HS2022 第28類:無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素又は同位元素の無機又は有機の化合物(Inorganic chemicals; organic or inorganic compounds of precious metals, of rare-earth metals, of radioactive elements or of isotopes)

  • 用語の統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**とします。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 塩素、アルゴン等の化学的に単一の元素(例:塩素ガス 2801、アルゴン 2804)
    • 無機酸(例:塩酸 2806、硫酸 2807、硝酸 2808)
    • 無機塩基・酸化物・水酸化物(例:アンモニア 2814、苛性ソーダ 2815、アルミナ/水酸化アルミ 2818、酸化チタン 2823)
    • 各種の無機塩(硫酸塩・硝酸塩・リン酸塩 等)(例:硫酸塩 2833、硝酸塩 2834、リン酸塩 2835)
    • 過酸化水素(2847)
    • 貴金属化合物・放射性元素/同位体関連(2843、2844、2845、2846 など)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 混合物・調製品(例:用途に合わせて配合した洗浄剤・触媒配合品など)→第38類(特に 3824)へ行きやすい(「化学的に単一」かが鍵)
    • 水以外の溶媒に溶かした溶液で、輸送安全のための通常形態を超え「特定用途に適する」もの →第38類(3824)へ行きやすい(例:アンモニアのアルコール溶液等)
    • 肥料としての性格が強いもの(第31類の注に該当)→第31類(肥料)
    • ルミノホア用無機物(蛍光体用途など)→ 3206、ガラスフリット→3207
    • 貴金属そのもの・貴金属合金、貴石等 →第71類
    • **金属(純金属・合金等)**として扱うべきもの →第15部(Section XV)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「化学的に単一(separate chemically defined)」か/混合物・調製品か(SDS・CAS・製法で確認)
    2. 溶液の扱い:水溶液は原則OK、他溶媒は条件付き(安全/輸送上の通常形態か、特定用途化していないか)
    3. 放射性元素・同位体:2844/2845/2843/2846/2852は「該当すれば他に行かない」原則(部注)+HS2022で細分が増えた
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **規制対象(毒劇物、化審法、輸出管理等)**の化学品:HS誤りが、許認可・届出・輸出許可要否の判断ミスに直結しやすい
    • 放射性同位体(2844/2845):HS2022で細分化され、旧コード運用のままだと誤付番が起きやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し・注で決める):第28類は「化学的に単一の元素・化合物」を中心に、注で範囲(溶液、安定剤、除外)を決めています。まず**類注(Chapter Notes)**で「この類に入る形態か/除外か」を確定します。
    • GIR6(号=6桁の比較):同じ項でも「濃縮同位体」「特定の放射性元素」「純度(例:Si 99.99%)」など、号の条件で割れます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • CAS番号・化学式・組成(純度、濃度)
    • 状態(固体/液体/水溶液/他溶媒溶液/コロイド)
    • 添加剤の目的(保存/輸送のための安定剤なのか、用途特化の配合なのか)
    • 放射能(比放射能、同位体の種類)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「無機化学品」か?
    • 有機化合物主体なら第29類(ただし第28類には例外的に“有機物”が入る範囲もある:2843〜2846、2852等)
  • Step2:「化学的に単一の元素/化合物」か?
    • 製造工程由来の不純物は許容されますが、特定用途に適するよう意図的に残した/加えた場合は「不純物」扱いにならない可能性があります(=調製品寄り)
  • Step3:形態が類注1の範囲内か?
    • 水溶液は原則OK
    • 他溶媒溶液は「安全/輸送のための通常形態」等の条件付き(用途特化なら除外)
  • Step4:除外規定に当たらないか?
