用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)。
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 石炭(一般炭・無煙炭など)・石炭ブリケット(2701)
- 原油(2709)
- ガソリン/灯油/軽油/重油/潤滑油などの石油由来の油(ただし「粗以外」)(2710)
- **LPG・天然ガス(LNG含む)**などの石油ガス・その他のガス状炭化水素(2711)
- **パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム(ワセリン)**等の鉱物性ろう(2712)
- 天然アスファルト/ビチューメン、タールサンド等(2714、2715)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 分離した化学的に単一の有機化合物(例:ベンゼン単体等)→原則第29類(ただし純メタン・純プロパンは2711)
- 医薬品 → 第30類(3003/3004)
- 混合不飽和炭化水素で、規定の品目に該当するもの → 33.01/33.02/38.05へ(注の除外)
- 液状の合成ポリオレフィンで、規定の蒸留条件に該当するもの → 第39類(注2の除外)
- 石油を“主成分”としない化学調製品(燃料添加剤・溶剤配合品など)→第38類(例:3811等になりやすい)※個別判定
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 原油(2709)か、精製・調製された油(2710)か(「粗」かどうか)
- 2710の中で、**“石油油が重量70%以上で主成分”**か/**廃油(waste oils)**か
- 石炭(2701)で、無煙炭/瀝青炭/その他を決めるための揮発分・発熱量(試験成績が要)
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- 燃料系(揮発油・軽油等):日本では備蓄法・品確法の手続や、税関での確認・書類提出が絡み、分類のズレが手続遅延に直結しやすいです(後述)。
- 廃油(2710のwaste oils):商流上「再生油」や「使用済み油」など呼称が揺れやすく、**“廃棄物/廃油扱い”**の有無で提出資料・規制確認が増えます(後述)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR:
- GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第27類は、品名よりも注(Notes)の定義・除外が実務の分岐点になりやすいです(例:2710の「waste oils」定義、注2の“石油油”の範囲)。
- **GIR6(6桁の分岐)**では、**試験値(蒸留曲線・揮発分・発熱量・含有割合)**がそのまま分岐条件になっています。
- 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
- 第27類は「燃料」「油」「ガス」など商業名が強いですが、HSはしばしば**“どう作られたか(石油/石炭タール/ビチューメン由来)”や、“成分・蒸留特性”**で分かれます。
- 典型例:
- 同じ「溶剤」でも、石炭タール蒸留由来で芳香族優勢なら2707寄り、石油油ベースで2710寄り、さらに化学調製なら第38類寄り…という具合に、由来と組成が重要です。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:それは「鉱物性燃料・鉱物油・蒸留製品・瀝青質物質・鉱物性ろう・電気エネルギー」か?
- YES → Step2へ
- NO → 他類(例:第29類・第38類・第39類など)を検討
- Step2:形状・性状で大分類
- 固体燃料(石炭・褐炭・泥炭・コークス等)→ 2701〜2704中心
- ガス(石油ガス・天然ガス等)→ 2711中心
- 液体油(原油/精製油/調製品/廃油)→ 2709 or 2710中心
- タール・ピッチ・ビチューメン・混合物→ 2706〜2708、2713〜2715
- Step3:注(Notes)で“落とし穴”を潰す
- 分離した単一有機化合物(第29類)ではないか
- 2710の「石油油」定義(注2)に入るか/合成ポリオレフィン除外に当たらないか
- 2710の「waste oils」(注3)に当たるか
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第27類(2710) vs 第38類(調製品:添加剤/溶剤/ブレンド):石油油が重量70%以上かつ主成分かどうかが大きい分岐になりやすいです。
- 第27類(2710) vs 第39類(合成ポリオレフィン):注2の除外条件(蒸留性状)に当たると第39類へ飛びます。
- 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油):芳香族/非芳香族の優勢、由来、蒸留特性が鍵です。
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
