HS2022 第26類:鉱石、スラグ及び灰 Ores, slag and ash

用語は次で統一します。類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この章は「超要約」です。

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉄鉱石・鉄精鉱(ペレットでない粉鉱も、ペレット等の凝結品も:2601)
    • 銅鉱(銅精鉱):2603
    • ウラン鉱・トリウム鉱(精鉱含む):2612
    • 製鉄・製鋼由来の粒状スラグ(スラグサンド):2618
    • 金属や砒素を含むスラグ・灰・残留物(ただし条件あり:2620)
    • 都市廃棄物の焼却灰:2621.10
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先も併記):
    • 道路用路盤材として加工したスラグ等(マカダム状) → 25.17
    • 石油タンクのスラッジ(主として石油) → 27.10
    • 塩基性スラグ(肥料用途のもの等) → 第31類
    • スラグウール/ロックウール等の鉱物繊維 → 68.06
    • 貴金属の回収目的のスクラップ → 71.12 または(HS2022では)85.49
    • 銅・ニッケル・コバルトのマット(溶錬で得たもの) → 第XV部(卑金属)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「鉱石(ore)」の定義に当てはまるか(類注2の範囲)
    2. スラグ/灰/残留物は“発生源”が製鉄・製鋼か、それ以外か、都市ごみ焼却か(2618/2619/2620/2621の分岐)
    3. 2620の中では**「主成分の金属」砒素・水銀・タリウム等**の有無で号が割れる
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 2620/2621(灰・残留物)が“廃棄物”扱いになり得るとき(バーゼル法等の手続)
    • **2612(ウラン・トリウム鉱)**で、核原料物質としての手続が絡むとき

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第26類は、ほぼ**GIR1(品目表の文言+注)**で決まります。特に効くのは次です。
    • 類注1(除外):ここに該当すると、最初から第26類ではありません
    • 類注2(“ores”の定義):2601〜2617に入るかどうかの「入口」
    • 類注3(2620の適用条件):2620に入れるための条件が明示されています
  • 号(6桁)の決定はGIR6で、同じ階層(6桁同士)の文言と注で判断します(例:2601.11 vs 2601.12、2620.11/19/…)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 材質・化学形態:鉱物(鉱石)か、化学品(酸化物・塩等)か
    • 加工度:選鉱レベルか、化学処理・焼成などで“鉱石”の範囲を超えたか(類注2の考え方)
    • 発生源:製鉄・製鋼由来か/それ以外の工業由来か/都市ごみ焼却か(2618/2619/2620/2621)
    • 用途:2620は「金属抽出」や「金属化合物製造の原料」等、用途(種類)が条件になる

