HS2022 第10類:穀物(Cereals)

※用語統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 小麦(デュラム小麦含む)・メスリン(小麦+ライ麦の混合)
    • 米(籾米・玄米・精米・砕米まで含む)
    • とうもろこし(乾燥した粒=メイズ/コーン)
    • 大麦、オーツ麦(えん麦)、ライ麦、ソルガム(グレインソルガム)
    • そば、キビ等のミレット、カナリーシード、フォニオ、キヌア、トリティケール など (wcoomd.org)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 「穀粒を加工したもの」(例:オートミール(ロールドオーツ)、押し麦、フレーク、パール化、割砕、粉、ミール、グリッツ等)
      → 典型的には **第11類(製粉工業製品:1101〜1104等)**へ(類注で除外) (wcoomd.org)
    • 麦芽(モルト) → 典型的には 第11類(1107)
    • ポップコーン(弾けた状態)や朝食用シリアル等の調製品 → 典型的には 第19類
    • スイートコーン(甘味種のとうもろこし)第7類(類注で明示除外) (wcoomd.org)
    • 穀物のわら・もみ殻・ぬか等 → 典型的には 第12類(わら・殻)第23類(ぬか等の残さ)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「穀粒があるか」(穂付き/茎付きでも“穀粒あり”なら第10類の土台) (wcoomd.org)
    2. 「脱ぷ・精白・圧ぺん等の加工があるか」(原則NGで第11類へ。ただし米は例外、キヌアも一部例外) (wcoomd.org)
    3. 「とうもろこしが“スイートコーン”か」(スイートコーンは第7類) (wcoomd.org)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 米(1006)の状態区分(籾米/玄米/精米/砕米)を取り違える
    • 播種用(Seed)か食用・飼料用(Other)かの誤り(1001/1002/1003/1004/1005/1007/1008の各所で分かれます) (wcoomd.org)
    • 日本向けでは、**米・小麦等の輸入制度(手続・課税・制度的制約)**が別途絡むケース (関税庁)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(品名+注):第10類は「注(Notes)」が強いです。
      • “穀粒があること”が前提(類注1(A))
      • “脱ぷ・精白・圧ぺん等の加工穀粒”は原則除外(類注1(B))
      • “スイートコーンは除外”が明記(類注2) (wcoomd.org)
    • GIR6(号の選択):例えば米は1006.10〜1006.40の状態区分、その他穀物は「Seed/Other」で分岐します。 (wcoomd.org)
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 加工度(workedかどうか):ロールド、フレーク、パール化、割砕、粉化、ミール化、ペレット化…は第10類から外れやすい(例外:米、特定のキヌア) (wcoomd.org)
    • 状態(米):籾付きか、玄米か、精米か、砕米か
    • 品種(とうもろこし):スイートコーンか、乾燥穀粒のメイズか
    • “播種用”の客観性:契約用途だけでなく、品目の性状・表示・証明資料で固める

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:穀粒が「ある」形態ですか?(穂付き/茎付きでも可)
    • YES → Step2へ
    • NO → 第10類以外(例:わら・殻、残さ 等)を検討(第12類/第23類など)
  • Step2:スイートコーンですか?
    • YES → 第7類(第10類1005から明示除外) (wcoomd.org)
    • NO → Step3へ
  • Step3:脱ぷ・精白・圧ぺん等の“加工穀粒(worked)”ですか?
