HS2022 第3類:魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物(Fish and crustaceans, molluscs and other aquatic invertebrates)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 生きている観賞魚(例:金魚・錦鯉など)→ 03.01(生きている魚) (世界関税機関)
    • 生鮮/冷蔵の鮭(丸のまま等、フィレ以外)→ 03.02 (世界関税機関)
    • 冷凍のまぐろ(丸のまま等、フィレ以外)→ 03.03 (世界関税機関)
    • 魚のフィレ(冷蔵/冷凍)→ 03.04(03.02/03.03から明示除外) (世界関税機関)
    • くん製サーモン、塩蔵たら等 → 03.05(ただし“調製品”でない範囲) (税関総合情報)
    • 殻付きで単に蒸し又は水煮したカニ(加熱していても条件付きで03類)→ 03.06 (税関総合情報)
    • ほたて(生鮮/冷凍、殻付き/むき身)→ 03.07 (世界関税機関)
    • なまこ・くらげ(乾燥/塩蔵 等)→ 03.08 (世界関税機関)
    • 魚介由来の粉・ミール・ペレット(食用)→ 03.09(HS2022で独立) (世界関税機関)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鯨などの哺乳類(生体)→ 01.06、同肉 → 02.08/02.10 (世界関税機関)
    • キャビア・魚卵から調製したキャビア代用物 → 16.04 (世界関税機関)
    • 魚介を加熱調理したもの、衣付け・ソース和え等「03類に列挙されない方法」で調製/保存したもの → 原則16類(例:焼き魚、フライ) (税関総合情報)
    • 食用に適しない状態の魚介(死んでいて食用不適)→ 第5類、食用不適の粉・ミール・ペレット → 23.01 (世界関税機関)
    • 魚油等(脂・油)→ 第15類(例:魚油は15.04系)※本章の注の直接列挙ではないため、実務では見出しで確認が必要です。
    • 魚介の調製品(缶詰、味付け、瓶詰等)→ 16.04/16.05(製品態様による) (税関総合情報)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 加工度(生鮮/冷蔵/冷凍/乾燥・塩蔵・くん製)か、調製品(16類)か (税関総合情報)
    2. 丸魚(03.02/03.03)か、フィレ・魚肉(03.04)か(見出しで明確に分かれます) (世界関税機関)
    3. 粉・ミール・ペレットは「食用(03.09)」か「食用不適(23.01)」か(そして03.05〜03.08には食用品は入らない) (世界関税機関)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 「軽く火を通しただけ」「開殻のための熱湯処理(heat shock)」を**“調理済み”と誤認**して16類へ飛ばす(または逆) (税関総合情報)
    • 魚卵・しらこを、**そのまま食べられる調製品(16.04)**なのに03類で申告 (税関総合情報)
    • 03.09新設後も、粉・ミール・ペレット(食用)を旧来の感覚で03.05/03.06/03.08側に置いてしまう (世界関税機関)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注):03類は類注(除外・定義)がはっきりしており、まず注で“飛び先”を潰すのが最短です(例:キャビア→16.04、食用不適→第5類/23.01、粉・ミール・ペレット(食用)→03.09)。 (世界関税機関)
    • GIR6(6桁の選択):03類は6桁が「状態(生鮮/冷凍等)」×「生物群(魚/甲殻/軟体/その他)」×「種(属・学名)」で細かいので、最後は6桁見出しの文言に沿って落とします。 (世界関税機関)
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 状態:生きている/生鮮(冷蔵含む)/冷凍/乾燥・塩蔵・くん製/粉・ミール・ペレット(食用) (世界関税機関)
    • 形状:丸のまま(頭付き等)か、フィレか、魚肉(ミンチ・すり身状等)か (世界関税機関)
    • 加工度(重要):03類に列挙された方法(冷蔵・冷凍・乾燥・塩蔵・くん製等)に止まるか、加熱調理・味付け等で16類相当になるか (税関総合情報)
