中国税関 HSコード事前教示(預裁定)制度 実務ガイド

(最終確認日:2025年10月12日)

本ガイドは、中国(中華人民共和国)の税関におけるHSコードの品目分類や原産地資格などに関する事前教示制度(中国語:預裁定)の実務をまとめたものです。根拠法令として、主に海関総署令第236号「中華人民共和国海関預裁定管理暫行弁法」および最新の海関総署公告2024年第32号を参照しています。


1. 制度の基本情報

  • 主管当局: 中華人民共和国海関総署(GACC)および各直属税関
  • 主な根拠法令:
    • 海関総署令第236号(2018年2月1日施行):制度の基本原則を規定
    • 海関総署公告2018年第14号:上記法令の運用細則
    • 海関総署公告2024年第32号:有効期間の延長(展期)制度、および国外申請者の試行導入について規定

2. 申請手続きの概要

■ 対象分野 輸出入申告前に、以下の事項について税関の公式見解を求めることができます。

  1. 商品分類(HSコード)
  2. 原産地または原産資格
  3. 課税価格の関連要素および評価方法
  4. その他、税関総署が定める税関業務

■ 申請可能な者

  • 原則: 実際の輸出入活動に従事し、中国の税関に登録されている貿易事業者
  • 特例(試行制度): 2024年5月1日より、特定の条件を満たす中国国外の輸出者・生産者も、代理人経由での申請が可能となりました(詳細は後述)。

■ 申請時期

  • 原則として、貨物の輸出入予定日の3ヶ月前までに申請が必要です。
  • 例外:不可抗力、政策変更、または企業登録後3ヶ月未満などのやむを得ない事情がある場合は、3ヶ月を切ってからの申請も認められることがあります。

■ オンライン申請窓口 以下のいずれかのポータルサイトから24時間申請が可能です。

  • 互联网+海关(一体化オンライン窓口): http://online.customs.gov.cn
  • 中国国际贸易单一窗口(シングルウィンドウ): https://www.singlewindow.cn
    • アクセス方法:いずれも「税費業務 →(商品)分類預裁定/原産地預裁定」モジュールを利用します。

3. 申請から決定までの流れと所要期間

  1. 申請資料の提出(オンライン)
    • 申請書と添付資料(PDF形式)をアップロードします。
    • 外国語の資料には、必ず中国語の翻訳を添付する必要があります。
    • ファイルサイズ要件:1ファイル4MB以下、合計256MB以下
  2. 税関による受理審査
    • 申請受領後、10日以内に受理の可否が判断されます。
    • 書類不備の場合は補正通知が送られます。補正対応に要する期間は、この10日間には含まれません。
  3. 内容審査と決定書の発行
    • 受理後、税関による審査が行われます。必要に応じて、追加資料やサンプルの提出が求められる場合があります。
    • 受理日から60日以内に「預裁定決定書」が発行されます。
    • 注意:サンプルの試験・鑑定などに要する期間は、この60日間の審査期間から除外されます。

4. 申請に必要な主な情報

  • 預裁定申請書: オンラインシステム上で入力・作成します。
  • 技術資料(HSコード分類向け): 品名、規格・型式、構造・原理、機能・用途、成分・配合比、製造工程、包装状態、製品の写真・図面・カタログなど。
  • 証憑資料(原産地向け): 使用材料の内訳、生産工程の詳細、その他、関連する協定や規則に基づく証明書類。

5. 決定書の効力と活用

  • 有効期間: 原則として3年間です(決定書送達日から起算)。
    • 法令改正などにより、有効期間内でも決定が失効する場合があります。
    • 決定書発行前の輸出入には適用されません(遡及効なし)。
  • 有効期間の延長(展期): 2024年の公告により、有効期間の延長制度が導入されました。
    • 申請期間: 有効期限が満了する90日前から30日前まで
    • 条件: 申請内容や商品情報に変更がないことなど。
    • 手続: オンラインで申請し、受理から30日以内に新たな決定書(有効期間3年)が発行されます。
  • 拘束力と使用方法: 輸出入申告の際、申告書の所定欄に決定書番号を記載します。これにより、決定書と同一の貨物であることが確認されれば、税関はその決定内容(HSコード等)を認め、通関がスムーズになります。