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず「除外」に当たらないか確認
    • 道路用に加工したスラグ(25.17)、石油スラッジ(27.10)、肥料の塩基性スラグ(31類)、鉱物繊維(68.06)、貴金属回収用スクラップ(71.12/85.49)、銅・ニッケル・コバルトのマット(第XV部)などは第26類ではありません。
  • Step2:2601〜2617の「鉱石・精鉱」か?
    • 類注2の“ore”に当てはまる(冶金用の鉱物種で、過度な加工をしていない)なら、金属別に2601〜2617へ。
    • 当てはまらない場合はStep3へ。
  • Step3:製鉄・製鋼由来のスラグ/くずか?
    • 粒状スラグ(スラグサンド) → 2618
    • 粒状以外のスラグ・ドロス・スケール等(製鉄・製鋼由来) → 2619
    • それ以外ならStep4へ。
  • Step4:製鉄・製鋼以外由来のスラグ/灰/残留物か?
    • 金属・砒素等を含み、かつ類注3の用途条件に合う → 2620(主成分等で号決定)
    • 都市廃棄物の焼却灰 → 2621.10(2620から除外される)
    • その他のスラグ・灰 → 2621.90
  • よく迷う境界(例):
    • 25.17(路盤材) vs 2618/2619(製鉄由来スラグ)
    • 2620(工業用金属回収等の残留物) vs 2621(都市ごみ焼却灰を含む“その他”)
    • 2616(貴金属鉱) vs 71.12/85.49(貴金属回収用スクラップ)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2601鉄鉱石・鉄精鉱(焼いた硫化鉄鉱を含む)鉄鉱石(粉鉱/ペレット)、焼いた硫化鉄鉱2601.11 非凝結 / 2601.12 凝結 / 2601.20 焼いた硫化鉄鉱
2602マンガン鉱・マンガン精鉱(乾燥重量でMn20%以上の含鉄マンガン鉱含む)マンガン鉱**Mn20%以上(乾燥重量)**の文言が鍵
2603銅鉱・銅精鉱銅精鉱「マット(溶錬品)」は類注1で第XV部へ
2604ニッケル鉱・ニッケル精鉱ニッケル精鉱ニッケルマットは除外(第XV部)
2605コバルト鉱・コバルト精鉱コバルト精鉱コバルトマットは除外(第XV部)
2606アルミニウム鉱・精鉱ボーキサイト等化学処理で酸化アルミ等になっていれば28類側の検討が必要(一般論)
2607鉛鉱・精鉱鉛精鉱2620(鉛を主成分とする残留物)と混同しない
2608亜鉛鉱・精鉱亜鉛精鉱2620(亜鉛主成分の残留物)と混同しない
2609すず鉱・精鉱すず精鉱
2610クロム鉱・精鉱クロム鉄鉱等
2611タングステン鉱・精鉱灰重石等の精鉱
2612ウラン鉱/トリウム鉱・精鉱ウラン鉱、トリウム鉱核原料物質として他法令の手続が絡む可能性
2613モリブデン鉱・精鉱焼いたモリブデン精鉱/その他2613.10(焼いたもの)vs 2613.90(その他)
2614チタン鉱・精鉱イルメナイト等の精鉱類注2の“ore”か、酸化チタン等の化学品かの見極め(一般論)
2615ニオブ/タンタル/バナジウム/ジルコニウム鉱・精鉱ジルコンサンド等2615.10(ジルコニウム)vs 2615.90(その他)
2616貴金属鉱・精鉱銀鉱/銀精鉱、金銀含有鉱等2616.10(銀)vs 2616.90(その他)。回収目的のスクラップは除外
2617その他の鉱・精鉱アンチモン鉱、その他未列挙の金属鉱2617.10(アンチモン)vs 2617.90(その他)
2618製鉄・製鋼の粒状スラグ(スラグサンド)高炉スラグの粒状品粒状であることがポイント
2619製鉄・製鋼のスラグ/ドロス/スケール等(粒状以外)スケール、ドロス等2618(粒状)と混同しない
2620(鉄鋼由来以外の)金属・砒素等含有のスラグ/灰/残留物亜鉛灰、鉛含有残留物、砒素含有残留物等類注3の「用途条件」と、主成分金属等で号を選ぶ
2621その他のスラグ・灰(都市ごみ焼却灰含む)都市ごみ焼却灰、海草灰(ケルプ)2621.10(都市ごみ焼却灰)と2621.90(その他)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐

第26類は、号の分岐が「少ない項」と「2620のように細かい項」で差が大きいです。実務で効きやすい分岐だけに絞ります。

  • 分岐条件の整理(代表)
    • 形状(凝結の有無):2601.11(非凝結)/ 2601.12(凝結)
    • 焙焼の有無:2613.10(焼いたモリブデン)/ 2613.90(その他)
    • 鉱種(ウラン/トリウム、銀/その他貴金属、アンチモン/その他):2612、2616、2617の分岐
    • 発生源・用途・含有主成分:2620/2621の分岐
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(例:2〜5組)
    1. 2601.11 vs 2601.12(鉄鉱の非凝結/凝結)
      • どこで分かれるか:ペレット化・焼結等で凝結しているか
      • 判断に必要な情報:製品形状(粉鉱/ペレット)、粒度、製造工程(焼結/ペレタイジングの有無)
      • 典型的な誤り:「粉状だが微量バインダー使用→凝結扱い」と早合点(実態の形状で整理)
    2. 2612.10 vs 2612.20(ウラン鉱/トリウム鉱)
      • どこで分かれるか:主対象がウラン系かトリウム系か
      • 判断に必要な情報:分析表(U/Th含有)、鉱物名、用途(核原料物質該当性の確認は別途)
      • 典型的な誤り:レアアース原料等の中にU/Thが混在しているのに、別鉱種として扱い見落とす
    3. 2616.10 vs 2616.90(銀鉱/その他貴金属鉱)
      • どこで分かれるか:銀鉱(銀精鉱)として扱うか、その他の貴金属鉱か
      • 判断に必要な情報:主要回収対象(Agか、Au/Pt等か)、品位(分析)
      • 典型的な誤り:回収目的の「スクラップ」を“鉱”と呼んで2616に寄せる(類注1(f)で除外の可能性)
    4. 2620(各号) vs 2621.10(都市ごみ焼却灰)
      • どこで分かれるか:都市廃棄物の焼却由来かどうか
      • 判断に必要な情報:発生源(自治体施設の焼却灰か、工場工程の灰か)、産廃/一廃区分資料、工程説明
      • 典型的な誤り:重金属を含むので「2620だろう」と決め打ち(類注3で“都市ごみ焼却灰”は2621)
    5. 2620の中の号選択(“主として○○を含む”)
      • どこで分かれるか:
        • 亜鉛主成分:2620.11(ハードジンクスペルター)/ 2620.19(その他)
        • 鉛主成分:2620.21(加鉛ガソリン等由来スラッジ)/ 2620.29(その他)
        • 銅主成分:2620.30
        • アルミ主成分:2620.40
        • 砒素・水銀・タリウム等(抽出/化合物製造用):2620.60
        • その他(特定金属含有):2620.91 / 2620.99
      • 判断に必要な情報:元素分析(主成分の判定)、発生源・用途(特に2620.60)、SDS/試験成績
      • 典型的な誤り:主成分判定を「含有している」レベルで判断する/2620.60を“有害だから”で選ぶ(用途条件がある)