    • YES → 原則 第11類(1104等)へ
      • ただし例外:
        • :脱殻・精米・研磨・パーボイル・砕米でも1006に残る (wcoomd.org)
        • キヌア:サポニン除去のための外皮(pericarp)除去のみで他加工が無い場合は1008に残る (wcoomd.org)
    • NO → Step4へ
  • Step4:穀物の種類で項(1001〜1008)を決定 → Step5へ
  • Step5:号(6桁)の分岐
    • “Seed/Other”、米の状態、ミレットのSeed/Otherなどで確定 (wcoomd.org)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第10類 vs 第11類:加工穀粒(ロールド/フレーク/パール化/割砕/粉など)かどうか(類注1(B)が起点) (wcoomd.org)
    • 第10類1005(メイズ) vs 第7類(スイートコーン):類注2で明示 (wcoomd.org)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第10類は項が少ないため全列挙します(1001〜1008)。 (wcoomd.org)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
1001小麦・メスリンパン用小麦、デュラム小麦、メスリンデュラムか否か/播種用(Seed)か/粉・フレーク等は第11類へ
1002ライ麦ライ麦粒播種用(Seed)か/加工(圧ぺん等)は第11類へ
1003大麦飼料用大麦、麦飯用大麦(未加工の粒)播種用(Seed)か/押し麦・精麦(パール化)等は第11類へ/麦芽は第11類
1004オーツ麦(えん麦)オーツ粒播種用(Seed)か/オートミール(ロールド)は第11類へ
1005とうもろこし(メイズ/コーン)飼料用コーン、乾燥コーン粒、ポップコーン用乾燥粒播種用(Seed)か/スイートコーンは第7類(類注で除外)
1006籾米、玄米、精米、砕米米は“加工穀粒”例外:脱殻・精米・研磨・パーボイル・砕米でも第10類に残る(1006.10〜.40)
1007ソルガム(グレインソルガム)飼料用ソルガム粒播種用(Seed)か/加工穀粒は第11類へ
1008そば、ミレット、カナリーシード、その他の穀物そば、キビ等、カナリーシード、フォニオ、キヌア、トリティケール等ミレットはSeed/Otherで分岐/キヌア外皮除去(サポニン分離目的)でも他加工が無い限り第10類に残る

※上表は第10類の条文構造(項・号)と類注の要点に基づく実務整理です。 (wcoomd.org)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • Seed(播種用) vs Other(それ以外)
      • 対象:1001/1002/1003/1004/1005/1007、および1008.21(ミレットSeed)など (wcoomd.org)
      • 判断に必要な情報(例):
        • 商品仕様:品種、発芽率、種子消毒(薬剤処理)の有無
        • 取引実態:播種用としての表示、用途表示、販売先(種苗会社等)
        • 書類:カタログ、種子証明、検査証明、ラベル写真、契約書(用途条項)
    • 米(1006)の状態区分:籾米/玄米/精米(半精米含む)/砕米 (wcoomd.org)
    • 加工の有無(workedか):原則、加工穀粒は第10類に入らない(例外:米、特定のキヌア) (wcoomd.org)
    • スイートコーンの除外:1005ではなく第7類 (wcoomd.org)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 1006.10/1006.20/1006.30/1006.40(米の状態)
      • どこで分かれるか:籾殻の有無、ぬか層の残り方、砕粒かどうか
      • 判断に必要な情報:精米工程(玄米→精米の度合い)、写真、粒の状態、規格書
      • 典型的な誤り:玄米を精米扱い/砕米を精米扱い(歩留り・用途の思い込み)
    2. (各穀物)Seed vs Other
      • どこで分かれるか:“播種用としての性状・表示・証憑”が揃うか
      • 判断に必要な情報:種子ラベル、検査証明、用途表示、取引先情報
      • 典型的な誤り:「契約で播種用」と言われただけでSeed側に寄せる/逆に種子用なのに食品原料としてOtherに寄せる
    3. 1005(メイズ) vs 第7類(スイートコーン)
      • どこで分かれるか:スイートコーン(甘味種)か否か
      • 判断に必要な情報:品種、用途(青果として食べる形態か)、水分・状態(生鮮/冷蔵など)
      • 典型的な誤り:「corn=1005」と短絡してスイートコーンを1005にしてしまう(類注で除外) (wcoomd.org)
    4. 1008.50(キヌア) vs 第11類(加工穀粒・粉等)
      • どこで分かれるか:外皮除去(サポニン分離目的)“だけ”か、圧ぺん・粉砕等の追加加工があるか
      • 判断に必要な情報:工程表、製品写真、粒の形状、成分・処理説明
