電動自転車・ドローン分類の最新判断動向

本稿では、ビジネス担当者が押さえるべき「最近の判断の方向性」と「判断を再現できる情報の持ち方」を、電動自転車とドローンに分けて整理します。


EUの通商情報でも、2022年1月からの関税分類改正として「8806 Unmanned aircraft(drones)」「8807 Parts」が明示されています。 (EUトレード)
英国の分類ガイダンスも、ドローンは見出し8806、部品は見出し8807という整理を明確に示しています。 (GOV.UK)

同じ英国ガイダンスでは、ドローンに使う映像撮影・記録用の装置(単体)は見出し8525、玩具としての飛行玩具は見出し9503と整理されています。 (GOV.UK)
つまり近年の実務トレンドは、ドローン本体は8806へ寄せつつ、周辺機器や用途が別見出しに分岐する構造になっています。

米国の産業貿易局(ITA)の説明では、8806の下で最大離陸重量などにより細分される構造が示されています。ドローン分類は、外観や通称よりも、最大離陸重量、飛行制御の前提、運搬設計の有無といった仕様データが、判断の中核になりやすい状況です。 (トレード.gov)


米国CBPの裁定では、電動自転車が「補助原動機付きの自転車」として8711.60に分類される例が示されています。 (CROSS)
EU側でも、e-bikeはHS見出し8711.60として扱われる前提で、非特恵原産地の判断ルールが自転車と整合するよう調整された旨が示されています。 (Taxation and Customs Union)

英国ガイダンスでは、未完成品でも、フレームとフォーク、電動モーター、加えて一定の主要部品がそろう場合に、完成品として扱い得る考え方が示されています。また、モーターが欠ける場合は自転車(8712)になり得る旨も明記されています。 (GOV.UK)
さらに、フィンランド税関の案内では、同時提示される部品が実質的に完成品または未完成品を構成する場合、見出し8712または8711.60として扱われ得る旨が示されています。 (Tulli)

この流れは、企業実務に直結します。完成品のHSを理解していても、部材一式の輸入、分割梱包、キット販売、委託組立の形態次第で、分類の見立てと説明責任が変わるためです。

米国CBPの例では、電動自転車のコンバージョンキットが見出し8714(部分品)に分類される判断が示されています。 (CROSS)
電動化が進むほど、完成品・部分品・組立用セットの境界が実務の争点になりやすく、ここが最新動向の中心です。


EUの2022年改正の説明でも、8806と8807がセットで示されています。 (EUトレード)
英国ガイダンスも同様に、ドローンは8806、部品は8807と明示しています。 (GOV.UK)

英国ガイダンスでは、カメラ等を搭載していてもドローンは8806と整理され、カメラ等の装置が単体で輸入される場合は8525という切り分けが示されています。 (GOV.UK)
企業としては、セット輸入・同梱・別送の設計が、分類と説明の難易度を左右します。

玩具としての飛行玩具は9503とされるため、軽量機体や遊戯目的の設計は、仕様説明と販促資料の書き方次第で判断が揺れる領域です。 (GOV.UK)
ここは通関時だけでなく、社内カタログ、用途説明、取扱説明書の記載が「分類根拠」の一部として参照され得る点に注意が必要です。


・駆動方式(ペダル補助か、スロットル主体か)
・モーターの種類と定格、搭載位置
・最高速度、車体重量、用途(公道、私有地、物流等)
・完成品か、未完成品か、分割出荷か(同時提示かどうか)
・キット販売の場合、構成品一覧と「完成車になる度合い」
未完成品や部材一式の扱いは、各国ガイダンスで完成品相当になり得る枠組みが示されているため、出荷形態の設計段階で分類説明を作っておくことが有効です。 (GOV.UK)

・最大離陸重量(重量区分は細分の起点になりやすい) (トレード.gov)
・運搬設計の有無(人や貨物の運搬を目的とする設計か)
・機体と周辺機器の輸入形態(同梱、別送、単体)
・搭載機器が単体輸入される場合の機能説明(映像撮影装置など) (GOV.UK)
・玩具としての設計かどうかを示す資料(用途、対象年齢、販促表現) (GOV.UK)


ドローンのようにHS改正で専用見出しが立つと、企業側は分類の一貫性を高めやすくなる一方、周辺機器やセット輸入の設計で説明責任が増します。電動自転車も同様に、完成品・未完成品・キット・部分品の境界で判断が動くため、結論だけをマスタに入れて終わりにすると、次の監査や問い合わせで止まります。

