インド向け輸入実務で、HSコードの誤記載が単なる事務ミスとして扱われにくくなっています。

背景にあるのは、海上貨物情報の提出ルールを刷新するSCMTRの運用高度化と、それを支える関税法(Customs Act, 1962)の罰則枠組みです。

インド税関のSCMTR関連文書と関税法条文、税関ゾーンの公示(Public Notice)を確認できます(下記参照)。

・ICEGATE(インド税関EDIポータル)のSCMTR利用者向けアドバイザリにおいて、Arrival Manifest(到着マニフェスト)に8桁HSコードの記載が必須であることが明記されています。
・SCMTR(Sea Cargo Manifest and Transhipment Regulations, 2018)自体が、到着・出港マニフェストの提出タイミングを前倒しし、誤りや遅延がある場合の取扱い(修正・補完の許容条件)を規定しています。
・関税法(Customs Act, 1962)第30条は、マニフェスト提出遅延に対する罰金(上限5万ルピー)と、内容が不完全・不正確な場合の補正許容(不正意図なしの場合)を規定しています。
・同法第114AA条は、虚偽または重要事項の不正確な申告・書類利用を「故意に」行った場合、貨物価値の5倍までの罰金を規定しています。
・税関ゾーン単位では、SCMTRの新フォーマット提出を港ごとに段階的に必須化する公示が出ており、実務移行が「運用として」進んでいます(例:Chennai Customs)。

厳格化は、単に「罰金額が上がった」という話に限りません。実務上は次の2層で効いてきます。

SCMTRは、従来のIGMに代わるArrival Manifest等を、最終外国寄港地からの出港前に電子提出する運用へ寄せています。ここでHSコード(少なくとも所定桁数)が必須項目として扱われ、欠落・不整合があると、訂正対応や照会でリードタイムが伸びやすくなります。

関税法第30条は、マニフェストの提出遅延に対して上限5万ルピーの罰金を置きつつ、内容が不正確・不完全でも「不正意図なし」であれば補正を許容する枠組みを持っています。つまり、誤記載が発見されたときに「直ちに罰則」ではなく、「迅速な補正と説明で収束できる余地」が制度上は残っています。

一方で、誤ったHSコードが、関税回避や規制逃れ(輸入規制・認証対象の回避など)と結びつくと、虚偽・重要事項の不正確記載として第114AA条の射程に入り得ます(貨物価値の5倍までの罰金)。

HSコードの誤りは、単発の訂正で終わらず、マスターデータに誤りが残ると同一品番の再出荷で繰り返します。SCMTRのように事前提出が前提になると、港到着後に気づくのではなく、出港前後に差戻しが発生し、輸送計画そのものに影響します。

誤分類による追徴リスクに加え、滞船料・保管料、納期遅延の違約金、緊急輸送への切替コストが膨らみます。加えて、マニフェストの不備は物流事業者側の修正費用や手数料に転嫁されやすく、総コストが見えにくい形で増えます。

制度上、誤りの補正が許容される場合でも、説明が弱いと「なぜそのHSだったのか」「誰が判断したのか」「同種案件がないか」という論点に発展しやすい。ここで社内統制が弱いと、個別ミスが組織的リスクに格上げされます。虚偽・重要事項の不正確記載と評価されると、制裁は急に重くなります。

・誰が最終判断者か(貿易管理、品目分類担当、外部専門家)
・判断根拠(GRI、品目の機能・材質・用途、類似裁定、社内標準)
・インド固有の8桁運用(ITC(HS)相当)の扱い

この3点を最低限ひも付け、監査で再現できる状態にします。

・インボイス品名と梱包明細の品目説明
・HSコード(6桁と8桁)
・マニフェスト/申告データ(Arrival ManifestやBill of Entryに連なる情報)

書類間で品目説明とHSがずれていると、誤記載として見つかりやすくなります。SCMTRはまさにこの整合性を前提に設計されています。

・発見した時点で、補正の可否と必要資料を即判断
・不正意図がないことを示す材料(社内承認記録、仕様書、過去の一貫性)を添付
・補正の根拠として、制度上の補正許容(不正意図なし)を踏まえて説明

関税法第30条およびSCMTRには、不正意図がない不完全・不正確について補正を許容する設計が読み取れます。

SCMTRは段階的に新フォーマット必須化が進みます。例えばChennai Customsでは港ごとに必須化日程が公示されています。自社貨物が入る港とフォワーダーの運用準備がずれていると、誤記載が「訂正の遅れ」へ連鎖しやすくなります。

・主要品目のHSコードは、直近12か月で再検証したか
・HSコードと品目説明の整合を、出荷前に機械的に検知できるか
・誤記載が見つかったとき、補正と説明のテンプレートがあるか
・物流パートナーに渡すHSコードは「単なる情報」ではなく、社内承認済みのものか
・故意と見られないための記録(判断根拠・承認ログ)を保持しているか

・ICEGATE:SCMTR利用者向けアドバイザリ(Arrival Manifestに8桁HS必須の記載あり)
・Sea Cargo Manifest and Transhipment Regulations, 2018(SCMTR本体。誤り・遅延時の補正の考え方を含む)
・Customs Act, 1962(第30条:マニフェスト遅延罰と補正、第114AA条:虚偽・重要事項の不正確記載の罰則)
・Chennai Customs:SCMTRの段階的必須化に関するPublic Notice(港別の適用日程)

免責

本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。実際の申告・契約・規制適合は、対象国の法令と最新の当局公表、必要に応じて専門家見解に基づき判断してください。

中国の静かなる貿易障壁。化学品・新材料のHSコード細分化が突きつける「その他」分類の終焉


2026年2月、中国税関総署(GACC)は、輸出入管理の強化を目的として、特定の化学品および新材料に関するHSコード(統計品目番号)の細分化を実施する方針を打ち出しました。

多くの日本企業にとって、中国との化学品貿易はビジネスの生命線です。今回の措置は、単なる事務的なコード変更ではありません。それは、中国政府が戦略物資のフローをより高解像度で監視し始めたことを意味します。

本記事では、HSコードの専門家の視点から、この細分化の背景にある中国の意図と、実務担当者が直面するリスク、そしてとるべき対策について解説します。

「その他」という隠れ蓑が通用しなくなる

まず、今回の措置の技術的な側面を解説します。

貿易実務において、既存の分類に当てはまらない新しい化学物質や複合材料は、便宜上「その他のもの(Others)」と呼ばれるバスケットカテゴリー(末尾が90などのコード)に分類して申告することが一般的でした。企業にとっては、厳密な成分特定を避けられる便利な分類先でもありました。

