米国の税関当局CBPが、車載向けの「燃料ポンプと燃料レベルセンサー(液面センサー)が一体となったユニット」について、過去の分類見解を見直し、別のHS番号へ動かす提案を公表したと報じられています。結論から言うと、従来「液面計測(9026)」として扱ってきたものを、「内燃機関用のポンプ(8413)」として扱う方向の提案で、一般税率ベースでは無税から2.5%へ変わり得る、というのがポイントです。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)
以下、ビジネスマン向けに、何が起きているのか、なぜ重要か、今すぐ何をすべきかを整理します。

1. 何が起きているのか:提案の概要と期限
報道ベースでは、CBPは2025年12月31日付のCustoms Bulletinで、燃料ポンプ+燃料レベルセンサーの一体品(fuel sender等と呼ばれることが多い)について、ポンプとしての分類(HTSUS 8413.30.90)へ再分類し、関連する既存の判断(NY 809868)を撤回する提案を出しています。コメント期限は2026年1月31日とされています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)
重要なのは、これは「確定」ではなく「提案」である点です。とはいえ、コメント募集は、裏を返せばCBPが一定の結論を持って動いているサインでもあり、影響を受ける企業は手当てが必要です。
2. そもそも過去はどう分類されていたのか:NY 809868の読みどころ
1995年のNY 809868では、対象品は「燃料ポンプ部分」と「フロート(浮き)式の液面センサー部分」を持つアセンブリで、燃料タンク内に挿入され、液面変化に応じた電気信号をメーターへ送る、と説明されています。 (Customs Mobile)
当時の整理は実務的で、機能が2つあり(ポンプ=8413、液面センサー=9026)、特定の単独見出しがないとして、GRI 3(c)により「番号の後ろに出てくる方」を採って9026に寄せた、というロジックでした。 (Customs Mobile)
ここが今回の論点の出発点です。すなわち「二機能品をどう扱うか」を、CBPが別の理屈で組み替えようとしている、という構図になります。
3. 今回CBPはなぜ「ポンプ(8413)」に寄せたいのか
報道では、CBPはこの一体品を「複合機械(composite machines)」として捉え、主たる機能はタンクからエンジンへ燃料を送ること=ポンプが中核であり、液面センサーの情報は有用だが付随的だ、という立て付けで説明しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)
要するに、昔の「二機能だから最後の番号(GRI 3(c))」ではなく、いまは「主機能で決める」という考え方で、ポンプ側に寄せたい、という発想です。
4. 企業への影響:関税だけでは終わらない
4-1. 関税コストの増加可能性
HTS 9026.10.20(電気式の液面計測等)は、USITCのHTS検索でも一般税率がFree(無税)として表示されます。 (hts.usitc.gov)
一方、8413.30.9090等の内燃機関用ポンプ類は、CBPの他の分類例でも2.5%が示されています。 (rulings.cbp.gov)
例えば年間輸入CIF価格が10百万ドル相当なら、単純計算で追加関税コストは25万ドル規模になり得ます(一般税率のみの概算)。
ただし、USMCAなどの特恵で結果的にゼロになるケースもあり得るため、最終影響は「原産地」「特恵適用」「追加関税の有無」まで含めて試算が必要です。
4-2. 税率以外の二次影響
HS番号が変わると、社内の品目マスター、通関指示、価格転嫁ロジック、引当金、顧客との契約条項(関税負担者)に波及します。加えて、特定国追加関税や統計、社内監査の観点でも「なぜこの番号なのか」を説明できる状態が必要になります。
5. 実務対応:今すぐやるべきことチェック
- 該当品の棚卸し
・fuel sender、fuel pump module、fuel level sensor integrated などの呼称で買っている部品を抽出
・部品表(BOM)と仕様書で、ポンプ機能とセンサー機能の構成、出力信号、使用場所(タンク内搭載など)を確認 - 影響試算
・現行分類(9026)での輸入実績金額を集計
・仮に8413へ動いた場合の一般税率差分(概算)を算出
・特恵適用の可否(USMCA等)で結果がどう変わるかも並行試算 - 根拠資料の整備
・機能説明書、回路やフロート機構の説明、ポンプ単体での販売有無、センサー単体での使用可能性など
・分類ロジックを、GRIと注記に沿って文章化(監査対応のミニドシエ化) - コメント提出の検討
法的には、CBPは解釈変更や撤回に当たり公告と意見募集を行う枠組みを持っています。 (法律情報研究所)
影響が大きい企業ほど、技術的事実と分類ロジックを整理した上で、期限までに意見提出する価値があります(賛否は別として、実態を正確に伝えること自体が重要です)。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)
6. コメント作成で争点になりやすい論点
・製品の「主たる機能」は何か(車両としての役割、故障時のフェイル動作、制御上の重要度)
・ポンプとセンサーが機能的に不可分か、それとも単なる同梱か
・市場実態として「燃料計測ユニット」として買われているのか、「燃料供給ユニット」として買われているのか
・説明資料(カタログ、図面、ECU信号仕様)が、どちらの機能を主として描いているか
ここは、技術部門の文言がそのまま分類ロジックに直結します。通関・法務・技術で同じ絵を見て、言葉を揃えるのが最短ルートです。
まとめ:今回の話は「一体品の分類リスク」が表面化した典型例
今回の提案は、古い判断でも見直され得ること、そして二機能一体品が「最後の番号」から「主機能」へ寄せられる可能性があることを示しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)
確定前の今だからこそ、影響棚卸し、試算、根拠整備、必要ならコメント提出までを一気通貫で行うのが、最もコスト効率の良い対応になります。
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