    • 第31類(肥料)・第32類(蛍光体/ガラスフリット)・第38類(調製品)・第71類(貴金属等)・第15部(金属等)などへ飛ぶパターンを点検
  • Step5:該当項(4桁)→該当号(6桁)へ
    • 放射性・同位体は部注の「他に行かない」原則が強いので先に確認
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第28類 vs 第38類:化学的に単一(+許容される溶液/添加)か、用途特化の調製品か
    • 第28類 vs 第31類:肥料の注に該当するか(例:カルシウムシアナミド等は第31類へ除外され得る)
    • 第28類 vs 第15部(金属・合金):金属材料としての性格か、化合物(例:りん銅の条件)か
    • 第28類 vs 第3818:電子工業用にドープ処理した元素でも、形状がウェハ等なら3818

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第28類は項数が多いため、実務重要(頻出・誤分類多・規制/原産地に効く)を中心に列挙し、残りは「その他」でまとめます。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2801ハロゲン元素(塩素等)塩素ガス、ヨウ素危険物・規制物質になりやすい。単体元素としての形態確認。
2804水素・レアガス・他の非金属水素、アルゴン、窒素、酸素、シリコンシリコンは純度で号が分岐(例:99.99%)
2806塩化水素(塩酸)等塩酸、クロロスルホン酸水溶液/濃度、用途特化の調製かを確認。
2807硫酸・発煙硫酸硫酸、オレウム濃度・形態(発煙)で税率/危険物対応が変わることがある(国内コードでは細分し得る)。
2808硝酸等硝酸危険性・規制(毒劇等)確認が実務上重要。
2811その他の無機酸・非金属の酸化物フッ化水素酸、二酸化炭素等HS2017以降、シアン化水素が号として独立
2812非金属のハロゲン化物等ホスゲン(※溶媒形態注意)等2812.10が細分化(2812.11〜2812.19)
2814アンモニア無水アンモニア、アンモニア水無水/水溶液で号が分岐。他溶媒溶液は除外され得る例あり。
2815水酸化ナトリウム等苛性ソーダ固形、苛性ソーダ液固形/水溶液で号分岐
2818アルミナ・水酸化アルミ等アルミナ粉末、水酸化アルミコロイド溶液は第38類への例あり
2823酸化チタン顔料用TiO₂顔料用途(第32類)との境界に注意(ただし酸化チタン自体は28類側)。
2827塩化物(塩化アンモニウム等)塩化アンモニウム、塩化カルシウム金属塩としての整理が必要(塩/酸/酸化物の取り違えが多い)。
2833硫酸塩・ミョウバン等硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム第31類(肥料)用途・形態との関係に注意。
2834硝酸塩・亜硝酸塩硝酸カリウム、硝酸塩類危険性・規制確認が重要。
2835リン酸塩・ポリリン酸塩リン酸二ナトリウム、トリポリリン酸Na等洗剤用途等で調製品化(第38類)しやすい。
2840ホウ酸塩等ホウ砂、過ホウ酸塩2847(過酸化水素)など安定化の考え方とセットで理解。
2843貴金属のコロイド・化合物硝酸銀、金化合物部注で「該当すれば他に行かない」(Section VI Note 1(B))
2844放射性元素・放射性同位体等トリチウム等、放射性残留物HS2022で2844.41〜2844.44に細分
28452844以外の同位体等重水、B-10濃縮、Li-6濃縮、He-3等HS2022で2845.20〜2845.40が新設
2847過酸化水素過酸化水素水安定剤添加はOKの範囲あり(例:ホウ酸で安定化)
2852水銀の化合物塩化水銀等**2852.10(化学的に単一)**の定義あり
2853りん化物等・その他無機化合物りん化物、蒸留水/導電率水、液体空気等りん銅(P>15%)が含まれる(注)
その他上記以外の無機酸、酸化物、各種塩など多数例:クロム酸塩、シアン化物、ケイ酸塩…「金属塩/過酸塩のみ」等の類注(28.26〜28.42)を意識

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 純度基準(例:シリコンの重量比 99.99% 以上か)
    • 溶液区分(無水/水溶液、溶媒が水以外の場合の扱い)
    • 同位体の種類・濃縮の有無(HS2022で細分が増加)
    • 「化学的に単一」か否か(2852.10の定義など)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2804.61(Si 99.99%以上) vs 2804.69(その他のSi)
      • どこで分かれるか:シリコンの重量百分率(分析値)
      • 判断に必要な情報:分析成績書(CoA)、純度規格、SDS
      • 典型的な誤り:電子材料用途=高純度と決めつけて 2804.61 にしてしまう(実測が必要)
    2. 2844(放射性元素/同位体等)内の細分(HS2022)
      • どこで分かれるか:2844.41(トリチウム)、2844.42(列挙元素群)、2844.43(その他)、2844.44(放射性残留物)
      • 判断に必要な情報:同位体名、核種情報、比放射能、輸送書類(クラス7等)、供給者証明