- この類(第27類)の4桁見出しは多すぎないため、全列挙します(HS2022条文ベース)。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 2701 | 石炭・石炭から製造した固形燃料 | 一般炭、無煙炭、石炭ブリケット | 無煙炭/瀝青炭の判定に揮発分・発熱量(6桁で厳密) |
| 2702 | 褐炭(ジェット除く) | 褐炭、成型褐炭 | ジェットは除外(他章) |
| 2703 | 泥炭 | 泥炭、泥炭リター | 園芸用途でも“泥炭”自体はここ |
| 2704 | コークス、半成コークス、レトルトカーボン | コークス、半成コークス | 原料(石炭/褐炭/泥炭)問わず該当 |
| 2705 | 石炭ガス等(石油ガス等を除く) | 発生炉ガス、水性ガス、石炭ガス | **2711(石油ガス・その他ガス状炭化水素)**との境界 |
| 2706 | 石炭/褐炭/泥炭由来のタール等 | 石炭タール、再構成タール | 2707(高温タール蒸留油)との区別 |
| 2707 | 高温石炭タールの蒸留油等(芳香族が優勢) | ベンゼン/トルエン留分、クレオソート油 | 芳香族優勢がポイント。特定物質は50wt%超条件(6桁注) |
| 2708 | ピッチ、ピッチコークス | コールタールピッチ、ピッチコークス | 2713(石油コークス等)と取り違え注意 |
| 2709 | 原油(石油油・瀝青鉱物油の“粗”) | 原油、オイルサンド由来の粗油 | 「粗」かどうか(精製・調製していないか) |
| 2710 | 石油油等(粗以外)、70wt%以上で主成分の調製品、廃油 | ガソリン、灯油、軽油、潤滑油、使用済み油 | 70wt%・主成分、およびwaste oils定義が最重要 |
| 2711 | 石油ガス・その他のガス状炭化水素 | LNG/LPG、プロパン、ブタン、天然ガス | 液化か気体か、天然ガスかLPGか等で分岐 |
| 2712 | ペトロラタム、パラフィンワックス等の鉱物性ろう | ワセリン、パラフィンワックス | 第34類の「調製ワックス」等との境界に注意 |
| 2713 | 石油コークス、石油ビチューメン、残留物 | 石油コークス、アスファルト(石油ビチューメン) | 2708(ピッチ)/2714(天然)/2715(混合物)と区別 |
| 2714 | 天然アスファルト/ビチューメン、タールサンド等 | 天然アスファルト、タールサンド | 2713(石油由来ビチューメン)との“天然/石油由来” |
| 2715 | ビチューメン混合物(舗装材等) | アスファルト混合物(路盤材) | 「混合物・調製品」としての性格が強い |
| 2716 | 電気エネルギー | 電力(国際的にはここ) | 国・制度で取扱いが異なることがあるため実務要確認 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
第27類は、6桁レベルで次のような**“試験・分析ドリブン”**な分岐が多いです。- 石炭(2701):揮発分(乾燥・無鉱物ベース)や発熱量(湿潤・無鉱物ベース)
- 芳香族留分(2707):特定物質(ベンゼン等)50wt%超、蒸留条件(例:250℃までの留出割合)
- 石油油(2710):
- 「軽質油」扱いの定義(210℃で90vol%留出)
- 「バイオディーゼル」含有の定義(脂肪酸モノアルキルエステル)
- 「廃油」定義(使用済み、スラッジ、油水エマルジョン等)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油・調製品/廃油)
- どこで分かれるか:
- 2707は芳香族成分が非芳香族より重い(“芳香族優勢”)タイプの蒸留油が中心です。
- 2710は「石油油(注2で定義)を主成分として含む」油・調製品・廃油が中心です。
- 判断に必要な情報:原料由来(石炭タール由来か)、成分分析(芳香族/非芳香族比)、SDS、蒸留性状。
- 典型的な誤り:商品名だけで「溶剤=2710」としてしまう(実際は2707や第38類の調製溶剤の場合)。
- どこで分かれるか:
- 2710.12(“軽質油”) vs 2710.19(その他)
- どこで分かれるか:2710.12の「軽質油・調製品」は210℃で90vol%以上留出が基準です(ISO 3405)。
- 判断に必要な情報:蒸留試験(ISO 3405相当)、留出曲線、試験成績書。
- 典型的な誤り:「ガソリンっぽい」外観で2710.12に寄せる(試験値が不足)。
- 2710.20(バイオディーゼル含有・70wt%以上の石油油系) vs 2710.12/2710.19
- どこで分かれるか:バイオディーゼルは注で定義された**脂肪酸のモノアルキルエステル(燃料用)**が対象です。
- 判断に必要な情報:FAME含有の有無・割合、原料(動植物/微生物由来)、SDS/分析(GC等)。
- 典型的な誤り:Bxx燃料(例:B5/B20)を、単に2710.19で申告してしまう。
- 2710(製品油) vs 2710(waste oils:廃油)
- どこで分かれるか:「waste oils」は注で、主に石油油からなる廃棄物で、使用済み潤滑油やタンクスラッジ等が例示されています。
- 判断に必要な情報:使用履歴、汚染・添加剤、タンク洗浄由来か、エマルジョンか、売買契約(再利用目的でも“廃”扱いになることがある)。
- 典型的な誤り:再生目的だからといって“製品”扱いで2710.19等にしてしまう。