しかし、中国当局は今回の細分化により、このバスケットカテゴリーを解体しようとしています。

具体的には、これまで一括りにされていた品目に対し、成分の含有率や分子構造、あるいは用途に基づいて、新しい固有の10桁ないしは13桁のコード(CIQコード含む)を割り当てます。これにより、企業は「その他」で逃げることができず、自社製品がピンポイントでどのコードに該当するかを、化学的なエビデンスに基づいて特定し直さなければならなくなります。

輸出管理法との連動。狙いは戦略物資の把握

なぜ今、中国はこの面倒な細分化を行うのでしょうか。その最大の動機は、国家安全保障と産業競争力の維持です。

近年、半導体材料やバッテリー素材、高機能プラスチックなどの「新材料」は、軍事転用可能なデュアルユース品目としての側面を強めています。中国政府は、これらの物資が国内にどれだけ入ってきているか、あるいは国内から流出していないかを正確に把握したいと考えています。

従来の粗いHSコードでは、汎用の化学品と、高度な戦略物質が同じ番号でカウントされてしまい、実態が見えませんでした。コードを細分化し、特定物資に固有の番号を与えることで、税関のシステム上で自動的に監視フラグを立てることが可能になります。

つまり、今回の措置は、中国輸出管理法や両用物資輸出管理条例の実効性を高めるための、システム基盤の強化であると言えます。

実務現場で起きる通関トラブルのシナリオ

この変更に伴い、日本企業の現場では以下のようなトラブルが予測されます。

旧コードでの申告却下

ある日突然、これまで通りのHSコードで申告した貨物が、中国側の通関システムでエラーとなり、受け付けられなくなるケースです。「このコードは廃止されました、あるいはこの製品には適用できません」と通告され、新しいコードへの修正を求められますが、その場で化学的な証明ができなければ、貨物は港で足止め(デマレージ)となります。

ライセンス未取得の指摘

コードが細分化された結果、自社製品が新たに割り当てられたコードが、実は「輸出入ライセンス(許可証)」が必要な規制対象コードだった、という事態です。これまでは「その他」に紛れていたため不要とされていましたが、コードが特定されたことで規制の網に掛かり、無許可輸出入として摘発されるリスクが生じます。

日本企業が直ちに行うべき3つの対策

このリスクを回避するために、化学品や素材を扱うメーカー・商社は以下の対応を急ぐ必要があります。

現地通関業者への最新コードリスト確認

まずは、中国現地の通関ブローカーや現地法人を通じて、今回細分化の対象となった具体的な品目リスト(対照表)を入手してください。そして、自社が扱っている製品がその対象に含まれていないか、CAS番号(化学物質の登録番号)レベルで照合を行う必要があります。

CIQコード(13桁)までの精緻な特定

中国の通関固有のコードであるCIQコード(HSコード10桁の後ろに付く3桁の追加コード)の動向に注意してください。法規制の要件はこのCIQコードに紐付いています。単にHSコード(上6桁や8桁)が合っているかだけでなく、末尾のコードまで正確に特定できているかが、通関の成否を分けます。

成分表(SDS)と説明書のアップデート

税関から問い合わせがあった際、即座に成分構成を説明できるよう、SDS(安全データシート)や製造工程図を最新の状態に整備してください。特に、新しいコードの定義に合致することを証明するための「成分比率」の記載が不十分だと、判定不能として処理が遅延する原因になります。

まとめ

中国によるHSコードの細分化は、貿易の透明性を高めると同時に、企業に対して高度なコンプライアンス能力を要求するものです。

「たかが番号の変更」と甘く見ていると、物流停止という深刻な経営リスクを招きます。自社の化学品が、中国の新しい分類基準のどこに位置づけられるのか。専門的な知識を持って再点検を行うことが、2026年の中国ビジネスを守る第一歩となります。

2028年の関税ショックを回避せよ。日EU・EPA「HS読み替え指針」が示す実務の解


2026年2月4日、日本と欧州連合(EU)の貿易当局間で進められていたある重要な協議の実質的な合意が報じられました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、日EU・EPAの運用ルールをどう適応させるかという運用ガイドラインの第一案がまとまったというニュースです。

これは、多くの貿易実務家が2028年問題として懸念していた、申告コードと協定ルールの不整合による混乱を未然に防ぐための処方箋です。

本記事では、FTAの専門家の視点から、このガイドラインが示された背景にある構造的な課題と、企業が2028年に向けて構築すべき二重管理体制について深掘り解説します。

なぜ2028年に原産地証明が止まる恐れがあったのか

まず、この問題の核心である協定の硬直性とHSコードの流動性のギャップについて整理します。

2019年に発効した日EU・EPAは、その原産地規則(製品が日本産か欧州産かを判定するルール)の基準として、2017年版のHSコード(HS 2017)を採用しています。条文に書かれている品目番号や関税分類変更基準(CTC)は、すべて2017年当時の世界に基づいています。

しかし、貿易の現場で使われるHSコードは5年ごとに改正されます。2022年の改正を経て、次は2028年1月1日に大規模な改正が行われます。

ここで生じるのが、輸入申告書には最新の2028年版コードを書かなければならないのに、特恵関税を適用するためのルールブックは2017年版のままという矛盾です。もし、ある製品のコードが改正で変更されていた場合、どのルールを適用すればよいのかが不明確になり、最悪の場合、原産地証明書の不備として関税優遇が否認されるリスクがありました。

魔法の辞書、相関表の公式化

今回まとまったガイドラインの核となるのは、相関表(Correlation Table)の公式な導入です。

本来、新しいHSコードに対応するためには、協定の条文そのものを書き換える転換(Transposition)という手続きが理想ですが、これには膨大な時間と法的承認プロセスが必要です。そこで当局は、条文は書き換えずに、読み替えのための辞書を用意するという現実的な解決策を選びました。

相関表の役割

この公式相関表は、HS 2028のコードとHS 2017のコードを紐付ける変換テーブルです。

例えば、HS 2028で新設されたある化学品のコードが、HS 2017ではどのコードに該当していたのかを一対一、あるいは一対多で定義します。企業はこの表を参照することで、最新のコードで申告しつつ、裏側では正しい旧コードの原産地規則を適用することが可能になります。