3. 部注と類注の詳細解釈

この章は「条文をそのまま引用せず、実務的に何を意味するか」を整理します。

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第26類は**第05部(鉱物性生産品)**に属しますが、WCOの目次上、第05部には“部注(Section Notes)”が設けられていない構成です(部注があるのは第06部など)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • したがって、第26類の判断は基本的に類注(Chapter Notes)と各見出し文言が中心になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第05部の部注で飛ぶのではなく、**第26類の類注1(除外)**で他類・他項へ飛ぶのが典型です。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:第26類に入らないもの(除外)
      • 路盤材(25.17)、マグネサイト(25.19)、石油スラッジ(27.10)、塩基性スラグ(31類)、鉱物繊維(68.06)、貴金属回収用スクラップ(71.12/85.49)、銅・ニッケル・コバルトのマット(第XV部)など。
    • 類注2:2601〜2617における“鉱石(ores)”の考え方
      • 冶金目的で金属抽出に使われる鉱物種(Hg、28.44の金属、または第XIV・XV部の金属)を指し、非冶金用途でも対象になり得る一方、冶金業で通常といえない加工をしたものは除外、という構造です。
    • 類注3:2620の適用条件
      • 2620は「鉄鋼由来以外」のスラグ/灰/残留物で、一定の産業用途(抽出・金属化合物原料等)に使われる種類のものに限る、かつ都市ごみ焼却灰は2621へ、という整理です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 2620.21の定義(加鉛ガソリン等のスラッジ):加鉛ガソリンや加鉛アンチノック剤の貯蔵タンクから出るスラッジで、主として鉛やその化合物等からなる旨が注で示されています(要約)。
    • 砒素・水銀・タリウム等を含む残留物の扱い:抽出や化合物製造に用いる種類のものは2620.60に分類する旨が注で示されています(要約)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 上記類注1の各除外先が、そのまま除外先です。特に、貴金属スクラップはHS2022では71.12に加え85.49も明示される点に注意が必要です。