    • 用語注意:「dried(乾燥)」は、脱水・蒸発・フリーズドライも含む扱いです(部注)。 (世界関税機関)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象が「魚/甲殻類/軟体動物/その他水棲無脊椎動物」か
    • それ以外(例:海獣、海藻、魚油など)は03類以外に行きやすいです。 (世界関税機関)
  • Step2:調製・保存の方法が、03類の範囲内か(=生鮮/冷蔵/冷凍、乾燥、塩蔵・塩水漬、くん製 等)
    • 03類にない方法で調製・保存(加熱調理、衣付け、ソース漬け等)→ 原則16類へ (税関総合情報)
    • ただし例外(03類に残る):殻付き甲殻類の単なる蒸し/水煮、くん製の前後の加熱調理、開殻等のための熱衝撃(heat shock)など、解説で“調理とみなさない/03類に残る”扱いが示されています。 (税関総合情報)
  • Step3:状態で項(4桁)を決める
    • 生きている魚 → 03.01
    • 生鮮/冷蔵の魚(※フィレ除外)→ 03.02
    • 冷凍の魚(※フィレ除外)→ 03.03
    • 魚のフィレ・その他魚肉 → 03.04
    • 乾燥/塩蔵/塩水漬/くん製の魚(+一部の魚卵・しらこ等)→ 03.05
    • 甲殻類 → 03.06
    • 軟体動物 → 03.07
    • その他水棲無脊椎動物 → 03.08
    • 食用の粉・ミール・ペレット → 03.09 (世界関税機関)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第3類は4桁見出しが比較的少ないため全列挙します(HS2022条文ベース)。 (世界関税機関)
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
0301生きている魚観賞魚、ふ化用稚魚、活うなぎ「生きている」ことが絶対条件。観賞用も含む。学名・属で6桁が分かれる。 (世界関税機関)
0302魚(生鮮/冷蔵)※03.04のフィレ等除外冷蔵サーモン(丸魚)、生鮮アジフィレ・魚肉は03.04。冷蔵の定義(凍らせない)。 (世界関税機関)
0303魚(冷凍)※03.04のフィレ等除外冷凍まぐろ(丸魚)フィレ・魚肉は03.04。冷凍の定義(凍結点以下で全体凍結)。 (世界関税機関)
0304魚のフィレ・その他魚肉(生鮮/冷蔵/冷凍)冷凍たらフィレ、すり身状の魚肉03.02/03.03から明示除外。形状・加工(切身/フィレ/ミンチ等)が鍵。 (世界関税機関)
0305乾燥・塩蔵・塩水漬・くん製の魚 等くん製サーモン、塩蔵たら、干物03類に列挙された保存方法の範囲。魚卵・しらこは“そのまま食べられる調製品”なら16.04へ。 (税関総合情報)
0306甲殻類(殻付き/むき身、各状態)えび、かに、ロブスター単に蒸し/水煮した殻付き甲殻類は03.06に残り得る。味付け等で16類へ。 (税関総合情報)
0307軟体動物(殻付き/むき身、各状態)かき、ほたて、いか、たこ開殻や安定化のための熱衝撃は“調理”扱いされず03類に残り得る。 (税関総合情報)
0308その他の水棲無脊椎動物(甲殻類・軟体動物以外)なまこ、うに、くらげ生物群の誤認が多い(例:うに=軟体動物ではない)。調製品は16類へ。 (世界関税機関)
0309魚介由来の粉・ミール・ペレット(食用)魚粉(食用スープ用)、乾燥海産物粉末、食用ペレットHS2022で独立。03.05〜03.08には食用品は入らない(類注)。食用不適は23.01。 (世界関税機関)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 状態:生鮮/冷蔵/冷凍/乾燥/塩蔵/塩水漬/くん製/粉・ミール・ペレット (世界関税機関)
    • 形状:丸魚 vs フィレ/魚肉(03.02/03.03 ↔ 03.04) (世界関税機関)
    • 生物群:魚/甲殻類/軟体動物/その他水棲無脊椎動物(03.06/03.07/03.08で分かれる) (世界関税機関)
    • 種(学名):まぐろ(Thunnus属)、うなぎ(Anguilla spp.)等、6桁が種で割れる場合が多い (世界関税機関)
    • “食用に適する/適しない”:03.09 ↔ 23.01、または第5類への除外 (世界関税機関)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 03.02/03.03(丸魚) vs 03.04(フィレ・魚肉)
      • どこで分かれるか:見出しで「03.04のフィレ等は除外」と明記。 (世界関税機関)
      • 判断に必要な情報:形状(フィレか)、カット工程、製品写真、規格書(スキンオン/スキンレス、骨取り等)。
