2028年1月1日、世界共通の品目分類であるHSはHS2028へ切り替わります。WCOは、HS2028が2028年1月1日に発効し、発効までの準備期間に相関表の作成や解説書類の更新などを進める方針を明記しています。つまり、コード変更は確定事項であり、企業側は準備の先送りができません。 (World Customs Organization)
EU向けビジネスでは、この変更がEU独自の品目表であるCNと、関税措置や規制措置まで含むTARICに波及します。分類コードの変更は、単なる表の更新ではなく、関税額、輸入規制、統計申告、社内マスタやERP連携まで直撃します。
この記事では、EUの官報とCN改正をどう監視すべきかを、ビジネスマン向けに実務目線で深掘りします。

まず押さえるべき構造
HSとCNとTARICの関係
CNは、EUの共通関税率と貿易統計の要件を満たすための品目分類で、WCOのHSを土台にEU独自の細分を加えたものです。EU委員会の説明でも、CNはHSの発展形であり、EU向けの品目分類として使われることが示されています。 (Taxation and Customs Union)
実務上は、次のように理解すると整理が早いです。
- HSは世界共通の6桁
- CNはEUの8桁
- TARICはEUの統合関税データベースで、関税措置や規制措置まで含めて運用される
CN改正は毎年起きる
EUでは、CNの最新版本が毎年更新され、EU官報のLシリーズで委員会実施規則として公表されます。EU委員会は、CNが毎年更新され官報で公表されること、そしてそれが事業者と税関にとって重要な作業ツールであることを明記しています。 (Taxation and Customs Union)
さらに、EUR-Lexの要約情報では、毎年のCNと共通関税率の完全版を再現する規則が採択され、官報で遅くとも10月31日までに公表され、翌年1月1日から適用されると整理されています。 (EUR-Lex)
この毎年10月末という節目を知っているかどうかで、監視体制の設計が大きく変わります。
TARICは日次で動く
TARICはEUの統合関税データベースで、EUの関税、商業、農業関連の措置を統合して提供する仕組みです。EU委員会は、TARICデータが電子ネットワークで日次送信され、加盟国の税関システムに反映されることで、即時かつ正確な情報提供が担保されると説明しています。 (Taxation and Customs Union)
また、TARICのデータ抽出に関するEU側の説明資料では、TARICのデイリー更新と照会サイトが、原則として欧州委員会の稼働日の月曜から金曜に、夜7時以降に日次更新される旨が示されています。
結論として、年1回のCN改正だけを追うと、途中で変わる規制措置や追加コードの変更を見落としやすいという構造があります。
HS2028がEUにどう入ってくるか
EUはHS条約の枠組みで改正を受け入れた場合、締約当事者として自らの関税統計品目表を改正HSに整合させる必要があります。EU委員会が2025年に公表した文書でも、受諾されたHS改正は国際法上拘束力を持ち、EU法では規則2658/87の付属書Iに取り込まれる、と明確に述べられています。
このため、HS2028は2028年1月1日の発効に合わせて、EUでもCNとTARICに反映される方向で動くと読むのが自然です。
官報とCN改正の監視点
ここからが本題です。監視点は、いつ、どこを、何の観点で見るかに分解すると実務に落ちます。
監視点1 官報で何を拾うべきか
EU官報は、改正の確定情報が出る場所です。特に見るべきはLシリーズの規則です。
見る対象の優先順位は次の通りです。
- 翌年版CNを確定する委員会実施規則
- 年途中に品目表や関連付属書に影響を与える実施規則
- TARIC上の措置変更につながる規制や実施規則
例えば、2026年版CNは2025年10月31日に官報で公表され、2026年1月1日から適用されています。こうした年次改正の型を知っておくと、HS2028対応年の動きも読みやすくなります。 (Taxation and Customs Union)
加えて、EUR-Lexの各規則ページには、メール通知やRSS通知の作成機能が用意されています。官報を目視で追うだけでなく、通知を前提にした監視設計にするのが現実的です。 (EUR-Lex)
実務で効く検索軸は、規則のタイトルや本文に頻出する定型句です。
例としては、規則2658/87付属書Iの改正、CN、Common Customs Tariff、amending Annex I といった要素が核になります。
監視点2 CN改正で確認すべき論点
CN改正を見たときに、単にコードが変わったかだけを見ると危険です。見るべきは、ビジネス影響に直結する変更パターンです。
- 分割と統合
1つのコードが複数に分割されたり、逆に統合されると、社内の商品マスタや取引条件、原産地管理の前提が崩れます。 - 品目文言の変化
文言の追加や削除は、分類判断の境界が変わったサインです。 - 追加注記や脚注、補助単位