      • 典型的な誤り:外皮除去キヌアを「加工穀粒」とみなして第11類へ寄せる(HS2022類注で明確化) (wcoomd.org)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第10類が属する**第II部(植物性生産品)**には、「pellets(ペレット)」の定義があります。 (wcoomd.org)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「ペレット」とは、圧縮または**結合剤(3%重量以下)**で凝集させたもの、という定義です。 (wcoomd.org)
    • 穀物が「ペレット」形状になっている場合、そもそも第10類の“穀粒”から外れやすく、**第11類(穀粉・ミール・ペレット)第23類(飼料)**の検討が必要になることが多い、という実務示唆になります(※具体の帰属は成分・用途・加工で変わります)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「穀物(粒)」としての取引名でも、実物がペレット状で、しかも粉砕・配合等があれば第10類を外れる可能性が高い(第11類/第23類側を精査)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1(A):第10類各項は、穀粒が存在する場合にのみ適用される(穂・茎付きでも可)。 (wcoomd.org)
    • 類注1(B):原則として、脱ぷ・精白等により“加工された穀粒”は第10類に入らない。ただし、
      • は(脱殻・精米・研磨・つや出し・パーボイル・砕米でも)1006に残る (wcoomd.org)
      • キヌアは、サポニン分離のため外皮(pericarp)を全部/一部除去しただけで他加工が無ければ1008に残る (wcoomd.org)
    • 類注2:1005(メイズ)はスイートコーンを含まない(第7類へ)。 (wcoomd.org)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「デュラム小麦」の定義:Triticum durum(デュラム小麦種)および同種と同じ染色体数(28)を持つ交配由来のもの(Subheading Note)。 (wcoomd.org)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • スイートコーン → 第7類(類注2で明示) (wcoomd.org)
    • 加工穀粒(原則) → 第11類(製粉工業製品)側へ(類注1(B)が起点) (wcoomd.org)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:穀粒があるかどうか(類注1(A))
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 穂付き・茎付きでも穀粒が存在するか、写真・現物で確認
    • 現場で集める証憑:
      • 現物写真(俯瞰+拡大)、梱包状態、商品規格書
    • 誤分類の典型:
      • 「わら・殻」系なのに穀物として申告、またはその逆(粒が残っているのに“わら”扱い)
  • 影響ポイント2:加工穀粒か(類注1(B))+例外(米/キヌア)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 工程(脱ぷ、精白、圧ぺん、割砕、粉砕、焙煎、調理、膨化等)の有無
      • 米は例外として1006に残る加工範囲か
      • キヌアは「サポニン分離目的の外皮除去のみ」か、追加加工があるか (wcoomd.org)
    • 現場で集める証憑:
      • 工程図、製造仕様書、SDS/成分表(必要に応じ)、製品写真、粒度分布(粉の場合)
    • 誤分類の典型:
      • ロールドオーツを1004で申告(実際は加工穀粒で第11類寄り)
      • 外皮除去キヌアを“加工穀粒”として第11類へ寄せる(HS2022類注で整理) (wcoomd.org)
  • 影響ポイント3:スイートコーン除外(類注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 品種(スイートコーンか)、状態(生鮮/冷蔵等)、用途
    • 現場で集める証憑:
      • 品種証明、カタログ、インボイス品名、写真
    • 誤分類の典型:
      • “corn”の語だけで1005にしてしまう(スイートコーンは第7類) (wcoomd.org)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:オートミール(ロールドオーツ)を **1004(オーツ)**で申告
    • なぜ起きる:商品名に「オーツ」とあり、粒の加工(圧ぺん)を見落とす
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第10類は「加工穀粒」を原則除外(類注1(B)) (wcoomd.org)
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 工程表で「圧ぺん(rolled/flaked)」有無を確認