      • 典型的な誤り:切身・フィレを「冷凍魚」として03.03に入れてしまう。
    2. 03類(くん製・塩蔵等) vs 16類(調製/保存)
      • どこで分かれるか:03類は“この類に記載した方法のみ”の処理に基本限定。加熱調理や衣付けなどは16類へ。 (税関総合情報)
      • 判断に必要な情報:工程(加熱の目的/程度)、添加物(タレ、調味液、衣)、喫食形態(そのまま食べられるか)。
      • 典型的な誤り:「真空包装・缶入り=調製品」と決めつける(※缶入りでも03類に属し得る旨の注意あり。ただし多くは16類になる、と整理されています)。 (税関総合情報)
    3. 魚卵・しらこ:03類(素材) vs 16.04(キャビア/調製品)
      • どこで分かれるか:キャビアおよび“そのまま食するのに適した”魚卵・しらこは16.04へ。 (世界関税機関)
      • 判断に必要な情報:味付け有無、塩分/調味、容器・表示(ready-to-eat)、販売実態。
      • 典型的な誤り:「魚卵だから03類」と短絡し、16.04の除外を見落とす。
    4. 03.06/03.07/03.08(原材料的な魚介) vs 16.05(甲殻類・軟体動物等の調製品)
      • どこで分かれるか:単なる蒸し/水煮の殻付き甲殻類は03.06に残り得る、開殻の熱衝撃も“調理とみなさない”整理。味付け・調理は16類へ。 (税関総合情報)
      • 判断に必要な情報:殻の有無、加熱の態様(蒸し/水煮か)、調味・ソース有無、レトルト殺菌等の有無。
      • 典型的な誤り:加熱=即16類とする(例外条件を無視)。
    5. 粉・ミール・ペレット:03.09(食用) vs 23.01(飼料等)
      • どこで分かれるか:食用不適は23.01、食用は03.09。さらに03.05〜03.08には食用品の粉等は入らない。 (世界関税機関)
      • 判断に必要な情報:食品規格(食用)、用途(ヒト用/飼料用)、表示・成分規格、製造管理。
      • 典型的な誤り:魚粉=飼料と決めつけ、食品用途の粉末(だし粉等)を23.01へ。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • この部(第I部)では、見出しに特定の属・種が書かれている場合でも、原則として“その若齢個体(young)”も含む扱いです。 (世界関税機関)
    • “乾燥(dried)”は、脱水・蒸発・フリーズドライも含む(=乾燥方法が違うだけで別見出しに飛ばない、という実務上の安心材料)。 (世界関税機関)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 乾燥なまこ(フリーズドライ含む)を「乾燥ではない」と誤認して別章に飛ばすリスクを下げます(ただし“調製品”になっていないかは別途確認)。 (世界関税機関)
    • うなぎ(Anguilla spp.)の稚魚など、若齢個体を“別扱い”にしない整理に役立ちます。 (世界関税機関)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 乾燥の定義で03類内に留まる場合が多い一方、“調製”の有無で第16類へ飛ぶのは部注ではなく実務的判断(工程・添加物)側です。 (税関総合情報)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 03類に入らないもの(除外)が明示:海獣(哺乳類)、その肉、死んで食用不適の魚介、食用不適の粉・ミール・ペレット、キャビア類。 (世界関税機関)
    • 「ペレット」の定義:圧縮、または少量の結合剤添加で固めたもの。 (世界関税機関)
    • 03.05〜03.08には、食用の粉・ミール・ペレットは含まれず、03.09へ。 (世界関税機関)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • ペレット(03類注2)= “agglomerated(固めた)”製品の定義。 (世界関税機関)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • キャビア・キャビア代用物(魚卵から調製)→ 16.04 (世界関税機関)
    • 食用不適の魚介(死体等)→ 第5類、食用不適の粉・ミール・ペレット → 23.01 (世界関税機関)