統計単位や補助単位の変更は、申告システムや帳票の仕様に響きます。EU委員会もCNには脚注や補助単位などが含まれると説明しています。 (Taxation and Customs Union) - 関税率の変化
WTO約束税率の変更や自律関税の調整が絡むと、損益に直結します。
ここで重要なのは、CNの8桁だけを見て終わらせないことです。輸入の現場ではTARICのコード体系や措置条件のほうが実際の通関可否を左右します。
監視点3 TARICの監視は日次前提で設計する
規制対応やコストに直撃するのは、年次改正よりも、日々変わる措置です。TARICは日次送信され加盟国側で運用される仕組みであるため、監視間隔は商品カテゴリにより最適化すべきです。 (Taxation and Customs Union)
特に次に該当する場合、日次に近い監視が現実的です。
- 貿易救済、制裁、輸入許可、証明書などの措置に触れる品目
- 自社の主力売上や原価に関係する関税額が大きい品目
- 短納期で止められない物流を抱える品目
TARIC照会サイトの更新タイミングが夜7時以降とされている点も踏まえ、社内のデータ更新ジョブやチェックの時間帯を設計すると、無駄な差分や当日反映漏れを減らせます。
HS2028対応で企業が実際に詰まりやすいポイント
ここは現場でよく起きます。
- 商品マスタと申告コードの不一致
営業や調達は旧コードで動き、通関は新コードを要求される。結果として荷物が止まる。 - 原産地管理や協定適用の判定ロジックが崩れる
品目コードをキーにしている場合、マッピングが遅れると適用可否の判断が止まります。 - 調達契約の通関費用条項が古い前提のまま
関税負担の帰属や価格改定条項が想定どおりに働かなくなります。 - 外部委託先任せで、社内の意思決定が遅れる
通関業者やフォワーダーは手続きはしてくれますが、分類やリスク判断の最終責任は原則として事業者側に残ります。
監視を仕組みに落とす 失敗しない運用モデル
おすすめは、官報とTARICを分けて考え、二層で監視する方法です。
層A 官報ベースの確定情報監視
目的は、年次CN改正とHS2028反映の確定情報を最速で拾うことです。
運用例
- EUR-Lexで規則2658/87付属書I改正に関する規則ページの通知を設定する
- 10月は監視頻度を上げ、翌年版CN公表のタイミングに備える
- 公表後は社内影響評価の締切日を決め、更新を滞留させない
CNが毎年更新され官報で公表される点、そして翌年版が10月末までに公表される点は、監視カレンダーを固定する根拠になります。 (Taxation and Customs Union)
層B TARICベースの実務影響監視
目的は、当日の措置を見落として通関を止めないことです。
運用例
- 自社の重点コードをリスト化し、TARIC上で措置条件の差分を確認する
- 規制品や高リスク品は日次、その他は週次などで監視間隔を変える
- データ更新時間帯を考慮し、夜間更新後にチェックする
TARICが日次送信されること、照会サイトが日次更新されることは、運用設計の根拠になります。 (Taxation and Customs Union)
2026年から2028年1月までの実務ロードマップ
2026年1月時点で残り2年です。今からやるべきことを、優先度順に並べます。
- 影響範囲の棚卸し
輸出入、三国間取引、EU域内統計、関税コスト、規制対象を、コード単位で見える化する。 - マッピングの準備
現行HSやCNからHS2028や将来CNへの対応表を作る前提を置く。WCOが相関表作成を進める方針であるため、公開後にすぐ取り込める体制にしておく。 (World Customs Organization) - 監視の自動化
官報は通知、TARICは差分監視を基本にする。 - システム改修の段取り
ERP、通関連携、品目マスタ、帳票、BIの集計キーをコード変更に耐えられる形にする。 - 2027年10月の山場に備える
翌年版CNが10月末までに公表される型があるため、2027年10月に社内切替準備が集中する可能性を前提に、リソースと締切を先に確保する。 (EUR-Lex)
まとめ
HS2028は2028年1月1日に発効し、企業側には準備期間が残されています。 (World Customs Organization)
EU向け実務では、年1回のCN改正を官報で確実に拾うことと、日次で動くTARICの措置変更を取りこぼさないことが両輪です。 (Taxation and Customs Union)
この二層監視を、通知と差分監視を前提に仕組み化できれば、HS2028対応は焦りやすい年末プロジェクトではなく、通常業務として吸収できます。
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別案件の分類判断や通関可否、契約条件の見直しは、社内の責任者や専門家とあわせて確認してください。
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