6. 費用

  • 申請手数料: 無料です。
  • 実費負担: サンプルの試験・鑑定を外部機関に依頼した場合の費用や、サンプル輸送費などは申請者の負担となります。

7. その他の重要事項

  • 情報の公開と秘密保持: 決定内容は、申請者の商業上の秘密に関する部分を除き、公開される可能性があります。秘密保持を希望する場合は、申請時に書面でその旨を申し出る必要があります。
  • 不受理・審査終了となる主なケース:
    • 申請要件の不備、同一内容の重複申請、法令で規定が明確な事案。
    • 追加資料の提出が期限内に行われないなど、申請者側の都合で期間内に判断ができない場合。
  • 不服申立て: 決定に不服がある場合は、海関総署に対する行政不服審査や、行政訴訟を提起することができます。

8. 【特例】国外の輸出者・生産者による申請(試行制度)

  • 開始日: 2024年5月1日
  • 対象者: **上海自由貿易試験区(臨港新片区を含む)**に所在する輸入者と契約を締結した、中国国外の輸出者または生産者。
  • 対象分野: HSコード分類および原産地の双方。
  • 申請方法: 中国国内の代理人を通じ、専用のオンラインモジュールから申請します。申請先の税関は上海税関に限定されます。

【参考】主要根拠法令の抜粋

  • 海関総署令第236号の要点:
    • 第3条: 対象分野(HSコード分類、原産地等)
    • 第4条: 申請者の資格
    • 第7条: 輸出入3ヶ月前の申請原則
    • 第8条: 10日以内の受理判断
    • 第9条: 不受理の事由
    • 第11条: 60日以内の裁定(試験・鑑定時間を除く)
    • 第13条: 有効期間3年
    • 第14条: 遡及効の否定
    • 第15条: 税関に対する拘束力
    • 第17条: 情報公開の原則と秘密保持
    • 第18条: 不服申立て
  • 海関総署公告2024年第32号の要点:
    • 有効期間延長(展期)の手続きと要件
    • 中国国外の輸出者・生産者による申請の試行(条件付き)

「中国のレアアース輸出規制に対するアメリカの11月1日からの中国に対する追加関税100%」詳細アップデートと日本ビジネスマンが知るべき点

60秒サマリー

米国は11月1日から対中輸入に「追加関税100%」を課すと発表。既存関税に上乗せで適用され、総負担は多くの品目で130%前後に達する見通し。加えて「重要ソフトウェア」の対中輸出規制も導入方針。発表は大統領のTruth Social投稿によるもので、詳細は未公表。状況次第で発動時期を前倒しまたは撤回する可能性に言及。

背景は中国のレアアース輸出規制の強化。中国はホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユウロピウム、イッテルビウムの5元素を新たに規制対象に追加し、計12元素を規制下に置いた。精製装置・資材の輸出も規制対象とし、域外適用的な運用方針を打ち出した(中国産レアアースを0.1%以上含む磁石は審査対象)。主な発効は11月8日、一部は12月1日。

マーケットは株安・円高で反応。S&P500は2.7%安、ナスダックは3.6%安、円は対ドルで強含み。現行の米中「関税休戦」は11月10日に期限を迎える。

何が「決まった」か速報ベース

正確さに関しては、努力していますが、最終的には個々人でご確認下さい。

米側の措置

対中追加関税100%: 11月1日(またはそれ以前)に発動と大統領がTruth Socialで明言。既存の関税に「上乗せ」する形で適用。

重要ソフトウェアの対中輸出規制: 同じく11月1日から導入方針。ただし「重要ソフトウェア」の定義・該当ECCN・許可プロセス等の詳細は未公表。

背景: 今回の措置は中国のレアアース規制拡大への対抗。現行の米中関税休戦は11月10日に期限を迎える見通しで、11月1日発動は期限の9日前。

撤回条件への言及: 中国がレアアース規制を撤回すれば、追加関税の取り下げ余地があるとの発言も(ただし確約ではない)。

実務メモ: 現時点ではSNSでの政治判断の発表段階。HSコード範囲、免除、経過措置(積送中除外)などの実装細則は未発表。過去の追加関税(例:2025年2月の措置)の際は「船積み済み・積送中」への短期的な経過措置が官報で規定された前例あり(今回も同様とは限らないが注視が必要)。

中国側:レアアース規制の最新ポイント

規制拡大の中身: 5元素(Ho/Er/Tm/Eu/Yb)を追加し、計12元素を規制対象とした。精製技術・装置など多数を規制リストに追加。軍需用途は不許可、先端半導体関連は厳格審査。

