■HS2028■④e-bike、ドローン、清掃ロボット関連のHSコード

番号の付け替えではなく、分類の境界線が動く

2028年1月1日発効予定のHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(Article 16 Recommendation)に基づく新しいHS版で、299セットの改正を含みます。改正の狙いとして「新製品や国際標準の反映により分類を容易にする」例に、e-bike、清掃ロボット、ドローンが明示されています。

本稿では、公開一次情報で確度高く言える範囲に絞り、これら3分野でどのような影響が出やすいかを、ビジネスマン向けに整理します。
注意点として、改正勧告の全文(どのHS6桁がどう変わるか)は、各国の国内実装や相関表の整備と合わせて最終確認が必要です。ここでは、確定情報と、実務的に起きやすい影響を分けて説明します。(世界税関機関)


1. まず押さえるべき「影響の出方」

e-bike、ドローン、清掃ロボットに共通するリスクは、分類が揺れやすい境界線にいることです。

・製品の実態は同じでも、呼び方や用途説明で章がブレる
・自律機能やソフト機能の追加で、従来の品名表現に当てにくくなる
・各国が独自に細分(8桁、10桁)してきた分野が、HS(最初の6桁)側で整え直される

HS2028はまさにこの「当てにくい分野」を整える方向が公式説明で示されています。


2. ドローンはここが具体的に動く

自律補助機能があっても、8806で迷わない方向へ

ドローン(無人航空機)は、HS2022で見出し8806が新設され、重量区分などで細分されています。ところが近年は、帰還(Return to Home)や障害物回避のような補助的な自律機能が標準化し、「remote-controlled flight only(遠隔操縦のみ)」という文言だと実態とズレる場面が出てきました。

この点について、WCOのHS見直し小委員会(RSC)で、8806.2の品名表現を
remote-controlled flight only から remote-controlled flight, with or without auxiliary autonomous flight
へ改める合意があったこと、さらに「remote-controlled flight」の意味を定義する章注案が提案され、HS委員会へ送付されHS2028で採択され得ることが、米国政府の公開ページで具体的に説明されています。(貿易庁 | Trade.gov)

企業実務への影響は次の通りです。
・自律補助機能付きドローンでも、遠隔操縦型として8806の枠内に位置づけやすくなる
・「自律機能があるから別分類」といった誤解による差戻しや照会が減りやすい
・一方で、重量区分や用途区分(旅客運送設計など)の判定は引き続き重要

現場で必要になる証跡は、従来の仕様書に加え、操縦形態(遠隔操縦を前提にし、補助的自律機能を含むこと)、最大離陸重量、運用形態の説明です。(貿易庁 | Trade.gov)


3. 清掃ロボットはここが具体的に動く

85.08の文言や扱いを明確化する動きが出ている

清掃ロボットは、家庭用のロボット掃除機だけでなく、床洗浄、モップ掛け、業務用の自走清掃など形態が広がり、各国で分類が揺れやすい分野です。

まず現状の参考として、米国CBPの分類例では、Wi-Fi接続のロボット掃除機が「self-drive(自律走行)モード」を備えていても、真空式掃除機として8508に分類されています。(customsmobile.com)
つまり、少なくとも一部当局実務では「ロボットであること」自体は85.08から外れる理由になっていません。

一方、HS見直しの議論では、清掃ロボットについて「見出し85.08の品名表現を修正する可能性」が議題として挙がっています。HS見直し小委員会のドラフト議題(公開ファイル)には、見出し85.08に関して cleaning robots を対象とした品名修正の可能性が明記されています。(nbr.gov.bd)
さらに、WCO職員によるHS改正案の説明資料でも、清掃ロボットが改正テーマとして列挙されています。(unstats.un.org)