- 2701.11(無煙炭) vs 2701.12(瀝青炭) vs 2701.19(その他)
- どこで分かれるか:
- 無煙炭:揮発分が14%以下(乾燥・無鉱物ベース)
- 瀝青炭:揮発分が14%超かつ発熱量が5,833kcal/kg以上(湿潤・無鉱物ベース)
- 判断に必要な情報:工業分析(揮発分)、発熱量試験、分析条件(ベース換算)。
- 典型的な誤り:産地や商習慣分類(steam coal等)だけでHSを決める。
- どこで分かれるか:
- 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油・調製品/廃油)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
第27類が属する**第V部(鉱物性生産品)について、WCO公開のHS2022構成(目次)上、部注(Section Notes)の掲載は確認されません。実務上は、まず類注(Chapter Notes)**が支配的です。 - 実務での意味(具体例つき):
- 第27類は、部注よりも**類注(注1〜注3)と、号注(Subheading Notes 1〜5)**が直接分岐を作ります。
- 例:使用済み潤滑油は、注3の定義に当たると「waste oils」として扱う、など。
- 第27類は、部注よりも**類注(注1〜注3)と、号注(Subheading Notes 1〜5)**が直接分岐を作ります。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- (部注による“飛び”はこの部では限定的なため)主に類注で他章へ飛びます(次節)。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 注1(除外):分離した単一有機化合物(ただし純メタン・純プロパンは2711へ)、医薬品(30類)、特定の混合不飽和炭化水素(33.01/33.02/38.05)は第27類から除外。
- 注2(2710の“石油油”の範囲):2710でいう「石油油等」は、石油由来に限らず、非芳香族成分の重量が芳香族成分を上回る“類似油”も含み得ます。一方で、一定条件の液状合成ポリオレフィンは除外(第39類)。
- 注3(waste oils定義):主に石油油等からなる廃棄物で、水混入の有無を問わず、使用済み油・タンクスラッジ・油水エマルジョン等が例示。
- 用語定義(定義がある場合):
- waste oils(廃油):上記注3の範囲(例示を含む)。
- (注2関連)“石油油等”の参照範囲:芳香族/非芳香族比、合成ポリオレフィン除外の蒸留条件。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 分離した単一有機化合物 → 第29類(例外:純メタン・純プロパンは2711)
- 液状合成ポリオレフィン(所定の蒸留条件)→ 第39類
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。
- 影響ポイント1:2710の対象になる“石油油等”か(注2)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 芳香族/非芳香族の重量比較、蒸留性状(合成ポリオレフィン除外の確認)
- 現場で集める証憑:SDS、成分表(炭化水素組成)、蒸留試験成績、製造工程(由来が石油か合成か)。
- 誤分類の典型:
- PAO等の合成基油を「鉱物油っぽい」だけで2710に入れる(実は注2の除外に当たり得る)。
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント2:“waste oils(廃油)”に当たるか(注3)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- その油が「一次製品として使用に適さない」状態か、タンクスラッジ/油水混合物か、使用済みか。
- 現場で集める証憑:使用履歴(メンテ記録)、汚染・添加剤分析、回収工程図、写真、MSDS、取引契約(廃棄物/再資源化)。
- 誤分類の典型:
- 再生原料という名目で製品油扱い(2710.19等)にしてしまい、注3該当の指摘を受ける。
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント3:石炭の“無煙炭/瀝青炭”判定(号注1・2)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):揮発分%(乾燥・無鉱物)、発熱量(湿潤・無鉱物)。
- 現場で集める証憑:分析成績書(試験方法、ベース換算の明記)、サンプル採取条件。
- 誤分類の典型:
- 産地証明だけで無煙炭とする/一般炭とする(試験値が無い)。
- 影響ポイント4:2710.12“軽質油”の判定(号注4)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):ISO 3405の蒸留で210℃までに90vol%留出。
- 現場で集める証憑:蒸留試験表、品質規格書、ロット管理。
- 誤分類の典型:
- “灯油/軽油”の商業名だけで軽質/その他を決める。
- 影響ポイント5:バイオディーゼルの定義(号注5)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):脂肪酸モノアルキルエステル(燃料用)か、由来(動物/植物/微生物)。