ガイドライン案では、この相関表を日EU双方の税関が公式な判定基準として認めることが明記される見込みです。これにより、企業は独自の解釈ではなく、当局のお墨付きを得た変換ロジックに基づいて業務を行うことができます。

企業に求められるHSコードの二重管理

このニュースは朗報ですが、同時に企業に対して高度なデータ管理を求めています。それは、通関用コードと原産地判定用コードの完全な分離管理です。

2028年の実務フロー

これまでは、インボイスに記載するHSコードが決まれば、そのままそのコードの原産地規則を確認すれば済みました。しかし、2028年以降のEPA活用プロセスは以下のようになります。

  1. 通関用コードの特定:製品のスペックに基づき、最新のHS 2028コードを決定する。(輸入申告用)
  2. 相関表の参照:ガイドラインに基づき、そのコードに対応するHS 2017コードを特定する。
  3. 原産地規則の適用:特定されたHS 2017コードに基づき、協定上のルール(関税分類変更基準や付加価値基準)を満たしているか判定する。

もし、自社のシステムが最新のHSコードしか保持できない仕様になっている場合、このプロセスに対応できません。

落とし穴となるみなし変更

特に注意が必要なのは、HSコードの項番(上4桁)が変わるような改正があった場合です。

例えば、技術革新により製品の機能定義が変わり、第84類から第85類へ移動した場合、最新コードだけを見ていると関税分類変更基準(CTH)を満たしているように見えるかもしれません。しかし、2017年版のコードに引き直すと実は項番が変わっていない(変更基準を満たさない)というケースが発生し得ます。

このような意図しないミスを防ぐためにも、公式相関表を用いたロジックチェックは必須となります。

まとめ

日EU・EPAの運用ガイドライン第一案の策定は、2028年の貿易実務における交通整理が始まったことを意味します。

FTAの専門家として助言できることは一つです。2028年になってから慌てて相関表を見るのではなく、今のうちから自社の製品マスタにEPA判定用(HS 2017)という固定フィールドを設け、最新コードとは切り離して管理できる体制を整えておくことです。

過去のルールを正しく参照し続ける能力こそが、未来の関税削減メリットを確実に享受するための鍵となります。

タイ税関が電子機器パーツのHSコード解釈を厳格化

実務で最も警戒すべきポイントは2つあります。
1つ目は、通関時の分類(HS)に対する追加資料要求が増え、通関の初速が落ちること。
2つ目は、通関後の事後調査で分類差を指摘され、追徴や手続き負担が増えることです。

タイでは以前から、関税分類の解釈相違がFTA適用可否や追徴に直結しやすいという指摘があります。JETROは、タイ税関の関税分類解釈を起点に、輸入時または事後調査でHS相違を指摘され、過去に遡及して負担が生じる事例に言及しています。(JETRO)
さらに近年は、当局側がデジタル化と監査高度化を進め、HSコードを含む申告の正確性をより厳密に検証する方向性が明確です。タイの税関・税務環境が厳格化し、税関当局が事後調査やAI活用を強化している旨が、PwC Thailandの発信でも説明されています。(PwC)

以下、電子機器パーツに焦点を当てて、何が起きやすいのか、企業はどう備えるべきかを、HSコード実務の観点で整理します。


1. 「厳格化」が意味するもの:現場では何が変わるか

ニュースの見出しが「HSコード解釈の厳格化」である場合、現場で起きやすい変化は概ね次の3類型です。

  1. 申告時のエビデンス要求が増える
    インボイス品名が抽象的、部品用途が曖昧、仕様が不足している場合に、カタログ、仕様書、写真、構成部材、機能説明の追加提出を求められやすくなります。郵便・小口領域でも、タイ向けは2026年1月1日以降、通関電子データの要求が強化され、不十分・不正確だと遅延や返送リスクが高まると日本郵便が注意喚起しています(6桁HS推奨、詳細な品名等)。(郵便局 | 日本郵便株式会社)
  2. 部品か完成品か、複合品かの線引きが厳しくなる
    電子部品はモジュール化が進み、「単なる部品」ではなく、特定機能を完結するユニットとして評価されやすい領域です。ここを税関側が厳密に見始めると、分類が変わるだけでなく、必要許認可や税率、FTA適用実務まで連鎖します。
  3. 事後調査での再判定が増える
    タイ当局は事後調査の仕組みを整備し、輸入時は迅速化しつつ、後段で精緻に確認する運用を強めています。(PwC)
    この局面では、同一品目を継続輸入している企業ほど、過去分まで一括で影響が出ます。

2. なぜ「電子機器パーツ」が狙われやすいのか

電子機器パーツは、税関分類の観点で「揉めやすい条件」が揃っています。

  • 製品の多様化が速く、機能と構造が短期間で変わる
  • 部品と完成品の境界が曖昧になりやすい(モジュール、組立品、キット)
  • 章またぎ(第84類・第85類・第90類など)が起きやすい
  • HSの違いが、関税だけでなく規制(許認可、標準、禁制)やFTA実務に波及しやすい

加えて、タイでは従来から「担当官によりHSコードの解釈が異なる」「判断基準の透明性が課題」といった指摘が、日本側の対外要望の中で繰り返し表面化しています。(jmcti.org)


3. 電子機器パーツで頻出する分類論点(実務での地雷)

ここからは、企業側が社内チェックリストに落とし込みやすい形で、論点を整理します。個別のHS番号断定が目的ではなく、税関から質問される論点を先回りして潰すことが目的です。

論点A 部品(parts)として認められるか

チェック観点

  • 当該パーツは、特定の機器に専ら又は主として使用されるか
  • 単体で独立した機能を発揮するか(測定、変換、通信、制御など)
  • ソフトウェアを搭載し、単体で特定機能を完結するか
  • 外観上、完成品の性格が強いか(筐体、表示、入出力、電源等)

用意する証跡

  • 用途を特定できる資料(組込先の型式、図面、取付位置、BOM上の位置付け)
  • 単体機能の範囲が分かる資料(仕様書、ブロック図、入出力仕様)
  • 市販汎用品か専用品かの説明

論点B 複合機能品の「本質」判定

チェック観点

  • 複数機能がある場合、主要機能は何か
  • 主要機能を支える部材構成は何か(価値、体積、役割)
  • 測定機能があるのか、制御機能があるのか、単なる信号変換か