    • 海獣(哺乳類)→ 01.06、海獣肉 → 02.08/02.10 (世界関税機関)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:粉・ミール・ペレット(食用)を03.09へ強制的に寄せる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 形状(粉/ミール/ペレット)、食用仕様(食品として流通するか)、製造工程(加熱の有無含む) (世界関税機関)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様書、成分表、用途表示(食品/飼料)、工程図、商品ラベル(喫食方法)、品質規格。
    • 誤分類の典型:
      • 旧来の感覚で03.05〜03.08の残余号に入れる/魚粉は一律23.01と決めつける。 (世界関税機関)
  • 影響ポイント2:“食用不適”は第5類/23.01へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 食用適否(品質・状態)、用途(釣餌・肥料・飼料等)、契約書・インボイスの用途記載。 (世界関税機関)
    • 現場で集める証憑:
      • 用途証明(購買仕様)、品質検査成績、SDS相当(必要な場合)、写真。
    • 誤分類の典型:
      • “魚介だから03類”で押し切る(類注の除外を無視)。 (世界関税機関)
  • 影響ポイント3:キャビア等の除外(16.04)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 「魚卵の素材」か「キャビア/そのまま食べられる調製品」か(味付け・加工・喫食可能性)。 (世界関税機関)
    • 現場で集める証憑:
      • 成分表、レシピ/配合、商品表示、製造工程。
    • 誤分類の典型:

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:冷凍フィレを「冷凍魚(03.03)」で申告
    • なぜ起きる:品名が“frozen fish”で、形状(fillet)を見落とす。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):03.02/03.03は「03.04のフィレ等を除く」と明示。 (世界関税機関)
    • 予防策:写真・規格書(フィレ/切身/ミンチ)を必ず回収し、社内で「骨付きか/フィレ加工の有無」を確認。
  2. 間違い:冷蔵品を冷凍として申告(または逆)
    • なぜ起きる:“chilled/frozen”の温度帯の理解が曖昧。
    • 正しい考え方:解説で冷蔵・冷凍の定義(凍結点以下で全体凍結か等)が整理。 (税関総合情報)
    • 予防策:温度記録(ロガー)、保管条件、インボイス記載(Chilled/Frozen)を照合。
  3. 間違い:衣付け魚(batter/breadcrumb)を03類へ
    • なぜ起きる:原材料が魚であることに引っ張られる。
    • 正しい考え方:03類にない方法(衣付け等)で調製したものは16類へ、という整理がある。 (税関総合情報)
    • 予防策:配合表・工程(衣付け/フライ前処理)を確認し、試作品段階で分類レビュー。
  4. 間違い:魚卵(いくら等)を03類で申告
    • なぜ起きる:“roe=03類”の思い込み。
    • 正しい考え方:キャビア・調製魚卵は16.04へ除外。 (世界関税機関)
    • 予防策:「そのまま食べられる味付け済みか?」を社内質問に入れる(ラベル/成分表を必須回収)。
  5. 間違い:粉・ミール・ペレット(食用)を03.05〜03.08側に入れる
    • なぜ起きる:旧版の感覚や「乾燥品だから03.05」思考。
    • 正しい考え方:03.05〜03.08は食用粉等を含まず03.09へ(類注3)。 (世界関税機関)
    • 予防策:形状・用途(食品/飼料)を確認し、HS2022改正点(03.09新設)を社内分類メモに固定。
  6. 間違い:殻付きで単に蒸し/水煮したカニを16類へ飛ばす
    • なぜ起きる:「加熱=調理=16類」と短絡。
    • 正しい考え方:単に蒸し/水煮した殻付き甲殻類は03.06等に残る扱いが示される(例外)。 (税関総合情報)
    • 予防策:加熱の態様(蒸し/水煮か、味付け有無)を工程表で確認。
  7. 間違い:開殻のための熱湯処理(heat shock)を“調理済み”と誤認
    • なぜ起きる:加熱工程があるとすぐ調理扱いにしてしまう。
    • 正しい考え方:開殻や安定化のための熱衝撃のみは“調理したものとみなされない”整理。 (税関総合情報)
    • 予防策:目的(開殻/安定化)と処理条件(秒数等)を確認し、味付け・加熱調理と区別。