- 現場で集める証憑:FAME分析、原料情報、SDS。
- 誤分類の典型:
- “バイオ燃料”という表現だけで2710.20相当と判断(実際は別章の化学品のことも)。
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:「ガソリン」「灯油」等の品名だけで2710.12/2710.19を決める
- なぜ起きる:商流名とHS分岐(蒸留条件)が一致すると思い込みやすいです。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):2710.12は**蒸留(210℃で90vol%)**という定義(号注4)で決まります。
- 予防策:蒸留試験成績(ISO 3405)を必ず入手。社内質問例:「この品はD86/ISO3405の蒸留表がありますか?」
- 間違い:使用済み潤滑油を“製品油”として申告(waste oilsの見落とし)
- なぜ起きる:「再生目的=製品」と誤認しやすいです。
- 正しい考え方:注3は、使用済み潤滑油等をwaste oilsとして例示しています。
- 予防策:使用履歴、汚染状況、回収工程を提出資料に反映。社内質問例:「この油は一度設備で使用しましたか?汚染物は何ですか?」
- 間違い:PAO等の合成基油を2710に入れる
- なぜ起きる:「見た目が鉱物油」「用途が潤滑油ベース」という理由で寄せがちです。
- 正しい考え方:注2は、一定条件の**液状合成ポリオレフィンを除外(第39類)**しています。
- 予防策:蒸留性状(300℃での留出率)やポリオレフィン由来を確認。社内質問例:「基油は鉱油ですか、合成(PAO等)ですか?」
- 間違い:石炭タール蒸留油(2707)を2710にしてしまう
- なぜ起きる:SDS上の“hydrocarbon solvent”表記だけで石油系と誤認。
- 正しい考え方:2707は芳香族が非芳香族より優勢の蒸留油等が中心です。
- 予防策:原料(高温石炭タール由来か)と芳香族/非芳香族比の確認。社内質問例:「原料は石炭タールですか?GCで芳香族比率は?」
- 間違い:ベンゼン/トルエン等の留分を“混合物だから”として2707.99に入れる
- なぜ起きる:物質含有割合の閾値を見落としがちです。
- 正しい考え方:号注3により、ベンゼン等は50wt%超なら該当サブヘディングで扱います。
- 予防策:主要成分の重量%を分析で確定。社内質問例:「ベンゼン/トルエン/キシレンの含有率(wt%)は?」
- 間違い:“石油系添加剤(例:オクタン価向上剤)”を2710にする
- なぜ起きる:「燃料に混ぜるもの=燃料HS」と短絡しがちです。
- 正しい考え方:2710は石油油が主成分等の枠(70wt%・主成分)で捉える必要があり、添加剤は第38類(調製品)側に寄ることがあります。
- 予防策:石油油の含有率(70wt%基準)と“主成分”かを確認。SDSと配合表を収集。
- 間違い:石炭(2701)で無煙炭/瀝青炭を“呼称”だけで決める
- なぜ起きる:契約名(steam coal等)とHS定義がズレることがあります。
- 正しい考え方:無煙炭・瀝青炭は号注1・2の試験値定義です。
- 予防策:分析成績書(揮発分・発熱量)を必須化。
- 間違い:2712(鉱物性ろう)と、他章の“調製ワックス”を混同
- なぜ起きる:「ワックス=2712」と思いがちです。
- 正しい考え方:2712は鉱物性ろう等の範囲で、添加剤入り・調製品は他章の可能性があります(個別検討)。
- 予防策:成分(添加剤の有無)・用途・製造工程を確認。
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
- 第27類は、(1)**採掘・産出(WO:完全生産)**が取りやすい品目(石炭・原油等)と、(2)精製・混合が絡む品目(2710の調製品等)が混在します。
- HSを誤ると、PSR(CTH/CTSH/RVC/特定工程など)の前提が崩れて、原産性判断が“やり直し”になります。
- よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
- 「原油→精製油」の場合、**工程(精製・混合)**がPSRで問われることがあります。
- 2710の“調製品”側は、材料(添加剤等)のHS把握が必要になる場面があります。
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
- 協定・国により参照するHS版が異なる場合があるため、協定本文・運用ガイダンス・税関が出すトランスポーズ版を必ず確認してください。
- 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
- 実務では、税関が**HS2022表記でPSR一覧(対応表)**を出していることがあります(例:日本税関のRCEP PSR資料は「HS Code (HS 2022)」表記)。
- “PSRの表がHS2022”でも、裏では旧版ベースの構造が残る場合があるため、疑義があれば税関資料の注記・対応関係を確認します。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