用意する証跡

  • 機能説明(何を入力し、何を出力し、何を達成する製品か)
  • 構成部材表(主要IC、センサー素子、電源、通信部等)
  • 動作モードと使用シーン

論点C 通関・FTAでの「HS不一致」リスク

タイでは、原産地証明書に記載されたHSと、輸入通関で税関が判断するHSが不一致とされ、FTA税率が認められない相談が多いとJETROが指摘しています。(JETRO)
分類厳格化局面では、この不一致が起きる頻度が上がります。

用意する証跡

  • FTAで使うHS(協定上の基準年・桁数)と、通関で使うHS(現行税番)の対応関係
  • 相手国輸入者と合意したHS見解メモ
  • 分類根拠(後述の分類ドシエ)

4. 会社が今日から整備すべき「分類ドシエ」最低限セット

電子機器パーツで通関が止まりやすい会社ほど、HSを「番号」ではなく「判断記録」として持っていません。厳格化局面で効くのは、次のような最低限のドシエです。

  • 製品概要:用途、組込先、製品写真
  • 機能説明:入力、処理、出力、主要機能
  • 仕様書:電気仕様、通信仕様、測定範囲等
  • 構成部材:主要部品表、基板実装の有無、ソフトウェア搭載の有無
  • 分類ロジック:どの論点で分岐し、なぜその結論か(社内判定メモで可)
  • 取引実態:インボイス品名、型番体系、梱包形態、セット有無
  • 運用履歴:過去の申告実績、指摘履歴、差戻し履歴

タイでは、事前教示制度の活用が推奨される一方、回答まで時間を要することもある、という現場声もJETROが報告しています。(JETRO)
だからこそ、事前教示を待つ間も「自社の説明責任」を果たせる形に整えることが先決です。


5. タイで揉めたときの実務手順:止めない、燃やさない

1) まずは「分類の争点」を言語化する

税関とのやり取りが長期化する企業は、争点が整理できていないことが多いです。
部品か完成品か、主要機能は何か、どこが章またぎか。争点を1枚にまとめて提出できるようにします。

2) 早期に「事前教示」または「分類判断の相談ルート」に載せる

タイでは、輸入時に関税分類解釈の確認を税関側に依頼する運用も紹介されています。(JETRO)
社内で抱え込まず、輸入者・通関業者と一体で、当局照会の段取りを作るのが現実的です。

3) 係争中でも貨物を止めない選択肢を準備する

分類が確定しない場合でも、保証金を積んで通関を進め、後で結論を受ける運用があります。タイの電子輸入手続きマニュアルでも、HS分類を争う場合の保証金・異議の扱いが説明されています。(ccc.customs.go.th)


6. まとめ:厳格化局面で勝つ会社は「番号」より「根拠」を持つ

電子機器パーツのHS分類は、技術進化で曖昧さが増える一方、税関側はデジタル化と監査高度化で、説明責任の水準を引き上げています。(PwC)
このギャップを埋める最短ルートは、分類ドシエを整備し、部品・複合機能・章またぎの論点を先回りして潰すことです。

厳格化は、正しく準備した企業にとっては「予見可能性を上げるチャンス」にもなります。通関を止めず、追徴を防ぎ、FTAも取りこぼさないために、まずは自社の電子部品トップ品目から、分類根拠の棚卸しを始めてください。

AIによるHSコード特定ツール:HSCFのHSコード付番プロセスを解説

電子部品の写真をGoogleから拝借して、HSコード付番を実践。

そのHSコード付番プロセスをYouTubeにてわかりやすく解説しました。

ぜひご覧下さい。

スライドは以下でも閲覧、ダウンロード出来ます。

HS2028と品目分類アップデートを経営課題に変える方法 2028年1月1日に向けた企業の実務ロードマップ

はじめに

本日届いたメール「Key Updates on HS 2028 and Classification」は、通関担当者だけが読む情報ではありません。HS改正は、関税コストやEPA・FTAの原産地判定、輸出入規制、社内マスタやBIの集計軸まで、企業の意思決定に直結する基盤データの更新です。特にHSの改正は、現場が気づいた時にはシステム改修やデータ整備が間に合わず、誤申告やコスト増に繋がるケースが起きやすいテーマです。

この記事では、メールの要点を踏まえつつ、HS2028の背景、企業に起こる現実的な影響、そして今から取るべき準備を、経営・事業サイドの視点で整理します。根拠は一次情報を優先し、公式発表を中心に組み立てます。wcoomd

まず結論:今日のメールが示す3つの意味

メールの短い文面を、ビジネス視点で言い換えるとポイントは次の3つです。

HS2028はすでに「準備段階」ではなく「実装計画を動かす段階」に入っている

WCOの第75回HS委員会は、2025年3月にHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択しました。 この勧告は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する予定です。 つまり、企業に残された時間は「まだ2年ある」ではなく、「本格対応のための猶予が実質2年しかない」という意味です。strtrade+1​

HS2022からHS2028へのマッピングは、通関だけでなく社内データの変換作業である

メールが示唆する「HS2022→HS2028のマッピング開始」は、単なるコード置換ではありません。多くの場合、旧コード1つが新コード複数に分岐したり、統合されたりします。結果として、商品マスタ、BOM、購買カテゴリ、輸出入統計の集計軸まで影響します。WCOのHS委員会第76回会合(2025年9月)では、HS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)の作成に着手し、改善された形式を採用することで明確性と使いやすさを高める方針が示されました。customsmanager+1​

国別の関税率表・規制の追随で、実際のコストとリスクが確定する

HSは世界共通の6桁ですが、各国はその先の桁で自国の関税率表や統計品目表を作ります。したがって、企業にとっての本番は「自社が輸出入する国で、いつ、どのように関税率表や規制が改正されるか」です。米国ではUSITCが2025年8月にHTS改正のための調査(Investigation No. 1205-032)を開始し、2026年2月に予備案を公表、2026年9月に大統領へ報告する予定です。 これは、主要国がすでに国内実装に動き出していることを示す分かりやすい例です。usitc+1​

HS2028の公式タイムラインを整理する

意思決定で重要なのは、社内の工程表に落とせる形で公式の流れを押さえることです。

2025年3月
WCOのHS委員会第75回会合がHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択しました。 改正パッケージは299セットの改正で構成されています。aeb+2​