4. 類注が分類に与える影響

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を見える化します。

  • 影響ポイント1:“鉱石(2601〜2617)”に入るかどうか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 鉱物名(鉱物種)/主要金属/用途(冶金用か)
      • 加工の程度(選鉱の範囲か、化学処理・焼成等で別物になっていないか)
      • 類注2の範囲に当てはまるか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、鉱物分析(XRF等)、品位表、SDS、工程図(破砕・選鉱・焙焼など)、写真(形状)
    • 誤分類の典型:
      • 鉱石を「化学品(28類)」として申告/逆に化学処理済み品を「鉱石」として申告(いずれも審査で突かれやすい)
  • 影響ポイント2:スラグ・灰・残留物(2618/2619/2620/2621)の“発生源”と“用途条件”
    • 何を見れば判断できるか:
      • 製鉄・製鋼由来か(2618/2619)
      • それ以外の産業由来で、金属抽出等に用いる種類か(2620の条件)
      • 都市ごみ焼却由来か(2621.10)
    • 現場で集める証憑:
      • 発生元の工程説明書、排出事業者証明、分析、用途説明、廃棄物該当性の社内判断資料
    • 誤分類の典型:
      • 2620の「用途条件」を確認せず、単に重金属含有で2620に寄せる
  • 影響ポイント3:除外(類注1)を見落とす
    • 何を見れば判断できるか:
      • 「道路用に加工」→ 25.17
      • 「貴金属回収用スクラップ」→ 71.12/85.49
      • 「マット(溶錬品)」→ 第XV部
    • 現場で集める証憑:
      • 用途資料、加工内容、溶錬工程の有無、回収目的の契約・仕様(リサイクル契約書等)
    • 誤分類の典型:
      • 「鉱石っぽい黒い粉」=鉱石、と短絡して2603等へ。実は回収用スクラップで除外、というパターン。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:道路用の路盤材として加工したスラグを2618/2619で申告
    • なぜ起きる:見た目が「スラグ」なので製鉄スラグ扱いに寄せてしまう
    • 正しい考え方:類注1で、マカダム状にしたスラグ等は25.17へ除外
    • 予防策:用途(道路材)と加工状態(粒度調整・混合・締固め前提)を確認。カタログ・用途仕様を入手。
  2. 間違い:都市ごみ焼却灰を2620(金属含有残留物)で申告
    • なぜ起きる:重金属含有=2620と決め打ち
    • 正しい考え方:類注3で、都市廃棄物焼却灰は2620から外れ2621へ
    • 予防策:発生源(自治体焼却施設か)を証憑で固める。排出元証明・工程説明・分析報告をセットで保管。
  3. 間違い:銅マットを「銅鉱(2603)」として扱う
    • なぜ起きる:取引名が“concentrate/matte”で混乱しやすい
    • 正しい考え方:類注1で、銅・ニッケル・コバルトのマット(溶錬品)は第26類から除外され第XV部
    • 予防策:工程(溶錬=smelting)の有無を確認。製造フロー・SDSで“matte”の定義を確認。
  4. 間違い:貴金属回収目的のスクラップを2616(貴金属鉱)で申告
    • なぜ起きる:貴金属含有=「貴金属鉱」に寄せてしまう
    • 正しい考え方:類注1(f)で回収目的のスクラップは除外。HS2022では71.12に加え85.49も参照される
    • 予防策:原材料の出自(鉱山由来か、製造・廃棄物由来か)と「回収目的」を契約・仕様で確認。
  5. 間違い:**非凝結の鉄鉱石(粉鉱)**を2601.12(凝結)で申告
    • なぜ起きる:輸送形態(バルク)だけで判断
    • 正しい考え方:2601.11(非凝結)と2601.12(凝結)の区別は形状・工程に基づく
    • 予防策:粉鉱/ペレット等の形状、製造工程、粒度分布を入手。
  6. 間違い:2620.60を「有害金属が入っているから」と安易に選ぶ
    • なぜ起きる:砒素・水銀・タリウム等があると条件反射で2620.60
    • 正しい考え方:2620.60は注で“抽出・化合物製造に用いる種類”という用途条件が示される(要約)
    • 予防策:用途(回収工程で使うのか)と取引実態(回収業者向けか)を確認。用途説明書を添付。
  7. 間違い:石油タンク由来スラッジを2620/2621で申告
    • なぜ起きる:スラッジ=灰・残留物という連想
    • 正しい考え方:類注1で、石油タンクのスラッジ(主として石油)は27.10へ除外
    • 予防策:成分(主として鉱物か油分か)をSDS/分析で確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第26類は特に、
    • 「鉱石(2601〜2617)」なのか
    • 「残留物(2620/2621)」なのか
    • 「スクラップ(71.12/85.49等)」なのか
      で、PSRの考え方(WO/CTH/RVC等)が大きく変わり得ます。
  • よくある落とし穴(一般論)
    • 原産性判定は「最終製品HS」だけでなく、非原産材料のHS、工程(選鉱・焙焼・回収等)も絡みます。
    • “廃棄物・スクラップ”は協定上「締約国内で得られたもの(WO)」に当たり得る場合もありますが、定義・条件は協定ごとに確認が必要です(一般論)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書(PSR)が参照するHS版は、協定により異なります。
  • 例としてRCEPは、PSRをHS2022にトランスポーズした版が採択され、当事国が2023年1月1日から実施する旨が日本税関資料に示されています。
  • HS版がズレる場合の注意(一般論)
    • HS改正でコード体系が変わった場合、旧HSでのPSRを新HSに読み替える必要があります。
    • その際は、WCOの相関表(Correlation tables)等を使って“旧→新”を機械的に当て、さらに範囲(スコープ)の変更がないかを確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程(採掘→選鉱→焙焼→回収等)、原産国
  • 非原産材料のHS(少なくとも6桁)、RVC計算に使う前提資料
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定別の保存年限、検認対応のための証憑(分析表、工程図、契約書)をセットで。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー(表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022(6桁の)変更なし26.01〜26.21(HS6桁)WCOのHS2017–2022相関表(Table I/II)に第26類のサブヘディングが掲載されていない=少なくともHS6桁の新設・分割・統合等は示されていないHS6桁レベルの付番は原則そのまま。ただし国内細分は別途確認
HS2017→HS2022文言修正(注の参照先追加)類注1(f)貴金属回収目的のスクラップの除外先に、71.12に加えて85.49が追記された“回収目的スクラップ”の分類先が71.12だけとは限らない点に注意(HS2022の取扱い)