      • 「粒のまま?フレーク?割砕?」をサプライヤーに質問
  2. 間違い:外皮除去(サポニン除去)キヌアを 第11類に振ってしまう
    • なぜ起きる:外皮除去=加工、と短絡して“加工穀粒”と判断
    • 正しい考え方:HS2022の類注で、サポニン分離目的の外皮除去のみで他加工が無ければ1008に残る旨が明確化 (wcoomd.org)
    • 予防策:
      • 「外皮除去以外の工程(圧ぺん・割砕・粉砕・加熱等)は?」を確認
      • 仕様書に“no other processes”相当の説明を入れてもらう
  3. 間違い:スイートコーンを **1005(メイズ)**にしてしまう
    • なぜ起きる:“corn”という単語だけで判断
    • 正しい考え方:1005はスイートコーンを含まない(類注2で明示) (wcoomd.org)
    • 予防策:
      • 品種・用途(青果として食べる甘味種か)を確認
      • インボイス品名に “sweet corn” 等がある場合は要注意
  4. 間違い:小麦粉を **1001(小麦)**で申告
    • なぜ起きる:原料名(wheat)ベースで判断してしまう
    • 正しい考え方:粉は「穀物(粒)」ではなく、通常は第11類(例:小麦粉 1101)
    • 予防策:
      • 形状(粒/粉/フレーク)を第一優先で確認
      • 粒度、製粉工程の有無を確認
  5. 間違い:麦芽(モルト)を **1003(大麦)**で申告
    • なぜ起きる:原料が大麦なので1003と思い込み
    • 正しい考え方:発芽させた麦芽は通常、第11類(1107)側の検討が必要
    • 予防策:
      • 「発芽処理しているか?」を仕様書で確認
      • 用途(醸造用/食品用)と製造工程を確認
  6. 間違い:米ぬか・ふすま等を **1006(米)**にしてしまう
    • なぜ起きる:原料名(rice)ベースで判断
    • 正しい考え方:ぬか等は「残さ」として第23類(例:2302)側が典型
    • 予防策:
      • 製造工程(精米副産物か)と成分表、形状(粉状)を確認
  7. 間違い:籾米(paddy)と玄米(brown)を取り違える
    • なぜ起きる:英語表記(husked/hulled等)や現物確認不足
    • 正しい考え方:1006は状態区分が明確(籾付き/玄米/精米/砕米) (wcoomd.org)
    • 予防策:
      • 写真(籾殻の有無)と工程の有無(脱殻済みか)を確認
  8. 間違い:播種用ではない穀物を“Seed”側で申告(または逆)
    • なぜ起きる:契約用途だけで判断し、客観資料がない
    • 正しい考え方:Seed/Otherの分岐は、品目の性状・表示・証憑で固める必要がある (wcoomd.org)
    • 予防策:
      • 種子ラベル、検査証明、用途表示を必須資料化
      • “食用グレード”の表示があるのにSeedで申告しない

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤ると、そもそも適用すべきPSRが変わり、原産性判断(WO/CTC/RVC等)が崩れます
  • よくある落とし穴:
    • 「最終製品」を第10類で見るのか、第11類(粉・フレーク等)で見るのかでPSRが変わる
    • 原材料(穀粒)のHSと、製品(粉、シリアル、加工品)のHSを混同する

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 例:CPTPP
    • 日本の譲許表(Tariff Schedule)は **“HS2012”**として公表されています(=税率段階のコード体系がHS2012ベース)。 (内閣官房)
  • 例:RCEP
    • 品目別規則(Annex 3A)はHS2012ベースである旨が明記されています。 (Australian Border Force Website)
    • 一方で、RCEPではHS2022へのトランスポーズ(移し替え)版PSRが採択・実施された旨の整理もあります(運用時は必ず最新版の付属書・国内実施資料を確認してください)。 (JETRO)
  • 実務上の注意(一般論):
    • 協定本文・付属書が参照するHS版と、通関実務で使っているHS版がズレると、PSRの読み替え(トランスポジション)が必要になります。
    • HS6桁より下(8桁/9桁など)の「国内コード」は各国で異なり、国同士で単純比較できません。 (dfat.gov.au)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(典型):
    • 材料表(BOM)、原産国(栽培地/収穫地)、工程(乾燥、精米、外皮除去等)、非原産材料の有無
    • 「播種用」等で品目が分かれる場合、ラベル・証明書類
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 仕様書・工程表・取引書類(インボイス、契約書)・原産資料を“後から追える形”で保管