2025年6月
WCO理事会がHS2028改正案を採択し、HS条約締約国に回付しました。 締約国は6か月の留保期間中に異議を提起できます。tarifftel

2025年12月末
正式採択の予定です。wcoomd+1​

2026年1月
HS2028勧告が公表されます。 これが企業にとって全体像を把握できる最初のタイミングです。strtrade+2​

2028年1月1日
HS2028が発効し、各国の関税率表・統計品目表が順次HS2028ベースへ切替わります。tarifftel+2​

このスケジュールを見ると、企業が主導できる余地が大きいのは2026年から2027年にかけてです。ここでマスタ整備と影響分析を終えておかないと、2028年直前は各国の実装情報が押し寄せ、火消し型の対応になりがちです。

そもそもHS改正とは何を変えるのか

HSは6桁の国際共通コードで、各国・地域はこれに独自の枝番を付けて関税率表や統計品目表を運用しています。EUでは、HS6桁を土台に8桁のCN(Combined Nomenclature)が構成され、通関や統計に使われます。 つまり、国際共通部分(最初の6桁)が動くと、その上に乗る各国の体系が連鎖的に動きます。siccode

ビジネスに効くポイントは次の通りです。

  • HS改正は「商品名の辞書の更新」ではなく、企業の基幹データキーの更新
  • 同じ商品でも、分類ロジック(用途、材質、機能など)によって別コードになり得る
  • コードが変わると、関税率だけでなく、規制判定や社内集計も変わる

HS2028の方向性:なぜ改正されるのか

HS2028の改正は、単なる整理ではなく「政策目的を持ったアップデート」です。299セットの改正は、貿易パターンの変化、新技術の登場、そして社会・環境・安全保障上の要請に対応するためです。 具体例として、プラスチック廃棄物、ワクチン等の健康関連品目、農業分野で重要度が増した品目群、食品強化用のミックス、食品サプリメント、eバイク、半導体やトランスデューサ、清掃ロボット、ドローンなど、新製品・市場変化を踏まえた分類の整合が含まれます。aeb+2​

この点は経営層にとって重要です。なぜならHS改正は、次のような企業リスクを「構造的に増やす」からです。

  • 新技術領域は製品定義が早く変わり、分類根拠が揺らぎやすい
  • 環境・安全保障領域は規制との紐付けが強く、誤分類のペナルティが重くなりやすい
  • 簡素化の名目で統合・削除が起きると、旧データとの連続性が崩れ、集計・比較が難しくなる

「分類」アップデートが企業を揺らす理由

メール題名にあるClassificationは、単にHS改正だけでなく、日々積み上がる分類判断(分類裁定、分類意見、解説書の改正など)も含むと捉えるのが実務的です。

WCOのHS委員会は、HSの統一的解釈のために分類判断や解説の改正を継続的に行っています。第75回会合では105件の改正案、5件の解説注改正を採択し、第76回会合(2025年9月)では40件の分類決定を採択、21件の新規分類意見を作成し、2件の既存意見を削除しました。 また、HS2028とHS2022の相関表の議論も開始されています。wcoomd+2​

ここから導ける実務の教訓は明確です。分類は一度決めて終わりではなく、制度側の判断が積み重なっていく領域です。HS2028の大改正は、その積み重ねが一気に体系変更として表面化するイベントだと言えます。

ビジネスへの影響を「5つの損益項目」で見る

HS改正は通関や貿易管理の話に見えますが、事業PLの要素に分解すると、経営会議で議論しやすくなります。

関税と輸送を含む着地原価(landed cost)

HSコードが変われば、各国の関税率表で適用税率が変わる可能性があります。税率が同じでも、追加要件(統計単位、特別措置、規制コード付与など)が付くことがあります。国別の実装が確定するまで見通しは立ちにくいので、影響が大きい品目から順にシナリオ分析するのが現実的です。usitc

EPA・FTAの原産地判定

多くの協定では関税分類(項、号など)を使って原産地規則を定義します。HSが改正されると、ルールの適用解釈や、協定側の改訂・経過措置が論点になります。調達や生産設計の意思決定に影響するため、貿易管理部門だけに閉じない論点です。

輸出入規制・社内コンプライアンス

HSコードが規制の入口になっているケースは少なくありません。分類の精度がコンプライアンスの前提になります。

需要・売上・粗利の分析軸

HSを商品分類のキーとして社内集計に流用している企業は多いはずです。HS変更は、経営ダッシュボードの前年対比や市場シェア分析の連続性を壊し得ます。ここは財務・経営企画が早めに関与すべき領域です。

取引条件・価格交渉

関税コストが変われば、価格改定や契約条項(関税負担、価格改定条項、長期契約の見直し)に波及します。特にBtoBで長期契約が多い業界は、HS改正が「誰が追加コストを負担するか」の交渉材料になります。

2026年から始める実務ロードマップ

ここからが本題です。HS2028対応は、プロジェクトとして切り出すと成功確率が上がります。おすすめは次の6ステップです。

ステップ1 影響が大きい領域の棚卸し

  • 輸出入額上位の品目
  • 規制対象や監査頻度が高い品目
  • FTA利用比率が高い品目
  • 新技術カテゴリ(例:電子部品、機器、電池、環境関連など)

ステップ2 分類根拠の整備

コードだけを並べても、変更時に判断が揺れます。製品仕様、用途、材質、機能、構造、技術資料など、分類根拠の証跡を揃えます。

ステップ3 HS2022からHS2028へのマッピング設計

相関表を使う場合でも、単純な置換ではなく、分岐・統合の扱いが肝になります。WCO側でも相関表は重要な実装ツールとして議論されています。 社内では「自社の品目がどの分岐に該当するか」を決める必要があります。customsmanager+1​

ステップ4 国別の実装情報を監視する仕組みを作る

HSは各国で枝番と税率が付くため、国別ウォッチが必要です。特に輸出入量が多い国は、官報、税関告示、関税率表改正、関連機関のパブコメなどを定常監視に入れます。米国向け取引がある場合、USITCのHTS改正プロセスのように、ドラフトが公表されるタイミングを先に工程表へ入れられます。starusa+1​

ステップ5 システムとデータのバージョン管理を実装する

HSの年版(例:HS2022、HS2028)と適用期間をデータ項目として持ち、いつの時点でどのHS体系を使ったのかを追える設計にします。ここを曖昧にすると、監査対応とBIの整合が崩れます。

ステップ6 社外パートナーとの同期

通関業者、フォワーダー、海外子会社、主要サプライヤーに対し、いつから何を切り替えるかを共有します。データ連携をしている場合は、マッピングテーブルの配布・受領、テスト計画まで含めます。

