米国の鉄鋼・アルミ関税動向:ビジネスへの影響と対策

2026年2月13日、米国トランプ政権による鉄鋼・アルミ関税の一部引き下げ報道が世界の市場を揺るがしました。しかし、政権当局者は即座にこれを否定し、現行の関税は維持される姿勢を示しています。この流動的な状況は、日本企業のビジネス戦略に重大な影響を及ぼし続けています。本稿では、最新の米国鉄鋼・アルミ関税動向と日本企業が直面する課題、そして実効性のある対応策について詳しく解説します。reuters+1

米国鉄鋼・アルミ関税の現状

現行の関税率と適用範囲

米国は1962年通商拡大法232条に基づき、国家安全保障を理由として鉄鋼・アルミニウム製品に追加関税を課しています。この232条は、特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を与えると判断される場合、政権に追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認める条項です。jetro.go+2

第一次トランプ政権下の2018年3月に導入された当初の関税率は、鉄鋼製品25パーセント、アルミ製品10パーセントでした。しかし、2025年6月4日、トランプ大統領は鉄鋼・アルミニウム製品にかける追加関税を50パーセントに引き上げると発表し、即日発動しました。この措置により、鉄鋼関税は25パーセントに据え置かれたものの、アルミ関税は10パーセントから25パーセントに引き上げられ、さらに一部は50パーセントとなりました。rieti+4

2025年3月12日からは、国や地域別に設けられていた適用除外が廃止され、一律適用が開始されました。これにより、カナダやメキシコなど従来は除外されていた国々も関税対象となり、日本に対する関税割当制度も撤廃されました。iti+1

最新動向:関税引き下げ報道と政権の否定

2026年2月13日、英紙フィナンシャル・タイムズは、トランプ政権が鉄鋼・アルミニウム製品に対する一部関税の引き下げを計画していると報じました。報道によれば、米商務省と米通商代表部が鉄鋼・アルミ関税の対象製品リストを見直しており、一部品目は課税を免除する一方で、特定製品に絞って国家安全保障に関する調査を開始する計画があるとされました。reuters+3

しかし、ホワイトハウス当局者は即座に反論し、トランプ大統領が公式に発表しない限り、鉄鋼やアルミニウム、派生製品に対する広範な関税は変更されないと言明しました。ナバロ大統領上級顧問は報道を否定し、トランプ政権にとって鉄鋼とアルミは「神聖」という認識を示しました。[jp.reuters]​

ベセント財務長官も、関税措置に修正があるかどうかは「大統領の決定次第」と強調しており、現時点では何ら具体的な変更はないとしています。この一連の混乱は、政権内部での検討が進められている可能性を示唆していますが、最終決定権はトランプ大統領にあり、状況は極めて流動的です。reuters+2

関税導入の背景と目的

トランプ政権が鉄鋼・アルミ関税を強化する背景には、米国内製造業の保護と雇用創出という明確な政策目標があります。トランプ大統領は2025年5月30日、USスチールの工場での演説で「関税を50パーセントにしたら、海外の鉄鋼製品がもうフェンスを乗り越えることは不可能になる」と述べ、国内産業保護の姿勢を鮮明にしました。[diamond]​

大統領布告では、従来の関税のもとでは国防需要に必要な生産稼働率を実現し維持することができなかったと、関税率引き上げの理由が説明されています。2000年以降、過剰な輸入が国産品に代替し、米国鉄鋼産業の稼働率低下、失業、赤字操業などをもたらしたことが問題視されており、国内産業の稼働率80パーセントを可能にする水準での輸入制限が提言されてきました。nri+1

日本企業への影響

直接的な影響:輸出コストの増加

米国向けに鉄鋼・アルミ製品を輸出する日本企業は、関税による直接的なコスト増に直面しています。日本製鉄は2026年3月期の連結業績予想で、事業利益が前期比41.5パーセント減の4000億円、純利益は42.9パーセント減の2000億円と大幅な減益を見込んでいます。同社は米政権の関税政策について「当社への間接的な影響は甚大」としつつ、どの程度業績に響くかは現時点で把握困難としています。dlri+1[youtube]​