7-2. 「違うことになった根拠」

  • 6桁変更なしの根拠(読み取り):
    • WCOはHS2017→HS2022の相関表(Correlation tables)を公開しており、Table I/IIは改正で影響を受けるサブヘディング等の整理に用いられます。
    • そのTable I/IIに第26類(26.01〜26.21)のサブヘディングが見当たらないため、少なくともHS6桁体系の新設・分割・統合等は示されていない、と整理できます(※“相関表に載らない変更がゼロ”という意味ではなく、HS6桁の構造変更が表に現れていない、という趣旨)。
  • 類注1(f)の参照追加の根拠:
    • HS2017の類注1(f)は除外先として71.12のみを挙げています。
    • HS2022の類注1(f)は除外先として71.12に加え85.49も挙げています。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第26類は、少なくともHS2007以降、26.01〜26.21(2601〜2621)の骨格が大きく変わっていない部類です(条文比較ベース)。

期間主な追加・削除・再編対象コード備考(旧→新対応)
HS2007→HS2012大きな変更の示唆なし(見出し・号構造は同様)2601〜2621対応:実質変更なし(本類内)
HS2012→HS2017大きな変更の示唆なし(見出し・号構造は同様)2601〜2621対応:実質変更なし(本類内)
HS2017→HS2022類注1(f)の参照先に85.49が追加類注1(f)(除外)旧:71.12 → 新:71.12/85.49(除外先追加)

※上表は「HS6桁(国際6桁)」の話です。各国の国内コード(8桁/9桁等)は別途変わり得ます。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:都市ごみ焼却灰を2620で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注に抵触):類注3の「都市ごみ焼却灰は2621」趣旨を無視
    • 起きやすい状況:分析表だけ提出し、発生源資料がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査強化、通関遅延
    • 予防策:発生源証明(自治体施設証明等)+工程説明+分析をセットで準備。廃棄物規制の事前確認も。
  • 事例名:銅マットを“銅精鉱”として2603申告
    • 誤りの内容:類注1(g)の除外(マットは第XV部)に抵触
    • 起きやすい状況:売買名がconcentrate/matteで混在
    • 典型的な影響:分類差戻し、関税率・規制判定や原産地判断のやり直し
    • 予防策:溶錬工程の有無、製品性状(硫化物マット等)を仕様書で確認。
  • 事例名:道路用スラグ路盤材を2618/2619で申告
    • 誤りの内容:類注1(a)の除外(25.17)に抵触
    • 起きやすい状況:スラグという名称だけで判断
    • 典型的な影響:用途確認で差戻し
    • 予防策:用途・加工(マカダム状)をカタログで明確化。
  • 事例名:ウラン/トリウム含有鉱石の規制手続漏れ
    • 誤りの内容:分類は2612でも、核原料物質として手続が必要な場合に未対応
    • 起きやすい状況:レアメタル原料の副成分としてU/Thが混在
    • 典型的な影響:保留、追加手続、遅延
    • 予防策:輸入前に含有確認(分析)→ NRA/関係省庁の手続要否を確認。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