経営層が見ておくべきKPI

現場任せにすると、進捗が見えません。次の指標は、経営側でもモニタリングしやすいです。

  • 売上または輸出入額の上位80パーセントを占める品目のうち、HS2028影響分析が完了した比率
  • マッピングで分岐・統合が発生する品目数(ここが工数とリスクの中心)
  • 規制対象品目の再確認完了率
  • 主要国別の実装情報収集状況(ドラフト入手、社内反映、テスト完了)

まとめ:HS2028は一度きりのイベントではない

HS2028は大きな節目ですが、そこがゴールではありません。WCOは継続的にHSの解釈と適用の統一を推進しており、今後も定期的な改正サイクルが続きます。 つまり、企業としては「改正のたびに頑張る」のではなく、「改正に強い運用能力」を作ることが投資対効果の高い戦略になります。wcoomd+1​

HSは通関のための番号に見えて、実態は利益管理と規制対応の共通キーです。今日のメールをきっかけに、2028年の切替を、リスク回避だけでなく、データ基盤整備と意思決定スピード向上の機会として設計していくのが得策です。


  1. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  2. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced
  3. https://www.customsmanager.info/post/wco-hs-decisions-what-changed-hsc-76-customs-manager-ltd
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/october/harmonized-system-committee-concludes-its-76th-session-with-remarkable-outcomes.aspx
  5. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  6. https://starusa.org/trade-news/usitc-investigation-launched-on-2028-harmonized-tariff-schedule-changes-to-align-with-global-standards/
  7. https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php
  8. https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/
  9. https://siccode.com/page/combined-nomenclature-cn
  10. https://global-scm.com/blog/?p=3091
  11. https://www.scribd.com/document/899687945/75
  12. https://www.internationaltradenews.co.uk/issue80/next_edition_of_harmonised_system_to_be_available_from_january_2026.htm
  13. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/tools-to-assist-with-the-classification-in-the-hs/hs_classification-decisions.aspx
  14. https://global-scm.com/hscf/archives/466
  15. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx?stf=1
  16. https://catts.eu/wco-wto-updates-april-2025/
  17. https://www.tariffnumber.com/info/combined-nomenclature

HS2028で影響が出そうなコード:予告です

HS2028で影響が出そうな項目がいくつかあります。

それらを項目別に整理して、説明をしていきたいと思います。
 ・今回ではなく次回以降
 ・HSコード専用のブログでご案内します。

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 HSコードの知識とAIによるHSコード・ファインダー (HSCF)

また、これらを簡単にまとめたセミナーを行う予定にしています。ぜひご参加ください。

HS2028改正の全体像

HS2028とは何か

WCO(世界税関機構)が運営する国際共通の商品分類体系「HS」の第8版に相当する改正です。通常は5年ごとに改正されますが、新型コロナ等の影響で今回のサイクルは6年に延長され、次の版は2028年1月1日発効とされています。現在はHS2022が稼働中で、その次の版がHS2028です。

どこまで決まっているのか

2025年3月(HSC第75会期)にWCOのHS委員会(HSC)が、約6年にわたる審議の最終回として以下を暫定採択しました。

  • 299セットのHS2028改正案
  • 105件の改正提案
  • 解説注の改正5件

これらを含む「HS2028向けArticle 16勧告案」により、HS2028の中身(6桁レベル)は技術交渉として決着した段階です。

どんな分野が大きく動きそうか

現時点で公表されている情報や専門ベンダーの分析から、特に影響が大きいと見られている分野は以下の通りです。

エレクトロニクス・IT関連

半導体・電子部品・スマート基板・マルチコンポーネントICなど、デジタル化・高度化した製品群の細分化と再編が進む見込みです。

医薬品・ワクチン関連

WHOのINNリスト(医薬品一般名)と連動した分類見直しが行われ、441品目の医薬物質の扱いが整理されるなど、医薬品セクターでの改正が大きくなります。

グリーン技術・環境関連品目

再生可能エネルギー関連設備、電動化・省エネ機器、環境配慮型製品など、「グリーン商品」の見える化を意識したコード整理が進む見込みです。

デュアルユース・先端技術製品

軍民両用となり得る先端技術製品について、輸出管理・安全保障貿易との連携を意識した分類の明確化が図られるとみられます。

HS2028は「過渡期」版

2025年のWCO会合では、HS全体の構造そのものを見直す「HS2033モダナイゼーション・プロジェクト」の立ち上げも決定しました。HS2028は、現行HS枠組みの中での「テーマ別アップデート」であり、その先のHS2033でのより抜本的な再設計に向けた橋渡しという位置づけです。

採択プロセスとスケジュール

WCOレベルでの流れ

技術交渉の終了(完了済み)

2025年3月(HSC第75会期)にHS委員会がHS2028向けArticle 16勧告案を暫定採択し、6桁レベルの技術交渉は終了しました。

WCO理事会での正式採択(2025年末予定)

上記の勧告案は、2025年中にWCO理事会に付議され、Article 16勧告として正式採択される予定です。WCO・AEOなどの説明では、2025年12月末に正式採択、2026年1月に勧告が公表されるというタイムラインが示されています。

締約国による異議申立期間(概ね6か月)

HS条約(Article 16)では、WCO理事会から各締約国に勧告が通知されてから6か月間、各国が異議を申し立てることができ、異議がなければ勧告は「全会一致で採択されたもの」とみなされる仕組みです。企業実務から見ると、2026年の前半に国際的な法的確定が進むという理解で十分です。

HS2028テキストの公表

WCO・AEOなどの情報によると、2026年1月にHS2028の最終テキスト(6桁レベル)が公表される見込みです。

発効日

HS2028(新しい版)は、2028年1月1日に全世界で発効することが明示されています。

各国関税表・FTAへの落とし込みスケジュール

HSはあくまで「6桁までの国際条約」です。実務に影響するのは、各国がこれを自国の関税・統計・FTAにどう落とし込むかというフェーズです。

2026年から2027年前半:各国の作業フェーズ

日本は関税率表、実行関税率表、輸出入統計品目表、原産地規則付属書などをHS2028ベースに改正します。EU・米国・ASEANなども、自ブロックや自国の関税表や実行関税(TARIC、HTSUS、AHTN等)をHS2028に合わせて整備します。同時に、FTAの品目表・リストルール(ROO)を新HSに合わせて改正する作業が進みます(例:RCEP、日EU EPA、CPTPP等)。