域外適用の示唆: 中国資材・設備を使う海外生産や、中国レアアースを0.1%以上含む磁石製品についても中国の輸出許可が必要になり得るとの運用を明記。執行の実効性は未解明だが、サプライ停止リスクが抑止力として機能。

スケジュール: 規制拡大の主要部分は11月8日発効、一部規制は12月1日発効。

マーケットの初期反応(10月10-11日)

米株急落: S&P500は2.7%安(182ポイント減)、ナスダックは3.6%安(820ポイント減)、ダウは1.9%安(878ポイント減)。4月以来の大幅下落。円高進行も観測。

まだ不明な点(実務で「宿題」となる箇所)

適用範囲(HS): 一律100%を全品目に上乗せするのか、除外・猶予の設計はあるのか。官報(Federal Register)またはCBP通知待ち。

「重要ソフトウェア」の線引き: 対象ECCN、クラウド/SaaSやリモートアップデート等の「無形輸出」の扱い。BISからの追加ルールが出るまで社内フローは暫定対応が必要。

移行措置(積送中除外): 前例はあるが、今回の有無・期間は未定。

米中の追加対抗措置: 米側の輸出規制拡張、中国側の対抗課税・許可運用厳格化などの次手。

日本ビジネスが「今すぐ」押さえるべき要点

価格・コストと供給(11月1日リスク)

中国生産→米国向けの最終製品・部材は実質的に100%コスト上乗せが前提に(既存関税と合算で総負担は130%前後の水準に達する見立て)。在庫・出荷計画の前倒しや価格条項の見直しが急務。

原産地・迂回の誤解を回避

第三国経由の転送では原産地(CN)は変わらない。実質的な原産地変更(substantial transformation)や工程移管が必要。通関当局の取締り強化が予想され、形式的な迂回は高リスク。

レアアース・磁石のボトルネック

EV、風力、産業機械、HDD、ロボットなど磁石・レアアース多用業種は二重の供給制約(中国側規制+米側コスト増)に直面。BOM再点検、代替材・代替サプライヤの即時探索を。中国は処理で約90%、磁石で90%超のシェアを持つ。

米拠点からの「無形輸出」管理

米国子会社・米在勤者が関与するソフト配信、リモート保守、AIモデル提供等は輸出に当たり得る。「重要ソフトウェア」定義確定まで、対中向けの新規提供・更新に暫定ゲートを設け、案件審査を義務化。

契約・物流・金融の実務

価格転嫁条項(サーチャージ/関税条項)の発動条件を確認。インコタームズ(DAP/DDP等)に応じた関税負担者を明確化。船積みカット・通関所要の前倒しを運送・通関業者と共有。為替・金利・在庫のヘッジ方針を更新。積送中例外の有無に注意。

業界別・影響の当たり所(早見)

自動車(EV/HEV): 駆動用NdFeB磁石、モータ、パワエレ部材のレアアース依存+米向け中国生産部材のコスト急騰。

産業機械・ロボット: サーボモータ用磁石・精密センサ類の供給不確実性。

エレクトロニクス: 磁石(スピーカー/HDD)、レアアース触媒、中国EMS由来の部材などで影響波及。

再エネ(風力): 永久磁石式発電機で依存度が高く、調達・価格圧力が強まりやすい。

直近2週間の「ウォッチポイント」

米官報(Federal Register): 対象品目(HTS)、移行措置(積送中除外の有無・期間)、免除申請(除外枠)の有無。

米商務省BISの追加告示: 「重要ソフトウェア」定義・ライセンス運用の詳細。

中国商務部(MOFCOM)の運用通知: 許可審査の実際の厳格度、防衛・先端半導体関連の扱い。

米中首脳外交イベントの有無と追加対抗措置: 米側の輸出規制拡張、中国側の対抗課税・許可厳格化。

すぐに着手したい実務アクション(チェックリスト)

48時間以内

  • 米向けCN原産の出荷案件を全件洗い出し(最終製品・部材・補修品)。船積み前倒しの可否判断。
  • BOM単位でのCN原産比率と関税転嫁条項の有無を確認、価格・納期の顧客コミュニケーション草案を用意。
  • 米拠点からの対中ソフト配信の一時ゲート(新規配信・更新・リモート保守の承認制)を導入。