- 旧HSでPSRが書かれている場合は、WCO相関表(Correlation Tables)で旧→新を機械的に置換せず、品目範囲(見出しの意味)が同一かを確認します。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
- 2710の調製品は特に、配合表(石油油の重量%・添加剤)と工程(ブレンド/精製/再生)が重要です。
- 証明書類・保存要件(一般論)
- 産地証明・採掘証明・製造工程図・試験成績(蒸留・成分)など、分類で集めた資料がそのまま原産性の裏付けにもなります。
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 文言修正 | (号注5:2710関連) | 「バイオディーゼル」定義が、動物・植物由来に加え微生物由来を含む表現に更新 | 微生物由来の燃料用FAMEを扱う場合、定義適合の説明がしやすくなる |
| HS2017→HS2022 | 変更なし(6桁の改廃なし) | 第27類全般 | WCO相関表(HS2017↔HS2022)上、第27類の6桁改廃・移動の記載は確認されない | 通常は従前の6桁設計のまま運用。ただし国内コードや制度要件は別途確認 |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
- WCO公開のHS2017 第27類条文とHS2022 第27類条文を比較し、号注5(biodiesel定義)が「animal or vegetable」→「animal, vegetable or microbial」へ更新されている点を確認しました。
- また、WCOの**HS2017↔HS2022相関表(Table I)**では、第27類の6桁コード改廃・移動の記載が確認されず、構造変更(新設/分割等)はないと整理しました。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
- HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(主要論点のみ)
| 版の変更 | 主要な追加・削除・再編 | 旧コード→新コード(または行き先) | コメント |
|---|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | **バイオディーゼル含有(石油油70wt%以上)**のサブヘディング新設 | (旧)ex2710.11/ ex2710.19 →(新)2710.20 等 | 相関表に「2710.20新設」および定義(号注5)が明記 |
| HS2012→HS2017 | 第27類の6桁改廃の記載なし | — | WCO相関表に第27類の変更記載が確認されない |
| HS2017→HS2022 | 第27類の6桁改廃は原則なし(ただし定義文言更新あり) | — | 号注5に微生物由来が追加 |
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):使用済み作動油を“製品油”で申告
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注3(waste oils定義)の見落とし
- 起きやすい状況:再生業者向け輸入で「原料=商品」と誤認、SDSも新品用を流用
- 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査強化、納期遅延(一般論)
- 予防策:使用履歴/汚染分析/回収工程を事前準備、必要に応じて事前教示
- 事例名(短く):合成基油(PAO)を2710で申告
- 誤りの内容:注2の除外(合成ポリオレフィンの蒸留条件)に抵触し得る
- 起きやすい状況:「鉱物油代替」用途で、商流名が“base oil”
- 典型的な影響:品目更正、提出資料(蒸留試験等)の追加、評価やり直し
- 予防策:原料系統・蒸留性状の試験成績を準備、SDSで合成由来を明確化
- 事例名(短く):“軽質油”判定の試験がなく2710.12で申告
- 誤りの内容:号注4(210℃で90vol%留出)の根拠不足
- 起きやすい状況:スポット輸入・ブレンド品で、品質証明が簡略
- 典型的な影響:検査・サンプル採取、通関遅延
- 予防策:ISO 3405の蒸留表をロットごとに確保、契約で提供を義務化
- 事例名(短く):石炭の品位区分(無煙炭/瀝青炭)を呼称で決定
- 誤りの内容:号注1・2(揮発分・発熱量)の不適合
- 起きやすい状況:長期契約で“通称”が固定、試験ベース換算が不統一
- 典型的な影響:税番差替え、統計訂正、追加資料要求
- 予防策:分析方法・換算ベースを統一し、成績書フォーマットを標準化
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 第27類は一般にSPSより、危険物・エネルギー関連の手続が中心です。
- ワシントン条約(CITES)等の種規制
- 通常は該当しません。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 対象国・用途・制裁等で変動します。個別取引で最新の法令・告示を確認してください(一般論)。
- その他の許認可・届出
- 石油の輸入に関する登録・届出(備蓄法・品確法)
- 石油の輸入を行う場合、備蓄法に基づく登録や、輸入後の品確法に基づく届出・規格適合確認が必要となる旨が公的に案内されています(対象油種の例示あり)。