  8. 間違い:MAP包装(ガス置換包装)=調製品として16類へ
    • なぜ起きる:包装形態だけで加工度を判断。
    • 正しい考え方:MAP包装された生鮮/冷蔵魚介も03類に属し得る整理。 (税関総合情報)
    • 予防策:包装の目的(鮮度保持)と処理内容(味付け等なし)を確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHS(6桁)がズレると、PSRの条文自体が変わり、原産性判断(CTC/RVC/加工工程要件)が崩れます。 (税関総合情報)
  • よくある落とし穴:
    • 材料側HS(非原産材料)と最終製品HSの混同
    • 03.02/03.03と03.04の取り違えで、PSRが別物になる
    • 03.09(食用粉等)を見落としてPSRを誤選択 (世界関税機関)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • まず大原則:PSRが採用しているHSの版はEPA/FTAごとに異なります(HS2002/2007/2012/2017等)。 (税関総合情報)
  • 例(一次情報で明示が確認できるもの):
  • HS2022とズレる場合の注意(一般論)
    • 通関申告のHSは各国が採用する現行版(日本では現行関税率表体系)に従う一方、PSRは協定が参照するHS版で読まないといけないケースが出ます。 (税関総合情報)
    • そのため、実務では「協定側PSRをHS2022へ“トランスポーズ(対応付け)した表”」を使います。RCEPでは、HS2022へトランスポーズしたPSRに基づき、原産地証明で示すHSコード・原産判定基準を記載する旨の注意が示されています。 (外務省)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 旧HS(例:HS2012)でPSRを特定 → 公式のトランスポーズ資料/相関表でHS2022へ対応付け → その対応付けの根拠(相関表・社内メモ)を保存、という順にすると監査耐性が上がります。 (税関総合情報)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限必要:
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS(できれば6桁)、RVC計算前提(FOB/EXW等)。 (経済産業省)
  • 水産物で追加で効きやすい論点(一般論):
    • 漁獲・養殖・加工のどの段階で「原産」と言えるかは協定本文定義(全部原産・加工基準)に依存します。漁獲場所(公海/領海等)、船舶要件、加工場所(陸上/船上)など、事実関係を証憑で固めるのが重要です。 (経済産業省)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 産地証明、漁獲証明(該当時)、製造記録、請求書、運送書類、原産品申告の根拠一式を協定・国内制度に従い保存。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

(主にHS2017→HS2022の差分。相関表に基づく要約です。) (税関総合情報)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設+範囲変更03.09(新設)食用の粉・ミール・ペレットを独立見出し化食用粉末・ペレットの落とし先が明確化。誤ると03.05〜03.08や23.01と混同しやすい
HS2017→HS2022移動(再分類)0305.10 → 0309.10魚の粉・ミール・ペレット(食用)が03.05配下から03.09へ旧コード運用のままだとズレる(契約・マスタ更新必須)
HS2017→HS2022範囲変更03.06/03.07/03.08新設03.09により、食用粉等をこれら見出しから整理03.06/03.07/03.08残余へ入れていた粉末を見直す必要
HS2017→HS2022分割/再編0307.2(ホタテ等)ホタテ・ペクチン科(Pectinidae)のサブヘディング体系を拡充「ホタテ類」の分類の当たり先がより明確化。旧分類の見直しに影響

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • WCO公表のHS2022条文(第3類注、03.09の新設等) (世界関税機関)
    • WCO相関表(HS2017→HS2022):03.09新設、0305.10→0309.10、0307.2再編等が示されています。 (世界関税機関)
    • 日本税関の品目解説(第3類):03.09への注意喚起、03類と16類の区分(例外含む)が実務的に整理されています。 (税関総合情報)