1週間以内

  • サプライヤ・代替源のRFI/RFQ開始(磁石・触媒・精製工程の代替可否)。
  • 通関ブローカー・フォワーダーと移行措置の有無を前提に申告ライン確認。
  • 契約・約款(価格調整・不可抗力・通関責任)見直し案のドラフト化。

今月内

  • 工程移管(原産地変更)の実行可能性評価と投資稟議の素案。
  • 在庫・為替・金利のヘッジ更新とシナリオ別PL感応度の提示。

主な修正点

  1. SNSプラットフォーム名の明記: 「SNS投稿」→「Truth Social投稿」に修正
  2. ナスダック下落率の修正: 「約3.5%安」→「3.6%安」に修正
  3. 中国レアアース規制の対象元素数: 「5元素を新たに規制対象に追加」に加え「計12元素」を明記
  4. 磁石の審査基準: 「微量以上」→「0.1%以上」に具体化
  5. 中国のシェア: 「9割超」→「処理で約90%、磁石で90%超」と詳細化
  6. 文章構成: 読みやすさ向上のため、セクション構成を整理し、重複を削減

同一商品なのに中国の税関ごとにHSコード(税則号列)が違う場合

同一商品なのに中国の税関ごとにHSコード(税則号列)が違う場合、放置すると税率・輸出VAT還付・監管条件に影響します。中国ではHS分類の根拠と統一方法が制度化されています。以下の順に動くと解決が早いです。


まず押さえる前提

  • 中国の分類は、「進出口税則」「税則商品及び品目注釈」「本国子目注釈」等に基づいて決めます(客観・正確・統一の原則)。同一貨物は同一の分類決定に従うのがルールです。Government of China
  • 税関審査中でも緊急に出す必要があるときは、**担保提供での放行(担保放行)**が可能です。Government of China
  • 税則や注釈、申告要素(申报要素)は年初に改定されることがあるため、年度違いで見解が割れることもあります(例:2024→2025年の改定告知)。customs.gov.cn

すぐやること

  1. 技術資料を一本化
    品名・型番・用途・作用原理・材質/成分・構成/同梱品・完成/未組立か・セット品か・規格(GB/ISO等)・画像/図面・パンフ・安全データ、を中国語で揃えます。税関は実際状態で判断します。Government of China
  2. 公式データベースで“根拠合わせ”
    • 進出口税則・品目注釈」「本国子目注釈」を検索(用語の定義や除外規定を確認)。urumqi.customs.gov.cn+1
    • **申告要素(申报要素)**の最新版を確認(項目抜けが食い違いの典型原因)。customs.gov.cn
  3. 既存の“統一判断”がないかを調査
    GACCが公表する**「商品归类决定(分類決定)」や「行政裁定」に該当例があれば、それに全国で合わせる義務**が生じます。Government of China
  4. 相手税関に“根拠セット”で照会・調整
    2)と3)の根拠を添付し、「他港での見解」「年度の税則版」「申告要素の充足」を示して統一運用を依頼します(全国通関一体化の下、照会でそろうことが多い)。
  5. (貨物を急ぐ場合)担保放行+後追い確定
    輸出入を止めずに進めつつ、分類確定の手続きを継続します。Government of China

再発防止と“決定打”

A. 分類の「予裁定」(Advance Ruling)を取る

  • 効力3年間有効で、同一条件の貨物に全国で拘束力。税関は60日以内に決定書を交付(化験等の時間は除外)。申告時に**「预裁定+番号」**を備考に記載すれば税関が認めます。policy.mofcom.gov.cn+1
  • 申請窓口:「互联网+海关」→「税费业务」→「归类业务」→「归类预裁定」。shanghai.customs.gov.cn
  • 延長(展期)有効期限の30~90日前に延長申請可(2024年制度改正)。paper.people.com.cn
  • 海外企業でも申請できるケース上海自貿区では、海外の輸出者・生産者も契約条件等を満たせば代理経由で申請できるパイロットが運用中。該当すれば活用価値大。gdfs.customs.gov.cn+1

B. GACCの「分類決定」・「行政裁定」で全国統一

  • GACCが公表する分類決定(归类决定)は普遍的拘束力を持ち、同一貨物に全国一律適用。該当例を根拠にすれば各港で統一されます。Government of China