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022類注の追記(範囲明確化)10.08(特に1008.50 キヌア)「サポニン分離目的の外皮(pericarp)除去のみのキヌア」は、他加工が無い限り10.08に残る旨を注で明確化外皮除去キヌアの“第10類↔第11類”迷いが減る一方、仕様書で工程範囲を説明できないと誤分類リスク

※HS2017には上記キヌアの注記が無く、HS2022で追加されています。 (wcoomd.org)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • HS2022 第10類の類注1(B)に、キヌア外皮除去(サポニン分離目的)でも他加工が無い場合は10.08に残る旨が追記されています。 (wcoomd.org)
    • HS2017 第10類の類注1(B)には、同趣旨のキヌア記載がありません。 (wcoomd.org)
  • したがって、「HS2017→HS2022で第10類のコード体系(1001〜1008)は基本同じだが、キヌアの取扱いを注で明確化した」と判断します。 (wcoomd.org)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第10類は、HS2007→HS2012で“種子(Seed)”の統計把握強化等が入り、細分が増えています。

  • 主要な追加・削除・再編(例:HS2007→HS2012→HS2017→HS2022)
流れ主要変更(例)旧コード→新コード(例)背景・狙い(分かる範囲)
HS2007→HS2012多くの穀物で Seed/Other を分離1002.00→1002.10/1002.90、1003.00→1003.10/1003.90、1004.00→1004.10/1004.90、1007.00→1007.10/1007.90 等国際貿易統計上の識別強化(相関表の注記に基づく) (関税庁)
HS2007→HS2012ミレットのSeed分離+新規穀物の独立号化1008.20→1008.21/1008.29、(新)1008.40(フォニオ)、1008.50(キヌア)、1008.60(トリティケール)相関表にて新設の説明あり (関税庁)
HS2012→HS2017第10類の6桁体系は実務上ほぼ同一(実質変更なし)HS2012とHS2017の条文比較上、大きな構造差が見当たりません (wcoomd.org)
HS2017→HS2022キヌア注記追加10.08(キヌア)注で範囲明確化 (wcoomd.org)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ロールドオーツを“穀物”で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):加工穀粒(圧ぺん)を第10類に入れてしまい、類注1(B)の考え方に反する (wcoomd.org)
    • 起きやすい状況:インボイスが “oats” とだけ書かれている/現物写真が無い
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延
    • 予防策:工程・形状(flake/rolled)確認、写真添付、事前教示の活用 (関税庁)
  • 事例名:外皮除去キヌアの誤分類
    • 誤りの内容:外皮除去=加工として第11類へ寄せるが、HS2022類注では一定範囲で10.08に残る (wcoomd.org)
    • 起きやすい状況:サプライヤーが工程を“cleaned/washed”程度にしか説明しない
    • 典型的な影響:税番差・統計差、原産地規則(PSR)選択の誤り
    • 予防策:工程表で「外皮除去以外なし」を明確化、仕様書の整備
  • 事例名:スイートコーンを1005で申告
    • 誤りの内容:類注2(スイートコーン除外)に反する (wcoomd.org)
    • 起きやすい状況:品名が “corn” で曖昧/品種が不明
    • 典型的な影響:差戻し、補正、遅延
    • 予防策:品種資料・写真・用途資料を添付し、青果扱いの有無を確認
  • 事例名:籾米と玄米の取り違え
    • 誤りの内容:1006の状態区分の誤り(号選択ミス) (wcoomd.org)
    • 起きやすい状況:英文で “husked/hulled” の解釈違い
    • 典型的な影響:税率・制度要件の誤適用、修正申告
    • 予防策:現物写真、工程(脱殻の有無)確認、規格書整備

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 食品衛生法(輸入届出):販売/営業使用の食品等を輸入する場合、輸入届出義務がある旨が厚労省から案内されています(検疫所で受付、審査・検査要否判断)。 (厚生労働省)
    • 植物検疫(植物防疫法):植物(穀類等を含む)を日本へ持ち込む場合、原則として輸出国政府発行の検査証明書(Phytosanitary Certificate)提出と輸入検査が求められる旨が植物防疫所から案内されています。 (農林水産省)
      • 穀類の輸入検疫に関する運用要領(例:ばら積み同一穀類の取扱い等)も公開されています。 (農林水産省)
  • その他の許認可・届出
    • 米・小麦等:日本への輸入では、関連法令に基づく手続・所定の関税等が必要になる旨、税関(例:東京税関)から注意喚起があります(郵便等の案内ページですが制度の存在を示します)。 (関税庁)