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • HS2022条文で、03類注3として「03.05〜03.08は食用粉・ミール・ペレットを含まず03.09へ」という構造が明文化されています。 (世界関税機関)
    • 相関表で、HS2017側の0305.10等からHS2022側の0309.10/0309.90への対応が示され、さらに03.06〜03.08の範囲変更が“03.09新設の結果”として説明されています。 (税関総合情報)
    • 日本税関解説でも、加熱調理物が16類へ行く一方で例外(殻付き甲殻類の蒸し/水煮、開殻の熱衝撃等)や、粉・ミール・ペレットが03.09に属する点が明記され、実務判断の根拠になります。 (税関総合情報)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

注:本節は「可能な範囲で」の整理です。HS2007→2012、HS2012→2017については、本回答の作成時点で一次情報(WCO相関表)を追加突合できていないため、断定せず“要確認”として提示します。実務ではWCO相関表(該当版同士)や各国税関の相関表で確認してください。 (世界関税機関)

版間主要な追加・削除・再編(把握できた範囲)旧コード→新コード(例)コメント
HS2007→HS2012要確認(本回答では一次情報突合未了)WCO相関表で3類のサブヘディング再編有無を確認推奨
HS2012→HS2017要確認(本回答では一次情報突合未了)同上
HS2017→HS202203.09新設/0305.10等の移動/0307.2再編0305.10→0309.10 等03.09の有無でマスタ・PSR対応が変わる (税関総合情報)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「衣付き冷凍白身魚フィレ」を03.04で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):03類の範囲(列挙方法)を超える調製(衣付け)を見落とし、16類相当を03類で申告。 (税関総合情報)
    • 起きやすい状況:商品名に“fish fillet”しか書かれず、成分表を回収していない。
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、冷凍保管費・遅延。
    • 予防策:配合表・工程表を必須資料にし、試作段階で分類レビュー。
  • 事例名:味付け魚卵(瓶詰)を03類で申告
    • 誤りの内容:キャビア/調製魚卵(16.04)除外を無視。 (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:HSマスタが“魚卵=03類”で固定。
    • 典型的な影響:分類更正、関税率・原産地判定のやり直し。
    • 予防策:「そのまま喫食可」「調味・熟成」などの表示有無をチェック項目化。
  • 事例名:食用魚粉(だし粉)を23.01(飼料等)で申告
    • 誤りの内容:食用粉末は03.09、食用不適のみ23.01という整理を無視。 (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:“fish meal”という英語表記だけで判断。
    • 典型的な影響:食品としての届出・規制チェックも連鎖してズレ、差戻し・遅延。
    • 予防策:用途(食品/飼料)を契約・仕様で明確化し、ラベル・規格書を回収。
  • 事例名:MAP包装の生鮮魚を“調製品”扱いで16類へ
    • 誤りの内容:MAP包装は鮮度保持の包装であり得る点を無視。 (税関総合情報)
    • 起きやすい状況:包装形態だけで加工度を判断。
    • 典型的な影響:分類差し戻し、検査、納期遅延。
    • 予防策:包装仕様書(ガス置換の目的)を添付資料にする。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 食品衛生法に基づく輸入手続:水産物を含む食品等は、原則として検疫所での手続(輸入届出等)と検査対象になり得ます。 (厚生労働省)
    • 水産動物の輸入防疫(対象は個別指定):観賞用・養殖用など“生きた水産動物”で、法令上の検査対象となる場合があります(担当窓口・手続は案内に従う)。 (農林水産省)
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • CITES対象種の輸入は、輸出国政府の輸出許可書に加え、原則として日本側の輸入承認(所管:経産省)等が必要で、税関申告時に提出・確認が必要です。 (税関総合情報)