日本からの対米鉄鋼輸出は、関税により競争力が著しく低下しています。試算によれば、NIEsや日本への影響は大きく、日本の対米輸出は大幅なマイナス寄与となっています。一方、アルミニウムについては、日本からの対米輸出額が相対的に小規模であるため、日本経済全体に与える影響は鉄鋼ほど深刻ではないとの分析もあります。nri+1

間接的な影響:サプライチェーン全体への波及

鉄鋼・アルミ関税の影響は、直接輸出する企業だけでなく、川下産業にも広範に及んでいます。米国内で製造を行う日系企業は、原材料コストの上昇により生産コストが増加し、価格競争力が低下するリスクにさらされています。jetro.go+1

建設、自動車、産業機械などの業界では、鉄鋼・アルミ製品を利用した製造コストが上昇する可能性が指摘されており、米国シンクタンクのケイトー研究所は「米国経済、特に製造業にとっては大きな損失を招くことになる」と懸念を示しています。[jetro.go]​

日本国内のねじ・部品関連メーカーも例外ではありません。自動車・自動車部品産業、機械・機械部品産業、特に鉄鋼・アルミニウムを原材料とするメーカーに大きな打撃を与えています。トランプ関税の悪影響は、直接米国に輸出していない企業にも、取引先企業を通じて間接的に波及しています。[fukasawa.co]​

日本製鉄によるUSスチール買収への影響

日本製鉄によるUSスチール買収構想は、鉄鋼関税の引き上げにより新たな局面を迎えています。トランプ大統領は、日本製鉄がUSスチールに140億ドル(約2兆円)を投資することに触れ、「10万人を超える雇用が生まれ、ピッツバーグは『鉄の町』として世界から再び尊敬される」と語りました。[diamond]​

採算割れが懸念されていた日鉄の巨額投資への疑問は、「輸入品排除」の「鉄鋼50パーセント関税」で払拭される可能性があります。関税により海外の鉄鋼製品が事実上締め出されることで、米国内生産の収益性が向上し、投資の採算が取れる環境が整いつつあります。[diamond]​

しかし、この関税の2倍引き上げは世界の強い反発を招いており、買収計画の先行きは依然として不透明です。[diamond]​

日本企業の対応策

現地生産体制の強化

トランプ関税の影響を回避・軽減するため、自動車やFA(ファクトリーオートメーション)といった大手メーカーの中には、米国内での生産体制強化や現地化の推進に踏み切った企業があります。米国内で生産することで、輸入関税の影響を受けずに米国市場に製品を供給できるためです。[fukasawa.co]​

また、メキシコやカナダなどのUSMCA域内生産を行うことで、米国への輸出時の関税軽減や回避を図る戦略も有効です。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の原産地規則を満たせば、域内での貿易は関税の対象外となるためです。[fukasawa.co]​

適用除外措置の申請

トランプ第一次政権時における鉄鋼・アルミへの課税や対中追加関税の場合と同様に、日本企業は米国政府に対して品目別に適用除外措置を申請するという受け身的な対応を選ばざるを得ないことが予想されます。[iti.or]​

しかし、2025年3月12日以降、国や地域別の適用除外が廃止されたため、個別企業が品目ごとに適用除外を申請するプロセスは以前よりも複雑化しています。米国税関・国境警備局が公表したガイダンスに従い、通関申告の際に含有する鉄鋼・アルミ材の価格および重量などを詳細に申告する必要があります。[jetro.go]​

サプライチェーンの多様化

米国依存度を下げるため、販売先市場の多様化を図ることも重要な戦略です。アジア、欧州、中南米など、米国以外の成長市場への展開を強化することで、特定市場への過度な依存によるリスクを軽減できます。