C. 紛争になったら「行政復議」

  • 具体的な行政行為(コードの否認・追徴等)に不服があれば、知った日から60日以内上級税関へ行政復議(不服申立て)が可能。審理は原則60日(必要に応じ最長+30日)。Government of China+1

なぜ食い違うのか

  • 申告要素の不足/表現の差(“用途/構成/機能/組成”の書きぶりで見解が割れる)。customs.gov.cn
  • 製品状態の違い(完成/未組立、セット詰合せ、同梱アクセサリーの有無)。Government of China
  • 年度改定や注釈改訳の差(年替わりで注釈修正)。customs.gov.cn
  • 既存の「分類決定」・判例情報の見落とし(既決例があるのに参照していない)。gdfs.customs.gov.cn

実務パッケージ

  • 申告書類の備考例(中国語) 依据《中华人民共和国海关预裁定决定书》(编号:XXXX),本批货物与预裁定列明情形一致,特按该决定申报。gongbei.customs.gov.cn
  • 予裁定 申請書類チェックリスト
    ① 申請書(中文版)② 製品仕様書/図面(CN)③ 成分/材質証明 ④ 用途・作用原理説明 ⑤ 型番対応表 ⑥ 写真/動画リンク ⑦ サンプル(要求があれば)⑧ 他港での指摘・税号案の比較票 ⑨ 国家/業界標準の引用(該当時)policy.mofcom.gov.cn+1

まとめ

  1. 技術資料と申告要素を整備 → 2. 公式注釈・既決例で根拠固め → 3. 港間調整(必要なら担保放行) → 4. 予裁定で将来案件を固定 → 5. なお争いが残るなら行政復議
    これで同一商品のHSコードを全国で一本化できます。Government of China+3Government of China+3policy.mofcom.gov.cn+3

参考:公式リソース(検索入口)


TPPへの中国、台湾、韓国の参加申請・参加検討に関する私見

中国、台湾、韓国がTPPへの参加を表明または参加検討をすることがニュースになっています。

ニュースやYouTubeで「TPPへの中国、韓国の参加は無理。台湾歓迎」という論調をよく見ますが、FTAを利用する企業側からの視点でこのことを見てみましょう。

(申請に関する是非)

TPPに参加申請をする国は、TPPが定める申請・承認プロセスを経ることになります。申請する段階でその申請を断ることはできません。断る以上は明確な理由が必要となります。

そこで、参加希望国が条件を満たせるかを見定めればよい。中国がWTOに参加するときに遵守するとした条件を今だ守れていないこと、韓国が国際的な決め事を後に保護することなどを加味して各国が見定め、満場一致をもって参加を認めればいいことで現時点で一方的に締約国が「守れない」と主張するのは無理があります。

(日本にとっての経済的メリット、リスク)

RCEPはその協定の内容を見れば分かることですが、日本にとってのメリットが余り感じられない、あったとしてもとても時間がかかる内容です。特に自動車部品の対中国輸出ではメリットがほぼないと言えます。中国や韓国が入ることでメリットが大きいと思われたRCEPですが、実際は日本に取ってそれほど手放しでは喜べないものになっています。

翻って、TPPに中国や韓国が入るとどうなるか。TPPでは日本は米などよく守ったと思われる内容となっている一方で、日本以外ではほぼ100%の関税撤廃となっています。また、その撤廃速度もRCEPとは比べるまでもありません。新規参入の国は、締約国より参加条件がよくなるわけがありません。基本は譲許のスピードが速く、かつほぼ全面的に関税を撤廃することが前提になるでしょう。そうなれば、TPPの方がいろいろな制約のあるRCEPよりも日本企業に取って対中国、対韓国上、関税削減が広く、かつ鋼板に享受できるという活用のメリットが出ると言えます。このメリットはかなり大きなものです。この点だけを考えれば、中国、韓国のTPP参加は日本にとって歓迎すべき事です。

一方、原産地証明上、日本はリスクを背負う可能性があります。

TPPにおける関税低減・撤廃のメリットを得る為には、原産地証明書を輸出時のインボイスに添付する必要があります。その原産地証明ですが、TPPでは「自己証明」という形態をとっています。「自己証明」とは企業が原産性を証明した後に、自身で原産地証明を作成することが出来るということを指します。日EU EPAや日オーストラリアEPAを除き、日本の多くのEPAでは「第三者証明」制度がとられています。これは商品の原産性判定を日本商工会議所に申請し、許可が出た後で、日本商工会議所により原産地証明書を発給してもらうことが出来る制度です。間に日本商工会議所が入ることで時間と手間とコストが企業にはかかることになります。TPPではそれがないので迅速に原産地証明書を得る事ができます。メリットに思えますよね。

