事前分類申請とは、輸出入申告の前に税関当局へ品目分類(HSコードや統計品目番号など)について照会し、公式な判断(裁定、事前教示、Advance ruling、BTIなど)を得る手続です。品目分類は関税率だけでなく、原産地規則の適用、輸入規制、統計、アンチダンピング課税などの前提となるため、誤分類はコスト増や通関遅延、修正申告やペナルティの原因となり得ます。事前に公式判断を確保しておくことで、通関の予見可能性と社内の見積精度を高めることができます。
ただし、国や地域ごとに制度名、起算点、審査に要する標準日数、例外時の扱いが異なります。本稿では、各当局が公開しているサービス標準や法定期限を基準に、主要国のリードタイムを比較します。

比較の前提
リードタイムの起算点が国ごとに異なる
同じ「30日」でも、申請書の受理日から数える国もあれば、必要資料が揃った時点から数える国、または受理可否の審査期間と本審査期間が分かれている国があります。本稿の比較表では、当局資料が明示する起算点も併記します。
追加資料要求や分析が入ると期限が延長される
多くの国で、追加資料の提出待ち期間や、試験・分析・専門家照会などの期間が標準期限の計算から除外される、または回答期限が延長される扱いとなっています。各制度の注意点も表と解説に反映します。
本稿で扱うのは「品目分類」に関する事前判断
各国には原産地や関税評価、表示・マーキングまで含む包括的な事前教示制度もありますが、本稿は主に品目分類の事前判断に焦点を当てます。
主要国の審査リードタイム比較表
リードタイムの分類
リードタイムを基準に分類すると、主要国は次の3グループに整理できます。
約30日グループ
日本、韓国、豪州がこの水準に位置します。いずれも、書類の完成度が高く、追加照会や試験が不要なケースでは短期間で結論が出やすい設計となっています。
約60日グループ
中国は受理後60日が基本で、受理判断10日と組み合わせた制度設計です。ただし、化学分析や鑑定などの期間が60日に算入されないため、対象品目によっては実務上の所要日数が伸びる可能性があります。
約120日グループ
EU、カナダ、米国(USMCA手続上)、英国(制度によって30〜120日、または120日目標)が概ねこの範囲です。EUは受理判断フェーズと受理後の決定フェーズが明確に分かれており、制度上は受理後120日に整理されています。
リードタイムが延びる典型要因
次の要因は、多くの国で「期限延長」または「期限計算から除外」として扱われ、実務上の想定日数を押し上げます。
追加資料の要求と提出待ち
カナダでは、追加情報の提出後に120日のサービス標準が開始すると明示されています。米国(USMCA手続)でも、補足情報の提出が回答時間を延長し得る旨が記載されています。
試験、分析、鑑定、専門家照会
韓国は、試験・分析や専門機関照会などの期間を期限計算から除外する旨が明確です。中国も、化验・検測・鑑定・専門家論証などの期間は60日に算入しないと明記しています。
需要集中や繁忙期
豪州は、通常30日のサービス標準に加え、需要が多い時期は長くなる可能性を明示しています。
例外的な延長規定
EUは、受理後120日が基本である一方、例外的に延長され得る旨が示されています。
実務で使える申請準備のポイント
リードタイムの短縮と回答の確実性を高めるため、国をまたいで通用する実務ポイントを整理します。
申請書の製品説明を分類ロジックに直結させる
以下の情報を明確に記載することが重要です。
- 機能、用途、作動原理
- 材質、成分比、構造(層構造、部品構成)
- 製造工程(分類論点が工程に依存する場合)
- 型番ごとの差異(どこまで同一品として扱えるか)
補助資料を最初から揃える
カタログ、仕様書、図面、写真、成分表や試験成績書などを初回提出時に揃えることが重要です。必要に応じてサンプル提出の可否も検討してください。追加資料要求が発生すると、各国で期限が延びたり、起算点が実質リセットされたりします。
期限の「数字」だけでなく「起算点」を社内で統一管理する
例えばEUは、受理判断に最大30日、その後に受理後120日という設計なので、社内計画では単純な120日ではなく、受理前後を分けて見積もる方が安全です。中国も、受理可否の判断10日と受理後60日が示されており、同様に二段階で管理した方が誤差が減ります。
リードタイムを逆算して「申請の締切日」を決める
以下のステップで社内スケジュールを設計します。
- 新製品ローンチ、初回出荷、価格確定、契約締結など、分類が前提となるマイルストーンを列挙
- 対象国の標準日数に、追加資料や試験のバッファを上乗せ
- 輸出者と輸入者で、どちらが申請主体かも事前に合意
まとめ
主要国の事前分類の審査リードタイムは、30日、60日、120日という目安に概ね収れんします。ただし、実際の所要日数は、起算点、追加資料、試験・分析、当局の繁忙などで変動します。公式に示された「標準日数」は、「完全な情報が揃っている」ことを前提に設計されているケースが多いため、最も効果的な短縮策は初回提出の完成度を上げて追加照会を減らすことです。
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