企業実務への影響は次の通りです。
・清掃ロボットを85.08など既存の枠に当てやすくするため、品名や注記の整備が進む可能性
・国ごとにバラついていた「ロボット清掃機器」の扱いが寄っていき、税番の安定度が上がりやすい
・逆に、これまで別章で運用していた場合は、HS2028切替時に品目マスターの見直しが必要

社内で先に整えるべきデータ項目は、清掃方式(吸引、ブラシ、モップ、洗浄液の有無)、ダスト容器の有無と容量、電動機内蔵、用途(家庭用か業務用か)、自走の有無です。ここが揃うと、切替時に分類根拠の再作成が速くなります。(customsmobile.com)


4. e-bikeは何が起きやすいか

国別の細分が先行しており、HS6桁側で整理されやすい領域

e-bikeは、HS2028で分類容易化の例として明示されています。
一方で、公開情報だけで「HS6桁が何番に分割される」と断定できる段階の資料は限られます。そこで本稿では、企業にとって現実的に起きやすい影響を、確度の高い観察事実から整理します。

観察事実として、e-bikeはすでに多くの国・地域で細分管理が先行しています。
例えば英国の公開ガイダンスでは、ペダルアシスト型電動自転車を8711 60 10(CNの区分)として扱う説明が示されています。(GOV.UK)
EUの文書でも、通常の電動自転車とスピード型電動自転車を別コードで扱ってきた経緯が記されています。(EUR-Lex)
またEUは、e-bikeがHS8711 60に分類されることを前提に、原産地の非優遇ルールの情報提供を行っています。(Taxation and Customs Union)

この状況は、次を意味します。
・HS6桁(国際共通の最初の6桁)では一括でも、各国が8桁以降で分けて管理せざるを得なかった
・その結果、国をまたぐと「同じe-bikeのはずが統計や社内マスター上は別物」になりやすい
・HS2028が分類容易化を狙う以上、HS6桁側で境界線を明確にする方向の議論が入りやすい

企業実務への影響は、コードが変わるかどうか以前に、判定に必要な客観仕様を揃えることが必須になる点です。
特に次の仕様は、将来の区分整理の基礎データとして重要度が高いです。
・ペダルアシストか、スロットル主体か
・定格出力、最高速度、車両区分の根拠
・バッテリー仕様と同梱形態
・車体重量、用途(公道、私有地、貨物用途など)

これらが揃っていないと、HS2028切替後に取引先や通関業者から「仕様を出してほしい」が集中し、出荷が止まりやすくなります。


5. 3分野共通の社内アクション

2028年に止まらないための最小セット

  1. 品目マスターに、分類に効く仕様項目を追加する
    e-bikeは出力と車両性、ドローンは操縦形態と重量、清掃ロボは清掃方式と機能で、まずは項目を揃えるのが最優先です。(貿易庁 | Trade.gov)
  2. HS2022とHS2028を二重管理できる設計にする
    切替日は2028年1月1日です。HS6桁が変わると、申告、原産地、統計、契約表示まで連鎖します。WCOもHS2028の公表と発効タイムラインを示しています。(世界税関機関)
  3. 争点になりやすい品目は、分類根拠メモを先に作る
    新技術系は「なぜその章なのか」を後から説明できることが、照会対応と監査対応のコストを決めます。HS2028はまさに、こうした分野の分類容易化を目的に含む改正です。

まとめ

HS2028で e-bike、ドローン、清掃ロボットが影響を受けやすい理由は、製品の進化速度が速く、従来の品名表現だけでは境界が曖昧になりやすいからです。EUの公式説明でも、これらが分類容易化の対象例として挙げられています。

ドローンは、補助的自律機能を前提に8806の文言を更新する提案が具体的に示されており、HS2028で採択され得ます。(貿易庁 | Trade.gov)
清掃ロボットも、85.08の扱いを明確化する議論が確認でき、実務上の揺れを抑える方向が見えます。(nbr.gov.bd)
e-bikeは各国で細分管理が先行しており、HS6桁側で整理が入りやすい領域です。(GOV.UK)

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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