  • その他の許認可・届出
    • 外来生物法(特定外来生物等):指定種の輸入は原則禁止または制限があり、種類名証明書の提出、通関場所の制限などが案内されています(生きた魚介の輸入で特に注意)。 (税関総合情報)
    • IUU対策等(漁獲証明が要る場合):指定された水産動植物について、輸入時に漁獲証明書等を求める制度が運用されています(該当品目は制度側で確認)。 (農林水産省 競技団体公式サイト)
    • 輸入関連法令リスト(税関):品目によっては割当・承認・確認等の対象があり得るため、該当HSで税関のリストを参照して当たりを付けます。 (税関総合情報)
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品仕様書(状態・加工度)、写真、成分表、工程図、学名(種規制があり得る場合)、食品表示案、輸入届出関連資料、必要に応じ許可・証明書(CITES、漁獲証明、種類名証明書等)。 (税関総合情報)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 生物群(魚/甲殻/軟体/その他)、学名(可能なら)、状態(live/chilled/frozen/dried/salted/smoked)、形状(丸魚/フィレ/魚肉)、加工工程(加熱・味付け・衣付け等)、用途(食品/飼料/観賞/ふ化)。 (世界関税機関)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 03類注1(除外:キャビア、食用不適等)に触れていないか
    • 03類注3(食用粉等→03.09)を満たしているか
    • 03類と16類の境界(調製品化していないか) (世界関税機関)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「状態」「形状」「種」を入れる(例:Frozen tuna, whole / Frozen cod fillets)
    • 単位(KG/NO等)と数量が関税率表の要求に合うか(国内コードは要確認) (かんぜい.org)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012等)を確認し、必要ならトランスポーズPSRで読み替え
    • BOM・原価・工程記録の保存 (税関総合情報)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品衛生(輸入届出・検査)
    • 生体の水産動物検査(該当時)
    • CITES(該当種)
    • 外来生物法(生体・指定種)
    • 漁獲証明制度(該当時) (厚生労働省)

12. 参考資料(出典)

※Web参照日:2026-02-13


付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 国内コード(日本の統計品目番号等)はHS6桁をさらに細分します。HS(6桁)と国内コードは別物なので、契約・通関マスタでは必ず分けて管理してください。 (かんぜい.org)
  • 単位(数量単位)は品目により異なります(例:生体は「尾(NO)」+「重量(KG)」併記が出ることがあります)。
    • 例:03.01(観賞用淡水魚)では、国内コードの行末に NO KG が表示される(尾数と重量の両方で管理する想定)。 (かんぜい.org)
    • 一方、多くの魚介(生鮮・冷凍・フィレ等)は基本的に KG 表示が中心です(コードにより確認)。 (かんぜい.org)
  • 実務メモ:
    • インボイス/パッキングリストの数量単位(尾数・重量)と、関税率表で求める単位がズレると差戻し・修正が起きやすいので、最初に単位を確定させるとスムーズです。 (かんぜい.org)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 早く相談を進めるコツ(一般論)
    • 製品仕様書(状態・加工度・形状)、写真、工程図、成分表、学名(可能なら)を1セットにして、分類の“分岐点”がどこかを自社で仮説化して持ち込む。
    • 03類は「03類と16類の境界」「03.02/03.03と03.04の境界」「03.09の新設後の扱い」が争点になりやすいので、そこに刺さる資料を優先収集。 (税関総合情報)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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