      • 典型的な誤り:旧HS(2017)の「2844.40」感覚で括ってしまう(HS2022では細分)
    3. 2845(2844以外の同位体)内の細分(HS2022)
      • どこで分かれるか:2845.10(重水)に加えて、2845.20(B-10濃縮)、2845.30(Li-6濃縮)、2845.40(He-3)が新設
      • 判断に必要な情報:同位体組成、濃縮率、用途(ただし用途ではなく「物」基準)
      • 典型的な誤り:重水以外を「2845.90その他」に入れてしまう(HS2022では分ける)
    4. 2852.10(化学的に単一の水銀化合物) vs 2852.90(その他)
      • どこで分かれるか:類注・章注の要件を満たす「化学的に単一」かどうか(号注で定義)
      • 判断に必要な情報:化学式、CAS、純度、混合/製剤の有無
      • 典型的な誤り:水銀を含む“混合物”を 2852.10 に入れてしまう(要件未満)
    5. 2853.10(シアノゲン塩化物) vs 2853.90(その他)
      • どこで分かれるか:特定品名か否か
      • 判断に必要な情報:化学名、CAS、SDS
      • 典型的な誤り:類似のシアン系化合物(2837/2838等)と混同

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • **部注(Section VI Note 1)**は、放射性・貴金属化合物など一部見出しに「排他性」を与えます。
      • 2844・2845に該当する物品は、他のどの見出しにも分類しない
      • 2843・2846・2852も同様に(2844/2845に従属)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例えば「放射性残留物」や「特定の放射性同位体」を含む混合物でも、2844の定義に合えば2844優先という発想になります(まず2844/2845を疑う)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 逆に、2844/2845に該当しない(または章注の閾値等を満たさない)場合、通常の無機化学品として28類内の別項、または調製品として38類へ行く検討に戻ります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:この類は原則として「化学的に単一の元素・化合物」+(水溶液、一定条件の他溶媒溶液、必要な安定剤・固結防止剤、識別/安全のための着色・防じん剤)を含みます。
    • 注3:多くの除外(第31類、第32類、第38類、第71類、第15部等)が列挙されています。
    • 注5:2826〜2842は基本的に金属塩・アンモニウム塩・過酸塩のみ。二重塩・錯塩は原則 2842。
    • 注6:2844の対象と、放射能の閾値(比放射能 74 Bq/g 超)等を規定。
    • 注7:2853に「りん銅(P>15%)」を含める(合金側に行かせないための実務上のくぎ刺し)。
    • 注8:電子工業用ドープ処理した元素は、棒/円柱等なら28類、ウェハ等に切れば 3818。
    • 号注:2852.10「化学的に単一」の定義を置く。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「不純物」:製造工程(精製含む)に直接起因する未反応原料・原料由来不純物・試薬・副産物等。ただし用途特化のため意図的に残した/加えた場合は不純物とみなされないことがある、という整理が重要です。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 水以外の溶媒溶液で、用途特化に当たるもの → 3824 等(例示あり)
    • 肥料関係の注に当たるもの → 第31類
    • ルミノホア用無機物 → 3206、ガラスフリット → 3207

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:溶媒(特に水以外)・コロイドで 38類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 溶媒の種類(水/アルコール/ベンゼン等)
      • その溶解が「輸送安全等の通常形態」か、用途特化か
      • コロイド/分散体かどうか(粒径・分散媒)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS(溶媒・濃度・用途)
      • 技術資料(製品が“溶液として販売する必然性”の説明)
      • 取引形態(容器、濃度、危険物対応)
    • 誤分類の典型:
      • アンモニアのアルコール溶液や、塩化カルボニル(ホスゲン)のベンゼン溶液など、28類のつもりで申告してしまう(実務例として 3824 側に整理され得る)
  • 影響ポイント2:安定剤添加はOKでも、“用途を作る配合”はNG
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 添加剤の目的(保存/輸送のためか、反応性付与・触媒化など用途特化か)
    • 現場で集める証憑:
      • 配合表、製造工程図、SDS、品質規格書
    • 誤分類の典型:
      • ホウ酸で安定化した過酸化水素は28類(2847)に整理され得る一方、過酸化ナトリウムを触媒と混合する等、用途特化の混合物は 3824 側に寄る、という考え方を見落とす
  • 影響ポイント3:放射性・同位体は“先に疑う”+HS2022細分に注意
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 同位体の種類(トリチウム等)、濃縮の有無(B-10、Li-6、He-3等)
    • 現場で集める証憑:
      • 同位体証明、分析結果、輸送書類、法規制関連書類(該当する場合)
    • 誤分類の典型:
      • HS2017の「2844.40」運用のまま、HS2022でも雑に「その他」で申告してしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:“純度が高い=化学的に単一”と決めつける
    • なぜ起きる:化学品は「高純度=単一」と思いがちだが、用途特化で意図的に添加/残留させている場合がある
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第28類注1の枠は「単一」+限定された添加に限る。不純物の考え方も「工程由来」に限定される
    • 予防策:
      • SDSの「成分」「安定剤」「用途」を確認
      • 仕入先へ質問例:「添加剤は“保存/輸送”目的ですか?用途を作る配合ですか?」
  2. 間違い:水以外の溶媒に溶かした溶液を、そのまま28類に入れる
    • なぜ起きる:水溶液OKの感覚が他溶媒にも拡張されがち
    • 正しい考え方:他溶媒は条件付きで、用途特化なら除外され得る(例示あり)
    • 予防策:
      • 「なぜその溶媒か」を書面化(輸送安全上の通常形態か)
      • 取引仕様(濃度・容器・用途)を保存
  3. 間違い:コロイド溶液(分散体)を“溶液”として28類に入れる
    • なぜ起きる:「溶けている=溶液」と誤認
    • 正しい考え方:コロイド状ディスパージョンは 3824 側に整理され得る例が示されている
    • 予防策:
      • 粒径、分散状態(懸濁/コロイド)を技術資料で確認
      • SDSの形態欄(分散液/懸濁液/コロイド)を確認
  4. 間違い:肥料用途の塩類を、無条件で28類の塩に入れる
    • なぜ起きる:化学式だけで判断しがち
    • 正しい考え方:第31類の注に該当する場合は除外され得る
    • 予防策:
      • 用途・表示・包装形態(肥料としての流通か)を確認
      • 製品ラベル/規格書を保存
  5. 間違い:電子工業用ドープ元素を形状無視で28類に入れる
    • なぜ起きる:材料名(Si)だけで判断
    • 正しい考え方:棒/円柱等なら28類、ウェハ/ディスク状なら3818
    • 予防策:
      • 写真・図面で形状を証憑化
      • 「加工工程(切断/研磨)」有無を確認
  6. 間違い:放射性関連を“その他の化合物”として28類一般品に入れる
    • なぜ起きる:危険物/規制の観点とHSの排他性(部注)を分けて考えられていない
    • 正しい考え方:2844/2845は該当すれば他へ行かない(部注)+HS2022で細分が増えた
    • 予防策:
      • 同位体・比放射能の証明を必須資料化
      • HS版(2017/2022)を必ず明記して社内共有
  7. 間違い:りん銅を金属合金側(第74類等)で処理してしまう
    • なぜ起きる:取引現場では「合金材料」と呼ばれるため
    • 正しい考え方:注で 2853 に含める条件が明示されている(P>15%)
    • 予防策:
      • 成分証明(P%)を入手
      • 材料規格(JIS等)との整合を確認
  8. 間違い:6桁の純度・濃縮条件を確認せず“用途”で決める
    • なぜ起きる:「電子材料だから高純度/濃縮」と推定で処理
    • 正しい考え方:28類は用途よりも化学的性状・組成が中心(例:Si 99.99%等)
    • 予防策:
      • CoAの添付をルール化
      • 仕入先へ質問例:「保証純度は?測定方法は?同位体組成は?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。化学品は特に、材料(原料)も化学品であることが多く、最終品HSを誤ると「CTH/CTSH」や「RVC」の判定設計が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 原料は28類だが、最終品が38類(調製品)に飛ぶのに気づかず、PSRを誤る
    • 同位体・放射性の細分を誤り、PSR表の該当行を取り違える(HS2022で細分増)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSR表が参照するHS版(HS2012参照 等)が異なる場合があります。必ず協定付属書(PSR表の凡例)で確認してください。
  • HS2022とズレる場合の注意:
    • 旧版のサブヘディングが、HS2022で分割/統合されている可能性があります(例:2844、2845の細分化)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定の参照HS版でPSRを読み、必要に応じて相関表でHS2022コードへマッピングして社内管理する