おすすめは次の2点です。

  1. 品目マスタに、分類根拠の要約(仕様の要点、判断の分岐点、参照した公式根拠)を同時に残す
  2. 分割出荷、キット、同梱設計など、物流設計が変わる製品は、出荷パターン別に分類ストーリーを持つ

これにより、HS2028への移行時も、相関表でコードを置き換えるだけでなく、どの仕様が分類を支えているかを起点に、再判定が必要な品目を先に抽出できます。


本稿は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件に対する法的助言または税務・通関助言ではありません。実際のHS分類や申告は、対象品目の仕様、用途、輸入形態、同梱関係、各国法令および税関当局の運用により結論が異なり得ます。必要に応じて、通関業者、弁護士、関税・貿易の専門家への相談、または関係当局への事前教示の申請等をご検討ください。

■HS2028■④e-bike、ドローン、清掃ロボット関連のHSコード

番号の付け替えではなく、分類の境界線が動く

2028年1月1日発効予定のHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(Article 16 Recommendation)に基づく新しいHS版で、299セットの改正を含みます。改正の狙いとして「新製品や国際標準の反映により分類を容易にする」例に、e-bike、清掃ロボット、ドローンが明示されています。

本稿では、公開一次情報で確度高く言える範囲に絞り、これら3分野でどのような影響が出やすいかを、ビジネスマン向けに整理します。
注意点として、改正勧告の全文(どのHS6桁がどう変わるか)は、各国の国内実装や相関表の整備と合わせて最終確認が必要です。ここでは、確定情報と、実務的に起きやすい影響を分けて説明します。(世界税関機関)


1. まず押さえるべき「影響の出方」

e-bike、ドローン、清掃ロボットに共通するリスクは、分類が揺れやすい境界線にいることです。

・製品の実態は同じでも、呼び方や用途説明で章がブレる
・自律機能やソフト機能の追加で、従来の品名表現に当てにくくなる
・各国が独自に細分(8桁、10桁)してきた分野が、HS(最初の6桁)側で整え直される

HS2028はまさにこの「当てにくい分野」を整える方向が公式説明で示されています。


2. ドローンはここが具体的に動く

自律補助機能があっても、8806で迷わない方向へ

ドローン(無人航空機)は、HS2022で見出し8806が新設され、重量区分などで細分されています。ところが近年は、帰還(Return to Home)や障害物回避のような補助的な自律機能が標準化し、「remote-controlled flight only(遠隔操縦のみ)」という文言だと実態とズレる場面が出てきました。

この点について、WCOのHS見直し小委員会(RSC)で、8806.2の品名表現を
remote-controlled flight only から remote-controlled flight, with or without auxiliary autonomous flight
へ改める合意があったこと、さらに「remote-controlled flight」の意味を定義する章注案が提案され、HS委員会へ送付されHS2028で採択され得ることが、米国政府の公開ページで具体的に説明されています。(貿易庁 | Trade.gov)

企業実務への影響は次の通りです。
・自律補助機能付きドローンでも、遠隔操縦型として8806の枠内に位置づけやすくなる
・「自律機能があるから別分類」といった誤解による差戻しや照会が減りやすい
・一方で、重量区分や用途区分(旅客運送設計など)の判定は引き続き重要

現場で必要になる証跡は、従来の仕様書に加え、操縦形態(遠隔操縦を前提にし、補助的自律機能を含むこと)、最大離陸重量、運用形態の説明です。(貿易庁 | Trade.gov)


3. 清掃ロボットはここが具体的に動く

85.08の文言や扱いを明確化する動きが出ている

清掃ロボットは、家庭用のロボット掃除機だけでなく、床洗浄、モップ掛け、業務用の自走清掃など形態が広がり、各国で分類が揺れやすい分野です。

まず現状の参考として、米国CBPの分類例では、Wi-Fi接続のロボット掃除機が「self-drive(自律走行)モード」を備えていても、真空式掃除機として8508に分類されています。(customsmobile.com)
つまり、少なくとも一部当局実務では「ロボットであること」自体は85.08から外れる理由になっていません。