2027年から2028年:並行稼働期・移行期

多くの国が2028年1月1日からHS2028に移行する一方で、一部の途上国等は移行に時間がかかる可能性があります(過去のHS2017、2022と同様)。企業から見ると、国によって「まだHS2022」「もうHS2028」という期間が数年発生することになります。

相関表の活用

WCOは、HS2022とHS2028を結び付ける「相関表(Correlation Tables)」を作成・公表することになっており、これが各国・各企業の「コード変換作業」の基礎になります。

企業にとっての押さえるべきポイント

マスターデータ・ITシステムへのインパクト

HSコードの6桁が変わると、以下のすべてを更新する必要があります。

  • 自社の品目マスター
  • ERP・輸出入管理システム
  • FTA原産地判定エンジン
  • 税率マスタ・統計コード

専門ベンダー(例:欧州のAEB等)は、HS2028への移行が「通関プロセス・マスターデータ・ITシステムに広範な影響を与える」として、早期の影響分析を推奨しています。

関税コスト・原産地(FTA)への影響

HS改正は単なる番号変更ではなく、「どのHSに入るか」が変わることで、MFN関税率が変わる可能性や、原産地規則(CTCルール)の前提となるHSが変わることを意味します。

特に、電動化・グリーンテック・医薬品・先端半導体などは、関税政策・産業政策と連動した細分化が予想されるため、「関税コスト+FTAメリット」の再試算が必要になります。

グローバルで「複数HS年版」が同時に走るリスク

2028年前後数年間は、米国はHS2028を取り込んだHTS(2028版)、EUはCN/TARIC 2028、ASEANはAHTN 2028(採用タイミングは国により差)、他の国はHS2022のままや独自の移行スケジュールといった形で、「国によりHSの版が違う」状態が避けられません。

その結果、同じ商品でも国Aでは旧HS、国Bでは新HSということが起こり得ます。FTAの原産地証明(特にForm・電子原産地証明)で、相手国税関が想定するHS版と、輸出側が使うHS版が食い違うリスクなどが増えます。

HS2033を見据えた中期視点

HS2028の直後には、2028年から2033年の次サイクルで、HS全体をより抜本的に見直すHS2033改正が控えています。よって、HS2028対応の仕組み(コード変換ロジック・ツール・BPO活用など)は、2033年以降も繰り返し使える「仕組み」として設計しておくことが重要です。

企業が今から準備すべきこと

自社品目の棚卸し(HS2022ベース)

現在使用しているHS2022コード・統計品目番号を、品目マスターとして整理・整合させておく(輸出入・販売会社間でのズレを解消)ことが重要です。

HS2028情報のウォッチ体制の構築

WCO・国税庁・税関、ならびに専門ベンダー(TariffTel、AEB等)の情報更新を定期的にチェックする担当者や仕組みを決めましょう。

IT・システム部門との事前連携

2026年から2027年にシステム改修が集中することを想定し、以下について情報システム部門やベンダーと早期に議論を開始します。

  • HSコード桁数・版管理の仕様
  • 相関表をインポートする仕組み
  • FTA原産地判定ロジックのバージョン管理

FTA・原産地業務への影響の洗い出し

主要FTA(RCEP、日EU、CPTPP、日メキシコ、日タイ等)の原産地リストルールがHS2028に改正されるタイミングと内容をウォッチし、自社のサプライチェーン別に「有利・不利」の試算を行います。

社内教育とサプライヤーコミュニケーション

営業・物流・調達向けに「HS2028とは何か・いつから影響するか」の簡易資料を用意します。主要サプライヤー向けにも、将来的に「HS2028版の部品HSコード+原産地情報」を求めることを先に伝えておきましょう。

全体のまとめ

HS2028は、2028年1月1日発効予定の次期HS改正であり、2025年3月時点で技術的な中身(299セットの改正)はほぼ確定済みです。2025年末にWCO理事会がArticle 16勧告を正式採択し、2026年1月にHS2028テキストが公表され、各国が自国制度への落とし込みを開始します。

改正の焦点は、エレクトロニクス・医薬品・グリーンテック・デュアルユース製品など、近年の通商・安全保障政策のホットスポットに集中しています。

日本企業にとっては、関税コスト・FTA原産地ルール・社内マスターデータ・ITシステムの全面的な見直しが不可避であり、2026年から2027年を「移行準備の勝負どころ」と捉える必要があります。

さらに、すでにHS2033に向けた抜本的なモダナイゼーション・プロジェクトが動き始めており、HS2028対応は「一度きりの対応」ではなく、継続的なHS改正マネジメント体制を作る第一歩と位置付けるのが現実的です。

このあたりを押さえておくと、今後の「HS2028センサー改正」「特定品目のコード変更」のような個別論点も、全体戦略の中に位置づけて検討しやすくなります。


HS2028改正:自動車電装品・センサー類の分類見直しに関する現状整理

AIを活用して、まとめてみました。


公式タイムラインと確定事項

HS2028改正パッケージは、2025年3月のHS委員会(HSC)第75会期で暫定採択され、2025年12月に正式採択、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効するスケジュールが世界関税機関(WCO)により公式に示されています。metalife

改正の規模は、第7次レビューサイクルにおいて105の改正提案、299の改正パッケージが取りまとめられた大規模なものです。EUの対外説明資料では、改正の重点領域として「半導体およびトランスデューサー(各種センサー)」が明記されており、センサー類の分類見直しが進んでいることは高い確度で示唆されています。forbesjapan+1

何が確定し、何が未確定か

確定している情報

改正規模と発効日は2028年1月1日、詳細条文(HS6桁レベルの新旧対照表)は2026年1月に公開予定です。センサーおよびトランスデューサー領域が見直し対象に含まれることもEU資料で確認されています。metalife+1

未確定(未公表)の情報

具体的にどの品目が第85類から第90類(測定・検査機器)または第87類(自動車部品)へ移動するのかという条文レベルの詳細は、2025年11月7日現在まだ公開されていません。特に第87類への「移籍」については、現行の第17部注2(e)~(h)により、第84類・第85類・第90類・第91類に特掲される物品は原則として8708号の「部分品」に含めない取扱いとなっているため、条文改正を伴わない限り広範な第87類編入が一挙に進む可能性は限定的です。detail.chiebukuro.yahoo+1