    • 申告用HS(通関)と、原産性判定用のHS版が違う場合は、両方を記録

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(化学品で特に重要):
    • 材料表(BOM):原料名、CAS、純度、濃度、形態(溶液/粉末)
    • 工程:混合・溶解・反応・精製の有無(「化学的に単一」/「調製品」判断にも直結)
    • 非原産材料のHS(原料側)
    • RVC計算の前提(必要な場合)
  • 証明書類・保存(一般論):
    • CoA、SDS、工程図、購買記録、原産地証明関連書類を保存(協定ごとの保存年限は要確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分新設)2844.40 → 2844.41〜2844.442844.40(その他の放射性元素・同位体等)を細分し、特定同位体(例:トリチウム等)・残留物を分ける旧「2844.40」運用のままだと誤付番。輸出管理・統計・規制対応の突合がずれる
HS2017→HS2022分割(細分新設)2845.90 → 2845.20〜2845.40(+2845.90)2845.90(その他の同位体等)から、B-10濃縮、Li-6濃縮、He-3等を独立同位体製品の分類精度が要求される。証明書類(同位体組成)の重要性が増す

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料に基づく整理:
    • WCOの相関表(HS2022→HS2017)では、**2844.40の細分(2844.41〜2844.44)および2845.90の細分(2845.20〜2845.40)**が明示され、いずれも「特定同位体等のモニタリング/管理のため」といった趣旨で説明されています。
    • HS2022の第28類条文でも、2844に2844.41〜2844.44、2845に2845.20〜2845.40が実際に収載されています。
  • 上記以外の第28類の主要部分については、相関表上の変更列挙が限定的であり、実務上は「放射性・同位体」周辺が主な改正点になります(ただし、最終確認は必ず最新版条文で行ってください)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第28類の実務影響が大きいもの中心)
版の変化主な追加・削除・再編(要旨)旧コード→新コード(代表)根拠の例
HS2007→HS2012水銀化合物(2852)を「化学的に単一」かで細分し、見出し範囲も拡張2852.00 → 2852.10 / 2852.90相関表(2012→2007)に記載
HS2012→HS2017シアン化水素を独立サブヘディング化(旧)2811.19の一部 → 2811.12相関表(2017→2012)に記載
HS2012→HS20172812.10(塩化物等)を複数サブヘディングへ細分(2812.11〜2812.19)2812.10 → 2812.11〜2812.19相関表(2017→2012)に記載
HS2012→HS20172848(りん化物)を削除し、2853へ取り込み。2853は 2853.10/2853.90へ細分2848.00 → 2853(範囲拡張)/ 2853.00 → 2853.10/2853.90相関表(2017→2012)に記載
HS2017→HS20222844.40を細分(2844.41〜2844.44)2844.40 → 2844.41〜2844.44相関表(2022→2017)
HS2017→HS20222845.90を細分(2845.20〜2845.40)2845.90 → 2845.20〜2845.40(+2845.90)相関表(2022→2017)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“安定化”のつもりが“用途特化配合”扱い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注1の許容範囲(安定剤等)を超え、実質的に調製品(38類)とみなされ得る
    • 起きやすい状況:触媒・反応促進剤・界面活性剤等を加えて「使える形」にして販売
    • 典型的な影響:修正申告、品目分類の差し戻し、追加資料要求
    • 予防策:配合目的を「保存/輸送」か「用途」かで整理し、SDS・配合表を準備
  • 事例名:他溶媒溶液を“単一化学品”として申告
    • 誤りの内容:水以外の溶媒溶液で、注1(c)の条件を満たさないのに28類で申告
    • 起きやすい状況:危険物として溶媒希釈して輸送しているケース
    • 典型的な影響:分類変更(3824等)、危険物/規制の再判定、遅延
    • 予防策:「通常・必要な溶解」根拠(輸送要件、危険性評価)を用意
  • 事例名:ドープSiウェハを28類のSiで申告
    • 誤りの内容:注8に反し、ウェハ状を28類に入れる(本来は3818)
    • 起きやすい状況:材料部門が「Si原料」として処理
    • 典型的な影響:分類修正、関税・統計の修正、審査強化
    • 予防策:形状写真・加工工程・用途をセットで事前教示相談
  • 事例名:放射性同位体を旧HS感覚で“その他”処理