一方、HS見直しの議論では、清掃ロボットについて「見出し85.08の品名表現を修正する可能性」が議題として挙がっています。HS見直し小委員会のドラフト議題(公開ファイル)には、見出し85.08に関して cleaning robots を対象とした品名修正の可能性が明記されています。(nbr.gov.bd)
さらに、WCO職員によるHS改正案の説明資料でも、清掃ロボットが改正テーマとして列挙されています。(unstats.un.org)

企業実務への影響は次の通りです。
・清掃ロボットを85.08など既存の枠に当てやすくするため、品名や注記の整備が進む可能性
・国ごとにバラついていた「ロボット清掃機器」の扱いが寄っていき、税番の安定度が上がりやすい
・逆に、これまで別章で運用していた場合は、HS2028切替時に品目マスターの見直しが必要

社内で先に整えるべきデータ項目は、清掃方式(吸引、ブラシ、モップ、洗浄液の有無)、ダスト容器の有無と容量、電動機内蔵、用途(家庭用か業務用か)、自走の有無です。ここが揃うと、切替時に分類根拠の再作成が速くなります。(customsmobile.com)


4. e-bikeは何が起きやすいか

国別の細分が先行しており、HS6桁側で整理されやすい領域

e-bikeは、HS2028で分類容易化の例として明示されています。
一方で、公開情報だけで「HS6桁が何番に分割される」と断定できる段階の資料は限られます。そこで本稿では、企業にとって現実的に起きやすい影響を、確度の高い観察事実から整理します。

観察事実として、e-bikeはすでに多くの国・地域で細分管理が先行しています。
例えば英国の公開ガイダンスでは、ペダルアシスト型電動自転車を8711 60 10(CNの区分)として扱う説明が示されています。(GOV.UK)
EUの文書でも、通常の電動自転車とスピード型電動自転車を別コードで扱ってきた経緯が記されています。(EUR-Lex)
またEUは、e-bikeがHS8711 60に分類されることを前提に、原産地の非優遇ルールの情報提供を行っています。(Taxation and Customs Union)

この状況は、次を意味します。
・HS6桁(国際共通の最初の6桁)では一括でも、各国が8桁以降で分けて管理せざるを得なかった
・その結果、国をまたぐと「同じe-bikeのはずが統計や社内マスター上は別物」になりやすい
・HS2028が分類容易化を狙う以上、HS6桁側で境界線を明確にする方向の議論が入りやすい

企業実務への影響は、コードが変わるかどうか以前に、判定に必要な客観仕様を揃えることが必須になる点です。
特に次の仕様は、将来の区分整理の基礎データとして重要度が高いです。
・ペダルアシストか、スロットル主体か
・定格出力、最高速度、車両区分の根拠
・バッテリー仕様と同梱形態
・車体重量、用途(公道、私有地、貨物用途など)

これらが揃っていないと、HS2028切替後に取引先や通関業者から「仕様を出してほしい」が集中し、出荷が止まりやすくなります。


5. 3分野共通の社内アクション

2028年に止まらないための最小セット

  1. 品目マスターに、分類に効く仕様項目を追加する
    e-bikeは出力と車両性、ドローンは操縦形態と重量、清掃ロボは清掃方式と機能で、まずは項目を揃えるのが最優先です。(貿易庁 | Trade.gov)
  2. HS2022とHS2028を二重管理できる設計にする
    切替日は2028年1月1日です。HS6桁が変わると、申告、原産地、統計、契約表示まで連鎖します。WCOもHS2028の公表と発効タイムラインを示しています。(世界税関機関)
  3. 争点になりやすい品目は、分類根拠メモを先に作る
    新技術系は「なぜその章なのか」を後から説明できることが、照会対応と監査対応のコストを決めます。HS2028はまさに、こうした分野の分類容易化を目的に含む改正です。

まとめ

HS2028で e-bike、ドローン、清掃ロボットが影響を受けやすい理由は、製品の進化速度が速く、従来の品名表現だけでは境界が曖昧になりやすいからです。EUの公式説明でも、これらが分類容易化の対象例として挙げられています。

ドローンは、補助的自律機能を前提に8806の文言を更新する提案が具体的に示されており、HS2028で採択され得ます。(貿易庁 | Trade.gov)
清掃ロボットも、85.08の扱いを明確化する議論が確認でき、実務上の揺れを抑える方向が見えます。(nbr.gov.bd)
e-bikeは各国で細分管理が先行しており、HS6桁側で整理が入りやすい領域です。(GOV.UK)