教示の効力と有効期間

  • 効力発生日 発出日、または裁定書で指定された日から有効です。
  • 有効期間 明確な有効年数は定められておらず、法令改正や裁定の変更・撤回がない限り有効です。ただし、法令の改廃、申請内容の事実関係の変更、情報の誤りや虚偽などが判明した場合は、変更または撤回される可能性があります。
    • 変更・撤回は原則として将来に向かってのみ効力を持ちますが、虚偽申請など悪質な場合は遡及して適用されることがあります。
  • 法的拘束力 当局が発出した書面による事前教示は、申請者から提示された事実関係と同一の貨物が輸入される際、その関税分類や原産地などの税関手続きにおいて尊重され、通関時の予見可能性を高める役割を果たします。

6. 費用

  • 手数料:無料(Trámite gratuito) SATの公式ウェブサイトに明記されています。
  • その他 サンプルの送料、書類の翻訳費用、外部機関の試験成績書の取得費用など、申請資料の準備にかかる実費は申請者負担となります。

7. 実務上の留意点

  • 不受理となるケース 申請案件と同一の事項が、すでに他の審査や不服申立の対象となっている場合、当局は理由を付して申請を拒否することができます。
  • 通知方法 SATの電子通知システム(Buzón Tributario)、対面、書留郵便などで通知されます。
  • 不服申立の制度 審査庁への異議申立(revocación)、行政裁判所への提訴(TFJA)、憲法訴訟(amparo)の三段階の仕組みがあります。
  • 使用言語 申請はスペイン語で行います。外国語の資料には、スペイン語翻訳の添付が推奨され、場合によっては要求されます。
  • 関連制度との違い(重要) 国内向けの手続きである「技術会合(Juntas técnicas de clasificación arancelaria)」や「分類・NICO照会(Consulta de Clasificación Arancelaria y del Número de Identificación Comercial)」は、条約に基づく国際的な「事前教示(Advance Ruling)」とは異なる制度ですので、混同しないよう注意が必要です。

■ すぐに使える!実務チェックリスト

  • [書類準備] 申請様式「E13」の必須項目と、DOF規則77~78条が要求する記載要件(関連手続きの状況、事実関係、通知先など)を漏れなく記載する。
  • [関税分類] 組成(%)、製造工程、用途、構造などを明確にし、図面・写真・カタログ・サンプルを添付して、類似品との違いを具体的に示す。
  • [原産地] 使用した材料の内訳、加工工程、適用される原産地規則の条文(協定の該当付表など)を整理し、申請内容と事実が同一であることを証明する。
  • [工程管理] 当局からの追加資料要請に迅速に対応できるよう、技術・調達・品質管理部門との連携体制を整えておく。120日という法定上限を念頭に置き、万が一の不作為に備えた不服申立のスケジュールも計画に含める。

■ まとめ(要点早見表)

項目内容
申請窓口SAT(担当:ACAJACE/ACNCE)。様式「E13」で申請。
対象事項関税分類(HSコード)、関税評価の方法、原産地判定など。
審査期間必要情報がすべて揃ってから120日以内。期間内に発出されない場合は不服申立が可能。
効力発出日から有効。法令改正や裁定の変更・撤回まで有効(原則として遡及適用なし)。
費用無料(ただし、資料準備に伴う実費は申請者負担)。

今年最初のFTA相談

私も今年の業務本格稼働です。

本日、メキシコ向けでFTA利用の相談でした。証拠書類を作成されて、持ってこられました。

該当のHSコードで、日メキシコだと、CTSH+VA50。日メキシコでとのことで、証拠書類を吟味すれば、TPPの利用の方が証明しやすいことが判明。CTSHで関税は5%から無税に。

VAで悩んでいたことが一挙に解決。担当者は助かったのではないでしょうか。

TPPなら、一定期間内の過去に輸出したものにも適用可能。

安心して帰って行かれました。

【ニュース】FTA、農業・投資に拡大 EU・メキシコ大筋合意 保護主義への対抗強調

【ニュース】FTA、農業・投資に拡大 EU・メキシコ大筋合意 保護主義への対抗強調

2018年4月23日

日本経済新聞

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180423&ng=DGKKZO29697040S8A420C1FF8000