また、原材料調達先の多様化も検討すべきです。鉄鋼・アルミの調達を米国内のサプライヤーに切り替えることで、関税の影響を回避できる可能性があります。ただし、米国内の鉄鋼・アルミ価格は関税により上昇しているため、コスト面での詳細な分析が必要です。

政府間交渉への期待と企業の働きかけ

日本は、トランプ第一次政権時において、232条に基づく鉄鋼・アルミへの関税賦課に対して報復措置を打ち出しませんでした。その後、日米両政府は2022年2月、鉄鋼製品の一部について一定の割当量まで日本からの輸入に対して関税を免除する関税割当を導入することで合意しましたが、この制度も2025年3月に撤廃されました。jetro.go+1

今後、日本政府が米国政府と新たな交渉を行い、関税の軽減や例外措置を獲得できるかが焦点となります。企業としては、業界団体を通じて日本政府に働きかけ、政府間交渉を後押しすることが重要です。

為替リスク管理と価格戦略の見直し

関税増加分を価格に転嫁できるかどうかは、各企業の市場での競争力に左右されます。付加価値の高い製品や代替困難な技術を持つ企業は、価格転嫁が比較的容易ですが、汎用品を扱う企業にとっては厳しい状況です。

また、為替変動も収益に大きく影響します。円安が進めば、ドル建ての関税負担は相対的に軽減されますが、逆に円高が進めば負担が増加します。為替ヘッジなどのリスク管理手法を活用することも検討すべきです。

今後の展望と不確実性

政策変更の可能性

2026年2月の報道が示すように、トランプ政権内部では関税政策の見直しが検討されている可能性があります。中間選挙に向けた物価高対策として、一部品目の関税引き下げが政治的に必要になる可能性も指摘されています。bloomberg+2

しかし、ホワイトハウス当局者やナバロ上級顧問の発言からは、鉄鋼・アルミ産業保護への強いコミットメントが読み取れます。トランプ大統領が「国家と経済の安全保障に極めて重要な国内製造業、特に鉄鋼とアルミの生産の再活性化について、妥協することは決してない」と述べていることから、大幅な関税引き下げは期待しにくい状況です。[jp.reuters]​

国際的な反発と報復措置のリスク

米国の鉄鋼・アルミ関税は、世界貿易機関(WTO)のルールに違反する可能性があり、国際的な反発を招いています。鉄鋼やアルミの輸入が増加したからといって、国家安全保障が脅かされるという議論はいかにも極論であって、鉄鋼輸出国はこれに全く納得していないのが実情です。rieti+1

第一次トランプ政権時には、鉄鋼・アルミ輸出国が強く反発し、対抗措置やWTOへの紛争付託の可能性を表明しました。韓国は、この232条措置の圧力の下で自動車市場アクセスを米国に有利に改定し、さらに拘束力はないものの米国が長年要求してきた為替操作禁止条項を挿入することで米韓FTA再交渉が妥結し、鉄鋼製品の輸出自主規制を飲まされました。[rieti.go]​

今後も各国からの報復関税やWTO紛争が激化する可能性があり、貿易環境全体が不安定化するリスクがあります。

長期的なビジネス環境の変化

米国の保護主義的な通商政策は、グローバルサプライチェーンの再構築を促しています。企業は短期的な関税回避策だけでなく、長期的な視点でビジネスモデルの変革を迫られています。

デジタル化や自動化による生産効率の向上、高付加価値製品へのシフト、新興市場の開拓など、多角的な戦略が求められます。また、地政学リスクの高まりにより、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)を高めることも重要な経営課題となっています。

まとめ

米国の鉄鋼・アルミ関税は、2026年2月時点で鉄鋼25パーセント、アルミ25〜50パーセントという高水準が維持されており、一部引き下げの報道は政権により否定されています。日本企業は直接的な輸出コスト増に加え、サプライチェーン全体への波及効果により厳しい経営環境に直面しています。jetro.go+2[youtube]​