なぜ「85類→90類/87類」移動の観測が出ているのか

現行のHS2022では、シリコン基板上のMEMS等を含む「シリコンベース・センサー」を8542号(MCO:多部品集積回路)として扱う注記が整備され、電装品(第85類)と測定機器(第90類)の境界が実務上やや複雑化しました。HS2028ではこの境界の明確化や再編が図られると予想されています。roronto

EUの説明文書では「semiconductors and transducers(半導体とセンサー)」と明記され、当該分野の分類見直し(細分化・整序)が含まれることが読み取れます。これが車載センサー(ADAS/電動化関連)への波及観測につながっています。また、WCOがASEAN向けに実施したワークショップでも、HS2028の主要改正領域に「電気機器」「車両」分野が含まれる旨の言及があり、自動車電装とセンサーの交差領域での改正可能性が意識されています。examplesentencemail+1

日本企業への実務インパクト

関税・価格への影響

第85類から第90類への移動については、日本のMFN税率ではいずれも無税品目が多いものの、貿易統計やFTA原産地規則、内外価格差分析への影響は大きい可能性があります。特に第90類への分類変更は測定機器としての性格明確化につながり、品目別規則(PSR)のCTC(関税分類変更基準)やVA(付加価値基準)が変わるケースが想定されます。ds-b

第87類の8708号等へ移動する場合は、現行の第17部注により第84類・第85類・第90類・第91類に特掲される物品は「部分品」に含まれないため、条文・注の改変を伴うか解説書の運用整理に留まるかで影響度が大きく変わります。detail.chiebukuro.yahoo

FTA原産地規則への影響

HS6桁の変更は、PSRの再マッピングを意味します。CPTPP、日EU・EPA、USMCA等のPSRはHS6桁コードに紐付けられているため、自己申告書式やサプライヤ宣誓書のロジック更新が必要となり、2027年中の準備が現実的なタイムラインです。word-dictionary

マスタ・ERPシステムへの影響

HS改正は6桁変更が各国の8~10桁の国内細分へ波及します。品番—HSコード—PSR—税率—特恵判定の一連の連鎖で整合性を保った更新が必要です。EU資料でもHS6桁変更が各域内コードへ波及する旨が説明されています。word-dictionary

税関監査対応

事後調査や税関質問において、「なぜ第85類ではなく第90類か(またはその逆)」といった技術的理由付け(主機能・検出原理・測定の有無・MCO該当性)がより厳密に求められる可能性があります。HS2022で導入されたMCO定義(8542号)は引き続き重要な論点となります。roronto

今すぐ取るべき実務アクション

対象品目の棚卸し

センサー、トランスデューサー、MEMS、車載カメラ、レーダー、LiDAR、電装ユニットなどについて、BOMから機能、現在のHSコード(第85類/第90類/その他)までを一覧化します。ds-b

境界品目の技術メモ標準化

測定・検査の主機能の有無、センサーの検出原理、単体機能かMCOか、車両専用品か否かを定型シートで可視化します。現行の第90類の類解説(測定・検査の定義)と第17部注の適用ロジックを踏まえた記述が重要です。marke-media

PSR影響の先行試算

主要FTAについて、CTC(分類変更前後の区分)と付加価値率の両面で「改正あり/なし」の2シナリオによる原産地判定を試算します。word-dictionary

2026年1月公表後のシステム更改計画

正式条文が公開され次第、HS6桁新旧対照表の確認、社内コード更新、取引先への通知、FTA書類テンプレート更新を2027年内に完了させる体制を整えます。metalife

監査・係争に備えた社内Q&A整備

特に第85類と第90類の境界については、技術書証(設計仕様書、センサー原理、測定の定義への適合性)の整備が対応力を大きく左右します。marke-media

どの品目が移動しそうか(現時点の観測)

以下は未公表情報を補う業界観測であり、最終判断は2026年1月公開の条文で確認する必要があります。metalife

MEMS/CMOS系のシリコンベース・センサーは、HS2022で8542号(MCO)に「センサー/アクチュエータ/レゾネータ/オシレータ」を含む旨が整備済みです。HS2028では第90類との住み分け明確化(解釈の整序や細分化)が想定論点となっています。roronto

車載計測・表示系(速度計/回転計/走行データ等)については、9029号や9031号などの見直しや細分追加の可能性は合理的ですが、8708号への包括的編入は第17部注2の原則に抵触しやすいため、条文変更がない限り限定的とみるのが保守的です。detail.chiebukuro.yahoo

レーダー、LiDAR、カメラ等の認識系は、現在8526号や8525号などに分類されていますが、測定目的の有無で第90類に寄せられるかは条文次第です。EU説明にある「transducers見直し」の射程に入る可能性はありますが、公表待ちの状況です。forbesjapan

主要情報ソース

WCOからはHS2028改正の暫定採択、公表・発効の公式タイムラインが示されています。EUの対外説明資料(EUR-Lex)ではHS2028改正の柱に「semiconductors and transducers」を含む旨が明記されています。WCOの2024年戦略レビュー報告書ではHS構造の見直し必要性が指摘されており、HS2022解説書(8542号MCO)ではシリコンベース・センサー等の定義が整備されています。reibuncnt+3

日本税関の類解説(第90類/第87類)では測定機器の定義や第17部の「部分品」原則が確認できます。WCOのASEAN向けワークショップでもHS2028の主要改正領域(車両・電気機器含む)の概観が示されています。examplesentencemail+1

まとめ

「第85類から第90類/第87類へ一斉移籍」という断定的な一次資料は現時点では未公開です。ただし、センサーおよびトランスデューサー領域が見直し対象に含まれていることから、車載センサーや電装ユニットの境界整理(細分追加・注記整備)は高い確度で発生すると予想されます。forbesjapan+1

2026年1月の正式条文公開をトリガーとして、2027年内に社内マスタ、PSR、書類書式の全面更新を完了する前提で計画を立てておくことが安全です。word-dictionary+1

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ソースを確認

  1. https://metalife.co.jp/business-words/1924/
  2. https://forbesjapan.com/articles/detail/76838
  3. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1419074004
  4. https://roronto.jp/business-efficiency/additions-and-corrections/
  5. https://examplesentencemail.com/if-you-have-any-corrections-please/
  6. https://ds-b.jp/dsmagazine/pages/410/
  7. https://word-dictionary.jp/posts/2929/
  8. https://www.marke-media.net/whitepaper/chatgpt-proofreading/
  9. https://reibuncnt.jp/36506