- 税関手続面でも、原油・揮発油・灯油・軽油・重油の輸入通関に関し、当局間文書として取扱いが示されています。
- さらに、(国内制度上の区分として)原油は2709.00等、揮発油等は2710各号等を参照して整理されている例があります(国内コードの参照であり、HS6桁と混同しない)。
- 危険物規制(消防法:第4類引火性液体など)
- ガソリン・灯油・軽油・重油等は、消防法令上の「引火性液体」区分・引火点基準等があり、保管・取扱い・施設要件に影響します(例:第1石油類/第2石油類…)。
- 高圧ガス(LPG/LNG等):輸入検査等
- 高圧ガスを輸入した者は、輸入検査を受け、適合が認められるまで移動できない等の手続が示されています(法令条文引用は避け要約)。
- 石油の輸入に関する登録・届出(備蓄法・品確法)
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 経済産業省(資源エネルギー庁・各経産局):備蓄法/品確法関連の手続案内
- 財務省・税関:石油輸入通関の取扱いに関する通達等
- 消防庁・消防本部:危険物(消防法)関係
- 都道府県(高圧ガス)・指定機関:輸入検査等
- 実務での準備物(一般論):
- 製品SDS、成分表、蒸留試験/引火点試験等の成績書、用途説明
- 備蓄法登録関連の書面(必要な場合)、品確法届出関連の書面(対象油種の場合)
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 由来(石油/石炭タール/天然ビチューメン/合成)
- 形状(固体/液体/ガス)、用途(燃料/原料/舗装/潤滑)
- SDS、成分表、蒸留曲線、揮発分/発熱量(石炭)、引火点(危険物該当性確認用)
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 2710:注2(石油油範囲)/注3(waste oils)/70wt%・主成分の当てはめ
- 2701:号注の数値要件(揮発分・発熱量)
- 2707:芳香族優勢、50wt%超条件
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- 品名は商流名だけでなく「例:petroleum oils (other than crude), containing biodiesel…」等、HSの観点が伝わる表現を検討
- 日本の統計単位は、**KG、MT、KL、L、CM(立方メートル)**等が使われます(単位略号は税関の一覧で確認可能)。
- 廃油該当の可能性がある場合:使用履歴・回収工程・分析結果を添付
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定の参照HS版と、税関が公表するPSR表(HS2022表記か)を確認
- 原油→精製油の場合、工程証憑(製油所工程、ブレンド記録)を整備
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 備蓄法登録・品確法届出の要否(対象油種、用途)
- 危険物(消防法)区分の確認(引火点等)
- LPG/LNG等:高圧ガス輸入検査等の確認
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- HS2022 Chapter 27(条文・注・号注) (参照日:2026-02-19)
- HS2017 Chapter 27(条文・注・号注) (参照日:2026-02-19)
- Correlation Tables HS 2017–2022(Table I 等) (参照日:2026-02-19)
- Correlating HS2012 to HS2007(Table I:2710.20新設の記載) (参照日:2026-02-19)
- Correlating HS2017 to HS2012(Table I:第27類の改廃記載確認用) (参照日:2026-02-19)
- 日本税関・公的機関のガイド
- 日本税関:統計単位の略号一覧(KG, KL, L, MT, CM 等) (参照日:2026-02-19)
- 経済産業省関東経済産業局:揮発油等の輸入に関する各種届出(備蓄法・品確法の手続案内) (参照日:2026-02-19)
- 財務省関税局・税関:備蓄法に基づく原油等の輸入通関取扱い(通達) (参照日:2026-02-19)
- 消防庁:消防法令抜粋(危険物の定義・引火点区分等) (参照日:2026-02-19)
- 高圧ガス保安協会(KHK):高圧ガス輸入の申請手続き(輸入検査等の概要) (参照日:2026-02-19)
- FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
- 日本税関:RCEP Product-Specific Rule(HS Code (HS 2022) 表記のPSR一覧) (参照日:2026-02-19)
- その他(業界団体、公的統計等)
- (必要に応じて)石油/LPガス業界団体の品質規格・試験方法資料、船積・保管の危険物取扱ガイド等
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
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