対応策としては、米国内生産の強化、USMCA域内生産の活用、適用除外申請、サプライチェーンの多様化、政府間交渉への働きかけなど、多角的なアプローチが必要です。政策の不確実性が高い中、企業は柔軟な戦略立案と迅速な意思決定が求められています。iti+1

トランプ政権の通商政策は今後も流動的であり、最新情報の継続的な収集と分析、そして状況変化に応じた機動的な対応が、ビジネスの成否を分ける鍵となるでしょう。


免責事項:本記事は2026年2月15日時点の公開情報に基づいて作成されたものであり、情報の正確性や完全性を保証するものではありません。米国の通商政策は流動的であり、今後変更される可能性があります。実際のビジネス判断においては、最新の公式情報を確認し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。本記事の内容に基づいて行われた判断や行動について、筆者および発行者は一切の責任を負いかねます。

2025年米国鉄鋼・アルミニウム関税制度の概要と企業対応(2025年10月最新版)

下記情報は確実にと努力しましたが、不確定な部分もあり、あくまで参考としてください。

最新動向(2025年8月~10月)

2025年8月以降、Section 232関税制度は更なる拡大を続けています。8月18日に407品目の派生製品が追加され、9月にはインクルージョン申請の第2回受付期間が実施され、10月には木材・重トラック関税の新規措置が発表されました。

8月18日発効:407品目の大規模追加

商務省産業安全保障局(BIS)は、407の製品カテゴリーを232関税対象の「派生製品」リストに追加しました。この拡大により、年間輸入額2,000億ドル超に相当する400以上のHS番号が新たに対象となり、実効関税率が約1パーセントポイント上昇したと推定されています。

主な追加品目

  • 風力タービンおよび部品・コンポーネント
  • 移動式クレーン
  • ブルドーザーおよび重機
  • 鉄道車両
  • 家具
  • 圧縮機・ポンプ
  • オートバイ
  • 船舶用エンジン
  • 電気自動車用電気鋼材
  • 自動車排気システム部品
  • バス部品
  • 空調ユニット部品

この措置は、6月23日発効の家電製品追加に続く第2弾の大規模拡大であり、鉄鋼・アルミニウムの含有価額部分に50%の関税が課されます。

9月:第2回インクルージョン申請期間

BISは2025年9月15日から29日まで、第2回目のインクルージョン申請受付期間を実施しました。このプロセスは年3回(5月・9月・1月)実施され、国内生産者等が追加対象品目を申請できる制度です。申請から60日以内にBISが判断を行い、採用された品目は順次232関税の対象に追加されます。

10月14日発効:木材・木製品への新規232関税

9月29日の大統領布告により、針葉樹材・木材および木製派生製品に対する新たなSection 232関税が10月14日から適用されています。

税率

  • 針葉樹材・木材:10%
  • 室内装飾付き木製家具:25%(2026年1月1日から30%に引上げ)
  • キッチンキャビネット・洗面台:25%(2026年1月1日から50%に引上げ)

重複関税の取扱い

  • 相互関税(reciprocal tariffs)およびIEEPA関税とは重複適用されない
  • 232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみ適用
  • 対カナダ・メキシコIEEPA関税と重複する場合は木材232関税のみ適用

11月1日発効予定:中・大型トラック関税

10月6日、トランプ大統領は中型・大型トラック(車両総重量10,000ポンド超)および部品に対する25%の232関税を11月1日から適用すると発表しました。当初は10月1日発効予定でしたが、米国自動車メーカーからのロビー活動を受けて1カ月延期されました。

4月に開始された商務省の232調査では、「少数の外国供給者が略奪的貿易慣行により米国輸入の大部分を占めている」と指摘されており、国家安全保障上の脅威と位置付けられています。主要な影響国は、メキシコ、カナダ、日本、ドイツ、フィンランドです。