    • 誤りの内容:HS2022で細分された2844/2845を旧コード(2017)の括りで処理
    • 起きやすい状況:社内マスターがHS2017のまま、更新未実施
    • 典型的な影響:輸出管理チェックの漏れ/過剰、統計不整合、税関照会
    • 予防策:HS版を明記し、同位体証明と照合して更新

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第28類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 本類は食品検疫よりも、化学物質規制・危険物・輸出管理が中心になりがちです(品目により例外あり)。
  • その他の許認可・届出(化学品で頻出)
    • 毒物及び劇物取締法(毒劇物):対象物質を製造・輸入・販売等する場合、業態に応じた規制があり得ます(登録等)。
    • 化審法(化学物質の審査及び製造等の規制):製造・輸入事業者の届出等の枠組みがあり、混合物の場合の取扱い(一定割合など)に言及するガイダンスもあります。
    • 安全保障貿易管理(輸出管理)
      • リスト規制品だけでなく、用途・需要者等により許可が必要となるキャッチオール規制の枠組みが示されています。
      • 放射性同位体や特定化学品は輸出管理上も要注意(該当の有無は別途スペック確認)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 毒劇物:厚生労働省(毒物及び劇物取締法関連)
    • 化審法:経済産業省(化審法ポータル/届出手続)
    • 輸出管理:経済産業省(安全保障貿易管理、キャッチオール)
  • 実務での準備物(一般論):
    • SDS、CoA、CAS、化学式、濃度、用途、写真(形状)、工程資料、(該当時)同位体証明・放射能情報
    • 税関照会に備えた説明資料(「単一化学品である根拠」「溶媒形態の必然性」など)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 化学名(IUPAC/慣用名)、CAS、化学式、純度/濃度、SDS(成分表)
    • 形態(固体/水溶液/他溶媒溶液/コロイド/ペースト)
    • 添加剤の有無と目的(保存/輸送か、用途付与か)
    • 放射性/同位体:核種・濃縮率・比放射能(該当時)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第28類注1(溶液・添加の許容範囲)を満たすか
    • 第31類/第38類へ飛ぶ要素(肥料性・調製品化・他溶媒/コロイド)を再点検
    • 放射性関連は部注の排他性を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「一般名」だけでなく濃度・形態を付す(例:Sodium hydroxide solution 48%)
    • CoA・SDSの添付/即時提示準備
    • HS版(HS2022)での6桁確定(特に2844/2845)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終品HSと、協定参照HS版の整合
    • 原料HS・工程(混合/反応/精製)の説明可能性
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 毒劇物該当性、化審法の届出要否、輸出管理(リスト/キャッチオール)を並行で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2022 Section VI Notes (参照日:2026-02-19)
    • WCO Table I(HS2022→HS2017 相関表) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2017 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2012 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2007 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表の解説(第28類) (参照日:2026-02-19)
    • 厚生労働省:毒物及び劇物取締法(規制概要) (参照日:2026-02-19)
    • 厚生労働省(地方厚生局):毒物・劇物の輸入(販売/授与目的等) (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:化審法ポータル (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:化審法の輸入数量届出ガイダンス (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:キャッチオール規制 (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理の概要資料 (参照日:2026-02-19)

※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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