FTAでは、原産性が確かなものかを輸入国が輸入時・輸入後に確認できる「検認」が認められています。原産性に関する証拠書類の提出や質疑をして、原産性があることを企業が立証しなければいけません。

先の原産地証明書の発給プロセスで、日本商工会議所が間に入ったEPAでは、検認時には日本商工会議所が輸入国税関と企業の間に立ち、検認の対応を支援していただけます。「自己証明」である日EU EPAは、税関が仲立ちしてくれます。が、TPPはその仲立ちがなく、相手国税関から直接企業に「検認」の問い合わせがいく仕組みになっています。TPPに中国や韓国が入ることで、彼らから日本企業への検認は各国税関から直接企業にいくことなるのです。助太刀のない検認でかつ中国、韓国から。怖いと思うのは私だけでしょうか。「もう少し製造工程を明確にしてもらわないと、原産として認められない」といった製造上の機密情報を要求されかねないという人も居ます。これは考えるべき大きなリスクです。

(TPPのアキレス腱)

ルールを守らないと考えられている中国を経済的に資すると考えられるTPP参加、それを西側として阻止しなければいけないという外交上の日本のスタンスも分からなくもありません。が、TPPの初期交渉当時からかき乱して、そして離脱をしたアメリカの所業も決して褒められたものではなく、実際のTPPの協定文にはアメリカによって(ごり押しと言っていい)内容が数あります。現段階でのTPP締約国は苦々しく思っている内容です。アメリカが戻ってくることを期待して、そのままとしています。

アメリカが戻ってこないなら、締約国は修正したいところでしょう。自動車関連や特に繊維などはアメリカのごり押しの内容です。直したいというのも当然ですし、理想をいえば直すべきだと思います。が、協定内容を変えることを認めれば、ついでに様々なことが書き換えられる恐れがあります。それが中国の参加の際に書き換えられるとなればどうなるか。中国の参加を歓迎するアジアの締約国がマレーシアやシンガポールなど少なからずあるため、非現実的ではないのです。

(英国の参加申請が当面の試金石)

先に、英国がTPP加盟申請を行っているので、英国に対して、協定内容を変えずに協議するか、厳しい参加基準をどう遵守させるかが当面締約国による真偽の中で見守りたい点です。協定を変えることがなければ、中国や申請をした場合の韓国にも同様の措置がとられるでしょう。そうなればTPPの理念は守られます。

それと同時にかき乱してきたアメリカがTPPに参加するなら修正が必要といっており、かつ、TPP参加が現段階でのアメリカの優先順位ではないため、アメリカの動きも見ておく必要があります。

(中国の真意)

中国は本当にTPPに参加したいと思っているのでしょうか。RCEPという巨大メガFTAも完成目前で、「自由貿易」という意味では中国は成功しています。一方、TPPのルールを曲げない限り、中国は参加要件を満たさないのは明らかで、中国が参加要件を満たす施策を行うメリットはありません。また、TPPは「環太平洋」と謳っていますが、FTAは本来隣接する地域で有効なもので、実際には日本企業がTPPを使うのはEPAのないカナダやニュージーランドくらいで、それほどアクティブな利用はされていません。

そういうことを考えれば、台湾をTPPに参加できなくさせるのが中国の本意ではないかと思います。中国にとって台湾は自国の一部としての認識なので、台湾を独立した形で世界的にメジャーなFTAに参加させないことが肝心なのでしょう。

ほんとか嘘か分かりませんが、台湾がTPP参加申請を出すという情報を中国が知り、先に申請することで台湾の出鼻を挫いたと言われていますね。

今後の動きを見守っていきたいと思います。情報がありましたらまたこのブログに投稿します。

【China Briefingより】China to Sign Free Trade Agreement with Eurasian Economic Union on May 17

China to Sign Free Trade Agreement with Eurasian Economic Union on May 17

May 17, 2018

China Briefing

China to Sign Free Trade Agreement with Eurasian Economic Union on May 17

 

中国とロシアのFTA締結がまもなくなんですね。