米国トラック協会(ATA)は、この措置に加えてIEEPA関税や232鉄鋼・アルミ関税も適用されることで業界への負担が過大になるとして、緩和を求めています。

1. 2025年の大改定のポイント

関税率の大幅引上げ

2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。

課税方式の変更:「金属含有価額」ベース

従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。

除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設

2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。

重複課税(スタッキング)の整理

複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。

2. 派生製品の対象拡大

「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。

2025年の主な追加項目

アルミニウム派生製品(4月4日発効)

  • 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
  • ビール(HS 2203.00.00)

鉄鋼派生製品(6月23日発効)

  • 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
  • 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)

トレーラー類(8月18日発効)

  • ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ

407品目の大規模追加(8月18日発効)

  • 風力タービンおよび部品・コンポーネント
  • 移動式クレーン
  • ブルドーザーおよび重機
  • 鉄道車両
  • 家具
  • 圧縮機・ポンプ
  • オートバイ
  • 船舶用エンジン
  • 電気自動車用電気鋼材
  • 自動車排気システム部品

木材派生製品(10月14日発効)

  • 針葉樹材・木材
  • 室内装飾付き木製家具
  • キッチンキャビネット・洗面台

中・大型トラック(11月1日発効予定)

  • 車両総重量10,000ポンド超の中型・大型トラックおよび部品

今後の展開

BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。次回の申請期間は2026年1月に予定されています。

3. 関税算定の具体的方法

基本税率

  • 鉄鋼・アルミニウム・派生品:50%(英国原産品のみ25%)
  • 木材派生品:10~25%(段階的引上げあり)
  • 中・大型トラック:25%(11月1日~)

課税ベースの算定

  • HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
  • 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
  • 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税

申告方式:「2行計上」

CBPの指示により、以下の2行に分けて申告します:

  1. 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
  2. 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税

算定例

洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:

  • 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
  • アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
  • 232関税合計:60ドル

中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。

4. 重複関税の取扱い

232関税 vs 301関税(対中)

累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。

232関税(鉄鋼・アルミ) vs IEEPA(相互関税)

232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。

232関税(木材) vs その他関税

木材関連の232関税は、相互関税・IEEPA関税(ブラジル40%、インド25%)とは重複適用されません。232自動車関税と重複する場合は自動車関税のみが適用されます。

その他の特則

  • ロシア関連アルミニウム:232とは別に200%の特則が存続
  • デューティードローバック不可
  • FTZは原則「特恵外国品扱い」が必要

5. 企業の実務対応チェックリスト

A. 分類・原産・含有価額の把握

HTS分類の見直し:新規派生指定品目について社内マスターを更新

  • 家電、トレーラー、空缶・ビール(既存)
  • 風力タービン、移動式クレーン、ブルドーザー、鉄道車両、家具、圧縮機、ポンプ、オートバイ、船舶用エンジン、EV用電気鋼材、排気システム部品(8月18日追加)
  • 木材、木製家具、キャビネット(10月14日追加)
  • 中・大型トラック(11月1日予定)

金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築

原産性証明の取得

  • 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
  • アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
  • メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意

B. 課税最適化戦略

調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用

米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性

設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮

複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算

C. 契約・申請対応

価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加

インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定

社内統制の強化:HTS・原産・含有価額・証憑の監査体制整備

6. 実際の企業事例

American Trailer Manufacturers Coalition

Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。

Whirlpool(米国家電メーカー)

家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。

Ball Corporation(アルミ缶メーカー)

2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。

外国自動車メーカー連合

外国自動車メーカー連合は、EV用電気鋼材や排気システム部品の派生製品追加に対して、米国内に十分な生産能力がないことを理由に反対意見を提出しましたが、採用されませんでした。

Tesla

Teslaは、電気自動車モーターや風力タービンに使用される鉄鋼製品の追加指定について、米国内の生産能力が不足しているとして反対しましたが、8月18日の決定で対象に含まれました。