以下は日本前提の一般的な論点です(全品目に一律でかかるわけではありません)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第26類は通常、動植物検疫の主戦場ではありません(ただし付着物等で例外はあり得ます)。
  • 安全保障貿易管理・核関連
    • **ウラン鉱・トリウム鉱(2612)**は、核原料物質として、数量等に応じて許可・届出等が必要になり得ます(原子炉等規制法関係)。原子力規制委員会(NRA)は、ウランやトリウムの鉱石を扱う場合に手続が必要となり得る旨を案内しています。
    • また、経済産業省は「原子力関連貨物の輸入」ページで、関連法令に基づく管理・報告等に触れています。
  • 廃棄物・バーゼル条約(Basel)関連
    • スラグ・灰・残留物(2620/2621)は、貨物の性状・取引実態によっては「廃棄物」や「特定有害廃棄物等」として越境移動の管理対象になり得ます。経産省はバーゼル条約・バーゼル法の枠組みとして、外為法に基づく承認や環境大臣確認等が必要となる旨を説明しています。
    • 環境省資料やJETROのQ&Aでも、輸入承認等の手続の概要が整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 核関連:原子力規制委員会(NRA)、経済産業省(貿易管理)
    • 廃棄物・バーゼル:経済産業省(バーゼル法)、環境省、税関
  • 実務での準備物(一般論)
    • 分析表(元素組成)、SDS、工程説明、発生源証明(残留物・焼却灰など)、用途説明(回収目的等)
    • 規制該当性の社内判定メモ(誰が・何を根拠に・いつ判断したか)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品名(取引名)だけでなく、鉱物名・主成分・含有率・形状(粉/ペレット/粒状等)
    • 加工工程(選鉱、焙焼、溶錬、焼却、回収工程など)
    • 発生源(鉱山由来/製鉄由来/その他工業由来/自治体焼却由来)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(25.17、27.10、31類、68.06、71.12/85.49、第XV部)に当たらないか
    • 2620なら類注3の条件(用途・都市ごみ焼却灰除外)を満たすか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名:鉱種・形状・工程(例:“Iron ore fines, non-agglomerated”相当)を誤解なく
    • 数量単位:第26類は統計単位が**MT(トン)**になりやすい(日本の統計品目表でもMTが示される例が多い)
    • 添付:分析表、工程図、写真、用途説明
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版、PSRの確認(必要なら相関表で読み替え)
    • 証憑の保存設計(検認対応)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 2612(ウラン/トリウム)→ NRA/関係法令の手続要否確認
    • 2620/2621(灰・残留物)→ 廃棄物・バーゼル該当性の事前相談

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-19

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 第26類(Chapter 26)条文(Notes/Heading list)
    • HS2017 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2012 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2007 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2017–2022 Correlation tables(Table I/II および案内ページ)
  • 日本:税関・公的機関
    • RCEP:HS2022にトランスポーズされたPSR(日本税関資料)
    • 原子力規制委員会(NRA):核原料物質(ウラン・トリウム鉱石等)の取引・取扱い案内
    • 経済産業省:原子力関連貨物の輸入案内
    • 経済産業省:バーゼル条約・バーゼル法の概要
    • 環境省:特定有害廃棄物等の輸出入管理制度(概要資料)
    • JETRO:バーゼル条約規定廃棄物の輸出入手続きQ&A
  • 国内コード(参考:民間提供データ)
    • 日本関税協会 web輸出統計品目表(第26類の統計コード例・単位)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点

  • **HS6桁(国際)に対して、日本では統計・NACCS用に「-000」等を付した国内コード(統計品目番号)**が使われます。例:
    • 2601.11 → 2601.11-000(鉄鉱:非凝結)
    • 2612.10 → 2612.10-000(ウラン鉱)
    • 2620.11 → 2620.11-000(ハードジンクスペルター)
    • 2621.10 → 2621.10-000(都市ごみ焼却灰)
  • 単位は、同表の例では第26類は**MT(トン)**が多いです(統計第II単位がMT)。
  • 注意点:国内コードの細分は改正で変わることがあるため、実務では必ず最新の統計品目表(実行関税率表)で確認してください。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方

  • 事前教示(一般論)で早くするコツ:次の情報が揃うと相談が進みやすいです。
    • ①品名(取引名+一般名)
    • ②用途(冶金用/回収用/道路材等)
    • ③成分(分析表)
    • ④製造工程(工程図)
    • ⑤写真(形状:粉/粒/ペレット等)
    • ⑥SDS(残留物・灰は特に有効)
  • 第26類は「鉱石か/残留物か/スクラップか」で結論が変わりやすいので、除外(類注1)に当たらない根拠もセットにすると実務的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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