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 食品衛生:厚生労働省・検疫所(食品等輸入手続) (厚生労働省)
    • 植物検疫:農林水産省 植物防疫所(Plant Protection Station) (農林水産省)
    • 品目分類:税関(事前教示制度) (関税庁)
  • 実務での準備物(一般論):
    • インボイス、パッキングリスト、B/L
    • 商品仕様書(加工工程、形状、用途)、写真
    • 植物検疫証明書(要否を事前確認) (農林水産省)
    • 食品衛生法の届出に必要な資料(成分・製造情報等) (厚生労働省)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 穀物の種類(小麦/米/大麦/ミレット/キヌア等)
    • 形状:粒/割砕/フレーク/粉/ペレット
    • 加工工程:脱ぷ、精白、圧ぺん、粉砕、加熱、膨化等
    • 目的:播種用か、食用か、飼料か(証憑の有無)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1(A)(穀粒の有無)、類注1(B)(加工穀粒の除外+例外)、類注2(スイートコーン除外)を再確認 (wcoomd.org)
    • 米なら1006の状態区分、キヌアなら外皮除去の範囲を確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “corn”“grain”など曖昧語の補足(sweet cornか否か、用途)
    • 写真・仕様書を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定のHS版(例:CPTPP/ RCEPはHS2012ベース)を確認 (内閣官房)
    • トランスポーズ版(HS2022移行等)がある場合は最新版を確認 (JETRO)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022 条文:Chapter 10 Cereals、Section II Note) (wcoomd.org)(参照日:2026-02-14)
  • WCO(HS2017/HS2012/HS2007 条文:Chapter 10 Cereals) (wcoomd.org)(参照日:2026-02-14)
  • WCO相関表(HS2012↔HS2007:第10類の細分新設等の説明) (関税庁)(参照日:2026-02-14)
  • 日本:厚生労働省「食品等輸入手続について(食品衛生法に基づく輸入届出等)」 (厚生労働省)(参照日:2026-02-14)
  • 日本:農林水産省 植物防疫所(植物の持込み規制/検査証明書・輸入検査) (農林水産省)(参照日:2026-02-14)
  • 日本:税関 事前教示制度(品目分類) (関税庁)(参照日:2026-02-14)
  • 日本:東京税関(米・小麦等の輸入手続に関する注意喚起) (関税庁)(参照日:2026-02-14)
  • CPTPP:日本国譲許表(Tariff Schedule of Japan (HS2012)) (内閣官房)(参照日:2026-02-14)
  • RCEP:Annex 3A(PSR)HS2012ベースの明記 (Australian Border Force Website)(参照日:2026-02-14)
  • RCEP:HS2022へのトランスポーズPSRの運用(参考:JETRO資料) (JETRO)(参照日:2026-02-14)
  • CPTPP:HS6桁超の国内コード差異に関する一般説明(豪DFAT) (dfat.gov.au)(参照日:2026-02-14)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • HSは原則6桁(号)ですが、日本を含む各国は通関実務で**8桁/9桁等の国内細分(国内コード)**を用います。
  • 協定や国によって「6桁超の細分」は一致しない(単純比較できない)点に注意してください。 (dfat.gov.au)
  • 例として、CPTPPの日本国譲許表は **“Tariff Schedule of Japan (HS2012)”**として、HS2012ベースのタリフラインで段階税率が示されています。 (内閣官房)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 日本税関には、輸入前に税番(分類)・税率を照会し回答を得られる事前教示(品目分類)制度があります。 (関税庁)
  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 仕様書(加工工程、粒/粉/フレーク等の形状、用途)
    • 写真(現物・ラベル)
    • 成分・処理内容(特にキヌア外皮除去、米の精米度合い 等)
    • サンプル提供可否(可能なら)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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