7. 今後の注意点

制度面のポイント

  • 232税率は原則50%(英国25%、木材10~25%)
  • 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
  • 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定(年3回:5月・9月・1月)
  • 301関税(対中)とは累積適用される
  • 2026年1月には木製家具・キャビネット関税が段階的に引上げ(30%・50%)

企業の優先対応事項

緊急対応(~2025年11月)

  • 中・大型トラック輸入企業:11月1日発効の25%関税への対応準備
  • 木材・木製品輸入企業:10月14日発効の関税(10~25%)の影響分析と価格見直し

継続対応

  • HTS分類の再確認(407品目追加を反映)
  • 含有価額算定体制の整備
  • Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
  • 契約価格条項の見直し
  • 対中国301関税重複の影響分析
  • (国内生産者の場合)次回インクルージョン制度(2026年1月)の活用検討

情報収集

  • BISの連邦官報公告の定期的な確認(次回申請期間:2026年1月)
  • 自動車部品インクルージョン制度の動向監視(2025年10月1日から第1回申請期間開始)

この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。特に2025年8月の407

2025年米国鉄鋼・アルミニウム関税制度の概要と企業対応

1. 2025年の大改定のポイント

関税率の大幅引上げ

2025年6月3日の大統領布告により、鉄鋼・アルミニウムおよびその派生製品に対する関税率が一律**50%**に引き上げられました(英国のみ25%)。これは通商拡張法第232条(Section 232)に基づく措置で、2025年6月4日(EDT)以降の輸入に適用されます。

課税方式の変更:「金属含有価額」ベース

従来の「総額課税」から「金属含有価額のみに対する課税」に変更されました。CBP(米国税関国境警備局)の実務通達により、派生製品やHS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)の品目についても、製品全体ではなく鋼・アルミニウムの含有価額部分のみに232関税が課されます。

除外制度の終了と「インクルージョン制度」の創設

2025年2月10日の布告により、従来の232除外申請制度が終了しました。代わりに、派生製品を追加指定するための「インクルージョン手続」が年3回(5月・9月・1月)の受付期間で運用開始されています。

重複課税(スタッキング)の整理

大統領令第14289号(2025年4月29日)により、複数の特定関税が同一貨物に重複して過剰となる事態を一定範囲で防ぐ手順が規定されました。ただし、232関税と対中制裁の「301関税」については累積適用されることが明記されています。

2. 派生製品の対象拡大

「派生製品(derivatives)」とは、基礎素材(鉄鋼・アルミニウム)からさらに加工された下流製品のことで、2018年の232措置では対象外だった製品分野にまで関税を適用するために指定されています。

2025年の主な追加項目

アルミニウム派生製品(4月4日発効)

  • 空のアルミ缶(HS 7612.90.10)
  • ビール(HS 2203.00.00)

鉄鋼派生製品(6月23日発効)

  • 家電製品(冷蔵冷凍庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブン・レンジ、生ごみ処理機)
  • 溶接ワイヤラック(HS 9403.99.9020)

トレーラー類(8月18日発効)

  • ドライバン・冷凍(リーファー)トレーラー(HS 8716.39.0040等)とそのサブアセンブリ

今後の展開

BISのインクルージョン制度により、国内生産者等の申請に基づいて派生製品は継続的に追加される見込みです(申請から60日以内に判断)。

3. 関税算定の具体的方法

基本税率

  • 鉄鋼・アルミニウム・派生品:50%(英国原産品のみ25%)

課税ベースの算定

  1. HS第73類(鉄鋼)・第76類(アルミニウム)製品:金属の「含有価額」のみに課税
  2. 派生製品:製品中の鋼・アルミニウム含有価額に対して課税
  3. 鉄・アルミ両方を含む派生品:それぞれの含有価額に対してそれぞれの232関税を課税

申告方式:「2行計上」

CBPの指示により、以下の2行に分けて申告します:

  • 1行目(非金属部分):本来のHS番号、原産国、「総額-金属含有価額」
  • 2行目(金属含有価額):同一HS・原産国、数量0、価額=金属含有価額、HS第99類で50%課税

算定例

洗濯機(申告価額500ドル、うち鋼含有価額100ドル、アルミ含有価額20ドル)の場合:

  • 鋼部分:100ドル × 50% = 50ドル
  • アルミ部分:20ドル × 50% = 10ドル
  • 232関税合計:60ドル

中国原産品で301関税対象の場合、さらに25%が併課される可能性があります。

4. 重複関税の取扱い

232関税 vs 301関税(対中)

累積適用されます。中国原産で232対象品の場合、232(50%)+ 301(25%)が併課される可能性があります。

232関税 vs IEEPA(相互関税)

232に関わる金属部分にはIEEPAは重複適用されませんが、非金属部分にはIEEPAが課される場合があります。

その他の特則

  • ロシア関連アルミニウム:232とは別に200%の特則が存続
  • デューティードローバック不可、FTZは原則「特恵外国品扱い」が必要

5. 企業の実務対応チェックリスト

A. 分類・原産・含有価額の把握

  1. HTS分類の見直し:新規派生指定品目(家電、トレーラー、空缶・ビール等)について社内マスターを更新
  2. 金属含有価額の算定体制整備:BOM・コスト表から鋼・アルミ含有価額を抽出できる仕組みの構築
  3. 原産性証明の取得
    • 鉄鋼:Melt & Pour(溶解・鋳造)国の証明
    • アルミニウム:Smelt & Cast(製錬・鋳造)国の証明
    • メキシコ経由品は2024年7月以降の厳格化に注意

B. 課税最適化戦略

  1. 調達先の見直し:英国原産品は25%(他国50%)の優遇税率を活用
  2. 米国内素材の活用:米国でMelt & Pour/Smelt & Castされた素材は0%免除の可能性
  3. 設計変更の検討:鋼・アルミ以外素材への置換、金属使用量削減による含有価額の圧縮
  4. 複数関税の影響分析:232 + 301 + AD/CVDの総負担試算

C. 契約・申請対応

  1. 価格条項の見直し:サプライ・販売契約に「232/301変動条項」を追加
  2. インクルージョン申請の活用(国内生産者向け):年3回の申請機会を活用した競合品の追加指定
  3. 社内統制の強化:HTS・原産・含有価額・証憑の監査体制整備

6. 実際の企業事例

American Trailer Manufacturers Coalition

Great Dane、Stoughton、Strick、Wabashなどの米国トレーラーメーカー連合が2025年5月にBISへ派生指定追加を申請し、8月18日にドライバン・リーファートレーラーが派生製品として採用されました。

Whirlpool(米国家電メーカー)

家電の派生指定追加(6月23日)に対し、「金属含有価額課税」や重複関税整理を踏まえた支持表明を行い、国産比率の高さを背景に価格公平化効果を主張しています。

Ball Corporation(アルミ缶メーカー)

2025年の関税環境下でも、調達・ヘッジ・価格見直しにより影響は限定的としており、財務・契約面での対応による影響平準化の好例となっています。

7. 今後の注意点

制度面のポイント

  • 232税率は原則50%(英国25%)、2025年6月4日以降適用
  • 課税ベースは金属の「含有価額」のみで、2行計上が必要
  • 派生品範囲は今後もインクルージョン制度により拡大予定
  • 301関税(対中)とは累積適用される

企業の優先対応事項

  1. HTS分類の再確認
  2. 含有価額算定体制の整備
  3. Melt & Pour/Smelt & Cast証憑の取得
  4. 契約価格条項の見直し
  5. 対中国301関税重複の影響分析
  6. (国内生産者の場合)インクルージョン制度の活用検討

この新制度により、米国への鉄鋼・アルミニウム関連製品の輸出入には従来以上に精緻な管理と戦略的対応が求められています。企業は早急に社内体制を整備し、適切な対応策を講じることが重要です。